説明

バサルト連続フィラメント断熱および耐火材料およびスリーブならびにその構成方法

難燃性の断熱材料およびその構成方法は、連続バサルトフィラメントから製造される繊維布地を有する。この連続バサルトフィラメントは、好ましくは織地化され(texturized)、または撚り合わされる。この断熱材料はシート、パネル、またはスリーブなどの任意の構成に配置されてもよく、編まれても、織られても、または組まれてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連技術との相互参照
本願は、2006年5月1日に出願され、その全体が引用によりこの明細書中に援用されている米国仮出願連続番号第60/796,395号の利益を主張する。
【0002】
発明の背景
1.発明の分野
この発明は、概して断熱材料に関し、より具体的には、少なくとも部分的にバサルト連続フィラメントから構成された断熱材料および管状スリーブに関する。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術
エンジン室内または排気マニホルドなどの熱源の近くに配置された自動車、航空、鉄道、および船舶用の構成部品は、過酷な熱環境に晒されることがある。さらに、所望されない熱伝達が、エンジン、排気システム、および/またはトランスミッションなどの熱源と、自動車、航空機、列車または船舶の客室との間で起こることもある。石油およびガス探鉱および掘削工具も、熱ならびに火花および火に晒されることからの防護を必要とする。断熱材料を用いて断熱パネルまたはスリーブを形成し、熱源から他の近傍の構成部品への熱伝達を減少させることは、当該技術分野において公知である。断熱材料は、その用途に適していなければならず、適性を保証するために、厳しい条件下で試験にかけられる。たとえば、温度の偏りが極端に大きく、構成部品が温度の影響を異常に受けやすい航空宇宙産業においては、断熱材料は、構成部品を、特に過酷な環境および条件から防護可能でなければならない。こうした過酷な環境は、裸火に晒されることを含む場合もあるので、もしこの断熱材料が耐火性であれば、それも有益である。
【0004】
先行技術には、このようなパネルの断熱層として用いられる材料が豊富にある。たとえば、このようなパネルまたはスリーブの断熱材料として作用するさまざまな繊維材料およびこの繊維材料の組成を用いることが公知である。ガラス繊維、シリカ、バサルト、およびセラミック繊維などの鉱物繊維は、当該技術分野において断熱材料として全て公知である。これらの材料はそれぞれ、たとえば、異なる物理的および機械的特性、動作温度限界、耐熱性、および耐薬品性などの、それぞれの材料を特定の用途に対してより適したものにする異なる特性を有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現代のエンジンは、数年前のエンジンよりも高い温度で動作し、よって、現代のエンジンのための断熱材料は、少し前に用いられた断熱材料と比較してさえ、より要求の厳しい条件下で機能することが求められる。現代の用途の中には、一部の先行技術材料によっては実現できない極端な温度における構成部品の防護を必要とする用途もある。よって、自動車、航空機、列車、および船舶製造業者は、このような用途に対して十分な機能を提供する、より新しく、より強い材料を使用することが求められる。さらに、温度の影響を受けやすい構成部品(たとえば、センサ)を発熱体または熱導体の至近距離で用いることが増加してきたことにより、極端な熱に対する防護を要求する、要求の厳しい新しい用途が多数登場してきている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
繊維断熱材料は、織地化された(texturized)複数のバサルト連続フィラメントから少なくとも部分的に製造される。この発明のさまざまな局面に従い、この織地化されたバサルト連続フィラメントを、編んで、織って、および/または組んで、布地、スリーブまたは用途に適した他の構造することができる。この布地、スリーブまたは他の構造は、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂および同類のものなどの耐熱コーティングで被膜することができる。
【0007】
この発明の別の局面に従い、繊維断熱材料は、複数の撚り合わされたバサルト連続フィラメントで製造することができる。この撚り合わされたバサルト連続フィラメントを、上述の織地化されたバサルト連続フィラメントと同様に、編んで、織って、または組んで、布地、スリーブまたは他の用途に適した構造にしてもよい。この布地、スリーブまたは他の構造はアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、および同類のものなどの耐熱コーティングで被膜してもよい。
