パワートレイン支持装置
【課題】搭載作業の煩雑化を抑制することができるパワートレイン支持装置を提供する。
【解決手段】パワートレイン支持装置1は、車体に設けられ、長穴13a、13aが貫設された1対の第1ブラケット11、12と、パワートレイン9に設けられ、長穴13a、13aに挿通可能な軸部25b、25bをもつ1対の第1マウント21、22と、車体に設けられた第2ブラケット31と、パワートレイン9に設けられた第2マウント41とを備える。各軸部25b、25bが各長穴13a、13aに挿通されて固定され、第2マウント41が第2ブラケット31に固定されて、パワートレイン9が車体上で支持される。各第1ブラケット11、12には、レバー70の支点部71を揺動可能に支持する支点支持部13b、13cが形成され、各第1マウント21、22には、レバー70の作用点部72が当接する作用点当接部26a、26bが形成される。
【解決手段】パワートレイン支持装置1は、車体に設けられ、長穴13a、13aが貫設された1対の第1ブラケット11、12と、パワートレイン9に設けられ、長穴13a、13aに挿通可能な軸部25b、25bをもつ1対の第1マウント21、22と、車体に設けられた第2ブラケット31と、パワートレイン9に設けられた第2マウント41とを備える。各軸部25b、25bが各長穴13a、13aに挿通されて固定され、第2マウント41が第2ブラケット31に固定されて、パワートレイン9が車体上で支持される。各第1ブラケット11、12には、レバー70の支点部71を揺動可能に支持する支点支持部13b、13cが形成され、各第1マウント21、22には、レバー70の作用点部72が当接する作用点当接部26a、26bが形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパワートレイン支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の図1及び図2に従来のパワートレイン支持装置が開示されている。このパワートレイン支持装置は、車体に互いに近づく方向に延びて設けられた1対の第1ブラケットと、パワートレインの幅方向で互いに離れる方向に設けられた1対の第1マウントとを備えている。各第1ブラケットには穴が貫設されている。各第1マウントは各穴に挿通可能な軸部をもっている。
【0003】
また、このパワートレイン支持装置は、両第1ブラケット及び両第1マウントから車両の前後方向に離れた位置で、車体とパワートレインとの間に設けられる1つの防振ユニットを備えている。特許文献1には防振ユニットの構成について明記されてはいないが、一般的にこれは、車体に設けられる1つの第2ブラケットと、パワートレインに設けられる1つの第2マウントとを備えている。
【0004】
そして、このパワートレイン支持装置では、各第1マウントの軸部が各第1ブラケットの穴に挿通されて固定され、かつ第2マウントが第2ブラケットに固定されることにより、パワートレインを車体上で支持する。これにより、このパワートレイン支持装置は、パワートレインが発生させる振動を減衰させ、振動が車体に伝達されることを抑制することが可能となっている。
【0005】
【特許文献1】特開2001−165242号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記従来のパワートレイン支持装置では、一般的に、パワートレインを車体上に吊り上げた状態から、位置調整しつつ下降させて、各第1マウントの軸部を各第1ブラケットの穴に挿通させるという搭載作業が実施されている。ここで、吊り上げられたパワートレインの幅方向の位置調整に高い精度を求めることが難しいことから、各穴は、互いに近づく方向に長い長穴とされているのが通常である。このため、各第1マウントの軸部が各第1ブラケットの穴に挿通されても、パワートレインが本来の位置から大きくずれる場合が生じ得る。この場合、このパワートレイン支持装置では、第2ブラケット及び第2マウントをそれぞれ構成する金属部材同士が干渉して、異音が発生する不具合が生じるおそれがある。このため、パワートレインを再び吊り上げて、パワートレインが本来の位置に収まるように位置調整をやり直さなければならず、搭載作業の煩雑化を招いている。
【0007】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、搭載作業の煩雑化を抑制することができるパワートレイン支持装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のパワートレイン支持装置は、車体に互いに近づく方向に延びて設けられ、互いに近づく方向に長い長穴が貫設された1対の第1ブラケットと、
パワートレインの幅方向で互いに離れる方向に設けられ、前記長穴に挿通可能な軸部をもつ1対の第1マウントと、
両前記第1ブラケットから車両の前後方向に離れた位置で、前記車体に設けられる1つの第2ブラケットと、
両前記第1マウントから車両の前後方向に離れた位置で、前記パワートレインに設けられる1つの第2マウントとを備え、
各前記軸部が各前記長穴に挿通されて固定され、かつ前記第2マウントが前記第2ブラケットに固定されることにより、前記パワートレインを前記車体上で支持するパワートレイン支持装置において、
各前記第1ブラケットには、レバーの支点部を揺動可能に支持する支点支持部が形成され、
各前記第1マウントには、前記レバーの作用点部が当接する作用点当接部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
このような構成である本発明のパワートレイン支持装置では、各第1マウントの軸部が各第1ブラケットの長穴に挿通され、パワートレインが本来の位置から大きくずれている場合、作業者は、レバーを使用してパワートレインの幅方向の位置調整を行うことができる。
【0010】
ここで、レバーは、力点部と支点部と作用点部とを有するものであり、例えば、直線形状又は屈曲形状の棒状体である。作業者は、このレバーを用意して、支点部を第1ブラケットの支点支持部に揺動可能に支持させるとともに、作用点部を第1マウントの作用点当接部に当接させる。そして、作業者は、パワートレインをずらしたい方向に作用点部が変位するように力点部に力を入力し、レバーを支点支持部周りで揺動させる。その結果、変位する作用点部により作用点当接部が押されるので、パワートレインをずらしたい方向に変位させることができる。
【0011】
こうして、このパワートレイン支持装置では、パワートレインを再び吊り上げなくても、パワートレインが本来の位置に収まるように位置調整することができる。
【0012】
したがって、本発明のパワートレイン支持装置は、搭載作業の煩雑化を抑制することができる。その結果、このパワートレイン支持装置では、第2ブラケット及び第2マウントをそれぞれ構成する金属部材同士が干渉して、異音が発生する不具合が生じ難い。
【0013】
