説明

フィルムおよび光学的セキュリティ素子

本発明は、特にエンボスフィルム、貼付けフィルムすなわちステッカーフィルム、および光学的セキュリティ素子に関する。フィルム(2)は、担体層(21)および複製層(23)を備えている。フィルムは、複製層上に施された液晶材料からなる層(24)をも備えている。液晶材料からなる層(24)に面する複製層の表面には、液晶材料の配向のための回折構造(27)がエンボスされ、該回折構造は、エンボス構造の配向方向の異なる少なくとも二つの部分領域を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、担体層および複写層を備えたサブストレート、特にフィルム、エンボスフィルム、貼合せフィルムまたはステッカーフィルムに関するものである。本発明はさらに、複写層を備えた紙幣、クレジットカード等の防護のための光学的セキュリティ素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイの技術分野においては、配向層に対する液晶ポリマー(LCP)の配向が知られている。そこでは通常、ポリイミド層が機械的ラビング工程によって配向される。その工程の第2ステップで液晶ポリマーが上記配向層に施され、次いでその配向層上で配向される。
【0003】
さらに特許文献1には、感光性ポリマーにおけるLCPの配向が記載されている。
【0004】
その場合に、インクジェットプリンタを用いたサブストレートへの印刷によって第1の配向層が施され、上記配向層は、分極された光の照射によって所定の配向方向に配向されることが可能な感光性ポリマーを含む。その層はここでは偏光された光で照射される。次にインクジェットプリンタを用いて液晶材料層が配向層に施され、液晶材料が配向される条件が与えられる。次に液晶層が紫外線によって硬化される。
【0005】
その場合に、二つの配向層が、互いに重なり合ってサブストレート上に施されることも可能である。その場合に、上記二つの層は、異なる態様に偏光された光でそれぞれ照射され、次いで硬化され、かくして、互いに重なり合って配置された異なる配向を備えた配向層が生じる。配向の異なる二つの領域は、個々の互いに重なり合った感光ポリマー層のための対応する模様化された形態と組み合わされた多層塗りによって得ることができる。
【0006】
特許文献2においては、液晶ディスプレイのための配向層内に互いに交差する溝を、切断工具を用いて形成することが提案されている。この方法は、その領域内に、一部分の分子の一方向の配向を生じさせ、他の部分の分子の他方向の配向を生じさせる。
【特許文献1】欧州特許第1 227 347号明細書
【特許文献2】国際公開第01/60589号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、光学的セキュリティ素子および/または装飾的フィルムの製造の改良にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、担体層と、複製層と、この複製層に施された液晶材料からなる層とを備え、この液晶材料からなる層に面する上記複製層の表面に、液晶材料の配向のために回折構造がエンボスされ、この回折構造が、エンボス構造の配向方向の異なる少なくとも二つの部分領域を有するサブストレート、特にフィルム、エンボスフィルム、貼合せフィルムまたは貼付けフィルムによって解決される。上記課題はさらに、複製層と、この複製層に施された液晶材料からなる層とを備え、この液晶材料からなる層に面する上記複製層の表面に、液晶材料の配向のための回折構造がエンボスされ、この回折構造が、エンボス構造の配向方向の異なる少なくとも二つの部分領域を有する、紙幣、クレジットカード等を防護するための光学的セキュリティ素子によって解決される。
【0009】
本発明によれば、液晶を部分的に、かつ高精度をもって種々の配向方向に配列することができ、これにより、偏光子の下でのみ視ることができる、明白かつ容易に検出可能な種々の光学的セキュリティ特徴を生成させることが可能になる。このため、偽造に対する高度の防護を達成することができる。さらに、製造工程が単純化され、迅速化され、コストが低減される。例えば感光性ポリマーを使用する場合には、多くの高価な露光工程を実行し、および/または高価なマスクを用意することが不可避であった。
【0010】
上記液晶材料としては、モノマー形態またはポリマー形態のものを使用することができる。
【0011】
本発明の有利な実施の形態は従属請求項に記載されている。
【0012】
もし上記回折構造が、液晶材料からなる層で覆われ、かつ回折構造の配向方向が連続的に変化している場合には、特に偽造を防止する光学的セキュリティ特徴を得ることができる。このような回折構造を用いて生成されたセキュリティ特徴を、例えば回転偏光方向を有する偏光子を通して視る場合には、セキュリティ素子の直線的に変化する偏光方向によって、例えば運動効果のような明瞭に認識可能な種々のセキュリティ特徴を生成させることができる。
【0013】
さらに、液晶材料で覆われた互いに隣接する領域が、回折構造に関して異なる配向方向を備えていることが望ましい。
【0014】
