説明

ナビゲーションシステム

【課題】経路案内中に電気自動車の電池の充電が必要となると予想される場合に、待ち時間が短い充電施設へ誘導することができる「ナビゲーションシステム」を提供すること。
【解決手段】ナビゲーションシステムは、電気自動車に搭載された車載用ナビゲーション装置と、車載用ナビゲーション装置から送信された車両の位置及び電池残容量を収集する情報センタとにより構成されている。情報センタは、収集した車両の位置及び電池残容量並びに電気自動車の充電施設の位置及び保有する充電器の数を基に充電需要予測情報を作成して、充電需要予測情報を車載用ナビゲーション装置に送信する。車載用ナビゲーション装置は、目的地までの経路55を探索し、経路55を基に案内を行っている状態で、充電需要予測情報を受信したとき、充電需要予測情報を基に充電施設54での混雑が予測される道路区間を推定し、その道路区間を回避する目的地までの経路56を再探索する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車に搭載された車載用ナビゲーション装置と、車載用ナビゲーション装置と通信可能に接続された情報センタとにより構成されたナビゲーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
典型的な車載用ナビゲーション装置には、ナビゲーションに係る一切の処理を制御するCPU等の制御装置、地図データを格納したDVD−ROM等の記憶装置、表示装置、自車の現在位置を検出するためのGPS受信機、自車の進行方位や走行速度等を検出するためのジャイロや車速センサ等が設けられている。そして、制御装置により、自車の現在位置を含む地図データを記憶装置から読み出し、この地図データに基づいて自車位置周囲の地図画像を表示装置の画面に描画すると共に、自車の現在位置を指示する自車位置マークを画面上に重ね合わせて表示し、自車の移動に応じて地図画像をスクロール表示したり、地図画像を画面に固定して自車位置マークを移動させたりして、自車が現在何処を走行しているのかを一目で分かるようにしている。
【0003】
また、車載用ナビゲーション装置には、通常、ユーザが設定した目的地に向けて道路を間違うことなく走行できるように案内する機能(経路誘導機能)が搭載されている。この経路誘導機能によれば、制御装置により、地図データを用いて出発地(例えば、自車の現在位置)から目的地までを結ぶ最適な経路を、横型探索法やダイクストラ法等のシミュレーション計算を行って探索し、その探索した経路を誘導経路として記憶しておき、走行中、地図画像上にその誘導経路を他の道路と識別可能に表示したり、また誘導経路上で接近中の交差点まで所定距離に達したときに、地図画像上でその交差点の案内図(交差点拡大図、該交差点での進行方向を示す矢印、該交差点までの距離、交差点名など)を表示したりすることで、いずれの道路を走行すればよいか、また交差点でどの方向に進んだらよいかをユーザが把握できるようになっている。
【0004】
このような誘導経路は、自車両の車載用ナビゲーション装置だけでなく、車載用ナビゲーション装置と通信可能に接続された情報センタで探索することも可能になってきている。具体的には、複数の車両から車両の位置や速度等の情報(プローブ情報と呼ばれる)を情報センタが収集し、収集したプローブ情報を基に渋滞などの交通情報を生成したり、経路探索を行ったりする。これに関連する技術として、例えば特許文献1には、車載ナビゲーション装置が、出発地、目的地、燃費及び残燃料等の車両情報をナビゲーションセンタに送信すると、ナビゲーションセンタが、出発地と目的地との間のガソリンスタンドの中から燃料コストが相対的に低いガソリンスタンド及びそのガソリンスタンドでの給油量を含む経路案内情報を車載ナビゲーション装置に送信するナビゲーションシステムが記載されている。
【0005】
一方、地球環境の保護対策の一つとして、内燃機関と電動機を組み合わせたハイブリッドカーや、排出ガスを全く出さない電気自動車が開発されてきており、充電施設等のインフラの整備が進むにつれ今後普及するものと予想される。この電気自動車に関し、特許文献2には、電気自動車のバッテリに充電する設備を有する施設の位置を含む施設データを記憶しておき、この施設データに基づいて当該施設の位置を提供するナビゲーション装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−125430号公報
