説明

バッテリ装置およびバッテリの昇温方法並びに車両

【課題】バッテリでの結露量の過度の増加を抑制する。
【解決手段】バッテリの昇温要求がなされたときには、終了後経過時間teが短いほど少なくなる傾向に推定蒸発量Qdを設定し(S110)、制御終了時推定結露量Qdfから推定蒸発量Qevを減じて制御前推定結露量Qdsを計算し(S120)、計算した制御前推定結露量Qdsが多いほど短くなる傾向に制御許容時間tcrefを設定し(S130)、設定した制御許容時間tcrefの範囲内で昇温送風制御を実行する(S140〜S190)。これにより、バッテリでの結露量の過度の増加を抑制することができる。この結果、バッテリで漏電を生じるのを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリ装置およびバッテリの昇温方法並びに車両に関し、詳しくは、車両の駆動用の電力を供給するバッテリと車室内の空気をバッテリに送風可能な送風手段とを備える車載用のバッテリ装置およびそのバッテリ装置におけるバッテリの昇温方法並びにバッテリ装置を備える車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のバッテリ装置としては、車両に搭載されるバッテリと、車室内の空気をバッテリに送風する冷却ファンを有する温度制御装置と、を備えるものにおいて、バッテリが低温のときに、バッテリ温度と車室内温度と湿度とに基づいてバッテリの結露を抑制可能な送風量を目標値に設定してこの目標値に基づいて冷却ファンを制御するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、こうした制御を行なうことにより、バッテリの結露を抑制しつつバッテリの昇温を行なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−098060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の制御(以下、昇温送風制御という)を行なったとしても、車室内の温度やバッテリ温度,湿度によっては、実際には、バッテリで結露を生じる可能性がある。こうして結露を生じたとしても、時間の経過によって結露が解消してから次回の昇温送風制御を行なう場合には問題ないが、結露が解消していない状態で次回の昇温送風制御を行なう場合、結露水の蒸発量や残留している結露量などに拘わらずに同一態様の昇温送風制御を行なうと、蒸発しなかった結露水の蓄積によって結露量が過度に増加し、バッテリで漏電を生じるおそれがある。
【0005】
本発明のバッテリ装置およびバッテリの昇温方法並びに車両は、バッテリでの結露量の過度の増加を抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のバッテリ装置およびバッテリの昇温方法並びに車両は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明のバッテリ装置は、
車両の駆動用の電力を供給するバッテリと、車室内の空気を前記バッテリに送風可能な送風手段と、を備える車載用のバッテリ装置であって、
前記バッテリの昇温要求がなされたとき、前記バッテリを昇温するために前記車室内の空気を前記バッテリに送風するよう前記送風手段を制御する昇温送風制御の前回の終了からの経過時間が短いほど短くなる傾向に前記昇温送風制御の制御許容時間を設定し、該設定した制御許容時間の範囲内で前記昇温送風制御を実行する制御手段、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明のバッテリ装置では、バッテリの昇温要求がなされたときには、バッテリを昇温するために車室内の空気をバッテリに送風するよう送風手段を制御する昇温送風制御の前回の終了からの経過時間が短いほど短くなる傾向に昇温送風制御の制御許容時間を設定し、設定した制御許容時間の範囲内で昇温送風制御を実行する。昇温送風制御を実行するとバッテリで結露を生じる可能性があるが、こうして生じた結露は、昇温送風制御の前回の終了からの経過時間が短いほど解消している可能性が低い(残留している可能性が高い)と考えられるため、経過時間が短いほど短くなる傾向に設定した制御許容時間の範囲内で昇温送風制御を実行することにより、バッテリでの結露量の過度の増加を抑制することができる。この結果、バッテリで漏電が生じるのを抑制することができる。
【0009】
こうした本発明のバッテリ装置において、前記制御手段は、前記昇温送風制御の前回の終了時に前記バッテリで生じていて該終了後に時間の経過に伴って蒸発したと推定される結露水の蒸発量である推定蒸発量を前記経過時間が短いほど少なくなる傾向に設定し、前記昇温送風制御の前回の終了時に前記バッテリで生じていたと推定される結露量から前記設定した推定蒸発量を減じた値が大きいほど短くなる傾向に前記制御許容時間を設定する手段である、ものとすることもできる。この場合、昇温送風制御を開始する際のバッテリの結露量が多いほど短くなる傾向に制御許容時間を設定することになり、バッテリでの結露量の過度の増加を抑制することができる。
【0010】
