説明

パッケージされたデバイス、パッケージング方法及びパッケージ材の製造方法

【解決課題】特殊な技術や装置を必要とせず、接合の際に電気的な接続を歩留まりよく確立可能な、パッケージされたデバイス及びパッケージング方法並びにそれに用いられるパッケージ材の製造方法を提供する。
【解決手段】電子回路、MEMSその他のデバイスを搭載したデバイス基板10と、ビア配線21を配設してかつキャビティ22を有するパッケージ材20とを接合して成る。ビア配線21と一体化した接続用バンプ24がキャビティ22内に突出しており、かつデバイスに接続された配線接続用パッド12が接続用バンプ24と対向して接続していることにより、接続用バンプ24を経由してデバイスがビア配線21に配線接続している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)などをパッケージした、いわゆるパッケージドデバイスと、パッケージング方法及びそれに用いるパッケージ材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路、MEMS構造体のパッケージング方法として、例えば、電子回路、MEMSが形成された基板をカバーで覆い封止材を用いてシールする方法や、その基板にガラス基板やLTCC(Low Temperature Co‐fired Ceramics)基板を用いて陽極接合する方法がある。陽極接合の場合について説明すると、電子回路やMEMS構造体は、例えば各種の電子回路やMEMS構造体が形成された第1の基板にガラス基板などの第2の基板を接合して封止されている。具体的には、薄膜作製工程やエッチング工程などの微細加工により半導体基板に各種電子回路又はMEMSを設ける。その後、その半導体基板とガラス基板とを合わせた状態で加熱しながら、マイナスの電圧をガラス基板側に、プラスの電圧を半導体基板にそれぞれ印加するよう電圧を加えると、半導体基板とガラス基板とが共有結合により接合される。
【0003】
本発明者らは、二つの基板を陽極接合する際、同時に電気的な接続を歩留まりよく確立させることを検討してきた。その中で、特許文献1において開示した技術は、貫通配線を有するLTCC基板と電子回路が形成されたSi基板とを陽極接合する前に、LTCC基板の貫通配線とSi基板の各対向面であって電気接続部となる領域に、低融点金属を含んだ多層膜を形成しておき、陽極接合時に当該多層膜を金属間化合物に変化させることにより電気接続を行うというものである。錫やインジウムなどの低融点金属は、接合温度、例えば400℃程度未満で融解するが、他の金属と反応して融点の高い金属間化合物を形成する。よって、一度陽極接合をすると、再度接合温度以上に昇温しても、電気的接続部が溶解しない。また、陽極接続中低融点金属が融解するため、電気的接続部の金属膜の厚さを高い精度で制御する必要がない点で、陽極接合と電気的接続とを同時に行うことができ歩留まりが向上する。
【0004】
一方、従来はパッケージ材としてホウケイ酸ガラスに代表されるアルカリ金属を含むガラスが用いられていた。ガラス基板と陽極接合するものとしてはシリコンだけではなく、GaAs、コバール、Al、Tiなども接合可能な技術であり、またパッケージ材として本発明者の一部により、セラミック粉末と陽極接合可能な可動イオンを含むガラス粉末から成る組成物を成形して焼成することにより、陽極接合可能な基板も開発されている。ここで、セラミック粉末としては、アルミナ粉末、コージェライト粉末、ジルコニア粉末、ステアタイト粉末、フォルステライト粉末、ジルコン粉末などが用いられ、ここに列挙した粉末を単独又は二種以上混合して用いられる(特許文献2参照)。
【0005】
また、MEMS基板とパッケージ材とを陽極接合する場合、MEMSに与える影響が少なくなるように350℃以下の低温が好適であり、そのため、陽極接合時の伝導イオンをNaからよりイオン半径の小さいLiに換えて、次の式(1)
(1−x)(αLi2O−βMgO-γAl23−δSiO2)・xBi23 (1)
(式中、xは質量比で0.01〜0.1であり、α、β、γ及びδはモル比で、α:β:γ:δ=2〜5:1〜2:1〜2:7〜17である。)
で示される組成を有する複合酸化物によってLTCC基板を形成することが本発明者らの一部によりなされている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2011/027762
【特許文献2】特開2009−280417
【特許文献3】特開2010−37165
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示した方法にあっては、陽極接合が開始される前に金属間化合物が形成されるのを防ぐ必要があり、接合時の昇温を素早く行うことが必要である。そのために特別なウエハボンダが必要となる。また、所望の金属間化合物を形成するため、接続前の金属膜の層構成を適切に制御する必要がある。
さらに、パッケージングされるデバイス、具体的には電子回路、MEMS等を収める空間を作るために、それが形成された基板を掘り下げる必要があるが、掘り下げられた基板上にデバイスを形成しようとすると、作製工程上、不便な点が多い。デバイスによっては、そのような作製工程が許されないことも少なくない。
【0008】
そこで、本発明は、特殊な技術や装置を必要とせず、しかも、より多くのデバイスに適用可能で、接合の際に電気的な接続を歩留まりよく確立可能な、パッケージされたデバイス及びパッケージング方法並びにそれに用いられるパッケージ材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のパッケージされたデバイスは、電子回路、MEMSその他のデバイスを搭載したデバイス基板と、ビア配線を配設してかつキャビティを有するパッケージ材とを接合して成り、ビア配線と一体化した接続用バンプがキャビティ内に突出しており、かつデバイスに接続された配線接続用パッドが接続用バンプと対向して接続されていることにより、接続用バンプを経由してデバイスがビア配線に配線接続されている。これにより、キャビティにデバイスの全部又は一部が収納されると共に配線接続がされている。