【特許文献2】特開2001−215124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したような、電気自動車に必要な駆動用電池(以下、単に「電池」ともいう)は価格が高く、重量も重いため、電気自動車には比較的小さい容量の電池が搭載されている。このため、電気自動車はガソリン等を燃料とする自動車と比べると一回の満充電での走行可能距離が短く、頻繁に充電を行うことになる。電気自動車は短時間の充電でも走行することは可能であるが、この場合には必然的に走行可能距離が短くなるので、充電回数が多くなってしまう。
【0008】
また、電気自動車の電池を満充電するまでには、充電設備の能力にも依存するが、例えば1台につき15〜20分程度の多くの時間がかかってしまう。従って、例えば1つの充電設備に3台の電気自動車が充電待ちをしていると、自車が充電を開始するまでに45〜60分も待たなければならない。
【0009】
このように電気自動車は充電に時間がかかるため、電池の残容量が少なく、充電が必要な電気自動車が多く存在する地域の充電施設では充電設備が混雑している可能性が高い。このため、特許文献2に記載されたナビゲーション装置のように充電施設の位置を提供したとしても、その充電施設が混雑している場合には、充電施設で多くの待ち時間が発生して、目的地に到達する時間が大幅に遅れてしまうことになる。
【0010】
本発明は、かかる従来技術における課題に鑑み創作されたもので、経路案内中に電気自動車の電池の充電が必要となることが予想される場合に、待ち時間の短い充電施設が多く存在する区域へ誘導することができるナビゲーションシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の従来技術の課題を解決するために、本発明によれば、電気自動車に搭載された車載用ナビゲーション装置と、前記車載用ナビゲーション装置と通信可能に接続され、前記車載用ナビゲーション装置から送信された車両の位置及び電池残容量を収集する情報センタとにより構成されたナビゲーションシステムであって、前記情報センタは、前記収集した車両の位置及び電池残容量並びに電気自動車の充電施設の位置及び当該充電施設が保有する充電器の数を基に充電需要予測情報を作成して、当該充電需要予測情報を前記車載用ナビゲーション装置に送信し、前記車載用ナビゲーション装置は、目的地までの経路を探索し、当該経路を基に案内を行っている状態で、前記充電需要予測情報を受信したとき、当該充電需要予測情報を基に充電施設での混雑が予測される道路区間あるいは区域を推定し、当該道路区間あるいは区域を回避する前記目的地までの経路を再探索することを特徴とするナビゲーションシステムが提供される。
【0012】
この形態に係るナビゲーション装置において、前記車載用ナビゲーション装置は、車両の電池の残容量を検出する残電池容量検出手段と、前記情報センタと通信するための通信手段と、前記残電池容量検出手段によって検出された情報により車両の電池残容量が所定の値以下になったと判定したとき、前記情報センタに前記充電需要予測情報を要求する信号及び車両を識別する識別信号を送信する制御手段とを有し、前記情報センタは、前記車載用ナビゲーション装置と通信するための通信手段と、前記充電需要予測情報を要求する信号及び車両を識別する識別信号を受信したときに、前記充電需要予測情報を前記識別信号に対応する車両の前記車載用ナビゲーション装置に送信する制御手段とを有するようにしてもよく、前記車載用ナビゲーション装置の制御手段は、車両の電池残容量が所定の値以下になったと判定したときに、前記情報センタに前記充電需要予測情報を要求する信号とともに車両の位置及び経路を送信し、前記情報センタの制御手段は、前記充電需要予測情報を要求する信号、車両の位置及び経路を受信したときに、当該車両の位置及び経路に応じた区域の前記充電需要予測情報を前記車載用ナビゲーション装置に送信するようにしてもよく、前記車載用ナビゲーション装置の制御手段は、前記充電需要予測情報を受信したときに、前記充電需要予測情報を基に充電施設での充電時間を含めて前記目的地に到達するまでの時間が最短となる経路を探索するようにしてもよく、前記情報センタの制御手段は、前記充電需要予測情報を要求する信号、車両の位置及び経路を受信したときに、当該車両の位置及び経路に応じた区域の前記充電需要予測情報とともに当該区域の交通情報を前記車載用ナビゲーション装置に送信し、前記車載用ナビゲーション装置の制御手段は、前記充電需要予測情報及び交通情報を受信したときに、前記充電需要予測情報及び交通情報を基に充電施設での充電時間を含めて前記目的地に到達するまでの時間が最短となる経路を探索するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のナビゲーションシステムにおいて、車載用ナビゲーション装置は、車両(自車)の位置及び電池の残容量を情報センタに送信し、情報センタは、車載用ナビゲーション装置から送信された車両の位置及び電池の残容量を収集して、収集した車両の位置及び電池の残容量並びに充電施設の位置及び充電器数を基に充電需要予測情報を作成している。