説明

パターン形成方法、パターン形成体

【課題】複数の段差を備えた微細な3次元構造パターンの形成に好適なパターン形成方法及びパターン形成体を提供する。
【解決手段】基板上に第1層目のハードマスク層を形成し、基板上の第1層目のハードマスク層を備えた面に、順に、第2層目から第N層目までのハードマスク層を形成し、第N層目のハードマスク層のパターニング処理し、順に、第(N−1)層目から第1層目までのハードマスク層のパターニング処理し、パターニングされた第1層目から第N層目までのハードマスク層をエッチングマスクとして基板に第1段目の異方性エッチングしてパターニング処理することを特徴とするパターン形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な3次元構造パターンの形成方法、ならびに該パターン形成方法を用いて製造されたパターン形成体に関する。
【背景技術】
【0002】
基材に特定の微細な3次元構造パターンを形成した構造物は、広範に用いられている。微細な3次元構造パターンを形成した構造物としては、例えば、半導体デバイス、光学素子、配線回路、記録デバイス、医療検査用チップ、ディスプレイパネル、マイクロ流路などが挙げられる。
【0003】
近年、より微細なパターンや、より段数の多い構造に対する要求が増加している。例えば、半導体分野において、特定の微細な3次元構造パターンを形成したデュアルダマシン構造が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1では、デュアルダマシン構造の形成方法として、インプリント技術を用いる方法が開示されている。インプリント法においては、モールドに形成された3次元構造パターンを転写することが可能であるので、多段構造のパターンを転写することも可能である。これにより、必要な工程数を削減できるということから、多段構造のインプリントモールドに対する要望が高まっている(特許文献1参照)。
【0005】
また、微細な3次元構造パターンを転写するためのインプリントモールドの製造には、微細な3次元構造パターンの形成方法を用いることが知られている。
【0006】
また、特定の微細な3次元構造パターン(例えば、多段の階段状構造など)を製造する方法として、荷電粒子線リソグラフィを用いて階段状構造を形成する方法が知られている。
【0007】
また、リソグラフィ法では、露光後の現像処理において、描画したレジストパターンが倒壊することが知られている。レジストパターンの倒壊は、パターンが高アスペクト比であるほど起こりやすいことが知られている。
【0008】
例えば、特許文献2では、レジスト表層に架橋を形成することにより、レジストパターンの倒壊を抑制する方法が開示されている(特許文献2参照)。
【0009】
また、微細な3次元構造パターンの形成では、3次元パターンに応じて複数回のレジストのパターニングを行うことが知られている。
【0010】
このとき、図6に示すように、1段のパターンが形成された基板28には、ハードマスクパターン27を含む全面にレジスト膜24’を平坦にコートできなくなってしまう。平坦でないレジスト膜24’にパターニングを行うと、レジストパターンの位置精度が低下するため、所望するレジストパターンを形成することは困難である。また、図7(a)に示すように、レジスト膜24’が平坦になるようにレジスト膜24’を厚くした場合には、形成したレジストパターンのアスペクト比が高くなるため、図7(b)に示すように、レジストパターン34の倒壊が発生し、所望するレジストパターンを得ることが困難である。
【0011】
また、一般にレジスト膜は絶縁物であるために、電子線による描画を行う際には、負電荷を持つ電子線によってレジスト膜表面に負電荷が誘起され、その負電荷が放電できないと、レジスト膜表面に負電荷が蓄積され、その蓄積された負電荷によって電子線がレジスト膜表面近くで曲げられてしまい、描画の位置ずれが生じてしまうという問題があるため、導電性を持たない基板上にレジスト膜のパターニングを行うことは困難である。
【0012】
導電性のハードマスク層をエッチングマスクとして絶縁性の基板に異方性エッチングを行うことにより、絶縁性の基板に段差を形成すると、段差の凹部にはハードマスク層が存在しないため、段差を備えた基板上に新たにレジストのパターニングを行う工程において、負電荷の蓄積による描画の位置ずれが問題となる。
【0013】