本発明のパワートレイン支持装置において、各第1マウントは、パワートレインに固定される金属製のマウント本体と、マウント本体の裏側に一体に配設された緩衝部材と、緩衝部材に固定され、第1ブラケット側に軸部をもつ締結部材とを有し、支点支持部は、作用点部を裏側から挿通可能に各第1ブラケットに貫設された貫通穴であり、作用点当接部は、作用点部を差し込み可能にマウント本体の裏側に凹設された凹部であることが好ましい。
【0014】
このような具体的構成である本発明のパワートレイン支持装置では、作業者がレバーを支点支持部としての貫通穴に挿通させて、支点部を揺動可能に支持させるとともに、レバーの先端側の作用点部を作用点当接部としての凹部に差し込んで当接させる。そして、作業者は、パワートレインをずらしたい方向に作用点部が変位するように力点部に力を入力し、レバーを貫通穴周りで揺動させる。その結果、変位する作用点部により凹部が押されるので、パワートレインをずらしたい方向に変位させることができる。こうして、このパワートレイン支持装置は、本発明の作用効果を確実に奏することができる。また、貫通穴や凹部は、従来の部材に容易に追加工することが可能である。このため、このパワートレイン支持装置は、生産コストの上昇も抑制することができる。
【0015】
本発明のパワートレイン支持装置において、車体は、各第1ブラケットが設けられ、互いに対面する1対のサイドフレームと、第2ブラケットが設けられ、内部にパワートレインの駆動力が伝達される車軸が収納されるアクスルハウジングとを有して構成され得る。
【0016】
この場合、アクスルハウジングが内部に車軸を収納する機能だけでなく、車体を構成する構造部材としての機能も兼ねているので、車体は、部品点数を削減されている。そして、このような車体上でパワートレインを支持する本発明のパワートレイン支持装置は、パワートレインが発生させる振動がアクスルハウジングの内部に収納された車軸に伝達されることを抑制することも可能となっている。この構成は、フォークリフト等の産業車両で採用され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。なお、図1〜図3において、紙面右側を車両前方と規定し、紙面左側を車両後方と規定する。
【実施例】
【0018】
実施例のパワートレイン支持装置1は、産業車両の具体的態様として一般的なエンジン駆動式のフォークリフトに適用されるものである。このフォークリフトは、図1及び図2に示すように、車両前方において車両の幅方向に配設された前輪駆動用の車軸8と、車軸8の両端に一体回転可能に配設された1対の前輪(図示しない)と、車両中央に配設されたパワートレイン9と、車両後方において車両の幅方向両側に配設され、操舵に用いられる1対の後輪(図示しない)とを備えている。
【0019】
車軸8は、車両前方に配設された金属製のフロントアクスルハウジング90の内部に、回転可能に軸支された状態で収納されている。パワートレイン9は、エンジン9aとトランスミッション9bとが一体に組み付けられたものである。図2に示すように、パワートレイン9は、トランスミッション9bの前端側下方から車軸8に向けて延在するように配設された駆動軸9cを介して、エンジン9aの稼働により発生した駆動力を車軸8に伝達するようになっている。
【0020】
ところで、パワートレイン9は、エンジン9aの稼働時に大きな振動を発生する。このため、このフォークリフトでは、後述する防振性能を有するパワートレイン支持装置1により、パワートレイン9を車体上で支持している。ここで、車体は、図1に示すように、車両中央の幅方向両側において前後方向に延在して配設され、互いに対面する一対の鋼板製のサイドフレーム91、92と、上述のフロントアクスルハウジング90とを有している。すなわち、フロントアクスルハウジング90は、内部に車軸8を収納する機能だけでなく、車体を構成する構造部材としての機能も有している。そして、サイドフレーム91、92と、フロントアクスルハウジング90とは、図示しない他の車体構成部材とともに一体に結合されて車体を構成している。フォークリフト等の産業車両は、凹凸の激しい悪路を走行することが想定される自動車と異なり、比較的平坦な敷地内を走行するのが通常であるので、このような車体構成が採用されることが多い。
【0021】
以下、パワートレイン支持装置1について詳述する。図1〜図3に示すように、パワートレイン支持装置1は、1対の第1ブラケット11、12と、1対の第1マウント21、22と、1つの第2ブラケット31と、1つの第2マウント41とを備えている。
【0022】
第1ブラケット11、12は、図4に示すように、サイドフレーム91、92の内壁面に設けられ、互いに近づくように車両の幅方向の中央に向かって延びている。各第1ブラケット11、12は、車両の中央を通る垂直軸Cに対して左右対称であるので、第1ブラケット11についてのみ説明し、第1ブラケット12については、第1ブラケット11と共通する構成部材に同一の符号を付して説明を省略する。
【0023】
図5に拡大して示すように、第1ブラケット11は、折り曲げ加工された鋼板がサイドフレーム91の内壁面に溶接固定されてなるものであり、その上面は、車両中央側に向けて傾斜する平らな載置面13とされている。第1ブラケット11の載置面13と第1ブラケット12の載置面13とは、図4に示すように、車両前後方向で見て、逆「ハ」字状に配設されている。
【0024】
図5及び図6に示すように、載置面13は、車両の幅方向に長い矩形であり、その中央には車両の幅方向に長い長穴13aが貫設されている。つまり、第1ブラケット11の長穴13aと第1ブラケット12の長穴13aとは、図4に示すように、互いに近づく方向に長くなっている。
【0025】
図5及び図6に示すように、長穴13aに対して車両中央側及び車両中央から離れる側には、2つの貫通穴13b、13cが形成されている。詳細は後述するが、これらの貫通穴13b、13cが、図11に示すように、レバー70の作用点部72を裏側から挿通可能であるとともに、レバー70の支点部71を揺動可能に支持する支点支持部に相当する。
【0026】
第1マウント21、22は、図4に示すように、エンジン9aの両側面から車両の幅方向外側かつ下方に向けて延在するエンジン側ブラケット9d、9eに対して下方から締結固定され、パワートレイン9の幅方向で互いに互いに離れる方向に延びている。各第1マウント21、22は垂直軸Cに対して左右対称であるので、第1マウント21についてのみ説明し、第1マウント22については、第1マウント21と共通する構成部材に同一の符号を付して説明を省略する。
【0027】
図5に拡大して示すように、第1マウント21は、マウント本体23と、緩衝部材24と、締結部材25とを有している。
【0028】
マウント本体23は、鉄製の平板部材23aと、平板部材23aの上面から上方に向けて突設され、外周面に雄ネジが形成されたエンジン側軸部23bと、エンジン側軸部23bを挿通させつつ、平板部材23aの上面に添設された鉄製の箱型部材23cとをもっている。
