説明

パイプ等の耐熱性クランプ装置

【課題】 ヒーターパイプ等の高温の長尺部材を断熱材を必要とせずに直接保持できるプラスチック製のクランプ装置を提供する。
【解決手段】 ヒーターパイプ等をアンダーフロア等の被取付部材に連結するクランプ装置1は、被取付部材に取付け可能な第1クランプ2と、長尺部材を保持する第2クランプと3から構成され、第1クランプ2は、第2クランプ3を受入れて包持するクランプホルダー部11とクランプホルダー部11にヒンジ連結されて第2クランプ3を包持する第1カバー14とを包含し、第2クランプ3は、長尺部材を受入れて包持するパイプホルダー部27とパイプホルダー部にヒンジ連結されて長尺部材を包囲する第2カバー30とを包含し、第1クランプは非耐熱性硬質プラスチック材料で形成され、第2クランプは高温の長尺部材を保持できる耐熱性硬質プラスチック材料で形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒーターパイプ等の高温の長尺部材を自動車のアンダーフロア等の被取付部材に連結できる、耐熱性クランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒーターパイプ等の高い温度に熱せられる長尺部材を自動車のアンダーフロア等の被取付部材に連結するには、金属製のクランプを用いていたが、ボルトナットによる取付け作業は工数が多くなり、また、金属クランプは自動車の重量を増加するので、現在ではプラスチック製クランプに代わってきている。プラスチック製クランプの場合、パイプから伝わる高熱を遮断するためインシュレータと呼ばれる断熱材をパイプに巻きつけてからアンダーフロア等の被取付部材に取付けられたクランプに固定している。
【0003】
【特許文献1】実開昭62−118759号公報
【特許文献2】特開平10−160047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、金属製クランプは、作業工数が多く、また、車体重量を増すので望ましくない。また、プラスチック製クランプの場合にも断熱材をクランプの取付個所に巻き付けることを必要とするので改良の余地がある。ヒーターパイプ等の高熱を有する長尺部材を、断熱材の巻き付けを必要とせずにアンダーフロア等の被取付部材に固定できる、プラスチック製クランプであるのが望ましい。
【0005】
特許文献1(実開昭62−118759号公報)は、自動車のパイプを保持するパイプクランプを開示している。このパイプクランプは、熱変形等に起因して係合部分が外れるのを防止するため、ラバーマウントに保持した複数のパイプをラバーマウントと一緒に保持したクランプのカバーの上に、もう1つのパイプをカバーが開かないように保持する構造を有する。パイプを保持するラバーマウントはパイプとクランプ本体との間の防振を成すものであり、カバーを閉じたときラバーマウントを圧縮してカバーへの応力を増してカバーの係合が外れにくくする作用もある。特許文献1には、ヒーターパイプ等の高い温度に熱せられる長尺部材を直接保持する構成は示されていない。特許文献2(特開平10−160047号公報)は、被取付部材が高温であり振動する場合に、ワイヤハーネスをその被取付部材に固定するクランプ装置を開示している。特許文献2のクランプ装置は、剛性体で成る、半環状の2つのクランプ部材で構成されて、ワイヤハーネスには耐熱性の防振ゴムである緩衝材を巻き付けて、その外周面の半周を第1のクランプ部材で、他の半周を第2クランプ部材で保持して、両クランプ部材を連結して被取付部材に固定する。この特許文献2のクランプ装置は、ワイヤハーネスへの断熱材の巻き付けを必要としている。特許文献2にも、ヒーターパイプ等の高い温度に熱せられる長尺部材を直接保持する構成は示されていない。
【0006】
本発明の目的は、ヒーターパイプ等の高温の長尺部材を、断熱材を必要とせずに直接保持できる、プラスチック製のクランプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明による、パイプ等の長尺部材を車体等の被取付部材に連結するクランプ装置は、被取付部材に取付け可能な第1クランプと、長尺部材を保持する第2クランプとから構成され、第1クランプは、第2クランプを受入れて包持するクランプホルダー部とクランプホルダー部にヒンジ連結されてクランプホルダー部に受入れられた第2クランプを包持する第1カバーとを包含し、第2クランプは、長尺部材を受入れて包持するパイプホルダー部とパイプホルダー部にヒンジ連結されてパイプホルダー部に受入れられた長尺部材を包囲する第2カバーとを包含し、第1クランプは非耐熱性硬質プラスチック材料で形成され、第2クランプは高温の長尺部材を保持できる耐熱性硬質プラスチック材料で形成されていることを特徴とする。
【0008】
上記構成によって、パイプ等の長尺部材は、耐熱性硬質プラスチック材料の第2クランプによって直接保持できるので、ヒーターパイプ等の高温の長尺部材に断熱材を巻き付けることが不要になり、また、第1クランプは、非耐熱性の安価な硬質プラスチック材料で形成できるので、クランプ装置の価格を低くでき、また、強度の高い硬質プラスチック材料の選択の範囲が広がる。そして、ヒーターパイプ等の長尺部材に、予め、所定の個所に第2クランプを保持させて更に第2クランプを保持するように第1クランプを取付けておき、クランプ装置が予め取付けられた長尺部材を、自動車の組付けラインに搬送することによって、組付けラインでの作業工数を低減できる。
