説明

ハイブリッド車両の駆動制御装置

【課題】ハイブリッド車両における燃費の向上を図る。
【解決手段】出発地から目標とする地点に到達するまでの経路内の任意の区間について低燃費走行となるような推奨アクセル操作のスケジュールを予め定められた区間毎に規定し、走行時、推奨アクセル操作のスケジュールおよび車両の現在位置に基づいて車両が位置する区間における推奨アクセル操作を表示する(S510)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンとモータを走行用の動力源として走行するハイブリッド車両に搭載され、エンジンとモータの駆動制御を行うハイブリッド車両の駆動制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド車両に搭載され、アクセルペダルの操作量に応じて変化するアクセル開度を表示部に表示させるとともに、この表示部に、走行モード(EVモードおよびHVモード)が切替わるアクセル開度を示すようにした表示装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、車速等の走行履歴を予め定められた区間毎に収集して学習し、学習した走行履歴と目的地までの経路の道路状況とに基づいて目的地までの燃料消費量が最小となるように予め定められた区間毎にハイブリッド車両のバッテリの充電量の目標値(目標SOC)のスケジュールを設定し、このスケジュールに従って各区間におけるハイブリッド車両のバッテリの充電量を目標SOCに近づけるように、エンジンとモータの駆動制御を行うようにしたハイブリッド車両の駆動制御装置がある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−74321号公報
【特許文献2】特開2000−333305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載された装置を搭載したような車両では、運転者は表示部を視認しながらEVモード走行を多用するようなアクセル操作を行うことで、燃費向上を図ることが可能となっている。
【0006】
しかし、このように単にEVモード走行を多用するようなアクセル操作を行うよりも、上記特許文献2に記載された装置のように、予め目的地までの燃料消費量が最小となるように区間毎の制御目標値のスケジュールを設定し、このスケジュールに従ってエンジンとモータの駆動制御を行う方が、燃費低減効果が大きくなる場合がある。例えば、停車回数の多い区間ではHV走行よりもEV走行を多用した方が燃費の良好な走行となるが、そのような停車回数の多い区間の手前でEV走行を多用してしまうと、その停車回数の多い区間でバッテリ残量が低下してしまい、停車回数の多い区間で車両が停車した状態でエンジンを駆動させてバッテリを充電しなければならなくなり、燃費が悪化してしまうことになる。このような場合には、停車回数の多い区間の手前でHV走行を多用し、停車回数の多い区間でEV走行するように計画し、この計画に従うように走行することで、区間全体の燃費を向上させることが可能となる。
【0007】
しかしながら、上記特許文献2に記載されたような装置では、走行区間全体としてみた場合の自車位置における低燃費走行に適した走行モードを運転者が認識することができないので、例えば、運転者がアクセルペダルを深く踏み込んでモータを駆動するバッテリを充電した方が低燃費走行に適した区間を走行しているにも関わらず、EV走行を多用しようとアクセルペダルが十分に踏み込まれないといった状況が生じ、本来の燃費向上効果が得られないといった問題が生じる。
【0008】
本発明は上記問題に鑑みたもので、ハイブリッド車両における燃費の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、車両の現在位置を特定する現在位置特定手段と、出発地から目標とする地点に到達するまでの経路内の任意の区間について低燃費走行となるようなアクセル操作のスケジュールを予め定められた区間毎に規定するアクセル操作スケジュール規定手段と、アクセル操作のスケジュールおよび車両の現在位置に基づいて車両が位置する区間における推奨アクセル操作を表示する表示手段と、を備えたことを特徴としている。
【0010】
このような構成によれば、出発地から目標とする地点に到達するまでの経路内の任意の区間について低燃費走行となるようなアクセル操作のスケジュールが予め定められた区間毎に規定され、アクセル操作のスケジュールおよび車両の現在位置に基づいて車両が位置する区間における推奨アクセル操作が表示されるので、運転者は車両が位置する区間における推奨アクセル操作を認識することができ、ハイブリッド車両における燃費の向上を図ることができる。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、出発地から目標とする地点に到達するまでの経路内の任意の区間について低燃費走行となるような制御指標のスケジュールを予め定められた区間毎に規定して記憶手段に記憶させる制御指標記憶制御手段を備え、アクセル操作スケジュール規定手段は、制御指標のスケジュールに基づいてアクセル操作のスケジュールを規定することを特徴としている。
【0012】
このように、出発地から目標とする地点に到達するまでの経路内の任意の区間について低燃費走行となるような制御指標のスケジュールを予め定められた区間毎に規定し、この制御指標のスケジュールに基づいてアクセル操作のスケジュールを規定することができる。
【0013】
また、請求項3に記載の発明は、制御指標を、モータを駆動するバッテリのバッテリ充電量の目標値とし、アクセル操作スケジュール規定手段は、バッテリ充電量の目標値が増加する区間については、バッテリの充電が実施されるようなアクセル操作としてアクセル操作のスケジュールを規定することを特徴としている。
【0014】
このように、バッテリ充電量の目標値が増加する区間については、バッテリの充電が実施されるようなアクセル操作として規定することができる。
【0015】
また、請求項4に記載の発明は、バッテリ充電量の目標値が減少する区間については、バッテリの充電が実施されないようなアクセル操作としてアクセル操作のスケジュールを規定することを特徴としている。
【0016】