車載用ナビゲーション装置は、目的地までの経路を探索し、探索した経路を基に案内を行っている状態で、充電需要予測情報を受信したとき、当該充電需要予測情報を基に充電施設での混雑が予測される道路区間あるいは区域を推定し、当該道路区間あるいは区域を回避する当該目的地までの再経路を再探索する。
【0014】
これにより、経路案内中に自車の電池の充電が必要となると予想される場合に、待ち時間の短い充電施設が多く存在する区域へ誘導することが可能となる。この結果、たとえ当初の誘導経路よりも距離が長くなったとしても、充電施設での充電時間を短くすることができ、目的地に到達する時間の遅れを抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係るナビゲーションシステムの概要を示す図である。
【図2】本実施形態の車載用ナビゲーション装置及び情報センタの構成の一例を示すブロック図である。
【図3】図3(a),3(b)は、充電需要予測情報を用いた経路探索の概念を説明する図である。
【図4】本実施形態の車載用ナビゲーション装置の制御部において行う車両情報の送信に係る処理の一例を示すフロー図である。
【図5】本実施形態の情報センタの制御部において行う充電需要予測情報の生成に係る処理の一例を示すフロー図である。
【図6】本実施形態の車載用ナビゲーション装置の制御部において行う充電需要予測情報を用いた誘導経路の探索に係る処理の一例を示すフロー図である。
【図7】本実施形態の情報センタの制御部において行う充電需要予測情報の送信に係る処理の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係るナビゲーションシステムの概要を示す図である。
【0018】
本実施形態のナビゲーションシステム100は、複数(図1では、4台)の電気自動車20aのそれぞれに搭載された車載用ナビゲーション装置20と、1つの情報センタ30とにより構成されている。各車載用ナビゲーション装置20と通信センタ30とは、例えば携帯電話回線を介して通信可能に接続されている。
【0019】
図2は、本実施形態の車載用ナビゲーション装置20及び情報センタ30の構成の一例を示すブロック図である。
【0020】
車載用ナビゲーション装置20において、1はDVDドライブを示し、このDVDドライブ1によって駆動されるDVD(DVD−ROM)1aには、各縮尺レベル(1/12500、1/25000、1/50000等)に応じて適当な大きさの経度幅及び緯度幅に区切られた地図データが格納されている。この地図データには、地図上に存在する各種施設に関するデータの他に、経路探索やマップマッチング等の各種処理に必要な道路ユニットのデータと、交差点や分岐など複数の道路が交わる点に対応するノード(経緯度で表現された点)と、各ノード間を結ぶ道路や車線等に対応するリンクとを含んでいる。施設に関するデータには、電気自動車の充電施設の位置及びその充電施設が保有する充電器の数などの充電施設データが含まれている。本実施形態では、地図データを格納する媒体としてDVD−ROMを使用しているが、これに代えて、CD−ROM、HDD、半導体メモリ等の他の記憶媒体を使用してもよい。
【0021】
2は後述するナビゲーション装置本体を操作するための操作部を示し、例えば、後述する表示装置の前面に設けられたタッチパネルの形態を有している。この操作部(タッチパネル)2は、ユーザが指等で触れたときに接触位置に応じた信号を出力する。
【0022】
3はGPS衛星から送られてくるGPS信号を受信して自車の現在位置の経度や緯度を検出するGPS受信機、4は自車の進行方位を検出するためのジャイロ等の角度センサや、一定の走行距離毎にパルスを発生する距離センサ等を備えた自立航法センサ、5は車両外部の情報センタ30との通信を行う携帯電話機等の通信装置を示す。
【0023】
6は車両の運転状況に関する情報を出力するための運転情報検出部である。出力される運転情報には、自車の走行速度、走行距離、各シフト位置(AT車の場合、D、N、R、P)、駆動用電池の残容量、走行時の平均消費電力量などが含まれる。さらに、イグニッションキーのオン/オフ操作に基づいた駆動用モータの起動/停止信号が含まれる。
