説明

ナビゲーション装置、その方法及びプログラム

【課題】ナビゲーションの技術において、通常時の不要な煩わしさを回避しつつ、大きな到着予想時刻の変動を運転者に確実に知らせること。
【解決手段】到着予想時刻算出手段11が、出発地から目的地までの所要時間を計算し、到着予想時刻を所定時間毎に算出し、このように算出された到着予想時刻を、一時記憶手段12が一時的に記憶する。このように記憶された到着予測時刻と、所定時間後すなわち次回算出された到着予想時刻と、を到着予想時刻判断手段13が比較して所定時間以上ずれているかどうかを判断する。この判断で所定時間以上ずれていると判断された場合に、報知手段14がその旨を報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション技術の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子技術の発達に伴い、車載用などのナビゲーション装置の普及が著しい。ナビゲーション装置は、自動車等の車両に搭載し、地図データをもとに、GPSなどで特定する自車位置を周辺地図上に表示したり、利用者が施設検索やカーソルなどで指定する目的地への経路を探索計算して設定し、地図表示や合成音声などで進行方向や交差点での右左折等の誘導案内を行う。
【0003】
ナビゲーションにおいては、目的地への到着予想時刻を、経路案内開始時に計算したり途中で再計算して表示したり音声で案内する例があり(例えば特許文献1)、その種の機種では、経路案内中に渋滞に巻き込まれたり、スムーズに流れたりすることもあるため、目的地到着予想時刻を、所定の間隔、例えば1分毎、に更新し、画面に表示していた。
【特許文献1】特開平11−144190
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のように到着予想時刻を画面上で更新していても、運転者が進行方向などの誘導案内に集中しているような場合は、到着予想時刻が最初に案内した時間より大幅に遅くなっても、画面を見るまでそれになかなか気付かない場合があるという問題があった。
【0005】
だからといって、上記のように1分などの更新間隔ごとに音声案内をするのでは、通常の運転時には不要に煩わしく、慣れで逆に気付かない等の課題も考えられ、より優れた技術的解決が希求されていた。
【0006】
本発明は、上記のような従来技術の課題を解決するもので、その目的は、ナビゲーションの技術において、通常時の不要な煩わしさを回避しつつ、大きな到着予想時刻の変動を運転者に確実に知らせることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の一態様は、出発地から目的地までの経路を案内するナビゲーション装置において、出発地から目的地までの所要時間を計算し、到着予想時刻を所定時間毎に算出する到着予想時刻算出手段と、前記到着予測時刻算出手段で算出された前記到着予想時刻を一時的に記憶する一時記憶手段と、前記一時記憶手段に記憶された前記到着予測時刻と、所定時間後に算出された到着予想時刻と、を比較して所定時間以上ずれているかどうかを判断する到着予想時刻判断手段と、前記到着予測時刻判断手段で、所定時間以上ずれていると判断された場合にその旨を報知する報知手段と、を有することを特徴とする。
【0008】
このように、所定時間毎に算出更新する目的地到着予想時刻が前回算出したものと比べて所定時間以上大きく変動すると、そのことを報知することにより、ユーザはナビ画面を見なくても到着予想時刻が遅くなったり早くなったことを確実に知ることができる。
【0009】
本発明の他の態様は、さらに、前記到着予想時刻算出手段は、交通情報を取得する交通情報取得手段を有し、前記交通情報取得手段で取得した交通情報を加味して出発地から目的地までの所要時間を計算し到着予想時刻を所定時間ごとに算出することを特徴とする。
【0010】
このように、VICS等の交通情報を取得して到着予想時刻に反映させることにより、遅れの判断や報知の精度が改善でき、ユーザによる予定変更や関係先への連絡といった適切な対処も容易になる。
【0011】
方法及びコンピュータプログラムにおいても、以上各態様に準ずる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、ナビゲーションの技術において、通常時の不要な煩わしさを回避しつつ、大きな到着予想時刻の変動を運転者に確実に知らせることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための最良の実施形態について、図に沿って説明する。なお、背景技術や課題での説明と共通の前提事項は適宜省略する。
