説明

ナビゲーション装置

【課題】ナビゲーション装置において、確実に元ルートよりも早く目的地へ到着可能な迂回ルートを提示する。
【解決手段】現況交通情報、統計交通情報、予測交通情報を対応する交通情報データ部30〜32に保持し、各交通情報の取得形態に基づく誤差をそれぞれ対応する交通情報精度データ部33〜35に保持して、ルート演算部37で迂回ルート候補と元ルートの通過に要するそれぞれの所要時間を交通情報と該交通情報の誤差とを用いて演算する。ルート案内部14では、迂回ルート候補の所要時間と元ルートの所要時間を比較して、迂回ルート候補の所要時間が元ルートの所要時間よりも短いときのみ当該迂回ルート候補を迂回ルートとしてディスプレイに提示する。交通情報の誤差を考慮して所要時間を算出しているので、迂回ルート案内の有効性と信頼性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に搭載されて目的地への走行ルートを案内するナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等のナビゲーション装置においては、現在地から目的地への推奨すべき走行ルートを提示して案内する。
推奨すべき走行ルートとしてとくに求められるのは最短時間で目的地へ到達できる走行ルート(最短ルート)であるが、この場合、1つの走行ルートに対して迂回ルートが可能な場合、それぞれのルートについて演算した所要時間を比較して、推奨すべき走行ルートが決定される。そしてこの決定のため、交通情報を利用してルート演算が行われる。
【0003】
例えば、特開2004−220574号には、道路をリンク網で表し、動的交通情報と静的交通情報を利用してリンクごとの走行所要時間を求めて、目的地までの所要時間を演算するナビゲーション装置が開示されている。ここで、静的交通情報とは例えば統計に基づく交通情報を含み、動的交通情報とは現在の交通量や通過速度など時間的に変動する現況の交通情報を指し、それぞれに精度のバラツキによる誤差があって信頼度が異なる。比較的には静的交通情報の信頼度は動的交通情報の信頼度よりも低い。
【0004】
このナビゲーション装置では、動的交通情報の信頼度に基づいて動的交通情報と静的交通情報の利用割合を定めてルート演算を行い、演算結果に基づいた最短ルートをその信頼度情報を付してディスプレイに提示する。すなわち、動的交通情報の信頼度が低いときには静的交通情報を主に利用してルート演算した結果の走行ルートが提示され、ドライバは同時に表示された信頼度情報を参照して、当該走行ルートに従って走行するか否かを判断することができる。
【特許文献1】特開2004−220574号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のナビゲーション装置では、動的交通情報の信頼度が低いときには静的交通情報、換言すれば相対的に信頼度が低い情報、をそのまま用いて演算された走行ルートが提示されることになる。
したがって、渋滞や交通事故などの発生に対応して迂回路を算出した場合に、それが信頼度の低い情報に基づいて演算されたものであると、本当に当該迂回路がより短時間で目的地へ到達できる最短ルートであるか判断できず、有効な案内にはならないという問題がある。
【0006】
したがって本発明は、上記の問題点にかんがみ、有効性の判断に迷うことのない迂回ルートの提示が可能なナビゲーション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため、本発明は、ナビゲーション装置において、
交通情報を交通情報記憶手段に保持し、交通情報の誤差の情報を誤差情報記憶手段に保持して、
現在地から目的地への走行ルートにおける迂回ルートを探索し、
迂回ルート候補と元ルートの通過に要するそれぞれの所要時間を交通情報と該交通情報の誤差とを用いて演算し、
迂回ルート候補の所要時間と元ルートの所要時間を比較して、迂回ルート候補の所要時間が元ルートの所要時間よりも短いときのみ当該迂回ルート候補を迂回ルートとして提示するものとした。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、交通情報に発生し得る誤差を考慮して迂回ルートと元ルートの通過に要する所要時間を算出して、迂回ルートの所要時間が元ルートの所要時間よりも短いときのみ提示するから、提示された迂回ルートが誤差によって元ルートよりも時間がかかる結果となるような事態が防止され、迂回ルート案内の有効性と信頼性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、発明の実施の形態について説明する。