【0010】
上記構成において、好ましくは、接続用バンプは、キャビティをエッチングで形成する際に残った導体を突き出して形成して成る。
好ましくは、接続用バンプは、貴金属から成るか又は貴金属を含んだ混合物から成る。好ましくは、接続用バンプは多孔質からなる。
好ましくは、デバイス基板とパッケージ材とで画成された内部空間が気密封止されている。
好ましくは、配線接続用パッドがデバイス基板のパッケージ材との接合面よりもxの長さだけ突き出しており、キャビティの深さをyとすると、接合前におけるxとyとの関係が0.05y≦x≦0.7yを満たす。
パッケージ材は、ガラス基板又はLTCC(Low Temperature Co‐fired Ceramics)基板であることが好ましい。
好ましくは、ビア配線が、貴金属を含んだ混合物から成る貫通配線又は内部配線として形成されている。
デバイス基板とパッケージ材とは、好ましくは陽極接合して成る。
【0011】
上記目的を達成するために、本発明のパッケージング方法は、接合面から窪んだキャビティ内においてビア配線と一体化した接続用バンプを有するパッケージ材と、電子回路、MEMSその他のデバイスを搭載したデバイス基板とを重ね合わせて接続用バンプとデバイスの配線接続用パッドとを接続して圧接することにより、接続用バンプを押し潰してパッケージ材とデバイス基板との接合部同士を合わせ、接続用バンプを介してデバイスの配線接続用パッドとビア配線とを電気的に接続してパッケージングすることを特徴とする。これにより、キャビティにデバイスの全部又は一部が収納されると同時に配線接続を確立させることができる。
【0012】
上記構成において、好ましくは、パッケージ材とデバイス基板との接合部同士を合わせた後、昇温して所定の温度に維持しながらデバイス基板とパッケージ材との間に直流電圧を印加することにより、接合部同士を陽極接合する。
【0013】
上記目的を達成するために、本発明のパッケージ材の製造方法は、貴金属もしくは貴金属と無機質とから成る導体が表面に露出した無機質のパッケージ基材上に、レジストをパターン形成し、パッケージ基材のうちレジストで覆われていない部分をエッチングすることにより、パッケージ基材のうちレジストで保護されている部分の表面粗さを維持しながらパッケージ基材にキャビティを形成すると同時に該キャビティ内に導体の一部を露出させることで導体の残部からなるビア配線と一体化した接続用バンプを形成することを特徴とする。
【0014】
上記構成において、パッケージ基材にレジストをパターン形成する前にパッケージ基材表面を研磨して陽極接合可能な表面粗さを形成することが好ましい。
また、ビア配線が、貴金属又は貴金属を含んだ金属混合物とガラスその他の無機粉末とから成り、パッケージ基材のエッチングプロセスによって、キャビティを形成すると共に導体の先端部中の無機成分の一部を溶かして多孔質の接続用バンプをビア配線と一体化して形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、パッケージ材がキャビティ内に接続用バンプを多孔質で形成されているため、デバイス基板とパッケージ材とを対向して重ね合わせ接続用バンプとデバイス基板における配線接続用パッドとが接触した状態でデバイス基板とパッケージ材との接合面同士が接触していなくても、両者を押圧することで接続用バンプが潰れて接合部同士を接触させることができる。これにより、この接合の際、デバイス基板の配線接続用パッドとパッケージ材のビア配線とを接続用バンプを介在して電気的に接続することができる。よって、配線接続用パッドの高さやビア配線の突出度合いを調整したり、接続用バンプの厚さを調整したりする必要がない。また、特許文献1に開示されているように金属間化合物を形成しつつ陽極接合しないため、設計や接合工程上の制約がなく、しかも特別なウエハボンダなどが必要とならない。デバイス基板に形成されているMEMSは加速度センサ、圧力センサなど各種センサなど、利用される分野が広範になっている。一般にMEMSは平らな基板上に形成されるため、MEMS構造の全部または一部が基板表面から飛び出しているが、本発明によれば、これらは上記キャビティに収められるため、デバイス設計やデバイス作製上の制約も少ない。結果的に、歩留まりのよい電子部品やMEMSを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係るパッケージされたデバイスを模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るパッケージ材の断面図である。
【図3】図2に示す陽極接合用基板の製造方法の工程前半を模式的に示す図である。
【図4】図2に示す陽極接合用基板の製造方法の工程後半を示す断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係るパッケージング方法を模式的に示す工程図である。
【図6】デバイス基板がSOI(Silicon on Insulator)基板であって、デバイスがSOI基板のデバイス層で形成されるMEMSである場合のパッケージング方法を示す断面図である。
【図7】(a)は実施例として作製したパッケージドデバイスの断面図であり、(b)はパッケージドデバイス中の配線構造を示す図である。
【図8】実施例に関し、内部配線の柱部、即ちビア配線の表面のSEM像を示し、(a)はエッチング前の状態、(b)はエッチング後の状態を示す図である。
【図9】実施例に関し、エッチング後のビア配線及び接続用バンプのSEM像の図である。
【図10】実施例に関し、陽極接合後のビア配線及び接続用バンプの断面SEM像の図である。
【図11】熱衝撃試験の結果のうち、ダイヤフラムの凹み量の熱衝撃回数依存性を示す図である。
【図12】熱衝撃試験の結果のうち、第1外部配線と第2外部配線との間の電気抵抗の熱衝撃回数依存性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0018】
