ナビゲーション装置
【課題】誘導交差点の形状を表示した交差点拡大図において、その誘導交差点を通過する前に次の誘導交差点における車両の進行方向を運転者に知らせる。
【解決手段】対象誘導交差点に車両が近づくと、対象誘導交差点の周囲の所定の地図範囲について要約地図を作成し、その要約地図の上に車両が進むべき方向を誘導矢印マーク20によって表した交差点拡大図を表示する。そして、対象誘導交差点の次の誘導交差点について、ラウンドアバウトやロータリーに該当する道路であることを示す特定の道路種別情報が地図データにおいて記録されている場合は、次の誘導交差点が環状交差点であると判定し、その環状交差点における進路形状を図案化した環状交差点マーク25を表示する。
【解決手段】対象誘導交差点に車両が近づくと、対象誘導交差点の周囲の所定の地図範囲について要約地図を作成し、その要約地図の上に車両が進むべき方向を誘導矢印マーク20によって表した交差点拡大図を表示する。そして、対象誘導交差点の次の誘導交差点について、ラウンドアバウトやロータリーに該当する道路であることを示す特定の道路種別情報が地図データにおいて記録されている場合は、次の誘導交差点が環状交差点であると判定し、その環状交差点における進路形状を図案化した環状交差点マーク25を表示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、目的地までの経路を設定し、その経路を地図上に表示したり、経路に沿って曲がるべき交差点(誘導交差点)における車両の進行方向を音声や画面表示などによって運転者に指示したりすることにより、車両を目的地まで案内するナビゲーション装置が知られている。このようなナビゲーション装置において、3つ以上の誘導交差点が隣接している場合は、最も距離が近い2つの誘導交差点を複合してその形状を表示し、その上に車両の進行方向を矢印で示すことにより、運転者にとって分かりやすく運転指示するものが知られている(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−59731号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるナビゲーション装置では、最も距離が近い2つの誘導交差点のみが複合され、それ以外の誘導交差点は複合されずに単独でその形状が表示される。したがって、単独で誘導交差点の形状が表示される場合、その誘導交差点を通過するまでは、次の誘導交差点における車両の進行方向を運転者に知らせることができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明によるナビゲーション装置は、設定された推奨経路において曲がるべき対象誘導交差点を所定の地図範囲について表した交差点拡大図を地図データに基づいて作成する交差点拡大図作成手段と、交差点拡大図作成手段により作成された交差点拡大図を表示モニタに画面表示する交差点拡大図表示手段と、対象誘導交差点の次の誘導交差点における進路形状を表すための表示マークを表示モニタに画面表示された交差点拡大図上に表示するマーク表示手段とを備えるものである。
請求項2の発明は、請求項1のナビゲーション装置において、マーク表示手段は、次の誘導交差点が環状交差点である場合、次の誘導交差点における進路形状を表すための環状交差点マークを表示マークとして表示するものである。
請求項3の発明は、請求項2のナビゲーション装置において、地図データに記録された道路種別情報に基づいて、次の誘導交差点が環状交差点であるか否かを判定する第1の判定手段をさらに備え、マーク表示手段は、第1の判定手段により次の誘導交差点が環状交差点であると判定されなかった場合は環状交差点マークを表示しないこととするものである。
請求項4の発明は、請求項1のナビゲーション装置において、マーク表示手段は、次の誘導交差点が交差点拡大図の地図範囲外にあり、かつ所定の範囲内にある場合、次の誘導交差点における進路形状を表すための通常交差点マークを表示マークとして表示するものである。
請求項5の発明は、請求項4のナビゲーション装置において、対象誘導交差点から次の誘導交差点までの距離に基づいて、次の誘導交差点が所定の範囲内にあるか否かを判定する第2の判定手段をさらに備え、マーク表示手段は、第2の判定手段により次の誘導交差点が所定の範囲内にあると判定されなかった場合は通常交差点マークを表示しないこととするものである。
請求項6の発明は、請求項4のナビゲーション装置において、交差点拡大図の地図範囲の境界から次の誘導交差点までの距離に基づいて、次の誘導交差点が所定の範囲内にあるか否かを判定する第2の判定手段をさらに備え、マーク表示手段は、第2の判定手段により次の誘導交差点が所定の範囲内にあると判定されなかった場合は通常交差点マークを表示しないこととするものである。
請求項7の発明は、請求項1〜6いずれか一項のナビゲーション装置において、対象誘導交差点までの距離が予め定められた所定距離以内であるか否かを判定する距離判定手段と、距離判定手段により対象誘導交差点までの距離が所定距離以内であると判定されると、所定の地図範囲内の道路形状を簡略化して要約地図を作成する要約地図作成手段とをさらに備え、交差点拡大図作成手段は、要約地図作成手段により作成された要約地図に基づいて交差点拡大図を作成するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、誘導交差点の形状を表示した交差点拡大図において、運転者にとって運転操作しやすいように、その誘導交差点を通過する前に次の誘導交差点における車両の進行方向を運転者に知らせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の一実施形態によるナビゲーション装置の構成を図1に示す。このナビゲーション装置は車両に搭載されて使用されるものであり、設定された目的地までの推奨経路を探索し、探索された推奨経路に従って車両を目的地まで誘導する。このとき、車両が次に曲がるべき誘導交差点に近づくと、その誘導交差点の周囲について通常の地図を基に道路形状を簡略化することにより、通常の地図を要約した要約地図を作成し、交差点拡大図として表示する。この交差点拡大図において曲がるべき方向を矢印で示すことにより、ユーザが車両の進行方向を一目で理解できるようにする。
【0008】
図1に示すナビゲーション装置1は、制御回路11、ROM12、RAM13、現在地検出装置14、画像メモリ15、表示モニタ16、入力装置17およびディスクドライブ18を有している。ディスクドライブ18には、地図データが記録されたDVD−ROM19が装填される。
【0009】
制御回路11は、マイクロプロセッサおよびその周辺回路からなり、RAM13を作業エリアとしてROM12に格納された制御プログラムを実行することにより、各種の処理や制御を行う。この制御回路11において実行される処理により、たとえば、DVD−ROM19に記録された地図データに基づいて目的地までの推奨経路が探索される。また、後で説明するようにして誘導交差点の周囲の要約地図が作成され、交差点拡大図として表示モニタ16に表示される。
【0010】
現在地検出装置14は、自車両の現在地を検出する装置であり、たとえば、自車両の進行方向を検出する振動ジャイロ14a、車速を検出する車速センサ14b、GPS衛星からのGPS信号を検出するGPSセンサ14c等からなる。ナビゲーション装置1は、この現在地検出装置14により検出された自車両の現在地に基づいて、推奨経路を探索するときの経路探索開始点を決定することができる。
【0011】
画像メモリ15は、表示モニタ16に表示するための画像データを一時的に格納する。この画像データは、要約地図を画像表示するための道路地図描画用データや各種の図形データ等からなり、制御回路11において、DVD−ROM19に記録されている地図データに基づいて作成される。この画像メモリ15に格納された画像データを用いて、通常の地図や交差点拡大図などの各種の画像が表示モニタ16に表示される。
【0012】
入力装置17は、ユーザが目的地の設定などを行うための各種入力スイッチを有し、これは操作パネルやリモコンなどによって実現される。ユーザは、表示モニタ16に表示される画面指示に従って入力装置17を操作することにより、地名や地図上の位置、施設名などを指定して目的地を設定し、その目的地までの経路探索をナビゲーション装置1に開始させることができる。
【0013】
ディスクドライブ18は、通常の地図を表示モニタ16に表示したり、誘導交差点付近の要約地図を作成したりするための地図データを、装填されたDVD−ROM19より読み出す。なお、ここではDVD−ROMを用いた例について説明しているが、DVD−ROM以外の他の記録メディア、たとえばCD−ROMやハードディスクなどより、地図データを読み出すこととしてもよい。この地図データには、推奨経路を演算するために用いられる経路計算データや、交差点名称、道路名称など、推奨経路に従って自車両を目的地まで案内するために用いられる経路誘導データ、道路を表す道路データ、さらには海岸線や河川、鉄道、地図上の各種施設(ランドマーク)など、道路以外の地図形状を表す背景データなどが含まれている。
【0014】
道路データにおいて、道路区間を表す最小単位はリンクと呼ばれている。すなわち、各道路は所定の道路区間ごとに設定された複数のリンクによって構成されている。なお、リンクによって設定される道路区間の長さは異なっており、リンクの長さは一定ではない。リンク同士を接続している点はノードと呼ばれ、このノードはそれぞれに位置情報(座標情報)を有している。また、リンク内にはノードとノードの間に形状補間点と呼ばれる点が設定されていることもある。形状補間点もノードと同じく、それぞれに位置情報(座標情報)を有している。このノードと形状補間点の位置情報によって、リンク形状、すなわち道路の形状が決定される。経路計算データには、上記の各リンクに対応して、自車両の通過所要時間を表すためのリンクコストと呼ばれる値が設定されている。
【0015】
ユーザによる入力装置17の操作に応じて前述のように目的地が設定されると、現在地検出装置14により検出された現在地を経路探索開始点として、設定された目的地までの経路演算が経路計算データに基づいて所定のアルゴリズムにより行われ、目的地までの推奨経路が求められる。そして、求められた推奨経路がその表示形態、たとえば表示色などを変えることにより、他の道路とは区別して、表示モニタ16に表示された地図上に表される。これにより、ユーザはどの道路が経路に設定されているかを地図上で認識することができる。
【0016】
上記のようにして推奨経路が求められた後に、車両が推奨経路上にある誘導交差点に近づくと、その誘導交差点を含む所定の地図範囲について要約地図が作成される。そして、その要約地図の上に、車両が曲がるべき方向を示すための矢印が重ね合わされ、交差点拡大図として表示モニタ16に表示される。このように要約地図に基づいて作成され、表示モニタ16に表示された交差点拡大図にしたがって、車両が目的地まで誘導される。以下の説明では、交差点拡大図が表示される誘導交差点のことを対象誘導交差点と称する。なお、要約地図の具体的な作成方法については後で説明する。
【0017】
さらに、交差点拡大図が表示される対象誘導交差点と、その対象誘導交差点の次に推奨経路上に存在する誘導交差点(以下、このような誘導交差点を単に「次の誘導交差点」と称する)との間の距離が所定距離以下である場合は、対象誘導交差点と次の誘導交差点とを複合して一画面内に表示されるようにした交差点拡大図を表示する。こうして表示される交差点拡大図は、複合交差点拡大図と呼ばれる。このような複合交差点拡大図を表示することにより、運転者は対象誘導交差点の手前において、次の誘導交差点で曲がるべき方向を知ることができる。そのため、従来のように対象誘導交差点を通過した後に次の誘導交差点の進行方向を表示する場合と比べて、運転者が慌てて運転操作する必要がない。
【0018】
以上説明したような複合交差点拡大図が表示されない場合であっても、次の誘導交差点が環状交差点のように特殊な交差点である場合や、次の誘導交差点までの距離が比較的短い場合は、次の誘導交差点における進路の形状を表すための表示マークを交差点拡大図上に表示する。この点について、以下に図面を参照して詳しく説明する。
