パワーモジュール及びそれを用いた電力変換装置
【課題】更なる耐腐食性を向上させたパワーモジュール及びそれを用いた電力変換装置を提供することである。
【解決手段】本発明の課題を解決するために、本発明に係るパワーモジュールは、上それぞれの主面が対向する2枚の金属ベースと、前記一方の金属ベースはケースの第1開口部を塞ぐように配置され、かつ前記他方の金属ベースは前記ケースの第2開口部を塞ぐように配置され、さらに前記ケースと前記2枚の金属ベースとの接合箇所には樹脂系接着剤が塗布されており、前記ケースの内壁と樹脂封止材との間には、前記樹脂系接着剤が露出するように形成された空隙部を有し、当該空隙部は前記第1開口部と連通する。
【解決手段】本発明の課題を解決するために、本発明に係るパワーモジュールは、上それぞれの主面が対向する2枚の金属ベースと、前記一方の金属ベースはケースの第1開口部を塞ぐように配置され、かつ前記他方の金属ベースは前記ケースの第2開口部を塞ぐように配置され、さらに前記ケースと前記2枚の金属ベースとの接合箇所には樹脂系接着剤が塗布されており、前記ケースの内壁と樹脂封止材との間には、前記樹脂系接着剤が露出するように形成された空隙部を有し、当該空隙部は前記第1開口部と連通する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に用いられるパワーモジュール、及びそのパワーモジュールを備えた電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリット自動車のモータを駆動するインバータ等、大電力を扱う半導体装置においては、自動車内での取り付けスペースが狭いので、消費電力が大きなIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の半導体素子を複数個ごとにパッケージ化したものが用いられている。このような電力用の半導体装置は、発熱量が大きいために、効率よく冷却することが必要となる。特に、近年の電力用の半導体装置はパワー密度が向上しているため、半導体装置を冷却液に直接浸漬して冷却を行う必要性が高まってきている。
【0003】
特許文献1は、冷却液に直接浸漬して冷却をおこなう半導体装置を提案している。
【0004】
特許文献1では半導体装置13の電気素子収納容器16をセラミック基板とはんだ等の金属接合材料で構成し、前記電気素子収納容器16からの引き出し電極部17aをエポキシ樹脂,ポリイミド,ポリ塩化ビニル,セラミック等の被覆材61で被覆し、引き出し電極部17aと配線導体42との間に隙間がある場合は隙間を樹脂,ゲル,金属,ゴムなどによりシールし、引き出し電極部17aを電気素子収納容器16から液密的に延設し、半導体装置内部に冷却液11が侵入しないような試みが行われている。
【0005】
また、仮に冷却液11が半導体装置内に浸入しても、半導体装置内部を熱硬化性樹脂やシリコーンゲルで充填することにより、冷却液11が電気素子15や電極17に接触しないような試みが行われている。
【0006】
特許文献1では、半導体装置のケース構造のシール部を金属等の無機材料で構成し、前記シール部をロウ材で接着する構造が必要となる。ここで、ロウ材とは、銀,アルミ,銅、およびすず等で構成された金属材料を加熱溶融し用いるものである。しかしながら、無機材料および金属材料は一般に原材料価格が高く、高重量であり、成型時に700℃以上の加熱を要するため、コスト高であり、耐腐食性に乏しい等の課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−73663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、更なる耐腐食性を向上させたパワーモジュール及びそれを用いた電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明に係るパワーモジュールは、それぞれの主面が対向する2枚の金属ベースと、前記2枚の金属ベースの間に挟まれるパワー半導体素子と、前記2枚の金属ベースの間に挟まれており、かつ前記半導体素子に電力供給するための端子と、前記2枚の金属ベースと前記半導体素子と前記端子の一部とを封止するための樹脂封止材と、前記樹脂封止材により封止された前記2枚の金属ベースを収納するためのケースと、を備え、前記ケースは、前記2枚の金属ベースのうち一方の金属ベースを冷媒に直接接触させる第1開口部と、前記2枚の金属ベースのうち他方の金属ベースを前記冷媒に直接接触させる第2開口部と、前記端子を当該ケースの外部に突出させる第3開口部と、当該第3開口部と対向する有底部と、を形成し、前記一方の金属ベースは前記ケースの前記第1開口部を塞ぐように配置され、かつ前記他方の金属ベースは前記ケースの前記第2開口部を塞ぐように配置され、さらに前記ケースと前記2枚の金属ベースとの接合箇所には樹脂系接着剤が塗布されており、前記ケースの内壁と前記樹脂封止材との間には、前記樹脂系接着剤が露出するように形成された空隙部を有し、当該空隙部は前記第1開口部と連通する。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、パワーモジュール及びそれを用いた電力変換装置の耐腐食性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ハイブリッド自動車の制御ブロックを示す図である。
【図2】ハイブリッド自動車に適用した場合における制御構成図と回路構成図である。
【図3】本実施形態に係る電力変換装置200の設置場所を説明するための分解斜視図を示す。
【図4】本実施形態に係る電力変換装置の全体構成を各構成要素に分解した斜視図である。
【図5】流路19を有する冷却ジャケット12の下面図である。
【図6】本実施形態におけるパワーモジュール300の内部の構造を示す分解図である。
【図7】(a)は本実施形態のパワーモジュール300の断面図であり、(b)は(a)の点線部分の拡大図であり、(c)は(a)の点線部分の拡大図である。
【図8】パワーモジュール300のシール部の組み付け方法を示す工程図である。
【図9】本実施形態のパワーモジュール300のシール部と封止樹脂の間に設けられた空隙部を示した部分断面図である。
【図10】本実施形態におけるパワーモジュール300の全体構成の外観を示す斜視図である。
【図11】本実施形態のコンデンサモジュール500の分解斜視図である。
【図12】(a)は、冷却ジャケット12にパワーモジュールとコンデンサモジュールとバスバーモジュールを組み付けた外観斜視図である。(b)は、(a)の点線囲み部の拡大図である。
【図13】パワーモジュールとコンデンサモジュールを組み付けた冷却ジャケット12とバスバーモジュール800の分解斜視図である。
【図14】保持部材803を除いたバスバーモジュール800の外観斜視図である。
【図15】パワーモジュールとコンデンサモジュールとバスバーモジュール800と補機用パワーモジュール350を組み付けた冷却ジャケット12の外観斜視図である。
【図16】制御回路基板20と金属ベース板11を分離した電力変換装置200の分割斜視図である。
【図17】図16のB面で切り取った電力変換装置200をC方向から見た断面図である。
【図18】本実施形態における実施例1に記載のパワーモジュール300を冷却流路内に挿入する工程を示した図である。
【図19】図本実施形態におけるパワーモジュール300のシール部と封止樹脂の間に設けられた空隙部376に連続気泡をもった多孔質材料が挿入されていることを示した部分断面図である。
【図20】本実施形態におけるパワーモジュール300の封止樹脂とシール部の間の空隙部に面している封止樹脂の表面部分を封止樹脂よりも吸湿性の低い材料381で被覆していることを示した部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に説明する本実施形態の原理を説明する。そこで、これらの課題を解決するため、本実施形態のパワーモジュールはケース構造のシール部分を樹脂で構成しようとするものである。樹脂とはエポキシ樹脂,アクリル樹脂,ウレタン樹脂,ポリイミド,ポリ塩化ビニル,シリコーン,ブチルゴム,ニトリルゴム,スチレンブタジエン等のように400℃以下の加熱,紫外線照射,空気中の酸素の遮断,空気中の水分、あるいは主剤に硬化剤を混合することによる化学反応で硬化させて用いるものであり、前記金属材料に比べて扱いやすく、硬化後に接着性を発現することから上記半導体装置のシール部に用いる材料として望ましい。
【0013】
しかしながら、前記シール部を樹脂で構成する構造で検討したところ、短時間の試験では問題は見られなかったが、長時間の試験では冷却液と接する樹脂部が飽和状態まで吸湿した。シール部の樹脂と半導体を封止する封止樹脂が接している場合、上記樹脂が吸湿した水分は、半導体装置の封止樹脂にも拡散し、封止樹脂も飽和状態まで吸湿した。封止樹脂の内部には微細な気泡や剥離等の欠陥があるため、飽和した水分の一部が水となって溜まり、半導体素子電極や配線間の導電率が高くなった。信頼性試験では、前記欠陥リーク電流が流れ、金属イオンが移動して、半導体素子電極や配線間を短絡し、半導体装置の効率低下や破壊がおこった。
【0014】
よって、取り扱いが簡便な樹脂によってシール部を構成するパワーモジュールが望まれてきたが、従来の技術では上記の欠点が存在し容易には達成されなかった。本実施形態は上記問題を解決したものである。
【0015】
本実施形態では冷却液に直接浸漬するパワーモジュールにおいて、半導体素子周辺のリードフレームおよび配線を封止樹脂によって封止し、前記封止樹脂と冷却液はケース構造により隔離されており、前記ケース構造は金属製の放熱部と樹脂製のシール部からなり、前記樹脂製のシール部と封止樹脂との間に空隙部を設け、その空隙部が冷却液と隔離された半導体装置外部に開放されている。
【0016】
本実施形態のシール部と封止樹脂との間の空隙部には連続気泡をもった多孔質材料が挿入されていても良い。連続気泡をもった多孔質材料とはセラミックまたはポリテトラフルオロエチレンやポリウレタン等によって構成される不織布のことである。
【0017】
本実施形態の封止樹脂とシール部の間の空隙部に面している封止樹脂の表面部分は封止材よりも吸湿性の低い材料で被覆されていてもよい。封止樹脂よりも吸湿性の低い材料とはポリアミドイミド等で構成され、塗装後乾燥することで膜を生成する塗料や、金属イオンを含んだ溶液中に還元剤を添加することによって行う無電解めっきで析出される金属等のことである。
【0018】
シール部と上記封止樹脂の間に空隙部を設け、その空隙部が外部に開放されていると、樹脂シール部が飽和状態まで吸湿しても内部の半導体封止樹脂には直接拡散しない。空隙部の湿度はシール樹脂が吸湿するため上昇するが、外部に開放されているため、外部の湿度に近づいていく。このように封止樹脂の吸湿を抑制できるため、封止樹脂にボイドや剥離等の欠陥があっても水がたまるほどの水分は拡散しない。これにより、封止樹脂の吸湿による半導体素子電極,リードフレーム間および配線間の短絡、およびパワーモジュールの効率低下や破壊を防ぐことができる。
【実施例1】
【0019】
本実施形態に係る電力変換装置200は、ハイブリッド用の自動車や純粋な電気自動車に適用可能であるが、代表例として、ハイブリッド自動車に適用した場合における制御構成と回路構成について、図1と図2を用いて説明する。
【0020】
図1は、ハイブリッド自動車の制御ブロックを示す図である。
【0021】
本実施形態に係る電力変換装置では、車両駆動用電機システムに用いられ、搭載環境や動作的環境などが大変厳しい車両駆動用インバータ装置を例に挙げて説明する。なお、本実施形態の構成は、自動車やトラックなどの車両駆動用電力変換装置として最適であるが、これら以外の電力変換装置、例えば電車や船舶,航空機などの電力変換装置、さらに工場の設備を駆動する電動機の制御装置として用いられる産業用電力変換装置、或いは家庭の太陽光発電システムや家庭の電化製品を駆動する電動機の制御装置に用いられたりする家庭用電力変換装置に対しても適用可能である。
【0022】
図1において、ハイブリッド電気自動車(以下、「HEV」と記述する)110は1つの電動車両であり、2つの車両駆動用システムを備えている。その1つは、内燃機関であるエンジン120を動力源としたエンジンシステムである。エンジンシステムは、主としてHEVの駆動源として用いられる。もう1つは、モータジェネレータ192,194を動力源とした車載電機システムである。車載電機システムは、主としてHEVの駆動源及びHEVの電力発生源として用いられる。モータジェネレータ192,194は例えば同期機あるいは誘導機であり、運転方法によりモータとしても発電機としても動作するので、ここではモータジェネレータと記す。
【0023】
車体のフロント部には前輪車軸114が回転可能に軸支され、前輪車軸114の両端には1対の前輪112が設けられている。車体のリア部には後輪車軸が回転可能に軸支され、後輪車軸の両端には1対の後輪が設けられている(図示省略)。本実施形態のHEVでは、いわゆる前輪駆動方式を採用しているが、この逆、すなわち後輪駆動方式を採用しても構わない。前輪車軸114の中央部には前輪側デファレンシャルギア(以下、「前輪側DEF」と記述する)116が設けられている。前輪側DEF116の入力側にはトランスミッション118の出力軸が機械的に接続されている。トランスミッション118の入力側にはモータジェネレータ192の出力側が機械的に接続されている。モータジェネレータ192の入力側には動力分配機構122を介してエンジン120の出力側及びモータジェネレータ194の出力側が機械的に接続されている。
【0024】
インバータ部140,142は、直流コネクタ138を介してバッテリ136と電気的に接続される。バッテリ136とインバータ部140,142との相互において電力の授受が可能である。本実施形態では、モータジェネレータ192及びインバータ部140からなる第1電動発電ユニットと、モータジェネレータ194及びインバータ部142からなる第2電動発電ユニットとの2つを備え、運転状態に応じてそれらを使い分けている。なお、本実施形態では、バッテリ136の電力によって第1電動発電ユニットを電動ユニットとして作動させることにより、モータジェネレータ192の動力のみによって車両の駆動ができる。さらに、本実施形態では、第1電動発電ユニット又は第2電動発電ユニットを発電ユニットとしてエンジン120の動力或いは車輪からの動力によって作動させて発電させることにより、バッテリ136の充電ができる。
【0025】
バッテリ136はさらに補機用のモータ195を駆動するための電源としても使用される。補機としては例えば、エアコンディショナーのコンプレッサを駆動するモータ、あるいは制御用の油圧ポンプを駆動するモータである。バッテリ136からインバータ部43に直流電力が供給され、インバータ部43で交流の電力に変換されてモータ195に供給される。インバータ部43は、インバータ部140や142と同様の機能を持ち、モータ195に供給する交流の位相や周波数,電力を制御する。モータ195の容量がモータジェネレータ192や194の容量より小さいので、インバータ部43の最大変換電力がインバータ部140や142より小さいが、インバータ部43の回路構成は基本的にインバータ部140や142の回路構成と同じである。なお、電力変換装置200は、インバータ部140,インバータ部142,インバータ部43に供給される直流電流を平滑化するためのコンデンサモジュール500を備えている。
【0026】
次に、図2を用いてインバータ部140やインバータ部142あるいはインバータ部43の電気回路構成を説明する。なお、図2では、代表例としてインバータ部140の説明を行う。
【0027】
インバータ回路144は、上アームとして動作するIGBT328(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)及びダイオード156と、下アームとして動作するIGBT330及びダイオード166と、からなる上下アーム直列回路150をモータジェネレータ192の電機子巻線の各相巻線に対応して3相(U相,V相,W相)分を設けている。それぞれの上下アーム直列回路150は、その中点部分(中間電極169)から交流端子159及び交流コネクタ188を通してモータジェネレータ192への交流電力線(交流バスバー)186と接続する。
【0028】
上アームのIGBT328のコレクタ電極153は正極端子(P端子)157を介してコンデンサモジュール500の正極側のコンデンサの電極に、下アームのIGBT330のエミッタ電極は負極端子(N端子)158を介してコンデンサモジュール500の負極側にコンデンサ電極にそれぞれ電気的に接続されている。
