フィルム状接着剤、接着シート、半導体装置、及び、半導体装置の製造方法
【課題】アルカリ現像液によるパターン形成性に優れ、露光後の十分な再接着性を有するとともに、低温貼付け性にも優れたフィルム状接着剤を提供する。
【解決手段】(A)アルカリ可溶性ポリマーと、(B)熱硬化性樹脂と、(C)一種又は複数の放射線重合性化合物と、(D)光開始剤と、を含有する感光性接着剤組成物をフィルム状に成形してなる、フィルム状接着剤であって、(C)放射線重合性化合物が、下記一般式(I)で表されるイソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジ又はトリアクリレートを含有するものであり、フィルム状接着剤の5%重量減少温度が260℃以上である、フィルム状接着剤1。
[式(I)中、R1は水素原子又は−COCH=CH2を示す。]
【解決手段】(A)アルカリ可溶性ポリマーと、(B)熱硬化性樹脂と、(C)一種又は複数の放射線重合性化合物と、(D)光開始剤と、を含有する感光性接着剤組成物をフィルム状に成形してなる、フィルム状接着剤であって、(C)放射線重合性化合物が、下記一般式(I)で表されるイソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジ又はトリアクリレートを含有するものであり、フィルム状接着剤の5%重量減少温度が260℃以上である、フィルム状接着剤1。
[式(I)中、R1は水素原子又は−COCH=CH2を示す。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性接着剤組成物、フィルム状接着剤、接着シート、接着剤パターンの形成方法、接着剤層付半導体ウェハ、半導体装置、及び、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品の高性能化、高機能化に伴い、種々の形態を有する半導体パッケージが提案されている。半導体パッケージにおいて、半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とを接着するための接着剤には、低応力性、低温接着性、耐湿信頼性、耐はんだリフロー性に加えて、半導体パッケージの機能、形態及び組立てプロセスの簡略化の手法によっては、パターン形成可能な感光性の機能を兼ね備えることが求められる場合がある。
【0003】
感光性とは光を照射した部分が化学的に変化し、水溶液や有機溶剤に不溶化又は可溶化する機能である。この感光性を有する感光性接着剤を用いると、フォトマスクを介して露光し、現像液によってパターン形成させることにより、高精細な接着剤パターンを形成することが可能となる。
【0004】
このようなパターン形成可能な感光性の機能を有する材料としては、これまで、フォトレジストの他、ポリイミド樹脂前駆体(ポリアミド酸)又はポリイミド樹脂をベースとした材料が使用されていた(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−290501号公報
【特許文献2】特開2001−329233号公報
【特許文献3】特開平11−24257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記感光性の機能を有する材料は、接着剤としての機能を想定した設計ではなかった。また、これらの材料を上述した半導体パッケージ用の接着剤として用いた場合、フォトレジストのような材料では耐熱性の確保が困難である。
【0007】
また、ポリイミド樹脂前駆体(ポリアミド酸)及びポリイミド樹脂の場合は、耐熱性の点では優れているが、前者のポリアミド酸を用いた場合は熱閉環イミド化時に、後者のポリイミド樹脂を用いた場合は加工時に、それぞれ300℃以上の高温を要するため、周辺材料への熱的ダメージが大きく、また、熱応力が発生しやすいなどの問題があった。
【0008】
なお、ポリイミド樹脂などを含む接着剤に熱硬化性樹脂を配合して架橋することにより、低温加工性及びはんだ耐熱性を改良することも試みられている。しかしながら、このような方法では、アルカリ現像液によるパターン形成性及び被着体への低温での貼り付け性の両方について同時に高いレベルを達成することは困難であった。また、上記従来の材料は、露光後に熱圧着したときに十分に高い接着力を発現することが可能な、良好な再接着性を付与することも困難であり、露光後の十分な再熱圧着性及び硬化後の十分に高い接着力の双方を達成することが困難であった。更に、上記従来の材料は、パターン形成し、被着体に圧着した後、加熱処理を行うと未反応成分が揮発し、被着体の剥離及び/又は素子汚染を引き起こす傾向にあった。
【0009】
本発明は、上述した従来技術の有する問題に鑑みてなされたものであり、アルカリ現像液によるパターン形成性に優れ、露光後の十分な再接着性を有し、フィルム状に形成した場合には低温貼付け性にも優れた感光性接着剤組成物を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、アルカリ現像液によるパターン形成性に優れ、露光後の十分な再接着性を有するとともに、低温貼付け性にも優れたフィルム状接着剤及び接着剤パターンの形成方法を提供することを目的とする。
【0011】
更に、本発明は、半導体装置組み立てプロセスの効率化に寄与できる接着シート、接着剤層付半導体ウェハ、半導体装置及び半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、(A)アルカリ可溶性ポリマーと、(B)熱硬化性樹脂と、(C)一種又は複数の放射線重合性化合物と、(D)光開始剤と、を含有し、組成物中の全放射線重合性化合物の混合物の5%重量減少温度が200℃以上である、感光性接着剤組成物を提供する。
【0013】
本発明の感光性接着剤組成物によれば、上記構成を有することにより、アルカリ現像液によるパターン形成性、及び、露光後の再接着性を高水準で達成することができ、更に、フィルム状に形成した場合には優れた低温貼付け性を得ることができる。
【0014】
また、本発明の感光性接着剤組成物において、上記(C)放射線重合性化合物は、ウレタン基及び/又はイソシアヌレート基を有する化合物を含有するものであることが好ましい。この場合、硬化後の接着性をより向上させることができる。
【0015】
また、本発明の感光性接着剤組成物において、上記(C)放射線重合性化合物は、アクリレート化合物及び/又はメタクリレート化合物を含有するものであることが好ましい。この場合、放射線照射によるパターン形成性をより向上させることができる。
【0016】
また、本発明の感光性接着剤組成物において、上記(C)放射線重合性化合物は、3官能以上のアクリレート化合物を含有するものであることが好ましい。この場合、硬化後の接着性をより向上させることができるとともに、加熱時のアウトガスを抑制することができる。
【0017】
また、本発明の感光性接着剤組成物において、上記(C)放射線重合性化合物は、下記一般式(I)で表されるイソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジ又はトリアクリレートを含有するものであることが好ましい。この場合、硬化後の接着性及び耐熱性を特に良好なものとすることができる。
【化1】
[式(I)中、R1は水素原子又は−COCH=CH2を示す。]
【0018】
また、本発明の感光性接着剤組成物において、上記(B)熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂を含有するものであることが好ましい。この場合、高温接着性をより向上させることができる。
【0019】
また、本発明の感光性接着剤組成物において、上記(A)アルカリ可溶性ポリマーのガラス転移温度は、150℃以下であることが好ましい。この場合、フィルム状に形成した場合の低温貼付け性をより良好なものとすることができる。
【0020】
また、本発明の感光性接着剤組成物において、上記(A)アルカリ可溶性ポリマーは、カルボキシル基及び/又は水酸基を有する樹脂であることが好ましい。この場合、アルカリ現像液によるパターン形成性をより良好なものとすることができる。
【0021】
また、本発明の感光性接着剤組成物において、上記(A)アルカリ可溶性ポリマーは、ポリイミド樹脂であることが好ましい。この場合、硬化後の高温接着性及び耐熱性をより良好なものとすることができる。
【0022】
ここで、上記ポリイミド樹脂は、テトラカルボン酸二無水物と、分子中にカルボキシル基及び/又は水酸基を有するジアミンとを反応させて得られるポリイミド樹脂であることが好ましい。
【0023】
また、上記ポリイミド樹脂は、テトラカルボン酸二無水物と、下記式(II)で表される芳香族ジアミン及び/又は下記式(III)で表される芳香族ジアミンとを反応させて得られるポリイミド樹脂であることが好ましい。
【化2】
【化3】
【0024】
本発明はまた、上記本発明の感光性接着剤組成物をフィルム状に成形してなる、フィルム状接着剤を提供する。本発明はまた、上記本発明の感光性接着剤組成物をフィルム状に成形してなる、フィルム状接着剤であって、上記(C)放射線重合性化合物が、上記一般式(I)で表されるイソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジ又はトリアクリレートを含有するものであり、フィルム状接着剤の5%重量減少温度が260℃以上である、フィルム状接着剤を提供する。かかるフィルム状接着剤は、上記本発明の接着剤組成物からなるものであるため、アルカリ現像液によるパターン形成性、露光後の再接着性、及び、低温貼付け性の全てを高水準で達成することができる。
【0025】
本発明はまた、基材と、該基材の一方の面上に設けられた上記本発明の感光性接着剤組成物からなる接着剤層と、を備える、接着シートを提供する。かかる接着シートは、上記本発明の接着剤組成物からなる接着剤層を備えるものであるため、上記本発明の接着剤組成物からなるものであるため、アルカリ現像液によるパターン形成性、露光後の再接着性、及び、低温貼付け性の全てを高水準で達成することができる。また、取り扱いが容易であり、半導体装置組み立てプロセスの効率化に寄与する。
【0026】
本発明はまた、上記本発明のフィルム状接着剤と、ダイシングシートとを積層した構造を有する、接着シートを提供する。かかる接着シートは、上述した本発明の接着シートの効果が得られるとともに、ダイシングシートを備えることにより、ダイボンドフィルムとしての機能とダイシングシートとしての機能とを併せ持ち、半導体装置組み立てプロセスの効率化により一層寄与する。
【0027】
本発明はまた、上記本発明の感光性接着剤組成物からなる接着剤層を被着体上に形成し、該接着剤層を、フォトマスクを介して露光し、露光後の上記接着剤層をアルカリ現像液により現像処理する、接着剤パターンの形成方法を提供する。かかる接着剤パターンの形成方法によれば、パターンの高精細化を実現可能である。