【0014】
〔1.構成〕
本実施形態は、出発地から目的地までの経路を案内するナビゲーション装置(以下「本装置」と呼ぶ)に関するもので、まず、本装置の基本構成を図1に示す。すなわち、ナビゲーション装置の本体部1は、コンピュータの演算制御部を所定のプログラムで制御することによって、ナビゲーションの各機能を実現しており、図示はしないが、ハードディスク、DVD−ROM等の外部記憶装置に用意した記憶手段から、所定フォーマットの地図データなど、ナビゲーションを行うために必要なデータを読み取って、必要な情報処理を行う部分である。
【0015】
また、本装置は、自車位置計算に用いるGPSアンテナ2ならびに車の速度パルス検出装置3を有し、また、計算した自車位置周辺の地図データを読み取って地図を描画するなど情報出力のための表示装置4と、経路計算に基く進行方向などの誘導案内出力用の音声出力装置5と、を有する。また、本装置は、目的地設定など操作や情報の入力を受け付けるために、リモコンや音声入力などによる操作部6を有する。
【0016】
また、地図データのうち、道路のネットワーク構造を表す道路データは、図2の概念図に例示するように、主に交差点・分岐点を示すノード(点)と、ノード間を結ぶリンク(線)で構成される。各々のリンクには、リンクを特定するユニークな番号(リンクID)、リンク長、種別(国道又は都道府県道など)、リンクの道路幅、有料・無料の別、通行規制、等の属性が付与されている。また、VICSサービスを受けるため、リンクにはVICS IDが付与されている。また各々のノードには、ノードを特定するユニークな番号(ノードID)、接続するリンク同士の通行規制やレーン情報等の属性が付与されている。
【0017】
そして、経路計算では、上記のような地図データのノード、リンクの情報を用いて、候補となる経路ごとに、含まれる交差点や道路区間の通りやすさを示す値(道路コスト)を算出し、道路コストの総計が最小となるようにリンクを結んで経路を選択する。このとき進入禁止や一方通行といった交通規制情報を利用して、その規制に矛盾しない経路を選択する。また、VICSの渋滞情報を利用して、道路コストの値を変更することで、より最適な経路が選択できる。
【0018】
そして、選択した経路に従って経路案内を行うが、適切に案内を行うために、各ノードにその地点で目印となる交差点の名称や、付近に有る施設の記号データ、交差点の画像データ等を格納しておく。また、目的地を設定するためのデータ、例えば、施設ごとのジャンル、名称、住所、電話番号など、施設検索用のデータを外部記憶装置に用意しておく。
【0019】
また、本体部1では、前記コンピュータの演算制御部が、図1に示す到着予想時刻算出手段11と、一時記憶手段12と、到着予想時刻判断手段13と、報知手段14と、を実現する。これら各手段は、以下のような本発明及び本実施形態の各機能作用を実現・実行する処理手段である。
【0020】
〔2.作用〕
以上のように構成された本装置は、以下のように働く。
〔2−1.作用の概要〕
作用の概要としては、到着予想時刻算出手段11が、出発地から目的地までの所要時間を計算し、到着予想時刻を所定時間毎に算出し(到着予想時刻算出処理)、このように算出された到着予想時刻を、一時記憶手段12が一時的に記憶する(一時記憶処理)。そして、このように記憶された到着予測時刻と、所定時間後すなわち次回算出された到着予想時刻と、を到着予想時刻判断手段13が比較して所定時間以上ずれているかどうかを判断し(到着予想時刻判断処理)、この判断で所定時間以上ずれていると判断された場合に、報知手段14がその旨を報知する(報知処理)。
【0021】
ここで、図3は、図の左側を従来、右側を本発明とした概念図である。すなわち、画面例(a)のように、目的地までの距離と到着予想時刻を画面に表示する点は、従来と本発明で共通するが、従来では、画面例(c)で楕円で示すように、表示されている距離と到着予想時刻を画面上で更新するだけだったため、運転者は気付きにくかった。これに対して、本発明では、計算した到着予想時刻が所定時間以上変動すると、画面例(b)に示すように、画面に割り込むように表示や音声案内で報知するので、運転者が気付きやすい利点がある。
【0022】
〔2−2.具体的動作手順〕
次に、上記のような作用を実現するより具体的な動作手順について、まず、全体を図4に示す。すなわち、従来と共通のナビゲーション処理として、本装置はまず、ユーザーから施設検索やスクロールとカーソル指定などで、目的地の設定を受け付け(ステップ401)、続いて、ユーザーから、主要道優先又は有料道優先、中継点を設定するかどうか、といった経路計算の計算条件の設定を受け付ける(ステップ402)。これらが終わると経路計算を実行し(ステップ403)、計算した経路に沿って目的地までの経路案内を開始する(ステップ404)。本発明は、この経路案内(ステップ404)の段階に関わるもので、より具体的な処理手順を図5に示す。なお、従来と共通の各処理については詳細は省略する。
