説明

パワーウインドウ装置

【課題】窓ガラスの基準位置を精度よく設定して非検知領域を小さくし、挟み込み検知の精度を向上させたパワーウインドウ装置を提供する。
【解決手段】開閉体2とモーター5とモーターの回転に伴いパルスを発生するパルス発生部13と制御部10とを有し、制御部10は、パルスに基づき開閉体2の高さ位置を検出する位置検出手段と、基準位置に対応するパルス基準値を設定する基準位置設定手段と、パルスに基づきモーター5のロックの有無を検出するロック検出手段と、モーター5のロックを検出した場合に、開閉体2の高さ位置が非検知領域にあるか否かで、開閉体2が上端ロック位置に到達したか挟み込みを生じたかを判別する挟み込み検知手段と、モーター5の駆動電圧を検出する電圧検出手段とを有し、基準位置設定手段は、開閉体2が上端ロック位置に到達したと判別されると、モーター5の駆動電圧に応じてパルス基準値を補正し設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の窓ガラス等を電動で開閉させるパワーウインドウ装置に関し、特に挟み込み検知機能を有するパワーウインドウ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーウインドウ装置は、窓ガラス等を電動で開閉させるものとして、自動車に広く用いられている。パワーウインドウ装置には、異物の挟み込みを検知可能とする挟み込み検知機能が搭載されるのが一般的である。挟み込み検知機能は、窓ガラスを駆動するモーターのトルク変化を検出することにより実現され、挟み込みが検知された場合には、窓ガラスの上昇を停止し、モーターの回転を逆転させて窓ガラスを下降させる制御が行われる。
【0003】
自動車の窓ガラスが閉鎖する方向に上昇した際、窓の上端に突き当たるときにも、モーターのトルクが変化する。この場合と挟み込みが生じた場合とを区別するため、窓の上端位置から所定範囲については、モーターのトルクが変化しても挟み込みと判断しない非検知領域が設定される。非検知領域は、2つの場合を確実に区別できる幅を持って設定されるが、この非検知領域を小さく設定できれば、より細い異物であっても挟み込みを検出できるから、挟み込み検知の精度を高くすることができる。
【0004】
挟み込み検知機能におけるトルク変化は、モーターに設置したパルス計測手段からのパルス周期の変化に応じて検出される。モーターが通常の回転を行っているときには、パルスの1周期あたりの移動量は予め分かっているので、窓ガラスの移動量を検出することができる。挟み込みの際や窓ガラスが上端に突き当たる際には、モーターの回転数は減少するから、パルス計測手段からのパルス周期は増加する。この減少が生じたときに、窓ガラスが非検知領域にあるか否かを判別するためには、窓ガラスの上端位置を基準とした位置を検出する必要がある。
【0005】
このために、窓ガラスが上端位置に突き当たっている状態を、予め基準位置として設定しておき、窓ガラスを開閉させる際には、その基準位置からの変化量をカウントすることで、窓ガラスの上端位置に対する位置を検出するようにしている。窓ガラスの基準位置は、窓ガラスが上端位置に突き当たる度に設定し直される。このように非検知領域を設定しつつ挟み込み検知を行うパワーウインドウ装置としては、例えば特許文献1に挙げるようなものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3455319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
窓ガラスが上端位置に突き当たったとき、窓ガラスの位置はそれ以上変化しないが、モーターはダンパー特性の影響でさらに若干の回転をしてから停止する。モーターが停止した位置を上述の基準位置とすると、該基準位置と窓ガラスの実際の位置とは異なることになる。この位置の相違量が、常に一定であればあまり問題とはならないが、実際にはモーターにかかる電圧によって拘束トルクが変化するため、位置の相違量も電圧によって影響を受ける。
【0008】