以下、従来の典型的な多段構造のパターン形成方法の一例を図4(a)〜(i)を参照して説明する。まず、図4(a)に示すように、ハードマスク層22を備えた基板21に、レジストをコートし第1のレジスト膜24を形成する。次に、図4(b)に示すように、第1のレジスト膜24のパターニングを行い、第1のレジストパターン25を形成する。次に、図4(c)に示すように、第1のレジストパターン25をマスクとしてハードマスク層22をエッチングし、第1のハードマスクパターン27を形成する。次に、図4(d)に示すように、ハードマスクパターン27をマスクとして基板21をエッチング、洗浄し、1段のパターンが形成された基板28が作製される。次に、図4(e)に示すように、1段のパターンが形成された基板28に再度レジストをコートし第2のレジスト膜24’を形成する。次に、図4(f)に示すように、第2のレジスト膜24’のパターニングを行い、第2のレジストパターン25’を形成する。次に、図4(g)に示すように、第2のレジストパターン25’をマスクとして第2のハードマスクパターン27をエッチングして、第2のハードマスクパターン27’を形成する。次に、図4(h)に示すように、エッチングされた第2のハードマスクパターン27’をマスクとして基板28をエッチングする。次に、図4(i)に示すように、基板29を洗浄し、2段のパターンが形成された基板29が作製される。
【0014】
従来の典型的な多段構造のパターン形成方法では、第2のレジストパターニングにおいて、基板が既に段差を備えているため、レジスト膜を平坦にコートすることができず、所望するレジストパターンを得ることが困難であり、微細な3次元構造パターンの形成に不適である。
【0015】
また、第N番目に形成するレジストパターンは第(N−1)番目に形成したパターンよりも小さいため、多段構造の段差が多くなるほど微細なレジストパターンを形成しなければならず、所望するレジストパターンを得ることが困難であり、微細な3次元構造パターンの形成に不適である。
【0016】
また、第1段目のパターンが形成された基板上の段差の凹部にはハードマスク層が存在しない(図6参照)。そのため、第2のレジストパターニングを行う工程において、電子線によってレジストに誘起された負電荷が放電されず、レジスト膜表面に負電荷が蓄積され、その負電荷によって電子線がレジスト膜表面近くで曲げられ、描画の位置ずれが生じるため、微細な3次元構造パターンの形成に不適である。
【0017】
例えば、特許文献3では、レジストパターン倒れの発生を抑制するために、基板に形成したハードマスク層に段差を形成する方法が開示されている(特許文献3参照)。
【0018】
以下、段差を備えたハードマスク層を用いた多段構造のパターン形成方法の一例を図5(a)〜(k)を参照して説明する。まず、図5(a)に示すように、ハードマスク層22を備えた基板21に、レジストをコートし第1のレジスト膜24を形成する。次に、図5(b)に示すように、第1のレジスト膜24のパターニングを行い、第1のレジストパターン25を形成する。次に、図5(c)に示すように、第1のレジストパターン25をマスクとしてハードマスク層22をエッチングし、ハードマスクパターン27を形成する。次に、図5(d)に示すように、第1のレジストパターン25を洗浄し、剥離する。次に、図5(e)に示すように、ハードマスクパターン27が形成された基板21に再度レジストをコートし第2のレジスト膜24’を形成する。次に、図5(f)に示すように、第2のレジスト膜24’のパターニングを行い、第2のレジストパターン25’を形成する。次に、図5(g)に示すように、レジストパターン25’をマスクとしてハードマスクパターン27をエッチングし、段差を備えたハードマスクパターン37を形成する。次に、図5(h)に示すように、段差を備えたハードマスクパターン37をマスクとして、基板21をエッチング、洗浄し、1段のパターンが形成された基板28が作製される。次に、図5(i)に示すように、ハードマスクパターン37をエッチングし、ハードマスクパターン37’を形成する。次に、図5(j)に示すように、エッチングしたハードマスクパターン37’をマスクとして1段のパターンが形成された基板28をエッチングする。次に、図5(k)に示すように、ハードマスクパターン37’を洗浄し、2段のパターンが形成された基板29が作製される。
【0019】
