説明

パネル体、そのパネル体の製造方法及びそのパネル体製造装置

【課題】内部が中空となるように一体に固着された樹脂製の表壁と裏壁とを有する第1及び第2のパネル基材を具備し、該第1及び第2のパネル基材は、両パネル基材の表壁の上面が平坦となった使用状態から、その裏壁の側に回動できるように、インテグラルヒンジを介して回動可能に連結され、第1及び第2のパネル基材の表壁の表面には、表皮材が貼着されているパネル体において、第1及び第2のパネル基材が使用状態にあるときのパネル体の見栄えと使い易さを向上させる。
【解決手段】第1及び第2のパネル基材6,7が使用状態にあるとき、インテグラルヒンジ5に沿って互いに対向して延びる第1及び第2のパネル基材6,7の表壁8,13の端面10,11が、表皮材20を介して互いに当接しているように、第1及び第2のパネル基材6,7を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インテグラルヒンジを介して回動可能に連結された第1及び第2のパネル基材を有するパネル体と、そのパネル体の製造方法と、該パネル体の製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記形式のパネル体は、例えば自動車のラゲージルームの床面を構成するフロアパネルに形成された収納凹部の上部開口を覆う蓋や、部屋の内部空間を仕切る仕切壁や、建築物の内装壁材などとして広く利用することができる(特許文献1)。
【0003】
図11は、従来のこの種のパネル体4Aが自動車のラゲージルームのフロアパネル1Aに形成された収納凹部2Aの上部開口を覆った状態を示す断面図である。ここに示したパネル体4Aは、第1及び第2のパネル基材6A,7Aを有し、その各パネル基材6A,7Aは、内部が中空となるように一体に固着された樹脂製の表壁8A,13Aと裏壁9A,14Aとから構成されている。また、第1及び第2のパネル基材6A,7Aの表壁8A,13Aの表面には、表皮材20Aが貼着されている。さらに、第1及び第2のパネル基材6A,7Aは、その表壁8A,13Aの上面22A,23Aが図11に示すように平坦となった使用状態から、図11に二点鎖線で示したように、その裏壁9A,14Aの側に回動できるように、インテグラルヒンジ5Aを介して回動可能に連結されている。第1及び第2のパネル基材6A,7Aを、このように曲折することにより、収納凹部2Aに荷物を出し入れすることができる。
【0004】
ところで、上述した従来のパネル体4Aにおいては、その第1及び第2のパネル基材6A,7Aが、図11に実線で示した使用状態にあるとき、図12に拡大して示すように、インテグラルヒンジ5Aに沿って互いに対向して延びる第1及び第2のパネル基材6A,7Aの表壁8A,13Aの端面10A,11Aが、大きな角度αをなしている。このため、その両端面10A,11Aの間に、ほぼV字形の溝40Aが形成されるので、その見栄えが低下する。しかもこの溝40Aにごみなどの異物が侵入するおそれも免れない。
【0005】
また、両端面10A,11Aの間に、ほぼV字形の溝40Aが形成されているので、第2のパネル基材7Aを、図13に実線で示した状態から一点鎖線で示したように持ち上げたとき、その第2のパネル基材7Aと実線で示した第1のパネル基材6Aとが、180°より小さな角度をなして折り曲がってしまう。従って、第1のパネル基材6Aと第2のパネル基材7Aを、図11に二点鎖線で示したように立った状態にするには、図13に示すように、第1のパネル基材6Aのインテグラルヒンジ5Aの側の端面10Aと反対側の端面110Aの側を支点として、第1及び第2のパネル基材6A,7Aを、図13に破線で示すように大きく回動させて、第1のパネル基材6Aを水平面に対してほぼ垂直に立ち上げ、次いで第2のパネル基材7Aを、図13に二点鎖線で示したように第1のパネル基材6Aに対して曲折する必要がある。このように第1及び第2のパネル基材6A,7Aを図13に破線で示した位置まで大きく回動させなければならないため、作業者に大きな動作を強いることになり、その作業性が低下する。
【0006】