【0029】
図5及び図7に示すように、箱型部材23cは、車両の幅方向に長く、かつ裏面側が開放された箱形状である。箱型部材23cの車両中央側及び車両中央から離れる側の側壁には、鉄製の凹部用部材23d、23eが溶接固定されている。これにより、マウント本体23の裏側には、箱型部材23cの車両中央側の側壁と凹部用部材23dとにより囲まれた凹部26aが凹設されている。また、マウント本体23の裏側には、箱型部材23cの車両中央から離れる側の側壁と凹部用部材23eとにより囲まれた凹部26bが凹設されている。詳細は後述するが、この凹部26a、26bが、図11に示すように、レバー70の作用点部71を差し込んで当接させることが可能な作用点当接部に相当する。
【0030】
緩衝部材24は、防振性能を有するゴム製ブロックであり、その上面が平板部材23aの裏面に接着されることにより、マウント本体23の裏側に一体に配設されている。
【0031】
締結部材25は、鉄製の平板部材であり、緩衝部材24の裏面に接着されることにより、緩衝部材24に固定されている。締結部材25は、その裏面から下方に向けて突設され、外周面に雄ネジが形成された第1ブラケット側軸部25bをもっている。
【0032】
図5に示すように、第1マウント21は、エンジン側ブラケット9dの下方に設けられた固定板部材9fに貫設された穴9gに対して、エンジン側軸部23bが裏面側から挿通され、固定板部材9fの上面側からナットがエンジン側軸部23bに螺合されることにより、エンジン側ブラケット9dに締結固定される。図4に示すように、第1マウント22も同様にして、エンジン側ブラケット9eに締結固定される。ここで、エンジン側ブラケット9dの固定板部材9fとエンジン側ブラケット9eの固定板部材9fとは、車両前後方向で見て、逆「ハ」字状に配設されている。このため、第1マウント21と第1マウント22とは、車両前後方向で見て逆「ハ」字状に配設されて、互いに離れる方向に延びている。そして、第1マウント21の第1ブラケット側軸部25bと、第1マウント22の第1ブラケット側軸部25bとは、車両前後方向で見て「ハ」字状に下方に突出することとなる。
【0033】
次に、第2ブラケット31及び第2マウント41について説明する。
【0034】
第2ブラケット31は、図1〜図3に示すように、第1ブラケット11、12から車両前方に離れた位置であるフロントアクスルハウジング90の上部に設けられている。図8に詳しく示すように、第2ブラケット31は、車両の幅方向に細長い矩形であり、フロントアクスルハウジング90の上部に締結固定されるベース部31aと、ベース部31aの上面中央から上方に向けて凸設された略角柱状の支持部31bとが一定に形成された鉄製部材である。支持部31bには、内径の大きなゴムブッシュ用穴32が車両の幅方向に貫設されている。
【0035】
第2マウント41は、図1〜図3に示すように、第1マウント21、22から車両前方に離れた位置であるトランスミッション9bの前面に設けられている。図8に詳しく示すように、第2マウント41は、第2マウント本体42と、円柱状のピン43と、ブッシュ44と、ゴムブッシュ45とを有して構成されている。
【0036】
第2マウント本体42は、車両の幅方向に細長い矩形であり、フロントアクスルハウジング90の前面に締結固定されるベース部42aと、ベース部42aの前面から前方に向けて平行に凸設された略扁平板状の1対の側板部42b、42cとが一体に形成された鉄製部材である。側板部42b、42c同士の間隔は、支持部31bを双方の間に位置させた状態でも、支持部31bの幅方向両側で充分な隙間D1、D2を確保できるように設定されている。
【0037】
ピン43は、車両の幅方向に延在し、ゴムブッシュ用穴32に挿通された状態で、側板部42b、42cに両端を支持されている。ブッシュ44はピン43に外嵌されるとともに、側板部42b、42cに挟持されている。ゴムブッシュ45は、防振性能を有するゴム製であり、ブッシュ44に外嵌されるとともに、ゴムブッシュ用穴32に挿入されている。ピン43、ブッシュ44及びゴムブッシュ45は、第2ブラケット31に対して第2マウント41が車両の幅方向で変位することを規制するものではない。このため、パワートレイン9の車体に対する相対位置が車両の幅方向にずれると、隙間D1、D2の一方が狭くなり、他方が拡がることとなる。
【0038】
第2ブラケット31及び第2マウント41は、双方が予め組み付けられた状態で、トランスミッション9bに第2マウント41のベース部42aが締結固定されている。
【0039】
このパワートレイン支持装置1が適用されるフォークリフトでは、図4に示すように、パワートレイン9の搭載作業において、パワートレイン9を車体上に吊り上げた状態から、位置調整しつつ下降させて、エンジン9a側を各第1マウント21、22及び第1ブラケット11、12により支持させるとともに、トランスミッション9b側を第2ブラケット31及び第2マウント41により支持させる。
【0040】
具体的には、第1ブラケット11の長穴13aに対して、第1ブラケット側軸部25bが上方から挿通され、載置面13の裏面側からナット(図示しない)が第1ブラケット側軸部25bに螺合されることにより、第1マウント21が第1ブラケット11に締結固定される。第1マウント22も同様にして、第1ブラケット12に締結固定される。
【0041】
同時に、図8に示すように、第2マウント41を介して、トランスミッション9bに固定された第2ブラケット31のベース部31aがフロントアクスルハウジング90の上部に締結固定される。
【0042】
こうして、パワートレイン9を車体上で支持するパワートレイン支持装置1は、パワートレイン9が発生させる振動を緩衝部材24及びゴムブッシュ45により減衰させ、振動が車体に伝達されることを抑制することが可能となっている。
【0043】
ここで、このパワートレイン支持装置1では、上述の搭載作業において、第1ブラケット側軸部25b、25bが各第1ブラケット11、12の長穴13a、13aに挿通されても、パワートレイン9が本来の位置から大きくずれている場合がある。具体的には、図9に示すように、パワートレイン9が垂直軸Cに対して傾斜した状態で、第1ブラケット側軸部25b、25bが長穴13a、13aに挿通された場合等である。
【0044】
このような場合において、仮に、第1マウント21、22が第1ブラケット11、12に締結固定されてしまうと、パワートレイン9の車体に対する相対位置が車両の幅方向にずれた状態となる。そうすると、例えば、図10に示すように、第2ブラケット31に対する第2マウント41の車両の幅方向の相対位置が変位して、隙間D1、D2の一方が狭くなり、他方が拡がってしまう。そして、このままの状態でフォークリフトが運転されると、第2ブラケット31の支持部31bと第2マウント41の側板部42b、42cとが干渉して、異音が発生する不具合が発生し得る。このため、図11に示すように、このパワートレイン支持装置1では、下記の通り、作業者が、レバー70を使用してパワートレイン9の位置調整を行うことが可能となっている。