【0028】
本発明はまた、半導体ウェハと、該半導体ウェハの一方の面上に設けられた上記本発明の感光性接着剤組成物からなる接着剤層と、を備える、接着剤層付半導体ウェハを提供する。かかる接着剤層付半導体ウェハは、上記本発明の接着剤組成物からなる接着剤層を備えることにより、優れた低温貼付け性を得ることができ、半導体装置組み立てプロセスの効率化に寄与する。
【0029】
本発明はまた、上記本発明の感光性接着剤組成物を用いて半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とが接着された構造を有する、半導体装置を提供する。本発明はまた、上記本発明のフィルム状接着剤から形成された接着剤パターンを用いて半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とが接着された構造を有する、半導体装置を提供する。
【0030】
本発明は更に、上記本発明の感光性接着剤組成物を用いて半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とを接着する工程を有する、半導体装置の製造方法を提供する。本発明はまた、上記本発明のフィルム状接着剤から接着剤パターンを形成する工程、及び、該接着剤パターンを用いて半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とを接着する工程を有する、半導体装置の製造方法を提供する。
【0031】
これら半導体装置及びその製造方法によれば、上記本発明の感光性接着剤組成物を用いているため、優れた高温接着性及び優れた信頼性を有する半導体装置を得ることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、アルカリ現像液によるパターン形成性に優れ、露光後の十分な再接着性を有し、フィルム状に形成した場合には低温貼付け性にも優れた感光性接着剤組成物を提供することができる。また、本発明によれば、アルカリ現像液によるパターン形成性に優れ、露光後の十分な再接着性を有するとともに、低温貼付け性にも優れたフィルム状接着剤及び接着剤パターンの形成方法を提供することができる。更に、本発明によれば、半導体装置組み立てプロセスの効率化に寄与できる接着シート、接着剤層付半導体ウェハ、半導体装置及び半導体装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係るフィルム状接着剤の一実施形態を示す模式断面図である。
【図2】本発明に係る接着シートの一実施形態を示す模式断面図である。
【図3】本発明に係る接着シートの他の一実施形態を示す模式断面図である。
【図4】本発明に係る接着シートの他の一実施形態を示す模式断面図である。
【図5】本発明に係る接着剤層付半導体ウェハの一実施形態を示す上面図である。
【図6】図5のIV−IV線に沿った端面図である。
【図7】本発明に係る接着剤パターンの一実施形態を示す上面図である。
【図8】図7のV−V線に沿った端面図である。
【図9】本発明に係る接着剤パターンの一実施形態を示す上面図である。
【図10】図9のVI−VI線に沿った端面図である。
【図11】本発明の半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。
【図12】本発明の半導体装置の他の一実施形態を示す模式断面図である。
【図13】ピール強度測定装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、場合により図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0035】
本発明の感光性接着剤組成物は、(A)アルカリ可溶性ポリマーと、(B)熱硬化性樹脂と、(C)一種又は複数の放射線重合性化合物と、(D)光開始剤と、を含有するものであり、組成物中の全放射線重合性化合物の混合物の5%重量減少温度が200℃以上であるものである。
【0036】
ここで、5%重量減少温度とは、サンプルを示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー製、商品名「TG/DTA6300」)を用いて、昇温速度10℃/min、窒素フロー(400ml/min)下で測定したときの5%重量減少温度を意味する。
【0037】
まず、上記(C)放射線重合性化合物について説明する。上記(C)放射線重合性化合物は、感光性組成物中の全放射線重合性化合物の混合物の5%重量減少温度が200℃以上となるように選択された一種又は複数の化合物であり、紫外線や電子ビームなどの放射線の照射により重合及び/又は硬化する化合物であれば、特に制限はない。また、(C)放射線重合性化合物は、5%重量減少温度が200℃以上である放射線重合性化合物を一種以上含む。5%重量減少温度が200℃以上の放射線重合性化合物の具体例としては、例えば、下記一般式(IV)で表されるビスフェノールA−EO変性ジアクリレート、ビスフェノールF−EO変性ジアクリレートの他、下記一般式(V)で表されるイソシアヌル酸変性ジ及びトリアクリレート、イソシアヌル酸変性トリアクリレート、ε−カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート又はペンタエリスリトールペンタアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエステルアクリレート、アクリルアクリレート、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレート及び尿素アクリレートが挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
【化4】
[式(IV)中、R3及びR4は各々独立に水素原子又はメチル基を示し、q及びrは各々独立に1以上の整数を示す。]
【0039】
【化5】
[式(V)中、Rはメタクリレート基又はアクリレート基を含む炭素原子数が0〜30の有機基を示す。]
【0040】
上記のウレタンアクリレート及びウレタンメタクリレートは、例えば、ジオール類、下記一般式(VI)で表されるイソシアネート化合物、及び下記一般式(VII)で表される化合物の反応により生成する。
【0041】
【化6】
[式(VI)中、sは0又は1を示し、R5は炭素原子数が1〜30の2価又は3価の有機基を示す。]
【0042】
【化7】
[式(VII)中、R6は水素原子又はメチル基を示し、R7はエチレン基又はプロピレン基を示す。]
【0043】
上記の尿素メタクリレートは、例えば、下記一般式(VIII)で表されるジアミンと、下記一般式(IX)で表される化合物との反応により生成する。
【0044】
【化8】
[式(VIII)中、R8は炭素原子数が2〜30の2価の有機基を示す。]
【0045】
【化9】
[式(IX)中、tは0又は1を示す。]
【0046】
以上のような化合物の他、官能基を含むビニル共重合体に、少なくとも1個のエチレン性不飽和基と、オキシラン環、イソシアネート基、水酸基、カルボキシル基等の官能基とを有する化合物を付加反応させて得られる、側鎖にエチレン性不飽和基を有する放射線重合性共重合体等などを使用することができる。
【0047】
これらの放射線重合性化合物は、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。中でも、上記一般式(IV)で示される放射線重合化合物は、硬化後の耐溶剤性を付与できる点で好ましい。
【0048】
また、上記一般式(V)で表されるイソシアヌル酸変性アクリレート、イソシアヌル酸変性メタクリレート、ウレタンアクリレート及びウレタンメタクリレートは、硬化後の高接着性を付与できる点で好ましい。これらは、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。特に、上記一般式(IV)で示される放射線重合化合物と、ウレタン基及び/又はイソシアヌレート基を有する、アクリレート化合物及び/又はメタクリレート化合物と、を併用することが、上述したそれぞれの化合物の効果を有効に得ることができるため好ましい。
【0049】
また、(C)放射線重合性化合物としては、上記一般式(V)で表される化合物の中でも特に、下記一般式(I)で表されるイソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジ又はトリアクリレートを使用することが、硬化後の接着性をより向上できることから好ましい。
【0050】
【化10】
[式(I)中、R1は水素原子又は−COCH=CH2を示す。]
【0051】
なお、(C)放射線重合性化合物は、5%重量減少温度が200℃以上の放射線重合化合物以外の他の放射線重合性化合物を含有していてもよい。他の放射線重合性化合物は、5%重量減少温度が200℃未満の放射線重合化合物であり、例えば、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレートなどの単官能アクリレート、ウレタンメタクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエステルアクリレート等が挙げられる。
【0052】
本発明の感光性接着剤組成物において、5%重量減少温度が200℃以上の放射線重合化合物と、5%重量減少温度が200℃未満の放射線重合化合物との含有量の割合は特に制限されないが、本発明の効果をより十分に得る観点から、全ての放射線重合化合物に占める、5%重量減少温度が200℃以上の放射線重合化合物の割合が、40質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
【0053】
(C)放射線重合性化合物は、熱圧着、熱硬化及び被着体に接着後の熱履歴によるアウトガス低減の点で、組成物中の全放射線重合性化合物の混合物の5%重量減少温度が200℃以上であることが必要であり、250℃以上であることがより好ましく、300℃以上であることがさらに好ましい。このような(C)放射線重合性化合物としては、特に制限はないが、上述したものの中でも、より高い5%重量減少温度を得る観点から、加熱によって重合する多官能アクリレートなどを使用することが好ましく、3官能以上のアクリレート化合物を使用することが特に好ましい。
【0054】
本発明の感光性接着剤組成物において、(C)放射線重合化合物の含有量は、(A)アルカリ可溶性ポリマー100質量部に対して5〜200質量部であることが好ましく、10〜100質量部であることがより好ましい。(C)放射線重合性化合物の含有量が200質量部を超えると、重合により、熱溶融時の流動性が低下し、熱圧着時の接着性が低下する傾向がある。また、5質量部未満であると、露光による光硬化後の耐溶剤性が低くなり、パターンを形成するのが困難となる傾向があり、いずれも好ましくない。
【0055】
