説明

ネガ型レジストパターン形成方法、それに用いられる現像液及びネガ型化学増幅型レジスト組成物、並びにレジストパターン

【課題】感度、解像力、パターン形状、ラインウィズスラフネス、ブリッジマージン、倒れマージン、残膜率に優れるレジストパターン形成方法、それに用いる現像液及びネガ型化学増幅型レジスト組成物、並びに該パターン形成方法により形成されるレジストパターンの提供。
【解決手段】架橋反応によりネガ化する、ネガ型化学増幅型レジスト組成物を用いて膜を形成する工程(1)、該膜を露光する工程(2)、露光後に有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程(4)をこの順番で有することを特徴とする、レジストパターンの形成方法、それに用いる現像液及びネガ型化学増幅型レジスト組成物、並びに該パターン形成方法により形成されるレジストパターン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超LSIや高容量マイクロチップの製造などの超マイクロリソグラフィプロセスやその他のフォトファブリケーションプロセスに好適に用いられるネガ型化学増幅型レジスト組成物を用いたレジストパターン形成方法に関するものである。更に詳しくは、電子線、X線、EUV光(波長:13nm付近)を用いる半導体素子の微細加工に好適に用いることができるネガ型化学増幅型レジスト組成物、それを用いたレジストパターン形成方法、該レジストパターン形成方法に用いられる現像液、並びに該レジストパターン形成方法により形成されるレジストパターンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ICやLSIなどの半導体デバイスの製造プロセスにおいては、フォトレジスト組成物を用いたリソグラフィーによる微細加工が行われている。近年、集積回路の高集積化に伴い、サブミクロン領域やクオーターミクロン領域の超微細パターン形成が要求されるようになってきている。それに伴い、露光波長もg線からi線に、更にKrFエキシマレーザー光に、というように短波長化の傾向が見られる。更には、現在では、エキシマレーザー光以外にも、電子線やX線、あるいはEUV光を用いたリソグラフィーも開発が進んでいる。
【0003】
これら電子線やX線、あるいはEUV光リソグラフィーは、次世代若しくは次々世代のパターン形成技術として位置付けられ、高感度、高解像性のレジストが望まれている。
特にウェハー処理時間の短縮化のため、高感度化は非常に重要な課題であるが、高感度化を追求しようとすると、解像力の低下のみならず、ラインウィズスラフネスの悪化が起こり、これらの特性を同時に満足するレジストの開発が強く望まれている。
ここで、ラインウィズスラフネスとは、レジストのパターンと基板界面のエッジがレジストの特性に起因して、ライン方向と垂直な方向に不規則に変動するために、パターンを真上から見たときにエッジが凹凸に見えることを言う。この凹凸がレジストをマスクとするエッチング工程により転写され、電気特性を劣化させるため、歩留りを低下させる。
【0004】
高感度と、高解像性、良好なパターン形状、良好なラインウィズスラフネスはトレードオフの関係にあり、これを如何にして同時に満足させるかが非常に重要である。
レジスト組成物には、アルカリ現像液に難溶性若しくは不溶性の樹脂を用い、放射線の露光によって露光部をアルカリ現像液に対し可溶化することでパターンを形成する「ポジ型」と、アルカリ現像液に可溶性の樹脂を用い、放射線の露光によって露光部をアルカリ現像液に対して難溶化若しくは不溶化することでパターンを形成する「ネガ型」とがある。
かかる電子線、X線、あるいはEUV光を用いたリソグラフィープロセスに適したレジストとしては、高感度化の観点から主に酸触媒反応を利用した化学増幅型ポジ型レジストが検討され、主成分としてアルカリ現像液には不溶又は難溶性で、酸の作用によりアルカリ現像液に可溶となる性質を有するフェノール性樹脂(以下、フェノール性酸分解性樹脂と略す)、及び酸発生剤からなる化学増幅型ポジ型レジスト組成物が有効に使用されている。
【0005】
一方、半導体素子等の製造にあたってはライン、トレンチ、ホールなど種々のパターン形成の要請がある。種々のパターン形成の要請に応えるためにはポジ型だけではなく、ネガ型のレジスト組成物の開発も行われている。例えば、特許文献1及び2は、電子線又はX線用ネガ型化学増幅型レジスト組成物、並びに該組成物により形成される膜を、露光後、アルカリ現像液を用いて現像するパターン形成を開示している。
超微細パターンの形成においては、解像力の低下、ラインウィズスラフネスの更なる改良が求められている。
この課題を解決するために、酸分解性樹脂を含むレジスト組成物から形成される膜を、露光後、アルカリ現像液以外の現像液を用いて現像する方法も提案されている。例えば、特許文献3は、超臨界流体(超臨界CO)で現像することを開示している。また特許文献4は、酸の作用により解裂し、極性変換(脱保護反応)を起こす基を有する樹脂を含むレジスト組成物から形成される膜を、露光後、有機溶剤を含む現像液により現像することを開示している。
また、樹脂主鎖が露光により直接切断されることを利用したパターン形成方法も知られている。例えば、特許文献5及び6は、PMMA(ポリメチルメタクリレート)や、α−クロロアクリル酸メチルとα−メチルスチレンとの共重合体を含む非化学増幅型ポジ型レジスト組成物を開示しており、これによれば電子線等の放射線の照射により高分子の鎖が切断され、分子量が減少し、現像液としての有機溶剤に対する溶解速度が大きくなることでパターンが形成される。
しかしながら、超微細領域での、高感度、高解像性、良好なパターン形状、良好なラインウィズスラフネスは同時に満足できていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−148806号公報
【特許文献2】特開2008−268935号公報
【特許文献3】特許第3277114号公報
【特許文献4】特開平7−199467号公報
【特許文献5】特開昭62−175739号公報
【特許文献6】特開2006−227174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、高エネルギー線、X線、電子線あるいはEUV光を使用する半導体素子の微細加工における性能向上技術の課題を解決することであり、高感度、高解像性、良好なパターン形状、良好なラインウィズスラフネス、残膜率、ブリッジマージン及び倒れマージンを同時に満足するレジストパターン形成方法、それに用いられる現像液及びネガ型化学増幅型レジスト組成物、並びに該レジストパターン形成方法により形成されるレジストパターンを提供することにある。
ここで、残膜率(%)は(現像後膜厚/露光前膜厚)×100で表される。残膜率が十分であると、配線形成時の配線繋がりが抑制され、歩留まりの低下が抑制される。
ブリッジマージンは、目的とするパターンサイズが得られる露光量を超える露光量を照射したときにパターンが分離する最大サイズで表される。過露光領域でも安定にパターンが分離形成されるため、配線形成時の断線の原因となるブリッジ欠陥が抑制され、歩留まりの低下が抑制される。
倒れマージンは、目的とするパターンサイズが得られる露光量を下回る露光量を照射したときのパターンが保持される最小サイズで表される。露光量が少ない領域でもパターンが倒れずに保持できるため、たとえば孤立ラインパターンの様に密集パターンと比較して露光量が少ないパターンも安定に形成させることができる。
半導体素子等の製造にあたってはライン、トレンチ、ホール、など種々のパターン形成の要請があるため、上記のブリッジマージンと倒れマージンを両立することが重要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討した結果、化学増幅型の架橋性ネガ型レジストをパターン露光した後、有機溶剤を含む現像液を用いて未露光部を現像することによって上記目的が達成されることを見出した。すなわち本発明は以下の通りである。
【0009】
1.
架橋反応によりネガ化する、ネガ型化学増幅型レジスト組成物を用いて膜を形成する工程(1)、該膜を露光する工程(2)、露光後に有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程(4)をこの順番で有することを特徴とする、レジストパターンの形成方法。
2.
前記現像液に含まれる有機溶剤が、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤及び炭化水素系溶剤からなる群より選ばれる1種類以上の溶剤であることを特徴とする、上記1に記載のレジストパターン形成方法。
3.
前記現像液に含まれる有機溶剤が、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート系溶剤、アルキレングリコールモノアルキルエーテル系溶剤、カルボン酸アルキル系溶剤、及びアルキルケトン系溶剤からなる群より選ばれる1種類以上の溶剤であることを特徴とする、上記1又は2に記載のレジストパターン形成方法。
4.
現像液に含まれる有機溶剤が、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、乳酸エチル、及び酢酸ブチルからなる群より選ばれる1種類以上の溶剤であることを特徴とする、上記1〜3のいずれかに記載のレジストパターン形成方法。
5.
前記現像液に含まれる有機溶剤が、分子中に水酸基を含有しないエステル系溶剤、分子中に水酸基を含有しないケトン系溶剤、及び分子中に水酸基を含有しないエーテル系溶剤からなる群より選ばれる1種類以上の溶剤であることを特徴とする、上記1〜3のいずれかに記載のレジストパターン形成方法。
6.
前記現像工程(4)の後に、有機溶剤を含むリンス液を用いてリンス処理する工程(5)を更に有することを特徴とする、上記1〜5のいずれかに記載のレジストパターン形成方法。
【0010】
7.
前記リンス液に含まれる有機溶剤が、一価のアルコール系溶剤及び炭化水素系溶剤からなる群より選ばれる1種類以上の溶剤であることを特徴とする、上記6に記載のレジストパターン形成方法。
8.
前記露光工程(2)と前記現像工程(4)との間にベーク工程(3)を更に有することを特徴とする、上記1〜7のいずれかに記載のレジストパターン形成方法。
9.
前記露光工程(2)における露光が、電子線又はEUV光により行われることを特徴とする、上記1〜8のいずれかに記載のレジストパターン形成方法。
10.
半導体微細回路作成用であることを特徴とする、上記1〜9のいずれかに記載のレジストパターン形成方法。
【0011】
11.
前記ネガ型化学増幅型レジスト組成物が、(A)樹脂、(B)酸の作用により樹脂(A)を架橋する架橋剤、及び(C)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物を含有することを特徴とする、上記1〜10のいずれかに記載のレジストパターン形成方法。
12.
樹脂(A)が一般式(1)で表される繰り返し単位を含有する樹脂であることを特徴とする、上記11に記載のレジストパターン形成方法。
【化1】