モーターへの電力は、自動車のバッテリーから供給されるが、エンジンが始動しているか否か、あるいは他の機器がバッテリーを使用しているか否かなどの自動車の状態によって、電圧が変動する。これにより、窓ガラスの基準位置が自動車の状態により変化してしまうため、挟み込みと上端位置への突き当たりとを確実に区別するためには、非検知領域をあまり小さくすることができない、すなわち挟み込み検知の精度を上げることができなかった。この問題を解決するため、特許文献1では、窓ガラスの移動速度に応じて非検知領域を設定し直すこととしている。
【0009】
しかし、窓ガラスの位置検出精度を高くする上で重要なのは、窓ガラスが上端位置に突き当たったときに、基準位置が実際の位置とどの程度相違するかということであり、これがずれたまま窓ガラスの移動速度により非検知領域を設定し直しても、精度よく設定を行うことは困難である。
【0010】
本発明は前記課題を鑑みてなされたものであり、窓ガラスの基準位置を精度よく設定して非検知領域を小さくし、挟み込み検知の精度を向上させたパワーウインドウ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明に係るパワーウインドウ装置は、車両の窓を構成する開閉体と、該開閉体を駆動するモーターと、該モーターの回転に伴いパルスを発生するパルス発生部と、前記モーターを制御する制御部とを有するパワーウインドウ装置において、
前記制御部は、前記パルス発生部からのパルス数を基準位置に対応するパルス基準値に加えることで、前記開閉体の基準位置からの高さ位置を検出する位置検出手段と、該位置検出手段で基準位置とする前記開閉体の上端ロック位置に対応するパルス基準値を設定する基準位置設定手段と、前記パルス発生部からのパルスの周期により前記モーターのロックの有無を検出するロック検出手段と、該ロック検出手段で前記モーターのロックを検出した場合に、前記位置検出手段で検出した前記開閉体の高さ位置が前記基準位置近傍に設定された非検知領域にあるか否かで、前記開閉体が上端ロック位置に到達したか挟み込みを生じたかを判別する挟み込み検知手段と、前記モーターの駆動電圧を検出する電圧検出手段とを有し、
前記基準位置設定手段は、前記挟み込み検知手段により前記開閉体が上端ロック位置に到達したと判別されると、前記電圧検出手段で検出された前記モーターの駆動電圧に応じて前記パルス基準値を補正し設定することを特徴として構成されている。
【0012】
また、本発明に係るパワーウインドウ装置は、前記基準位置設定手段は、予め計測された前記上端ロック位置における電圧と基準電圧におけるパルス基準値からのパルス数のずれとの関係から、前記電圧検出手段で検出された前記モーターの駆動電圧に対応するパルス数のずれを算出し、該算出されたパルス数のずれを基準電圧におけるパルス基準値に加えることにより、当該駆動電圧における前記パルス基準値を設定することを特徴として構成されている。
【0013】
さらに、本発明に係るパワーウインドウ装置は、前記制御部は、前記非検知領域の下端位置に対応するパルス値を設定する領域設定手段をさらに有し、該領域設定手段は、前記開閉体が閉鎖方向に駆動されているときに前記電圧検出手段で検出された前記モーターの駆動電圧に応じて前記非検知領域の下端位置に対応するパルス値を補正し設定することを特徴として構成されている。
【0014】
さらにまた、本発明に係るパワーウインドウ装置は、前記領域設定手段は、予め計測された前記上端ロック位置における電圧と基準電圧におけるパルス基準値からのパルス数のずれとの関係から、前記電圧検出手段で検出された前記モーターの駆動電圧に対応するパルス数のずれを算出し、該算出されたパルス数のずれを基準電圧における前記非検知領域の下端位置に対応するパルス値に加えることにより、当該駆動電圧における前記非検知領域の下端位置に対応するパルス値を設定することを特徴として構成されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るパワーウインドウ装置によれば、挟み込み検知手段により開閉体が上端ロック位置に到達したと判別されると、電圧検出手段で検出されたモーターの駆動電圧に応じてパルス基準値を補正し設定することにより、モーターの駆動電圧が変化しても、開閉体の実際の位置とパルス数に基づいて検出される開閉体の位置との誤差を小さくすることができ、開閉体の位置検出精度を高くすることができるから、非検出領域を小さく設定しても誤作動を防止可能であり、より細いものであっても挟み込み検知が可能となるようにすることができる。