図1は実施の形態の構成を示すブロック図である。
ナビゲーション装置は、処理装置10に対して操作入力部21と、現在位置検出部22と、地図情報記憶部23と、外部情報入力部24と、ディスプレイ25およびスピーカ26をそれぞれ接続して構成される。
現在位置検出部22は、GPS受信部やジャイロ、車速センサ等を用いて、自車両の現在位置を検出する。
【0010】
地図情報記憶部23には、地図情報として、地図データや、道路をリンク網で表したリンク情報等が格納されている。リンク情報はリンクの距離、一般道路や高速道路などの道路種別、車線数、制限速度、および制限速度から算出される通過に要する標準所要時間等のデータを含んでいる。地図データやリンク情報は外部情報入力部24を介して例えばVICSやTMC(Traffic Massage Channel)からの情報で更新可能である。
【0011】
処理装置10は、ルート探索部12、ルート案内部14を備えている。
ルート探索部12は、現在位置検出部22で検出した自車両の現在位置と、操作入力部21から入力設定された目的地から、周辺の地図上で推奨すべき最短時間となる走行ルートを探索する。また必要に応じて迂回ルートを探索する。
ルート案内部14は、ルート探索部12で探索された走行ルートを地図に重ねて、ディスプレイ25に表示する。併せて、スピーカ26を介して音声によっても走行ルートの案内を提示する。
【0012】
図2はルート探索部12の詳細を示す。
ルート探索部12は、まず交通情報を格納するデータ部として、外部情報入力部24を介して外部から現況の交通情報を取得し、一時保存する現況交通情報データ部30と、過去の交通情報を統計処理した統計交通情報を格納している統計交通情報データ部31と、現況の変化に対応し統計交通情報に基づいて予測した予測交通情報を格納している予測交通情報データ部32とを備える。
予測交通情報については、例えば特開2005−122461号公報や特開2006−39978号公報に詳細説明がなされている。
統計交通情報および予測交通情報には、外部情報入力部24を介して外部から取得するもののほかに、統計交通情報データ部31と予測交通情報データ部32にそれぞれ蓄積された統計交通情報および予測交通情報も含むことができる。
なお、交通情報はリンクを通過するに要する所要時間で代表させたリンクコストで表わされる。
【0013】
交通情報は、その基礎データの取得形態から見たとき、道路の路面下に設置されたループコイルセンサによる交通量などの情報や、実際に走行して赤外線センサなどによりデータを収集するプローブ車両からのプローブ情報などから生成され、例えばVICSを通じ、あるいは交通情報サービスセンター等から入手される。
交通情報は、基礎データの取得形態として、センサ種別などの情報を伴っている。
【0014】
しかし、リンクごとには、ループコイルセンサなど道路側センサが設置されていない場合、プローブ車両が走行していなかった場合、あるいは道路側センサや車両側センサの整備・調整や故障などによって所定の情報が得られない場合など、情報入手の状況はまちまちであり、どの情報が得られるかはリンクによって異なる。したがってこのような事情を原因として、各交通情報データ部30〜32に読み込まれ保持される現況交通情報、統計交通情報、予測交通情報には精度のバラツキがある。そのため、これらの交通情報にもとづいて予測した所要時間と実際の走行結果との間には必ず誤差が生じる。
【0015】
上述した精度は、リンクの長さや特性、交通情報の種別、交通情報の基礎データの取得形態等の組み合わせによって変わってくる。
図3は、簡単のためリンク別の差がないと仮定した場合の、単位リンクあたりの予測所要時間と実走行時間との誤差の発生頻度を交通情報の種別と取得形態の3つの組み合わせについて例示するものである。実線はプローブ情報による統計交通情報、破線はループコイル情報による統計交通情報、一点鎖線はループコイル情報による現況交通情報を示している。
統計交通情報が現況交通情報よりも精度が高いのは、統計交通情報では伝送遅れをキャンセルできるなどの理由による。なお、図3には例示されていないが、予測交通情報はその推定する性質上当然に精度は低くなる。
