説明

バルブ制御装置

【課題】電動アクチュエータのロッドの移動量に対する排気ガス流量(圧力)の変化率が最も大きい低開度領域でのロッド軸振れ量を最小にすることで、ホールICの検出精度の向上およびロッドの制御性の向上を図る手段を提供する。
【解決手段】リンクレバー3の回転作動線上の全閉点Aとし、リンクレバー3の回転作動線上の全開点B、リンクレバー3の回転作動線上の中間開度点Cとし、リンクレバー3の回転作動線上の振れ幅の端点Pとしたとき、ウェイストゲートバルブ1が回転動作(開閉)する際、リンクレバー3の回転作動線上の振れ幅の端点Pを、全閉点Aと中間開度点Cとの中央に位置するように設定している。これによって、高い精度が必要な全閉点Aから中間開度点Cまでの領域でのロッド軸振れ量を最小に設定できるので、ホールICの検出精度の向上およびロッド4のストローク量の制御性の向上を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブを駆動するロッドをその軸線方向に往復移動させるアクチュエータを備え、ロッドのストローク量に応じてバルブの開閉制御を行うバルブ制御装置に関するもので、特にウェイストゲートバルブの開閉制御を行うバルブ制御装置に係わる。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
従来より、ターボチャージャのウェイストゲート流路を開閉するウェイストゲートバルブによる過給圧制御装置が公知である(例えば、特許文献1参照)。
この過給圧制御装置は、図7ないし図9に示したように、ウェイストゲートバルブ101を支持開閉する回転軸102が設置されている。この回転軸102には、リンクレバー103が連結され、このリンクレバー103には、ダイヤフラムアクチュエータ104のロッド105が連結されている。また、ウェイストゲート流路106には、ウェイストゲートバルブ101を着座させるための弁座107が設置されている。
なお、図8の矢印は、リンクレバー103の可動範囲(作動角度)を示す。
【0003】
また、ターボチャージャの排気バイパス流路を開閉する排気バイパスバルブを駆動するダイヤフラムアクチュエータが公知である(例えば、特許文献2参照)。
このダイヤフラムアクチュエータ204は、図10ないし図12に示したように、排気バイパスバルブ201を支持開閉する回転軸202が設置されている。この回転軸202には、リンクレバー203が連結され、このリンクレバー203には、ダイヤフラムアクチュエータ204のロッド205が連結されている。また、排気バイパス流路206には、排気バイパスバルブ201を着座させるための弁座207が設置されている。
なお、図11の矢印は、リンクレバー203の可動範囲(作動角度)を示す。
【0004】
[従来の技術の不具合]
ところで、近年、自動車に搭載される内燃機関(エンジン)の排気ガスの規制強化に伴い、排出ガス関係のOBD(車載診断装置による故障診断機能)装着が義務づけされている。
ここで、特許文献1及び2に記載のダイヤフラムアクチュエータ104、204を、ウェイストゲートバルブ101の開閉制御および排気バイパスバルブ201の開閉制御用のアクチュエータとして使用する場合、OBD要件として、ロッド105、205のストローク量を直接検出する必要がある。
そこで、ロッド105、205に、磁石やヨークにより構成される磁気回路を装着し、磁気回路から印加される磁界の磁束密度を磁気センサによって検出して、磁気センサから出力される電気信号に基づいて、ロッド105、205のストローク量を求める方法が考えられる。
【0005】
ところが、特許文献1に記載の過給圧制御装置においては、ウェイストゲートバルブ101の回転軸102とダイヤフラムアクチュエータ104のロッド105とを連結するリンクレバー103の可動範囲が明確ではなく、リンクレバー103が動くとロッド105がその軸線周りに振れる。
具体的には、ウェイストゲートバルブ101が全閉位置(図8(a)参照)から全開位置(図8(b)参照)に至るまでの作動範囲で開閉制御する際、つまりリンクレバー103のロッド105との結合部108が、回転軸102を中心にした所定の曲率半径の曲線である回転軌跡(リンクレバー103の回転作動線)上を移動する際に、ロッド軸振れ量δ分だけロッド105が軸振れする。
これにより、磁気センサを用いてロッド105のストローク量を直接検出する場合、ロッド105の軸振れに伴って検出誤差が大きくなるという問題が生じている。
【0006】
また、特許文献1に記載の過給圧制御装置においては、図9(a)に示したように、ウェイストゲートバルブ101の中間開度よりも全閉側の低開度領域でロッド105の移動量に対する排気ガスの流量の変化率が最も大きく、ウェイストゲートバルブ101の中間開度よりも全開側の高開度領域でロッド105の移動量に対する排気ガスの流量の変化率が小さい。
また、図9(b)に示したように、ウェイストゲートバルブ101の全閉開度から中間開度を経て全開開度に至るまでの全領域でロッド軸振れ量δの変化率が小さい。
これにより、ロッド105の移動量に対する排気ガスの流量の変化率が最も大きい低開度領域において、ロッド105の軸振れ量を小さくして、ロッド105のストローク量の検出精度を向上させる必要がある。
【0007】
一方、特許文献2に記載のダイヤフラムアクチュエータ204においては、特許文献1に記載のダイヤフラムアクチュエータ104と比べて、図11(a)に示したように、リンクレバー203の回転開始角度が異なるが、特許文献1と同様な問題が生じている。
すなわち、排気バイパスバルブ201が全閉位置(図11(a)参照)から全開位置(図11(b)参照)に至るまでの作動範囲で開閉制御する際に、つまりリンクレバー203のロッド205との結合部208が、回転軸202を中心にした所定の曲率半径の曲線である回転軌跡(リンクレバー103の回転作動線)上を移動する際に、ロッド軸振れ量δ分だけロッド205が軸振れする。
これにより、磁気センサを用いてロッド205のストローク量を直接検出する場合、ロッド205の軸振れに伴って検出誤差が大きくなるという問題が生じている。
【0008】
また、特許文献2に記載のダイヤフラムアクチュエータ204においては、図12(a)に示したように、排気バイパスバルブ201の中間開度よりも全閉側の低開度領域でロッド205の移動量に対する排気ガスの流量の変化率が最も大きく、排気バイパスバルブ201の中間開度よりも全開側の高開度領域でロッド205の移動量に対する排気ガスの流量の変化率が小さい。
また、図12(b)に示したように、排気バイパスバルブ201の全閉開度から中間開度を経て全開開度に至るまでの全領域でロッド軸振れ量δの変化率が小さい。
これにより、ロッド205の移動量に対する排気ガスの流量の変化率が最も大きい低開度領域において、ロッド205の軸振れ量を小さくして、ロッド205のストローク量の検出精度を向上させる必要がある。
【0009】
また、特許文献1に記載の過給圧制御装置、および特許文献2に記載のダイヤフラムアクチュエータ204において、ロッド105、205をその軸線方向に摺動自在に支持するロッド軸受を備えている場合には、ロッド105、205の軸振れによってロッド軸受に力が加わり、ロッド105、205がロッド軸受の内周をこじり、ロッド105、205とロッド軸受とが偏摩耗したり、ロッド105、205が作動不能に陥ったりするという問題が生じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平10−103069号公報
【特許文献2】特開2010−90766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、アクチュエータのロッドのストローク量を直接検出する際の、ロッドの軸振れによる検出誤差を小さくすることのできるバルブ制御装置を提供することにある。また、ロッドの移動量に対する流量(圧力)の変化率が最も大きい低開度領域でのロッド軸振れ量を最小にすることで、センサの検出精度の向上およびロッドの制御性の向上を図ることのできるバルブ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、アクチュエータのロッドの直線運動をバルブの回転運動に変換するリンク機構のレバーに、バルブの回転中心軸と同一軸心上に回転軸(回転中心)を有し、且つロッドと結合する結合部を有することを特徴としている。