さらに、上記回折構造が、液晶材料の配向のために、液晶材料からなる層によって覆われた第1の領域を備え、また上記回折構造が、例えばホログラムまたはキノフォルムのような光学的回折効果を生じる第2の領域を備えることが可能である。その場合、偏光効果に基づくセキュリティ特徴と、回折効果に基づくセキュリティ特徴とが、一つの同じ層内で互いに隣接して生成される。その場合に、偽造に対する高度の防護性を備えたセキュリティ素子を安価な製造コストをもって製造することが可能になる。それは、単一および同一の工程によって、二つの異なる光学的効果に関する基本を提供する。
【0015】
その場合に、もし第1の領域で生成された偏光表現と、第2の領域で生成されたホログラフ的表現とが相補的表現を形成する場合には、特に有利である。例えば、ホログラフ的表現が樹を表し、この樹の葉が偏光表現によって形成されるような場合には特に有利である。偏光表現とホログラフ的表現との内容は、一つの表現を他の表現から直ちに視ることができるバリエーションの態様で、内容に関して互いに補い合っている。このことが偽造に対する防護レベルを高めている。
【0016】
光学的効果を生じさせるための第1の構造と、液晶材料の配向のための第2の構造との重合せによって得られる回折構造を用いることは有利であることがさらに判明している。もし上記第2の構造が上記第1の構造よりも高い空間周波数を有するならば、および/または、上記第1の構造よりも深い溝の深さを有するならば、上記第2の構造の重合せによって液晶分子の適切な配向が可能であることが発見されている。もし上記第2の構造の空間周波数が上記第1の構造の空間周波数よりも少なくとも10倍高ければ、あるいは上記第2の構造の空間周波数が2500/mmよりも高ければ、特に良好な配向効果を得ることができる。
【0017】
上記基本原理を利用すると、マクロ構造、マット構造、ホログラム、またはキノフォルムによって生成される、偏光とは関係のない効果を一方で示し、かつ配向された液晶によって生成される偏光効果を他方で示す非常に多くの新規な光学的に変化する素子を生み出すことが可能である。
【0018】
等方性マット構造(散乱が好ましい方向を有しない)との組合せにより、複製層と液晶材料との間に存在する可能性のある屈折率差、または液晶の配向欠陥によって生じる陰影効果またはフォギング効果が補償されて、もはや見えなくなる。また、この方法により、さらなる模造防止効果も得られる。感光性ポリマーに基づく露出工程によっては、偏光された光の分散により、十分に欠陥のない配向層の製造が阻止される。
【0019】
液晶材料からなる層が回折構造の一部のみを模様状に覆うのがさらに望ましい。これにより、さらなるデザインの選択幅が広がる。
【0020】
上記液晶材料からなる層を覆う保護ラッカー層を設けると有利であることが判明している。
【0021】
回折構造の溝の深さを変えること、および偏光子の下でのみ視ることができる色彩効果を生じさせる回折構造を用いることはさらに有利である。
【0022】
本発明の好ましい実施の形態によれば、フィルムはさらなる光学的な効果のある回折構造を有し、またはさらなる効果的な回折構造が、液晶材料からなる層から離れた位置にある複製層の表面にエンボスされている。上記光学的な効果のある回折構造は、光学的回折セキュリティ特徴と、偏光された光の下でのみ認識可能なセキュリティ特徴との組合せを可能にする。もし上記光学的な効果のある回折構造が、配向層として作用する回折構造上に部分的に重ね合わされると、上記複数の効果の重合せを得ることができる。さらに、二つの回折構造が正確に見当を合わせて重ね合わされると、これら二つの構造が内容に関して互いに補足し合うことによって光学的に表現される情報を提供することが可能になる。
【0023】
偽造に対する防護レベルを高めるさらなる可能な方法は、フィルムがさらに薄膜系および/または部分的金属膜除去のような他のセキュリティ特徴を備えることである。また、セキュリティ素子が反射性または部分反射性セキュリティ素子であることができるように、反射層、特にHRI層を備える可能性もある。さらに、コレステリック液晶層〈全領域または部分領域〉を反射層として作用させることができる。
【0024】
光学的回折効果を有する上述の層を持つ液晶材料からなる層と、干渉層、および/または反射層との組合せは、偽造に対する高度の防護性を備えた光学的セキュリティ素子を提供することができ、これらのセキュリティ特徴は、重合せまたは相互補足によって強力に絡み合い、したがって不法操作を困難にする。さらなる利点は、肉眼で認識可能なセキュリティ特徴と、偏光された光の下でのみ認識可能なセキュリティ特徴、したがって肉眼では見えずに機械で認識可能なセキュリティ特徴との組合せの可能性にある。
【0025】
また、第1の部分素子が複製層と液晶材料からなる層とを備え、第2の部分素子が、液晶材料からなる層によって生成されたセキュリティ特徴を検査するための偏光子を備えた2部分セキュリティ素子の形態を光学的セキュリティ素子が有する可能性もある。その場合に、第2の部分の特徴を用いて第1の部分の特徴を視ることによって、肉眼では認識不可能なセキュリティ特徴をユーザーが検査することが可能になる。
【0026】
もし双方の部分素子が、それぞれの複製層に施された液晶材料からなる層を備え、この複製層に、液晶材料の配向のためにエンボスされ、かつこの回折構造が、エンボスされた構造に関して異なる配向方向を有する少なくとも二つの領域を備えている場合には、さらなる効果を奏する。二つの部分素子のセキュリティ素子が互いに補足し合うので、第2の部分素子を用いて第1の部分素子を視ることによって、肉眼では認識不可能なセキュリティ特徴をユーザーが検査することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、添付の図面を参照して、いくつかの実施の形態について本発明を説明する。