式(1)中、
Aは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、又はシアノ基を表す。
Rはハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルケニル基、アラルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニルオキシ基又はアルキルスルホニルオキシ基を表し、複数存在する場合は同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。
aは1〜3の整数を表す。
bは0〜(3−a)の整数を表す。
13.
架橋剤(B)が、フェノール化合物であることを特徴とする、上記11又は12に記載のレジストパターン形成方法。
【0012】
14.
架橋剤(B)が、分子内にベンゼン環を2個以上有するフェノール化合物であることを特徴とする、上記13に記載のレジストパターン形成方法。
15.
ネガ型化学増幅型レジスト組成物中の架橋剤(B)の含有量が、レジスト組成物の全固形分中、3〜65質量%であることを特徴とする、上記11〜14のいずれかに記載のレジストパターン形成方法。
16.
化合物(C)が、活性光線又は放射線の照射により、スルホン酸、ビス(アルキルスルホニル)イミド、及びトリス(アルキルスルホニル)メチドの少なくとも何れかの酸を発生する化合物であることを特徴とする、上記11〜15のいずれかに記載のレジストパターン形成方法。
17.
上記1〜16のいずれかに記載のレジストパターン形成方法に用いられることを特徴とする、現像液。
18.
上記1〜16のいずれかに記載のレジストパターン形成方法に用いられることを特徴とする、有機溶剤現像用の架橋性ネガ型化学増幅型レジスト組成物。
19.
上記1〜16のいずれかに記載のレジストパターン形成方法により形成されることを特徴とする、レジストパターン。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、超微細領域での高感度、高解像性、良好なパターン形状、良好なラインウィズスラフネス、ブリッジマージン適性、倒れマージン適性、及び良好な残膜率を満足できるネガ型化学増幅型レジスト組成物を用いたパターン形成方法、それに用いられる現像液及びネガ型化学増幅型レジスト組成物、並びに該パターン形成方法により形成されるレジストパターンを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のネガ型化学増幅型レジスト組成物及びそれを用いたパターン形成方法について詳細に説明する。
なお、本明細書に於ける基(原子団)の表記に於いて、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本発明において「活性光線」又は「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等を意味する。また、本発明において光とは、活性光線又は放射線を意味する。
また、本明細書中における「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯、エキシマレーザーに代表され遠紫外線、X線、EUV光などによる露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線による描画も露光に含める。
【0015】
[パターン形成方法及びレジストパターン]
まず、本発明のネガ型化学増幅型レジスト組成物の使用形態を説明する。
本発明のパターン形成方法は、架橋反応によりネガ化する、ネガ型化学増幅型レジスト組成物を用いて膜を形成する工程(1)、該膜を露光する工程(2)、露光後に有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程(4)をこの順番で有する。
ここでネガ化とは、架橋反応により樹脂の分子量が増大して、溶剤(現像液)に不溶化することである。
また本発明のレジストパターンは、上記本発明のパターン形成方法により形成される。
【0016】
(1)製膜
ネガ型化学増幅型レジスト組成物膜を得るには、後述する各成分を溶剤に溶解し、必要に応じてフィルター濾過した後、支持体(基板)に塗布して用いる。フィルターとしては、ポアサイズ0.1ミクロン以下、より好ましくは0.05ミクロン以下、更に好ましくは0.03ミクロン以下のポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製、ナイロン製のものが好ましい。
組成物は、集積回路素子の製造に使用されるような基板(例:シリコン、二酸化シリコン被覆)上にスピナー等の適当な塗布方法により塗布される。その後乾燥し、感光性の膜を形成する。
必要により、市販の無機あるいは有機反射防止膜を使用することができる。更にレジスト下層に反射防止膜を塗布して用いることもできる。
【0017】
(2)露光
形成した該膜に、所定のマスクを通して活性光線又は放射線を照射する。なお、電子ビームの照射では、マスクを介さない描画(直描)が一般的である。
活性光線又は放射線としては特に限定されないが、例えばKrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、EUV光、電子線等であり、EUV光、電子線が好ましい。
【0018】
(3)ベーク
露光後、現像を行う前にベーク(加熱)を行うことが好ましい。
加熱温度は80〜150℃で行うことが好ましく、90〜150℃で行うことがより好ましく、100〜140℃で行うことが更に好ましい。
加熱時間は30〜300秒が好ましく、30〜180秒がより好ましく、30〜90秒が更に好ましい。
加熱は通常の露光・現像機に備わっている手段で行うことができ、ホットプレート等を用いて行っても良い。
ベークにより露光部の反応が促進され、感度やパターンプロファイルが改善する。
【0019】
(4)現像
本発明においては、有機溶剤を含む現像液を用いて現像を行う。
【0020】
・現像液
現像液に用いられる有機溶剤は、20℃に於ける蒸気圧が5kPa以下のものが好ましく、3kPa以下のものが更に好ましく、2kPa以下のものが特に好ましい。有機溶剤の蒸気圧を5kPa以下にすることにより、現像液の基板上あるいは現像カップ内での蒸発が抑制され、ウェハ面内の温度均一性が向上し、結果としてウェハ面内の寸法均一性が良化する。
現像液として用いる有機溶剤としては、種々の有機溶剤が広く使用されるが、たとえば、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤、炭化水素系溶剤等の溶剤から選択される少なくとも1種類の溶剤を用いることができる。これらの溶剤は、特に後述する式(1)で表される繰り返し単位を含有する樹脂(A)を用いた場合に好ましい。
特に、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤及びエーテル系溶剤から選択される少なくとも1種類の溶剤を含有する現像液であることが好ましい。
【0021】
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、エチル−3−エトキシプロピオネート、プロピレングリコールジアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル等のカルボン酸アルキル系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA;別名、1−メトキシ−2−アセトキシプロパン)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート系溶剤等を挙げることができ、酢酸ブチル、酢酸アミル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートがより好ましい。
ケトン系溶剤としては、例えば、1−オクタノン、2−オクタノン、1−ノナノン、2−ノナノン、アセトン、4−ヘプタノン、1−ヘキサノン、2−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、イソホロン、プロピレンカーボネート等を挙げることができ、アルキルケトン系溶剤、例えばメチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンがより好ましい。
アルコール系溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール等のヘキシルアルコール、n−ヘプチルアルコール等のヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール等のオクチルアルコール、n−デカノール等のデカノール等のアルコールや、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール等のグリコール系溶剤や、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME;別名、1−メトキシ−2−プロパノール)、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル系溶剤、メトキシメチルブタノール、プロピレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、フェノール、クレゾールなどのフェノール系溶剤等を挙げることができ、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、1−オクタノール、2エチル−ヘキサノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、クレゾールがより好ましい。
【0022】
アミド系溶剤としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が使用できる。
エーテル系溶剤としては、例えば、上記アルキレングリコールモノアルキルエーテル系溶剤及びグリコールエーテル系溶剤の他、ジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等が挙げられる。
炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられる。
【0023】
現像液が、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート系溶剤、アルキレングリコールモノアルキルエーテル系溶剤、カルボン酸アルキル系溶剤、及びアルキルケトン系溶剤から選ばれる1種類以上の溶剤を含有することが好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、乳酸エチル、及び酢酸ブチルから選ばれる1種類以上の溶剤を含有することがより好ましい。
【0024】
現像液としては、分子内に水酸基を有さないエステル系溶剤、分子内に水酸基を有さないケトン系溶剤、及び分子内に水酸基を有さないエーテル系溶剤からなる群より選ばれる少なくとも1種類の有機溶剤を含有する現像液を用いることが好ましい。
【0025】
上記現像液としてより具体的には、下記一般式(S1)から(S3)のいずれかで表される、分子内に水酸基を含有しない有機溶剤を含有する現像液を用いることが好ましい。
【0026】
【化2】

