説明

フィルムコンデンサ及びその製造方法

【課題】フィルム上に金属膜が形成された金属化フィルムを捲回してなるフィルムコンデンサにおいて、基材上にコーティング組成物を塗布してフィルムを形成するコーティング法の製造コストを低減できるような構成を得る。
【解決手段】金属箔(19c)上にコーティング組成物を塗布してなる絶縁フィルム(19a)の表面上に、幅方向端部にマージン部(21)が設けられるように金属膜(19b)を形成してなる両面電極フィルム(19)と、金属化フィルム(20)とを、該両面電極フィルム(19)において上記マージン部(21)が設けられた幅方向端部で金属箔(19c)を上記引出電極(14)の一方に電気的に接続するとともに、該両面電極フィルム(19)の金属膜(19b)を上記引出電極(15)の他方に電気的に接続するように、重ね合わせて捲回する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム上に金属膜が形成された金属化フィルムを捲回してなるフィルムコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、フィルム上に金属膜が形成された金属化フィルムを捲回してなるフィルムコンデンサが知られている。このようなフィルムコンデンサは、電子機器や電気機器等において、特に安定した電気特性を要する回路に多く用いられている。
【0003】
上記フィルムコンデンサの一般的な構成としては、フィルム上に金属膜を形成してなる金属化フィルムを、2枚重ね合わせた状態で捲回し、その両端部にリード線に繋がる引出電極が形成されたものが知られている。このような構成のフィルムコンデンサにおいて、上記フィルムを形成する方法としては、例えば特許文献1に開示されるように、材料を延伸してフィルム化する溶融混練法や、コーティング組成物を基材に塗布して乾燥させることによりフィルムを形成するコーティング法などが知られている。
【0004】
一方、近年では、フィルムコンデンサの小型化・大容量化が進み、フィルムコンデンサのさらなる高誘電率化が求められているため、上記特許文献1に開示されているような高誘電性フィルムが考えられている。この高誘電性フィルムは、その材料物性により、延伸させてフィルム化するのが困難であるため、上記コーティング法によって形成する必要がある。そのため、上記特許文献1には、ポリマーを溶剤に溶解し、これに無機強誘電体粒子を添加混合したコーティング組成物を基材に塗布して乾燥させることによりフィルムを形成した後、該基材からフィルムを剥離させることで高誘電性フィルムが得られる点が開示されている。
【特許文献1】特開2008−34189号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のように、フィルムをコーティング法によって形成する場合には、コーティング組成物を塗布するための基材が必要になるとともに、該基材上に形成されたフィルムを剥離する必要があり、上記基材の材料コストや剥離作業の分、製造コストや作業負担が増大する。しかも、上記コーティング法では、基材としてフィルムを剥離しやすいような特殊な表面処理を施した材料を用いる必要があるが、該表面処理を施していない一般的な材料に比べると材料コストが高く、また、フィルム形成に一度使用された基材は、フィルム形成時の変形やごみなどの付着により再利用が難しい。したがって、基材上に形成されたフィルムを剥離するコーティング法は、溶融混練法などの他の方法に比べて製造コストが高くなるという問題があった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、フィルム上に金属膜が形成された金属化フィルムを捲回してなるフィルムコンデンサにおいて、基材上にコーティング組成物を塗布してフィルムを形成するコーティング法の製造コストを低減できるような構成を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るフィルムコンデンサ(11)では、一対の金属化フィルム(19,20)のうち少なくとも一方を、金属箔(19c)上にコーティング組成物が塗布されてなるフィルム体(19a)に金属膜(19b)が形成された両面電極フィルム(19)とし、該両面電極フィルム(19)の金属箔(19c)及び金属膜(19b)がそれぞれ別の引出電極(14,15)に電気的に接続されるように上記一対の金属化フィルム(19,20)を重ね合わせるようにした。
【0008】