本発明の感光性接着剤組成物を構成する(A)アルカリ可溶性ポリマーは、アルカリ可溶性基を有するポリマーであれば特に制限されない。(A)アルカリ可溶性ポリマーとしては、アルカリ可溶性基としてカルボキシル基及び/又は水酸基を有する熱可塑性樹脂が好ましく、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタンイミド樹脂、ポリウレタンアミドイミド樹脂、シロキサンポリイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂又はそれらの共重合体、それらの前駆体(ポリアミド酸)の他、ポリベンゾオキサゾール樹脂、フェノキシ樹脂、フェノールノボラック樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエ−テルスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエ−テルケトン樹脂、重量平均分子量が1万〜100万の(メタ)アクリル共重合体等からなる群から選ばれる少なくとも一つ以上の樹脂であることが好ましい。これらの中でも、後述するポリイミド樹脂が好ましく用いられる。
【0056】
本発明の感光性接着剤組成物は、フィルム状接着剤、他の部材と組み合わせて接着シートとして用いられ、半導体ウェハなどに適用されるが、フィルム状接着剤のウェハ裏面への貼り付け温度は、半導体ウェハの反りを抑えるという観点から、20〜200℃であることが好ましく、20〜150℃であることがより好ましく、25〜100℃であることが特に好ましい。
【0057】
上記温度での貼り付けを可能にするためには、フィルム状接着剤のTgを150℃以下にすることが好ましい。そのため、感光性接着剤組成物に用いる(A)熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、150℃以下であることが好ましく、−20〜100℃であることがより好ましく、−20〜80℃であることが特に好ましい。(A)熱可塑性樹脂のTgが150℃を超えると、ウェハ裏面への貼り付け温度が200℃を超える可能性が高くなり、ウェハ裏面への貼合せ後の反りが発生し易くなる傾向にあり、Tgが−20℃未満であると、Bステージ状態でのフィルム表面のタック性が強くなり過ぎて、取り扱い性が悪くなる傾向にある。また、後述するポリイミド樹脂の組成を決定する際には、そのTgが150℃以下となるように設計することが好ましい。
【0058】
また、(A)アルカリ可溶性ポリマーの重量平均分子量は、10,000〜300,000の範囲内で制御されていることが好ましく、10,000〜100,000であることがより好ましく、10,000〜80,000であることがさらに好ましい。重量平均分子量が上記範囲内にあると、感光性接着剤組成物をシート状又はフィルム状としたときの強度、可とう性、及びタック性が良好なものとなる。また、熱時流動性が良好となるため、基板表面の配線段差への良好な埋込性を確保することが可能となる。なお、上記重量平均分子量が10,000未満であると、フィルム形成性が悪くなる傾向があり、300,000を超えると、熱時の流動性が悪くなる傾向があり、また(A)アルカリ可溶性ポリマーのアルカリ現像液に対する溶解性が低下する傾向があるので、いずれも好ましくない。
【0059】
上記(A)アルカリ可溶性ポリマーのTg及び重量平均分子量を上記の範囲内とすることにより、ウェハ裏面への貼り付け温度を低く抑えることができるとともに、半導体素子を半導体素子搭載用支持部材に接着固定する際の加熱温度(ダイボンディング温度)も低くすることができ、半導体素子の反りの増大を抑制することができる。また、ダイボンディング時の流動性や現像性を有効に付与することができる。
【0060】
なお、上記のTgとは、(A)アルカリ可溶性ポリマーをフィルム化したときの主分散ピーク温度であり、レオメトリックス社製の粘弾性アナライザー(商品名「RSA−2」)を用いて、昇温速度5℃/min、周波数1Hz、測定温度−150〜300℃の条件で測定し、Tg付近のtanδピーク温度を測定し、これを主分散温度とした。また、上記の重量平均分子量とは、島津製作所社製の高速液体クロマトグラフィー(商品名「C−R4A」)を用いて、ポリスチレン換算で測定したときの重量平均分子量である。
【0061】
(A)アルカリ可溶性ポリマーの有するアルカリ可溶性基としては、上述のようにカルボキシル基や水酸基等が挙げられるが、中でも良好な現像性が得られる点で、カルボキシル基が望ましい。(A)アルカリ可溶性ポリマーは、これらのアルカリ可溶性基を末端又は側鎖に有するポリマーであることが好ましい。なお、上記の水酸基としてはフェノール性水酸基が好ましい。
【0062】
上記(A)アルカリ可溶性ポリマーとしては、上述したようにポリイミド樹脂が好ましく用いられる。ポリイミド樹脂は、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを公知の方法で縮合反応させて得ることができる。
【0063】
すなわち、有機溶媒中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを等モルで、又は、必要に応じてテトラカルボン酸二無水物の合計1.0molに対して、ジアミンの合計を好ましくは0.5〜2.0mol、より好ましくは0.8〜1.0molの範囲で組成比を調整(各成分の添加順序は任意)し、反応温度80℃以下、好ましくは0〜60℃で付加反応させる。
【0064】
反応が進行するにつれ反応液の粘度が徐々に上昇し、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸が生成する。なお、接着剤組成物の諸特性の低下を抑えるため、上記のテトラカルボン酸二無水物は無水酢酸で再結晶精製処理したものであることが好ましい。
【0065】
なお、上記縮合反応におけるテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの組成比については、テトラカルボン酸二無水物の合計1.0molに対して、ジアミンの合計が2.0molを超えると、得られるポリイミド樹脂中に、アミン末端のポリイミドオリゴマーの量が多くなる傾向があり、一方、ジアミンの合計が0.5mol未満であると、酸末端のポリイミドオリゴマーの量が多くなる傾向があり、いずれの場合においても、ポリイミド樹脂の重量平均分子量が低くなり、接着剤組成物の耐熱性を含む種々の特性が低下する傾向がある。
【0066】
また、得られるポリイミド樹脂の重量平均分子量が10000〜300000となるように、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの仕込みの組成比を適宜決定することが好ましい。
【0067】
ポリイミド樹脂は、上記反応物(ポリアミド酸)を脱水閉環させて得ることができる。脱水閉環は、加熱処理する熱閉環法、脱水剤を使用する化学閉環法等で行うことができる。
【0068】
ポリイミド樹脂の原料として用いられるテトラカルボン酸二無水物としては特に制限はなく、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’、3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、チオフェン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メチルフェニルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェニルジメチルシリル)ベンゼン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシクロヘキサン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリテート無水物)、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビス(エキソ−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ−[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル]プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2、−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル]ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、1,4−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、1,3−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、下記一般式(X)で表されるテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0069】
【化11】
[式中、aは2〜20の整数を示す。]
【0070】
上記一般式(X)で表されるテトラカルボン酸二無水物は、例えば、無水トリメリット酸モノクロライド及び対応するジオールから合成することができ、具体的には1,2−(エチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,3−(トリメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,4−(テトラメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,5−(ペンタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,6−(ヘキサメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,7−(ヘプタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,8−(オクタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,9−(ノナメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,10−(デカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,12−(ドデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,16−(ヘキサデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,18−(オクタデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)等が挙げられる。