【0019】
図2は、次の誘導交差点が環状交差点である場合に、従来の方法で表示される交差点拡大図の一例を示している。この交差点拡大図において、環状交差点のうち破線で示す部分と誘導矢印マーク21の一部は、画面外であるため実際には表示されない。そのため、従来の交差点拡大図からは、次の誘導交差点である環状交差点における進路全体の形状を運転者が把握することはできない。
【0020】
そこで上記の場合、本発明のナビゲーション装置1では、図2のような従来の交差点拡大図に換えて、図3に示すような交差点拡大図を表示する。この交差点拡大図では、対象誘導交差点において車両が進むべき方向を符号20に示す誘導矢印マークによって表している。さらに加えて、誘導矢印マーク20の先には、次の誘導交差点である環状交差点における進路形状を表すために、その進路形状を図案化した環状交差点マーク25が表示される。
【0021】
交差点拡大図に表示される環状交差点マークは、次の誘導交差点である環状交差点における進路形状に応じてその内容が変化する。図3の環状交差点マーク25は、環状交差点を通って進入位置から反対側へと車両が進むときのものを示している。これ以外の進路形状の場合は、たとえば図4に示すような環状交差点マークが表示される。図4(a)は、車両が環状交差点に進入した後、環状交差点を約1/4周して進入位置の右側に進むときの環状交差点マークの例である。図4(b)は、車両が環状交差点を約3/4周してから進入位置の左側に進むときの環状交差点マークの例である。図4(c)は、環状交差点を約7/8周して進入位置の左手前側に進むときの環状交差点マークの例である。なお、ここで説明したものは一例であり、これ以外にも進路形状に応じて様々な環状交差点マークとすることができる。
【0022】
環状交差点には、ラウンドアバウト(roundabout)や、駅前などにあるロータリーなどが含まれる。次の誘導交差点がこのような環状交差点であるか否かは、地図データに記録された道路種別情報に基づいて判断することができる。すなわち、ラウンドアバウトやロータリーなどに該当する道路は、地図データにおいてそのことを示す特定の道路種別情報が予め記録されている。そして、その特定の道路種別情報が記録された道路を推奨経路が通過する場合は、環状交差点であると判断することができる。
【0023】
図5は、次の誘導交差点までの距離が比較的短いときに、従来の方法で表示される交差点拡大図の一例を示している。この交差点拡大図において、破線で示す部分と誘導矢印マーク22は、画面外であるため実際には表示されない。しかし、次の誘導交差点において誘導矢印マーク22に示すように車両が手前側に曲がって進む場合、一旦は画面外となった進行先の道路が再び画面内に入ってくることがある。このように、次の誘導交差点が画面外となる場合であっても、対象誘導交差点から次の誘導交差点までの距離が比較的短い場合には、次の誘導交差点から先の道路が画面内に入ってしまうことがある。
【0024】
そこで上記のような場合、本発明のナビゲーション装置1では、図5のような従来の交差点拡大図に換えて、図6に示すような交差点拡大図を表示する。この図6の交差点拡大図では、次の誘導交差点における進路形状を図案化した交差点マーク26が表示される。交差点マーク26は環状交差点ではなく通常の交差点を表すものであるため、図3で説明した環状交差点マーク25と区別しやすいように、以下の説明ではこれを通常交差点マークと呼ぶこととする。この通常交差点マークも環状交差点マークと同じように、次の誘導交差点における進路形状に応じて図案が様々に変化するが、ここではその具体的な説明は省略する。
【0025】
なお、上記の説明では、次の誘導交差点において車両が手前側に曲がることから一旦画面外となった進行先の道路が再び画面内に入ってくるような場合に、通常交差点マークを交差点拡大図上に表示することとした。しかし、進行先の道路が画面内に入ってこなくても、対象誘導交差点から次の交差点までの距離が比較的短い場合は、同様に通常交差点マークを交差点拡大図に表示することが好ましい。
【0026】
具体的には、次の誘導交差点が交差点拡大図の地図範囲外にあってさらに所定の範囲内にある場合であれば、通常交差点マークを交差点拡大図上に表示する。このとき次の誘導交差点が所定の範囲内にあるか否かは、対象誘導交差点に基づいて判断してもよいし、あるいは、交差点拡大図の地図範囲の境界に基づいて判断してもよい。すなわち、次の誘導交差点が画面外にあり、かつ対象誘導交差点から次の誘導交差点までの距離が所定値以下である場合や、次の誘導交差点が画面外にあり、かつ交差点拡大図の地図範囲の境界から次の誘導交差点までの距離が所定値以下である場合は、図6のように、次の誘導交差点における進路形状を表すための通常交差点マーク26を交差点拡大図上に表示する。
【0027】
以上説明したような交差点拡大図を表示するときにナビゲーション装置1において実行される処理のフローチャートを図7に示す。このフローチャートは、探索された推奨経路にしたがって車両を目的地まで誘導しているときに、制御回路11によって実行される。ステップS10では、車両の現在地から対象誘導交差点までの距離が、予め定められた所定距離以内、たとえば300m以内であるか否かを判定する。このとき、車両の進行方向側の推奨経路上に存在し、車両に最も近い誘導交差点が対象誘導交差点とされる。対象誘導交差点まで所定距離以内となったときに、次のステップS20へ進む。
【0028】
ステップS20では、要約地図を作成する地図範囲、すなわち要約範囲を設定する。ここでは、対象誘導交差点の周囲の所定の地図範囲を要約範囲として設定する。このとき、次の誘導交差点が所定距離以内に隣接している場合は、その二つの誘導交差点を含むように要約範囲を設定する。次のステップS30では、ステップS20で設定された要約範囲内の地図について、要約地図作成処理を行う。これにより、対象誘導交差点付近の道路形状を簡略化した要約地図が作成される。なお、この要約地図作成処理の具体的な内容については後で説明する。
【0029】
ステップS40では、ステップS30によって作成された要約地図を交差点拡大図として表示モニタ16に画面表示する。これにより、対象誘導交差点の形状が交差点拡大図に表される。次のステップS50では、ステップS40で表示した要約地図上に、その誘導交差点において車両が曲がるべき方向を示した誘導矢印マークを表示する。これにより、図3や図6に示す誘導矢印マーク20が表示される。
【0030】
ステップS60では、次の誘導交差点が環状交差点であるか否かを判定する。ここでは、前述のように地図データの道路種別情報に基づいて、次の誘導交差点が環状交差点であるか否かを判定する。環状交差点である場合はステップS61へ進む。ステップS61では、次の誘導交差点における進路形状に合わせて環状交差点マークを選択する。ステップS62では、ステップS61で選択した環状交差点マークを、ステップS40で表示した要約地図の上に表示する。これにより、図3に示す交差点拡大図が表示モニタ16に表示される。ステップS62を実行したら、ステップS80へ進む。一方、ステップS60において次の誘導交差点が環状交差点であると判定されなかった場合は、環状交差点マークを表示せずにステップS70へ進む。
【0031】
ステップS70では、次の誘導交差点が画面外の所定範囲内にあるか否かを判定する。ここでは、次の誘導交差点が所定の範囲内であるか否かを前述したような条件に基づいて判定する。すなわち、対象誘導交差点から次の誘導交差点までの距離が所定値以下である場合や、交差点拡大図の地図範囲、つまりステップS20で設定された要約範囲の境界から、次の誘導交差点までの最短距離が所定値以下である場合は、次の誘導交差点が所定の範囲内であると判定してステップS71へ進む。なお、これらの条件のうち予め定められたいずれか一方が判定条件として用いられる。
【0032】
ステップS70において予め定められた判定条件を満たさず、次の誘導交差点が画面外の所定範囲内にないと判定された場合は、ステップS80へ進む。この場合は環状交差点マークや通常交差点マークは表示されず、従来のような対象誘導交差点のみについての交差点拡大図、または対象誘導交差点と次の誘導交差点を複合した交差点拡大図が表示されることとなる。
【0033】
ステップS71では、次の誘導交差点における進路形状に合わせて通常交差点マークを選択する。ステップS72では、ステップS71で選択した通常交差点マークを、ステップS40で表示した要約地図の上に表示する。これにより、図6に示す交差点拡大図が表示モニタ16に表示される。ステップS72を実行したら、ステップS80へ進む。
【0034】
ステップS80では、対象誘導交差点、すなわちステップS70までの処理によって図3や図6に示すような交差点拡大図が表示モニタ16に表示された誘導交差点を、車両が通過したか否かを判定する。通過した場合は次のステップS90へ進み、その交差点拡大図を表示モニタ16から消去する。なお、表示された交差点拡大図に複数の誘導交差点が含まれている場合は、最後の誘導交差点を通過したときに、ステップS80からS90へと進む。
【0035】
ステップS100では、次の誘導交差点を対象誘導交差点とする。ステップS100を実行したらステップS10へ戻り、上記のような処理を繰り返す。これにより、新たに対象誘導交差点とされた次の誘導交差点についても、車両が所定距離以内に近づくと交差点拡大図が表示され、その次の誘導交差点に対して、環状交差点マークや通常交差点マークが表示される。以上説明したようにして、車両が誘導交差点に近づくたびに、その誘導交差点を対象誘導交差点として交差点拡大図を表示し、さらに次の誘導交差点の形状を運転者に知らせる。
【0036】
なお、以上の説明では、環状交差点マーク25や通常交差点マーク26を用いて次の誘導交差点の形状を表すことにより、図3や図6のような交差点拡大図を表示していたが、代わりに図8のような交差点拡大図を表示してもよい。この交差点拡大図では、符号27に示す省略マークによって対象誘導交差点と次の誘導交差点の間の道路形状を一部省略することにより、対象誘導交差点と次の誘導交差点が一画面内に表示されるようにする。そして、誘導矢印マーク22により、対象誘導交差点と次の誘導交差点における車両の進行方向を交差点拡大図上に示す。このようにしても上記と同様に、車両が誘導交差点に近づくたびに、その誘導交差点を対象誘導交差点として交差点拡大図を表示し、さらに次の誘導交差点の形状を運転者に知らせることができる。
【0037】
次に、ステップS30において実行される要約地図作成処理の内容について説明する。要約地図作成処理では、方向量子化処理と呼ばれる処理を実行することによって各経路の道路形状を簡略化することにより、各経路の要約地図を作成する。この方向量子化処理について、以下に説明する。
【0038】
方向量子化処理では、探索された推奨経路のリンクをそれぞれ所定の分割数で分割した上で、道路形状の簡略化を行う。図9および図10は、いずれもこの方向量子化処理の内容を説明するための詳細説明図であり、図9ではリンク分割数が2(2分割)の場合について、また図10ではリンク分割数が4(4分割)の場合について、それぞれの方向量子化処理の内容を図示している。以下、図9に示す2分割の場合より先に説明を行う。
【0039】
図9(a)の符号30は、探索された経路に含まれているリンクの1つを例示している。このリンク30に対して、(b)に示すように、その両端点の間を結ぶ線分31から最も遠くにあるリンク30上の点32を選択する。なお、ここで選択される点32は前述の形状補間点に相当し、両端点はノードに相当する。
【0040】
上記のような点32が求められたら、次に(c)に示すように、リンク30の両端点のそれぞれと点32とを結ぶ線分33および34を設定する。この線分33と34がそれぞれの基準線に対してなす角度をθ1およびθ2と表す。なお、ここでいう基準線とは、リンク30の両端点から予め決められた所定の方向(たとえば、真北方向)に向かって、それぞれ延びている線のことである。(c)に示すように、一方の端点からの基準線と線分33によって挟まれている部分の角度が、θ1と表される。また、もう一方の端点からの基準線と線分34によって挟まれている部分の角度が、θ2と表される。