このように、バッテリ充電量の目標値が減少する区間については、バッテリの充電が実施されないようなアクセル操作として規定することができる。
【0017】
また、請求項5に記載の発明は、車両の走行に伴い制御指標を規定するための走行情報を予め定められた区間毎に収集して記憶手段に記憶させる情報記憶手段を備え、制御指標規定手段は、記憶手段に記憶された走行情報に基づいて、低燃費走行となるような制御指標のスケジュールを予め定められた区間毎に規定することを特徴としている。
【0018】
このように、車両の走行に伴って収集した制御指標を規定するための走行情報に基づいて制御指標のスケジュールを規定することができる。
【0019】
また、表示手段は、請求項6に記載の発明のように、アクセル開度に比例して当該アクセル開度を示す領域が大きくなるように車両のアクセル開度を表示するインジケータを有し、車両が位置する区間における推奨アクセル操作に対応するアクセル開度の範囲を、インジケータ上に強調表示させることができ、請求項7に記載の発明のように、走行モード毎にアクセル開度の変化に応じてアクセル開度を示す領域の変化する割合が異なるように車両のアクセル開度を表示するインジケータを有し、車両が位置する区間における推奨アクセル操作に対応するアクセル開度の範囲を、インジケータ上に固定表示させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態に係るハイブリッド車両の駆動制御装置を搭載した車両の概略構成を示す図である。
【図2】ナビゲーションECUの構成を示す図である。
【図3】制御目標値記憶処理のフローチャートである。
【図4】データ収集処理のフローチャートである。
【図5】耐久記憶媒体に記憶された走行情報の一例を表した図である。
【図6】充電計画作成処理のフローチャートである。
【図7】(a)は、計画区間において収集された車速および駆動電力の一例を示す図、(b)は、計画区間において道路区間毎に決定された走行方法の一例を示す図である。
【図8】目標SOCの推移の予想および推奨走行モードの一例を示す図である。
【図9】制御目標値学習処理のフローチャートである。
【図10】走行時処理のフローチャートである。
【図11】第1実施形態に係る表示部の表示について説明するための図である。
【図12】第2実施形態に係る表示部の表示について説明するための図である。
【図13】第3実施形態に係るハイブリッド車両の駆動制御装置を搭載した車両の概略構成を示す図である。
【図14】渋滞情報受信時処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係るハイブリッド車両の駆動制御装置を搭載した車両の概略構成を図1に概略的に示す。このハイブリッド車両には、内燃機関としてのエンジン1、発電機2、モータ3、差動装置4、タイヤ5a、5b、インバータ6、DCリンク7、インバータ8、バッテリ9、HV制御部10、GPS受信機11、方位センサ12、車速センサ13、地図DB記憶部14、勾配センサ15、表示部16およびナビゲーションECU20が搭載されている。
【0022】
このハイブリッド車両は、エンジン1およびモータ3を走行用の動力源とし、アクセル操作に応じて複数の走行モードを切り替えて走行する。エンジン1を動力源とする場合は、エンジン1の回転力が、図示しないクラッチ機構および差動装置4を介してタイヤ5a、5bに伝わる。また、モータ3を動力源とする場合は、バッテリ9の直流電力がDCリンク7およびインバータ8を介して交流電力に変換され、その交流電力によってモータ3が作動し、このモータ3の回転力が、差動装置4を介してタイヤ5a、5bに伝わる。以下、エンジン1のみを動力源とする走行のモードをエンジン走行モード、モータ3のみを動力源とする走行のモードをモータ走行モード、エンジン1とモータ3を動力源とする走行のモードをハイブリッド走行モードという。ただし、以下、ハイブリッド走行モードとエンジン走行モードを含めてハイブリッド走行モードという。
【0023】
また、エンジン1の回転力は発電機2にも伝えられ、その回転力によって発電機2が交流電力を生成し、生成された交流電力はインバータ6、DCリンク7を介して直流電力に変換され、その直流電力がバッテリ9に蓄積される。このようなバッテリ9への充電は、燃料を使用したエンジン1の作動による充電である。以下、この種の充電を、内燃充電という。
【0024】
また、図示しない制動機構によりハイブリッド車両が減速すると、その減速時の抵抗力がモータ3に回転力として加わり、この回転力によってモータ3が交流電力を生成し、生成された交流電力がインバータ8、DCリンク7を介して直流電力に変換され、その直流電力がバッテリ9に蓄積される。以下、この種の充電を、回生充電という。
【0025】
HV制御部10は、ナビゲーションECU20からの指令等に応じて、発電機2、モータ3、インバータ6、インバータ8、バッテリ9の上述のような作動の実行・非実行等を制御する。HV制御部10は、例えばマイクロコンピュータを用いて実現してもよいし、下記のような機能を実現するための専用の回路構成を有するハードウェアであってもよい。
【0026】
より具体的には、HV制御部10は、現在SOC、基準SOCという2つの値を記憶しており、また、以下の(A)、(B)の処理を行う。
(A)アクセル開度、バッテリ9のバッテリ充電量、バッテリ9の温度等に基づいて、動力源の異なる複数の走行モード(モータ走行モード、ハイブリッド走行モード)の切り替えを繰り返し行うとともに、ナビゲーションECU20から入力される制御目標値(目標SOC)に基づいて、基準SOCの値を変化させ、ハイブリッド車両のバッテリ9の充電量を目標SOCに近づけるように、発電機2、モータ3、インバータ6、インバータ8等を制御する。また、内燃充電の実行・非実行、回生充電の実行・非実行の切り替えも繰り返し行う。HV制御部10は、現在SOCがこの目標SOCおよびその近傍の値を維持するよう、走行方法の決定および決定した走行方法に基づくアクチュエータの制御を実行する。
(B)定期的に現在SOCをナビゲーションECU20に通知する。
【0027】