段差を備えたハードマスク層を用いた多段構造のパターン形成方法では、第2のレジストパターニングを行う工程において、導電性のハードマスク層が基板上の一部分にしか存在しないため、電子線によってレジストに誘起された負電荷が放電されず、レジスト膜表面に負電荷が蓄積され、その負電荷によって電子線がレジスト膜表面近くで曲げられ、描画の位置ずれが生じるため、微細な3次元構造パターンの形成に不適である。
【0020】
また、ドライエッチングを行うことによりハードマスク層に段差を形成すると、パターンの肩部分のほうが平坦部よりも速くハードマスク層のエッチングが進行するため、ハードマスク層に形成する段差の断面形状が図8(a)に示すような矩形にはならず、図8(b)に示すようになだらかになり、基板に寸法精度良く段差を形成することは困難であるため、微細な3次元構造パターンの形成に不適である。
【0021】
また、第N番目に形成するレジストパターンは第(N−1)番目に形成したパターンよりも小さいため、多段構造の段差が多くなるほど微細なレジストパターンを形成しなければならず、所望するレジストパターンを得ることが困難であり、微細な3次元構造パターンの形成に不適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特表2007−521645号公報
【特許文献2】特開2004−085792号公報
【特許文献3】特開2009−111241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明は、複数の段差を備えた微細な3次元構造パターンの形成に好適なパターン形成方法及びパターン形成体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の請求項1に係る発明は、基板上に第1層目のハードマスク層を形成し、基板上の第1層目のハードマスク層を備えた面に、順に、第2層目から第N層目までのハードマスク層を形成し、第N層目のハードマスク層のパターニング処理し、順に、第(N−1)層目から第1層目までのハードマスク層のパターニング処理し、パターニングされた第1層目から第N層目までのハードマスク層をエッチングマスクとして基板に第1段目の異方性エッチングしてパターニング処理することを特徴とするパターン形成方法としたものである。
【0025】
本発明の請求項2に係る発明は、第(N−1)層目のハードマスク層に形成するパターンの線幅は第N層目のハードマスク層に形成するパターンの線幅よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のパターン形成方法としたものである。
【0026】
本発明の請求項3に係る発明は、基板の第1段目のパターンが形成された側に、順に、第2段目から第N段目までのパターニング処理する工程と、を備え、第N段目のパターンの線幅は第(N−1)段目のパターンの線幅よりも小さいことを特徴とする請求項1または2に記載のパターン形成方法としたものである。
【0027】
本発明の請求項4に係る発明は、基板は、石英基板であり、第1層目のハードマスク層は、シリコンからなる層であり、第2層目のハードマスク層は、クロムからなる層であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のパターン形成方法としたものである。
【0028】
本発明の請求項5に係る発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のパターン形成方法を用いて形成されたことを特徴とするパターン形成体としたものである。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、複数の段差を備えた微細な3次元構造パターンの形成に好適なパターン形成方法及びパターン形成体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施例に係るパターン形成方法の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るパターン形成方法における効果を示す概略断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るパターン形成方法における効果を示す概略断面図である。
【図4】従来のパターン形成方法の一例を示す概略断面図である。
【図5】従来のパターン形成方法の一例を示す概略断面図である。
【図6】従来のパターン形成方法における問題点を示す概略断面図である。
