説明

ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤

本発明は、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)の阻害剤であり、細胞増殖性疾患、例えば癌、自己免疫疾患、アレルギー疾患および炎症性疾患、神経変性疾患などの中枢神経系(CNS)の疾患の予防および/または治療ならびに再狭窄の治療および/または治療において有用な、スルホンアミド結合を有するヒドロキサム酸誘導体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)の阻害剤であり、細胞増殖性疾患、例えば癌、自己免疫疾患、アレルギー疾患および炎症性疾患、神経変性疾患などの中枢神経系(CNS)の疾患の予防および/または治療ならびに再狭窄の治療および/または治療において有用な、スルホンアミド結合を有するヒドロキサム酸誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロキサム酸部分を有する化合物は、有用な生物学的活性を有することが明らかになっている。例えば、ヒドロキサム酸部分を有する多数のペプチジル化合物は、亜鉛エンドペプチダーゼのファミリーであるマトリクスメタロプロテイナーゼ(MMP)を阻害することが知られている。MMPは生理学的および病理学的な組織変性の両方において重要な役割を担っている。したがって、MMPの作用を阻害する能力を有するペプチジル化合物は、組織の破壊および炎症を伴う状態の治療または予防に有用性を示す。さらに、ヒドロキサム酸部分を有する化合物は、少なくとも部分的にヒドロキサム酸基の亜鉛結合特性に基づいて、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)を阻害することが明らかとなっている。
【0003】
HDACの阻害は腫瘍抑制に関連する遺伝子の発現などの遺伝子発現を抑制し得る。ヒストン脱アセチル化酵素を阻害すれば、ヒストン脱アセチル化酵素により腫瘍抑制遺伝子を転写抑制することができる。例えば、ヒストン脱アセチル化酵素の阻害は、癌、造血などの血液疾患、および遺伝子関連の代謝疾患を治療する方法を提供し得る。さらに具体的には、転写調節は細胞の分化、増殖およびアポトーシスにおいて主要な事象である。ヒストンのアセチル化および脱アセチル化は細胞における転写調節を達成する機序であるといういくつかの証拠がある(Grunstein,M.、Nature、389:349〜352頁(1997年))。これらの作用は、ヌクレオソームにおけるコイル状DNAに対するヒストンタンパク質の親和性を変えることによって、クロマチンの構造の変化を通して生じると考えられる。5種類のヒストンが同定されている。ヒストンH2A、H2B、H3およびH4はヌクレオソーム中に見出され、Hlはヌクレオソーム間に位置するリンカーである。各ヌクレオソームは、ヌクレオソーム構造の外側部分に単独で存在するH1を除いて、各ヒストンタイプのうちの2種類をヌクレオソームのコアに含む。ヒストンタンパク質が低アセチル化されると、DNAリン酸骨格へのヒストンの親和性はより大きくなると考えられる。この親和性によって、DNAはヒストンに強固に結合させられ、DNAを転写調節要素および機構に接近しにくくする。
【0004】
アセチル化された状態の調節は、2つの酵素複合体であるヒストンアセチル転移酵素(HAT)とヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)との間の活性の均衡を通して生じる。
【0005】
低アセチル化された状態は伴っているDNAの転写を阻害すると考えられる。この低アセチル化状態はHDAC酵素を含んだ大きな多タンパク質複合体によって触媒される。特に、HDACはクロマチンのコアヒストンからのアセチル基の除去を触媒することが明らかとなっている。
【0006】
いくつかの例では、HATまたはHDAC活性の崩壊が悪性表現型の発達に関与していることが明らかとなっている。例えば、急性前骨髄球性白血病では、PMLおよびRARαの融合によって産生される癌タンパク質がHDACの動員を通して特異的遺伝子転写を抑制すると思われる(Lin,R.J.ら、Nature 391:811〜814頁(1998年))。このようにして、新生細胞は分化を完了することができず、白血病細胞系の過剰増殖をもたらす。
【0007】
本明細書に内容を参照により組み込む米国特許第5369108号、第5932616号、第5700811号、第6087367号および第6511990号は、新生細胞の最終分化、細胞成長停止またはアポトーシスを選択的に誘導するのに有用なヒドロキサム酸誘導体を開示している。抗癌剤としてのこれらの生物学的活性に加えて、近年、これらのヒドロキサム酸誘導体は炎症性疾患、アレルギー疾患、自己免疫疾患、酸化的ストレスに伴う疾患、または細胞の過剰増殖によって特徴付けられる疾患などの種々のチオレドキシン(TRX)媒介疾患および状態を治療または予防するのに有用であると認められている(その内容全体を本明細書に参照により組み込む、2003年2月15日出願の米国特許出願第10/369094号)。また、これらのヒドロキサム酸誘導体は、神経変性疾患などの中枢神経系(CNS)の疾患の治療および脳腫瘍の治療に有用であることが確認されている(内容全体を本明細書に参照により組み込む、2002年10月16日出願の米国特許出願第10/273401号を参照)。
【0008】
上に引用した米国特許に開示された化合物スベロイラニリドヒドロキサム酸(SAHA)を含有したヒドロキサム酸によるHDACの阻害は、X線結晶学的試験(Finnin,M.S.ら、Nature 407:188〜193頁(1999年))によって示されているように、酵素の触媒部位と直接相互作用することにより生じると考えられている。HDAC阻害の結果はゲノムに全般的作用を与えるとは考えられず、むしろ、ゲノムの小さなサブセットに影響を及ぼすだけである(Van Lint,C.ら、Gene Expression 5:245〜253頁(1996年))。HDAC阻害剤と共に培養した悪性細胞系を用いたDNAマイクロアレイによって得られた事実は、産物が変化した遺伝子の数は限られている(1〜2%)ことを示す。例えば、HDAC阻害剤で培養中に処理した細胞はサイクリン依存性キナーゼ阻害剤p21を一貫して誘導する(Archer,S.、Shufen,M.、Shei,A.、Hodin,R.、PNAS 95:6791〜6796頁(1998年))。このタンパク質は細胞周期停止において重要な役割を担う。HDAC阻害剤は、p21遺伝子の領域においてヒストンの高アセチル化された状態を伝播させ、これにより遺伝子を転写機構に接近可能にすることによって、p21の転写速度を増大すると考えられる。発現がHDAC阻害剤によって影響されない遺伝子は、局所的な関連のヒストンがアセチル化の変化を示さない(Dressel,U.ら、Anticancer Research 20(2A):1017〜1022頁(2000年))。
【0009】
また、SAHAなどのヒドロキサム酸誘導体は腫瘍細胞の成長停止、分化および/またはアポトーシスを誘導する能力を有する(Richonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:5705〜5708頁(1996年))。これらの化合物は、動物における腫瘍成長の阻害に有効な用量で毒性を有しているとは思われないことから、新生細胞が悪性になる能力に固有の機序を標的している(Cohen,L.A.ら、Anticancer Research 19:4999〜5006頁(1999年))。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ヒドロキサム酸部分を含有する化合物の用途の広範な多様性を考慮すると、特性が改善された、例えば、有効性が改善された、またはバイオアベイラビリティが増大した新しいヒドロキサム酸誘導体を開発することが非常に望ましい。
【0011】
本発明は、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)の阻害剤であり、細胞増殖性疾患、例えば、癌、自己免疫疾患、アレルギー疾患および炎症性疾患、神経変性疾患などの中枢神経系(CNS)の疾患の予防および/または治療ならびに再狭窄の治療および/または治療において有用な、スルホンアミド結合を有するヒドロキサム酸誘導体に関する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の実施形態では、本発明の化合物は式I:
【0013】
【化7】

によって表すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の化合物はHDAC阻害剤として有用であり、式I:
【0015】
【化8】

(式中、RおよびRは、互いに独立して、置換されていないまたは置換されているC〜C10アルキル、C〜C10アルケニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、C〜C10アルキル−C〜C10アルケニル、C〜C10アルキルシクロアルキル、C〜C10アルキルアリール、C〜C10アルキルヘテロシクリルおよびC〜C10アルキルヘテロアリールから選択され;
は水素またはC〜C10アルキルであり;
は水素またはC〜C10アルキルであり;
nは5または6である。)の化合物、または立体異性体、鏡像異性体、ラセミ化合物、薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物もしくは多形体によって示される。
【0016】
本発明の別の実施形態では、本発明の化合物は式IA:
【0017】
【化9】

(式中、R、R、R、Rおよびnは式Iの化合物について定義した通りである。)の化合物、またはこの立体異性体、鏡像異性体、ラセミ化合物、薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物もしくは多形体によって示される。
【0018】
本発明の別の実施形態では、本発明の化合物は式II:
【0019】
【化10】

(式中、Rは、置換されていないまたは置換されているC〜C10アルキル、C〜C10アルケニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、C〜C10アルキル−C〜C10アルケニル、C〜C10アルキルシクロアルキル、C〜C10アルキルアリール、C〜C10アルキルヘテロシクリルおよびC〜C10アルキルヘテロアリールから選択され;
は水素またはC〜C10アルキルであり;
は水素またはC〜C10アルキルであり;
nは5または6である。)の化合物、またはこれらのこの立体異性体、鏡像異性体、ラセミ化合物、薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物もしくは多形体によって示される。
【0020】
本発明の別の実施形態では、本発明の化合物は式IIA:
【0021】
【化11】

(式中、R、R、Rおよびnは式IIの化合物について定義された通りである。)の化合物、またはこれらのこの立体異性体、鏡像異性体、ラセミ化合物、薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物もしくは多形体によって示される。
【0022】
本発明の別の実施形態では、本発明の化合物は式III:
【0023】
【化12】

(式中、Rは、置換されていないまたは置換されているC〜C10アルキル、C〜C10アルケニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、C〜C10アルキル−C〜C10アルケニル、C〜C10アルキルシクロアルキル、C〜C10アルキルアリール、C〜C10アルキルヘテロシクリルおよびC〜C10アルキルヘテロアリールから選択され;
は水素またはC〜C10アルキルであり;
は水素またはC〜C10アルキルであり;
nは5または6である。)の化合物、またはこれらのこの立体異性体、鏡像異性体、ラセミ化合物、薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物もしくは多形体によって示される。
【0024】
本発明の別の実施形態では、本発明の化合物は式IIIA:
【0025】
【化13】