SOC(State of Charge)とは、バッテリの残量を表す指標であり、その値が高いほど残量が多い。現在SOCは、現在のバッテリ9のSOCを示す。HV制御部10は、この現在SOCの値を、逐次バッテリ9の状態を検出することで、繰り返し更新する。基準SOCは、HV制御部10にて発電/アシストを判断する制御目標値(例えば60パーセント)である。この値はナビゲーションECU20からの制御によって変更可能となっている。
【0028】
HV制御部10は、ナビゲーションECU20から入力される制御目標値に基づいて、ハイブリッド車両の走行モードの切り替え、また、内燃充電の実行・非実行、回生充電の実行・非実行を切り替える制御を行う。本実施形態における制御目標値は目標SOCである。HV制御部10は、現在SOCがこの目標SOCおよびその近傍の値を維持するよう、走行方法の決定および決定した走行方法に基づくアクチュエータの制御を実行する。
【0029】
GPS受信機11、方位センサ12、および車速センサ13は、それぞれハイブリッド車両の位置、進行方向、走行速度を特定する周知のセンサである。
【0030】
地図DB記憶部14は、地図データを記憶する記憶媒体である。地図データは、複数の交差点のそれぞれに対応するノードデータ、および、交差点と交差点を結ぶ道路区間すなわちリンクのそれぞれに対応するリンクデータを有している。1つのノードデータは、当該ノードの識別番号、所在位置情報、種別情報を含む。また、1つのリンクデータは、当該リンクの識別番号(以下、リンクIDという)、位置情報、種別情報等を含んでいる。
【0031】
ここで、リンクの位置情報には、当該リンクが含む形状補完点の所在位置データ、および、当該リンクの両端のノードおよび形状補完点のうち隣り合う2つを繋ぐセグメントのデータを含んでいる。各セグメントのデータは、当該セグメントのセグメントID、当該セグメントの勾配、向き、長さ等の情報を有している。
【0032】
勾配センサ15は、車両のピッチ方向、ヨー方向、ロール方向の方位変化量を検出するジャイロセンサによって構成されている。このジャイロセンサによって検出されるピッチ方向の方位変化量から道路勾配を算出し、道路勾配を示す情報を出力する。
【0033】
表示部16は、車両のメータ内等に配置され、アクセル開度を示すインジケータとして構成されている。
【0034】
図2に示す様に、ナビゲーションECU20は、RAM21、ROM22、データ書き込み可能な耐久記憶媒体23、および制御部24を有している。耐久記憶媒体とは、ナビゲーションECU20の主電源の供給が停止してもデータを保持し続けることができる記憶媒体をいう。耐久記憶媒体23としては、例えば、ハードディスク、フラッシュメモリ、EEPROM等の不揮発性記憶媒体、および、バックアップRAMがある。
【0035】
制御部24は、ROM22または耐久記憶媒体23から読み出したプログラムを実行し、その実行の際にはRAM21、ROM22、および耐久記憶媒体23から情報を読み出し、RAM21および耐久記憶媒体23に対して情報の書き込みを行い、HV制御部10、GPS受信機11、方位センサ12、車速センサ13、地図DB記憶部14、勾配センサ15等と信号の授受を行う。なお、制御部24は、GPS受信機11、方位センサ12および車速センサ13から取得した現在位置を特定するための情報に基づいて、現在位置を特定する現在位置処理等を実施する。
【0036】
また、図2に示すように、制御部24は、マップマッチング処理25、経路算出処理26、ナビゲーション処理27、制御目標値記憶処理28、走行時処理29等の処理を、所定のプログラムを実行することで実現する。
【0037】
マップマッチング処理25において、制御部24は、GPS受信機11、方位センサ12および車速センサ13から取得した現在位置を特定するための情報に基づいて、現在位置が地図DB記憶部14の地図中のどの道路上にいるかを判定する。
【0038】
経路算出処理26において、制御部24は、図示しない操作装置を用いたユーザによる目的地指定に基づいて、指定された目的地までの最適な経路を、地図データを用いて決定する。
【0039】
ナビゲーション処理27において、制御部24は、目的地点までの走行経路に沿ってハイブリッド車両を走行させるためのガイド表示を、図示しない画像表示装置、スピーカ等を用いて、ドライバに対して行う。
【0040】
制御目標値記憶処理28において、制御部24は、出発地から目的地に到達するまでの走行に伴って走行情報を一定走行距離毎に収集して耐久記憶媒体23に記憶するとともに、耐久記憶媒体23に記憶した走行情報に基づいて出発地から目的地に至る経路について予め定められた区間毎に目標SOCのスケジュールを規定し、この目標SOCのスケジュールを耐久記憶媒体23に記憶させる処理を行う。また、後述する図10に示す走行時処理29において、次回、出発時に、出発地および目的地を同一とする目標SOCのスケジュールが耐久記憶媒体23に記憶されていることを判定すると、この耐久記憶媒体23に記憶した目標SOCのスケジュールに従ってエンジンとモータの駆動制御を行うようになっている。
【0041】
図3に、制御目標値記憶処理28のフローチャートを示す。車両のイグニッションスイッチがオン状態になると、本駆動制御装置は動作状態となり、制御部24は、各種処理を実施する。そして、制御部24は、乗員の操作に応じて図3に示す処理を実施する。
【0042】
まず、目的地を特定する(S102)。具体的には、目的地の入力を促す画面を表示させ、この画面に従って乗員の操作により指定された地点または施設を目的地として特定する。
【0043】
次に、走行情報を収集するデータ収集処理を実施する(S200)。このデータ収集処理S200のフローチャートを図4に示す。
【0044】
制御部24は、まず、走行情報を取得する(S202)。本実施形態では、一定距離(例えば、5メートル)毎に、車速(km/h)、道路勾配(%)、駆動動力(W)、区間内の走行時間(秒)、区間内の停車率(%)、モータ3を駆動する電気負荷(W)を走行情報として取得する。また、同時に、地図データを参照して自車が位置する道路の道路識別子を特定する。
【0045】
次に、走行履歴を保存する(S204)。具体的には、自車両が位置する道路の道路識別子と関連付けて、S202にて収集した走行情報を耐久記憶媒体23に記憶させる。
【0046】