【0027】
一般式(S1)〜(S3)に於いて、
R及びR’は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基の炭素数は、通常1〜6の範囲である。R及びR’は、互いに結合して環(好ましくは5又は6員環)を形成してもよい。これらの基、及び、RとR’とが互いに結合して形成する環は水酸基、カルボニル基を含む基(例えば、アシル基、アルデヒド基等)、シアノ基、アルコキシ基、アルキルエステル基等で更に置換されていても良い。
【0028】
分子内に水酸基を有さない有機溶剤としては、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、エチルー3−エトキシプロピオネート、プロピレングリコールジアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート等のエステル系溶剤、上記ケトン系溶剤のうちジアセトニルアルコールやアセチルカービノール等の分子内に水酸基を有するケトン系溶剤以外のケトン系溶剤、ジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル系溶剤が好ましく、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、及び酢酸ブチルから選ばれる1種以上を含有することがより好ましい。
上記の溶剤は、複数混合してもよいし、上記以外の溶剤や水と混合し使用してもよい。
現像液における有機溶剤(複数混合の場合は合計)の濃度は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは90質量%以上である。特に好ましくは、実質的に有機溶剤のみからなる場合である。なお、実質的に有機溶剤のみからなる場合とは、微量の界面活性剤、酸化防止剤、安定剤、消泡剤などを含有する場合を含むものとする。
【0029】
現像液中の含水率は、10質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下、最も好ましくは実質的に水分を含有しないことである。含水率を10質量%以下にすることで、良好な現像特性を得ることができる。
【0030】
・界面活性剤
有機溶剤を含む現像液には、必要に応じて界面活性剤を適当量添加することができる。
界面活性剤としては、後述する、レジスト組成物に用いられる界面活性剤と同様のものを用いることができる。
界面活性剤の使用量は現像液の全量に対して、通常0.001〜5質量%、好ましくは0.005〜2質量%、更に好ましくは0.01〜0.5質量%である。
【0031】
・現像方法
現像方法としては、たとえば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液塗出ノズルをスキャンしながら現像液を塗出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)などを適用することができる。
また、現像を行う工程の後に、他の溶媒に置換しながら、現像を停止する工程を実施してもよい。
現像時間は未露光部の樹脂、架橋剤などが充分に溶解する時間が好ましく、通常は10秒〜300秒が好ましい。更に好ましくは、20秒〜120秒である。
現像液の温度は0℃〜50℃が好ましく、15℃〜35℃が更に好ましい。
現像液量は現像方法により適宜調整可能である。
【0032】
(5)リンス
本発明のパターン形成方法では、現像工程(4)の後に、有機溶剤を含むリンス液を用いて洗浄する工程(5)を含むことできる。
【0033】
・リンス液
リンス液に用いられる有機溶剤は、20℃に於ける蒸気圧が0.05kPa以上、5kPa以下のものが好ましく、0.1kPa以上、5kPa以下のものが更に好ましく、0.12kPa以上、3kPa以下のものが最も好ましい。リンス液に用いられる有機溶剤の蒸気圧を0.05kPa以上、5kPa以下にすることにより、ウェハ面内の温度均一性が向上し、更にはリンス液の浸透に起因した膨潤が抑制され、ウェハ面内の寸法均一性が良化する。
【0034】
前記リンス液としては、種々の有機溶剤が用いられるが、たとえば、式(1)で表される繰り返し単位を含有する樹脂を樹脂(A)として用いた場合には、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤から選択される少なくとも1種類の有機溶剤又は水を含有するリンス液を用いることが好ましい。
より好ましくは、現像の後に、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及び炭化水素系溶剤から選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。更により好ましくは、現像の後に、アルコール系溶剤及び炭化水素系溶剤からなる群より選ばれる少なくとも1種類以上の有機溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。
リンス液として用いられる、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤及び炭化水素系溶剤の具体例は、前述の現像液で説明されたものと同様である。
特に好ましくは、一価のアルコール系溶剤及び炭化水素系溶剤からなる群より選ばれる少なくとも1種類以上の有機溶剤を含有するリンス液を用いる。
【0035】
ここで、現像後のリンス工程で用いられる1価のアルコール系溶剤としては、直鎖状、分岐状、環状の1価アルコールが挙げられ、具体的には、1−ブタノール、2−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、tert―ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノールなどを用いることができ、好ましくは、1−ブタノール、2−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、イソプロピルアルコールである。
炭化水素系溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、オクタン、デカン、ドデカン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられる。
【0036】
前記各成分は、複数混合してもよいし、上記以外の有機溶剤と混合し使用してもよい。
【0037】
上記有機溶剤は水と混合しても良いが、リンス液中の含水率は通常30質量%以下であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。リンス液は、水を含有しないことが最も好ましい。含水率を30質量%以下にすることで、良好な現像特性を得ることができる。
【0038】
リンス液には、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
界面活性剤としては、後述する、レジスト組成物に用いられる界面活性剤と同様のものを用いることができ、その使用量はリンス液の全量に対して、通常0.001〜5質量%、好ましくは0.005〜2質量%、更に好ましくは0.01〜0.5質量%である。
【0039】
・リンス方法
リンス工程においては、現像を行ったウェハを前記の有機溶剤を含むリンス液を用いて洗浄処理する。
洗浄処理の方法は特に限定されないが、たとえば、一定速度で回転している基板上にリンス液を塗出しつづける方法(回転塗布法)、リンス液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)、などを適用することができ、この中でも回転塗布方法で洗浄処理を行い、洗浄後に基板を2000rpm〜4000rpmの回転数で回転させ、リンス液を基板上から除去することが好ましい。基板の回転時間は、回転数に応じて、リンス液の基板上からの除去を達成する範囲で設定可能だが、通常10秒間から3分間である。なお、室温条件で、リンスすることが好ましい。
リンス時間は現像溶剤がウエハー上に残存しないようにすることが好ましく、通常は10秒〜300秒が好ましい。更に好ましくは、20秒〜120秒である。
リンス液の温度は0℃〜50℃が好ましく、15℃〜35℃が更に好ましい。
リンス液量はリンス方法により適宜調整できる。
【0040】
また、現像処理又は、リンス処理の後に、パターン上に付着している現像液又はリンス液を超臨界流体により除去する処理を行うことができる。
更に、現像処理、リンス処理又は超臨界流体による処理の後、パターン中に残存する溶剤を除去するために加熱処理を行うことができる。加熱温度及び時間は、良好なレジストパターンが得られる限り特に限定されるものではなく、通常40℃〜160℃、10秒間から3分間である。加熱処理は複数回行っても良い。
【0041】
[ネガ型化学増幅型レジスト組成物]
以下に、本発明のパターン形成方法に用いる、架橋反応によりネガ化する、ネガ型化学増幅型レジスト組成物について説明する。
架橋反応によりネガ化する、ネガ型化学増幅型レジスト組成物は、(A)樹脂、(B)酸の作用により樹脂(A)を架橋する架橋剤、(C)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物を含有することが好ましい。
【0042】
[1](A)樹脂
酸により架橋する化合物(B)とともに、樹脂(A)を使用する。ここでは架橋剤(B)と架橋することができる公知の樹脂を樹脂(A)として使用することができる。
樹脂(A)は、酸基を含有していてもよい。
酸基としては、フェノール性水酸基、カルボキシル基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基等が挙げられる。
好ましい酸基としては、フェノール性水酸基、カルボキシル基、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール)、スルホン酸基が挙げられる。
例えば、ヒドロキシスチレン、部分水添ヒドロキシスチレン、ノボラック樹脂、(メタ)アクリル系ポリマー((メタ)アクリル酸含有ポリマーなど)、水酸基含有ポリマー、ポリ酢酸ビニル、ジエンコポリマー、エポキシ基含有ポリマー等を、好ましく使用できる樹脂(A)として挙げることが出来る。
電子線やEUV露光における二次電子発生効率の観点から、樹脂(A)はベンゼン環を有することが好ましく、一般式(1)で表される繰り返し単位を含有することが更に好ましい。
【0043】
【化3】

【0044】
式(1)中、
Aは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、又はシアノ基を表す。
Rはハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルケニル基、アラルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニルオキシ基又はアルキルスルホニルオキシ基を表し、複数存在する場合は同じでも異なっていてもよい。
aは1〜3の整数を表す。好ましくは、aは1である。
bは0〜(3−a)の整数を表す。bは好ましくは0又は1であり、より好ましくは0である。
【0045】
一般式(1)において、Aとしてのアルキル基は、更に置換基を有していてもよく、炭素数1〜3のアルキル基が好ましい。Aとしてのシクロアルキル基は、更に置換基を有していてもよく、単環でも多環でもよく、炭素数5〜10のシクロアルキル基が好ましい。Aとしてのハロゲン原子としては、Cl、Br、F等を挙げることができる。Aは、好ましくは水素原子、炭素数1〜3のアルキル基(メチル基、エチル基等)であり、特に好ましくは水素原子、メチル基である。
Rとしてはハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニルオキシ基又はアルキルスルホニルオキシ基を挙げることができ、更に置換基を有していてもよい。Rとしてのハロゲン原子は、Cl、Br、F、I等を挙げることができる。また、複数のRを有する場合には、互いに結合して環(好ましくは5又は6員環)を形成してもよい。
【0046】
Rは、好ましくはハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数5〜10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜15のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数7〜16のアラルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜8のアルキルカルボニルオキシ基、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキルスルホニルオキシ基である。
【0047】
Rとして、より好ましくは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜4のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜4のアルキルカルボニルオキシ基であり、特に好ましくは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1〜3のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基)、炭素数1〜3のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基)である。
【0048】
A、Rが更に有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基等)、アリール基(フェニル基、ナフチル基等)、アラルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、アシル基(アセチル基、プロパノイル基、ベンゾイル基等)、オキソ基を挙げることができ、好ましくは炭素数15以下の置換基である。
【0049】
一般式(1)で表される繰り返し単位における置換基(−(OH)a及び(R)b)は、樹脂の主鎖からの結合に対してパラ位、メタ位、オルト位のいずれであってもよいが、少なくともメタ位に−OHが存在することが好ましい。
【0050】
本発明で用いられる樹脂(A)は、一般式(1)で表される繰り返し単位とともに、一般式(2)〜(4)のいずれかで表される繰り返し単位の少なくとも一種を有することもできる。
【0051】
【化4】

【0052】
一般式(2)〜(4)において、
Aは前記一般式(1)のAと同義である。
Xは単結合、−COO−基、−O−基、又は−CON(R16)−基を表し、R16は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基等)を表す。Xとして好ましくは、単結合、−COO−、−CON(R16)−であり、特に好ましくは単結合、−COO−基である。
Yで示される環構造は、3環以上の多環芳香族炭化水素環構造を表し、好ましくは下記構造式で表されるいずれかを表す。
【0053】
【化5】

【0054】
11〜R15はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルケニル基、アラルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、ニトロ基又はシアノ基を表す。R11〜R15は互いに結合し、環(好ましくは5又は6員環)を形成してもよい。R11〜R15で表されるハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルケニル基、アラルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニルオキシ基及びアルキルスルホニルオキシ基は、具体的には一般式(1)のRと同様のものが挙げられる。R11〜R15で表されるアリールカルボニルオキシ基は、好ましくは置換基を有していてもよい炭素数7〜16のアリールカルボニルオキシ基である。
101〜R106はそれぞれ独立に、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(Cl、Br、F、I)、置換基を有していてもよい炭素数1〜8の直鎖又は分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜8の直鎖又は分岐状のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜8の直鎖又は分岐状のアルキルカルボニルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜8の直鎖又は分岐状のアルキルスルホニルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜15のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数7〜16のアラルキル基、カルボキシ基、水酸基を有していてもよい炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基を表す。
c〜hはそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。
【0055】
これらの置換基の具体例としては、前記一般式(1)のRが更に有していてもよい置換基の例として挙げたものと同じものが挙げられる。
101〜R106として好ましくは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜4のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜4のアルキルカルボニルオキシ基であり、特に好ましくは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1〜3のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基)、炭素数1〜3のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基)、炭素数2又は3のアルキルカルボニルオキシ基(アセトキシ基、プロピオニルオキシ基等)である。
【0056】
本発明で用いられる樹脂(A)は、一般式(1)で表される繰り返し単位を1種のみを有する樹脂、一般式(1)で表される繰り返し単位を2種以上有する樹脂、一般式(1)で表される繰り返し単位と、一般式(2)〜(4)のいずれかで表される繰り返し単位の少なくとも1種とを有する樹脂のいずれであってもよいが、製膜性や溶剤溶解性を制御できるような他の重合性モノマーを共重合させてもよい。
これらの重合性モノマーの例としては、スチレン、アルキル置換スチレン、アルコキシスチレン、アシルオキシスチレン、水素化ヒドロキシスチレン、無水マレイン酸、アクリル酸誘導体(アクリル酸、アクリル酸エステル等)、メタクリル酸誘導体(メタクリル酸、メタクリル酸エステル等)、N−置換マレイミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
また、上記とは別に、好ましい樹脂の繰り返し単位として、主鎖に環状構造を有する単位(インデン構造を有するモノマーに由来する単位など)、ナフトール構造を有する単位、−C(CFOH基を有する繰り返し単位なども挙げられる。
本発明において、樹脂(A)は単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0057】
本発明に用いられる樹脂(A)における一般式(1)で表される繰り返し単位の含有量の範囲は、一般的に50〜100モル%、好ましくは70〜100モル%である。
樹脂(A)において、一般式(1)で表される繰り返し単位と、一般式(2)〜(4)で表される繰り返し単位の比率は、モル比で100/0〜50/50が好ましく、より好ましくは100/0〜60/40であり、特に好ましくは100/0〜70/30である。
樹脂(A)の好ましい分子量は、質量平均分子量として1000〜50000であり、更に好ましくは2000〜20000である。
樹脂(A)の好ましい分子量分布(Mw/Mn)は、1.0〜2.0であり、より好ましくは1.0〜1.35である。
樹脂(A)の添加量(複数併用する場合は合計の量)は組成物の全固形分に対して、30〜95質量%、好ましくは40〜90質量%、特に好ましくは50〜80質量%で用いられる。なお、樹脂の分子量及び分子量分布は、GPC測定によるポリスチレン換算値として定義される。
【0058】
樹脂(A)は、公知のラジカル重合法やアニオン重合法により合成することができる。例えば、ラジカル重合法では、ビニルモノマーを適当な有機溶媒に溶解し、過酸化物(過酸化ベンゾイル等)やニトリル化合物(アゾビスイソブチロニトリル等)、又はレドックス化合物(クメンヒドロペルオキシド−第一鉄塩等)を開始剤として、室温又は加温条件下で反応させて重合体を得ることができる。また、アニオン重合法では、ビニルモノマーを適当な有機溶媒に溶解し、金属化合物(ブチルリチウム等)を開始剤として、通常、冷却条件化で反応させて重合体を得ることができる。
【0059】
以下に本発明で使用される樹脂(A)の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
具体例中のnは正の整数を表す。
x、y、zは樹脂組成のモル比を表し、2成分からなる樹脂では、x=10〜95、y=5〜90、好ましくはx=40〜90、y=10〜60の範囲で使用される。3成分からなる樹脂では、x=10〜90、y=5〜85、z=5〜85、好ましくはx=40〜80、y=10〜50、z=10〜50の範囲で使用される。また、これらは単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0060】
【化6】