具体的には、第1の発明は、フィルム体(19a,20a)上にそれぞれ金属膜(19b,20b)が形成された一対の金属化フィルム(19,20)を重ね合わせた状態で捲回し、その両端部に引出電極(14,15)が形成されてなるフィルムコンデンサを対象とする。
【0009】
そして、上記一対の金属化フィルム(19,20)のうち少なくとも一方は、金属箔(19c)上にコーティング組成物を塗布してなる上記フィルム体(19a)の表面上に、幅方向両端部の少なくとも一方にマージン部(21)が設けられるように上記金属膜(19b)が形成されてなる両面電極フィルム(19)であり、上記一対の金属化フィルム(19,20)は、上記両面電極フィルム(19)において上記マージン部(21)が設けられた幅方向端部で金属箔(19c)を上記引出電極(14)の一方に電気的に接続するとともに、該両面電極フィルム(19)の金属膜(19b)を上記引出電極(15)の他方に電気的に接続するように、重ね合わされているものとする。
【0010】
この構成により、金属箔(19c)上にコーティング組成物を塗布してなるフィルム体(19a)の表面上に、金属膜(19b)を形成することで両面電極フィルム(19)が構成されるため、コーティング組成物を塗布することによりフィルム体(19a)を形成するコーティング法の場合でも、その基材としての金属箔(19c)からフィルム体(19a)を剥離することなく、該金属箔(19c)をそのまま電極として利用することができる。したがって、コーティング法の場合に、コストアップの要因となる、特殊な表面処理が施された基材が不要になるため、コストアップの増大を防止することができる。しかも、基材からフィルム体(19a)を剥離する作業が不要になるため、フィルム製造作業の軽減を図れる。
【0011】
また、上記両面電極フィルム(19)は、マージン部(21)が設けられている幅方向端部で金属箔(19c)が引出電極(14)の一方に電気的に接続され、金属膜(19b)が引出電極(15)の他方に電気的に接続されるため、該両面電極フィルム(19)で短絡が生じるのを防止でき、該両面電極フィルム(19)によってフィルムコンデンサ(11)を構成することができる。
【0012】
上述の構成において、上記一対の金属化フィルム(19,20)の他方は、誘電体によって構成される上記フィルム体(20a)の表面上に、上記金属膜(20b)が形成されてなる片面電極フィルム(20)であり、上記一対の金属化フィルム(19,20)は、それぞれの金属膜(19b,20b)同士が接触し、且つ、上記両面電極フィルム(19)の金属箔(19c)を上記引出電極(14)の一方に電気的に接続するとともに、該両面電極フィルム(20)の金属膜(20b)を上記片面電極フィルム(19)の金属膜(19b)を介して上記引出電極(15)の他方に電気的に接続するように、幅方向にずれて重ね合わされているのが好ましい(第2の発明)。
【0013】
このように上記両面電極フィルム(19)に対して片面電極フィルム(20)を重ねて捲回することで、簡単且つコンパクトな構成によって、該両面電極フィルム(19)において電極間で短絡が発生するのを防止することができ、上記第1の発明の構成を容易に実現することができる。
【0014】
第3の発明は、上記第1の発明の構成を有するフィルムコンデンサの製造方法に関するものである。
【0015】
具体的には、フィルム体(19a,20a)上にそれぞれ金属膜(19b,20b)が形成された一対の金属化フィルム(19,20)を重ね合わせた状態で捲回し、その両端部に引出電極(14,15)が形成されてなるフィルムコンデンサの製造方法を対象とする。
【0016】
そして、金属箔(19c)上にコーティング組成物を塗布することにより形成される上記フィルム体(19a)の表面上に、幅方向両端部の少なくとも一方にマージン部(21)が設けられるように上記金属膜(19b)を形成することで、上記一対の金属化フィルム(19,20)の少なくとも一方のフィルムとしての両面電極フィルム(20)を形成する両面電極フィルム形成工程と、上記一対の金属化フィルム(19,20)を、それぞれの金属膜(19b,20b)同士が接触し、且つ、上記両面電極フィルム(19)のマージン部(21)の少なくとも一部が露出するように、幅方向にずらした状態で重ね合わせて捲回する捲回工程と、上記捲回工程によって捲回された上記一対の金属化フィルム(19,20)の両端部に上記引出電極(14,15)を形成する引出電極形成工程と、を有しているものとする。
【0017】