【0016】
また、本発明に係るパワーウインドウ装置によれば、予め計測された上端ロック位置における電圧と基準電圧におけるパルス基準値からのパルス数のずれとの関係から、電圧検出手段で検出されたモーターの駆動電圧に対応するパルス数のずれを算出し、算出されたパルス数のずれを基準電圧におけるパルス基準値に加えることにより、当該駆動電圧におけるパルス基準値を設定することにより、パルス発生部からのパルス信号についての処理で上端ロック位置の補正、設定を行うことができ、簡易な処理とすることができる。
【0017】
さらに、本発明に係るパワーウインドウ装置によれば、開閉体が閉鎖方向に駆動されているときに電圧検出手段で検出されたモーターの駆動電圧に応じて非検知領域の下端位置に対応するパルス値を補正し設定することにより、前回開閉時に設定された基準位置に対応するパルス基準値に基づいて非検知領域の下端位置を設定する場合に比べて、より精度よく挟み込み検知を行うことができるから、非検出領域をさらに小さく設定しても誤作動を防止することができ、より細いものであっても挟み込み検知を可能とすることができる。
【0018】
さらにまた、本発明に係るパワーウインドウ装置によれば、予め計測された上端ロック位置における電圧と基準電圧におけるパルス基準値からのパルス数のずれとの関係から、電圧検出手段で検出されたモーターの駆動電圧に対応するパルス数のずれを算出し、算出されたパルス数のずれを基準電圧における非検知領域の下端位置に対応するパルス値に加えることにより、当該駆動電圧における非検知領域の下端位置に対応するパルス値を設定することにより、パルス発生部からのパルス信号についての処理で上端ロック位置の補正、設定を行うことができ、簡易な処理とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態におけるパワーウインドウ装置の概要構成図である。
【図2】モーター5を制御するための構成図である。
【図3】パルス発生部13からのパルス信号の例を表したチャート図である。
【図4】開閉体の上端部と上部サッシュとの拡大断面図である。
【図5】モーターの駆動電圧に対するパルス数の検出に基づく基準位置と実際の上端ロック位置のずれの関係を表したグラフである。
【図6】開閉体が上昇しているときにおける挟み込み検知及び基準位置設定のフローチャートである。
【図7】非検知領域の下端位置を補正する場合における電圧とパルス数の関係を表したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態について図面に沿って詳細に説明する。図1には、本実施形態におけるパワーウインドウ装置の概要構成図を示している。本実施形態のパワーウインドウ装置は、自動車などの車両のドア1に設けられる窓ガラスからなる開閉体2と、この開閉体2を上下動させるモーター5を含む窓駆動部4と、窓駆動部4の駆動制御を行う車両装置6とを有して構成されている。なお、図1において車両装置6は便宜上、ドア1に描かれているが、車両内のいずれにあってもよい。
【0021】
ドア1は開口1aを備え、この開口1aは、開閉体2が上下動することにより開閉される。開閉体2が下降することにより、開口1aは開いていき、開閉体2が上昇することにより、開口1aは閉じていく。そして、開閉体2が上端位置まで上昇することにより、開口1aが全閉状態となる。このとき、開閉体2の上辺は、ドア1の上辺を構成する上部サッシュ3に突き当たる。
【0022】
窓駆動部4は、ドア1内に納められて開閉体2と連係し、これを上下動させることができる。その動力となるのは、窓駆動部4に設けられるモーター5である。モーター5は、正逆両方に回転することが可能であり、一方に回転することで開閉体2を上昇方向に駆動し、他方に回転することで開閉体2を下降方向に駆動する。このモーター5の回転を制御することにより、開閉体2による開口1aの開閉を制御することができる。
【0023】