【0061】
【化7】

【0062】
【化8】

【0063】
【化9】

【0064】
【化10】

【0065】
【化11】

【0066】
【化12】

【0067】
【化13】

【0068】
【化14】

【0069】
【化15】

【0070】
【化16】

【0071】
[2](B)架橋剤
本発明においては、樹脂(A)とともに、酸の作用により樹脂(A)を架橋する化合物(以下、架橋剤と称する)を使用する。ここでは公知の架橋剤を有効に使用することができる。
架橋剤(B)は、例えば、樹脂(A)を架橋しうる架橋性基を有している化合物であり、好ましくは架橋性基として、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、アシルオキシメチル基、又はアルコキシメチルエーテル基を2個以上有する化合物あるいは樹脂、又はエポキシ化合物である。
更に好ましくは、アルコキシメチル化、アシルオキシメチル化メラミン化合物あるいは樹脂、アルコキシメチル化、アシルオキシメチル化ウレア化合物あるいは樹脂、ヒドロキシメチル化又はアルコキシメチル化フェノール化合物あるいは樹脂、及びアルコキシメチルエーテル化フェノール化合物あるいは樹脂等が挙げられる。
【0072】
特に好ましい架橋剤(B)としては、分子量が1200以下、分子内にベンゼン環を3〜5個含み、更にヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基を合わせて2個以上有し、そのヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基を少なくともいずれかのベンゼン環に集中させ、あるいは振り分けて結合してなるフェノール誘導体を挙げることができる。このようなフェノール誘導体を用いることにより、本発明の効果をより顕著にすることができる。ベンゼン環に結合するアルコキシメチル基としては、炭素数6個以下のものが好ましい。具体的にはメトキシメチル基、エトキシメチル基、n−プロポキシメチル基、i−プロポキシメチル基、n−ブトキシメチル基、i−ブトキシメチル基、sec−ブトキシメチル基、t−ブトキシメチル基が好ましい。更に、2−メトキシエトキシ基及び、2−メトキシ−1−プロポキシ基の様に、アルコキシ置換されたアルコキシ基も好ましい。
架橋剤(B)は、分子内にベンゼン環を有するフェノール化合物であることが好ましく、分子内にベンゼン環を2個以上有するフェノール化合物であることがより好ましく、また、窒素原子を含まないフェノール化合物であることが好ましい。
架橋剤(B)は、樹脂(A)を架橋しうる架橋性基を1分子あたり2〜8個有するフェノール化合物であることが好ましく、架橋性基を3〜6個有することがより好ましい。
【0073】
これらのフェノール誘導体の内、特に好ましいものを以下に挙げる。式中、L〜Lはアルコキシメチル基等の架橋性基を示し、同じであっても異なっていてもよく、架橋性基としては好ましくはヒドロキシメチル基、メトキシメチル基又はエトキシメチル基を示す。
【0074】
【化17】

【0075】
【化18】

【0076】
【化19】

【0077】
【化20】

【0078】
架橋剤(B)は、市販されているものを用いることもでき、また公知の方法で合成することもできる。例えば、ヒドロキシメチル基を有するフェノール誘導体は、対応するヒドロキシメチル基を有さないフェノール化合物(上記式においてL〜Lが水素原子である化合物)とホルムアルデヒドを塩基触媒下で反応させることによって得ることができる。この際、樹脂化やゲル化を防ぐために、反応温度を60℃以下で行うことが好ましい。具体的には、特開平6−282067号、特開平7−64285号等に記載されている方法にて合成することができる。
【0079】
アルコキシメチル基を有するフェノール誘導体は、対応するヒドロキシメチル基を有するフェノール誘導体とアルコールを酸触媒下で反応させることによって得ることができる。この際、樹脂化やゲル化を防ぐために、反応温度を100℃以下で行うことが好ましい。具体的には、EP632003A1等に記載されている方法にて合成することができる。このようにして合成されたヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基を有するフェノール誘導体は、保存時の安定性の点で好ましいが、アルコキシメチル基を有するフェノール誘導体は保存時の安定性の観点から特に好ましい。ヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基を合わせて2個以上有し、いずれかのベンゼン環に集中させ、あるいは振り分けて結合してなるこのようなフェノール誘導体は、単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0080】
また架橋剤としては、以下の(i)N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル基、若しくはN−アシルオキシメチル基を有する化合物、及び(ii)エポキシ化合物も挙げることができる。
【0081】
(i)N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル基、若しくはN−アシルオキシメチル基を有する化合物としては、下記一般式(CLNM−1)で表される部分構造を2個以上(より好ましくは2〜8個)有する化合物が好ましい。
【0082】
【化21】

【0083】
一般式(CLNM−1)に於いて、
NM1は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又はオキソアルキル基を表す。
【0084】
一般式(CLNM−1)に於ける、RNM1のアルキル基は、炭素数1〜6の直鎖又は分岐のアルキル基が好ましい。RNM1のシクロアルキル基は、炭素数5〜6のシクロアルキル基が好ましい。RNM1のオキソアルキル基は、炭素数3〜6のオキソアルキル基が好ましく、例えば、β‐オキソプロピル基、β‐オキソブチル基、β‐オキソペンチル基、β‐オキソへキシル基等を挙げることができる。
【0085】
一般式(CLNM−1)で表される部分構造を2個以上有する化合物のより好ましい態様として、下記一般式(CLNM−2)で表されるウレア系架橋剤、下記一般式(CLNM−3)で表されるアルキレンウレア系架橋剤、下記一般式(CLNM−4)で表されるグリコールウリル系架橋剤、下記一般式(CLNM−5)で表されるメラミン系架橋剤が挙げられる。
【0086】
【化22】

【0087】
一般式(CLNM−2)に於いて、
NM1は、各々独立に、一般式(CLNM−1)に於ける、RNM1と同様のものである。
NM2は、各々独立に、水素原子、アルキル基(炭素数1〜6が好ましい)、又はシクロアルキル基(炭素数5〜6が好ましい)を表す。
【0088】
一般式(CLNM−2)で表されるウレア系架橋剤の具体例としては、例えば、N,N−ジ(メトキシメチル)ウレア、N,N−ジ(エトキシメチル)ウレア、N,N−ジ(プロポキシメチル)ウレア、N,N−ジ(イソプロポキシメチル)ウレア、N,N−ジ(ブトキシメチル)ウレア、N,N−ジ(t−ブトキシメチル)ウレア、N,N−ジ(シクロヘキシルオキシメチル)ウレア、N,N−ジ(シクロペンチルオキシメチル)ウレア、N,N−ジ(アダマンチルオキシメチル)ウレア、N,N−ジ(ノルボルニルオキシメチル)ウレア等が挙げられる。
【0089】
【化23】

【0090】
一般式(CLNM−3)に於いて、
NM1は、各々独立に、一般式(CLNM−1)に於ける、RNM1と同様のものである。
NM3は、各々独立に、水素原子、ヒドロキシル基、直鎖又は分岐のアルキル基(炭素数1〜6が好ましい)、シクロアルキル基(炭素数5〜6が好ましい)、オキソアルキル基(炭素数1〜6が好ましい)、アルコキシ基(炭素数1〜6が好ましい)又はオキソアルコキシ基(炭素数1〜6が好ましい)を表す。
Gは、単結合、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基(炭素数1〜3が好ましい)又はカルボニル基を表す。より具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、1−メチルエチレン基、ヒドロキシメチレン基、シアノメチレン基等が挙げられる。
【0091】
一般式(CLNM−3)で表されるアルキレンウレア系架橋剤の具体例としては、例えば、N,N−ジ(メトキシメチル)‐4,5−ジ(メトキシメチル)エチレンウレア、N,N−ジ(エトキシメチル)‐4,5−ジ(エトキシメチル)エチレンウレア、N,N−ジ(プロポキシメチル)‐4,5−ジ(プロポキシメチル)エチレンウレア、N,N−ジ(イソプロポキシメチル)‐4,5−ジ(イソプロポキシメチル)エチレンウレア、N,N−ジ(ブトキシメチル)‐4,5−ジ(ブトキシメチル)エチレンウレア、N,N−ジ(t−ブトキシメチル)‐4,5−ジ(t−ブトキシメチル)エチレンウレア、N,N−ジ(シクロヘキシルオキシメチル)‐4,5−ジ(シクロヘキシルオキシメチル)エチレンウレア、N,N−ジ(シクロペンチルオキシメチル)‐4,5−ジ(シクロペンチルオキシメチル)エチレンウレア、N,N−ジ(アダマンチルオキシメチル)‐4,5−ジ(アダマンチルオキシメチル)エチレンウレア、N,N−ジ(ノルボルニルオキシメチル)‐4,5−ジ(ノルボルニルオキシメチル)エチレンウレア等が挙げられる。
【0092】
【化24】

【0093】
一般式(CLNM−4)に於いて、
NM1は、各々独立に、一般式(CLNM−1)に於ける、RNM1と同様のものである。
NM4は、各々独立に、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、シクロアルキル基又はアルコキシ基を表す。
【0094】
NM4のアルキル基(炭素数1〜6が好ましい)、シクロアルキル基(炭素数5〜6が好ましい)、アルコキシ基(炭素数1〜6が好ましい)として、より具体的には、メチル基、エチル基、ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
【0095】
一般式(CLNM−4)で表されるグリコールウリル系架橋剤の具体例としては、例えば、N,N,N,N−テトラ(メトキシメチル)グリコールウリル、N,N,N,N−テトラ(エトキシメチル)グリコールウリル、N,N,N,N−テトラ(プロポキシメチル)グリコールウリル、N,N,N,N−テトラ(イソプロポキシメチル)グリコールウリル、N,N,N,N−テトラ(ブトキシメチル)グリコールウリル、N,N,N,N−テトラ(t−ブトキシメチル)グリコールウリル、N,N,N,N−テトラ(シクロヘキシルオキシメチル)グリコールウリル、N,N,N,N−テトラ(シクロペンチルオキシメチル)グリコールウリル、N,N,N,N−テトラ(アダマンチルオキシメチル)グリコールウリル、N,N,N,N−テトラ(ノルボルニルオキシメチル)グリコールウリル等が挙げられる。
【0096】
【化25】