〔パッケージされたデバイス〕
図1は、本発明の実施形態に係るパッケージされたデバイス(以下、「パッケージドデバイス」と呼ぶ。)を模式的に示す断面図である。ここで、デバイスとしては多様なものが考えられるが、デバイス基板10上に形成されるデバイス構造は別の断面にあり図1には示されておらず、デバイスに繋がった配線接続用パッド12のみが示されている。図1に示すように、本発明の実施形態に係るパッケージドデバイス1は、電子回路、MEMSその他のデバイスを搭載したデバイス基板10と、ビア配線21を配設しかつキャビティ22を有するパッケージ材20とを接合して成る。デバイス基板10とパッケージ材20とは無端形状にシールされており、内部空間2を画成している。別の断面にあり図1には示されていないデバイス構造の全部又は一部は、この内部空間2に収納されうる。図示のものはデバイス基板10とパッケージ材20とが接合面3で陽極接合されているが、接合方法は陽極接合に限らず、図示しないシール材などにより封止されて接合されていてもよい。
【0019】
ビア配線21は、パッケージ基材23に配設されており、例えば図示するように貫通して形成されていても又は外部に接続されず所謂内部配線のように形成されていてもよい。ビア配線21のうち、内部空間23側の先端と接続用バンプ24とが一体化されており、接続用バンプ24はキャビティ22内に突出している。
【0020】
デバイス基板10は、Si基板などの半導体基板上に微細加工を施して電子回路、MEMS構造体その他のデバイスを形成したものである。図ではそのデバイスの一部として絶縁層11と配線接続用パッド12のみを示しており、そのデバイスが配線接続用パッド12に電気的に接続されている。図示の場合、配線接続用パッド12は絶縁層11に設けられている。配線接続用パッド12は、図示するように配線層12aと密着層12bとで成り、配線層12aにはAu、Ptなどの貴金属やその組み合わせ、密着層12bにはCr、Tiなどの易酸化金属を用いることが多いが、材料はこれらに限ったものではなく、また、配線接続用パッド12が単層や3層以上から成っていてもよい。
【0021】
本発明の実施形態に係るパッケージドデバイス1においては、デバイス基板10とパッケージ材20との接合面3よりも配線接続用パッド12が内部空間23に突出しており、配線接続用パッド12がパッケージ材20の接続用バンプ24と接続されている。これにより、デバイスの配線接続用パッド12が接続用バンプ24を経由してビア配線21と電気的に配線接続されている。
【0022】
本発明の実施形態にあっては、接続用バンプ12が、キャビティ22をエッチングで形成する際に残った導体をキャビティ22内に突き出して形成されている。そのため、エッチングされた導体は多孔質のままとなっていてもよく、配線接続用パッド12とビア配線21との導通が確保されていればよい。接続用バンプ24は、金、白金その他の貴金属から成るか又はそれらの貴金属を含んだ混合物で成っていてもよい。ビア配線21が金、白金その他の貴金属とガラスその他の無機質とから成り、接続用バンプ24がビア配線21となる導体先端部分をエッチングにより形成されるためである。
【0023】
また、本発明の実施形態にあっては、配線接続用パッド12がデバイス基板10とパッケージ材20との接合面3より内部空間2に突出していればよい。ただし、配線接続用パッド12の接合面3を基準面としての高さがパッケージ材20のキャビティ22の深さより小さくなくてはならない。たとえば、キャビティ22を形成する上での制約等からキャビティの深さが数μmから数十μmであるとすると、配線接続用パッド12の高さは接合面3を基準面として1μmから十数μmとするとよいが、一般的に、キャビティ22が深くなると、それに応じて配線接続用パッド12の高さを接合面3を基準面として高くした方がよい。そのために、配線接続用パッドを厚くしても、絶縁層を厚くしても、また別の方法で配線接続用パッドをかさ上げしてもよい。また、図1では配線接続用パッド12は絶縁層11上に設けられているが、上記の条件を満たしていれば必ずしもその必要はなく、たとえば、後に実施例(図6)に示すように、配線接続用パッド直下に絶縁層がない形態もある。ここで、配線接続用パッド12がデバイス基板10のパッケージ材20との接合面よりもxの長さだけ突き出しており、キャビティ22の深さをyとすると、接合前におけるxとyとの関係が0.05y≦x≦0.7yを満たすとよい。この関係を満たせば、接続用バンプ24の潰れによる配線接続の信頼性を確保できる。キャビティ22が深い場合、例えばy≧50μmの場合には上記関係式を満たせばよいが、キャビティ22が浅い場合、例えば0<y<50μmの場合には、0.1y≦x≦0.7yになることが好ましい。
【0024】
パッケージ材20については、ビア配線21を配設したガラス基板やLTCC基板などであればよい。
図1に示す形態では、デバイス基板10には何ら窪みが形成されていないが、窪みを設けてその窪みにデバイスが形成されており、配線接続用パッド12の高さが接合面3となる面よりも突出していればよい。
図1に示す形態では、接合面3は、デバイス10とパッケージ材20との対向面付近が共有結合により接合した、所謂陽極接合した面を想定しているが、別にこれに限ることなく、デバイス基板10とパッケージ材20との対向面にシール材を挟むなどして接合されていてもよい。
また、図1に示す形態において、配線接続用パッド12と接続用バンプ24とが共に同じ金属材料を含んでいる場合、例えば何れもAuを含んでいる場合には、配線接続用パッド12中のAuが接続用バンプ23中に拡散し、また逆に接続用バンプ23中のAuが配線接続用パッド12中に拡散して、所謂拡散接合することにより、より安定した接合状態を得ることができる。
【0025】
〔パッケージ材〕
次に、本発明の実施形態に係るパッケージドデバイス1の作製に必要となるパッケージ材20について説明する。
【0026】