図2には、モーター5を制御するための構成図を示している。モーター5の周囲には、2箇所にパルス発生部13が設けられている。パルス発生部13はモーター5に内蔵されていてもよいし、また外付けであってもよく、それぞれモーター5の回転に伴いパルス信号を発生するものである。パルス発生部13からのパルス信号は、モーター5が所定角度回転したときに1つの信号が発生されるから、パルス信号の個数を計数することによりモーター5の回転量を計測することができ、また、パルス信号の周期を検出することによりモーター5の回転速度を計測することができる。
【0024】
図3には、パルス発生部13からのパルス信号の例を示している。この図において、パルス1は、2箇所のパルス発生部13のうち一方のパルス発生部13からのパルス信号を表し、パルス2は、他方のパルス発生部13からのパルス信号を表している。モーター5が回転すると、2つのパルス発生部13は、位相のみ異なる信号を発生する。いずれかのパルス信号を基準とした位相差が正負いずれであるかによって、モーター5の回転方向を判別することができる。なお、ここでは開閉体2の下降方向を正方向とし、開閉体2の上昇方向を負方向とする。
【0025】
モーター5に対する電力供給制御及びパルス発生部13からのパルス信号の処理は、車両装置6により行われる。車両装置6は、車内に設置されるスイッチ11と、各種制御を行う制御部10とを有している。制御部10は、スイッチ11による操作に従って、モーター5に対する制御を行うと共に、パルス発生部13からのパルス信号を処理し、開閉体2において挟み込みが発生したと判断した場合や、開閉体2が上端ロック位置まで到達した場合などには、自動的にモーター5に対する制御を行う。
【0026】
車両装置6に対しては、電源12から電力が供給され、この電力によりモーター5の駆動がなされる。電源12は、一般的な自動車のバッテリーであるため、車両の状態、例えばエンジンが動作しているか否か、あるいはエアコン等の別の機器が動作しているかなどによって、電圧が変動する。本実施形態では、12Vを基準電圧とし、概ね10〜16Vの範囲で電圧が変動するものと想定する。
【0027】
図4には、開閉体2の上端部と上部サッシュ3との拡大断面図を示している。図4(a)は開閉体2の上端部が上部サッシュ3近傍にある状態で、図4(b)は開閉体2の上端部が上部サッシュ3に突き当たり、上端ロック位置に到達した状態を表している。図4(a)に示すように、上部サッシュ3は、下方開放状の凹部3aを有し、この凹部3aにはその形状に適合するゴム製の気密材3bが納められている。気密材3bは、凹部3aに対して当接する略コ字状に形成されると共に、凹部3aの開口側両端部には、それぞれ凹部3aの中央側に向かって伸びるヒレ部3cを有している。開閉体2は、凹部3aに納められた気密材3bの幅に略適合する幅を有して形成されている。したがって、開閉体2は気密材3bの内部に進入することが可能となっている。
【0028】
図4(a)において、気密材3bのうち下方に向かって面する壁の内面位置が、開閉体2の上端ロック位置であり、上昇してきた開閉体2は、上端面がこの位置に突き当たって停止する。この上端ロック位置から下方に所定長さ離れた位置までは、開閉体2の挟み込み検知において、挟み込みと判別しない非検出領域である。開閉体2の挟み込み検知は、パルス発生部13からのパルス信号に基づいて検出されるモーター5のトルクに対応する回転速度が、急激に低下したことを検出してなされるが、開閉体2が上端ロック位置に突き当たる際にも、同様の回転速度低下が生じるので、これらを区別するため、非検出領域を設けてある。
【0029】
上述のように、開閉体2の移動量はパルス発生部13からのパルス数によって検出できるから、開閉体2が上端ロック位置にあるときに、該上端ロック位置を基準位置としてそれに対応するパルス基準値を設定しておき、その位置からどれだけのパルス数を正方向及び負方向に検出したかによって、開閉体2の位置を検出することができる。
【0030】
図4(b)に示すように、開閉体2の上端が、上端ロック位置に到達したとき、気密材3bのヒレ部3cは変形して開閉体2に圧接しており、これによって車内外の気密性が確保される。開閉体2が上昇して上端ロック位置に突き当たったとき、開閉体2はそれ以上移動しないが、モーター5はダンパー特性に応じて少し回転し、その後停止する。したがって、開閉体2が停止してもパルス発生部13からはパルス信号がいくつか発生される。その後モーター5が停止した状態で、基準位置に対応するパルス基準値が再設定される。したがって、パルス数の検出に基づく基準位置と実際の上端ロック位置には、多少のずれが生じる。このずれを考慮して、非検出領域がある程度の幅を持って設定される。