そして、レバーの結合部は、バルブが回転動作する際、レバーの回転軸を中心にした所定の曲率半径の曲線であるレバーの回転作動線上を移動するように構成されている。
そして、バルブが全閉開度となるレバーの回転作動線上の回転作動点が、レバーの回転作動線上の全閉点として設定されている。また、バルブが全開開度となるレバーの回転作動線上の回転作動点が、レバーの回転作動線上の全開点として設定されている。また、バルブが全閉開度と全開開度との中間の開度となるレバーの回転作動線上の回転作動点が、レバーの回転作動線上の中間開度点として設定されている。また、全閉点と全開点とを結ぶ直線から半径方向の外側に向けて最も遠く、しかも全閉点と全開点との間にあるレバーの回転作動線上の回転作動点が、レバーの回転作動線上の振れ幅の端点として設定されている。
以上のようにレバーの回転作動線上の各回転作動点を設定したとき、バルブが回転動作する際、レバーの回転作動線上の振れ幅の端点が、全閉点と中間開度点との間に位置するように設定されている。
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、バルブが回転動作する際、レバーの回転作動線上の振れ幅の端点が、全閉点と中間開度点との間に位置するように設定されることにより、ロッド軸振れ量を小さくすることができる。これによって、ロッドのストローク量を直接検出する際におけるロッドの軸振れによる検出誤差を小さくすることができる。
また、レバーの回転作動線上の振れ幅の端点を、全閉点と中間開度点との間に位置させることにより、バルブにおいてロッドの移動量に対する流量(または圧力)の変化率が最も大きい低開度領域でのロッド軸振れ量(レバーの回転角度当たりに対するロッドの軸振れ幅)を最小値に設定できるので、センサによるロッドのストローク量の検出精度の向上およびロッドのストローク量の制御性の向上を図ることができる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、バルブとは、内燃機関(エンジン)より流出する排気ガスを制御する排気ガス制御弁の弁体のことである。バルブを、例えば内燃機関(エンジン)に搭載されるターボチャージャのウェイストゲート流路(またはEGRガス流路)を流れる排気ガス(またはEGRガス)の流量を制御する排気ガス流量(またはEGRガス流量)制御弁の弁体に適用しても良い。
請求項3に記載の発明によれば、アクチュエータに、ロッドの軸振れを許容しつつ、ロッドをその軸線方向(ロッド軸方向)に摺動自在に支持するロッド軸受を設置している。そして、バルブが回転動作する際、レバーの回転作動線上の振れ幅の端点が、全閉点と中間開度点との間に位置するように設定されることにより、ロッド軸振れ量を小さくすることができる。これにより、ロッド軸受に大きな力が加わったり、ロッドがロッド軸受の内周をこじったり、ロッドとロッド軸受とが偏摩耗したり、ロッドが作動不能に陥ったりするという不具合の発生を抑えることができる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、レバーの回転作動線とは、レバーの回転作動線上の全閉点とレバーの回転作動線上の全開点とを、レバーの回転軸(バルブの回転中心軸)を中心にした所定の曲率半径の曲線で結んだ円弧軌跡のことである。
請求項5に記載の発明によれば、レバーの回転作動線上の振れ幅の端点が、全閉点と中間開度点との中央に位置するように設定したことにより、精度が必要な、全閉点から中間開度点までのロッドの振れ幅を最小に設定することができる。
これによって、ロッドのストローク量を直接検出する際におけるロッドの軸振れによる検出誤差を小さくすることができる。また、センサによるロッドのストローク量の検出精度の向上およびロッドのストローク量の制御性の向上を図ることができる。
【0016】
請求項6に記載の発明によれば、アクチュエータは、動力源であるモータの回転を減速する減速機構と、この減速機構の回転運動を前記ロッドの直線運動に変換する変換機構とを備えたことを特徴としている。
請求項7に記載の発明によれば、減速機構は、モータによって回転駆動される駆動ギヤ、およびこの駆動ギヤと噛み合って回転する最終ギヤを有することを特徴としている。
請求項8に記載の発明によれば、変換機構は、バルブの動作パターンに対応した形状のカム溝を有し、減速機構(最終ギヤ)の回転に伴って回転するカムと、カム溝に移動自在に挿入されるフォロワとを備えている。また、ロッドは、フォロワを回転自在に支持する支軸を有し、一端側がフォロワおよび支軸を介してカムに連結し、他端側がバルブに連結することを特徴としている。
【0017】
請求項9に記載の発明によれば、ロッドの軸線方向への移動量(ストローク量)を検出するストローク検出手段とを備えている。このストローク検出手段は、ロッドに一体的に設置されて、(平行な)一定の磁束密度の磁界を発生する磁石を含む磁性移動体、およびこの磁性移動体のストローク方向への移動に伴って変化する磁束(密度)に対応した電気信号を出力するセンサを有することを特徴としている。
請求項10に記載の発明によれば、センサから出力された電気信号に基づいて、ロッドの直線的なストローク量を検出するストローク検出手段を備えたことを特徴としている。 請求項11に記載の発明によれば、センサは、磁性移動体から印加される磁界の磁束を感磁する感磁面を有することを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】ウェイストゲートバルブ制御装置を示した説明図である(実施例1)。
【図2】ウェイストゲートバルブ制御装置を示した説明図である(実施例1)。
【図3】リンクレバーの振り幅の端点を示した説明図である(実施例1)。
【図4】ウェイストゲートバルブの全閉時におけるリンクレバーとロッドとの位置関係を示した概略図である(実施例1)。
【図5】(a)、(b)はロッド軸振れ量の推定線を示した概略図である(実施例1)。
【図6】(a)はバルブ開度に対する流量の変化を示したグラフで、(b)はバルブ開度に対するロッド軸振れ量の変化を示したグラフである(実施例1)。
【図7】ウェイストゲートバルブによる過給圧制御装置を示した部分断面図である(従来例1)。
【図8】(a)、(b)はロッド軸振れ量の推定線を示した概略図である(従来例1)。
【図9】(a)はバルブ開度に対する流量の変化を示したグラフで、(b)はバルブ開度に対するロッド軸振れ量の変化を示したグラフである(従来例1)。
【図10】排気バイパスバルブを駆動するダイヤフラムアクチュエータを示した断面図である(従来例2)。
【図11】(a)、(b)はロッド軸振れ量の推定線を示した概略図である(従来例2)。
【図12】(a)はバルブ開度に対する流量の変化を示したグラフで、(b)はバルブ開度に対するロッド軸振れ量の変化を示したグラフである(従来例2)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
本発明は、アクチュエータのロッドのストローク量を直接検出する際の、ロッドの軸振れによる検出誤差を小さくするという目的を、レバーの回転作動線上の振れ幅の端点を、全閉点と中間開度点との間に位置させることで実現した。
また、ロッドの移動量に対する流量(圧力)の変化率が最も大きい低開度領域でのロッド軸振れ量を最小にすることで、センサの検出精度の向上およびロッドの制御性の向上を図るという目的を、レバーの回転作動線上の振れ幅の端点を、全閉点と中間開度点との間に位置させることで実現した。
【実施例1】
【0020】
[実施例1の構成]
図1ないし図6は本発明の実施例1を示したもので、図1はウェイストゲートバルブの全閉時におけるリンクレバーとロッドとの位置関係を示した図で、図2はウェイストゲートバルブの全開時におけるリンクレバーとロッドとの位置関係を示した図である。