【特許文献1】特開2002−46168号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上述した従来の欠点を除去したパネル体と、そのパネル体の製造方法と、該パネル体の製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るパネル体は、内部が中空となるように一体に固着された樹脂製の表壁と裏壁とを有する第1及び第2のパネル基材を具備し、該第1及び第2のパネル基材は、両パネル基材の表壁の上面がほぼ平坦となった使用状態から、その裏壁の側に回動できるように、インテグラルヒンジを介して回動可能に連結され、前記第1及び第2のパネル基材の少なくとも表壁の側の表面には、表皮材が貼着されているパネル体において、前記第1及び第2のパネル基材が前記使用状態にあるとき、前記インテグラルヒンジに沿って互いに対向して延びる第1及び第2のパネル基材の表壁の端面が、前記表皮材を介して互いに当接し、第1及び第2のパネル基材の表壁の上面がほぼ平坦となった使用状態から、その裏壁の側にのみ回動できるように、第1及び第2のパネル基材が形成されていることを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明に係るパネル体は、内部が中空となるように一体に固着された樹脂製の表壁と裏壁とを有する第1及び第2のパネル基材を具備し、該第1及び第2のパネル基材は、両パネル基材の表壁の上面がほぼ平坦となった使用状態から、その裏壁の側に回動できるように、インテグラルヒンジを介して回動可能に連結されているパネル体において、前記第1及び第2のパネル基材が前記使用状態にあるとき、前記インテグラルヒンジに沿って互いに対向して延びる第1及び第2のパネル基材の表壁の端面が直に当接し、第1及び第2のパネル基材の表壁の上面がほぼ平坦となった使用状態から、その裏壁の側にのみ回動できるように、第1及び第2のパネル基材が形成されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るパネル体の製造方法は、第1及び第2のキャビティと、該第1及び第2のキャビティの間に位置し、かつ第1及び第2のキャビティの底面に対して突出した突部とを有し、かつ前記第1及び第2のキャビティの底面が180°よりも小さな角度をなして傾斜している第1の成形型と、第2の成形型とによって、加熱されて軟化した熱可塑性樹脂より成る第1及び第2のシートをインテグラルヒンジを介して連結された第1及び第2のパネル基材に成形することを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明は、加熱されて軟化した熱可塑性樹脂より成る第1及び第2のシートを、互いに型締めされる第1及び第2の成形型により成形して上記パネル体を製造するパネル体製造装置において、前記第1の成形型は、第1及び第2のキャビティと、該第1及び第2のキャビティの間に位置し、かつ第1及び第2のキャビティの底面に対して突出した突部とを有し、かつ前記第1及び第2のキャビティの底面が180°よりも小さな角度をなしていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るパネル体は、第1及び第2のパネル基材が使用状態にあるとき、インテグラルヒンジに沿って互いに対向して延びる第1及び第2のパネル基材の表壁の端面が、直接又は表皮材を介して互いに当接しているので、パネル体の見栄えを向上させ、しかも互いに対向して位置する表壁の端面の間にごみなどの異物が侵入する不具合を抑制することができる。しかも第1及び第2のパネル基材が、その使用状態から、表壁の側に回動することを阻止できるので、そのパネル体を、従来のように大きな角度を回動させずとも、立った状態にもたらすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態例を図面に従って詳細に説明する。
【0014】