【0009】
上記パイプクランプ装置において、第2クランプの外周面は防振性の弾性プラスチック材料の被覆層で覆われて成り、第1クランプは被覆層を介して第2クランプを包持する構成であるのが好ましい。これにより、長尺部材と被取付部材との間の振動の伝達を防止することができ、また、第1クランプが第2クランプを保持するとき弾性材料を圧縮してその反力によって高い保持力を得ることができる。その被覆層は、第2クランプを防振性軟質プラスチック材料にインサート成形することによって形成することができる。また、第1カバーは、クランプホルダー部に第2クランプを包持した状態にロックできる構成であり、第2カバーはパイプホルダー部に長尺部材を保持した状態にロックできる構成であるのが好ましく、これによって、固定強度を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1及び図2に示すように、本発明に係るパイプ等のクランプ装置1は、第1クランプ2と第2クランプ3との2部品から構成され、第1クランプ2も第2クランプ3もプラスチックの一体成形品で成る。第1クランプ2は、非耐熱性の硬質プラスチック材料で形成され、強度の高い、安価な硬質プラスチック材料(例えば、POM=ポリオキシメチレン)で形成できる。また、第2クランプ3は、ヒーターパイプ等の高温の長尺部材を保持できる耐熱性の硬質プラスチック材料(例えば、PP=ポリプロピレン)で形成されている。第1クランプ2は、自動車のアンダーフロア等の被取付部材に、錨脚形状の係止部5によって固定され、第2クランプ3を保持する。第2クランプ3は、ヒーターパイプ等の高温に加熱される長尺部材を保持して、第1クランプ2によって保持される。1例が図2に示されており、第1クランプ2は、自動車のアンダーフロア6等の被取付部材に、係止脚5が取付穴7に挿入されて取付けられている。第2クランプ3には、ヒーターパイプ9等の長尺部材が保持されている。第2クランプ3は、第1クランプ2の中に保持されている。以下、第1クランプ2の詳細について図3〜図6を参照して説明し、第2クランプ3の詳細について図7及び図8を参照して説明する。
【0011】
図3〜図6において、第1クランプ2は、第2クランプ3を受入れる凹部10を形成して受入れた第2クランプ3を包持するクランプホルダー部11と、ヒンジ13で連結されてクランプホルダー部11に受入れた第2クランプ3を包持する第1カバー14とを有する。クランプホルダー部11には、アンダーフロア6等の被取付部材に取付けるのを可能にするため、例えば、錨脚形状の係止部5が設けられている。この係止部5は、他の固定手段であってもよく、被取付部材に設けられたスタッドボルトに係止するものでもよく、スタッドボルトを受入れる穴であってもよい。
【0012】
クランプホルダー部11の凹部10は、第2クランプ3を受入れて且つ第2クランプ3がその中でパイプを横切る方向にもパイプの長手方向にも移動できないようにする大きさに形成される。受入れた第2クランプ3が横方向に移動しないように規制する側壁15及び17がクランプホルダー部11の一部を形成している。クランプホルダー部11のパイプ長手方向の両端には端壁18が形成され、第2クランプ3の長手方向の移動を阻止している。第1カバー14には、先端にロック爪19が設けられ、クランプホルダー部11の側壁17に形成されたロック穴21に挿入されてロックするようになっている。第1カバー14は、クランプホルダー部11の凹部10に収容された第2クランプ3を包持するように閉じてロックされる。第1カバー14には、閉じたとき、包持した第2クランプ3がパイプ長手方向へ移動するのを規制するため、凹部10の側に延び出る壁部22が設けられるのが好ましい。また、ヒンジ13は薄肉片で形成されているので、閉じたときにその破損によってヒンジ連結が損なわれる虞れがある。これを防止するため、ヒンジ13に隣接する部分に、係止突起23と係止凹部25が設けられ、第1カバー14が閉じた後は、係止突起23が係止凹部25に挿入されて係止し、ロックする構成にされている。
【0013】
図7及び図8を参照して、第2クランプ3の構成を説明する。第2クランプ3は、高温のヒーターパイプ9を受入れて包持する2つの凹部26を形成したパイプホルダー部27と、パイプホルダー部27にヒンジ29で連結されて凹部26に受入れたパイプを包持する第2カバー30とを包含する。第2クランプ3の大きさは、第1クランプ2のクランプホルダー11に受入れられる大きさである。凹部26の形状は、パイプを受入れて包持するのに適した形状に形成される。代表的には、図示のように、半円形状に形成される。第2カバー30には、閉じたとき、凹部26に受入れたパイプを押圧保持する突起31が、凹部26に受入れられたパイプに対応する位置に形成されている。なお、実施形態では、第2カバー30にはロック機構は設けられていないが、ロック機構を設けてもよい。これによって、保持したヒーターパイプ9の固定強度を向上できる。
【0014】
