説明

ハイブリッド車両の制御装置

【課題】車両外部の電力供給源から車載バッテリへ充電を行なうことができるハイブリッド車両において、エネルギコストをより低減できるようにする。
【解決手段】車両の駆動動力をバッテリ107からMG102に電力を供給することでMG102に優先的に発生させるEV優先モードにて予定走行経路を走行する場合に必要と推定される推定必要エネルギを算出し(S206)、また、電力供給源から供給された電力(外部充電エネルギ)を算出する(S207)。そして、推定必要エネルギを外部充電エネルギによって賄えるか否かを走行開始前に判断する(S208)。賄えないと判断した場合には、エンジン101の駆動力をMG102に入力することによって発電を行わせるエンジン発電を、予定走行経路の全体の中でできるだけ発電効率のよい地点で行ってエネルギの不足分を賄い、他の地点ではEV優先モードを行なう、EV・発電併用モードを実行する(S211)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンおよびモータを駆動力源とするハイブリッド車両を制御する制御装置に関し、特に、車両外部の電力供給源から車載バッテリへ充電を行なうことができるハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンおよびモータを駆動力源とするハイブリッド車両が知られており、このハイブリッド車両として、車両外部の電力供給源から車載バッテリへ充電を行なうことができるハイブリッド車両がある。このハイブリッド車両は、一般に、コネクタおよびケーブルを備え、そのプラグを家庭用コンセントなどの電力供給口に差し込むことによって、車両外部から電力を取得する。そのため、プラグインハイブリッド車両と呼ばれることが多い。本明細書でも、車両外部の電力供給源から車載バッテリへ充電を行なうことができるハイブリッド車両を、以下、プラグインハイブリッド車両という。
【0003】
プラグインハイブリッド車両が車両外部から取得する電力は、たとえば家庭用の商用電力であり、家庭用の商用電力は、通常、ガソリンなどのエンジンの燃料よりもコストが安い。そのため、車両外部から取得する電力を用いてより多く走行するほど、ユーザが負担しなければならないコストを減らすことができる。また、燃料補給のためにガソリンスタンドに行く回数を減らすこともできる。
【0004】
特許文献1のプラグインハイブリッド車両は、バッテリの蓄積状態(以下、SOCという)が所定値を下回るまでは、エンジンの動力を用いたモータジェネレータによる発電は行なわず、エンジンを極力停止して、バッテリに蓄えた電力を主に用いて走行するEV走行モードを実行する。これによって、車両外部から取得した電力、すなわち、コストの安いエネルギを優先的に消費するようにしている。そして、SOCが所定値を下回ると、エンジンの動力を用いてモータジェネレータを駆動させて発電を行ない、SOCが予め設定された上下限範囲となるように、充電および放電を繰り返しながら走行するHV走行モードを実行する。
【特許文献1】特開2007−62638号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のハイブリッド車両は、上述のHV走行モードを実行するのは、外部電源によって充電した電力で走行可能な距離以上走行し、バッテリのSOCが所定値を下回った後である。すなわち、特許文献1では、バッテリのSOCが所定値を下回った後でなければ、エンジンの動力を用いてモータジェネレータを駆動させる発電は行なわない。
【0006】
ここで、エンジンの動力を用いてモータジェネレータを駆動させて発電を行なう場合、発電に必要となる燃料消費量はできるだけ少ないことが望ましい。しかし、発電に必要となる燃料消費量は車両の駆動力や車速などの走行状態の影響を受ける。
【0007】
そのため、特許文献1のように、HV走行モードを実行するのは、必ずSOCが所定値を下回った後となっていると、例えば、走行経路の前半部分に発電効率がよい走行状態となる地点が偏在するような場合は、少ない燃料消費量で発電を行なうことができる機会を逃すことになり、走行全体に必要となるエネルギ(燃料や電力)のコストを最小にできないという問題があった。
【0008】
本発明は、この事情に基づいて成されたものであり、その目的とするところは、車両外部の電力供給源から車載バッテリへ充電を行なうことができるハイブリッド車両において、エネルギコストをより低減できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
その目的を達成するための請求項1記載の発明は、エンジンおよび回転電機を駆動力源として備えるとともに、前記回転電機との間で電力の授受を行うことができる車載バッテリを備え、その車載バッテリに対して車両外部の電力供給源から充電を行なうことができるハイブリッド車両を制御するハイブリッド車両の制御装置であって、
前記電力供給源から供給された電力である外部充電エネルギを算出する外部充電エネルギ算出手段と、このハイブリッド車両の駆動動力を前記車載バッテリから優先的に前記回転電機に電力を供給することで回転電機に発生させるモードである電動駆動優先モードにて予定走行経路を走行する場合に必要と推定される推定必要エネルギを算出する推定必要エネルギ算出手段と、前記推定必要エネルギを前記外部充電エネルギによって賄えるか否かを走行開始前に判断するエネルギ比較手段とを備え、
そのエネルギ比較手段にて、前記推定必要エネルギを前記外部充電エネルギによって賄えると判断された場合には、前記電動駆動優先モードを実行する一方、賄えないと判断された場合には、前記エンジンの駆動力を前記回転電機に入力することによって前記回転電機に発電を行わせるエンジン発電を、予定走行経路の全体の中でできるだけ発電効率のよい地点で行ってエネルギの不足分を賄い、他の地点では前記電動駆動優先モードを行なう、電動駆動・発電併用モードを実行することを特徴とする。
