説明

フィルム、フィルムの製造方法、偏光板および液晶表示装置

【課題】傾斜構造を有し、傾斜軸と直交方向に伸張する筋が少ないフィルムおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂を含み、傾斜構造を有し、傾斜軸と直交方向に伸張する筋が3本/3cm以下であることを特徴とするフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフィルムおよびその製造方法に関する。また、該フィルムを有する偏光板、液晶表示装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイ市場の隆盛に伴い、様々なフィルムが開発されている。例えば、特許文献1〜3には、TN液晶用位相差膜としてフィルムの厚み方向の光軸を傾斜させる方法、および傾斜構造を有する傾斜型位相差フィルムが開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、フィルムを製膜した後、周速度の異なる二つのロール間にフィルムを通すことで、該フィルムにせん断力を付与し(すなわちズリを与えて)、光軸が傾斜したフィルムを作成する方法と、TN型液晶ディスプレイへの応用が記載されている。しかし、前記文献1に記載の方法では、フィルムの光学特性のバラツキが大きいこと、フィルム表面に接触傷が付き易い等の問題があった。また、溶融物に対して適用することも示唆していなかった。これに対し、特許文献2では製膜中にダイから押出したメルトを金属でコートしたゴムロールと金属ロールで挟み、これらに周速差を与えることで(以下、周速差製膜とも言う)、光軸を傾斜させている。また、特許文献3では表面をゴムで被覆した金属ロールを用いて、これらに周速差を与えることで光軸を傾斜させている。
【0004】
しかし、液晶ディスプレイに単に光軸が傾斜した光学フィルムを使用しただけでは、光学補償の効果は十分ではない。例えば、特許文献3ではその実施例で光軸が11.5〜18.2°傾斜した光学フィルムが開示されているが、光軸傾斜角度と液晶ディスプレイの光学補償との関係については何ら記載されていない。また、実際に、透過型のTNやECB液晶ディスプレイや、半透過型のTNやECB液晶ディスプレイの光学補償を行うには、液晶セルのレターデーションを補償できるまでもの大きな位相差を有することが必要であり、光軸が11.5〜18.2°傾斜しているだけでは不十分であった。そのため、さらに傾斜構造の大きな光学フィルムが望まれていた。
【0005】
一方、近年、液晶表示装置に求められる画質の要求は年々高まってきており、特に液晶表示装置に組み込んだ際に画像のにじみを起こさないような光学補償フィルムの開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−222213号公報
【特許文献2】特開2003−25414号公報
【特許文献3】特開2007−38646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らが特許文献2および3に記載された方法を検討したところ、まずこれらの方法にしたがって製膜した時点の未延伸のフィルムでは確かに傾斜構造が形成されていたものの、傾斜軸と直交方向に伸張する筋(数mmピッチのある程度周期的に発生する幅方向のスジ状のむら、いわゆる横ダン)が発生し、これが液晶表示装置に使用したときに画像のにじみを引き起こしていることを見出した。さらに、特許文献2および3に記載の製造方法で必須の構成要件としている縦延伸工程(フィルム搬送方向への延伸工程)をこれらの文献にしたがって上記未延伸フィルムに対して実施したところ、得られたフィルムの傾斜軸と直交方向に伸張する筋はある程度解消したものの、逆に未延伸フィルムで形成していた傾斜構造は大きく崩れてしまった。また、これらの文献に記載の各種条件を検討してみたものの、傾斜構造が崩れない場合は、横ダンを解消することはできなかった。このように、特許文献2および3に記載された方法では横ダンが少なく、かつ、傾斜構造を有するフィルムを得ることができなかった。
【0008】
本発明は上記の課題を考慮してなされたものであり、本発明の第一の目的は、傾斜構造を有し、横ダンが少ないフィルムおよびその製造方法を提供することにある。また、本発明の第二の目的は、該フィルムを用いた偏光板および液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特に特許文献2および3に記載の製造方法で必須の構成要件としている縦延伸工程において、用いるニップロールに特別な温度制御を行うことによって、未延伸フィルムの傾斜構造(幅方向の分布のバラツキが非常に小さい)を維持したまま横ダンを解消できることを見出すに至った。すなわち、下記製造方法およびその方法で作成されたフィルムが上記課題を解決できることを見出し、以下に記載する本発明を完成するに至った。
【0010】
[1] 熱可塑性樹脂を含み、傾斜構造を有し、傾斜軸と直交方向に伸張する筋が3本/3cm以下であることを特徴とするフィルム。
[2] 下記(I)式および(II)式を満足することを特徴とする[1]に記載のフィルム。
50nm≦Re[0°]≦300nm (I)式
(式(I)中、Re[0°]はフィルム傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、該法線方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表す。)
40nm≦γ≦300nm (II)式
γ=|Re[+40°]−Re[−40°]| 式(II)’
(式(II)中、Re[+40°]はフィルム傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、該法線に対して傾斜方位側へ40°傾いた方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表し、Re[−40°]は該法線に対して傾斜方位側へ−40°傾いた方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表す。)
[3] 前記γの傾斜軸と直交方向分布が0%〜10%であり、厚み方向のレターデーションRthが40〜300nmであることを特徴とする[1]または[2]に記載のフィルム。
[4] 前記熱可塑性樹脂がポリカーボネート系樹脂、ノルボルネン系樹脂、アクリル系樹脂およびセルロースアシレート系樹脂から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載のフィルム。
[5] 挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に熱可塑性樹脂を含有する組成物の溶融物を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形する挟圧工程(該挟圧工程では、前記第一挟圧面の移動速度を前記第二挟圧面の移動速度よりも速くする)と、フィルム状の溶融物を固化してフィルムを得る工程と、得られたフィルムを2本のロールからなる第1のニップロールの間と、2本のロールからなる第2のニップロールの間を順に通過させて、第2のニップロールの周速度を第1のニップロールの周速度よりも速くしてフィルム搬送方向に延伸する縦延伸工程(該縦延伸工程において前記第1のニップロールまたは前記第2のニップロールの少なくとも一方を、ニップロールを構成する2本のロールの各表面温度間に0.1℃〜10℃の温度差を付与するように制御する)とを含むことを特徴とするフィルムの製造方法。
[6] 挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に熱可塑性樹脂を含有する組成物の溶融物を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形する挟圧工程(該挟圧工程では、前記第一挟圧面の移動速度を前記第二挟圧面の移動速度よりも速くする)と、フィルム状の溶融物を固化してフィルムを得る工程と、得られたフィルムを2本のロールからなる第1のニップロールの間と、2本のロールからなる第2のニップロールの間を順に通過させて、第2のニップロールの周速度を第1のニップロールの周速度よりも速くしてフィルム搬送方向に延伸する縦延伸工程(該縦延伸工程において、前記第1のニップロールまたは前記第2のニップロールの少なくとも一方を、ニップロールを構成する2本のロールの各周速度間に0.01〜10%の周速差を付与するように制御する)とを含むことを特徴とするフィルムの製造方法。
[7] 前記縦延伸工程において、第1のニップロールまたは第2のニップロールの少なくとも一方を、ニップロールを構成する2本のロールの各表面温度間に0.1℃〜10℃の温度差を付与するように制御することを特徴とする[6]に記載のフィルムの製造方法。
[8] 前記熱可塑性樹脂を含有する組成物をダイから溶融押出しする工程と、溶融押出しされた溶融物を前記第一挟圧面と前記第二挟圧面の間を通過させる工程と、を含むことを特徴とする[5]〜[7]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
[9] 前記挟圧工程において、前記溶融物を15〜500MPaの圧力で挟圧することを特徴とする[5]〜[8]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
[10] 前記挟圧工程において、前記溶融物を30〜500MPaの圧力で挟圧することを特徴とする[5]〜[9]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
[11] 前記挟圧工程において、下記式(III)で定義される前記挟圧装置の第一挟圧面と第二挟圧面の移動速度差が0.5〜20%となるように制御することを特徴とする[5]〜[10]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
式(III)
移動速度差(%)=100×[(第一挟圧面の移動速度)−(第二挟圧面の移動速度)]
/(第一挟圧面の移動速度)
[12] 前記挟圧工程において、前記挟圧装置が互いに周速が異なる2つのロールであることを特徴とする[5]〜[11]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
[13] 前記挟圧装置を構成する2つのロールの一方に、外筒厚み6〜45mmの金属製タッチロールを用いることを特徴とする[12]に記載のフィルムの製造方法。
[14] [5]〜[13]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法で製膜したことを特徴とするフィルム。
[15] [1]〜[4]および[14]のいずれか一項に記載のフィルムを少なくとも1枚使用したことを特徴とする偏光板。
[16] [1]〜[4]および[14]のいずれか一項に記載のフィルムを少なくとも1枚使用したことを特徴とする液晶表示装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、傾斜構造を有し、傾斜軸と直交方向に伸張する筋が少ないフィルムおよびその製造方法を提供することができる。また、十分に大きい傾斜構造を有し、液晶ディスプレイに使用した場合に十分な光学補償を実現できるフィルムおよびその製造方法を提供することができる。このようなフィルムは液晶表示装置に組み込んだ際に十分に広く視野角補償ができ、かつ液晶表示装置の画像のにじみが非常に少ない。そのため、液晶表示装置の画質が良好となる。詳しくは、上記光学特性を有するフィルムは、TNモード、ECBモード、OCBモードの液晶ディスプレイに使用した場合に、十分な光学補償を実現できる。例えば、TNモードの液晶ディスプレイでは、視野角度が狭いため、通常、光学補償を実現する液晶組成物からなる光学補償層が設けられた光学補償フィルム(例えば、WVフィルム(富士フイルム製))が偏光子に積層されて使用されるが、本発明のフィルムを使用した場合には、液晶組成物からなる光学補償層を利用しなくても、従来の液晶組成物からなる光学補償層を有する光学補償フィルムを利用したものよりも簡便に視野角補償を行うことができる。また、本発明のフィルムの製造方法により、本発明のフィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の半透過型ECBモード液晶表示装置における偏光板の吸収軸、液晶セルの配向方向およびフィルムの遅相軸を表した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、本明細書において、「フィルム長手方向」とは、MD(マシン・ダイレクション)方向(すなわち、フィルム搬送方向)を意味する。また、「縦延伸」とは、MD方向への延伸を意味し、「横延伸」とは、MD方向に搬送する方向に直交する方向(すなわち、フィルム搬送方向に直交する方向)への延伸を意味する。
本明細書中、傾斜構造とは、厚み方向から見た配向特性が傾斜している構造を指し、具体的にはフィルム面に対し左右に傾斜させて測定したレターデーション値が異なるものを指す。
なお、本発明では挟圧工程時および縦延伸時に、それぞれ溶融したメルトと挟圧工程後に固化したフィルムを挟圧装置間で挟むが、該挟圧装置が2つのロールである場合、挟圧工程時に挟む2つのロールを「タッチロール」あるいは「タッチロールとチル(冷却)ロール」と言い、縦延伸工程時にフィルムを挟む1対の(2本の)ロールをまとめて「ニップロール」と言い区別する。
【0014】
[フィルム]
本発明のフィルムは、熱可塑性樹脂を含み、傾斜構造を有し、横ダンが3本/3cm以下であることを特徴とする。
【0015】
(横ダン)
本発明のフィルムは、傾斜軸と直交方向に伸張する筋が3本/3cm以下であり、好ましくは2本/3cm以下、さらに好ましくは1本/3cm以下である。本明細書中において、「傾斜軸と直交方向に伸張する筋」とは、傾斜軸と直交方向に伸長する筋のうち、5mm以上傾斜軸と直交方向に伸長している筋のことを言う。傾斜軸と直交方向に伸張する筋」は、例えば数mmピッチのように、ある程度周期的に発生する。この「傾斜軸と直交方向に伸張する筋」を以下、横ダンとも言う。横ダンの数は、直交配置した偏光板(クロスニコル)の間にサンプルフィルムを置き、目視で検出できる数を数える。この範囲以下であれば、同様にクロスニコル内で使用される液晶表示装置において、画像のにじみ等の実害は発生しない。
【0016】
(面内方向のレターデーションRe、γ、厚み方向のレターデーションRth)
本発明のフィルムは、下記(I)式および(II)式を満足することが、光学補償を十分に達成する観点から好ましい。
50nm≦Re[0°]≦300nm (I)式
(式(I)中、Re[0°]はフィルム傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、該法線方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表す。)