【0097】
一般式(CLNM−5)に於いて、
NM1は、各々独立に、一般式(CLNM−1)に於ける、RNM1と同様のものである。
NM5は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又は下記一般式(CLNM−5´)で表される原子団を表す。
NM6は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又は下記一般式(CLNM−5´´)で表される原子団を表す。
【0098】
【化26】

【0099】
一般式(CLNM−5´)において、
NM1は、一般式(CLNM−1)に於ける、RNM1と同様のものである。
一般式(CLNM−5´´)において、
NM1は、一般式(CLNM−1)に於ける、RNM1と同様のものであり、RNM5は、一般式(CLNM−5)に於けるRNM5と同様のものである。
【0100】
NM5及びRNM6のアルキル基(炭素数1〜6が好ましい)、シクロアルキル基(炭素数5〜6が好ましい)、アリール基(炭素数6〜10が好ましい)として、より具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t‐ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0101】
一般式(CLNM−5)で表されるメラミン系架橋剤としては、例えば、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(メトキシメチル)メラミン、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(エトキシメチル)メラミン、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(プロポキシメチル)メラミン、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(イソプロポキシメチル)メラミン、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(ブトキシメチル)メラミン、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(t−ブトキシメチル)メラミン、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(シクロヘキシルオキシメチル)メラミン、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(シクロペンチルオキシメチル)メラミン、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(アダマンチルオキシメチル)メラミン、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(ノルボルニルオキシメチル)メラミン、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(メトキシメチル)アセトグアナミン、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(エトキシメチル)アセトグアナミン、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(プロポキシメチル)アセトグアナミン、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(イソプロポキシメチル)アセトグアナミン、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(ブトキシメチル)アセトグアナミン、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(t−ブトキシメチル)アセトグアナミン、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(メトキシメチル)ベンゾグアナミン、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(エトキシメチル)ベンゾグアナミン、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(プロポキシメチル)ベンゾグアナミン、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(イソプロポキシメチル)ベンゾグアナミン、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(ブトキシメチル)ベンゾグアナミン、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(t−ブトキシメチル)ベンゾグアナミン、等が挙げられる。
【0102】
一般式(CLNM−1)〜(CLNM−5)に於ける、RNM1〜RNM6で表される基は、更に置換基を有してもよい。RNM1〜RNM6が有してもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20)、アリール基(好ましくは炭素数6〜14)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20)、シクロアルコキシ基(好ましくは炭素数3〜20)、アシル基(好ましくは炭素数2〜20)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20)等を挙げることができる。
以下に、上記一般式(CLNM−1)で表される部分構造を2個以上有する化合物の具体例を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0103】
【化27】

【0104】
(ii)エポキシ化合物としては、下記一般式(EP1)で表される化合物が挙げられる。
【0105】
【化28】

【0106】
式(EP1)中、
EP1〜REP3は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基又はシクロアルキル基を表し、該アルキル基及びシクロアルキル基は置換基を有していてもよい。またREP1とREP2、REP2とREP3は、互いに結合して環構造を形成していてもよい。
アルキル基及びシクロアルキル基が有していてもよい置換基としては例えば、ヒドロキシル基、シアノ基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホン基、アルキルスルホニル基、アルキルアミノ基、アルキルアミド基、などが挙げられる。
EPは単結合若しくはnEP価の有機基を表す。REP1〜REP3は、これら同士だけでなくQEPとも結合して環構造を形成していても良い。
EPは2以上の整数を表し、好ましくは2〜10、更に好ましくは2〜6である。但しQEPが単結合の場合、nEPは2である。
【0107】
EPがnEP価の有機基の場合、鎖状若しくは環状のnEP価の飽和炭化水素基(炭素数2〜20が好ましい)、nEP価の芳香環基(炭素数6〜30が好ましい)、又は鎖状若しくは環状の飽和炭化水素若しくは芳香族炭化水素に、エーテル、エステル、アミド、スルホンアミド、アルキレン(炭素数1〜4が好ましく、メチレンがより好ましい)等の2価の連結基、−N(−)等の3価の連結基又はこれらの組み合わせが連結した構造を有するnEP価の有機基などが好ましい。
【0108】
以下に(B)エポキシ構造を有する化合物の具体例を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0109】
【化29】

【0110】
架橋剤は、残膜率及び解像力が低下することを防止するとともに、レジスト液の保存時の安定性を良好に保つ観点から、レジスト組成物の全固形分中、好ましくは3〜65質量%、より好ましくは5〜50質量%、更に好ましくは10〜45質量%の添加量で用いられる。
本発明において、架橋剤は単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。例えば、上記のフェノール誘導体に加え、他の架橋剤、例えば上述の(i)、(ii)等を併用する場合、上記のフェノール誘導体と他の架橋剤の比率は、モル比で100/0〜20/80、好ましくは90/10〜40/60、更に好ましくは80/20〜50/50である。
【0111】
[3](C)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物
本発明の組成物は、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(以下、「酸発生剤」ともいう)を含有する。
酸発生剤としては、公知のものであれば特に限定されないが、活性光線又は放射線の照射により、有機酸、例えば、スルホン酸、ビス(アルキルスルホニル)イミド、及びトリス(アルキルスルホニル)メチドの少なくともいずれかを発生する化合物が好ましい。
より好ましくは下記一般式(ZI)、(ZII)、(ZIII)で表される化合物を挙げることができる。
【0112】
【化30】

【0113】
上記一般式(ZI)において、
201、R202及びR203は、各々独立に、有機基を表す。
201、R202及びR203としての有機基の炭素数は、一般的に1〜30、好ましくは1〜20である。
【0114】
201、R202及びR203の有機基としては、アリール基、アルキル基、シクロアルキル基などが挙げられる。
201、R202及びR203のアリール基としては、通常炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜10であり、フェニル基、ナフチル基がより好ましく、更に好ましくはフェニル基である。アリール基は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等を有する複素環構造を有するアリール基であってもよい。複素環構造としては、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン等を挙げることができる。
【0115】
201、R202及びR203のアルキル基及びシクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基を挙げることができる。アルキル基として、より好ましくは2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基を挙げることができる。シクロアルキル基として、より好ましくは、2−オキソシクロアルキル基を挙げることができる。
【0116】
2−オキソアルキル基は、直鎖又は分岐のいずれであってもよく、好ましくは、上記のアルキル基の2位に>C=Oを有する基を挙げることができる。
2−オキソシクロアルキル基は、好ましくは、上記のシクロアルキル基の2位に>C=Oを有する基を挙げることができる。
【0117】
201、R202及びR203は、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば炭素数1〜5)、水酸基、シアノ基、ニトロ基等によって更に置換されていてもよい。
また、R201〜R203のうち2つが結合して環構造(好ましくは3〜15員環)を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、カルボニル基を含んでいてもよい。R201〜R203の内の2つが結合して形成する基としては、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)を挙げることができる。
は、非求核性アニオン(求核反応を起こす能力が著しく低いアニオン)を表す。
【0118】
非求核性アニオンとしては、例えば、スルホン酸アニオン(脂肪族スルホン酸アニオン、芳香族スルホン酸アニオン、カンファースルホン酸アニオンなど)、カルボン酸アニオン(脂肪族カルボン酸アニオン、芳香族カルボン酸アニオン、アラルキルカルボン酸アニオンなど)、スルホニルイミドアニオン、ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオン等を挙げられる。
【0119】
脂肪族スルホン酸アニオン及び脂肪族カルボン酸アニオンにおける脂肪族部位は、アルキル基であってもシクロアルキル基であってもよく、好ましくは炭素数1〜30の直鎖又は分岐のアルキル基及び炭素数3〜30のシクロアルキル基が挙げられる。
【0120】
芳香族スルホン酸アニオン及び芳香族カルボン酸アニオンにおける芳香族基としては、好ましくは炭素数6〜14のアリール基、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基等を挙げることができる。
【0121】
脂肪族スルホン酸アニオン及び芳香族スルホン酸アニオンにおけるアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基は、置換基を有していてもよい。この具体例としては、ニトロ基、フッ素原子などのハロゲン原子、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、シアノ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜15)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜15)、アリール基(好ましくは炭素数6〜14)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜7)、アシル基(好ましくは炭素数2〜12)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜7)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜15)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜15)、アルキルイミノスルホニル基(好ましくは炭素数2〜15)、アリールオキシスルホニル基(好ましくは炭素数6〜20)、アルキルアリールオキシスルホニル基(好ましくは炭素数7〜20)、シクロアルキルアリールオキシスルホニル基(好ましくは炭素数10〜20)、アルキルオキシアルキルオキシ基(好ましくは炭素数5〜20)、シクロアルキルアルキルオキシアルキルオキシ基(好ましくは炭素数8〜20)等を挙げることができる。
各基が有するアリール基及び環構造については、置換基として更にアルキル基(好ましくは炭素数1〜15)を挙げることができる。
【0122】
アラルキルカルボン酸アニオンにおけるアラルキル基としては、好ましくは炭素数6〜12のアラルキル基、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、ナフチルブチル基等を挙げることができる。
【0123】
スルホニルイミドアニオンとしては、例えば、サッカリンアニオンを挙げることができる。
【0124】
ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオンにおけるアルキル基は、炭素数1〜5のアルキル基が好ましい。これらのアルキル基の置換基としてはハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されたアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルオキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、シクロアルキルアリールオキシスルホニル基等を挙げることができ、フッ素原子又はフッ素原子で置換されたアルキル基が好ましい。
また、ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオンにおけるアルキル基は、互いに結合して環構造を形成してもよい。これにより、酸強度が増加する。
【0125】
その他の非求核性アニオンとしては、例えば、弗素化燐(例えばPF)、弗素化硼素(例えばBF)、弗素化アンチモン(例えばSbF)等を挙げることができる。
【0126】
非求核性アニオンとしては、スルホン酸の少なくともα位がフッ素原子で置換された脂肪族スルホン酸アニオン、フッ素原子又はフッ素原子を有する基で置換された芳香族スルホン酸アニオン、アルキル基がフッ素原子で置換されたビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、アルキル基がフッ素原子で置換されたトリス(アルキルスルホニル)メチドアニオンが好ましい。非求核性アニオンとして、より好ましくはパーフロロ脂肪族スルホン酸アニオン(更に好ましくは炭素数4〜8)、フッ素原子を有するベンゼンスルホン酸アニオン、更により好ましくはノナフロロブタンスルホン酸アニオン、パーフロロオクタンスルホン酸アニオン、ペンタフロロベンゼンスルホン酸アニオン、3,5−ビス(トリフロロメチル)ベンゼンスルホン酸アニオンである。
【0127】
酸強度の観点からは、発生酸のpKaが−1以下であることが、感度向上のために好ましい。
【0128】
また、非求核性アニオンとしては、以下の一般式(AN1)で表されるアニオンも好ましい態様として挙げられる。
【0129】
【化31】