図1は、自動車のラゲージルームの床面を構成するフロアパネル1に形成された収納凹部2に工具箱3を収納し、その収納凹部2の上部開口をパネル体4によって覆った状態を示す断面図である。また、図2はこのパネル体4の外観斜視図であり、図3は図2のIII−III線拡大断面図である。これらの図に示したパネル体4の基本構成は、図11及び図12に示した従来のパネル体と変りはない。すなわち、本例のパネル体4も、第1及び第2のパネル基材6,7を具備し、これらのパネル基材6,7は、それぞれ内部が中空となるように一体に固着された樹脂製の表壁8,13と裏壁9,14とを有している。かかる第1及び第2のパネル基材6,7は、インテグラルヒンジ5を介して一体に連結されており、このインテグラルヒンジ5と、上述の表壁8,13及び裏壁9,14は、例えばポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂により一体に成形されている。図3に明示するように、インテグラルヒンジ5の板厚tは、各パネル基材6,7を構成する各壁部の板厚tよりも薄くなっている。また、各表壁8,13の上面22,23は、それぞれ平坦に形成されている。
【0015】
また、第1及び第2のパネル基材6,7の表壁8,13の表面とインテグラルヒンジ5の表面とに亘って、表皮材20が貼着されている。この表皮材20は、例えば不織布、ポリプロピレン又はその他の樹脂より成る可撓性シート、又はカーペットなどの可撓性材料によって構成されている。本例のパネル体4の裏壁9,14には、表皮材は貼着されていないが、この裏壁9,14の面に表皮材を貼着することもできる。第1及び第2のパネル基材6,7の表壁8,13と裏壁9,14のうちの少なくとも表壁8,13の側の表面に表皮材20が貼着されるのである。
【0016】
さらに、第1及び第2のパネル基材6,7の内部空間には、例えば発泡体より成る芯材12,17が収められているが、これらの芯材12,17を省略することもできる。また、これらの芯材12,17を省略した場合、第1及び第2のパネル基材6,7の内部空間に表壁と裏壁をつなぐ図示していない補強リブを一体成形することもできる。
【0017】
パネル体4の第1及び第2のパネル基材6,7が、図1に示すように収納凹部2の上部開口を覆った使用状態にあるとき、両パネル基材6,7の裏壁9,14は下方を向き、該裏壁9,14の縁部がフロアパネル1の段部16上に載置されている。このように第1及び第2のパネル基材6,7が使用状態にあるとき、その両表壁8,13の上面22,23は、その全体がほぼ平坦となっている。第1及び第2のパネル基材6,7が使用状態にあるとき、図3に示すように、両表壁8,13の上面22,23が、ほぼ同一平面H上に位置するのである。このように、ほぼ平坦となった両上面22,23のなす角度δは、例えば178°乃至182°、好ましくは180°である。
【0018】
上述した使用状態にある第1及び第2のパネル基材6,7を、インテグラルヒンジ5のまわりに、図1に矢印Aで示したように回動させると、両パネル基材6,7は、図1に二点鎖線で示したようにインテグラルヒンジ5の部位で曲折して回動する。これによって収納凹部2の上部開口を開放でき、ここから工具箱3を出し入れすることができる。このように、第1及び第2のパネル基材6,7は、両パネル基材6,7の表壁8,13の上面22,23がほぼ平坦となった使用状態から、その裏壁9,14の側に回動できるように、インテグラルヒンジ5を介して回動可能に連結されているのである。
【0019】
以上説明したパネル体4の構成は、従来のパネル体と変りはない。従来のパネル体と異なるところは、特に図3に明示するように、第1及び第2のパネル基材6,7が上述の使用状態にあるとき、インテグラルヒンジ5に沿って互いに対向して延びる第1及び第2のパネル基材6,7の表壁8,13の端面10,11が、表皮材20を介して、互いに当接し、第1及び第2のパネル基材6,7の表壁8,13の上面22,23がほぼ平坦となった使用状態から、その裏壁9,14の側にのみ回動できるように、第1及び第2のパネル基材6,7が形成されている点である。
【0020】
上述した構成によれば、第1及び第2のパネル基材6,7が使用状態にあるとき、両表壁8,13の端面10,11は、表皮材20を介して当接しているので、両端面10,11の間に大きな溝が形成されることはない。このため、パネル体4の見栄えを向上させることができると共に、両端面10,11の間にごみなどの異物が侵入することを防止することができる。
【0021】
