説明

ハイブリッド車両の制御装置

【課題】EGR装置の検査にかかる時間を従来のものより短縮することができるハイブリッド車両の制御装置を提供する。
【解決手段】エンジンが発生した動力をモータジェネレータに伝達することができるハイブリッド車両の制御装置において、ハイブリッドECUは、EGR装置の検査状態にあり、エンジンの出力要求値が予め定められた規定値より大きいことを条件として(ステップS21)、出力要求値を当該規定値に決定する(ステップS22)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バッテリを充電する回転電機に内燃機関が発生した動力を伝達することができるハイブリッド車両が知られている。一方、このような車両に搭載される内燃機関には、燃焼後の排気の一部を吸気側へ導き再度吸気させるEGR(Exhaust Gas Recirculation)装置が設けられているものがある。
【0003】
一般に、EGR装置が正常に機能しているか否かの検査は、EGR装置に設けられたEGRバルブを開閉させ、EGRバルブが開状態における吸気管内の負圧と、EGRバルブが閉状態における吸気管内の負圧との負圧差に基づいて行われる。
【0004】
すなわち、この負圧差が予め定められた閾値以上であれば、EGR装置が正常に機能していると判断することができ、負圧差が閾値未満であれば、EGR装置が正常に機能していないと判断することができる。
【0005】
しかしながら、バッテリを充電する回転電機に内燃機関が発生した動力を伝達することができるハイブリッド車両は、EGR装置の検査中にバッテリの充電要求があった場合には、EGRバルブが閉状態における内燃機関の負荷が増加するため、吸気管内の負圧が減少してしまう。
【0006】
このため、上述したハイブリッド車両は、EGRバルブが開状態における吸気管内の負圧と、EGRバルブが閉状態における吸気管内の負圧との負圧差が小さくなってしまい、EGR装置が正常に機能しているか否かの検査が行えない状態になってしまうことがあった。
【0007】
このような状態になることを防止するものとして、内燃機関によって回転電機を駆動してバッテリの充電を行い、回転電機による充電量を一定に制御した状態で、EGRバルブを開閉させ、EGRバルブの開閉により変化するセンサ出力値に基づいて、EGRバルブの開閉動作の異常を診断するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
このように、特許文献1に開示されたものは、内燃機関の負荷が一定の状態で、EGRバルブの開閉によるセンサ出力値の変化を検出することにより、EGRバルブの開閉状態を確実に検出することを可能としていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−196684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述したような従来の技術は、バッテリの充電量を一定に制御できるまでは、EGR装置の検査を行うことができないため、EGR装置の検査に時間がかかるといった課題があった。
【0011】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、EGR装置の検査にかかる時間を従来のものより短縮することができるハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のハイブリッド車両の制御装置は、上記目的を達成するため、(1)EGR装置を有する内燃機関と、バッテリを充電する回転電機と、が設けられ、前記内燃機関が発生した動力を前記回転電機に伝達することができるハイブリッド車両の制御装置において、前記内燃機関の出力要求値を決定する出力要求値決定手段と、前記出力要求値決定手段によって決定された出力要求値に応じて前記内燃機関の出力を制御する出力制御手段と、を備え、前記出力要求値決定手段は、前記EGR装置の検査状態にあり、前記出力要求値が予め定められた規定値より大きいことを条件として、前記出力要求値を予め定められた規定値に決定するように構成されている。
【0013】
この構成により、本発明のハイブリッド車両の制御装置は、内燃機関の出力を規定値以下に維持することにより、EGR装置の検査前にバッテリの充電量を一定に制御する必要がないため、EGR装置の検査にかかる時間を従来のものより短縮することができる。
【0014】