【0031】
モーター5が開閉体2の停止後に回転する量は、モーター5の駆動電圧によって変化する。このため、モーター5の駆動電圧が異なると、パルス数の検出に基づく基準位置と実際の上端ロック位置のずれ量も変化する。図5には、モーター5の駆動電圧に対するパルス数の検出に基づく基準位置と実際の上端ロック位置のずれの関係を示している。この図では、パルス数の検出に基づく基準位置と実際の上端ロック位置のずれ量は、パルス数で表されており、また、基準電圧である12Vにおいて0であるものとしている。
【0032】
図5に示すように、基準電圧より電圧が小さくなることにより、パルス数の検出に基づく基準位置と実際の上端ロック位置のずれが、正方向に大きくなる。また、基準電圧より電圧が大きくなることにより、パルス数の検出に基づく基準位置と実際の上端ロック位置のずれが、負方向に大きくなる。本実施形態では、図5に示した関係に基づき、パルス基準値を補正する。なお、図5の関係は、予め計測しておく必要がある。
【0033】
車両装置6の制御部10は、挟み込み検知及び基準位置設定を行うために、パルス発生部13からのパルス数を、基準位置に対応するパルス基準値に加えることで、開閉体2の基準位置からの高さ位置を検出する位置検出手段と、基準位置に対応するパルス基準値を設定する基準位置設定手段と、パルス発生部13からのパルスの周期によりモーター5のロックの有無を検出するロック検出手段と、ロック検出手段でモーター5のロックを検出した場合に、位置検出手段で検出した開閉体の高さ位置が、基準位置近傍に設定された非検知領域にあるか否かで、開閉体が上端ロック位置に到達したか挟み込みを生じたかを判別する挟み込み検知手段と、モーター5の駆動電圧を検出する電圧検出手段とを有している。
【0034】
図6には、開閉体2が上昇しているときにおける挟み込み検知及び基準位置設定のフローチャートを示している。開閉体2が上昇しているとき(S1)、位置検出手段は、パルス発生部13からのパルス数をカウントし、開閉体2の位置を随時更新する。ロック検出手段は、モーター5におけるトルク変化を監視し(S2)、トルク変化がなければそれをそのまま継続する。モーター5のトルクは、パルス発生部13からのパルス周期から導かれるモーター5の回転数を用いて算出される。そしてそのトルク変化率が所定以上であった場合に、トルク変化があったものと検出する。なお、トルク変化につき、パルス周期からトルクを算出せず、モーターの回転数の変化率で検出するようにしてもよく、あるいは、モーターを駆動する電流値やその変化率から算出してもよい。
【0035】
ロック検出手段でトルク変化を検出した場合、挟み込み検知手段は、開閉体2が非検知領域内にあるか否かを判別する(S3)。非検知領域は、下端位置に対応するパルス値が、基準位置に対応するパルス基準値から所定パルス数分だけ下方に予め設定されており、位置検出手段で検出された開閉体2の位置に対応するパルス値が、パルス基準値から非検知領域の下端位置に対応するパルス値までの範囲にあるか否かが判別される。ここで開閉体2が非検知領域内にはない、すなわち開閉体2が上端ロック位置から所定距離下方位置までの領域にないと判別された場合、挟み込み検知手段は挟み込みが発生したと判定する(S4)。この場合、制御部10はモーター5を逆転させて開閉体2を下降させる制御を行う(S5)。これによって挟み込みは解消される。
【0036】
S3において開閉体2が非検知領域内にあると判別された場合、挟み込み検知手段は開閉体2が上端ロック位置に到達したものと判別する(S6)。この場合、電圧検出手段によりモーター5の駆動電圧が検出される(S7)。続いて、基準位置設定手段によりパルス基準値が補正、設定される(S8)。非検出領域の下端位置に対応するパルス値は、前述の通りパルス基準値から所定パルス分だけ下方位置に設定されるから、パルス基準値の設定に伴い、これも設定されることとなる。
【0037】