【図7】従来のパターン形成方法における問題点を示す概略断面図である。
【図8】従来のパターン形成方法における問題点を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明を行う。
【0032】
<基板11に第1層目及び第2層目のハードマスク層を形成する工程(A)>
まず、基板11上に第1層目のハードマスク層12を形成する。第1層目のハードマスク層12の形成方法としては、第1層目のハードマスク層12に選択した材料に応じて、適宜公知の薄膜形成技術を用いて形成して良い。例えば、スパッタリング法などを用いて良い。
【0033】
基板11は、用途に応じて適宜選択して良い。基板11としては、例えば、シリコン基板、石英基板、サファイア基板、SOI基板などを好適に用いて良い。
【0034】
第1層目のハードマスク層12は、選択した基板11に対して、後述する基板11に異方性エッチングを行う工程におけるエッチング選択比が高く、導電性の材料であれば良い。
【0035】
次に、基板11の第1層目のハードマスク層12を形成した面に、第2層目のハードマスク層13を形成する。第2層目のハードマスク層の形成方法としては、第2層目のハードマスク層13に選択した材料に応じて、適宜公知の薄膜形成技術を用いて形成して良い。例えば、スパッタリング法などを用いて良い。
【0036】
第2層目のハードマスク層13は、選択した第1層目のハードマスク層12に対して、後述する第2層目のハードマスク層のパターニングを行う工程(B)においてエッチング選択比が高く、導電性の材料であれば良い。
【0037】
ここで、例えば、基板11として石英基板を用いた場合、第1層目のハードマスク層12は、Si(シリコン)からなる層、第2層目のハードマスク層13は、Cr(クロム)からなる層を用いることが好ましい。石英基板は、一般的な露光光に対して透過性を有しており、特に、光インプリント法に用いるインプリントモールドや、フォトマスクなどの製造工程に、本発明の実施の形態のパターン形成方法を用いる場合に好適である。
【0038】
第1層目のハードマスク層12にはシリコンからなる層を用いることで、後述する第1層目のハードマスク層のパターニングを行う工程(C)におけるレジスト膜14’を用いたリソグラフィにおいて、電子線による負電荷の蓄積を防ぐことができ、後述する第1層目のハードマスク層のパターニングを行う工程(C)において、一般的なエッチング条件において、第1層目のハードマスク層12を基板11に対してエッチング選択比を高く設定することができる。
【0039】
また、第2層目のハードマスク層13にはクロムからなる層を用いることで、後述する第2層目のハードマスク層のパターニングを行う工程(B)におけるレジスト膜14を用いたリソグラフィにおいて、電子線による負電荷の蓄積を防ぐことができ、後述する第2層目のハードマスク層のパターニングを行う工程(B)において、一般的なエッチング条件において、第2層目のハードマスク層13を第1層目のハードマスク層12に対してエッチング選択比を高く設定することができる。
【0040】
<第2層目のハードマスク層のパターニングを行う工程(B)>
次に、第2層目のハードマスク層13のパターニングを行う。第2層目のハードマスク層13のパターニングを行う方法としては、第1のレジスト膜14を用いたリソグラフィを用いる。例えば、第2層目のハードマスク層13のパターニングは、第2層目のハードマスク層13上に第1のレジスト膜14を形成する。次に、第1のレジスト膜14をパターニングし、第1のレジスト膜パターン15を形成する。次に、第1のレジスト膜パターン15をマスクとしてエッチングを行うことにより、第2層目のハードマスク層13のパターニングを行い、第2層目のハードマスク層13のパターンを形成する。第2層目のハードマスク層13のパターニングを行った後は、レジストパターン15を洗浄して剥離する。
【0041】
<第1層目のハードマスク層のパターニングを行う工程(C)>
次に、第1層目のハードマスク層12のパターニングを行う。第1層目のハードマスク層12のパターニングを行う方法としては、第2のレジスト膜14’を用いたリソグラフィ法を用いる。例えば、第1層目のハードマスク層12のパターニングは、第2層目のハードマスク層13のパターン16を含む基板11上に第2のレジスト膜14’を形成する。次に、第2のレジスト膜14’をパターニングし、第2のレジスト膜パターン15’を形成する。次に、第2のレジスト膜パターン15’をマスクとしてエッチングを行うことにより、第1層目のハードマスク層12のパターニングを行い、第1層目のハードマスク層12のパターンを形成する。第1層目のハードマスク層12のパターニングを行った後は、レジストパターン15’を洗浄して剥離する。