40nm≦γ≦300nm (II)式
γ=|Re[+40°]−Re[−40°]| 式(II)’
(式(II)中、Re[+40°]はフィルム傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、該法線に対して傾斜方位側へ40°傾いた方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表し、Re[−40°]は該法線に対して傾斜方位側へ−40°傾いた方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表す。)
【0017】
本明細書において、「フィルム法線からθ°傾いた方向」とは、法線方向から傾斜方位にθ°だけ傾斜させた方向と定義する。即ち、フィルム面の法線方向は傾斜角度0°の方向であり、フィルム面内の任意の方向は傾斜角度90°の方向である。傾斜角度(θ)の符号の正負を考慮する場合、Re[+40°]を測定する方向とRe[−40°]を測定する方向は、フィルム法線に対して、線対称な位置となる。
【0018】
本発明のフィルムは、より好ましくは下記(III)式および(IV)式を満足するものである。
70nm≦Re[0°]≦250nm (III)式
60nm≦γ≦250nm (IV)式
さらに好ましくは(V)式および(VI)式を満足するものである。
100nm≦Re[0°]≦200nm (V)式
80nm≦γ≦180nm (VI)式
【0019】
前記γが大きいことは、斜めから入射した光で測定したReが例えば左側と右側とで異なることを意味し、フィルム中に厚み方向から見た際に傾斜構造が形成されたことを意味する。この傾斜構造が液晶表示装置中の液晶配向と相補し視野角を改善する効果を有する。γが前記(II)式の範囲であると、液晶表示装置に組み込んだ場合のコントラストが顕著に改善される。ここで、コントラストが低下し画像が見え難くなると、前記横ダンが視認され易くなる。このため、上記範囲にすることで横ダンの視認性を低下できる。
Re[0°]も同様に前記(I)式の範囲内にすることでコントラスト改善効果が発現し、横ダンが視認され難くなり好ましい。
【0020】
本発明のフィルムは、厚み方向のレターデーション(Rth)が40nm〜300nmであることが好ましく、より好ましくは50nm〜200nm、さらに好ましくは50nm〜150nmである。Rthが上記の好ましい範囲であれば液晶表示装置に組み込んだ場合のコントラストが顕著に改善され、同様に横ダンが視認され難くなり好ましい。
【0021】
γ、Re[0°]およびRthが前記好ましい範囲のフィルムは、後述する本発明の製造方法によって作製することができる。また、上記好ましい光学特性の光学フィルムを、TNモード、ECBモード、OCBモード等の液晶ディ液晶ディスプレイの光学補償に利用した場合に、視野角特性の改善に寄与し、広視野角化を達成することができる。
【0022】
(γの傾斜軸と直交方向分布)
本発明のフィルムは、γの遅相軸方向分布は0%〜10%が好ましく、より好ましくは0%〜7%、さらに好ましくは0%〜5%である。γの傾斜軸と直交方向分布が10%以下であれば液晶表示板に使用した際に表示むらが視認され難い。
【0023】
また、γの傾斜軸と直交方向分布は、以下の方法により測定することができる。延伸後のフィルムの任意の箇所の遅相軸方向30cmを10等分し、後述する測定方法でγを計る。得られた10点のγの測定値のうち、最大点と最小点の差を10点の平均値で割り百分率で表したものをγの傾斜軸と直交方向分布(%)とした。
なお、Re[0°]、遅相軸およびRthのバラツキも同様に測定される。
【0024】
Re[0°]のバラツキは、液晶ディスプレイに利用した場合に、表示ムラとなって現れるので、そのバラツキは小さいほど好ましく、具体的には、±3nm以内であることが好ましく、±1nm以内であることがさらに好ましい。
また、同様に遅相軸の角度のバラツキも、表示ムラの原因となるので、そのバラツキは小さいほど好ましく、具体的には±1°以内であることが好ましく、±0.5°以内であることがさらに好ましく、±0.25°以内であることが特に好ましい。
【0025】
本明細書において、ReおよびRthは、光学異方性層、フィルム、積層体等の、フィルム状の測定対象物の、面内のレターデーション(nm)、及び厚み方向のレターデーション(nm)を表す。
Re[0°]は、KOBRA 21ADH又はWR(王子計測機器(株)製)において、波長550nmの光を、フィルム状の測定対象物の法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、または測定値をプログラム等で変換して測定することができる。
測定されるフィルム状の測定対象物が1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合、以下の方法によりRthが算出される。
Rthは、前記Reを面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム状の測定対象物の、面内の任意の方向を回転軸とする)、フィルム状の測定対象物の法線方向に対して、法線方向から−50°から+50°まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長550nmの光を入射させて、レターデーション値を11点測定し、そのレターデーション値と、平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値とを基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値は、その符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRが算出する。
なお、遅相軸を回転軸として(遅相軸がない場合には、フィルム状の測定対象物の、面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値、及び入力された膜厚値を基に、以下の数式(A)及び式(B)よりRthを算出することもできる。
【数1】

なお、式中、Re[θ]は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値を表す。
また、式(A)において、nxは、面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表し、dは膜厚を表す。
測定されるフィルム状の測定対象物が1軸、又は2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がない測定対象物の場合には、以下の方法により、Rthが算出される。
Rthは、前記Reを面内の任意に設定した方位(KOBRA 21ADH又はWRに設定できる)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50°から+50°まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長550nmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と、平均屈折率の仮定値、及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS、INC)、各種光学補償フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについては、アッベ屈折計で測定できる。主な光学補償フィルムの平均屈折率の値を以下に例示すると、セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRは、nx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
なお、Re[θ°]、Rth及び屈折率の測定波長は特別な記述がない限り、測定波長550nmでの値である。
【0026】
本発明において、フィルムのRe[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]は、KOBRA 21ADHまたはWR(王子計測機器(株)製)を用い、フィルムの傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、フィルム法線方向から測定した(傾斜角度0°での)波長550nmにおけるレターデーション値、該法線に対して傾斜方位側又は仮傾斜方位側へ40°傾いた方向から測定した(傾斜角度40度での)レターデーション値および該法線に対して傾斜方位側又は仮傾斜方位側へ−40°傾いた方向から測定した(傾斜角度−40度での)レターデーション値を表す。
ここで、傾斜方位は、以下の方法で決定した。
(1)フィルム面内の遅相軸方位を0°、フィルム面内の進相軸方位を90°とし、0°〜90°の間で0.1°刻みで仮傾斜方位を設定する。
(2)フィルム法線に対して各仮傾斜方位側へ40°又は−40°傾いた方向からRe[+40°]とRe[−40°]を測定し、各仮傾斜方位の|Re[+40°]−Re[−40°]|、すなわちγを求める。
(3)|Re[+40°]−Re[−40°]|が最大となる方位を傾斜方位と決定する。
すなわち、本明細書において、「傾斜方位を有する」とは、|Re[+40°]−Re[−40°]|が最大となる方位が存在することを言う。
なお、測定波長は550nmとする。なお、一般的な熱可塑性樹脂を溶融製膜法で作成したフィルムは、どの方位で測定しても、γ≒0nmとなる。すなわち、傾斜方位でγを測定した場合、0nm以上の位相差を発現することが本発明のフィルムの特徴である。
本明細書において、フィルムのRthは傾斜方位を傾斜軸(回転軸)として、KOBRA21ADH、又は、WRが算出したものである。
【0027】
本発明のフィルムの膜厚は、100μm以下であることが好ましい。液晶ディスプレイ等に用いる場合は、薄型化の観点からは、80μm以下であることが好ましく、60μm以下であることがより好ましく、40μm以下であることが特に好ましい。本発明のフィルムの製造方法では、このような薄手のフィルムを作成できる。
【0028】
(熱可塑性樹脂)
本発明で用いられる熱可塑性樹脂は、上記光学特性を有する限り特に限定されないが、溶融押出し法を利用して作製する場合は、溶融押出し成形性が良好な材料を利用するのが好ましく、その観点では、環状オレフィン系樹脂、セルロースアシレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル類、透明ポリエチレンや透明ポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリアリレート類、ポリスルホン類、ポリエーテルスルホン類、マレイミド系共重合体類、透明ナイロン類、透明フッ素樹脂類、透明フェノキシ類、ポリエーテルイミド類、ポリスチレン類、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂を選択するのが好ましい。1種の当該樹脂を含有していてもよいし、互いに異なる2種以上の当該樹脂を含有していてもよい。本発明のフィルムでは、ポリカーボネート系樹脂、環状オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、炭化水素系ビニル化合物(例えばポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリαーオレフィン系樹脂)およびセルロースアシレート系樹脂から選ばれる少なくとも一種であることが好ましく、ポリカーボネート系樹脂、環状オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂およびセルロースアシレート系樹脂から選ばれる少なくとも一種であることがより好ましい。また、前記環状オレフィン類は、付加重合によって得られた環状オレフィン類であることが好ましい。
【0029】
特に、正の固有複屈折性を示す、セルロースアシレート系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂は、2つのロールでせん断変形を付加した場合、遅相軸が傾斜方位を向いたフィルムを作成することができ、例えば、2つのロールをダイ出口と平行に配置した場合、傾斜方位はフィルム長手方向と同じである。
また、負の固有複屈折性を示す、アクリル系樹脂およびスチレン系樹脂は、上記加工を行った場合、進相軸が傾斜方位を向いたフィルムを作成することができる。
【0030】
本発明のフィルムを、視野角補償フィルムとして液晶表示装置に応用する場合には、液晶表示装置の特性や偏光板加工の利便性を考慮にいれて、上記正または負の固有複屈折樹脂を適宜選択して用いることが出来る。
【0031】
本発明に使用可能な環状オレフィン系樹脂の例には、ノルボルネン系化合物の重合により得られたノルボルネン系樹脂が含まれる。また、開環重合および付加重合のいずれの重合方法によって得られる樹脂であってもよい。
付加重合およびそれにより得られる環状オレフィン系樹脂としては、例えば、特許3517471号公報、特許3559360号公報、特許3867178号公報、特許3871721号公報、特許3907908号公報、特許3945598号公報、特表2005−527696号公報、特開2006−28993号公報、特開2006−11361公報、国際公開WO第2006/004376号公報、国際公開WO第2006/030797号公報パンフレットに記載されているものが挙げられる。中でも、特許3517471号公報に記載のものが特に好ましい。
開環重合およびそれにより得られる環状オレフィン系樹脂としては、国際公開WO98第98/14499号公報パンフレット、特許3060532号公報、特許3220478号公報、特許3273046号公報、特許3404027号公報、特許3428176号公報、特許3687231号公報、特許3873934号公報、特許3912159号公報に記載のものが挙げられる。中でも、国際公開WO第98/14499号公報パンフレット、特許3060532号公報に記載のものが特に好ましい。
これらの環状オレフィン系樹脂の中でも付加重合によって得られるものが、複屈折の発現性、溶融粘度の観点から好ましく、例えば、「TOPAS #6013」(ポリプラスチックス(株)社製)を用いることができる。
【0032】