【0023】
図5の動作手順では、まず、後の処理で到着予想時刻を比較するために、当初の経路案内開始(ステップ404)の際に、算出した目的地までの到着予想時刻を到着予想時刻算出手段11が一時記憶手段12に記憶させておく(ステップ501)。次に、自車位置を更新するごとに(ステップ502)、自車が目的地に到着したかどうか判断する(ステップ503)。
【0024】
この際、自車が目的地に到着していれば経路を案内する必要は無いので、図5の処理を終了するが、目的地に到着していなければ(ステップ503)、目的地到着予想時刻を前回更新してから所定の時間、例えば1分を経過したかどうか判断する(ステップ504)。ここで、所定の時間が経過していなければ自車位置更新(ステップ502)へ戻るが、経過していれば(ステップ504)、目的地までの距離と到着予想時刻を更新する(ステップ505)。この更新処理の詳細を図6に示す。
【0025】
すなわち、まず、自車位置から目的地までの距離を計算した経路に従って算出し(ステップ601)、この算出した距離と、自車の速度から、到着予想時刻算出手段11が、目的地までの到着予想時刻を計算する(ステップ602)。このとき自車の速度は予め設定しておいても良いし、ユーザーが設定しても良いし、これまで走行した平均速度を使用しても良い。そして、ナビ画面上に表示する目的地までの距離と到着予想時刻表示を更新して(ステップ603)終了する。
【0026】
続いて、図5に戻り、前回算出して一時記憶手段12に記憶している到着予想時刻と比較して、今回算出して更新した目的地への到着予想時刻において所定のズレ、例えば10分以上の遅れや繰り上がりが有るかどうかを、到着予想時刻判断手段13が判断する(ステップ506)。このような差異が無ければ自車位置更新(ステップ502)へ戻るが、差異が有れば、到着予想時刻判断手段13は、一時記憶手段12に記憶している前回の到着予想時刻を、今回の到着予想時刻によって記憶させ直すとともに(ステップ507)、変動した到着予想時刻を報知手段14が案内する(ステップ508)。
【0027】
この到着予想時刻の案内について、より詳細な動作手順を図7に示す。すなわち、報知手段14は、まず、遅くなった到着予想時刻を、音声出力装置5(図1)を用いて、合成又は音節単位などで再生した音声で案内する(ステップ701)。次に、到着予想時刻やその変動を表示装置4を用いて、図3の画面例(b)に示すように、ナビ画面の上に割り込むようにして表示する(ステップ702)。そして、所定の間、割り込み表示をしたらそれを消去して、通常のナビ画面表示に戻って(ステップ703)終了する。
【0028】
以上のように、図5に示した処理を目的地に到着するまで実行し、目的地に到着したら(ステップ503)この処理を終了する。また、到着予想時刻の変動を一旦案内した後でも、図5の処理を繰り返して、到着予想時刻に所定の変動が生じる毎に同様の案内をすることで、運転者に目的地の到着予想時刻が遅れたり早くなったり、ある程度変化するたびにその事を確実に伝達可能となる(図3参照)。また、図3の画面例(b)に示すように、ナビ画面に目立つように表示することで、同様に到着予想時刻が所定の変動幅以上で、遅くなったことを知ることができ、また、予想より早くなったことも知ることができる。
【0029】
〔3.効果〕
以上のように、本実施形態によれば、所定時間毎に算出更新する目的地到着予想時刻が前回算出したものと比べて所定時間以上大きく変動すると、そのことを報知することにより、ユーザーは到着予想時刻が遅くなったり早くなったことを確実に知ることができる。このようにして、頻繁な音声案内による通常時の不要な煩わしさを回避しつつ、到着予想時刻の大きな変動を運転者に確実に知らせることができる。
【0030】
〔4.他の実施形態〕
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下に例示するものやそれ以外の他の実施形態も含むものである。例えば、図8に示すように、FM多重やビーコンなどの受信手段で交通情報を取得する交通情報取得手段17を設け、到着予想時刻算出手段11が、この交通情報取得手段17で取得した交通情報を加味して出発地から目的地までの所要時間を計算し到着予想時刻を所定時間ごとに算出し、それを到着予想時刻判断手段13が、前回算出した到着予想時刻と比較するようにしてもよい。
【0031】