図2は、本発明の実施形態に係るパッケージ材20の断面図である。接合前のパッケージ材20は、例えば、図2に示すように、ビア配線21が形成されたパッケージ基材23であって、接合する面23aから窪んだキャビティ22内に接続用バンプ24を備えたものである。即ち、キャビティ22は、ビア配線21を配設したパッケージ基材23の表面であって接合する面23aに画成されており、そのキャビティ22内に接続用バンプ24がビア配線21と一体化して形成されている。
【0027】
ビア配線21は図2に示すように、貫通配線であっても図示しない内部配線であっても、その双方であってもよい。ビア配線21としての貫通配線は、図2に示すように二本である必要はなく、デバイス基板10における配線接続用パッド12の数に依存する。内部配線は、電子回路、MEMS中の各素子と共振回路を形成するコイル等をも含む用語として用いることがあるものとする。
【0028】
ビア配線21は、金、白金その他の貴金属と無機質とから成っている。
【0029】
パッケージ基材23はガラス単体もしくはガラス、アルミナ、コージェライトその他の酸化物系セラミックス粉末で成っているものに限らず、ムライト、シリカ、ジルコニア、ジルコン、ステアタイト、エンスタタイト、スポジュメン、リチウムシリケートなどの無機質で成っていてもよい。
【0030】
接続用バンプ24は、金、白金その他の貴金属から成っている場合と、貴金属と無機質とから成っている場合とがある。これは、接続用バンプ24は、パッケージ基材23となるセラミック材にキャビティ22を形成する際、ビア配線21となる導体の先端部をエッチングして無機質の一部又は全部を溶かして形成されるためである。よって、接合前の接続用バンプ24にあっては、多孔質となっている。そのため、接続用バンプ24は、厚み方向の寸法について押圧等によって調整自在となっている。
【0031】
また、ビア配線21及び接続用バンプ24を形成する導体は、パッケージ材20の厚さ方向に沿って同一の素材、例えば金、銀等で形成されていてもよい。逆に、パッケージ材20の厚さ方向に沿って異なる素材で形成されていてもよい。つまり、例えば、ビア配線21については金、白金から成り、接続用バンプ24についてはAgとPdの合金で成っていてもよい。パッケージ材20が陽極接合用パッケージ材である場合には、接続用バンプ24は金や白金等の酸化され難い素材でなっていることが好ましい。
【0032】
ここで、ビア配線21、接続用バンプ24は配線通路として用いられるため、これを形成する導体は、金ペーストの場合、金以外の無機成分は金成分に対してビア配線21では0〜15%で、接続用バンプ24では5%以内であることが好ましいが、これらの範囲に限定されるものではない。なぜなら、本発明のように、接続用バンプ24をエッチングして形成する場合には、高軟化点ガラスを用いて、アルミナなどの無機添加物と同様に導体の焼結抑制効果を焼結時に生起させながら、焼成後ではエッチングにより多孔質度を調整することもできるからである。また、接続用バンプ24となる導体部分が金成分だけから成っていてエッチングされる場合、接続用バンプ24は金の展性、延性によって変形性能はあるものの十分ではなくエッチング時にある程度の量の無機成分が溶けて多孔質化し変形しやくなるのが好ましい。添加されるガラス等のエッチングで溶解する成分は質量比で1.5%前後が適量である。この程度の添加量であれば、エッチングにより多孔質化して厚み方向に押圧されることで、厚さ調整可能である。一方、アルミナ等のエッチングされにくい無機添加物は質量比で0〜1%前後が適量である。
【0033】
ここで、接続用バンプ24の先端は、接合前の状態にあっては、図2に示すように接合する面23a近傍まで達している。これにより、デバイス基板10上に接合面から突出して配線接続用パッド12が設けられていれば、一括したプロセスにより、確実にパッケージ材20をデバイス基板10に接合すると共に配線接続用パッド12と接続用バンプ24とを配線接続することができる。
【0034】
図2に示すパッケージ材20が陽極接合用パッケージである場合には、パッケージ材20における面23a,つまり陽極接合する面は無端形状を有する。図1に示すように、デバイス基板10とパッケージ材20とがこの無端形状の接合面で接合することでデバイス基板10とパッケージ材20で内部空間2を画成し、この内部空間2がデバイス基板10上のデバイスを収容する。よって、デバイス基板10上の電子回路、MEMSその他のデバイスを気密封止することができる。
【0035】
また、陽極接合される面23aは陽極接合可能な表面粗さを有しており、その表面粗さは例えば少なくとも50nmRa前後以下であればよい。パッケージ基板20は、ビア配線21を配設したパッケージ材であり、接続用バンプ24がビア配線21と一体化していれば、ガラス基板でもLTCC基板(低温焼成積層セラミックス基板とも呼ぶ。)でもよい。表面粗さは、例えば10nmRaであれば好ましい。
【0036】
パッケージ材20は、図2に示すようにキャビティ22が一つ設けられている場合のみならず、後述の製造方法で説明するように複数のキャビティ22を備えていてもよい。これにより、デバイス基板に同種類の電子回路又はMEMSが形成されている場合であっても、このデバイス基板と陽極接合用基板とが陽極接合して、後に個片化してワンチップとすることができる。
【0037】
〔パッケージ材の製造方法〕
図3及び図4は図2に示すパッケージ材20の製造方法を示す工程図である。本発明の実施形態に係るパッケージ材20は、次のプロセスによって作製される。
【0038】
最初にSTEP1として、図3(a)に示すグリーンシート31に対して、貫通配線や内部配線のパターンに沿ってビア32となる孔を開口する(図3(b))。グリーンシート31は、セラミック粉末とガラスその他の無機質とを一定の比率で配合してなる混合材料に有機系のバインダー及び溶剤を加えて均一になるまで分散してスラリーとし、有機系のフィルムに一定の厚みでスラリーを塗布して乾燥することによって得られる。その後、ビア32となる孔へ貴金属もしくは貴金属と無機質とから成る導体33を充填して配線印刷を行って一層を作製する(図3(c)〜(e))。このステップを配線パターンに応じて複数層を作製する。図3(c)〜(e)はそれぞれ上層34a、中層34b、下層34cの各層を示している。