本発明に使用可能なセルロースアシレート系樹脂の例には、セルロース単位中の3個の水酸基が、少なくとも一部がアシル基で置換されたいずれのセルロースアシレートも含まれる。当該アシル基(好ましくは炭素数3〜22のアシル基)は、脂肪族アシル基および芳香族アシル基のいずれであってもよい。中でも、脂肪族アシル基を有するセルロースアシレートが好ましく、炭素数3〜7の脂肪族アシル基を有するものがより好ましく、炭素数3〜6の脂肪族アシル基を有するものがさらに好ましく、炭素数は3〜5の脂肪族アシル基を有するものがよりさらに好ましい。これらのアシル基は複数種が1分子中に存在していてもよい。好ましいアシル基の例には、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基などが含まれる。これらの中でも、さらに好ましいものは、アセチル基、プロピオニル基およびブチリル基から選択される1種または2種以上を有するセルロースアシレートであり、よりさらに好ましいものは、アセチル基およびプロピオニル基の双方を有するセルロースアシレート(CAP)である。前記CAPは、樹脂の合成が容易であること、押し出し成形の安定性が高いこと、の点で好ましい。
【0033】
セルロースアシレート系樹脂の質量平均重合度および数平均分子量については特に制限はない。一般的には、質量平均重合度が350〜800程度、および数平均分子量が70000〜230000程度である。前記セルロースアシレート系樹脂は、アシル化剤として酸無水物や酸塩化物を用いて合成できる。工業的に最も一般的な合成方法では、綿花リンタや木材パルプなどから得たセルロースをアセチル基および他のアシル基に対応する有機酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)またはそれらの酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)を含む混合有機酸成分でエステル化してセルロースエステルを合成する。前記セルロースアシレートの合成方法としては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)7〜12頁の記載や、特開2006−45500号公報、特開2006−241433号公報、特開2007−138141号公報、特開2001−188128号公報、特開2006−142800号公報、特開2007−98917号公報記載の方法を参照することができる。前記セルロースアシレート樹脂の全アシル置換度は2.1〜3.0が好ましく、アセチル基の置換度は0.05〜2.5が好ましく、より好ましくは0.05〜0.5あるいは1.5〜2.5である。プロピオニル置換度は0.1〜2.8が好ましく、より好ましくは0.1〜1.2あるいは2.3〜2.8である。
【0034】
本発明に使用可能なポリカーボネート系樹脂として、ビスフェノールA骨格を有するポリカーボネート樹脂が挙げられ、ジヒドロキシ成分とカーボネート前駆体とを界面重合法または溶融重合法で反応させて得られるものであり、例えば、特開2006−277914号公報、特開2006−106386号公報、特開2006−284703号公報記載のものが好ましく用いることができる。例えば、市販品として、「タフロンMD1500」(出光興産社製)を用いることができる。
【0035】
本発明に使用可能なスチレン系樹脂とは、主成分としてスチレン及びそれらの誘導体を重合して得られる樹脂及び、その他の樹脂の共重合体を指し、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、公知のスチレン系熱可塑性樹脂等を用いることができ、特に複屈折、フィルム強度、耐熱性を改良できる、共重合体樹脂が好ましい。
共重合体樹脂としては、例えば、スチレン−アクリロニトリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、スチレン−無水マレイン酸系樹脂、あるいはこれらの多元(二元、三元等)共重合ポリマーなどが挙げられる。これらの中でも、スチレン−アクリル系樹脂やスチレン−無水マレイン酸系樹脂が耐熱性・フィルム強度の観点から好ましい。
前記スチレン−無水マレイン酸系樹脂は、スチレンと無水マレイン酸との質量組成比が、スチレン:無水マレイン酸=95:5〜50:50であることが好ましく、スチレン:無水マレイン酸=90:10〜70:30であることがより好ましい。また、固有複屈折を調整するため、スチレン系樹脂の水素添加を行うことも好ましく利用できる。
前記スチレン−無水マレイン酸系樹脂としては、例えば、ノバケミカル社製の「Daylark D332」などが挙げられる。
また、スチレン-アクリル系樹脂としては、後述する、旭化成ケミカル社製の「デルペット980N」などを用いることができる。
【0036】
本発明に使用可能なアクリル系樹脂とは、主成分として、アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの誘導体を重合して得られる樹脂、およびさらにその誘導体のことをいい、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、公知のメタクリル酸系熱可塑性樹脂等を用いることできる。
アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの誘導体を重合して得られる樹脂としては、例えば、下記一般式(1)で表される構造のものを挙げることができる。
【0037】
【化1】

前記一般式(1)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を示す。有機残基とは、具体的には、炭素数1〜20の直鎖状、分枝鎖状、もしくは環状のアルキル基を示す。
【0038】
前記アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの誘導体を重合して得られる樹脂の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシエキシルおよび(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルが好ましく、熱安定性に優れる点で(メタ)アクリル酸メチル(以下MMAともいう)がより好ましい。これらのうち一種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、これらのうち一種の単重合体であっても、2種以上の共重合体であっても、その他の樹脂の共重合体であってもよいが、ガラス転移温度を高める観点からその他の樹脂との共重合体であることが特に好ましい。
前記アクリル系共重合体樹脂の中でも、樹脂を構成する全モノマー中、MMA単位(モノマー)を30モル%以上含むものが好ましく、MMA以外に、ラクトン環単位、無水マレイン酸単位、グルタル酸無水物単位の少なくとも1種の単位を含むことがより好ましく、例えば下記のものを使用できる。
【0039】
(1)ラクトン環単位を含むアクリル樹脂
特開2007−297615号、特開2007−63541号、特開2007−70607号、特開2007−100044号、特開2007−254726号、特開2007−254727号、特開2007−261265号、特開2007−293272号、特開2007−297619号、特開2007−316366号、特開2008−9378号、特開2008−76764号の各公報に記載のものを使用できる。この中でより好ましいのが特開2008−9378号公報に記載の樹脂である。
(2)無水マレイン酸単位を含むアクリル樹脂
特開2007−113109号、特開2003−292714号、特開平6−279546号、特開2007−51233号(ここに記載の酸変性ビニル)、特開2001−270905号、特開2002−167694号、特開2000−302988号、特開2007−113110号、特開2007−11565号各公報に記載のものを使用できる。この中でより好ましいのが、特開2007−113109号公報に記載のものである。また市販のマレイン酸変性MAS樹脂(例えば旭化成ケミカルズ(株)製デルペット980N)も好ましく使用できる。
(3)グルタル酸無水物単位を含むアクリル樹脂
特開2006−241263号、特開2004−70290号、特開2004−70296号、特開2004−126546号、特開2004−163924号、特開2004−291302号、特開2004−292812号、特開2005−314534号、特開2005−326613号、特開2005−331728号、特開2006−131898号、特開2006−134872号、特開2006−206881号、特開2006−241197号、特開2006−283013号、特開2007−118266号、特開2007−176982号、特開2007−178504号、特開2007−197703号、特開2008−74918号、国際公開WO2005/105918等各公報に記載のものを使用できる。この中でより好ましいのが特開2008−74918号公報に記載のものである。
これらの樹脂のガラス転移温度(Tg)は106℃〜170℃が好ましく、より好ましくは110℃〜160℃、さらに好ましくは115℃〜150℃である。
【0040】
これらの中でも、前記熱可塑性樹脂としては、環状オレフィン系樹脂であることが好ましく、高透明性、複屈折発現性および耐熱性の観点からノルボルネン系樹脂であることがより好ましく、付加重合系のノルボルネン系樹脂であることが特に好ましい。
また、前記熱可塑性樹脂が共重合体である場合は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもかまわない。
【0041】
(添加剤)
本発明のフィルムは、上記熱可塑性樹脂以外の材料を含有していてもよいが、上記熱可塑性樹脂の1種または2種以上を主成分(組成物中の全材料中、最も含有割合の高い材料を意味し、当該樹脂を2種以上含有する態様では、それらの合計の含有割合が、他の材料それぞれの含有割合より高いことを意味する)として含有しているのが好ましい。上記熱可塑性樹脂以外の材料としては、種々の添加剤が挙げられ、その例には、安定化剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、可塑剤、微粒子、および光学調整剤が含まれる。
【0042】
安定化剤:
本発明のフィルムは、安定化剤の少なくとも一種を含有していてもよい。安定化剤は、前記熱可塑性樹脂を加熱溶融する前にまたは加熱溶融時に添加することが好ましい。安定化剤は、フィルム構成材料の酸化防止、分解して発生した酸の捕捉、光または熱によるラジカル種基因の分解反応を抑制または禁止する等の作用がある。安定化剤は、解明されていない分解反応などを含む種々の分解反応によって、着色や分子量低下等の変質および揮発成分の生成等が引き起こされるのを抑制するのに有用である。樹脂を製膜するための溶融温度においても安定化剤自身が分解せずに機能することが求められる。安定化剤の代表的な例には、フェノール系安定化剤、亜リン酸系安定化剤(フォスファイト系)、チオエーテル系安定化剤、アミン系安定化剤、エポキシ系安定化剤、ラクトン系安定化剤、アミン系安定化剤、金属不活性化剤(スズ系安定化剤)などが含まれる。これらは、特開平3−199201号公報、特開平5−1907073号公報、特開平5−194789号公報、特開平5−271471号公報、特開平6−107854号公報などに記載があり、本発明ではフェノール系や亜リン酸系安定化剤の少なくとも一方以上を用いることが好ましい。フェノール系安定化剤の中でも、特に分子量500以上のフェノール系安定化剤を添加することが好ましい。好ましいフェノール系安定化剤としては、ヒンダードフェノール系安定化剤が挙げられる。
【0043】
これらの素材は、市販品として容易に入手可能であり、下記のメーカーから販売されている。チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社から、Irganox 1076、Irganox 1010、Irganox 3113、Irganox 245、Irganox 1135、Irganox 1330、Irganox 259、Irganox 565、Irganox 1035、Irganox 1098、Irganox 1425WL、として入手することができる。また、旭電化工業株式会社から、アデカスタブ AO−50、アデカスタブ AO−60、アデカスタブ AO−20、アデカスタブ AO−70、アデカスタブ AO−80として入手できる。さらに、住友化学株式会社から、スミライザーBP−76、スミライザーBP−101、スミライザーGA−80、として入手できる。また、シプロ化成株式会社からシーノックス326M、シーノックス336B、としても入手することが可能である。
【0044】
また、上記の亜リン酸系安定化剤としては、特開2004−182979号公報の[0023]〜[0039]に記載の化合物をより好ましく用いることができる。亜リン酸エステル系安定化剤の具体例としては、特開昭51−70316号公報、特開平10−306175号公報、特開昭57−78431号公報、特開昭54−157159号公報、特開昭55−13765号公報に記載の化合物を挙げることができる。さらに、その他の安定化剤としては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)17頁〜22頁に詳細に記載されている素材を好ましく用いることができる。
【0045】
上記亜リン酸エステル系安定化剤は、高温での安定性を保つために高分子量であることが有用であり、分子量500以上であり、より好ましくは分子量550以上であり、特には分子量600以上が好ましい。さらに、少なくとも一置換基は芳香族性エステル基であることが好ましい。また、亜リン酸エステル系安定化剤は、トリエステルであることが好ましく、リン酸、モノエステルやジエステルの不純物の混入がないことが望ましい。これらの不純物が存在する場合は、その含有量が5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3質量%以下であり、特には2質量%以下である。これらは、特開2004−182979号公報の[0023]〜[0039]に記載の化合物などを挙げることが、さらに特開昭51−70316号公報、特開平10−306175号公報、特開昭57−78431号公報、特開昭54−157159号公報、特開昭55−13765号公報に記載の化合物も挙げることができる。亜リン酸エステル系安定化剤の好ましい具体例として下記の化合物を挙げることができるが、本発明で用いることができる亜リン酸エステル系安定化剤はこれらに限定されるものではない。
【0046】
これらは、旭電化工業株式会社からアデカスタブ1178、同2112、同PEP−8、同PEP−24G、PEP−36G、同HP−10として、またクラリアント社からSandostab P−EPQとして市販されており、入手可能である。さらに、フェノールと亜リン酸エステルを同一分子内に有する安定化剤も好ましく用いられる。これらの化合物については、さらに特開平10−273494号公報に詳細に記載されており、その化合物例は、前記安定化剤の例に含まれるが、これらに限定されるものではない。代表的な市販品として、住友化学株式会社から、スミライザーGPがある。これらは、住友化学株式会社から、スミライザーTPL、同TPM、同TPS、同TDPとして市販されている。旭電化工業株式会社から、アデカスタブAO-412Sとしても入手可能である。
【0047】