【0041】
上記のようにして点32とリンク30の両端点とをそれぞれ結ぶ線分33、34が設定されたら、次に(d)に示すように、この線分33と34の方向をそれぞれ量子化する。ここでいう方向の量子化とは、前述の角度θ1およびθ2が予め設定された単位角度の整数倍にそれぞれなるように、線分33と34を各端点を中心にしてそれぞれ回転させることをいう。すなわち、θ1=m・Δθ、θ2=n・Δθ(n、mは整数)となるように、線分33と34をそれぞれ回転させてθ1とθ2の値を補正する。上記の式においてmとnの値は、この式によって計算される補正後のθ1とθ2がそれぞれ元の値に最も近くなるように設定される。
【0042】
以上説明したように線分33と34の方向をそれぞれ量子化すると、線分33と34が基準線となす角度θ1およびθ2が、単位角度Δθ刻みで補正される。なお図9(d)では、Δθ=15°としている。そして、θ1についてはm=6と設定して補正後の角度を90°にし、θ2についてはn=0と設定して補正後の角度を0°にした例を図示している。
【0043】
こうして線分33と34の方向をそれぞれ量子化したら、次に線分33と34をそれぞれ延長したときの交点を求める。そして、その交点と各端点とを結ぶようにして、(d)に示すように、線分33と34の長さをそれぞれ補正する。
【0044】
以上説明したようにして、線分33と34を求め、これらの方向を量子化すると共に長さを補正することによって、リンク30に対する2分割の場合の方向量子化処理が行われる。この線分33と34をリンク30の代わりに用いることで、リンク30の形状を簡略化して表すことができる。このとき、リンク30の両端点の位置が固定された状態でリンク30の形状が簡略化されるため、隣接するリンクの位置には影響を及ぼさない。したがって、方向量子化処理を用いて経路の各リンク形状をそれぞれ簡略化することにより、経路の全体的な位置関係を保ちつつ、その道路形状を容易に簡略化することができる。
【0045】
次に、4分割の場合の方向量子化処理について説明する。図10(a)の符号40は、図9(a)と同様に、探索された経路に含まれているリンクの1つを例示している。このリンク40に対して、(b)に示すように、まずその両端点の間を結ぶ線分41aから最も遠くにあるリンク40上の点42aを選択する。次に、その点42aとリンク40の各端点とをそれぞれ結ぶ線分41bおよび41cを設定し、この線分41bと41cからそれぞれ最も遠く離れた位置にあるリンク40上の点42bおよび42cを選択する。なお、ここで選択される点42a〜42cは、いずれも2分割の場合と同様に前述のノードまたは形状補間点に相当する。
【0046】
上記のような点42a〜42cが求められたら、次に(c)に示すように、2分割の場合と同様にして、リンク40の各端点と点42a〜42cとをそれぞれ順に結ぶ線分43、44、45および46を設定する。この線分43〜46がそれぞれの基準線に対してなす角度を、θ3、θ4、θ5およびθ6と表す。なお、このときの基準線はリンク40の両端点に対して定められるだけでなく、点42a〜42cのうち真ん中に位置する最初に選択された点42aに対しても定められる。
【0047】
上記のようにして線分43〜46が設定されたら、次に(d)に示すように、各線分の方向をそれぞれ量子化する。このとき、点42aを保存点として、線分44と45はこの保存点42aを中心にそれぞれ回転させる。なお、線分43と46については、2分割の場合と同様に各端点を中心にそれぞれ回転させる。ここでは、Δθ=15°と予め設定し、θ3〜θ6の補正後の角度をそれぞれ60°、45°、180°および60°とした例を図示している。
【0048】
こうして線分43〜46の方向をそれぞれ量子化したら、次に線分43と44をそれぞれ延長したときの交点と、線分45と46をそれぞれ延長したときの交点とを求める。そして、各交点と各端点または保存点42aとを結ぶようにして、(d)に示すように、線分43〜46の長さをそれぞれ補正する。
【0049】
以上説明したようにして、線分43〜46を求め、これらの方向を量子化すると共に長さを補正することによって、リンク40に対する4分割の場合の方向量子化処理が行われる。この線分43〜46をリンク40の代わりに用いることで、リンク40の形状を簡略化して表すことができる。このとき、リンク40の両端点の位置に加えて、さらに保存点42aの位置も固定された状態で、リンク40の形状が簡略化される。したがって、複雑な形状のリンクによって構成されている経路に対しても、その全体的な位置関係を保ちつつ適切に道路形状を簡略化することができる。
【0050】
なお、上記では2分割と4分割の場合の方向量子化処理について説明したが、これ以外の分割数についても同様にして方向量子化処理を実行することができる。たとえば8分割の場合には、まず4分割の場合と同様に、リンクの両端点の間を結ぶ線分から最も遠い1点と、その点と両端点とを結ぶ2つの線分からそれぞれ最も遠い2点を選択する。その後、さらにこれらの3点に両端点を加えた各点間を結ぶ4つの線分からそれぞれ最も遠い4点を選択する。こうして選択された合計7点と両端点とを順に結ぶ8つの線分を求め、これらの線分に対して前述したような方向の量子化と長さの補正を行うことによって、8分割の方向量子化処理を行うことができる。
【0051】
方向量子化処理の分割数をいくつにするかは、予め設定しておいてもよいし、あるいはリンクの形状によって判断してもよい。たとえば、上記のようにして両端点またはそれまでに選択された点の間を結ぶ各線分から最も遠い点を順次選択していくとき、すなわち図9および10の(b)で説明した処理を繰り返していくときに、各線分から最も遠い点までの距離が所定値以下となるまで処理を繰り返して、その処理回数に応じた数の点を順次選択していく。このようにすれば、リンクの形状によって方向量子化処理の分割数を決めることができる。
【0052】
図9で説明した2分割の方向量子化処理において、方向を量子化した後に線分33と34をそれぞれ延長しても、適切な交点がない場合がある。すなわち、方向を量子化した後の線分33と34が平行となっている場合には、これらの線分を延長すると両者が一体化してリンク33の両端点を結ぶ1つの線分となるため、交点が存在しないこととなる。このような場合には、その両端点を直接結ぶ線分、すなわち線分31を用いて、リンク30の形状を簡略化して表すようにすればよい。また、図10で説明した4分割の方向量子化処理や、それ以上の分割数の方向量子化処理において、同様に方向を量子化した後に各線分を延長すると適切な交点がない場合には、それよりも分割数が少ない方向量子化処理を行うようにすればよい。
【0053】
以上説明したような方向量子化処理を各経路の全てのリンクに対して順次実行していくことにより、各経路の道路形状を簡略化して要約地図を作成することができる。なお、リンク単位ではなく、リンクを複数連ねて構成されるリンク列ごとに上記のような方向量子化処理を実行するようにしてもよい。この場合、図9の点32や図10の点42a〜42cとして選択される点には、形状補間点だけでなくノードも含まれることになる。
【0054】
または、要約地図作成処理において、上記の方向量子化処理を実行せずに道路形状を簡略化することもできる。ここでは、各リンク形状を曲線で近似することによって道路形状を簡略化する方法を、図11を参照して説明する。
【0055】
図11(a)には、探索された経路に含まれるリンクの一部として、リンク50、51および52を例示している。これらのリンク50〜52に対して、まず(b)に示すように各リンクの両端点において量子化したリンク方向を求める。ここでは、前述の方向量子化処理において各線分の方向の量子化を行ったのと同様にして、元の角度に最も近くて単位角度の整数倍となるようなリンク方向を求める。その結果、(b)において矢印で示されているようなリンク方向が各端点に対して求められる。
【0056】
次に、(c)に示すように端点の間を結ぶ曲線53、54および55を求めることにより、各リンクの形状を曲線近似する。このとき、各曲線の端点付近における接線の方向が上記の量子化したリンク方向と一致するように、曲線53〜55の形状がそれぞれ決定される。なお、このような曲線を求める方法としては、たとえばスプライン関数を用いたスプライン近似などがあるが、ここでは詳細な説明は省略する。
【0057】
以上説明したような処理を推奨経路の全てのリンクに対して順次実行していき、求められた曲線を用いて道路形状を表すことにより、道路形状を簡略化して要約地図を作成することができる。このときも方向量子化処理の場合と同様に、各リンクの両端点の位置が固定された状態で各リンクの形状が簡略化される。したがってこの場合にも、経路の全体的な位置関係を保ちつつ、その道路形状を容易に簡略化することができる。
【0058】
さらに、作成された要約地図上に各種施設などの位置を示すランドマークを表示する。しかし、道路形状が簡略化されることにより、要約地図における道路の位置は元の地図より変化する。そのため、要約地図上に元の位置のままランドマークを表示したのでは、道路とランドマークとの位置関係を正しく表すことができない。したがって、要約地図上にランドマークを表示する際には、ランドマークの位置補正を行うことが必要となる。その方法について、以下に説明する。
【0059】
図12では、ランドマークの位置補正の概要について説明する。図12(a)に示すように、要約する前の元の地図では、ランドマークの位置と道路との微妙な位置関係が記述されている。この元の地図に対して、上記で説明したような要約地図の作成処理を行い、さらにランドマークの位置をそのままにして表示すると、たとえば(b)に示すような要約地図となる。
【0060】
(b)に示す要約地図では、道路の位置のみが(a)に示す元の地図に対して変化しているため、元のランドマークと道路との位置関係が保たれていない。たとえば、地図の中央付近にある郵便局に着目すると、この郵便局は、(a)に示す元の地図と、(b)に示す要約地図とで、互いに道路の反対側に位置している。そこで、このような不都合を是正するためにランドマークの位置補正を行い、その結果、(c)に示す要約地図のように、道路とランドマークとの位置関係が、元の地図上での位置関係と近似するようにする。
【0061】
次に、図13を用いて、ランドマークの位置補正の詳細アルゴリズムについて説明する。ランドマークの位置補正では、はじめに、図13(a)に示すように、要約前後での形状ベクトル間のペアリストの作成を行う。ここで、要約時に上記に説明したような処理を行うことによって、道路の形状を表す形状ベクトルの構成点数が元のものから変化する。従って、ペアリストを作成するときには、このペアリストで関係付けられた形状ベクトル間の分岐点間の方向性が合致する必要がある。すなわち、要約の前後で、それぞれの分岐点の位置に対して、1対1に対応関係が成立するようにする。
【0062】
このようにしてペアリストを作成したら、その次に(b)に示すように、各形状ベクトルのノルムと、対応する分岐点間の距離の割合を等価にする補正処理を行う。すなわち、要約する前の元の地図において、ランドマークが最近接する形状ベクトルのノルム値と、その形状ベクトルを含む道路経路における、そのランドマークから各分岐点までの距離の割合を測定する。この測定値により、要約後の地図においても、上記のペアリストによって対応付けられる形状ベクトルに対して、そのノルム値と、ランドマークから分岐点間までの距離の割合が等価となるように、ランドマークの位置を計算する。そして、計算した位置にランドマークを表示する。
【0063】