【0045】
レバー70は、真っ直ぐな金属製棒状体であり、下端側が力点部73とされ、中間の部位が支点部71とされ、上端側が作用点部72とされている。
【0046】
作業者は、載置面13の裏面側からレバー70を支点支持部としての貫通穴13b又は貫通穴13cに挿通させて、支点部71を揺動可能に支持させるとともに、作用点部72を作用点当接部としての凹部26a又は凹部26bに差し込んで当接させる。そして、作業者は、パワートレイン9をずらしたい方向に作用点部72が変位するように力点部73に力を入力し、レバー70を貫通穴13b又は貫通穴13c周りで揺動させる。その結果、変位する作用点部72により凹部26a又は凹部26bが押されて、第1マウント21をずらしたい方向に変位させることができる。
【0047】
図11に示す場合において、より具体的に説明すれば、力点部73を車両中央側からサイドフレーム91側に押すことにより、作用点部72がサイドフレーム91側から車両中央側に変位し、凹部26a又は凹部26bが車両中央側に押されて、第1ブラケット11に対する第1マウント21の相対位置が車両中央側に変位する。その結果、長穴13aのサイドフレーム91側に片寄っていた第1ブラケット側軸部25bが長穴13aの中央に変位する。第1ブラケット12に対する第1マウント22の相対位置を変位させる場合も同様である。
【0048】
こうして、このパワートレイン支持装置1では、パワートレイン9を再び吊り上げなくても、パワートレイン9が本来の位置に収まるように位置調整することが可能となっている。
【0049】
したがって、実施例のパワートレイン支持装置1は、搭載作業の煩雑化を抑制することができる。その結果、このパワートレイン支持装置1では、第2ブラケット31及び第2マウント41をそれぞれ構成する金属部材同士が干渉して、異音が発生する不具合が生じ難い。
【0050】
また、このパワートレイン支持装置1において、貫通穴13b、13cや凹部26a、26bは、従来の部材に容易に追加工することができるので、生産コストの上昇を抑制することもできる。さらに、凹部26a、26bは、箱型部材23cの側壁に凹部用部材23d、23eが溶接されることにより頑丈に形成されているので、レバー70の作用点部72が当接しても変形し難い。
【0051】
また、このパワートレイン支持装置1では、車体が上述のサイドフレーム91、92と、フロントアクスルハウジング90とを有して構成されており、フロントアクスルハウジング90が内部に車軸を収納する機能だけでなく、車体を構成する構造部材としての機能も兼ねている。このため、このパワートレイン支持装置1では、車体の部品点数が削減されている。そして、このような車体上でパワートレインを支持するパワートレイン支持装置1は、パワートレイン9が発生させる振動がフロントアクスルハウジング90の内部に収納された車軸8に伝達されることも抑制できる。
【0052】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0053】
例えば、図7に示すように、箱型部材23cと凹部用部材23d、23eとにより凹部26a、26を形成する代わりに、図12及び図13に示すように、箱型部材23cの車両中央側の側壁及び車両中央から離れる側の側壁を変形させて、凹部26c、26dを形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は産業車両や自動車に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施例のパワートレイン支持装置及びパワートレイン支持装置が適用される産業車両の主要部分を示す概略上面図である。
【図2】実施例のパワートレイン支持装置及びパワートレイン支持装置が適用される産業車両の主要部分を示す概略側面図である。
【図3】実施例のパワートレイン支持装置及びサイドフレームを示す概略斜視図である。
【図4】実施例のパワートレイン支持装置に係り、図2のIV−IV断面を示す概略断面図である。
【図5】実施例のパワートレイン支持装置に係り、図4の部分拡大図である。
【図6】実施例のパワートレイン支持装置に係り、図5の矢視VI方向から見た第1ブラケットを示す上面図である。
【図7】実施例のパワートレイン支持装置に係り、図5の矢視VII方向から見たマウント本体を示す上面図である。
【図8】実施例のパワートレイン支持装置に係り、図2の矢視VIII方向から見た第2ブラケット及び第2マウントを示す上面図である。
【図9】実施例のパワートレイン支持装置に係り、図2のIV−IV断面を示す概略断面図である。
【図10】実施例のパワートレイン支持装置に係り、図2の矢視VIII方向から見た第2ブラケット及び第2マウントを示す上面図である。
【図11】実施例のパワートレイン支持装置に係り、図4の部分拡大図である。
【図12】変形例のパワートレイン支持装置に係り、図5の矢視VII方向から見たマウント本体を示す上面図である。
【図13】変形例のパワートレイン支持装置に係り、図12の矢視XIII方向から見たマウント本体を示す側面図である。
【符号の説明】
【0056】
1…パワートレイン支持装置
8…車軸
9…パワートレイン
11、12…第1ブラケット
13a…長穴
13b、13c…支点支持部(貫通穴)
21、22…第1マウント
23…マウント本体
24…緩衝部材
25…締結部材
25b…軸部(第1ブラケット側軸部)
26a、26b、26c、26d…作用点当接部(凹部)
31…第2ブラケット
41…第2マウント
70…レバー
71…支点部
72…作用点部
90、91、92…車体(91、92…サイドフレーム、90…フロントアクスルハウジング)
【技術分野】
【0001】
本発明はパワートレイン支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の図1及び図2に従来のパワートレイン支持装置が開示されている。このパワートレイン支持装置は、車体に互いに近づく方向に延びて設けられた1対の第1ブラケットと、パワートレインの幅方向で互いに離れる方向に設けられた1対の第1マウントとを備えている。各第1ブラケットには穴が貫設されている。各第1マウントは各穴に挿通可能な軸部をもっている。
【0003】
また、このパワートレイン支持装置は、両第1ブラケット及び両第1マウントから車両の前後方向に離れた位置で、車体とパワートレインとの間に設けられる1つの防振ユニットを備えている。特許文献1には防振ユニットの構成について明記されてはいないが、一般的にこれは、車体に設けられる1つの第2ブラケットと、パワートレインに設けられる1つの第2マウントとを備えている。
【0004】
そして、このパワートレイン支持装置では、各第1マウントの軸部が各第1ブラケットの穴に挿通されて固定され、かつ第2マウントが第2ブラケットに固定されることにより、パワートレインを車体上で支持する。これにより、このパワートレイン支持装置は、パワートレインが発生させる振動を減衰させ、振動が車体に伝達されることを抑制することが可能となっている。