【0021】
本実施例の内燃機関のウェイストゲートバルブ制御装置は、内燃機関の過給圧制御装置として使用されるシステムであって、内燃機関(エンジン)の排気ガスの流量を制御するウェイストゲートバルブ1と、このウェイストゲートバルブ1のシャフト2に連結するリンクレバー3等のリンク機構と、リンクレバー3を介してウェイストゲートバルブ1に駆動連結するロッド4を有する電動アクチュエータと、内燃機関(エンジン)の運転状況に基づいてウェイストゲートバルブ1の開閉制御を行ってエンジンの過給圧を可変制御するエンジン制御ユニット(ECU)とを備えている。
【0022】
ウェイストゲートバルブ1は、エンジンに搭載されるターボチャージャのウェイストゲート流路9を流れる排気ガスの流量を制御する排気ガス流量制御弁の弁体である。このウェイストゲートバルブ1は、エンジン運転時に、ECUからの制御信号に基づいて、ウェイストゲートバルブ1の全閉位置から全開位置に至るまでのバルブ作動範囲で回転動作されることで、ウェイストゲート流路9の開口面積(排気ガス流通面積)を変更する。
ウェイストゲートバルブ1の背面(隔壁:バルブシートに着座する着座面に対して反対側の端面)には、L字状のシャフト2が一体的に設けられている。
なお、ウェイストゲートバルブ1の詳細は後述する。
【0023】
電動アクチュエータは、ロッド4のストローク方向(荷重作用方向)への移動量(ロッド4のストローク量)に応じてウェイストゲートバルブ1の開閉制御を行う。
電動アクチュエータは、ロッド軸中心線方向(軸線方向)に往復移動するロッド4の他に、ロッド4の揺動(振れ)を許容しつつ、ロッド4をその往復移動方向(ロッド4のストローク方向)に摺動自在に支持するロッド軸受(スラスト軸受)5と、ロッド4に対して、ウェイストゲートバルブ1を閉じる側(バルブ全閉側)に付勢する付勢力(スプリング荷重)を発生するコイルスプリング6と、スラスト軸受5およびコイルスプリング6等の構成部品を収容するアクチュエータケースとを備えている。ここで、電動アクチュエータのロッド4は、そのストローク方向の先端側が、アクチュエータケースの円環状の端面よりアクチュエータケース外部側に突出している。
なお、電動アクチュエータの詳細は、後述する。
【0024】
エンジンは、複数の気筒を有する多気筒ディーゼルエンジンが採用されている。このエンジンの複数(各気筒毎)の吸気ポートには、吸入空気が流れる吸気管が接続されている。この吸気管の途中には、ターボチャージャのコンプレッサ、インタークーラ、スロットルバルブおよびインテークマニホールド等が設置されている。
また、エンジンの複数(各気筒毎)の排気ポートには、排気ガスが流れる排気管が接続されている。この排気管の途中には、エキゾーストマニホールドおよびターボチャージャのタービン等が設置されている。
【0025】
ターボチャージャは、タービンとコンプレッサとを備え、吸入空気をコンプレッサで圧縮し、圧縮された空気をエンジンの各気筒毎の燃焼室に送り込むターボ過給機である。
タービンは、渦巻形状のタービンハウジング7を備えている。このタービンハウジング7内には、タービンインペラ(タービンホイール)が設置されている。
コンプレッサは、渦巻形状のコンプレッサハウジングを備えている。このコンプレッサハウジング内には、コンプレッサインペラ(コンプレッサホイール)が設置されている。 また、タービンインペラとコンプレッサインペラとは、ロータシャフトによって一体となって回転するように連結されている。
ターボチャージャは、タービンインペラが排気ガスにより回転駆動されると、コンプレッサインペラも回転し、このコンプレッサインペラが吸入空気を圧縮する。
【0026】
ここで、本実施例のターボチャージャのタービンハウジング7には、ウェイストゲートバルブ1およびウェイストゲート流路9が設けられている。
ウェイストゲート流路9は、タービンハウジング7に導入された排気ガスを、タービンインペラを経由しないで、つまりタービンインペラを迂回(バイパス)してタービンインペラよりも下流側の排気通路へ流すためのバイパス通路(流体通路)である。
あるいはウェイストゲート流路9は、エンジンより流出した排気ガスを、エキゾーストマニホールドの集合部よりも下流側から分岐して、ターボチャージャのタービンよりも排気ガス流方向の下流側で排気通路に合流させる、つまり排気ガスをタービンハウジング7よりバイパスさせるためのバイパス通路(流体通路)である。
【0027】
本実施例のウェイストゲート流路9は、タービンハウジング7の入口部の隔壁で開口した上流側連通孔(ウェイストゲートポート)と、タービンハウジング7の出口部の隔壁で開口した下流側連通孔とを連通する。また、ウェイストゲート流路9には、ウェイストゲートバルブ1を着座させるための弁座(バルブシート)10が設置されている。
ウェイストゲートバルブ1は、例えばステンレス鋼等の金属材料によって円板形状に形成されている。このウェイストゲートバルブ1は、電動アクチュエータのロッド4のロッド軸中心線方向の先端部に接続されて、タービンハウジング7の入口部の隔壁(バルブシート10)に対して着座、離脱して、ウェイストゲート流路9、特にウェイストゲートポートを開閉する排気ガス制御弁である。
【0028】
ウェイストゲートバルブ1のシャフト2と電動アクチュエータのロッド4との間には、電動アクチュエータのロッド4の直線運動をウェイストゲートバルブ1の回転運動に変換するリンク機構が設置されている。
このリンク機構は、図1および図2に示したように、一端側が電動アクチュエータのロッド4のストローク方向(往復移動方向)の先端側に連結し、且つ他端側がウェイストゲートバルブ1のシャフト2の先端側(バルブ側に対して反対側)に連結したリンクレバー3等を有している。
ここで、ロッド4のストローク方向の先端側には、ロッド4の裏面側から打ち込まれて表面側に突出した第1ヒンジピン(第1支持軸)11が固定(または一体的に形成)されている。また、ウェイストゲートバルブ1のシャフト2には、第1ヒンジピン11の突出方向と同一方向に突出した第2ヒンジピン(第2支持軸)12が一体的に形成(または固定)されている。
【0029】
リンクレバー3は、ロッド4のストローク方向(ロッド軸中心線方向)の先端部と結合(連結)する第1結合部、およびウェイストゲートバルブ1のシャフト2と結合(連結)する第2結合部を有している。
リンクレバー3の第1結合部には、第1ヒンジピン11が貫通する貫通孔が形成されている。また、第1結合部は、第1ヒンジピン11の外周に回転自在に支持されている。
リンクレバー3の第2結合部には、第2ヒンジピン12が嵌合する嵌合孔が形成されている。また、第2結合部は、第2ヒンジピン12に固定されている。
なお、リンク機構、特にリンクレバー3の詳細は、後述する。
【0030】
第1ヒンジピン11は、ウェイストゲートバルブ1、シャフト2およびリンクレバー3等を回転自在に支持している。また、第1ヒンジピン11の回転中心は、ウェイストゲートバルブ1の回転中心軸(回転軸)を構成する。
第2ヒンジピン12は、途中で直角に屈曲したシャフト2の電動アクチュエータ側端部に固定されている。この第2ヒンジピン12は、ターボチャージャのタービンハウジング7の側壁部に回転自在に支持されている。また、第2ヒンジピン12の中心は、ウェイストゲートバルブ1の回転中心となっている。
以上によって、ウェイストゲートバルブ1は、第1ヒンジピン11、リンクレバー3、第2ヒンジピン12を介して、ロッド4のストローク方向の先端側に連結されるヒンジバルブを構成する。
【0031】
次に、本実施例の電動アクチュエータの詳細を図1および図2に基づいて説明する。
電動アクチュエータは、ロッド4、スラスト軸受5およびコイルスプリング6の他に、電力の供給を受けて駆動力(モータトルク)を発生する電動モータMと、この電動モータMの回転を2段減速する減速機構と、この減速機構の回転運動を往復直線運動に変換する変換機構と、電動アクチュエータのロッド4のストローク位置を検出するストローク量検出装置(磁性移動体8、ストロークセンサS)と、これらの各構成部品を収容するアクチュエータケースとを備えている。
【0032】