以上の方法により、コーティング法によって基材としての金属箔(19c)上にコーティング組成物を塗布してフィルム体(19a)を形成し、該フィルム体(19a)上に金属膜を形成することで、金属化フィルム(19)を構成することができ、基材としての金属箔(19c)からフィルム体(19a)を剥離させることなく、他の金属化フィルム(20)と重ね合わせて捲回することで、フィルムコンデンサ(11)を構成することができる。したがって、剥離可能な基材が不要になるとともに、剥離工程も不要になるため、基材の材料コストの低減やフィルムコンデンサの製造作業の軽減を図れる。
【0018】
しかも、上述のようにフィルム体(19a)を金属箔(19c)から剥離させることなく該金属箔(19c)をそのまま電極として利用する上記両面電極フィルム(19)と、他の金属化フィルム(20)とを、それぞれの金属膜(19b,20b)が接触し、且つ、両面電極フィルム(19)のマージン部(21)が露出するように、幅方向にずらした状態で重ね合わせて捲回することで、両面電極フィルム(19)の電極間で短絡が発生するのを防止することができ、両面電極フィルム(19)を用いてフィルムコンデンサ(11)を構成することができる。
【0019】
また、誘電体によって構成される上記フィルム体(20a)上に上記金属膜(20b)を形成することで、上記一対の金属化フィルム(19,20)の他方のフィルムとしての片面電極フィルム(20)を形成する片面電極フィルム形成工程を有していて、上記捲回工程では、上記両面電極フィルム(19)及び片面電極フィルム(20)を、それぞれの金属膜(19b,20b)同士が接触し、且つ、上記両面電極フィルム(19)の金属箔(19c)と片面電極フィルム(20)の金属膜(20b)とが幅方向にずれて上記マージン部(21)の少なくとも一部が露出するように、幅方向にずらした状態で重ね合わせて捲回するのが好ましい(第4の発明)。
【0020】
これにより、両面電極フィルム(19)及び片面電極フィルム(20)によってフィルムコンデンサ(11)を構成することができる。すなわち、フィルム体(19a)を金属箔(19c)から剥離させることなく該金属箔(19c)をそのまま電極として利用する上記両面電極フィルム(19)と片面電極フィルム(20)とを、それぞれの金属膜(19b,20b)同士が接触し、且つ、両面電極フィルム(19)の金属箔(19c)と片面電極フィルム(20)の金属膜(20b)とが幅方向にずれてマージン部(21)が露出するように、幅方向にずらした状態で重ね合わせて捲回することで、両面電極フィルム(19)の電極間で短絡が発生するのを防止することができ、両面電極フィルム(19)及び片面電極フィルム(20)によってフィルムコンデンサ(11)を構成することができる。
【0021】
また、上記両面電極フィルム形成工程は、金属箔(19c)上にコーティング組成物を塗布してフィルム体(19a)を形成するフィルム体形成工程と、上記フィルム体(19a)上に幅方向に所定の間隔を空けて複数の金属膜(19b,19b,…)を形成する金属膜形成工程と、上記金属膜(19b,19b)同士の間で上記フィルム体(19a)及び金属箔(19c)を切断するフィルム切断工程と、を備えているのが好ましい(第5の発明)。
【0022】
これにより、両面電極フィルム(19)を製作する際に、まとめて複数のフィルム(19)を一度に製作できるため、生産効率の向上を図れる。しかも、上述のような方法によって上記両面電極フィルム(19)を製作すると、該両面電極フィルム(19)の幅方向両端部にマージン部(21,21)が形成されるため、該両面電極フィルム(19)の金属膜(19b)が引出電極(14,15)に直接、接触して短絡が発生するのを確実に防止できる。
【発明の効果】
【0023】
第1の発明によれば、基材としての金属箔(19c)上にコーティング組成物を塗布することにより形成されたフィルム体(19a)上に金属膜(19b)を形成してなる両面電極フィルム(19)を、マージン部(21)が形成された幅方向端部で金属箔(19c)が引出電極(14)の一方に、金属膜(19b)が引出電極(15)の他方に、それぞれ電気的に接続されるように、別の金属化フィルム(20)とともに重ね合わせた状態で捲回することで、基材を剥離させることなくそのまま電極として利用してフィルムコンデンサ(11)を構成できるため、コスト低減及び作業軽減を図れる。
【0024】
また、第2の発明によれば、上記両面電極フィルム(19)に対して片面電極フィルム(20)を、それぞれの金属膜(19b,20b)同士が接触し、且つ、上記両面電極フィルム(19)の金属箔(19c)を引出電極(14)の一方に、該両面電極フィルム(19)の金属膜(19b)を片面電極フィルム(20)の金属膜(20b)を介して引出電極(15)の他方に、それぞれ接続するように、幅方向にずらして重ね合わせることで、両フィルム(19,20)の電極間で短絡が発生するのを確実に防止することができ、上記第1の発明の構成を容易に実現できる。