図5に、耐久記憶媒体23に記憶された走行情報の一例を示す。なお、この図には、車速と勾配のみが示されている。このように、耐久記憶媒体23には、一定距離毎に収集された車速、道路勾配等の走行情報が道路識別子と関連付けて記憶される。なお、道路識別子は、道路区間を識別するためのリンクIDあるいはセグメントIDである。
【0047】
図3の説明に戻り、次に、目的地に到着したか否かを判定する(S104)。具体的には、自車両の現在位置が目的地を基準とする一定範囲内に含まれるか否かに基づいて目的地に到着したか否かを判定する。
【0048】
自車両の現在位置が目的地を基準とする一定範囲内に含まれない場合、S104の判定はNOとなり、S200のデータ収集処理が繰り返される。すなわち、一定距離毎に走行情報が収集され、道路識別子と関連付けて耐久記憶媒体23に記憶する処理が繰り返される。
【0049】
そして、自車両の現在位置が目的地を基準とする一定範囲内に含まれると、S104の判定はYESとなり、次に、充電計画作成処理S300を実施する。この充電計画作成処理S300のフローチャートを図6に示す。この充電計画作成処理S300においては、計画区間内の充電計画として、当該区間内の車両の走行方法の予定を作成する。
【0050】
具体的には、まず、出発地から目的地までの走行経路を計画区間として、この計画区間を走行するのに必要なエネルギーを、出発地から目的地に到着するまでの走行に伴って耐久記憶媒体23に記憶された走行情報に基づいて算出する(S302)。なお、必要なエネルギーの算出方法については周知(特開2001−183150号公報、特開2008−183937号公報、「新エネルギー自動車の開発123〜124頁」CMC出版等参照)であるので、ここではその詳細についての説明は省略する。
【0051】
次に、耐久記憶媒体23に記憶された走行情報から道路識別子毎に走行方法を決定する(S304)。具体的には、HV制御部10より基準SOCを取得し、この基準SOCと出発地から目的地に到着するまでの走行に伴って耐久記憶媒体23に記憶された走行情報とに基づいて、出発地から目的地までの計画区間において、発電効率およびアシスト効率を算出して回生充電、発電重視、アシスト重視といった制御方法を道路識別子毎に決定する。図7(a)に、計画区間における車速および駆動電力の一例を示す。ここで示す駆動動力=必要な走行エネルギーである。また、図7(b)に、計画区間において道路識別子毎に決定された走行方法の一例を示す。
【0052】
次に、出発地から目的地に到着するまでの走行に伴って耐久記憶媒体23に記憶された走行情報に基づいて低燃費走行となるような全区間のSOC管理計画(制御指標のスケジュールに相当する)を作成する(S306)。SOC管理計画は、目的地までの目標SOC(制御目標値)の推移を予想したものである。例えば、停車回数の多い区間の直前の区間では、その区間で目標SOCが増加し、その次の停車回数の多い区間では、その区間で目標SOCが減少するようにSOC管理計画が作成される。なお、このSOC管理計画の立案については周知(特開2008−183937号公報)であるので、ここではその詳細についての説明は省略する。
【0053】
次に、道路区間毎に推奨走行モードを選択する(S308)。本実施形態では、バッテリ9の充電が実施される走行モードとバッテリ9の充電が実施されない走行モードのいずれかを推奨走行モードとして選択する。具体的には、目標SOCが増加する区間については、バッテリ9の充電が実施される走行モード(ハイブリッド走行モード)を推奨走行モードとして選択し、目標SOCが減少する区間については、バッテリ9の充電が実施されない走行モード(モータ走行モード)を推奨走行モードとして選択する。走行時、バッテリ9の充電が実施されるような走行モードとするためには、アクセル踏み込み量が深く、アクセル開度が比較的大きくなるようなアクセル操作とする必要があり、バッテリ9の充電が実施されないような走行モードとするためには、アクセル踏み込み量が浅く、アクセル開度が比較的小さくなるようなアクセル操作とする必要がある。このように、推奨走行モードのスケジュールを道路区間毎に規定する。
【0054】
図8に、このような目標SOCの推移の予想および推奨走行モードの一例を示す。なお、この図に示される目標SOCは、各区間の終点における目標SOCである。図中に示してないが、道路区間1の始点の目標SOCは60となっている。道路区間1では、区間内で目標SOCが60から70に増加するため、バッテリ9を充電するため、ハイブリッド走行モードを推奨走行モードとして選択する。また、道路区間2、3では、区間内で目標SOCが減少するため、バッテリのエネルギーを利用したモータ走行が実施されるように、モータ走行モードを推奨走行モードとして選択する。このようにして、道路区間毎に目標SOCおよび推奨走行モードを規定したSOC管理計画が作成される。
【0055】
図3の説明に戻り、次に、制御目標値を学習して耐久記憶媒体23に記憶する制御目標値学習処理S400を実施する。この制御目標値学習処理S400のフローチャートを図9に示す。
【0056】
この制御目標値学習処理では、まず、道路区間別に制御目標値を取得する(S402)。具体的には、SOC管理計画に道路識別子に対応付けて規定された各制御目標値(目標SOC)を耐久記憶媒体23から取得する。
【0057】
次に、道路区間別に既存学習情報の読み出しを行う(S404)。すなわち、同一計画区間における制御目標値が既に耐久記憶媒体23に記憶されている場合に、耐久記憶媒体23から同一計画区間における制御目標値の読み出しを行う。なお、同一計画区間における制御目標値が耐久記憶媒体23に記憶されていない場合には、制御目標値の読み出しを行うことなく、次のS406へ進む。
【0058】
S406では、道路区間別に制御目標値の最適化を行う。同一計画区間における制御目標値が既に耐久記憶媒体23に記憶されている場合には、耐久記憶媒体23に記憶されている同一計画区間における制御目標値と、S402にて取得した制御目標値とを単純平均した値を新たな制御目標値とし、同一計画区間における制御目標値が耐久記憶媒体23に記憶されていない場合には、S402にて取得した制御目標値を新たな制御目標値とする。
【0059】
次に、この新たな制御目標値を耐久記憶媒体23に記憶する(S408)。具体的には、出発地、目的地とともに道路識別子に対応付けて規定された各制御目標値(目標SOC)を耐久記憶媒体23に記憶させる。