また、上記(1)に記載のハイブリッド車両の制御装置において、(2)前記出力制御手段は、前記出力要求値決定手段によって決定された出力要求値に応じて、前記内燃機関に吸入させる空気量を変化させることにより、前記内燃機関の出力を制御するようにしてもよい。
【0015】
この構成により、本発明のハイブリッド車両の制御装置は、内燃機関の出力を規定値以下に維持することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、EGR装置の検査にかかる時間を従来のものより短縮することができるハイブリッド車両の制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態に係るハイブリッド車両の制御装置を搭載した車両の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】図1に示すエンジンの概略構成図である。
【図3】図1に示す検査装置を用いたEGR装置の検査動作を示すシーケンス図である。
【図4】図3に示す出力要求値決定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明においては、動力分割式のハイブリッド車両に本発明に係るハイブリッド車両の制御装置を適用した場合を例に説明する。
【0019】
図1に示すように、本実施の形態に係るハイブリッド車両の制御装置を搭載したハイブリッド車両1は、内燃機関を構成するエンジン10と、エンジン10によって発生された動力をドライブシャフト11L、11Rを介して駆動輪12L、12Rに伝達するための動力伝達装置13と、ハイブリッド車両1の各部を制御するハイブリッド用電子制御ユニット(以下、「ハイブリッドECU」という)14と、エンジン10を制御するエンジン用電子制御ユニット(以下、「エンジンECU」という)15と、を備えている。
【0020】
エンジンECU15は、図示を省略するが、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、フラッシュメモリと、入出力ポートと、を備えたマイクロプロセッサによって構成されている。
【0021】
エンジンECU15のROMには、当該マイクロプロセッサをエンジンECU15として機能させるためのプログラムが記憶されている。すなわち、エンジンECU15のCPUがRAMを作業領域としてROMに記憶されたプログラムを実行することにより、当該マイクロプロセッサは、エンジンECU15として機能する。
【0022】
エンジンECU15は、ハイブリッドECU14と高速CAN(Controller Area Network)を介して通信するようになっており、ハイブリッドECU14から入力される制御信号およびエンジン10の運転状態を検出する各種センサから入力される検出信号等に基づいて、燃料噴射制御、点火制御および吸入空気量調節制御等のエンジン10の運転制御を行うとともに、必要に応じてエンジン10の運転状態に関するデータをハイブリッドECU14に出力するようになっている。
【0023】
動力伝達装置13は、電力と回転力とを相互に変換するモータジェネレータMG1、MG2、モータジェネレータMG2から伝達された回転を減速して駆動トルクを増幅する減速機17、および、エンジン10によって発生された動力を駆動輪12L、12R側に伝達する動力とモータジェネレータMG1を駆動する動力とに分割する動力分配機構18を備えている。なお、本実施の形態において、モータジェネレータMG1は、本発明における回転電機を構成する。
【0024】
動力分配機構18は、エンジン10の出力軸としてのクランクシャフト19の端部にダンパ20を介して結合された入力軸21と、入力軸21に軸中心が貫通された中空形状のサンギヤ軸22に結合されたサンギヤ23と、サンギヤ23と回転軸が一致するようにサンギヤ23の同心円上に配置されたリングギヤ24と、サンギヤ23およびリングギヤ24に噛み合うようにサンギヤ23とリングギヤ24との間に配置された複数のピニオンギヤ25と、ピニオンギヤ25を自転自在に保持すると共に入力軸21に対して公転自在に保持するキャリア26と、を備えている。
【0025】
このように、動力分配機構18は、サンギヤ23、リングギヤ24、ピニオンギヤ25およびキャリア26を回転要素として、エンジン10によって発生された動力を分割すると共に、モータジェネレータMG1および駆動輪12L、12R側から伝達された動力を統合する遊星歯車機構を構成している。
【0026】