しかも、第1及び第2のパネル基材6,7を、図4に実線で示した使用状態から、第1のパネル基材6の端面110の側を支点として図4に破線で示した位置に持ち上げたとき、その第1及び第2のパネル基材6,7は、表壁8,13の側に回動しないので、両パネル基材6,7を水平面に対してほぼ垂直となるところまで持ち上げずに、図4に破線で示した位置まで持ち上げたところで、第1のパネル基材7を図4に二点鎖線で示したように、第1のパネル基材6に対して、インテグラルヒンジ5のところで曲折させることにより、パネル体4を図1に二点鎖線で示した立った状態にすることができる。このように、第1及び第2のパネル基材6,7を、従来のように大きな角度を回動させずとも、立った状態にもたらすことができるのである。
【0022】
また、図示したパネル体4においては、第1及び第2のパネル基材6,7が、図1に実線で示した使用状態にあるとき、両パネル基材6,7の裏壁9,14とインテグラルヒンジ5の表面も、面一状態に平坦となっている。
【0023】
図1乃至図4に示したパネル体4においては、その表壁8,13の表面に表皮材20が貼着されているが、前述のように、裏壁9,14に表皮材を貼着することもできるし、表壁8,13の表皮材20を省くこともできる。図5は、表皮材を有していないパネル体4を示す、図3と同様な断面図である。このパネル体4の場合も、第1及び第2のパネル基材6,7の表壁8,13の上面22,23が、その全体に亘って、図5に示したように、ほぼ平坦となった状態が両パネル基材6,7の使用状態であるが、第1及び第2のパネル基材6,7が、この使用状態にあるとき、互いに対向している表壁8,13の端面10,11は、直に当接する。かかる構成によっても、図1乃至図4に示したパネル体と同じ作用効果を奏することができる。
【0024】
図5に示したパネル体4の他の構成は、図1乃至図4に示したパネル体と変りはない。すなわち、図5に示したパネル体4は、内部が中空となるように一体に固着された樹脂製の表壁8,13と裏壁9,14とを有する第1及び第2のパネル基材6,7を具備し、該第1及び第2のパネル基材6,7は、両パネル基材6,7の表壁8,13の上面22,23がほぼ平坦となった使用状態から、その裏壁9,14の側にのみ回動できるように、インテグラルヒンジ5を介して回動可能に連結されている点は、図1乃至図4に示したパネル体と変りはない。これに対し、図5に示したパネル体4の場合には、第1及び第2のパネル基材6,7が上述の使用状態にあるとき、インテグラルヒンジ5に沿って互いに対向して延びる第1及び第2のパネル基材6,7の表壁8,13の端面10,11が直に当接し、第1及び第2のパネル基材6,7の表壁8,13の上面がほぼ平坦となった使用状態から、その裏壁9,14の側にのみ回動できるように、第1及び第2のパネル基材6,7が形成されている。この場合も、第1及び第2のパネル基材6,7が使用状態にあるときに、ほぼ平坦となった両上面22,23のなす角度δは、例えば178°乃至182°、好ましくは180°である。
【0025】
次に、図1乃至図4に示したパネル体4の好ましい製造方法とその製造装置を説明する。
【0026】
先ず、図6に示すように、第1の成形型25の上に、表皮材20と、加熱されて軟化した熱可塑性樹脂より成る第1のシートSを重ねた状態にして載置する。ここに示した表皮材20は、通気性を有した可撓性材料より成る。通気性のない表皮材を用いるときは、その表皮材に多数の貫通孔を形成しておく。図5に示したパネル体4を製造するときは、第1のシートSだけを第1の成形型25に載置する。
【0027】
上述した第1の成形型25は、第1のキャビティ27と第2のキャビティ28を有していると共に、その第1及び第2のキャビティ27,28の間に位置し、かつ第1及び第2のキャビティ27,28の底面29,30に対して上方に突出した突部31を有している。しかも、第1及び第2のキャビティ27,28の底面29,30は平坦に形成されていて、その両底面29,30のなす角度βは180°よりも小さな角度、好ましくは140°<β<180°、特に好ましくは170°<β<180°に設定されている。第1及び第2のキャビティ27,28の底面29,30が、180°よりも小さな角度をなして傾斜しているのである。
【0028】