減速機構は、3つの減速ギヤにより構成されている。減速機構は、電動モータMのモータシャフト(回転軸、出力軸)13、このモータシャフト13に対して並列配置された2つの第1、第2支持軸(中間ギヤシャフト、最終ギヤシャフト)14、15、モータシャフト13に固定されたピニオンギヤ(モータギヤ)16、このピニオンギヤ16と噛み合って回転する中間ギヤ(駆動ギヤ、第1ギヤ)17、およびこの中間ギヤ17と噛み合って回転する最終ギヤ(従動ギヤ、第2ギヤ、平歯車)18等によって構成されている。
変換機構は、回転するプレートカム21、このプレートカム21のカム溝22内に移動自在に挿入されるフォロワ23、およびこのフォロワ23を回転自在に支持するピボットピン24等によって構成されている。
【0033】
ここで、電動アクチュエータのアクチュエータケースは、電動モータMを収容保持すると共に、減速機構および変換機構を回転自在に収容するギヤハウジング26と、このギヤハウジング26の開口部を塞ぐセンサカバー(蓋体)とを備えている。
ギヤハウジング26は、ステンレス鋼等の非磁性材料によって形成されている。また、センサカバーは、電気絶縁性に優れる樹脂材料等の非磁性材料によって形成されている。 ここで、ギヤハウジング26の側壁よりバルブ側に位置する円筒状のベアリングホルダ28には、ロッド4の軸方向に貫通する軸受孔が形成されている。この軸受孔の孔壁面には、スラスト軸受5が圧入嵌合されている。また、ギヤハウジング26の側壁よりバルブ側に突出する円筒状のスプリングホルダ29内には、コイルスプリング6が収容されている。
【0034】
電動アクチュエータのロッド4は、そのロッド軸中心線方向と同一方向のストローク方向に真っ直ぐに延びている。このロッド4は、フォロワ23およびピボットピン24を介して、プレートカム21に連結(接続)するプレート(平板)状の第1ロッド31と、リンク機構(リンクレバー3等)を介して、ウェイストゲートバルブ1のシャフト2に連結(接続)するプレート(平板)状の第2ロッド32と、第1ロッド31と第2ロッド32とを連結する断面円形状の接続ロッド33とによって構成されている。なお、第1ロッド31、第2ロッド32および接続ロッド33は、例えばステンレス鋼等の金属材料(非磁性体)によって形成されており、溶接等により接続されて一体部品となっている。
【0035】
第1ロッド31は、フォロワ23およびピボットピン24を介して、プレートカム21から荷重を受ける入力部である。この第1ロッド31の表面は、磁性移動体8をネジ締結固定するための磁性移動体搭載面となっている。なお、磁性移動体8をロッド4の第1ロッド31に樹脂モールド成形することで固定しても良い。
また、第1ロッド31の一端部(接続ロッド33側に対して反対側の端部)には、ピボットピン24が嵌合する嵌合孔が形成されている。なお、ピボットピン24は、第1ロッド31の裏面側から打ち込まれて表面側に突出して第1ロッド31に接続(固定)されている。
また、第1ロッド31の他端部には、接続ロッド33の軸線方向の一端側と溶接により接続される第1連結部35が設けられている。
【0036】
第2ロッド32は、リンクレバー3および第1、第2ヒンジピン11、12を介して、ウェイストゲートバルブ1に荷重を与える出力部である。この第2ロッド32の一端部(接続ロッド33側の端部)には、接続ロッド33の軸線方向の他端側と溶接により接続される第2連結部36が設けられている。
第2ロッド32の他端部(接続ロッド33側に対して反対側の端部)には、第1ヒンジピン11が嵌合する嵌合孔(図示せず)が形成されている。なお、第1ヒンジピン11は、第2ロッド32の裏面側から打ち込まれて表面側に突出して第2ロッド32に接続(固定)されている。
【0037】
接続ロッド33は、第1ロッド31の第1連結部35と第2ロッド32の第2連結部36とを連結する中継部である。この接続ロッド33の第1ロッド31側端部の外周には、コイルスプリング6からストローク方向のバルブ全閉側に付勢する荷重を受け止める荷重受け部である円環状(鍔状、フランジ状)のスプリングシート37が装着されている。また、接続ロッド33は、スラスト軸受5の軸受中心を中心に揺動自在で、且つスラスト軸受5の軸線方向に摺動自在に支持されている。なお、スプリングシート37は、ロッド4の第1ロッド31の第1連結部35の端面に係止されている。
【0038】
スラスト軸受5は、ロッド4の接続ロッド33をそのストローク方向(往復移動方向)に摺動自在に支持するものである。このスラスト軸受5の内部には、ロッド4の軸方向に貫通する貫通孔(摺動孔)が形成されている。また、スラスト軸受5の内周面(ロッド4の接続ロッド33と摺動する摺動面)は、スラスト軸受5の軸受中心付近で最もロッド軸中心線側に突出する凸曲面となっている。これにより、ロッド4の接続ロッド33の揺動(振れ)が許容される。
【0039】
コイルスプリング6は、ロッド4に対して、ウェイストゲートバルブ1を閉じる側(ロッド軸中心線方向のバルブ全閉側)に付勢する付勢力(荷重)を発生するロッド(バルブ)付勢手段である。このコイルスプリング6の一端は、スプリングシート37に保持され、コイルスプリング6の他端は、ベアリングホルダ28の端部とスプリングホルダ29とを連結する円環状の隔壁(閉鎖壁)38に保持されている。
これによって、電動アクチュエータのロッド4、特に第1ロッド31には、コイルスプリング6からのスプリング荷重(バルブ全閉側に付勢する荷重)が作用している。
【0040】
減速機構は、電動モータMのトルクを変換機構に伝達する動力伝達機構を構成する。この減速機構は、上述したように、中間ギヤシャフト14、最終ギヤシャフト15、ピニオンギヤ16、中間ギヤ17および最終ギヤ18等によって構成されている。
中間ギヤシャフト14および最終ギヤシャフト15は、互いに並列配置されている。また、3つのギヤ16〜18は、ギヤハウジング26の減速ギヤ収納空間内において回転自在に収容されている。
【0041】
中間ギヤシャフト14は、ギヤハウジング26の嵌合孔に打ち込まれてギヤハウジング26の嵌合部に圧入固定されている。この中間ギヤシャフト14の軸方向中心線は、中間ギヤ17の回転中心を構成している。また、中間ギヤシャフト14の外周には、2つのベアリング(軸受:図示せず)を介して、中間ギヤ17が回転自在に支持されている。なお、2つのベアリングは設けなくても良い。
また、中間ギヤシャフト14の中間ギヤ17の端面より突出した突出部の外周には、円環状の周方向溝が形成されている。この周方向溝には、中間ギヤシャフト14の外周に中間ギヤ17を嵌め合わせた際に、中間ギヤシャフト14からの中間ギヤ17の抜け止めを行うワッシャおよびCリング等の中間ギヤ抜け止め手段が装着されている。
【0042】
最終ギヤシャフト15は、ギヤハウジング26の嵌合孔に打ち込まれて円筒状の嵌合部に圧入固定されている。この最終ギヤシャフト15の軸方向中心線は、最終ギヤ18の回転中心を構成している。また、最終ギヤシャフト15の外周には、2つのベアリング(軸受)を介して、最終ギヤ18が回転自在に支持されている。なお、2つのベアリングは設けなくても良い。
また、最終ギヤシャフト15の最終ギヤ18の端面より突出した突出部の外周には、円環状の周方向溝が形成されている。この周方向溝には、最終ギヤシャフト15の外周に最終ギヤ18を嵌め合わせた際に、最終ギヤシャフト15からの最終ギヤ18の抜け止めを行うワッシャおよびCリング等の最終ギヤ抜け止め手段が装着されている。
【0043】
ピニオンギヤ16は、金属材料または樹脂材料によって形成されている。このピニオンギヤ16は、モータシャフト13の外周に圧入固定されている。ピニオンギヤ16の外周には、中間ギヤ17と噛み合う複数の凸状歯(ピニオンギヤ部)41が周方向全体に形成されている。
中間ギヤ17は、金属材料または樹脂材料によって形成されており、中間ギヤシャフト14の外周に回転自在に嵌め合わされている。この中間ギヤ17は、中間ギヤシャフト14の周囲を周方向に取り囲むように設置された円筒部を有している。この円筒部の外周には、円環状の最大外径部(径大部)が一体的に形成されている。
【0044】