【0010】
本発明では、電動駆動優先モードにて予定走行経路を走行する際に必要であると推定される推定必要エネルギを外部充電エネルギで賄えるか否かを走行開始前に判断しており、賄えないと判断した場合には、走行経路全体の中でできるだけ発電効率のよい地点でエンジン発電を行うようにしている。そのため、SOCが所定値よりも低下するまでは、エンジンの動力を用いて回転電機を駆動させる発電は行なわない特許文献1の技術よりも、エネルギ効率を向上させることができることから、エネルギコストを低減することができる。
【0011】
請求項2は、請求項1において、前記エンジン発電を行う際のコスト指標の基準値として基準コスト指標が設けられており、前記電動駆動・発電併用モードにおいては、前記エンジン発電を行うとした場合の前記コスト指標を逐次算出し、算出したコスト指標が前記基準コスト指標よりも低い場合に限り、前記エンジン発電を行うことを特徴とする。
【0012】
このようにエンジン発電のコスト指標の基準値(基準コスト指標)を設け、実際の走行時におけるエンジン発電のコスト指標と基準コスト指標とを比較することでエンジン発電を行うか否かを決定すれば、エンジン発電におけるコストを低くすることができる。
【0013】
請求項3は、請求項2において、前記予定走行経路を走行する際の車速および勾配を所定の時間区分毎に推定する走行状態推定手段と、その走行状態推定手段の推定結果に基づいて、各時間区分にて前記エンジン発電を行うとした場合の前記コスト指標を推定コスト指標として決定する推定コスト指標決定手段と、その推定コスト指標決定手段によって決定された時間区分毎の推定コスト指標に基づいて前記基準コスト指標を決定する基準コスト指標決定手段とをさらに含むことを特徴とする。
【0014】
このようにして基準コスト指標を決定すれば、予定走行経路を走行した場合に推定される走行状態に応じた基準コスト指標を設定することができる。そのため、予定走行経路に応じた適切な基準コスト指標を設定することができるようになるので、この基準コスト指標を用いたエンジン発電を行うか否かの判断が適切になる。
【0015】
請求項4は、請求項3において、前記基準コスト指標算出手段は、前記推定コスト指標決定手段によって決定された推定コスト指標が低いものから順に前記エンジン発電を行う時間区分に決定していき、エネルギの不足分をエンジン発電の合計電力が超えた時点において、エンジン発電を行う時間区分に対応する推定コスト指標のうち最も高い推定コスト指標を前記基準コスト指標として決定することを特徴とする。
【0016】
このようにすれば、エンジン発電によって発電される発電電力が、予定走行経路を走行できる最小限の電力となる。そのため、次回、車両外部の電力供給源から充電できる電力を多くすることができる。
【0017】
請求項5は、請求項2〜4のいずれか1項において、前記コスト指標は、前記回転電機が発電および駆動を行わないで走行した場合に前記エンジンが消費する燃料消費量と、前記エンジン発電を行いつつ走行した場合に前記エンジンが消費する燃料消費量の差分を、エンジン発電によって発電される電力で割った値であることを特徴とする。このコスト指標を用いることにより、エンジン発電が燃費に与える影響を定量化することができる。
【0018】
請求項6は、請求項2〜5のいずれか1項において、前記エンジン発電においては、そのエンジン発電において発生させる電力の変化に対する前記コスト指標の変化を示す予め設定された対応関係に基づいて、コスト指標の最小値を求め、そのコスト指標の最小値に対応する電力を発電することを特徴とする。このようにすれば、エンジン発電によるコストを最小化することができる。
【0019】
請求項7は、請求項1〜6のいずれか1項において、前記電動駆動優先モードを実行するか、前記電動駆動・発電併用モードを実行するかを車両の運転者に報知することを特徴とする。このようにすれば、電動駆動・発電併用モードが運転者に報知された場合に、バッテリの残量があるにもかかわらず、エンジンが始動する理由を運転者が認識することができるので、エンジンが始動することによる運転者の違和感が抑制される。
【0020】
請求項8は、請求項1〜7のいずれか1項において、前記外部充電エネルギ算出手段は、前記回転電機に駆動動力を発生させるために前記車載バッテリの電力を使用した場合、その電力を前記外部充電エネルギから減算し、回生制動を行った場合には、回生制動動力に対応する電力を前記外部充電エネルギに加算することで、車両走行中に、前記外部充電エネルギを逐次更新することを特徴とする。このようにすれば、前記エンジン発電を行って車載バッテリを充電した場合にも、外部充電エネルギを正確に算出することができる。なお、回転電機に駆動動力を発生させるために車載バッテリが使用する電力は、回転電機が発生する駆動動力とそのときの回転電機の駆動損失の合計値であり、回生制動動力に対応する電力は、回生制動時に回転電機が発生する制動動力(負の駆動動力)とそのときの回転電機の駆動損失の合計値である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態となる制御装置を備えたプラグインハイブリッド車両(以下、単に車両)100の要部構成を示す図である。
【0022】
この車両100は、エンジン101とモータジェネレータ(以下、MGという)102とを駆動力源として備えており、エンジン101とMG102は直列に接続されてデファレンシャル104を介して駆動輪106に駆動力または制動力を伝達する。
【0023】
変速機103はエンジン101の出力軸の回転を変速して駆動輪106側へ出力する。その変速機103とMG102との間にはクラッチ105が設けられており、このクラッチ105によって、変速機103の出力軸とMG102の回転軸との間の動力の断続が切り替えられる。
【0024】