したがって、動力分配機構18は、エンジン10からキャリア26に入力された動力を、サンギヤ23側と、リングギヤ24側と、にそのギヤ比に応じて分割することにより、分割された一方の動力によってモータジェネレータMG1を発電機として機能させるとともに、分割された他方の動力によって駆動輪12L、12Rを回転させるようになっている。
【0027】
また、動力分配機構18は、駆動電力が供給されたモータジェネレータMG1が電動機として機能し、エンジン10が駆動しているときには、エンジン10からキャリア26に入力された動力と、モータジェネレータMG1からサンギヤ23に入力された動力とを統合してリングギヤ24から出力するようになっている。
【0028】
また、動力分配機構18は、駆動電力が供給されたモータジェネレータMG1が電動機として機能し、エンジン10が停止しているときには、モータジェネレータMG1からサンギヤ23に入力された動力をキャリア26に出力することにより、クランクシャフト19を回転させ、エンジン10を始動させるようになっている。このように、モータジェネレータMG1は、動力分配機構18と協働して、スタータとしても機能するようになっている。
【0029】
モータジェネレータMG1は、回転磁界を形成するステータ28と、ステータ28の内部に配置され、複数の永久磁石が埋め込まれているロータ29と、を備えており、ステータ28は、ステータコアおよびステータコアに巻き掛けられた三相コイルを備えている。
【0030】
ロータ29は、動力分配機構18のサンギヤ23と一体に回転するサンギヤ軸22に結合されており、ステータ28のステータコアは、例えば、電磁鋼板の薄板を積層して形成され、本体ケース30の内周部に固定されている。
【0031】
このように構成されたモータジェネレータMG1において、ステータ28の三相コイルに三相交流電力が供給されると、ステータ28によって回転磁界が形成され、この回転磁界にロータ29に埋め込まれた永久磁石が引かれることにより、ロータ29が回転駆動される。このように、モータジェネレータMG1は、電動機として機能するようになっている。
【0032】
また、ロータ29に埋め込まれた永久磁石が回転すると、回転磁界が形成され、この回転磁界によりステータ28の三相コイルに誘導電流が流れることにより、三相コイルの両端に電力が発生する。このように、モータジェネレータMG1は、発電機としても機能するようになっている。
【0033】
モータジェネレータMG2は、回転磁界を形成するステータ32と、ステータ32の内部に配置され複数の永久磁石が埋め込まれたロータ33と、を備えており、ステータ32は、ステータコアおよびステータコアに巻き掛けられた三相コイルを備えている。
【0034】
ロータ33は、減速機17に結合されたロータシャフト34に結合されており、ステータ32のステータコアは、例えば、電磁鋼板の薄板を積層して形成され、本体ケース30の内周部に固定されている。
【0035】
このように構成されたモータジェネレータMG2において、ステータ32の三相コイルに三相交流電力が供給されると、ステータ32によって回転磁界が形成され、この回転磁界にロータ33に埋め込まれた永久磁石が引かれることにより、ロータ33が回転駆動される。このように、モータジェネレータMG2は、電動機として機能するようになっている。
【0036】
また、ロータ33に埋め込まれた永久磁石が回転すると、回転磁界が形成され、この回転磁界によりステータ32の三相コイルに誘導電流が流れることにより、三相コイルの両端に電力が発生する。このように、モータジェネレータMG2は、発電機としても機能するようになっている。
【0037】
減速機17は、モータジェネレータMG2のロータ33に結合されたロータシャフト34に結合されたサンギヤ35と、回転軸がサンギヤ35と一致するようにサンギヤ35の同心円上に配置されたリングギヤ36と、サンギヤ35およびリングギヤ36に噛み合うようにサンギヤ35とリングギヤ36との間に配置された複数のピニオンギヤ37と、一端が本体ケース30に固定され、他端がピニオンギヤ37を自転自在に支持する支持軸を有するキャリア38と、を備えている。
【0038】
このように、減速機17は、サンギヤ35、リングギヤ36およびピニオンギヤ37を回転要素として、モータジェネレータMG2から伝達された回転を減速して駆動トルクを増幅する遊星歯車機構を構成している。
【0039】
したがって、減速機17は、駆動電力が供給されたモータジェネレータMG2が電動機として機能しているときには、モータジェネレータMG2から伝達された回転を減速して駆動トルクを増幅してリングギヤ36から出力するようになっている。