中間ギヤ17の径大部の外周には、ピニオンギヤ16の凸状歯41と噛み合う複数の凸状歯(大径ギヤ部)42が周方向全体に形成されている。また、円筒部(径小部)の外周には、最終ギヤ18と噛み合う複数の凸状歯(小径ギヤ部)43が周方向全体に形成されている。
最終ギヤ18は、金属材料または樹脂材料によって形成されており、2つのベアリングを介して、最終ギヤシャフト15の外周に回転自在に嵌め合わされている。この最終ギヤ18は、最終ギヤシャフト15の周囲を周方向に取り囲むように設置された円筒部を有している。この円筒部には、円筒部の外周面より扇状に広がるフランジ44を有している。 最終ギヤ18のフランジ44の外周部には、中間ギヤ17の凸状歯43と噛み合う複数の凸状歯(扇状の大径ギヤ部)45が所定の角度分だけ扇状に形成されている。
【0045】
変換機構は、最終ギヤ18の回転運動をロッド4の直線運動に変換する運動方向変換機構である。この変換機構は、最終ギヤ18の最終ギヤシャフト15を中心にして最終ギヤ18と一体的に回転するプレートカム21、このプレートカム21のカム溝22内に移動自在に挿入されるフォロワ23、およびこのフォロワ23を回転自在に支持するピボットピン24等によって構成されている。
【0046】
プレートカム21は、金属材料によって所定の形状に形成されており、最終ギヤ18のカム装着部に固定されている。なお、最終ギヤ18が樹脂材料で形成されている場合、プレートカム21は最終ギヤ18にインサート成形される。また、最終ギヤ18が金属材料で形成されている場合、最終ギヤ18とプレートカム21とを焼結金属等で一体化しても良い。このように構成することで、最終ギヤ18の回転軸とプレートカム21の回転軸とが共通化されるため、最終ギヤ18の回転中心(最終ギヤシャフト15の回転中心)とプレートカム21の回転中心とが一致する。また、最終ギヤ18の作動角度(最終ギヤ作動角)とプレートカム21の回転角度(カム回転角)とが等しくなる。
プレートカム21のカム溝22は、ウェイストゲートバルブ1の動作パターンに対応した湾曲形状のガイド部である。
ここで、プレートカム21のカム形状およびプレートカム21の回転角度は、ウェイストゲートバルブ1を全閉位置から全開位置まで駆動するのに必要なロッドストローク量に対して決定される。
【0047】
フォロワ23は、金属材料によって円筒形状に形成されており、ピボットピン24の外周に回転自在に嵌め合わされている。このフォロワ23は、ピボットピン24の周囲を周方向に取り囲むように円筒部を有している。
ピボットピン24は、ロッド4の嵌合孔に打ち込まれてロッド4に圧入固定されている。なお、ピボットピン24のフォロワ23の円筒部の端面より突出した突出部には、フォロワ23の抜け止めを行うために潰されて鍔状にカシメられたフランジが形成されている。
また、フォロワ23の回転中心は、プレートカム21の回転中心と共に、ロッド4のストローク方向の中心線上、つまりロッド軸中心線上に設置されている。
【0048】
電動モータMは、電動アクチュエータの動力源であって、ギヤハウジング26のモータ収納空間内に収容保持されている。この電動モータMは、ECUによって通電制御されるように構成されている。
そして、ECUには、CPU、ROM、RAM等の機能を含んで構成される周知の構造のマイクロコンピュータが設けられている。そして、ECUは、ストロークセンサS、クランク角度センサ、アクセル開度センサ、スロットル開度センサ、過給圧センサおよび車速センサ等の各種センサのセンサ出力信号に基づいて、スロットルバルブの電動アクチュエータ、ウェイストゲートバルブ1の電動アクチュエータを制御する。
【0049】
次に、本実施例のストローク量検出装置の詳細を図1ないし図6に基づいて簡単に説明する。
ストローク量検出装置は、ロッド4に一体的に設置された磁性移動体8と、この磁性移動体8のストローク位置を検出するストロークセンサSとを備えている。
なお、ECUは、ストロークセンサSから出力される出力値(センサ出力値)に基づいて、電動アクチュエータのロッド4の直線的なストローク位置を演算(検出)するロッドストローク検出手段としての機能を有している。
【0050】
磁性移動体8は、検出対象物であるロッド4のストローク方向への移動に伴って直線変位(移動)するように、ロッド4に一体的に設置(締結一体化)されている。この磁性移動体8は、平行な一定の磁束密度の磁界を発生する2つの第1、第2マグネット(磁石)51、52、およびこれらの磁石51、52の磁極面から放出された磁束(磁界)をストロークセンサSに対して集中させる長方形枠体状の磁性フレーム(磁性体)等によって構成されている。 2つの磁石51、52は、直方体形状に形成されており、ストロークセンサSに向けて磁束(磁界)を放出する永久磁石である。これらの磁石51、52は、板長さ方向および板幅方向に対して直交する板厚さ方向の両端部が互いに極性が逆向きになるようにN極とS極とが着磁されている。また、2つの磁石51、52は、磁石内部の磁力線の向きが互いに平行となるように平行着磁されている。また、2つの磁石51、52は、所定のエアギャップを隔てて対向して配置されている。
【0051】
また、2つの磁石51、52は、ロッド軸中心線に対して直交する垂直方向に着磁されている。また、2つの磁石51、52は、互いに対向する磁極面同士が同一極性(例えばN極)となるように着磁されている。なお、図1に示した矢印方向は、2つの磁石51、52の磁極面から放出される磁束線の方向(磁界方向)を示す。
これにより、磁石51の着磁方向(板厚さ方向)は、ロッド軸中心線に対して直交する垂直方向と一致しており、磁石51の板厚さ方向の一方側(図1において図示上方側)の磁極面がS極とされ、また、磁石51の板厚さ方向の他方側(図1において図示下方側)の磁極面がN極とされている。また、磁石52の着磁方向(板厚さ方向)は、ロッド軸中心線に対して直交する垂直方向と一致しており、磁石52の板厚さ方向の一方側(図1において図示上方側)の磁極面がN極とされ、また、磁石52の板厚さ方向の他方側(図1において図示下方側)の磁極面がS極とされている。
【0052】
磁性体は、閉磁路を形成する鉄、ニッケル、フェライト等の磁性材料によって形成されている。この磁性体は、長手方向、つまりロッド軸中心線に沿うように延びる直方体形状の上下ブロック(ロッド軸方向ブロック:以下ブロックと略す)54、55、および短手方向、つまりロッド軸中心線に対して直交する垂直線に沿うように延びる直方体形状の左右ブロック(ロッド垂直方向ブロック:以下ブロックと略す)56、57によって構成されている。また、磁性体は、ロッド4の第1ロッド31の磁性移動体搭載面上に締結ネジや締結ボルト等のスクリュー58を用いて締め付け固定される複数のブラケット59を有している。
ブロック54、55の中央部は、エアギャップを隔てて対向して配置されたマグネット(磁石)保持部を有している。ブロック54、55のマグネット保持部の内側面(対向面)には、磁石51、52の磁極面(極性が共にS極)が接触した状態で磁石51、52が接着剤等の固定手段を用いて保持固定されている。
なお、磁石をストロークセンサS側に設置して磁性移動体8を磁性体のみで構成しても良い。
【0053】
ストロークセンサSは、磁性移動体8を構成する2つの磁石51、52および磁性体を伴って構成される磁気回路の途中に位置するように、つまり磁性移動体8で周囲を囲まれたセンサ収容空間内に位置するようにセンサカバーのセンサ搭載部(センサホルダ)に保持されている。このストロークセンサSは、センサカバーのセンサ搭載部(センサホルダ)からロッド4の第1ロッド31側に突出するように設置されている。
また、ストロークセンサSは、磁性移動体8のストローク方向への移動に伴って変化する磁束(磁束密度、磁界分布、磁界強さ)を検出する非接触式の磁気検出素子であるホール素子を有している。このホール素子には、磁性移動体8、特に2つの磁石51、52の磁極面(N極)から印加される磁界の磁束密度を感磁する感磁面Fが設けられている。
【0054】