(式中、R、R、Rおよびnは式IIの化合物について定義された通りである。)の化合物、またはこれらのこの立体異性体、鏡像異性体、ラセミ化合物、薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物もしくは多形体によって示される。
【0026】
本発明の化合物の具体的な例には:
(S)−2−フェニルメタンスルホニルアミノ−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド;
(S)−2−(ナフタレン−l−スルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド;
(S)−2−(ナフタレン−2−スルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド;
(S)−2−ベンゼンスルホニルアミノ−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド;
(S)−2−(ビフェニル−4−スルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド;
(S)−2−[3−(4−メトキシ−フェノキシ)−プロパン−1−スルホニルアミノ]−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド;
(S)−2−(4−メトキシ−ベンゼンスルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド;
(S)−2−(チオフェン−2−スルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド
(S)−2−(3−メトキシ−ベンゼンスルホニルアミノ]−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド;
(S)−2−(4−t−ブチル−ベンゼンスルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド;
(S)−2−(2,4,6−トリメチル−ベンゼンスルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド;
(S)−2−(4−ブロモ−ベンゼンスルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド;
(S)−2−4−フルオロ−ベンゼンスルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド;
(S)−2−(3−ブロモ−ベンゼンスルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド;
(S)−2−(4−ニトロ−ベンゼンスルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド;
(S)−2−(3−クロロ−ベンゼンスルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド;
(S)−2−(4−クロロ−ベンゼンスルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド;
(S)−2−(キノリン−8−スルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド;
(S)−2−(トルエン−4−スルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド;
(S)−2−(ナフタレン−1−スルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−[(4−フェニル−チアゾール−2−イル)−アミド];
(S)−2−(2,4,6−トリメチル−ベンゼンスルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−[(4−フェニル−チアゾール−2−イル)−アミド];
(S)−2−(4−ブロモ−ベンゼンスルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−[(4−フェニル−チアゾール−2−イル)−アミド];
(S)−2−フェニルメタンスルホニルアミノ−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−[(4−フェニル−チアゾール−2−イル)−アミド];
(S)−2−(ビフェニル−4−スルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−[(4−フェニル−チアゾール−2−イル)−アミド];
(S)−2−(4−メトキシ−ベンゼンスルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−[(4−フェニル−チアゾール−2−イル)−アミド];
(S)−2−(4−クロロ−ベンゼンスルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−[(4−フェニル−チアゾール−2−イル)−アミド];
(S)−2−(ナフタレン−2−スルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−[(4−フェニル−チアゾール−2−イル)−アミド];
(S)−2−(チオフェン−2−スルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−[(4−フェニル−チアゾール−2−イル)−アミド];
(S)−2−ベンゼンスルホニルアミノ−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−[(4−フェニル−チアゾール−2−イル)−アミド];
(S)−2−(3−メトキシ−ベンゼンスルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−[(4−フェニル−チアゾール−2−イル)−アミド];
(S)−2−(4−フルオロ−ベンゼンスルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−[(4−フェニル−チアゾール−2−イル)−アミド];および
(S)−2−(4−ニトロ−ベンゼンスルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−[(4−フェニル−チアゾール−2−イル)−アミド];
(2S)−2−({[5−(ジメチルアミノ)−1−ナフチル]スルホニル}アミノ)−N−ヒドロキシ−N−フェニルオクタンアミド、
またはこの立体異性体、鏡像異性体、ラセミ化合物、薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物もしくは多形体が挙げられる。
【0027】
いずれかの可変因子(例えば、R、R等)がいずれかの構成要素に1回を超えて存在するとき、各出現時の定義は出現毎に独立したものである。置換基および可変因子の組合せは、このような組合せにより結果として安定な化合物が得られる場合に限り許容され得る。置換基から環構造の中へと描かれた線は、この示されている結合が、置換可能な環原子のいずれにも結合可能であることを表している。この環系が多環式である場合、結合は近隣環上のみの適した炭素原子に結合されているものと意図される。
【0028】
本発明の化合物の置換基および置換パターンは、化学的に安定な化合物であって、容易に入手可能な出発原料から当該技術分野において知られた技術ならびに以下に記載する方法により容易に合成することができる化合物が生じるように、通常の当業者によって選択され得るものと理解される。置換基がそれ自体で1個または複数の基で置換されている場合、これらの複数の基は、結果的に構造が安定であれば、同じ炭素上にあってもよいし、異なる炭素上にあってもよいと理解されたい。本明細書において互換的に用いられる「場合によって置換されている」または「1個または複数の置換基で場合によって置換されている」あるいは「置換されていないまたは置換されている」という句は、「少なくとも1個の置換基で場合によって置換されている」という句と同等であると考えるべきであり、このような場合、一実施形態は、0から3個の置換基を有する。一実施形態では、「場合によって置換されている」または「1個または複数の置換基で場合によって置換されている」あるいは「置換されていないまたは置換されている」という句は、「1個、2個または3個の置換基で場合によって置換されている」ことを意味するものと考えるべきである。
【0029】
本明細書で用いられる場合、「アルキル」とは、炭素原子の指定された数を有する分枝鎖飽和脂肪族炭化水素基と直鎖飽和脂肪族炭化水素基の両方を包含するものと意図される。例えば、「C〜C10アルキル」の場合のようなC〜C10は、直鎖または分枝鎖配列で炭素原子を1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個有する基を包含するものと定義される。例えば、「C〜C10アルキル」には、具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、i−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等が挙げられる。「シクロアルキル」という用語は、炭素原子の指定された数を有する単環式飽和脂肪族炭化水素基を意味する。例えば、「シクロアルキル」には、シクロプロピル、メチル−シクロプロピル、2,2−ジメチル−シクロブチル、2−エチル−シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。本発明の一実施形態では、「シクロアルキル」という用語は、直ぐ上に記載した基を含み、単環式不飽和脂肪族炭化水素基をさらに含む。例えば、この実施形態において定義される「シクロアルキル」には、シクロプロピル、メチル−シクロプロピル、2,2−ジメチル−シクロブチル、2−エチル−シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロペンテニル、シクロブテニル等が挙げられる。
【0030】
「アルキレン」という用語は炭素原子の指定された数を有する炭化水素二端遊離基を意味する。例えば、「アルキレン」には、−CH−、−CHCH−等が挙げられる。
【0031】
「アルキルアルケニル」、「アルキルシクロアルキル」、「アルキルアリール」、「アルキルヘテロシクリル」または「アルキルヘテロアリール」という用語は、アルケニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリルまたはヘテロアリール基に各々結合したアルキル基を意味する。例えば、「C〜Cアルキルアリール」または「C〜Cアルキルヘテロアリール」という句では、「C〜C」という用語は、この分子部分のアルキル部分を指し、その分子部分のアリールおよびヘテロアリール部分の原子の数を表すものではない。
【0032】
炭素原子数が指定されていない場合、「アルケニル」という用語は、炭素原子を2から10個と炭素−炭素二重結合を少なくとも1つ含む、直鎖、分枝鎖または環状の非芳香族炭化水素基を指す。好ましくは、1つの炭素−炭素二重結合が存在し、最大で4つの非芳香族性炭素−炭素二重結合が存在し得る。故に、「C〜Cアルケニル」は、炭素原子を2から6個有するアルケニル基を意味する。アルケニル基には、エテニル、プロペニル、ブテニル、2−メチルブテニルおよびシクロヘキセニルが挙げられる。アルケニル基の直鎖、分枝鎖または環状部分は、二重結合を有していてもよく、置換アルケニル基が示されている場合には置換されていてもよい。
【0033】
「アルキニル」という用語は、炭素原子を2〜10個と炭素−炭素三重結合を少なくとも1つ含む、直鎖、分枝鎖または環状の炭化水素基を指す。最大で3つの炭素−炭素三重結合が存在し得る。したがって、「C〜Cアルキニル」は、炭素原子を2から6個有するアルキニル基を意味する。アルキニル基には、エチニル、プロピニル、ブチニル、3−メチルブチニルなどが挙げられる。アルキニル基の直鎖、分枝鎖または環状部分は三重結合を含有していてもよく、置換アルキニル基が示されている場合には置換されていてもよい。
【0034】
ある特定の場合に、置換基は(C〜C)アルキレン−アリールなど、ゼロを含む炭素数範囲を伴って定義することができる。アリールがフェニルであるとする場合、この定義は、フェニルそれ自体のほか、−CHPh、−CHCHPh、CH(CH)CHCH(CH)Ph等を包含する。
【0035】
本明細書で用いられる場合「アリール」とは、少なくとも一方の環が芳香族である、各環の原子数が最大7個であるあらゆる安定した単環式または二環式炭素環を意味することを意図する。このようなアリール要素の例には、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニルおよびビフェニルが挙げられる。アリール置換基が二環式であり、一方の環が非芳香族である場合、結合は芳香族環を介すると理解されたい。
【0036】
本明細書で用いられる場合、ヘテロアリールという用語は、少なくとも一方の環が芳香族であり、O、NおよびSからなる群より選択されたヘテロ原子を1から4個含有する、各環の原子数が最大7個の安定した単環式または二環式の環を表す。この定義の範囲内のヘテロアリール基には、これらに限定するものではないが、アクリジニル、カルバゾリル、シンノリニル、キノキサリニル、ピラゾリル、インドリル、ベンゾトリアゾリル、フラニル、チエニル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、キノリニル、イソキノリニル、オキサゾリル、イソキサゾリル、インドリル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピロリル、テトラヒドロキノリンが挙げられる。下の複素環の定義と同様に、「ヘテロアリール」も、あらゆる窒素含有ヘテロアリールのN−オキシド誘導体を包含すると理解されたい。ヘテロアリール置換基が二環式であり、一方の環が非芳香族であるか、へテロ原子を含まない場合、結合はそれぞれ、芳香族環を介するかまたはへテロ原子を含んだ環を介すると理解される。
【0037】
本明細書で用いられる場合「複素環」または「ヘテロシクリル」は、O、NおよびSからなる群より選択された1〜4個のヘテロ原子を含有する3〜10員の芳香族または非芳香族複素環を意味することを意図し、二環式の基を包含する。したがって、「ヘテロシクリル」は、上述のヘテロアリールのほか、それらのジヒドロおよびテトラヒドロ類似体を包含する。「ヘテロシクリル」のさらなる例には、これに限定するものではないが、アゼチジニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾフラザニル、ベンゾピラゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾキサゾリル、カルバゾリル、カルボリニル、シンノリニル、フラニル、イミダゾリル、インドリニル、インドリル、インドラジニル、インダゾリル、イソベンゾフラニル、イソインドリル、イソキノリル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、ナフトピリジニル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、オキサゾリン、イソキサゾリン、オキセタニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドピリジニル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジル、ピロリル、キナゾリニル、キノリル、キノキサリニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラゾリル、テトラゾロピリジル、チアジアゾリル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリル、アゼチジニル、1,4−ジオキサニル、ヘキサヒドロアゼピニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピリジン−2−オンイル、ピロリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ジヒドロベンゾイミダゾリル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロベンゾチオフェニル、ジヒドロベンゾキサゾリル、ジヒドロフラニル、ジヒドロイミダゾリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロイソオキサゾリル、ジヒドロイソチアゾリル、ジヒドロオキサジアゾリル、ジヒドロオキサゾリル、ジヒドロピラジニル、ジヒドロピラゾリル、ジヒドロピリジニル、ジヒドロピリミジニル、ジヒドロピロリル、ジヒドロキノリニル、ジヒドロテトラゾリル、ジヒドロチアジアゾリル、ジヒドロチアゾリル、ジヒドロチエニル、ジヒドロトリアゾリル、ジヒドロアゼチジニル、メチレンジオキシベンゾイル、テトラヒドロフラニルおよびテトラヒドロチエニル、ならびにこれらのN−オキシドが挙げられる。ヘテロシクリル置換基の結合は、炭素原子を介し、またはヘテロ原子を介して発生し得る。
【0038】
一実施形態において、本明細書で用いる場合「複素環」または「ヘテロシクリル」は、O、NおよびSからなる群より選択された1〜4個のヘテロ原子を含有する5〜10員の芳香族または非芳香族複素環を意味するものと意図され、二環式の基を包含する。したがって、この実施形態の「ヘテロシクリル」は、上記のヘテロアリールおよびそれらのジヒドロおよびテトラヒドロ類似体を包含する。「ヘテロシクリル」のさらなる例には、これに限定するものではないが、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾフラザニル、ベンゾピラゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾキサゾリル、カルバゾリル、カルボリニル、シンノリニル、フラニル、イミダゾリル、インドリニル、インドリル、インドラジニル、インダゾリル、イソベンゾフラニル、イソインドリル、イソキノリル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、ナフトピリジニル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、オキサゾリン、イソキサゾリン、オキセタニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドピリジニル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジル、ピロリル、キナゾリニル、キノリル、キノキサリニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラゾリル、テトラゾロピリジル、チアジアゾリル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリル、アゼチジニル、1,4−ジオキサニル、ヘキサヒドロアゼピニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピリジン−2−オンイル、ピロリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ジヒドロベンゾイミダゾリル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロベンゾチオフェニル、ジヒドロベンゾキサゾリル、ジヒドロフラニル、ジヒドロイミダゾリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロイソオキサゾリル、ジヒドロイソチアゾリル、ジヒドロオキサジアゾリル、ジヒドロオキサゾリル、ジヒドロピラジニル、ジヒドロピラゾリル、ジヒドロピリジニル、ジヒドロピリミジニル、ジヒドロピロリル、ジヒドロキノリニル、ジヒドロテトラゾリル、ジヒドロチアジアゾリル、ジヒドロチアゾリル、ジヒドロチエニル、ジヒドロトリアゾリル、ジヒドロアゼチジニル、メチレンジオキシベンゾイル、テトラヒドロフラニルおよびテトラヒドロチエニル、ならびにこれらのN−オキシドが挙げられる。ヘテロシクリル置換基の結合は、炭素原子を介して、またはヘテロ原子を介して生じ得る。
【0039】
別の実施形態では、複素環はキノリニル、イソキノリニルおよびチエニルから選択される。
【0040】
当業者には理解されるように、本明細書で用いる場合「ハロ」または「ハロゲン」は、クロロ、フルオロ、ブロモおよびヨードを包含することを意図する。
【0041】
「アリールオキシ基」とは、酸素を介して化合物に結合したアリール基である(例えば、フェノキシ)。
【0042】
「アルコキシ」とは酸素架橋によって結合されている炭素原子の指示された数の環状または非環状アルキル基を表す。したがって、「アルコキシ」は上記のアルキルおよびシクロアルキルの定義を包含する。
【0043】
「アリールアルコキシ基」(アリールアルコキシ)とは、アリールアルキルのアルキル部分の酸素を介して化合物に結合したアリールアルキル基(例えば、フェニルメトキシ)を表す。
【0044】
「アリールアミノ基」とは、窒素を介して化合物に結合したアリール基を表す。
【0045】
本明細書で用いられる場合、「アリールアルキルアミノ基」とは、アリールアルキルのアルキル部分の窒素を介して化合物に結合したアリールアルキル基である。
【0046】
本明細書で用いられる場合、多数の部分または基が、「置換されているまたは置換されていない」であるか、または「場合によって置換されている」とされている。ある部分が置換されているという場合、置換に使用できると当業者に知られている部分のどの一部も置換可能であることを表す。「1個または複数の置換基で場合によって置換されている」という句とは、一実施形態では、「ゼロ〜5個の置換基」を意味し、他の実施形態では、1個の置換基、2個の置換基、3個の置換基、4個の置換基または5個の置換基を意味する。例えば、置換可能な基は水素以外の基(すなわち、置換基)と交換される水素原子であってよい。複数の置換基が存在してよい。複数の置換基が存在する場合、この置換基は同じ置換基または異なる置換基であってよく、置換は置換部位のどこにあってもよい。このような置換手段は当業者にはよく知られている。本発明を限定するものと解釈すべきでないが、例示として、(本明細書においては「Rsub」として示した。)置換基であるいくつかの例は:C〜C10アルキル基、例えばCH、CH(CH、C(CH等(これも1個または複数の置換基で置換されていてよい。);C〜C10ハロアルキル基、例えばCF(これも1個または複数の置換基で置換されていてよい。);C〜C10アルキルオキシ、例えばOCH(置換されていてよい。);C〜C10ハロアルキルオキシ基、例えばOCF;ハロゲンまたはハロ基(F、Cl、Br、I);ヒドロキシル;ニトロ;オキソ;−CN;−COH;−COOH;アミノ;アジド;N−アルキルアミノまたはN,N−ジアルキルアミノ(この場合、アルキル基も置換されていてよい。);N−アリールアミノまたはN,N−ジアリールアミノ(この場合、アリールも置換されていてよい。);エステル(−C(O)−OR(式中、Rはアルキル、アリール等の基であってよく、置換されていてよい。));アリール(置換されていてよい。);シクロアルキル(置換されていてよい。)アルキルアリール(置換されていてよい。);アルキルヘテロシクリル(置換されていてよい。);アルキルシクロアルキル(置換されていてよい。)、およびアリールオキシ(例えば−OPh)である。
【0047】
本発明の一実施形態では、式Iの化合物におけるRおよび/またはRは置換されていない。別の実施形態では、式Iの化合物におけるRおよび/またはRは、C〜C10アルキル、C〜C10アルケニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、C〜C10アルキル−C〜C10アルケニル、C〜C10アルキルシクロアルキル、C〜C10アルキルアリール、C〜C10アルキルヘテロシクリル、C〜C10アルキルヘテロアリール、ハロゲン、ヒドロキシ、C〜C10アルキルオキシ、アリールオキシ、ニトロ、オキソ、−CN、−C(=O)H、−C(=O)OH、アミノ、N−C〜C10アルキルアミノ、N,N−ジC〜C10アルキルアミノ、N−アリールアミノ、N,N−ジアリールアミノ、N−C〜C10アルキル−N−アリールアミノ、アジドおよびC(=O)OR(式中、RはアリールまたはC〜C10アルキルである。)から選択される1、2または3個の置換基で置換されている。
【0048】
本発明の別の実施形態では、式IIの化合物におけるフェニルおよび/またはRは置換されていない。別の実施形態では、式IIの化合物におけるフェニルおよび/またはRは、C〜C10アルキル、C〜C10アルケニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、C〜C10アルキル−C〜C10アルケニル、C〜C10アルキルシクロアルキル、C〜C10アルキルアリール、C〜C10アルキルヘテロシクリル、C〜C10アルキルヘテロアリール、ハロゲン、ヒドロキシ、C〜C10アルキルオキシ、アリールオキシ、ニトロ、オキソ、−CN、−C(=O)H、−C(=O)OH、アミノ、N−C〜C10アルキルアミノ、N,N−ジC〜C10アルキルアミノ、N−アリールアミノ、N,N−ジアリールアミノ、N−C〜C10アルキル−N−アリールアミノ、アジドおよびC(=O)OR(式中、RはアリールまたはC〜C10アルキルである。)から選択される1、2または3個の置換基で置換されている。
【0049】
別の実施形態では、式IIIの化合物におけるフェニル−チアゾリルおよび/またはRは置換されていない。別の実施形態では、式IIIの化合物におけるフェニル−チアゾリルおよび/またはRは、C〜C10アルキル、C〜C10アルケニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、C〜C10アルキル−C〜C10アルケニル、C〜C10アルキルシクロアルキル、C〜C10アルキルアリール、C〜C10アルキルヘテロシクリル、C〜C10アルキルヘテロアリール、ハロゲン、ヒドロキシ、C〜C10アルキルオキシ、アリールオキシ、ニトロ、オキソ、−CN、−C(=O)H、−C(=O)OH、アミノ、N−C〜C10アルキルアミノ、N,N−ジC〜C10アルキルアミノ、N−アリールアミノ、N,N−ジアリールアミノ、N−C〜C10アルキル−N−アリールアミノ、アジドおよびC(=O)OR(式中、RはアリールまたはC〜C10アルキル)から選択される1、2または3個の置換基で置換されている。
【0050】
本発明の別の実施形態では、式Iの化合物におけるRおよびRは、互いに独立して、置換されていないまたは置換されているフェニル、ナフチル、ビフェニル、ベンジル、−CHCHPh、−CH=CHPh、シクロヘキシル、キノリニル、イソキノリニル、チエニル、チアゾリル、フェニル−チアゾリル、−CH−シクロヘキシル、−CH−キノリニル、−CH−イソキノリニル、ピリジル、−CH(Ph)およびC〜C10アルキルから選択される(式中、前記任意の置換基はC〜Cアルキル、ヒドロキシ、C〜Cアルキルオキシ、アリールオキシ、ハロゲンおよびニトロから選択された1、2または3個の基を含む。)。別の実施形態では、式Iの化合物におけるRおよびRは、互いに独立して、置換されていないまたは置換されているフェニル、ナフチル、ビフェニル、ベンジル、キノリニル、チオフェニル、チアゾリル、フェニル−チアゾリルから選択される(式中、前記任意の置換基はC〜Cアルキル、ヒドロキシ、C〜Cアルキルオキシ、アリールオキシ、N,N−ジC〜Cアルキルアミノ、ハロゲンおよびニトロから選択される1、2または3個の基を含む。)。
【0051】
本発明のさらに別の実施形態では、式IIの化合物におけるRは、置換されていないまたは置換されているフェニル、ナフチル、ビフェニル、ベンジル、−CHCHPh、−CH=CHPh、シクロヘキシル、キノリニル、イソキノリニル、チエニル、フェニル−チアゾリル、チアゾリル、−CH−シクロヘキシル、−CH−キノリニル、−CH−イソキノリニル、ピリジル、−CH(Ph)、およびC〜C10アルキルから選択される(式中、前記任意の置換基はC〜Cアルキル、ヒドロキシ、C〜Cアルキルオキシ、アリールオキシ、ハロゲンおよびニトロから選択される1、2または3個の基を含む。)。別の実施形態では、式IIの化合物におけるRは、置換されていないまたは置換されているフェニル、ナフチル、ビフェニル、ベンジル、キノリニル、チオフェニル、チアゾリルから選択される(式中、前記任意の置換基はC〜Cアルキル、ヒドロキシ、C〜Cアルキルオキシ、アリールオキシ、N,N−ジ−C〜Cアルキルアミノ、ハロゲンおよびニトロから選択される1、2または3個の基を含む。)。
【0052】
本発明のさらに別の実施形態では、式IIIの化合物におけるRは、置換されていないまたは置換されているフェニル、ナフチル、ビフェニル、ベンジル、−CHCHPh、−CH=CHPh、シクロヘキシル、キノリニル、イソキノリニル、チエニル、チアゾリル、フェニル−チアゾリル、−CH−シクロヘキシル、−CH−キノリニル、−CH−イソキノリニル、ピリジル、−CH(Ph)、およびC〜C10アルキルから選択される(式中、前記任意の置換基はC〜Cアルキル、ヒドロキシ、C〜Cアルキルオキシ、アリールオキシ、ハロゲンおよびニトロから選択される1、2または3個の基を含む。)。別の実施形態では、式IIIの化合物におけるRは、置換されていないまたは置換されているフェニル、ナフチル、ビフェニル、ベンジル、キノリニル、チオフェニル、チアゾリルから選択される(式中、前記任意の置換基はC〜Cアルキル、ヒドロキシ、C〜Cアルキルオキシ、アリールオキシ、N,N−ジ−C〜Cアルキルアミノ、ハロゲンおよびニトロから選択される1、2または3個の基を含む。)。
【0053】
別の実施形態では、式Iの化合物におけるRはフェニルである。別の実施形態では、式Iの化合物におけるRはフェニルである。前記フェニル置換基は1個または複数の置換基、例えば、メチル、メトキシ、ブトキシ、t−ブトキシ、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、ニトロ、フェニル等で場合によって置換されていてよい。
【0054】
別の実施形態では、式Iの化合物におけるRはチアゾリルである。別の実施形態では、式Iの化合物におけるRはチアゾリルである。前記チアゾリル置換基は1個または複数の置換基、例えば、メチル、メトキシ、ブトキシ、t−ブトキシ、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、ニトロ、フェニル等で場合によって置換されていてよい。
【0055】
別の実施形態では、式Iの化合物におけるRはフェニル−チアゾリルである。別の実施形態では、式Iの化合物におけるRはフェニル−チアゾリルである。前記フェニル−チアゾリル置換基は、1個または複数の置換基、例えば、メチル、メトキシ、ブトキシ、t−ブトキシ、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、ニトロ、フェニル等で場合によって置換されていてよい。
【0056】
別の実施形態では、式Iの化合物におけるRは水素である。別の実施形態では、式Iの化合物におけるRはメチルである。別の実施形態では、式IIの化合物におけるRは水素である。別の実施形態では、式IIの化合物におけるRはメチルである。別の実施形態では、式IIIの化合物におけるRは水素である。別の実施形態では、式IIIの化合物におけるRはメチルである。
【0057】
別の実施形態では、式Iの化合物におけるRは水素である。別の実施形態では、式Iの化合物におけるRはメチルである。別の実施形態では、式IIの化合物におけるRは水素である。別の実施形態では、式IIの化合物におけるRはメチルである。別の実施形態では、式IIIの化合物におけるRは水素である。別の実施形態では、式IIIの化合物におけるRはメチルである。
【0058】
別の実施形態では、本発明は式Iの化合物の鏡像異性体を含む。さらに別の実施形態では、本発明は式Iの化合物のラセミ化合物を含む。
【0059】
式Iの化合物の遊離形態ならびにその薬学的に許容される塩および立体異性体も、本発明に包含される。本明細書に示されている特定の化合物のいくつかは、アミン化合物のプロトン化塩である。用語「遊離形態」は、塩でない形のアミン化合物を指す。包含される薬学的に許容される塩には、ここに記載する特定の化合物について示す塩だけでなく、式Iの化合物の遊離形態の一般的な薬学的に許容される塩すべてを含む。記載する特定の塩化合物の遊離形態は、当該技術分野において知られている技術を使用して単離することができる。例えば、前記遊離形態は、NaOH、炭酸カリウム、アンモニアおよび重炭酸ナトリウム希薄水溶液などの適する塩基希薄水溶液で前記塩を処理することにより、再生することができる。遊離形態は、極性溶媒への溶解度などの一定の物理的性質においては多少これらのそれぞれの塩の形態と異なることがあるが、本発明のために、これらの酸性および塩基性の塩は、他の点で、それぞれの遊離形態と薬学的に同等である。
【0060】
多数の有機化合物は、平面偏光の平面を回転させる能力を有する光学活性形態で存在する。光学活性化合物を説明する際、接頭語DおよびLまたはRおよびSを用いて、その不斉中心の周囲のこの分子の絶対配置を示す。接頭語dおよび1または(+)および(−)を用いて化合物による平面偏光の回転の印を示すが、(−)を用いる場合、その化合物は左旋性であることを意味する。(+)またはdが付いた化合物は右旋性である。所与の化学構造の場合、これらの化合物は立体異性体と呼ばれ、互いに重ね合わせることのできない鏡像の場合を除き、同じものである。特定の立体異性体を鏡像異性体とも呼ぶことができ、このような異性体の混合物は鏡像異性体混合物と呼ぶことが多い。50:50の鏡像異性体の混合体をラセミ混合物と呼ぶ。本明細書に記載の化合物の多くは1つまたは複数の不斉中心を有するので、異なる鏡像異性体形態で存在し得る。必要があれば、不斉炭素はアスタリスク(*)で示すことができる。本発明の式において不斉炭素への結合を直線で示す場合、不斉炭素の(R)および(S)の両構成、故に鏡像異性体およびその混合物の両方はその式に包含されることを理解されたい。当該分野で用いられるように、不斉炭素の絶対配置を指定するのが好ましい場合、不斉炭素への結合の一方は楔(平面より上の原子への結合)として表すことができ、他方の結合は平行な短い線の連続または楔であるように(平面より下の原子への結合)表すことができる。Cahn−Inglod−Prelog系を用いて(R)または(S)配置を不斉炭素に割り当てることができる。
【0061】
本発明のHDAC阻害剤が1個の不斉中心を含む場合、この化合物は2種類の鏡像異性体形態で存在し、本発明は鏡像異性体およびラセミ混合物と呼ばれる特定の50:50混合物などの鏡像異性体の混合物の両方を含む。該鏡像異性体は、例えば結晶化によって分離することのできるジアステレオマー塩の形成(David Kozma著、CRC Handbook of Optical Resolutions via Diastereomeric Salt Formation(CRC Press、2001年)を参照);例えば、結晶化、ガス液体クロマトグラフィーまたは液体クロマトグラフィーによって分離することのできるジアステレオマー誘導体または複合体の形成;1つの鏡像異性体を鏡像異性体に特異的な試薬と選択的に反応させること、例えば、酵素的エステル化;あるいは、例えば結合した不斉配位子を用いたシリカ不斉支持体上、あるいはキラル溶媒存在下の、不斉環境におけるガス液体クロマトグラフィーまたは液体クロマトグラフィーなどの、当業者には知られた方法によって分離することができる。上記分離手順の1つによって所望の鏡像異性体を別の化学的実体に転換する場合、所望の鏡像異性形態を解放するにはさらなる工程が必要であることが理解されよう。あるいは、光学活性のある試薬、基質、触媒または溶媒を用いた不斉合成によって、または不斉転換を用いてある鏡像異性体を他の鏡像異性体に転換することによって、特定の鏡像異性体を合成することができる。
【0062】
本発明の化合物の不斉炭素での特定の絶対配置を指定することは、本化合物の指定された鏡像異性体が鏡像体過剰(ee)である、換言すれば、他方の鏡像異性体を実質的に含まないことを意味することを理解されたい。例えば、本化合物の「R」体とは、本化合物の「S」体を実質的に含まず、したがって、「S」体を鏡像体過剰には含まない。逆に、本化合物の「S」体は、本化合物の「R」体を実質的に含まず、したがって、「R」体を鏡像体過剰には含まない。本明細書で用いられる場合、鏡像体過剰とは、特定の鏡像異性体の存在が50%を超えていることである。例えば、鏡像体過剰率は、約70%以上、例えば、約90%以上などの約80%以上など、約60%以上であり得る。特定の実施形態では、具体的な絶対位置を指定する場合、示された化合物の鏡像体過剰率は少なくとも約90%である。さらに特定の実施形態では、本化合物の鏡像体過剰率は、少なくとも約97.5%、例えば、少なくとも99%鏡像体過剰率など、少なくとも約95%である。
【0063】
本発明のある化合物が2個またはそれ以上の不斉炭素を有する場合、この化合物は2を超える数の光学異性体を有し、ジアステレオマー形態で存在し得る。例えば、2個の不斉炭素がある場合、該化合物は最高で4つの光学異性体および2対の鏡増異性体((S,S)/(R,R)および(R,S)/(S,R))を有し得る。この2対の鏡像異性体(例えば、(S,S)/(R,R))は相互に鏡像の立体異性体である。非鏡像(例えば、(S,S)および(R,S))である立体異性体はジアステレオマーである。このジアステレオマー対は当業者には知られた方法、例えば、クロマトグラフィーまたは結晶化によって分離することができ、各対における個々の鏡像異性体は上記のように分離することができる。本発明はそのような化合物の立体異性体およびそれらの混合物を各々含む。
【0064】
上記のように、本明細書に記載のヒドロキサム酸誘導体はそれらの薬学的に許容される塩の形態で調製することが可能である。
【0065】
本発明の化合物の薬学的に許容される塩は、塩基性または酸性部分を含む本発明化合物から従来の化学的方法により合成することができる。一般に、塩基性化合物の塩はイオン交換クロマトグラフィーによるかまたは遊離塩基を化学量論量もしくは過剰量の所望の塩形成性無機、あるいは有機酸を用いて適当な溶媒または種々の溶媒混合物中で反応させることにより製造される。同様に、酸性化合物の塩は適した無機もしくは有機塩基との反応により形成される。
【0066】
故に、本発明の化合物の薬学的に許容される塩には、塩基性の本化合物と無機酸または有機酸を反応させることによって形成されるような本発明の化合物の従来の非毒性塩が挙げられる。例えば、従来の非毒性塩には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などの無機酸から誘導されたもの、ならびに、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ−安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸から調製された塩が挙げられる。
【0067】
本発明の化合物が酸性である場合、適した「薬学的に許容される塩」は、無機塩基および有機塩基を含む医薬適合性で非毒性の塩基から調製される塩を指す。無機塩基から誘導される塩には、アルミニウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、銅塩、第二鉄塩、第一鉄塩、リチウム塩、マグネシウム塩、第二マンガン塩、第一マンガン塩、カリウム塩、ナトリウム塩、亜鉛塩などが挙げられる。アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩およびナトリウム塩が、特に好ましい。薬学的に許容される有機非毒性塩基から誘導される塩には、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リシン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどの、第一、第二および第三アミンの塩、天然置換アミンを含む置換アミンの塩、環状アミンの塩および塩基性イオン交換樹脂が挙げられる。
【0068】
上記薬学的に許容される塩および他の典型的な薬学的に許容される塩の調製方法は、Bergらの「Pharmaceutical Salts」J.Pharm.Sci.、1977年:66:1〜19にさらに十分に記載されている。
【0069】
本発明の化合物は、生理学的条件下ではカルボキシル基などの本化合物中の脱プロトン化酸性部分がアニオン性であり得るため、分子内塩または両性イオンである可能性があること、および、この電子電荷が、第四級窒素原子などのプロトン化またはアルキル化塩基性部分のカチオン電荷に対して分子内でバランスを失うことがあることにも留意されたい。
【0070】
上記のように、開示の活性化合物は、それらの水和物形態で調製することもできる。「水和物」という用語は、これに限定するものではないが、半水和物、一水和物、二水和物、三水和物、四水和物等を含む。
【0071】
上記のように、開示の活性化合物は、有機溶媒または無機溶媒、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールおよびイソプロパノールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類、芳香族溶媒等を用いて溶媒和物の形態で調製することもできる。
【0072】
開示の活性化合物はどのような固体または液体の物理的形態として調製することもできる。例えば、該化合物は結晶形、非晶形であってよく、あらゆる粒径を有してよい。さらに、該化合物粒子は微粉末化することもできるし、または凝塊形成された、微粒子、粉末、油、油状懸濁液あるいはその他の固体または液体の任意の形態であってよい。
【0073】
本発明の化合物は多形を呈してもよい。本発明は本発明の化合物の異なる多形体をさらに含む。「多形体」という用語は、X線回折、赤外線スペクトル、融点等などの特定の物理的特性を有する物質の特定の結晶状態を指す。
【0074】
本発明は本明細書に開示したヒドロキサム酸誘導体のプロドラッグを包含することも意図している。本化合物のいずれのプロドラッグも、よく知られた薬理学的技術を用いて製造することができる。
【0075】
上記化合物に加えて、本発明はそのような化合物の同族体および類似体を包含することを意図している。この文脈では、同族体とは上記化合物と実質的に構造が類似する分子であり、類似体とは構造的類似性とは無関係に実質的に生物学的に類似する分子である。
【0076】
本発明の化合物は、文献において知られているか、それらの実験手順に示されている他の標準的な操作に加えて、以下のスキームに示すような反応を利用することによって調製することができる。したがって、以下の例示的スキームは、挙げられている化合物による制限を受けず、また説明のために用いられているあらゆる特定の置換基による制限を受けない。これらのスキームに示されているような置換基の番号付けは、特許請求の範囲で使用されているものとは必ずしも相関せず、多くの場合、分かりやすいように、上記の式Iの定義のもとで複数の置換基が許される場合でもこの化合物に単一の置換基を結合させて示す。
【0077】
スキーム
スキーム1はアミノスベリン酸の遊離アミンを用いて本発明のスルホンアミド誘導体を生成する合成を示す。
【0078】
【化14】