【0040】
また、減速機17は、リングギヤ36に入力された動力による回転を加速して駆動トルクを減衰させてサンギヤ35から出力することにより、モータジェネレータMG2を発電機として機能させるようになっている。
【0041】
減速機17のリングギヤ36および動力分配機構18のリングギヤ24には、リングギヤ36とリングギヤ24とが一体回転するようにカウンタドライブギヤ40が設けられている。カウンタドライブギヤ40は、ギヤ機構41に噛み合わされ、ギヤ機構41は、デファレンシャルギヤ42に噛合されている。カウンタドライブギヤ40に出力された動力は、カウンタドライブギヤ40からギヤ機構41を介して、デファレンシャルギヤ42に伝達されるようになっている。
【0042】
デファレンシャルギヤ42は、ドライブシャフト11L、11Rに接続され、ドライブシャフト11L、11Rは、駆動輪12L、12Rにそれぞれ接続されている。デファレンシャルギヤ42に伝達された動力は、ドライブシャフト11L、11Rを介して、駆動輪12L、12Rに出力される。
【0043】
したがって、駆動電力が供給されたモータジェネレータMG2は、駆動源として機能するようになっており、モータジェネレータMG2によって発生された動力は、駆動輪12L、12Rに伝達されるようになっている。
【0044】
また、駆動電力が供給されていないモータジェネレータMG2は、駆動輪12L、12Rの回転を減速しつつ、その回転力を電力に変換する電力回生器として機能するようになっている。
【0045】
モータジェネレータMG1とモータジェネレータMG2とは、インバータ50およびインバータ51を介してバッテリ52との間で電力のやりとり、すなわち、バッテリ52を充放電させるようになっている。
【0046】
インバータ50およびインバータ51とバッテリ52とを接続する電力ライン53は、インバータ50およびインバータ51が共用する正極母線および負極母線として構成されており、モータジェネレータMG1、MG2のいずれか一方で発電された電力を他方のモータジェネレータで消費することができるようになっている。
【0047】
このようなモータジェネレータMG1、MG2を駆動制御するために、ハイブリッド車両1は、モータ用電子制御ユニット(以下、「モータECU」という)54を備えている。モータECU54は、図示を省略するが、CPUと、ROMと、RAMと、フラッシュメモリと、入出力ポートと、を備えたマイクロプロセッサによって構成されている。
【0048】
モータECU54のROMには、当該マイクロプロセッサをモータECU54として機能させるためのプログラムが記憶されている。すなわち、モータECU54のCPUがRAMを作業領域としてROMに記憶されたプログラムを実行することにより、当該マイクロプロセッサは、モータECU54として機能する。
【0049】
モータECU54には、モータジェネレータMG1、MG2を駆動制御するために必要な信号、例えば、モータジェネレータMG1、MG2の回転子の回転位置をそれぞれ検出する回転位置検出センサ55、56の検出信号、および、モータジェネレータMG1、MG2に入力される相電流を検出する図示しない電流センサの検出信号等が入力されるようになっている。
【0050】
モータECU54は、インバータ50およびインバータ51にスイッチング制御信号を出力することにより、モータジェネレータMG1、MG2を駆動制御するようになっている。
【0051】
また、モータECU54は、ハイブリッドECU14と高速CANを介して通信するようになっており、ハイブリッドECU14から入力された制御信号に応じてインバータ50、51を制御することにより、モータジェネレータMG1、MG2をそれぞれ駆動制御するようになっている。また、モータECU54は、必要に応じてモータジェネレータMG1、MG2の駆動状態に関するデータをハイブリッドECU14に出力するようになっている。
【0052】
バッテリ52の蓄電容量や温度等の状態を管理するために、ハイブリッド車両1は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、「バッテリECU」という)58を備えている。バッテリECU58は、図示を省略するが、CPUと、ROMと、RAMと、フラッシュメモリと、入出力ポートと、を備えたマイクロプロセッサによって構成されている。
【0053】