【0060】
次に、推奨走行モードのスケジュールを記憶する(S409)。具体的には、S408にて耐久記憶媒体23に記憶された制御目標値に基づき、上記したS308に示した処理と同様に、各道路区間の推奨走行モードのスケジュールを規定し、この推奨走行モードのスケジュールを耐久記憶媒体23に記憶する。このように、道路区間毎に学習した制御目標値に基づいて推奨走行モードのスケジュールを規定し、耐久記憶媒体23に記憶させる。
【0061】
次に、走行時処理29について説明する。図10に、走行時処理29のフローチャートを示す。車両のイグニッションスイッチがオン状態になった後、乗員の目的地設定操作に応じて図10に示す処理を実施する。
【0062】
まず、計画区間を特定する(S502)。具体的には、乗員の操作に応じて目的地が特定されると、車両の現在位置から目的地までの経路を計画区間として特定する。
【0063】
次に、学習情報があるか否かを判定する(S504)。具体的には、出発地から目的地に到達するまでの区間が同一で、その区間に含まれる計画区間のSOC管理計画が耐久記憶媒体23に記憶されているか否かに基づいて学習情報があるか否かを判定する。
【0064】
ここで、出発地から目的地に到達するまでの区間が同一で、その区間に含まれる計画区間のSOC管理計画が耐久記憶媒体23に記憶されている場合、S504の判定はYESとなり、次に、制御目標値を読み出す(S506)。具体的には、耐久記憶媒体23から計画区間のSOC管理計画に規定されている各区間の制御目標値を耐久記憶媒体23から読み出す。
【0065】
次に、車両が位置する区間における制御目標値(目標SOC)をHV制御部10へ送信する(S508)。なお、HV制御部10は、この制御目標値(目標SOC)に基づいて、基準SOCの値を変化させ、ハイブリッド車両のバッテリ9の充電量を目標SOCに近づけるように、発電機2、モータ3、インバータ6、インバータ8等を制御する。
【0066】
次に、推奨走行モードの表示を指示する(S510)。具体的には、車両が位置する区間における推奨走行モードを示す情報を表示部16へ送信する。
【0067】
表示部16は、この推奨走行モードを示す情報の入力に応じて、推奨走行モードに対応するアクセル開度の範囲を、インジケータ上に点滅表示させる。
【0068】
ここで、図11を参照して、表示部16の表示について説明する。図11(a)は、計画区間(区間1〜3)を地図形式で示したものである。区間1の推奨走行モードはハイブリッド走行モード(HVモード)、区間2、3の推奨走行モードはモータ走行モード(EVモード)となっている。
【0069】
図11(b)は、(a)に示した各計画区間における各区間のインジケータの表示例を示したものである。図11(b)の下段は、区間1を走行している場合の表示部16の表示例、図11(b)の上段は、区間2、3を走行している場合の表示部16の表示例である。
【0070】
表示部16には、回生状態を示すチャージエリア(CHC)、燃費に良い走行状態を示すエコエリア(ECO)、燃費に良くない走行状態を示すパワーエリア(PWR)が示される。
【0071】
運転者がアクセルペダルを踏み込み、アクセル開度が大きくなると、エコエリア(ECO)の左端からアクセル開度を示す領域(図中、斜線で示す)が右側へと伸びるようになっている。実際には、LEDの点灯によりアクセル開度を示す領域(図中、斜線で示す)が明るくなり、このアクセル開度を示す領域が右側へと伸びて見えるようになっている。また、本実施形態では、アクセル開度に比例してアクセル開度を示す領域が増加するように車両のアクセル開度が表示される。
【0072】
また、エコエリア(ECO)には、車両位置において低燃費走行に適した走行モードとなるアクセル開度の範囲を示す目標ゾーンが点滅するようになっている。具体的には、車両が区間1を走行中の場合には、図11(b)の下段に示すように、HV走行モードとなるようなアクセル開度の範囲を示すHV走行ゾーンB(図中、太線の枠で示す部分)が点滅し、車両が区間2、3を走行中の場合には、図11(b)の上段に示すように、EV走行モードとなるようなアクセル開度の範囲を示すEV走行ゾーンA(太線の枠で示す部分)が点滅する。なお、上記低燃費走行に適した推奨走行モードに対応するアクセル開度の範囲の目標ゾーンA、Bが、車両が位置する区間における推奨アクセル操作に相当する。
【0073】
車両が区間1を走行中の場合、HV走行ゾーンBが点滅し、運転者はアクセル開度を示す領域(図中、斜線で示す)がHV走行ゾーンBまで伸びるようにアクセルペダルを比較的深く踏み込むようなアクセル操作を行い、車両が区間2、3を走行中の場合、EV走行ゾーンAが点滅し、運転者はアクセル開度を示す領域(図中、斜線で示す)がEV走行ゾーンAに入るようにアクセルペダルを比較的浅く踏み込むようなアクセル操作を行うことで、計画区間全体として低燃費走行が可能となる。
【0074】
S512では、制御目標値(目標SOC)に近づくように現在SOCが推移しているか否かに基づいてバッテリ9の充電量が計画通りに推移しているか否かを判定する。
【0075】
ここで、制御目標値に近づくように現在SOCが推移している場合、S512の判定はYESとなり、次に、車両が目的地を基準とする所定範囲内に到達したか否かに基づいて車両が目的地に到着したか否かを判定する(S516)。
【0076】
ここで、車両が目的地を基準とする所定範囲内に到達していない場合、S516の判定はNOとなり、S506へ戻る。
【0077】
また、制御目標値に近づくように現在SOCが推移していない場合、S512の判定はNOとなり、車両が目的地を基準とする所定範囲内に到達する前であっても、駆動制御を中止する(S514)。具体的には、制御目標値の通知を中止する。この場合、HV制御部10は、バッテリ9の充電量がこの制御目標値に近づくように駆動制御を行う。また、EV走行ゾーンA、HV走行ゾーンBといった目標ゾーンの表示も中止する。
【0078】
そして、車両が目的地を基準とする所定範囲内に到達すると、S516の判定はYESとなり、本処理を終了する。
【0079】