【0029】
制御部170は、インバータ回路144を駆動制御するドライバ回路174と、ドライバ回路174へ信号線176を介して制御信号を供給する制御回路172と、を有している。IGBT328やIGBT330は、制御部170から出力された駆動信号を受けて動作し、バッテリ136から供給された直流電力を三相交流電力に変換する。この変換された電力は、モータジェネレータ192の電機子巻線に供給される。
【0030】
IGBT328は、コレクタ電極153と、信号用エミッタ電極155と、ゲート電極154を備えてる。また、IGBT330は、コレクタ電極163と、信号用のエミッタ電極165と、ゲート電極164を備えてる。ダイオード156が、コレクタ電極153とエミッタ電極との間に電気的に接続されている。また、ダイオード166が、コレクタ電極163とエミッタ電極との間に電気的に接続されている。スイッチング用パワー半導体素子としてはMOSFET(金属酸化物半導体型電界効果トランジスタ)を用いてもよいが、この場合はダイオード156やダイオード166は不要となる。コンデンサモジュール500は、正極側コンデンサ端子506と負極側コンデンサ端子504と直流コネクタ138を介して電気的に接続されている。なお、インバータ部140は、直流正極端子314を介して正極側コンデンサ端子506と接続され、かつ直流負極端子316を介して負極側コンデンサ端子504と接続される。
【0031】
制御回路172は、IGBT328及びIGBT330のスイッチングタイミングを演算処理するためのマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」と記述する)を備えている。マイコンには入力情報として、モータジェネレータ192に対して要求される目標トルク値、上下アーム直列回路150からモータジェネレータ192の電機子巻線に供給される電流値、及びモータジェネレータ192の回転子の磁極位置が入力されている。目標トルク値は、不図示の上位の制御装置から出力された指令信号に基づくものである。電流値は、電流センサ180から信号線182を介して出力された検出信号に基づいて検出されたものである。磁極位置は、モータジェネレータ192に設けられた回転磁極センサ(不図示)から出力された検出信号に基づいて検出されたものである。本実施形態では3相の電流値を検出する場合を例に挙げて説明するが、2相分の電流値を検出するようにしても構わない。
【0032】
制御回路172内のマイコンは、目標トルク値に基づいてモータジェネレータ192のd,q軸の電流指令値を演算し、この演算されたd,q軸の電流指令値と、検出されたd,q軸の電流値との差分に基づいてd,q軸の電圧指令値を演算し、この演算されたd,q軸の電圧指令値を、検出された磁極位置に基づいてU相,V相,W相の電圧指令値に変換する。そして、マイコンは、U相,V相,W相の電圧指令値に基づく基本波(正弦波)と搬送波(三角波)との比較に基づいてパルス状の変調波を生成し、この生成された変調波をPWM(パルス幅変調)信号として、信号線176を介してドライバ回路174に出力する。
【0033】
ドライバ回路174は、下アームを駆動する場合、PWM信号を増幅したドライブ信号を、対応する下アームのIGBT330のゲート電極に出力する。また、ドライバ回路174は、上アームを駆動する場合、PWM信号の基準電位のレベルを上アームの基準電位のレベルにシフトしてからPWM信号を増幅し、これをドライブ信号として、対応する上アームのIGBT328のゲート電極にそれぞれ出力する。
【0034】
また、制御部170は、異常検知(過電流,過電圧,過温度など)を行い、上下アーム直列回路150を保護している。このため、制御部170にはセンシング情報が入力されている。例えば各アームの信号用エミッタ電極155及び信号用エミッタ電極165からは各IGBT328とIGBT330のエミッタ電極に流れる電流の情報が、対応する駆動部(IC)に入力されている。これにより、各駆動部(IC)は過電流検知を行い、過電流が検知された場合には対応するIGBT328,IGBT330のスイッチング動作を停止させ、対応するIGBT328,IGBT328330を過電流から保護する。上下アーム直列回路150に設けられた温度センサ(不図示)からは上下アーム直列回路150の温度の情報がマイコンに入力されている。また、マイコンには上下アーム直列回路150の直流正極側の電圧の情報が入力されている。マイコンは、それらの情報に基づいて過温度検知及び過電圧検知を行い、過温度或いは過電圧が検知された場合には全てのIGBT328,IGBT330のスイッチング動作を停止させる。
【0035】
図3は、本実施形態に係る電力変換装置200の設置場所を説明するための分解斜視図を示す。
【0036】
本実施形態に係る電力変換装置200は、トランスミッション118を収納するためのアルミニウム製の筐体119に固定される。電力変換装置200は、底面及び上面の形状を略長方形としたことで、車両への取り付けが容易となり、また生産し易い効果がある。冷却ジャケット12は、後述するパワーモジュール300及びコンデンサモジュール500を保持するとともに、冷却媒体によって冷却する。また、冷却ジャケット12は、筐体119に固定され、かつ筐体119との対向面に入口配管13と出口配管14が形成されている。入口配管13と出口配管14が筐体119に形成された配管と接続されることにより、トランスミッション118を冷却するための冷却媒体が、冷却ジャケット12に流入及び流出する。
【0037】
ケース10は、電力変換装置200を覆って、かつ筐体119側に固定される。ケース10の底は、制御回路172を実装した制御回路基板20と対向するように構成される。またケース10は、ケース10の底から外部に繋がる第1開口202と第2開口204を、ケース10の底面に形成する。コネクタ21は、制御回路基板20に接続されており、外部からの各種信号を当該制御回路基板20に伝送する。バッテリ負極側接続端子部510とバッテリ正極側接続端子部512は、バッテリ136とコンデンサモジュール500とを電気的に接続する。
【0038】
コネクタ21とバッテリ負極側接続端子部510とバッテリ正極側接続端子部512は、ケース10の底面に向かって延ばされ、コネクタ21は第1開口202から突出し、かつバッテリ負極側接続端子部510及びバッテリ正極側接続端子部512は第2開口204から突出する。ケース10には、その内壁の第1開口202及び第2開口204の周りにシール部材(不図示)が設けられる。
【0039】
コネクタ21等の端子の勘合面の向きは、車種により種々の方向となるが、特に小型車両に搭載しようとした場合、エンジンルーム内の大きさの制約や組立性の観点から勘合面を上向きにして出すことが好ましい。特に、本実施形態のように、電力変換装置200が、トランスミッション118の上方に配置される場合には、トランスミッション118の配置側とは反対側に向かって突出させることにより、作業性が向上する。また、コネクタ21は外部の雰囲気からシールする必要があるが、コネクタ21に対してケース10を上方向から組付ける構成となることで、ケース10が筐体119に組付けられたときに、ケース10と接触するシール部材がコネクタ21を押し付けることができ、気密性が向上する。
【0040】
図4は、本実施形態に係る電力変換装置の全体構成を各構成要素に分解した斜視図である。
【0041】
冷却ジャケット12には、流路19が設けられ、該流路19の上面には、開口部400a〜400cが冷媒の流れ方向418に沿って形成され、かつ開口部402a〜402cが冷媒の流れ方向422に沿って形成される。開口部400a〜400cがパワーモジュール300a〜300cによって塞がれる様に、かつ開口部402a〜402cがパワーモジュール301a〜301cによって塞がれる。
【0042】
また、冷却ジャケット12には、コンデンサモジュール500を収納するための収納空間405が形成される。コンデンサモジュール500は、収納空間405に収納されることにより、流路19内に流れる冷媒によって冷やされることになる。コンデンサモジュール500は、冷媒の流れ方向418を形成するための流路19と、冷媒の流れ方向422を形成するための流路19に挟まれるため、効率良く冷却することができる。
【0043】
冷却ジャケット12には、入口配管13と出口配管14と対向する位置に突出部407が形成される。突出部407は、冷却ジャケット12と一体に形成される。補機用パワーモジュール350は、突出部407に固定され、流路19内に流れる冷媒によって冷やされることになる。補機用パワーモジュール350の側部には、バスバーモジュール800が配置される。バスバーモジュール800は、交流バスバー186や電流センサ180等により構成されるが、詳細は後述する。
【0044】
このように冷却ジャケット12の中央部にコンデンサモジュール500の収納空間405を設け、その収納空間405を挟むように流路19を設け、それぞれの流路19に車両駆動用のパワーモジュール300a〜300c及びパワーモジュール301a〜301cを配置し、さらに冷却ジャケット12の上面に補機用パワーモジュール350を配置することで、少ない空間で効率良く冷却でき、電力変換装置全体の小型化が可能となる。また冷却ジャケット12の流路19の主構造を冷却ジャケット12と一体にアルミ材の鋳造で作ることにより、流路19は冷却効果に加え機械的強度を強くする効果がある。またアルミ鋳造で作ることで冷却ジャケット12と流路19とが一体構造となり、熱伝導が良くなり冷却効率が向上する。
【0045】
なお、パワーモジュール300a〜300cとパワーモジュール301a〜301cを流路19に固定することで流路19を完成させ、水路の水漏れ試験を行う。水漏れ試験に合格した場合に、次にコンデンサモジュール500や補機用パワーモジュール350や基板を取り付ける作業を行うことができる。このように、電力変換装置200の底部に冷却ジャケット12を配置し、次にコンデンサモジュール500,補機用パワーモジュール350,バスバーモジュール800,基板等の必要な部品を固定する作業を上から順次行えるように構成されており、生産性と信頼性が向上する。
【0046】
ドライバ回路基板22は、補機用パワーモジュール350及びバスバーモジュール800の上方に配置される。また、ドライバ回路基板22と制御回路基板20の間には金属ベース板11が配置される。金属ベース板11は、ドライバ回路基板22及び制御回路基板20に搭載される回路群の電磁シールドの機能を奏すると共にドライバ回路基板22と制御回路基板20とが発生する熱を逃がし、冷却する作用を有している。
【0047】
図5は、流路19を有する冷却ジャケット12の下面図である。
【0048】
冷却ジャケット12と当該冷却ジャケット12の内部に設けられた流路19は、一体に鋳造されている。冷却ジャケット12に下面には、1つに繋がった開口部404が形成されている。開口部404は、中央部に開口を有する下カバー420によって塞がれる。下カバー420と冷却ジャケット12の間には、シール部材409a及びシール部材409bが設けられ気密性を保っている。
【0049】
下カバー420には、一方の端辺の近傍であって当該端辺に沿って、入口配管13を挿入するための入口孔401と、出口配管14を挿入するための出口孔403が形成される。また下カバー420には、トランスミッション118の配置方向に向かって突出する凸部406が形成される。凸部406は、パワーモジュール300a〜300c及びパワーモジュール301a〜301c毎に設けられる。
【0050】
冷媒は、流れ方向417のように、入口孔401を通って、冷却ジャケット12の短手方向の辺に沿って形成された第1流路部19aに向かって流れる。そして冷媒は、流れ方向418のように、冷却ジャケット12の長手方向の辺に沿って形成された第2流路部19bを流れる。また冷媒は、流れ方向421のように、冷却ジャケット12の短手方向の辺に沿って形成された第3流路部19cを流れる。第3流路部19cは折り返し流路を形成する。また、冷媒は、流れ方向422のように、冷却ジャケット12の長手方向の辺に沿って形成された第4流路部19dを流れる。第4流路部19dは、コンデンサモジュール500を挟んで第2流路部19bと対向する位置に設けられる。さらに、冷媒は、流れ方向423のように、冷却ジャケット12の短手方向の辺に沿って形成された第5流路部19e及び出口孔403を通って出口配管14に流出する。
【0051】
第1流路部19a,第2流路部19b,第3流路部19c,第4流路部19d及び第5流路部19eは、いずれも幅方向より深さ方向が大きく形成される。パワーモジュール300a〜300cが、冷却ジャケット12の上面側に形成された開口部400a〜400cから挿入され(図4参照)、第2流路部19b内の収納空間に収納される。なお、パワーモジュール300aの収納空間とパワーモジュール300bの収納空間との間には、冷媒の流れを澱ませないための中間部材408aが形成される。同様に、パワーモジュール300bの収納空間とパワーモジュール300cの収納空間との間には、冷媒の流れを澱ませないための中間部材408bが形成される。中間部材408a及び中間部材408bは、その主面が冷媒の流れ方向に沿うように形成される。第4流路部19dも第2流路部19bと同様にパワーモジュール301a〜301cの収納空間及び中間部材を形成する。また、冷却ジャケット12は、開口部404と開口部400a〜400c及び402a〜402cとが対向するように形成されているので、アルミ鋳造により製造し易い構成になっている。
【0052】
下カバー420には、筐体119と当接し、電力変換装置200を支持するための支持部410a及び支持部410bが設けられる。支持部410aは下カバー420の一方の端辺に近づけて設けられ、支持部410bは下カバー420の他方の端辺に近づけて設けられる。これにより、電力変換装置200を、トランスミッション118やモータジェネレータ192の円柱形状に合わせて形成された筐体119の側壁に強固に固定することができる。
【0053】
また、支持部410bは、抵抗器450を支持するように構成されている。この抵抗器450は、乗員保護やメンテナンス時における安全面に配慮して、コンデンサセルに帯電した電荷を放電するためのものである。抵抗器450は、高電圧の電気を継続的に放電できるように構成されているが、万が一抵抗器もしくは放電機構に何らかの異常があった場合でも、車両に対するダメージを最小限にするように配慮した構成とする必要がある。つまり、抵抗器450がパワーモジュールやコンデンサモジュールやドライバ回路基板等の周辺に配置されている場合、万が一抵抗器450が発熱,発火等の不具合を発生した場合に主要部品近傍で延焼する可能性が考えられる。
【0054】
そこで本実施形態では、パワーモジュール300a〜300cやパワーモジュール301a〜301cやコンデンサモジュール500は、冷却ジャケット12を挟んで、トランスミッション118を収納した筐体119とは反対側に配置され、かつ抵抗器450は、冷却ジャケット12と筐体119との間の空間に配置される。これにより、抵抗器450が金属で形成された冷却ジャケット12及び筐体119で囲まれた閉空間に配置されることになる。なお、コンデンサモジュール500内のコンデンサセルに貯まった電荷は、図4に示されたドライバ回路基板22に搭載されたスイッチング手段のスイッチング動作によって、冷却ジャケット12の側部を通る配線を介して抵抗器450に放電制御される。本実施形態では、スイッチング手段によって高速に放電するように制御される。放電を制御するドライバ回路基板22と抵抗器450の間に、冷却ジャケット12が設けられているので、ドライバ回路基板22を抵抗器450から保護することができる。また、抵抗器450は下カバー420に固定されているので、流路19と熱的に非常に近い位置に設けられているので、抵抗器450の異常な発熱を抑制することができる。
【0055】
図6は本実施形態におけるパワーモジュール300の内部の構造を示す分解図である。第1放熱面307A及び第2放熱面307Bに絶縁シート(不図示)を介してリードフレーム316及び317(リードフレーム318及び319は、第1放熱面307Aの裏面に隠れている)各種信号端子325L、325Uが接着されている。リードフレーム316及び317には、上アーム用IGBT328,下アーム用IGBT330,上アームのダイオード156,下アームのダイオード166が接合されている。上アーム用IGBT328と信号端子325Uは、ワイヤボンディング327によって電気的に導通している。また下アーム用IGBT330と信号端子325Lは、ワイヤボンディング327によって電気的に導通している。319Bは直流負極端子であり、315Bは直流正極端子であり、321は交流端子である。また、305は、冷却用のフィンである。