かかる構成で成る第1クランプ2と第2クランプ3は、図1に示されるように、第1クランプ2のクランプホルダー部11の凹部10に第2クランプ3が収容された状態で、クランプ装置1として用いられる。クランプ装置1は、ヒーターパイプ9の所定個所(多くの場合、複数の所定の個所のそれぞれ)に予め取付けられた状態で、自動車の組付けラインに納品される。これによって、組付けラインではクランプ装置1をヒーターパイプに取付ける作業がなくなり、組付け作業の工数を減らすことができる。クランプ装置1をヒーターパイプ9の所定個所に取付けるには、第2クランプ3のパイプホルダー部27の凹部26に、ヒーターパイプ9の所定個所の部分を収容する。第1カバー14をヒンジ13回りに旋回させることによって、第2カバー30をヒンジ29回りに旋回させて、第2クランプ3にヒーターパイプ9を包持し、また、第2クランプ3を第1クランプ2の中に包持する。第1カバー14のロック爪19がロック穴21に挿入されると、第1カバー14と第2カバー30とが閉じた状態にロックされる。第1カバー14の旋回のとき、係止突起23が係止凹部25の中に入るのでヒンジ13が破断してもロック状態が維持される。クランプ装置1がヒーターパイプ9の所定個所に取付けられる。クランプ装置1がヒーターパイプ9の複数の所定個所に取付けられた状態で、ヒーターパイプ9が自動車の組付けラインに搬送される。組付けラインにおいて、アンダーフロア6の所定個所に形成された取付穴7に第1クランプ2の係止部5が挿入されると、ヒーターパイプ9が自動車のアンダーフロアの所定個所に取付けられる。従って、取付け作業は短時間で容易にできる。
【0015】
なお、第2クランプ3の外周面を防振性の弾性プラスチック材料の被覆層で覆い、第1クランプ2は被覆層を介して第2クランプ3を包持する構成であるのが好ましい。これによって、ヒーターパイプ等の長尺部材とアンダーフロア等の被取付部材との間の振動の伝達を防止することができる。また、第1クランプが第2クランプを保持するとき弾性材料を圧縮してその反力によって高い保持力を得ることができる。その被覆層が第2クランプに接着しにくい場合には、その被覆層は、第2クランプを防振性軟質プラスチック材料にインサート成形することによって形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る、クランプ装置の正面図である。
【図2】図1のクランプ装置を用いてヒーターパイプを自動車のアンダーフロアに取付けた様子を示す正面図である。
【図3】図1のクランプ装置の第1クランプの平面図である。
【図4】図3の第1クランプの正面図である。
【図5】図4の第1クランプの左側面図である。
【図6】図4の第1クランプの右側面図である。
【図7】図1のクランプ装置の第2クランプの正面図である。
【図8】図7の第2クランプの右側面図である。
【符号の説明】
【0017】
1 クランプ装置
2 第1クランプ
3 第2クランプ
5 係止部
6 アンダーフロア
7 取付穴
9 ヒーターパイプ
10 凹部
11 クランプホルダー部
13 ヒンジ
14 第1カバー
15 側壁
17 側壁
18 端壁
19 ロック爪
21 ロック穴
22 壁部
23 係止突起
25 係止凹部
26 凹部
27 パイプホルダー部
29 ヒンジ
30 第2カバー
31 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプ等の長尺部材を車体等の被取付部材に連結するクランプ装置であって、
被取付部材に取付け可能な第1クランプと、長尺部材を保持する第2クランプとから構成され、前記第1クランプは、前記第2クランプを受入れて包持するクランプホルダー部と該クランプホルダー部にヒンジ連結されて該クランプホルダー部に受入れられた第2クランプを包持する第1カバーとを包含し、前記第2クランプは、長尺部材を受入れて包持するパイプホルダー部と該パイプホルダー部にヒンジ連結されて該パイプホルダー部に受入れられた長尺部材を包囲する第2カバーとを包含し、前記第1クランプは非耐熱性硬質プラスチック材料で形成され、前記第2クランプは高温の長尺部材を保持できる耐熱性硬質プラスチック材料で形成されている、ことを特徴とするクランプ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のクランプ装置において、前記第2クランプの外周面は防振性の弾性プラスチック材料の被覆層で覆われて成り、前記第1クランプは前記被覆層を介して第2クランプを包持することを特徴とするクランプ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のクランプ装置において、前記第2クランプが前記防振性の弾性プラスチック材料にインサート成形されて第2クランプ外周面に前記被覆層が形成されることを特徴とするクランプ装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のクランプ装置において、前記第1カバーは前記クランプホルダー部に前記第2クランプを包持した状態にロックできる構成であり、前記第2カバーは前記パイプホルダー部に長尺部材を保持した状態にロックできる構成であることを特徴とするクランプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−9992(P2006−9992A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−189652(P2004−189652)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(390025243)ポップリベット・ファスナー株式会社 (159)
【Fターム(参考)】