後述するように、成形型により成形された成形品の縁部のトリミングを、その成形型を用いて型締めと同時に行うことができるが、第1及び第2のキャビティ27,28の底面29,30のなす角度βが140°以下であると、そのトリミングを正しく行うことが難しくなる。140°<β<180°、特に170°<β<180°であると、成形型を用いて、成形品のトリミングを確実に行うことができる。
【0029】
さらに、第1の成形型25は、その内部に中空室32が区画形成され、第1及び第2のキャビティ27,28を有する成形面を構成する壁部には、多数の吸気孔33が形成され、その吸気孔33を介して、中空室32と外部が連通している。
【0030】
上述した第1の成形型25の上に表皮材20と第1のシートSを載置した後、第1の成形型25に形成された排気口34を通して、中空室32内の空気を吸引して、中空室内の空気を外部に排出させる。これにより、第1のシートSは、図7に示すように、第1及び第2のキャビティ27,28を有する成形面に沿った形態に成形される。このとき表皮材20が、アンカー効果によって第1のシートSに一体に接合される。このように、第1のシートSが第1の成形型25によって真空成形されるのである。
【0031】
次に、図8に示す如く、成形された第1のシートSの上に、芯材12,17をそれぞれ載置する。引き続き、図8に示すように、第1の成形型25と、その上方に位置する第2の成形型125との間に、加熱されて軟化した熱可塑性樹脂より成る第2のシートSを配置する。この第2の成形型125も、内部に中空室132が区画され、その成形面127を構成する壁部には、多数の吸気孔133が形成され、その吸気孔133を介して、中空室132と外部が連通している。かかる第2の成形型125を図9に示すように下降させて、第1及び第2の成形型25,125を型締めすると共に、第2の成形型125に形成された排気孔134を通して、中空室132内の空気を吸引し、その空気を外部に排出させる。これにより、第2のシートSが、第2の成形型125の成形面127に沿った形態に成形されると共に、第1及び第2のシートS,Sの外周部が互いに接合される。このように、第2のシートSも第2の成形型125によって真空成形されるのである。
【0032】
また、第1及び第2の成形型25,125を型締めした直後に、図9に示すように、中空な細管より成るブローピン35の先端を、第1及び第2のシートS,Sの間の空間に差し込み、そのブローピン35を通して、第1及び第2のシートS,Sの間の空間にエアーを圧送する。これにより、第1及び第2のシートS,Sは、第1及び第2の成形型25,125の成形面に、より一層確実に密着して、その成形面に沿った形態に成形される。このように、第1及び第2のシートS,Sがブロー成形されるのである。
【0033】
次いで、第1及び第2の成形型25,125を互いに離隔して、成形された成形品を成形型から取り出し、その成形品の縁部をトリミングすれば、第1のシートSより成る表壁8,13と、第2のシートSより成る裏壁9,14と、その内部に固定された芯材12,17と、インテグラルヒンジ5と、表壁8,13の表面に貼着された表皮材20とを有するパネル体4が完成する。また、前述のように、第1及び第2の成形型25,125の型締めと同時に成形品の縁部をトリミングするように構成することもできる。
【0034】
この例では、真空成形とブロー成形を併用して、第1及び第2のシートS,Sを成形したが、これらの成形法の一方の成形法だけで、両シートS,Sを成形することもできる。
【0035】
上述した第1の成形型25の突部31は、図3に示した表壁8,13の互いに対向する端面10,11を成形するための成形面部分である。前述のように、パネル体4が使用状態にあるとき、両端面10,11は、表皮材20を介して互いに当接するのであるが、本例のパネル体製造装置の第1の成形型25は、両端面10,11を成形するための突部31の厚さTが、図6に示すように特に薄くはなっていない。その理由は以下のとおりである。
【0036】