前記安定化剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択される。好ましくは、熱可塑性樹脂の質量に対して、安定化剤の添加量は0.001〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.005〜3質量%であり、さらに好ましくは0.01〜0.8質量%である。
【0048】
紫外線吸収剤:
本発明のフィルムは、1種または2種以上の紫外線吸収剤を含有していてもよい。紫外線吸収剤は、劣化防止の観点から、波長380nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ、透明性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。特に好ましい紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物である。中でも、ベンゾトリアゾール系化合物は、セルロース混合エステルに対する不要な着色が少ないことから好ましい。これらは、特開昭60−235852号、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号、同6−118233号、同6−148430号、同7−11056号、同7−11055号、同7−11056号、同8−29619号、同8−239509号、特開2000−204173号の各公報に記載がある。
紫外線吸収剤の添加量は、熱可塑性樹脂の0.01〜2質量%であることが好ましく、0.01〜1.5質量%であることがさらに好ましい。
【0049】
光安定化剤:
本発明のフィルムは、1種または2種以上の光安定化剤を含有していてもよい。光安定化剤としては、ヒンダードアミン光安定化剤(HALS)化合物が挙げられ、より具体的には、米国特許第4,619,956号明細書の第5〜11欄および米国特許第4,839,405号明細書の第3〜5欄に記載されているように、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン化合物、またはそれらの酸付加塩もしくはそれらと金属化合物との錯体が含まれる。これらは、旭電化からアデカスタブLA−57、同LA−52、同LA−67、同LA−62、同LA−77として、またチバ・スペシャリティーケミカルズ社からTINUVIN 765、同144として市販されている。
【0050】
これらのヒンダードアミン系光安定化剤は、それぞれ単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらヒンダードアミン系光安定化剤は、勿論、可塑剤、安定化剤、紫外線吸収剤等の添加剤と併用してもよいし、これら添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。その配合量は、本発明の効果を損なわない範囲で決定され、一般的には、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.01〜20質量部程度であり、好ましくは0.02〜15質量部程度、特に好ましくは0.05〜10質量部程度である。光安定化剤は、熱可塑性樹脂組成物の溶融物を調製するいずれの段階で添加してもよく、例えば、溶融物調製工程の最後に添加してもよい。
【0051】
可塑剤:
本発明のフィルムは、可塑剤を含有していてもよい。可塑剤の添加は、機械的性質向上、柔軟性を付与、耐吸水性付与、水分透過率低減等のフィルム改質の観点において好ましい。また、本発明のフィルムを溶融製膜法で製造する場合は、用いる熱可塑性樹脂のガラス転移温度よりも、可塑剤の添加によりフィルム構成材料の溶融温度を低下させることを目的として、または無添加の熱可塑性樹脂よりも同じ加熱温度において粘度を低下させることを目的として、添加されるであろう。本発明のフィルムには、例えばリン酸エステル誘導体、カルボン酸エステル誘導体から選択される可塑剤が好ましく用いられる。また、特開2003−12859号公報に記載の重量平均分子量が500〜10000であるエチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマー、アクリル系ポリマー、芳香環を側鎖に有するアクリル系ポリマーまたはシクロヘキシル基を側鎖に有するアクリル系ポリマーなども好ましく用いられる。
【0052】
微粒子:
本発明のフィルムは、微粒子を含有していてもよい。微粒子としては、無機化合物の微粒子や有機化合物の微粒子が挙げられ、いずれでもよい。本発明における熱可塑性樹脂に含まれる微粒子の平均一次粒子サイズは、ヘイズを低く抑えるという観点から5nm〜3μmであることが好ましく、5nm〜2.5μmであることがより好ましく、10nm〜2.0μmであることがさらに好ましい。ここで、微粒子の平均一次粒子サイズは、熱可塑性樹脂を透過型電子顕微鏡(倍率50万〜100万倍)で観察し、粒子100個の一次粒子サイズの平均値を求めることにより決定する。微粒子の添加量は、熱可塑性樹脂に対して0.005〜1.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.8質量%であり、さらに好ましくは0.02〜0.4質量%である。
【0053】
光学調整剤:
本発明のフィルムは、光学調整剤を含有していてもよい。光学調整剤としてはレターデーション調整剤を挙げることができ、例えば、特開2001−166144号、特開2003−344655号、特開2003−248117号、特開2003−66230号各公報記載のものを使用することができる。光学調整剤を添加することによって、面内のレターデーション(Re)、厚み方向のレターデーション(Rth)を制御することができる。好ましい添加量は0〜10質量%であり、より好ましくは0〜8質量%、さらに好ましくは0〜6質量%である。
【0054】
[フィルムの製造方法]
本発明のフィルムの製造方法(以下、本発明の製造方法とも言う)の第一の態様は、挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に熱可塑性樹脂を含有する組成物の溶融物を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形する挟圧工程(該挟圧工程では、前記第一挟圧面の移動速度を前記第二挟圧面の移動速度よりも速くする)と、フィルム状の溶融物を固化してフィルムを得る工程と、得られたフィルムを2本のロールからなる第1のニップロールの間と、2本のロールからなる第2のニップロールの間を順に通過させて、第2のニップロールの周速度を第1のニップロールの周速度よりも速くしてフィルム搬送方向に延伸する縦延伸工程(該縦延伸工程において前記第1のニップロールまたは前記第2のニップロールの少なくとも一方を、ニップロールを構成する2本のロールの各表面温度間に0.1℃〜10℃の温度差を付与するように制御する)とを含むことを特徴とする。
また、本発明のフィルムの製造方法の第二の態様は、挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に熱可塑性樹脂を含有する組成物の溶融物を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形する挟圧工程(該挟圧工程では、前記第一挟圧面の移動速度を前記第二挟圧面の移動速度よりも速くする)と、フィルム状の溶融物を固化してフィルムを得る工程と、得られたフィルムを2本のロールからなる第1のニップロールの間と、2本のロールからなる第2のニップロールの間を順に通過させて、第2のニップロールの周速度を第1のニップロールの周速度よりも速くしてフィルム搬送方向に延伸する縦延伸工程(該縦延伸工程において、前記第1のニップロールまたは前記第2のニップロールの少なくとも一方を、ニップロールを構成する2本のロールの各周速度間に0.01〜10%の周速差を付与するように制御する)とを含むことを特徴とする。
【0055】
このように本発明の製造方法は、タッチロールの周速差により厚み方向に傾斜構造を作る挟圧工程によって発生した横ダンを解消するために、特別な縦延伸を行うことを特徴としている。ここで、このような傾斜構造は、液晶表示装置の視野角補償を行う上で有効な方法であるが、挟圧工程では溶融状態の柔らかい樹脂(メルト)に表裏から移動速度の異なる挟圧面で擦るため、表面に挟圧装置を構成する挟圧面との相互作用に由来する横ダンが発生する。
このような横ダンに対し、横ダンと直交方向のMD方向に縦延伸することにより横ダンを解消することができる。しかし、通常の縦延伸では、周速差製膜(ズリ製膜)でせっかく形成した傾斜構造が消失してしまう。いかなる理論に拘泥するものでもないが、この現象が生じる原因としては以下の機構が考えられる。まず、一般的な周速差製膜では、その挟圧工程において2つのロールを用いた場合、一対のロール(タッチロールとチルロール)でメルトが固定されており、幅方向全域にわたって均一なせん断応力(ズリ)がメルトに掛かりやすいため、γの幅方向分布(すなわち傾斜軸と直交方向分布)が小さい。すなわち、均一に傾斜構造が形成されている。このような周速差製膜したフィルム(原反)を縦延伸すると、縦延伸(MD方向への伸張)に伴い物質収支を合わせるためフィルム幅とフィルム厚みの収縮が生じる。これはフィルムの伸張が2対のニップロール間で行われるためフィルムを固定するものが無く、伸張と同時にその直交方向即ち幅方向、厚み方向の収縮が発生するためである。特にフィルム厚みの収縮が生じると、フィルム厚み方向に圧縮する力が働くため、周速差製膜で得られた傾斜構造が押しつぶされ、原反のγが減少する。この時、フィルム幅方向で前記圧縮応力も発生するため、フィルムにかかる幅方向の延伸応力に分布が生じやすく、γに幅方向分布が発生する。より詳しくは、縦延伸では伸張に伴う物質収支を合わせるため、収縮応力がフィルム幅方向およびフィルム厚み方向に発生するが、フィルム幅方向に中央部、両端部とフィルムを3分割して考えると、中央部では両側がフィルム端部と接触しているため前記フィルム中央部は両方の端部がともに固定端となり、収縮応力の綱引きとなる。一方、両端部では片端しかフィルム中央部と接しておらず、片方の端部は固定端であるが、もう一方は自由端となるため収縮応力は小さくなる。そのため、両端部と中央部とで収縮応力の差が生じ、これが幅方向のむらとなる。これが液晶表示板で表示むらを発現する原因と考えられる。
これに対し本発明では、特別な条件下で縦延伸を行うことにより、原反の傾斜構造(幅方向の分布が小さい)を維持したまま、横ダンを解消することを従来の方法と異なる特徴としている。
以下、本発明のフィルムの製造方法(以下、本発明の製造方法ともいう)について詳細に説明する。
【0056】
前記第一挟圧面と第二挟圧面とで速度の異なる挟圧装置としては、例えば互いに周速が異なる2つのロールの組合せや、特開2000−219752号公報に記載の互いに速度の異なるロールとタッチベルトの組合せ(片面ベルト方式)や、ベルトとベルトの組合せ(両面ベルト方式)等が挙げられる。この中でも、挟圧時に圧力を均一にかけられ、傾斜構造をより均一化できることから、互いに周速が異なる2つのロールであることが好ましい。ロール圧力は、圧力測定フィルム(富士フイルム社製 (中圧用)プレスケール等)を2つのロールに通すことで測定することが出来る。
【0057】
<熱可塑性樹脂組成物の溶融物の供給>
本発明の製造方法では、まず、熱可塑性樹脂を含有する組成物(「熱可塑性樹脂組成物」という場合がある)を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形する工程(以下、挟圧工程とも言う)を含むが、前記挟圧工程において、熱可塑性樹脂を含有する組成物の溶融物(メルト)を供給する手段に特に制限はない。例えば、メルトの具体的な供給手段として、熱可塑性樹脂組成物を溶融してフィルム状に押出す押出機を用いる態様でもよく、押出機およびダイを用いる態様でもよく、熱可塑性樹脂を一度固化してフィルム状とした後に加熱手段により溶融してメルトを形成し、製膜工程に供給する態様でもよい。
本発明のフィルムの製造方法は、前記熱可塑性樹脂を含有する組成物(以下、熱可塑性樹脂組成物とも言う)をダイから溶融押出しする工程と、溶融押出しされた溶融物を前記第一挟圧面と前記第二挟圧面の間を通過させる工程と、を含むことが、より得られるフィルムの光学特性のムラを抑える観点から好ましい。
前記熱可塑性樹脂組成物を溶融押出しする場合、溶融押出しをする前に、熱可塑性樹脂組成物をペレット化するのが好ましい。市販品の熱可塑性樹脂(例えば、TOPAS#6013、タフロンMD1500、デルペット980N、DayLark D332等)は、ペレット化されている場合もあるが、ペレット化されていない場合は以下の方法を用いることができる。前記熱可塑性樹脂としては本発明のフィルムに含まれる熱可塑性樹脂として説明したものを用いることができ、好ましい範囲も同様である。
前記熱可塑性樹脂組成物を乾燥した後、2軸混練押出機を用い150℃〜300℃で溶融後、ヌードル状に押出したものを空気中あるいは水中で固化し裁断することにより作製できる。また、押出機による溶融後、水中に口金より直接押出しながらカットするアンダーウオーターカット法等によりペレット化することもできる。ペレット化に利用される押出機としては、単軸スクリュー押出機、非かみ合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、かみ合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、かみ合い型同方向回転二軸スクリュー押出機などを用いることができる。押出機の回転数は10rpm〜1000rpmが好ましく、より好ましくは20rpm〜700rpmである。押出滞留時間は10秒〜10分、より好ましくは20秒〜5分である。
ペレットの大きさについては特に制限はないが、一般的には10mm3〜1000mm3程度であり、より好ましくは30mm3〜500mm3程度である。
【0058】
溶融押出し前に、ペレット中の水分を減少させることが好ましい。好ましい乾燥温度は40〜200℃、さらに好ましくは60〜150℃である。これにより含水率を1.0質量%以下にすることが好ましく、0.1質量%以下にすることがさらに好ましい。乾燥は空気中で行ってもよく、窒素中で行ってもよく、真空中で行ってもよい。
【0059】
押出機を用いて溶融押出しを行う場合、次に、乾燥したペレットを、押出機の供給口を介してシリンダー内に供給し、混練および溶融させる。シリンダー内は、例えば、供給口側から順に、供給部、圧縮部、計量部とで構成されることが好ましい。押出機のスクリュー圧縮比は1.5〜4.5が好ましく、シリンダー内径に対するシリンダー長さの比(L/D)は20〜70が好ましく、シリンダー内径は30mm〜150mmが好ましい。前記熱可塑性樹脂組成物を供給する供給手段(例えばダイ)の押出し温度(以下、吐出温度とも言う)は、熱可塑性樹脂の溶融温度に応じて決定されるが、一般的には、190〜300℃程度が好ましい。さらに残存酸素による溶融樹脂の酸化を防止するため、押出機内を不活性(窒素等)気流中、あるいはベント付き押出機を用い真空排気しながら実施するのも好ましい。