【0028】
図1は、担体素子13と、二つの部分素子11,12からなる光学的セキュリティ素子とを備えたセキュリティ文書1を示す。
【0029】
このセキュリティ文書1は、例えば、紙幣、身分証明カードまたは通行証、切符またはソフトウェア証明書である。担体素子13は、例えば紙または可撓性プラスチック材料からなる。
【0030】
部分素子12は、担体素子13の窓に取り付けられた、あるいは担体素子13の透明領域に施された偏光子からなる。担体素子13を曲げることによって、ユーザーが、部分素子12を通して部分素子11を視ることが可能であり、これにより部分素子11によって生成される偏光効果を視ることができる。
【0031】
部分素子12を省略して部分素子11のみをセキュリティ文書1に施してもよい。
【0032】
その場合には、セキュリティ文書1を例えばカードとするために、担体素子13を非可撓性材料で形成することも可能である。その場合には、担体素子13が通常のプラスチックカードからなり、その表面に例えばカード所持者の名前がエンボスされる。それに伴って、上記プラスチックカードが光学的セキュリティ素子の一部分に透明領域を備えることができ、光学的セキュリティ素子を、透光性を有する光学的セキュリティ素子とすることができる。
【0033】
図2〜図9を参照すると、図1の部分素子11としても用いられる本発明による光学的セキュリティ素子を作成し設計するための種々の可能性が記載されている。
【0034】
図2は、6つの層21,22,23,24,25および26を有するエンボスフィルム2を示す。
【0035】
層21は、例えば12μmと50μmとの間の厚さを有するポリエステルフィルムによって形成された担体フィルムである。層22,23,24,25および26はエンボスフィルム2の転写層を形成する。
【0036】
層22は、厚さが約0.3μm〜1.2μmであることが好ましい剥離層または保護ラッカー層である。この層は無くてもよい。
【0037】
層23は複製層であり、この層にエンボス工具によって回折構造をエンボスすることができる。その場合に、層23は例えば印刷によって施すことができる透明な熱可塑性材料からなることが好ましい。
【0038】
その場合に、上記複製ラッカーは例えば下記の組成を有する。すなわち、
成分 重量部
高分子PMMA樹脂 2000
オイル非含有シリコーンアルキド 300
非イオン湿潤剤 50
低粘度ニトロセルロース 750
メチルエチルケトン 12000
トルエン 2000
ジアセトンアルコール 2500。
【0039】
担体層21は、例えば厚さ19μmのPETフィルムからなり、この担体層21にラインラスター凹版印刷シリンダによって上記複製ラッカーが、さらに詳しくは乾燥後の塗膜重量が2,2g/mになるように施される。乾燥は100℃〜120℃の温度の乾燥トンネル内で行なわれる。
【0040】
次に、例えばニッケルからなる金型を用いて回折構造27が約130℃の温度で層23にエンボスがなされる。回折構造27をエンボスするために金型は約130℃の温度に電気加熱されていることが好ましい。金型は、エンボス作業後、層23から引き揚げる前に再び冷却することができる。回折構造27が層23にエンボスされた後、複製ラッカーが架橋またはその他の態様で硬化される。
【0041】
層24は、液晶(LC)材料からなる液体である。層24は厚さが0.5μm〜5μmであることが好ましい。原理的には、所望の光学特性を備えたあらゆる種類の液晶材料を用いることができる。例えば、スイス国バーゼル所在のバンティコ(Vantico)社のOPALVA O シリーズの液晶材料である。
【0042】
次に、液晶は配向層として機能する層23上で多少の加熱によって配向される。次に液晶分子の配向を固定するために、紫外線によって液晶材料が硬化される。
【0043】
さらに、溶剤含有液晶材料からなる層が印刷によって施されかつ乾燥されて、溶剤の蒸発時に液晶分子が回折構造27に応じて配向されることも可能である。また、溶剤非含有液晶材料が印刷によって施されかつ配向後架橋によって固定されることも可能である。
【0044】
層25は、例えば印刷によって層24に施される保護ラッカー層である。層25を省くことも可能である。層25は、例えば0.5μm〜3μmの厚さを有し、かつ紫外線架橋可能なアクリレートおよび耐磨耗性アクリレートであることが好ましい。
【0045】
層26は、例えば熱的に活性化される接着剤からなる接着剤層である。
【0046】
セキュリティ文書または保護されるべき物品に打出しフィルム2を貼り付けるのには、層21〜26で形成された転写層アセンブリの層26側をセキュリティ文書または保護されるべき物品に貼り付け、次いで加熱しながらセキュリティ文書または保護されるべき物品に圧着する。その場合、転写層アセンブリは接着剤層26によってセキュリティ文書または保護されるべき物品の対向する表面に接着される。加熱に続いて転写層アセンブリから担体層21から剥がされる。その場合、ワックス状の剥離層22を用いれば、転写層アセンブリを担体層21から剥がすのが容易になる。