【0024】
7は液晶表示(LCD)パネルや有機ELパネル等からなり、ナビゲーション装置20に係る種々の情報を表示する表示装置を示す。
【0025】
ナビゲーション装置本体10において、11はDVDドライブ1を介してDVD1aから読み出した地図データを一時的に格納するバッファメモリ、12はマイクロコンピュータ等により構成された制御部を示す。制御部12は、基本的には、GPS受信機3から出力される信号に基づいて自車の現在位置を検出したり、自立航法センサ4から出力される信号に基づいて自車の走行速度を算出したり、DVDドライブ1を制御して表示させたい地図のデータをDVD―ROM1aからバッファメモリ11に読み出したり、その読み出した地図データを用いて設定された探索条件で出発地(例えば、自車の現在位置)から目的地までの誘導経路を探索したりするなど、ナビゲーションに係る種々の処理を実行する。
【0026】
また、制御部12は、所定の時間毎にGPS受信機3により検出された自車の現在位置や運転情報検出部6により検出された電池の残容量などの自車の車両情報を、通信装置5を介して情報センタ30に送信する。更に、制御部12は、目的地までの誘導経路を探索し、探索した誘導経路を基に案内を行っているときに、自車の電池の残容量が所定の値以下になったと判定した場合に、通信装置5を介して充電需要予測情報を要求する信号を情報センタ30に送信する。更にまた、制御部12は、通信装置5を介して受信した情報センタ30の充電需要予測情報を基に充電施設での混雑が予測される道路区間あるいは区域を推定し、その道路区間あるいは区域を回避する目的地までの誘導経路を再探索する。なお、制御部12はメモリ12aを有しており、このメモリ12aに車両のID(識別番号)、車種及び満充電時の電池の全容量などの自車固有の情報を記憶する。
【0027】
13はバッファメモリ11に読み出された地図データを用いて地図画像の描画処理を行う地図描画部を示す。
【0028】
14は動作状況に応じて各種メニュー画面(操作画面)及び自車位置マーク、カーソル等の各種マークを生成する操作画面・マーク発生部を示す。
【0029】
15は誘導経路に関するデータを格納しておくための誘導経路記憶部を示す。この誘導経路記憶部15には、制御部12によって探索された誘導経路の出発地から目的地までの全てのノード(経緯度で表現された点の座標)に関するデータが記憶される。16は誘導経路描画部を示し、制御部12からの制御に基づいて、誘導経路記憶部15から誘導経路のデータを読み出し、当該誘導経路を他の道路とは異なる表示態様(例えば、色を変える、線幅を太くするなど)で描画する機能を有している。
【0030】
17は画像合成部を示し、制御部12からの制御に基づいて、地図描画部13で描画された地図画像に、誘導経路描画部16で描画された誘導経路、操作画面・マーク発生部14で生成された各種メニュー画面及び各種マーク等を重ね合わせて、表示装置7の画面に表示させる機能を有している。18は音声出力部を示し、制御部12からの制御に基づいて音声信号(例えば、ナビゲーションに係る案内情報)をスピーカ8に出力する。
【0031】
19は通信装置5を介して受信した外部の情報(例えば、情報センタ30の充電需要予測情報)を格納する外部情報格納部を示す。
【0032】
一方、情報センタ30において、31は車載用ナビゲーション装置20のDVD−ROM1aに記憶された地図データと同じ構成の地図データを記憶する地図データ記憶部を示す。すなわち、地図データ記憶部31の地図データにも、電気自動車の充電施設の位置及び充電器数などの充電施設データが含まれている。なお、地図データ記憶部31の地図データは、所定の期間(例えば、一ヶ月)毎に更新される。
【0033】
32は車載用ナビゲーション装置20との通信を行う通信装置を示す。33は通信装置32を介して受信した各電気自動車20aの車両情報を格納する車両情報格納部を示す。
【0034】
34は情報センタ30の動作に係る制御を行う制御部を示す。例えば、制御部34は、所定の時間毎に車両情報格納部33に格納した各車両情報を収集し、収集した各車両情報と、地図データ記憶部31に記憶した地図データ(充電施設データを含む)とを基に、道路区間あるいは区域の充電施設の需要の大きさを予測した充電需要予測情報を生成する。また、制御部34は、通信装置32を介して車載用ナビゲーション装置20の充電需要予測情報要求信号を受信したときに、生成した充電需要予測情報の中からその車載用ナビゲーション装置20向けの充電需要予測情報を抽出し、通信装置32を介してその車載用ナビゲーション装置20に送信する。