【0008】
上記に鑑みて、この発明に従い製造された断熱材料は、強い機能特性を有し、温度の影響を受けやすい構成部品に、極端な温度に対する防護を提供することができる。この材料は、扱いやすく、乗物のいたるところで広く使用することもでき、これは、たとえば、さまざまな形状にすることができ、弾性構造に形成することができるためである。さらに、この材料は、設計、製造、および使用において概ね経済的である。この発明の材料は、自動車、船舶、航空機、列車、ならびに石油および天然ガス探鉱および掘削工具を含むがこれに制限されない多数の分野のうち任意の分野に適用されるであろう。
【0009】
この発明の適用性のさらなる範囲は、以下の詳細な説明および請求項から明らかとなるであろう。しかしながら、詳細な説明および具体的な例は、この発明の現在好ましい実施例を示しているが、当業者にとってはこの発明の趣旨および範囲の中でさまざまな変形例および変更例が明らかとなるであろう以上、例としてのみ示されるものであることが理解されるべきである。
【0010】
この発明の、これらのならびに他の局面、特徴および利点は、現在好ましい実施例および最良の形態の詳細な説明、添付の請求項および添付の図面に関連して考慮されると容易に理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
現在好ましい実施例の詳細な説明
図面をより詳細に参照して、図1は、この発明の1つの現在好ましい実施例に従う複数のバサルト連続フィラメント12から構成される繊維断熱材料10を示す。バサルト連続フィラメント12は耐火性であり、極度に高い温度(たとえば、760℃)および極度に低い温度(たとえば、−260℃)に対する熱的な防護も提供することができる。この発明に従う織り合わされたバサルト連続フィラメント12で製造された布地シート、パネル、スリーブ、または他の構造は、今日使用される多くの断熱および耐火材料よりも優れており、今日使用される多くの断熱および耐火材料を補完または代替するために用いてもよい。非限定的例として、スリーブ14、15、および16が図2から図4にそれぞれ示され、スリーブ14、15、および16は、少なくとも部分的にバサルト連続フィラメント12から製造され、ゆえに、極端に高い熱に晒される配管(500℃から760℃の温度を有する排気管など)、または超低温管もしくはタンク(それぞれ−191℃および−161℃もの低温に達することがある液体窒素または圧縮天然ガスタンクなど)を断熱するためにたとえば用いてもよい。
【0012】
この発明の1つの局面に従い、複数のバサルト連続フィラメント12が配置され、ヤー
ンまたはヤーン状のストランド18を形成する。1つの現在好ましい実施例においては、ヤーン状のストランド18は、ストランド18の体積を増大させ、ストランド18の本体内に空洞部分を作るように、織地化される。バサルト連続フィラメントヤーン18を織地化することにより、バサルト連続フィラメントヤーン18によって、ヤーン重量を減少しながらの熱的防護の向上を実現することができ、吸音性の向上も実現することができる。1つの現在好ましい実施例において、ヤーン18のストランドは、空気織地化(air-texturized)され、密度は約1800texである。別の現在好ましい実施例においては、ヤーン18のストランドは、空気織地化(air texturization)ではなく延伸織地化(draw texturization)される。このようであるので、ヤーン18は、任意の適切な密度を持つように織地化されることができる。概して、より細いヤーン18は、より可撓性のある材料を作るために用いられ、より太いヤーン18は、被覆の向上を実現するために用いられる。したがって、ヤーンの密度の選択と、使用されるバサルトフィラメントの選択とは、構成する材料の種類と、得られる材料の用途とに基づく。さらに別の現在好ましい実施例においては、ヤーン18のストランドは、織地化される代わりに、撚り合わされる。この構造では、ヤーン18の密度は約260texであり、1メートルあたり120回転撚り合わさるが、所望される用途に基づいて、任意のストランド密度および1メートルあたりの撚り数が用いられてもよい。断熱材料の耐摩耗性は、撚り合わせの程度が増加するにつれて増加することが明らかになっている。さらに別の現在好ましい実施例においては、ストランド18は、まず織地化され、その後撚り合わされる。こういった織地化されたおよび/または撚り合わされたバサルト連続フィラメントヤーン18の多くは、より詳しく以下に説明されるように、単一構造の断熱材料を構成するために作られ、使用される。
【0013】