【0039】
STEP2として、STEP1で作製した各層34a,34b,34cを順に積層して積層体35とし(図3(f))、金型等を用いてこの積層体35を所定の形状に加工する(図3(g))。
【0040】
STEP3として、STEP2において形状加工した積層体35を焼成する。
【0041】
STEP4として、STEP3において焼成して得たものを所定の表面粗さ以下となるように鏡面研磨を行う。ここでいう所定の表面粗さは、接合形式によって定まり、陽極接合の場合には陽極接合可能な値であればよく、50nmRa以下、特に10nmRa以下が好ましい。このようにして例えばLTCC基板36が得られる。
【0042】
STEP5として、STEP4にて表面研磨して得たLTCC基板36上にレジストを形成し、所定のパターンを有するマスクでレジストを覆ってリソグラフィー法を用いてレジスト37にパターン形成を行う。その際、キャビティ22の形状及び寸法に対応する領域38には、レジスト37を設けない。
【0043】
上述のレジストの代わりとして、金属とレジストとの複合膜も利用できる。この場合、STEP4にて表面研磨して得たLTCC基板36上に金属膜を成膜し、その上にレジストを形成し、所定のパターンを有するマスクでレジストを覆ってリソグラフィー法を用いてレジストにパターン形成を行い、このレジストをマスクにして上記金属膜をエッチングする。金属膜としてはCrなどを利用できる。この場合、レジストに強力な耐酸性は必要なく、また、金属膜によってサイドエッチングが抑えられるため、精密なエッチングが可能である。
【0044】
STEP6として、図4(b)に示すように、STEP5でパターン形成したレジスト37又は金属とレジストとの複合膜で覆われていないLTCC基板36のパッケージ材23aの領域をエッチングにより除去する。本実施形態にあってはパッケージ材23aが無機材料であるので、エッチング液としては例えばフッ酸系のものが用いられる。エッチング液としては、好ましくは、パッケージ基材23のみをエッチングし、導体33の貴金属はほとんどまたは全くエッチングしないものを用いる。たとえば、フッ化水素酸、フッ化水素酸とフッ化アンモニウムとの混合液、フッ化水素酸と硝酸との混合液、フッ化水素酸と硫酸との混合液などを用いれば、金や白金からできている導体33はエッチングされない。
【0045】
これにより、パッケージ基材23のうちレジスト37又は金属とレジストとの複合膜で保護されている部分の表面粗さを維持しながら、パッケージ基材23にキャビティ23を形成すると同時に、キャビティ23内に導体33の一部を露出することにより導体33の残部からなるビア配線21と一体化した接続用バンプ24が形成される。或る一つの形態においては、LTCC基板26にキャビティ23、即ち窪みが形成されると共に、導体33の先端部であってキャビティ22内に突出した部分がエッチング液により無機材料が溶解して多孔質化し、ビア配線21と一体化した接続用バンプ24が形成される。このエッチングの際、レジスト37が形成された領域はエッチングにより荒らされないため、レジストを剥離することによって後述するように接合する際の表面粗さの精度は維持される。エッチング用マスクとして金属とレジストとの複合膜を用いた場合、レジストを剥離した後、必要に応じて金属膜をエッチングして除去する。金属膜としてCrを用いた場合、そのエッチングによってLTCC基板表面と接続用バンプ(金や白金)が損傷を受けることはない。なお、その後、必要に応じて個片化してもよい。
【0046】
なお、本発明の実施形態におけるパッケージの製造方法にあっては、図3に示す工程のみならず、その他の手法、例えば特許文献2に記載されている手法を適宜用いてもよい。
【0047】
〔パッケージング方法〕
次に、本発明の実施形態に係るパッケージング方法について説明する。パッケージ材10が陽極接合用のパッケージの場合を前提として説明する。
【0048】
図5は、本発明の実施形態に係るパッケージング方法を模式的に示す工程図である。本発明の実施形態に係るパッケージング方法では、図5(a)に示すように、パッケージ材10に接合されるデバイス基板10は、Si基板などの半導体基板に電子回路、MEMSなどのデバイスが形成されたものである。デバイス基板10は無端形状の接合面13aを有し、その接合面13aに囲まれるように電子回路又はMEMS14が形成されている。図では、電子回路又はMEMS33の積層構造のうちパッケージ材20側の絶縁層12、配線接続用パッド12のみ示している。図示の場合にあっては、配線接続用パッド12は複数の層からなっている。
【0049】
図5(a)に示すように、接続用バンプ24とデバイス基板10における配線接続用パッド12とを対向するように、デバイス基板10とパッケージ材20とを重ね合わせて両者を互いに圧接する。図示の場合、デバイス基板10において接合される面13aから配線接続用パッド12が突出しているため、接続用バンプ24と配線接続用パッド12とを物理的に接続しても、接合される面同士は接しない。しかし、デバイス基板10とパッケージ材20とを圧接することにより、多孔質の接続用バンプ24が押し潰されて厚みが小さくなり、デバイス基板10とパッケージ材20の接合面となる対向面13a,23a同士が接触する。
【0050】
その後、デバイス基板10とパッケージ材20とを押さえ付けた状態で、陽極接合温度まで昇温し、昇温した状態で、デバイス基板10とパッケージ材20との間に直流電圧を印加する。その際、デバイス基板10を+極とし、パッケージ材20を−極とする。すると、デバイス基板10とパッケージ材20の各対向面13a,23aとが共有結合により接合される。即ち、パッケージ材20に含まれるNaイオンが300℃程度以上の温度条件下で動きやすくなり、パッケージ材20内のNaイオンが−極に引っ張られて移動し、デバイス基板10とパッケージ材20との接合面近傍にはそれぞれプラス電荷が集まった層とNaイオンが欠乏した所謂、空間電荷層とが形成され、接合面で静電引力により共有結合が生じて、デバイス基板10とパッケージ材20とが接合される。なお、パッケージ材20、特にパッケージ基材23中にNaイオンの代わりにLiイオン等が含まれている場合には、より低温で陽極接合することができる。