以上説明したランドマークの位置補正では、通常の地図を要約地図に変換することによって道路の形状や距離が変わるので、対応するランドマーク(道沿いにある店等)も道路に合わせて座標を変換する必要がある。そのため、変換前のランドマークの位置についてのパラメータとして、そのランドマークが変換前の道路(リンク)の一方の端から全体の何%のところにあるか、道路のどちら側にあるか、道路から何メートル離れたところにあるかを求める。そして、変換後の対応する道路データに対して、これら3つのパラメータを用いて、変換後のランドマークの位置を決定する。これを、図14に示す具体例を用いて説明する。
【0064】
図14(a)は、要約前の通常の地図におけるランドマーク位置の例を示す。地点Aと地点Bとをつなぐ道路は、地点AとA1の間のリンク61、地点A1とA2の間のリンク62、地点A2とA3の間のリンク63、および地点A3とBの間のリンク64によって構成されており、その道路沿いにランドマーク60が存在している。リンク61〜64のそれぞれの長さは、150m、200m、350mおよび500mであり、これらのリンクによって構成される地点AとBをつなぐ道路は、その合計、すなわち1200mの長さを有している。ランドマーク60は、地点A3から地点Bに向かって200m、すなわち地点Aから900m地点の、道路の左側に位置している。また、ランドマーク60の位置は道路から10m離れている。
【0065】
このような要約前のランドマーク位置について、上記に説明した3つのパラメータを求める。1つ目のパラメータ、すなわち、道路の一方の端(地点A)からの距離の全体距離に対する割合は、900/1200=0.75(75%)と求められる。2つ目のパラメータ、すなわち道路のどちら側にあるかは、地点AからBに向かって道路の左側にあると求められる。3つ目のパラメータ、すなわち道路からの距離は、10mと求められる。
【0066】
図14(b)は、要約後の地図におけるランドマーク位置の例を示す。この要約地図では、地点Aと地点Bとをつなぐ道路は1つのリンク65によって表されており、その長さは1000mである。この要約地図上にランドマーク60を表示するとき、先に求めた3つのパラメータを用いて、変換後の位置を決定する。すなわち、地点Aからの距離は、1つ目のパラメータを用いて、1000×0.75=750mと求められる。また、2つ目のパラメータと3つ目のパラメータにより、地点Aから見て道路(リンク65)の左側であり、その道路から10m離れた位置が決定される。これらの条件を満たす位置にランドマーク60を表示することにより、ランドマーク60の位置補正が行われる。
【0067】
上記に説明したような処理を行うことにより、要約地図においてランドマークの位置が補正され、道路とランドマークとの位置関係を要約前の元の地図に近似させることができる。その結果、図14(a)に示す元の地図のランドマーク位置に対して、要約地図におけるランドマーク位置を図12(c)のようにすることができる。こうして要約地図上にランドマーク位置が表される。
【0068】
以上説明した実施の形態によれば、次の作用効果を奏する。
(1)対象誘導交差点を所定の地図範囲について表した交差点拡大図を地図データに基づいて作成し(ステップS30)、作成された交差点拡大図を表示モニタ16に画面表示する(ステップS40)。そして、その交差点拡大図上に、次の誘導交差点における進路形状を表すための表示マークを表示する(ステップS62、S72)こととした。このようにしたので、誘導交差点の形状を表示した交差点拡大図において、運転者にとって運転操作しやすいように、その誘導交差点を通過する前に次の誘導交差点における車両の進行方向を運転者に知らせることができる。
【0069】
(2)次の誘導交差点が環状交差点である場合、環状交差点マークを表示マークとして表示する(ステップS62)こととした。このようにしたので、次の誘導交差点である環状交差点における進路形状を運転者に分かりやすく伝えることができる。
【0070】
(3)地図データに記録された道路種別情報に基づいて、次の誘導交差点が環状交差点であるか否かを判定する(ステップS60)。そして、次の誘導交差点が環状交差点であると判定された場合は環状交差点マークを表示し(ステップS62)、次の誘導交差点が環状交差点であると判定されなかった場合は環状交差点マークを表示しないこととした。このようにしたので、次の誘導交差点が環状交差点であるか否かを容易に判定し、その判定結果に応じて環状交差点マークを必要に応じて的確に表示することができる。
【0071】
(4)次の誘導交差点が交差点拡大図の地図範囲外にあり、かつ所定の範囲内にある場合、通常交差点マークを表示マークとして表示する(ステップS72)こととした。このようにしたので、次の誘導交差点が通常の交差点であっても、必要に応じて進路形状を運転者に分かりやすく伝えることができる。
【0072】
(5)対象誘導交差点から次の誘導交差点までの距離に基づいて、次の誘導交差点が所定の範囲内にあるか否かを判定する。または、交差点拡大図の地図範囲の境界から次の誘導交差点までの距離に基づいて、次の誘導交差点が所定の範囲内にあるか否かを判定する(ステップS70)。そして、いずれかの方法によって次の誘導交差点が所定の範囲内にあると判定された場合は通常交差点マークを表示し(ステップS72)、次の誘導交差点が所定の範囲内にあると判定されなかった場合は通常交差点マークを表示しないこととした。このようにしたので、次の誘導交差点について通常交差点マークを表示すべきか否かを容易に判定し、その判定結果に応じて環状交差点マークを必要に応じて的確に表示することができる。
【0073】
(6)対象誘導交差点までの距離が予め定められた所定距離以内であるか否かを判定し(ステップS10)、所定距離以内であると判定されると、ステップS20により対象誘導交差点の周囲に設定された所定の地図範囲内の道路形状を簡略化して、要約地図を作成する。ステップS30では、この要約地図に基づいて交差点拡大図を作成することとした。このようにしたので、誘導交差点において進むべき方向がユーザにとって分かりやすい交差点拡大図とすることができる。
【0074】
なお、上記の実施の形態では、要約地図を用いた交差点拡大図における適用例を説明したが、要約しない通常の地図を用いた交差点拡大図においても適用できる。
【0075】
以上説明した各実施の形態や各種の変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されない。
【0076】
上記の実施の形態では、制御回路11の処理により本発明の各手段を実現している。具体的には、距離判定手段をステップS10、要約地図作成手段および交差点拡大図作成手段をステップS30、交差点拡大図表示手段をステップS40、マーク表示手段をステップS62およびS72によってそれぞれ実現している。また、第1の判定手段をステップS60、第2の判定手段をステップS70によってそれぞれ実現している。なお、以上の説明はあくまで一例であり、発明を解釈する際、上記の実施形態の記載事項と特許請求の範囲の記載事項の対応関係には何ら限定も拘束もされない。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の一実施形態によるナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【図2】次の誘導交差点が環状交差点である場合に従来の方法で表示される交差点拡大図の例である。
【図3】本発明において図2の代わりに表示される交差点拡大図の例である。
【図4】他の環状交差点マークの例である。
【図5】次の誘導交差点までの距離が比較的短いときに従来の方法で表示される交差点拡大図の例である。
【図6】本発明において図5の代わりに表示される交差点拡大図の例である。
【図7】交差点拡大図を表示するときに実行されるフローチャートである。
【図8】他の交差点拡大図の例である。
【図9】要約地図を作成するときに利用される2分割の場合の方向量子化処理の内容を説明するための図である。
【図10】同じく4分割の場合の方向量子化処理の内容を説明するための図である。
【図11】各リンク形状を曲線で近似することによって各経路の道路形状を簡略化する方法を説明するための図である。
【図12】ランドマークの位置補正の概要の説明図である。
【図13】ランドマークの位置補正の詳細アルゴリズムの説明図である。
【図14】ランドマークの位置補正の具体例を示す図である。
【符号の説明】
【0078】
1 ナビゲーション装置
11 制御回路
12 ROM
13 RAM
14 現在地検出装置
15 画像メモリ
16 表示モニタ
17 入力装置
18 ディスクドライブ
19 DVD−ROM
25 環状交差点マーク
26 通常交差点マーク
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、目的地までの経路を設定し、その経路を地図上に表示したり、経路に沿って曲がるべき交差点(誘導交差点)における車両の進行方向を音声や画面表示などによって運転者に指示したりすることにより、車両を目的地まで案内するナビゲーション装置が知られている。このようなナビゲーション装置において、3つ以上の誘導交差点が隣接している場合は、最も距離が近い2つの誘導交差点を複合してその形状を表示し、その上に車両の進行方向を矢印で示すことにより、運転者にとって分かりやすく運転指示するものが知られている(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−59731号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるナビゲーション装置では、最も距離が近い2つの誘導交差点のみが複合され、それ以外の誘導交差点は複合されずに単独でその形状が表示される。したがって、単独で誘導交差点の形状が表示される場合、その誘導交差点を通過するまでは、次の誘導交差点における車両の進行方向を運転者に知らせることができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明によるナビゲーション装置は、設定された推奨経路において曲がるべき対象誘導交差点を所定の地図範囲について表した交差点拡大図を地図データに基づいて作成する交差点拡大図作成手段と、交差点拡大図作成手段により作成された交差点拡大図を表示モニタに画面表示する交差点拡大図表示手段と、対象誘導交差点の次の誘導交差点における進路形状を表すための表示マークを表示モニタに画面表示された交差点拡大図上に表示するマーク表示手段とを備えるものである。
請求項2の発明は、請求項1のナビゲーション装置において、マーク表示手段は、次の誘導交差点が環状交差点である場合、次の誘導交差点における進路形状を表すための環状交差点マークを表示マークとして表示するものである。
請求項3の発明は、請求項2のナビゲーション装置において、地図データに記録された道路種別情報に基づいて、次の誘導交差点が環状交差点であるか否かを判定する第1の判定手段をさらに備え、マーク表示手段は、第1の判定手段により次の誘導交差点が環状交差点であると判定されなかった場合は環状交差点マークを表示しないこととするものである。
請求項4の発明は、請求項1のナビゲーション装置において、マーク表示手段は、次の誘導交差点が交差点拡大図の地図範囲外にあり、かつ所定の範囲内にある場合、次の誘導交差点における進路形状を表すための通常交差点マークを表示マークとして表示するものである。
請求項5の発明は、請求項4のナビゲーション装置において、対象誘導交差点から次の誘導交差点までの距離に基づいて、次の誘導交差点が所定の範囲内にあるか否かを判定する第2の判定手段をさらに備え、マーク表示手段は、第2の判定手段により次の誘導交差点が所定の範囲内にあると判定されなかった場合は通常交差点マークを表示しないこととするものである。
請求項6の発明は、請求項4のナビゲーション装置において、交差点拡大図の地図範囲の境界から次の誘導交差点までの距離に基づいて、次の誘導交差点が所定の範囲内にあるか否かを判定する第2の判定手段をさらに備え、マーク表示手段は、第2の判定手段により次の誘導交差点が所定の範囲内にあると判定されなかった場合は通常交差点マークを表示しないこととするものである。