【0071】
また、テトラカルボン酸二無水物としては、溶剤への良好な溶解性及び耐湿信頼性を付与する観点から、下記式(XI)又は(XII)で表されるテトラカルボン酸二無水物が好ましい。
【0072】
【化12】
【0073】
【化13】
【0074】
以上のようなテトラカルボン酸二無水物は、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0075】
上記ポリイミド樹脂の原料として用いられるジアミンとしては、下記一般式(XIII)、(XIV)、(XV)又は(XVI)で表される芳香族ジアミンを含むことが好ましい。これら下記式(XIII)〜(XVI)で表される芳香族ジアミンは、全ジアミンの1〜50モル%とすることが好ましい。これによってアルカリ現像液に可溶なポリイミドを調製することができる。この芳香族ジアミンが1モル%未満であると、アルカリ現像液に対する溶解性が低下する傾向があり、50モル%を超えると、現像中に接着剤層が被着体からはく離してしまう可能性が高くなる。
【0076】
【化14】
【0077】
【化15】
【0078】
【化16】
【0079】
【化17】
【0080】
上記ポリイミド樹脂の原料として用いられるその他のジアミンとしては特に制限はなく、例えば、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテメタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジイソプロピルフェニル)メタン、3,3’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、4,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルケトン、3,4’−ジアミノジフェニルケトン、4,4’−ジアミノジフェニルケトン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2’−(3,4’−ジアミノジフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−(3,4’−ジアミノジフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、3,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノエノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノエノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノエノキシ)フェニル]スルフォン、ビス[4−(4−アミノエノキシ)フェニル]スルフォン、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,5−ジアミノ安息香酸等の芳香族ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、下記一般式(XVII)で表される脂肪族エーテルジアミン、下記一般式(XIX)で表される脂肪族ジアミン、下記一般式(XX)で表されるシロキサンジアミン等が挙げられる。
【0081】
【化18】
[式中、Q1、Q2及びQ3は、各々独立に炭素数1〜10のアルキレン基を示し、bは2〜80の整数を示す。]
【0082】
【化19】
[式中、cは5〜20の整数を示す。]
【0083】
【化20】
[式中、Q4及びQ9は各々独立に、炭素数1〜5のアルキレン基又は置換基を有してもよいフェニレン基を示し、Q5、Q6、Q7及びQ8は各々独立に、炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基又はフェノキシ基を示し、dは1〜5の整数を示す。]
【0084】
上記一般式(XVII)で表される脂肪族エーテルジアミンとして具体的には、下記式;
【化21】
で表される脂肪族ジアミンの他、下記式(XVIII)で表される脂肪族エーテルジアミンが挙げられる。
【0085】
【化22】
[式中、eは0〜80の整数を示す。]
【0086】
上記一般式(XIX)で表される脂肪族ジアミンとして具体的には、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,2−ジアミノシクロヘキサン等が挙げられる。
【0087】
上記一般式(XX)で表されるシロキサンジアミンとして具体的には、式(XX)中のdが1のものとして、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェノキシ−1,3−ビス(4−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノブチル)ジシロキサン、1,3−ジメチル−1,3−ジメトキシ−1,3−ビス(4−アミノブチル)ジシロキサン等が挙げられ、dが2のものとして、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(4−アミノフェニル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(2−アミノエチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサエチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサプロピル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン等が挙げられる。
【0088】
上述したジアミンは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0089】
また、上記ポリイミド樹脂は、1種を単独で又は必要に応じて2種以上を混合(ブレンド)して用いることができる。
【0090】
また、上述したように、ポリイミド樹脂の組成を決定する際には、そのTgが150℃以下となるように設計することが好ましく、その観点で、ポリイミド樹脂の原料であるジアミンとして、上記一般式(XVIII)で表される脂肪族エーテルジアミンを用いることが好ましい。上記一般式(XVIII)で表される脂肪族エーテルジアミンとして具体的には、サンテクノケミカル(株)製ジェファーミンD−230,D−400,D−2000,D−4000,ED−600,ED−900,ED−2000,EDR−148、BASF社製ポリエーテルアミンD−230,D−400,D−2000等のポリオキシアルキレンジアミン等の脂肪族ジアミンが挙げられる。これらのジアミンは、全ジアミンの0〜80モル%であることが好ましく、5〜60モル%であることがより好ましい。この量が5モル%未満であると、低温接着性、熱時流動性の付与が困難になる傾向にあり、一方、60モル%を超えると、ポリイミド樹脂のTgが低くなり過ぎて、フィルムの自己支持性が損なわれる傾向にある。
【0091】
上記ポリイミド樹脂は、テトラカルボン酸二無水物と、カルボキシル基及びアミノ基を有するジアミンとの反応により、得ることができる。これにより、ポリイミド樹脂にはジアミンに由来するカルボキシル基が導入される。ジアミンの種類及びその仕込み比、反応条件等を適宜調整することにより、Tgが150℃以下、Mwが5000〜150000であるポリイミド樹脂を得ることができる。
【0092】
本発明の感光性接着剤組成物において、上述したような(A)アルカリ可溶性ポリマーの含有量は、感光性接着剤組成物の固形分全量を基準として、10〜90質量%であることが好ましく、20〜80質量%であることがより好ましい。この含有量が10質量%未満であると、製膜性、パターン形成性、接着性が低下する傾向があり、90質量%を超えると、耐湿性、パターン形成性、接着性が低下する傾向がある。
【0093】
本発明で用いられる(B)熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、ビスマレイミド樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、レゾルシノールホルムアルデヒド樹脂、キシレン樹脂、フラン樹脂、ポリウレタン樹脂、ケトン樹脂、トリアリルシアヌレート樹脂、ポリイソシアネート樹脂、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌラートを含有する樹脂、トリアリルトリメリタートを含有する樹脂、シクロペンタジエンから合成された熱硬化性樹脂、芳香族ジシアナミドの三量化による熱硬化性樹脂の他、アルカリ可溶性樹脂が有するカルボキシル基及び/または水酸基と熱反応する化合物として、アミノ基、イソシアナート基、オキサゾリン基、カルボジイミド基、エポキシ基を有する化合物等が挙げられる。
【0094】
中でも、高温において優れた接着力を持たせることができる点で、エポキシ樹脂、シアネート樹脂及びビスマレイミド樹脂が好ましく、取り扱い性及びポリイミド樹脂との相溶性からエポキシ樹脂が特に好ましい。また、ポットライフ、接着性、アウトガスの点から、数平均分子量が1000以上の化合物であることがより好ましく、このような化合物としては、オキサゾリン基含有ポリマー、カルボジイミドポリマー等が挙げられ、中でもオキソゾリン基含有ポリマーが耐加水分解性付与の点で好ましい。これら熱硬化性樹脂は1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0095】
上記エポキシ樹脂としては、分子内に少なくとも2個以上のエポキシ基を含むものが好ましく、硬化性や硬化物特性の点から、フェノールのグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂が極めて好ましい。このような樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型又はAD型、S型、F型のグリシジルエーテル、水添加ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、エチレンオキシド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、プロピレンオキシド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、クレゾールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ビスフェノールAノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ナフタレン樹脂のグリシジルエーテル、3官能型又は4官能型のグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂のグリシジルエーテル、ダイマー酸のグリシジルエステル、3官能型又は4官能型のグリシジルアミン、ナフタレン樹脂のグリシジルアミン等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0096】