ヤーン18の数多くのバサルト連続フィラメントストランドを得た後、このストランド18は断熱材料の所望の構造を作る構成に配置される。1つの実施例においては、ストランド18は織られ、断熱材料10またはスリーブ14、15、および16を作るが、、ストランド18を編み合わせるために、編成、織成、縫成、鉤針編み、刺繍縫い、および組成を含むがこれに限定されない任意の構造方法を用いることができる。用途によっては、上述の構造方法のうち1つ以上が好まれてもよい。たとえば、ある場合においては、より大きな被覆と軽い重量を得ることができるため、組まれ、織地化されたバサルト連続フィラメントスリーブが好まれることがある。
【0014】
さらに、断熱繊維材料10は、繊維布地10ならびにスリーブ14、15、および16を含むがこれに限定されない任意の構成に形成されてもよく、スリーブ14、15、および16は、連続した閉鎖周方向壁20(図2)構造、またはスリーブ15の長さ方向に沿って互いに好ましくは重なった長手方向縁部17および長手方向縁部19を有する開放壁20(図3)構造を備えることができる。さらに、スリーブ14、15、および16は1つ以上の断熱材料層を含んでもよい。非限定的な例として図4に示されるように、断熱スリーブ16はスリーブ16の2つの層20および22を形成するように自身の上に折り返された単層編成スリーブ、または複層スリーブを形成するために自身の上に前後に折り返された単層編成スリーブとして作られてもよい。さらに、スリーブ14、15および16のうち任意のものは、図2において概ね21に示されるように、天然のバサルトの色以外の色を所望する場合は、顔料を含む耐熱コーティングで被膜されてもよい。
【0015】
この発明の別の局面に従い、バサルト連続フィラメントで構成される断熱層20に加えて、たとえば、図1の概ね23に示されるような層が、断熱材料10またはスリーブ14、15、および16上に存在してもよい。これらの追加的な層23は、たとえば、シリコン樹脂、ゴム、アルミニウムまたは他の金属、エポキシ樹脂、炭素繊維、セラミックおよびプラスチックまたはこれらの合成物を含んでもよい。このようであるので、断熱スリーブ14、15、および16は、断熱材料20の外側表面に、たとえばシリコンゴム被膜を施される層23を有し、織られたまたは組まれたバサルト連続フィラメント20の断熱単
層または複層を含むことができる。上述の材料層に加えて、他の種類の材料層が、上述の断熱材料10およびスリーブ14、15、および16を用いて、航空機のホースが炎に晒されたときに直ちに炎上しないよう保護するのに適した用途などで用いられてもよい。この用途においては、断熱材料10および/またはスリーブ14、15、および16を、図3において概ね25に示される発泡性防炎被膜(intumescent coating)で被膜することができる。この発泡性防炎被膜25は、断熱材料10またはスリーブ14、15、および16に接着することができ、織地化されたバサルト連続フィラメントスリーブ14、15、および16に、さらなる断熱および耐火性をもたらす。発泡性防炎被膜25は、スリーブ14、15、および16の最も外側の表面にのみ施されてもよく、または所望されるならばすべての表面に施されてもよい。
【0016】
上述の断熱および耐火材料10ならびにスリーブ14、15、および16は、数多くの用途に用いられてもよい。たとえば、バサルト連続フィラメントヤーン18を含む、編まれた、織られた、または組まれたスリーブ14、15、および16を、排気管を断熱するために使用し、この排気管が生み出す極度に高い熱が、車両内にある、温度の影響を受けやすい近くの構成部品に損傷を与えることを防止してもよい。スリーブ14、15、および16の編まれた構造は、1つの好ましい構造であり、なぜならば、編まれた構造は、スリーブ14、15、および16の単一の壁または複数の壁に径方向の伸張性をもたらすので、取り付けしやすいためである。上述のように、バサルト連続フィラメントヤーン18は、織地化されても、または撚り合わされてもよく、織地化されたバージョンが、多くの用途において好ましい。
【0017】
上記の議論は、この発明の例示的な実施例を開示し、説明する。当業者は、この説明からおよび添付の図面および請求項からさまざまな変更、修正例および変形例が、以下の請求項により規定されるこの発明の趣旨および範囲から逸脱することなくその中で可能であることを容易に理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の1つの現在好ましい実施例に従う複数のバサルト連続フィラメントを用いて構成される繊維材料の部分断面図である。
【図2】この発明の別の現在好ましい実施例に従う複数のバサルト連続フィラメントを用いて構成される管状閉鎖壁繊維スリーブの部分斜視図である。
【図3】この発明の別の現在好ましい実施例に従う複数のバサルト連続フィラメントを用いて構成される管状開放壁繊維スリーブの部分斜視図である。