請求項7の発明は、請求項1〜6いずれか一項のナビゲーション装置において、対象誘導交差点までの距離が予め定められた所定距離以内であるか否かを判定する距離判定手段と、距離判定手段により対象誘導交差点までの距離が所定距離以内であると判定されると、所定の地図範囲内の道路形状を簡略化して要約地図を作成する要約地図作成手段とをさらに備え、交差点拡大図作成手段は、要約地図作成手段により作成された要約地図に基づいて交差点拡大図を作成するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、誘導交差点の形状を表示した交差点拡大図において、運転者にとって運転操作しやすいように、その誘導交差点を通過する前に次の誘導交差点における車両の進行方向を運転者に知らせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の一実施形態によるナビゲーション装置の構成を図1に示す。このナビゲーション装置は車両に搭載されて使用されるものであり、設定された目的地までの推奨経路を探索し、探索された推奨経路に従って車両を目的地まで誘導する。このとき、車両が次に曲がるべき誘導交差点に近づくと、その誘導交差点の周囲について通常の地図を基に道路形状を簡略化することにより、通常の地図を要約した要約地図を作成し、交差点拡大図として表示する。この交差点拡大図において曲がるべき方向を矢印で示すことにより、ユーザが車両の進行方向を一目で理解できるようにする。
【0008】
図1に示すナビゲーション装置1は、制御回路11、ROM12、RAM13、現在地検出装置14、画像メモリ15、表示モニタ16、入力装置17およびディスクドライブ18を有している。ディスクドライブ18には、地図データが記録されたDVD−ROM19が装填される。
【0009】
制御回路11は、マイクロプロセッサおよびその周辺回路からなり、RAM13を作業エリアとしてROM12に格納された制御プログラムを実行することにより、各種の処理や制御を行う。この制御回路11において実行される処理により、たとえば、DVD−ROM19に記録された地図データに基づいて目的地までの推奨経路が探索される。また、後で説明するようにして誘導交差点の周囲の要約地図が作成され、交差点拡大図として表示モニタ16に表示される。
【0010】
現在地検出装置14は、自車両の現在地を検出する装置であり、たとえば、自車両の進行方向を検出する振動ジャイロ14a、車速を検出する車速センサ14b、GPS衛星からのGPS信号を検出するGPSセンサ14c等からなる。ナビゲーション装置1は、この現在地検出装置14により検出された自車両の現在地に基づいて、推奨経路を探索するときの経路探索開始点を決定することができる。
【0011】
画像メモリ15は、表示モニタ16に表示するための画像データを一時的に格納する。この画像データは、要約地図を画像表示するための道路地図描画用データや各種の図形データ等からなり、制御回路11において、DVD−ROM19に記録されている地図データに基づいて作成される。この画像メモリ15に格納された画像データを用いて、通常の地図や交差点拡大図などの各種の画像が表示モニタ16に表示される。
【0012】
入力装置17は、ユーザが目的地の設定などを行うための各種入力スイッチを有し、これは操作パネルやリモコンなどによって実現される。ユーザは、表示モニタ16に表示される画面指示に従って入力装置17を操作することにより、地名や地図上の位置、施設名などを指定して目的地を設定し、その目的地までの経路探索をナビゲーション装置1に開始させることができる。
【0013】
ディスクドライブ18は、通常の地図を表示モニタ16に表示したり、誘導交差点付近の要約地図を作成したりするための地図データを、装填されたDVD−ROM19より読み出す。なお、ここではDVD−ROMを用いた例について説明しているが、DVD−ROM以外の他の記録メディア、たとえばCD−ROMやハードディスクなどより、地図データを読み出すこととしてもよい。この地図データには、推奨経路を演算するために用いられる経路計算データや、交差点名称、道路名称など、推奨経路に従って自車両を目的地まで案内するために用いられる経路誘導データ、道路を表す道路データ、さらには海岸線や河川、鉄道、地図上の各種施設(ランドマーク)など、道路以外の地図形状を表す背景データなどが含まれている。
【0014】
道路データにおいて、道路区間を表す最小単位はリンクと呼ばれている。すなわち、各道路は所定の道路区間ごとに設定された複数のリンクによって構成されている。なお、リンクによって設定される道路区間の長さは異なっており、リンクの長さは一定ではない。リンク同士を接続している点はノードと呼ばれ、このノードはそれぞれに位置情報(座標情報)を有している。また、リンク内にはノードとノードの間に形状補間点と呼ばれる点が設定されていることもある。形状補間点もノードと同じく、それぞれに位置情報(座標情報)を有している。このノードと形状補間点の位置情報によって、リンク形状、すなわち道路の形状が決定される。経路計算データには、上記の各リンクに対応して、自車両の通過所要時間を表すためのリンクコストと呼ばれる値が設定されている。
【0015】
ユーザによる入力装置17の操作に応じて前述のように目的地が設定されると、現在地検出装置14により検出された現在地を経路探索開始点として、設定された目的地までの経路演算が経路計算データに基づいて所定のアルゴリズムにより行われ、目的地までの推奨経路が求められる。そして、求められた推奨経路がその表示形態、たとえば表示色などを変えることにより、他の道路とは区別して、表示モニタ16に表示された地図上に表される。これにより、ユーザはどの道路が経路に設定されているかを地図上で認識することができる。
【0016】
上記のようにして推奨経路が求められた後に、車両が推奨経路上にある誘導交差点に近づくと、その誘導交差点を含む所定の地図範囲について要約地図が作成される。そして、その要約地図の上に、車両が曲がるべき方向を示すための矢印が重ね合わされ、交差点拡大図として表示モニタ16に表示される。このように要約地図に基づいて作成され、表示モニタ16に表示された交差点拡大図にしたがって、車両が目的地まで誘導される。以下の説明では、交差点拡大図が表示される誘導交差点のことを対象誘導交差点と称する。なお、要約地図の具体的な作成方法については後で説明する。
【0017】
さらに、交差点拡大図が表示される対象誘導交差点と、その対象誘導交差点の次に推奨経路上に存在する誘導交差点(以下、このような誘導交差点を単に「次の誘導交差点」と称する)との間の距離が所定距離以下である場合は、対象誘導交差点と次の誘導交差点とを複合して一画面内に表示されるようにした交差点拡大図を表示する。こうして表示される交差点拡大図は、複合交差点拡大図と呼ばれる。このような複合交差点拡大図を表示することにより、運転者は対象誘導交差点の手前において、次の誘導交差点で曲がるべき方向を知ることができる。そのため、従来のように対象誘導交差点を通過した後に次の誘導交差点の進行方向を表示する場合と比べて、運転者が慌てて運転操作する必要がない。
【0018】
以上説明したような複合交差点拡大図が表示されない場合であっても、次の誘導交差点が環状交差点のように特殊な交差点である場合や、次の誘導交差点までの距離が比較的短い場合は、次の誘導交差点における進路の形状を表すための表示マークを交差点拡大図上に表示する。この点について、以下に図面を参照して詳しく説明する。
【0019】
図2は、次の誘導交差点が環状交差点である場合に、従来の方法で表示される交差点拡大図の一例を示している。この交差点拡大図において、環状交差点のうち破線で示す部分と誘導矢印マーク21の一部は、画面外であるため実際には表示されない。そのため、従来の交差点拡大図からは、次の誘導交差点である環状交差点における進路全体の形状を運転者が把握することはできない。
【0020】
そこで上記の場合、本発明のナビゲーション装置1では、図2のような従来の交差点拡大図に換えて、図3に示すような交差点拡大図を表示する。この交差点拡大図では、対象誘導交差点において車両が進むべき方向を符号20に示す誘導矢印マークによって表している。さらに加えて、誘導矢印マーク20の先には、次の誘導交差点である環状交差点における進路形状を表すために、その進路形状を図案化した環状交差点マーク25が表示される。
【0021】
交差点拡大図に表示される環状交差点マークは、次の誘導交差点である環状交差点における進路形状に応じてその内容が変化する。図3の環状交差点マーク25は、環状交差点を通って進入位置から反対側へと車両が進むときのものを示している。これ以外の進路形状の場合は、たとえば図4に示すような環状交差点マークが表示される。図4(a)は、車両が環状交差点に進入した後、環状交差点を約1/4周して進入位置の右側に進むときの環状交差点マークの例である。図4(b)は、車両が環状交差点を約3/4周してから進入位置の左側に進むときの環状交差点マークの例である。図4(c)は、環状交差点を約7/8周して進入位置の左手前側に進むときの環状交差点マークの例である。なお、ここで説明したものは一例であり、これ以外にも進路形状に応じて様々な環状交差点マークとすることができる。
【0022】
環状交差点には、ラウンドアバウト(roundabout)や、駅前などにあるロータリーなどが含まれる。次の誘導交差点がこのような環状交差点であるか否かは、地図データに記録された道路種別情報に基づいて判断することができる。すなわち、ラウンドアバウトやロータリーなどに該当する道路は、地図データにおいてそのことを示す特定の道路種別情報が予め記録されている。そして、その特定の道路種別情報が記録された道路を推奨経路が通過する場合は、環状交差点であると判断することができる。
【0023】
図5は、次の誘導交差点までの距離が比較的短いときに、従来の方法で表示される交差点拡大図の一例を示している。この交差点拡大図において、破線で示す部分と誘導矢印マーク22は、画面外であるため実際には表示されない。しかし、次の誘導交差点において誘導矢印マーク22に示すように車両が手前側に曲がって進む場合、一旦は画面外となった進行先の道路が再び画面内に入ってくることがある。このように、次の誘導交差点が画面外となる場合であっても、対象誘導交差点から次の誘導交差点までの距離が比較的短い場合には、次の誘導交差点から先の道路が画面内に入ってしまうことがある。
【0024】
そこで上記のような場合、本発明のナビゲーション装置1では、図5のような従来の交差点拡大図に換えて、図6に示すような交差点拡大図を表示する。この図6の交差点拡大図では、次の誘導交差点における進路形状を図案化した交差点マーク26が表示される。交差点マーク26は環状交差点ではなく通常の交差点を表すものであるため、図3で説明した環状交差点マーク25と区別しやすいように、以下の説明ではこれを通常交差点マークと呼ぶこととする。この通常交差点マークも環状交差点マークと同じように、次の誘導交差点における進路形状に応じて図案が様々に変化するが、ここではその具体的な説明は省略する。
【0025】
なお、上記の説明では、次の誘導交差点において車両が手前側に曲がることから一旦画面外となった進行先の道路が再び画面内に入ってくるような場合に、通常交差点マークを交差点拡大図上に表示することとした。しかし、進行先の道路が画面内に入ってこなくても、対象誘導交差点から次の交差点までの距離が比較的短い場合は、同様に通常交差点マークを交差点拡大図に表示することが好ましい。
【0026】
具体的には、次の誘導交差点が交差点拡大図の地図範囲外にあってさらに所定の範囲内にある場合であれば、通常交差点マークを交差点拡大図上に表示する。このとき次の誘導交差点が所定の範囲内にあるか否かは、対象誘導交差点に基づいて判断してもよいし、あるいは、交差点拡大図の地図範囲の境界に基づいて判断してもよい。すなわち、次の誘導交差点が画面外にあり、かつ対象誘導交差点から次の誘導交差点までの距離が所定値以下である場合や、次の誘導交差点が画面外にあり、かつ交差点拡大図の地図範囲の境界から次の誘導交差点までの距離が所定値以下である場合は、図6のように、次の誘導交差点における進路形状を表すための通常交差点マーク26を交差点拡大図上に表示する。
【0027】