【0025】
第3の発明によれば、両面電極フィルム(19)を形成する両面電極フィルム形成工程と、該両面電極フィルム(19)及び他の金属化フィルム(20)を、それぞれの金属膜(19b,20b)同士が接触し、且つ、両面電極フィルム(19)のマージン部(21)が露出するように幅方向にずらした状態で重ね合わせて捲回する捲回工程と、を備えているため、上記第1の発明の構成のフィルムコンデンサ(11)を得ることができる。
【0026】
また、第4の発明によれば、片面電極フィルム(20)を形成する片面電極フィルム形成工程を備えていて、捲回工程では、両面電極フィルム(19)及び片面電極フィルム(20)を、それぞれの金属膜(19b,20b)同士が接触し、且つ、上記両面電極フィルム(19)の金属箔(19c)と片面電極フィルム(20)の金属膜(20b)とが幅方向にずれて上記マージン部(21)が露出するように、幅方向にずらした状態で重ね合わせるため、上記第2の発明の構成のフィルムコンデンサ(11)を得ることができる。
【0027】
さらに、第5の発明によれば、金属箔(19c)上にコーティング組成物を塗布してフィルム体(19a)を形成した後、該フィルム体(19a)上に幅方向に所定の間隔を空けて金属膜(19b)を形成し、該金属膜(19b,19b)同士の間でフィルム体(19a)及び金属箔(19c)を切断するようにしたため、両面電極フィルム(19)を効率良く製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0029】
(全体構成)
本発明の実施形態に係るフィルムコンデンサ(11)は、図1に示すように、巻芯(13)に捲回されたコンデンサ素子(12)の両端部にメタリコン電極(14,15)が設けられたもので、例えばインバータ回路とコンバータ回路との間の平滑コンデンサ等に用いられる。
【0030】
詳しくは、上記フィルムコンデンサ(11)は、コンデンサ素子(12)と、該コンデンサ素子(12)が捲回される巻芯(13)と、該コンデンサ素子(12)に設けられた2つのメタリコン電極(14,15)(引出電極)と、それらのメタリコン電極(14,15)にそれぞれ電気的に接続された外部端子(16,17)と、該コンデンサ素子(12)、巻芯(13)、メタリコン電極(14,15)及び外部端子(16,17)を封止するための封止樹脂(18)とを備えている。
【0031】
上記コンデンサ素子(12)は、詳しくは後述するように、例えば誘電体フィルムからなる帯状の絶縁フィルム(19a,20a)(フィルム体)にアルミニウムや金等の金属箔を蒸着させて金属膜(19b,20b)を形成した2枚の金属化フィルム(19,20)(一対の金属化フィルム)を重ね合わせてなるもので、上記巻芯(13)の外周面上に捲回されるように構成されている。
【0032】
また、詳しくは後述するように、上記2枚の金属化フィルム(19,20)は、巻芯(13)の軸方向にずれるように互いに重ね合わされた状態で、上記巻芯(13)上に捲回されている。こうすることで、捲回されたコンデンサ素子(12)における巻芯(13)の軸方向の一端部には、金属化フィルム(19,20)のうちの一方が、該軸方向の他端部には金属化フィルム(19,20)のうちの他方がはみ出した状態となっている(図2参照)。
【0033】
上記巻芯(13)は、上記図1に示すように、例えば円筒状の樹脂部材からなる。この巻芯(13)は、軸方向長さが上記金属化フィルム(19,20)の幅と同等であり、上述のとおり、その外周面上に該金属化フィルム(19,20)を捲回可能に構成されている。
【0034】
上記メタリコン電極(14,15)は、巻芯(13)上に捲回されて概略円柱状に形成された金属化フィルム(19,20)の軸方向両端部にそれぞれ設けられている。このメタリコン電極(14,15)は、それぞれ、金属化フィルム(19,20)の軸方向端部に金属を溶射することによって形成されていて、軸方向端部においてはみ出している金属化フィルム(19,20)とそれぞれ電気的に導通している。
【0035】
上記外部端子(16,17)は、その基端部が上記巻芯(13)に対応する位置で、メタリコン電極(14,15)と電気的に接続されている。これらの外部端子(16,17)は、メタリコン電極(14,15)の径方向外方に向かって延びて、その先端部が上記封止樹脂(18)から外方に突出して基板(25)に接続されている。