【0060】
熱可塑性樹脂組成物中の異物濾過のためブレーカープレート式の濾過やリーフ型ディスクフィルターを組み込んだ濾過装置を設けることが好ましい。濾過は1段で行ってもよく、多段濾過で行ってもよい。濾過精度は15μm〜3μmが好ましく、さらに好ましくは10μm〜3μmである。濾材としてはステンレス鋼を用いることが望ましい。濾材の構成は、線材を編んだもの、金属繊維もしくは金属粉末を焼結したもの(焼結濾材)が使用でき、中でも焼結濾材が好ましい。
【0061】
吐出量の変動を減少させ厚み精度を向上させるために、押出機と前記熱可塑性樹脂組成物を供給する供給手段(例えばダイ)の間にギアポンプを設けることが好ましい。これにより前記熱可塑性樹脂組成物を供給する供給手段(例えばダイ)内の樹脂圧力変動巾を±1%以内にすることができる。ギアポンプによる定量供給性能を向上させるために、スクリューの回転数を変化させて、ギアポンプ前の圧力を一定に制御する方法も用いることができる。
【0062】
前記の如く構成された押出機によって溶融され、必要に応じ濾過機、ギアポンプを経由して溶融樹脂が前記熱可塑性樹脂組成物を供給する供給手段(例えばダイ)に連続的に送られる。前記ダイはTダイ、フィッシュテールダイ、ハンガーコートダイの何れのタイプでも構わない。また前記熱可塑性樹脂組成物を供給する供給手段(例えばダイ)の直前に樹脂温度の均一性アップのためスタティックミキサーを入れることも好ましい。
【0063】
前記供給手段がダイである場合、ダイ出口部分のクリアランス(以下、リップギャップとも言う)は一般的にフィルム厚みの1.0〜30倍がよく、好ましくは5.0〜20倍である。具体的には、0.04〜3mmであることが好ましく、0.2〜2mmであることがより好ましく、0.4〜1.5mmであることが特に好ましい。本発明の製造方法において、ダイリップの先端の曲率半径は特に制限はなく、公知のダイを用いることができる。
【0064】
前記ダイは5〜50mm間隔で厚み調整可能であることが好ましい。また下流のフィルム厚み、厚み偏差を計算し、その結果をダイの厚み調整にフィードバックさせる自動厚み調整ダイも有効である。
単層製膜装置以外にも、多層製膜装置を用いて製造も可能である。
このようにして、樹脂が供給口から押出機に入ってから前記熱可塑性樹脂組成物を供給する供給手段(例えばダイ)から出るまでの滞留時間は3分〜40分が好ましく、さらに好ましくは4分〜30分である。
【0065】
<挟圧工程>
次に、挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に、供給された熱可塑性樹脂組成物の溶融物を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形し、冷却固化して、フィルムを得る。この際、第一挟圧面と第二挟圧面のうち、いずれか一方の面と溶融物が先に剥離し、その後もう一方の面と溶融物が剥離することが生産性の安定化の観点から好ましい。本発明の製造方法において第一挟圧面の移動速度は前記第二挟圧面の移動速度よりも速いが、先に剥離する側の面は、第一挟圧面であっても第二挟圧面であってもよいが、剥離ダンを抑制する観点から、先に剥離する側の面は、第一挟圧面(移動速度が速い挟圧面)であることが好ましい。
【0066】
(移動速度比)
本発明の製造方法では、前記挟圧工程において、下記式(III)で定義される前記挟圧装置の第一挟圧面と第二挟圧面の移動速度差が0.5〜20%となるように制御し、溶融樹脂が挟圧装置を通過する際にせん断応力を付与することが好ましい。
式(III)
移動速度差(%)=100×{(第一挟圧面の移動速度)−(第二挟圧面の移動速度)}
/(第一挟圧面の移動速度)
挟圧装置の挟圧面どうしの移動速度差は1%〜15%であることがより好ましく、さらに好ましくは2%〜10%である。
移動速度差が前記好ましい範囲であれば上記Re[0°]、γ、Rthを好ましい範囲に制御することが達成でき好ましい。なお、挟圧装置を用いた周速差製膜ではメルトが全幅に渡り均等に2つの挟圧面によって挟みこまれているため、得られるフィルムの光学特性の幅方向分布が小さいのが特徴である。
さらに移動速度差が20%以下であれば、挟圧装置の挟圧面とメルトとの間でスリップが発生しにくく、横ダンが発生しにくくなるため好ましい。
【0067】
本発明の製造方法では、溶融押出しされた溶融物を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に連続的に挟圧してフィルム状に成形する従来の方法に加え、前記挟圧工程において、前記溶融物を15〜500MPaの圧力で挟圧することが好ましく、より容易に本発明の光学特性を有するフィルムを作製することができる。挟圧工程における圧力は、より好ましくは30〜500MPa、特に好ましくは35〜300MPa、さらに好ましくは40〜200MPaである。15MPa以上であれば、メルトを押さえつける力が十分に強く、メルトにせん断応力を加えてズリ効果を充分与えることができ、上述のような光学特性を達成できる。また15MPa以上であれば、挟圧装置の挟圧面の押し付けが十分にできるため、周速差を付与した際にメルトと挟圧装置の挟圧面との間でスリップが発生しにくく、横ダンが発生しにくい。一方、500MPa以下の圧力であれば、メルトに与える力が大きすぎず、メルトが変形して横ダンを形成することがないため好ましい。
【0068】
(吐出温度)
本発明の製造方法では、吐出温度(供給手段の出口の樹脂温度)は、樹脂の成形性向上と劣化抑制の観点から、Tg+50〜Tg+200℃であることが好ましく、Tg+70〜Tg+180℃であることがより好ましく、Tg+90〜Tg+150℃であることが特に好ましい。すなわち、Tg+50℃以上であれば、樹脂の粘度が十分低くなるため成形性が良好となり、Tg+200℃以下であれば、樹脂が劣化しにくい。
【0069】
(エアーギャップ)
本発明の製造方法では、例えばダイなどの供給手段から熱可塑性樹脂組成物を挟圧装置に供給する場合、エアーギャップ(供給手段の出口から挟圧装置の溶融物着地点までの距離)は、エアーギャップ間におけるメルトの保温の観点から、可能な限り近接することが好ましく、具体的には10〜300mmであることが好ましく、より好ましくは、20〜250mm、特に好ましくは、30〜200mmである。
【0070】
(ライン速度)
本発明の製造方法では、製膜速度は10m/分〜100m/分が好ましく、より好ましくは15m/分〜80m/分、さらに好ましくは20m/分〜60m/分である。10m/分以上であれば挟圧工程に使用する挟圧装置の挟圧面の駆動むらの影響が出にくく、横ダン発生の原因を抑えることができる。一方100m/分以下であればメルトやフィルムの変形速度が大きくなりすぎず、メルトやフィルムの変形が製膜速度に追いつくため、これに起因するむらが発生せず、横ダン発生の原因を抑えることができる。
また、ライン速度(製膜速度)が10m/分以上であると、エアーギャップ中でのメルトの冷却を抑制でき、メルトの温度が高い状態で、挟圧装置によって、より均一なせん断変形を付与できる。なお、前記ライン速度とは、挟圧装置間を溶融物が通過する速度、および搬送装置におけるフィルム搬送速度を表す。
【0071】
(製膜幅)
本発明の製造方法では、フィルム状の溶融物の幅は特に制限はなく、例えば200〜2000mmとすることができる。
一方、延伸後のフィルム幅は1m〜4mが好ましく、より好ましくは1.2m〜3.5m、さらに好ましくは1.4m〜3mである。延伸後のフィルム幅が1m以上であれば、挟圧工程に使用する挟圧装置の挟圧面を十分重いものを採用することができ、押出機の振動の影響を受けにくくしてこれに由来する横ダンの発生を抑えることができ、好ましい。延伸後のフィルム幅が4m以下であれば、前記挟圧装置の挟圧面にたわみが発生しにくく、挟圧装置の挟圧面がメルトに十分均質に接触でき、これに由来する横ダン発生を抑えることができ、好ましい。
【0072】
(2つのロールを用いたキャスト)
前記挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に熱可塑性樹脂の溶融物を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形する方法の中でも、2つのロール(例えば、タッチロール(第1ロール)およびチルロール(第2ロール))間を通過させることが好ましい。なお、本明細書では、前記溶融物を搬送するキャスティングロールを複数有している場合、最上流の前記熱可塑性樹脂組成物供給手段(例えば、ダイ)に最も近いキャスティングロールのことをチルロールともいう。以下、2つのロールを用いた本発明の製造方法の好ましい態様を説明する。
【0073】
本発明のフィルムの製造方法では、前記供給手段から押し出された溶融物の着地点に特に制限はなく、該供給手段から押出されたメルトの着地点と、タッチロールとチルロールとが最も接近する部分における隙間の中点を通る鉛直線との距離がゼロであっても、ずれていてもよい。前記メルトの着地点とは、供給手段から押し出されたメルトが初めてタッチロールあるいはチルロールに接触(着地)する地点を指す。また前記タッチロールとチルロールの隙間の中点とは、タッチロールとチルロールの隙間が最も狭くなった所のタッチロール表面とチルロール表面の中点を指す。
【0074】
前記2つのロール(例えば、タッチロールやキャスティングロール)の表面は、算術平均高さRaが100nm以下であることが好ましく、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは25nm以下である。
【0075】
本発明の製造方法では、前記2つのロールのそれぞれの横幅は特に制限はなく、フィルム状の溶融物の幅に対応して、自由に変更して採用することができる。
【0076】
互いに異なる周速度で回転している2つのロール間のロール圧力は15〜500MPaであることが好ましく、より好ましいロール圧力は、30〜500MPaであり、特に好ましくは35〜300MPaであり、さらに好ましくは40〜200MPaである。
【0077】
本発明の製造方法では、前記範囲のロール圧力を加圧するために、シリンダー設定値を適宜変更することとなる。前記シリンダー設定値は、用いる樹脂材料や2つのロールの材質によっても異なるが、例えば、フィルム状の溶融物の実効幅が200mmの場合、2〜100KNであることが好ましく、3〜50KNであることがより好ましく、3〜25KNであることが特に好ましい。
【0078】
本発明の製造方法では、前記範囲のロール圧力を加圧するために、ロールのショア硬さが45HS以上のロールを使用することが好ましい。好ましい前記2つのロールのショア硬さは50HS以上であり、さらに好ましくは60〜90HSである。
ショア硬さは、JIS Z 2246の方法を用いて、ロール幅方向に5点および周方向に5点測定した値の平均値から求めることができる。
【0079】
前記2つのロールの材質は、金属であることが前記ショア硬さを達成する観点から好ましく、より好ましくはステンレスであり、表面をメッキ処理されたロールも好ましい。また、2つのロールの材質は金属であれば、表面の凹凸が小さく、フィルムの表面に傷が付きにくいため、好ましい。一方、ゴムロールやゴムでライニングした金属ロールは、前記ロール圧力を達成できれば特に制限なく用いることができる。
前記タッチロールについては、例えば特開平11−314263号公報、特開2002−36332号公報、特開平11−235747号公報、国際公開第97/28950号パンフレット、特開2004−216717号公報、特開2003−145609号公報記載のものを利用できる。
【0080】
本発明の製造方法では、前記挟圧装置を構成する2つのロールの一方に、外筒厚み6〜45mmの金属製タッチロールを用いることが好ましい。より好ましくは10mm〜40mm、さらに好ましくは15mm〜35mmの金属製ロールである。金属製外筒厚みが6mm以上であればロールの剛性が十分であり、タッチロールがチルロールに沿って変形することはなく、両ロールの接触面積が増加することもないため、横ダンの発生を抑えることができる。なお、タッチロールとチルロールの接触面積が大きくなると、この間に挟まれているメルトと金属ロールの接触面積も増加し、摩擦が増加する。この結果メルト表面の変形が大きくなりすぎ横ダンが発生する。表面をゴム等で被服した金属ロールも変形し易く同様に横ダンが発生し易い。また、金属製外筒厚みが45mm以下であればタッチロールの剛性が強くなりすぎることはなく、チルロールに沿って適度に変形するため、横ダンの発生を抑えることができる上、得られるフィルムのRe [0°]、γおよびRthが前記好ましい範囲を上回りにくくなり、好ましい。なお、タッチロールとチルロールの接触面積は小さくなると、タッチロールとチルロールを接触させるための面圧がそこに集中する。この結果この間に挟まれたメルトに局所的に大きな力が掛かり、そこでメルトが変形し横ダンの原因となる。さらに過大な面圧のためズリが掛かりやすく、Re [0°]、γおよびRthが本発明の範囲を上回りやすい。
【0081】
さらに、本発明の製造方法では、フィルム状の溶融物を通過させる2つのロールの周速差を制御することで、溶融樹脂が2つのロールを通過する際にせん断応力を付与し、本発明のフィルムを製造することが好ましい。なおここでいう周速差とはタッチロール、それと対峙する冷却(チル)ロールの周速度について下記式で表される。
周速差(%)=100×[(速い方のロールの周速度)−(遅い方のロールの周速度)]
/(速い方のロールの周速度)
2つのロールの周速差の好ましい範囲は、前記挟圧装置における移動速度差における好ましい範囲と同様である。
本発明のフィルムを得るためには、前記2つのロールの速度はどちらが速くても構わないが、タッチロールが遅い場合、タッチロール側にバンク(溶融物の余剰分がロール上へ滞留し、形成された滞留物)が形成される。タッチロールは、溶融物が接触している時間が短いため、タッチロール側に形成されたバンクは、十分に冷却することができず、剥離ダンが発生し、面状故障の原因となり易い。よって、遅いロールがチルロール(第2ロール)であり、速いロールがタッチロール(第1ロール)であることが好ましい。
【0082】
さらに、本発明の製造方法では、前記2つのロールとして、それぞれ直径の大きなロールを用いるのが好ましく、具体的には、直径が200〜1500mm、より好ましくは、300mm〜1000mm、特に好ましくは350mm〜800mm、より特に好ましくは350〜600mm、よりさらに好ましくは350〜500mmの2つのロールを使用するのが好ましい。直径の大きなロールを用いると、フィルム状の溶融物とロールの接触面積が広くなり、せん断がかかる時間がより長くなるため、γの大きなフィルムを、しかもRe[0°]のバラツキ、γの遅相軸方向の分布(バラツキ)を抑制しつつ製造することができる。なお、本発明の製造方法では、前記2つのロールの直径は等しくても、異なっていてもよい。
【0083】