【0047】
上記エンボスフィルム2は、例えば貼合せフィルムのような別の形式のフィルムであってもよい。その場合、層22は、担体に対して優れた接着性を有する別の層と置換される。
【0048】
図3は、層31,32,33および34からなるステッカーフィルム3を示す。
【0049】
層31は、例えば、12μm〜15μmの厚さを有する透明な、または一部透明な、または不透明なポリエステル材料からなる担体層である。層32は、回折構造35がエンボスされた複製層である。層33は液晶材料からなる層であり、層34は保護ラッカー層である。この場合、層32,33,34は、図2の層22,23,24と同様にすることができる。層34を省略することも可能である。
【0050】
図4は、光学的セキュリティ素子4と、この光学的セキュリティ素子4が施されたサブストレート47とを示す。このサブストレート47は、例えば図1に示されている担体素子3のような、防護されるべきセキュリティ文書である。光学的セキュリティ素子4は層41,42,43,44および45からなる。層41は保護ラッカー層である。層42は回折構造46がエンボスされている複製層である。層43は液晶材料であり、層44は保護ラッカー層であり、層45は層44をサブストレート47に接着する接着剤層である。層41,42,43,44および45は、例えば図2の層22,23,24および25と同様である。
【0051】
ここで回折構造27,35および46が形成されるさらなる可能性が示されている図5aを参照する。
【0052】
図5aは、複数の領域61,62,63に区分けされることが可能な光学的セキュリティ素子6を示す。
【0053】
領域61,62,63には、全表面領域に亘って回折構造がエンボスされている。この回折構造は、液晶分子の配向を可能にする例えば複数本の互いに隣接する平行な溝からなる。例えばこれらの溝は、300〜3000本/mmの空間周波数と200〜600nmの溝深さとを有する。例えば50nmの範囲の浅い溝も考えられる。特に1000〜3000本/mmの範囲の空間周波数を有する溝が良好な配向結果を得ることができる。その場合、これらの溝の長さ方向が回折構造の配向方向を表す。
【0054】
さらに溝の深さを部分的に変化させることが可能である。液晶材料を施す場合には、例えばドクターブレードを用いることによって、フィルムの異なる領域において液晶材料の層の厚さを変化させることができる。そうすると、偏光子の下でのみ視ることができる色彩効果が生れる。
【0055】
これらの効果はさらに、深い溝を利用することによっても発生させることができ、これら深い溝には、印刷時に(例えばスクリーンローラを用いて塗布量を変えることによって、および/またはシリンダ式のドクターブレードを用いることによって)液晶材料が領域的に異なる高さをもって満たされる。
【0056】
色彩の動きおよび模様も、例えば複屈折特性を備えているような適当な担体材料を用いることによって生じさせることができる。その場合、液晶材料の配向方向を特定することによって、液晶と(例えば構造層の角度変化により、あるいは波縞模様により)構造化された担体材料との相互作用によって生じる興味深い色彩の動きを生起させることもできる。
【0057】
回折構造の配向方向は、領域61,62,63によって異なる。例えば領域61は水平方向に平行に配列された複数の溝を有し、領域62は垂直方向に平行に配列された複数の溝を有し、領域63は垂直方向に対し30度傾いた複数の平行な溝を有する。したがって、回折構造は、領域61においては水平に配向され、領域62においては垂直に配向され、領域63においては垂直に対して30度傾いている。
【0058】
さらに、配向方向が溝に沿って変化する複数の溝によって回折構造が形成されることも可能である。したがって、例えば回折構造の配向方向を領域61の水平軸または垂直軸に沿って連続的に変化させることが可能である。これにより、例えば運動効果または無彩色階調を生じさせることが可能になる。
【0059】
さらに、光学的セキュリティ素子6が、肉眼で認識可能な範囲外のサイズを備えていることが好ましいエンボス構造に関して種々の配向方向を有する複数の領域を備えることも可能である。これらの領域は、入射光の偏光方向に応じて多少なりとも視ることができる種々の互いに重なり合った偏光表現の画素を形成する。
【0060】
さらに、液晶材料の配向のために、そして光学的回折効果を生むために役立つ領域61および63における回折構造のために、特にホログラム、キネグラム等を生じさせるために、領域62のみにおいて回折構造がエンボスされることも可能である。
【0061】
図5bに示されているように、光学的セキュリティ素子6は、複製層65と、液晶材料層66と、接着剤層67とを備えている。回折構造68は複製層65にエンボスされている。
【0062】
複製層65、液晶材料層66および接着剤層67はそれぞれ、例えば図2に示された層23,24および25と同様である。
【0063】
図5bに示されているように、層66は、複製層65に部分的に印刷することによって領域62のみに施されている。領域61および63においては、回折構造68が液晶材料で覆われていないので、これらの領域においては、配向された液晶分子による偏光効果は生じない。したがって、偏光表現は領域62においてのみ生じる。これに対して、回折構造68によって生じる光学的回折効果は領域61および63において効力を発する。