また、これらのエポキシ樹脂には、不純物イオンであるアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ハロゲンイオン、特に塩素イオンや加水分解性塩素等を300ppm以下に低減した高純度品を用いることが、エレクトロマイグレーション防止や金属導体回路の腐食防止のために好ましい。
【0097】
上記熱硬化性樹脂を使用する場合、その含有量は、(A)アルカリ可溶性ポリマー100質量部に対して0.1〜200質量部であることが好ましく、2〜50質量部であることがより好ましい。(B)熱硬化性樹脂の含有量が200質量部を超えると、アルカリ水溶液への溶解性が低下し、パターン形成性が低下する傾向がある。一方、0.1質量部未満であると、高温接着性が低下する傾向があり、いずれも好ましくない。
【0098】
上記エポキシ樹脂を使用する場合は、必要に応じて硬化剤を使用することもできる。上記硬化剤としては、例えば、フェノール系化合物、脂肪族アミン、脂環族アミン、芳香族ポリアミン、ポリアミド、脂肪族酸無水物、脂環族酸無水物、芳香族酸無水物、ジシアンジアミド、有機酸ジヒドラジド、三フッ化ホウ素アミン錯体、イミダゾール類、第3級アミン等が挙げられる。これらの中でもフェノール系化合物が好ましく、分子中に少なくとも2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物がより好ましい。このような化合物としては、例えば、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、t−ブチルフェノールノボラック、ジシクロペンタジェンクレゾールノボラック、ジシクロペンタジェンフェノールノボラック、キシリレン変性フェノールノボラック、ナフトール系化合物、トリスフェノール系化合物、テトラキスフェノールノボラック、ビスフェノールAノボラック、ポリ−p−ビニルフェノール、フェノールアラルキル樹脂等が挙げられる。これらの中でも、数平均分子量が400〜1,500の範囲内のものが好ましい。これにより、半導体装置組立加熱時に、半導体素子又は装置等の汚染の原因となる加熱時のアウトガスを抑制できる。
【0099】
また、必要に応じて硬化促進剤を使用することもできる。硬化促進剤としては、エポキシ樹脂を硬化させるものであれば特に制限はなく、例えば、イミダゾール類、ジシアンジアミド誘導体、ジカルボン酸ジヒドラジド、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール−テトラフェニルボレート、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7−テトラフェニルボレート等が挙げられる。これらの硬化促進剤の量は、エポキシ樹脂100質量部に対して0〜50質量部であることが好ましい。
【0100】
本発明の感光性接着剤組成物は、更に(D)光開始剤を含有する。この(D)光開始剤としては、放射線照射によって遊離ラジカルを生成する光ラジカル開始剤、放射線照射によって塩基を発生する光塩基発生剤、放射線照射によって酸を発生する光酸発生剤などが挙げられる。(D)光開始剤としては、感度を良くするために、300〜500nmにおいて吸収帯を有するものが好ましい。また、アウトガス低減及び高温接着性向上の点で、5%重量減少温度が150℃以上である(D)光開始剤を用いることが好ましい。
【0101】
(D)光開始剤の具体例としては、ベンゾフェノン、N,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパノン−1、2,4−ジエチルチオキサントン、2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン等の芳香族ケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,4−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール二量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6,−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイド、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0102】
また、上記の光塩基発生剤とは、放射線照射時に塩基を発生する化合物であれば特に制限は受けない。発生する塩基としては、反応性、硬化速度の点から強塩基性化合物が好ましい。一般的には、塩基性の指標として酸解離定数の対数であるpKa値が使用され、水溶液中でのpKa値が7以上の塩基が好ましく、9以上の塩基がより好ましい。
【0103】
このような塩基性を示す化合物の例としては、イミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン等のピペラジン誘導体、ピペリジン、1,2−ジメチルピペリジン等のピペリジン誘導体、プロリン誘導体、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等のトリアルキルアミン誘導体、4−メチルアミノピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の4位にアミノ基又はアルキルアミノ基が置換したピリジン誘導体、ピロリジン、n−メチルピロリジン等のピロリジン誘導体、トリエチレンジアミン、1,8−ジアザビスシクロ(5,4,0)ウンデセン−1(DBU)等の脂環式アミン誘導体、ベンジルメチルアミン、ベンジルジメチルアミン、ベンジルジエチルアミン等のベンジルアミン誘導体等が挙げられる。
【0104】
上記塩基性化合物を放射線照射によって発生する光塩基発生剤としては、例えば、Journal of Photopolymer Science and Technology 12巻、313〜314項(1999年)、Chemistry of Materials 11巻、170〜176項(1999年)等に記載されている4級アンモニウム塩誘導体を用いることができる。これらは、活性光線の照射により高塩基性のトリアルキルアミンを生成するため、エポキシ樹脂の硬化には最適である。
【0105】
また、光塩基発生剤としては、Journal of American ChemicalSociety 118巻 12925頁(1996年)やPolymer Journal 28巻 795頁(1996年)等に記載されているカルバミン酸誘導体を用いることができる。
【0106】
また、活性光線の照射により1級のアミノ基を発生するオキシム誘導体、光ラジカル発生剤として市販されている2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(Ciba Speciality Chemicals社製のイルガキュア907)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(Ciba Speciality Chemicals社製のイルガキュア369)、ヘキサアリールビスイミダゾール誘導体(ハロゲン、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基等の置換基がフェニル基に置換されていてもよい)、ベンゾイソオキサゾロン誘導体等を用いることができる。
【0107】
上記活性光線による塩基発生剤の他に、光フリース転位、光クライゼン転位(光Cleisen転位)やクルチウス転位(Curtius転位)、スチーブンス転位(Stevens転位)によって塩基性化合物を発生させ、エポキシ樹脂の硬化を行うことができる。
【0108】
上記塩基発生剤は、分子量500以下の低分子化合物として用いる他、高分子の主鎖及び/又は側鎖に塩基を発生する基を導入した化合物を用いてもよい。この場合の分子量としては、接着性、流動性の観点から重量平均分子量1,000〜100,000が好ましく、5,000〜30,000がより好ましい。
【0109】
これらの化合物は、室温(25℃)で放射線を照射しない状態ではエポキシ樹脂と反応性を示さないため、室温での貯蔵安定性は非常に優れているという特徴がある。
【0110】
本発明の感光性接着剤組成物において、(D)光開始剤の量は、特に制限はないが、(A)アルカリ可溶性ポリマー100質量部に対して通常0.01〜30質量部であることが好ましい。
【0111】
また、本発明の感光性接着剤組成物には、適宜フィラーを含有させることもできる。上記フィラーとしては、例えば、銀粉、金粉、銅粉、ニッケル粉等の金属フィラー、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、結晶性シリカ、非晶性シリカ、窒化ホウ素、チタニア、ガラス、酸化鉄、セラミック等の無機フィラー、カーボン、ゴム系フィラー等の有機フィラー等が挙げられ、種類・形状等にかかわらず特に制限なく使用することができる。
【0112】
上記フィラーは、所望する機能に応じて使い分けることができる。例えば、金属フィラーは、接着剤組成物に導電性、熱伝導性、チキソ性等を付与する目的で添加され、非金属無機フィラーは、接着剤層に熱伝導性、低熱膨張性、低吸湿性等を付与する目的で添加され、有機フィラーは接着剤層に靭性等を付与する目的で添加される。
【0113】
これら金属フィラー、無機フィラー又は有機フィラーは、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。中でも、半導体装置用接着材料に求められる、導電性、熱伝導性、低吸湿特性、絶縁性等を付与できる点で、金属フィラー、無機フィラー、又は絶縁性のフィラーが好ましく、無機フィラー又は絶縁性フィラーの中では、樹脂ワニスに対する分散性が良好でかつ、熱時の高い接着力を付与できる点でシリカフィラーがより好ましい。
【0114】
上記フィラーは、平均粒子径が10μm以下、且つ、最大粒子径が30μm以下であることが好ましく、平均粒子径が5μm以下、且つ、最大粒子径が20μm以下であることがより好ましい。平均粒子径が10μmを超え、且つ、最大粒子径が30μmを超えると、破壊靭性向上の効果が十分に得られない傾向がある。また、平均粒子径及び最大粒子径の下限は特に制限はないが、通常、どちらも0.001μmである。
【0115】
本発明の感光性接着剤組成物において、上記フィラーの含有量は、付与する特性又は機能に応じて決められるが、樹脂成分とフィラーの合計に対して0〜50質量%が好ましく、1〜40質量%がより好ましく、3〜30質量%がさらに好ましい。フィラーを増量させることにより、高弾性率化が図れ、ダイシング性(ダイサー刃による切断性)、ワイヤボンディング性(超音波効率)、熱時の接着強度を有効に向上させることができる。