バッテリECU58のROMには、当該マイクロプロセッサをバッテリECU58として機能させるためのプログラムが記憶されている。すなわち、バッテリECU58のCPUがRAMを作業領域としてROMに記憶されたプログラムを実行することにより、当該マイクロプロセッサは、バッテリECU58として機能する。
【0054】
バッテリECU58には、バッテリ52の状態を管理するために必要な信号、例えば、バッテリ52の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧、バッテリ52の出力端子に接続された電力ライン53に取り付けられた電流センサ59によって検出される充放電電流、および、バッテリ52に取り付けられた図示しない温度センサからの電池温度等を表す信号が入力されるようになっている。
【0055】
また、バッテリECU58は、必要に応じてバッテリ52の状態に関するデータをハイブリッドECU14に出力するようになっている。例えば、バッテリECU58は、電流センサ59によって検出された充放電電流の積算値に基づいて、バッテリ52の残容量を表すSOC(State Of Charge)を算出し、算出したSOCをハイブリッドECU14に出力するようになっている。
【0056】
ハイブリッドECU14は、CPUと、ROMと、RAMと、フラッシュメモリと、入出力ポートと、を備えたマイクロプロセッサによって構成されている。ハイブリッドECU14のROMには、当該マイクロプロセッサをハイブリッドECU14として機能させるためのプログラムが記憶されている。
【0057】
すなわち、ハイブリッドECU14のCPUがRAMを作業領域としてROMに記憶されたプログラムを実行することにより、当該マイクロプロセッサは、ハイブリッドECU14として機能する。
【0058】
ハイブリッドECU14は、エンジンECU15やモータECU54、バッテリECU58と高速CANを介して互いに接続されており、エンジンECU15やモータECU54、バッテリECU58と各種制御信号やデータのやりとりを行うようになっている。
【0059】
例えば、ハイブリッドECU14は、バッテリECU58から送信されたデータが表すSOCに基づいて、モータジェネレータMG1、MG2によって発電された電力をバッテリ52に充電させるか否かを表す制御信号をモータECU54に送信するようになっている。
【0060】
また、ハイブリッドECU14は、エンジンECU15から得られるエンジン10の作動状態に関する情報、および、バッテリECU58から得られるSOC等のハイブリッド車両1の各ECUから得られた情報に基づいて、エンジン10の出力要求値を決定するようになっている。このように、本実施の形態において、ハイブリッドECU14は、本発明における出力要求値決定手段を構成する。
【0061】
エンジンECU15は、ハイブリッドECU14によって決定された出力要求値に応じてエンジン10の出力を制御するようになっている。例えば、エンジンECU15は、ハイブリッドECU14によって決定された出力要求値に応じて、エンジン10に吸入させる空気量を変化させることにより、エンジン10の出力を制御するようになっている。このように、本実施の形態において、エンジンECU15は、本発明における出力制御手段を構成する。
【0062】
ハイブリッド車両1には、外部機器と各ECUとを高速CANを介して接続するためのプラグが設けられている。本実施の形態においては、当該プラグには、検査装置60が接続されている。検査装置60は、例えば、CPUと、RAMと、ROMと、ハードディスク装置と、タッチパネル等よりなる入力装置と、液晶ディスプレイ装置等よりなる表示装置と、高速CANに接続するためのインタフエースモジュールとを備えたコンピュータ装置によって構成されている。
【0063】
検査装置60は、高速CANを介して各ECUを制御するための制御信号を送信したり、各ECUからハイブリッド車両1の各部の状態を表す信号を受信したりするようになっている。
【0064】
図2に示すように、エンジン10は、シリンダヘッド101と、シリンダブロックを備えており、シリンダヘッド101およびシリンダブロックは、複数の気筒102を形成している。各気筒102内には、ピストンにより燃焼室105がそれぞれ画成されている。
【0065】
なお、本実施の形態において、エンジン10は、直列4気筒のガソリンエンジンによって構成されているものとして説明するが、本発明においては、直列6気筒エンジン、V型6気筒エンジン、V型12気筒エンジンまたは水平対向6気筒エンジンなどの種々の型式のエンジンによって構成されていてもよい。
【0066】