上記した構成によれば、出発地から目的地までの区間について低燃費走行となるような目標SOCのスケジュールを予め定められた区間毎に規定して記憶手段に記憶させ、この目標SOCのスケジュールに基づいて推奨走行モードのスケジュールを予め定められた区間毎に規定し、この推奨走行モードのスケジュールおよび車両の現在位置に基づいて車両が位置する区間における推奨走行モードとなるようなアクセル操作を誘導する表示が行われるので、運転者は低燃費走行に適したアクセル操作を認識することができ、ハイブリッド車両における燃費の向上を図ることができる。
【0080】
また、アクセル開度に比例してアクセル開度を示す領域が大きくなるように車両のアクセル開度を表示させ、低燃費走行に適した走行モードとなるアクセル開度の範囲を、走行モード毎にインジケータ上の異なる位置に強調表示させることができる。
【0081】
なお、本実施形態では、S308に示したように、出発地から目的地までの区間について低燃費走行となるような推奨走行モードのスケジュールを規定し、この推奨アクセル操作スケジュールおよび車両の現在位置に基づいて車両が位置する区間における推奨走行モードとなるようなアクセル操作を誘導する表示を行う構成を示したが、低燃費走行となるような推奨走行モードのスケジュールではなく、直接、低燃費走行となるようなアクセル操作のスケジュールを規定し、このアクセル操作スケジュールおよび車両の現在位置に基づいて車両が位置する区間における推奨アクセル操作を表示するように構成してもよい。この場合、例えば、モータを駆動するバッテリの充電が実施されるようなアクセル操作とモータを駆動するバッテリの充電が実施されないようなアクセル操作を切り替えて、低燃費走行となるようなアクセル操作のスケジュールを規定することができる。
【0082】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る表示部16の表示例を図12に示す。(a)は、計画区間(区間1〜3)を地図形式で示したもので、(b)は、(a)に示した各計画区間における各区間のインジケータの表示例を示したものである。上記第1実施形態では、図11(b)に示したように、アクセル開度に比例してアクセル開度を示す領域(斜線部)が大きくなるように車両のアクセル開度を表示させ、推奨走行モードに対応するアクセル開度の範囲を、インジケータ上の異なる位置に点滅させたが、本実施形態では、図12(b)に示すように、推奨走行モードに対応するアクセル開度の範囲をインジケータ上に固定表示し、走行モード毎にアクセル開度の変化に応じてアクセル開度を示す領域の変化する割合が異なるように車両のアクセル開度を表示させる。具体的には、モータ走行モード時には、ハイブリッド走行モード時と比較して、アクセルペダルの踏み込み量に対してアクセル開度を示す領域(図中、斜線で示す)が敏感に反応して伸びるようになっている。したがって、モータ走行モードでは、アクセル開度を示す領域(図中、斜線で示す)がHV走行ゾーンBに入らないように、アクセルペダルを浅く踏み込むようなアクセル操作となり、ハイブリッド走行モード時では、アクセル開度を示す領域(図中、斜線で示す)がHV走行ゾーンBに入るように、アクセルペダルを深く踏み込むようなアクセル操作となる。
【0083】
(第3実施形態)
第3実施形態に係るハイブリッド車両の駆動制御装置を搭載した車両の概略構成を図13に示す。本実施形態に係るハイブリッド車両の駆動制御装置の構成は、図1に示した構成と比較して、更に、渋滞情報を受信するためのVICS受信機17を備えた点が異なる。
【0084】
また、本実施形態におけるナビゲーションECU20は、図3に示した制御目標値記憶処理28を実施した後、VICS受信機17を介して受信した渋滞情報に基づいて走行先に渋滞区間があることを判定すると、渋滞区間を低燃費で走行可能となるようなアクセル開度の範囲をインジケータ上に表示させる渋滞情報受信時処理を実施する。
【0085】
図14に、この渋滞情報受信時処理のフローチャートを示す。ナビゲーションECU20は、図3に示した制御目標値記憶処理28を実施した後、VICS受信機17を介して渋滞情報が受信されると、図14に示す処理を実施する。なお、本実施形態において、渋滞情報には、渋滞区間(渋滞開始地点)、渋滞区間の平均車速、渋滞区間長もしくは渋滞を通過するのに要する時間が含まれるものとする。
【0086】
まず、受信した渋滞情報に基づいて走行先に渋滞区間が存在するか否かを判定する(S600)。
【0087】
ここで、走行先に渋滞区間が存在しないと判定した場合、S600の判定はNOとなり、本処理を終了する。
【0088】
また、走行先に渋滞区間が存在することを判定した場合、その渋滞区間をEV走行重視で走行する場合にバッテリ9で消費される消費電力を特定する(S602)。本実施形態では、その渋滞区間をEV走行モードで走行する場合にモータ3を駆動するバッテリ9で消費される消費電力を算出する。ここで、エアコン等の補機により消費される単位時間当たりのエネルギーをA(kW)、渋滞区間を通過するのに要する時間をB(秒)、渋滞区間を通過する際に補機により消費されるエネルギーをC、渋滞区間をEV走行する際に必要となるエネルギーをD(kW)とすると、渋滞区間をEV走行モードで走行する場合にバッテリ9で消費される消費電力Eは、E=A×B+D=C+Dとして算出することができる。本実施形態において、渋滞区間をEV走行する際に必要となるエネルギーD(kW)は、統計的手法を用いてモデル化されたデータを用いる。例えば、平均車速が時速10キロメートル(秒速2.7メートル)の渋滞区間であれば、「時速0キロメートルから7秒で時速20キロメートル(km/h)まで加速し、15秒定常走行し、7秒で時速0キロメートル(km/h)まで減速し11秒間停止」という40秒間のモデルを用い、渋滞区間の区間長が10キロメートルであれば、D=40秒間の走行で消費されるエネルギー×10(km)÷2.7(m/s)÷40(s)として、渋滞区間をEV走行する際に必要となるエネルギーDを算出する。また、渋滞区間の区間長が5キロメートルであれば、D=40秒間の走行で消費されるエネルギー×5(km)÷2.7(m/s)÷40(s)として渋滞区間をEV走行する際に必要となるエネルギーDを算出する。なお、40秒間の走行で消費されるエネルギーは予め規定された車両固有の値であり、耐久記憶媒体23に記憶されている。本実施形態では、このようにVICS情報で受信する平均車速ごとに走行モデルをもち同じ要領で算出する。
【0089】