【0035】
35は制御部34で生成された充電需要予測情報を格納する充電需要予測情報格納部を示す。
【0036】
このように構成されたナビゲーションシステム100において、自車両の電池の残容量が所定の値以下になったとき、自車両の車載用ナビゲーション装置20は、受信した情報センタ30の充電需要予測情報を基に、待ち時間の短い充電施設を利用可能とする誘導経路を再探索する。
【0037】
図3は、充電需要予測情報を用いた経路探索の概念を説明する図である。なお、説明を簡単にするために、1つの充電施設につき1台の充電器が設置されているものとする。
【0038】
図3において、51は自車の現在位置を示すマーク、梨地模様で描かれた52は電池の残容量が少ない車両(電池の全容量に対する残容量の割合が所定の値以下の車両)を示すマーク、白地で描かれた53は電池の残容量が多い車両(電池の全容量に対する残容量の割合が所定の値よりも大きい車両)を示すマーク、及び、54は充電施設を示すマークである。また、図3(a)において実線で描かれた55は充電需要予測情報を用いずに探索した経路(第1経路)を示すマークであり、図3(b)において実線で描かれた56は充電需要予測情報を用いて探索した経路(第2経路)を示すマークである。
【0039】
図3(a)に示すように、地点Aと地点Bとの間の区間(道路区間)のうち、実線で描かれた区間(第1経路55内の区間)の付近には、充電施設54が3つ設置されている。これに対して、電池の残容量が少ない車両52が8台存在している。車両52は、電池の残容量が少なく、充電が必要なために充電施設54に立ち寄る可能性がある。このため、実線で描かれた区間では、充電施設54に立ち寄る可能性がある車両は1つの充電施設54につき約2.7台である。
【0040】
一方、破線で描かれた区間の付近には、充電施設54が2つ設置されているのに対して電池の残容量が少ない車両52が2台存在している。このため、充電施設54に立ち寄る可能性がある車両は1つの充電施設54につき1台である。
【0041】
このことから、実線で描かれた区間の付近では充電施設54で混雑することが予測される。一方、破線で描かれた区間の付近では、充電施設54で混雑がないか、混雑するとしても実線で描かれた区間程ではないことが予測される。
【0042】
本実施形態の車載用ナビゲーション装置20においては、上記したような充電需要を予測可能な充電施設の総数と充電が必要な車両の総数から生成した道路区間あるいは各区域の充電需要を情報センタ30から取得し、目的地までの経路を再探索する。その結果、図3(a)に示す破線で描かれた経路を含む区域の経路が探索され、充電施設54での混雑が予測される実線で描かれた経路が通る道路区間あるいは区域を回避する当該経路を誘導経路(第2経路)に設定する。そして、図3(b)に示す第2経路56を基に案内を行う。
【0043】
以下に、本実施形態のナビゲーションシステム100において行う充電施設の混雑の程度、すなわち充電施設の需要の大きさを考慮した経路探索に係る種々の処理について説明する。
【0044】
まず、本実施形態の車載用ナビゲーション装置20の制御部12において行う車両情報の送信に係る処理について、その処理フローの一例を示す図4を参照しながら説明する。なお、車載用ナビゲーション装置20が搭載されている電気自動車20aが走行中であるものとする。
【0045】
最初のステップS11では、所定の時間が経過した(YES)か否(NO)かを判定する。所定の時間(例えば、5分)を走行するまでステップS11の判定処理を継続し、判定結果がYESの場合にはステップS12に移行する。
【0046】
次のステップS12では、GPS受信機3から出力された信号を基に自車20aの現在位置を検出する。
【0047】
次のステップS13では、運転情報検出部6から出力された信号を基に自車20aの電池の残容量を検出する。
【0048】
次のステップS14では、通信装置5を介して車両情報を送信する。このステップS14で送信される車両情報は、自車20aのID、電池の全容量、ステップS12で検出した自車20aの現在位置、ステップS13で検出した自車20aの電池の残容量、及び、経路案内中である場合には案内で使用している誘導経路を含む。
【0049】
上述したステップS11〜14までの処理を自車が走行している間繰り返し行う。
【0050】