【0042】
ここで、第2のレジスト膜14’のパターニングにおいては、図2に示すように、十分な平坦性をもって第2のレジスト膜14’をコートすることができる。このため、第2のレジスト膜14’を厚くすることなく、第2のレジスト膜14’のパターニングの位置精度を向上させることができ、第2のレジスト膜パターン14’の倒壊を抑制し、所望のパターンを精度良く得ることができる。
【0043】
また、第2のレジスト膜14’のパターニングにおいて、電子線によってレジストに誘起された負電荷が第1層目のハードマスク層12を介して放電される。このため、レジスト膜14’に負電荷が蓄積されず、第2のレジスト膜14’のパターニングにおいて描画の位置ずれを防ぐことができ、精度良く描画を行うことができる。
【0044】
さらに、第2層目のハードマスク層13は、第1層目のハードマスク層12及び基板11に対してエッチング選択比が高く、第1層目のハードマスク層12は基板11に対してエッチング選択比が高い材料であるため、図3に示すように、第1層目のハードマスク12及び第2層目のハードマスク層13のパターンの断面形状を矩形とすることができる。このため、基板11に寸法精度良くパターンを形成することができる。
【0045】
<基板に第1段目の異方性エッチングを行う工程(D)>
次に、基板11上の第1層目のハードマスク層12のパターンが形成された側から、基板11に異方性エッチングを行う。エッチングとしては、適宜公知のエッチング方法を用いて良く、例えば、ドライエッチング、ウェットエッチングなどを用いて行っても良い。また、エッチングの条件は、用いた第1層目のハードマスク層12、第2層目のハードマスク層13及び基板11に応じて、適宜調節して良い。
【0046】
<第1層目のハードマスク層に異方性エッチングを行う工程(E)>
次に、第2層目のハードマスク層13のパターン16をエッチングマスクとして、第1層目のハードマスク層12のパターン17の異方性エッチングを行う。エッチングとしては、適宜公知のエッチング方法を用いて良く、例えば、ドライエッチング、ウェットエッチングなどを行っても良い。また、エッチングの条件は、用いた第1層目のハードマスク層12、第2層目のハードマスク層13及び基板11に応じて、適宜調節して良い。
【0047】
<基板に第2段目の異方性エッチングを行う工程(F)>
次に、基板11上の第1層目のハードマスク層12のパターンが形成された側から、1段のパターンが形成された基板18に異方性エッチングを行う。エッチングとしては、適宜公知のエッチング方法を用いて良く、例えば、ドライエッチング、ウェットエッチングなどを用いて行っても良い。また、エッチングの条件は、用いた第1層目のハードマスク層12、第2層目のハードマスク層13及び基板11に応じて、適宜調節して良い。
【0048】
また、上記工程(A)において3層以上のN層のハードマスク層を形成し、上記工程(B)及び(C)において第N層目から第1層目までのハードマスク層のエッチングを行い、上記工程(D)〜工程(F)を繰り返すことにより、基板に形成する3次元構造パターンを2段のみならず3段以上の多段(N段)の構造パターンとすることができる。
【0049】
上記工程(A)〜工程(E)の後、第1層目のハードマスク層12のパターン17及び第2層目のハードマスク層13のパターン16のウエット剥離洗浄を行うことにより寸法精度の高いインプリントモールドが作製される。
【0050】
また、上記工程(A)〜工程(E)により作製されたパターン形成体から、寸法精度の高いフォトマスクを作製できる。
【0051】
また、本発明によれば、多段構造パターンのなかで最も微細なパターンから順にレジストパターニングを行うことができる。このため、複数の段差を備えた微細な3次元構造パターンの形成を好適に行うことができる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明の実施例のパターン形成方法について、図1(a)〜(l)を参照して、光インプリントモールドを作製する場合の一例を挙げながら説明を行う。本発明の実施例のパターン形成方法は、下記実施例に限定されるものではない。