バッテリ107は、たとえば、ニッケル水素バッテリやリチウムイオンバッテリであり、MG102は、インバータ108を介してこのバッテリ107およびMG−ECU110に接続されている。インバータ108は、バッテリ107の電力をMG102に供給してMG102に駆動力を発生させ、また、MG102で発生した電力をバッテリ107に充電する。MG102で電力を発生させる場合には、エンジン101の動力を用いてMG102を回転させるか、または、駆動輪106の回転動力によってMG102を回転させる。駆動輪106の回転動力によってMG102を回転させる場合には、発電する電力に応じた制動動力が発生する。
【0025】
インバータ108はMG−ECU110からの指令に基づいて動作する。MG−ECU110は、レゾルバ等の回転速度センサを用いてMG102の回転速度を逐次検出している。そして、MG102の回転速度を検出しつつ、ハイブリッドECU(以下、HV−ECU)113から供給される指令信号に基づいて、その指令信号が示す駆動動力または回生制動動力をMG102に発生させるようにインバータ108を制御する。
【0026】
HV−ECU113は、運転者によってアクセルペダル116に入力される操作量および車速と、予め記憶されている動力配分比決定マップとを用いて、エンジン101とMG102との動力配分比を決定する。そして、その決定した動力配分比に基づいてエンジンECU109およびMG−ECU110に動力指令値(指令信号)を出力する。
【0027】
また、HV−ECU113は、運転者によってブレーキペダル117に入力される操作量を、たとえばブレーキペダル117の踏力に応じて変化するマスタシリンダ油圧値から検出し、その操作量に基づいて必要制動力を決定する。そして、その必要制動力および車速と予め記憶されている関係とに基づいて回生制動動力を決定し、決定した回生制動動力を発生させることを指令する指令信号をMG−ECU110へ出力する。なお、回生制動動力を図示しないブレーキECUが決定するようにしてもよい。
【0028】
また、HV−ECU113は、MG−ECU110からMG102の回転速度等、MG102の状態に関する情報を逐次取得する。さらに、HV−ECU113には、温度センサ118によって検出されるバッテリ107の温度、電流センサ119によって検出されるバッテリ107の入出力電流値が供給され、また、バッテリ107の電圧も監視している。そして、これらに基づいて、公知の方法でバッテリ107の蓄積エネルギを算出する。なお、本実施形態では、この蓄積エネルギとしてSOC(残存容量)を算出する。
【0029】
エンジン/変速機ECU109は、HV−ECU113から入力された動力指令値および車速に応じて、変速機103の出力軸の動力出力が動力指令値になるようにエンジン101および変速機103を制御する。なお、HV−ECU113から入力された動力指令値が正の場合には、エンジン/変速機ECU109は、クラッチ105をオンにして、エンジン101とMG102とを接続する。一方、HV−ECU113から入力された動力指令値がゼロの場合には、エンジン/変速機ECU109は、クラッチ105をオフにして、エンジン101および変速機103の引きずり損失を回避する。
【0030】
バッテリ107には充電器115が接続されており、充電コネクタ114が家庭用の電源コンセントに差し込まれることにより、家庭用の商用電力を用いてバッテリ107が充電される。
【0031】
また、HV−ECU113はナビゲーションシステム112にも接続されており、HV−ECU113とナビゲーションシステム112とは相互に情報の送受信が可能となっている。そして、ナビゲーションシステム112のECU(以下、ナビゲーションECU)は、EV優先モードで走行すべきか、EV・発電併用モードで走行すべきかを、走行開始前に決定する。そして、HV−ECU113は、ナビゲーションECUが決定した走行モードでの走行を行なう。
【0032】
ここで、EV優先モードとは、請求項の電動駆動優先モードに相当するモードであり、必要な駆動動力を、バッテリ107から電力を供給することによってMG102に優先的に発生させ、MG102が最大駆動トルクを発生させても駆動動力が不足する場合にエンジン101を駆動させる制御モードである。一方、EV・発電併用モードとは、請求項の電動駆動・発電併用モードに相当するモードであり、発電にかかるコストが所定の基準値よりも小さい走行区間においては発電を行い、その他の走行区間では前述のEV優先モードを行う制御モードである。
【0033】
図2に、走行モードの決定およびその走行モードで走行する際に実行するメイン制御フローを示す。なお、ステップS201〜S208、S210は、ナビゲーションECUが実行し、ステップS209および、S211、S212はHV−ECU113が実行する。
【0034】
ステップS201は、充電コネクタ114が電源コンセントから抜き取られた後、車両100が走行を開始する前に実行する。そのステップS201では目的地までの予定走行経路を設定する。目的地までの予定走行経路は、周知の種々の経路探索手法を用いて設定することができる。また、目的地は、ユーザの操作により決定されてもよいし、現在位置や日時などから、ナビゲーションECUが自動的に決定してもよい。
【0035】
続くステップS202は請求項の走行状態推定手段に相当し、ステップS201で設定した予定走行経路を走行する際に推定される車速および勾配(推定車速V(t)、推定勾配θ(t))を、すべての時刻t=t(i=1〜n)に対して推定する。iは1〜nまでの整数であり、t〜tは予定走行経路を等時間ステップ(例えば0.5秒)で分割した各ステップの時刻を表す。推定車速V(t)は、自車が過去に予定走行経路を略同時刻に走行したときの車速履歴をナビゲーションシステム内部のデータベースに保存しておき、これを利用してもよいし、外部のサーバに蓄積された他車の車速履歴や渋滞情報などを無線通信などを介して取得して、これを元に推定してもよい。また、推定勾配θ(t)は、ナビゲーションシステム内部の地図データベースに格納されている勾配データや外部サーバとの通信で得た勾配データと、推定車速V(t)から推定できる各時刻tにおける位置とを用いて推定する。