【0005】
【特許文献1】特開2001−165242号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記従来のパワートレイン支持装置では、一般的に、パワートレインを車体上に吊り上げた状態から、位置調整しつつ下降させて、各第1マウントの軸部を各第1ブラケットの穴に挿通させるという搭載作業が実施されている。ここで、吊り上げられたパワートレインの幅方向の位置調整に高い精度を求めることが難しいことから、各穴は、互いに近づく方向に長い長穴とされているのが通常である。このため、各第1マウントの軸部が各第1ブラケットの穴に挿通されても、パワートレインが本来の位置から大きくずれる場合が生じ得る。この場合、このパワートレイン支持装置では、第2ブラケット及び第2マウントをそれぞれ構成する金属部材同士が干渉して、異音が発生する不具合が生じるおそれがある。このため、パワートレインを再び吊り上げて、パワートレインが本来の位置に収まるように位置調整をやり直さなければならず、搭載作業の煩雑化を招いている。
【0007】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、搭載作業の煩雑化を抑制することができるパワートレイン支持装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のパワートレイン支持装置は、車体に互いに近づく方向に延びて設けられ、互いに近づく方向に長い長穴が貫設された1対の第1ブラケットと、
パワートレインの幅方向で互いに離れる方向に設けられ、前記長穴に挿通可能な軸部をもつ1対の第1マウントと、
両前記第1ブラケットから車両の前後方向に離れた位置で、前記車体に設けられる1つの第2ブラケットと、
両前記第1マウントから車両の前後方向に離れた位置で、前記パワートレインに設けられる1つの第2マウントとを備え、
各前記軸部が各前記長穴に挿通されて固定され、かつ前記第2マウントが前記第2ブラケットに固定されることにより、前記パワートレインを前記車体上で支持するパワートレイン支持装置において、
各前記第1ブラケットには、レバーの支点部を揺動可能に支持する支点支持部が形成され、
各前記第1マウントには、前記レバーの作用点部が当接する作用点当接部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
このような構成である本発明のパワートレイン支持装置では、各第1マウントの軸部が各第1ブラケットの長穴に挿通され、パワートレインが本来の位置から大きくずれている場合、作業者は、レバーを使用してパワートレインの幅方向の位置調整を行うことができる。
【0010】
ここで、レバーは、力点部と支点部と作用点部とを有するものであり、例えば、直線形状又は屈曲形状の棒状体である。作業者は、このレバーを用意して、支点部を第1ブラケットの支点支持部に揺動可能に支持させるとともに、作用点部を第1マウントの作用点当接部に当接させる。そして、作業者は、パワートレインをずらしたい方向に作用点部が変位するように力点部に力を入力し、レバーを支点支持部周りで揺動させる。その結果、変位する作用点部により作用点当接部が押されるので、パワートレインをずらしたい方向に変位させることができる。
【0011】
こうして、このパワートレイン支持装置では、パワートレインを再び吊り上げなくても、パワートレインが本来の位置に収まるように位置調整することができる。
【0012】
したがって、本発明のパワートレイン支持装置は、搭載作業の煩雑化を抑制することができる。その結果、このパワートレイン支持装置では、第2ブラケット及び第2マウントをそれぞれ構成する金属部材同士が干渉して、異音が発生する不具合が生じ難い。
【0013】
本発明のパワートレイン支持装置において、各第1マウントは、パワートレインに固定される金属製のマウント本体と、マウント本体の裏側に一体に配設された緩衝部材と、緩衝部材に固定され、第1ブラケット側に軸部をもつ締結部材とを有し、支点支持部は、作用点部を裏側から挿通可能に各第1ブラケットに貫設された貫通穴であり、作用点当接部は、作用点部を差し込み可能にマウント本体の裏側に凹設された凹部であることが好ましい。
【0014】
このような具体的構成である本発明のパワートレイン支持装置では、作業者がレバーを支点支持部としての貫通穴に挿通させて、支点部を揺動可能に支持させるとともに、レバーの先端側の作用点部を作用点当接部としての凹部に差し込んで当接させる。そして、作業者は、パワートレインをずらしたい方向に作用点部が変位するように力点部に力を入力し、レバーを貫通穴周りで揺動させる。その結果、変位する作用点部により凹部が押されるので、パワートレインをずらしたい方向に変位させることができる。こうして、このパワートレイン支持装置は、本発明の作用効果を確実に奏することができる。また、貫通穴や凹部は、従来の部材に容易に追加工することが可能である。このため、このパワートレイン支持装置は、生産コストの上昇も抑制することができる。
【0015】
本発明のパワートレイン支持装置において、車体は、各第1ブラケットが設けられ、互いに対面する1対のサイドフレームと、第2ブラケットが設けられ、内部にパワートレインの駆動力が伝達される車軸が収納されるアクスルハウジングとを有して構成され得る。
【0016】
この場合、アクスルハウジングが内部に車軸を収納する機能だけでなく、車体を構成する構造部材としての機能も兼ねているので、車体は、部品点数を削減されている。そして、このような車体上でパワートレインを支持する本発明のパワートレイン支持装置は、パワートレインが発生させる振動がアクスルハウジングの内部に収納された車軸に伝達されることを抑制することも可能となっている。この構成は、フォークリフト等の産業車両で採用され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。なお、図1〜図3において、紙面右側を車両前方と規定し、紙面左側を車両後方と規定する。
【実施例】
【0018】
実施例のパワートレイン支持装置1は、産業車両の具体的態様として一般的なエンジン駆動式のフォークリフトに適用されるものである。このフォークリフトは、図1及び図2に示すように、車両前方において車両の幅方向に配設された前輪駆動用の車軸8と、車軸8の両端に一体回転可能に配設された1対の前輪(図示しない)と、車両中央に配設されたパワートレイン9と、車両後方において車両の幅方向両側に配設され、操舵に用いられる1対の後輪(図示しない)とを備えている。
【0019】