また、本発明のバッテリ装置において、前記制御手段は、前記昇温送風制御の前回の終了から今回の開始までの前記バッテリの温度が低いほど少なくなる傾向に前記推定蒸発量を設定する手段である、ものとすることもできる。こうすれば、結露水の蒸発量をより適正に推定することができる。
【0011】
さらに、本発明のバッテリ装置において、前記制御手段は、前記バッテリの温度が所定温度以上に至ったとき又は前記昇温送風制御の開始から前記設定した制御許容時間が経過したときに前記昇温送風制御を終了する手段である、ものとすることもできる。
【0012】
本発明の車両は、上述のいずれかの態様の本発明のバッテリ装置、即ち、基本的には、車両の駆動用の電力を供給するバッテリと、車室内の空気を前記バッテリに送風可能な送風手段と、を備える車載用のバッテリ装置であって、前記バッテリの昇温要求がなされたとき、前記バッテリを昇温するために前記車室内の空気を前記バッテリに送風するよう前記送風手段を制御する昇温送風制御の前回の終了からの経過時間が短いほど短くなる傾向に前記昇温送風制御の制御許容時間を設定し、該設定した制御許容時間の範囲内で前記昇温送風制御を実行する制御手段、を備えるバッテリ装置と、前記バッテリと電力をやりとり可能で走行用の動力を出力する電動機と、を備えることを要旨とする。
【0013】
この本発明の車両では、上述のいずれかの態様の本発明のバッテリ装置を搭載するから、本発明のバッテリ装置が奏する効果、例えば、バッテリでの結露量の過度の増加を抑制することができる効果などと同様の効果を奏することができる。
【0014】
本発明のバッテリの昇温方法は、
車両の駆動用の電力を供給するバッテリと、車室内の空気を前記バッテリに送風可能な送風手段と、を備える車載用のバッテリ装置におけるバッテリの昇温方法であって、
前記バッテリの昇温要求がなされたとき、前記バッテリを昇温するために前記車室内の空気を前記バッテリに送風するよう前記送風手段を制御する昇温送風制御の前回の終了からの経過時間が短いほど短くなる傾向に前記昇温送風制御の制御許容時間を設定し、該設定した制御許容時間の範囲内で前記昇温送風制御を実行する、
ことを特徴とする。
【0015】
この本発明のバッテリの昇温方法では、バッテリの昇温要求がなされたときには、バッテリを昇温するために車室内の空気をバッテリに送風するよう送風手段を制御する昇温送風制御の前回の終了からの経過時間が短いほど短くなる傾向に昇温送風制御の制御許容時間を設定し、設定した制御許容時間の範囲内で昇温送風制御を実行する。昇温送風制御を実行するとバッテリで結露を生じる可能性があるが、こうして生じた結露は、昇温送風制御の前回の終了からの経過時間が短いほど解消している可能性が低い(残留している可能性が高い)と考えられるため、経過時間が短いほど短くなる傾向に設定した制御許容時間の範囲内で昇温送風制御を実行することにより、バッテリでの結露量の過度の増加を抑制することができる。この結果、バッテリで漏電が生じるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される昇温送風制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図3】仮推定蒸発量設定用マップの一例を示す説明図である。
【図4】制御許容時間設定用マップの一例を示す説明図である。
【図5】変形例のハイブリッド自動車120の構成の概略を示す構成図である。
【図6】変形例の電気自動車220の構成の概略を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0018】
図1は、本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、ガソリンや軽油などを燃料とするエンジン22と、エンジン22を駆動制御するエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24と、エンジン22のクランクシャフト26にキャリアが接続されると共に駆動輪39a,39bにデファレンシャルギヤ38を介して連結された駆動軸36にリングギヤが接続されたプラネタリギヤ30と、例えば同期発電電動機として構成されて回転子がプラネタリギヤ30のサンギヤに接続されたモータMG1と、例えば同期発電電動機として構成されて回転子が駆動軸36に接続されたモータMG2と、モータMG1,MG2を駆動するためのインバータ41,42と、インバータ41,42の図示しないスイッチング素子をスイッチング制御することによってモータMG1,MG2を駆動制御するモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40と、車両の後部座席の下方や後方に配置され例えばリチウムイオン二次電池として構成されてインバータ41,42を介してモータMG1,MG2と電力をやりとりするバッテリ50と、バッテリ50を管理するバッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52と、車室内の空気をバッテリ50に送風する送風ファン60と、車両全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット(以下、ハイブリッドECUという)70と、を備える。