【0036】
続くステップS203では、ステップS202で推定した推定車速V(t)、推定勾配θ(t)を用いて、推定要求駆動動力Pw_est(t)をすべての時刻t=tに対して推定する。この推定要求駆動動力Pw_est(t)とは、予定走行経路を走行する際に車両100に必要な駆動動力の推定値である。
【0037】
推定要求駆動動力Pw_est(t)は駆動力と車速の積であり、駆動力は、車両100の加速抵抗、路面抵抗、空気抵抗、勾配抵抗の和で表される。従って、推定要求駆動動力Pw_est(t)は次の式1から求めることができる。なお、下記式1において、車両加速度acc(t)は推定車速V(t)の傾きから求める。
(式1) Pw_est(t) = (W×acc(t)+μr×W+μ1×A×V(t)×V(t)+W×g×sinθ(t)) ×V(t)
(μr :転がり抵抗係数、μ1:空気抵抗係数、A:前面投影面積、W:車総重量、g:重力加速度、θ:勾配、acc(t):車両加速度)
続くステップS204では、すべての時刻t=tに対して推定駆動電力Ed_est(t)を求める。この推定駆動電力Ed_est(t)とは、ステップS203で推定した推定要求駆動動力Pw_est(t)を、MG102の最大駆動トルクを超えない範囲でMG102で賄った場合に必要な電力である。
【0038】
Pw_est(t)>0のとき、推定駆動電力Ed_est(t)は次の式2から求めることができる。
(式2) Ed_est(t) = min( (Pw_est(t) + Loss_mg( ωmg(t), Tmg(t) ) ),
(Tmax_d(ωmg(t))×ωmg(t) + Loss_mg(ωmg(t), Tmax_d(ωmg(t)) ) ) )
ここで、min(x,y)はx,yのうちどちらか小さい方を出力する関数である。
ωmg(t)は推定車速V(t)におけるMG102の角速度であり、タイヤ半径をr_tireとすると、ωmg(t)=V(t)÷r_tire×(デファレンシャル104の減速比)から算出できる。
Tmg(t)は、推定車速V(t)、推定駆動動力Pw_est(t)のときのMGトルク(駆動側が正)であり、Tmg(t) = Pw_est(t) / ωmg(t)から算出できる。
Loss_mg(ω,T)は、回転速度ω、トルクT(駆動側が正)のときのMG102の駆動損失であり、事前に測定することによって決定したマップから求める。
Tmax_d(ω)は、回転速度ωでのMG102の最大駆動トルクであり、これも事前に測定しておく。
Pw_est(t)≦0のときはMG102が駆動動力を発生させる必要がないので、Ed_est(t) =0となる。
【0039】
続くステップS205では、すべての時刻t=tに対して推定回生電力Er_est(t)を求める。この推定回生電力Er_est(t)とは、減速動力が必要と推定されるとき、すなわち、ステップS203で推定した推定要求駆動動力Pw_est(t)が負であるとき、その負の推定要求駆動動力Pw_est(t)を、MG102の最大吸収トルクを超えない範囲でMG102で回収した場合の回生電力である。
Pw_est≧0のときは回生ができないため、推定回生電力Er_est(t)はゼロとなる。
Pw_est<0のときは、推定回生電力Er_est(g)は次の式3から求めることができる。
(式3) Er_est(t) = min( (-Pw_est(t) - Loss_mg( ωmg(t), Tmg(t) ) ),
(-Tmax_r(ωmg(t))×ωmg(t) - Loss_mg(ωmg(t), Tmax_r(ωmg(t)) ) ))
ここで、Tmax_r(ω)は、回転速度ωでのMG102が減速動力を最大限を吸収した時のMGトルクであり、事前に測定しておく。なお、駆動側を正としているため、このTmax_r(ω)は負の値をとる。
【0040】
図3に、ステップS202〜S205で算出した推定車速V(t)、推定要求駆動動力Pw_est(t)、推定駆動電力Ed_est(t)、推定回生電力Er_est(t)の一例を示す。図3に示すように、推定要求駆動動力Pw_est(t)が正の時刻では推定駆動電力Ed_est(t)が正の値となる一方で、推定要求駆動動力Pw_est(t)が負の時刻では推定回生電力Er_est(t)が正の値となる。
【0041】
図2に戻り、ステップS206では推定必要エネルギEnrg_demを算出する。このステップS206が請求項の推定必要エネルギ算出手段に相当する。この推定必要エネルギEnrg_demは次の式4から求めるものである。
【0042】
【数1】

【0043】
この式4から分かるように、推定必要エネルギEnrg_demは、走行経路全体の推定駆動電力Ed_estから走行経路全体の推定回生電力Er_estを引いた値に時間ステップ(例えば0.5秒)を掛けたものである。従って、この推定必要エネルギEnrg_demは、予定走行経路の全部を走行する際に必要な駆動動力を、MG102の性能の範囲(MG102の最大駆動トルクを超えない範囲)で全てMG102の動力で賄うとした場合に、MG102の性能の範囲(MG102の最大吸収トルクを超えない範囲)で予定走行経路にて回生によって回収できる電力では足りない電力を意味する。
【0044】
ステップS207では、充電器115を用いて車両外部の電源である家庭用電源から充電したエネルギ(以下、外部充電エネルギという)Enrg_plugを算出する。外部充電エネルギEnrg_plugは、前回走行終了時の外部充電エネルギEnrg_plugの残量(算出方法は後述)に、今回充電した外部充電エネルギΔEnrg_plugを加算することで行う。すなわち、下記式5から、外部充電エネルギEnrg_plugを算出する。なお、今回充電した外部充電エネルギΔEnrg_plugは、HV−ECU113が充電器115の状態を逐次監視し、充電器115によって充電したエネルギを積算することで行う。また、請求項の外部充電エネルギ算出手段は、このステップS207および後述する図5のステップS508、図6のステップS610によって構成される。