以上説明したような交差点拡大図を表示するときにナビゲーション装置1において実行される処理のフローチャートを図7に示す。このフローチャートは、探索された推奨経路にしたがって車両を目的地まで誘導しているときに、制御回路11によって実行される。ステップS10では、車両の現在地から対象誘導交差点までの距離が、予め定められた所定距離以内、たとえば300m以内であるか否かを判定する。このとき、車両の進行方向側の推奨経路上に存在し、車両に最も近い誘導交差点が対象誘導交差点とされる。対象誘導交差点まで所定距離以内となったときに、次のステップS20へ進む。
【0028】
ステップS20では、要約地図を作成する地図範囲、すなわち要約範囲を設定する。ここでは、対象誘導交差点の周囲の所定の地図範囲を要約範囲として設定する。このとき、次の誘導交差点が所定距離以内に隣接している場合は、その二つの誘導交差点を含むように要約範囲を設定する。次のステップS30では、ステップS20で設定された要約範囲内の地図について、要約地図作成処理を行う。これにより、対象誘導交差点付近の道路形状を簡略化した要約地図が作成される。なお、この要約地図作成処理の具体的な内容については後で説明する。
【0029】
ステップS40では、ステップS30によって作成された要約地図を交差点拡大図として表示モニタ16に画面表示する。これにより、対象誘導交差点の形状が交差点拡大図に表される。次のステップS50では、ステップS40で表示した要約地図上に、その誘導交差点において車両が曲がるべき方向を示した誘導矢印マークを表示する。これにより、図3や図6に示す誘導矢印マーク20が表示される。
【0030】
ステップS60では、次の誘導交差点が環状交差点であるか否かを判定する。ここでは、前述のように地図データの道路種別情報に基づいて、次の誘導交差点が環状交差点であるか否かを判定する。環状交差点である場合はステップS61へ進む。ステップS61では、次の誘導交差点における進路形状に合わせて環状交差点マークを選択する。ステップS62では、ステップS61で選択した環状交差点マークを、ステップS40で表示した要約地図の上に表示する。これにより、図3に示す交差点拡大図が表示モニタ16に表示される。ステップS62を実行したら、ステップS80へ進む。一方、ステップS60において次の誘導交差点が環状交差点であると判定されなかった場合は、環状交差点マークを表示せずにステップS70へ進む。
【0031】
ステップS70では、次の誘導交差点が画面外の所定範囲内にあるか否かを判定する。ここでは、次の誘導交差点が所定の範囲内であるか否かを前述したような条件に基づいて判定する。すなわち、対象誘導交差点から次の誘導交差点までの距離が所定値以下である場合や、交差点拡大図の地図範囲、つまりステップS20で設定された要約範囲の境界から、次の誘導交差点までの最短距離が所定値以下である場合は、次の誘導交差点が所定の範囲内であると判定してステップS71へ進む。なお、これらの条件のうち予め定められたいずれか一方が判定条件として用いられる。
【0032】
ステップS70において予め定められた判定条件を満たさず、次の誘導交差点が画面外の所定範囲内にないと判定された場合は、ステップS80へ進む。この場合は環状交差点マークや通常交差点マークは表示されず、従来のような対象誘導交差点のみについての交差点拡大図、または対象誘導交差点と次の誘導交差点を複合した交差点拡大図が表示されることとなる。
【0033】
ステップS71では、次の誘導交差点における進路形状に合わせて通常交差点マークを選択する。ステップS72では、ステップS71で選択した通常交差点マークを、ステップS40で表示した要約地図の上に表示する。これにより、図6に示す交差点拡大図が表示モニタ16に表示される。ステップS72を実行したら、ステップS80へ進む。
【0034】
ステップS80では、対象誘導交差点、すなわちステップS70までの処理によって図3や図6に示すような交差点拡大図が表示モニタ16に表示された誘導交差点を、車両が通過したか否かを判定する。通過した場合は次のステップS90へ進み、その交差点拡大図を表示モニタ16から消去する。なお、表示された交差点拡大図に複数の誘導交差点が含まれている場合は、最後の誘導交差点を通過したときに、ステップS80からS90へと進む。
【0035】
ステップS100では、次の誘導交差点を対象誘導交差点とする。ステップS100を実行したらステップS10へ戻り、上記のような処理を繰り返す。これにより、新たに対象誘導交差点とされた次の誘導交差点についても、車両が所定距離以内に近づくと交差点拡大図が表示され、その次の誘導交差点に対して、環状交差点マークや通常交差点マークが表示される。以上説明したようにして、車両が誘導交差点に近づくたびに、その誘導交差点を対象誘導交差点として交差点拡大図を表示し、さらに次の誘導交差点の形状を運転者に知らせる。
【0036】
なお、以上の説明では、環状交差点マーク25や通常交差点マーク26を用いて次の誘導交差点の形状を表すことにより、図3や図6のような交差点拡大図を表示していたが、代わりに図8のような交差点拡大図を表示してもよい。この交差点拡大図では、符号27に示す省略マークによって対象誘導交差点と次の誘導交差点の間の道路形状を一部省略することにより、対象誘導交差点と次の誘導交差点が一画面内に表示されるようにする。そして、誘導矢印マーク22により、対象誘導交差点と次の誘導交差点における車両の進行方向を交差点拡大図上に示す。このようにしても上記と同様に、車両が誘導交差点に近づくたびに、その誘導交差点を対象誘導交差点として交差点拡大図を表示し、さらに次の誘導交差点の形状を運転者に知らせることができる。
【0037】
次に、ステップS30において実行される要約地図作成処理の内容について説明する。要約地図作成処理では、方向量子化処理と呼ばれる処理を実行することによって各経路の道路形状を簡略化することにより、各経路の要約地図を作成する。この方向量子化処理について、以下に説明する。
【0038】
方向量子化処理では、探索された推奨経路のリンクをそれぞれ所定の分割数で分割した上で、道路形状の簡略化を行う。図9および図10は、いずれもこの方向量子化処理の内容を説明するための詳細説明図であり、図9ではリンク分割数が2(2分割)の場合について、また図10ではリンク分割数が4(4分割)の場合について、それぞれの方向量子化処理の内容を図示している。以下、図9に示す2分割の場合より先に説明を行う。
【0039】
図9(a)の符号30は、探索された経路に含まれているリンクの1つを例示している。このリンク30に対して、(b)に示すように、その両端点の間を結ぶ線分31から最も遠くにあるリンク30上の点32を選択する。なお、ここで選択される点32は前述の形状補間点に相当し、両端点はノードに相当する。
【0040】
上記のような点32が求められたら、次に(c)に示すように、リンク30の両端点のそれぞれと点32とを結ぶ線分33および34を設定する。この線分33と34がそれぞれの基準線に対してなす角度をθ1およびθ2と表す。なお、ここでいう基準線とは、リンク30の両端点から予め決められた所定の方向(たとえば、真北方向)に向かって、それぞれ延びている線のことである。(c)に示すように、一方の端点からの基準線と線分33によって挟まれている部分の角度が、θ1と表される。また、もう一方の端点からの基準線と線分34によって挟まれている部分の角度が、θ2と表される。
【0041】
上記のようにして点32とリンク30の両端点とをそれぞれ結ぶ線分33、34が設定されたら、次に(d)に示すように、この線分33と34の方向をそれぞれ量子化する。ここでいう方向の量子化とは、前述の角度θ1およびθ2が予め設定された単位角度の整数倍にそれぞれなるように、線分33と34を各端点を中心にしてそれぞれ回転させることをいう。すなわち、θ1=m・Δθ、θ2=n・Δθ(n、mは整数)となるように、線分33と34をそれぞれ回転させてθ1とθ2の値を補正する。上記の式においてmとnの値は、この式によって計算される補正後のθ1とθ2がそれぞれ元の値に最も近くなるように設定される。
【0042】
以上説明したように線分33と34の方向をそれぞれ量子化すると、線分33と34が基準線となす角度θ1およびθ2が、単位角度Δθ刻みで補正される。なお図9(d)では、Δθ=15°としている。そして、θ1についてはm=6と設定して補正後の角度を90°にし、θ2についてはn=0と設定して補正後の角度を0°にした例を図示している。
【0043】
こうして線分33と34の方向をそれぞれ量子化したら、次に線分33と34をそれぞれ延長したときの交点を求める。そして、その交点と各端点とを結ぶようにして、(d)に示すように、線分33と34の長さをそれぞれ補正する。
【0044】
以上説明したようにして、線分33と34を求め、これらの方向を量子化すると共に長さを補正することによって、リンク30に対する2分割の場合の方向量子化処理が行われる。この線分33と34をリンク30の代わりに用いることで、リンク30の形状を簡略化して表すことができる。このとき、リンク30の両端点の位置が固定された状態でリンク30の形状が簡略化されるため、隣接するリンクの位置には影響を及ぼさない。したがって、方向量子化処理を用いて経路の各リンク形状をそれぞれ簡略化することにより、経路の全体的な位置関係を保ちつつ、その道路形状を容易に簡略化することができる。
【0045】
次に、4分割の場合の方向量子化処理について説明する。図10(a)の符号40は、図9(a)と同様に、探索された経路に含まれているリンクの1つを例示している。このリンク40に対して、(b)に示すように、まずその両端点の間を結ぶ線分41aから最も遠くにあるリンク40上の点42aを選択する。次に、その点42aとリンク40の各端点とをそれぞれ結ぶ線分41bおよび41cを設定し、この線分41bと41cからそれぞれ最も遠く離れた位置にあるリンク40上の点42bおよび42cを選択する。なお、ここで選択される点42a〜42cは、いずれも2分割の場合と同様に前述のノードまたは形状補間点に相当する。
【0046】
上記のような点42a〜42cが求められたら、次に(c)に示すように、2分割の場合と同様にして、リンク40の各端点と点42a〜42cとをそれぞれ順に結ぶ線分43、44、45および46を設定する。この線分43〜46がそれぞれの基準線に対してなす角度を、θ3、θ4、θ5およびθ6と表す。なお、このときの基準線はリンク40の両端点に対して定められるだけでなく、点42a〜42cのうち真ん中に位置する最初に選択された点42aに対しても定められる。
【0047】
上記のようにして線分43〜46が設定されたら、次に(d)に示すように、各線分の方向をそれぞれ量子化する。このとき、点42aを保存点として、線分44と45はこの保存点42aを中心にそれぞれ回転させる。なお、線分43と46については、2分割の場合と同様に各端点を中心にそれぞれ回転させる。ここでは、Δθ=15°と予め設定し、θ3〜θ6の補正後の角度をそれぞれ60°、45°、180°および60°とした例を図示している。
【0048】
こうして線分43〜46の方向をそれぞれ量子化したら、次に線分43と44をそれぞれ延長したときの交点と、線分45と46をそれぞれ延長したときの交点とを求める。そして、各交点と各端点または保存点42aとを結ぶようにして、(d)に示すように、線分43〜46の長さをそれぞれ補正する。
【0049】
以上説明したようにして、線分43〜46を求め、これらの方向を量子化すると共に長さを補正することによって、リンク40に対する4分割の場合の方向量子化処理が行われる。この線分43〜46をリンク40の代わりに用いることで、リンク40の形状を簡略化して表すことができる。このとき、リンク40の両端点の位置に加えて、さらに保存点42aの位置も固定された状態で、リンク40の形状が簡略化される。したがって、複雑な形状のリンクによって構成されている経路に対しても、その全体的な位置関係を保ちつつ適切に道路形状を簡略化することができる。
【0050】