【0053】
まず、図1(a)に示すように、基板11には、石英基板を用いた。石英基板11上に第1層目のハードマスク層12としてSi膜30nm厚を製膜したSi層、第2層目のハードマスク層13としてCr膜30nm厚を成膜したCr層を形成し、Cr層13上にポジ型レジスト200nm厚をコートし第1のレジスト膜14とした。
【0054】
次に、図1(b)に示すように、電子線描画装置にて、第1のレジスト膜14に対して電子線をドーズ100μC/cmで照射した後、現像液を用いた現像処理、リンス、およびリンス液の乾燥を行い、第1のレジストパターン15を得た。ここで、リンス液には純水を用いた。
【0055】
次に、図1(c)に示すように、ICPドライエッチング装置を用いたドライエッチングによってCr層13のエッチングを行い、Crパターン16を得た。このとき、Cr層13のエッチングの条件は、Cl流量40sccm、O流量10sccm、He流量80sccm、圧力30Pa、ICPパワー300W、RIEパワー30Wとした。
【0056】
次に、図1(d)に示すように、Oプラズマアッシング(条件:O流量500sccm、圧力30Pa、RFパワー1000W)によってレジストパターン15を剥離した。
【0057】
以上より、石英基板11上のSi層12上にCrパターン16を形成することができた。
【0058】
次に、図1(e)に示すように、Si層12とCrパターン16とを備えた石英基板11上にポジ型レジスト200nm厚をコートし、第2のレジスト膜14’とした。第2のレジスト膜14’は、十分な平坦性をもってコートすることができる。このため、第2のレジスト膜14’を厚くすることなく、第2のレジスト膜14’のパターニングの位置精度を向上させることができ、第2のレジスト膜パターン14’の倒壊を抑制し、所望のパターンを精度良く得ることができる。
【0059】
次に、図1(f)に示すように、電子線描画装置にて、第2のレジスト膜14’に対して電子線をドーズ100μC/cmで照射した後、現像液を用いた現像処理、リンス、及びリンス液の乾燥を行い、第2のレジスト膜パターン15’を得た。ここで、リンス液には純水を用いた。第2のレジスト膜14’のパターニングにおいて、電子線によってレジストに誘起された負電荷がSi層12を介して放電される。このため、第2のレジスト膜14’に負電荷が蓄積されず、第2のレジスト膜14’のパターニングにおいて描画の位置ずれを防ぐことができ、精度良く描画を行うことができる。
【0060】
次に、図1(g)に示すように、ICPドライエッチング装置を用いたドライエッチングによってSi層12のエッチングを行い、Siパターン17を得た。このとき、Si層12のエッチングの条件は、CF流量30sccm、C流量20sccm、圧力30Pa、ICPパワー500W、RIEパワー50Wであった。
【0061】
次に、図1(h)に示すように、Oプラズマアッシング(条件:O流量500sccm、圧力30Pa、RFパワー1000W)によってレジストパターン15’を剥離した。
【0062】
以上より、図1(h)に示すように、石英基板11上にSiパターン17を形成することができた。ここで、Crパターン16は、Siパターン17及び基板11に対してエッチング選択比が高く、Siパターン17は基板11に対してエッチング選択比が高い材料であるため、Si層12及びCr層13のパターンの断面形状を矩形とすることができる。このため、基板11に寸法精度良くパターンを形成することができる。
【0063】
次に、図1(i)に示すように、ICPドライエッチング装置を用いたドライエッチングによって石英基板11のエッチングを行った。このとき、石英基板11のエッチングの条件は、C流量10sccm、O流量10sccm〜25sccm、Ar流量75sccm、圧力2Pa、ICPパワー20W、RIEパワー550Wであった。
【0064】
以上より、図1(i)に示すように、石英基板11に第1段目のパターンを形成することができた。
【0065】
次に、図1(j)に示すように、ICPドライエッチング装置を用いたドライエッチングによってSiパターン17のエッチングを行った。このとき、Siパターン17のエッチングの条件は、CF流量30sccm、C流量20sccm、圧力30Pa、ICPパワー500W、RIEパワー50Wであった。
【0066】