【0116】
フィラーを必要以上に増量させると、熱圧着性が損なわれる傾向にあるため、フィラーの含有量は上記の範囲内に収めることが好ましい。求められる特性のバランスをとるべく、最適フィラー含有量を決定する。フィラーを用いた場合の混合・混練は、通常の攪拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル等の分散機を適宜、組み合わせて行うことができる。
【0117】
本発明の感光性接着剤組成物には、異種材料間の界面結合を良くするために、各種カップリング剤を添加することもできる。カップリング剤としては、例えば、シラン系、チタン系、アルミニウム系等が挙げられ、中でも効果が高い点で、シラン系カップリング剤が好ましい。上記カップリング剤の使用量は、その効果や耐熱性及びコストの面から、使用する(A)アルカリ可溶性ポリマー(熱可塑性樹脂)100質量部に対して、0.01〜20質量部とすることが好ましい。
【0118】
本発明の感光性接着剤組成物には、イオン性不純物を吸着して、吸湿時の絶縁信頼性を良くするために、さらにイオン捕捉剤を添加することもできる。このようなイオン捕捉剤としては、特に制限はなく、例えば、トリアジンチオール化合物、ビスフェノール系還元剤等の銅がイオン化して溶け出すのを防止するため銅害防止剤として知られる化合物、ジルコニウム系、アンチモンビスマス系マグネシウムアルミニウム化合物等の無機イオン吸着剤などが挙げられる。上記イオン捕捉剤の使用量は、添加による効果や耐熱性、コスト等の点から、(A)アルカリ可溶性ポリマー(熱可塑性樹脂)100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましい。
【0119】
図1は、本発明に係るフィルム状接着剤の一実施形態を示す模式断面図である。図1に示すフィルム状接着剤(接着フィルム)1は、上記感光性接着剤組成物をフィルム状に成形したものである。図2は、本発明に係る接着シートの一実施形態を示す模式断面図である。図2に示す接着シート100は、基材3と、その一方の面上に設けられた接着フィルム1からなる接着剤層とから構成される。図3は、本発明に係る接着シートの他の一実施形態を示す模式断面図である。図3に示す接着シート110は、基材3と、その一方の面上に設けられた接着フィルム1からなる接着剤層とカバーフィルム2とから構成される。
【0120】
フィルム状接着剤1は、(A)アルカリ可溶性ポリマー、(B)熱硬化性樹脂、組成物中の全放射線重合性化合物の混合物の5%重量減少温度が200℃以上となるように選択された(C)一種又は複数の放射線重合性化合物、及び、(D)光開始剤、更に、必要に応じて添加される他の成分を有機溶媒中で混合し、混合液を混練してワニスを調製し、基材3上にこのワニスの層を形成させ、加熱によりワニス層を乾燥した後に基材3を除去する方法で得ることができる。このとき、基材3を除去せずに、接着シート100、110の状態で保存及び使用することもできる。
【0121】
上記の混合及び混練は、通常の攪拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル等の分散機を適宜組み合わせて行うことができる。(C)熱硬化性樹脂を用いる場合には、乾燥中に熱硬化性樹脂が十分には反応しない温度で、かつ、溶媒が充分に揮散する条件で乾燥する。具体的には、通常60〜180℃で、0.1〜90分間加熱することによりワニス層を乾燥する。
【0122】
乾燥前の上記ワニス層の好ましい厚みは1〜150μmである。この厚みが1μm未満であると、接着固定機能が損なわれる傾向にあり、150μmを超えると、後述する残存揮発分が多くなる傾向にあり、いずれも好ましくない。
【0123】
得られたワニス層の好ましい残存揮発分は10質量%以下である。この残存揮発分が10質量%を超えると、組立加熱時の溶媒揮発による発泡が原因で、接着剤層内部にボイドが残存し易くなり、耐湿信頼性が損なわれる傾向にあり、また、加熱時に発生する揮発成分による周辺材料又は部材を汚染する可能性も高くなる傾向があり、好ましくない。
【0124】
なお、上記の残存揮発成分の測定条件は次の通りである。すなわち、50mm×50mmサイズに切断したフィルム状接着剤について、初期の質量をM1とし、このフィルム状接着剤を160℃のオーブン中で3時間加熱した後の質量をM2とし、次式により得られた値を残存揮発分とする。
【0125】
【数1】
【0126】
また、上記の熱硬化性樹脂が十分には反応しない温度とは、具体的には、DSC(例えば、パーキンエルマー社製、商品名「DSC−7型」)を用いて、サンプル量:10mg、昇温速度:5℃/min、測定雰囲気:空気、の条件で測定したときの反応熱のピーク温度以下の温度である。
【0127】
ワニスの調製に用いる有機溶媒、すなわちワニス溶剤は、材料を均一に溶解又は分散できるものであれば、特に制限はない。例えば、ジメチルホルムアミド、トルエン、ベンゼン、キシレン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、ジオキサン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、及びN−メチル−ピロリジノンが挙げられる。
【0128】
上記ワニスを用いて形成されるフィルム状接着剤1の5%重量減少温度は、180℃以上であることが好ましく、220℃以上であることがより好ましく、260℃以上であることが特に好ましい。この5%重量減少温度が180℃以上であることにより、硬化後の熱履歴によるアウトガスが低減され、半導体素子の汚染、被着体のはく離を抑制することができる。
【0129】
基材3は、上記の乾燥条件に耐えるものであれば特に限定されるものではない。例えば、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリエーテルナフタレートフィルム、メチルペンテンフィルムを基材3として用いることができる。基材3としてのフィルムは2種以上組み合わせた多層フィルムであってもよく、表面がシリコーン系、シリカ系等の離型剤などで処理されたものであってもよい。
【0130】
また、本発明のフィルム状接着剤1とダイシングシートとを積層し、接着シートとすることもできる。上記ダイシングシートは、基材上に粘着剤層を設けたシートであり、上記の粘着剤層は、感圧型又は放射線硬化型のどちらでもよい。
【0131】
また、上記の基材はエキスパンド可能な基材が好ましい。このような接着シートとすることにより、ダイボンドフィルムとしての機能とダイシングシートとしての機能を併せ持つダイシング・ダイボンド一体型接着シートが得られる。
【0132】
上記のダイシング・ダイボンド一体型接着シートとして具体的には、図4に示すように、基材フィルム7、粘着剤層6及び本発明のフィルム状接着剤1がこの順に形成されてなる接着シート120が挙げられる。
【0133】
図5は、本発明に係る接着剤層付半導体ウェハの一実施形態を示す上面図であり、図6は図5のIV−IV線に沿った端面図である。図5、6に示す接着剤層付半導体ウェハ20は、半導体ウェハ8と、その一方の面上に設けられた上記感光性接着剤組成物からなるフィルム状接着剤(接着剤層)1と、を備える。
【0134】
接着剤層付半導体ウェハ20は、半導体ウェハ8上に、フィルム状接着剤1を加熱しながらラミネートすることにより得られる。接着フィルム1は、上記感光性接着剤組成物からなるフィルムであるため、例えば、室温(25℃)〜150℃程度の低温で半導体ウェハ8に貼付けることが可能である。
【0135】
図7及び図9は、本発明に係る接着剤パターンの一実施形態を示す上面図であり、図8は図7のV−V線に沿った端面図であり、図10は図9のVI―VI線に沿った端面図である。図7、8、9及び10に示す接着剤パターン1a及び1bは、被着体としての半導体ウェハ8上において、略正方形の辺に沿ったパターン又は正方形のパターンを有するように形成されている。
【0136】
接着剤パターン1a及び1bは、感光性接着剤組成物からなる接着剤層1を被着体としての半導体ウェハ8上に形成して接着剤層付半導体ウェハ20を得、接着剤層1をフォトマスクを介して露光し、露光後の接着剤層1をアルカリ現像液により現像処理することにより形成される。また、これにより、接着剤パターン1a,1bが形成された接着剤層付半導体ウェハ20a,20bが得られる。
【0137】
本発明のフィルム状接着剤の用途として、フィルム状接着剤を備える半導体装置について図面を用いて具体的に説明する。なお、近年は様々な構造の半導体装置が提案されており、本発明のフィルム状接着剤の用途は、以下に説明する構造の半導体装置に限定されるものではない。
【0138】
図11は、本発明の半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。図11に示す半導体装置200において、半導体素子12は本発明のフィルム状接着剤1を介して半導体素子搭載用支持部材13に接着され、半導体素子12の接続端子(図示せず)はワイヤ14を介して外部接続端子(図示せず)と電気的に接続され、封止材15によって封止されている。
【0139】
また、図12は、本発明の半導体装置の他の一実施形態を示す模式断面図である。図12に示す半導体装置210において、一段目の半導体素子12aは本発明のフィルム状接着剤1を介して、端子16が形成された半導体素子搭載用支持部材13に接着され、一段目の半導体素子12aの上に更に本発明のフィルム状接着剤1を介して二段目の半導体素子12bが接着されている。一段目の半導体素子12a及び二段目の半導体素子12bの接続端子(図示せず)は、ワイヤ14を介して外部接続端子と電気的に接続され、封止材によって封止されている。このように、本発明のフィルム状接着剤は、半導体素子を複数重ねる構造の半導体装置にも好適に使用できる。
【0140】
図11及び図12に示す半導体装置(半導体パッケージ)は、例えば、図9に示す半導体ウェハ20bを破線Dに沿ってダイシングし、ダイシング後のフィルム状接着剤付き半導体素子を半導体素子搭載用支持部材13に加熱圧着して両者を接着させ、その後、ワイヤボンディング工程、必要に応じて封止材による封止工程等の工程を経ることにより得ることができる。上記加熱圧着における加熱温度は、通常、20〜250℃であり、荷重は、通常、0.01〜20kgfであり、加熱時間は、通常、0.1〜300秒間である。
【実施例】
【0141】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0142】
(ポリイミドPI−1の合成)