【0036】
上記封止樹脂(18)は、上記金属化フィルム(19,20)の外周側、メタリコン電極(14,15)及び外部端子(16,17)の基端部を封止するように設けられている。すなわち、この封止樹脂(18)は、外部端子(16,17)の先端側を除いて、フィルムコンデンサ(11)の構成部品全体を覆うように設けられている。
【0037】
なお、本実施形態に係るフィルムコンデンサ(11)は、封止樹脂(18)が外側に露出しているが、この限りではなく、捲回された金属化フィルム(19,20)をコンデンサケース内に収納して、該ケース内に封止樹脂(18)を充填したものであってもよい。
【0038】
(金属化フィルム)
上述のとおり、フィルムコンデンサ(11)は、2枚の金属化フィルム(19,20)を重ね合わせた状態で巻芯(13)に捲回することによって構成される。この2枚の金属化フィルム(19,20)のうち、一方の金属化フィルム(19)は、絶縁フィルム(19a)の両面に電極が形成された、いわゆる両面電極フィルムであり、他方の金属化フィルム(20)は、絶縁フィルム(20a)の片面にのみ電極が形成された、いわゆる片面電極フィルムである。
【0039】
上記両面電極フィルム(19)は、金属箔(19c)上にコーティング組成物を塗布することにより絶縁フィルム(19a)を形成し、該絶縁フィルム(19a)上に金属膜(19b)を蒸着によって形成したもので、上記金属箔(19c)及び金属膜(19b)が電極として機能するように構成されている。ここで、上記コーティング組成物は、例えば特開2008−34189号公報に開示される材質からなり、その一例として、熱可塑性の非フッ素ポリマーと、無機強誘電体粒子と、カップリング剤、界面活性剤またはエポキシ基含有化合物の少なくとも1種からなる親和性向上剤と、溶剤とを含んでいて、高誘電性フィルムを形成可能な材料とする。
【0040】
上記高誘電性フィルムを形成する場合には、コーティング組成物の材料特性や、高誘電化のためにはボイドの少ない薄膜を形成する必要があるという観点などから、延伸させて薄膜化する溶融混練法では均一なフィルムを形成するのが難しいため、基材上にコーティング組成物を塗布して乾燥させる、いわゆるコーティング法が用いられる。このコーティング法では、一般的に、基材上にフィルム材料を塗布してフィルムを形成するため、該基材が必要になるとともに、基材からフィルムを剥離させる作業も必要になり、コストの増大や作業工数の増加を招くことになるが、上述のように、基材を金属箔(19c)として、その表面上にコーティング組成物を塗布して乾燥させることで、該金属箔(19c)をそのまま電極の一つとして用いることができる。これにより、フィルム形成のための基材が不要になるとともに、該基材からフィルムを剥離する作業も不要になるため、コスト低減及び作業軽減を図れる。
【0041】
また、上記両面電極フィルム(19)には、その幅方向両端部に、上記金属膜(19b)が形成されていないマージン部(21,21)が設けられている。このマージン部(21)は、両面電極フィルム(19a)の金属膜(19b)が直接、メタリコン電極(14,15)に接続されるのを防止するために設けられている。すなわち、後述するように、上記両面電極フィルム(19)は、金属箔(19c)の幅方向端部でメタリコン電極(14)に電気的に接続されるため、上記マージン部(21)を設けることによって、上記金属膜(19b)がメタリコン電極(14,15)に直接、電気的に接続されて上記両面電極フィルム(19)内で短絡が発生するのを防止することができる。
【0042】
上記片面電極フィルム(20)は、PETなどの誘電体からなる絶縁フィルム(20a)上に金属膜(20b)が蒸着によって形成されたもので、該金属膜(20b)が電極として機能するように構成されている。
【0043】
上記図2に示すように、この実施形態では、上記両面電極フィルム(19)及び片面電極フィルム(20)は、それぞれの金属膜(19b,20b)同士が接触し、且つ、該片面電極フィルム(20)の金属膜(20b)が両面電極フィルム(19)の金属箔(19b)に対して幅方向にずれるように、重ね合わされている。より詳しくは、上記片面電極フィルム(20)は、両面電極フィルム(19)の一方のマージン部(21)を露出させるように、該両面電極フィルム(19)の金属膜(19b)の側辺に合わせて重ね合わされている。これにより、上記片面電極フィルム(20)の反対側の幅方向端部は、上記両面電極フィルム(19)よりも幅方向外方に位置付けられている。
【0044】