(式5) Enrg_plug=前回走行終了時のEnrg_plug+ΔEnrg_plug
【0045】
請求項のエネルギ比較手段に相当するステップS208では、ステップS207で算出した外部充電エネルギEnrg_plugが、ステップS206で算出した推定必要エネルギEnrg_dem以上であるかを判断する。外部充電エネルギEnrg_plugが推定必要エネルギEnrg_dem以上の場合(YESの場合)は、予定走行経路の走行に必要な電気エネルギが外部充電エネルギで賄えると推定できることになる。この場合はステップS209へ進み、HV−ECU113は、前述のEV優先モードでの制御を行う制御モード1で走行する。この制御モード1の詳細は後述する。
【0046】
一方、ステップS208の判断がNOの場合、すなわち、外部充電エネルギEnrg_plugが推定必要エネルギEnrg_demより小さい場合には、予定走行経路の走行に必要な電気エネルギを外部充電エネルギだけでは賄えないため、ステップS210に進み、充電すべき走行状態か否かを判断するための指標である基準電費Dsを算出する。その後、ステップS211へ進み、HV−ECU113は、前述のEV・発電併用モードでの制御を行う制御モード2で走行する。なお、ステップS210における基準電費Dsの算出方法、および、制御モード2の詳細は後述する。
【0047】
上記ステップS209またはステップS211の実行開始時には、そのステップS209またはステップS211において実行する制御モードを、ナビゲーションシステム112の画面に表示する(ステップS212)。
【0048】
図4は、ナビゲーションシステム112の画面に制御モードが表示されている例を示す図であり、(a)はEV優先モード、(b)はEV・発電併用モードが表示されている例である。
【0049】
次に、前述のステップS209で実行する制御モード1(EV優先モード)の詳細を説明する。図5は、その制御モード1(EV優先モード)の処理を示すフローチャートである。
【0050】
まず、ステップS501では、アクセルペダル116の操作量、ブレーキペダル117の操作量、車速Vの情報から、車両100の駆動に必要な動力(要求駆動動力)Pwを算出する。より詳細には、アクセルペダル116の操作量またはブレーキペダル117の操作量から、予め記憶されている要求駆動トルク決定マップを用いて要求駆動トルクを決定する。そして、車速Vに基づいて駆動輪106の回転速度を算出し、その回転速度に上記要求駆動トルクを乗じることにより要求駆動動力Pwを算出する。なお、要求駆動動力Pwは駆動側を正とする。
【0051】
続くステップS502では、ステップS501で算出した要求駆動動力Pwがゼロ以上(駆動側)であるか否かを判断する。ステップS502において要求駆動動力Pwがゼロ以上(YESの判断)の場合はステップS503へ進み、要求駆動動力Pwがゼロよりも小さい(NOの判断)の場合はステップS509へ進む。
【0052】
ステップS503では、ステップS501で算出した要求駆動動力Pwと、MG102が現在、発生可能な最大の駆動動力であるMG最大駆動動力とを比較する。このMG最大駆動動力は、予め測定したマップを用いて、現在のMG102の角速度におけるMG102の最大トルクを決定し、現在のMG102の角速度とマップから決定した最大トルクとの乗算にて求める。ただし、MG最大駆動動力は、予め定めたバッテリの最大出力電力でMG102を駆動した場合の駆動動力を上限値とする。また、バッテリ107のSOCが予め定められた下限値を下回る場合は、バッテリ107によるMG102の駆動が不可能となるため、MG最大駆動動力をゼロとする。
【0053】
ステップS503において、要求駆動動力PwがMG最大駆動動力以下の場合(YESの場合)は、MG102の駆動により要求駆動動力Pwを全て賄うことができるため、ステップS504でエンジン101への指令動力Peをゼロにする。従って、この場合、エンジン停止となる。ステップS504を実行後は、ステップS505において、MG102への指令動力Pmgを上記要求駆動動力Pwにセットする。
【0054】
ステップS503において要求駆動動力PwがMG最大駆動動力より大きい場合(NOの場合)は、ステップS506でMG指令動力PmgをMG最大駆動動力にセットし、続くステップS507で、要求駆動動力Pwのうち、MG102で賄い切れない駆動動力(Pw-Pmg)をエンジン指令動力Peにセットする。
【0055】
ステップS502においてPw<0(制動側)である場合は、S509においてエンジン指令動力Peをゼロとし、S510においてMG指令動力Pmgに駆動動力(Pw<0なので制動動力となる)をセットする。その後、ステップS508に進む。
【0056】
ステップS505またはS507またはS510の処理の後に実行するステップS508では、外部充電エネルギEnrg_plugを更新する。具体的には、要求駆動動力Pwがゼロより大きい場合(ステップS502がYESの場合)は、外部充電エネルギEnrg_plugから今回のMG指令動力Pmgを差し引く。一方、要求駆動動力Pwがゼロ以下(ステップS502がNOであり、回生による発電を行った場合)は、車両走行のためにMG102にて消費した外部充電エネルギの一部を再回収したと仮定し、外部充電エネルギEnrg_plugに回生したエネルギを足しこむ。これにより、外部充電エネルギEnrg_plugを更新する。この演算をまとめると、ステップS508では、次の式6の演算によって外部充電エネルギEnrg_plugを更新する。
(式6) Enrg_plug(今回値) = Enrg_plug(前回値) - ( Pmg + Loss_mg(ωmg_n, Tmg_n) )
ωmg_n:MG102の現在の角速度、