【0056】
図7(a)は本実施形態のパワーモジュール300の断面図であり、図7(b)は(a)の点線部分の拡大図であり、図7(c)は(a)の点線部分の拡大図である。対向する第1放熱面307Aと第2放熱面307Bの間に、絶縁シート333,リードフレーム316及び318,信号端子325Lと325U,下アーム用IGBT330等、およびワイヤボンディング327は、封止樹脂348によって封止されている。160は、素子とリードフレームを接合する金属接合材であり、例えばはんだである。
【0057】
図8は、パワーモジュール300のシール部の組み付け方法を示す工程図である。
【0058】
モジュール封止体302のフィン305がサイドシール部370,371の開口部372及び373から露出するように、サイドシール部370,371が後に示す接着用樹脂によって接着される。
【0059】
続いてモジュール封止体302の封止樹脂348から露出している直流正極端子315Bや交流端子が、トップシール部374の開口部375から露出するようにトップシール部374がサイドシール部370,371に後に示す接着用樹脂で接着される。
【0060】
図9は本実施形態のパワーモジュール300のシール部と封止樹脂の間に設けられた空隙部を示した部分断面図である。
【0061】
図9において、本実施形態における、パワーモジュール300は、モジュール封止体302の封止樹脂348とサイドシール部370,371の間に空隙部376を有している。また、封止樹脂348と前記サイドシール部370,371の接着界面に存在している接着用樹脂377の表面を露出させるように空隙部376を有している。ここで、接着用樹脂377で接着されたサイドシール部370,371と封止樹脂348との間の空隙部376の幅は封止樹脂348の幅より大きく、奥行きは空気が導通する程度に大きければよい。
【0062】
図10は本実施形態におけるパワーモジュール300の全体構成の外観を示す斜視図である。フィン305を、サイドシール部の開口部372及び373より露出するように、サイドシール部370,371を接着し、前記サイドシール部370,371に、各種信号端子325L,325U,交流端子321等をトップシール部374の開口部375より露出するように、トップシール部374を接着し、パワーモジュール300を形成する。ここで、トップシール部374の開口部375は、図9に示す空隙部376は連通した構造となる。
【0063】
図11は、本実施形態のコンデンサモジュール500の分解斜視図である。
【0064】
積層導体板501は、薄板状の幅広導体で形成された負極導体板505及び正極導体板507、さらに負極導体板505と正極導体板507に挟まれた絶縁シート517により構成されているので、低インダクタンス化が図られている。積層導体板501は、略長方形形状を成す。バッテリ負極側端子508及びバッテリ負極側端子509は、積層導体板501の短手方向の一方の辺から立ち上げられた状態で形成される。
【0065】
コンデンサ端子503a〜503cは、積層導体板501の長手方向の一方の辺から立ち上げられた状態で形成される。また、コンデンサ端子503d〜503fは、積層導体板501の長手方向の他方の辺から立ち上げられた状態で形成される。なお、コンデンサ端子503a〜503fは、積層導体板501の主面を横切る方向に立ち上げられている。コンデンサ端子503a〜503cは、パワーモジュール300a〜300cとそれぞれ接続される。コンデンサ端子503d〜503fは、パワーモジュール301a〜301cとそれぞれ接続される。コンデンサ端子503aを構成する負極側コンデンサ端子504aと正極側コンデンサ端子506aとの間には、絶縁シート517の一部が設けられ、絶縁が確保されている。他のコンデンサ端子503b〜503fも同様である。なお、本実施形態では、負極導体板505,正極導体板507,バッテリ負極側端子508,バッテリ負極側端子509,コンデンサ端子503a〜503fは、一体に成形された金属製板で構成され、インダクタンス低減及び生産性の向上を図っている。
【0066】
コンデンサセル514は、積層導体板501の下方に複数個設けられる。本実施形態では、8つのコンデンサセル514が積層導体板501の長手方向の一方の辺に沿って一列に並べられ、かつさらに別の8つのコンデンサセル514が積層導体板501の長手方向の他方の辺に沿って一列に並べられ、合計16個のコンデンサセルが設けられる。積層導体板501の長手方向のそれぞれの辺に沿って並べられたコンデンサセル514は、図11に示される点線AAを境にて対称に並べられる。これにより、コンデンサセル514によって平滑化された直流電流をパワーモジュール300a〜300c及びパワーモジュール301a〜301cに供給する場合に、コンデンサ端子503a〜503cとコンデンサ端子503d〜503fとの間の電流バランスが均一化され、積層導体板501のインダクタンス低減を図ることができる。また、電流が積層導体板501にて局所的に流れることを防止できるので、熱バランスが均一化されて耐熱性も向上させることができる。
【0067】
また、バッテリ負極側端子508とバッテリ負極側端子509も、図11に示される点線AAを境にて対称に並べられる。同様に、コンデンサ端子503a〜503cとコンデンサ端子503d〜503fとの間の電流バランスが均一化されて積層導体板501のインダクタンス低減を図ることができ、かつ熱バランスが均一化されて耐熱性も向上させることができる。
【0068】
本実施形態のコンデンサセル514は、コンデンサモジュール500の蓄電部の単位構造体であり、片面にアルミなどの金属を蒸着したフィルムを2枚積層し巻回して、2枚の金属の各々を正極,負極としたフィルムコンデンサを用いる。コンデンサセル514の電極は、巻回した軸面がそれぞれ、正極,負極電極となり、スズなどの導電体を吹き付けて製造される。
【0069】
コンデンサケース502は、コンデンサセル514を収納するための収納部511を備え、当該収納部511は上面及び下面が略長方形状を成す。コンデンサモジュール500を冷却ジャケット12に固定する固定手段を貫通させるための孔520a〜520hが設けられる。パワーモジュールとの間に、孔520b,孔520c,孔520f,孔520gが設けられることで、パワーモジュールと流路19との気密性を向上させている。フランジ部515a及びフランジ部515bは、コンデンサケース502の軽量化と冷却ジャケット12への固定強度を向上させるために、ハニカム構造を成している。
【0070】
収納部511の底面部513は、円筒形のコンデンサセル514の表面形状に合わせるように、なめらかな凹凸形状若しくは波形形状を成している。これにより、積層導体板501とコンデンサセル514が接続されたモジュールをコンデンサケース502に位置決めさることが容易になる。また、積層導体板501とコンデンサセル514がコンデンサケース502に収納された後に、コンデンサ端子503a〜503fとバッテリ負極側端子508及びバッテリ負極側端子509を除いて、積層導体板501が覆われるようにコンデンサケース502内に充填材(不図示)が充填される。底面部513がコンデンサセル514の形状に合わせて波形形状となっていることにより、充填材がコンデンサケース502内に充填される際に、コンデンサセル514が所定位置からずれることを防止できる。
【0071】
また、コンデンサセル514は、スイッチング時のリップル電流により、内部のフィルム上に蒸着された金属薄膜,内部導体の電気抵抗により発熱する。そこで、コンデンサセル514の熱をコンデンサケース502を逃がし易くするために、コンデンサセル514を充填材でモールドする。さらに樹脂製の充填材を用いることにより、コンデンサセル514の耐湿も向上させることができる。
【0072】
さらに、本実施形態では、コンデンサモジュール500は、収納部511の長手方向の辺を形成する側壁が流路19に挟まれように配置されているので、コンデンサモジュール500を効率良く冷やすことができる。また、コンデンサセル514は、当該コンデンサセル514の電極面の一方が収納部511の長手方向の辺を形成する内壁と対向するように配置されている。これにより、フィルムの巻回軸の方向に熱が伝達し易いので、熱がコンデンサセル514の電極面を介してコンデンサケース502に逃げやすくなっている。
【0073】
図12(a)は、冷却ジャケット12にパワーモジュールとコンデンサモジュールとバスバーモジュールを組み付けた外観斜視図である。図12(b)は、図12(a)の点線囲み部の拡大図である。
【0074】
図12(b)に示されるように、直流負極端子315B及び直流正極端子319Bの電流経路の面積は、積層導体板501の電流経路の面積より非常に小さい。そのため、電流が積層導体板501から直流負極端子315B及び直流正極端子319Bに流れる際には、電流経路の面積が大きく変化することになる。つまり、電流が直流負極端子315B及び直流正極端子319Bに集中することになる。また、直流負極端子315B及び直流正極端子319Bが積層導体板501を横切る方向に突出する場合、言い換えると、直流負極端子315B及び直流正極端子319Bが積層導体板501とねじれの関係にある場合、新たな接続用導体が必要になり生産性低下やコスト増大の問題が生じる。
【0075】
そこで、本実施形態では、負極側コンデンサ端子504aは、積層導体板501から立ち上がっている立上り部540と、当該立上り部540と接続されかつU字状に屈曲した折返し部541と、当該折返し部541と接続されかつ立上り部540とは反対側の面が直流負極端子319Bの主面と対向する接続部542とにより構成される。また、正極側コンデンサ端子506aは、積層導体板501から立上がっている立上り部543と、折返し部544と、当該折返し部544と接続されかつ立上り部543とは反対側の面が直流正極端子315Bの主面と対向する接続部545と、により構成される。特に、折返し部544は、立上り部543と略直角に接続されかつ負極側コンデンサ端子504aと直流負極端子315Bと直流正極端子319Bの側部を跨ぐように構成される。さらに、立上り部540の主面と立上り部543の主面は絶縁シート517を介して対向する。同様に、折返し部541の主面と折返し部544の主面は絶縁シート517を介して対向する。
【0076】
これにより、コンデンサ端子503aが接続部542の直前まで絶縁シート517を介した積層構造を成すため、電流が集中する当該コンデンサ端子503aの配線インダクタンスを低減することができる。
【0077】
また、折返し部544が負極側コンデンサ端子504aと直流負極端子315Bと直流正極端子319Bの側部を跨ぐように構成される。さらに、直流正極端子319Bの先端と接続部542の側辺とは溶接により接続され、同様に直流負極端子315Bの先端と接続部545の側辺とは溶接により接続される。
【0078】
これにより、直流正極端子319B及び直流負極端子315Bの溶接接続するための作業方向と折返し部544とが干渉することがなくなるので、低インダクタンスを図りながら生産性を向上させることができる。
【0079】
また、交流端子321の先端は交流バスバー802aの先端とは溶接により接続される。溶接をするための生産設備において、溶接機械を溶接対象に対して複数方向に可動できるように作ることは、生産設備を複雑化させることにつながり生産性及びコスト的な観点から好ましくない。そこで、本実施形態では、交流端子321の溶接箇所と直流正極端子319Bの溶接箇所は、冷却ジャケット12の長手方向の辺に沿って一直線状に配置される。これにより、溶接機械を一方向に可動する間に、複数の溶接を行うことができ、生産性が向上する。
【0080】
さらに、図4(a)及び図12(a)に示されるように、複数のパワーモジュール300a〜300cは、冷却ジャケット12の長手方向の辺に沿って一直線状に配置される。これにより、複数のパワーモジュール300a〜300cを溶接する際に、更に生産性を向上させることができる。
【0081】
図13は、パワーモジュールとコンデンサモジュールを組み付けた冷却ジャケット12とバスバーモジュール800の分解斜視図である。図14は、保持部材803を除いたバスバーモジュール800の外観斜視図である。
【0082】
図13及び図14に示されるように、第1交流バスバー802a〜802fは、電流センサ180a又は電流センサ180bの設置箇所まで、当該第1交流バスバー802a〜802fの主面がコンデンサモジュール500の積層導体板501の主面と略垂直になるように形成される。また、第1交流バスバー802a〜802fは、電流センサ180aの貫通孔又は電流センサ180bの貫通孔の直前で略直角に折り曲げられる。これにより、電流センサ180a又は電流センサ180bを貫通する第1交流バスバー802a〜802fの部分は、その主面が積層導体板501の主面と略平行になる。そして、第1交流バスバー802a〜802fの端部には、第2交流バスバー804a〜804fと接続するための接続部805a〜805fが形成される(接続部805d〜805fは不図示)。
【0083】
第2交流バスバー804a〜804fは、接続部805a〜805fの近傍で、コンデンサモジュール500側に向かって略直角に折り曲げられる。これにより、第2交流バスバー804a〜804fの主面がコンデンサモジュール500の積層導体板501の主面と略垂直になるように形成される。さらに第2交流バスバー804a〜804fは、電流センサ180a又は電流センサ180bの近傍から、図13に示された冷却ジャケット12の短手方向の一方の辺12aに向かって延ばされ、当該辺12aを横切るように形成される。つまり、複数の第2交流バスバー804a〜804fの主面が向かい合った状態で、当該第2交流バスバー804a〜804fが辺12aを横切るように形成される。
【0084】
これにより、装置全体を大型化させることなく、冷却ジャケット12の短い辺側から複数の板状交流バスバーを外部に突出させることができる。そして、冷却ジャケット12の一面側から複数の交流バスバーを突出させることで、電力変換装置200の外部での配線の取り回しが容易になり、生産性が向上する。
【0085】
図13に示されるように、第1交流バスバー802a〜802f,電流センサ180a〜180b及び第2交流バスバー804a〜804fは、樹脂で構成された保持部材803によって、保持及び絶縁されている。この保持部材803により、第2交流バスバー804a〜804fが金属製の冷却ジャケット12及び筐体119との間の絶縁性を向上させる。また保持部材803が冷却ジャケット12に熱的に接触又は直接接触することにより、トランスミッション118側から第2交流バスバー804a〜804fに伝わる熱を、冷却ジャケット12に逃がすことができるので、電流センサ180a〜180bの信頼性を向上させることができる。
【0086】
図13に示されるように、保持部材803は、図4に示されたドライバ回路基板22を指示するための支持部材807a及び支持部材807bを設ける。支持部材807aは、複数設けられ、かつ冷却ジャケット12の長手方向の一方の辺に沿って一列に並べて形成される。また、支持部材807bは、複数設けられ、かつ冷却ジャケット12の長手方向の他方の辺に沿って一列に並べて形成される。支持部材807a及び支持部材807bの先端部には、ドライバ回路基板22を固定するための螺子穴が形成されている。
【0087】
さらに、保持部材803は、電流センサ180a及び電流センサ180bが配置された箇所から上方に向かって延びる突起部806a及び突起部806bを設ける。突起部806a及び突起部806bは、それぞれ電流センサ180a及び電流センサ180bを貫通するように構成される。図14に示されるように、電流センサ180a及び電流センサ180bは、ドライバ回路基板22の配置方向に向かって延びる信号線182a及び信号線182bを設ける。信号線182a及び信号線182bは、ドライバ回路基板22の配線パターンと半田によって接合される。本実施形態では、保持部材803、支持部材807a〜807b及び突起部806a〜806bは、樹脂で一体に形成される。
【0088】
これにより、保持部材803が電流センサ180とドライバ回路基板22との位置決め機能を備えることになるので、信号線182aとドライバ回路基板22との間の組み付け及び半田接続作業が容易になる。また、電流センサ180とドライバ回路基板22を保持する機構を保持部材803に設けることで、電力変換装置全体としての部品点数を削減できる。