なお、上記では2分割と4分割の場合の方向量子化処理について説明したが、これ以外の分割数についても同様にして方向量子化処理を実行することができる。たとえば8分割の場合には、まず4分割の場合と同様に、リンクの両端点の間を結ぶ線分から最も遠い1点と、その点と両端点とを結ぶ2つの線分からそれぞれ最も遠い2点を選択する。その後、さらにこれらの3点に両端点を加えた各点間を結ぶ4つの線分からそれぞれ最も遠い4点を選択する。こうして選択された合計7点と両端点とを順に結ぶ8つの線分を求め、これらの線分に対して前述したような方向の量子化と長さの補正を行うことによって、8分割の方向量子化処理を行うことができる。
【0051】
方向量子化処理の分割数をいくつにするかは、予め設定しておいてもよいし、あるいはリンクの形状によって判断してもよい。たとえば、上記のようにして両端点またはそれまでに選択された点の間を結ぶ各線分から最も遠い点を順次選択していくとき、すなわち図9および10の(b)で説明した処理を繰り返していくときに、各線分から最も遠い点までの距離が所定値以下となるまで処理を繰り返して、その処理回数に応じた数の点を順次選択していく。このようにすれば、リンクの形状によって方向量子化処理の分割数を決めることができる。
【0052】
図9で説明した2分割の方向量子化処理において、方向を量子化した後に線分33と34をそれぞれ延長しても、適切な交点がない場合がある。すなわち、方向を量子化した後の線分33と34が平行となっている場合には、これらの線分を延長すると両者が一体化してリンク33の両端点を結ぶ1つの線分となるため、交点が存在しないこととなる。このような場合には、その両端点を直接結ぶ線分、すなわち線分31を用いて、リンク30の形状を簡略化して表すようにすればよい。また、図10で説明した4分割の方向量子化処理や、それ以上の分割数の方向量子化処理において、同様に方向を量子化した後に各線分を延長すると適切な交点がない場合には、それよりも分割数が少ない方向量子化処理を行うようにすればよい。
【0053】
以上説明したような方向量子化処理を各経路の全てのリンクに対して順次実行していくことにより、各経路の道路形状を簡略化して要約地図を作成することができる。なお、リンク単位ではなく、リンクを複数連ねて構成されるリンク列ごとに上記のような方向量子化処理を実行するようにしてもよい。この場合、図9の点32や図10の点42a〜42cとして選択される点には、形状補間点だけでなくノードも含まれることになる。
【0054】
または、要約地図作成処理において、上記の方向量子化処理を実行せずに道路形状を簡略化することもできる。ここでは、各リンク形状を曲線で近似することによって道路形状を簡略化する方法を、図11を参照して説明する。
【0055】
図11(a)には、探索された経路に含まれるリンクの一部として、リンク50、51および52を例示している。これらのリンク50〜52に対して、まず(b)に示すように各リンクの両端点において量子化したリンク方向を求める。ここでは、前述の方向量子化処理において各線分の方向の量子化を行ったのと同様にして、元の角度に最も近くて単位角度の整数倍となるようなリンク方向を求める。その結果、(b)において矢印で示されているようなリンク方向が各端点に対して求められる。
【0056】
次に、(c)に示すように端点の間を結ぶ曲線53、54および55を求めることにより、各リンクの形状を曲線近似する。このとき、各曲線の端点付近における接線の方向が上記の量子化したリンク方向と一致するように、曲線53〜55の形状がそれぞれ決定される。なお、このような曲線を求める方法としては、たとえばスプライン関数を用いたスプライン近似などがあるが、ここでは詳細な説明は省略する。
【0057】
以上説明したような処理を推奨経路の全てのリンクに対して順次実行していき、求められた曲線を用いて道路形状を表すことにより、道路形状を簡略化して要約地図を作成することができる。このときも方向量子化処理の場合と同様に、各リンクの両端点の位置が固定された状態で各リンクの形状が簡略化される。したがってこの場合にも、経路の全体的な位置関係を保ちつつ、その道路形状を容易に簡略化することができる。
【0058】
さらに、作成された要約地図上に各種施設などの位置を示すランドマークを表示する。しかし、道路形状が簡略化されることにより、要約地図における道路の位置は元の地図より変化する。そのため、要約地図上に元の位置のままランドマークを表示したのでは、道路とランドマークとの位置関係を正しく表すことができない。したがって、要約地図上にランドマークを表示する際には、ランドマークの位置補正を行うことが必要となる。その方法について、以下に説明する。
【0059】
図12では、ランドマークの位置補正の概要について説明する。図12(a)に示すように、要約する前の元の地図では、ランドマークの位置と道路との微妙な位置関係が記述されている。この元の地図に対して、上記で説明したような要約地図の作成処理を行い、さらにランドマークの位置をそのままにして表示すると、たとえば(b)に示すような要約地図となる。
【0060】
(b)に示す要約地図では、道路の位置のみが(a)に示す元の地図に対して変化しているため、元のランドマークと道路との位置関係が保たれていない。たとえば、地図の中央付近にある郵便局に着目すると、この郵便局は、(a)に示す元の地図と、(b)に示す要約地図とで、互いに道路の反対側に位置している。そこで、このような不都合を是正するためにランドマークの位置補正を行い、その結果、(c)に示す要約地図のように、道路とランドマークとの位置関係が、元の地図上での位置関係と近似するようにする。
【0061】
次に、図13を用いて、ランドマークの位置補正の詳細アルゴリズムについて説明する。ランドマークの位置補正では、はじめに、図13(a)に示すように、要約前後での形状ベクトル間のペアリストの作成を行う。ここで、要約時に上記に説明したような処理を行うことによって、道路の形状を表す形状ベクトルの構成点数が元のものから変化する。従って、ペアリストを作成するときには、このペアリストで関係付けられた形状ベクトル間の分岐点間の方向性が合致する必要がある。すなわち、要約の前後で、それぞれの分岐点の位置に対して、1対1に対応関係が成立するようにする。
【0062】
このようにしてペアリストを作成したら、その次に(b)に示すように、各形状ベクトルのノルムと、対応する分岐点間の距離の割合を等価にする補正処理を行う。すなわち、要約する前の元の地図において、ランドマークが最近接する形状ベクトルのノルム値と、その形状ベクトルを含む道路経路における、そのランドマークから各分岐点までの距離の割合を測定する。この測定値により、要約後の地図においても、上記のペアリストによって対応付けられる形状ベクトルに対して、そのノルム値と、ランドマークから分岐点間までの距離の割合が等価となるように、ランドマークの位置を計算する。そして、計算した位置にランドマークを表示する。
【0063】
以上説明したランドマークの位置補正では、通常の地図を要約地図に変換することによって道路の形状や距離が変わるので、対応するランドマーク(道沿いにある店等)も道路に合わせて座標を変換する必要がある。そのため、変換前のランドマークの位置についてのパラメータとして、そのランドマークが変換前の道路(リンク)の一方の端から全体の何%のところにあるか、道路のどちら側にあるか、道路から何メートル離れたところにあるかを求める。そして、変換後の対応する道路データに対して、これら3つのパラメータを用いて、変換後のランドマークの位置を決定する。これを、図14に示す具体例を用いて説明する。
【0064】
図14(a)は、要約前の通常の地図におけるランドマーク位置の例を示す。地点Aと地点Bとをつなぐ道路は、地点AとA1の間のリンク61、地点A1とA2の間のリンク62、地点A2とA3の間のリンク63、および地点A3とBの間のリンク64によって構成されており、その道路沿いにランドマーク60が存在している。リンク61〜64のそれぞれの長さは、150m、200m、350mおよび500mであり、これらのリンクによって構成される地点AとBをつなぐ道路は、その合計、すなわち1200mの長さを有している。ランドマーク60は、地点A3から地点Bに向かって200m、すなわち地点Aから900m地点の、道路の左側に位置している。また、ランドマーク60の位置は道路から10m離れている。
【0065】
このような要約前のランドマーク位置について、上記に説明した3つのパラメータを求める。1つ目のパラメータ、すなわち、道路の一方の端(地点A)からの距離の全体距離に対する割合は、900/1200=0.75(75%)と求められる。2つ目のパラメータ、すなわち道路のどちら側にあるかは、地点AからBに向かって道路の左側にあると求められる。3つ目のパラメータ、すなわち道路からの距離は、10mと求められる。
【0066】
図14(b)は、要約後の地図におけるランドマーク位置の例を示す。この要約地図では、地点Aと地点Bとをつなぐ道路は1つのリンク65によって表されており、その長さは1000mである。この要約地図上にランドマーク60を表示するとき、先に求めた3つのパラメータを用いて、変換後の位置を決定する。すなわち、地点Aからの距離は、1つ目のパラメータを用いて、1000×0.75=750mと求められる。また、2つ目のパラメータと3つ目のパラメータにより、地点Aから見て道路(リンク65)の左側であり、その道路から10m離れた位置が決定される。これらの条件を満たす位置にランドマーク60を表示することにより、ランドマーク60の位置補正が行われる。
【0067】
上記に説明したような処理を行うことにより、要約地図においてランドマークの位置が補正され、道路とランドマークとの位置関係を要約前の元の地図に近似させることができる。その結果、図14(a)に示す元の地図のランドマーク位置に対して、要約地図におけるランドマーク位置を図12(c)のようにすることができる。こうして要約地図上にランドマーク位置が表される。
【0068】
以上説明した実施の形態によれば、次の作用効果を奏する。
(1)対象誘導交差点を所定の地図範囲について表した交差点拡大図を地図データに基づいて作成し(ステップS30)、作成された交差点拡大図を表示モニタ16に画面表示する(ステップS40)。そして、その交差点拡大図上に、次の誘導交差点における進路形状を表すための表示マークを表示する(ステップS62、S72)こととした。このようにしたので、誘導交差点の形状を表示した交差点拡大図において、運転者にとって運転操作しやすいように、その誘導交差点を通過する前に次の誘導交差点における車両の進行方向を運転者に知らせることができる。
【0069】
(2)次の誘導交差点が環状交差点である場合、環状交差点マークを表示マークとして表示する(ステップS62)こととした。このようにしたので、次の誘導交差点である環状交差点における進路形状を運転者に分かりやすく伝えることができる。
【0070】
(3)地図データに記録された道路種別情報に基づいて、次の誘導交差点が環状交差点であるか否かを判定する(ステップS60)。そして、次の誘導交差点が環状交差点であると判定された場合は環状交差点マークを表示し(ステップS62)、次の誘導交差点が環状交差点であると判定されなかった場合は環状交差点マークを表示しないこととした。このようにしたので、次の誘導交差点が環状交差点であるか否かを容易に判定し、その判定結果に応じて環状交差点マークを必要に応じて的確に表示することができる。
【0071】
(4)次の誘導交差点が交差点拡大図の地図範囲外にあり、かつ所定の範囲内にある場合、通常交差点マークを表示マークとして表示する(ステップS72)こととした。このようにしたので、次の誘導交差点が通常の交差点であっても、必要に応じて進路形状を運転者に分かりやすく伝えることができる。
【0072】
(5)対象誘導交差点から次の誘導交差点までの距離に基づいて、次の誘導交差点が所定の範囲内にあるか否かを判定する。または、交差点拡大図の地図範囲の境界から次の誘導交差点までの距離に基づいて、次の誘導交差点が所定の範囲内にあるか否かを判定する(ステップS70)。そして、いずれかの方法によって次の誘導交差点が所定の範囲内にあると判定された場合は通常交差点マークを表示し(ステップS72)、次の誘導交差点が所定の範囲内にあると判定されなかった場合は通常交差点マークを表示しないこととした。このようにしたので、次の誘導交差点について通常交差点マークを表示すべきか否かを容易に判定し、その判定結果に応じて環状交差点マークを必要に応じて的確に表示することができる。