Tmg_n:MG102の現在のトルク (Tmg_n = Pmg/ωmg_n)
ただし、Enrg_plugの最小値はゼロとし、上式が負になる場合はEnrg_plug(今回値)=0とする。
【0057】
ステップS508の処理の後、HV−ECU113はエンジン/変速機ECU109にエンジン指令動力Peを指令し、MG−ECU110にMG指令動力Pmgを指令する(ステップS511)。
【0058】
次に、前述のステップS211で実行する制御モード2(EV・発電併用モード)の詳細を説明する。図6は、その制御モード2(EV・発電併用モード)の処理を示すフローチャートである。
【0059】
ステップS601、S602は、それぞれ、ステップS501、S502と同様の処理である。ステップS603では、現在の走行状態における発電電費Dを算出し、さらに、その発電電費Dに基づいて最適発電電費Doptと最適発電電力Eoptを決定する。
【0060】
発電電費Dとは、MG102とバッテリ107との間の電力授受がゼロ場合のエンジン101の燃料消費量(すなわち、エンジン101のみで走行した場合の燃料消費量)に対するMG102が発電した場合のエンジン101の燃料消費量の増分を、発電電力Egenで除したものである。
【0061】
すなわち、発電電費Dは、MG102から電源系へ供給した電力に対する燃料増加量の比率である。従って、発電電費Dが小さいほど、発電に必要な電力量あたりの燃料消費量が小さくなり、より効率のよい発電ができることになる。そのため、この発電電費Dを算出することで、発電による燃料コストを定量的に算出することができる。なお、電源系とは、バッテリ107とそのバッテリ107から供給される電力によって動作する機器とからなる系を意味する。
【0062】
ここで、燃料消費量の増分は発電電力Egenによって変化するため、発電電費Dと発電電力Egenとは、次の式7の関係で表される。
(式7) D(Egen) = (発電電力Egenの時の燃料消費量増分)/(発電電力Egen)
燃料消費量の増分は、車軸の駆動動力が要求駆動動力Pwで、且つ、MG102から電源系へ供給する電力(すなわちMG102の発電電力)Egenとしたときにそれぞれ定まるエンジン101およびMG102の動作点における燃料消費量Fg1と、MG102での発電をゼロとして、要求駆動動力Pwを全てエンジン101で発生したときに定まるエンジン動作点での燃料消費量Fg0との差(Fg1−Fg0)を求めることで得られる。
【0063】
図7に、発電電費Dと、MG102が発電する発電電力Egenとの関係を例示する。この図7を用いて、最適発電電費Doptと最適発電電力Eoptの算出方法を説明する。図7において、発電電力Egenの最大値(最大発電電力)は、MG102の現在の回転速度での最大発電電力または予め定めたバッテリ107の最大充電電力のどちらか小さい方となる。MG102の発電電力Egenをゼロからこの最大発電電力まで連続的に変化させていき、各発電電力Egenにおいて発電電費Dを算出した結果が図7の関係である。前述のように、発電電費Dは小さいほどよいことから、図7の関係において発電電費Dの最小値を最適発電電費Doptとする。そして、その最適発電電費Doptにおける発電電力を最適発電電力Eoptとする。
【0064】
このようにして、最適発電電費Doptおよび最適発電電力Eoptを決定した後は、ステップS604にて、最適発電電費DoptがステップS210で算出した基準電費Dsより大きいかどうかを判断する(基準電費Dsの算出方法は後述)。
【0065】
ステップS604で最適発電電費Doptが基準電費Dsより大きい場合(YESの場合)は、基準電費Ds以下でのコストの低い発電はできないと判断できる。この場合はステップS605に進み、制御モード1と同様にMG102によって優先的に駆動動力を発生させる制御を行う。従って、S605はS503と、S606はS504と、S607はS505と、S608はS506と、S509はS507と、S610はS508とそれぞれ同じ処理内容であるため、説明は省略する。
【0066】
ステップS604で最適発電電費Doptが基準電費Dsより小さいと判断した場合(NOの場合)は、基準電費Dsより低いコストで効率よく発電が可能と判断できる。この場合、ステップS611に進む。
【0067】
ステップS611では、最適発電電力EoptをMG102が発電する場合に必要な動力(MG発電動力)Poptを、次の式8から算出する。
(式8) Popt=ωmg_n ×Tmg_map( ωmg_n, Img_opt )
Tmg_map(ω、I):回転速度ω、発電電流Iに対するMG発電トルクであり、事前に測定することによって決定したマップから求める。
Img_opt = Eopt / バッテリ電圧
【0068】
続くステップS612では、エンジン指令動力Peに要求駆動動力PwとMG発電動力Poptの和をセットする。これにより、エンジン101が車両100の駆動動力とMG102の発電に必要な駆動動力とを賄う。
【0069】
続くステップS613では、MG指令動力Pmgに(-1)×Poptをセットする。ここで符号を逆転させているのは、MG発電動力Poptは発電側が正、MG指令動力Pmgは発電側が負のためである。このステップS613を実行する場合、外部充電エネルギEnrg_plugには変化がないため、ステップS610を実行することなく、直接、ステップS616に進む。
【0070】
ステップS602でNOと判断した場合はステップS614に進む。そのステップS614はステップS509、ステップS615はステップS510と同様の処理である。ステップS610またはステップS613の処理の後はステップS616に進む。ステップS616では、エンジン/変速機ECU109にエンジン指令動力Peを指令し、MG−ECU110にMG指令動力Pmgを指令する。
【0071】
次に、前述のステップS210で実行する基準電費Dsの算出方法の詳細を説明する。図8は、基準電費Dsの算出処理を示すフローチャートである。