次に、本実施形態の情報センタ30の制御部34において行う充電需要予測情報の生成に係る処理について、その処理フローの一例を示す図5を参照しながら説明する。
【0051】
最初のステップS21では、通信装置32を介して電気自動車20aの車両情報を受信して車両情報格納部35に格納する。
【0052】
次のステップS22では、所定の時間が経過した(YES)か否(NO)かを判定する。所定の時間(例えば、5分)が経過するまでステップS21の処理を継続し、判定結果がYESの場合にはステップS23に移行する。
【0053】
次のステップS23では、所定の時間の間に車両情報格納部35に格納した車両情報を収集して整理する。このステップS23では、収集した車両情報にクレンジング処理を施して異常なデータを除去し、残りのデータに対してマップマッチングを行い、マッチングさせることができないデータがある場合にはそのデータを補正するなどの加工処理を行う。
【0054】
次のステップS24では、所定の区域毎に電池の残容量が所定の値以下の車両20aを検出する。このステップS24では、地図データ記憶部32に記憶された地図データを基に地図を所定の大きさ(例えば、市街地では1km四方、郊外では2km四方)の区域に分割し、その区域毎に、収集した車両情報のうちの車両20aの位置、電池の残容量及び全容量を基に、電池の全容量に対する残容量の割合が所定の値(例えば、30%)以下の車両20aを検出する。
【0055】
次のステップS25では、地図データ記憶部31に記憶された地図データを基に区域毎に充電施設を検出する。
【0056】
次のステップS26では、区域毎に充電施設の需要の大きさを予測した充電需要予測情報を生成し、充電需要予測情報格納部35に格納する。このステップS26では、区域内の充電施設が設置されている道路区間に対して、ステップS25で検出した充電施設の充電器の総数に対するステップS24で検出した車両20aの総数の割合を算出する。そして、算出した割合を、その道路区間における充電施設の需要の大きさを予測した値として地図上の該当する道路区間に付加することにより、充電需要予測情報を生成する。
【0057】
上述したステップS21〜26までの処理を繰り返し行う。
【0058】
次に、本実施形態のナビゲーションシステム100において行う充電需要予測情報を用いた経路探索に係る処理について、車載用ナビゲーション装置20側の処理フローの一例を示す図6及び情報センタ30側の処理フローの一例を示す図7を参照しながら説明する。
【0059】
図6の最初のステップS31では、車載用ナビゲーション装置20の制御部12において、目的地が設定された(YES)か否(NO)かを判定する。ユーザが操作部2を操作して目的地を設定したことを検出したときにYESと判定し、ステップS32に移行する。
【0060】
次のステップS32では、目的地までの誘導経路を探索する。このステップS32では、GPS受信機3から出力された信号を基に検出した自車20aの現在位置を出発地として、DVD−ROM1aに記憶された地図データを基に目的地までの誘導経路を探索する。このとき、距離を基に、道路幅員、道路種別、右折及び左折等に応じた値をパラメータとして用いて、走行所要時間が最短となる誘導経路(以下、「第1経路」ともいう)を探索する。
【0061】
次のステップS33では、第1経路を基に案内を行う、すなわち地図画像上に誘導経路(第1経路)を他の道路と識別可能に表示したり、交差点の案内図を表示したりするなどの案内を行う。
【0062】
次のステップS34では、運転情報検出部6から出力された信号を基に自車20aが所定の距離を走行した(YES)か否(NO)かを判定する。自車20aが所定の距離(例えば、1km)を走行するまでステップS33の経路案内処理を継続し、判定結果がYESの場合にはステップS35に移行する。
【0063】
次のステップS35では、自車20aの電池の残容量が所定の値以下になった(YES)か否(NO)かを判定する。このステップS35では、運転情報検出部6から出力された信号を基に自車20aの電池の残容量を検出し、電池の全容量に対する残容量の割合が所定の値(例えば、20%)以下になったか否かを判定する。判定結果がNOの場合にはステップS33に戻って経路案内処理を行い、判定結果がYESの場合にはステップS36に移行する。
【0064】
次のステップS36では、GPS受信機3から出力された信号を基に自車20aの現在位置を検出する。
【0065】