【0019】
バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧,バッテリ50の出力端子に接続された電力ラインに取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流,バッテリ50に取り付けられた温度センサ51からの電池温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。
【0020】
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、送風ファン60により送風される空気の温度を検出する温度センサ62からの送風温度Tair,イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。また、ハイブリッド用電子制御ユニット70からは、送風ファン60への駆動信号などが出力ポートを介して出力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70は、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
【0021】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20では、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸36に出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力が駆動軸36に出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてがプラネタリギヤ30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されて駆動軸36に出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部がプラネタリギヤ30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力が駆動軸36に出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力を駆動軸36に出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。
【0022】
また、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20では、電池温度Tbが低温側所定温度Tbloref(例えば、−10℃や−5℃,0℃など)より低く車室内の温度(送風温度Tair)が電池温度Tbよりも高いときには、バッテリ50を昇温するために送風ファン60が駆動される昇温送風制御が行なわれ、電池温度Tbが高温側所定温度Tbhiref(例えば、35℃や40℃,45℃など)より高く車室内の温度が電池温度Tbよりも低いときには、バッテリ50を冷却するために送風ファン60が駆動される冷却送風制御が行なわれる。なお、昇温送風制御が行なわれるときには、車室内の温度(送風温度Tair)と電池温度Tbとの温度差や湿度によってはバッテリ50で結露を生じることがある。
【0023】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作、特に、送風ファン60による車室内の空気のバッテリ50への送風によってバッテリ50を昇温するときの動作について説明する。図2は、ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される昇温送風制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、電池温度Tbが低温側所定温度Tblorefより低く車室内の温度が電池温度Tbよりも高い昇温条件が成立したときにときに実行される。
【0024】
昇温送風制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、前回の昇温送風制御の終了時にバッテリ50で生じていると推定された結露量である制御終了時推定結露量Qdfと、昇温送風制御の前回の終了からの経過時間である終了後経過時間teとを入力する(ステップS100)。ここで、制御終了時推定結露量Qdfは、前回に本ルーチンが実行されたときに後述のステップS210で設定された値を用いることができる。また、終了後経過時間teは、前回に本ルーチンが実行されたときに後述のステップS220の処理で計時が開始されたタイマの現在の値を用いることができる。
【0025】