【0072】
まず、ステップS801では、ステップS202で推定した推定車速V(t)、ステップS203で推定した推定要求駆動動力Pw_est(t)から、将来の各時刻t=ti(i =1〜n)における推定最適発電電費Dopt_est(t)および推定最適発電電力Eopt_est(t)を求める。このステップS801が請求項の推定コスト指標決定手段に相当する。
【0073】
推定最適発電電費Dopt_est、推定最適発電電力Eopt_estは、入力として現在値(実際値)を使用するか、将来の推定値を使うかの違いのみで、算出方法はステップS603での最適発電電費Doptおよび最適発電電力Eoptの算出方法と同様なため、詳細な説明は省略し、概略説明のみにとどめる。
【0074】
図9に、ある時刻tiにおける推定発電電費D(ti)と推定発電電力Egen(ti)との関係を例示する。この図9の関係において推定発電電費Dの最小値を推定最適発電電費Dopt_est(ti)とし、その推定最適発電電費Doptにおける推定発電電力を推定最適発電電力Eopt_est(ti)とする。また、図10は、このようにして決定した推定最適発電電費Dopt_est(t)および推定最適発電電力Eopt_est (t)と、推定車速V(t)とを例示する図である。
【0075】
ステップS802では、エンジン101の動力をMG102に入力することでMG102が行なう発電、すなわちエンジン発電にて発電されるエネルギである発電エネルギEnrg_genをゼロにリセットする。そして、ステップS803でインデックス変数jを1にリセットする。
【0076】
ステップS804では、インデックス変数jがサンプル数(サンプル時間の数)以下であるか否かを判断する。この判断がNOの場合すなわちインデックス変数jがサンプル数を超えている場合には後述するステップS809へ進み、YESの場合すなわちインデックス変数jがサンプル数以下である場合にはステップS805へ進む。
【0077】
ステップS805ではj番目に推定最適電費Dopt_estの小さい時刻t = tkを検索し、t=tk の時刻でエンジン発電を行うと想定し、t= tkにおいて、推定最適発電電力Eopt_est(tk)でのエンジン発電を行うことによって得られると推定されるエネルギ(Eopt_est(tk)×tのサンプル時間)を発電エネルギEnrg_genに加算する。
【0078】
そして、続くステップS806では、t = tkの推定駆動電力Ed_est(tk)×tのサンプル時間を推定必要エネルギEnrg_demから差し引く。この理由は、t = tkで発電を行うことを想定した場合、この時刻ではMG102を駆動力源として用いないことになるため、MG102に駆動動力を発生させるためにバッテリ107からMG102へ電力(すなわちエネルギ)を供給する必要がなくなるからである。
【0079】
続くステップS807では、ステップS805の処理により発電エネルギEnrg_genが増加し、且つ、ステップS806において推定必要エネルギEnrg_demが減少した結果、走行全体でのエネルギ収支がプラスになるかを計算する。具体的には、発電エネルギEnrg_genと外部充電エネルギEnrg_plugの和(Enrg_gen+Enrg_plug)が推定必要エネルギEnrg_demよりも大きくなるかを判断する。
【0080】
ステップS807の判断がNOである場合は、ステップS808でjを1増やした後、ステップS804を再度実行する。そのステップS804が再びYESの場合には、発電エネルギEnrg_genを増加させるとともに(S805)、推定必要エネルギEnrg_demを減少させる(S806)。
【0081】
ステップS807の判断がYESの場合は、請求項の基準コスト指標決定手段に相当するステップS809に進み、基準電費Dsを、j番目に推定最適発電電費Dopt_est(tk)の小さい時刻t = tkの推定最適発電電費Dopt_est(tk)にセットする。
【0082】
このようにして基準電費Dsをセットすれば、基準電費Dsよりも低い発電電費Dで発電を行うことができる時刻のみ、エンジン発電を行えばよく、その他の時刻では、制御モード1と同様の制御を行うことが可能になると言える。そのため、図6に示した制御モード2の処理では、発電電費Dが基準電費Dsより小さい場合にのみ、エンジン発電を行っている。
【0083】
しかも、発電電費Dが基準電費Dsより小さい場合にのみ、エンジン発電を行うため、少ない燃料消費量で発電できる区間が予定走行経路の前半部分か後半部分かに関係なく、少ない燃料消費量で発電できる区間においてエンジン発電を行うことができる。そのため、走行に要するコストをより低減することができる。
【0084】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の実施形態となる制御装置を備えたプラグインハイブリッド車両100の要部構成を示す図である。
【図2】走行モードの決定およびその走行モードで走行する際に実行するメイン制御フローを示す図である。
【図3】図2のステップS202〜S205で算出した推定車速V(t)、推定要求駆動動力Pw_est(t)、推定駆動電力Ed_est(t)、推定回生電力Er_est(t)の一例を示す図である。
【図4】ナビゲーションシステム112の画面に制御モードが表示されている例を示す図であり、(a)はEV優先モード、(b)はEV・発電併用モードが表示されている例である。
【図5】図2のステップS209で実行する制御モード1(EV優先モード)の処理を示すフローチャートである
【図6】図2のステップS211で実行する制御モード2(EV・発電併用モード)の処理を示すフローチャートである。
【図7】発電電費Dと、MG102が発電する発電電力Egenとの関係を例示する図である。
【図8】基準電費Dsの算出処理を示すフローチャートである。
【図9】ある時刻tiにおける推定発電電費D(ti)と推定発電電力Egen(ti)との関係を例示する図である。