攪拌機、温度計、冷却管及び窒素置換装置を備えたフラスコ内に、3,5−ジアミノ安息香酸(分子量152.2、以下「DABA」という)1.89g、脂肪族エーテルジアミン(BASF社製、商品名「D−400」、分子量452.4)15.21g、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサン(信越化学(株)製、商品名「LP−7100」、分子量248.5)0.39g及びN−メチル−2−ピロリジノン(以下「NMP」という)116gを仕込んだ。
【0143】
次いで、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(分子量326.3、以下「ODPA」という)16.88gを、上記フラスコを氷浴中で冷却しながら、該フラスコ内に少量ずつ添加した。添加終了後、さらに室温で5時間攪拌した。
【0144】
次に、該フラスコに水分受容器付の還流冷却器を取り付け、キシレン70gを加え、窒素ガスを吹き込みながら180℃に昇温させてその温度を5時間保持し、水と共にキシレンを共沸除去した。こうして得られた溶液を室温まで冷却した後、蒸留水中に投じて再沈殿させた。
【0145】
その後、得られた沈殿物を真空乾燥機で乾燥し、ポリイミド樹脂(以下「ポリイミドPI−1」という)を得た。得られたポリイミド樹脂のGPCを測定したところ、ポリスチレン換算で、Mw=33000であった。また、得られたポリイミド樹脂のTgは55℃であった。
【0146】
(ポリイミドPI−2の合成)
攪拌機、温度計及び窒素置換装置を備えたフラスコ内に、5,5’−メチレン−ビス(アントラニリックアシッド)(分子量286.3、以下「MBAA」という)2.16g、脂肪族エーテルジアミン(「D−400」)15.13g、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサン(「LP−7100」)1.63g及びNMP115gを仕込んだ。
【0147】
次いで、ODPA16.51gを、上記フラスコを氷浴中で冷却しながら、該フラスコ内に少量ずつ添加した。添加終了後、さらに室温で5時間攪拌した。
【0148】
次に、該フラスコに水分受容器付の還流冷却器を取り付け、キシレン81gを加え、窒素ガスを吹き込みながら180℃に昇温させてその温度を5時間保持し、水と共にキシレンを共沸除去した。
【0149】
こうして得られた溶液を室温まで冷却した後、蒸留水中に投じて再沈殿させ、ポリイミド樹脂(以下「ポリイミドPI−2」という)を得た。得られたポリイミド樹脂のGPCを測定したところ、ポリスチレン換算で、Mw=30000であった。また、得られたポリイミド樹脂のTgは31℃であった。
【0150】
(ポリイミドPI−3の合成)
攪拌機、温度計及び窒素置換装置を備えたフラスコ内に、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(分子量410.5、以下「BAPP」という)20.5g及びNMP101gを仕込んだ。
【0151】
次いで、1,2−(エチレン)ビス(トリメリテート無水物)(分子量410.3、以下「EBTA」という)20.5gを、上記フラスコを氷浴中で冷却しながら、該フラスコ内に少量ずつ添加した。添加終了後、さらに室温で5時間攪拌した。
【0152】
次に、該フラスコに水分受容器付の還流冷却器を取り付け、キシレン67gを加え、窒素ガスを吹き込みながら180℃に昇温させてその温度を5時間保持し、水と共にキシレンを共沸除去した。
【0153】
こうして得られた溶液を室温まで冷却した後、蒸留水中に投じて再沈殿させ、ポリイミド樹脂(以下「ポリイミドPI−3」という)を得た。得られたポリイミド樹脂のGPCを測定したところ、ポリスチレン換算で、Mw=98000であった。また、得られたポリイミド樹脂のTgは180℃であった。
【0154】
(実施例1、参考例2〜3及び比較例1〜3)
上記のポリイミドPI−1〜3をそれぞれ用い、下記表1に示す組成比(単位:質量部)にて各成分を配合し、感光性接着剤組成物(接着剤層形成用ワニス)を調製した。
【0155】
【表1】
【0156】
なお、表1中の各成分の記号は下記のものを意味する。
BPE−100:新中村化学工業(株)製、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(5%重量減少温度:330℃)、
M−313:東亜合成(株)製、イソシアヌル酸EO変性ジ及びトリアクリレート(5%重量減少温度:>400℃)、
EB−220:ダイセル・サイテック、6官能ウレタンアクリレート(5%重量減少温度:300℃)、
M−140:東亜合成(株)製、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド(5%重量減少温度:150℃)、
EB−3708:ダイセル・サイテック社製、2官能エポキシアクリレート(5%重量減少温度:310℃)、
EB−4858:ダイセル・サイテック社製、2官能ウレタンアクリレート(5%重量減少温度:160℃)。
【0157】
YDF−8170:東都化成(株)製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、
BEO−60E:新日本理化(株)製、ビスフェノールAビス(トリエチレングリコールグリシジルエーテル)エーテル、
TrisP−PA:本州化学工業(株)製、トリスフェノール化合物(α,α,α’−トリス(4−ヒドロキシフェノル)−1−エチル−4−イソプロピルベンゼン)。
【0158】
R972:日本アエロジル(株)製、疎水性フュームドシリカ(平均粒径:約16nm)、
I−651:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、
NMP:関東化学(株)製、N−メチル−2−ピロリジノン。
【0159】
得られたワニスを、乾燥後の膜厚が50μmとなるように、それぞれ基材(剥離剤処理PETフィルム)上に塗布し、オーブン中にて80℃で30分間、続いて、120℃で30分間、それぞれ加熱し、基材上に接着剤層が形成されてなる接着シートを得た。
【0160】
<低温貼付け性の評価>
支持台上に載せたシリコンウェハ(6インチ径、厚さ400μm)の裏面(支持台と反対側の面)に、実施例1、参考例2〜3及び比較例1〜3で得られた接着シートを、接着剤層をシリコンウェハ側にしてロール(温度100℃、線圧4kgf/cm、送り速度0.5m/分)で加圧することにより積層した。次いで、基材(PETフィルム)を剥がし、接着剤層上に、厚み80μm、幅10mm、長さ40mmのポリイミドフィルム(宇部興産社製、商品名「ユーピレックス」)を上記と同様の条件でロールにより加圧して積層した。
【0161】
このようにして準備したサンプルについて、レオメータ(東洋製機製作所社製、商品名「ストログラフE−S」)を用いて、室温で90°ピール試験を行って、接着剤層−ユーピレックス間のピール強度を測定した。その測定結果に基づいて、ピール強度が2N/cm以上のサンプルをA、2N/cm未満のサンプルをBとして評価した。その結果を表2に示す。
【0162】
<パターン形成性の評価>
接着シートを、シリコンウェハ(6インチ径、厚さ400μm)上に、実施例1、参考例2〜3及び比較例2〜3の接着シートは温度100℃で、比較例1の接着シートは温度300℃で、接着剤層をシリコンウェハ側にしてロールで加圧(線圧4kgf/cm、送り速度0.5m/分)することにより積層した。次いで、基材(PETフィルム)上にネガ型パターン用マスク(日立化成工業(株)製、商品名「No.G−2」)を載せ、高精度平行露光機(オーク製作所製、商品名「EXM−1172−B−∞」)で500mJ/cm2で露光し、80℃のホットプレート上で約30秒間放置した。
【0163】
その後、基材(PETフィルム)を取り除き、コンベア現像機(ヤコー社製)を用いて、テトラメチルアンモニウムハイドライド(TMAH)2.38質量%溶液を現像液とし、温度28℃、スプレー圧0.18MPaの条件でスプレー現像した後、温度23℃の純水にてスプレー圧0.02MPaの条件で水洗した。現像後、ライン幅/スペース幅=200μm/400μmのパターンが形成されているかを目視にて確認し、パターン形成されていた場合をA、パターン形成されていなかった場合をBとして評価した。その結果を表2に示す。
【0164】
<260℃ピール強度の測定(高温時の接着性の評価)>
シリコンウェハ(6インチ径、厚さ400μm)を、5mm×5mmの大きさで深さ180μmまでハーフカットした。その後、接着シートを、ハーフカット処理したシリコンウェハ上に、実施例1、参考例2〜3及び比較例2〜3の接着シートは温度100℃で、比較例1の接着シートは温度300℃で、接着剤層をシリコンウェハ側にしてロールで加圧(線圧4kgf/cm、送り速度0.5m/分)することにより積層した。そして、得られたサンプルを高精度平行露光機(オーク製作所製、商品名「EXM−1172−B−∞」)で500mJ/cm2で露光し、80℃のホットプレート上で約30秒間放置した。
【0165】
その後、基材(PETフィルム)を除去し、サンプルを5mm×5mmに個片化した。個片化した接着剤層付きシリコンウェハを、ガラス基板(10mm×10mm×0.55mm)上に、接着剤層をガラス基板側にして載せ、2kgfで加圧しながら、120℃で10秒間圧着した。こうして得られた試験片を、オーブン中で120℃、3時間の条件で加熱硬化した。その後、試験片を260℃の熱盤上で10秒間加熱し、図13に示すピール強度測定装置を用いて、測定速度:0.5mm/秒の条件で260℃でのシリコンウェハの引き剥がし強度を測定し、このときの値を260℃ピール強度とした。その結果を表2に示す。
【0166】
なお、図13に示すピール強度測定装置300においては、プッシュプルゲージ31に取り付けられたロッドの先端に、取っ手32が支点33の周りで角度可変に設けられている。そして、260℃ピール強度の測定は、突起部を有するシリコンウェハ34とガラス基板35とが接着剤層1を介して接着された試験片を260℃の熱盤36上に載置し、シリコンウェハ34の突起部に取っ手32を引っ掛けた状態で、取っ手32を0.5mm/秒で移動させたときの剥離応力をプッシュプルゲージ31で測定することにより行った。
【0167】
<放射線重合性化合物の5%重量減少温度の測定>
放射線重合性化合物を所定の重量比で混合し、示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、商品名「TG/DTA6300」)を用いて、窒素フロー(400ml/分)下で5%重量減少温度を測定した。その結果を表2に示す。
【0168】
<接着剤層の5%重量減少温度の測定>
接着シートを、シリコンウェハ(6インチ径、厚さ400μm)上に、実施例1、参考例2〜3及び比較例2〜3の接着シートは温度100℃で、比較例1の接着シートは温度300℃で、接着剤層をシリコンウェハ側にしてロールで加圧(線圧4kgf/cm、送り速度0.5m/分)することにより積層した。
【0169】