次に、この渋滞区間をEV走行モードで走行する場合にバッテリ9で消費される消費電力Eと、予め定められたバッテリ9のバッテリ残量の下限規格値Fから、渋滞区間の進入地点で必要とされる必要バッテリ残量Gを特定する(S604)。具体的には、バッテリ9で消費される消費電力に対するバッテリ残量の特性を示すバッテリ特性データを用いて渋滞区間の進入地点で必要とされる必要バッテリ残量Gを特定する。本実施形態では、バッテリ9のバッテリ残量の下限規格値Fとして、バッテリ残量の低下時にエンジン1が始動してバッテリ9の充電が開始される値(例えば、35〜50%程度)とする。渋滞区間の進入地点でバッテリ残量が必要バッテリ残量G以上となっていれば、渋滞区間をEV走行モードで走行しても、渋滞区間の終了地点でバッテリ9のバッテリ残量の下限規格値Fを下回らないことになる。
【0090】
次に、現在位置から渋滞区間終了地点までの区間について、推奨走行モードのスケジュールを規定する(S606)。具体的には、渋滞区間の進入地点に到達するまでEV走行モードで走行した場合に、渋滞区間の進入地点におけるバッテリ残量が必要バッテリ残量G未満となる場合には、渋滞区間の進入地点におけるバッテリ残量が必要バッテリ残量G以上となるように、渋滞区間の進入地点手前の1または複数の区間について、HV走行モードを推奨走行モードとする。また、渋滞区間の進入地点に到達するまでEV走行モードで走行しても、渋滞区間の進入地点におけるバッテリ残量が必要バッテリ残量G以上となる場合には、渋滞区間手前も渋滞区間もEV走行モードを推奨走行モードとする。
【0091】
上記渋滞情報受信時処理により推奨走行モードのスケジュールが規定された場合には、走行時処理において、この渋滞情報受信時処理により規定された推奨走行モードのスケジュールおよび車両の現在位置に基づいて車両が位置する区間における推奨走行モードに対応するアクセル開度の範囲をインジケータに表示する。
【0092】
本実施形態では、上記したように制御指標(目標SOC)のスケジュールを規定することなく、推奨走行モードのスケジュールを規定する。
【0093】
上記した構成によれば、渋滞情報を受信する受信手段(VICS受信機17)と、この渋滞情報に基づいて走行先に渋滞区間が存在することを判定した場合、モータを動力源として渋滞区間を走行した場合にモータを駆動するバッテリで消費される消費電力を算出する消費電力算出手段(S602)と、この消費電力に基づいて、渋滞区間をモータを動力源として走行した場合に渋滞区間の終了地点でバッテリ残量が予め定められた下限規格値以上となるような渋滞区間の進入地点で必要とされる必要バッテリ残量を特定する必要バッテリ残量特定手段(S604)と、を備え、アクセル操作スケジュール規定手段は、渋滞区間の進入地点におけるバッテリ残量が必要バッテリ残量以上となるように、渋滞区間の進入地点手前の1または複数の区間について、バッテリの充電が可能となるようなアクセル操作を推奨アクセル操作とし、渋滞区間については、モータを動力源とした走行となるようなアクセル操作を推奨アクセル操作として、推奨走行モードのスケジュールを規定する。そして、車両が位置する区間において低燃費走行に適した推奨走行モードに対応するアクセル開度の範囲が表示される。したがって、モータのみを動力源とする走行モードで渋滞区間を走行しても、バッテリ残量が予め定められた下限規格値未満となることなく燃費の良好な走行を実現することが可能となる。
【0094】
なお、アクセル操作スケジュール規定手段は、渋滞区間の進入地点に到達するまでモータを動力源とする走行モードで走行するときに、渋滞区間の進入地点におけるバッテリ残量が上記必要バッテリ残量未満となると判定した場合に、上記したような推奨走行モードのスケジュールを規定してもよい。
【0095】
渋滞区間のような停車回数の多い区間では、補機の消費電力が大きくなるため、停車中にバッテリ残量が予め定められた下限規格値未満となり、エンジンを始動して発電する状況がうまれやすい。このため、渋滞手前で多少普段より非効率であってもハイブリッド走行を行うことで充電量を増やしておき、渋滞区間はモータ走行を多用してもバッテリ残量を予め定められた下限規格値以上で維持させた方が燃費の良好な走行となる。したがって、走行先の区間に渋滞が発生したことを判定した場合に、上記したように推奨走行モードのスケジュールを規定することで、EV走行モードで渋滞区間を走行しても、バッテリ残量が予め定められた下限規格値未満とならないように、渋滞区間の手前でHV走行を多用して渋滞区間の手前でバッテリを充電し、渋滞区間ではEV走行モードで走行することが可能となり、目的地までの区間全体の燃費を向上することが可能となる。
【0096】
(その他の実施形態)
上記第1、第2実施形態では、モータに電力を供給するバッテリの充電量の制御目標値(目標SOC)を制御指標として、制御指標のスケジュールを規定する例を示したが、目標SOCに限定されるものではなく、目標SOC以外のデータを制御指標として制御指標のスケジュールを規定してもよい。つまり、ある区間に進入する時のSOCを「b」、退出する時のSOCを「c」とした場合に、区間中の制御でSOCをbからcに推移させることができる制御指標であればどのような値でもよい。
【0097】
また、上記第1、第2実施形態では、出発地から目的地までの経路について推奨走行モードのスケジュールを規定したが、必ずしも出発地から目的地に到達するまでの経路について目標SOCのスケジュールを規定する必要はなく、出発地から目標とする地点に到達するまでの経路内の任意の区間について低燃費走行となるような推奨走行モードのスケジュールを規定するようにしてもよい。
【0098】
また、上記第1、第2実施形態では、目的地に到着した際に、出発地から目標とする地点に到達するまでの経路について低燃費走行となるような目標SOCのスケジュールを道路区間毎に規定し、この目標SOCのスケジュールに基づいて出発地から目標とする地点に到達するまでの経路について低燃費走行となるような推奨走行モードのスケジュールを道路区間毎に規定し、規定した各スケジュールを耐久記憶媒体23に記憶させたが、目標SOCのスケジュールを規定するタイミング、推奨走行モードのスケジュールをタイミングは、上記したタイミングに限定されるものではない。
【0099】