【図10】推定最適発電電費Dopt_est(t)および推定最適発電電力Eopt_est (t)と、推定車速V(t)とを例示する図である。
【符号の説明】
【0086】
100:プラグインハイブリッド車両、 101:エンジン、 102:モータジェネレータ(MG)、 103:変速機、 104:デファレンシャル、 105:クラッチ、 106:駆動輪、 107:車載バッテリ、 108:インバータ、 109:エンジン/変速機ECU、 110:MG−ECU、 112:ナビゲーションシステム、 113:ハイブリッドECU(HV−ECU)、 114:充電コネクタ、 115:充電器、 116:アクセルペダル、 117:ブレーキペダル、 118:温度センサ、 119:電流センサ、 S202:走行状態推定手段、 S206:推定必要エネルギ算出手段、 S207、S508、S610:外部充電エネルギ算出手段、 S208:エネルギ比較手段、 S801:推定コスト指標決定手段、 S809:基準コスト指標決定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンおよび回転電機を駆動力源として備えるとともに、前記回転電機との間で電力の授受を行うことができる車載バッテリを備え、その車載バッテリに対して車両外部の電力供給源から充電を行なうことができるハイブリッド車両を制御するハイブリッド車両の制御装置であって、
前記電力供給源から供給された電力である外部充電エネルギを算出する外部充電エネルギ算出手段と、
このハイブリッド車両の駆動動力を前記車載バッテリから優先的に前記回転電機に電力を供給することで回転電機に発生させるモードである電動駆動優先モードにて予定走行経路を走行する場合に必要と推定される推定必要エネルギを算出する推定必要エネルギ算出手段と、
前記推定必要エネルギを前記外部充電エネルギによって賄えるか否かを走行開始前に判断するエネルギ比較手段とを備え、
そのエネルギ比較手段にて、前記推定必要エネルギを前記外部充電エネルギによって賄えると判断された場合には、前記電動駆動優先モードを実行する一方、賄えないと判断された場合には、前記エンジンの駆動力を前記回転電機に入力することによって前記回転電機に発電を行わせるエンジン発電を、予定走行経路の全体の中でできるだけ発電効率のよい地点で行ってエネルギの不足分を賄い、他の地点では前記電動駆動優先モードを行なう、電動駆動・発電併用モードを実行することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記エンジン発電を行う際のコスト指標の基準値として基準コスト指標が設けられており、
前記電動駆動・発電併用モードにおいては、前記エンジン発電を行うとした場合の前記コスト指標を逐次算出し、算出したコスト指標が前記基準コスト指標よりも低い場合に限り、前記エンジン発電を行うことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記予定走行経路を走行する際の車速および勾配を所定の時間区分毎に推定する走行状態推定手段と、
その走行状態推定手段の推定結果に基づいて、各時間区分にて前記エンジン発電を行うとした場合の前記コスト指標を推定コスト指標として決定する推定コスト指標決定手段と、
その推定コスト指標決定手段によって決定された時間区分毎の推定コスト指標に基づいて前記基準コスト指標を決定する基準コスト指標決定手段とをさらに含むことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記基準コスト指標算出手段は、前記推定コスト指標決定手段によって決定された推定コスト指標が低いものから順に前記エンジン発電を行う時間区分に決定していき、エネルギの不足分をエンジン発電の合計電力が超えた時点において、エンジン発電を行う時間区分に対応する推定コスト指標のうち最も高い推定コスト指標を前記基準コスト指標として決定することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項において、
前記コスト指標は、前記回転電機が発電および駆動を行わないで走行した場合に前記エンジンが消費する燃料消費量と、前記エンジン発電を行いつつ走行した場合に前記エンジンが消費する燃料消費量の差分を、エンジン発電によって発電される電力で割った値であることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか1項において、
前記エンジン発電においては、そのエンジン発電において発生させる電力の変化に対する前記コスト指標の変化を示す予め設定された対応関係に基づいて、コスト指標の最小値を求め、そのコスト指標の最小値に対応する電力を発電することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項において、
前記電動駆動優先モードを実行するか、前記電動駆動・発電併用モードを実行するかを車両の運転者に報知することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項において、
前記外部充電エネルギ算出手段は、前記回転電機に駆動動力を発生させるために前記車載バッテリの電力を使用した場合、その電力を前記外部充電エネルギから減算し、回生制動を行った場合には、回生制動動力に対応する電力を前記外部充電エネルギに加算することで、車両走行中に、前記外部充電エネルギを逐次更新することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−884(P2010−884A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−160902(P2008−160902)
【出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】