そして、ストロークセンサSは、ホール素子の感磁面Fを鎖交する磁束密度に対応した電気信号(電圧信号、センサ出力信号:以下センサ出力値と言う)をECUに向けて出力するホールICを主体に構成されている。このホールICは、ホール素子と増幅回路とを一体化したICチップのことであって、磁性体の内部に形成される長方形状のセンサ収容空間内において、磁性移動体8に対して相対的に移動可能に設置されている。なお、非接触式の磁気検出素子として、ホールICの代わりに、ホール素子単体または磁気抵抗素子(MR素子)を使用しても良い。
【0055】
ここで、磁性移動体8およびストロークセンサSにより構成される磁気回路は、ウェイストゲートバルブ1が全閉位置にある時、図1に実線で示した位置に保持される。また、磁気回路は、ウェイストゲートバルブ1が全開閉位置にある時、図1に二点鎖線で示した位置および図2で実線で示した位置に保持される。
また、磁気回路は、磁石51、ホール素子を有するホールIC、磁性体のブロック57およびブロック54により構成される閉磁路型の第1磁気回路、磁石51、磁性体のブロック56およびブロック54により構成される閉磁路型の第2磁気回路、磁石52、ホール素子を有するホールIC、磁性体のブロック57およびブロック55により構成される閉磁路型の第3磁気回路、並びに磁石52、磁性体のブロック56およびブロック55により構成される閉磁路型の第4磁気回路等を有している。
【0056】
また、ストロークセンサSは、ウェイストゲートバルブ1が全閉位置と全開位置との間にある場合、磁性移動体8のストローク位置(基準位置に対する相対位置)とロッド4のストローク量とが対応しており、また、ロッド4のストローク位置とウェイストゲートバルブ1のバルブ開度とが対応している。このため、ECUは、磁性移動体8のストローク位置、つまり磁束密度の変化に対応して出力されるセンサ出力信号を測定して、ロッド4のストローク量を求め、このロッド4のストローク量からウェイストゲートバルブ1のバルブ開度を求め、このバルブ開度からウェイストゲート流路9を流れる排気ガスの流量を求めることが可能である。
【0057】
ここで、磁性移動体8のストローク位置をセンシングする方式として、ホールIC、ホール素子またはMR素子を使用して、非接触での磁気検出で実施する場合、磁性移動体8とストロークセンサSのホールICとで構成される第1、第2磁気回路の近傍に鉄等の磁性体があると、非接触式の磁気検出素子が検出する磁場が安定して確保できない可能性がある。そこで、本実施例の電動アクチュエータを構成する機能部品、つまり第1、第2磁気回路に近接配置される機能部品であるロッド4、最終ギヤ18、プレートカム21、フォロワ23、ピボットピン24、最終ギヤシャフト15を非磁性材料(ステンレス鋼等の非磁性金属、非磁性樹脂等)で構成することで、第1、第2磁気回路への外乱磁界の影響を回避している。
【0058】
次に、本実施例のリンクレバー3およびロッド4の詳細を図1ないし図6に基づいて説明する。
リンクレバー3の第1結合部(ロッド4のストローク方向の先端部との結合部である第1ヒンジピン11)は、ウェイストゲートバルブ1を動かすと、つまり全閉位置から全開位置に至るまで回転動作(開閉)すると、ウェイストゲートバルブ1の回転中心軸と同一軸心上に位置する回転軸(リンクレバー3の回転中心、第2ヒンジピン12の中心)を中心にした所定の曲率半径の曲線である回転作動線(リンクレバー3の回転作動線:図示二点鎖線)上を移動する。
【0059】
そして、リンクレバー3の回転作動線とは、ウェイストゲートバルブ1が全閉開度となるリンクレバー3の回転作動線上の回転作動点を、リンクレバー3の回転作動線上の全閉点とし、ウェイストゲートバルブ1が全開開度となるリンクレバー3の回転作動線上の回転作動点を、リンクレバー3の回転作動線上の全開点としたとき、リンクレバー3の回転作動線上の全閉点とリンクレバー3の回転作動線上の全開点とを、ウェイストゲートバルブ1の回転中心軸(リンクレバー3の回転軸、第2ヒンジピン12の中心)Oを中心にした所定の曲率半径の曲線で結んだ円弧軌跡のことである。
【0060】
ここで、ウェイストゲートバルブ1の全閉位置とは、図4および図5(a)に示したように、ウェイストゲートバルブ1がバルブシート10に着座してウェイストゲート流路9を閉鎖している全閉開度の状態のことである。
また、ウェイストゲートバルブ1の全開位置とは、図5(b)に示したように、ウェイストゲートバルブ1がバルブシート10より離脱してウェイストゲート流路9を開放している全開開度の状態のことである。
また、図6に示した中間開度とは、ウェイストゲートバルブ1の全閉開度と全開開度との中間の開度(中央値)のことである。
【0061】
そして、本実施例では、図4に示したように、ウェイストゲートバルブ1が全閉開度となるリンクレバー3の回転作動線上の回転作動点が、リンクレバー3の回転作動線上の全閉点Aとして設定されている。
また、ウェイストゲートバルブ1が全開開度となるリンクレバー3の回転作動線上の回転作動点は、リンクレバー3の回転作動線上の全開点Bとして設定されている。
また、ウェイストゲートバルブ1が全閉位置と全開位置との中間の開度となるリンクレバー3の回転作動線上の回転作動点は、リンクレバー3の回転作動線上の中間開度点Cとして設定されている。
また、全閉点Aと全開点Bとを結ぶ直線から半径方向の外側に向けて最も遠く、しかも全閉点Aと全開点Bとの間にあるリンクレバー3の回転作動線上の回転作動点は、リンクレバー3の回転作動線上の振れ幅の端点Pとして設定されている。
【0062】
以上のように、リンクレバー3の回転作動線上に各回転作動点を設定したとき、リンクレバー3の回転作動線上の振れ幅の端点Pが、全閉点Aと中間開度点Cとの間、特に全閉点Aと中間開度点Cとの中央(値)に位置するように設定されている。
また、リンクレバー3の回転軸(リンクレバー3の回転中心O)とリンクレバー3の回転作動線上の振れ幅の端点Pとを結ぶ直線と、電動アクチュエータのロッド4の軸線方向の中心線(ロッド軸中心線)との交差角度は、直角(90°)となるように設定されている。
なお、リンクレバー3の回転作動線とは、リンクレバー3の回転作動線上の全閉点Aとリンクレバー3の回転作動線上の全開点Bとを、リンクレバー3の回転軸(ウェイストゲートバルブ1の回転中心軸)Oを中心にした所定の曲率半径の曲線で結んだ円弧軌跡のことである。
また、図5の矢印は、リンクレバー3の可動範囲(リンクレバー3の回転(動作)可能な回転角度)を示す。
【0063】
[実施例1の作用]
次に、本実施例のウェイストゲートバルブ1の開閉制御を行う電動アクチュエータの作動を図1ないし図6に基づいて簡単に説明する。
【0064】
ECUは、過給圧センサにより検出される過給圧が設定値に満たない場合、ウェイストゲートバルブ1が全閉状態となるように、電動モータMへの電力供給を制御する。
これによって、電動アクチュエータの構成部品が、全閉状態に止まるため、ウェイストゲートバルブ1が全閉状態を継続する。これにより、ウェイストゲート流路9は閉鎖される。この結果、エンジンより排出された排気ガスの全量は、ターボチャージャのタービンハウジング7の入口部から流入してタービンインペラを回転させ、タービンハウジング7の出口部から排出される。
一方、吸気管内に吸い込まれた吸入空気は、タービンインペラの回転により駆動されるコンプレッサインペラによって圧縮されて圧力(過給圧)が上昇する。そして、圧力が上昇した吸入空気は、エンジンに吸い込まれる。
【0065】
ECUは、過給圧センサにより検出される過給圧が設定値以上に上昇した場合、つまり予め設定された最大過給圧を超える場合、ウェイストゲートバルブ1が全開状態となるように、電動モータMへの電力供給を制御する。
これによって、電動モータMのモータシャフト13が全開方向に回転する。これにより、モータトルクが、ピニオンギヤ16、中間ギヤ17、最終ギヤ18に伝達される。そして、最終ギヤ18からモータトルクが伝達されたプレートカム21が、最終ギヤ18の回転に伴って所定の回転角度(最終ギヤ18の作動角度と等しい回転角度)だけ全開方向に回転する。