【0064】
このような構成により、光学的セキュリティ素子6は、領域62における偏光表現と、領域61および63における二つの両側に並ぶホログラフ的表現とからなる光学的表現を生む。
【0065】
これらのホログラフ的表現および偏光表現は、内容的に互いに補足し合い、かつ例えば共通の言葉または共通の絵画的表現を形成するのが好ましい。それぞれ選択された表現されるべき共通の画像または共通の言葉に応じて、いかなる表現においても、二つまたはそれ以上の領域61〜63を互いに隣接させて配置することができる。例えば、偏光された光中でまたは偏光子を用いることによってのみ視ることが可能な偏光表現によって葉が形成されたホログラフ的樹木を表現することが可能である。
【0066】
さらに、光学的効果を生む第1の構造と、液晶材料の配向のための第2の構造とが重畳された回折構造を利用することが可能である。その場合、もし上記第2の構造が第1の構造よりも高い空間周波数を有し(粗大構造−細密構造)、および/または第1の構造よりも深い溝深さを有しているならば、第2の構造による液晶分子の配向が可能になることが判明している。
【0067】
以下、回折構造51〜55の概略的表現を示す図6a〜6eを参照して説明する。
【0068】
回折構造51は、例えばゼロオーダー回折構造のような細密構造と、顕微鏡的に細密な光散乱性粗大構造との付加的重合せである。上記顕微鏡的に細密な光散乱性粗大構造は、等方性あるいは異方性の光散乱性マット構造、またはキノフォルム、またはフーリエ変換ホログラムのグループからなる構造である。
【0069】
さらに、液晶によって生成される偏光効果がマクロ構造によって生成される偏光に依存する光学的効果と重畳されるように、粗大構造として、300本/mm未満の空間周波数を有するマクロ構造を用いることも可能である。例えば鋸歯状断面またはマイクロレンズがマクロ構造として使用されることが可能である。
【0070】
回折構造52〜55は、低い周波数の格子構造G(x,y)と高い周波数のレリーフ構造R(x,y)とが重畳されたレリーフ係数を有する輪郭高さによって入射可視光を回折させる回折構造をそれぞれ備えている。上記低い周波数の格子構造G(x,y)は、例えば、正弦波輪郭、方形輪郭、対称または非対称鋸歯状輪郭等の周知の輪郭を有する。上記高い周波数のレリーフ構造R(x,y)は、少なくとも2500本/mmが好ましい空間周波数fRを有する。一方、上記低い周波数の格子構造G(x,y)は、例えば1000本/mm未満の空間周波数fGを有する。格子の空間周波数は100本/mm〜500本/mmの値が好ましい。
【0071】
レリーフ構造R(x,y)のレリーフ輪郭高さhRは、150nm〜220nmの範囲内であるが、レリーフ輪郭高さhRは、170nm〜200nmの狭い範囲から選択されるのが好ましい。上記格子構造G(x,y)の格子輪郭高さhGはレリーフ輪郭高さhRよりも大きい値が選択される。格子輪郭高さhGは、250nm〜500nmの範囲内の値が好ましい。
【0072】
上記低い周波数の格子構造G(x,y)は、格子空間周波数fGに従って入射光を複数の回折次数に回折させて、光学的回折効果を発生させる。高い周波数のレリーフ構造は、液晶材料を配向させる。
【0073】
図6bに示された回折構造B(x)は、正弦波状格子構造G(x)に正弦波状レリーフ構造R(x)を足し算的に重ね合わせた結果であり、すなわち、B(x)=G(x)+R(x)である。格子構造G(x)の格子ベクトルとレリーフ構造R(x)のレリーフベクトルとは、ほぼ平行に配向されている。
【0074】
図6cは、格子ベクトルとレリーフベクトルとがx,y座標面において互いに直交している回折構造B(x)を示す。例えば、正弦波状格子構造G(x)はx軸のみの関数であり、正弦波状レリーフ構造R(y)はy軸のみに依存する。格子構造G(x)にレリーフ構造R(y)を足し算的に重ね合わせると、双方の座標軸x,yに依存する回折構造B(x,y)、すなわち、B(x,y)=G(x)+R(y)を得る。図面を見やすくするだけの理由で、図6cにおいては、一つのレリーフ構造R(y)の背後にある谷間が濃度の異なるドットパターンで示されている。
【0075】
図6dにおける回折構造B(x)は、掛け算的重合せB(x)=G(x){R(x)+C}である。格子構造G(x)は、関数値[0,hG]、周期4000nm、輪郭高さhG=320nmの矩形関数である。レリーフ構造R(x)=0.5hRsin(x)は、周期250nm、輪郭高さhR=200nmの正弦関数である。CはC=hG−hRである定数を表す。回折構造54は、矩形構造の山の表面上においてレリーフ構造R(x)で変調されたものであり、矩形構造の谷底上の回折構造54は平坦である。
【0076】
図6eにおいては、矩形状の格子構造G(x)にレリーフ構造R(y)が掛け算的に重ね合わされて、回折構造B(x,y)を生成させている。格子構造G(x)およびレリーフ構造R(y)は、レリーフベクトルがY軸方向である点を除いては、回折構造54の場合と同様のパラメータを有する。
【0077】
これに加えて、フィルム2,3および光学的セキュリティ素子4,6が、さらに光学的に効果のある回折構造をエンボスされたさらなる層を備えていることも可能である。このさらなる層は、干渉によってカラーシフトを生じさせるための薄膜層システムを形成する、および/または反射特性を有する金属からなるものとなし得る。これらの層に関する部分的構成によってさらに有利な効果が生まれる。