図中、誤差は0位置より右方で実走行時間が予測所要時間よりも短く(速く)なり、左方で実走行時間が予測所要時間よりも長く(遅く)なる。
【0016】
図3に示すように、各組み合わせに対して、閾値1、2、3、および閾値A、B、Cを境目として、センサ特性や伝送遅れ等に基づく通常誤差以外に、センサ故障や予測所要時間算出後の情報の変化による異常系の誤差が発生し始める。そこで、上記の閾値を各組み合わせにおける最大誤差とする。
【0017】
このため、ルート探索部12にはこれら現況交通情報データ部30、統計交通情報データ部31および予測交通情報データ部32に対応させて、さらに各データ部に格納された交通情報について、リンクごとの精度情報として基礎データの取得形態(センサ)別の上記最大誤差(閾値)を保持する現況交通情報精度データ部33、統計交通情報精度データ部34および予測交通情報精度データ部35が設けられている。
【0018】
ルート探索部12はさらに、現況交通情報データ部30、統計交通情報データ部31および予測交通情報データ部32に接続されて、リンクごとにどの交通情報(リンクコスト)を利用するかを判定し、必要な交通情報を読み出す利用交通情報判定部36を備え、また利用交通情報判定部36にはルート演算部37が接続されている。
【0019】
利用交通情報判定部36では、段階的に設定した現在地からの距離、例えば近距離、中距離、遠距離に応じて利用すべき交通情報種別の優先順位を異ならせている。
現在地から近距離の範囲では、突発事象の影響を受けやすいので、現況交通情報を最優先とし、以下、統計交通情報、予測交通情報の順とする。
現在地から中距離の範囲では、予測交通情報、統計交通情報、現況交通情報の順とする。
【0020】
そして、距離が遠くなるほど条件分岐が多くなって予測が困難になり、また状況変化の可能性も大きいので、現在地から遠距離の範囲では、統計交通情報を最優先とし、以下、予測交通情報、現況交通情報の順となっている。
最優先の交通情報にかかる交通情報データ部(30、31または32)に該当リンクの交通情報がない場合には、順次下位の交通情報にかかる交通情報データ部で該当リンクの交通情報を検索して読み出して、ルート演算部37へ送出する。
【0021】
ルート演算部37は現在地から目的地への走行ルートの予測所要時間を当該走行ルートのコストとして演算する。複数の走行ルートがある場合には、それぞれの予測所要時間を現況交通情報精度データ部33、統計交通情報精度データ部34または予測交通情報精度データ部35に保持された精度情報を用いて演算する。
【0022】
なお、現況交通情報データ部30、統計交通情報データ部31および予測交通情報データ部32のいずれにも交通情報がないリンクについては、隣接のリンク情報を利用した補完により当該リンクのリンクコストを設定し、補完に用いた交通情報の精度情報を用いるが、これは元ルートまたは迂回ルートにおける次式で表わされるカバー値Wが所定の基準値以上であることを条件とする。
W=交通情報があるリンク数/全リンク数
すなわち、補完の性質上その精度は交通情報がある場合と比較して実際には低く、交通情報のないリンクが連続すると相関性も失われてゆき、また簡便な補完として地図情報記憶部23に格納されているリンク情報中の標準所要時間を使用する場合も精度は格段に低いため、カバー値Wが基準値よりも小さい場合には当該迂回ルートの演算は行なわない。
【0023】
ルート案内部14は、ルート演算部37で演算された複数の走行ルートの予測所要時間を比較して最短ルートをディスプレイに提示する。そして、目的地への走行中、渋滞や交通事故などが発生したときには、ルート案内部14は迂回ルートについてルート演算部37で演算された予測所要時間が現在提示中の元ルートと比較して所定の条件を満たすときに、ディスプレイ25の表示を切り替えて当該迂回ルートを提示する。
【0024】
つぎに、ルート探索部12における迂回ルート探索時の処理例について、図4、図5のフローチャートにそって説明する。
操作入力部21を操作するなどして迂回ルート探索のトリガが発せられると、まず、ステップ100において、地図情報記憶部23の地図データを基に、現在地と目的地間における迂回ルート候補をリンク情報として抽出する。
なお、迂回ルート探索のトリガは上記のほか、例えば元ルート前方に渋滞発生の情報がVICS等により入力したときに発せられるようにしてもよい。