すると、ピボットピン24がカム溝22を摺動(滑動)して、カム溝22の全閉位置から全開位置まで移動することにより、ロッド4の第1ロッド31がコイルスプリング6を圧縮しながらロッド4のストローク方向のバルブ開側に直線移動する(押し出される)。すると、ロッド4の直線移動に伴って、第1、第2ロッド31、32および接続ロッド33がロッド4のストローク方向のバルブ開側に直線移動する。
【0066】
さらに、第2ロッド32の直線移動に伴って、第1ヒンジピン11がロッド4のストローク方向のバルブ開側にロッド4が直線移動することにより、リンクレバー3が第2ヒンジピン12を中心にして全開方向に回転する。すると、第2ヒンジピン12の回転に伴ってウェイストゲートバルブ1も第2ヒンジピン12を中心にして全開方向に回転する。これにより、ウェイストゲートバルブ1がバルブシートより離脱して全開状態となるため、ウェイストゲート流路9が開放される。
この結果、エンジンからタービンハウジング7の入口部に流入した排気ガスの一部がタービンインペラをバイパスするウェイストゲート流路9を通ってタービンハウジング7の出口部に排出される。これにより、タービンインペラに作用する排気エネルギーが減少し、タービンインペラの回転速度が低下するので、ターボチャージャの過回転が防止される。
また、過給圧または排気圧が過大とならないようになる。また、タービンインペラの過回転に伴うタービンインペラの破損等を防止できる。
【0067】
ECUは、過給圧センサにより検出される過給圧が設定値よりも低下した場合、ウェイストゲートバルブ1が全閉状態となるように、電動モータMへの電力供給を制御する。
これによって、電動モータMのモータシャフト13が全閉方向に回転する。これにより、モータトルクが、ピニオンギヤ16、中間ギヤ17、最終ギヤ18、プレートカム21に伝達される。そして、プレートカム21が、最終ギヤ18の回転に伴って所定の回転角度だけ全閉方向に回転する。
すると、ピボットピン24がカム溝22を摺動(滑動)して、カム溝22の全開位置から全閉位置まで移動することにより、ロッド4のストローク方向のバルブ閉側にロッド4が直線移動する(引き戻される)。すると、ロッド4の直線移動に伴って第1、第2ロッド31、32および接続ロッド33がロッド4のストローク方向のバルブ閉側に直線移動する。
【0068】
さらに、第2ロッド32の直線移動に伴って、第1ヒンジピン11がロッド4のストローク方向のバルブ閉側に直線移動することにより、リンクレバー3が第2ヒンジピン12を中心にして全閉方向に回転する。すると、第2ヒンジピン12の回転に伴ってウェイストゲートバルブ1も第2ヒンジピン12を中心にして全閉方向に回転する。これにより、ウェイストゲートバルブ1がバルブシートに着座して全閉状態となるため、ウェイストゲート流路9が閉鎖される。
また、ウェイストゲートバルブ1は、エンジンの運転状況、特に過給圧センサにより検出される過給圧に基づいて、全閉位置と全開位置との中間の中間開度に設定するように制御される。この場合、ウェイストゲートバルブ1のバルブ開度が過給圧に基づいて連続的または段階的に変更されるため、ウェイストゲート流路9を通過する排気ガスの流量を連続的または段階的に微調整できる。これにより、エンジンの過給圧を連続的または段階的に可変制御できる。
【0069】
[実施例1の特徴1]
以上のように、本実施例のウェイストゲートバルブ制御装置においては、ウェイストゲートバルブ1のシャフト2と電動アクチュエータのロッド4との間に、ロッド4の直線運動をウェイストゲートバルブ1の回転運動に変換するリンクレバー3等のリンク機構を設置している。また、電動アクチュエータにおいては、リンクレバー3を介して、ウェイストゲートバルブ1に連結するロッド4に磁性移動体8を一体的に設置している。
そして、ストロークセンサSのホールICによってロッド4の第1ロッド31と一体で動く磁性移動体8のストローク位置を検出しているので、電動アクチュエータの最終作動段であるロッド4のストローク位置を直接検出することができる。この結果、ロッド4のストローク位置の検出精度が向上するため、ロッド4のストローク量の制御性、つまりウェイストゲートバルブ1の開度制御の制御性を向上することができる。
また、ストロークセンサSのホールICで検出される磁性移動体8のストローク位置が、所定時間が経過しても設定された目標位置に到達または接近しない場合には、ロッド4または電動アクチュエータの故障(例えばウェイストゲートバルブ1またはロッド4の作動不能状態等)と判断することができる。つまりウェイストゲートバルブ1、ロッド4または電動アクチュエータの故障診断を実施できる。これにより、OBD要件を満足できる。
【0070】
[実施例1の特徴2]
また、本実施例のウェイストゲートバルブ制御装置においては、リンクレバー3の結合部(電動アクチュエータのロッド4との結合部である第1ヒンジピン11)が、ウェイストゲートバルブ1が回転動作(開閉)する際に、全閉点Aと全開点Bとを円弧状曲線(円弧軌跡)で結ぶ回転作動線上を移動するように構成されている。
ここで、リンクレバー3の回転作動線上の各回転作動点は、図4に示したように、リンクレバー3の回転作動線上の全閉点A、リンクレバー3の回転作動線上の全開点B、リンクレバー3の回転作動線上の中間開度点C、およびリンクレバー3の回転作動線上の振れ幅の端点Pのように設定されている。
以上のように、リンクレバー3の回転作動線上に各回転作動点を設定したとき、ウェイストゲートバルブ1が回転動作(開閉)する際、リンクレバー3の回転作動線上の振れ幅の端点Pを、全閉点Aと中間開度点Cとの間、特に全閉点Aと中間開度点Cとの中央に位置するように設定している。
【0071】
以上のように、ウェイストゲートバルブ制御装置においては、ウェイストゲートバルブ1が回転動作(開閉)する際、リンクレバー3の回転作動線上の振れ幅の端点Pが、全閉点Aと中間開度点Cとの間に位置するように設定されているので、図5に示したように、従来例1及び2と比べて、電動アクチュエータのロッド4の軸振れ量(ロッド軸振れ量δ)を小さくすることができる。これによって、ロッド4のストローク量を直接検出する際におけるロッド4の軸振れによる検出誤差を小さくすることができる。
また、リンクレバー3の回転作動線上の振れ幅の端点Pを、全閉点Aと中間開度点Cとの中央に位置するように設定されているので、図6に示したように、ウェイストゲートバルブ1においてロッド4のストローク方向への移動量(ストローク量)に対する排気ガス流量(または圧力)Qの変化率(流量変化率)が最も大きい低開度領域(中間開度よりも全閉側の領域)でのロッド4の軸振れ量(リンクレバー3の回転角度当たりに対するロッド4の軸振れ幅)、つまり高い精度が必要な全閉点Aから中間開度点Cまでの領域でのロッド4の軸振れ量(リンクレバー3の回転角度当たりに対するロッド4の軸振れ幅)を最小に設定できる。これにより、ストロークセンサSによるロッド4のストローク量の検出精度の向上およびロッド4のストローク量の制御性の向上を図ることができる。
【0072】
[実施例1の特徴3]
また、ウェイストゲートバルブ制御装置においては、リンクレバー3の回転中心点Oとリンクレバー3の回転作動線上の振れ幅の端点Pとを結ぶ直線と、ロッド4の軸線方向の中心線(ロッド軸中心線)との交差角度を直角となるように設定している。これにより、ロッド4の振れ幅を最小に設定することができる。これによって、ロッド4のストローク量を直接検出する際におけるロッド4の軸振れによる検出誤差を小さくすることができる。また、ストロークセンサSによるロッド4のストローク量の検出精度の向上およびロッド4のストローク量の制御性の向上を図ることができる。
また、電動アクチュエータには、ロッド4の軸振れを許容しつつ、ロッド4をその軸線方向(ロッド軸方向)に摺動自在に支持するスラスト軸受5が設置されている。そして、上述したように、リンクレバー3の回転作動線上の振れ幅の端点Pを、全閉点Aと中間開度点Cとの間に位置するように設定することにより、ロッド4の軸振れ量を小さくすることができる。これにより、スラスト軸受5に大きな力が加わったり、ロッド4がスラスト軸受5の内周をこじったり、ロッド4とスラスト軸受5とが偏摩耗したり、ロッド4が作動不能に陥ったりするという不具合の発生を抑えることができる。
【0073】
[変形例]