【0078】
この種のさらなる層をフィルム2,3および光学的セキュリティ素子4,6内に設けることが可能な方法について、図7〜図9を参照して以下に説明する。
【0079】
図7は、担体層71と、層72,73,74および75からなる転写層アセンブリとからなるエンボスフィルム7を示す。層72は保護ラッカー層である。層73は、回折構造761,762および763がエンボスされた複製層である。層74は反射層、層75は接着剤層である。
【0080】
エンボスフィルム7は、この構造を異にするエンボスフィルムの領域771〜774を有する。
【0081】
層72,73,74および75はそれぞれ、層21,22,23および26と同様である。層74は、薄い、真空蒸着された金属層または高屈折率(HRI)層である。上記金属層のための材料は、クロム、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、銀または金またはこれらの金属の合金である。
【0082】
その場合に、反射層74は一部のみに、および模様を描いて形成されていてもよく、これによって、光学的セキュリティ素子が分的に反射性または透過性を備えることになる。
【0083】
回折構造761および762は、エンボスフィルム7の領域771および774にそれぞれエンボスされている。回折構造763は、エンボスフィルム7の領域772,773,774において複製層73にエンボスされている。一方の回折構造761および762と他方の回折構造763とは、対向する両側から複製層73にエンボスされ、回折構造762と763は、領域774において重なり合った関係にある。層74は、複製層73上に部分的にのみ配置されているので、回折構造763は、領域774および772においてのみ、液晶材料の層で覆われている。
【0084】
したがって、領域771〜774における種々の光学的効果は下記のようになる、すなわち、
領域771において回折構造761によって生成される回折効果は、この領域に例えば反射性ホログラフ的表現を生じさせる。隣接する関係にある領域772,773においては、例えば図6に示された実施の形態のように、回折構造763によって、ともに反射性の偏光表現およびホログラフ的表現が生成される。領域774においては、回折構造762によって生成される光学的回折効果は、層74によって生成される偏光効果に重ね合わされるので、入射光の偏光方向の変化に伴って例えばホログラフ的表現が変化する。
【0085】
図8は、6層81,82,83,84,85および86からなるステッカーフィルム8を示す。層81は担体層である。層82および85は、回折構造がそれぞれエンボスされた複製層である。層83は液晶材料からなる層である。層84および86は接着剤層である。
【0086】
層81,82,85と83,および84と86はそれぞれ、例えば図3の層31,32,33および34と同様である。
【0087】
ステッカーフィルム8は、図3におけるフィルム3と同様に作成される。次いで、そのように作成されたフィルム体上に、回折構造を備えた複製層および接着剤層86が、例えば貼付けフィルムを用いて貼りつけられる。
【0088】
図8における回折構造87および88の位置決めと同時に、回折構造87および88を、図7に示されているような回折構造763,761および762のように位置決めし、かつ部分的に形成された層83と組み合わせることができる。そうすれば、図8に示された層構造を用いて、図7に示された層構造の場合と同様の効果を得ることができる。
【0089】
さらに、回折構造87が光学的回折効果のみを有するように、層83が層85の下側に配置されることも可能である。
【0090】
図9は、5層91,92,93,94および95からなる光学的セキュリティ素子9を示す。層91は、回折構造96がエンボスされた複製層である。層92は液晶材料からなる層である。層94は反射層である。層93および92は、干渉により視角に応じてカラーシフトを生じる薄膜層システムを形成する。層95は接着剤層である。
【0091】
層91,92および95は、図2に示された層23,24および26と同様である。
【0092】
この薄膜層システムは、吸収層(30〜60%の透過率を有することが好ましい)と、色彩変化を生じさせる層(λ/4またはλ/2層)としての透明なスペーサ層と、光学的分離層(透光性素子の形成)または反射性層(反射性素子の形成)とからなる。その場合、上記スペーサ層の厚さは、反射性層を提供する場合にはλ/4の条件が満足され、透光性層を提供する場合にはλ/2の条件が満足され、ここでλは、肉眼で視ることができる範囲内であることが好ましい。
【0093】
吸収層は、例えば下記の材料、すなわち、クロム、ニッケル、パラディウム、チタン、コバルト、鉄、タングステン、酸化鉄または炭素のうちの一つ、または下記の材料の合金の一つで形成することができる。
【0094】
光学的分離層は、酸化物、硫化物またはカルコゲナイドのような特殊な材料とすることができる。材料に選択に関して重大なことは、屈折率においてスペーサ層と差があることである。この差は、0.2よりも小さくないことが好ましい。したがって、スペーサ層に用いられる材料に応じて、高屈折率(HRI)材料または低屈折率(LRI)材料が用い
られる。