また、上記第1〜第3実施形態では、S510にて、推奨走行モードに対応するアクセル開度の範囲を、アクセル開度に応じてアクセル開度を示すインジケータに表示したが、このようなアクセル開度を示すインジケータを用いることなく、運転者が推奨走行モードの認識が可能となるような他の表示手法を用いてアクセル操作を誘導する表示を行うようにしてもよい。
【0100】
また、上記第1実施形態では、S510にて、推奨走行モードに対応するアクセル開度の範囲を、インジケータ上に点滅させて表示したが、例えば、推奨走行モードに対応するアクセル開度の範囲を、周囲の色と異なる発光色で常時発光させるなど、点滅表示以外の手法を用いて、推奨走行モードに対応するアクセル開度の範囲を表示してもよい。
【0101】
また、上記第1、第2実施形態では、図10に示した走行時処理において、出発地から乗員の操作に応じて特定した目的地までの経路を計画区間として特定したが、必ずしも目的地を特定する必要はなく、例えば、走行履歴を参照して走行中の道路と一致する経路が存在する場合に、その経路の到着地点を目標とする地点とすることもできる。
【0102】
また、上記第3実施形態では、渋滞情報に基づいて走行先に渋滞区間があることを判定した場合に、この渋滞情報を用いて推奨走行モードのスケジュールを規定したが、必ずしも渋滞区間である必要はなく、例えば、渋滞情報に基づいて走行先に混雑区間があることをについても同様にして、推奨走行モードのスケジュールを規定するようにしてもよい。
【0103】
なお、上記実施形態における構成と特許請求の範囲の構成との対応関係について説明すると、GPS受信機11、方位センサ12および車速センサ13から取得した現在位置を特定するための情報に基づいて現在位置を特定する処理が現在位置特定手段に相当し、S308、S606がアクセル操作スケジュール規定手段に相当し、S306が制御指標規定手段に相当し、S510が表示手段に相当し、S200が情報記憶手段に相当する。
【符号の説明】
【0104】
1 駆動制御装置
2 発電機
3 モータ
4 差動装置
5a タイヤ
5b タイヤ
6 インバータ
7 DCリンク
8 インバータ
9 バッテリ
10 HV制御部
11 GPSセンサ
12 方位センサ
13 車速センサ
14 地図DB記憶部
15 勾配センサ
16 表示部
20 ナビゲーションECU
21 RAM
22 ROM
23 耐久記憶媒体
24 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンとモータを走行用の動力源とし、アクセル操作に応じて複数の走行モードを切り替えて走行するハイブリッド車両に搭載され、前記エンジンと前記モータの駆動制御を行うハイブリッド車両の駆動制御装置であって、
前記車両の現在位置を特定する現在位置特定手段と、
出発地から目標とする地点に到達するまでの経路内の任意の区間について低燃費走行となるようなアクセル操作のスケジュールを予め定められた区間毎に規定するアクセル操作スケジュール規定手段と、
前記アクセル操作のスケジュールおよび前記車両の現在位置に基づいて前記車両が位置する区間における推奨アクセル操作を表示する表示手段と、を備えたことを特徴とするハイブリッド車両の駆動制御装置。
【請求項2】
出発地から目標とする地点に到達するまでの経路内の任意の区間について低燃費走行となるような制御指標のスケジュールを予め定められた区間毎に規定する制御指標規定手段を備え、
前記アクセル操作スケジュール規定手段は、前記制御指標のスケジュールに基づいて前記アクセル操作のスケジュールを規定することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の駆動制御装置。
【請求項3】
前記制御指標は、前記モータを駆動するバッテリのバッテリ充電量の目標値であり、
前記アクセル操作スケジュール規定手段は、前記バッテリ充電量の目標値が増加する区間については、前記バッテリの充電が実施されるようなアクセル操作として前記アクセル操作のスケジュールを規定することを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド車両の駆動制御装置。
【請求項4】
前記アクセル操作スケジュール規定手段は、前記バッテリ充電量の目標値が減少する区間については、前記バッテリの充電が実施されないようなアクセル操作として前記アクセル操作のスケジュールを規定することを特徴とする請求項3に記載のハイブリッド車両の駆動制御装置。
【請求項5】
前記車両の走行に伴い前記制御指標を規定するための走行情報を予め定められた区間毎に収集して前記記憶手段に記憶させる情報記憶手段を備え、
前記制御指標規定手段は、前記記憶手段に記憶された前記走行情報に基づいて、前記低燃費走行となるような前記制御指標のスケジュールを予め定められた区間毎に規定することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載のハイブリッド車両の駆動制御装置。
【請求項6】
前記表示手段は、アクセル開度に比例して当該アクセル開度を示す領域が大きくなるように車両のアクセル開度を表示するインジケータを有し、前記車両が位置する区間における推奨アクセル操作に対応するアクセル開度の範囲を、前記インジケータ上に強調表示させることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載のハイブリッド車両の駆動制御装置。
【請求項7】
前記表示手段は、前記走行モード毎に前記アクセル開度の変化に応じてアクセル開度を示す領域の変化する割合が異なるように車両のアクセル開度を表示するインジケータを有し、前記車両が位置する区間における推奨アクセル操作に対応するアクセル開度の範囲を、前記インジケータ上に固定表示させることを特徴とする請求項1ないし5に記載のハイブリッド車両の駆動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−25778(P2011−25778A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−171902(P2009−171902)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】