本実施例では、本発明のバルブ制御装置を、ウェイストゲートバルブ1を駆動する電動アクチュエータを制御するウェイストゲートバルブ制御装置に適用しているが、本発明のバルブ制御装置を、EGRガス等の排気ガスの流量を制御(調整)する排気ガス流量制御弁の弁体(バルブ)、EGRクーラを通過するEGRガス量とEGRクーラを迂回するEGRガス量との比率を制御(調整)する排気ガス温度制御弁の弁体(バルブ)を駆動する電動アクチュエータを制御するバルブ制御装置に適用しても良い。
【0074】
本実施例では、アクチュエータとして、リンクレバー3を介してウェイストゲートバルブ1に連結するロッド4を、電動モータMの駆動力を利用して軸線方向(ストローク方向)に往復移動させることでウェイストゲートバルブ1を駆動する電動アクチュエータを用いているが、アクチュエータとして、レバーを介してバルブに連結するロッドを、電磁力または流体圧力を利用して軸線方向(ストローク方向)に往復移動させることでバルブを駆動する電磁アクチュエータまたは流体圧アクチュエータを用いても良い。
なお、ウェイストゲートバルブ1の他に、流路を流れる流体を制御する流体制御弁の弁体(バルブ)を開閉制御するバルブ制御装置としても使用できる。
また、エンジンとして、ディーゼルエンジンだけでなく、ガソリンエンジンを用いても良い。
【符号の説明】
【0075】
A リンクレバーの回転作動線上の全閉点
B リンクレバーの回転作動線上の全開点
C リンクレバーの回転作動線上の中間開度点
M 電動モータ(動力源)
P リンクレバーの回転作動線上の振れ幅の端点
S ストロークセンサ(ロッドストローク検出手段、ホールIC)
1 ウェイストゲートバルブ(流量制御弁の弁体)
2 ウェイストゲートバルブのシャフト
3 リンク機構のリンクレバー
4 電動アクチュエータのロッド
5 スラスト軸受(ロッド軸受)
6 コイルスプリング(ロッド(バルブ)付勢手段)
7 タービンハウジング
8 磁性移動体(ロッドストローク検出手段)
9 ウェイストゲート流路
10 バルブシート(弁座)
11 第1ヒンジピン(第1結合部)
12 第2ヒンジピン(第2結合部)
16 減速機構のピニオンギヤ
17 減速機構の中間ギヤ(第1ギヤ)
18 減速機構の最終ギヤ(第2ギヤ)
21 変換機構のプレートカム
22 プレートカムのカム溝
23 変換機構のフォロワ
24 変換機構のピボットピン(ロッドの支軸)
51 磁石(第1マグネット)
52 磁石(第2マグネット)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)流路を開閉するバルブと、
(b)このバルブを駆動するロッドを有し、このロッドをその軸線方向に往復移動させるアクチュエータと、
(c)前記バルブと前記ロッドとを連結するレバーを有し、前記ロッドの直線運動を前記バルブの回転運動に変換するリンク機構と、
(d)前記ロッドの軸線方向への移動量を検出するストローク検出手段と
を備え、
前記ロッドの軸線方向への移動量に応じて前記バルブの開閉制御を行うバルブ制御装置において、
前記レバーは、前記バルブの回転中心軸と同一軸心上に回転軸(回転中心)を有し、且つ前記ロッドと結合すると共に、前記バルブが回転動作する際、前記レバーの回転軸を中心にした所定の曲率半径の曲線である前記レバーの回転作動線上を移動する結合部を有し、
前記バルブが全閉開度となる前記レバーの回転作動線上の回転作動点を、前記レバーの回転作動線上の全閉点として設定し、
前記バルブが全開開度となる前記レバーの回転作動線上の回転作動点を、前記レバーの回転作動線上の全開点として設定し、
前記バルブが全閉開度と全開開度との中間の開度となる前記レバーの回転作動線上の回転作動点を、前記レバーの回転作動線上の中間開度点として設定し、
前記全閉点と前記全開点とを結ぶ直線から半径方向の外側に向けて最も遠く、しかも前記全閉点と前記全開点との間にある前記レバーの回転作動線上の回転作動点を、前記レバーの回転作動線上の振れ幅の端点として設定したとき、
前記バルブが開閉動作する際、前記レバーの回転作動線上の振れ幅の端点が、前記全閉点と前記中間開度点との間に位置するように設定されていることを特徴とするバルブ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のバルブ制御装置において、
前記バルブとは、内燃機関より流出する排気ガスを制御する排気ガス制御弁の弁体のことであることを特徴とするバルブ制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のバルブ制御装置において、
前記アクチュエータは、前記ロッドの軸振れを許容しつつ、前記ロッドをその軸線方向(ロッド軸方向)に摺動自在に支持するロッド軸受を有していることを特徴とするバルブ制御装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載のバルブ制御装置において、
前記レバーの回転作動線とは、前記レバーの回転作動線上の全閉点と前記レバーの回転作動線上の全開点とを、前記バルブの回転中心軸または前記レバーの回転軸を中心にした所定の曲率半径の曲線で結んだ円弧軌跡のことであることを特徴とするバルブ制御装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1つに記載のバルブ制御装置において、
前記レバーの回転作動線上の振れ幅の端点が、前記全閉点と前記中間開度点との中央に位置するように設定されていることを特徴とするバルブ制御装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のうちのいずれか1つに記載のバルブ制御装置において、
前記アクチュエータは、動力源であるモータの回転を減速する減速機構と、この減速機構の回転運動を前記ロッドの直線運動に変換する変換機構とを備えたことを特徴とするバルブ制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載のバルブ制御装置において、
前記減速機構は、前記モータによって回転駆動される駆動ギヤ、およびこの駆動ギヤと噛み合って回転する最終ギヤを有していることを特徴とするバルブ制御装置。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載のバルブ制御装置において、
前記変換機構は、前記バルブの動作パターンに対応した形状のカム溝を有し、前記減速機構(最終ギヤ)の回転に伴って回転するカムと、前記カム溝に移動自在に挿入されるフォロワとを備え、
前記ロッドは、前記フォロワを回転自在に支持する支軸を有し、一端側が前記フォロワおよび前記支軸を介して前記カムに連結し、他端側が前記バルブに連結することを特徴とするバルブ制御装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のうちのいずれか1つに記載のバルブ制御装置において、
前記ストローク検出手段は、前記ロッドに一体的に設置されて、一定の磁束密度の磁界を発生する磁石を含む磁性移動体、およびこの磁性移動体のストローク方向への移動に伴って変化する磁束に対応した電気信号を出力するセンサを有していることを特徴とするバルブ制御装置。
【請求項10】
請求項9に記載のバルブ制御装置において、
前記ストローク検出手段は、前記センサから出力された電気信号に基づいて、前記ロッドのストローク量を検出することを特徴とするバルブ制御装置。
【請求項11】
請求項9または請求項10に記載のバルブ制御装置において、
前記センサは、前記磁性移動体から印加される磁界の磁束を感磁する感磁面を有していることを特徴とするバルブ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−13180(P2012−13180A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151833(P2010−151833)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】