【0025】
ここで、図6に示すように、先に設定された走行ルートを走行中、その前方経路のリンク(Link)#A、リンク#Bに渋滞があり、このリンク#Aとリンク#B(元ルート)に対して、分岐点、復帰点の間にリンク#1、リンク#2、リンク#3からなる迂回ルート(候補)があるとする。
元ルートのリンク#A、#Bではループコイルからの情報を統計化した統計交通情報としてリンクコストを有しており、迂回ルートのリンク#1、#2、#3ではプローブ情報による統計交通情報としてのリンクコストを有しているものとする。
【0026】
ステップ101では、利用交通情報判定部36が前述した優先順位に従って、元ルートの各リンクにかかる交通情報を交通情報データ部30〜32のいずれかから読み出す。ここでは、リンク#A、#Bについてループコイルからの情報を統計化した統計交通情報(リンクコスト)が統計交通情報データ部31から読み出される。
【0027】
続くステップ102で、利用交通情報判定部36は読み出した交通情報(リンクコスト)ごとの最大誤差を、交通情報精度データ部(ここではいずれも統計交通情報精度データ部34)からリンクコストのベースとなったセンサ種別に基づいて、読み出す。
迂回ルートとしては元ルートよりも早く両ルートが合流する復帰点に到達できるものでなければ、提示される意味がない。
このため、図3から抽出して図7に示すように、元ルートでは最も早く復帰点に到達する側の最大誤差である閾値C(α%)を読み出す。
読み出した最大誤差は、ステップ101で読み出したリンクコストとともに、ルート演算部37へ送られる。
【0028】
ステップ103では、利用交通情報判定部36が前述した優先順位に従って、迂回ルートの各リンクにかかる交通情報を交通情報データ部30〜32のいずれかから読み出す。ここでは、リンク#1、#2、#3についてプローブ情報による統計交通情報が統計交通情報データ部31から読み出される。
【0029】
つづくステップ104で、利用交通情報判定部36は読み出した交通情報(リンクコスト)ごとの最大誤差を、交通情報精度データ部(ここではいずれも統計交通情報精度データ部34)からリンクコストのベースとなったセンサ種別に基づいて、読み出す。
迂回ルートでは、図7に示すように、最も遅く復帰点に到達する側の最大誤差である閾値1(β%)を読み出す。
読み出した最大誤差は、ステップ103で読み出したリンクコストとともに、ルート演算部37へ送られる。
【0030】
ステップ105では、ルート演算部37において、迂回ルートが元ルートに合流する復帰点までの間に交通情報のないリンクがあるかどうかをチェックする。
交通情報のないリンクがあるときはステップ106へ進み、全てのリンクにいずれかの交通情報があるときはステップ108へ進む。
ステップ106では、カバー値Wを演算して、Wが基準値(例えば70%)以上であるかどうかをチェックする。
カバー値Wが基準値以上であるときは、ステップ107へ進んで、交通情報のないリンクについて補完を行い、そのリンクコストを設定する。交通情報の補完については例えば特開2006−39978号公報等に詳しい。このあと、ステップ108へ進む。
カバー値Wが基準値より低いときは、後述するステップ111へ進む。
【0031】
ステップ108において、ルート演算部37では、誤差範囲を考慮して各ルートのコストを求める。
元ルートについては、早く到達する側の最大誤差である閾値C(α%)を用いて、次式により最も早く復帰点に到達する場合のコスト(Cost0)が演算される。
Cost0=(Link#A+#B)×α
ただし、(Link#A+#B)はリンク#Aとリンク#Bの各リンクコストの合計である。
【0032】
一方、迂回ルートについては、遅く到達する側の最大誤差である閾値1(β%)を用いて、次式により最も遅く復帰点に到達する場合のコスト(CostD)が演算される。
CostD=(Link#1+#2+#3)×β
ただし、(Link#1+#2+#3)はリンク#1とリンク#2とリンク#3の各リンクコストの合計である。
ルート演算部37は以上のように演算したCost0とCostDをルート案内部14へ送出する。
【0033】
ステップ109において、ルート案内部14は両コストを比較する。
CostD<Cost0のときには早く復帰点に到達できるという迂回効果が得られるので、ステップ110へ進んで、リンク#1、リンク#2、リンク#3からなる迂回ルートをディスプレイ25に提示し、今回の迂回ルート探索トリガにかかる処理を終了する。