【0051】
このように陽極接合によってデバイス基板10とパッケージ材20とが内部空間2を画成し、内部空間2内にデバイス基板10における電子回路又はMEMS14を気密封止することができる。デバイス基板10とパッケージ材20との接合面3が無端形状を有するからである。
【0052】
なお、陽極接合のため、デバイス基板10とパッケージ材20との間に直流電圧を印加する際には、貫通配線を有するパッケージ材20の上に、例えばダミーガラス基板(図示しない)を置き、ダミーガラス基板を介在して直流電圧をかける。すると、貫通配線状のビア配線21を通って電子回路又はMEMS14に電流が流れることはなく、高電圧の印加を要する陽極接合によって電子回路、MEMS14が損傷するのを防ぐことができる。
【0053】
図5(a)に示すように、パッケージ材20におけるキャビティ22の深さL1は、接合面23aを基準に5〜50μmの範囲が好ましく、デバイス基板10における配線接続用パッド12の高さL2は、接合面13aを基準に0.5〜35μm、特に1〜30μmの範囲が好ましい。ただし、L2<L1の関係を満たす範囲でなければならない。L1、L2がこのような数値範囲にあれば、接続用バンプ24が潰れて配線接続用パッド24に確実に接続することができる。
【0054】
図5に示すパッケージング方法では陽極接合を前提としているが、例えば、接合面13a,13bにシール材を塗布した状態で、接続用バンプ24とデバイス基板10における配線接続用パッド12とを対向させ、デバイス基板10とパッケージ材20とを重ね合わせて両者を互いに圧接することなどによっても、パッケージングできる。
【0055】
以上説明したように、本発明の実施形態にあっては、接続用バンプ24は、パッケージ材23にキャビティ22を形成する際にビア配線21の一部であった導体を、キャビティ22内に突き出して形成したものである。そのため、その導体は接合面3と同じ高さまで達している。一方、デバイス基板10における配線接続用パッド12が接合面3よりも突出した構造を有している。そのため、導体と配線接続用パッド12との端面同士が接触しても、デバイス基板10及びパッケージ材3の各対向面は接合することができない。しかしながら、本発明の実施形態においては、配線接続用パッド12がデバイス基板10の対向面よりも突出していれば、配線接続用パッド12、接続用バンプ24の何れの高さも精密に制御する必要はない。
【0056】
また、ビア配線21は金、白金その他の貴金属材料とガラス成分その他の無機質とから成り、配線接続用パッド12はその無機質の一部又は全部をエッチングして形成されているため、接合前の配線接続用パッド12はデバイス基板10とパッケージ材20とを押圧することで容易に変形する。
【0057】
〔他のパッケージデバイスの例〕
図1〜図5にあっては、デバイス基板上に形成されるデバイス構造は、図示した断面切り口にはなく別の切り口に存在し、配線接続用パッドのみが示されている。図6はデバイス基板40がSOI(Silicon on Insulator)基板であって、デバイスがSOI基板のデバイス層で形成されるMEMSである場合のパッケージング方法を示す断面図である。
【0058】
デバイス基板40は、図6(a)に示すように、SOIにおける絶縁層(BOX層)を犠牲層として用いて絶縁層の一部を残し、残した絶縁層をそれぞれ支持部41a,41bとして、一方の支持部41aに可動部42aを設け、他方の支持部42bに固定部42bを設けたものである。可動部42aには該可動部42aを挟んで支持部41aに対向するように配線接続用パッド43aが設けられ、固定部42bには該固定部42bを挟んで支持部41bに対向するように配線接続用パッド43bが設けられている。
【0059】
一方、パッケージ材20は、図6(a)に示すように、図1に示す実施形態と同様、キャビティ22がパッケージ材23に形成されており、配線ビア21の一端がキャビティ22に達しており、接続用バンプ24が上記デバイス基板40における配線接続用パッド43a,43bに対向するように配線ビア21と一体化して設けられているものである。
【0060】
接続用バンプ24と配線接続用パッド43a,43bとを対向するように、デバイス基板40をパッケージ材20に重ね合わせて両者を互いに圧接する。図5に示す場合と同様、デバイス基板40において接合される面45から配線接続用パッド43aが突出しているため、接続用バンプ24と配線接続用パッド43a,43bとを物理的に接続しても、接合される面同士は接しない。しかし、デバイス基板40とパッケージ材20とを圧接することにより、多孔質の接続用バンプ24が押し潰されて厚みが小さくなり、デバイス基板40とパッケージ材20の接合面となる対向面23a,45同士が接触する。
【0061】
このようにして、デバイス基板40における可動部42a及び固定部42bをキャビティ22内に収容してデバイス基板40とパッケージ材20とが接合され、可動部42a及び固定部42bからなるMEMS44をパッケージしている。
【0062】
図6に示すMEMS44は、各種センサ、例えば加速度センサやジャイロセンサとして用いられる。即ち、可動部42aと固定部42bとの容量等の電気的特性を配線ビアから外部に取り出して検出することができる。よって、パッケージドデバイス5それ自体が動かされると、可動部42aが変位し、それに伴う電気的特性の検出値の変化をモニタリングすればよい。なお、図6と図1は一見違うようであるが、図6の配線接続用パッド43aと可動部42a、及び配線接続用パッド43bと固定部42bをそれぞれ一体と考えると、これらの構造は図1と等価である。
【実施例】
【0063】
実施例を示して更に詳細に説明する。