【0095】
さらに、高屈折率層と低屈折率層との連続から、視角に応じて干渉によってカラーシフトを生じる薄膜層列を作成することも可能である。このような層構造が含まれている場合、吸着層の使用を省略することが可能である。このような薄膜層列の高屈折率層および低屈折率層は、上述の条件に適合する光学的効果を有するスペーサ層をそれぞれ形成する。選択される層の数が増加すればするほど、色彩変化効果を有する波長をシャープに生じさせる。このような薄膜層列に関しては、2〜10層(偶数変化)または3〜9層(奇数変化)からなる場合に特に有利である。
【0096】
このような薄膜層列の通常の層の例、および原則としてこのような薄膜層列に使用可能な材料の例は、国際公開第01/03945号パンフレットの第5頁第30行から第8頁第5行に記載されている。
【0097】
回折構造96の領域においては、薄膜層システム93によって生成される光学的干渉効果は、層92によって生成される偏光効果に重ね合わされる。視角に応じた、かつ薄膜層システム93によって生成される色彩変化効果は、光学的セキュリティ素子9の一部領域に関してのみ例えば入射光の偏光方向に応じて発生する。さらに、回折構造96および層92は、図5bに示された回折構造68および層66と同様にすることができ、したがって、回折的効果、光学的回折効果および偏光効果を組み合わせた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明による光学的セキュリティ素子を備えたセキュリティ文書の概略図である。
【図2】本発明によるエンボスフィルムの断面図である。
【図3】本発明による貼付けフィルムの断面図である。
【図4】有価文書に施された本発明による光学的セキュリティ素子の概略的断面図である。
【図5a】本発明による光学的セキュリティ素子の平面図である。
【図5b】図5aの光学的セキュリティ素子の断面図である。
【図6a】液晶分子の配向のための回折構造の概略図である。
【図6b】液晶分子の配向のための回折構造の概略図である。
【図6c】液晶分子の配向のための回折構造の概略図である。
【図6d】液晶分子の配向のための回折構造の概略図である。
【図6e】液晶分子の配向のための回折構造の概略図である。
【図7】本発明によるフィルムの第1の実施の形態の断面図である。
【図8】本発明によるフィルムの第2の実施の形態の断面図である。
【図9】本発明によるフィルムの第3の実施の形態の断面図である。
【符号の説明】
【0099】
1 セキュリティ文書
2,7 エンボスフィルム
3,8 ステッカーフィルム
4,6 光学的セキュリティエレメント
11,12 部分素子
21,31 担体層
23,32,42 複製層
24,27,33,43,66 液晶材料からなる層
27,35,46,51〜55 回折構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体層(21,31)および複製層(23,32)を備えたフィルム(2,3)、特にエンボスフィルム、貼合せフィルムまたはステッカーフィルムにおいて、
前記フィルムがさらに、前記複製層(23,32)上に施された液晶材料からなる層(24,33)を有し、該液晶材料からなる層(24,33)に面する前記複製層(23,32)の表面に、前記液晶材料の配向のための回折構造(27,35)がエンボスされ、該回折構造が、前記エンボス構造の配向方向の異なる少なくとも二つの部分領域を有することを特徴とするフィルム。
【請求項2】
前記回折構造は、前記配向方向が連続的に変化する一つの領域を有し、該領域が液晶材料からなる層で覆われていることを特徴とする請求項1記載のフィルム。
【請求項3】
前記回折構造は、配向方向の異なる互いに隣接する領域を有し、該領域が液晶材料からなる層で覆われていることを特徴とする請求項1記載のフィルム。
【請求項4】
前記回折構造(68)は、液晶材料の配向のために液晶材料からなる層(66)で覆われた第1の領域(62)を有し、かつ前記回折構造(68)は、光学的回折効果、特にホログラムを生じさせるための第2の領域(61,63)を有することを特徴とする請求項1記載のフィルム。
【請求項5】
前記第1の領域(62)において偏光表現が生成され、前記第2の領域(61,63)においてホログラフィー的表現が生成されて、互いに補足し合う表現を形成することを特徴とする請求項4記載のフィルム。
【請求項6】
前記回折構造は、或る光学的効果を生じさせるための粗大構造と、前記液晶材料の配向のための、空間周波数がより高い細密構造との重合せから前記回折構造(51〜55)が形成される一つの領域を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載のフィルム。
【請求項7】
前記細密構造が400nm未満の周期を有することを特徴とする請求項6記載のフィルム。
【請求項8】
前記細密構造の空間周波数が、前記粗大構造の空間周波数の少なくとも10倍高いことを特徴とする請求項6記載のフィルム。
【請求項9】
前記粗大構造が、光分散構造、特に周期が500nm〜1μmの等方性マット構造であることを特徴とする請求項6から8のいずれか1項記載のフィルム。
【請求項10】
前記粗大構造が、300本/mm未満の空間周波数を有するマクロ構造であることを特徴とする請求項6から8のいずれか1項」記載のフィルム。
【請求項11】