シリンダヘッド101には、外気を気筒102内に導入するための吸気ポートと、排気ガスを気筒102内から排出するための排気ポートが形成されている。各吸気ポートには、燃料噴射用インジェクタ103が設置されている。
【0067】
インジェクタ103は、エンジンECU15によって制御されるソレノイドコイルおよびニードルバルブを有している。インジェクタ103には、燃料タンクからサプライポンプによってデリバリーパイプ104に導入された燃料が所定の圧力で供給されている。
【0068】
インジェクタ103は、エンジンECU15によってソレノイドコイルが通電されると、ニードルバルブを開いて、各吸気ポートに燃料を噴射するようになっている。インジェクタ103によって噴射された燃料は、空気と混ざり混合気として燃焼室105に導入される。
【0069】
また、シリンダヘッド101には、吸気ポートと燃焼室105との連通状態を切替える吸気バルブと、排気ポートと燃焼室105との連通状態を切替える排気バルブが設置されている。
【0070】
また、シリンダヘッド101には、各燃焼室105に導入された混合気に点火するための点火プラグ106が配置されている。点火プラグ106は、プラチナやイリジウム合金製の電極を有する公知の点火プラグによって構成されている。
【0071】
点火プラグ106は、エンジンECU15によって点火時期が制御されるようになっている。すなわち、点火プラグ106は、エンジンECU15によって電極が通電されることにより放電し、燃焼室105内の混合気に点火するようになっている。
【0072】
エンジン10は、シリンダヘッド101に接続される吸気マニホールド107をさらに有している。吸気マニホールド107は、吸気通路108を形成する吸気管115に接続されている。
【0073】
吸気管115には、吸入空気量を調整するためのスロットルバルブ109が吸気マニホールド107の上流側に設けられている。吸気マニホールド107には、吸気マニホールド107内の吸気圧、すなわち負圧を検知する吸気圧センサ125が設けられている。
【0074】
スロットルバルブ109は、その開度を無段階に調整することが可能な電子制御式の開閉弁により構成されている。エンジンECU15は、スロットルバルブ109に設置されたスロットルモータを制御してスロットルバルブ109の開度を調節し、エンジン10の吸入空気量を調整するようになっている。
【0075】
エンジン10は、シリンダヘッド101に接続される排気マニホールド110をさらに有している。排気マニホールド110は、排気通路111を形成する排気管116に接続されている。
【0076】
排気管116には、例えば、三元触媒を有する触媒装置112が設けられている。三元触媒は、排気ガス中の炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)および窒素酸化物(NOx)の間で化学反応を起こさせることにより、HC、COおよびNOxを二酸化炭素、水および窒素といった無害なものに変化させるようになっている。
【0077】
また、排気管116には、触媒装置112の上流側に、エンジン10の空燃比を検知する空燃比センサ113が設けられている。エンジンECU15は、空燃比センサ113によって検知された空燃比が理想空燃比となるように、例えば、インジェクタ103によって噴射される燃料の量を調節するようになっている。
【0078】
エンジン10は、排気通路111を流れる排気ガスの一部を吸気通路108に還流させて、各気筒102の燃焼室105に供給するためのEGR装置114をさらに備えている。このように、EGR装置114を設けることにより、燃焼室105内の燃焼温度が低下し、NOxの発生量が低減すると共に、ポンピングロスが低減し、燃費が向上する。
【0079】
EGR装置114は、吸気管115と排気管116とを接続し、内部にEGR通路117が形成されたEGR管118を備えている。EGR管118には、EGR通路117を流れる排気ガス(以下、単に「EGRガス」という)を冷却するためのEGRクーラ119と、EGRバルブ120とが設けられている。
【0080】
EGRバルブ120は、リニアソレノイド121と、基端部分がリニアソレノイド121に挿入され、先端部分にEGR通路117を開閉する弁体122が設けられたシャフト123とを備えている。
【0081】
エンジンECU15は、リニアソレノイド121に対する通電を制御することにより、通電により生じる電磁力と図示しないスプリングの反発力によりシャフト123がその軸方向に往復駆動され、弁体122によりEGR通路117が開閉される。