次のステップS37では、充電需要予測情報を要求する信号とともに、自車20aのID、ステップS36で検出した自車20aの現在位置、及び、ステップS32で探索した誘導経路(第1経路)を、通信装置5を介して送信する。
【0066】
この車載用ナビゲーション装置20側のステップS37の処理に対し、情報センタ30側において図7に示すような処理を行う。図7の最初のステップS51では、情報センタ30の制御部34において、通信装置32を介して充電需要予測情報要求信号とともに車両20aのID、位置及び誘導経路(第1経路)を受信する。
【0067】
次のステップS52では、その車両20aの位置及び誘導経路に応じた区域の充電需要予測情報を抽出する。このステップS52では、充電需要予測情報格納部35に格納した充電需要予測情報の中から、車両20aの誘導経路(ここでは、ステップS51で受信した車両20aの位置から目的地までの区間)を含む区域、及び、その周辺の区域の充電需要予測情報を抽出する。
【0068】
次のステップS53では、ステップS52で抽出した充電需要予測情報に、ステップS51で受信した車両20aのIDを付加したものを、通信装置31を介して送信して、本処理は終了する。
【0069】
図6に戻って、ステップS38では、通信装置5を介して自車20a向けの充電需要予測情報を受信した(YES)か否(NO)かを判定する。このステップS38では、充電需要予測情報要求信号を送信してから所定の時間(例えば、5分)が経過しても充電需要予測情報を受信しない場合、及び、自車20aのIDと異なるIDの充電需要予測情報を受信した場合にNOと判定し、ステップS36に戻って車両位置検出処理を行う。一方、自車20aのIDと同じIDの充電需要予測情報を受信した場合にYESと判定し、ステップS39に移行する。
【0070】
次のステップS39では、ステップS38で受信した充電需要予測情報を基に充電施設での混雑が予測される道路区間を推定し、当該道路区間を回避する目的地までの誘導経路を再探索する。このステップS39では、基本的にはステップS32と同じく、GPS受信機3から出力された信号を基に検出した自車20aの現在位置を出発地として、DVD−ROM1aに記憶された地図データを基に目的地までの誘導経路を探索する。但し、ステップS32と異なり、このときは、距離を基に、道路幅員、道路種別、右折及び左折等に応じた値とともに充電施設の需要の大きさを予測した値に応じた値をパラメータとして用いて、充電施設での充電時間を含めて走行所要時間が最短となる誘導経路(以下、「第2経路」ともいう)を探索する。
【0071】
次のステップ40では、第2経路を基に案内を行う、すなわち地図画像上に誘導経路(第2経路)を他の道路と識別可能に表示したり、交差点の案内図を表示したりするなどの案内を行う。
【0072】
以上説明したように、本実施形態のナビゲーションシステム100において、車載用ナビゲーション装置20は、自車20aの現在位置及び電池の残容量を含む車両情報を送信する。情報センタ30は、車載用ナビゲーション装置20から送信された車両情報を収集して、収集した車両情報と充電施設の位置及び充電器数とを基に充電需要予測情報を生成する。また、車載用ナビゲーション装置20は、目的地までの誘導経路を探索し、探索した誘導経路(第1経路)を基に案内を行っている状態で、自車20aの電池の残容量が所定の値以下になったと判定した場合に、充電需要情報要求信号とともに自車20aの現在位置及び誘導経路を送信する。情報センタ30は、充電需要情報要求信号とともに車両20aの位置及び誘導経路(第1経路)を受信すると、当該車両20aの位置及び誘導経路に応じた区域の充電需要予測情報を送信する。車載用ナビゲーション装置20は、自車20a向けの充電需要予測情報を受信すると、当該充電需要予測情報を基に充電施設での混雑が予測される道路区間を推定し、当該道路区間を回避する当該目的地までの誘導経路(第2経路)を探索する。
【0073】
これにより、経路案内中に自車20aの電池の充電が必要となることが予想される場合に、待ち時間の短い充電施設が多く存在する区域へ誘導することが可能となる。この結果、当初の誘導経路(第1経路)よりも距離が長くなったとしても、充電施設での充電時間を短くすることができ、目的地に到達する時間の遅れを抑えることが可能となる。
【0074】
なお、上述した実施形態においては、充電需要予測情報を基に目的地までの誘導経路を再探索しているが、これに限定されず、例えば、充電需要予測情報とともに交通情報(例えば、渋滞情報や規制情報)を基に目的地までの誘導経路を再探索するようにしてもよい。この場合、情報センタは、充電需要予測情報要求信号を受信したときに、充電需要予測情報とともに交通情報を送信するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1a…DVD−ROM、