【0079】
有用性
本発明は本明細書に記載のヒドロキサム酸誘導体を用いる方法にも関する。本明細書において実証されるように、本発明のヒドロキサム酸誘導体は癌治療に有用である。また、ヒドロキサム酸誘導体が有用であることが認められている他の疾患の幅広い範囲がある。非限定的な例には、本明細書に記載のようなチオレドキシン(TRX)媒介疾患、本明細書に記載のような中枢神経系(CNS)の疾患、および本明細書に記載のようなヒドロキサム酸誘導体を含んだステント装置を提供することによる再狭窄の治療がある。
【0080】
本明細書において実証されるように、本発明のヒドロキサム酸誘導体は癌治療に有用である。
【0081】
したがって、一実施形態では、本発明は、本明細書に記載のヒドロキサム酸誘導体の治療有効量を対象に投与する工程を含む、治療を必要とする対象における癌を治療する方法に関する。
【0082】
別の実施形態では、本発明は薬剤の調製において、本明細書に開示のヒドロキサム酸誘導体のいずれか1つまたは複数を使用することに関する。別の実施形態では、本発明は、そのような治療を必要とする対象における癌を治療するための薬剤の調製において本明細書に開示のヒドロキサム酸誘導体のいずれか1つまたは複数を使用することに関する。
【0083】
本明細書に提供した化合物、組成物および方法は、皮膚癌、乳癌、脳腫瘍、子宮頸癌、精巣癌等の固形腫瘍を含む癌の治療に有用であると特にみなされる。
【0084】
「癌」という用語は、固体腫瘍、新生物、上皮性悪性腫瘍、非上皮性悪性腫瘍、白血病、リンパ腫等の、新生細胞の増殖によって引き起こされるあらゆる癌を指す。例えば、癌には、これに限定するものではないが、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)およびヘアリー細胞白血病などの急性白血病および慢性白血病を含む白血病;皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)、非皮膚末梢T細胞性リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)などのヒトT細胞白血球ウイルス(HTLV)に伴うリンパ腫、ホジキン病および非ホジキンリンパ腫、大細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)などのリンパ腫;バーキットリンパ腫;中枢神経(CNS)原発リンパ腫;多発性骨髄腫;脳腫瘍、神経芽細胞腫、網膜芽腫、ウィルムス腫瘍、骨腫瘍および軟部組織肉腫などの小児固形腫瘍、頭部癌および頸部癌(例えば、口腔癌、喉頭癌および食道癌)、泌尿生殖器癌(例えば、前立腺癌、膀胱癌、腎癌、子宮癌、卵巣癌、精巣癌、直腸癌および結腸癌)、肺癌、乳癌などの成人の一般的な固形腫瘍が挙げられる。
【0085】
さらなる実施形態では、本発明の化合物、組成物および方法によって治療することのできる癌には、これに限定するものではないが、次のものが挙げられる。心臓:肉腫(血管肉腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫)、粘液腫、横紋筋腫、線維腫、脂肪腫および奇形腫;肺:気管支原性肺癌(扁平上皮細胞癌、未分化小細胞癌、未分化大細胞癌、腺癌)、肺胞(細気管支)癌、気管支腺腫、肉腫、リンパ腫、軟骨性過誤腫、中皮腫;胃腸:食道(扁平上皮細胞癌、腺癌、平滑筋肉腫、リンパ腫)、胃(癌腫、リンパ腫、平滑筋肉腫)、膵臓(腺管癌、インスリノーマ、グルカゴン産生腫瘍、ガストリン産生腫瘍、カルチノイド腫瘍、ビポーマ)、小腸(腺癌、リンパ腫、カルチノイド腫瘍、カポジ肉腫、平滑筋腫、血管腫、脂肪腫、神経線維腫、線維腫)、大腸(腺癌、管状腺腫、絨毛腺腫、過誤腫、平滑筋腫);尿生殖器管:腎臓(腺癌、ウィルムス腫瘍[腎石灰沈着症]、リンパ腫、白血病)、膀胱および尿道(扁平上皮癌、移行上皮癌、腺癌)、前立腺(腺癌、肉腫)、精巣(精上皮腫、奇形腫、胎生期癌、奇形癌、絨毛癌、肉腫、間質細胞癌、線維腫、線維腺腫、類腺腫瘍、脂肪腫);肝臓:肝臓癌(肝細胞癌)、胆管癌、肝芽腫、血管肉腫、肝細胞腺腫、血管腫;骨:骨原性肉腫(骨肉腫)、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性リンパ腫(細網細胞肉腫)、多発性骨髄腫、悪性巨細胞腫、脊索腫、骨軟骨腫(骨軟骨外骨腫)、良性軟骨腫、軟骨芽細胞腫、軟骨粘液線維腫、類骨骨腫および巨細胞腫;神経系:頭蓋(骨腫、血管腫、肉芽腫、黄色腫、変形性骨炎)、髄膜(髄膜腫、髄膜肉腫、神経膠腫症)、脳(星状細胞腫、髄芽細胞腫、神経膠腫、上衣細胞腫、胚細胞腫[松果体腫]、多形性グリア芽細胞腫、乏突起神経膠腫、神経鞘腫、網膜芽細胞腫、先天性腫瘍)、脊髄(神経線維腫、髄膜腫、神経膠腫、肉腫);婦人科系:子宮(子宮内膜癌)、子宮頸(子宮頸癌、前腫瘍子宮頸部形成異常)、卵巣(卵巣癌[漿液性嚢胞腺癌、粘液性嚢胞腺癌、未分類の癌腫]、顆粒膜−包膜細胞腫、セルトリ−ライディッヒ細胞腫、未分化胚細胞腫、悪性奇形腫)、外陰(扁平上皮癌、上皮内癌、腺癌、線維肉腫、メラノーマ)、膣(明細胞癌、扁平上皮癌、ブドウ状肉腫[胎児性横紋筋肉腫])、ファロピウス管(癌腫);血液系:血液(骨髄性白血病[急性および慢性]、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病、脊髄増殖性疾患、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群)、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫[悪性リンパ腫];皮膚:悪性メラノーマ、基底細胞癌、扁平上皮癌、カポジ肉腫、色素性形成異常母斑、脂肪腫、血管腫、皮膚線維腫、ケロイド、乾癬;ならびに副腎:神経芽細胞腫。このように、本明細書で使用される場合「癌性細胞」は、上で特定した状態のいずれか1つに罹患している細胞を包含する。
【0086】
本明細書において実証されるように、本発明のヒドロキサム酸誘導体は、チオレドキシン(TRX)媒介疾患または障害の治療に有用である。
【0087】
したがって、一実施形態では、本発明は本明細書に記載のヒドロキサム酸誘導体の治療有効量を患者に投与する工程を含む、治療を必要とする対象におけるチオレドキシン(TRX)媒介疾患または障害を治療する方法に関する。
【0088】
別の実施形態では、本発明は、そのような治療を必要とする対象におけるチオレドキシン(TRX)媒介疾患または障害を治療するための薬剤の調製において、本明細書に開示のヒドロキサム酸誘導体のいずれか1つまたは複数の使用に関する。TRX媒介疾患の例には、これに限定するものではないが、急性および慢性炎症性疾患、自己免疫疾患、アレルギー性疾患、酸化的ストレスに伴う疾患、および細胞の過剰増殖によって特徴付けられる疾患が挙げられる。
【0089】
非限定的な例は、関節リウマチ(RA)および乾癬性関節炎を含む関節の炎症状態;クローン病および潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患;脊椎関節症;強皮症;乾癬(T細胞媒介乾癬など)および皮膚炎、湿疹、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、尊麻疹などの炎症性皮膚疾患;脈管炎(例えば、壊死性血管炎、皮膚血管炎および過敏性血管炎);好酸球性筋炎、好酸球性筋膜炎;皮膚または器官の白血球浸潤を伴う癌、脳虚血(例えば、各々神経変性に至るおそれのある外傷、てんかん、大出血または発作の結果生じる脳損傷)を含む虚血性傷害;HTV、心不全、慢性、急性または悪性肝疾患、自己免疫性甲状腺炎;全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、肺病疾患(例えば、急性呼吸窮迫症候群);急性膵炎;筋萎縮性側索硬化症(ALS);アルツハイマー病;悪液質/拒食症;喘息;アテローム性動脈硬化症;慢性疲労症候群、発熱;糖尿病(例えば、インスリン糖尿病または若年発症糖尿病);糸球体腎炎;植片対宿主拒絶反応(例えば、移植時);出血性ショック;痛覚過敏症:炎症性腸疾患;多発性硬化症;筋疾患(例えば、特に敗血症における筋タンパク質代謝);骨粗しょう症;パーキンソン病;疼痛;早期陣痛;乾癬;再潅流障害;サイトカイン誘導毒性(例えば、敗血症、内毒素性ショック);放射線療法による副作用、側頭下顎関節疾患、腫瘍転移;または筋違い、捻挫、軟骨損傷、火傷などの外傷、整形外科術、感染または他の疾患の過程から生じる 炎症状態がある。アレルギー疾患および状態には、これに限定するものではないが、喘息などのアレルギー性呼吸器疾患、アレルギー性鼻炎、過敏性肺疾患、過敏性肺炎、好酸球性肺炎(例えば、レフラー症候群、慢性好酸球性肺炎)、遅延型過敏症、間質性肺炎(ILD)(例えば、特発性肺線維症、または関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強直性脊椎炎、全身性硬化症、シェーグレン症候群、多発性筋炎または皮膚筋炎に伴うILD);全身性アナフィラキシーまたは過敏性反応、薬物アレルギー(例えば、ペニシリン、セファロスポリン系抗生物に対する)、虫刺されアレルギー等が挙げられる。
【0090】
本明細書で実証されるように、本発明のヒドロキサム酸誘導体は中枢神経液(CNS)の疾患の治療に有用である。
【0091】
したがって、一実施形態では、本発明は、本明細書に記載のヒドロキサム酸誘導体の治療有効量を対象に投与する工程を含む治療を必要とする対象における中枢神経系(CNS)の疾患を治療する方法に関する。
【0092】
別の実施形態では、本発明は、治療を必要とする対象における中枢神経系(CNS)の疾患を治療するための薬剤の調製の際に、本明細書に開示したヒドロキサム酸誘導体の1つまたは複数を使用することに関する。
【0093】
特定の実施形態では、CNS疾患は神経変性疾患である。さらなる実施形態では、該神経変性疾患はポリグルタミン伸長による疾患である遺伝性神経変性疾患などの遺伝性神経変性疾患である。一般に、神経変性疾患は次のように分類することができる。
【0094】
I.他の顕著な神経学的徴候がない場合の進行性認知症によって特徴付けられる障害。アルツハイマー病;アルツハイマー型の老年性認知症;およびピック病(脳葉萎縮)等。
【0095】
II.進行性認知症と他の顕著な神経学的異常を組み合わせた症候群。A)主として成人に出現する症候群(例えば、ハンチントン舞踏病、運動失調および/またはパーキンソン病、進行性核上麻痺(Steel−Richardson−Olszewski病)、びまん性レヴィー小体認知症および皮質歯状核黒質変性症の発現と認知症を組み合わせた多系統萎縮症)およびB)主として小児または若年成人に出現する症候群(例えば、ハレルフォルデンスパッツ病および進行性家族性ミオクローヌス癲癇)等。
【0096】
III.姿勢および運動の徐々に発症する異常の症候群。振戦麻痺(パーキンソン病)、線条体黒質変性症、進行性核上麻痺、捻転性筋緊張異常症(捻転ジストニー;変形性筋失調症)、痙性斜頸および他の運動異常、家族性振戦、およびジルドラトゥレット症候群等。
【0097】
IV.進行性失調症の症候群。小脳変性症(例えば、小脳皮質変性症およびオリーブ橋小脳萎縮症(OPCA));および脊髄小脳変性症(フリードライヒ運動失調および関連する障害)等。
【0098】
V.中枢自律神経系障害の症候群(シャイドレーガー症候群)。
【0099】
VI.筋力低下および感覚的変化の見られない消耗(筋萎縮性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症(例えば、乳児脊髄性筋萎縮症(ウェルドニッヒホフマン病)、若年性脊髄性筋萎縮症(ヴォールファルトクーゲルベルクヴェランデル病)および家族性脊髄性筋萎縮の他の形態などの、運動ニューロン疾患)、原発性側索硬化症、および遺伝性痙性対麻痺の症候群。
【0100】
VII.筋力低下と感覚的変化の見られない消耗を組み合わせた症候群(進行性神経性筋萎縮症;慢性家族性多発性神経障害)。腓骨筋萎縮(シャルコーマリーツース病)、肥厚性間質性多発性神経障害(デジェリンソッタス病)、および慢性進行性神経障害混合型等。
【0101】
VIII.網膜色素変性症(retinitis pigmentosa)および遺伝性視神経萎縮(レーバー病)などの進行性視力喪失の症候群。
【0102】
本発明の化合物は平滑筋細胞増殖および/または遊走の阻害にも有用であり、したがって、例えば、血管形成術および/またはステント植え込み後の再狭窄の予防および/または治療に有用である。
【0103】
一実施形態では、平滑筋細胞増殖および/または遊走が阻害され、本発明の化合物の1つまたは複数をステント装置の中または上に有する、例えばステント装置の上にコーティングしたステント装置を提供することによって、再狭窄が予防および/または治療される。該ステント装置は制御可能に本発明の化合物を放出し、これによって平滑筋細胞増殖および/または遊走を阻害し、再狭窄を予防および/または治療するように設計されている。
【0104】
狭窄および再狭窄とは血管の狭窄を伴う状態である。血管の狭窄は一般に経時的に徐々に発生する。対照的に、再狭窄は、バルーン血管形成および/またはステント植え込みなどの血管内処置または血管損傷後の血管の狭窄に関連する。
【0105】
バルーン血管形成は一般に狭窄状態の血管を広げるように実施される;ステント術は通常、バルーン血管形成後の血管の開通性を維持するように実施されるか、またはバルーン血管形成と併用して実施される。狭窄状態の血管はバルーンが先端に付いたカテーテルを狭窄部位まで誘導し、このバルーン先端を効果的に膨張させて閉塞した血管を拡張することによって、バルーン血管形成により広げられる。拡張血管の開通性を維持しようとする場合、血管にステントを植え込んで、血管の広げられた断面まで血管内を支持し、これによってバルーンカテーテルを解放後に血管がその閉塞した状態に戻る程度を制限することができる。再狭窄は典型的には血管形成中に負わされた外傷によって生じる、例えば、動脈のバルーン拡張、アテローム切除術またはレーザアブレーション治療によってもたらされる。これらの手順では、再狭窄は血管の場所、病変長および多数の他の変数に応じて約30%〜約60%の割合で生じる。これは比較的低侵襲のバルーン血管形成およびステント処置の全体的成功率を低減させる。
【0106】
再狭窄は平滑筋細胞(SMC)の増殖を含む多くの因子に起因する。SMC増殖はバルーン血管形成術およびステント植え込み時に支持される内膜への初期の機械的損傷によって惹起される。この過程の特徴は、早期には血小板活性化および塞栓形成生じ、次にSMC動員および遊走が起こり、最終的に細胞増殖および細胞外基質蓄積が生じることにある。傷付いた内皮細胞、SMC、血小板、およびマクロファージは再狭窄を促進するサイトカインおよび成長因子を分泌する。SMC増殖は、新生内膜過形成に至る最終的な共通の経路を表す。したがって、細胞周期における特定の調節事象を阻害することを狙いとする抗増殖療法は、血管形成術後の再狭窄に対する最も妥当なアプローチを構成し得る。
【0107】
本明細書で実証されるように、本発明の化合物は強力なHDAC阻害剤であり、この阻害剤は細胞増殖性の疾患または状態の治療において大きな可能性を示す。また、本発明の化合物はSMC増殖の強力な阻害剤である。このため、(例えば、ステント装置から)本発明の化合物を制御可能に放出することは、SMC増殖の阻害に、故に再狭窄の予防および/または治療に非常に有利である。
【0108】
したがって、一実施形態では、本発明は本発明のHDAC阻害剤の1つまたは複数を含むステント装置を提供する。本ステント装置はステント本体と、該ステント本体上に提供された本発明の化合物の1つまたは複数とを含む。一実施形態では、本化合物はステント本体の上または中に位置する送達用徐放性製剤に含まれる。別の実施形態では、本化合物はステント上にコーティングされる。
【0109】
別の実施形態では、本発明は平滑筋細胞の増殖および/または遊走を阻害する際に用いられる本明細書に記載のようなステント装置を提供する。
【0110】
別の実施形態では、本発明はそれを必要とする対象において再狭窄を阻害および/または予防するための本明細書に記載のステント装置の使用に関する。
【0111】
別の実施形態では、本発明は対象における非腫瘍性平滑筋細胞の増殖および/または遊走を阻害する本発明の化合物の使用に関する。
【0112】
別の実施形態では、本発明はそれを必要とする対象において再狭窄を阻害および/または予防するための本発明の化合物の使用に関する。
【0113】
別の実施形態では、本発明は、対象における平滑筋細胞の増殖を阻害するのに有効な量で本発明の化合物を対象に投与する工程を含む、対象における非腫瘍性平滑筋細胞の増殖および/または遊走を阻害する方法に関する。
【0114】
別の実施形態では、本発明は、対象における再狭窄を予防するのに有効な本発明の化合物の量を対象に投与する工程を含む、対象における血管形成術またはステント植え込み後の再狭窄を予防または治療する方法に関する。
【0115】
別の実施形態では、本発明は、ステント本体と該ステント本体の上または中に提供された本発明の化合物の1つまたは複数とを含んだステント装置を対象の血管の内腔内に位置決めする工程を含む、対象における血管形成術またはステント植え込み後の再狭窄を予防または治療する方法に関する。一実施形態では、本化合物はステント本体の上または中に位置する送達用徐放性製剤に含まれる。別の実施形態では、本化合物はステント本体上にコーティングされる。
【0116】
さらに別の実施形態では、本発明は本明細書に記載のようなステント装置と対象の血管の内腔内にステント装置を位置決めすることのできる送達カテーテルとを含むキットを提供する。
【0117】
ステントは当該分野で知られており、冠血管および末梢血管に拡張された形態で永久的に植え込まれる典型的には金属またはポリマー製の装置である。ステントは典型的には、ステンレス鋼、タンタル、チタニウム合金、コバルト合金などの金属、シリコーン、またはポリオレフィンエラストマーおよびポリアミドエラストマーまたはこれらの組合せなどの熱可塑性などのポリマーから製造することができる。ステントは典型的には、カテーテルによって血管腔内に挿入され、拡張されて動脈壁と接触され、これによって血管腔の内部を支持する。ステントの例は、米国特許第4733665号、第4800882号および第4886062号に開示されている。
【0118】
薬物送達系を含んだステントも当該分野では知られている。例えば、米国特許第6273913号、第6383215号、第6238121号、第6231600号、第5837008号、第5824048号および第5679400号はどれも、種々の医薬品によってコーティングされたステントを教示している。医薬品をステント上にコーティングする方法も、当業者には知られている。
【0119】
本発明に関連してその種々の文法的形態において「治療する」という用語は、疾患状態の有害な作用、疾患の増悪、疾患の原因物質(例えば、細菌またはウイルス)または他の異常な状態を予防(すなわち、化学的予防)、治癒、逆転、減弱、軽減、最小化、抑制または停止することを指す。例えば、治療は疾患の徴候(すなわち、必ずしもすべての徴候ではない)を軽減するか、疾患の増悪を減弱することを伴い得る。本発明の方法のいくつかは病因を物理的に除去することを伴うので、当業者はこれらの方法が、病因に曝露される前または曝露と同時に本発明の化合物が投与される状況(予防的処置)および病因に曝露後(かなり後であっても)に本発明の化合物が投与される状況において等しく有効であることを認識する。
【0120】
本明細書で使用される場合、癌の治療とは、哺乳動物、例えばヒトにおいて、全体的または部分的に、転移を含む癌の進行を阻害、遅延または予防する;癌転移を含む癌の再発を阻害、遅延または予防する;あるいは癌の発現または進行を予防する(化学的予防)ことを指す。
【0121】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」とは、所望の治療効果または生物学的効果を達成するどのような量も包含することを意図する。治療効果は治療中の疾患または障害、あるいは望まれる生物学的効果に依存する。したがって、治療効果とは、疾患または障害に伴う徴候の重篤度の低減および/または疾患の進行の(部分的または完全な)阻害であり得る。治療反応を引き出すのに必要な量は、対象の年齢、健康、大きさおよび性別に基づいて決定することができる。最適な量は治療に対する患者の反応のモニタリングに基づいて決定することもできる。
【0122】
本発明では、本化合物を用いて癌を治療または予防する場合、所望の生物学的反応は、哺乳動物、例えばヒトにおける、部分的または全体的な、癌転移を含む癌の進行の阻害、遅延または予防;癌転移を含む癌の再発を阻害、遅延または予防;あるいは癌の発現または進行の予防(化学的予防)である。
【0123】
また、本発明では、本化合物を用いてチオレドキシン(TRX)媒介性の疾患および状態を治療および/または予防する場合、治療有効量とは、治療を必要とする対象においてTRXの生理学的に適した濃度を調節、例えば、増大、低減または維持して所望の治療効果を引き出すための量である。治療有効量は治療中の特定のTRX媒介性の疾患または状態に依存する。したがって、治療効果とは、疾患または障害に伴う徴候の重篤度の低減および/または疾患または障害の進行の(部分的または完全な)阻害であり得る。
【0124】
また、本発明では、本化合物を用いて中枢神経系(CNS)の疾患または障害を治療および/または予防する場合、治療有効量は治療中の特定の疾患または障害に依存する。したがって、治療効果とは、疾患または障害に伴う徴候の重篤度の低減および/または疾患または障害の進行の(部分的または完全な)阻害であり得る。
【0125】
また、治療有効量とはヒストン脱アセチル化酵素を阻害する量であり得る。
【0126】
さらに、治療有効量とは新生細胞の最終分化、細胞成長停止および/またはアポトーシスを選択的に誘起する量であるか、または腫瘍細胞の最終分化を誘起する量であり得る。
【0127】
本発明の方法はヒト癌患者の治療または化学的予防を意図している。しかし、本方法は他の対象における癌の治療に有効である可能性もある。本明細書で用いられる場合、「対象」とは、これに限定するものではないが、霊長類(例えば、ヒト)、乳牛、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ブタ、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ラット、マウス、または他のウシ、ヒツジ、ウマ、イヌ、ネコ、齧歯動物またはマウスの種を含む、哺乳動物などの動物を指す。
【0128】
本明細書で実証するように、本発明のヒドロキサム酸誘導体はヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤としての改善された活性を示す。一実施形態では、ヒストン脱アセチル化酵素の50%阻害に必要な化合物の濃度(IC50)は、1000nm未満である。別の実施形態では、ヒストン脱アセチル化酵素の50%阻害に必要な化合物の濃度(IC50)は、500〜1000nMである。別の実施形態では、ヒストン脱アセチル化酵素の50%阻害に必要な化合物の濃度(IC50)は、100〜500nMである。別の実施形態では、ヒストン脱アセチル化酵素の50%阻害に必要な化合物の濃度(IC50)は、100nM未満である。別の実施形態では、ヒストン脱アセチル化酵素の50%阻害に必要な化合物の濃度(IC50)は、10〜100nMである。別の実施形態では、ヒストン脱アセチル化酵素の50%阻害に必要な化合物の濃度(IC50)は50nM未満である。別の実施形態では、ヒストン脱アセチル化酵素の50%阻害に必要な化合物の濃度(IC50)は、10〜50nMである。別の実施形態では、ヒストン脱アセチル化酵素の50%阻害に必要な化合物の濃度(IC50)は10nMである。別の実施形態では、ヒストン脱アセチル化酵素の50%阻害に必要な化合物の濃度(IC50)は、1〜10nMである。別の実施形態では、ヒストン脱アセチル化酵素の50%阻害に必要な化合物の濃度(IC50)は1nM未満である。別の実施形態では、ヒストン脱アセチル化酵素の50%阻害に必要な化合物の濃度(IC50)は、0.1〜1nMである。
【0129】
したがって、一実施形態では、本発明は、本明細書に記載のヒドロキサム酸化合物の1つまたは複数の有効量にヒストン脱アセチル化酵素を接触させる工程を含む、ヒストン脱アセチル化酵素の活性を阻害する方法に関する。
【0130】
一実施形態では、本ヒドロキサム酸誘導体はClass Iヒストン脱アセチル化酵素(Class I HDAC)の強力な阻害剤である。Class I HDACには、ヒストン脱アセチル化酵素1(HDAC−1)、ヒストン脱アセチル化酵素2(HDAC−2)、ヒストン脱アセチル化酵素3(HDAC−3)およびヒストン脱アセチル化酵素8(HDAC−8)が挙げられる。特定の実施形態では、本ヒドロキサム酸誘導体はヒストン脱アセチル化酵素I(HDAC−1)の強力な阻害剤である。別の実施形態では、本ヒドロキサム酸誘導体はClass IIヒストン脱アセチル化酵素(Class II HDAC)の強力な阻害剤である。Class II HDACには、ヒストン脱アセチル化酵素4(HDAC−4)、ヒストン脱アセチル化酵素5(HDAC−8)、ヒストン脱アセチル化酵素6(HDAC−6)、ヒストン脱アセチル化酵素7(HDAC−7)およびヒストン脱アセチル化酵素9(HDAC−9)が挙げられる。
【0131】
ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)とは、本明細書でこの用語が用いられる場合、ヌクレオソームコアのヒストンのアミノ末端尾部におけるリジン残基からのアセチル基の除去を触媒する酵素である。したがって、HDACはヒストンアセチル転移酵素(HAT)と一緒にヒストンのアセチル化状態を調節する。ヒストンアセチル化は遺伝子発現に影響を及ぼし、ヒドロキサム酸ベースのハイブリッド極性化合物であるスベロイラニリドヒドロキサム酸(SAHA)などのHDACの阻害剤は形質転換細胞の成長停止、分化および/またはアポトーシスをインビトロで誘起し、腫瘍成長をインビボで阻害する。HDACは構造的相同性に基づいて3つのクラスに分類することができる。Class IのHDAC(HDAC1、2、3および8)は酵母RPD3タンパク質と類似性を有し、細胞核に存在し、転写コリプレッサーに関連する複合体に見出される。Class IIのHDAC(HDAC4、5、6、7および9)は、酵母HDA1タンパク質に類似し、核および細胞質での細胞内局在性の両方を有する。Class IおよびII両方のHDACはSAHAなどのヒドロキサム酸ベースのHDAC阻害剤によって阻害される。クラスIIIのHDACは、酵母SIR2タンパク質に関連しヒドロキサム酸ベースのHDAC阻害剤によって阻害されない、構造的に離れたクラスのNAD依存性酵素を形成する。
【0132】
本明細書で用いる場合、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤すなわちHDAC阻害剤という用語は、インビボ、インビトロまたはその両方においてヒストンの脱アセチル化を阻害することのできる化合物である。したがって、HDAC阻害剤は少なくとも1つのヒストン脱アセチル化酵素の活性を阻害する。少なくとも1つのヒストンの脱アセチル化を阻害する結果、アセチル化されたヒストンが増大し、アセチル化されたヒストンの蓄積は、HDAC阻害剤の活性を評価するための適した生物学的マーカーである。したがって、アセチル化されたヒストンの蓄積量を分析することのできる手順を用いて、対象化合物のHDAC阻害活性を決定することができる。ヒストン脱アセチル化酵素活性を阻害することのできる化合物は他の基質に結合することもでき、このような化合物は酵素などの他の生物学的活性分子を阻害することができることを理解されたい。本発明の化合物は上記ヒストン脱アセチル化酵素のいずれも、または他のあらゆるヒストン脱アセチル化酵素を阻害することができることも理解されたい。
【0133】
例えば、HDAC阻害剤を投与されている患者では、末梢単核球のほかHDAC阻害剤で治療した組織中のアセチル化されたヒストンの蓄積を適した対照に対して判定することができる。
【0134】
特定の化合物のHDAC阻害活性は、例えば、少なくとも1つのヒストン脱アセチル化酵素の阻害を示す酵素アッセイを用いてインビトロで決定することができる。さらに、特定の組成物で治療した細胞中のアセチル化されたヒストンの蓄積量の決定はある化合物のHDAC阻害活性を決定することができる。
【0135】