前述のように、第1の成形型25の第1及び第2のキャビティ27,28の底面29,30は、180°よりも小さな角度βをなして互いに傾斜している。このため、第1及び第2の成形型25,125によって成形されたパネル体4を、そのままの姿勢で第1及び第2の成形型25,125から外したとすると、図10に示すように、そのパネル体4の表壁8,13の上面22,23のなす角度であって、裏壁9,14の側の角度γは、第1の成形型25における第1及び第2のキャビティ27,28の底面29,30のなす角度β(図6)と等しくなり、その角度γも180°より小さくなる。このため、表壁8,13の端面10,11のなす角度θは大きくなる。このように表壁8,13の上面22,23が180°よりも小なる角度γをなした状態の第1及び第2のパネル基材6,7を、インテグラルヒンジ5のまわりに、図10に矢印Bで示す方向に回動させることによって、図1乃至図3に示したように使用状態にある第1及び第2のパネル基材6,7が得られる。
【0037】
上述のように、図10に示した状態のパネル体4の表壁8,13の端面10,11は大きな角度θをなしている。この角度θは、図8に示すように、第1の成形型25によって成形された表壁の端面10,11のなす角度でもあるが、この角度θが大きなものとなるので、端面10,11を成形するための第1の成形型25の突部31の厚さT(図6)も大きくできるのである。このように、突部31の厚さTが大きいので、その強度が低下して第1の成形型25の耐久性が低下する不具合を阻止することができる。
【0038】
図14に示すように、第1及び第2のキャビティ27B,28Bの平坦な底面29B,30Bのなす角度βが180°となった第1の成形型25Bを用いた場合には、これらのキャビティ27B,28Bの間に位置する突部31Bの厚さを極めて薄く設定しなければ、完成したパネル体4が使用状態にあるときに、その両端面10,11を、直接又は表皮材20を介して当接させることはできない。ところが、このように突部31Bの厚さが薄いと、その強度が下がり、第1の成形型25Bの耐久性が著しく低下する。また、突部31Bの先端で、加熱軟化した第1のシートSが切断されてしまうおそれがある。さらには、突部31Bの厚さを薄くしても、完成したパネル体4の両端面10,11を、直接又は表皮材20を介して当接させたとき、表壁8,13の上面22,23を平坦な状態にすることができなくなるおそれもある。
【0039】
上述した理由により、従来は、突部31Bの厚さを薄くすることができず、その厚さを大きくしていたのであるが、これによって図12に示したように、従来のパネル体4Aの表壁8A,13Aの端面10A,11Aのなす角度αが大きくなり、前述の欠点を免れなかったのである。
【0040】
これに対し、図6乃至図9に示した第1の成形型25を用いれば、前述のように、その突部31の厚さTを薄くせずとも、完成したパネル体4の表壁8,13の上面22,23の全体が平坦となった使用状態で、両端面10,11を直接、又は表皮材20を介して当接させることができるのである。
【0041】
上述のように、本例のパネル体の製造方法は、第1及び第2のキャビティ27,28と、該第1及び第2のキャビティ27,28の間に位置し、かつ第1及び第2のキャビティ27,28の底面29,30に対して突出した突部31とを有し、かつ第1及び第2のキャビティ27,28の底面が180°よりも小さな角度をなして傾斜している第1の成形型25と、第2の成形型125とによって、加熱されて軟化した熱可塑性樹脂より成る第1及び第2のシートS,Sを、インテグラルヒンジ5を介して連結された第1及び第2のパネル基材6,7に成形することを特徴とする。
【0042】
同じく、加熱されて軟化した熱可塑性樹脂より成る第1及び第2のシートS,Sを、互いに型締めされる第1及び第2の成形型25,125により成形してパネル体4を製造する本例のパネル体製造装置は、第1の成形型25が、第1及び第2のキャビティ27,28と、該第1及び第2のキャビティ27,28の間に位置し、かつ第1及び第2のキャビティ27,28の底面29,30に対して突出した突部31とを有し、かつ第1及び第2のキャビティ27,28の底面29,30が180°よりも小さな角度をなしていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】パネル体の断面図である。
【図2】図1に示したパネル体の斜視図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う拡大断面図である。
【図4】図1に示したパネル体を立った状態にするときの手順を示す説明図である。
【図5】表皮材を有していないパネル体を示す、図3と同様な断面図である。