こうしてデータを入力すると、入力した制御終了時推定結露量Qdfと終了後経過時間teとに基づいて、昇温送風制御の前回の終了後に時間の経過に伴って蒸発したと推定される結露水の蒸発量である推定蒸発量Qevを設定する(ステップS110)。ここで、推定蒸発量Qevは、実施例では、終了後経過時間teと推定蒸発量Qevの仮の値である仮推定蒸発量Qevtmpとの関係を予め実験などにより定めて仮推定蒸発量設定用マップとしてROM74に記憶しておき、終了後経過時間teが与えられると記憶したマップから対応する仮推定蒸発量Qevtmpを導出し、導出した仮推定蒸発量Qevtmpと制御終了時推定結露量Qdfとのうち小さい方を推定蒸発量Qevとして設定するものとした。仮推定蒸発量設定用マップの一例を図3に示す。仮推定蒸発量Qevtmpは、図示するように、終了後経過時間teが短いほど少なくなる傾向に設定される。
【0026】
続いて、今回の昇温送風制御の開始直前にバッテリ50で生じていると推定される制御前推定結露量Qdsを、制御終了時推定結露量Qdfから推定蒸発量Qevを減じることによって計算し(ステップS120)、計算した制御前推定結露量Qdsに基づいて今回の昇温送風制御の制御許容時間tcrefを設定する(ステップS130)。ここで、制御許容時間tcrefは、バッテリ50での結露量がバッテリ50で漏電を生じる可能性がある量の下限値としての許容結露量Qdmaxに至らない範囲の時間として予め実験や解析などにより定められるものであり、実施例では、推定結露量Qdestと制御許容時間tcrefとの関係を予め実験などにより定めて制御許容時間設定用マップとしてROM74に記憶しておき、推定結露量Qdestが与えられると記憶したマップから対応する制御許容時間tcrefを導出して設定するものとした。制御許容時間設定用マップの一例を図4に示す。図中、所定時間tc1は、制御前推定結露量Qdsが値0の状態(バッテリ50に結露水が残留していない状態)で昇温送風制御を開始したときに送風温度Tairや電池温度Tb,湿度などによっては結露量が許容結露量Qdmaxに至る可能性がある時間としての最大時間tcmaxよりも短い時間として定められる時間である。制御許容時間tcrefは、図示するように、制御前推定結露量Qdsが多いほど短くなる傾向に設定される。前述の内容から解るように、推定蒸発量Qevは終了後経過時間teが短いほど少なくなる傾向であり、制御前推定結露量Qdsは推定蒸発量Qevが少ないほど多くなる傾向であるから、制御許容時間tcrefは、終了後経過時間teが短いほど短くなる傾向に設定されることになる。
【0027】
そして、昇温送風制御(送風ファン60の駆動)を開始すると共に(ステップS140)、昇温送風制御の制御時間tcの計時を値0から開始し(ステップS150)、温度センサ51からの電池温度Tbを入力し(ステップS160)、電池温度Tbを前述した低温側所定温度Tblorefと比較すると共に(ステップS170)、制御時間tcを制御許容時間tcrefと比較し(ステップS180)、電池温度Tbが低温側所定温度Tblorefより低く制御時間tcが制御許容時間tcref未満のときには、昇温送風制御を継続すると判断し、ステップS160に戻る。こうして昇温送風制御を継続し、ステップS170で電池温度Tbが低温側所定温度Tbloref以上に至ったときやステップS180で制御時間tcが制御許容時間tcref以上に至ったときには、昇温送風制御を終了する(ステップS190)。したがって、推定蒸発量Qevが少ないほど即ち制御前推定結露量Qdsが多いほど短くなる傾向の制御許容時間tcrefの範囲内で昇温送風制御を実行するから、バッテリ50で生じる結露量の過度の増加を抑制することができる。この結果、バッテリ50で漏電を生じるのを抑制することができる。なお、こうした昇温送風制御と並行してバッテリ50の充電と放電とを繰り返すことにより、バッテリ50の昇温を促進することができ、電池温度Tbが低温側所定温度Tbloref未満で昇温送風制御を終了したとしても、バッテリ50の充電と放電とを繰り返すことにより、バッテリ50を昇温することができる。
【0028】
そして、今回の昇温送風制御を実行したときの送風温度Tairや湿度,制御時間tcなどに基づいて、今回の昇温送風制御によって新たにバッテリ50で生じたと推定される結露量である今回推定結露量Qdestを設定すると共に(ステップS200)、設定した今回推定結露量Qdestを制御前推定結露量Qdsに加えることにより、昇温送風制御の終了時にバッテリ50で生じていると推定される結露量である制御終了時推定結露量Qdfを計算し(ステップS210)、昇温送風制御の終了からの経過時間である終了後経過時間teの計時を値0から開始して(ステップS220)、本ルーチンを終了する。ここで、今回推定結露量Qdestは、実施例では、送風温度Tairと湿度と制御時間tcと今回推定結露量Qdestとの関係を予め実験や解析などにより定めて図示しないマップとして記憶しておき、送風温度Tairと湿度と制御時間tcとが与えられると記憶したマップから対応する今回推定結露量Qdestを導出して設定するものとした。また、制御終了時推定結露量Qdfおよび終了後経過時間teは、実施例では、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリに記憶させるものとした。