アセチル化されたヒストンの蓄積量の分析は文献においてよく知られている。例えば、Marks,P.A.ら、J.Natl.Cancer Inst.、92:1210〜1215頁、2000年、Butler,L.M.ら、Cancer Res.60:5165〜5170頁(2000年)、Richon,V.M.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA、95:3003〜3007頁、1998年、およびYoshida,M.らJ.Biol.Chem.、265:17174〜17179頁、1990年を参照されたい。
【0136】
例えば、HDAC阻害剤化合物の活性を決定するための酵素アッセイは、次のように実施することができる。要約すると、HDAC阻害剤化合物の親和性精製ヒトエピトープタグ付き(Flag)HDAC 1に対する作用は、阻害剤化合物の指示された量を用いて、基質の不存在下で氷上で酵素製剤を約20分間インキュベートすることによって測定することができる。基質[H]アセチル標識マウス赤白血病細胞由来ヒストン)を加え、該試料を計30μL中で37℃で20分間インキュベートすることができる。次いで、この反応を停止し、放出された酢酸塩を抽出し、シンチレーション計測により放射能放出の量を決定することができる。HDAC阻害剤化合物の活性を決定するための別のアッセイは、BIOMOL(登録商標)Research Laboratories社(ペンシルバニア州プリマスミーティング)から入手できる「HDAC蛍光活性測定;Drug Discovery Kit−AK−500」である。
【0137】
インビボ試験は次のように実施することができる。動物、例えば、マウスにHDAC阻害剤化合物を腹腔内注射することができる。投与後、選択した組織、例えば、脳、脾臓、肝臓等を所定の時間に単離することができる。実質的に、Yoshidaら、J.Biol.Chem.265:17174〜17179、1990年に記載のようにヒストンを単離することができる。ヒストンの等量(約1μg)を15%SDS−ポリアクリルアミドゲルで電気泳動し、ハイボンド−Pフィルター(Amersham社から市販)に移すことができる。フィルターは3%ミルクでブロックし、ウサギ精製ポリクローナル抗アセチル化ヒストンH4抗体(αAc−H4)および抗アセチル化ヒストンH3抗体(αAc−H3)(Upstate Biotechnology社)でプローブ標識することができる。アセチル化されたヒストンのレベルは、ホースラディシュペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ラビット抗体(1:5000)およびSuperSignal化学発光基質(Pierce社)を用いて視覚化することができる。ヒストンタンパク質のローディングコントロールとして、平行なゲルを走らせ、クマシーブルー(CB)で染色することができる。
【0138】
また、ヒドロキサム酸ベースのHDAC阻害剤は、p21WAF1遺伝子の発現をアップレギュレートすることがあきらかとなっている。標準的方法を用いて、種々の形質転換細胞内でHDAC阻害剤により培養2時間以内にp21WAF1タンパク質が誘導される。p21WAF1遺伝子の誘導は、この遺伝子のクロマチン領域におけるアセチル化されたヒストンの蓄積に関与する。したがって、p21WAF1の誘導は、形質転換細胞内でHDAC阻害剤によって引き起こされるGl細胞周期停止に関与することを確認することができる。
【0139】
典型的には、HDAC阻害剤は5種類の一般的分類に分かれる:1)ヒドロキサム酸誘導体;2)短鎖脂肪酸(SCFA);3)環状テトラペプチド;4)ベンズアミド;および5)求電子性ケトン。このようなHDAC阻害剤の例を以下に記載する。
【0140】
A.ヒドロキサム酸誘導体:スベロイラニリドヒドロキサム酸(SAHA)(Richonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95、3003〜3007頁(1998年);m−ビスヒドロキシアミドカルボキシ桂皮酸(CBHA)(Richonら、上記参照);ピロキサミド;トリコスタチンA(TSA)およびトリコスタチンCなどのトリコスタチン類似体(Kogheら、1998年、Biochem.Pharmacol、56:1359〜1364頁);サリチルヒドロキサム酸(Andrewsら、International.J.Parasitology 30、761〜768頁(2000年));スベロイルビスヒドロキサム酸(SBHA)(米国特許第5608108号);アゼラインビスヒドロキサム酸(ABHA)(Andrewsら、上記参照);アゼライン−l−ヒドロキサメート−9−アニリド(AAHA)(Qiuら、Mol Biol.Cell、11、2069〜2083頁(2000年));6−(3−クロロフェニルウレイド)カルポイックヒドロキサム酸(3Cl−UCHA);オキサムフラチン[(2E)−5−[3−[(フェニルスルホニル)アミノフェニル]−ペント−2−エン−4−イノヒドロキサム酸](Kimら、Oncogene、18:2461〜2470頁(1999年));A−161906、Scriptaid(Suら、2000 Cancer Research、60:3137〜3142頁);PXD−101(Prolifix社);LAQ−824;CHAP;MW2796(Andrewsら、上記参照);MW2996(Andrewsら、上記参照);または米国特許第5369108号、第5932616号、第5700811号、第6087367号および第6511990号のどれにも開示されたヒドロキサム酸等。
【0141】
B.環状テトラペプチド:トラポキシンA(TPX)−環状テトラペプチド(シクロ−(L−フェニルアラニル−L−フェニルアラニル−D−ピペコリニル−L−2−アミノ−8−オキソ−9,10−エポキシデカノイル))(Kijimaら、J Biol.Chem.268、22429〜22435頁(1993年));FR901228(FK228、デプシペプチド)(Nakajimaら、Ex.Cell Res.241、126〜133頁(1998年));FR225497環状テトラペプチド(H.Moriら、PCT国際出願WO00/08048(2000年2月17日));アピシジン環状テトラペプチド[シクロ(N−O−メチル−L−トリプトファニル−L−isoleucinyl−D−ピペコリニル−L−2−アミノ−8−オキソデカノイル)(Darkin−Rattrayら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93、13143〜13147(1996年));アピシジンIa、アピシジンIb、アピシジンIc、アピシジンIIaおよびアピシジンIIb(P.Dulskiら、PCT国際出願WO97/11366);CHAP、HC−トキシン環状テトラペプチド(Boschら、plant Cell 7、1941〜1950頁(1995年));WF27082環状テトラペプチド(PCT国際出願WO98/48825);およびクラミドシン(Boschら、上記参照)等。
【0142】
C.短鎖脂肪酸(SCFA)誘導体:酪酸ナトリウム(Cousensら、J.Biol.Chem.254、1716〜1723頁(1979年));イソ吉草酸(McBainら、Biochem.Pharm.53:1357〜1368頁(1997年));吉草酸(McBain、上記参照);4−フェニルブチレート(4−PBA)(LeaとTulsyan、Anticancer Research、15、879〜873頁(1995年));フェニルブチレート(PB)(Wangら、Cancer Research、59、2766〜2799頁(1999年));プロピオン酸(McBain、上記参照);ブチルアミド(LeaとTulsyan、上記参照);イソブチルアミド(LeaとTulsyan、上記参照);酢酸フェニル(LeaとTulsyan、上記参照);3−ブロモプロピオネート(LeaとTulsyan、上記参照);トリブチリン(Guanら、Cancer Research、60、749〜755頁(2000年));バルプロ酸、バルプロエートおよびPivanex(商標)等。
【0143】
D.ベンズアミド誘導体:CI−994;MS−275[N−(2−アミノフェニル)−4−[N−(ピリジン−3−イルメトキシカルボニル)アミノメチル]ベンズアミド](Saitoら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、96、4592〜4597頁(1999年));およびMS−275の3’−アミノ誘導体(Saitoら、上記参照)等。
【0144】
E.求電子性ケトン誘導体:トリフルオロメチルケトン(Freyら、Bioorganic & Med.hem.Lett.(2002年)、12、3443〜3447頁;米国特許第6511990号)およびN−メチル−α−ケトアミドなどのα−ケトアミド等。
【0145】
F.他のHDAC阻害剤:天然産物、psammaplinsおよびデプデシン(Kwonら、1998年、PNAS 95:3356〜3361頁)等。
【0146】
本発明のヒドロキサム酸化合物は単独で、または治療中の疾患または障害に適した他の療法と併用して投与することができる。別個の用量処方を用いる場合、本ヒドロキサム酸化合物および他の治療剤は、実質的に同じ時間(同時)に投与することができるか、または時間をずらして(逐次的に)投与することができる。この医薬の組合せは、これらすべての投薬計画を包含するものと理解されたい。本ヒドロキサム酸化合物および他の治療剤の有益な治療効果が実質的に同時に当該患者に実現される限り、これらすべての様式における投与は本発明に適している。このような有益な効果は、目標とする各活性薬剤の血中濃度が実質的に同時に維持されるときに、好ましく達成される。
【0147】
当業者であれば、治療中の疾患に基づいてどの薬剤の組合せが有用であるか、例えば、どの癌、どの神経変性疾患またはどの炎症性疾患が関与しているのかを識別することができる。
【0148】
本ヒドロキサム酸誘導体は、HDAC阻害剤(例えば、上記HDAC阻害剤の1つまたは複数)、アルキル化剤、抗生物質、代謝拮抗剤、ホルモン剤、植物由来剤、生物剤、遺伝子治療薬、血管新生阻害剤、分化誘導剤、レチノイド受容体モジュレータ、細胞毒性剤/細胞増殖抑制剤、抗増殖剤、HMG−CoA還元酵素阻害剤、プレニルタンパク質還元酵素阻害剤、細胞周期チェックポイントに干渉する薬剤、細胞増殖および生存シグナリング経路の阻害剤、アポトーシス誘導剤、細胞成長停止誘導剤、またはこれらの組合せのいずれか1つまたは複数と併用して投与することができる。また、本化合物は放射線療法と同時に投与されるときに特に有用である。
【0149】
「アルキル化剤」は、DNA産生のためのヌクレオチド前駆体上の化学的実体などの求核残基と反応する。アルキル化剤は、これらのヌクレオチドをアルカリ化すると共にヌクレオチドがDNAに組み立てられるのを阻止することによって、細胞分割の過程に影響を及ぼす。
【0150】
アルキル化剤の例には、これに限定するものではないが、ビスクロロエチルアミン(ナイトロジェンマスタード、例えば、クロラムブシル、シクロホスファミド、イホスファミド、メクロレタミン、メルファラン、ウラシルマスタード)、アジリジン(例えば、チオテパ)、アルコンスルホン酸アルキル(例えば、ブスルファン)、ニトロソウレア(例えば、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン)、非古典型アルキル化剤(アルトレタミン、ダカルバジンおよびプロカルバジン)、白金化合物(カルボプラチンおよびシスプラチン)が挙げられる。これらの化合物はリン酸基、アミノ基、ヒドロキシル基、スルフィヒドリル基、カルボキシル基およびイミダゾール基と反応する。
【0151】
生理的条件下では、これらの薬剤はイオン化し、影響を受けやすい核酸およびタンパク質に結合する正電荷イオンを発生し、細胞周期停止および/または細胞死を招く。本アルキル化剤は細胞周期の特定の段階とは無関係にそれらの活性に影響を及ぼすので、細胞周期の段階に非特異的な薬剤である。ナイトロジェンマスタードおよびアルコンスルホン酸アルキルは、G1期またはM期の細胞に対して最も有効である。ニトロソウレア、ナイトロジェンマスタードおよびアジリジピンは、G1期およびS期からM期への進行を弱める(ChabnerとCollins編集(1990年)「Cancer Chemotherapy:Principles and Practice」、フィラデルフィア:JB Lippincott)。
【0152】
アルキル化剤は腫瘍性疾患の幅広い種類に対して活性があり、白血病およびリンパ腫のほか固体腫瘍の治療において有意な活性がある。臨床的には、この薬剤のグループは、急性および慢性白血病:ホジキン病;非ホジキンリンパ腫;多発性骨髄腫;原発性脳腫瘍;乳癌、卵巣癌、精巣癌、肺癌、膀胱癌、頸癌、頭頸部癌、および悪性メラノーマの治療に一般的に使用される。
【0153】
「抗生物質」(例えば、細胞毒性抗生物質)はDNAまたはRNA合成を直接阻害することによって作用し、細胞周期全体にわたって効果的である。抗生物質の例には、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシンおよびアントラセンジオン)、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、およびプリカトマイシンが挙げられる。これらの抗生物質は、異なる細胞成分を標的にすることによって細胞成長に干渉する。例えば、アントラサイクリンは転写活性のあるDNAの領域においてDNAトポイソメラーゼIIの作用に干渉し、DNA鎖切断をもたらすと一般に考えられている。
【0154】
ブレオマイシンは鉄をキレート化し、活性錯体を形成し、次いでこの活性錯体がDNAの塩基に結合して鎖切断および細胞死を引き起こすと一般に考えられている。
【0155】
この抗生物質は乳癌、肺癌、胃癌および甲状腺癌、リンパ腫、骨髄性白血病、骨髄腫および非上皮性悪性腫瘍などの腫瘍性疾患のある範囲にわたって治療法として用いられている。
【0156】
「代謝拮抗剤」(すなわち、代謝拮抗物質)は、癌細胞の生理および増殖に不可欠な代謝過程に干渉する薬物のグループである。活発に増殖する癌細胞は、大量の核酸、タンパク質、脂質およびその他の不可欠な細胞成分が継続的に合成されることを必要とする。
【0157】
代謝拮抗物質の多くはプリンヌクレオシドまたはピリミジンヌクレオシドの合成を阻害するか、DNA複製の酵素を阻害する。いくつかの代謝拮抗物質は、リボヌクレオシドおよびRNAの合成および/またはアミノ酸代謝のほか、タンパク質合成にも干渉する。不可欠な細胞成分の合成に干渉することによって、代謝拮抗物質は癌細胞の成長を遅延または停止することができる。代謝拮抗物質の例には、これに限定するもの得はないが、フルオロウラシル(5−FU)、フロクスウリジン(5−FUdR)、メトトレキサート、ロイコボリン、ヒドロキシウレア、チオグアニン(6−TG)、メルカプトプリン(6−MP)、シタラビン、ペントスタチン、リン酸フルダラビン、クラドリビン(2−CDA)、アスパラギナーゼおよびゲムシタビンが挙げられる。
【0158】
代謝拮抗剤は結腸癌、直腸癌、乳癌、肝癌、胃癌および膵臓癌、悪性メラノーマ、急性および慢性の白血病および有毛細胞白血病などのいくつかの一般的形態を治療するのに広く用いられている。
【0159】
「ホルモン剤」はそれらの標的器官の成長および発達を調節する薬剤のグループである。ホルモン剤のいくつかは、エストロゲン、プロゲストゲン、抗エストロゲン、アンドロゲン、抗アンドロゲンおよびプロゲスチンなどの、性ステロイドおよびそれらの誘導体および類似体である。他のホルモン剤はそれらの標的受容体を調節する小分子である。これらのホルモン剤は性ステロイドの受容体の拮抗薬として働いて、受容体発現および不可欠な遺伝子の転写を下方制御し得る。このようなホルモン剤の例には、合成エストロゲン(例えば、ジエチルスチベステロール)、エストロゲン受容体モジュレータ、選択的エストロゲン受容体モジュレータ(SERM)、抗エストロゲン(例えば、タモキシフェン、トレミフェン、フルオキシメステロールおよびラロキシフェン)、アンドロゲン受容体モジュレータ、選択的アンドロゲン受容体モジュレータ(SARM)、抗アンドロゲン(例えば、ビカルタミド、ニルタミド、フルタミド)、アロマターゼ阻害剤(例えば、アミノグルテチミド、ナストロゾールおよびテトラゾール)、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)類似体、ケトコナゾール、酢酸ゴセレリン、ロイプロリド、酢酸メゲストロールおよびミフェプリストンがある。
【0160】
ホルモン剤は乳癌、前立腺癌、メラノーマおよび髄膜腫を治療するのに用いられる。ホルモンの主要な作用はステロイド受容体を通して媒介されるので、60%の受容体陽性乳癌が第一選択のホルモン療法に反応した;また、受容体陰性腫瘍の10%未満が反応した。具体的には、子宮内膜癌はプロゲストゲンによって拮抗されないエストロゲンの高レベルに曝露した女性に生じるので、子宮内膜癌を治療するためにはプロゲストゲンが用いられる。抗アンドロゲンはホルモン依存性の前立腺癌の治療に主として用いられる。抗アンドロゲンを用いてテストステロンの濃度を低減し、これによって腫瘍の成長が阻害される。
【0161】
乳癌のホルモン治療には、腫瘍性乳腺細胞においてエストロゲン受容体のエストロゲン依存性の活性化のレベルを低減させることを伴う。抗エストロゲンはエストロゲン受容体に結合することによって働き、コアクチベータの動員を阻止し、これによってエストロゲンシグナルを阻害する。
【0162】
LHRH類似体は前立腺癌の治療に用いられ、テストステロンのレベルを低減させ、これにより腫瘍の成長を抑制する。
【0163】
アロマターゼ阻害剤はホルモン合成に必要な酵素を阻害することによって働く。更年期後の女性では、エストロゲンは主に、アロマターゼによるアンドロステンジオンの変換によって生じる。
【0164】
エストロゲン受容体モジュレータとは、機序にかかわらず、該受容体へのエストロゲンの結合に干渉するか、この結合を阻害する化合物を指す。エストロゲン受容体モジュレータの例には、これに限定するものではないが、タモキシフェン、ラロキシフェン、イドキシフェン、LY353381、LY117081、トレミフェン、フルベストラント、4−[7−(2,2−ジメチル−1−オキソプロポキシ−4−メチル−2−[4−[2−(1−ピペリジニル)エトキシ]フェニル]−2H−1−ベンゾピラン−3−イル]−フェニル−2,2−ジメチルプロパノエート、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン−2,4−ジニトロフェニル−ヒドラゾン、およびSH646が挙げられる。
【0165】
「アンドロゲン受容体モジュレータ」は、機序にかかわらず、該受容体へのアンドロゲンの結合に干渉するか、この結合を阻害する化合物を指す。アンドロゲン受容体モジュレータの例には、フィナステリドおよび他の5α−還元酵素阻害剤、ニルタミド、フルタミド、ビカルタミド、リアロゾール、および酢酸アビラテロンが挙げられる。
【0166】
「植物由来剤」とは、植物に由来するか、または該薬剤の分子構造に基づいて改変された薬物のグループである。植物由来剤は細胞分割に不可欠な細胞成分の組み立てを阻止することによって細胞複製を阻害する。
【0167】
植物由来剤の例には、ビンカアルカロイド(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビンゾリジンおよびおよびビノレルビン)、ポドフィロトキシン(例えば、エトポシド(VP−16)およびテニポシド(VM−26))、タキサン(例えば、パクリタキセルおよびドセタキセル)が挙げられる。これらの植物由来剤は一般に、チューブリンに結合し有糸分裂を阻害する有糸分裂阻害剤として働く。エトポシドなどのポドフィロトキシンはトポイソメラーゼIIと相互作用することによってDNA合成を阻害し、これによってDNA鎖切断をもたらすと考えられる。
【0168】
植物由来剤は癌の多数の形態を治療するのに用いられる。例えば、ビンクリスチンは白血病、ホジキン病および非ホジキンリンパ腫、および小児腫瘍神経芽腫、横紋筋肉腫、ならびにウィルムス腫瘍の治療の際に用いられる。ビンブラスチンはリンパ腫、精巣癌、腎細胞癌、菌状息肉腫およびカポジ肉腫に対して用いられる。Doxetaxelは進行性の乳癌、非小細胞肺癌(NSCLC)および卵巣癌に対して期待できる活性を示す。
【0169】
エトポシドは小細胞肺癌、精巣癌および非小細胞肺癌が最も反応する新生物の幅広い範囲に対して活性がある。
【0170】
「生物剤」とは、単剤で使用される場合、または化学療法および/または放射線療法と併用される場合に癌/腫瘍退縮を誘発する生体分子のグループである。生物剤の例には、サイトカイン、腫瘍抗原に対するモノクローナル抗体、腫瘍抑制遺伝子、および癌ワクチンなどの免疫調節タンパク質が挙げられる。
【0171】
サイトカインは深在性の免疫活性を有する。インターロイキン−2(IL−2、アルデスロイキン)およびインターフェロン−α(IFN−α)などの一部のサイトカインは抗腫瘍活性を示し、転移性腎細胞癌患者および転移性悪性メラノーマ患者の治療として認可された。IL−2はT細胞媒介免疫応答の中心となるT細胞成長因子である。いく人かの患者に対するIL−2 の選択的抗腫瘍作用は、自己と非自己とを識別する細胞媒介性免疫応答の結果であると考えられる。
【0172】
インターフェロン−αは活性が重複する23を超える数の関連するサブタイプを含む。IFN−αは多数の固体悪性腫瘍および血液悪性腫瘍に対して活性を示し、血液悪性腫瘍は特に感受性があると思われる。
【0173】
インターフェロンの例には、インターフェロン−α、インターフェロン−β(線維芽細胞インターフェロン)およびインターフェロン−γ(線維芽細胞インターフェロン)が挙げられる。サイトカインの例には、エリスロポエチン(epoietin−α)、顆粒球−CSF(フィルグラスチム)、および顆粒球、マクロファージ−CSF(サルグラモスチム)が挙げられる。サイトカイン以外の他の免疫調節剤には、カルメットゲラン菌、レバミゾール、および天然ホルモンのソマスタチンの作用を模倣する長時間作用型オクタペプチドであるオクトレオチドが挙げられる。
【0174】
さらに、抗癌剤治療には、腫瘍ワクチンアプローチに使用される抗体および試薬を用いた免疫療法による治療を含み得る。この療法クラスにおける第一選択薬は抗体であり、単独であるか、または癌細胞に対する毒素または化学療法剤/細胞毒性剤などの化合物と併用する。腫瘍抗原に対するモノクローナル抗体は、腫瘍によって発現した抗体に対して誘発される抗体であり、腫瘍特異性抗原であるのが好ましい。例えば、モノクローナル抗体HERCEPTIN(登録商標)(トラスツズマブ)は、転移性乳癌を含むいくつかの乳癌において過剰発現するヒト上皮細胞増殖因子受容体2(HER2)に対して産生される。HER2タンパク質の過剰発現は、疾患をさらに侵攻性のものにし、予後をさらに悪化させる。HERCEPTIN(登録商標)は腫瘍がHER2タンパク質を過剰発現させる転移性乳癌患者の治療に単剤で使用される。
【0175】
腫瘍抗原に対するモノクローナル抗体の別の例には、リンパ腫細胞のCD20に対して産生され、正常および悪性のCD20+前B細胞および成熟B細胞を選択的に枯渇させるRITUXAN(登録商標)(リツキシマブ)がある。
【0176】
RITUXANは再発性または難治性の低悪性度または濾胞性CD20+、B細胞非ホジキンリンパ腫患者の治療に単剤で使用される。MYELOTARG(登録商標)(ゲムツズマブオゾガミシン)およびCAMPATH(登録商標)(アレムツズマブ)は、使用してよい腫瘍抗原に対するモノクローナル抗体のさらなる例である。
【0177】
モノクローナル抗体を標的にした治療薬の例には、癌細胞特異的または標的細胞特異的モノクローナル抗体に結合した細胞毒性剤または放射性同位元素を有する治療薬が挙げられる。例としてBexxarが挙げられる。
【0178】
腫瘍抑制遺伝子とは、細胞成長周期および細胞分裂周期を阻害し、これによって新生組織形成の発達を阻止するように機能する遺伝子である。腫瘍抑制遺伝子が変異すると、細胞は阻害シグナルのネットワークの成分の1つまたは複数を無視し、細胞周期チェックポイントを乗り越え、その結果、制御された細胞成長−癌の速度が速くなる。腫瘍抑制遺伝子の例には、Duc−4、NF−1、NF−2、RB、p53、WT1、BRCAlおよびBRCA2が挙げられる。
【0179】
DPC4は膵癌に関与し、細胞分割を阻害する細胞質性の経路に関わる。NF−1は細胞質阻害タンパク質であるRasを阻害するタンパク質をコードする。NF−1は神経系の神経線維腫および褐色細胞腫ならびに骨髄性白血病に関与する。NF−2は神経系の髄膜腫、神経鞘腫および上衣腫に関与する核タンパク質をコードする。RBは細胞周期の主な阻害物質である核タンパク質であるpRBタンパク質をコードする。RBは網膜芽細胞腫のほか骨肉腫、膀胱癌、小細胞肺癌および乳癌に関与する。P53は、細胞分割を調節しアポトーシスを誘発し得るp53タンパク質をコードする。p53の変異および/または不活動は癌の幅広い範囲に見られる。WTIは腎のウィルムス腫瘍に関与する。BRCAlは乳癌および卵巣癌に関与し、BRCA2は乳癌に関与する。この腫瘍抑制遺伝子は腫瘍細胞へと移動して、その腫瘍抑制機能を発揮する。
【0180】
癌ワクチンとは、腫瘍に対して身体の特異的免疫応答を誘発させる薬剤のグループである。研究および開発ならびに臨床試験中の癌ワクチンのほとんどは腫瘍関連抗原(TAA)である。TAAは、腫瘍細胞に存在し、正常細胞には比較的存在しないか少ない構造体(すなわち、タンパク質、酵素または糖質)である。腫瘍細胞に非常に固有であるため、TAAは免疫系が認識する標的を提供し、それらの崩壊を引き起こす。TAAの例には、ガングリオシド(GM2)、前立腺特異抗原(PSA)、αフェトプロテイン(AFP)、癌胎児性抗原(CEA)(結腸癌および他の腺癌、例えば、乳癌、肺癌、胃癌および膵癌によって生じる。)、メラノーマ関連抗原(MART−1、gap100、MAGE1、3チロシナーゼ)、乳頭腫ウイルス属E6およびE7断片、自家腫瘍細胞および同種異系腫瘍細胞の全細胞または一部/溶解物が挙げられる。
【0181】
癌治療に用いられる従来の細胞傷害性療法およびホルモン療法に加えて、近年の開発により癌治療のための追加の療法が導入された。例えば、遺伝子療法の多くの形態が前臨床および臨床試験段階にある。このように、本発明の別の実施形態は癌治療のための遺伝子療法と併用して本明細書に開示した化合物を使用することである。癌治療の遺伝学的戦略の概要については、Hallら(Am J Hum Genet 61:785〜789頁、1997年)およびKufeら(Cancer Medicine、第5版、876〜889頁、BC Decker、Hamilton 2000年)を参照のこと。遺伝子療法は何らかの腫瘍抑制遺伝子を送達するために使用することができる。このような遺伝子の例には、これに限定するものではないが、組換えウイルス媒介遺伝子伝達により送達することができる、p53(例えば、米国特許第6069134号を参照のこと)、uPA/uPAR拮抗薬(「Adenovirus−Mediated Delivery of a uPA/uPAR Antagonist Suppresses Angiogenesis−Dependent Tumor Growth and Dissemination in Mice)」、Gene Therapy、1998年8月;5(8):1105〜1113頁)、およびインターフェロンガンマ(J Immunol 2000:164:217−222)が挙げられる。
【0182】