本発明の製造方法では、前記2つのロールが、互いに異なる周速で駆動される。前記2つのロールは、連れ周り駆動でも独立駆動でもよいが、Re[0°]のバラツキ、γの遅相軸方向分布(バラツキ)を抑制するためには、独立駆動であることが好ましい。
【0084】
さらにγの発現量を大きくするために、2つのロールの表面温度に差をつけてもよい。好ましい温度差は5℃〜80℃であり、より好ましくは20℃〜80℃、さらに好ましくは20℃〜60℃である。その際、2つのロールの温度は、樹脂のガラス転移温度Tgを用いて、はTg−70℃〜Tg+20℃、より好ましくはTg−50℃〜Tg+10℃、さらに好ましくはTg−40℃〜Tg+5℃に設定する。このような温度制御は、タッチロール内部に温調した液体、気体を通すことで達成することができる。
なお、熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、走査型示差熱量計(DSC)を用いて、測定パンに樹脂をいれ、これを窒素気流中で、10℃/分で30℃から300℃まで昇温した後(1st-run)、30℃まで−10℃/分で冷却し、再度10℃/分で30℃から300℃まで昇温した(2nd-run)。2nd-runでベースラインが低温側から偏奇し始める温度をガラス転移温度(Tg)として、求めることができる。
【0085】
また、本発明の製造方法では、供給手段から供給された熱可塑性樹脂組成物の溶融物を、2つのロールの少なくとも一方に接触する直前まで、溶融物を保温し、幅方向の温度分布を軽減するのが好ましく、具体的には、幅方向の温度分布を5℃以内にするのが好ましい。温度分布を軽減するためには、前記エアーギャップの少なくとも一部に、断熱機能または熱反射機能のある部材を配置し、該溶融物を外気から遮蔽するのが好ましい。この様に、断熱部材を通路に配置して、外気から遮蔽することで、外部環境、例えば風、の影響を抑えることができ、フィルムの幅方向の温度分布を抑制することができる。フィルム状溶融物の幅方向の温度分布は、±3℃以内がより好ましく、±1℃以内がよりさらに好ましい。
さらに、前記遮蔽部材を用いると、フィルム状溶融物の温度が高い状態、すなわち、溶融粘度が低い状態で、ロール間を通過させることができるため、本発明のフィルムを作成しやすい効果もある。
なお、フィルム状の溶融物の温度分布は、接触式温度計や非接触式温度計によって測定することができる。
【0086】
前記遮蔽部材は、例えば、2つのロールの両端部よりも内側で、且つ熱可塑性樹脂組成物の供給手段(例えば、ダイ)の幅方向側面と隙間を介して設けられる。遮蔽板は、供給手段の側面に直接固定されてもよいし、支持部材によって支持固定されてもよい。遮蔽部材の幅は、供給手段の放熱による上昇気流を効率的に遮断できるように、例えば、供給手段側面の幅と同等かそれ以上であるのが好ましい。
遮蔽部材とフィルム状の溶融物の幅方向端部との隙間は、ロールの表面に沿って流れ込む上昇気流を効率よく遮蔽する上で狭く形成されることが好ましく、フィルム状溶融物の幅方向端部から50mm程度であることがより好ましい。なお、供給手段の側面と遮蔽部材との隙間は、必ずしも設ける必要はないが、遮蔽部材に囲まれた空間内の気流を排出できる程度、例えば10mm以下に形成されることが好ましい。
また、断熱機能および/または熱反射機能を持つ材料として、遮風性や保温性に優れたものが好ましく、例えば、ステンレス等の金属板が好ましく使用できる。
【0087】
よりRe[0°]のバラツキ、γの傾斜軸と直交方向分布(バラツキ)をなくす方法として、フィルム状の溶融物がキャスティングロールに接触する際の密着性を上げる方法がある。具体的には、静電印加法、エアナイフ法、エアーチャンバー法、バキュームノズル法などの方法を組み合わせて、密着性を向上させることができる。このような密着向上法は、フィルム状の溶融物の全面に実施してもよく、一部に実施してもよい。
【0088】
このようにして製膜した後、フィルム状の溶融物を通過させる2つのロール(例えばキャスティングロールとタッチロール)以外に、キャスティングロールを1本以上使用して、フィルムを冷却するのが好ましい。タッチロールは、通常は最上流側(熱可塑性樹脂組成物の供給手段、例えばダイ、に近い方)の最初のキャスティングロールにタッチさせるように配置する。一般的には3本の冷却ロールを用いることが比較的よく行われているが、この限りではない。複数本あるキャスティングロールの間隔は、面間で0.3mm〜300mmが好ましく、より好ましくは、1mm〜100mm、さらに好ましくは3mm〜30mmである。
【0089】
さらに加工したフィルムの両端をトリミングすることが好ましい。トリミングで切り落とした部分は破砕し、再度原料として使用してもよい。また片端あるいは両端に厚みだし加工(ナーリング処理)を行うことも好ましい。厚みだし加工による凹凸の高さは1μm〜50μmが好ましく、より好ましくは3μm〜20μmである。厚みだし加工は両面に凸になるようにしても、片面に凸になるようにしても構わない。厚みだし加工の幅は1mm〜50mmが好ましく、より好ましくは3mm〜30mmである。厚みだし加工は室温〜300℃で実施できる。
【0090】
巻き取る前に、片面もしくは両面に、ラミフィルムを付けることも好ましい。ラミフィルムの厚みは5μm〜100μmが好ましく、10μm〜50μmがより好ましい。材質はポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン等、特に限定されない。
【0091】
巻き取り張力は、好ましくは2kg/m幅〜50kg/m幅であり、より好ましくは5kg/m幅〜30kg/m幅である。
【0092】
本発明の製造方法で得られるフィルムの未延伸時の膜厚は、100μm以下であることが好ましい。液晶ディスプレイ等に用いる場合は、薄型化の観点からは、80μm以下であることがより好ましく、60μm以下であることが特に好ましく、40μm以下であることがより特に好ましい。
【0093】
<延伸、緩和処理>
上記挟圧工程によりフィルムを製膜した後、本発明の製造方法では、得られたフィルムを2本のロールからなる第1のニップロールの間と、2本のロールからなる第2のニップロールの間を順に通過させて、第2のニップロールの周速度を第1のニップロールの周速度よりも速くしてフィルム搬送方向に延伸する縦延伸工程を行う。
また、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、その他の延伸および/または緩和処理を行ってもよい。例えば、以下の(a)〜(f)の組合せで各工程を実施することができる。
(a) 縦延伸
(b) 縦延伸→緩和処理
(c) 縦(横)延伸→横(縦)延伸
(d) 縦延伸→縦延伸
(e) 縦(横)延伸→横(縦)延伸→緩和処理
(f) 横延伸→緩和処理→縦延伸→緩和処理
これらの中で特に好ましいのは、(a)の工程である。
【0094】
(縦延伸)
縦延伸は、2対のロール間を加熱しながら出口側(下流側)の第2のニップロール周速度を、入口側(上流側)の第1のニップロールの周速度より速くすることで達成できる。この際、両ニップロール間の間隔(L)と延伸前のフィルム幅(W)を変えることで厚み方向のレターデーションの発現性を変えることができる。L/W(縦横比と称する)が2〜50以下(長スパン延伸)ではRthを小さいフィルムを作成し易く、L/Wが0.01〜0.3(短スパン)ではRthが大きいフィルムを作成できる。本実施の形態では長スパン延伸、短スパン延伸、これらの間の領域(中間延伸=L/Wが0.3を超え2以下)のどれを使用してもよいが、配向角を小さくできる長スパン延伸、短スパン延伸が好ましい。さらに高Rthを狙う場合は短スパン延伸、低Rthを狙う場合は長スパン延伸と区別して使用することがより好ましい。
2本のロールからなる前記第1のニップロールおよび前記第2のニップロールは、それを構成する2本のロールの配置に特に制限はないが、フィルムを安定して搬送しながら縦延伸を行う観点から、鉛直方向(上下方向)に2本のロールが配置され、それらの間を略水平にフィルム保持しながら搬送することが好ましい。
【0095】
本発明の製造方法では、以下の第1の態様または第2の態様で縦延伸工程を実施することを特徴とする。
第1の態様:縦延伸のニップロール(例えば、対の上下のロール)に温度差を付与
本発明の製造方法の第1の態様は、縦延伸工程において前記第1のニップロールまたは前記第2のニップロールの少なくとも一方を、ニップロールを構成する2本のロール(例えば、上下に配置された2本のロール)の各表面温度間に0.1℃〜10℃の温度差を付与するように制御することを特徴とする。より好ましくは0.2℃〜7℃、さらに好ましくは0.3℃〜5℃の温度差を付与する。これにより延伸するフィルムの表裏に温度差を付与でき、フィルム表裏に弾性率の差を与えることができる。これにより、フィルムの表面と裏面に配向差を与えることができ、僅かなズリ(せん断応力)を与えることになる。このように僅かなズリを与えながら縦延伸することで、縦延伸に伴うγの減少を補うことができ、未延伸フィルムの持つ均一な傾斜構造の幅方向分布、すなわち遅相軸方向の均一なγの分布を維持できる。この温度差が0.1℃以上であれば横ダンが十分解消される上、γの幅方向分布(傾斜軸と直交方向分布)も大きくなりにくい傾向にあり好ましい。一方、この温度差が10℃以下であれば、2本のロールの各表面温度間に温度差を付与しているニップロール上でスリップが発生しない程度であり、新たな横ダンの発生や、γの幅方向分布(傾斜軸と直交方向分布)の増大を抑制できるため好ましい。
このような温度差を付与する際は、前記挟圧工程において第一挟圧面(高速側の挟圧面)に接していたフィルム面側のロールの温度を高温にすることが、せん断応力のかかる方向を挟圧工程と縦延伸工程で揃える観点から好ましい。
また、このような2本のロールの温度制御の方法としては特に制限はなく、公知の方法で制御することができ、独立して制御することが好ましい。
【0096】
第2の態様:縦延伸のニップロール(例えば、対の上下のロール)に周速差を付与
本発明の製造方法の第2の態様は、縦延伸工程において、前記第1のニップロールまたは前記第2のニップロールの少なくとも一方を、ニップロールを構成する2本のロール(例えば、上下に配置されえた2本のロール)の各周速度間に0.01〜10%の周速差を付与するように制御することを特徴とする。前記周速差は、より好ましくは0.03%〜7%、さらに好ましくは0.05%〜5%の周速を与える。これにより、上記第1の態様と同様にフィルムの表裏にズリ(せん断応力)の効果を与え、γの減少を補い、挟圧工程後の未延伸フィルムの高い傾斜構造の均一性を保つことができる。この周速差が0.01%以上であれば横ダンが十分解消される上、γの幅方向分布(傾斜軸と直交方向分布)も大きくなりにくい傾向にあり好ましい。一方、この周速差が10%以下であれば、2本のロールの各表面温度間に温度差を付与しているニップロール上でスリップが発生しない程度であり、新たな横ダンの発生や、γの幅方向分布(傾斜軸と直交方向分布)の増大を抑制できるため好ましい。
このような周速差を付与する際は、前記挟圧工程において第一挟圧面(高速側の挟圧面)に接していたフィルム面側のロールの周速度を速くするのが、せん断応力のかかる方向を挟圧工程と縦延伸工程で揃える観点から好ましい。
また、このような2本のロールの周速度制御の方法としては特に制限はなく、公知の方法で制御することができ、独立して制御することが好ましい。
【0097】
これら本発明の第1の態様と第2の態様は単独で実施してもよいが、組み合わせて同時に実施することで相乗効果が得られ、より好ましい。また、その場合、第1の態様を実施するニップロールと、第2の態様を実施するニップロールが同じニップロールであっても、別のニップロールでもよいが、相乗効果をより得る観点から同じニップロールにおいて第1の態様および第2の態様を実施することが好ましい。
上流側の第1のニップロールと下流側の第2のニップロールの両方で温度差をつける場合、第1のニップロールにおいて付与する温度差の大きさと、第2のニップロールにおいて付与する温度差の大きさはどちらが大きくても構わないが、好ましくは、第1のニップロールの場合である。
また、上流側の第1のニップロールと下流側の第2のニップロールの両方で周速差をつける場合、第1のニップロールにおいて付与する周速差の大きさと、第2のニップロールにおいて付与する周速差の大きさはどちらが大きくても構わないが、好ましくは、第1のニップロールの場合である。
【0098】
また、前記縦延伸工程には少なくとも2つのニップロールを用いるが、本発明の趣旨に反しない限り、3つ以上のニップロールを用いてもよい。本発明の製造方法では、2つのニップロールを用いる態様が好ましい。
また、前記縦延伸工程は1段階で実施してもよく、多段階で実施してもよい。また、その場合、第1の態様のみを多段階で実施しても、第2の態様のみを多段階で実施しても、第1の態様と第2の態様を組み合わせて多段階で実施してもよい。本発明の製造方法では、1段階で実施することが好ましい。
【0099】
前記縦延伸工程は、2つのニップロールを用いて、1段階で、本発明の第1の態様と第2の態様を同時に組み合わせて両方のニップロールで行うことが特に好ましい。
【0100】
縦延伸の温度は、Tg−20℃〜Tg+80℃が好ましく、より好ましくはTg−10℃〜Tg+50℃、さらに好ましくはTg−5℃〜Tg+30℃である。
【0101】
縦延伸の延伸倍率は1.05倍〜3倍であることが好ましく、より好ましくは1.1倍〜2.6倍、さらに好ましくは1.2倍〜2.3倍である。延伸スパン長(ニップロール間の長さ=L)と延伸前フィルム幅(W)の比(L/W)は0.01〜50が好ましく、より好ましくは0.02〜2、さらに好ましくは0.03〜1である。これらおよび、挟圧工程の組み合わせにより上記Re[0°]、γ、Rthを達成できる。
【0102】
また、好ましいニップロールの直径は30mm〜1500mmが好ましく、より好ましくは80mm〜1000mm、さらに好ましくは150mm〜700mmである。また、ニップロールを構成する2つのロールは直径が等しいことが得られるフィルムの均一化の観点から好ましい。
【0103】
好ましいニップ圧は10kg/cm〜100kg/cmが好ましく、より好ましくは20kg/cm〜80kg/cm、さらに好ましくは25kg/cm〜70kg/cmである。
【0104】
好ましい縦延伸の延伸速度(ニップロールの入口側(延伸前)の速度は5m/分〜100m/分が好ましく、より好ましくは10m/分〜80m/分、さらに好ましくは15m/分〜60m/分である。
【0105】
このようにして縦延伸した後のフィルムの厚みは10μm〜90μmが好ましく、より好ましくは20μm〜80μm、さらに好ましくは25μm〜70μmである。90μm以下であればメルトの弾性が低くなり、タッチロールから剥離する際に大きな力を要さないためこれが横ダンとなることを抑えることができる。また10μm以上であれば曲げ弾性が低下しすぎず、挟圧工程における挟圧面や、延伸工程におけるニップロールにメルトやフィルムが粘着しにくく好ましい。
【0106】
(横延伸)