車軸8は、車両前方に配設された金属製のフロントアクスルハウジング90の内部に、回転可能に軸支された状態で収納されている。パワートレイン9は、エンジン9aとトランスミッション9bとが一体に組み付けられたものである。図2に示すように、パワートレイン9は、トランスミッション9bの前端側下方から車軸8に向けて延在するように配設された駆動軸9cを介して、エンジン9aの稼働により発生した駆動力を車軸8に伝達するようになっている。
【0020】
ところで、パワートレイン9は、エンジン9aの稼働時に大きな振動を発生する。このため、このフォークリフトでは、後述する防振性能を有するパワートレイン支持装置1により、パワートレイン9を車体上で支持している。ここで、車体は、図1に示すように、車両中央の幅方向両側において前後方向に延在して配設され、互いに対面する一対の鋼板製のサイドフレーム91、92と、上述のフロントアクスルハウジング90とを有している。すなわち、フロントアクスルハウジング90は、内部に車軸8を収納する機能だけでなく、車体を構成する構造部材としての機能も有している。そして、サイドフレーム91、92と、フロントアクスルハウジング90とは、図示しない他の車体構成部材とともに一体に結合されて車体を構成している。フォークリフト等の産業車両は、凹凸の激しい悪路を走行することが想定される自動車と異なり、比較的平坦な敷地内を走行するのが通常であるので、このような車体構成が採用されることが多い。
【0021】
以下、パワートレイン支持装置1について詳述する。図1〜図3に示すように、パワートレイン支持装置1は、1対の第1ブラケット11、12と、1対の第1マウント21、22と、1つの第2ブラケット31と、1つの第2マウント41とを備えている。
【0022】
第1ブラケット11、12は、図4に示すように、サイドフレーム91、92の内壁面に設けられ、互いに近づくように車両の幅方向の中央に向かって延びている。各第1ブラケット11、12は、車両の中央を通る垂直軸Cに対して左右対称であるので、第1ブラケット11についてのみ説明し、第1ブラケット12については、第1ブラケット11と共通する構成部材に同一の符号を付して説明を省略する。
【0023】
図5に拡大して示すように、第1ブラケット11は、折り曲げ加工された鋼板がサイドフレーム91の内壁面に溶接固定されてなるものであり、その上面は、車両中央側に向けて傾斜する平らな載置面13とされている。第1ブラケット11の載置面13と第1ブラケット12の載置面13とは、図4に示すように、車両前後方向で見て、逆「ハ」字状に配設されている。
【0024】
図5及び図6に示すように、載置面13は、車両の幅方向に長い矩形であり、その中央には車両の幅方向に長い長穴13aが貫設されている。つまり、第1ブラケット11の長穴13aと第1ブラケット12の長穴13aとは、図4に示すように、互いに近づく方向に長くなっている。
【0025】
図5及び図6に示すように、長穴13aに対して車両中央側及び車両中央から離れる側には、2つの貫通穴13b、13cが形成されている。詳細は後述するが、これらの貫通穴13b、13cが、図11に示すように、レバー70の作用点部72を裏側から挿通可能であるとともに、レバー70の支点部71を揺動可能に支持する支点支持部に相当する。
【0026】
第1マウント21、22は、図4に示すように、エンジン9aの両側面から車両の幅方向外側かつ下方に向けて延在するエンジン側ブラケット9d、9eに対して下方から締結固定され、パワートレイン9の幅方向で互いに互いに離れる方向に延びている。各第1マウント21、22は垂直軸Cに対して左右対称であるので、第1マウント21についてのみ説明し、第1マウント22については、第1マウント21と共通する構成部材に同一の符号を付して説明を省略する。
【0027】
図5に拡大して示すように、第1マウント21は、マウント本体23と、緩衝部材24と、締結部材25とを有している。
【0028】
マウント本体23は、鉄製の平板部材23aと、平板部材23aの上面から上方に向けて突設され、外周面に雄ネジが形成されたエンジン側軸部23bと、エンジン側軸部23bを挿通させつつ、平板部材23aの上面に添設された鉄製の箱型部材23cとをもっている。
【0029】
図5及び図7に示すように、箱型部材23cは、車両の幅方向に長く、かつ裏面側が開放された箱形状である。箱型部材23cの車両中央側及び車両中央から離れる側の側壁には、鉄製の凹部用部材23d、23eが溶接固定されている。これにより、マウント本体23の裏側には、箱型部材23cの車両中央側の側壁と凹部用部材23dとにより囲まれた凹部26aが凹設されている。また、マウント本体23の裏側には、箱型部材23cの車両中央から離れる側の側壁と凹部用部材23eとにより囲まれた凹部26bが凹設されている。詳細は後述するが、この凹部26a、26bが、図11に示すように、レバー70の作用点部71を差し込んで当接させることが可能な作用点当接部に相当する。
【0030】
緩衝部材24は、防振性能を有するゴム製ブロックであり、その上面が平板部材23aの裏面に接着されることにより、マウント本体23の裏側に一体に配設されている。
【0031】
締結部材25は、鉄製の平板部材であり、緩衝部材24の裏面に接着されることにより、緩衝部材24に固定されている。締結部材25は、その裏面から下方に向けて突設され、外周面に雄ネジが形成された第1ブラケット側軸部25bをもっている。
【0032】
図5に示すように、第1マウント21は、エンジン側ブラケット9dの下方に設けられた固定板部材9fに貫設された穴9gに対して、エンジン側軸部23bが裏面側から挿通され、固定板部材9fの上面側からナットがエンジン側軸部23bに螺合されることにより、エンジン側ブラケット9dに締結固定される。図4に示すように、第1マウント22も同様にして、エンジン側ブラケット9eに締結固定される。ここで、エンジン側ブラケット9dの固定板部材9fとエンジン側ブラケット9eの固定板部材9fとは、車両前後方向で見て、逆「ハ」字状に配設されている。このため、第1マウント21と第1マウント22とは、車両前後方向で見て逆「ハ」字状に配設されて、互いに離れる方向に延びている。そして、第1マウント21の第1ブラケット側軸部25bと、第1マウント22の第1ブラケット側軸部25bとは、車両前後方向で見て「ハ」字状に下方に突出することとなる。
【0033】
次に、第2ブラケット31及び第2マウント41について説明する。
【0034】
第2ブラケット31は、図1〜図3に示すように、第1ブラケット11、12から車両前方に離れた位置であるフロントアクスルハウジング90の上部に設けられている。図8に詳しく示すように、第2ブラケット31は、車両の幅方向に細長い矩形であり、フロントアクスルハウジング90の上部に締結固定されるベース部31aと、ベース部31aの上面中央から上方に向けて凸設された略角柱状の支持部31bとが一定に形成された鉄製部材である。支持部31bには、内径の大きなゴムブッシュ用穴32が車両の幅方向に貫設されている。
【0035】