加えて、腫瘍の血管新生(血管形成)の阻害に基づいたアプローチが現在開発中である。この概念の目的は新しく形成された腫瘍血管系によって提供される栄養および酸素供給から腫瘍を切り離すことにある。「血管形成抑制剤」とは、機序にかかわらず、新しい血管の形成を抑制する化合物を指す。血管形成抑制剤の例には、これに限定するものではないが、チロシンキナーゼ受容体Flt−1(VEGFR1)およびFlk−1/KDR(VEGFR2)の阻害剤などのチロシンキナーゼ阻害剤、表皮由来、線維芽細胞由来または血小板由来成長因子の阻害剤、MMP(マトリックスメタロプロテアーゼ)阻害剤、インテグリン遮断薬、インターフェロン−α、インターロイキン−12、ペントサン多硫酸エステル、シクロオキシゲナーゼ阻害剤[アスピリンおよびイブプロフェンのような非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)ならびにセレコキシブおよびロフェコキシブのような選択的シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤(PNAS、89巻、7384頁(1992年);JNCI、69巻、475頁(1982年);Arch.Opthalmol.、108巻、573頁(1990年);Anat.Rec.、238巻、68頁(1994年);FEBS Letters、372巻、83頁(1995年);Clin、Orthop.、313巻、76頁(1995年);J.Mol.Endocrinol.、16巻、107頁(1996年);Jpn.J.Pharmacol.、75巻、105頁(1997年);Cancer Res.、57巻、1625頁(1997年);Cell、93巻、705頁(1998年);Intl.J.Mol.Med.、2巻、715頁(1998年);J.Biol.Chem.、274巻、9116頁(1999年))を含む]、ステロイド性抗炎症薬(コルチコステロイド、鉱質コルチコイド、デキサメタゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレド、ベタメタゾンなど)、カルボキシアミドトリアゾール、コンブレタスタチンA−4、スクアラミン、6−O−クロロアセチル−カルボニル)−フマギロール、サリドマイド、アンギオスタチン、トロポニン−1、アンギオテンシンII拮抗薬(Fernandezら、J.Lab.Clin.Med.105:141〜145頁(1985年)を参照)、およびVEGFに対する抗体(Nature Biotechnology、17巻、963〜968頁(1999年10月);Kimら、Nature、362、841〜844頁(1993年);WO00/44777およびWO00/61186を参照のこと)が挙げられる。
【0183】
血管形成を調節または阻害し、本発明の化合物と併用することもできる他の治療薬には、凝固およびフィブリン溶解系を調節または阻害する薬剤が挙げられる(Clin.Chem.La.Med.38:679〜692頁(2000年)における総説を参照)。凝固およびフィブリン溶解経路を調節または阻害する薬剤の例には、ヘパリン(Thromb.Haemost.80:10〜23頁(1998年)を参照のこと)、低分子量ヘパリンおよびカルボキシペプチダーゼU阻害剤(活性トロンビン活性化性フィブリン溶解阻害剤[TAFIa]の阻害剤としても知られている。)(Thrombosis.Res.101:329〜354頁(2001年)を参照)が挙げられるが、これらに限定されない。TAFIa阻害剤は、PCT国際公開公報WO03/013526および米国特許出願第60/349925号(2002年1月18日出願)に記載されている。
【0184】
血管形成抑制剤の他の例には、これに限定するものではないが、エンドスタチン、ウクライン、ランピルナーゼ、IM862、5−メトキシ−4−[2−メチル−3−(3−メチル−2−ブテニル)オキシラニル]−1−オキサスピロ[2,5]オクト−6−イル(クロロアセチル)カルバメート、アセチルジナナリン、5−アミノ−1−[[3,5−ジクロロ−4−(4−クロロベンゾイル)フェニル]メチル]−1H−1,2,3−トリアゾール−4−カルボキサミド、CM101、スクアラミン、コンブレタスタチン、RPI4610、NX31838、硫酸化マンノペンタノースリン酸、7,7−(カルボニル−ビス[イミノ−N−メチル]−4,2−ピロロカルボニルイミノ[N−メチル−4,2−ピロール]−カルボニルイミノ]−ビス−(1,3−ナフタレンジスルホネート)、および3−[(2,4−ジメチルピロール−5−イル)メチレン]−2−インドリノン(SU5416)が挙げられる。
【0185】
また、新生細胞の最終分化を誘導することによる癌治療も試行されている。適した分化剤には、以下の引用文献のいずれか1つまたは複数に開示されており、これらの内容を本明細書に参照により組み込む。
【0186】
a)極性化合物(Marksら(1987年);、Friend,C、Scher,W.、Holland,J.W.およびSato,T.(1971年)、Proc.Natl.Acad.Sci.(米国)68:378〜382頁;Tanaka,M.、Levy,J.、Terada,M.、Breslow,R.、Rifkind,R.A.およびMarks,P.A.(1975年)Proc.Natl.Acad.Sci.(米国)72:1003〜1006頁;Reuben,R.C、Wife,R.L.、Breslow,R.、Rifkind,R.A.およびMarks,P.A.(1976年)、Proc.Natl.Acad.Sci.(米国)73:862〜866頁);
b)ビタミンDおよびレチノイド酸の誘導体(Abe,E.、Miyaura,C、Sakagami,H.、Takeda,M.、Konno,K.、Yamazaki,T.、Yoshika,S.およびSuda,T.(1981年)、Proc.Natl.Acad.Sci.(米国)78:4990〜4994頁;Schwartz,E.L.、Snoddy,J.R.、Kreutter,D.、Rasmussen,H.、およびSartorelli,A.C.(1983年)、Proc.Am.Assoc.Cancer Res.24:18;Tanenaga,K.、Hozumi,M.およびSakagami,Y.(1980年)、Cancer Res.40:914〜919);
c)ステロイドホルモン(Lotem,J.とSachs,L.(1975年)、Int.J.Cancer 15:731〜740頁);
d)Growth factors(Sachs,L.(1978年)、Nature(Lond.)274:535、Metcalf,D.(1985年)、Science、229:16〜22頁);
e)プロテアーゼ(Scher,W.、Scher,B.M.およびWaxman,S.(1983年)、Exp.Hematol.11:490〜498頁;Scher,W.、Scher,B.M.およびWaxman,S.(1982年)、Biochem.& Biophys.Res.Comm.、109:348〜354頁);
f)腫瘍プロモーター(Huberman,E.とCallaham,M.F.(1979年)、Proc.Natl.Acad.Sci.(米国)76:1293〜1297頁;Lottem,J.とSachs,L.(1979年)Proc.Natl.Acad.Sci.(米国)76:5158〜5162頁);および
g)DNAまたはRNA合成のための阻害剤(Schwartz,E.L.とSartorelli,A.C.(1982年)Cancer Res.42:2651〜2655頁、Terada,M.、Epner,E.、Nudel,U.、Salmon,J.、Fibach,E.、Rifkind,R.A.およびMarks,P.A.(1978年)Proc.Natl.Acad.Sci.(米国)75:2795〜2799頁;Morin,M.J.およびSartorelli,A.C.(1984年)Cancer Res.44:2807〜2812頁;Schwartz,E.L.、Brown,B.J.、Nierenberg,M.、Marsh,J.CおよびSartorelli,A.C.(1983年)Cancer Res.43:2725〜2730頁;Sugano,H.、Furusawa,M.、Kawaguchi,T.およびIkawa,Y.(1973年)Bibl.Hematol.39:943〜954頁;Ebert,P.S.、Wars,I.およびBuell,D.N.(1976年)Cancer Res.36:1809〜1813頁;Hayashi,M.,Okabe,J.およびHozumi,M.(1979年)Gann 70:235〜238頁)。
【0187】
「レチノイド受容体モジュレータ」は、機序にかかわらず、レチノイドの受容体への結合に干渉するか、このような結合を阻害する化合物を指す。このようなレチノイド受容体モジュレータの例には、ベキサロテン、トレチノイン、13−シス−レチノイン酸、9−シス−レチノイン酸、α−ジフルオロメチルオルニチン、ILX23−7553、トランス−N−(4’−ヒドロキシフェニル)レチンアミド、およびN−4−カルボキシフェニルレチンアミドが挙げられる。
【0188】
「細胞毒性剤/細胞増殖抑制剤」とは、主として細胞の機能化に直接干渉することによって細胞死を生じさせるか、または増殖を抑制するか、あるいは細胞有糸分裂を抑制するか、またはそれに干渉する化合物を指し、アルキル化剤(上記のもの等)、腫瘍壊死因子、インターカレータ、低酸素状態活性化化合物、微小管抑制剤/微小管安定剤、有糸分裂キネシンの阻害剤、有糸分裂の進行に関与するキナーゼの阻害剤、造血性成長因子、トポイソメラーゼ阻害剤、生物学的反応修飾物質、プロテオソーム阻害剤およびユビキチンリガーゼ阻害剤が挙げられる。加えて、細胞毒性剤/細胞増殖抑制剤には、代謝拮抗物質;ホルモン性/抗ホルモン性治療薬および上記のモノクローナル抗体を標的にした治療薬のどのようなものも含む。
【0189】
細胞毒性剤の例には、これに限定するものではないが、セルテネフ、カケクチン、イホスファミド、タソネルミン、ロニダミン、アルトレタミン、プレドニムスチン、ジブロモダルシトール、ラミムスチン、ホテムスチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、テモゾロミド、ヘプタプラチン、エストラムスチン、トシル酸インプロスルファン、トロホスファミド、ニムスチン、塩化ジブロスピジウム、プミテパ、ロバプラチン、サトラプラチン、プロフィロマイシン、シスプラチン、イロフルベン、デキシホスファミド、シス−アミンジクロロ(2−メチル−ピリジン)白金、ベンジルグアニン、グルホスファミド、GPX100、四塩化(トランス、トランス、トランス)−ビス−mu−(ヘキサン−1,6−ジアミン)−mu−[ジアミン−白金(II)]ビス[ジアミン(クロロ)白金(II)]、ジアリジジニルスペルミン、三酸化砒素、1−(11−ドデシルアミノ−10−ヒドロキシウンデシル)−3,7−ジメチルキサンチン、ゾルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン、ビサントレン、ミトキサントロン、ピラルビシン、ピナフィド、バルルビシン、アンルビシン、アンチネオプラストン、3’−デアミノ−3’−モルホリノ−13−デオキソ−10−ヒドロキシカルミノマイシン、アンナマイシン、ガラルビシン、エリナフィド、MEN10755、および4−デメトキシ−3−デアミノ−3−アジリジニル−4−メチルスルホニル−ダウノルビシン(WO00/50032を参照のこと)が挙げられる。
【0190】
低酸素状態活性化化合物の一例は、チラパザミンである。
【0191】
プロテアソーム阻害剤の例には、ラクタシスチンおよびボルテゾミブが挙げられるが、これに限定されない。
【0192】
微小管抑制剤/微小管安定剤の例には、パクリタキセル、硫酸ビンデシン、3’,4’−ジデヒドロ−4’−デオキシ−8’−ノルビンカロイコブラスチン、ドセタキソール、リゾキシン、ドラスタチン、イセチオン酸ミボブリン、オーリスタチン、セマドチン、RPR109881、BMS184476、ビンフルニン、クリプトフィシン、2,3,4,5,6−ペンタフルオロ−N−(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)ベンゼンスルホンアミド、アンヒドロビンブラスチン、N,N−ジメチル−L−バリル−L−バリル−N−メチル−L−バリル−L−プロピル−L−プロリン−t−ブチルアミド、TDX258、エポチロン類(例えば、米国特許第6284781号および第6288237号を参照のこと)およびBMS188797が挙げられる。
【0193】
トポイソメラーゼ阻害剤のいくつかの例には、トポテカン、ヒカプタミン、イリノテカン、ルビテカン、6−エトキシプロピオニル−3’,4’−O−エキソ−ベンジリデン−シャールトルーシン、9−メトキシ−N,N−ジメチル−5−ニトロピラゾロ[3,4,5−kl]アクリジン−2−(6H)プロパンアミン、1−アミノ−9−エチル−5−フルオロ−2,3−ジヒドロ−9−ヒドロキシ−4−メチル−1H,12H−ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:b,7]−インドリジノ[1,2b]キノリン−10,13(9H,15H)ジオン、ルトテカン、7−[2−(N−イソプロピルアミノ)エチル]−(20S)カンプトテシン、BNP1350、BNPI1100、BN80915、BN80942、リン酸エトポシド、テニポシド、ソブゾキサン、2’−ジメチルアミノ−2’−デオキシ−エトポシド、GL331、N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−9−ヒドロキシ−5,6−ジメチル−6H−ピリド[4,3−b]カルバゾール−1−カルボキサミド、アスラクリン、(5a,5aB,8aa,9b)−9−[2−[N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−N−メチルアミノ]エチル]−5−[4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシフェニル]−5,5a,6,8,8a,9−ヘキソヒドロフロ(3’,4’;6,7)ナフト(2,3−d)−1,3−ジオキソール−6−オン、2,3−(メチレンジオキシ)−5−メチル−7−ヒドロキシ−8−メトキシベンゾ[c]−フェナントリジニウム、6,9−ビス[(2−アミノエチル)アミノ]ベンゾ[g]イソギノリン−5,10−ジオン、5−(3−アミノプロピルアミノ)−7,10−ジヒドロキシ−2−(2−ヒドロキシエチルアミノメチル)−6H−ピラゾロ[4,5,1−de]アクリジン−6−オン、N−[1−[2(ジエチルアミノ)エチルアミノ]−7−メトキシ−9−オキソ−9H−チオキサンテン−4−イルメチル]ホルムアミド、N−(2−(ジメチルアミノ)エチル)アクリジン−4−カルボキサミド、6−[[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミノ]−3−ヒドロキシ−7H−インデノ[2,1−c]キノリン−7−オン、およびジメスナがある。
【0194】
有糸分裂キネシン、特にヒト有糸分裂キネシンKSPの阻害剤の例は、PCT国際公開公報WO01/30768、WO01/98278、WO03/050064、WO03/050122、WO03/049527、WO03/049679、WO03/049678およびWO03/39460、ならびに係属中のPCT出願番号US03/06403(2003年3月4日出願)、US03/15861(2003年5月19日出願)、US03/15810(2003年5月19日出願)、US03/18482(2003年6月12日出願)およびUS03/18694(2003年6月12日出願)に記載されている。一実施形態では、有糸分裂キネシンの阻害剤には、これに限定するものではないが、KSPの阻害剤、MKLP1の阻害剤、CENP−Eの阻害剤、MCAKの阻害剤、Kif14の阻害剤、Mphosph1の阻害剤、およびRab6−KIFLの阻害剤が挙げられる。
【0195】
「有糸分裂の進行に関与するキナーゼの阻害剤」には、これに限定するものではないが、オーロラキナーゼの阻害剤、(PLK−1の特定の阻害剤の中では)Polo様キナーゼ(PLK)の阻害剤、bub−1の阻害剤およびbub−R1の阻害剤が挙げられる。
【0196】
「増殖抑制剤」には、G3139、ODN698、RVASKRAS、GEM231およびINX3001などのアンチセンスRNAおよびDNAオリゴヌクレオチド、ならびにエノシタビン、カルモフール、テガフール、ペントスタチン、ドキシフルリジン、トリメトレキセート、フルダラビン、カペシタビン、ガロシタビン、シタラビンオクホスフェート、ホステアビンナトリウム水和物、ラルチトレキセド、パルチトレキシド、エミテフール、チアゾフリン、デシタビン、ノラトレキセド、ペメトレキセド、ネルザラビン、2’−デオキシ−2’−メチリデンシチジン、2’−フルオロメチレン−2’−デオキシシチジン、N−[5−(2,3−ジヒドロ−ベンゾフリル)スルホニル]−N’−(3,4−ジクロロフェニル)尿素、N6−[4−デオキシ−4−[N2−[2(E),4(E)−テトラデカジエノイル]グリシルアミノ]−L−グリセロ−B−L−マンノ−ヘプトピラノシル]アデニン、アプリジン、エクテイナスシジン、トロキサシタビン、4−[2−アミノ−4−オキソ−4,6,7,8−テトラヒドロ−3H−ピリミジノ[5,4−b][1,4]チアジン−6−イル−(S)−エチル]−2,5−チエノイル−L−グルタミン酸、アミノプテリン、5−フルオロウラシル、アナノシン、11−アセチル−8−(カルバモイルオキシメチル)−4−ホルミル−6−メトキシ−14−オキサ−1,11−ジアザテトラシクロ(7.4.1.0.0)−テトラデカ−2,4,6−トリエン−9−イル酢酸エステル、スワインソニン、ロメトレキソール、デキサロゾキサン、メチオニナーゼ、2’−シアノ−2’−デオキシ−N4−パルミトイル−1−B−D−アラビノフラノシルシトシン、および3−アミノピリジン−2−カルボキシアルデヒドチオセミカルバゾンなどの代謝拮抗物質が挙げられる。
【0197】
「HMG−CoA還元酵素阻害剤」とは、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoA還元酵素の阻害剤を指す。HMG−CoA還元酵素阻害剤の例には、これに限定するものではないが、ロバスタチン(MEVACOR(登録商標);米国特許第4231938号、第4294926号および第4319039号を参照のこと)、シムバスタチン(ZOCOR(登録商標);米国特許第4444784号、第4820850号および第4916239号を参照のこと)、プラバスタチン(PRAVACHOL(登録商標);米国特許第4346227号、第4537859号、第4410629号、第5030447号および第5180589号を参照のこと)、フルバスタチン(LESCOL(登録商標);米国特許5354772号、第4911165号、第4929437号、第5189164号、第5118853号、第5290946号および第5356896号を参照のこと)、およびアトルバスタチン(LIPITOR(登録商標);米国特許第5273995号、第4681893号、第5489691号および第5342952号を参照のこと)を挙げられる。本方法に使用することができるこれらおよび追加のHMG−CoA還元酵素阻害剤の構造式は、M.Yalpani、「Cholesterol Lowering Drugs」、Chemistry & Industry、85〜89頁(1996年2月5日)の87頁ならびに米国特許第4782084号および第4885314号に記載されている。本明細書で使用される場合「HMG−CoA還元酵素阻害剤」という用語は、すべての薬学的に許容されるラクトン型および開環酸型(すなわち、ラクトン環が開環されて遊離酸を形成している場合)のほか阻害活性を有する塩を含み、したがって、このような塩、エステルおよび開環酸型を、HMG−CoA還元酵素を有する化合物のクラスタ形態で使用することは本発明の範囲にある。
【0198】
「プレニル−タンパク質転移酵素阻害剤」とは、ファルネシル−タンパク質転移酵素(FPTアーゼ)、ゲラニルゲラニル−タンパク質転移酵素I型(GGPTアーゼ−I)およびゲラニルゲラニル−タンパク質転移酵素II型(GGPTアーゼ−II、Rab GGPTアーゼとも呼ばれる。)を含むプレニル−タンパク質転移酵素のいずれか1つまたはあらゆる組合せを阻害する化合物を指す。
【0199】
プレニル−タンパク質転移酵素阻害剤の例は、以下の公報および特許において見ることができる:WO96/30343、WO97/18813、WO97/21701、WO97/23478、WO97/38665、WO98/28980、WO98/29119、WO95/32987、米国特許第5420245号、第5523430号、第5532359号、第5510510号、第5589485号、第5602098号、欧州特許第0618221号、第0675112号、第0604181号、第0696593号、WO94/19357、WO95/08542、WO95/11917、WO95/12612、WO95/12572、WO95/10514、米国特許第5661152号、WO95/10515、WO95/10516、WO95/24612、WO95/34535、WO95/25086、WO96/05529、WO96/06138、WO96/06193、WO96/16443、WO96/21701、WO96/21456、WO96/22278、WO96/24611、WO96/24612、WO96/05168、WO96/05169、WO96/00736、米国特許第5571792号、WO96/17861、WO96/33159、WO96/34850、WO96/34851、WO96/30017、WO96/30018、WO96/30362、WO96/30363、WO96/31111、WO96/31477、WO96/31478、WO96/31501、WO97/00252、WO97/03047、WO97/03050、WO97/04785、WO97/02920、WO97/17070、WO97/23478、WO97/26246、WO97/30053、WO97/44350、WO98/02436、および米国特許第5532359号。
【0200】
血管形成におけるプレニル−タンパク質転移酵素阻害剤の役割の例については、European J.of Cancer、35巻、9号、1394〜1401頁(1999年)を参照されたい。
【0201】
「細胞周期チェックポイントに干渉する薬剤」とは、細胞周期チェックポイントシグナルを変換し、これによって癌細胞をDNA損傷薬に感作させるプロテインキナーゼを阻害する化合物を指す。このような薬剤には、ATR、ATM、Chk1およびChk2キナーゼならびにcdkおよびcdcキナーゼ阻害剤が挙げられ、具体的な例は、7−ヒドロキシスタウロスポリン、フラボピリドール、CYC202(Cyclacel社)およびBMS−387032である。
【0202】
「細胞増殖および生存シグナリング経路の阻害剤」は、細胞表面受容体、およびそれら表面受容体の下流側のシグナル変換カスケードを阻害する薬剤を指す。こうした薬剤には、EGFRの阻害剤(例えば、ゲフィチニブおよびエルロチニブ)、ERB−2の阻害剤(例えば、トラスツズマブ)、IGFRの阻害剤、サイトカイン受容体の阻害剤、METの阻害剤、PI3Kの阻害剤(例えば、LY294002)、セリン/トレオニンキナーゼの阻害剤(WO02/083064、WO02/083139、WO02/083140およびWO02/083138に記載されているようなAktの阻害剤が挙げられるが、これに限定しない)、Rafキナーゼの阻害剤(例えば、BAY−43−9006)、MEKの阻害剤(例えば、CI−1040およびPD−098059)、およびmTORの阻害剤(例えば、Wyeth CCI−779)が挙げられる。このような薬剤には、小分子阻害剤化合物および抗体拮抗薬も挙げられる。
【0203】
「アポトーシス誘発剤」には、TNF受容体ファミリーのメンバー(TRAIL受容体を含む)のアクチベータが挙げられる。
【0204】
本発明は、選択的COX−2阻害剤であるNSAIDとの併用も包含する。本明細書の目的として、COX−2の選択的阻害剤であるNSAIDは、細胞またはミクロソームアッセイにより評価されるCOX−1についてのIC50に対するCOX−2についてのIC50の比率により判断したとき、少なくとも100倍、COX−1よりCOX−2を阻害する特異性を有するものと定義する。このような化合物には、これに限定するものではないが、米国特許第5474995号、米国特許第5861419号、米国特許第6001843号、米国特許第6020343号、米国特許第5409944号、米国特許第5436265号、米国特許第5536752号、米国特許第5550142号、米国特許第5604260号、米国特許第5698584号、米国特許第5710140号、WO94/15932、米国特許第5344991号、米国特許第5134142号、米国特許第5380738号、米国特許第5393790号、米国特許第5466823号、米国特許第5633272号および米国特許第5932598号に開示されているものが挙げられる。これらはすべて本明細書に援用される。
【0205】
本発明の治療方法において特に有用であるCOX−2の阻害剤は、3−フェニル−4−(4−(メチルスルホニル)フェニル)−2−(5H)−フラノン;および5−クロロ−3−(4−メチルスルホニル)フェニル−2−(2−メチル−5−ピリジニル)ピリジン:またはこれらの薬学的に許容される塩である。
【0206】
特異的COX−2阻害剤として記載されており、したがって本発明に有用である化合物には、これに限定するものではないが、パレコキシブ、CELEBREX(登録商標)およびBEXTRA(登録商標)、またはこれらの薬学的に許容される塩が挙げられる。
【0207】
上記で用いたような「インテグリン遮断薬」とはαvβ3インテグリンへの生理的リガンドの結合に選択的に拮抗する、前記結合を選択的に抑制するかまたは妨げる化合物、αvβ5インテグリンへの生理的リガンドの結合に選択的に拮抗する、前記結合を選択的に抑制するかまたは妨げる化合物、αvβ3インテグリンとαvβ5インテグリン両方への生理的リガンドの結合に拮抗する、前記結合を抑制するかまたは妨げる化合物、および毛細血管内皮細胞で発現した特定のインテグリン(複数のインテグリン)の活性に拮抗する、前記活性を抑制するかまたは妨げる化合物を指す。この用語は、αvβ6、αvβ8、α1β1、α2β1、α5β1、α6β1およびα6β4インテグリンの拮抗薬も指す。この用語は、αvβ3、αvβ5、αvβ6、αvβ8、α1β1、α2β1、α5β1、α6β1およびα6β4インテグリンのどのような組合せの拮抗薬も指す。
【0208】
チロシンキナーゼ阻害剤のいくつかの具体的な例には、N−(トリフルオロメチルフェニル)−5−メチルイソキサゾール−4−カルボキサミド、3−[(2,4−ジメチルピロール−5−イル)メチリデニル)インドリン−2−オン、17−(アリルアミノ)−17−デメトキシゲルダナマイシン、4−(3−クロロ−4−フルオロフェニルアミノ)−7−メトキシ−6−[3−(4−モルホリニル)プロポキシ]キナゾリン、N−(3−エチニルフェニル)−6,7−ビス(2−メトキシエトキシ)−4−キナゾリンアミン、BIBX1382、2,3,9,10,11,12−ヘキサヒドロ−10−(ヒドロキシメチル)−10−ヒドロキシ−9−メチル−9,12−エポキシ−1H−ジインドロ[1,2,3−fg:3’,2’,1’−kl]ピロロ[3,4−i][1,6]ベンゾジアゾシン−1−オン、SH268、ゲニステイン、STI571、CEP2563、スルホン酸4−(3−クロロフェニルアミノ)−5,6−ジメチル−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジンメタン、4−(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリン、4−(4’−ヒドロキシフェニル)アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリン、SU6668、STI571A、N−4−クロロフェニル−4−(4−ピリジルメチル)−1−フタラジンアミンおよびEMD121974が挙げられる。
【0209】
抗癌化合物以外の化合物との併用も本方法に包含される。例えば、本特許請求化合物とPPAR−γ(すなわち、PPAR−ガンマ)作動薬およびPPAR−δ(すなわち、PPAR−デルタ)作動薬との併用は、ある種の悪性疾患の治療に有用である。PPAR−γおよびPPAR−δは、核ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γおよびδである。内皮細胞におけるPPAR−γの発現および血管形成への関与は、文献で報告されている(J.Cardiovasc.Pharmacol.1998年;31:909〜913頁;J.Biol.Chem.1999年;274:9116〜9121頁;Invest.Ophthalmol Vis.Sci.2000年;41:2309〜2317頁)。さらに最近では、PPAR−γ作動薬がインビトロでVEGFに対する血管形成性応答を阻害することが証明された。マウスでは、マレイン酸トログリタゾンとマレイン酸ロシグリタゾン両方が、網膜新生血管形成の発現を阻害する(Arch.Ophthamol.2001年;119:709〜717頁)。PPAR−γ作動薬およびPPAR−γ/α作動薬の例には、これに限定するものではないが、チアゾリジンジオン(DRF2725、CS−011、トログリタゾン、ロシグリタゾンおよびピオグリタゾンなど)、フェノフィブレート、ゲムフィブロジル、クロフィブレート、GW2570、SB219994、AR−H039242、JTT−501、MCC−555、GW2331、GW409544、NN2344、KRP297、NP0110、DRF4158、NN622、GI262570、PNU182716、DRF552926、2−[(5,7−ジプロピル−3−トリフルオロメチル−1,2−ベンズイソキサゾール−6−イル)オキシ]−2−メチルプロピオン酸(米国特許出願第09/782856号に開示されているもの)、および2(R)−7−(3−(2−クロロ−4−(4−フルオロフェノキシ)フェノキシ)プロポキシ)−2−エチルクロマン−2−カルボン酸(米国特許出願第60/235708号および同第60/244697号に開示されているもの)が挙げられる。