【0082】
本実施の形態におけて、EGRバルブ120は、リニアソレノイド121が通電された状態で開状態となり、リニアソレノイド121が通電されていない状態で閉状態となるノーマリークローズ型のバルブにより構成されている。
【0083】
エンジンECU15は、EGRバルブ120の開度を調整することによって、排気通路111と吸気通路108とを連通し、吸気マニホールド107に導入されるEGRガスの量を調整するようになっている。
【0084】
EGRクーラ119には、EGRガスの通路の外周部に冷媒室が形成されている。EGR管118から供給されたEGRガスは、EGRガスの通路を通過する際に冷媒室を流れる冷却水との熱交換により冷却され、下流側へ導かれるようになっている。
【0085】
次に、検査装置60を用いたEGR装置114の検査動作について図3を参照して説明する。
【0086】
まず、エンジン10が始動している状態で、検査装置60の入力装置を介してEGR装置114の検査開始が指示されると、検査装置60からハイブリッドECU14にEGR装置114の検査開始を表す信号が送信され(ステップS1)、ハイブリッドECU14は、EGR装置114の検査状態となる。
【0087】
ハイブリッドECU14は、EGR装置114の検査状態となると、エンジン10の出力要求値を決定する出力要求値決定処理を繰り返し実行する(ステップS2)。この一方で、EGRバルブ120を開状態にする指示を表す信号が検査装置60からハイブリッドECU14に送信され(ステップS3)、ハイブリッドECU14は、エンジンECU15に当該指示を表す信号を転送する(ステップS4)。
【0088】
エンジンECU15は、この指示に応じてEGRバルブ120を開状態にし(ステップS5)、吸気圧センサ125によって検知された負圧を表す信号をハイブリッドECU14に送信し(ステップS6)、ハイブリッドECU14は、当該信号を検査装置60に転送する(ステップS7)。
【0089】
次に、EGRバルブ120を閉状態にする指示を表す信号が検査装置60からハイブリッドECU14に送信され(ステップS8)、ハイブリッドECU14は、エンジンECU15に当該指示を表す信号を転送する(ステップS9)。
【0090】
エンジンECU15は、この指示に応じてEGRバルブ120を閉状態にし(ステップS10)、吸気圧センサ125によって検知された負圧を表す信号をハイブリッドECU14に送信し(ステップS11)、ハイブリッドECU14は、当該信号を検査装置60に転送する(ステップS12)。
【0091】
次に、検査装置60は、EGR装置114が正常に機能しているか否かを判断する(ステップS13)。具体的には、検査装置60は、EGRバルブ120が開状態にあるときの負圧と、EGRバルブ120が閉状態にあるときの負圧との負圧差を算出し、算出した負圧差が予め定められた閾値以上であれば、EGR装置114が正常に機能していると判断し、負圧差が閾値未満であれば、EGR装置114が正常に機能していないと判断する。
【0092】
次に、検査装置60は、判断結果を表示装置に表示させると共に(ステップS14)、ハイブリッドECU14にEGR装置114の検査終了を表す信号が送信され(ステップS15)、ハイブリッドECU14は、EGR装置114の非検査状態となる。ハイブリッドECU14は、EGR装置114の非検査状態となると、出力要求値決定処理を停止する(ステップS16)。
【0093】
ここで、ハイブリッドECU14によって実行される出力要求値決定処理について図4を参照して説明する。
【0094】
まず、ハイブリッドECU14は、ハイブリッド車両1の各ECUから得られた情報に基づいて、エンジン10の出力要求値を決定する(ステップS20)。次に、ハイブリッドECU14は、出力要求値が予め定められた規定値より大きいか否かを判断する(ステップS21)。
【0095】
ここで、出力要求値が規定値より大きいと判断した場合には、ハイブリッドECU14は、出力要求値を規定値に決定する(ステップS22)。一方、出力要求値が規定値より大きくないと判断した場合には、ハイブリッドECU14は、出力要求値を変更しない。
【0096】
このように、ハイブリッドECU14は、決定した出力要求値を表す信号をエンジンECU15に送信し、エンジンECU15は、エンジン10の出力値が、当該出力要求値となるように、例えば、スロットルバルブ109の開度を調整することにより、エンジン10に吸入させる空気量を変化させる。
【0097】