【0089】
本実施形態の電力変換装置200はトランスミッション118を収納した筐体119に固定されるので、トランスミッション118からの振動の影響を大きく受ける。そこで、保持部材803は、ドライバ回路基板22の中央部の近傍を指示するための支持部材808を設けて、ドライバ回路基板22に加わる振動の影響を低減している。なお、保持部材803は、冷却ジャケット12に螺子により固定される。
【0090】
また、保持部材803は、補機用パワーモジュール350の一方の端部を固定するためのブラケット809を設ける。また図4に示されるように、補機用パワーモジュール350は突出部407に配置されることにより、当該補機用パワーモジュール350の他方の端部が当該突出部407に固定される。これにより、補機用パワーモジュール350に加わる振動の影響を低減するとともに、固定用の部品点数を削減することができる。
【0091】
図15は、パワーモジュールとコンデンサモジュールとバスバーモジュール800と補機用パワーモジュール350を組み付けた冷却ジャケット12の外観斜視図である。
【0092】
電流センサ180は、約100℃の耐熱温度以上に熱せられると破壊するおそれがある。特に車載用の電力変換装置では、使用される環境の温度が非常に高温になるため、電流センサ180を熱から保護することが重要になる。特に、本実施形態に係る電力変換装置200はトランスミッション118に搭載されるので、当該トランスミッション118から発せられる熱から保護することが重要になる。
【0093】
そこで、本実施形態では、電流センサ180a及び電流センサ180bは、冷却ジャケット12を挟んでトランスミッション118とは反対側に配置される。これにより、トランスミッション118が発する熱が電流センサに伝達しずらくなり、電流センサの温度上昇を抑えられる。さらに、第2交流バスバー804a〜804fは、図5に示された第3流路19cを流れる冷媒の流れ方向810を横切るように形成される。そして、電流センサ180a及び電流センサ180bは、第3流路部19cを横切る第2交流バスバー804a〜804fの部分よりもパワーモジュールの交流端子321に近い側に配置される。これにより、第2交流バスバー804a〜804fが冷媒によって間接的に冷却され、交流バスバーから電流センサ、更にはパワーモジュール内の半導体チップに伝わる熱を和らげることができるため、信頼性が向上する。
【0094】
図15に示される流れ方向811は、図5にて示された第4流路19dを流れる冷媒の流れ方向を示す。同様に、流れ方向812は、図5にて示された第2流路19bを流れる冷媒の流れ方向を示す。本実施形態に係る電流センサ180a及び電流センサ180bは、電力変換装置200の上方から投影したときに、電流センサ180a及び電流センサ180bの投影部が流路19の投影部に囲まれるように配置される。これにより電流センサをトランスミッション118からの熱から更に保護することができる。
【0095】
図16は、制御回路基板20と金属ベース板11を分離した電力変換装置200の分割斜視図である。
【0096】
図15にて示されたように、電流センサ180は、コンデンサモジュール500の上方に配置される。ドライバ回路基板22は、電流センサ180の上方に配置され、かつ図13に示されたバスバーモジュール800に設けられる支持部材807a及び807bによって支持される。金属ベース板11は、ドライバ回路基板22の上方に配置され、かつ冷却ジャケット12から立設された複数の支持部材15によって支持される。制御回路基板20は、金属ベース板11の上方に配置され、かつ金属ベース板11に固定される。
【0097】
電流センサ180とドライバ回路基板22と制御回路基板20が高さ方向に一列に階層的に配置され、かつ制御回路基板20が強電系のパワーモジュール300及び301から最も遠い場所に配置されるので、スイッチングノイズ等が混入することを抑制することができる。さらに、金属ベース板11は、グランドに電気的に接続された冷却ジャケット12に電気的に接続されている。この金属ベース板11によって、ドライバ回路基板22から制御回路基板20に混入するノイズを低減している。
【0098】
本実施形態においては、流路19に流れる冷媒の冷却対象が主に駆動用のパワーモジュール300及び301であるので、当該パワーモジュール300及び301は流路19内に収納されて直接と冷媒と接触して冷却される。一方、補機用パワーモジュール350も、駆動用パワーモジュールほどではないが冷却することが求められる。
【0099】
そこで、本実施形態では、補機用パワーモジュール350の金属ベースで形成された放熱面が、流路19を介して、入口配管13及び出口配管14と対向するように形成される。特に、補機用パワーモジュール350を固定する突出部407が入口配管13の上方に形成されているので、下方から流入する冷媒が突出部407の内壁に衝突して、効率良く補機用パワーモジュール350から熱を奪うことができる。さらに、突出部407の内部には、流路19と繋がる空間を形成している。この突出部407内部の空間によって、入口配管13及び出口配管14近傍の流路19の深さが大きくなっており、突出部407内部の空間に液溜りが生じることになる。この液溜りにより効率良く補機用パワーモジュール350を冷却することができる。
【0100】
電流センサ180とドライバ回路基板22を電気的に繋ぐ際に、配線コネクタを用いると接続工程の増大や、接続ミスの危険性を招くことになる。
【0101】
そこで、図16に示されるように、本実施形態のドライバ回路基板22には、当該ドライバ回路基板22を貫通する第1孔24及び第2孔26が形成される。また第1孔24にはパワーモジュール300の信号端子325U及び信号端子325Lが挿入され、信号端子325U及び信号端子325Lはドライバ回路基板22の配線パターンと半田により接合される。さらに第2孔26には電流センサ180の信号線182が挿入され、信号線182はドライバ回路基板22の配線パターンと半田により接合される。なお、冷却ジャケット12との対向面とは反対側のドライバ回路基板22の面側から半田接合が行われる。
【0102】
これにより、配線コネクタを用いることなく信号線が接続できるので生産性を向上させることができる。また、パワーモジュール300の信号端子325と電流センサ180の信号線182を、同一方向から半田により接合されることにより、生産性を更に向上させることができる。また、ドライバ回路基板22に、信号端子325を貫通させるための第1孔24や、信号線182を貫通させるための第2孔26をそれぞれ設けることにより接続ミスの危険性を少なくすることができる。
【0103】
また、本実施形態のドライバ回路基板22は、冷却ジャケット12と対向する面側に、ドライバICチップ等の駆動回路(不図示)を実装している。これにより、半田接合の熱がドライバICチップ等に伝わることを抑制して、半田接合によるドライバICチップ等の損傷を防止している。また、ドライバ回路基板22に搭載されているトランスのような高背部品が、コンデンサモジュール500とドライバ回路基板22との間の空間に配置されるので、電力変換装置200全体を低背化することが可能となる。
【0104】
図17は、図16のB面で切り取った電力変換装置200をC方向から見た断面図である。
【0105】
モジュールケース304に設けられたフランジ304Bは、コンデンサケース502に設けられたフランジ515a又はフランジ515bによって冷却ジャケット12に押し付けられる。つまり、コンデンサセル514を収納したコンデンサケース502の自重を利用して、冷却ジャケット12にモジュールケース304を押しつけることにより、流路19の気密性を向上させることができる。
【0106】
パワーモジュール300の冷却効率を向上させるために、流路19内の冷媒をフィン305が形成された領域に流すようにする必要がある。モジュールケース304は湾曲部304Aのスペースを確保するために、モジュールケース304の下部にはフィン305が形成されていない。そこで下カバー420は、モジュールケース304の下部が、当該下カバー420に形成された凹部430に勘合されるように形成される。これにより、冷却フィンが形成されていない空間に冷媒が流れ込むことを防止することができる。
【0107】
図17に示されるように、パワーモジュール300とコンデンサモジュール500とパワーモジュール301の配列方向は、制御回路基板20とドライバ回路基板22とトランスミッション118の配列方向を横切るように並べて配置されている。特に、パワーモジュール300とコンデンサモジュール500とパワーモジュール301は、電力変換装置200の中では、最下層に並べて配置されている。これにより、電力変換装置200全体の低背化が可能となるとともに、トランスミッション118からの振動の影響を低減することができる。
【0108】
図18は本実施形態における実施例1に記載のパワーモジュール300を冷却流路内に挿入する工程を示した図である。
【0109】
図18は、前記図10と同様の工程で形成された本実施形態におけるパワーモジュール300の冷却ジャケット12への搭載状態を示す。本実施形態は、パワーモジュール300を流路19に上方から挿入していくスロットイン構造を採用したものであり、パワーモジュール300は、位置決め部378に位置決めされ、冷却流路に挿入後、水路蓋379および図示しないボルトによって固定される。
【0110】
本実施形態におけるパワーモジュール300は、一方の側にフィン305(なお、放熱フィンとは凹凸のあるフィン形状部分のみを称するのではなく、放熱金属の全体を称するものである。)を備え、また他方の側にも不図示の放熱フィンが備えられる。モジュール封止体302には接着用樹脂377によりサイドシール部370,371およびトップシール部374が接着され、パワーモジュール300が構成される。ここで接着用樹脂377はフィン305、サイドシール部370,371、およびトップシール部374のそれぞれが接触している界面に存在している。また、空隙部376はトップシール部374のトップシール部開口部375と連通している。空隙部376はパワーモジュール300の、水路から隔離された外部と連通している。よって、パワーモジュール300を流路19に挿入し、図示しない冷却液とサイドシール部370,371、トップシール部374、および接着用樹脂377が接触し、吸湿し、空隙部376の湿度が上昇しても、空隙部376は外部に開放されているため、外部の湿度に近づいてゆく。信頼性試験として、前記半導体素子をIGBTとした前記パワーモジュール300を後に示す冷却ジャケット12に挿入し、前記冷却ジャケット12内に100kPaの圧力で冷却液を流し、IGBT素子のエミッタ−ゲート間を短絡し、コレクタ−エミッタ間に1400Vの電圧をかけた結果、前記接着されたサイドシール部370,371と封止樹脂348の間に空隙部376を設けたため、封止樹脂の吸湿量が低下し、500時間経過後もリーク電流の上昇はみられず、必要な特性を満足した。
【0111】
本実施形態におけるパワーモジュール300のシール構造を用いることにより、シール部が樹脂製であっても、半導体装置を冷却流路へ直接浸漬した際、空隙部376によって封止樹脂348の吸湿量が低下するため、封止樹脂の吸湿による半導体装置の効率低下や破壊は起らない。
【実施例2】
【0112】
図19は本実施形態におけるパワーモジュール300のシール部と封止樹脂の間に設けられた空隙部376に連続気泡をもった多孔質材料が挿入されていることを示した部分断面図である。
【0113】
図19においてパワーモジュール300のモジュール封止体302は前記図6と同様の工程で形成される。モジュール封止体302にサイドシール部370,371を接着用樹脂377で接着する際、空隙部376に連続気泡をもった多孔質材料380が挟み込まれるように接着を行う。
【0114】
前記連続気泡をもった多孔質材料380がサイドシール部材511,512と封止樹脂348の間、およびトップシール部際510と封止樹脂348の間に挿入されていることにより、パワーモジュール300が後に示す冷却ジャケット12に挿入され、図示しない冷却液とサイドシール部370,371、トップシール部374、および接着用樹脂377が接触し、吸湿し、空隙部376の湿度が上昇するが、連続気泡をもった多孔質材料380は外部に暴露されていて、空隙部376も外部に開放されているため、空隙部376の湿度は外部の湿度から大きく上昇しなかった。特に多孔質材料を充填することにより、容器内部に水滴が付着しても、毛管現象で多孔質材料全体に広がり、揮発するため、空隙部376内に水がたまる現象を防止できた。信頼性試験として、半導体素子をIGBTとした前記パワーモジュール300を後に示す冷却ジャケット12に挿入し、前記冷却ジャケット12内に100kPaの圧力で冷却液を流し、IGBT素子のエミッタ−ゲート間を短絡し、コレクタ−エミッタ間に1400Vの電圧をかけた結果、前記空隙部376に連続気泡をもった多孔質材料380が挿入されているため、500時間経過後もリーク電流の上昇はみられず、必要な特性を満足した。
【実施例3】
【0115】
図20は本実施形態におけるパワーモジュール300の封止樹脂とシール部の間の空隙部に面している封止樹脂の表面部分を封止樹脂よりも吸湿性の低い材料381で被覆していることを示した部分断面図である。図20においてパワーモジュール300のモジュール封止体302は前記図8と同様の工程で形成される。形成されたモジュール封止体302の封止樹脂348の表面に、ポリアミドイミドで構成された硬化後皮膜を生成する塗料を塗布した。その後サイドシール部370,371を接着用樹脂377でフィン305に接着し、トップシール部374を接着用樹脂377でサイドシール部370,371に接着し、パワーモジュール300を形成した。封止樹脂の表面部分を封止樹脂よりも吸湿性の低い材料381で被覆することにより、封止樹脂の吸湿量を低下することができた。信頼性試験として、前記半導体素子をIGBTとした前記パワーモジュール300を後に示す冷却ジャケット12に挿入し、前記冷却ジャケット12内に100kPaの圧力で冷却液を流し、IGBT素子のエミッタ−ゲート間を短絡し、コレクタ−エミッタ間に1400Vの電圧をかけた結果、500時間経過後もリーク電流の上昇はみられず、必要な特性を満足した。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明のシール構造の適用分野は例えば、半導体装置の冷却構造に関し、特に半導体装置を冷却媒体に浸漬させることにより半導体装置の冷却を行う構造に関する。
【0117】
本実施形態に係る半導体装置の冷却構造の適用例としては、ハイブリッド車両や電動車両に搭載される例が挙げられる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に用いられるパワーモジュール、及びそのパワーモジュールを備えた電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリット自動車のモータを駆動するインバータ等、大電力を扱う半導体装置においては、自動車内での取り付けスペースが狭いので、消費電力が大きなIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の半導体素子を複数個ごとにパッケージ化したものが用いられている。このような電力用の半導体装置は、発熱量が大きいために、効率よく冷却することが必要となる。特に、近年の電力用の半導体装置はパワー密度が向上しているため、半導体装置を冷却液に直接浸漬して冷却を行う必要性が高まってきている。
【0003】
特許文献1は、冷却液に直接浸漬して冷却をおこなう半導体装置を提案している。
【0004】
特許文献1では半導体装置13の電気素子収納容器16をセラミック基板とはんだ等の金属接合材料で構成し、前記電気素子収納容器16からの引き出し電極部17aをエポキシ樹脂,ポリイミド,ポリ塩化ビニル,セラミック等の被覆材61で被覆し、引き出し電極部17aと配線導体42との間に隙間がある場合は隙間を樹脂,ゲル,金属,ゴムなどによりシールし、引き出し電極部17aを電気素子収納容器16から液密的に延設し、半導体装置内部に冷却液11が侵入しないような試みが行われている。
【0005】
また、仮に冷却液11が半導体装置内に浸入しても、半導体装置内部を熱硬化性樹脂やシリコーンゲルで充填することにより、冷却液11が電気素子15や電極17に接触しないような試みが行われている。