【0210】
本発明の化合物は、固有の多剤耐性(MDR)、特に、高レベルのトランスポータータンパク質の発現を伴うMDRの阻害剤と併用して投与することもできる。このようなMDR阻害剤には、LY335979、XR9576、OC144−093、R101922、VX853およびPSC833(バルスポダール)などのp−糖蛋白(P−gp)が挙げられる。
【0211】
本発明の化合物は、本発明の化合物の単独での使用または放射線療法との併用の結果として生じ得る急性、遅発性、晩期および先行の嘔吐を含む悪心または嘔吐を治療するために制吐薬と併用することができる。嘔吐の予防または治療のために、本発明の化合物は、他の制吐薬、特に、ニューロキニン−1受容体拮抗薬;オンダンセトロン、グラニセトロン、トロピセトロンおよびザチセトロンなどの5HT3受容体拮抗薬;バクロフェンなどのGABAB受容体作動薬;Decadron(デキサメタゾン)、Kenalog、Aristocort、Nasalide、Preferid、Benecorten、または米国特許第2789118号、第2990401号、第3048581号、第3126375号、第3929768号、第3996359号、第3928326号および第3749712号に開示されているような他のものなどのコルチコステロイド;フェノチアジン(例えば、プロクロルペラジン、フルフェナジン、チオリダジンおよびメソリダジン)、メトクロプラミドまたはドロナビノールなどの抗ドーパミン作動薬と併用することができる。一実施形態では、ニューロキニン−1受容体拮抗薬、5HT3受容体拮抗薬およびコルチコステロイドから選択される制吐薬が、本化合物の投与の結果生じ得る嘔吐の治療または予防のために、アジュバントとして投与される。
【0212】
本発明の化合物と併用されるニューロキニン−1受容体拮抗薬は、例えば、米国特許第5162339号、第5232929号、第5242930号、第5373003号、第5387595号、第5459270号、第5494926号、第5496833号、第5637699号、第5719147号;欧州特許第0360390号、第0394989号、第0428434号、第0429366号、第0430771号、第0436334号、第0443132号、第0482539号、第0498069号、第0499313号、第0512901号、第0512902号、第0514273号、第0514274号、第0514275号、第0514276号、第0515681号、第0517589号、第0520555号、第0522808号、第0528495号、第0532456号、第0533280号、第0536817号、第0545478号、第0558156号、第0577394号、第0585913号、第0590152号、第0599538号、第0610793号、第0634402号、第0686629号、第0693489号、第0694535号、第0699655号、第0699674号、第0707006号、第0708101号、第0709375号、第0709376号、第0714891号、第0723959号、第0733632号および第0776893号;PCT国際公開公報WO90/05525、WO90/05729、WO91/09844、WO91/18899、WO92/01688、WO92/06079、WO92/12151、WO92/15585、WO92/17449、WO92/20661、WO92/20676、WO92/21677、WO92/22569、WO93/00330、WO93/00331、WO93/01159、WO93/01165、WO93/01169、WO93/01170、WO93/06099、WO93/09116、WO93/10073、WO93/14084、WO93/14113、WO93/18023、WO93/19064、WO93/21155、WO93/21181、WO93/23380、WO93/24465、WO94/00440、WO94/01402、WO94/02461、WO94/02595、WO94/03429、WO94/03445、WO94/04494、WO94/04496、WO94/05625、WO94/07843、WO94/08997、WO94/10165、WO94/10167、WO94/10168、WO94/10170、WO94/11368、WO94/13639、WO94/13663、WO94/14767、WO94/15903、WO94/19320、WO94/19323、WO94/20500、WO94/26735、WO94/26740、WO94/29309、WO95/02595、WO95/04040、WO95/04042、WO95/06645、WO95/07886、WO95/07908、WO95/08549、WO95/11880、WO95/14017、WO95/15311、WO95/16679、WO95/17382、WO95/18124、WO95/18129、WO95/19344、WO95/20575、WO95/21819、WO95/22525、WO95/23798、WO95/26338、WO95/28418、WO95/30674、WO95/30687、WO95/33744、WO96/05181、WO96/05193、WO96/05203、WO96/06094、WO96/07649、WO96/10562、WO96/16939、WO96/18643、WO96/20197、WO96/21661、WO96/29304、WO96/29317、WO96/29326、WO96/29328、WO96/31214、WO96/32385、WO96/37489、WO97/01553、WO97/01554、WO97/03066、WO97/08144、WO97/14671、WO97/17362、WO97/18206、WO97/19084、WO97/19942およびWO97/21702;および英国特許第2266529号、第2268931号、2269170号、第2269590号、第2271774号、第2292144号、第2293168号、第2293169号、および第2302689号に十分に記載されている。このような化合物の調製は上記特許および公報に十分に記載されている。これらの特許および公報は本明細書に援用される。
【0213】
一実施形態では、本発明の化合物と併用するためのニューロキニン−1受容体拮抗薬は、米国特許第5719147号に記載されている2−(R)−(1−(R)−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エトキシ)−3−(S)−(4−フルオロフェニル)−4−(3−(5−オキソ−1H,4H−1,2,4−トリアゾロ)メチル)モルホリンまたはその薬学的に許容される塩から選択される。
【0214】
本発明の化合物は、貧血の治療に有用な薬剤と共に投与することもできる。このような貧血治療薬は、例えば、赤血球生産受容体持続刺激薬(エポエチンアルファなど)である。
【0215】
本発明の化合物は、好中球減少症の治療に有用な薬剤と共に投与することもできる。こうした好中球減少症治療薬は、例えば、ヒト顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)などの好中球の産生および機能を調節する造血細胞成長因子である。G−CSFの例には、フィルグラスチムがある。
【0216】
本発明の化合物は、レバミソール、イソプリノシンおよびZadaxinなどの免疫強化薬と共に投与することもできる。
【0217】
本発明の化合物は、ビスホスホネート(ビスホスホネート、ジホスホン酸塩、ビスホスホン酸およびジホスホン酸を含むことを理解されたい。)と併用して、骨癌を含む癌の治療または予防にも有用であり得る。ビスホスホネートの例には、これに限定するものではないが、エチドロネート(Didronel)、パミドロネート(Aredia)、アレンドロネート(Fosamax)、リセドロネート(Actonel)、ゾレドロネート(Zometa)、イバンドロネート(Boniva)、インカドロネートまたはシマドロネート、クロドロネート、EB−1053、ミノドロネート、ネリドロネート、ピリドロネートおよびチルドロネートが挙げられ、これらのあらゆる薬学的に許容される塩、誘導体、水和物および混合物を含む。
【0218】
このように、本発明の範囲は、HDAC阻害剤(例えば、上記HDAC阻害剤のいずれか1つまたは複数を)、アルキル化剤、抗生物質、代謝拮抗剤、ホルモン剤、植物由来剤、生物剤、遺伝子療法剤、血管新生阻害剤、分化誘導剤、レチノイド受容体モジュレータ、細胞毒性剤/細胞増殖抑制剤、増殖抑制剤、HMG−CoA還元酵素阻害剤、プレニル−タンパク質転移酵素阻害剤、細胞周期チェックポイントに干渉する薬剤、細胞増殖および生存シグナリングの阻害剤、アポトーシス誘発剤、細胞成長停止誘導剤、ビスホスホネート、またはこれらの任意の組合せから選択される第2の化合物と併用される本明細書において請求される化合物の使用を包含する。
【0219】
放射線療法と併用して、および/またはアルキル化剤、抗生物質、代謝拮抗剤、ホルモン剤、植物由来剤、生物剤、遺伝子治療薬、血管新生阻害剤、分化誘導物質、レチノイド受容体モジュレータ、細胞毒性剤/細胞増殖抑制剤、増殖抑制剤、HMG−CoA還元酵素阻害剤、プレニル−タンパク質転移酵素阻害剤、細胞周期チェックポイントに干渉する薬剤、細胞増殖および生存シグナリングの阻害剤、アポトーシス誘発剤、細胞成長停止誘導剤、ビスホスホネート、またはこれらの任意の組合せから選択される化合物と併用で、式Iの化合物の治療有効量を投与することを含む癌の治療方法も、本特許請求の範囲に包含される。
【0220】
本発明は、式Iの化合物、およびアルキル化剤、抗生物質、代謝拮抗剤、ホルモン剤、植物由来剤、生物剤、遺伝子治療薬、血管新生阻害剤、分化誘導物質、レチノイド受容体モジュレータ、細胞毒性剤/細胞増殖抑制剤、増殖抑制剤、HMG−CoA還元酵素阻害剤、プレニル−タンパク質転移酵素阻害剤、細胞周期チェックポイントに干渉する薬剤、細胞増殖および生存シグナリングの阻害剤、アポトーシス誘発剤、細胞成長停止誘導剤、ビスホスホネート、またはこれらの任意の組合せから選択される化合物の治療有効量を含む、癌を治療または予防するのに有用な医薬組成物も包含する。
【0221】
本発明のヒドロキサム酸誘導体を利用する投与計画は、タイプ、種、年齢、体重、性別および治療中の癌の種類;治療される疾患の重篤度(すなわち、ステージ);投与経路;患者の腎および肝機能;および使用される特定の化合物またはその塩を含む種々の因子に従って選択することができる。当該分野の医師または獣医であれば、疾患の進行を治療、例えば、予防、阻止(完全または部分的に)、または停止するのに必要な薬剤の有効量を容易に決定および処方することができる。
【0222】
経口投与の場合、適した1日量は、例えば、継続して(毎日)または間欠的(例えば、3〜5日/週)に1日1回、1日2回または1日3回、約5〜4000mg/mを経口投与する。例えば、所望の疾患を治療するのに用いる場合、本ヒドロキサム酸の用量は約2mg〜約2000mg/日の範囲であり得る。
【0223】
本ヒドロキサム酸誘導体は1日1回(QD)投与されるか、または1日2回(BID)および1日3回(TID)など1日に複数回の用量に分割される。1日1回投与の場合、適切に調製された薬剤であれば、したがって、必要とされる1日量の全部を含む。したがって、1日2回投与の場合、適切に調製された薬剤であれば、必要とされる1日量の半分を含む。したがって、1日3回投与の場合、適切に調製された薬剤であれば、必要とされる1日量の1/3を含む。
【0224】
また、投与は継続的、すなわち毎日、あるいは間欠的であってよい。本明細書中で使用される場合「間欠的」または「間欠的に」という用語は、規則的間隔または不規則な間隔のいずれかで停止および開始することを意味する。例えば、HDAC阻害剤の間欠投与は1〜6日/週の投与であってよく、あるいは間欠的とは周期的な投与(例えば、2〜8週間連続で連日投与した後、最長1週間は投与を行わない休薬期間を設ける。)または隔日投与を意味し得る。
【0225】
典型的には、濃度が約1.0mg/mL〜約10mg/mLの本ヒドロキサム酸誘導体を含む静脈内投与製剤を調製することができる。一実施例では、1日の総用量が約10〜約1500mg/mになるように、静脈内投与製剤の十分な量を患者に1日で投与することができる。
【0226】
当業者にはよく知られた手順に従ってpHが約5〜約12の範囲で調整されるのが好ましい皮下用製剤は、以下に記載のような適した緩衝剤および等張性剤も含む。HDAC阻害剤の1日量を1回以上の連日皮下投与、例えば、毎日1、2または3回送達するように皮下用製剤を調製してよい。
【0227】
本発明の化合物に関して、用語「投与」およびその変形例(例えば、化合物を「投与すること」)は、この必要がある動物の系に本化合物または本化合物のプロドラッグを導入することを意味する。本発明の化合物またはそのプロドラッグを1つまたは複数の他の活性薬剤(例えば、細胞毒性剤等)と併用して与えるとき、「投与」およびその変形例は、各々本化合物またはそのプロドラッグおよび他の薬剤の同時および逐次的導入を包含するものと理解されたい。
【0228】
本化合物は、適した鼻腔内ビヒクル局所使用により、または当業者には知られた経皮パッチの形態を使用する経皮経路により、鼻腔内形態で投与することができる。経皮送達システムの形態で投与するために、この投薬量の投与は、当然、この薬剤投与計画を通して間欠的ではなく継続的である。本明細書に記載の種々の投与形態は具体的な実施形態を記載にしたに過ぎず、本発明の広い範囲を限定するものと解釈すべきでないことは、当業者には明白である。
【0229】
本発明の化合物は、標準的な薬学的実践に従って、医薬組成物中、単独で、または好適には薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤と組み合わせて、哺乳動物、好ましくはヒトに投与することができる。本化合物は、経口投与、または静脈内経路、筋肉内経路、腹腔内経路、皮下経路、直腸内経路および局所経路の投与を含む非経口投与することができる。
【0230】
本発明の別の態様では、本発明の化合物は、本発明の代謝前駆化合物である医薬組成物として、単独で、または好適には薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤と組み合わせて哺乳動物に投与することにより、哺乳動物、好ましくはヒトに投与することができる。このような代謝前駆体化合物は、米国特許出願第60/388621号(2002年6月14日出願の文書番号21114PV)、第60/403830号(2002年8月15日出願の文書番号21114PV2)および第60/426940号(2002年11月15日出願の文書番号21114PV3)に記載されている。KSPの阻害物質でもあるこのような代謝前駆体化合物を含む組成物も、上記米国特許出願に記載されている。
【0231】
本明細書で用いる場合「組成物」は、指定された成分を指定された量で含む製品のほか、指定された成分を指定された量で組み合わせることによって直接的または間接的に得られるあらゆる製品を包含することを意図する。
【0232】
本活性成分を含有する医薬組成物は、例えば、錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性もしくは油性懸濁液、分散性粉末もしくは顆粒、エマルジョン、硬質もしくは軟質カプセルまたはシロップあるいはエリキシルのような経口使用に適した形態であり得る。経口用途の組成物は、医薬組成物の製造のための当該技術分野において知られたあらゆる方法に従って調製することができ、このような組成物は、医薬的に洗練された、味のよい製剤を提供するために、甘味剤、着香剤、着色剤および保存薬からなる群より選択された1つまたは複数の薬剤を含有してよい。錠剤は、錠剤の製造に適する非毒性で薬学的に許容される賦形剤との混合物で活性成分を含有する。これらの賦形剤は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウムなどの不活性希釈剤;造粒剤および崩壊剤、例えば、微結晶性セルロース、ナトリウムクロスカルメロース、コーンスターチまたはアルギン酸;結合剤、例えば、デンプン、ゼラチン、ポリビニル−ピロリドンまたはアラビアゴム;および滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクであり得る。これらの錠剤は、被覆しなくてもよいし、または薬剤の不快な味を遮蔽するために、あるいは胃腸管の中での崩壊および吸収を遅らせ、その結果、長期にわたる持続作用を提供するために、知られた技法によって被覆してもよい。例えば、ヒドロキシプロピル−メチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロースなどの水溶性味遮蔽材料、またはエチルセルロース、酢酸酪酸セルロースなどの時間遅延材料を利用することができる。
【0233】
経口用の配合物は、活性成分を不活性固体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリンと混合する硬質ゼラチンカプセルとして、あるいは活性成分をポリエチレングリコールなどの水溶性担体または油性媒体、例えば、ラッカセイ油、液体パラフィンもしくはオリーブ油と混合した軟質ゼラチンカプセルとして提供することもできる。
【0234】
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適する賦形剤との混合物で活性材料を含有する。このような賦形剤は、懸濁化剤、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニル−ピロリドン、トラガカントゴムおよびアラビアゴムであり、分散または湿潤剤は、天然ホスファチド、例えばレシチン、またはアルキレンオキシドと脂肪酸の縮合生成物、例えばステアリン酸ポリオキシエチレン、またはエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール、またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトールから誘導される部分エステルとの縮合生成物(モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトールなど)、またはエチレンオキシドと脂肪酸および無水ヘキシトールから誘導される部分エステルとの縮合生成物、例えばモノオレイン酸ポリエチレンソルビタンであり得る。水性懸濁液は、1つまたは複数の保存薬、例えばp−ヒドロキシ安息香酸エチルまたはn−プロピルp−ヒドロキシ安息香酸、1つまたは複数の着色剤、1つまたは複数の着香剤、およびスクロース、サッカリンまたはアスパルテームなどの1つまたは複数の甘味剤を含有してもよい。
【0235】
油性懸濁液は、植物油、例えば、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油もしくはヤシ油に、または液体パラフィンなどの鉱物油に活性成分を懸濁させることにより調製することができる。油性懸濁液は、増粘剤、例えば蜜蝋、硬質パラフィンまたはセチルアルコールを含有することができる。上に記載したものなどの甘味剤および着香剤を添加して、味のよい経口製剤を生成することができる。これらの組成物は、ブチル化ヒドロキシアニソールまたはα−トコフェロールなどの酸化防止剤を添加することにより保存することができる。
【0236】
水の添加による水性懸濁液の調製に適する分散性粉末および顆粒は、分散剤または湿潤剤、懸濁化剤および1つまたは複数の保存薬との混合物で活性成分を提供する。適した分散剤または湿潤剤および懸濁化剤の例は、既に上で述べたものである。付加的な賦形剤、例えば甘味剤、着香剤および着色剤が存在してもよい。これらの組成物は、アスコルビン酸などの酸化防止剤を添加することにより保存することができる。
【0237】
本発明の医薬組成物は、水中油型エマルジョンの形態であってもよい。この油性相は、植物油、例えば、オリーブ油またはラッカセイ油であってもよいし、鉱物油、例えば、液体パラフィン、またはこれらの混合物であってもよい。適した乳化剤は、天然ホスファチド、例えば、大豆レシチン、ならびに脂肪酸および無水ヘキシトールから誘導されるエステルまたは部分エステル、例えば、モノオレイン酸ソルビタン、および前記部分エステルとエチレンオキシドの縮合生成物、例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンであり得る。前記エマルジョンは、甘味剤、着香剤、保存薬および酸化防止剤も含有することができる。
【0238】
シロップおよびエリキシルは、甘味剤、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトールまたはスクロースを用いて配合することができる。このような配合物は粘滑剤、保存薬、着香剤、着色剤および酸化防止剤も含有することができる。
【0239】
本医薬組成物は無菌注射用水溶液の形態であってもよい。利用することができる許容可能なビヒクルおよび溶媒には、水、リンガー溶液および等張食塩液がある。
【0240】
無菌注射用製剤は、活性成分が油性相に溶解している無菌注射用水中油型マイクロエマルジョンであってもよい。例えば、活性成分を、最初に大豆油とレシチンの混合物に溶解してもよい。次いで、この油性溶液を水とグリセロールの混合物に導入し、処理して、マイクロエマルジョンを形成する。
【0241】
前記注射用溶液またはマイクロエマルジョンは、局所ボーラス注射により患者の血流に導入することができる。あるいは、本化合物の循環濃度を一定に保つような方法で前記溶液またはマイクロエマルジョンを投与することが有利である。このような一定濃度を保つために、持続性静脈送達装置を利用することができる。こういった装置の一例は、Deltec CADD−PLUS(商標)モデル5400静脈ポンプである。
【0242】
本医薬組成物は、筋肉内投与および皮下投与のための無菌注射用水性または油性懸濁液の形態であってもよい。この懸濁液は、前述した適した分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を使用し、知られた技術に従って配合することができる。無菌注射用製剤は、例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液のような、非毒性で非経口投与に許容される希釈剤または溶媒中の無菌注射用溶液または懸濁液であり得る。加えて、無菌固定油が、溶媒または懸濁化媒体として従来では利用されている。この目的には、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含むあらゆる無菌固定油を利用することができる。また、オレイン酸などの脂肪酸が注射剤の調製に使用することができる。
【0243】
式Iの化合物は薬物を直腸内投与するための坐剤の形態で投与することもできる。これらの組成物は、常温では固体であるが直腸温度では液体であるため、直腸内で溶融して薬物を放出する適切な無刺激性賦形剤と薬物を混合物することにより調製することができる。このような材料には、カカオ脂、グリセリンゼラチン、硬化植物油、様々な分子量のポリエチレングリコールの混合物、およびポリエチレングリコールの脂肪酸エステルが挙げられる。
【0244】
局所使用には、式Iの化合物を含有するクリーム、軟膏、ゼリー、溶液または懸濁液などが利用される(この適用のために、局所適用は口内洗浄およびうがいを包含するものとする。)。
【0245】
本発明の化合物は、適する鼻腔内ビヒクルおよび送達装置の局所使用により、または当業者にはよく知られた経皮パッチの形態を使用する経皮経路により、鼻腔内形態で投与することができる。経皮送達システムの形態で投与するために、この投薬量の投与は当然ながら、この薬剤投与計画を通して間欠的ではなく継続的である。本発明の化合物は、カカオ脂、グリセリンゼラチン、硬化植物油、種々の分子量のポリエチレングリコールの混合物、およびポリエチレングリコールの脂肪酸エステルなどの基剤を使用して坐剤として送達することもできる。
【0246】
本発明は、新生細胞の最終分化、細胞成長停止および/またはアポトーシスを誘起する本発明のヒドロキサム酸誘導体を用い、これによってそのような細胞の増殖を阻害する方法も提供する。本方法はインビボまたはインビトロにおいて実施することができる。
【0247】
一実施形態では、本発明は本明細書に記載のヒドロキサム酸誘導体のいずれか1つまたは複数の有効量に細胞を接触させることによって、新生細胞の最終分化、細胞成長停止および/またはアポトーシスを選択的に誘起し、これによってそのような細胞の増殖を阻害するインビトロ方法を提供する。
【0248】
特定の実施形態では、本発明は新生細胞の最終分化を選択的に誘起し、これによってそのような細胞の増殖を阻害するインビトロ方法に関する。本方法は、適した条件下で本明細書に記載のヒドロキサム酸化合物の1つまたは複数の有効量に細胞を接触させる工程を含む。
【0249】
別の実施形態では、本発明は新生細胞の細胞成長停止を選択的に誘起し、これによってそのような細胞の増殖を阻害するインビトロ方法に関する。本方法は適した条件下で本明細書に記載のヒドロキサム酸化合物の1つまたは複数の有効量に細胞を接触させる工程を含む。
【0250】
別の実施形態では、本発明は新生細胞のアポトーシスを選択的に誘起し、これによってそのような細胞の増殖を阻害するインビトロ方法に関する。本方法は適した条件下で本明細書に記載のヒドロキサム酸化合物の1つまたは複数の有効量に細胞を接触させる工程を含む。
【0251】
別の実施形態では、本発明は、本明細書に記載のヒドロキサム酸化合物のいずれか1つまたは複数の有効量に細胞を接触させる工程を含む、腫瘍内の腫瘍細胞の最終分化を誘起し、これによってそのような細胞の増殖を阻害するインビトロ方法に関する。
【0252】
本発明の方法はインビトロで実施することができる。新生細胞の最終分化、細胞成長停止および/またはアポトーシスを選択的に誘起する方法およびHDACを阻害する方法は、すなわち、治療を必要とする新生細胞または腫瘍細胞を有している対象に本化合物を投与することによって、インビボで細胞に接触させる工程を含むことも意図される。
【0253】
このように、本発明は本明細書に記載のヒドロキサム酸誘導体のいずれか1つまたは複数の有効量を対象に投与することによって、対象における新生細胞の最終分化、細胞成長停止および/またはアポトーシスを選択的に誘起し、これによって対象におけるそのような細胞の増殖を阻害するインビボ方法を提供する。
【0254】
特定の実施形態では、本発明は新生細胞の最終分化を選択的に誘起し、これによって対象におけるそのような細胞の増殖を阻害する方法に関する。本方法は、本明細書に記載のヒドロキサム酸誘導体の1つまたは複数の有効量を対象に投与する工程を含む。
【0255】
別の実施形態では、本発明は新生細胞の細胞成長停止を選択的に誘起し、これによって対象におけるそのような細胞の増殖を阻害する方法に関する。本方法は本明細書に記載のヒドロキサム酸誘導体の1つまたは複数の有効量を対象に投与する工程を含む。
【0256】
別の実施形態では、本発明は新生細胞のアポトーシスを選択的に誘起し、これによって対象におけるそのような細胞の増殖を阻害する方法に関する。本方法は本明細書に記載のヒドロキサム酸誘導体の1つまたは複数の有効量を対象に投与する工程を含む。
【0257】
別の実施形態では、本発明は新生細胞の増殖によって特徴付けられる腫瘍を有する患者を治療する方法に関する。本方法は本明細書に記載のヒドロキサム酸誘導体の1つまたは複数を該患者に投与する工程を含む。該化合物の量は、そのような新生細胞の最終分化、細胞成長停止および/またはアポトーシスを選択的に誘起し、それによって増殖を阻害するのに有効である。
【0258】
(実施例)
供する実施例は、本発明のさらなる理解を支援するためのものである。使用した特定の材料、種および条件は本発明を説明するためのものであって、本発明の妥当な範囲を制限するためのものではない。
【実施例1】
【0259】
合成
以下に例示するように、合成スキーム1に概説した一般的方法によって本発明の化合物を調製した。
【0260】
スキーム1はアミノスベリン酸の遊離アミンを用いた本発明のスルホンアミド誘導体を生成する合成を示す。
【0261】
【化15】