【0034】
CostD<Cost0でないときには、ステップ111へ進んで、他に迂回ルート候補がないかチェックする。
迂回ルート候補がある場合は、ステップ101以下の処理を繰り返す。
他に迂回ルート候補がない場合には、ステップ112へ進み、ルート案内部14は「目的地へ早く到達する迂回ルートはありません」などのメッセージをディスプレイ25に提示して、今回の迂回ルート探索トリガにかかる処理を終了する。
【0035】
実施の形態では、現況交通情報データ部30、統計交通情報データ部31および予測交通情報データ部32が発明における交通情報記憶手段に相当し、現況交通情報精度データ部33、統計交通情報精度データ部34および予測交通情報精度データ部35が誤差情報記憶手段に相当する。
また、図4、図5のフローチャートにおけるステップ100が発明における迂回ルート探索手段に相当し、ステップ102〜108がルート演算手段を構成し、ステップ109〜112がルート案内手段を構成している。
【0036】
本実施の形態は以上のように構成され、現況交通情報データ部30、統計交通情報データ部31、予測交通情報データ部32等の交通情報データ部に交通情報を保持し、現況交通情報精度データ部33、統計交通情報精度データ部34、予測交通情報精度データ部35等の交通情報精度データ部に交通情報の誤差を保持して、迂回ルート候補と元ルートの通過に要するそれぞれの所要時間を交通情報と該交通情報の誤差とを用いて演算し、迂回ルート候補の所要時間と元ルートの所要時間を比較して、迂回ルート候補の所要時間が元ルートの所要時間よりも短いときのみ当該迂回ルート候補を迂回ルートとしてディスプレイ25に提示するものとしたので、提示された迂回ルートが誤差によって元ルートよりも時間がかかる結果となるような事態を避けることが容易となり、迂回ルート案内の有効性と信頼性が向上する。
【0037】
所要時間の演算に際しては、現在地からの距離に応じて所定の優先順位で各交通情報データ部に保持された現況交通情報、統計交通情報および予測交通情報のいずれかを選択して用いるので、演算された所要時間の精度を高く確保することができる。
【0038】
また、交通情報の誤差として、迂回ルート候補の所要時間演算については、センサ別など交通情報の基礎データの取得形態に基づく誤差範囲のうち、遅くなる側の最大誤差を用いているので、提示された迂回ルートが誤差によって元ルートよりも時間がかかる結果となることを確実に防止できる。
【0039】
道路はリンク網で表わされ、各交通情報は迂回ルート候補および元ルートを形成するリンクごとの所要時間を表わすリンクコストとして各交通情報データ部に保持されているから、迂回ルート候補および元ルートの所要時間の演算が簡単である。
なお、迂回ルート候補に交通情報のないリンクがある場合において、(交通情報があるリンク数/全リンク数)で表わされるカバー値Wが所定の基準値より低いときは演算を行なわず、したがってその迂回ルートは提示されない。したがって、演算結果の所要時間の精度が低くなるような迂回ルートの提示によりユーザに不満を与えるようなことがない。
【0040】
なお、実施の形態では、迂回ルートとして元ルートよりも早く復帰点に到達する最短ルートの観点から、交通情報としてリンクの通過所要時間を代表するリンクコストを用いて演算を行なうものとしたが、迂回ルートに対する要求としてはこれに限定されず、例えば推奨すべき走行ルートを走りやすさの観点で選択する場合には、交差点の曲がりやすさや道路の走りやすさを代表するリンクコストを交通情報として用いればよい。
【0041】
また、演算に用いる交通情報の誤差については、当該交通情報の誤差範囲における最大誤差を用いるものとしたが、これも例えば交通情報の特性に応じて適宜設定することができる。
交通情報のないリンクがある場合におけるカバー値Wに対する基準値も、とくに迂回ルートについては、例えば道路状況が順調で制限速度で走行可能なときの標準所要時間に、渋滞発生で生じる誤差を加味しても迂回ルートが元ルートよりも早い許容範囲に収まるように、予め誤差の発生頻度に基づいて設定すればよいが、そのほか、例えば迂回ルートの長さ(リンク数)に応じて変化させてよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施の形態の構成を示すブロック図である。