【0006】
特許文献1では、半導体装置のケース構造のシール部を金属等の無機材料で構成し、前記シール部をロウ材で接着する構造が必要となる。ここで、ロウ材とは、銀,アルミ,銅、およびすず等で構成された金属材料を加熱溶融し用いるものである。しかしながら、無機材料および金属材料は一般に原材料価格が高く、高重量であり、成型時に700℃以上の加熱を要するため、コスト高であり、耐腐食性に乏しい等の課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−73663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、更なる耐腐食性を向上させたパワーモジュール及びそれを用いた電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明に係るパワーモジュールは、それぞれの主面が対向する2枚の金属ベースと、前記2枚の金属ベースの間に挟まれるパワー半導体素子と、前記2枚の金属ベースの間に挟まれており、かつ前記半導体素子に電力供給するための端子と、前記2枚の金属ベースと前記半導体素子と前記端子の一部とを封止するための樹脂封止材と、前記樹脂封止材により封止された前記2枚の金属ベースを収納するためのケースと、を備え、前記ケースは、前記2枚の金属ベースのうち一方の金属ベースを冷媒に直接接触させる第1開口部と、前記2枚の金属ベースのうち他方の金属ベースを前記冷媒に直接接触させる第2開口部と、前記端子を当該ケースの外部に突出させる第3開口部と、当該第3開口部と対向する有底部と、を形成し、前記一方の金属ベースは前記ケースの前記第1開口部を塞ぐように配置され、かつ前記他方の金属ベースは前記ケースの前記第2開口部を塞ぐように配置され、さらに前記ケースと前記2枚の金属ベースとの接合箇所には樹脂系接着剤が塗布されており、前記ケースの内壁と前記樹脂封止材との間には、前記樹脂系接着剤が露出するように形成された空隙部を有し、当該空隙部は前記第1開口部と連通する。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、パワーモジュール及びそれを用いた電力変換装置の耐腐食性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ハイブリッド自動車の制御ブロックを示す図である。
【図2】ハイブリッド自動車に適用した場合における制御構成図と回路構成図である。
【図3】本実施形態に係る電力変換装置200の設置場所を説明するための分解斜視図を示す。
【図4】本実施形態に係る電力変換装置の全体構成を各構成要素に分解した斜視図である。
【図5】流路19を有する冷却ジャケット12の下面図である。
【図6】本実施形態におけるパワーモジュール300の内部の構造を示す分解図である。
【図7】(a)は本実施形態のパワーモジュール300の断面図であり、(b)は(a)の点線部分の拡大図であり、(c)は(a)の点線部分の拡大図である。
【図8】パワーモジュール300のシール部の組み付け方法を示す工程図である。
【図9】本実施形態のパワーモジュール300のシール部と封止樹脂の間に設けられた空隙部を示した部分断面図である。
【図10】本実施形態におけるパワーモジュール300の全体構成の外観を示す斜視図である。
【図11】本実施形態のコンデンサモジュール500の分解斜視図である。
【図12】(a)は、冷却ジャケット12にパワーモジュールとコンデンサモジュールとバスバーモジュールを組み付けた外観斜視図である。(b)は、(a)の点線囲み部の拡大図である。
【図13】パワーモジュールとコンデンサモジュールを組み付けた冷却ジャケット12とバスバーモジュール800の分解斜視図である。
【図14】保持部材803を除いたバスバーモジュール800の外観斜視図である。
【図15】パワーモジュールとコンデンサモジュールとバスバーモジュール800と補機用パワーモジュール350を組み付けた冷却ジャケット12の外観斜視図である。
【図16】制御回路基板20と金属ベース板11を分離した電力変換装置200の分割斜視図である。
【図17】図16のB面で切り取った電力変換装置200をC方向から見た断面図である。
【図18】本実施形態における実施例1に記載のパワーモジュール300を冷却流路内に挿入する工程を示した図である。
【図19】図本実施形態におけるパワーモジュール300のシール部と封止樹脂の間に設けられた空隙部376に連続気泡をもった多孔質材料が挿入されていることを示した部分断面図である。
【図20】本実施形態におけるパワーモジュール300の封止樹脂とシール部の間の空隙部に面している封止樹脂の表面部分を封止樹脂よりも吸湿性の低い材料381で被覆していることを示した部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に説明する本実施形態の原理を説明する。そこで、これらの課題を解決するため、本実施形態のパワーモジュールはケース構造のシール部分を樹脂で構成しようとするものである。樹脂とはエポキシ樹脂,アクリル樹脂,ウレタン樹脂,ポリイミド,ポリ塩化ビニル,シリコーン,ブチルゴム,ニトリルゴム,スチレンブタジエン等のように400℃以下の加熱,紫外線照射,空気中の酸素の遮断,空気中の水分、あるいは主剤に硬化剤を混合することによる化学反応で硬化させて用いるものであり、前記金属材料に比べて扱いやすく、硬化後に接着性を発現することから上記半導体装置のシール部に用いる材料として望ましい。
【0013】
しかしながら、前記シール部を樹脂で構成する構造で検討したところ、短時間の試験では問題は見られなかったが、長時間の試験では冷却液と接する樹脂部が飽和状態まで吸湿した。シール部の樹脂と半導体を封止する封止樹脂が接している場合、上記樹脂が吸湿した水分は、半導体装置の封止樹脂にも拡散し、封止樹脂も飽和状態まで吸湿した。封止樹脂の内部には微細な気泡や剥離等の欠陥があるため、飽和した水分の一部が水となって溜まり、半導体素子電極や配線間の導電率が高くなった。信頼性試験では、前記欠陥リーク電流が流れ、金属イオンが移動して、半導体素子電極や配線間を短絡し、半導体装置の効率低下や破壊がおこった。
【0014】
よって、取り扱いが簡便な樹脂によってシール部を構成するパワーモジュールが望まれてきたが、従来の技術では上記の欠点が存在し容易には達成されなかった。本実施形態は上記問題を解決したものである。
【0015】
本実施形態では冷却液に直接浸漬するパワーモジュールにおいて、半導体素子周辺のリードフレームおよび配線を封止樹脂によって封止し、前記封止樹脂と冷却液はケース構造により隔離されており、前記ケース構造は金属製の放熱部と樹脂製のシール部からなり、前記樹脂製のシール部と封止樹脂との間に空隙部を設け、その空隙部が冷却液と隔離された半導体装置外部に開放されている。
【0016】
本実施形態のシール部と封止樹脂との間の空隙部には連続気泡をもった多孔質材料が挿入されていても良い。連続気泡をもった多孔質材料とはセラミックまたはポリテトラフルオロエチレンやポリウレタン等によって構成される不織布のことである。
【0017】
本実施形態の封止樹脂とシール部の間の空隙部に面している封止樹脂の表面部分は封止材よりも吸湿性の低い材料で被覆されていてもよい。封止樹脂よりも吸湿性の低い材料とはポリアミドイミド等で構成され、塗装後乾燥することで膜を生成する塗料や、金属イオンを含んだ溶液中に還元剤を添加することによって行う無電解めっきで析出される金属等のことである。
【0018】
シール部と上記封止樹脂の間に空隙部を設け、その空隙部が外部に開放されていると、樹脂シール部が飽和状態まで吸湿しても内部の半導体封止樹脂には直接拡散しない。空隙部の湿度はシール樹脂が吸湿するため上昇するが、外部に開放されているため、外部の湿度に近づいていく。このように封止樹脂の吸湿を抑制できるため、封止樹脂にボイドや剥離等の欠陥があっても水がたまるほどの水分は拡散しない。これにより、封止樹脂の吸湿による半導体素子電極,リードフレーム間および配線間の短絡、およびパワーモジュールの効率低下や破壊を防ぐことができる。
【実施例1】
【0019】
本実施形態に係る電力変換装置200は、ハイブリッド用の自動車や純粋な電気自動車に適用可能であるが、代表例として、ハイブリッド自動車に適用した場合における制御構成と回路構成について、図1と図2を用いて説明する。
【0020】
図1は、ハイブリッド自動車の制御ブロックを示す図である。
【0021】
本実施形態に係る電力変換装置では、車両駆動用電機システムに用いられ、搭載環境や動作的環境などが大変厳しい車両駆動用インバータ装置を例に挙げて説明する。なお、本実施形態の構成は、自動車やトラックなどの車両駆動用電力変換装置として最適であるが、これら以外の電力変換装置、例えば電車や船舶,航空機などの電力変換装置、さらに工場の設備を駆動する電動機の制御装置として用いられる産業用電力変換装置、或いは家庭の太陽光発電システムや家庭の電化製品を駆動する電動機の制御装置に用いられたりする家庭用電力変換装置に対しても適用可能である。
【0022】
図1において、ハイブリッド電気自動車(以下、「HEV」と記述する)110は1つの電動車両であり、2つの車両駆動用システムを備えている。その1つは、内燃機関であるエンジン120を動力源としたエンジンシステムである。エンジンシステムは、主としてHEVの駆動源として用いられる。もう1つは、モータジェネレータ192,194を動力源とした車載電機システムである。車載電機システムは、主としてHEVの駆動源及びHEVの電力発生源として用いられる。モータジェネレータ192,194は例えば同期機あるいは誘導機であり、運転方法によりモータとしても発電機としても動作するので、ここではモータジェネレータと記す。
【0023】
車体のフロント部には前輪車軸114が回転可能に軸支され、前輪車軸114の両端には1対の前輪112が設けられている。車体のリア部には後輪車軸が回転可能に軸支され、後輪車軸の両端には1対の後輪が設けられている(図示省略)。本実施形態のHEVでは、いわゆる前輪駆動方式を採用しているが、この逆、すなわち後輪駆動方式を採用しても構わない。前輪車軸114の中央部には前輪側デファレンシャルギア(以下、「前輪側DEF」と記述する)116が設けられている。前輪側DEF116の入力側にはトランスミッション118の出力軸が機械的に接続されている。トランスミッション118の入力側にはモータジェネレータ192の出力側が機械的に接続されている。モータジェネレータ192の入力側には動力分配機構122を介してエンジン120の出力側及びモータジェネレータ194の出力側が機械的に接続されている。
【0024】
インバータ部140,142は、直流コネクタ138を介してバッテリ136と電気的に接続される。バッテリ136とインバータ部140,142との相互において電力の授受が可能である。本実施形態では、モータジェネレータ192及びインバータ部140からなる第1電動発電ユニットと、モータジェネレータ194及びインバータ部142からなる第2電動発電ユニットとの2つを備え、運転状態に応じてそれらを使い分けている。なお、本実施形態では、バッテリ136の電力によって第1電動発電ユニットを電動ユニットとして作動させることにより、モータジェネレータ192の動力のみによって車両の駆動ができる。さらに、本実施形態では、第1電動発電ユニット又は第2電動発電ユニットを発電ユニットとしてエンジン120の動力或いは車輪からの動力によって作動させて発電させることにより、バッテリ136の充電ができる。
【0025】
バッテリ136はさらに補機用のモータ195を駆動するための電源としても使用される。補機としては例えば、エアコンディショナーのコンプレッサを駆動するモータ、あるいは制御用の油圧ポンプを駆動するモータである。バッテリ136からインバータ部43に直流電力が供給され、インバータ部43で交流の電力に変換されてモータ195に供給される。インバータ部43は、インバータ部140や142と同様の機能を持ち、モータ195に供給する交流の位相や周波数,電力を制御する。モータ195の容量がモータジェネレータ192や194の容量より小さいので、インバータ部43の最大変換電力がインバータ部140や142より小さいが、インバータ部43の回路構成は基本的にインバータ部140や142の回路構成と同じである。なお、電力変換装置200は、インバータ部140,インバータ部142,インバータ部43に供給される直流電流を平滑化するためのコンデンサモジュール500を備えている。
【0026】
次に、図2を用いてインバータ部140やインバータ部142あるいはインバータ部43の電気回路構成を説明する。なお、図2では、代表例としてインバータ部140の説明を行う。
【0027】
インバータ回路144は、上アームとして動作するIGBT328(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)及びダイオード156と、下アームとして動作するIGBT330及びダイオード166と、からなる上下アーム直列回路150をモータジェネレータ192の電機子巻線の各相巻線に対応して3相(U相,V相,W相)分を設けている。それぞれの上下アーム直列回路150は、その中点部分(中間電極169)から交流端子159及び交流コネクタ188を通してモータジェネレータ192への交流電力線(交流バスバー)186と接続する。
【0028】
上アームのIGBT328のコレクタ電極153は正極端子(P端子)157を介してコンデンサモジュール500の正極側のコンデンサの電極に、下アームのIGBT330のエミッタ電極は負極端子(N端子)158を介してコンデンサモジュール500の負極側にコンデンサ電極にそれぞれ電気的に接続されている。
【0029】
制御部170は、インバータ回路144を駆動制御するドライバ回路174と、ドライバ回路174へ信号線176を介して制御信号を供給する制御回路172と、を有している。IGBT328やIGBT330は、制御部170から出力された駆動信号を受けて動作し、バッテリ136から供給された直流電力を三相交流電力に変換する。この変換された電力は、モータジェネレータ192の電機子巻線に供給される。
【0030】
IGBT328は、コレクタ電極153と、信号用エミッタ電極155と、ゲート電極154を備えてる。また、IGBT330は、コレクタ電極163と、信号用のエミッタ電極165と、ゲート電極164を備えてる。ダイオード156が、コレクタ電極153とエミッタ電極との間に電気的に接続されている。また、ダイオード166が、コレクタ電極163とエミッタ電極との間に電気的に接続されている。スイッチング用パワー半導体素子としてはMOSFET(金属酸化物半導体型電界効果トランジスタ)を用いてもよいが、この場合はダイオード156やダイオード166は不要となる。コンデンサモジュール500は、正極側コンデンサ端子506と負極側コンデンサ端子504と直流コネクタ138を介して電気的に接続されている。なお、インバータ部140は、直流正極端子314を介して正極側コンデンサ端子506と接続され、かつ直流負極端子316を介して負極側コンデンサ端子504と接続される。
【0031】
制御回路172は、IGBT328及びIGBT330のスイッチングタイミングを演算処理するためのマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」と記述する)を備えている。マイコンには入力情報として、モータジェネレータ192に対して要求される目標トルク値、上下アーム直列回路150からモータジェネレータ192の電機子巻線に供給される電流値、及びモータジェネレータ192の回転子の磁極位置が入力されている。目標トルク値は、不図示の上位の制御装置から出力された指令信号に基づくものである。電流値は、電流センサ180から信号線182を介して出力された検出信号に基づいて検出されたものである。磁極位置は、モータジェネレータ192に設けられた回転磁極センサ(不図示)から出力された検出信号に基づいて検出されたものである。本実施形態では3相の電流値を検出する場合を例に挙げて説明するが、2相分の電流値を検出するようにしても構わない。
【0032】
制御回路172内のマイコンは、目標トルク値に基づいてモータジェネレータ192のd,q軸の電流指令値を演算し、この演算されたd,q軸の電流指令値と、検出されたd,q軸の電流値との差分に基づいてd,q軸の電圧指令値を演算し、この演算されたd,q軸の電圧指令値を、検出された磁極位置に基づいてU相,V相,W相の電圧指令値に変換する。そして、マイコンは、U相,V相,W相の電圧指令値に基づく基本波(正弦波)と搬送波(三角波)との比較に基づいてパルス状の変調波を生成し、この生成された変調波をPWM(パルス幅変調)信号として、信号線176を介してドライバ回路174に出力する。