【0262】
【化16】

【0263】
(7S)−t−ブトキシカルボニルアミノ−7−フェニルカルバモイル−ヘプタン酸メチルエステル
乾燥CHCl(5mL)中の(2S)−t−ブトキシカルボニルアミノ−オクタン二酸8−メチルエステル(130mg、0.429ミリモル)の攪拌溶液に、アニリン(60μL、0.658ミリモル)、HOBT(61mg、0.45ミリモル)およびEDCI(148mg、0.772ミリモル)を添加した。この反応物を室温にて16時間攪拌し、次いでEtOAc(30mL)で希釈した。この溶液を1M HCl(20mL)、飽和NaHCO(20mL)、HO(20mL)、およびブライン(20mL)で洗浄した。この有機層を乾燥、濾過し、減圧濃縮して高粘土の油を得、この油をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;ヘキサン:EtOAc、3:1)により精製して白色固体の生成物を得た。H NMR(CDCl)δ10.30(br s,1H)、7.65(t,J=7.4Hz,2H)、7.32(d,J=7.4Hz,2H)、7.05(m,1H)、5.20(br,d,1H)、4.40(m,1H)、3.70(s,3H)、2.26(t,J=7.0Hz,2H)、2.0〜1.5(m,17H)。MS(EI):計算値(MH)379、実験値(MH)379。
【0264】
【化17】

【0265】
(7S)−アミノ−7−フェニルカルバモイル−ヘプタン酸メチルエステル
(7S)−t−ブトキシカルボニルアミノ−7−フェニルカルバモイル−ヘプタン酸メチルエステル(31.0g、82.0ミリモル)の溶液に、メタンスルホン酸(11.7mL、0.18モル)を添加した。1.5時間攪拌後、溶媒を取り出し、残渣をクロロホルム(600mL)で希釈した。飽和NaCOをゆっくりと添加して、この溶液のpHをpH8に調整した。この有機相を収集し、水層をクロロホルム(2×50mL)で抽出した。合わせた溶液をNaSOで乾燥させた。溶媒を除去することで、さらに精製しなくても使用されるアミンが得られた。H NMR(DMSO−d)δ8.01(s,br,1H)、7.65(t,J=7.4Hz,2H)、7.32(d,J=7.4Hz,2H)、7.05(m,1H)、3.90〜3.70(m,4H)、2.26(t,J=7.0Hz,2H)、2.15(m,1H)、2.0〜1.5(m,7H)。MS(EI):計算値(MH)279、実験値(MH)279。
【0266】
【化18】

【0267】
スルホンアミド形成の一般手順
(MeCN(5mL)中の7S)−アミノ−7−フェニルカルバモイル−ヘプタン酸メチルエステル(100mg、0.36ミリモル)溶液に、塩化スルホニル(1.06等量)を添加した。この溶液を室温で2時間攪拌し、次いで、トリメチルアミン(1.2等量)を添加し、この溶液を一晩攪拌した。溶媒を除去し、中間体を次工程に直接用いた。ヒドロキサム酸形成。前段階の反応からの残渣をDMF(4mL)に溶解した。この溶液に50%ヒドロキシルアミン水溶液(2mL)を一部分で添加した。この混合物を室温で4日間攪拌した。生成物が沈殿し始めるまで、この反応溶液を減圧濃縮した。この残渣に水(1mL)を緩やかに添加して、沈殿を完了させた。この固体を収集し、EtOAc(5mL)で練和した。この固体を収集し、高真空ポンプで乾燥させた。
【0268】
以下の化合物は上記手順の簡単な変形例によって調製した。
【0269】
【化19】

【0270】
(S)−2−フェニルメタンスルホニルアミノ−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド
H NMR(DMSO−d)δ10.30(br,s,2H)、8.80(br,s,1H)、7.80(d,J=7.4Hz,2H)、7.50(m,7H)、7.20(t,J=7.4Hz,1H)、4.40(s,2H)、4.06(m,1H)、2.06(t,J=7.0Hz,2H)、2.0〜1.4(m,8H)。MS(EI):計算値(MH)434、実験値(MH)434。
【0271】
【化20】

【0272】
(S)−2−(ナフタレン−l−スルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド
H NMR(DMSO−d)δ10.30(br,s,2H)、8.80(m,2H)、8.24〜8.06(m,3H)、7.80(m,3H)、7.40(m,4H)、7.20(t,J=7.4Hz,1H)、4.06(m,1H)、2.06(t,J=7.0Hz,2H)、2.0〜1.4(m,8H)。MS(EI):計算値(MH)470、実験値(MH)470。
【0273】
【化21】

【0274】
(S)−2−(ナフタレン−2−スルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド
H NMR(DMSO−d)δ10.30(br,s,2H)、8.80(br,s,1H)、8.58(s,1H)、8.40(br,s,1H)、8.20〜7.60(m,6H)、7.80(m,3H)、7.34(m,4H)、7.20(t,J=7.4Hz,1H)、4.06(m,1H)、2.06(t,J=7.0Hz,2H)、2.0〜1.4(rn,8H)。MS(EI):計算値(MH)470、実験値(MH)470。
【0275】
【化22】

【0276】
(S)−2−ベンゼンスルホニルアミノ−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド
H NMR(DMSO−d)δ10.30(br,s,2H)、8.80(br,s,1H)、8.24(br,s,1H)、8.00(d,J=7.4Hz,2H)、7.70〜7.20(m,7H)、7.14(t,J=7.4Hz,1H)、4.06(m,1H)、2.06(t,J=7.0Hz,2H)、2.0〜1.4(m,8H)。MS(EI):計算値(MH)420、実験値(MH)420。
【0277】
【化23】

【0278】
(S)−2−(ビフェニル−4−スルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド
H NMR(DMSO−d)δ10.30(br,s,2H)、8.80(br,s,1H)、8.24(br,s,1H)、8.00〜7.20(m,13H)、7.14(t,J=7.4Hz,1H)、4.06(m,1H)、2.06(t,J=7.0Hz,2H)、2.0〜1.4(m,8H)。MS(EI):計算値(MH)496、実験値(MH)496。
【0279】
【化24】

【0280】
(S)−2−[3−(4−メトキシ−フェノキシ)−プロパン−1−スルホニルアミノ]−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド
H NMR(DMSO−d)δ10.30(br,s,2H)、8.80(br,s,1H)、7.80(d,J=7.40Hz,2H)、7.43(t,J=7.40Hz,2H)、7.14(t,J=7.4Hz,1H)、6.98(d,J=7.30Hz,4H)、4.06(m,3H)、3.80(s,3H)、3.20(m,2H)、2.20〜2.06(m,4H)、2.0〜1.4(m,8H)。MS(EI):計算値(MH)508、実験値(MH)508。
【0281】
【化25】

【0282】
(S)−2−(4−メトキシ−ベンゼンスルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド
H NMR(DMSO−d)δ10.30(br,s,2H)、8.80(br,s,1H)、8.24(br,s,1H)、7.82(d,J=7.40Hz,2H)、7.60〜7.00(m,7H)、4.06〜3.80(m,4H)、2.06(t,J=7.0Hz,2H)、2.0〜1.4(m,8H)。MS(EI):計算値(MH)450、実験値(MH)450。
【0283】
【化26】

【0284】
(S)−2−(チオフェン−2−スルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド
H NMR(DMSO−d)δ10.30(br,s,2H)、8.80(br,s,1H)、8.44(br,s,1H)、8.00〜7.20(m,8H)、4.06(m,1H)、2.06(t,J=7.0Hz,2H)、2.0〜1.4(m,8H)。MS(EI):計算値(MH)426、実験値(MH)426。
【0285】
【化27】

【0286】
(S)−2−(3−メトキシ−ベンゼンスルホニルアミノ]−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド
H NMR(DMSO−d)δ10.30(br,s,2H)、8.80(br,s,1H)、8.24(br,s,1H)、7.60〜7.00(m,9H)、4.06(m,1H)、3.82(s,3H)、2.06(t,J=7.0Hz,2H)、2.0〜1.4(m,8H)。MS(EI):計算値(MH)450、実験値(MH)450。
【0287】
【化28】

【0288】
(S)−2−(4−t−ブチル−ベンゼンスルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド
H NMR(DMSO−d)δ10.30(br,s,2H)、8.80(br,s,1H)、8.24(br,s,1H)、7.80(d,J=7.40Hz,2H)、7.60〜7.20(m,6H)、7.14(t,J=7.4Hz,1H)、4.06(m,1H)、2.06(t,J=7.0Hz,2H)、2.0〜1.4(m,17H)。MS(EI):計算値(MH)476、実験値(MH)476。
【0289】
【化29】

【0290】
(S)−2−(2,4,6−トリメチル−ベンゼンスルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド
H NMR(DMSO−d)δ10.30(br,s,2H)、8.80(br,s,1H)、8.24(br,s,1H)、7.40(m,4H)、7.14(t,J=7.4Hz,1H)、7.00(s,2H)、3.95(m,1H)、2.72(s,6H)、2.14(s,3H)、2.06(t,J=7.0Hz,2H)、2.0〜1.4(m,8H)。MS(EI):計算値(MH)462、実験値(MH)462。
【0291】
【化30】

【0292】
(S)−2−(4−ブロモ−ベンゼンスルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド
H NMR(DMSO−d)δ10.30(br,s,2H)、8.80(br,s,1H)、7.80〜7.32(m,8H)、7.14(t,J=7.4Hz,1H)、4.06(m,1H)、2.06(t,J=7.0Hz,2H)、2.0〜1.4(m,8H)。MS(EI):計算値(MH)498、実験値(MH)498。
【0293】
【化31】