パルス基準値は、モーター5の駆動電圧が基準電圧(12V)のとき、0に設定される。この場合、開閉体2が再度下降する際には、パルス数が0から正方向に加算されていき、開閉体2の位置もそれに対応したものとして検出される。
【0038】
図5で説明したように、モーター5の駆動電圧で変化すると、上端ロック位置におけるパルス数にはずれが生じる。したがって、基準位置設定手段は、S7において電圧検出手段で検出されたモーター5の駆動電圧に対応するパルス数のずれを図5の関係から算出し、その値をパルス基準値として設定する。例えば、モーター5の駆動電圧が14Vであった場合、パルス数のずれは−5であるから、パルス基準値は−5となり、開閉体2が再度下降する際には、パルス数が−5から正方向に加算されていき、開閉体2の位置もそれに対応したものとして検出される。
【0039】
このように、開閉体2が上端ロック位置に到達したとき、モーター5の駆動電圧に応じてパルス基準値を設定するようにしたので、モーター5の駆動電圧が変化しても、開閉体2の実際の位置とパルス数に基づいて検出される開閉体2の位置との誤差を小さくすることができる。これにより、開閉体2の位置検出精度が高まるから、非検出領域を小さく設定しても誤作動を防止することができ、より細いものであっても挟み込み検知が可能となるようにすることができる。
【0040】
開閉体2の上端ロック位置におけるパルス基準値を設定したら、制御部10はモーター5を停止させ(S9)、開閉体2の上昇時における制御を終了する。S8で設定されたパルス基準値は、次に開閉体2が開閉するときに、その位置検出において用いられることとなる。
【0041】
本実施形態では、非検知領域の下端位置に対応するパルス値が、基準位置の設定の際に併せて設定されるが、これを開閉体2の閉鎖方向への駆動、すなわち上昇時におけるモーター5の駆動電圧に応じて補正するようにしてもよい。開閉体2による挟み込みが発生する場合にも、モーター5の駆動電圧に応じて、開閉体2の実際の位置とパルス数に基づいて検出される開閉体2の位置とにずれが生じるから、非検知領域の下端位置については、開閉体2の上昇時におけるモーター5の駆動電圧に基づき補正することで、より精度よく挟み込み検知を行うことができる。この設定を行う手段として、制御部10はさらに領域設定手段を備える。
【0042】
図7には、非検知領域の下端位置を補正する場合における電圧とパルス数の関係につき示している。図7において実線で示しているのが、非検出領域の下端位置に対応するパルス値であり、破線で示しているのが、基準位置に対応するパルス値である。破線の基準位置に対応するパルス値は、開閉体2が上昇しているときのモーター5の駆動電圧に応じた基準位置に対応している。つまり、開閉体2が上端ロック位置に到達した際に再設定されるべきパルス基準値を示している。
【0043】
図7の例において非検知領域の下端位置は、開閉体2が上端ロック位置に到達した際に再設定されるべきパルス基準値から25パルス分だけ下方位置となるように設定される。したがって、上昇時におけるモーター5の駆動電圧が基準電圧(12V)である場合において、非検知領域の下端位置に対応するパルス値は25に設定される。
【0044】
電圧検出手段で検出した上昇時におけるモーター5の駆動電圧が基準電圧と異なる場合には、図7においてその駆動電圧に応じたパルス値が、非検知領域の下端位置に対応するパルス値として設定される。この設定は、図6においてS1の開閉体2の上昇中に領域設定手段により行われる。
【0045】
したがって例えば、上昇時におけるモーター5の駆動電圧が10Vであった場合、領域設定手段は非検知領域の下端位置に対応するパルス値を30と設定する。このパルス値は、図6のS3において開閉体2の位置が非検知領域にあるか否かを判別する際に用いられる。モーター5の駆動電圧が10Vの場合の例では、S3において位置検出手段で検出された開閉体2の位置に対応するパルス値が、30より小さければ、非検知領域にあるものと判別し、30以上であれば、非検知領域にはないものと判別する。
【0046】