以上のように、本発明の実施の形態に係るハイブリッド車両の制御装置は、エンジン10の出力を規定値以下に維持することにより、EGR装置114の検査前にバッテリ52の充電量を一定に制御する必要がないため、EGR装置114の検査にかかる時間を従来のものより短縮することができる。
【0098】
なお、本実施の形態において、検査装置60とエンジンECU15との間で送受信される全ての信号は、ハイブリッドECU14を経由する例について説明したが、EGRバルブ120を開状態にする指示を表す信号、EGRバルブ120を閉状態にする指示を表す信号、および、負圧を表す信号は、検査装置60とエンジンECU15との間で、直接に送受信するようにしてもよい。この場合には、検査装置60とハイブリッドECU14との間の伝送量、および、検査装置60とエンジンECU15との間の伝送量が削減される。
【0099】
また、本実施の形態において、ハイブリッドECU14は、決定した出力要求値を表す信号をエンジンECU15に送信し、エンジンECU15は、エンジン10の出力値が、当該出力要求値となるように、スロットルバルブ109の開度を調整することにより、エンジン10に吸入させる空気量を変化させるものとして説明した。
【0100】
これに対し、本発明においては、ハイブリッドECU14が、出力要求値とスロットルバルブ109の開度との対応関係を表すマップを予め格納しておき、決定した出力要求値からスロットルバルブ109の開度を求め、スロットルバルブ109の開度を表す信号をエンジンECU15に送信するようにしてもよい。
【0101】
また、本実施の形態においては、ハイブリッドECU14が本発明における出力要求値決定手段を構成する例について説明したが、本発明における出力要求値決定手段は、エンジンECU15等の他のECUによって構成してもよい。
【0102】
以上のように、本発明に係るハイブリッド車両の制御装置は、EGR装置の検査にかかる時間を従来のものより短縮することができるという効果を奏するものであり、バッテリを充電する回転電機に内燃機関が発生した動力を伝達することができるハイブリッド車両の制御装置に有用である。
【符号の説明】
【0103】
MG1、MG2 モータジェネレータ
1 ハイブリッド車両
10 エンジン
11L、11R ドライブシャフト
12L、12R 駆動輪
13 動力伝達装置
14 ハイブリッドECU(出力要求値決定手段)
15 エンジンECU(出力制御手段)
17 減速機
18 動力分配機構
19 クランクシャフト
40 カウンタドライブギヤ
50、51 インバータ
52 バッテリ
54 モータECU
58 バッテリECU
60 検査装置
101 シリンダヘッド
102 気筒
103 インジェクタ
104 デリバリーパイプ
105 燃焼室
106 点火プラグ
107 吸気マニホールド
108 吸気通路
109 スロットルバルブ
110 排気マニホールド
112 触媒装置
113 空燃比センサ
114 EGR装置
118 EGR管
119 EGRクーラ
120 EGRバルブ
125 吸気圧センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
EGR装置が設けられた内燃機関と、
バッテリを充電する回転電機と、が設けられ、
前記内燃機関が発生した動力を前記回転電機に伝達することができるハイブリッド車両の制御装置において、
前記内燃機関の出力要求値を決定する出力要求値決定手段と、
前記出力要求値決定手段によって決定された出力要求値に応じて前記内燃機関の出力を制御する出力制御手段と、を備え、
前記出力要求値決定手段は、前記EGR装置の検査状態にあり、前記出力要求値が予め定められた規定値より大きいことを条件として、前記出力要求値を予め定められた規定値に決定することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
前記出力制御手段は、前記出力要求値決定手段によって決定された出力要求値に応じて、前記内燃機関に吸入させる空気量を変化させることにより、前記内燃機関の出力を制御することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−86678(P2013−86678A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229875(P2011−229875)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】