【0130】
式中、
Xfは、それぞれ独立に、フッ素原子、又は少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。
、Rは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、及び、アルキル基から選ばれる基を表し、複数存在する場合のR、Rは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。 Lは、二価の連結基を表し、複数存在する場合のLは同一でも異なっていてもよい。
Aは、環状構造を有する基を表す。
xは1〜20の整数を表し、yは0〜10の整数を表し、zは0〜10の整数を表す。
【0131】
一般式(AN1)について、更に詳細に説明する。
Xfのフッ素原子で置換されたアルキル基におけるアルキル基としては、好ましくは炭素数1〜10であり、より好ましくは炭素数1〜4である。また、Xfのフッ素原子で置換されたアルキル基は、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。
Xfとして好ましくは、フッ素原子又は炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基である。具体的には、フッ素原子、CF、C、C、C、C11、C13、C15、C17、CHCF、CHCHCF、CH、CHCH、CH、CHCH、CH、CHCHが挙げられ、中でもフッ素原子、CFが好ましい。特に、双方のXfがフッ素原子であることが好ましい。
【0132】
、Rのアルキル基は、置換基(好ましくはフッ素原子)を有していてもよく、炭素数1〜4のものが好ましい。更に好ましくは炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基である。R、Rの置換基を有するアルキル基の具体例としては、CF、C、C、C、C11、C13、C15、C17、CHCF、CHCHCF、CH、CHCH、CH、CHCH、CH、CHCHが挙げられ、中でもCFが好ましい。
、Rとしては、好ましくはフッ素原子又はCFである。
xは1〜10が好ましく、1〜5がより好ましい。
yは0〜4が好ましく、0がより好ましい。
zは0〜5が好ましく、0〜3がより好ましい。
Lの2価の連結基としては特に限定されず、―COO−、−OCO−、−CO−、−O−、−S―、−SO―、―SO−、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基又はこれらの複数が連結した連結基を挙げることができ、総炭素数12以下の連結基が好ましい。このなかでも―COO−、−OCO−、−CO−、−O−、−SO−が好ましく、―COO−、−OCO−、−SO−がより好ましい。
【0133】
Aの環状構造を有する基としては、環状構造を有するものであれば特に限定されず、脂環基、アリール基、複素環構造を有する基(芳香族性を有するものだけでなく、芳香族性を有さないものも含む)等が挙げられる。
脂環基としては、単環でも多環でもよく、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などの単環のシクロアルキル基、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が好ましい。中でも、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基等の炭素数7以上のかさ高い構造を有する脂環基が、露光後加熱工程での膜中拡散性を抑制でき、MEEF向上の観点から好ましい。
アリール基としては、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナンスレン環、アントラセン環が挙げられる。
複素環構造を有する基としては、フラン環、チオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、ピリジン環が挙げられる。中でもフラン環、チオフェン環、ピリジン環が好ましい。
上記環状構造を有する基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、アルキル基(直鎖、分岐、環状のいずれであっても良く、炭素数1〜12が好ましい)、アリール基(炭素数6〜14が好ましい)、ヒドロキシ基、アルコキシ基(炭素数1〜12が好ましい)、ウレイド基、スルホンアミド基(炭素数0〜12が好ましい)、又はエステル基、アミド基、ウレタン基、チオエーテル基、若しくはスルホン酸エステル基を有する基(炭素数1〜12が好ましい)等が挙げられる。
【0134】
201、R202及びR203のうち、少なくとも1つがアリール基であることが好ましく、三つ全てがアリール基であることがより好ましい。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基などの他に、インドール残基、ピロール残基などのヘテロアリール基も可能である。これらアリール基は更に置換基を有していてもよい。その置換基としては、ニトロ基、フッ素原子などのハロゲン原子、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、シアノ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜15)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜15)、アリール基(好ましくは炭素数6〜14)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜7)、アシル基(好ましくは炭素数2〜12)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜7)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0135】
また、R201〜R203のうち2つが結合して環構造を形成する場合、以下の一般式(A1)で表される構造であることが好ましい。
【0136】
【化32】

【0137】
一般式(A1)中、
1a〜R13aは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基又は有機基を表す。
1a〜R13aのうち、1〜3つが水素原子でないことが好ましく、R9a〜R13aのいずれか1つが水素原子でないことがより好ましい。
Zaは、単結合又は2価の連結基である。
は、一般式(ZI)におけるZと同義である。
【0138】
1a〜R13aが水素原子でない場合の具体例としては、ハロゲン原子、ニトロ基、直鎖、分岐、環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及びヘテロ環アゾ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基、ウレイド基、その他の公知の有機基が例として挙げられる。
1a〜R13aが水素原子でない場合としては、水酸基で置換された直鎖、分岐、環状のアルキル基であることが好ましい。
【0139】
Zaの2価の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基、カルボニル基、スルホニル基、カルボニルオキシ基、カルボニルアミノ基、スルホニルアミド基、−O−、−S−、アミノ基、ジスルフィド基、−(CH−CO−、−(CH−SO−、−CH=CH−、アミノカルボニルアミノ基、アミノスルホニルアミノ基等が挙げられる(nは1〜3の整数)。
【0140】
なお、R201、R202及びR203のうち、少なくとも1つがアリール基でない場合の好ましい構造としては、特開2004−233661号公報の段落0046,0047、特開2003−35948号公報の段落0040〜0046、米国特許出願公開第2003/0224288A1号明細書に式(I−1)〜(I−70)として例示されている化合物、米国特許出願公開第2003/0077540A1号明細書に式(IA−1)〜(IA−54)、式(IB−1)〜(IB−24)として例示されている化合物等のカチオン構造を挙げることができる。
【0141】
一般式(ZII)、(ZIII)中、
204〜R207は、各々独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
【0142】
204〜R207のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基としては、前述の化合物(ZI)におけるR201〜R203のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基と同様である。
204〜R207のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基は、置換基を有していてもよい。この置換基としても、前述の化合物(ZI)におけるR201〜R203のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基が有していてもよいものが挙げられる。
【0143】
は、非求核性アニオンを表し、一般式(ZI)に於けるZの非求核性アニオンと同様のものを挙げることができる。
【0144】
酸発生剤として、更に、下記一般式(ZIV)、(ZV)、(ZVI)で表される化合物も挙げられる。
【0145】
【化33】

【0146】
一般式(ZIV)〜(ZVI)中、
Ar及びArは、各々独立に、アリール基を表す。
208、R209及びR210は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。
Aは、アルキレン基、アルケニレン基又はアリーレン基を表す。
【0147】
Ar、Ar、R208、R209及びR210のアリール基の具体例としては、上記一般式(ZI)におけるR201、R202及びR203としてのアリール基の具体例と同様のものを挙げることができる。
208、R209及びR210のアルキル基及びシクロアルキル基の具体例としては、それぞれ、上記一般式(ZI)におけるR201、R202及びR203としてのアルキル基及びシクロアルキル基の具体例と同様のものを挙げることができる。
Aのアルキレン基としては、炭素数1〜12のアルキレン(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基など)を、Aのアルケニレン基としては、炭素数2〜12のアルケニレン基(例えば、エチニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基など)を、Aのアリーレン基としては、炭素数6〜10のアリーレン基(例えば、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基など)を、それぞれ挙げることができる。
【0148】
酸発生剤の中で、特に好ましい例を以下に挙げる。
【0149】
【化34】

【0150】
【化35】

【0151】
【化36】

【0152】
【化37】

【0153】
【化38】

【0154】
酸発生剤は、1種類単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。2種以上を併用する場合、例えば、(1)酸強度の異なる2種のPAGを併用する場合、(2)発生酸のサイズ(分子量や炭素数)が異なる2種の酸発生剤を併用する場合、などの態様が好ましい。
(1)の態様としては、例えば、フッ素を有するスルホン酸発生剤とトリス(フルオロアルキルスルホニル)メチド酸発生剤の併用、フッ素を有するスルホン酸発生剤とフッ素を有さないスルホン酸発生剤の併用、アルキルスルホン酸発生剤とアリールスルホン酸発生剤の併用、などが考えられる。
(2)の態様としては、例えば、発生酸アニオンの炭素数が4以上異なる2種の酸発生剤の併用などが考えられる。
酸発生剤の組成物中の含有量(複数併用する場合は合計の量)は、組成物の全固形分を基準として、0.1〜30質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜20質量%、更に好ましくは1〜15質量%である。
【0155】
[4]塩基性化合物
本発明のレジスト組成物は、塩基性化合物を含有することが好ましい。
塩基性化合物は、含窒素有機塩基性化合物であることが好ましい。
使用可能な化合物は特に限定されないが、例えば以下の(1)〜(4)に分類される化合物が好ましく用いられる。
【0156】
(1)下記一般式(BS−1)で表される化合物
【0157】
【化39】