【図4】この発明の別の現在好ましい実施例に従う複数のバサルト連続フィラメントを用いて構成される別の管状繊維スリーブの部分斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
難燃性の断熱材料であって、
単一構造を形成するような構成に織り合わされた複数の連続バサルトヤーンフィラメントから、少なくとも部分的に構成される繊維布地の少なくとも1つの層を備える、耐火性断熱材料。
【請求項2】
前記構成は、管状スリーブである、請求項1に記載の断熱材料。
【請求項3】
前記管状スリーブは、管状外壁によって包囲される管状内壁を有する、請求項2に記載の断熱材料。
【請求項4】
前記内壁は、織られた、編まれた、または組まれた布地のいずれかから製造され、前記外壁は、織られた、編まれた、または組まれた布地のいずれかから製造される、請求項3に記載の断熱材料。
【請求項5】
前記構成は、織られた布地である、請求項1に記載の断熱材料。
【請求項6】
前記構成は、編まれた布地である、請求項1に記載の断熱材料。
【請求項7】
前記構成は、組まれた布地である、請求項1に記載の断熱材料。
【請求項8】
少なくとも1つの別の材料層を含む、請求項1に記載の断熱材料。
【請求項9】
前記連続バサルトヤーンフィラメントは、織地化される、請求項1に記載の断熱材料。
【請求項10】
前記連続バサルトヤーンフィラメントは、撚り合わされる、請求項1に記載の断熱材料。
【請求項11】
前記繊維布地の少なくとも1つの層に接着された発泡性防炎被膜をさらに備える、請求項1に記載の断熱材料。
【請求項12】
前記繊維布地の少なくとも1つの層に接着されたシリコンゴムの被膜をさらに備える、請求項1に記載の断熱材料。
【請求項13】
難燃性の断熱材料を製造する方法であって、複数の連続バサルトヤーンフィラメントを互いに織り合わせ、繊維布地を形成するステップを備える、方法。
【請求項14】
前記織り合わせるステップを、編成工程において行なうステップをさらに備える、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記織り合わせるステップを、織成工程において行なうステップをさらに備える、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記織り合わせるステップを、組成工程において行なうステップをさらに備える、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記繊維布地を、管状スリーブとして製造するステップをさらに備える、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記管状スリーブを、連続した閉鎖周方向壁を有して構成するステップをさらに備える、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記管状スリーブを、前記スリーブの長さ方向に沿って延在し重なる縁部を有する壁を有して構成するステップをさらに備える、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
発泡性防炎被膜を、前記繊維布地に接着するステップをさらに備える、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
シリコンゴムの被膜を、前記繊維布地に接着するステップをさらに備える、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
前記複数の連続バサルトヤーンフィラメントを、織地化するステップをさらに備える、請求項13に記載の方法。
【請求項23】
前記複数の連続バサルトヤーンフィラメントを、前記織地化するステップの後に、撚り合わせるステップをさらに備える、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記複数の連続バサルトヤーンフィラメントを、撚り合わせるステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−535593(P2009−535593A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510008(P2009−510008)
【出願日】平成19年5月1日(2007.5.1)
【国際出願番号】PCT/US2007/067855
【国際公開番号】WO2008/066946
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(599058372)フェデラル−モーグル コーポレイション (234)
【Fターム(参考)】