図7(a)は実施例として作製したパッケージドデバイスの断面図であり、(b)はパッケージドデバイス中の配線構造を示す図である。図7(a)の断面は図7(b)のA1−A2線に沿う断面図である。
【0064】
実施例として、デバイス基板50はMEMS基板であって、基材51にはドライエッチングで穴52が形成され、基材51には8μm程度の厚みのダイヤフラム53が形成されている。デバイス基板50において上記ダイヤフラム53の逆側の面、つまり、パッケージ材60となるLTCC基板と対向する面には、穴52を取り囲むように厚み10μm程度の絶縁膜54が形成されている。その絶縁膜54上には、穴52の開口を挟んで縦方向に延びる複数の電極55がそれぞれ分離して45nmのCr層、75nmのPt層、200nmのAu層の各薄膜を順次積層して形成されている。図示するように、第1電極55aと第2電極55bとが貫通穴52の左側に縦方向に延設しており、第3電極55cと第4電極55dとが貫通穴52の右側に縦方向に延設している。その絶縁膜54上には貫通穴52の開口で第1乃至第4電極55a〜55dを設けていない側に、第2電極55bと第4電極55dの一端部に重なるように第5電極55eが横方向に延設している。第1乃至第5電極55a,55b,55c,55d,55eは図1及び図2において配線接続用パッドと呼んでいる。
【0065】
一方、パッケージ材としてLTCC基板60を用いた。このLTCC基板60には厚さ方向に沿って門型の形状を有する第1内部配線61,第2内部配線62,第3内部配線63及び第4内部配線64が配設されており、厚さ方向に沿ってクランク形状を有する第1外部配線65,第2外部配線66を有する。第1乃至第4の内部配線61〜64及び第1乃至第2の外部配線65,66は何れもLTCC基板60の厚さ方向の中ほどに所定の方向に延びる水平部67を備えており、その水平部67の端部の対に柱部68が設けられている。内部配線の場合には、両柱部68a,68aが互いに同じ方向に延びており、外部配線の場合には、両柱部68a,68bが互いに逆の方向に延びている。
【0066】
ここで、第1内部配線61の両端の柱部68a,68aと第1外部配線65の外側の柱部68a,第2内部配線62の外側の柱部68aとは第1の方向、即ち列状に並んで設けられている。第4内部配線64の両端の柱部68a,68aと第2外部配線66の外側の柱部68a,第3内部配線63の外側の柱部68aとは第1の方向に並んで設けられている。第2内部配線62の両端の柱部68a,68aと第3内部配線63の両端の柱部68a,68aが第1の方向と直交する第2の方向に並んで設けられている。第1外部配線65の両端の柱部68a,68bと第2外部配線66の両端の柱部68a,68bとが第2の方向に並んで設けられている。
【0067】
このLTCC基板60にレジスト(図示せず)をパターニングし、基材と各内部配線の先端部とをエッチングしてガラス成分等を溶解することにより、約30μm深さのキャビティ69を形成し、各柱部68aの先端部を接続用バンプ70とした。
【0068】
次に接続用バンプ70と第1乃至第5電極55a,55b,55c,55d,55eの両端部とが対向するようにデバイス基板50とLTCC基板60とを位置合わせし、真空中で400℃まで加熱した後、約100mN/バンプの圧力を加えて800V、30分間の条件で陽極接合した。装置から取り出したパッケージドデバイスのダイヤフラム53には凹みが形成され、第1外部配線65の柱部68bと第2外部配線66の柱部68bとの間が電気的に接続されていることを確認した。
【0069】
図8は、内部配線の柱部、即ちビア配線の表面のSEM像を示すものであり、(a)はエッチング前の状態、(b)はエッチング後の状態を示す図である。図から、内部配線の柱部としてのビア配線に添加されているガラスやシリカ粉末がエッチングされて多孔質化していることが分かる。
【0070】
図9は、エッチング後のビア配線及び接続用バンプのSEM像の図であり、図10は陽極接合後のビア配線及び接続用バンプの断面SEM像の図である。これらの像から金ビアは潰れた状態となっており、MEMS側の電極、即ちCr層とPt層とAu層の積層電極と金ビアとの接合界面には、明確な隙間は確認されなかった。
【0071】
作製したパッケージドデバイス6に対して熱衝撃試験を行った。−40℃の状態と+125℃の状態とにそれぞれ30分ずつ繰り返し配置して、ダイヤフラム53の凹み、電気抵抗の値が維持されるかを確認した。
【0072】
図11は熱衝撃試験の結果のうち、ダイヤフラムの凹み量の熱衝撃回数依存性を示す図である。縦軸はダイヤフラムの凹み量d(μm)、横軸は熱衝撃回数(サイクル数)である。熱衝撃の回数を増加させても、ダイヤフラムの凹み量に有意な変化はなかった。
【0073】
図12は熱衝撃試験の結果のうち、第1外部配線と第2外部配線との間の電気抵抗の熱衝撃回数依存性を示す図である。縦軸は電気抵抗(Ω)、横軸は熱衝撃回数(サイクル数)である。熱衝撃の回数を増加させても、電気抵抗には有意な変化はなかった。
【0074】
以上の熱衝撃試験の結果から、気密封止と電気的接続が維持できていることが分かる。
【0075】
デバイス基板とLTCC基板とを陽極接合した後に、デバイス基板のキャビティ部を剥離したところ、MEMS側の電極にLTCC基板の金ビアバンプが付着した状態で剥離した。
【0076】
以上のことから、MEMS側のAu薄膜とLTCC基板側の金ビアバンプは、拡散接合のように安定した接合状態となっているものと推察される。
【0077】
本発明の実施形態によれば、パッケージ材の接続用バンプ、デバイス基板の配線接続用パッド等の配線接続部の厚みを厳密に管理しなくても、接合と同時に配線接続を確立することができる。本実施形態においては、図1及び図5に示すように、エッチングにより形成したキャビティ内に、デバイス基板の電子回路、MEMS構造体の全部を収容する場合のみならず、例えば図7のようにMEMS構造体の一部を収容したり、図示しないが電子回路その他のデバイスの一部を収容したりしてもよい。