横延伸はテンターを用い実施することができる。即ちフィルムの幅方向の両端部をクリップで把持し、横方向に拡幅することで延伸する。この時、テンター内に所望の温度の風を送ることで延伸温度を制御できる。延伸温度は、Tg−10℃〜Tg+60℃が好ましく、Tg−5℃〜Tg+45℃がより好ましく、Tg−10℃〜Tg+20℃がさらに好ましい。また、好ましい横延伸倍率は1.2〜3.0倍、より好ましく1.2〜2.5倍、さらに好ましくは1.2〜2.0倍である。
このような延伸の前に予熱、延伸の後に熱固定を行うことで延伸後のRe、Rth分布を小さくし、ボーイングに伴う配向角のばらつきを小さくできる。予熱、熱固定はどちらか一方であってもよいが、両方行うのがより好ましい。これらの予熱、熱固定はクリップで把持して行うのが好ましく、即ち延伸と連続して行うのが好ましい。
予熱は延伸温度より1℃〜50℃程度高い温度で行うことができ、好ましく2℃〜40℃以下、さらに好ましくは3℃〜30℃高くすることが好ましい。好ましい予熱時間は1秒〜10分であり、より好ましくは5秒〜4分、さらに好ましくは10秒〜2分である。予熱の際、テンターの幅はほぼ一定に保つことが好ましい。ここで「ほぼ」とは未延伸フィルムの幅の±10%を指す。
熱固定は延伸温度より1℃〜50℃低い温度で行うことができ、より好ましく2℃〜40℃、さらに好ましくは3℃〜30℃低くすることが好ましい。さらに好ましくは延伸温度以下でかつTg以下にするのが好ましい。好ましい予熱時間は1秒〜10分であり、より好ましくは5秒〜4分、さらに好ましくは10秒〜2分である。熱固定の際、テンターの幅はほぼ一定に保つことが好ましい。ここで「ほぼ」とは延伸終了後のテンター幅の0%(延伸後のテンター幅と同じ幅)〜−10%(延伸後のテンター幅より10%縮める=縮幅)を指す。延伸幅以上に拡幅すると、フィルム中に残留歪が発生しやすく好ましくない。
【0107】
さらに、これらの延伸の後に緩和処理を行うことで寸法安定性を改良できる。熱緩和は製膜後、縦延伸後、横延伸後のいずれか、あるいは両方で行うことが好ましい。緩和処理は延伸後に連続してオンラインで行ってもよく、延伸後巻き取った後、オフラインで行ってもよい。
熱緩和は(Tg−30)℃〜(Tg+30)℃、より好ましく(Tg−30)℃〜(Tg+20)℃、さらに好ましくは(Tg−15)℃〜(Tg+10)℃で、1秒〜10分、より好ましくは5秒〜4分、さらに好ましくは10秒〜2分、0.1kg/m〜20kg/m、より好ましく1kg/m〜16kg/m、さらに好ましくは2kg/m〜12kg/mの張力で搬送しながら実施するのが好ましい。
【0108】
[偏光板]
本発明のフィルムに、少なくとも偏光子(以下、偏光膜ともいう)を積層することで、本発明の偏光板を得ることができる。以下において、本発明の偏光板を説明する。本発明の偏光板の例は、偏光膜の一面に、保護フィルムと視野角補償の2つの機能を目的として作成されたものや、TACなどの保護フィルムの上に積層された複合型偏光板が挙げられる。
【0109】
本発明の偏光板は、本発明のフィルムと偏光子を用いたものであれば、特に構成に制限はない。例えば、本発明の偏光板が、偏光子とその両面を保護する二枚の偏光板保護フィルム(透明ポリマーフィルム)からなる場合において、本発明のフィルムを少なくとも一方の偏光板保護フィルムとして用いることができる。また、本発明の偏光板は、その少なくとも一方の面に、他の部材との貼着のための粘着剤層を有してもよい。また、本発明の偏光板において、本発明のフィルムの表面が凹凸構造であれば、アンチグレア性(防眩性)の機能を有することになる。さらに、本発明の偏光板には、本発明のフィルムの表面にさらに反射防止層(低屈折率層)を積層した本発明の反射防止フィルムや、本発明のフィルムの表面にさらに光学異方性層を積層した本発明の光学補償フィルムを用いることも好ましい。
【0110】
一般に液晶表示装置は二枚の偏光板の間に液晶セルが設けられるため、4枚の偏光板保護フィルムを有する。本発明のフィルムは、4枚の偏光板保護フィルムのいずれに用いてもよいが、本発明のフィルムは、液晶表示装置における液晶セルと偏光板との間に配置される保護フィルムとして、特に有利に用いることができる。
【0111】
本発明の偏光板は、セルロースアシレートフィルム、偏光子および本発明のフィルムがこの順に積層している構成であることがより好ましい。また、セルロースアシレートフィルム、偏光子、本発明のフィルムおよび粘着剤層がこの順に積層している構成もより好ましい。
【0112】
(光学フィルム)
本発明の偏光板の光学フィルムには、本発明のフィルムが用いられる。また、前記フィルムには表面処理をしておくこともできる。表面処理方法としては、例えば、コロナ放電、グロー放電、UV照射、火炎処理等の方法が挙げられる。
【0113】
(セルロースアシレートフィルム)
本発明の偏光板のセルロースアシレートフィルムには、公知の偏光板用のセルロースアシレートフィルムが用いられる。例えば、公知のトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(例えば、富士フィルム(株)製フジタックT−60)などを好ましく用いることができる。また、前記ルロースアシレートフィルムには表面処理をしておくこともできる。表面処理方法としては、例えば、けん化処理などが挙げられる。
【0114】
(偏光子)
前記偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬して延伸したもの等を用いることができる。
【0115】
本発明に用いられる偏光子は、本発明の目的を達成し得るものであれば、任意の適切なものが選択され得る。前記偏光子としては、例えば、親水性高分子フィルムにヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等が挙げられる。前記親水性高分子フィルムとしては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等が挙げられる。本発明において、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を吸着させた偏光子が好ましい。
【0116】
前記偏光子は、好ましくは、さらにカリウムおよびホウ素の少なくとも一方を含有する。前記偏光子が、カリウムおよびホウ素を含有することによって、好ましい範囲の複合弾性率(Er)を有し、且つ、偏光度が高い偏光子(偏光板)を得ることができる。カリウムおよびホウ素の少なくとも一方を含む偏光子の製造は、例えば、偏光子の形成材料であるフィルムを、カリウムおよびホウ素の少なくとも一方の溶液に浸漬すればよい。前記溶液は、ヨウ素を含む溶液を兼ねてもよい。
【0117】
前記ポリビニルアルコール系フィルムを得る方法としては、任意の適切な成形加工法が採用され得る。前記成形加工法としては、従来公知の方法が適用できる。また、前記ポリビニルアルコール系フィルムには、市販のフィルムをそのまま用いることもできる。市販のポリビニルアルコール系フィルムとしては、例えば、(株)クラレ製の商品名「クラレビニロンフィルム」、東セロ(株)製の商品名「トーセロビニロンフィルム」、日本合成化学工業(株)製の商品名「日合ビニロンフィルム」等が挙げられる。
【0118】
偏光子の製造方法の一例について、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする高分子フィルム(原反フィルム)は、純水を含む膨潤浴、およびヨウ素水溶液を含む染色浴に浸漬され、速比の異なるロールでフィルム長手方向に張力を付与されながら、膨潤処理および染色処理が施される。つぎに、膨潤処理および染色処理されたフィルムは、ヨウ化カリウムを含む架橋浴中に浸漬され、速比の異なるロールでフィルムの長手方向に張力を付与されながら、架橋処理および最終的な延伸処理が施される。架橋処理されたフィルムは、ロールによって、純水を含む水洗浴中に浸漬され、水洗処理が施される。水洗処理されたフィルムは、乾燥して水分率を調節した後で巻き取られる。このように、偏光子は、原反フィルムを、例えば、元の長さの5倍〜7倍に延伸することで得ることができる。
【0119】
前記偏光子は、接着剤との密着性を向上させるために、任意の表面改質処理が施されていてもよい。前記表面改質処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、グロー放電処理、火炎処理、オゾン処理、UVオゾン処理、紫外線処理等が挙げられる。これらの処理は、単独で、または2つ以上を組み合せて用いてもよい。
【0120】
(粘着剤層)
本発明の偏光板は、最外層の少なくとも一方として粘着剤層を有していても良い(このような偏光板を粘着型偏光板と称することがある)。特に好ましい形態として、前記光学フィルムの偏光子が接着されていない側に、他の光学フィルムや液晶セル等の他部材と接着するための粘着剤層を設けることができる。
【0121】
(偏光板の製造方法)
本発明の偏光板の製造方法を説明する。
本発明の偏光板は、接着剤を用いて前記偏光子の少なくとも片面に本発明のフィルムの片面(表面処理をしてある場合は表面処理面)を貼り合わせることで製造できる。また、セルロースアシレートフィルム、偏光子および本発明のフィルムの順に貼り合わせる場合は、本発明の偏光板は偏光子の両面に接着剤を用いて偏光子とその他のフィルムを張り合わせることで製造できる。本発明の偏光板の製造方法においては、本発明のフィルムが偏光子と直接貼合されていることが好ましい。
【0122】
前記接着剤としては、公知の偏光板製造用接着剤を用いることができる。また、前記偏光子と各フィルムの間に接着剤層を有する態様も好ましい。前記接着剤の具体例としては、ポリビニルアルコールまたはポリビニルアセタール(例、ポリビニルブチラール)の水溶液や、ビニル系ポリマー(例、ポリブチルアクリレート)のラテックスを用いることができる。特に好ましい接着剤は、完全鹸化ポリビニルアルコールの水溶液である。前記ポリビニルアルコール系接着剤は、ポリビニルアルコール系樹脂と架橋剤を含有することが好ましい。
【0123】
本発明の偏光板の製造方法は、上記の方法に限定されず、他の方法を用いることもできる。例えば、特開2000−171635号、特開2003−215563号、特開2004−70296号、特開2005−189437号、特開2006−199788号、特開2006−215463号、特開2006−227090号、特開2006−243216号、特開2006−243681号、特開2006−259313号、特開2006−276574号、特開2006−316181号、特開2007−10756号、特開2007−128025号、特開2007−140092号、特開2007−171943号、特開2007−197703号、特開2007−316366号、特開2007−334307号、特開2008−20891号各公報などに記載の方法を使用できる。これらの中でもより好ましくは特開2007−316366号、特開2008−20891号各公報に記載の方法である。
【0124】
偏光膜の他方の表面にも保護フィルムが貼り付けられているのが好ましく、かかる保護フィルムは、本発明のフィルムであってもよい。また、セルロースアシレートフィルム、環状ポリオレフィン系ポリマーフィルム等、従来偏光板の保護フィルムとして用いられている種々のフィルムを利用することができる。
【0125】
このようにして得た本発明の偏光板は、液晶表示装置内で使用するのが好ましく、液晶セルの視認側、バックライト側のどちらか片側に設けても、両側に設けてもよく、限定されない。本発明の偏光板が適用可能な画像表示装置の具体例としては、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイ(PD)、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)のような自発光型表示装置が挙げられる。液晶表示装置は透過型液晶表示装置、反射型液晶表示装置等に適用される。
【0126】
[液晶表示装置]
本発明のフィルムおよび偏光板は、種々のモードの液晶表示装置に用いることができる。好ましくは、TN(Twisted Nematic)、OCB(Optically Compensatory Bend)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)モードの液晶表示装置、中でも、より好ましくは、TN、ECBモード液晶表示に用いることができる。
【0127】
[光学補償フィルム]
本発明のフィルムは、光学用途用フィルムとして好ましく用いることができ、光学補償フィルムとして特に好ましく用いることができる。
【0128】
<積層フィルム>
本発明のフィルムにさらに公知の光学異方性層を付与することで積層フィルムとすることもできる。
【実施例】
【0129】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0130】
《測定法》
(1)横ダン
任意に取り出した3cm角のサンプルフィルムを10枚用意する。これらのサンプルフィルムを直交配置した偏光板の間に置き、正面から覗き込んだ際に目視で横ダン(幅方向に走る幅0.1〜5mmの明暗のスジ)の本数を計測し、10枚のサンプルフィルム中の横ダンの本数が最大であったサンプルの横ダンの数を、横ダンの本数とした。
【0131】
(2)Re[0°]、γ、Rth
明細書中に記載した方法に従い、これらの光学特性を測定した。
【0132】
(3)γの傾斜軸と直交方向分布
延伸後のフィルムの任意の箇所で明細書中に記載した方法でγを測定し、同時に傾斜軸方向を決定する。そこから傾斜軸と直交方向に30cmサンプリングしたフィルムを10等分し、10点において明細書中に記載した方法でγを測定する。10点におけるγの測定値のうち、最大値と最小値の差を10点の平均値で割り、百分率で表したものをγの傾斜軸と直交方向分布(%)とした。
【0133】
[製造例1] 付加重合型ノルボルネン樹脂のペレットの製造
付加重合型ノルボルネン樹脂(COC)として、ポリプラスチックス(株)社製の「TOPAS#6013」のペレットを用いた。なお、「TOPAS#6013」は、正の固有複屈折性を示す。また、当該樹脂のガラス転移点は130℃であった。
【0134】
[製造例2] 開環重合型ノルボルネン樹脂のペレットの製造
開環重合型ノルボルネン樹脂(COP−1)を国際公開WO98/14499号公報の実施例1に記載の方法に従って製造し、これを常法に従ってペレット化した。当該樹脂のガラス転移点は136℃であった。
【0135】
[製造例3] 開環重合型ノルボルネン樹脂のペレットの製造
開環重合型ノルボルネン樹脂(COP−2)として特開2007−38646号公報の実施例1に記載の樹脂(a−1)を該実施例の方法に従って製造し、これを常法に従ってペレット化した。当該樹脂のガラス転移点は130℃であった。
【0136】
[製造例4] ポリカーボネートのペレットの製造
ポリカーボネートとして、出光興産(株)社製の「タフロンMD1500」のペレットを用いた。なお、「タフロンMD1500」は、正の固有複屈折性を示す。また、当該樹脂のガラス転移点は142℃であった。