このように、VICS等の交通情報を取得して到着予想時刻に反映させることにより、遅れの判断や報知の精度が改善でき、ユーザーによる予定変更や関係先への連絡といった適切な対処も容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態の構成を示す機能ブロック図。
【図2】本発明の実施形態におけるノードとリンクの関係を示す概念図。
【図3】従来と本発明を比較する概念図。
【図4】本発明の実施形態における全体的動作手順を示すフローチャート。
【図5】本発明の実施形態におけるより具体的な動作手順を示すフローチャート。
【図6】本発明の実施形態において、目的地までの距離と到着予想時刻を更新する動作手順を示すフローチャート。
【図7】本発明の実施形態において、到着予想時刻の変動を報知する動作手順を示すフローチャート。
【図8】本発明の他の実施形態の構成を示す機能ブロック図。
【符号の説明】
【0033】
1…ナビゲーション装置
2…GPSアンテナ
3…車速パルス検出装置
4…表示装置
5…音声出力装置
6…操作部
11…到着予想時刻算出手段
12…一時記憶手段
13…到着予想時刻判断手段
14…報知手段
17…交通情報取得手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出発地から目的地までの経路を案内するナビゲーション装置において、
出発地から目的地までの所要時間を計算し、到着予想時刻を所定時間毎に算出する到着予想時刻算出手段と、
前記到着予測時刻算出手段で算出された前記到着予想時刻を一時的に記憶する一時記憶手段と、
前記一時記憶手段に記憶された前記到着予測時刻と、所定時間後に算出された到着予想時刻と、を比較して所定時間以上ずれているかどうかを判断する到着予想時刻判断手段と、
前記到着予測時刻判断手段で、所定時間以上ずれていると判断された場合にその旨を報知する報知手段と、
を有することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
前記到着予想時刻算出手段は、
交通情報を取得する交通情報取得手段を有し、
前記交通情報取得手段で取得した交通情報を加味して出発地から目的地までの所要時間を計算し到着予想時刻を所定時間ごとに算出する
ことを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
コンピュータにより、出発地から目的地までの経路を案内するナビゲーション方法において、
出発地から目的地までの所要時間を計算し、到着予想時刻を所定時間毎に算出する到着予想時刻算出処理と、
前記到着予測時刻算出処理で算出された前記到着予想時刻を一時的に記憶する一時記憶処理と、
前記一時記憶処理で記憶された前記到着予測時刻と、所定時間後に算出された到着予想時刻と、を比較して所定時間以上ずれているかどうかを判断する到着予想時刻判断処理と、
前記到着予測時刻判断処理で、所定時間以上ずれていると判断された場合にその旨を報知する報知処理と、
をコンピュータが実行することを特徴とするナビゲーション方法。
【請求項4】
前記到着予想時刻算出処理は、
交通情報を取得する交通情報取得処理を含み、
前記交通情報取得処理で取得した交通情報を加味して出発地から目的地までの所要時間を計算し到着予想時刻を所定時間ごとに算出する
ことを特徴とする請求項3に記載のナビゲーション方法。
【請求項5】
コンピュータに、出発地から目的地までの経路を案内させるナビゲーションプログラムにおいて、
そのプログラムは前記コンピュータの演算制御部を制御することにより、
出発地から目的地までの所要時間を計算させ、到着予想時刻を所定時間毎に算出させ、
算出された前記到着予想時刻を一時的に一時記憶手段に記憶させ、
記憶された前記到着予測時刻と、所定時間後に算出された到着予想時刻と、を比較して所定時間以上ずれているかどうかを判断させ、
所定時間以上ずれていると判断された場合にその旨を報知させる
ことを特徴とするナビゲーションプログラム。
【請求項6】
前記プログラムは前記演算制御部に、
所定の情報受信手段により交通情報を取得させ、
取得した交通情報を加味して出発地から目的地までの所要時間を計算し到着予想時刻を所定時間ごとに算出させる
ことを特徴とする請求項5に記載のナビゲーションプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−82795(P2008−82795A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−261679(P2006−261679)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】