3…GPS受信機、
5,32…通信装置(通信手段)、
6…運転情報検出部(残電池容量検出手段)、
12,34…制御部(制御手段)、
20…車載用ナビゲーション装置、
20a…電気自動車、
30…情報センタ、
31…地図データ記憶部、
52…電池の残容量が少ない電気自動車、
54…充電施設、
55…充電需要予測情報を用いずに探索した誘導経路(第1経路)、
56…充電需要予測情報を用いて探索した誘導経路(第2経路)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気自動車に搭載された車載用ナビゲーション装置と、前記車載用ナビゲーション装置と通信可能に接続され、前記車載用ナビゲーション装置から送信された車両の位置及び電池残容量を収集する情報センタとにより構成されたナビゲーションシステムであって、
前記情報センタは、前記収集した車両の位置及び電池残容量並びに電気自動車の充電施設の位置及び当該充電施設が保有する充電器の数を基に充電需要予測情報を作成して、当該充電需要予測情報を前記車載用ナビゲーション装置に送信し、
前記車載用ナビゲーション装置は、目的地までの経路を探索し、当該経路を基に案内を行っている状態で、前記充電需要予測情報を受信したとき、当該充電需要予測情報を基に充電施設での混雑が予測される道路区間あるいは区域を推定し、当該道路区間あるいは区域を回避する前記目的地までの経路を再探索することを特徴とするナビゲーションシステム。
【請求項2】
前記車載用ナビゲーション装置は、車両の電池の残容量を検出する残電池容量検出手段と、前記情報センタと通信するための通信手段と、前記残電池容量検出手段によって検出された情報により車両の電池残容量が所定の値以下になったと判定したとき、前記情報センタに前記充電需要予測情報を要求する信号及び車両を識別する識別信号を送信する制御手段とを有し、
前記情報センタは、前記車載用ナビゲーション装置と通信するための通信手段と、前記充電需要予測情報を要求する信号及び車両を識別する識別信号を受信したときに、前記充電需要予測情報を前記識別信号に対応する車両の前記車載用ナビゲーション装置に送信する制御手段とを有することを特徴とする請求項1に記載のナビゲーションシステム。
【請求項3】
前記車載用ナビゲーション装置の制御手段は、車両の電池残容量が所定の値以下になったと判定したときに、前記情報センタに前記充電需要予測情報を要求する信号とともに車両の位置及び経路を送信し、
前記情報センタの制御手段は、前記充電需要予測情報を要求する信号、車両の位置及び経路を受信したときに、当該車両の位置及び経路に応じた区域の前記充電需要予測情報を前記車載用ナビゲーション装置に送信することを特徴とする請求項2に記載のナビゲーションシステム。
【請求項4】
前記車載用ナビゲーション装置の制御手段は、前記充電需要予測情報を受信したときに、前記充電需要予測情報を基に充電施設での充電時間を含めて前記目的地に到達するまでの時間が最短となる経路を探索することを特徴とする請求項3に記載のナビゲーションシステム。
【請求項5】
前記情報センタの制御手段は、前記充電需要予測情報を要求する信号、車両の位置及び経路を受信したときに、当該車両の位置及び経路に応じた区域の前記充電需要予測情報とともに当該区域の交通情報を前記車載用ナビゲーション装置に送信し、
前記車載用ナビゲーション装置の制御手段は、前記充電需要予測情報及び交通情報を受信したときに、前記充電需要予測情報及び交通情報を基に充電施設での充電時間を含めて前記目的地に到達するまでの時間が最短となる経路を探索することを特徴とする請求項3に記載のナビゲーションシステム。
【請求項6】
前記充電需要予測情報は、充電施設が設置されている道路区間において、当該充電施設が保有する充電器の総数に対する電池残容量が所定の値以下となっている車両の総数の割合であることを特徴とする請求項4又は5に記載のナビゲーションシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−27433(P2011−27433A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−170415(P2009−170415)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】