【0294】
(S)−2−4−フルオロ−ベンゼンスルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド
H NMR(DMSO−d)δ10.30(br,s,2H)、8.80(br,s,1H)、8.24(br,s,1H)、8.00(m,2H)、7.50(m,6H)、7.I4(t,J=7.4Hz,1H)、4.06(m,1H)、2.06(t,J=7.0Hz,2H)、2.0〜1.4(m,8H)。MS(EI):計算値(MH)438、実験値(MH)438。
【0295】
【化32】

【0296】
(S)−2−(3−ブロモ−ベンゼンスルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド
H NMR(DMSO−d)δ10.30(br,s,1H)、8.80(br,s,2H)、8.06(s,1H)、7.82(m,2H)、7.60〜7.30(m,4H)、7.14(t,J=7.4Hz,1H)、4.06(m,1H)、2.06(t,J=7.0Hz,2H)、2.0〜1.4(m,8H)。MS(EI):計算値(MH)498、実験値(MH)498。
【0297】
【化33】

【0298】
(S)−2−(4−ニトロ−ベンゼンスルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド
H NMR(DMSO−d)δ10.30(s,1H)、8.80(br,s,2H)、8.44(d,J=7.30Hz,2H)、8.08(d,J=7.30Hz,2H)、7.54〜7.20(m,4H)、7.14(t,J=7.4Hz,1H)、4.06(m,1H)、2.06(t,J=7.0Hz,2H)、2.0〜1.4(m,8H)。MS(EI):計算値(MH)465、実験値(MH)465。
【0299】
【化34】

【0300】
(S)−2−(3−クロロ−ベンゼンスルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド
H NMR(DMSO−d)δ10.30(br,s,1H)、8.80(br,s,2H)、7.98〜7.30(m,8H)、7.14(t,J=7.4Hz,1H)、4.06(m,1H)、2.06(t,J=7.0Hz,2H)、2.0〜1.4(m,8H)。MS(EI):計算値(MH)454、実験値(MH)454。
【0301】
【化35】

【0302】
(S)−2−(4−クロロ−ベンゼンスルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド
H NMR(DMSO−d)δ10.30(br,s,1H)、8.80(br,s,2H)、7.98(d,J=7.40Hz,2H)、7.62(d,J=7.40Hz,2H)、7.60〜7.30(m,4H)、7.14(t,J=7.4Hz,1H)、4.06(m,1H)、2.06(t,J=7.0Hz,2H)、2.0〜1.4(m,8H)。MS(EI):計算値(MH)454、実験値(MH)454。
【0303】
【化36】

【0304】
(S)−2−(キノリン−8−スルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド
H NMR(DMSO−d)δ10.30(br,s,1H)、9.20(br,s,1H)、8.60〜8.24(m,3H)、7.80(m,2H)、7.30(m,4H)、7.14(t,J=7.4Hz,1H)、4.06(m,1H)、2.06(t,J=7.0Hz,2H)、2.0〜1.4(m,8H)。MS(EI):計算値(MH)471、実験値(MH)471。
【0305】
【化37】

【0306】
(S)−2−(トルエン−4−スルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド
H NMR(DMSO−d)δ10.30(br,s,2H)、8.80(br,s,1H)、8.20(br,s,1H)、7.80(d,J=7.4Hz,2H)、7.50〜7.30(m,6H)、7.14(t,J=7.4Hz,1H)、4.06(m,1H)、2.06(t,J=7.0Hz,2H)、2.0〜1.4(m,8H)。MS(EI):計算値(MH)434、実験値(MH)434。
【0307】
同様の手順を使用して、以下のチアゾリル誘導体を調製した。
【0308】
【化38】

【0309】
(S)−2−(ナフタレン−1−スルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−[(4−フェニル−チアゾール−2−イル)−アミド]
H NMR(DMSO−d)δ12.40(br,s 1H10.20br,s,1H)、8.60(s,1H)、8.20〜7.00(m,13H)、3.96(m,1H)、2.06(t,J=7.0Hz,2H)、2.0〜1.4(m,8H)。MS(EI):計算値(MH)553、実験値(MH)553。
【0310】
【化39】

【0311】
(S)−2−(2,4,6−トリメチル−ベンゼンスルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−[(4−フェニル−チアゾール−2−イル)−アミド]
H NMR(DMSO−d)δ12.40(br,s,1H)、10.20(br,s,1H)、8.60(br,s,1H)、7.98(d,J=8.00Hz,1H)、7.70(d,J=7.60Hz,2H)、7.40(s,1H)、7.20(m,3H)、6.60(s,2H)、3.76(m,1H)、2.50(s,6H)、2.20(s,3H)、2.06(t,J=7.0Hz,2H)、2.0〜1.4(m,8H)。MS(EI):計算値(MH)545、実験値(MH)545。
【0312】
【化40】

【0313】
(S)−2−(4−ブロモ−ベンゼンスルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−[(4−フェニル−チアゾール−2−イル)−アミド]
H NMR(DMSO−d)δ12.40(br,s 1H10.20br,s,1H)、8.60(s,1H)、7.80〜7.00(m,10H)、3.96(m,1H)、2.06(t,J=7.0Hz,2H)、2.0〜1.4(m,8H)。MS(EI):計算値(MH)583、実験値(MH)583。
【0314】
【化41】

【0315】
(S)−2−フェニルメタンスルホニルアミノ−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−[(4−フェニル−チアゾール−2−イル)−アミド]
H NMR(DMSO−d)δ12.40(br,s,1H)、10.20(br,s,1H)、8.60(s,1H)、7.98(d,J=8.00Hz,2H)、7.50(d,2H)、7.20(m,7H)、4.20(s,2H)、3.76(m,1H)、2.06(t,J=7.0Hz,2H)、2.0〜1.4(m,8H)。MS(EI):計算値(MH)517、実験値(MH)517。
【0316】
【化42】

【0317】
(S)−2−(ビフェニル−4−スルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−[(4−フェニル−チアゾール−2−イル)−アミド]
H NMR(DMSO−d)δ12.40(br,s,1H)、10.20(br,s,1H)、8.60(s,1H)、8.00〜7.00(m,15H)、3.98(m,1H)、2.06(t,J=7.0Hz,2H)、2.0〜1.4(m,10H)。MS(EI):計算値(MH)579、実験値(MH)579。
【0318】
【化43】

【0319】
(S)−2−(4−メトキシ−ベンゼンスルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−[(4−フェニル−チアゾール−2−イル)−アミド]
H NMR(DMSO−d)δ12.40(br,s,1H)、10.20(br,s,1H)、8.60(s,1H)、7.98(d,J=8.00Hz,1H)、7.76(d,J=7.40Hz,2H)、7.50〜7.00(m,6H)、6.80(d,J=7.40Hz,2H)、3.96(m,1H)、3.50(s,3H)、2.06(t,J=7.0Hz,2H)、2.0〜1.4(m,8H)。MS(EI):計算値(MH)533、実験値(MH)533。
【0320】
【化44】

【0321】
(S)−2−(4−クロロ−ベンゼンスルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−[(4−フェニル−チアゾール−2−イル)−アミド]
H NMR(DMSO−d)δ12.40(br,s,1H)、10.20(br,s,1H)、8.60(s,1H)、8.20(m,1H)、7.80〜7.60(dd,J=7.4Hz,4H)、7.40〜7.00(m,6H)、3.98(m,1H)、2.06(t,J=7.0Hz,2H)、2.0〜1.4(m,10H)。MS(EI):計算値(MH)537、実験値(MH)537。
【0322】
【化45】

【0323】
(S)−2−(ナフタレン−2−スルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−[(4−フェニル−チアゾール−2−イル)−アミド]
H NMR(DMSO−d)δ12.40(br,s,1H)、10.20(br,s,1H)、8.60(s,2H)、8.00〜7.00(m,12H)、3.96(m,1H)、2.06(t,J=7.0Hz,2H)、2.0〜1.4(m,8H)。MS(EI):計算値(MH)553、実験値(MH)553。
【0324】
【化46】

【0325】
(S)−2−(チオフェン−2−スルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−[(4−フェニル−チアゾール−2−イル)−アミド]
H NMR(DMSO−d)δ12.40(br,s,1H)、10.20(br,s,1H)、8.60(s,1H)、8.00〜6.90(m,9H)、3.98(m,1H)、2.06(t,J=7.0Hz,2H)、2.0〜1.4(m,10H)。MS(EI):計算値(MH)509、実験値(MH)509。
【0326】
【化47】

【0327】
(S)−2−ベンゼンスルホニルアミノ−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−[(4−フェニル−チアゾール−2−イル)−アミド]
H NMR(DMSO−d)δ12.40(br,s,1H)、10.20(br,s,1H)、8.60(br,s,1H)、8.00(m,1H)、7.90〜7.00(m,11H)、3.96(m,1H)、2.06(t,J=7.0Hz,2H)、2.0〜1.4(m,8H)。MS(EI):計算値(MH)503、実験値(MH)503。
【0328】
【化48】

【0329】
(S)−2−(3−メトキシ−ベンゼンスルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−[(4−フェニル−チアゾール−2−イル)−アミド]
H NMR(DMSO−d)δ12.40(br,s,1H)、10.20(br,s,1H)、8.60(s,1H)、8.20(m,1H)、7.80〜6.80(m,10H)、3.98(m,1H)、3.65(s,3H)、2.06(t,J=7.0Hz,2H)、2.0〜1.4(m,10H)。MS(EI):計算値(MH)533、実験値(MH)533。
【0330】
【化49】

【0331】
(S)−2−(4−フルオロ−ベンゼンスルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−[(4−フェニル−チアゾール−2−イル)−アミド]
H NMR(DMSO−d)δ12.40(br,s,1H)、10.20(br,s,1H)、8.60(s,2H)、8.00〜7.00(m,10H)、3.96(m,1H)、2.06(t,J=7.0Hz,2H)、2.0〜1.4(m,8H)。MS(EI):計算値(MH)521、実験値(MH)521。
【0332】
【化50】

【0333】
(S)−2−(4−ニトロ−ベンゼンスルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−[(4−フェニル−チアゾール−2−イル)−アミド]
H NMR(DMSO−d)δ12.40(br,s,1H)、10.20(br,s,1H)、8.60(s,1H)、8.20(d,J=7.20Hz,2H)、7.80(d,J=7.40Hz,2H)、7.70(d,J=7.40Hz,2H)、7.40〜7.00(m,4H)、3.96(m,1H)、2.06(t,J=7.0Hz,2H)、2.0〜1.4(m,8H)。MS(EI):計算値(MH)548、実験値(MH)548。
【0334】
【化51】

【0335】
(2S)−2−({[5−(ジメチルアミノ)−1−ナフチル]スルホニル}アミノ)−N−ヒドロキシ−N−フェニルオクタンアミド
MS513(M+1)。
【実施例2】
【0336】
新規化合物によるHDACの阻害
HDAC1−フラッグアッセイ:
インビトロ脱アセチル化アッセイを用いて、ヒストン脱アセチル化酵素、サブタイプ1(HDAC1)を阻害する能力について新規化合物を試験した。このアッセイの酵素源は、安定発現哺乳類細胞から免疫精製したエピトープタグ付きヒトHDAC1複合体とした。この基質は、アセチル化されたリジン側鎖を含む市販品(Biomol Research Laboratories社、ペンシルバニア州プリマスミーティング)から構成した。精製HDAC1複合体を用いてインキュベートによってこの基質を脱アセチル化すると、脱アセチル化のレベルの正比例するフルオロフォアが生成される。酵素調製のために基質濃度Kmを用い、新規化合物の漸増濃度の存在下で脱アセチル化アッセイを実施し、脱アセチル化反応の50%阻害に必要な化合物の濃度(IC50)を半定量的に決定した。
【0337】
結果:
実施例1に記載の化合物のIC50値を上記方法に従って決定した。化合物はすべて約100nM未満の濃度で脱アセチル化反応の50%を阻害することができた。化合物のいくつかは約50nM未満の濃度で脱アセチル化反応の50%を阻害することができた。化合物のいくつかは約20nM未満の濃度で脱アセチル化反応の50%を阻害することができた。いくつかの化合物は約15〜20nMの範囲の濃度で脱アセチル化反応の50%を阻害することができた。いくつかの化合物は約10〜15nMの範囲の濃度で脱アセチル化反応の50%を阻害することができた。いくつかの化合物は約5〜10nMの範囲の濃度で脱アセチル化反応の50%を阻害することができた。いくつかの化合物は約5nM未満の濃度で脱アセチル化反応の50%を阻害することができた。
【実施例3】
【0338】
細胞系におけるHDAC阻害
MTSアッセイ:
マウス赤白血病細胞系SC9の増殖を阻害する能力について、本発明の新規化合物を試験した。
【0339】
MTSアッセイは、Cell Titer96 Aqueous One Solution Cell Proliferation Assayとも呼ばれ、増殖分析、細胞毒性分析または化学的感受性分析における生存細胞数を決定するための比色法である。このMTS試薬は新規テトラゾリウム化合物[3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム、内塩]および電子結合試薬(フェナジンエトサルフェート;PES)を含む。マウス赤白血病細胞(SC9)はビヒクルを用いるか、化合物の濃度を上昇させながら48時間インキュベートした。培養ウェルにMTS試薬を少量直接添加し、1〜4時間インキュベートし、次いで、96ウェルプレートリーダーを用いて490nmの吸光度にて記録することにより、細胞増殖を定量化した。490nMの吸光度で測定した場合のホルマザン産物の量は、培養中の生存細胞の数に正比例する。
【0340】
結果:
新規化合物の選択したグループからのSC9細胞ベースのMTSアッセイの結果は、本化合物が1000nM未満の濃度で細胞増殖を阻害することができることを示している。本化合物のいくつかは、約500〜1000nMの濃度範囲で細胞増殖を阻害することができる。他のいくつかの化合物は、約100〜500nMの濃度範囲で細胞増殖を阻害することができる。他のいくつかの化合物は、100nMの未満の濃度で細胞増殖を阻害することができる。他のいくつかの化合物は、約50〜100nMの濃度範囲で細胞増殖を阻害することができる。他のいくつかの化合物は、50nMの未満の濃度で細胞増殖を阻害することができる。他のいくつかの化合物は、10nMの未満の濃度で細胞増殖を阻害することができる。他のいくつかの化合物は、約1〜10nMの濃度範囲で細胞増殖を阻害することができる。
【0341】
本発明をその実施形態に関して特に示し、説明してきたが、当業者であれば、本発明の意図から逸脱することなく、形態および詳細の種々の変更を行うことができることが理解できよう。むしろ、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって定められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式:
【化1】

(式中、RおよびRは、互いに独立して、置換されていないまたは置換されているC〜C10アルキル、C〜C10アルケニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、C〜C10アルキル−C〜C10アルケニル、C〜C10アルキルシクロアルキル、C〜C10アルキルアリール、C〜C10アルキルヘテロシクリルおよびC〜C10アルキルヘテロアリールから選択され;
は水素またはC〜C10アルキルであり;
は水素またはC〜C10アルキルであり;
nは5または6である。)
によって表される化合物、またはこの立体異性体、鏡像異性体、ラセミ化合物、薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物もしくは多形体。
【請求項2】
およびRが、互いに独立して、C〜C10アルキル、C〜C10アルケニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、C〜C10アルキル−C〜C10アルケニル、C〜C10アルキルシクロアルキル、C〜C10アルキルアリール、C〜C10アルキルヘテロシクリル、C〜C10アルキルヘテロアリール、ハロゲン、ヒドロキシ、C〜C10アルキルオキシ、アリールオキシ、ニトロ、オキソ、−CN、−C(=O)H、−C(=O)OH、アミノ、N−C〜C10アルキルアミノ、N,N−ジC〜C10アルキルアミノ、N−アリールアミノ、N,N−ジアリールアミノ、N−C〜C10アルキル−N−アリールアミノ、アジドおよびC(=O)OR(式中、RはアリールまたはC〜C10アルキルである。)から選択された1、2または3個の置換基で場合によって置換されている請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
およびRが、互いに独立して、置換されていないまたは置換されているフェニル、ナフチル、ビフェニル、ベンジル、−CHCHPh、−CH=CHPh、シクロヘキシル、キノリニル、イソキノリニル、チエニル、チアゾリル、フェニル−チアゾリル、−CH−シクロヘキシル、−CH−キノリニル、−CH−イソキノリニル、ピリジル、−CH(Ph)およびC〜C10アルキルから選択され、前記任意の置換基はC〜Cアルキル、ヒドロキシ、C〜Cアルキルオキシ、アリールオキシ、ハロゲンおよびニトロから選択される1、2または3個の基を含む請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
およびRが、互いに独立して、置換されていないまたは置換されているフェニル、ナフチル、ビフェニル、ベンジル、キノリニル、チオフェニル、チアゾリル、フェニル−チアゾリルから選択され、前記任意の置換基はC〜Cアルキル、ヒドロキシ、C〜Cアルキルオキシ、アリールオキシ、N,N−ジC〜Cアルキルアミノ、ハロゲンおよびニトロから選択される1、2または3個の基を含む請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
およびRが、独立して、水素またはメチルである請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
式IA:
【化2】

(式中、R、R、R、Rおよびnは請求項1に定義した通りである。)の構造によって表される請求項1に記載の化合物、またはこの立体異性体、鏡像異性体、ラセミ化合物、薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物もしくは多形体。
【請求項7】
式II:
【化3】

(式中、R、R、Rおよびnは請求項1に定義された通りである。)の構造によって表される請求項1に記載の化合物、またはこの立体異性体、鏡像異性体、ラセミ化合物、薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物もしくは多形体。
【請求項8】
が、置換されていないまたは置換されているフェニル、ナフチル、ビフェニル、ベンジル、キノリニル、チオフェニルまたはチアゾリルから選択され、前記任意の置換基はC〜Cアルキル、ヒドロキシ、C〜Cアルキルオキシ、アリールオキシ、N,N−ジC〜Cアルキルアミノ、ハロゲンおよびニトロから選択される1、2または3個の基を含む請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
式IIA:
【化4】

(式中、R、R、Rおよびnは請求項1に定義された通りである。)の構造によって表される請求項6に記載の化合物、またはこの立体異性体、鏡像異性体、ラセミ化合物、薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物もしくは多形体。
【請求項10】
式III:
【化5】

(式中、R、R、Rおよびnは請求項1に定義された通りである。)の構造によって表される請求項1に記載の化合物、またはこの立体異性体、鏡像異性体、ラセミ化合物、薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物もしくは多形体。
【請求項11】
が、置換されていないまたは置換されているフェニル、ナフチル、ビフェニル、ベンジル、キノリニル、チオフェニルまたはチアゾリルから選択され、記任意の置換基はC〜Cアルキル、ヒドロキシ、C〜Cアルキルオキシ、アリールオキシ、N,N−ジ−C〜Cアルキルアミノ、ハロゲンおよびニトロから選択される1、2または3個の基を含む請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
式IIIA:
【化6】

(式中、R、R、Rおよびnは請求項1に定義された通りである。)の構造によって表される請求項1に記載の化合物、またはこの立体異性体、鏡像異性体、ラセミ化合物、薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物もしくは多形体。
【請求項13】
請求項1に記載の化合物の医薬有効量および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項14】
哺乳動物における癌の治療または予防に有用な薬剤の調製のための、請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項15】
(S)−2−フェニルメタンスルホニルアミノ−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド;
(S)−2−(ナフタレン−l−スルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド;
(S)−2−(ナフタレン−2−スルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド;
(S)−2−ベンゼンスルホニルアミノ−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド;
(S)−2−(ビフェニル−4−スルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド;
(S)−2−[3−(4−メトキシ−フェノキシ)−プロパン−1−スルホニルアミノ]−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド;
(S)−2−(4−メトキシ−ベンゼンスルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド;
(S)−2−(チオフェン−2−スルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド
(S)−2−(3−メトキシ−ベンゼンスルホニルアミノ]−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド;
(S)−2−(4−t−ブチル−ベンゼンスルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド;
(S)−2−(2,4,6−トリメチル−ベンゼンスルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド;
(S)−2−(4−ブロモ−ベンゼンスルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド;
(S)−2−(4−フルオロ−ベンゼンスルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド;
(S)−2−(3−ブロモ−ベンゼンスルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド;
(S)−2−(4−ニトロ−ベンゼンスルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド;
(S)−2−(3−クロロ−ベンゼンスルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド;
(S)−2−(4−クロロ−ベンゼンスルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド;
(S)−2−(キノリン−8−スルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド;
(S)−2−(トルエン−4−スルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド;
(S)−2−(キノリン−8−スルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド;
(S)−2−(トルエン−4−スルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−フェニルアミド;
(S)−2−(ナフタレン−1−スルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−[(4−フェニル−チアゾール−2−イル)−アミド];
(S)−2−(2,4,6−トリメチル−ベンゼンスルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−[(4−フェニル−チアゾール−2−イル)−アミド];
(S)−2−(4−ブロモ−ベンゼンスルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−[(4−フェニル−チアゾール−2−イル)−アミド];
(S)−2−フェニルメタンスルホニルアミノ−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−[(4−フェニル−チアゾール−2−イル)−アミド];
(S)−2−(ビフェニル−4−スルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−[(4−フェニル−チアゾール−2−イル)−アミド];
(S)−2−(4−メトキシ−ベンゼンスルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−[(4−フェニル−チアゾール−2−イル)−アミド];
(S)−2−(4−クロロ−ベンゼンスルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−[(4−フェニル−チアゾール−2−イル)−アミド];
(S)−2−(ナフタレン−2−スルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−[(4−フェニル−チアゾール−2−イル)−アミド];
(S)−2−(チオフェン−2−スルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−[(4−フェニル−チアゾール−2−イル)−アミド];
(S)−2−ベンゼンスルホニルアミノ−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−[(4−フェニル−チアゾール−2−イル)−アミド];
(S)−2−(3−メトキシ−ベンゼンスルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−[(4−フェニル−チアゾール−2−イル)−アミド];
(S)−2−(4−フルオロ−ベンゼンスルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−[(4−フェニル−チアゾール−2−イル)−アミド];および
(S)−2−(4−ニトロ−ベンゼンスルホニルアミノ)−オクタン二酸8−ヒドロキシアミド1−[(4−フェニル−チアゾール−2−イル)−アミド];
から選択される化合物、またはこの立体異性体、鏡像異性体、ラセミ化合物、薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物もしくは多形体。
【請求項16】
(2S)−2−({[5−(ジメチルアミノ)−1−ナフチル]スルホニル}アミノ)−N−ヒドロキシ−N−フェニルオクタンアミドである化合物、またはこの立体異性体、鏡像異性体、ラセミ化合物、薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物もしくは多形体。
【請求項17】
請求項15に記載の化合物の医薬有効量および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項18】
請求項16に記載の化合物の医薬有効量および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項19】
哺乳動物における癌の治療または予防に有用な薬剤の調製のための、請求項15に記載の化合物の使用。
【請求項20】
哺乳動物における癌の治療または予防に有用な薬剤の調製のための、請求項16に記載の化合物の使用。

【公表番号】特表2008−505970(P2008−505970A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−521531(P2007−521531)
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【国際出願番号】PCT/US2005/024513
【国際公開番号】WO2006/017215
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】