【0137】
[製造例5] アクリル系樹脂のペレットの製造
アクリル系樹脂を特開2008−9378号公報[0222]〜[0224]の製造例1に従いメタクリル酸メチル=7500g、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル2500gから合成し、ラクトン化率98%、ガラス転移点134℃のアクリル系化合物を得た。
【0138】
[製造例6] セルロースアシレート系樹脂のペレットの製造
セルロース・アセテート・プロピオネート(CAP−1)を特開2008−87398号公報の実施例1に記載の方法に従って製造し、これを常法に従ってペレット化した。なお使用したCAP−1の組成は、アセチル化度1.95、プロピオニル化度0.7、全アシル置換度2.65であった。また、当該樹脂のガラス転移点は174℃であった。
【0139】
[製造例7] セルロースアシレート系樹脂のペレットの製造
セルロース・アセテート・プロピオネート(CAP−2)を特開2008−50562号公報の実施例101に記載の方法に従って製造し、これを常法に従ってペレット化した。なお使用したCAP−2の組成は、アセチル化度0.15、プロピオニル化度2.55、全アシル置換度2.70であった。また、当該樹脂のガラス転移点は137℃であった。
【0140】
[実施例1]
(製膜・挟圧)
熱可塑性樹脂として下記表1に記載の環状オレフィン共重合体TOPAS#6013(COC)のペレットを用いて、100℃において2時間以上乾燥し、260℃で溶融し、1軸混練押出し機を用い混練し押出した。このとき押し出し機とダイの間にスクリーンフィルター、ギアポンプ、リーフディスクフィルターをこの順に配置し、これらをメルト配管で連結した。これを下記表1に記載の押出し温度(吐出温度)で幅1300mm、リップギャップ0.8mmのダイから押出した。
この後、最上流のキャストロール(チルロール)とタッチロールで挟圧した部分の中央の間にメルト(溶融樹脂)を押出した。この時、最上流側の幅1500mm、直径300mmのハードクロムを被覆したステンレススチール製キャストロール(チルロール)に下記表1に記載のタッチ圧力となるようにシリンダーを設定し、幅1500mm、直径200mmの下記表1に記載の材質のタッチロールを接触させた。また、タッチロールの外筒厚みを下記表1に記載した。なお、タッチ圧力は、中圧用プレスケール(富士フィルム社製)を、メルトのない状態で等周速(5m/分)でともに25℃に制御した二つのロールに挟みこむことで測定し、その値を製膜時の圧力とした。タッチロールおよびチルロールはショア硬度70HSのものを用いた。また、メルトはキャストロールとタッチロールで挟まれる中央部分に落とした。これらのロールを用い、タッチロール周速度をチルロール周速度よりも速くし、これらのロール間の周速差を下記表1に記載の条件に設定し、ダイとメルト着地点の距離を50mmに設定し、搬送速度(チルロール速度)15m/分で製膜した。なお、タッチロールの温度をTg−5℃、チルロールの温度をTg−10℃とした。また、製膜の雰囲気は25℃、60%であった。
この後、巻き取り直前に両端(全幅の各5cm)をトリミングした後、両端に幅10mm、高さ20μmの厚みだし加工(ナーリング)をつけた。またトリミング後の製膜幅は1000mmとし、450m巻き取り、実施例1のフィルムを作製した。
【0141】
(延伸)
得られたフィルムを縦方向に表1に記載の条件で延伸した。また、この際ニップロールを2対用いて縦延伸を行い、温度差および周速差は、上流側のニップロールおよび下流側のニップロールの両方について下記表1に記載の条件に制御した。また、延伸倍率は、(延伸後のフィルムの長さ)/(延伸前のフィルムの長さ)を計算し、下記表1に記載した。なお、その他の条件については下記条件で行った。
ニップロールの直径:500mm
延伸速度(入口速度):20m/分
ニップ圧 :50kg/cm
縦延伸温度 :Tg+10℃
なお、挟圧工程で高速側のロール(タッチロール)に接していたフィルム面の側のニップロールを、高温および/または高速とした。
また、延伸後の厚みが80μmになるように製膜した。
【0142】
(評価)
延伸後に横ダン、γ、Re[0°]、Rth、γの傾斜軸と直交方向分布を上記の方法で計測した。その結果を下記表1に示す。なお、本発明のフィルムのRe[+40°]とRe[−40°]を測定した傾斜方位は、いずれも、フィルムの長手方向であった。
さらに、サンプルフィルムを直交配置した偏光板の間に置き、サンプルフィルムと偏光板の間に透明な30cm角のガラス板にテストパターン(1mmピッチのライン&スペース)を記載したものを置き、正面から覗き込み目視でテストパターンににじみが発生した箇所の30cm角あたりの数を表1に「画像のにじみ」として記載した。これは液晶表示装置に組み込んだ際の画像むらに対応する。そのため、「画像のにじみ」は小さいほど好ましく、例えば20個/30cm角以下であれば実用上問題がない。
【0143】
[実施例2〜37、比較例1〜5]
用いた樹脂と製膜条件を下記表1および表2に記載したように変更した以外は実施例1と同様にして、各実施例および比較例の光学フィルムを得た。各実施例および比較例の光学フィルムの光学特性を下記表1および表2に示す。なお、実施例32においてアクリル樹脂は230℃にて溶融した。また、比較例5および実施例37では特開2007−38646号公報の実施例7に従い、縦延伸温度をTgに設定して延伸を行った。
【0144】

【表1】


【0145】
【表2】

【0146】
表1および表2より、本発明の実施例で得られたフィルムは傾斜軸と直交方向に伸張する筋(横ダン)が少なく、傾斜構造が形成されていることがわかった。また、上記方法にて検討した画像のにじみが少ないため、本発明の実施例のフィルムを用いた液晶表示装置の画像のにじみも顕著に改善される。詳しくは、実施例1〜5、比較例1および2は縦延伸でのニップロールの温度差の効果を示した。実施例6〜10、比較例3および4は縦延伸でのニップロールの周速差の効果を示した。実施例11〜13はニップロールの周速差と温度差の相乗効果を示した。実施例14〜17はズリ製膜でのタッチロールの周速差の効果を示した。実施例18〜21はズリ製膜でのタッチロールの厚みの効果を示した。実施例22〜28はズリ製膜でのタッチ圧の効果を示した。実施例29〜34はズリ製膜での樹脂の効果を示した。実施例35および36はズリ製膜でのタッチロールの材質の効果を示した。比較例5は特開2007−38646号公報の実施例7を実施したもの、実施例37はこれに対比させ本発明を実施した(特開2007−38646号公報の実施例に記載のCOP−2、該公報におけるa−1、を用い、延伸温度Tgにおいて1.25倍に縦延伸し、延伸後の厚みは90μmで実施した)ものである。
また、実施例1〜37より、本発明のフィルムはγ、Re[0°]およびRthが良好な範囲で発現しており、さらにγの傾斜軸と直交方向分布も小さかった。そのため本発明のフィルムは光学用途に適したフィルムであり、特に光学補償フィルムとして好適に用いることができることがわかった。
【0147】
(偏光板)
作成した実施例1〜37のフィルムを用いて偏光板を作製した。具体的には、まず、延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて各偏光フィルムを作製した。これらの偏光フィルムを用いて、図1に示すような配置で、80μmのTACフィルム(富士フイルム社製)、一軸延伸したノルボルネン系高分子フィルムからなる、Re=270nmのλ/2板、実施例1〜37のフィルムを貼合わせた。この様にして、実施例1〜37のフィルムを用いた偏光板をそれぞれ2枚ずつ作製した。
【0148】
(液晶表示板)
実施例1〜37のフィルムを視野角補償フィルムとして、1対の偏光板と液晶セルの間に設置した。また、実施例1〜37のフィルムを用いた偏光板を液晶セルの上下に配置した。液晶表示装置としてTN、ECB、OCB、VA、IPSモードのものを使用したところ、いずれも良好な視野角補償性能を発現した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を含み、傾斜構造を有し、傾斜軸と直交方向に伸張する筋が3本/3cm以下であることを特徴とするフィルム。
【請求項2】
下記(I)式および(II)式を満足することを特徴とする請求項1に記載のフィルム。
50nm≦Re[0°]≦300nm (I)式
(式(I)中、Re[0°]はフィルム傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、該法線方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表す。)
40nm≦γ≦300nm (II)式
γ=|Re[+40°]−Re[−40°]| 式(II)’
(式(II)中、Re[+40°]はフィルム傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、該法線に対して傾斜方位側へ40°傾いた方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表し、Re[−40°]は該法線に対して傾斜方位側へ−40°傾いた方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表す。)
【請求項3】
前記γの傾斜軸と直交軸方向分布が0%〜10%であり、厚み方向のレターデーションRthが40〜300nmであることを特徴とする請求項1または2に記載のフィルム。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂がポリカーボネート系樹脂、環状オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂およびセルロースアシレート系樹脂から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項5】
挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に熱可塑性樹脂を含有する組成物の溶融物を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形する挟圧工程(該挟圧工程では、前記第一挟圧面の移動速度を前記第二挟圧面の移動速度よりも速くする)と、
フィルム状の溶融物を固化してフィルムを得る工程と、
得られたフィルムを2本のロールからなる第1のニップロールの間と、2本のロールからなる第2のニップロールの間を順に通過させて、第2のニップロールの周速度を第1のニップロールの周速度よりも速くしてフィルム搬送方向に延伸する縦延伸工程(該縦延伸工程において前記第1のニップロールまたは前記第2のニップロールの少なくとも一方を、ニップロールを構成する2本のロールの各表面温度間に0.1℃〜10℃の温度差を付与するように制御する)と、
を含むことを特徴とするフィルムの製造方法。
【請求項6】
挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に熱可塑性樹脂を含有する組成物の溶融物を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形する挟圧工程(該挟圧工程では、前記第一挟圧面の移動速度を前記第二挟圧面の移動速度よりも速くする)と、
フィルム状の溶融物を固化してフィルムを得る工程と、
得られたフィルムを2本のロールからなる第1のニップロールの間と、2本のロールからなる第2のニップロールの間を順に通過させて、第2のニップロールの周速度を第1のニップロールの周速度よりも速くしてフィルム搬送方向に延伸する縦延伸工程(該縦延伸工程において、前記第1のニップロールまたは前記第2のニップロールの少なくとも一方を、ニップロールを構成する2本のロールの各周速度間に0.01〜10%の周速差を付与するように制御する)と、
を含むことを特徴とするフィルムの製造方法。
【請求項7】
前記縦延伸工程において、第1のニップロールまたは第2のニップロールの少なくとも一方を、ニップロールを構成する2本のロールの各表面温度間に0.1℃〜10℃の温度差を付与するように制御することを特徴とする請求項6に記載のフィルムの製造方法。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂を含有する組成物をダイから溶融押出しする工程と、溶融押出しされた溶融物を前記第一挟圧面と前記第二挟圧面の間を通過させる工程と、を含むことを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項9】
前記挟圧工程において、前記溶融物を15〜500MPaの圧力で挟圧することを特徴とする請求項5〜8のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項10】
前記挟圧工程において、前記溶融物を30〜500MPaの圧力で挟圧することを特徴とする請求項5〜9のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項11】
前記挟圧工程において、下記式(III)で定義される前記挟圧装置の第一挟圧面と第二挟圧面の移動速度差が0.5〜20%となるように制御することを特徴とする請求項5〜10のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
式(III)
移動速度差(%)=100×[(第一挟圧面の移動速度)−(第二挟圧面の移動速度)]
/(第一挟圧面の移動速度)
【請求項12】
前記挟圧工程において、前記挟圧装置が互いに周速が異なる2つのロールであることを特徴とする請求項5〜11のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項13】
前記挟圧装置を構成する2つのロールの一方に、外筒厚み6〜45mmの金属製タッチロールを用いることを特徴とする請求項12に記載のフィルムの製造方法。
【請求項14】
請求項5〜13のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法で製膜したことを特徴とするフィルム。
【請求項15】
請求項1〜4および14のいずれか一項に記載のフィルムを少なくとも1枚使用したことを特徴とする偏光板。
【請求項16】
請求項1〜4および14のいずれか一項に記載のフィルムを少なくとも1枚使用したことを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2010−160483(P2010−160483A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280891(P2009−280891)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】