前記回折構造は、光学的効果を生じさせるための第1の構造と、前記液晶材料の配向のための、より深い溝の深さを有する第2の構造との重合せから前記回折構造が形成される一つの領域を有することを特徴とする請求項1から10のいずれか1項記載のフィルム。
【請求項12】
前記第1の構造の溝の深さが250nm〜400nmの範囲内にある場合に、前記第2の構造の溝の深さが、前記第1の構造の溝の深さよりも少なくとも100nm深いことを特徴とする請求項11記載のフィルム。
【請求項13】
液晶材料が模様を形成する態様で前記回折構造を部分的に覆っていることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項記載のフィルム。
【請求項14】
前記複数の層の一つ特に液晶層が部分的に異なる厚さを有することを特徴とする請求項1から13のいずれか1項記載のフィルム。
【請求項15】
構造化された層の狙いを定めた配向変化によって色彩の動きが生成されることを特徴とする請求項1から14のいずれか1項記載のフィルム。
【請求項16】
前記フィルム(2,3)が、液晶材料からなる層(24,33)を覆う保護ラッカー層(25,34)を備えていることを特徴とする請求項1から15のいずれか1項記載のフィルム。
【請求項17】
前記フィルム(8)が、さらなる光学的効果を有する回折構造(88)を有するさらなる層(85)を備えていることを特徴とする請求項1から16のいずれか1項記載のフィルム。
【請求項18】
前記フィルム(7)のさらなる光学的効果を有する回折構造(762,761)が、液晶材料からなる層(74)から離れた複製層(73)の表面にエンボスされていることを特徴とする請求項1から17のいずれか1項記載のフィルム。
【請求項19】
前記さらなる光学的効果を有する回折構造が、前記回折構造に少なくとも部分的に覆い被さっていることを特徴とする請求項17または18記載のフィルム。
【請求項20】
前記さらなる光学的効果を有する回折構造が、さらなる層または前記複製層を部分的にのみ覆ってなることを特徴とする請求項8から10のいずれか1項記載のフィルム。
【請求項21】
前記フィルムが、干渉によりカラーシフトを生じさせるための薄膜システム(93)を有することを特徴とする請求項1から20のいずれか1項記載のフィルム。
【請求項22】
前記薄膜層システム(93)が前記回折構造(96)に少なくとも部分的に覆い被さっていることを特徴とする請求項21記載のフィルム。
【請求項23】
前記フィルムが、反射層を備えた転写フィルムであることを特徴とする請求項1から20のいずれか1項記載のフィルム。
【請求項24】
前記反射層が部分的な層であることを特徴とする請求項23記載のフィルム。
【請求項25】
紙幣、クレジットカード等を防護するための光学的セキュリティ素子(11,12;4)であって、該光学的セキュリティ素子(11,12;4)が複製層(42)を備えたものにおいて、
前記光学的セキュリティ素子(11,12;4)がさらに、前記複製層(42)に施される液晶材料からなる層(43)を有し、該液晶材料からなる層(43)に面する前記複製層(42)の表面に、前記液晶材料の配向のための回折構造(46)がエンボスされ、該回折構造が、前記エンボス構造の配向方向の異なる少なくとも二つの部分領域を有することを特徴とする光学的セキュリティ素子。
【請求項26】
前記光学的セキュリティ素子が2部分に分れたセキュリティ素子であり、第1の部分素子(11)は、複製層と液晶材料からなる層とを備え、第2の部分素子(12)は、前記液晶材料からなる層によって生成されるセキュリティ特徴を検査するための偏光子を備えていることを特徴とする請求項25記載の光学的セキュリティ素子。
【請求項27】
前記光学的セキュリティ素子が2部分またはそれ以上の部分に分れたセキュリティ素子であり、第1の部分素子および第2の部分素子の双方が、複製層に施された液晶材料からなる層を備え、前記複製層に、液晶ポリマー材料の配向のための回折構造がエンボスされ、該回折構造は、前記エンボス構造に関して配向方向の異なる少なくとも二つの部分領域を有し、前記第2の部分素子が、前記第1の部分素子によって生成されるセキュリティ特徴を検査するのに役立つことを特徴とする請求項25記載の光学的セキュリティ素子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

image rotate

image rotate

image rotate

image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2006−525139(P2006−525139A)
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504299(P2006−504299)
【出願日】平成16年4月8日(2004.4.8)
【国際出願番号】PCT/DE2004/000761
【国際公開番号】WO2004/095090
【国際公開日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(398058348)レオナード クルツ ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲー (9)
【Fターム(参考)】