【図6】パネル体の製造方法を示す断面図である。
【図7】パネル体の製造方法を示す断面図である。
【図8】パネル体の製造方法を示す断面図である。
【図9】パネル体の製造方法を示す断面図である。
【図10】成形型により成形されたパネル体をそのままの姿勢で成形型から外したときの状態を示す断面図である。
【図11】従来のパネル体の一例を示す断面図である。
【図12】図11に示したパネル体の部分拡大断面図である。
【図13】図11に示したパネル体を立った状態にするときの手順を示す説明図である。
【図14】第1及び第2のキャビティの底面のなす角度が180°である第1の成形型を示す断面図である。
【符号の説明】
【0044】
4 パネル体
5 インテグラルヒンジ
6 第1のパネル基材
7 第2のパネル基材
8,13 表壁
9,14 裏壁
10,11 端面
20 表皮材
22,23 上面
25 第1の成形型
27 第1のキャビティ
28 第2のキャビティ
29,30 底面
31 突部
125 第2の成形型
第1のシート
第2のシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が中空となるように一体に固着された樹脂製の表壁と裏壁とを有する第1及び第2のパネル基材を具備し、該第1及び第2のパネル基材は、両パネル基材の表壁の上面がほぼ平坦となった使用状態から、その裏壁の側に回動できるように、インテグラルヒンジを介して回動可能に連結され、前記第1及び第2のパネル基材の少なくとも表壁の側の表面には、表皮材が貼着されているパネル体において、前記第1及び第2のパネル基材が前記使用状態にあるとき、前記インテグラルヒンジに沿って互いに対向して延びる第1及び第2のパネル基材の表壁の端面が、前記表皮材を介して互いに当接し、第1及び第2のパネル基材の表壁の上面がほぼ平坦となった使用状態から、その裏壁の側にのみ回動できるように、第1及び第2のパネル基材が形成されていることを特徴とするパネル体。
【請求項2】
内部が中空となるように一体に固着された樹脂製の表壁と裏壁とを有する第1及び第2のパネル基材を具備し、該第1及び第2のパネル基材は、両パネル基材の表壁の上面がほぼ平坦となった使用状態から、その裏壁の側に回動できるように、インテグラルヒンジを介して回動可能に連結されているパネル体において、前記第1及び第2のパネル基材が前記使用状態にあるとき、前記インテグラルヒンジに沿って互いに対向して延びる第1及び第2のパネル基材の表壁の端面が直に当接し、第1及び第2のパネル基材の表壁の上面がほぼ平坦となった使用状態から、その裏壁の側にのみ回動できるように、第1及び第2のパネル基材が形成されていることを特徴とするパネル体。
【請求項3】
第1及び第2のキャビティと、該第1及び第2のキャビティの間に位置し、かつ第1及び第2のキャビティの底面に対して突出した突部とを有し、かつ前記第1及び第2のキャビティの底面が180°よりも小さな角度をなして傾斜している第1の成形型と、第2の成形型とによって、加熱されて軟化した熱可塑性樹脂より成る第1及び第2のシートをインテグラルヒンジを介して連結された第1及び第2のパネル基材に成形することを特徴とする請求項1又は2に記載のパネル体の製造方法。
【請求項4】
加熱されて軟化した熱可塑性樹脂より成る第1及び第2のシートを、互いに型締めされる第1及び第2の成形型により成形して請求項1又は2に記載のパネル体を製造するパネル体製造装置において、前記第1の成形型は、第1及び第2のキャビティと、該第1及び第2のキャビティの間に位置し、かつ第1及び第2のキャビティの底面に対して突出した突部とを有し、かつ前記第1及び第2のキャビティの底面が180°よりも小さな角度をなしていることを特徴とするパネル体製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−39967(P2009−39967A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−208025(P2007−208025)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(000244280)盟和産業株式会社 (48)
【Fターム(参考)】