【0029】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、バッテリ50の昇温要求がなされたときには、終了後経過時間teが短いほど少なくなる傾向に推定蒸発量Qdを設定し、制御終了時推定結露量Qdfから推定蒸発量Qevを減じて制御前推定結露量Qdsを計算し、計算した制御前推定結露量Qdsが多いほど短くなる傾向に制御許容時間tcrefを設定し、設定した制御許容時間tcrefの範囲内で昇温送風制御を実行するから、バッテリ50での結露量の過度の増加を抑制することができる。この結果、バッテリ50で漏電を生じるのを抑制することができる。
【0030】
実施例のハイブリッド自動車20では、終了後経過時間teが短いほど少なくなる傾向に推定蒸発量Qdを設定し、制御終了時推定結露量Qdfから推定蒸発量Qevを減じて制御前推定結露量Qdsを計算し、計算した制御前推定結露量Qdsが多いほど短くなる傾向に制御許容時間tcrefを設定するものとしたが、推定蒸発量Qevや制御前推定結露量Qdsを用いずに、終了後経過時間teが短いほど制御許容時間tcrefが短くなる傾向に終了後経過時間teから制御許容時間tcrefを直接設定するものとしてもよい。
【0031】
実施例のハイブリッド自動車20では、終了後経過時間teが短いほど少なくなる傾向に設定した仮推定蒸発量Qevtmpを制御終了時推定結露量Qdfで制限して推定蒸発量Qdを設定するものとしたが、これに加えて、他のパラメータを考慮して仮推定蒸発量Qevtmpを設定するものとしてもよい。例えば、電池温度Tbの温度が低いほど結露水が蒸発しにくくなることを考慮して、昇温送風制御の前回の終了から昇温送風制御の今回の開始までの電池温度Tb(例えば、電池温度Tbの平均など)が低いほど小さくなる傾向の補正係数αを仮推定蒸発量Qevtmpに対して乗じたもの(Qevtmp・α)を制御終了時推定結露量Qdfで制限して推定蒸発量Qdを設定するものものとしてもよい。
【0032】
実施例のハイブリッド自動車20では、終了後経過時間teを計時するものとしたが、この終了後経過時間teは、システムオフされて図示しない補機バッテリからハイブリッド用電子制御ユニット70への電力供給が停止されるときにはその直前の値を保持する(システムオフの時間を含めずに計時する)ものとしてもよいし、システムオフの時間も含めて計時するものとしてもよい。後者の場合、例えば、システムオン時かシステムオフ時かに拘わらず計時を継続可能な制御ユニット(例えば、システムオン時かシステムオフ時かに拘わらず図示しない補機バッテリから電力供給が行なわれる図示しない電源用電子制御ユニットなど)で終了後経過時間teを計時するものとしてもよいし、図2の昇温送風制御ルーチンのステップS220で終了後経過時間teの計時を値0から開始するのに代えて時刻(制御終了時時刻)を取得し、次回に昇温送風制御ルーチンを実行するときに、そのときの時刻と取得した制御終了時時刻との差を経過時間teとして計算するものとしてもよい。後者の場合、推定蒸発量Qevをより適正なものとすることができる。
【0033】
実施例では、駆動軸36にプラネタリギヤ30を介して接続されたエンジン22およびモータMG1と、駆動軸36に動力を入出力するモータMG2と、を備えるいわゆるパラレル型のハイブリッド自動車20に適用するものとしたが、図5の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、エンジン22に発電用のモータMG1が取り付けられていると共に走行用のモータMG2を備えるいわゆるシリーズ型のハイブリッド自動車120に適用するものとしてもよいし、図6の変形例の電気自動車220に例示するように、走行用の動力を出力するモータMGを備える単純な電気自動車に適用するものとしてもよい。また、自動車や自動車以外の車両に搭載されるバッテリ装置の形態やバッテリの昇温方法の形態としてもよい。
【0034】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、バッテリ50が「バッテリ」に相当し、車室内の空気をバッテリ50に送風する送風ファン60が「送風手段」に相当し、終了後経過時間teが短いほど少なくなる傾向に設定した仮推定蒸発量Qevtmpを制御終了時推定結露量Qdfで制限して推定蒸発量Qdを設定し、制御終了時推定結露量Qdfから推定蒸発量Qevを減じて制御前推定結露量Qdsを計算し、計算した制御前推定結露量Qdsが多いほど短くなる傾向に制御許容時間tcrefを設定し、バッテリ50を昇温するために送風ファン60を駆動する昇温送風制御を制御許容時間tcrefの範囲内で実行する図2の昇温送風制御ルーチンを実行するハイブリッド用電子制御ユニット70が「制御手段」に相当する。また、モータMG2が「電動機」に相当する。
【0035】