【0033】
ドライバ回路174は、下アームを駆動する場合、PWM信号を増幅したドライブ信号を、対応する下アームのIGBT330のゲート電極に出力する。また、ドライバ回路174は、上アームを駆動する場合、PWM信号の基準電位のレベルを上アームの基準電位のレベルにシフトしてからPWM信号を増幅し、これをドライブ信号として、対応する上アームのIGBT328のゲート電極にそれぞれ出力する。
【0034】
また、制御部170は、異常検知(過電流,過電圧,過温度など)を行い、上下アーム直列回路150を保護している。このため、制御部170にはセンシング情報が入力されている。例えば各アームの信号用エミッタ電極155及び信号用エミッタ電極165からは各IGBT328とIGBT330のエミッタ電極に流れる電流の情報が、対応する駆動部(IC)に入力されている。これにより、各駆動部(IC)は過電流検知を行い、過電流が検知された場合には対応するIGBT328,IGBT330のスイッチング動作を停止させ、対応するIGBT328,IGBT328330を過電流から保護する。上下アーム直列回路150に設けられた温度センサ(不図示)からは上下アーム直列回路150の温度の情報がマイコンに入力されている。また、マイコンには上下アーム直列回路150の直流正極側の電圧の情報が入力されている。マイコンは、それらの情報に基づいて過温度検知及び過電圧検知を行い、過温度或いは過電圧が検知された場合には全てのIGBT328,IGBT330のスイッチング動作を停止させる。
【0035】
図3は、本実施形態に係る電力変換装置200の設置場所を説明するための分解斜視図を示す。
【0036】
本実施形態に係る電力変換装置200は、トランスミッション118を収納するためのアルミニウム製の筐体119に固定される。電力変換装置200は、底面及び上面の形状を略長方形としたことで、車両への取り付けが容易となり、また生産し易い効果がある。冷却ジャケット12は、後述するパワーモジュール300及びコンデンサモジュール500を保持するとともに、冷却媒体によって冷却する。また、冷却ジャケット12は、筐体119に固定され、かつ筐体119との対向面に入口配管13と出口配管14が形成されている。入口配管13と出口配管14が筐体119に形成された配管と接続されることにより、トランスミッション118を冷却するための冷却媒体が、冷却ジャケット12に流入及び流出する。
【0037】
ケース10は、電力変換装置200を覆って、かつ筐体119側に固定される。ケース10の底は、制御回路172を実装した制御回路基板20と対向するように構成される。またケース10は、ケース10の底から外部に繋がる第1開口202と第2開口204を、ケース10の底面に形成する。コネクタ21は、制御回路基板20に接続されており、外部からの各種信号を当該制御回路基板20に伝送する。バッテリ負極側接続端子部510とバッテリ正極側接続端子部512は、バッテリ136とコンデンサモジュール500とを電気的に接続する。
【0038】
コネクタ21とバッテリ負極側接続端子部510とバッテリ正極側接続端子部512は、ケース10の底面に向かって延ばされ、コネクタ21は第1開口202から突出し、かつバッテリ負極側接続端子部510及びバッテリ正極側接続端子部512は第2開口204から突出する。ケース10には、その内壁の第1開口202及び第2開口204の周りにシール部材(不図示)が設けられる。
【0039】
コネクタ21等の端子の勘合面の向きは、車種により種々の方向となるが、特に小型車両に搭載しようとした場合、エンジンルーム内の大きさの制約や組立性の観点から勘合面を上向きにして出すことが好ましい。特に、本実施形態のように、電力変換装置200が、トランスミッション118の上方に配置される場合には、トランスミッション118の配置側とは反対側に向かって突出させることにより、作業性が向上する。また、コネクタ21は外部の雰囲気からシールする必要があるが、コネクタ21に対してケース10を上方向から組付ける構成となることで、ケース10が筐体119に組付けられたときに、ケース10と接触するシール部材がコネクタ21を押し付けることができ、気密性が向上する。
【0040】
図4は、本実施形態に係る電力変換装置の全体構成を各構成要素に分解した斜視図である。
【0041】
冷却ジャケット12には、流路19が設けられ、該流路19の上面には、開口部400a〜400cが冷媒の流れ方向418に沿って形成され、かつ開口部402a〜402cが冷媒の流れ方向422に沿って形成される。開口部400a〜400cがパワーモジュール300a〜300cによって塞がれる様に、かつ開口部402a〜402cがパワーモジュール301a〜301cによって塞がれる。
【0042】
また、冷却ジャケット12には、コンデンサモジュール500を収納するための収納空間405が形成される。コンデンサモジュール500は、収納空間405に収納されることにより、流路19内に流れる冷媒によって冷やされることになる。コンデンサモジュール500は、冷媒の流れ方向418を形成するための流路19と、冷媒の流れ方向422を形成するための流路19に挟まれるため、効率良く冷却することができる。
【0043】
冷却ジャケット12には、入口配管13と出口配管14と対向する位置に突出部407が形成される。突出部407は、冷却ジャケット12と一体に形成される。補機用パワーモジュール350は、突出部407に固定され、流路19内に流れる冷媒によって冷やされることになる。補機用パワーモジュール350の側部には、バスバーモジュール800が配置される。バスバーモジュール800は、交流バスバー186や電流センサ180等により構成されるが、詳細は後述する。
【0044】
このように冷却ジャケット12の中央部にコンデンサモジュール500の収納空間405を設け、その収納空間405を挟むように流路19を設け、それぞれの流路19に車両駆動用のパワーモジュール300a〜300c及びパワーモジュール301a〜301cを配置し、さらに冷却ジャケット12の上面に補機用パワーモジュール350を配置することで、少ない空間で効率良く冷却でき、電力変換装置全体の小型化が可能となる。また冷却ジャケット12の流路19の主構造を冷却ジャケット12と一体にアルミ材の鋳造で作ることにより、流路19は冷却効果に加え機械的強度を強くする効果がある。またアルミ鋳造で作ることで冷却ジャケット12と流路19とが一体構造となり、熱伝導が良くなり冷却効率が向上する。
【0045】
なお、パワーモジュール300a〜300cとパワーモジュール301a〜301cを流路19に固定することで流路19を完成させ、水路の水漏れ試験を行う。水漏れ試験に合格した場合に、次にコンデンサモジュール500や補機用パワーモジュール350や基板を取り付ける作業を行うことができる。このように、電力変換装置200の底部に冷却ジャケット12を配置し、次にコンデンサモジュール500,補機用パワーモジュール350,バスバーモジュール800,基板等の必要な部品を固定する作業を上から順次行えるように構成されており、生産性と信頼性が向上する。
【0046】
ドライバ回路基板22は、補機用パワーモジュール350及びバスバーモジュール800の上方に配置される。また、ドライバ回路基板22と制御回路基板20の間には金属ベース板11が配置される。金属ベース板11は、ドライバ回路基板22及び制御回路基板20に搭載される回路群の電磁シールドの機能を奏すると共にドライバ回路基板22と制御回路基板20とが発生する熱を逃がし、冷却する作用を有している。
【0047】
図5は、流路19を有する冷却ジャケット12の下面図である。
【0048】
冷却ジャケット12と当該冷却ジャケット12の内部に設けられた流路19は、一体に鋳造されている。冷却ジャケット12に下面には、1つに繋がった開口部404が形成されている。開口部404は、中央部に開口を有する下カバー420によって塞がれる。下カバー420と冷却ジャケット12の間には、シール部材409a及びシール部材409bが設けられ気密性を保っている。
【0049】
下カバー420には、一方の端辺の近傍であって当該端辺に沿って、入口配管13を挿入するための入口孔401と、出口配管14を挿入するための出口孔403が形成される。また下カバー420には、トランスミッション118の配置方向に向かって突出する凸部406が形成される。凸部406は、パワーモジュール300a〜300c及びパワーモジュール301a〜301c毎に設けられる。
【0050】
冷媒は、流れ方向417のように、入口孔401を通って、冷却ジャケット12の短手方向の辺に沿って形成された第1流路部19aに向かって流れる。そして冷媒は、流れ方向418のように、冷却ジャケット12の長手方向の辺に沿って形成された第2流路部19bを流れる。また冷媒は、流れ方向421のように、冷却ジャケット12の短手方向の辺に沿って形成された第3流路部19cを流れる。第3流路部19cは折り返し流路を形成する。また、冷媒は、流れ方向422のように、冷却ジャケット12の長手方向の辺に沿って形成された第4流路部19dを流れる。第4流路部19dは、コンデンサモジュール500を挟んで第2流路部19bと対向する位置に設けられる。さらに、冷媒は、流れ方向423のように、冷却ジャケット12の短手方向の辺に沿って形成された第5流路部19e及び出口孔403を通って出口配管14に流出する。
【0051】
第1流路部19a,第2流路部19b,第3流路部19c,第4流路部19d及び第5流路部19eは、いずれも幅方向より深さ方向が大きく形成される。パワーモジュール300a〜300cが、冷却ジャケット12の上面側に形成された開口部400a〜400cから挿入され(図4参照)、第2流路部19b内の収納空間に収納される。なお、パワーモジュール300aの収納空間とパワーモジュール300bの収納空間との間には、冷媒の流れを澱ませないための中間部材408aが形成される。同様に、パワーモジュール300bの収納空間とパワーモジュール300cの収納空間との間には、冷媒の流れを澱ませないための中間部材408bが形成される。中間部材408a及び中間部材408bは、その主面が冷媒の流れ方向に沿うように形成される。第4流路部19dも第2流路部19bと同様にパワーモジュール301a〜301cの収納空間及び中間部材を形成する。また、冷却ジャケット12は、開口部404と開口部400a〜400c及び402a〜402cとが対向するように形成されているので、アルミ鋳造により製造し易い構成になっている。
【0052】
下カバー420には、筐体119と当接し、電力変換装置200を支持するための支持部410a及び支持部410bが設けられる。支持部410aは下カバー420の一方の端辺に近づけて設けられ、支持部410bは下カバー420の他方の端辺に近づけて設けられる。これにより、電力変換装置200を、トランスミッション118やモータジェネレータ192の円柱形状に合わせて形成された筐体119の側壁に強固に固定することができる。
【0053】
また、支持部410bは、抵抗器450を支持するように構成されている。この抵抗器450は、乗員保護やメンテナンス時における安全面に配慮して、コンデンサセルに帯電した電荷を放電するためのものである。抵抗器450は、高電圧の電気を継続的に放電できるように構成されているが、万が一抵抗器もしくは放電機構に何らかの異常があった場合でも、車両に対するダメージを最小限にするように配慮した構成とする必要がある。つまり、抵抗器450がパワーモジュールやコンデンサモジュールやドライバ回路基板等の周辺に配置されている場合、万が一抵抗器450が発熱,発火等の不具合を発生した場合に主要部品近傍で延焼する可能性が考えられる。
【0054】
そこで本実施形態では、パワーモジュール300a〜300cやパワーモジュール301a〜301cやコンデンサモジュール500は、冷却ジャケット12を挟んで、トランスミッション118を収納した筐体119とは反対側に配置され、かつ抵抗器450は、冷却ジャケット12と筐体119との間の空間に配置される。これにより、抵抗器450が金属で形成された冷却ジャケット12及び筐体119で囲まれた閉空間に配置されることになる。なお、コンデンサモジュール500内のコンデンサセルに貯まった電荷は、図4に示されたドライバ回路基板22に搭載されたスイッチング手段のスイッチング動作によって、冷却ジャケット12の側部を通る配線を介して抵抗器450に放電制御される。本実施形態では、スイッチング手段によって高速に放電するように制御される。放電を制御するドライバ回路基板22と抵抗器450の間に、冷却ジャケット12が設けられているので、ドライバ回路基板22を抵抗器450から保護することができる。また、抵抗器450は下カバー420に固定されているので、流路19と熱的に非常に近い位置に設けられているので、抵抗器450の異常な発熱を抑制することができる。
【0055】
図6は本実施形態におけるパワーモジュール300の内部の構造を示す分解図である。第1放熱面307A及び第2放熱面307Bに絶縁シート(不図示)を介してリードフレーム316及び317(リードフレーム318及び319は、第1放熱面307Aの裏面に隠れている)各種信号端子325L、325Uが接着されている。リードフレーム316及び317には、上アーム用IGBT328,下アーム用IGBT330,上アームのダイオード156,下アームのダイオード166が接合されている。上アーム用IGBT328と信号端子325Uは、ワイヤボンディング327によって電気的に導通している。また下アーム用IGBT330と信号端子325Lは、ワイヤボンディング327によって電気的に導通している。319Bは直流負極端子であり、315Bは直流正極端子であり、321は交流端子である。また、305は、冷却用のフィンである。
【0056】
図7(a)は本実施形態のパワーモジュール300の断面図であり、図7(b)は(a)の点線部分の拡大図であり、図7(c)は(a)の点線部分の拡大図である。対向する第1放熱面307Aと第2放熱面307Bの間に、絶縁シート333,リードフレーム316及び318,信号端子325Lと325U,下アーム用IGBT330等、およびワイヤボンディング327は、封止樹脂348によって封止されている。160は、素子とリードフレームを接合する金属接合材であり、例えばはんだである。
【0057】
図8は、パワーモジュール300のシール部の組み付け方法を示す工程図である。
【0058】
モジュール封止体302のフィン305がサイドシール部370,371の開口部372及び373から露出するように、サイドシール部370,371が後に示す接着用樹脂によって接着される。
【0059】
続いてモジュール封止体302の封止樹脂348から露出している直流正極端子315Bや交流端子が、トップシール部374の開口部375から露出するようにトップシール部374がサイドシール部370,371に後に示す接着用樹脂で接着される。
【0060】
図9は本実施形態のパワーモジュール300のシール部と封止樹脂の間に設けられた空隙部を示した部分断面図である。
【0061】
図9において、本実施形態における、パワーモジュール300は、モジュール封止体302の封止樹脂348とサイドシール部370,371の間に空隙部376を有している。また、封止樹脂348と前記サイドシール部370,371の接着界面に存在している接着用樹脂377の表面を露出させるように空隙部376を有している。ここで、接着用樹脂377で接着されたサイドシール部370,371と封止樹脂348との間の空隙部376の幅は封止樹脂348の幅より大きく、奥行きは空気が導通する程度に大きければよい。
【0062】
図10は本実施形態におけるパワーモジュール300の全体構成の外観を示す斜視図である。フィン305を、サイドシール部の開口部372及び373より露出するように、サイドシール部370,371を接着し、前記サイドシール部370,371に、各種信号端子325L,325U,交流端子321等をトップシール部374の開口部375より露出するように、トップシール部374を接着し、パワーモジュール300を形成する。ここで、トップシール部374の開口部375は、図9に示す空隙部376は連通した構造となる。
【0063】
図11は、本実施形態のコンデンサモジュール500の分解斜視図である。
【0064】