第2マウント41は、図1〜図3に示すように、第1マウント21、22から車両前方に離れた位置であるトランスミッション9bの前面に設けられている。図8に詳しく示すように、第2マウント41は、第2マウント本体42と、円柱状のピン43と、ブッシュ44と、ゴムブッシュ45とを有して構成されている。
【0036】
第2マウント本体42は、車両の幅方向に細長い矩形であり、フロントアクスルハウジング90の前面に締結固定されるベース部42aと、ベース部42aの前面から前方に向けて平行に凸設された略扁平板状の1対の側板部42b、42cとが一体に形成された鉄製部材である。側板部42b、42c同士の間隔は、支持部31bを双方の間に位置させた状態でも、支持部31bの幅方向両側で充分な隙間D1、D2を確保できるように設定されている。
【0037】
ピン43は、車両の幅方向に延在し、ゴムブッシュ用穴32に挿通された状態で、側板部42b、42cに両端を支持されている。ブッシュ44はピン43に外嵌されるとともに、側板部42b、42cに挟持されている。ゴムブッシュ45は、防振性能を有するゴム製であり、ブッシュ44に外嵌されるとともに、ゴムブッシュ用穴32に挿入されている。ピン43、ブッシュ44及びゴムブッシュ45は、第2ブラケット31に対して第2マウント41が車両の幅方向で変位することを規制するものではない。このため、パワートレイン9の車体に対する相対位置が車両の幅方向にずれると、隙間D1、D2の一方が狭くなり、他方が拡がることとなる。
【0038】
第2ブラケット31及び第2マウント41は、双方が予め組み付けられた状態で、トランスミッション9bに第2マウント41のベース部42aが締結固定されている。
【0039】
このパワートレイン支持装置1が適用されるフォークリフトでは、図4に示すように、パワートレイン9の搭載作業において、パワートレイン9を車体上に吊り上げた状態から、位置調整しつつ下降させて、エンジン9a側を各第1マウント21、22及び第1ブラケット11、12により支持させるとともに、トランスミッション9b側を第2ブラケット31及び第2マウント41により支持させる。
【0040】
具体的には、第1ブラケット11の長穴13aに対して、第1ブラケット側軸部25bが上方から挿通され、載置面13の裏面側からナット(図示しない)が第1ブラケット側軸部25bに螺合されることにより、第1マウント21が第1ブラケット11に締結固定される。第1マウント22も同様にして、第1ブラケット12に締結固定される。
【0041】
同時に、図8に示すように、第2マウント41を介して、トランスミッション9bに固定された第2ブラケット31のベース部31aがフロントアクスルハウジング90の上部に締結固定される。
【0042】
こうして、パワートレイン9を車体上で支持するパワートレイン支持装置1は、パワートレイン9が発生させる振動を緩衝部材24及びゴムブッシュ45により減衰させ、振動が車体に伝達されることを抑制することが可能となっている。
【0043】
ここで、このパワートレイン支持装置1では、上述の搭載作業において、第1ブラケット側軸部25b、25bが各第1ブラケット11、12の長穴13a、13aに挿通されても、パワートレイン9が本来の位置から大きくずれている場合がある。具体的には、図9に示すように、パワートレイン9が垂直軸Cに対して傾斜した状態で、第1ブラケット側軸部25b、25bが長穴13a、13aに挿通された場合等である。
【0044】
このような場合において、仮に、第1マウント21、22が第1ブラケット11、12に締結固定されてしまうと、パワートレイン9の車体に対する相対位置が車両の幅方向にずれた状態となる。そうすると、例えば、図10に示すように、第2ブラケット31に対する第2マウント41の車両の幅方向の相対位置が変位して、隙間D1、D2の一方が狭くなり、他方が拡がってしまう。そして、このままの状態でフォークリフトが運転されると、第2ブラケット31の支持部31bと第2マウント41の側板部42b、42cとが干渉して、異音が発生する不具合が発生し得る。このため、図11に示すように、このパワートレイン支持装置1では、下記の通り、作業者が、レバー70を使用してパワートレイン9の位置調整を行うことが可能となっている。
【0045】
レバー70は、真っ直ぐな金属製棒状体であり、下端側が力点部73とされ、中間の部位が支点部71とされ、上端側が作用点部72とされている。
【0046】
作業者は、載置面13の裏面側からレバー70を支点支持部としての貫通穴13b又は貫通穴13cに挿通させて、支点部71を揺動可能に支持させるとともに、作用点部72を作用点当接部としての凹部26a又は凹部26bに差し込んで当接させる。そして、作業者は、パワートレイン9をずらしたい方向に作用点部72が変位するように力点部73に力を入力し、レバー70を貫通穴13b又は貫通穴13c周りで揺動させる。その結果、変位する作用点部72により凹部26a又は凹部26bが押されて、第1マウント21をずらしたい方向に変位させることができる。
【0047】
図11に示す場合において、より具体的に説明すれば、力点部73を車両中央側からサイドフレーム91側に押すことにより、作用点部72がサイドフレーム91側から車両中央側に変位し、凹部26a又は凹部26bが車両中央側に押されて、第1ブラケット11に対する第1マウント21の相対位置が車両中央側に変位する。その結果、長穴13aのサイドフレーム91側に片寄っていた第1ブラケット側軸部25bが長穴13aの中央に変位する。第1ブラケット12に対する第1マウント22の相対位置を変位させる場合も同様である。
【0048】
こうして、このパワートレイン支持装置1では、パワートレイン9を再び吊り上げなくても、パワートレイン9が本来の位置に収まるように位置調整することが可能となっている。
【0049】
したがって、実施例のパワートレイン支持装置1は、搭載作業の煩雑化を抑制することができる。その結果、このパワートレイン支持装置1では、第2ブラケット31及び第2マウント41をそれぞれ構成する金属部材同士が干渉して、異音が発生する不具合が生じ難い。
【0050】
また、このパワートレイン支持装置1において、貫通穴13b、13cや凹部26a、26bは、従来の部材に容易に追加工することができるので、生産コストの上昇を抑制することもできる。さらに、凹部26a、26bは、箱型部材23cの側壁に凹部用部材23d、23eが溶接されることにより頑丈に形成されているので、レバー70の作用点部72が当接しても変形し難い。
【0051】
また、このパワートレイン支持装置1では、車体が上述のサイドフレーム91、92と、フロントアクスルハウジング90とを有して構成されており、フロントアクスルハウジング90が内部に車軸を収納する機能だけでなく、車体を構成する構造部材としての機能も兼ねている。このため、このパワートレイン支持装置1では、車体の部品点数が削減されている。そして、このような車体上でパワートレインを支持するパワートレイン支持装置1は、パワートレイン9が発生させる振動がフロントアクスルハウジング90の内部に収納された車軸8に伝達されることも抑制できる。