【0158】
一般式(BS−1)中、
bs1は、各々独立に、水素原子、アルキル基(直鎖又は分岐)、シクロアルキル基(単環又は多環)、アリール基、アラルキル基の何れかを表す。但し、三つのRbs1の全てが水素原子とはならない。
bs1としてのアルキル基の炭素数は特に限定されないが、通常1〜20、好ましくは1〜12である。
bs1としてのシクロアルキル基の炭素数は特に限定されないが、通常3〜20、好ましくは5〜15である。
bs1としてのアリール基の炭素数は特に限定されないが、通常6〜20、好ましくは6〜10である。具体的にはフェニル基やナフチル基などが挙げられる。
bs1としてのアラルキル基の炭素数は特に限定されないが、通常7〜20、好ましくは7〜11である。具体的にはベンジル基等が挙げられる。
bs1としてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基は、水素原子が置換基により置換されていてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルオキシカルボニル基等が挙げられる。
一般式(BS−1)で表される化合物は、3つのRbs1の1つのみが水素原子、あるいは全てのRbs1が水素原子でないことが好ましい。
【0159】
一般式(BS−1)の化合物の具体例としては、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−デシルアミン、トリイソデシルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、ジデシルアミン、メチルオクタデシルアミン、ジメチルウンデシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、メチルジオクタデシルアミン、N,N−ジブチルアニリン、N,N−ジヘキシルアニリンなどが挙げられる。
また、一般式(BS−1)において、少なくとも1つのRbs1が、ヒドロキシル基で置換されたアルキル基である化合物が、好ましい態様の1つとして挙げられる。具体的化合物としては、トリエタノールアミン、N,N−ジヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。
【0160】
また、Rbs1としてのアルキル基は、アルキル鎖中に、酸素原子を有し、アルキレンオキシ鎖が形成されていてもよい。アルキレンオキシ鎖としては−CHCHO−が好ましい。具体的例としては、トリス(メトキシエトキシエチル)アミンや、米国特許第6040112号明細書のカラム3、60行目以降に例示の化合物などが挙げられる。
【0161】
(2)含窒素複素環構造を有する化合物
複素環構造としては、芳香族性を有していてもいなくてもよい。また、窒素原子を複数有していてもよく、更に、窒素以外のヘテロ原子を含有していてもよい。具体的には、イミダゾール構造を有する化合物(2−フェニルベンゾイミダゾール、2,4,5−トリフェニルイミダゾールなど)、ピペリジン構造を有する化合物(N−ヒドロキシエチルピペリジン、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートなど)、ピリジン構造を有する化合物(4−ジメチルアミノピリジンなど)、アンチピリン構造を有する化合物(アンチピリン、ヒドロキシアンチピリンなど)が挙げられる。
また、環構造を2つ以上有する化合物も好適に用いられる。具体的には1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕−ウンデカ−7−エンなどが挙げられる。
【0162】
(3)フェノキシ基を有するアミン化合物
フェノキシ基を有するアミン化合物とは、アミン化合物のアルキル基の窒素原子と反対側の末端にフェノキシ基を有するものである。フェノキシ基は、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、スルホン酸エステル基、アリール基、アラルキル基、アシロキシ基、アリールオキシ基等の置換基を有していてもよい。
より好ましくは、フェノキシ基と窒素原子との間に、少なくとも1つのアルキレンオキシ鎖を有する化合物である。1分子中のアルキレンオキシ鎖の数は、好ましくは3〜9個、更に好ましくは4〜6個である。アルキレンオキシ鎖の中でも−CHCHO−が好ましい。
具体例としては、2−[2−{2―(2,2―ジメトキシ−フェノキシエトキシ)エチル}−ビス−(2−メトキシエチル)]−アミンや、米国特許出願公開第2007/0224539A1号明細書の段落[0066]に例示されている化合物(C1−1)〜(C3−3)などが挙げられる。
【0163】
(4)アンモニウム塩
アンモニウム塩も適宜用いられる。好ましくはヒドロキシド又はカルボキシレートである。より具体的にはテトラブチルアンモニウムヒドロキシドに代表されるテトラアルキルアンモニウムヒドロキシドが好ましい。これ以外にも上記(1)〜(3)のアミンから誘導されるアンモニウム塩を使用可能である。
【0164】
その他使用可能な塩基性化合物としては、特開2002−363146号公報の実施例で合成されている化合物、特開2007−298569号公報の段落0108に記載の化合物なども使用可能である。
【0165】
塩基性化合物は、単独であるいは2種以上併用して用いられる。
塩基性化合物の使用量は、組成物の固形分を基準として、通常、0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%である。
【0166】
酸発生剤/塩基性化合物のモル比は、2.5〜300であることが好ましい。即ち、感度、解像度の点からモル比が2.5以上が好ましく、露光後加熱処理までの経時でのパターンの太りによる解像度の低下抑制の点から300以下が好ましい。このモル比としてより好ましくは5.0〜200、更に好ましくは7.0〜150である。
【0167】
[5]レジスト溶剤
組成物を調製する際に使用できる溶剤としては、各成分を溶解するものである限り特に限定されないが、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA;1−メトキシ−2−アセトキシプロパン)など)、アルキレングリコールモノアルキルエーテル(プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME;1−メトキシ−2−プロパノール)など)、乳酸アルキルエステル(乳酸エチル、乳酸メチルなど)、環状ラクトン(γ−ブチロラクトンなど、好ましくは炭素数4〜10)、鎖状又は環状のケトン(2−ヘプタノン、シクロヘキサノンなど、好ましくは炭素数4〜10)、アルキレンカーボネート(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなど)、カルボン酸アルキル(酢酸ブチルなどの酢酸アルキルが好ましい)、アルコキシ酢酸アルキル(エトキシプロピオン酸エチル)などが挙げられる。その他使用可能な溶媒として、例えば、米国特許出願公開第2008/0248425A1号明細書の[0244]以降に記載されている溶剤などが挙げられる。
【0168】
上記のうち、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート及びアルキレングリコールモノアルキルエーテルが好ましい。
【0169】
これら溶媒は、単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。2種以上を混合する場合、水酸基を有する溶剤と水酸基を有しない溶剤とを混合することが好ましい。水酸基を有する溶剤と水酸基を有しない溶剤との質量比は、1/99〜99/1、好ましくは10/90〜90/10、更に好ましくは20/80〜60/40である。
水酸基を有する溶剤としてはアルキレングリコールモノアルキルエーテルが好ましく、水酸基を有しない溶剤としてはアルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレートが好ましい。
本発明の組成物全量中における溶媒の使用量は、所望の膜厚等に応じて適宜調整可能であるが、一般的には組成物の全固形分濃度が0.5〜30質量%、好ましくは1.0〜20質量%、より好ましくは1.5〜10質量%、更に好ましくは1.5〜5質量%となるように調整される。
【0170】
[6]界面活性剤
本発明の組成物は、更に界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤としては、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤が好ましい。
これらに該当する界面活性剤としては、大日本インキ化学工業(株)製のメガファックF176、メガファックR08、OMNOVA社製のPF656、PF6320、トロイケミカル(株)製のトロイゾルS−366、住友スリーエム(株)製のフロラードFC430、信越化学工業(株)製のポリシロキサンポリマーKP−341などが挙げられる。
また、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤以外の他の界面活性剤を使用することもできる。より具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類などが挙げられる。
【0171】
その他、公知の界面活性剤が適宜使用可能である。使用可能な界面活性剤としては、例えば、米国特許出願公開第2008/0248425A1号明細書の[0273]以降に記載の界面活性剤が挙げられる。
【0172】
界面活性剤は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
界面活性剤の使用量は、組成物の全固形分に対し、好ましくは0.0001〜2質量%、より好ましくは0.001〜1質量%である。
【0173】
[7]その他の添加剤
本発明の組成物は、上記に説明した成分以外にも、カルボン酸、カルボン酸オニウム塩、Proceeding of SPIE,2724,355(1996)等に記載の分子量3000以下の溶解阻止化合物、染料、可塑剤、光増感剤、光吸収剤、酸化防止剤などを適宜含有することができる。
特にカルボン酸は、性能向上のために好適に用いられる。カルボン酸としては、安息香酸、ナフトエ酸などの、芳香族カルボン酸が好ましい。
カルボン酸の含有量は、組成物の全固形分濃度中、0.01〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜5質量%、更に好ましくは0.01〜3質量%である。
【0174】
[8]用途
本発明のパターン形成方法は、超LSIや高容量マイクロチップの製造などの半導体微細回路作成に好適に用いられる。なお、半導体微細回路作成時には、パターンを形成されたレジスト膜は回路形成やエッチングに供された後、残ったレジスト膜部は、最終的には溶剤等で除去されるため、プリント基板等に用いられるいわゆる永久レジストとは異なり、マイクロチップ等の最終製品には、本発明に記載のレジスト組成物に由来するレジスト膜は残存しない。
【実施例】
【0175】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明の内容がこれにより限定されるものではない。
【0176】
1.構成素材の合成例
(1)樹脂(A成分)
合成例1(樹脂例(29)の合成)
4−アセトキシスチレン3.9g(0.024モル)、4−メトキシスチレン0.8g(0.006モル)を1−メトキシ−2−プロパノール30mlに溶解し、窒素気流及び撹拌下、70℃にて重合開始剤2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業(株)製;商品名V−65)50mg、4−アセトキシスチレン9.1g(0.056モル)、4−メトキシスチレン1.9g(0.014モル)の1−メトキシ−2−プロパノール70ml溶液を2時間かけて滴下した。2時間後開始剤50mgを追加し、更に2時間反応を行った。その後90℃に昇温し撹拌を1時間続けた。反応液を放冷後、イオン交換水1Lに激しく撹拌しながら投入することにより、白色樹脂を析出させた。得られた樹脂を乾燥後、メタノール100mLに溶解し、25質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を加え、樹脂中のアセトキシ基を加水分解した後、塩酸水溶液にて中和して白色樹脂を析出させた。イオン交換水にて水洗、減圧下で乾燥後、本発明の樹脂(29)11.6gを得た。GPCにて分子量を測定したところ、重量平均(Mw:ポリスチレン換算)で9,200、分散度(Mw/Mn)で2.0であった。
以下、同様にして本発明(A)成分の各樹脂を合成した。
【0177】
(2)架橋剤の合成(B成分)
(HM−1)の合成
1−〔α−メチル−α−(4−ヒドロキシフェニル)エチル〕−4−〔α,α−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル〕ベンゼン20g(本州化学工業(株)製Trisp−PA)を10質量%水酸化カリウム水溶液に加え、撹拌、溶解した。次にこの溶液を撹伴しながら、37質量%ホルマリン水溶液60mlを室温下で1時間かけて徐々に加えた。更に室温下で6時間撹伴した後、希硫酸水溶液に投人した。析出物をろ過し、十分水洗した後、メタノール30mlより再結晶することにより、下記構造のヒドロキシメチル基を有するフェノール誘導体〔HM−1〕の白色粉末20gを得た。純度は92%であった(液体クロマトグラフィー法)。
【0178】
【化40】

【0179】
(MM−1)の合成
上記合成例で得られたヒドロキシメチル基を有するフェノール誘導体〔HM−1〕20gを1リットルのメタノールに加え、加熱撹拌し、溶解した。次に、この溶液に濃硫酸1mlを加え、12時間加熱還流した。反応終了後、反応液を冷却し、炭酸カリウム2gを加えた。この混合物を十分濃縮した後、酢酸エチル300mlを加えた。この溶液を水洗した後、濃縮乾固させることにより、下記構造のメトキシメチル基を有するフェノール誘導体〔MM−1〕の白色固体22gを得た。純度は90%であった(液体クロマトグラフィー法)。
【0180】
【化41】