積層導体板501は、薄板状の幅広導体で形成された負極導体板505及び正極導体板507、さらに負極導体板505と正極導体板507に挟まれた絶縁シート517により構成されているので、低インダクタンス化が図られている。積層導体板501は、略長方形形状を成す。バッテリ負極側端子508及びバッテリ負極側端子509は、積層導体板501の短手方向の一方の辺から立ち上げられた状態で形成される。
【0065】
コンデンサ端子503a〜503cは、積層導体板501の長手方向の一方の辺から立ち上げられた状態で形成される。また、コンデンサ端子503d〜503fは、積層導体板501の長手方向の他方の辺から立ち上げられた状態で形成される。なお、コンデンサ端子503a〜503fは、積層導体板501の主面を横切る方向に立ち上げられている。コンデンサ端子503a〜503cは、パワーモジュール300a〜300cとそれぞれ接続される。コンデンサ端子503d〜503fは、パワーモジュール301a〜301cとそれぞれ接続される。コンデンサ端子503aを構成する負極側コンデンサ端子504aと正極側コンデンサ端子506aとの間には、絶縁シート517の一部が設けられ、絶縁が確保されている。他のコンデンサ端子503b〜503fも同様である。なお、本実施形態では、負極導体板505,正極導体板507,バッテリ負極側端子508,バッテリ負極側端子509,コンデンサ端子503a〜503fは、一体に成形された金属製板で構成され、インダクタンス低減及び生産性の向上を図っている。
【0066】
コンデンサセル514は、積層導体板501の下方に複数個設けられる。本実施形態では、8つのコンデンサセル514が積層導体板501の長手方向の一方の辺に沿って一列に並べられ、かつさらに別の8つのコンデンサセル514が積層導体板501の長手方向の他方の辺に沿って一列に並べられ、合計16個のコンデンサセルが設けられる。積層導体板501の長手方向のそれぞれの辺に沿って並べられたコンデンサセル514は、図11に示される点線AAを境にて対称に並べられる。これにより、コンデンサセル514によって平滑化された直流電流をパワーモジュール300a〜300c及びパワーモジュール301a〜301cに供給する場合に、コンデンサ端子503a〜503cとコンデンサ端子503d〜503fとの間の電流バランスが均一化され、積層導体板501のインダクタンス低減を図ることができる。また、電流が積層導体板501にて局所的に流れることを防止できるので、熱バランスが均一化されて耐熱性も向上させることができる。
【0067】
また、バッテリ負極側端子508とバッテリ負極側端子509も、図11に示される点線AAを境にて対称に並べられる。同様に、コンデンサ端子503a〜503cとコンデンサ端子503d〜503fとの間の電流バランスが均一化されて積層導体板501のインダクタンス低減を図ることができ、かつ熱バランスが均一化されて耐熱性も向上させることができる。
【0068】
本実施形態のコンデンサセル514は、コンデンサモジュール500の蓄電部の単位構造体であり、片面にアルミなどの金属を蒸着したフィルムを2枚積層し巻回して、2枚の金属の各々を正極,負極としたフィルムコンデンサを用いる。コンデンサセル514の電極は、巻回した軸面がそれぞれ、正極,負極電極となり、スズなどの導電体を吹き付けて製造される。
【0069】
コンデンサケース502は、コンデンサセル514を収納するための収納部511を備え、当該収納部511は上面及び下面が略長方形状を成す。コンデンサモジュール500を冷却ジャケット12に固定する固定手段を貫通させるための孔520a〜520hが設けられる。パワーモジュールとの間に、孔520b,孔520c,孔520f,孔520gが設けられることで、パワーモジュールと流路19との気密性を向上させている。フランジ部515a及びフランジ部515bは、コンデンサケース502の軽量化と冷却ジャケット12への固定強度を向上させるために、ハニカム構造を成している。
【0070】
収納部511の底面部513は、円筒形のコンデンサセル514の表面形状に合わせるように、なめらかな凹凸形状若しくは波形形状を成している。これにより、積層導体板501とコンデンサセル514が接続されたモジュールをコンデンサケース502に位置決めさることが容易になる。また、積層導体板501とコンデンサセル514がコンデンサケース502に収納された後に、コンデンサ端子503a〜503fとバッテリ負極側端子508及びバッテリ負極側端子509を除いて、積層導体板501が覆われるようにコンデンサケース502内に充填材(不図示)が充填される。底面部513がコンデンサセル514の形状に合わせて波形形状となっていることにより、充填材がコンデンサケース502内に充填される際に、コンデンサセル514が所定位置からずれることを防止できる。
【0071】
また、コンデンサセル514は、スイッチング時のリップル電流により、内部のフィルム上に蒸着された金属薄膜,内部導体の電気抵抗により発熱する。そこで、コンデンサセル514の熱をコンデンサケース502を逃がし易くするために、コンデンサセル514を充填材でモールドする。さらに樹脂製の充填材を用いることにより、コンデンサセル514の耐湿も向上させることができる。
【0072】
さらに、本実施形態では、コンデンサモジュール500は、収納部511の長手方向の辺を形成する側壁が流路19に挟まれように配置されているので、コンデンサモジュール500を効率良く冷やすことができる。また、コンデンサセル514は、当該コンデンサセル514の電極面の一方が収納部511の長手方向の辺を形成する内壁と対向するように配置されている。これにより、フィルムの巻回軸の方向に熱が伝達し易いので、熱がコンデンサセル514の電極面を介してコンデンサケース502に逃げやすくなっている。
【0073】
図12(a)は、冷却ジャケット12にパワーモジュールとコンデンサモジュールとバスバーモジュールを組み付けた外観斜視図である。図12(b)は、図12(a)の点線囲み部の拡大図である。
【0074】
図12(b)に示されるように、直流負極端子315B及び直流正極端子319Bの電流経路の面積は、積層導体板501の電流経路の面積より非常に小さい。そのため、電流が積層導体板501から直流負極端子315B及び直流正極端子319Bに流れる際には、電流経路の面積が大きく変化することになる。つまり、電流が直流負極端子315B及び直流正極端子319Bに集中することになる。また、直流負極端子315B及び直流正極端子319Bが積層導体板501を横切る方向に突出する場合、言い換えると、直流負極端子315B及び直流正極端子319Bが積層導体板501とねじれの関係にある場合、新たな接続用導体が必要になり生産性低下やコスト増大の問題が生じる。
【0075】
そこで、本実施形態では、負極側コンデンサ端子504aは、積層導体板501から立ち上がっている立上り部540と、当該立上り部540と接続されかつU字状に屈曲した折返し部541と、当該折返し部541と接続されかつ立上り部540とは反対側の面が直流負極端子319Bの主面と対向する接続部542とにより構成される。また、正極側コンデンサ端子506aは、積層導体板501から立上がっている立上り部543と、折返し部544と、当該折返し部544と接続されかつ立上り部543とは反対側の面が直流正極端子315Bの主面と対向する接続部545と、により構成される。特に、折返し部544は、立上り部543と略直角に接続されかつ負極側コンデンサ端子504aと直流負極端子315Bと直流正極端子319Bの側部を跨ぐように構成される。さらに、立上り部540の主面と立上り部543の主面は絶縁シート517を介して対向する。同様に、折返し部541の主面と折返し部544の主面は絶縁シート517を介して対向する。
【0076】
これにより、コンデンサ端子503aが接続部542の直前まで絶縁シート517を介した積層構造を成すため、電流が集中する当該コンデンサ端子503aの配線インダクタンスを低減することができる。
【0077】
また、折返し部544が負極側コンデンサ端子504aと直流負極端子315Bと直流正極端子319Bの側部を跨ぐように構成される。さらに、直流正極端子319Bの先端と接続部542の側辺とは溶接により接続され、同様に直流負極端子315Bの先端と接続部545の側辺とは溶接により接続される。
【0078】
これにより、直流正極端子319B及び直流負極端子315Bの溶接接続するための作業方向と折返し部544とが干渉することがなくなるので、低インダクタンスを図りながら生産性を向上させることができる。
【0079】
また、交流端子321の先端は交流バスバー802aの先端とは溶接により接続される。溶接をするための生産設備において、溶接機械を溶接対象に対して複数方向に可動できるように作ることは、生産設備を複雑化させることにつながり生産性及びコスト的な観点から好ましくない。そこで、本実施形態では、交流端子321の溶接箇所と直流正極端子319Bの溶接箇所は、冷却ジャケット12の長手方向の辺に沿って一直線状に配置される。これにより、溶接機械を一方向に可動する間に、複数の溶接を行うことができ、生産性が向上する。
【0080】
さらに、図4(a)及び図12(a)に示されるように、複数のパワーモジュール300a〜300cは、冷却ジャケット12の長手方向の辺に沿って一直線状に配置される。これにより、複数のパワーモジュール300a〜300cを溶接する際に、更に生産性を向上させることができる。
【0081】
図13は、パワーモジュールとコンデンサモジュールを組み付けた冷却ジャケット12とバスバーモジュール800の分解斜視図である。図14は、保持部材803を除いたバスバーモジュール800の外観斜視図である。
【0082】
図13及び図14に示されるように、第1交流バスバー802a〜802fは、電流センサ180a又は電流センサ180bの設置箇所まで、当該第1交流バスバー802a〜802fの主面がコンデンサモジュール500の積層導体板501の主面と略垂直になるように形成される。また、第1交流バスバー802a〜802fは、電流センサ180aの貫通孔又は電流センサ180bの貫通孔の直前で略直角に折り曲げられる。これにより、電流センサ180a又は電流センサ180bを貫通する第1交流バスバー802a〜802fの部分は、その主面が積層導体板501の主面と略平行になる。そして、第1交流バスバー802a〜802fの端部には、第2交流バスバー804a〜804fと接続するための接続部805a〜805fが形成される(接続部805d〜805fは不図示)。
【0083】
第2交流バスバー804a〜804fは、接続部805a〜805fの近傍で、コンデンサモジュール500側に向かって略直角に折り曲げられる。これにより、第2交流バスバー804a〜804fの主面がコンデンサモジュール500の積層導体板501の主面と略垂直になるように形成される。さらに第2交流バスバー804a〜804fは、電流センサ180a又は電流センサ180bの近傍から、図13に示された冷却ジャケット12の短手方向の一方の辺12aに向かって延ばされ、当該辺12aを横切るように形成される。つまり、複数の第2交流バスバー804a〜804fの主面が向かい合った状態で、当該第2交流バスバー804a〜804fが辺12aを横切るように形成される。
【0084】
これにより、装置全体を大型化させることなく、冷却ジャケット12の短い辺側から複数の板状交流バスバーを外部に突出させることができる。そして、冷却ジャケット12の一面側から複数の交流バスバーを突出させることで、電力変換装置200の外部での配線の取り回しが容易になり、生産性が向上する。
【0085】
図13に示されるように、第1交流バスバー802a〜802f,電流センサ180a〜180b及び第2交流バスバー804a〜804fは、樹脂で構成された保持部材803によって、保持及び絶縁されている。この保持部材803により、第2交流バスバー804a〜804fが金属製の冷却ジャケット12及び筐体119との間の絶縁性を向上させる。また保持部材803が冷却ジャケット12に熱的に接触又は直接接触することにより、トランスミッション118側から第2交流バスバー804a〜804fに伝わる熱を、冷却ジャケット12に逃がすことができるので、電流センサ180a〜180bの信頼性を向上させることができる。
【0086】
図13に示されるように、保持部材803は、図4に示されたドライバ回路基板22を指示するための支持部材807a及び支持部材807bを設ける。支持部材807aは、複数設けられ、かつ冷却ジャケット12の長手方向の一方の辺に沿って一列に並べて形成される。また、支持部材807bは、複数設けられ、かつ冷却ジャケット12の長手方向の他方の辺に沿って一列に並べて形成される。支持部材807a及び支持部材807bの先端部には、ドライバ回路基板22を固定するための螺子穴が形成されている。
【0087】
さらに、保持部材803は、電流センサ180a及び電流センサ180bが配置された箇所から上方に向かって延びる突起部806a及び突起部806bを設ける。突起部806a及び突起部806bは、それぞれ電流センサ180a及び電流センサ180bを貫通するように構成される。図14に示されるように、電流センサ180a及び電流センサ180bは、ドライバ回路基板22の配置方向に向かって延びる信号線182a及び信号線182bを設ける。信号線182a及び信号線182bは、ドライバ回路基板22の配線パターンと半田によって接合される。本実施形態では、保持部材803、支持部材807a〜807b及び突起部806a〜806bは、樹脂で一体に形成される。
【0088】
これにより、保持部材803が電流センサ180とドライバ回路基板22との位置決め機能を備えることになるので、信号線182aとドライバ回路基板22との間の組み付け及び半田接続作業が容易になる。また、電流センサ180とドライバ回路基板22を保持する機構を保持部材803に設けることで、電力変換装置全体としての部品点数を削減できる。
【0089】
本実施形態の電力変換装置200はトランスミッション118を収納した筐体119に固定されるので、トランスミッション118からの振動の影響を大きく受ける。そこで、保持部材803は、ドライバ回路基板22の中央部の近傍を指示するための支持部材808を設けて、ドライバ回路基板22に加わる振動の影響を低減している。なお、保持部材803は、冷却ジャケット12に螺子により固定される。
【0090】
また、保持部材803は、補機用パワーモジュール350の一方の端部を固定するためのブラケット809を設ける。また図4に示されるように、補機用パワーモジュール350は突出部407に配置されることにより、当該補機用パワーモジュール350の他方の端部が当該突出部407に固定される。これにより、補機用パワーモジュール350に加わる振動の影響を低減するとともに、固定用の部品点数を削減することができる。
【0091】
図15は、パワーモジュールとコンデンサモジュールとバスバーモジュール800と補機用パワーモジュール350を組み付けた冷却ジャケット12の外観斜視図である。
【0092】
電流センサ180は、約100℃の耐熱温度以上に熱せられると破壊するおそれがある。特に車載用の電力変換装置では、使用される環境の温度が非常に高温になるため、電流センサ180を熱から保護することが重要になる。特に、本実施形態に係る電力変換装置200はトランスミッション118に搭載されるので、当該トランスミッション118から発せられる熱から保護することが重要になる。
【0093】
そこで、本実施形態では、電流センサ180a及び電流センサ180bは、冷却ジャケット12を挟んでトランスミッション118とは反対側に配置される。これにより、トランスミッション118が発する熱が電流センサに伝達しずらくなり、電流センサの温度上昇を抑えられる。さらに、第2交流バスバー804a〜804fは、図5に示された第3流路19cを流れる冷媒の流れ方向810を横切るように形成される。そして、電流センサ180a及び電流センサ180bは、第3流路部19cを横切る第2交流バスバー804a〜804fの部分よりもパワーモジュールの交流端子321に近い側に配置される。これにより、第2交流バスバー804a〜804fが冷媒によって間接的に冷却され、交流バスバーから電流センサ、更にはパワーモジュール内の半導体チップに伝わる熱を和らげることができるため、信頼性が向上する。
【0094】
図15に示される流れ方向811は、図5にて示された第4流路19dを流れる冷媒の流れ方向を示す。同様に、流れ方向812は、図5にて示された第2流路19bを流れる冷媒の流れ方向を示す。本実施形態に係る電流センサ180a及び電流センサ180bは、電力変換装置200の上方から投影したときに、電流センサ180a及び電流センサ180bの投影部が流路19の投影部に囲まれるように配置される。これにより電流センサをトランスミッション118からの熱から更に保護することができる。