上述のように両面電極フィルム(19)及び片面電極フィルム(20)を重ね合わせることで、該両面電極フィルム(19)の幅方向一端側が片面電極フィルム(20)よりも幅方向外方に位置するとともに、該片面電極フィルム(20)の幅方向他端側が両面電極フィルム(19)よりも幅方向外方に位置した状態となる。この状態で、上記両面電極フィルム(19)及び片面電極フィルム(20)を巻芯(13)に捲回して、両端部に金属を溶射してメタリコン電極(14,15)を形成することで、図3に示すような構成が得られる。
【0045】
上記図3に示すように、上記両面電極フィルム(19)の幅方向の一端側は、メタリコン電極(14)に接続されているため、該両面電極フィルム(19)の金属箔(19c)がメタリコン電極(14)に電気的に接続されている。一方、上記片面電極フィルム(20)の幅方向の他端側は、メタリコン電極(15)に接続されているため、該片面電極フィルム(20)の金属膜(20b)がメタリコン電極(15)に電気的に接続されている。また、上記両面電極フィルム(19)と片面電極フィルム(20)とは、それぞれの金属膜(19b,20b)同士が接触しているため、該両面電極フィルム(19)の金属膜(19b)は片面電極フィルム(20)の金属膜(20b)を介してメタリコン電極(15)に電気的に接続されている。
【0046】
これにより、上記両面電極フィルム(19)の電極間での短絡の発生を防止することができ、上記両面電極フィルム(19)において、金属箔(19c)と金属膜(19b)との間の絶縁フィルム(19a)に第1のコンデンサが形成されるとともに、上記片面電極フィルム(20)において、金属膜(20b)と両面電極フィルム(19)の金属箔(19c)との間(絶縁フィルム(20a)及び空気層)に第2のコンデンサが形成される。
【0047】
(製造方法)
次に、上述のような構成を有するフィルムコンデンサ(11)の製造方法について、以下で説明する。
【0048】
まず、両面電極フィルム(19)の製造方法について説明する。金属箔(19c)上に高誘電性のコーティング組成物を塗布して乾燥させることにより、該金属箔(19c)及び絶縁フィルム(19a)からなる2層のフィルムを形成する。そして、図4に示すように、絶縁フィルム(19a)の表面上に、フィルム幅方向に所定の間隔を空けて、列状の金属膜(19b)を蒸着により形成する。その後、金属膜(19b,19b)同士の間(図中の破線部分)で絶縁フィルム(19a)及び金属箔(19c)を切断して、両面電極フィルム(19)を形成する。こうすることで、各両面電極フィルム(19)の幅方向両端部にマージン部(21,21)を形成することができる。
【0049】
一方、片面電極フィルム(20)は、予めフィルム状に形成されたPETなどの絶縁フィルム(20a)上に、金属膜(20b)を蒸着により形成する。
【0050】
そして、これらの両面電極フィルム(19)及び片面電極フィルム(20)を、図2に示すように、それぞれの金属膜(19b,20b)同士が接触し、且つ、両面電極フィルム(19)のマージン部(21)が露出するように該両面電極フィルム(19)に対して片面電極フィルム(20)を幅方向にずらして重ね合わせ、その状態で巻芯(13)の外周面上に捲回する。
【0051】
上記両面電極フィルム(19)及び片面電極フィルム(20)を巻芯(13)上に捲回した後、その両端部に金属を溶射してメタリコン電極(14,15)を形成し、該メタリコン電極(14,15)にそれぞれ外部電極(16,17)を取り付ける。
【0052】
その後、封止樹脂(18)によって、上記両面電極フィルム(19)、片面電極フィルム(20)、メタリコン電極(14,15)及び外部端子(16,17)の基端側を封止する。
【0053】
ここで、金属箔(19c)上にコーティング組成物を塗布して絶縁フィルム(19a)を形成し、該絶縁フィルム(19a)上に金属膜(19b)を形成する工程が両面電極フィルム形成工程に、絶縁フィルム(20a)上に金属膜(20b)を形成する工程が片面電極フィルム形成工程に、これらの両面電極フィルム(19)及び片面電極フィルム(20)を、金属膜(19b,20b)同士が接触し且つ該両面電極フィルム(19)のマージン部(21)が露出するように幅方向にずらして重ね合わせて捲回する工程が捲回工程に、捲回されたフィルム(19,20)の両端部にメタリコン電極(14,15)を形成する工程が引出電極形成工程に、それぞれ対応している。
【0054】