【0181】
更に、同様にして以下に示すフェノール誘導体を合成した。
【0182】
【化42】

【0183】
【化43】

【0184】
【化44】

【0185】
2.実施例
2.1 EB露光
〔実施例1〜21〕
(1)ネガ型レジストの塗液調製及び塗設
表1に示した組成を有する塗液組成物を0.1μm孔径のメンブレンフィルターで精密ろ過して、レジスト溶液を得た。なお、表1に於いて、成分を2種類以上用いた場合の比率は、質量比である。
このレジスト溶液をHMDS処理を施した6インチSiウェハー上に東京エレクトロン製スピンコーターMark8を用いて塗布し、110℃、90秒間ホットプレート上で乾燥して、膜厚0.2μmのレジスト膜を得た。
【0186】
(2)EB露光評価
上記(1)で得られたレジスト膜に、電子線描画装置((株)日立製作所製HL750、加速電圧50 KeV)を用いて、パターン照射を行った。照射後に、120℃、90秒間ホットプレート上で加熱した。
続いて、表1に記載の有機溶剤を用いて200mL/minの流量で30秒間スプレー現像し、その後2000回転(rpm)で20秒間高速回転して乾燥させた。
表1のリンス液の項目に有機溶剤が指定されている場合は、有機溶剤を用いて200mL/minの流量で30秒間スプレー現像した後、更に指定されている有機溶剤を1500回転(rpm)でウエハーを回転しながら200mL/minの流量で30秒間リンスを行い、その後2000回転(rpm)で20秒間高速回転させて乾燥させた。
【0187】
得られたパターンを下記の方法で、感度、解像力、パタ−ン形状、ラインウィズスラフネス、ブリッジマージン、倒れマージンについて評価した。評価結果を下記表2に示した。
【0188】
(2−1)感度(E
得られたパターンを走査型電子顕微鏡(日立社製S−9220)を用いて観察した。線幅0.10μm(ライン:スペース=1:1)を解像するときの電子線照射量を感度(E)とした。
【0189】
(2−2)解像力
上記の感度を示す照射量における限界解像力(ラインとスペースが分離解像する最小の線幅)を解像力とした。
【0190】
(2−3)パタ−ン形状
上記の感度を示す照射量における0.10μmラインパターンの断面形状を走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−4300)を用いて観察した。
【0191】
(2−4)ラインウィズスラフネス(LWR)
上記の感度を示す照射量における0.10μmラインパターンの長さ方向50μmにおける任意の30点について線幅を測定し、そのバラツキ(標準偏差)から3σ(nm)を算出することで評価した。
【0192】
(2−5)ブリッジマージン
感度測定と同様の条件で、上記の感度を示す照射量(E)から照射量を多くした時(比較例のポジ型レジスト組成物の評価においては、照射量を少なくしたとき)に、パターンにブリッジが発生する照射量Eを求め、下記式で得られる値を算出し、それをブリッジマージンの指標とした。
ブリッジマージン(%)=(E−E)/E×100
上記で算出した値が大きいほど性能が良好である事を示す。
【0193】
(2−6)倒れマージン
感度測定と同様の条件で、上記の感度を示す照射量(E)から照射量を少なくした時(比較例のポジ型レジスト組成物の評価においては、照射量を多くしたとき)に、パターン倒れが発生する照射量Eを求め、下記式で得られる値を算出し、それを倒れマージンの指標とした。
倒れマージン(%)=(E−E)/E×100
【0194】
〔比較例1〕
表1に示した組成を有する塗液組成物を使用し、アルカリ水溶液(TMAH;水酸化テトラメチルアンモニウム(2.38質量%)水溶液)により現像を行い、純水によりリンスを行った以外は、実施例1と同様にしてレジスト溶液の調製、パターン形成及び評価を行った。
【0195】
〔比較例2〕
表1に示した組成を有する塗液組成物を使用し、表1に示した現像液及びリンス液により現像及びリンスをそれぞれ行った以外は、実施例1と同様にしてレジスト溶液の調製、パターン形成及び評価を行った。
【0196】
〔比較例3〕
表1に示した、酸の作用により分解する樹脂を含有するポジ型化学増幅型レジスト組成物を使用し、表1に示した現像液及びリンス液により現像及びリンスをそれぞれ行った以外は、実施例1と同様にしてレジスト溶液の調製、パターン形成及び評価を行った。
評価結果を表2に示した。なお、比較例3では、0.10μmパターンを解像できなかった。
【0197】
【表1】

【0198】
【表2】

【0199】
以下、表中略号は、上記具体例のもの、又は下記のものを表す。
<有機塩基性化合物>
D−1:テトラ−(n−ブチル)アンモニウムヒドロキシド
D−2:1、8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン
D−3:2,4,5−トリフェニルイミダゾール
D−4:トリドデシルアミン
【0200】
<その他成分>
F−1:安息香酸
F−2:2−ナフトエ酸
【0201】
<レジスト溶剤・現像液・リンス液>
S−1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
S−2:プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)
S−3:シクロヘキサノン
S−4:酢酸ブチル
S−5:ドデカン
S−6:テトラヒドロフラン
S−7:1−ヘキサノール
S−8:メチルアミルケトン
S−9:乳酸エチル
S−10:デカン
S−11:イソプロピルアルコール
【0202】
<界面活性剤>
W−1: PF6320(OMNOVA(株)製)
W−2: メガフアツクF176(大日本インキ(株)製)
【0203】
<樹脂>
PMMA:ポリメタクリル酸メチル
【0204】
【化45】

【0205】
<架橋剤>
【0206】
【化46】

【0207】
2.2 EUV露光
〔実施例22〜42〕
(3)ネガ型レジストの塗液調製及び塗設
表3に示した塗液組成物を0.1μm孔径のメンブレンフィルターで精密ろ過して、レジスト溶液を得た。
このレジスト溶液をHMDS処理を施した6インチSiウェハー上に東京エレクトロン製スピンコーターMark8を用いて塗布し、110℃、90秒間ホットプレート上で乾燥して、膜厚0.1μmのレジスト膜を得た。
【0208】
(4)EUV露光評価
このレジスト膜にEUV光(波長13nm)を用いて、露光量を0〜10.0mJ/cmの範囲で0.5mJ/cmづつ変えながら面露光を行った。
照射後に、120℃、90秒間ホットプレート上で加熱した。
続いて、表3に記載の有機溶剤を用いて200mL/minの流量で30秒間スプレー現像し、その後2000回転(rpm)で20秒間高速回転して乾燥させた。
表3のリンス液の項目に有機溶剤が指定されている場合は、有機溶剤を用いて30秒間200mL/minの流量でスプレー現像した後、更に指定されている有機溶剤を1500回転(rpm)でウエハーを回転しながら200mL/minの流量で30秒間リンスを行い、その後2000回転(rpm)で20秒間高速回転させて乾燥させた。
得られた感度−残膜率の曲線を用い、下記の方法で感度(Eth)、残膜率を評価した。
(4−1)感度(Eth)
残膜率が50%となる露光量を感度(Eth)とした。
(4−2)残膜率
また得られた感度(Eth)の3倍の照射量における(現像後膜厚/露光前膜厚)×100を残膜率(%)とした。
なお、表3に於いて、成分を2種類以上用いた場合の比率は、質量比である。評価結果を下記表4に示した。
表3中、各略号は表1中の略号と同様のものを示す。
【0209】
【表3】

【0210】
【表4】

【0211】
表2から、従来のアルカリ水溶液による現像を行った比較例1に対して、有機溶剤を含む現像液を用いて現像した本願の実施例においては、より良好なパターンを形成することがわかる。
また有機溶剤を含む現像液を用いて現像した場合であっても、非化学増幅型の樹脂組成物を使用した比較例2や、ポジ型(極性変換型)化学増幅型レジスト組成物を使用した比較例3に対し、ネガ型(架橋型)化学増幅型レジスト組成物を使用した本願の実施例においては、より良好なパターンを形成することがわかる。
【0212】
表2及び表4から、本発明のネガ型化学増幅型レジスト組成物を用いたパターン形成方法により、感度、解像力、パターン形状、ラインウィズスラフネス、ブリッジマージン、倒れマージン、残膜率における良好な性能とともに、パターンが形成されたことがわかる。特に、EB露光においてはブリッジマージンと倒れマージンにおいて良好な性能を有しつつ、ラインウィズスラフネスが大きく改善されていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋反応によりネガ化する、ネガ型化学増幅型レジスト組成物を用いて膜を形成する工程(1)、該膜を露光する工程(2)、露光後に有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程(4)をこの順番で有することを特徴とする、レジストパターンの形成方法。
【請求項2】
前記現像液に含まれる有機溶剤が、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤及び炭化水素系溶剤からなる群より選ばれる1種類以上の溶剤であることを特徴とする、請求項1に記載のレジストパターン形成方法。
【請求項3】
前記現像液に含まれる有機溶剤が、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート系溶剤、アルキレングリコールモノアルキルエーテル系溶剤、カルボン酸アルキル系溶剤、及びアルキルケトン系溶剤からなる群より選ばれる1種類以上の溶剤であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のレジストパターン形成方法。
【請求項4】
前記現像液に含まれる有機溶剤が、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、乳酸エチル、及び酢酸ブチルからなる群より選ばれる1種類以上の溶剤であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のレジストパターン形成方法。
【請求項5】
前記現像液に含まれる有機溶剤が、分子中に水酸基を含有しないエステル系溶剤、分子中に水酸基を含有しないケトン系溶剤、及び分子中に水酸基を含有しないエーテル系溶剤からなる群より選ばれる1種類以上の溶剤であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のレジストパターン形成方法。
【請求項6】
前記現像工程(4)の後に、有機溶剤を含むリンス液を用いてリンス処理する工程(5)を更に有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のレジストパターン形成方法。
【請求項7】
前記リンス液に含まれる有機溶剤が、一価のアルコール系溶剤及び炭化水素系溶剤からなる群より選ばれる1種類以上の溶剤であることを特徴とする、請求項6に記載のレジストパターン形成方法。
【請求項8】
前記露光工程(2)と前記現像工程(4)との間にベーク工程(3)を更に有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載のレジストパターン形成方法。
【請求項9】
前記露光工程(2)における露光が、電子線又はEUV光により行われることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載のレジストパターン形成方法。
【請求項10】
半導体微細回路作成用であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載のレジストパターン形成方法。
【請求項11】
前記ネガ型化学増幅型レジスト組成物が、(A)樹脂、(B)酸の作用により樹脂(A)を架橋する架橋剤、及び(C)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物を含有することを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載のレジストパターン形成方法。
【請求項12】
樹脂(A)が一般式(1)で表される繰り返し単位を含有する樹脂であることを特徴とする、請求項11に記載のレジストパターン形成方法。
【化1】

式(1)中、
Aは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、又はシアノ基を表す。
Rはハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルケニル基、アラルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニルオキシ基又はアルキルスルホニルオキシ基を表し、複数存在する場合は同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。
aは1〜3の整数を表す。
bは0〜(3−a)の整数を表す。
【請求項13】
架橋剤(B)が、フェノール化合物であることを特徴とする、請求項11又は12に記載のレジストパターン形成方法。
【請求項14】
架橋剤(B)が、分子内にベンゼン環を2個以上有するフェノール化合物であることを特徴とする、請求項13に記載のレジストパターン形成方法。
【請求項15】
ネガ型化学増幅型レジスト組成物中の架橋剤(B)の含有量が、レジスト組成物の全固形分中、3〜65質量%であることを特徴とする、請求項11〜14のいずれかに記載のレジストパターン形成方法。
【請求項16】
化合物(C)が、活性光線又は放射線の照射により、スルホン酸、ビス(アルキルスルホニル)イミド、及びトリス(アルキルスルホニル)メチドの少なくとも何れかの酸を発生する化合物であることを特徴とする、請求項11〜15のいずれかに記載のレジストパターン形成方法。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれかに記載のレジストパターン形成方法に用いられることを特徴とする、現像液。
【請求項18】
請求項1〜16のいずれかに記載のレジストパターン形成方法に用いられることを特徴とする、有機溶剤現像用の架橋性ネガ型化学増幅型レジスト組成物。
【請求項19】
請求項1〜16のいずれかに記載のレジストパターン形成方法により形成されることを特徴とする、レジストパターン。

【公開番号】特開2010−256858(P2010−256858A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17489(P2010−17489)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】