【図2】ルート探索部の詳細を示すブロック図である。
【図3】交通情報の種別と取得形態による予測所要時間と実走行時間との誤差発生状況を示す説明図である。
【図4】迂回ルート探索における処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】迂回ルート探索における処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】迂回ルート例を示す説明図である。
【図7】演算に用いる誤差の抽出例を示す図である。
【符号の説明】
【0043】

10 処理装置
12 ルート探索部
14 ルート案内部
21 操作入力部
22 現在位置検出部
23 地図情報記憶部
24 外部情報入力部
25 ディスプレイ
26 スピーカ
30 現況交通情報データ部
31 統計交通情報データ部
32 予測交通情報データ部
33 現況交通情報精度データ部
34 統計交通情報精度データ部
35 予測交通情報精度データ部
36 利用交通情報判定部
37 ルート演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現在地から目的地への走行ルートを提示するナビゲーション装置において、
迂回ルート候補を探索する迂回ルート探索手段と、
交通情報を保持する交通情報記憶手段と、
交通情報の誤差の情報を保持する誤差情報記憶手段と、
前記迂回ルート候補と元ルートの通過に要するそれぞれの所要時間を前記交通情報と該交通情報の誤差とを用いて演算するルート演算手段と、
該ルート演算手段で演算された迂回ルート候補の所要時間と元ルートの所要時間を比較して、迂回ルート候補の所要時間が元ルートの所要時間よりも短いときのみ当該迂回ルート候補を迂回ルートとして提示するルート案内手段とを有することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
前記交通情報は、現況交通情報、統計交通情報および予測交通情報を含み、
前記ルート演算手段は、現在地からの距離に応じて所定の優先順位で現況交通情報、統計交通情報および予測交通情報のいずれかを選択して用いることを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記交通情報の誤差は、迂回ルート候補の所要時間演算については、交通情報の基礎データの取得形態に基づく誤差範囲のうち、遅くなる側の最大誤差とすることを特徴とする請求項1または2に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記交通情報記憶手段は、前記交通情報を迂回ルート候補および元ルートを形成するリンクごとのリンクコストとして保持することを特徴とする請求項1から3のいずれか1に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
前記ルート演算手段は、前記交通情報のないリンクがある場合は当該リンクについて補完を行なって所要時間の演算を行なうが、迂回ルート候補に前記交通情報のないリンクがある場合において、(交通情報があるリンク数/全リンク数)で表わされるカバー値が所定の基準値より低いときは、演算を行なわないことを特徴とする請求項4に記載のナビゲーション装置。
【請求項6】
交通情報を交通情報記憶手段に保持するとともに、現在地から目的地への走行ルートにおける迂回ルートを探索可能なナビゲーション装置における迂回ルートの提示方法であって、
迂回ルート候補と元ルートの通過に要するそれぞれの所要時間を前記交通情報と該交通情報の誤差とを用いて演算し、
迂回ルート候補の所要時間と元ルートの所要時間を比較して、迂回ルート候補の所要時間が元ルートの所要時間よりも短いときのみ当該迂回ルート候補を迂回ルートとして提示することを特徴とするナビゲーション装置における迂回ルートの提示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−157877(P2008−157877A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−349779(P2006−349779)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】