また、上記両面電極フィルム形成工程のうち、金属箔(19c)上にコーティング組成物を塗布して絶縁フィルム(19a)を形成する工程がフィルム体形成工程に、該絶縁フィルム(19a)上に幅方向に所定の間隔を空けて複数の金属膜(19b,19b,…)を形成する工程が金属膜形成工程に、これらの金属膜(19b,19b)同士の間で2層フィルムを切断する工程がフィルム切断工程に、それぞれ対応している。
【0055】
−実施形態の効果−
以上より、この実施形態によれば、金属箔(19c)上にコーティング組成物を塗布して形成された絶縁フィルム(19a)の表面に金属膜(19b)が形成されてなる両面電極フィルム(19)を、そのまま用いてフィルムコンデンサ(11)を構成したため、従来のように、絶縁フィルムを基材から剥離させる必要がなくなり、該基材を剥離しやすい高コストなものにする必要がなくなるとともに、該基材から絶縁フィルム(19)を剥離する作業が不要になる。したがって、フィルムコンデンサ(11)の製造コストの低減を図れる。
【0056】
具体的には、上記両面電極フィルム(19)に対して、金属膜(19b,20b)同士が接触し、且つ、該両面電極フィルム(19)の幅方向端部に形成されたマージン部(21)が露出するように、該両面電極フィルム(19)の金属箔(19c)と片面電極フィルム(20)の金属膜(20b)とを幅方向にずらして重ね合わせて両フィルム(19,20)を捲回することで、上記両面電極フィルム(19)を一方のメタリコン電極(14)のみに電気的に接続するとともに、該両面電極フィルム(19)の金属膜(19b)を他方のメタリコン電極(15)のみに電気的に接続することが可能となり、両面電極フィルム(19)内での短絡発生を防止することができる。したがって、上記両面電極フィルム(19)を用いてフィルムコンデンサ(11)を構成することができる。
【0057】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0058】
上記実施形態では、両面電極フィルム(19)に対して、片面電極フィルム(20)を重ね合わせてフィルムコンデンサ(11)を構成しているが、これに限らず、同じ両面電極フィルム(19)を2枚、重ね合わせて捲回することによりフィルムコンデンサを構成してもよい。なお、この場合にも、両面電極フィルムでの短絡発生を防止するために、両面電極フィルム同士を幅方向にずらした状態で重ね合わせればよい。
【0059】
また、上記実施形態では、両面電極フィルム(19)の幅方向両端部にマージン部(21,21)を設けているが、この限りではなく、両面電極フィルムの幅方向端部の一方にのみマージン部を設けてもよい。なお、この場合には、マージン部が露出するように、両面電極フィルム(19)に対して片面電極フィルム(20)を幅方向にずらして重ね合わせる必要がある。
【0060】
さらに、上記実施形態では、両面電極フィルム(19)の絶縁フィルム(19a)の材料として、特開2008−34189号公報に開示されている材料を挙げているが、この限りではなく、延伸させて薄膜化する溶融混練法ではフィルム化できないような材料であれば、どのような材料であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上説明したように、本発明は、絶縁フィルム上に金属膜が形成された金属化フィルムを捲回してなるフィルムコンデンサにおいて、該絶縁フィルムをコーティング法によって形成する場合に特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係るフィルムコンデンサの概略構成を示す縦断面図である。
【図2】図2は、両面電極フィルムと片面電極フィルムとを重ね合わせた状態を模式的に示す図である。
【図3】図3は、両面電極フィルム及び片面電極フィルムとメタリコン電極との関係を示す部分拡大断面図である。
【図4】図4は、両面電極フィルムの製造方法の一部を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0063】
11 フィルムコンデンサ
12 コンデンサ素子
14、15 メタリコン電極(引出電極)
19 両面電極フィルム(金属化フィルム)
19a、20a 絶縁フィルム(フィルム体)
19b、20b 金属膜
19c 金属箔
20 片面電極フィルム(金属化フィルム)
21 マージン部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム体(19a,20a)上にそれぞれ金属膜(19b,20b)が形成された一対の金属化フィルム(19,20)を重ね合わせた状態で捲回し、その両端部に引出電極(14,15)が形成されてなるフィルムコンデンサであって、