本発明の実施形態は、図1、図6、図7に示すデバイスのみならず、デバイス基板における接合面よりも配線接続用パッドが突出していれば、如何なる構造のデバイスであっても、パッケージ材と対向していれば収容することができる。配線接続用パッド自体は薄膜でも厚膜であってもよい。
【符号の説明】
【0078】
1,5,6:パッケージドデバイス
2:内部空間
3:接合面
10:デバイス基板
11:絶縁層
12,12a,12b:配線接続用パッド
13a:接合面
14:デバイス
20:陽極接合用基板
21:パッケージ材
21:ビア配線
22:キャビティ
23:パッケージ基材
23a:接合する面(接合面)
24:接続用バンプ
31:グリーンシート
32:ビア
33:導体
34a,34b,34c:各層
35:積層体
36:LTCC基板
37:レジスト
40:デバイス基板
41a,41b:支持部
42a:可動部
42b:固定部
43a,43b:配線接続用パッド
44:MEMS
50:デバイス基板
51:基材
52:穴
53:ダイヤフラム
54:絶縁膜
55,55a,55b,55c,55d,55e:電極
60:パッケージ材(LTCC基板)
61:第1内部配線
62:第2内部配線
63:第3内部配線
64:第4内部配線
65:第1外部配線
66:第2外部配線
67:水平部
68,68a,68b:柱部
69:キャビティ
70:接続用バンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子回路、MEMSその他のデバイスを搭載したデバイス基板と、ビア配線を配設してかつキャビティを有するパッケージ材とを接合して成り、
上記ビア配線と一体化した接続用バンプが上記キャビティ内に突出しており、かつ上記デバイスに接続された配線接続用パッドが上記接続用バンプと対向して接続されていることにより、上記接続用バンプを経由して上記デバイスが上記ビア配線に配線接続されている、パッケージされたデバイス。
【請求項2】
前記接続用バンプが、前記キャビティをエッチングで形成する際に残った導体を突き出して形成して成る、請求項1に記載のパッケージされたデバイス。
【請求項3】
前記接続用バンプが、貴金属から成るか又は貴金属を含んだ混合物から成る、請求項1に記載のパッケージされたデバイス。
【請求項4】
前記接続用バンプが多孔質からなる、請求項1に記載のパッケージされたデバイス。
【請求項5】
前記デバイス基板と前記パッケージ材とで画成された内部空間が気密封止されている、請求項1に記載のパッケージされたデバイス。
【請求項6】
前記配線接続用パッドが前記デバイス基板の前記パッケージ材との接合面よりもxの長さで突き出しており、
前記キャビティの深さをyとすると、接合前におけるxとyとの関係が0.05y≦x≦0.7yを満たす、請求項1に記載のパッケージされたデバイス。
【請求項7】
前記パッケージ材は、ガラス基板又はLTCC(Low Temperature Co‐fired Ceramics)基板である、請求項1に記載のパッケージされたデバイス。
【請求項8】
前記ビア配線が、貴金属もしくは貴金属を含んだ混合物から成る貫通配線又は内部配線として形成されている、請求項1に記載のパッケージされたデバイス。
【請求項9】
前記デバイス基板と前記パッケージ材とが陽極接合して成る、請求項1に記載のパッケージされたデバイス。
【請求項10】
接合面から窪んだキャビティ内においてビア配線と一体化した接続用バンプを有するパッケージ材と、電子回路、MEMSその他のデバイスを搭載したデバイス基板とを重ね合わせて上記接続用バンプと上記デバイスの配線接続用パッドとを接続して圧接することにより、上記接続用バンプを押し潰して上記パッケージ材と上記デバイス基板との接合部同士を合わせ、上記接続用バンプを介して上記デバイスの配線接続用パッドと上記ビア配線とを電気的に接続してパッケージングする、パッケージング方法。
【請求項11】
前記パッケージ材と前記デバイス基板との接合部同士を合わせた後、昇温して所定の温度に維持しながら前記デバイス基板と前記パッケージ材との間に直流電圧を印加することにより、上記接合部同士を陽極接合する、請求項10に記載のパッケージング方法。
【請求項12】
貴金属もしくは貴金属と無機質とから成る導体が表面に露出した無機質のパッケージ基材上に、レジストをパターン形成し、
上記パッケージ基材のうち上記レジストで覆われていない部分をエッチングすることにより、上記パッケージ基材のうち上記レジストで保護されている部分の表面粗さを維持しながら上記パッケージ基材にキャビティを形成すると同時に該キャビティ内に上記導体の一部が露出することにより上記導体の残部からなるビア配線と一体化した接続用バンプを形成する、パッケージ材の製造方法。
【請求項13】
前記パッケージ基材にレジストをパターン形成する前に該パッケージ基材表面を研磨して陽極接合可能な表面粗さを形成する、請求項12に記載のパッケージ材の製造方法。
【請求項14】
前記ビア配線が、貴金属又は貴金属を含んだ金属混合物とガラスその他の無機粉末とから成り、
前記パッケージ基材のエッチングプロセスによって、前記キャビティが形成されると共に前記導体の先端部中の無機成分の一部が溶けて多孔質な前記接続用バンプがビア配線と一体化して形成される、請求項12に記載のパッケージ材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図11】
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【図12】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−30759(P2013−30759A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−137254(P2012−137254)
【出願日】平成24年6月18日(2012.6.18)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】