【0095】
図16は、制御回路基板20と金属ベース板11を分離した電力変換装置200の分割斜視図である。
【0096】
図15にて示されたように、電流センサ180は、コンデンサモジュール500の上方に配置される。ドライバ回路基板22は、電流センサ180の上方に配置され、かつ図13に示されたバスバーモジュール800に設けられる支持部材807a及び807bによって支持される。金属ベース板11は、ドライバ回路基板22の上方に配置され、かつ冷却ジャケット12から立設された複数の支持部材15によって支持される。制御回路基板20は、金属ベース板11の上方に配置され、かつ金属ベース板11に固定される。
【0097】
電流センサ180とドライバ回路基板22と制御回路基板20が高さ方向に一列に階層的に配置され、かつ制御回路基板20が強電系のパワーモジュール300及び301から最も遠い場所に配置されるので、スイッチングノイズ等が混入することを抑制することができる。さらに、金属ベース板11は、グランドに電気的に接続された冷却ジャケット12に電気的に接続されている。この金属ベース板11によって、ドライバ回路基板22から制御回路基板20に混入するノイズを低減している。
【0098】
本実施形態においては、流路19に流れる冷媒の冷却対象が主に駆動用のパワーモジュール300及び301であるので、当該パワーモジュール300及び301は流路19内に収納されて直接と冷媒と接触して冷却される。一方、補機用パワーモジュール350も、駆動用パワーモジュールほどではないが冷却することが求められる。
【0099】
そこで、本実施形態では、補機用パワーモジュール350の金属ベースで形成された放熱面が、流路19を介して、入口配管13及び出口配管14と対向するように形成される。特に、補機用パワーモジュール350を固定する突出部407が入口配管13の上方に形成されているので、下方から流入する冷媒が突出部407の内壁に衝突して、効率良く補機用パワーモジュール350から熱を奪うことができる。さらに、突出部407の内部には、流路19と繋がる空間を形成している。この突出部407内部の空間によって、入口配管13及び出口配管14近傍の流路19の深さが大きくなっており、突出部407内部の空間に液溜りが生じることになる。この液溜りにより効率良く補機用パワーモジュール350を冷却することができる。
【0100】
電流センサ180とドライバ回路基板22を電気的に繋ぐ際に、配線コネクタを用いると接続工程の増大や、接続ミスの危険性を招くことになる。
【0101】
そこで、図16に示されるように、本実施形態のドライバ回路基板22には、当該ドライバ回路基板22を貫通する第1孔24及び第2孔26が形成される。また第1孔24にはパワーモジュール300の信号端子325U及び信号端子325Lが挿入され、信号端子325U及び信号端子325Lはドライバ回路基板22の配線パターンと半田により接合される。さらに第2孔26には電流センサ180の信号線182が挿入され、信号線182はドライバ回路基板22の配線パターンと半田により接合される。なお、冷却ジャケット12との対向面とは反対側のドライバ回路基板22の面側から半田接合が行われる。
【0102】
これにより、配線コネクタを用いることなく信号線が接続できるので生産性を向上させることができる。また、パワーモジュール300の信号端子325と電流センサ180の信号線182を、同一方向から半田により接合されることにより、生産性を更に向上させることができる。また、ドライバ回路基板22に、信号端子325を貫通させるための第1孔24や、信号線182を貫通させるための第2孔26をそれぞれ設けることにより接続ミスの危険性を少なくすることができる。
【0103】
また、本実施形態のドライバ回路基板22は、冷却ジャケット12と対向する面側に、ドライバICチップ等の駆動回路(不図示)を実装している。これにより、半田接合の熱がドライバICチップ等に伝わることを抑制して、半田接合によるドライバICチップ等の損傷を防止している。また、ドライバ回路基板22に搭載されているトランスのような高背部品が、コンデンサモジュール500とドライバ回路基板22との間の空間に配置されるので、電力変換装置200全体を低背化することが可能となる。
【0104】
図17は、図16のB面で切り取った電力変換装置200をC方向から見た断面図である。
【0105】
モジュールケース304に設けられたフランジ304Bは、コンデンサケース502に設けられたフランジ515a又はフランジ515bによって冷却ジャケット12に押し付けられる。つまり、コンデンサセル514を収納したコンデンサケース502の自重を利用して、冷却ジャケット12にモジュールケース304を押しつけることにより、流路19の気密性を向上させることができる。
【0106】
パワーモジュール300の冷却効率を向上させるために、流路19内の冷媒をフィン305が形成された領域に流すようにする必要がある。モジュールケース304は湾曲部304Aのスペースを確保するために、モジュールケース304の下部にはフィン305が形成されていない。そこで下カバー420は、モジュールケース304の下部が、当該下カバー420に形成された凹部430に勘合されるように形成される。これにより、冷却フィンが形成されていない空間に冷媒が流れ込むことを防止することができる。
【0107】
図17に示されるように、パワーモジュール300とコンデンサモジュール500とパワーモジュール301の配列方向は、制御回路基板20とドライバ回路基板22とトランスミッション118の配列方向を横切るように並べて配置されている。特に、パワーモジュール300とコンデンサモジュール500とパワーモジュール301は、電力変換装置200の中では、最下層に並べて配置されている。これにより、電力変換装置200全体の低背化が可能となるとともに、トランスミッション118からの振動の影響を低減することができる。
【0108】
図18は本実施形態における実施例1に記載のパワーモジュール300を冷却流路内に挿入する工程を示した図である。
【0109】
図18は、前記図10と同様の工程で形成された本実施形態におけるパワーモジュール300の冷却ジャケット12への搭載状態を示す。本実施形態は、パワーモジュール300を流路19に上方から挿入していくスロットイン構造を採用したものであり、パワーモジュール300は、位置決め部378に位置決めされ、冷却流路に挿入後、水路蓋379および図示しないボルトによって固定される。
【0110】
本実施形態におけるパワーモジュール300は、一方の側にフィン305(なお、放熱フィンとは凹凸のあるフィン形状部分のみを称するのではなく、放熱金属の全体を称するものである。)を備え、また他方の側にも不図示の放熱フィンが備えられる。モジュール封止体302には接着用樹脂377によりサイドシール部370,371およびトップシール部374が接着され、パワーモジュール300が構成される。ここで接着用樹脂377はフィン305、サイドシール部370,371、およびトップシール部374のそれぞれが接触している界面に存在している。また、空隙部376はトップシール部374のトップシール部開口部375と連通している。空隙部376はパワーモジュール300の、水路から隔離された外部と連通している。よって、パワーモジュール300を流路19に挿入し、図示しない冷却液とサイドシール部370,371、トップシール部374、および接着用樹脂377が接触し、吸湿し、空隙部376の湿度が上昇しても、空隙部376は外部に開放されているため、外部の湿度に近づいてゆく。信頼性試験として、前記半導体素子をIGBTとした前記パワーモジュール300を後に示す冷却ジャケット12に挿入し、前記冷却ジャケット12内に100kPaの圧力で冷却液を流し、IGBT素子のエミッタ−ゲート間を短絡し、コレクタ−エミッタ間に1400Vの電圧をかけた結果、前記接着されたサイドシール部370,371と封止樹脂348の間に空隙部376を設けたため、封止樹脂の吸湿量が低下し、500時間経過後もリーク電流の上昇はみられず、必要な特性を満足した。
【0111】
本実施形態におけるパワーモジュール300のシール構造を用いることにより、シール部が樹脂製であっても、半導体装置を冷却流路へ直接浸漬した際、空隙部376によって封止樹脂348の吸湿量が低下するため、封止樹脂の吸湿による半導体装置の効率低下や破壊は起らない。
【実施例2】
【0112】
図19は本実施形態におけるパワーモジュール300のシール部と封止樹脂の間に設けられた空隙部376に連続気泡をもった多孔質材料が挿入されていることを示した部分断面図である。
【0113】
図19においてパワーモジュール300のモジュール封止体302は前記図6と同様の工程で形成される。モジュール封止体302にサイドシール部370,371を接着用樹脂377で接着する際、空隙部376に連続気泡をもった多孔質材料380が挟み込まれるように接着を行う。
【0114】
前記連続気泡をもった多孔質材料380がサイドシール部材511,512と封止樹脂348の間、およびトップシール部際510と封止樹脂348の間に挿入されていることにより、パワーモジュール300が後に示す冷却ジャケット12に挿入され、図示しない冷却液とサイドシール部370,371、トップシール部374、および接着用樹脂377が接触し、吸湿し、空隙部376の湿度が上昇するが、連続気泡をもった多孔質材料380は外部に暴露されていて、空隙部376も外部に開放されているため、空隙部376の湿度は外部の湿度から大きく上昇しなかった。特に多孔質材料を充填することにより、容器内部に水滴が付着しても、毛管現象で多孔質材料全体に広がり、揮発するため、空隙部376内に水がたまる現象を防止できた。信頼性試験として、半導体素子をIGBTとした前記パワーモジュール300を後に示す冷却ジャケット12に挿入し、前記冷却ジャケット12内に100kPaの圧力で冷却液を流し、IGBT素子のエミッタ−ゲート間を短絡し、コレクタ−エミッタ間に1400Vの電圧をかけた結果、前記空隙部376に連続気泡をもった多孔質材料380が挿入されているため、500時間経過後もリーク電流の上昇はみられず、必要な特性を満足した。
【実施例3】
【0115】
図20は本実施形態におけるパワーモジュール300の封止樹脂とシール部の間の空隙部に面している封止樹脂の表面部分を封止樹脂よりも吸湿性の低い材料381で被覆していることを示した部分断面図である。図20においてパワーモジュール300のモジュール封止体302は前記図8と同様の工程で形成される。形成されたモジュール封止体302の封止樹脂348の表面に、ポリアミドイミドで構成された硬化後皮膜を生成する塗料を塗布した。その後サイドシール部370,371を接着用樹脂377でフィン305に接着し、トップシール部374を接着用樹脂377でサイドシール部370,371に接着し、パワーモジュール300を形成した。封止樹脂の表面部分を封止樹脂よりも吸湿性の低い材料381で被覆することにより、封止樹脂の吸湿量を低下することができた。信頼性試験として、前記半導体素子をIGBTとした前記パワーモジュール300を後に示す冷却ジャケット12に挿入し、前記冷却ジャケット12内に100kPaの圧力で冷却液を流し、IGBT素子のエミッタ−ゲート間を短絡し、コレクタ−エミッタ間に1400Vの電圧をかけた結果、500時間経過後もリーク電流の上昇はみられず、必要な特性を満足した。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明のシール構造の適用分野は例えば、半導体装置の冷却構造に関し、特に半導体装置を冷却媒体に浸漬させることにより半導体装置の冷却を行う構造に関する。
【0117】
本実施形態に係る半導体装置の冷却構造の適用例としては、ハイブリッド車両や電動車両に搭載される例が挙げられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれの主面が対向する2枚の金属ベースと、
前記2枚の金属ベースの間に挟まれるパワー半導体素子と、
前記2枚の金属ベースの間に挟まれており、かつ前記半導体素子に電力供給するための端子と、
前記2枚の金属ベースと前記半導体素子と前記端子の一部とを封止するための樹脂封止材と、
前記樹脂封止材により封止された前記2枚の金属ベースを収納するためのケースと、を備え、
前記ケースは、前記2枚の金属ベースのうち一方の金属ベースを冷媒に直接接触させる第1開口部と、前記2枚の金属ベースのうち他方の金属ベースを前記冷媒に直接接触させる第2開口部と、前記端子を当該ケースの外部に突出させる第3開口部と、当該第3開口部と対向する有底部と、を形成し、
前記一方の金属ベースは前記ケースの前記第1開口部を塞ぐように配置され、かつ前記他方の金属ベースは前記ケースの前記第2開口部を塞ぐように配置され、さらに前記ケースと前記2枚の金属ベースとの接合箇所には樹脂系接着剤が塗布されており、
前記ケースの内壁と前記樹脂封止材との間には、前記樹脂系接着剤が露出するように形成された空隙部を有し、当該空隙部は前記第1開口部と連通するパワーモジュール。
【請求項2】
請求項1に記載されたパワーモジュールであって、
前記ケースは、前記第1開口部が形成された第1ケース部材と、前記第2開口部が形成された第2ケース部材と、により構成され、
前記第1ケース部材と前記第2ケース部材との接合部には樹脂系接着剤が塗布されており、かつ当該第1ケース部材と当該第2ケース部材とを接合するための樹脂系接着剤は、前記空隙部に露出するように構成されるパワーモジュール。
【請求項3】
請求項1または2に記載されたいずれかのパワーモジュールであって、
前記空隙部には、連続気泡をもった多孔質材料が挿入されているパワーモジュール。
【請求項4】
請求項1または2に記載されたいずれかのパワーモジュールであって、
前記樹脂封止材の表面は、当該樹脂封止材よりも吸湿性の低い材料で被覆されているパワーモジュール。
【請求項1】
それぞれの主面が対向する2枚の金属ベースと、
前記2枚の金属ベースの間に挟まれるパワー半導体素子と、
前記2枚の金属ベースの間に挟まれており、かつ前記半導体素子に電力供給するための端子と、
前記2枚の金属ベースと前記半導体素子と前記端子の一部とを封止するための樹脂封止材と、
前記樹脂封止材により封止された前記2枚の金属ベースを収納するためのケースと、を備え、
前記ケースは、前記2枚の金属ベースのうち一方の金属ベースを冷媒に直接接触させる第1開口部と、前記2枚の金属ベースのうち他方の金属ベースを前記冷媒に直接接触させる第2開口部と、前記端子を当該ケースの外部に突出させる第3開口部と、当該第3開口部と対向する有底部と、を形成し、
前記一方の金属ベースは前記ケースの前記第1開口部を塞ぐように配置され、かつ前記他方の金属ベースは前記ケースの前記第2開口部を塞ぐように配置され、さらに前記ケースと前記2枚の金属ベースとの接合箇所には樹脂系接着剤が塗布されており、
前記ケースの内壁と前記樹脂封止材との間には、前記樹脂系接着剤が露出するように形成された空隙部を有し、当該空隙部は前記第1開口部と連通するパワーモジュール。
【請求項2】
請求項1に記載されたパワーモジュールであって、
前記ケースは、前記第1開口部が形成された第1ケース部材と、前記第2開口部が形成された第2ケース部材と、により構成され、
前記第1ケース部材と前記第2ケース部材との接合部には樹脂系接着剤が塗布されており、かつ当該第1ケース部材と当該第2ケース部材とを接合するための樹脂系接着剤は、前記空隙部に露出するように構成されるパワーモジュール。
【請求項3】
請求項1または2に記載されたいずれかのパワーモジュールであって、
前記空隙部には、連続気泡をもった多孔質材料が挿入されているパワーモジュール。
【請求項4】
請求項1または2に記載されたいずれかのパワーモジュールであって、
前記樹脂封止材の表面は、当該樹脂封止材よりも吸湿性の低い材料で被覆されているパワーモジュール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2011−216754(P2011−216754A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84773(P2010−84773)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
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