【0052】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0053】
例えば、図7に示すように、箱型部材23cと凹部用部材23d、23eとにより凹部26a、26を形成する代わりに、図12及び図13に示すように、箱型部材23cの車両中央側の側壁及び車両中央から離れる側の側壁を変形させて、凹部26c、26dを形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は産業車両や自動車に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施例のパワートレイン支持装置及びパワートレイン支持装置が適用される産業車両の主要部分を示す概略上面図である。
【図2】実施例のパワートレイン支持装置及びパワートレイン支持装置が適用される産業車両の主要部分を示す概略側面図である。
【図3】実施例のパワートレイン支持装置及びサイドフレームを示す概略斜視図である。
【図4】実施例のパワートレイン支持装置に係り、図2のIV−IV断面を示す概略断面図である。
【図5】実施例のパワートレイン支持装置に係り、図4の部分拡大図である。
【図6】実施例のパワートレイン支持装置に係り、図5の矢視VI方向から見た第1ブラケットを示す上面図である。
【図7】実施例のパワートレイン支持装置に係り、図5の矢視VII方向から見たマウント本体を示す上面図である。
【図8】実施例のパワートレイン支持装置に係り、図2の矢視VIII方向から見た第2ブラケット及び第2マウントを示す上面図である。
【図9】実施例のパワートレイン支持装置に係り、図2のIV−IV断面を示す概略断面図である。
【図10】実施例のパワートレイン支持装置に係り、図2の矢視VIII方向から見た第2ブラケット及び第2マウントを示す上面図である。
【図11】実施例のパワートレイン支持装置に係り、図4の部分拡大図である。
【図12】変形例のパワートレイン支持装置に係り、図5の矢視VII方向から見たマウント本体を示す上面図である。
【図13】変形例のパワートレイン支持装置に係り、図12の矢視XIII方向から見たマウント本体を示す側面図である。
【符号の説明】
【0056】
1…パワートレイン支持装置
8…車軸
9…パワートレイン
11、12…第1ブラケット
13a…長穴
13b、13c…支点支持部(貫通穴)
21、22…第1マウント
23…マウント本体
24…緩衝部材
25…締結部材
25b…軸部(第1ブラケット側軸部)
26a、26b、26c、26d…作用点当接部(凹部)
31…第2ブラケット
41…第2マウント
70…レバー
71…支点部
72…作用点部
90、91、92…車体(91、92…サイドフレーム、90…フロントアクスルハウジング)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に互いに近づく方向に延びて設けられ、互いに近づく方向に長い長穴が貫設された1対の第1ブラケットと、
パワートレインの幅方向で互いに離れる方向に設けられ、前記長穴に挿通可能な軸部をもつ1対の第1マウントと、
両前記第1ブラケットから車両の前後方向に離れた位置で、前記車体に設けられる1つの第2ブラケットと、
両前記第1マウントから車両の前後方向に離れた位置で、前記パワートレインに設けられる1つの第2マウントとを備え、
各前記軸部が各前記長穴に挿通されて固定され、かつ前記第2マウントが前記第2ブラケットに固定されることにより、前記パワートレインを前記車体上で支持するパワートレイン支持装置において、
各前記第1ブラケットには、レバーの支点部を揺動可能に支持する支点支持部が形成され、
各前記第1マウントには、前記レバーの作用点部が当接する作用点当接部が形成されていることを特徴とするパワートレイン支持装置。
【請求項2】
各前記第1マウントは、前記パワートレインに固定される金属製のマウント本体と、前記マウント本体の裏側に一体に配設された緩衝部材と、前記緩衝部材に固定され、前記第1ブラケット側に前記軸部をもつ締結部材とを有し、
前記支点支持部は、前記作用点部を裏側から挿通可能に各前記第1ブラケットに貫設された貫通穴であり、
前記作用点当接部は、前記作用点部を差し込み可能に前記マウント本体の裏側に凹設された凹部である請求項1記載のパワートレイン支持装置。
【請求項3】
前記車体は、各前記第1ブラケットが設けられ、互いに対面する1対のサイドフレームと、前記第2ブラケットが設けられ、内部に前記パワートレインの駆動力が伝達される車軸が収納されるアクスルハウジングとを有して構成されている請求項1又は2記載のパワートレイン支持装置。
【請求項1】
車体に互いに近づく方向に延びて設けられ、互いに近づく方向に長い長穴が貫設された1対の第1ブラケットと、
パワートレインの幅方向で互いに離れる方向に設けられ、前記長穴に挿通可能な軸部をもつ1対の第1マウントと、
両前記第1ブラケットから車両の前後方向に離れた位置で、前記車体に設けられる1つの第2ブラケットと、
両前記第1マウントから車両の前後方向に離れた位置で、前記パワートレインに設けられる1つの第2マウントとを備え、
各前記軸部が各前記長穴に挿通されて固定され、かつ前記第2マウントが前記第2ブラケットに固定されることにより、前記パワートレインを前記車体上で支持するパワートレイン支持装置において、
各前記第1ブラケットには、レバーの支点部を揺動可能に支持する支点支持部が形成され、
各前記第1マウントには、前記レバーの作用点部が当接する作用点当接部が形成されていることを特徴とするパワートレイン支持装置。
【請求項2】
各前記第1マウントは、前記パワートレインに固定される金属製のマウント本体と、前記マウント本体の裏側に一体に配設された緩衝部材と、前記緩衝部材に固定され、前記第1ブラケット側に前記軸部をもつ締結部材とを有し、
前記支点支持部は、前記作用点部を裏側から挿通可能に各前記第1ブラケットに貫設された貫通穴であり、
前記作用点当接部は、前記作用点部を差し込み可能に前記マウント本体の裏側に凹設された凹部である請求項1記載のパワートレイン支持装置。
【請求項3】
前記車体は、各前記第1ブラケットが設けられ、互いに対面する1対のサイドフレームと、前記第2ブラケットが設けられ、内部に前記パワートレインの駆動力が伝達される車軸が収納されるアクスルハウジングとを有して構成されている請求項1又は2記載のパワートレイン支持装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−154582(P2009−154582A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−332225(P2007−332225)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】
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