次に、図1(k)に示すように、ICPドライエッチング装置を用いたドライエッチングによって1段のパターンが形成された石英基板18のエッチングを行った。このとき、石英基板18のエッチングの条件は、C流量10sccm、O流量10sccm〜25sccm、Ar流量75sccm、圧力2Pa、ICPパワー20W、RIEパワー550Wであった。
【0067】
以上より、図1(k)に示すように、石英基板19に第2段目のパターンを形成することができた。
【0068】
次に、図1(l)に示すように、残存したCr層16のウエット剥離洗浄を行った。次に、ICPドライエッチング装置を用いたドライエッチングによって残存したSiパターン17’を除去した。これにより、2段のパターンが形成された石英基板19を形成することができた。
【0069】
以上より、本発明の実施例におけるパターン形成方法を用いて、寸法精度の高い光インプリント用のインプリントモールドを製造することができた。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明のパターン形成方法は、微細なパターンを形成することが求められる広範な分野に利用することが期待される。例えば、パターン形成体として、インプリントモールド、フォトマスク、半導体デバイス、光学素子、配線回路(デュアルダマシン構造の配線回路など)、記録デバイス(ハードディスクやDVDなど)、医療検査用チップ(DNA分析用途など)、ディスプレイ(拡散板、導光板など)、マイクロ流路など、に利用することが期待される。
【符号の説明】
【0071】
11…基板、12…Si層、13…Cr層、14、14’…レジスト膜、15、15’…レジストパターン、16…Crパターン、17、17’…Siパターン、18…1段のパターンが形成された石英基板、19…2段のパターンが形成された石英基板、21…基板、22…ハードマスク層、24、24’…レジスト膜、25、25’…レジストパターン、27…ハードマスクパターン、28…1段のパターンが形成された基板、29…2段のパターンが形成された基板、34…倒壊したレジストパターン、37、47…段差を備えたハードマスクパターン、27’、37’…エッチングされたハードマスクパターン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に第1層目のハードマスク層を形成し、
前記基板上の前記第1層目のハードマスク層を備えた面に、順に、第2層目から第N層目までのハードマスク層を形成し、
前記第N層目のハードマスク層のパターニング処理し、
順に、第(N−1)層目から前記第1層目までのハードマスク層のパターニング処理し、
前記パターニングされた前記第1層目から前記第N層目までのハードマスク層をエッチングマスクとして前記基板に第1段目の異方性エッチングしてパターニング処理することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
前記第(N−1)層目の前記ハードマスク層に形成するパターンの線幅は前記第N層目のハードマスク層に形成するパターンの線幅よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項3】
前記基板の前記第1段目のパターンが形成された側に、順に、第2段目から第N段目までのパターニング処理する工程と、を備え、
前記第N段目のパターンの線幅は第(N−1)段目のパターンの線幅よりも小さいことを特徴とする請求項1または2に記載のパターン形成方法。
【請求項4】
前記基板は、石英基板であり、
前記第1層目のハードマスク層は、シリコンからなる層であり、
前記第2層目のハードマスク層は、クロムからなる層であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のパターン形成方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のパターン形成方法を用いて形成されたことを特徴とするパターン形成体。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−71383(P2011−71383A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222036(P2009−222036)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】