ここで、「バッテリ」としては、リチウムイオン二次電池として構成されたバッテリ50に限定されるものではなく、ニッケル水素二次電池やニッケルカドミウム二次電池,鉛蓄電池など、車両の駆動用の電力を供給するものであれば種々のバッテリを用いることができる。「送風手段」としては、車室内の空気をバッテリ50に送風する送風ファン60に限定されるものではなく、車室内の空気を前記バッテリに送風可能なものであれば如何なるものとしても構わない。「制御手段」としては、終了後経過時間teが短いほど少なくなる傾向に設定した仮推定蒸発量Qevtmpを制御終了時推定結露量Qdfで制限して推定蒸発量Qdを設定し、制御終了時推定結露量Qdfから推定蒸発量Qevを減じて制御前推定結露量Qdsを計算し、計算した制御前推定結露量Qdsが多いほど短くなる傾向に制御許容時間tcrefを設定し、バッテリ50を昇温するために送風ファン60を駆動する昇温送風制御を制御許容時間tcrefの範囲内で実行するものに限定されるものではなく、バッテリの昇温要求がなされたときには、バッテリを昇温するために車室内の空気をバッテリに送風するよう送風手段を制御する昇温送風制御の前回の終了からの経過時間が短いほど短くなる傾向に昇温送風制御の制御許容時間を設定し、設定した制御許容時間の範囲内で昇温送風制御を実行するものであれば如何なるものとしても構わない。「電動機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG2に限定されるものではなく、誘導電動機など、バッテリと電力をやりとり可能で走行用の動力を出力するものであれば如何なるタイプの電動機であっても構わない。
【0036】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0037】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、バッテリ装置の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0039】
20,120 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、26 クランクシャフト、30 プラネタリギヤ、32a リングギヤ軸、36 駆動軸、38 デファレンシャルギヤ、39a,39b 駆動輪、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、50 バッテリ、51 温度センサ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、60 送風ファン、62 温度センサ、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、220 電気自動車、MG1,MG2 モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動用の電力を供給するバッテリと、車室内の空気を前記バッテリに送風可能な送風手段と、を備える車載用のバッテリ装置であって、
前記バッテリの昇温要求がなされたとき、前記バッテリを昇温するために前記車室内の空気を前記バッテリに送風するよう前記送風手段を制御する昇温送風制御の前回の終了からの経過時間が短いほど短くなる傾向に前記昇温送風制御の制御許容時間を設定し、該設定した制御許容時間の範囲内で前記昇温送風制御を実行する制御手段、
を備えるバッテリ装置。
【請求項2】
請求項1記載のバッテリ装置であって、
前記制御手段は、前記昇温送風制御の前回の終了時に前記バッテリで生じていて該終了後に時間の経過に伴って蒸発したと推定される結露水の蒸発量である推定蒸発量を前記経過時間が短いほど少なくなる傾向に設定し、前記昇温送風制御の前回の終了時に前記バッテリで生じていたと推定される結露量から前記設定した推定蒸発量を減じた値が大きいほど短くなる傾向に前記制御許容時間を設定する手段である、
バッテリ装置。
【請求項3】
請求項2記載のバッテリ装置であって、
前記制御手段は、前記昇温送風制御の前回の終了から今回の開始までの前記バッテリの温度が低いほど少なくなる傾向に前記推定蒸発量を設定する手段である、
バッテリ装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つの請求項に記載のバッテリ装置であって、
前記制御手段は、前記バッテリの温度が所定温度以上に至ったとき又は前記昇温送風制御の開始から前記設定した制御許容時間が経過したときに前記昇温送風制御を終了する手段である、
バッテリ装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つの請求項に記載のバッテリ装置と、
前記バッテリと電力をやりとり可能で走行用の動力を出力する電動機と、
を備える車両。
【請求項6】
車両の駆動用の電力を供給するバッテリと、車室内の空気を前記バッテリに送風可能な送風手段と、を備える車載用のバッテリ装置におけるバッテリの昇温方法であって、
前記バッテリの昇温要求がなされたとき、前記バッテリを昇温するために前記車室内の空気を前記バッテリに送風するよう前記送風手段を制御する昇温送風制御の前回の終了からの経過時間が短いほど短くなる傾向に前記昇温送風制御の制御許容時間を設定し、該設定した制御許容時間の範囲内で前記昇温送風制御を実行する、
ことを特徴とするバッテリの昇温方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−101510(P2011−101510A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254722(P2009−254722)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】