【0073】
(6)対象誘導交差点までの距離が予め定められた所定距離以内であるか否かを判定し(ステップS10)、所定距離以内であると判定されると、ステップS20により対象誘導交差点の周囲に設定された所定の地図範囲内の道路形状を簡略化して、要約地図を作成する。ステップS30では、この要約地図に基づいて交差点拡大図を作成することとした。このようにしたので、誘導交差点において進むべき方向がユーザにとって分かりやすい交差点拡大図とすることができる。
【0074】
なお、上記の実施の形態では、要約地図を用いた交差点拡大図における適用例を説明したが、要約しない通常の地図を用いた交差点拡大図においても適用できる。
【0075】
以上説明した各実施の形態や各種の変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されない。
【0076】
上記の実施の形態では、制御回路11の処理により本発明の各手段を実現している。具体的には、距離判定手段をステップS10、要約地図作成手段および交差点拡大図作成手段をステップS30、交差点拡大図表示手段をステップS40、マーク表示手段をステップS62およびS72によってそれぞれ実現している。また、第1の判定手段をステップS60、第2の判定手段をステップS70によってそれぞれ実現している。なお、以上の説明はあくまで一例であり、発明を解釈する際、上記の実施形態の記載事項と特許請求の範囲の記載事項の対応関係には何ら限定も拘束もされない。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の一実施形態によるナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【図2】次の誘導交差点が環状交差点である場合に従来の方法で表示される交差点拡大図の例である。
【図3】本発明において図2の代わりに表示される交差点拡大図の例である。
【図4】他の環状交差点マークの例である。
【図5】次の誘導交差点までの距離が比較的短いときに従来の方法で表示される交差点拡大図の例である。
【図6】本発明において図5の代わりに表示される交差点拡大図の例である。
【図7】交差点拡大図を表示するときに実行されるフローチャートである。
【図8】他の交差点拡大図の例である。
【図9】要約地図を作成するときに利用される2分割の場合の方向量子化処理の内容を説明するための図である。
【図10】同じく4分割の場合の方向量子化処理の内容を説明するための図である。
【図11】各リンク形状を曲線で近似することによって各経路の道路形状を簡略化する方法を説明するための図である。
【図12】ランドマークの位置補正の概要の説明図である。
【図13】ランドマークの位置補正の詳細アルゴリズムの説明図である。
【図14】ランドマークの位置補正の具体例を示す図である。
【符号の説明】
【0078】
1 ナビゲーション装置
11 制御回路
12 ROM
13 RAM
14 現在地検出装置
15 画像メモリ
16 表示モニタ
17 入力装置
18 ディスクドライブ
19 DVD−ROM
25 環状交差点マーク
26 通常交差点マーク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設定された推奨経路において曲がるべき対象誘導交差点を所定の地図範囲について表した交差点拡大図を地図データに基づいて作成する交差点拡大図作成手段と、
前記交差点拡大図作成手段により作成された交差点拡大図を表示モニタに画面表示する交差点拡大図表示手段と、
前記対象誘導交差点の次の誘導交差点における進路形状を表すための表示マークを前記表示モニタに画面表示された交差点拡大図上に表示するマーク表示手段とを備えることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
請求項1のナビゲーション装置において、
前記マーク表示手段は、前記次の誘導交差点が環状交差点である場合、前記次の誘導交差点における進路形状を表すための環状交差点マークを前記表示マークとして表示することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項3】
請求項2のナビゲーション装置において、
前記地図データに記録された道路種別情報に基づいて、前記次の誘導交差点が環状交差点であるか否かを判定する第1の判定手段をさらに備え、
前記マーク表示手段は、前記第1の判定手段により前記次の誘導交差点が環状交差点であると判定された場合は前記環状交差点マークを表示し、前記第1の判定手段により前記次の誘導交差点が環状交差点であると判定されなかった場合は前記環状交差点マークを表示しないことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項4】
請求項1のナビゲーション装置において、
前記マーク表示手段は、前記次の誘導交差点が前記交差点拡大図の地図範囲外にあり、かつ所定の範囲内にある場合、前記次の誘導交差点における進路形状を表すための通常交差点マークを前記表示マークとして表示することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項5】
請求項4のナビゲーション装置において、
前記対象誘導交差点から前記次の誘導交差点までの距離に基づいて、前記次の誘導交差点が前記所定の範囲内にあるか否かを判定する第2の判定手段をさらに備え、
前記マーク表示手段は、前記第2の判定手段により前記次の誘導交差点が前記所定の範囲内にあると判定された場合は前記通常交差点マークを表示し、前記第2の判定手段により前記次の誘導交差点が前記所定の範囲内にあると判定されなかった場合は前記通常交差点マークを表示しないことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項6】
請求項4のナビゲーション装置において、
前記交差点拡大図の地図範囲の境界から前記次の誘導交差点までの距離に基づいて、前記次の誘導交差点が前記所定の範囲内にあるか否かを判定する第2の判定手段をさらに備え、
前記マーク表示手段は、前記第2の判定手段により前記次の誘導交差点が前記所定の範囲内にあると判定された場合は前記通常交差点マークを表示し、前記第2の判定手段により前記次の誘導交差点が前記所定の範囲内にあると判定されなかった場合は前記通常交差点マークを表示しないことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか一項のナビゲーション装置において、
前記対象誘導交差点までの距離が予め定められた所定距離以内であるか否かを判定する距離判定手段と、
前記距離判定手段により前記対象誘導交差点までの距離が前記所定距離以内であると判定されると、前記所定の地図範囲内の道路形状を簡略化して要約地図を作成する要約地図作成手段とをさらに備え、
前記交差点拡大図作成手段は、前記要約地図作成手段により作成された要約地図に基づいて前記交差点拡大図を作成することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項1】
設定された推奨経路において曲がるべき対象誘導交差点を所定の地図範囲について表した交差点拡大図を地図データに基づいて作成する交差点拡大図作成手段と、
前記交差点拡大図作成手段により作成された交差点拡大図を表示モニタに画面表示する交差点拡大図表示手段と、
前記対象誘導交差点の次の誘導交差点における進路形状を表すための表示マークを前記表示モニタに画面表示された交差点拡大図上に表示するマーク表示手段とを備えることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
請求項1のナビゲーション装置において、
前記マーク表示手段は、前記次の誘導交差点が環状交差点である場合、前記次の誘導交差点における進路形状を表すための環状交差点マークを前記表示マークとして表示することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項3】
請求項2のナビゲーション装置において、
前記地図データに記録された道路種別情報に基づいて、前記次の誘導交差点が環状交差点であるか否かを判定する第1の判定手段をさらに備え、
前記マーク表示手段は、前記第1の判定手段により前記次の誘導交差点が環状交差点であると判定された場合は前記環状交差点マークを表示し、前記第1の判定手段により前記次の誘導交差点が環状交差点であると判定されなかった場合は前記環状交差点マークを表示しないことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項4】
請求項1のナビゲーション装置において、
前記マーク表示手段は、前記次の誘導交差点が前記交差点拡大図の地図範囲外にあり、かつ所定の範囲内にある場合、前記次の誘導交差点における進路形状を表すための通常交差点マークを前記表示マークとして表示することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項5】
請求項4のナビゲーション装置において、
前記対象誘導交差点から前記次の誘導交差点までの距離に基づいて、前記次の誘導交差点が前記所定の範囲内にあるか否かを判定する第2の判定手段をさらに備え、
前記マーク表示手段は、前記第2の判定手段により前記次の誘導交差点が前記所定の範囲内にあると判定された場合は前記通常交差点マークを表示し、前記第2の判定手段により前記次の誘導交差点が前記所定の範囲内にあると判定されなかった場合は前記通常交差点マークを表示しないことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項6】
請求項4のナビゲーション装置において、
前記交差点拡大図の地図範囲の境界から前記次の誘導交差点までの距離に基づいて、前記次の誘導交差点が前記所定の範囲内にあるか否かを判定する第2の判定手段をさらに備え、
前記マーク表示手段は、前記第2の判定手段により前記次の誘導交差点が前記所定の範囲内にあると判定された場合は前記通常交差点マークを表示し、前記第2の判定手段により前記次の誘導交差点が前記所定の範囲内にあると判定されなかった場合は前記通常交差点マークを表示しないことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか一項のナビゲーション装置において、
前記対象誘導交差点までの距離が予め定められた所定距離以内であるか否かを判定する距離判定手段と、
前記距離判定手段により前記対象誘導交差点までの距離が前記所定距離以内であると判定されると、前記所定の地図範囲内の道路形状を簡略化して要約地図を作成する要約地図作成手段とをさらに備え、
前記交差点拡大図作成手段は、前記要約地図作成手段により作成された要約地図に基づいて前記交差点拡大図を作成することを特徴とするナビゲーション装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−101388(P2007−101388A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−292208(P2005−292208)
【出願日】平成17年10月5日(2005.10.5)
【出願人】(591132335)株式会社ザナヴィ・インフォマティクス (745)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月5日(2005.10.5)
【出願人】(591132335)株式会社ザナヴィ・インフォマティクス (745)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]