このように、非検知領域の下端位置に対応するパルス値を、開閉体2が上昇中のモーター5の駆動電圧により設定することで、前回開閉時に設定された基準位置に対応するパルス基準値に基づいて非検知領域の下端位置を設定する場合に比べて、より精度よく挟み込み検知を行うことができるから、非検出領域をさらに小さく設定しても誤作動を防止することができ、より細いものであっても挟み込み検知を可能とできる。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の適用は本実施形態には限られず、その技術的思想の範囲内において様々に適用されうるものである。例えば、本実施形態では図5や図7に示すように、測定された電圧とパルス値のずれの関係を用いているが、図5あるいは図7における横軸はモーター駆動電流値でもよいし、モータートルクでもよい。また、本実施形態においてロック検出手段は、パルス発生部からのパルスの周期によりトルク変化を検出しているが、その代わりに、モーターを駆動する電流値やその変化率を用いてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 ドア
2 開閉体
3 上部サッシュ
4 窓駆動部
5 モーター
6 車両装置
10 制御部
11 スイッチ
12 電源
13 パルス発生部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の窓を構成する開閉体と、該開閉体を駆動するモーターと、該モーターの回転に伴いパルスを発生するパルス発生部と、前記モーターを制御する制御部とを有するパワーウインドウ装置において、
前記制御部は、前記パルス発生部からのパルス数を基準位置に対応するパルス基準値に加えることで、前記開閉体の基準位置からの高さ位置を検出する位置検出手段と、該位置検出手段で基準位置とする前記開閉体の上端ロック位置に対応するパルス基準値を設定する基準位置設定手段と、前記パルス発生部からのパルスの周期により前記モーターのロックの有無を検出するロック検出手段と、該ロック検出手段で前記モーターのロックを検出した場合に、前記位置検出手段で検出した前記開閉体の高さ位置が前記基準位置近傍に設定された非検知領域にあるか否かで、前記開閉体が上端ロック位置に到達したか挟み込みを生じたかを判別する挟み込み検知手段と、前記モーターの駆動電圧を検出する電圧検出手段とを有し、
前記基準位置設定手段は、前記挟み込み検知手段により前記開閉体が上端ロック位置に到達したと判別されると、前記電圧検出手段で検出された前記モーターの駆動電圧に応じて前記パルス基準値を補正し設定することを特徴とするパワーウインドウ装置。
【請求項2】
前記基準位置設定手段は、予め計測された前記上端ロック位置における電圧と基準電圧におけるパルス基準値からのパルス数のずれとの関係から、前記電圧検出手段で検出された前記モーターの駆動電圧に対応するパルス数のずれを算出し、該算出されたパルス数のずれを基準電圧におけるパルス基準値に加えることにより、当該駆動電圧における前記パルス基準値を設定することを特徴とする請求項1記載のパワーウインドウ装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記非検知領域の下端位置に対応するパルス値を設定する領域設定手段をさらに有し、該領域設定手段は、前記開閉体が閉鎖方向に駆動されているときに前記電圧検出手段で検出された前記モーターの駆動電圧に応じて前記非検知領域の下端位置に対応するパルス値を補正し設定することを特徴とする請求項1または2記載のパワーウインドウ装置。
【請求項4】
前記領域設定手段は、予め計測された前記上端ロック位置における電圧と基準電圧におけるパルス基準値からのパルス数のずれとの関係から、前記電圧検出手段で検出された前記モーターの駆動電圧に対応するパルス数のずれを算出し、該算出されたパルス数のずれを基準電圧における前記非検知領域の下端位置に対応するパルス値に加えることにより、当該駆動電圧における前記非検知領域の下端位置に対応するパルス値を設定することを特徴とする請求項3記載のパワーウインドウ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−144923(P2012−144923A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4775(P2011−4775)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】