上記一対の金属化フィルム(19,20)のうち少なくとも一方は、金属箔(19c)上にコーティング組成物を塗布してなる上記フィルム体(19a)の表面上に、幅方向両端部の少なくとも一方にマージン部(21)が設けられるように上記金属膜(19b)が形成されてなる両面電極フィルム(19)であり、
上記一対の金属化フィルム(19,20)は、上記両面電極フィルム(19)において上記マージン部(21)が設けられた幅方向端部で金属箔(19c)を上記引出電極(14)の一方に電気的に接続するとともに、該両面電極フィルム(19)の金属膜(19b)を上記引出電極(15)の他方に電気的に接続するように、重ね合わされていることを特徴とするフィルムコンデンサ。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルムコンデンサにおいて、
上記一対の金属化フィルム(19,20)の他方は、誘電体によって構成される上記フィルム体(20a)の表面上に、上記金属膜(20b)が形成されてなる片面電極フィルム(20)であり、
上記一対の金属化フィルム(19,20)は、それぞれの金属膜(19b,20b)同士が接触し、且つ、上記両面電極フィルム(19)の金属箔(19c)を上記引出電極(14)の一方に電気的に接続するとともに、該両面電極フィルム(20)の金属膜(20b)を上記片面電極フィルム(19)の金属膜(19b)を介して上記引出電極(15)の他方に電気的に接続するように、幅方向にずれて重ね合わされていることを特徴とするフィルムコンデンサ。
【請求項3】
フィルム体(19a,20a)上にそれぞれ金属膜(19b,20b)が形成された一対の金属化フィルム(19,20)を重ね合わせた状態で捲回し、その両端部に引出電極(14,15)が形成されてなるフィルムコンデンサの製造方法であって、
金属箔(19c)上にコーティング組成物を塗布することにより形成される上記フィルム体(19a)の表面上に、幅方向両端部の少なくとも一方にマージン部(21)が設けられるように上記金属膜(19b)を形成することで、上記一対の金属化フィルム(19,20)の少なくとも一方のフィルムとしての両面電極フィルム(20)を形成する両面電極フィルム形成工程と、
上記一対の金属化フィルム(19,20)を、それぞれの金属膜(19b,20b)同士が接触し、且つ、上記両面電極フィルム(19)のマージン部(21)の少なくとも一部が露出するように、幅方向にずらした状態で重ね合わせて捲回する捲回工程と、
上記捲回工程によって捲回された上記一対の金属化フィルム(19,20)の両端部に上記引出電極(14,15)を形成する引出電極形成工程と、を有していることを特徴とするフィルムコンデンサの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のフィルムコンデンサの製造方法において、
誘電体によって構成される上記フィルム体(20a)上に上記金属膜(20b)を形成することで、上記一対の金属化フィルム(19,20)の他方のフィルムとしての片面電極フィルム(20)を形成する片面電極フィルム形成工程を有していて、
上記捲回工程では、上記両面電極フィルム(19)及び片面電極フィルム(20)を、それぞれの金属膜(19b,20b)同士が接触し、且つ、上記両面電極フィルム(19)の金属箔(19c)と片面電極フィルム(20)の金属膜(20b)とが幅方向にずれて上記マージン部(21)の少なくとも一部が露出するように、幅方向にずらした状態で重ね合わせて捲回することを特徴とするフィルムコンデンサの製造方法。
【請求項5】
請求項3または4に記載のフィルムコンデンサの製造方法において、
上記両面電極フィルム形成工程は、
金属箔(19c)上にコーティング組成物を塗布してフィルム体(19a)を形成するフィルム体形成工程と、
上記フィルム体(19a)上に幅方向に所定の間隔を空けて複数の金属膜(19b,19b,…)を形成する金属膜形成工程と、
上記金属膜(19b,19b)同士の間で上記フィルム体(19a)及び金属箔(19c)を切断するフィルム切断工程と、
を備えていることを特徴とするフィルムコンデンサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−123867(P2010−123867A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−298249(P2008−298249)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】