そして、得られたサンプルを高精度平行露光機(オーク製作所製、商品名「EXM−1172−B−∞」)で500mJ/cm2で露光し、80℃のホットプレート上で約30秒間放置した。その後、基材(PETフィルム)を除去し、オーブン中で120℃、3時間の条件で加熱硬化した後、シリコンウェハ上の接着剤層を削り取り、示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、商品名「TG/DTA6300」)を用いて、窒素フロー(400ml/分)下で5%重量減少温度を測定した。その結果を表2に示す。
【0170】
【表2】
【0171】
表2に示した結果から明らかなように、実施例1及び参考例2〜3の接着シートは、比較例1〜3のものに比較して、低温貼付け性及びパターン形成性に優れ、260℃ピール強度が十分に高く、また、接着剤層の5%重量減少温度も高いことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0172】
以上説明したように、本発明によれば、アルカリ現像液によるパターン形成性に優れ、露光後の十分な再接着性を有し、フィルム状に形成した場合には低温貼付け性にも優れた感光性接着剤組成物を提供することができる。また、本発明によれば、アルカリ現像液によるパターン形成性に優れ、露光後の十分な再接着性を有するとともに、低温貼付け性にも優れたフィルム状接着剤及び接着剤パターンの形成方法を提供することができる。更に、本発明によれば、半導体装置組み立てプロセスの効率化に寄与できる接着シート、接着剤層付半導体ウェハ、半導体装置及び半導体装置の製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0173】
1…フィルム状接着剤(接着剤層)、1a,1b…接着剤パターン、2…カバーフィルム、3…基材フィルム(基材)、6…粘着剤層、7…基材フィルム、8…半導体ウェハ、12,12a,12b…半導体素子、13…半導体素子搭載用支持部材、14…ワイヤ、15…封止材、16…端子、20,20a,20b…接着剤層付半導体ウェハ、100,110,120…接着シート、200,210…半導体装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性接着剤組成物、フィルム状接着剤、接着シート、接着剤パターンの形成方法、接着剤層付半導体ウェハ、半導体装置、及び、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品の高性能化、高機能化に伴い、種々の形態を有する半導体パッケージが提案されている。半導体パッケージにおいて、半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とを接着するための接着剤には、低応力性、低温接着性、耐湿信頼性、耐はんだリフロー性に加えて、半導体パッケージの機能、形態及び組立てプロセスの簡略化の手法によっては、パターン形成可能な感光性の機能を兼ね備えることが求められる場合がある。
【0003】
感光性とは光を照射した部分が化学的に変化し、水溶液や有機溶剤に不溶化又は可溶化する機能である。この感光性を有する感光性接着剤を用いると、フォトマスクを介して露光し、現像液によってパターン形成させることにより、高精細な接着剤パターンを形成することが可能となる。
【0004】
このようなパターン形成可能な感光性の機能を有する材料としては、これまで、フォトレジストの他、ポリイミド樹脂前駆体(ポリアミド酸)又はポリイミド樹脂をベースとした材料が使用されていた(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−290501号公報
【特許文献2】特開2001−329233号公報
【特許文献3】特開平11−24257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記感光性の機能を有する材料は、接着剤としての機能を想定した設計ではなかった。また、これらの材料を上述した半導体パッケージ用の接着剤として用いた場合、フォトレジストのような材料では耐熱性の確保が困難である。
【0007】
また、ポリイミド樹脂前駆体(ポリアミド酸)及びポリイミド樹脂の場合は、耐熱性の点では優れているが、前者のポリアミド酸を用いた場合は熱閉環イミド化時に、後者のポリイミド樹脂を用いた場合は加工時に、それぞれ300℃以上の高温を要するため、周辺材料への熱的ダメージが大きく、また、熱応力が発生しやすいなどの問題があった。
【0008】
なお、ポリイミド樹脂などを含む接着剤に熱硬化性樹脂を配合して架橋することにより、低温加工性及びはんだ耐熱性を改良することも試みられている。しかしながら、このような方法では、アルカリ現像液によるパターン形成性及び被着体への低温での貼り付け性の両方について同時に高いレベルを達成することは困難であった。また、上記従来の材料は、露光後に熱圧着したときに十分に高い接着力を発現することが可能な、良好な再接着性を付与することも困難であり、露光後の十分な再熱圧着性及び硬化後の十分に高い接着力の双方を達成することが困難であった。更に、上記従来の材料は、パターン形成し、被着体に圧着した後、加熱処理を行うと未反応成分が揮発し、被着体の剥離及び/又は素子汚染を引き起こす傾向にあった。
【0009】
本発明は、上述した従来技術の有する問題に鑑みてなされたものであり、アルカリ現像液によるパターン形成性に優れ、露光後の十分な再接着性を有し、フィルム状に形成した場合には低温貼付け性にも優れた感光性接着剤組成物を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、アルカリ現像液によるパターン形成性に優れ、露光後の十分な再接着性を有するとともに、低温貼付け性にも優れたフィルム状接着剤及び接着剤パターンの形成方法を提供することを目的とする。
【0011】
更に、本発明は、半導体装置組み立てプロセスの効率化に寄与できる接着シート、接着剤層付半導体ウェハ、半導体装置及び半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、(A)アルカリ可溶性ポリマーと、(B)熱硬化性樹脂と、(C)一種又は複数の放射線重合性化合物と、(D)光開始剤と、を含有し、組成物中の全放射線重合性化合物の混合物の5%重量減少温度が200℃以上である、感光性接着剤組成物を提供する。
【0013】
本発明の感光性接着剤組成物によれば、上記構成を有することにより、アルカリ現像液によるパターン形成性、及び、露光後の再接着性を高水準で達成することができ、更に、フィルム状に形成した場合には優れた低温貼付け性を得ることができる。
【0014】
また、本発明の感光性接着剤組成物において、上記(C)放射線重合性化合物は、ウレタン基及び/又はイソシアヌレート基を有する化合物を含有するものであることが好ましい。この場合、硬化後の接着性をより向上させることができる。
【0015】
また、本発明の感光性接着剤組成物において、上記(C)放射線重合性化合物は、アクリレート化合物及び/又はメタクリレート化合物を含有するものであることが好ましい。この場合、放射線照射によるパターン形成性をより向上させることができる。
【0016】
また、本発明の感光性接着剤組成物において、上記(C)放射線重合性化合物は、3官能以上のアクリレート化合物を含有するものであることが好ましい。この場合、硬化後の接着性をより向上させることができるとともに、加熱時のアウトガスを抑制することができる。
【0017】
また、本発明の感光性接着剤組成物において、上記(C)放射線重合性化合物は、下記一般式(I)で表されるイソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジ又はトリアクリレートを含有するものであることが好ましい。この場合、硬化後の接着性及び耐熱性を特に良好なものとすることができる。
【化1】
[式(I)中、R1は水素原子又は−COCH=CH2を示す。]
【0018】
また、本発明の感光性接着剤組成物において、上記(B)熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂を含有するものであることが好ましい。この場合、高温接着性をより向上させることができる。
【0019】
また、本発明の感光性接着剤組成物において、上記(A)アルカリ可溶性ポリマーのガラス転移温度は、150℃以下であることが好ましい。この場合、フィルム状に形成した場合の低温貼付け性をより良好なものとすることができる。
【0020】
また、本発明の感光性接着剤組成物において、上記(A)アルカリ可溶性ポリマーは、カルボキシル基及び/又は水酸基を有する樹脂であることが好ましい。この場合、アルカリ現像液によるパターン形成性をより良好なものとすることができる。
【0021】
また、本発明の感光性接着剤組成物において、上記(A)アルカリ可溶性ポリマーは、ポリイミド樹脂であることが好ましい。この場合、硬化後の高温接着性及び耐熱性をより良好なものとすることができる。
【0022】
ここで、上記ポリイミド樹脂は、テトラカルボン酸二無水物と、分子中にカルボキシル基及び/又は水酸基を有するジアミンとを反応させて得られるポリイミド樹脂であることが好ましい。
【0023】
また、上記ポリイミド樹脂は、テトラカルボン酸二無水物と、下記式(II)で表される芳香族ジアミン及び/又は下記式(III)で表される芳香族ジアミンとを反応させて得られるポリイミド樹脂であることが好ましい。
【化2】
【化3】
【0024】
本発明はまた、上記本発明の感光性接着剤組成物をフィルム状に成形してなる、フィルム状接着剤を提供する。本発明はまた、上記本発明の感光性接着剤組成物をフィルム状に成形してなる、フィルム状接着剤であって、上記(C)放射線重合性化合物が、上記一般式(I)で表されるイソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジ又はトリアクリレートを含有するものであり、フィルム状接着剤の5%重量減少温度が260℃以上である、フィルム状接着剤を提供する。かかるフィルム状接着剤は、上記本発明の接着剤組成物からなるものであるため、アルカリ現像液によるパターン形成性、露光後の再接着性、及び、低温貼付け性の全てを高水準で達成することができる。
【0025】
本発明はまた、基材と、該基材の一方の面上に設けられた上記本発明の感光性接着剤組成物からなる接着剤層と、を備える、接着シートを提供する。かかる接着シートは、上記本発明の接着剤組成物からなる接着剤層を備えるものであるため、上記本発明の接着剤組成物からなるものであるため、アルカリ現像液によるパターン形成性、露光後の再接着性、及び、低温貼付け性の全てを高水準で達成することができる。また、取り扱いが容易であり、半導体装置組み立てプロセスの効率化に寄与する。
【0026】
本発明はまた、上記本発明のフィルム状接着剤と、ダイシングシートとを積層した構造を有する、接着シートを提供する。かかる接着シートは、上述した本発明の接着シートの効果が得られるとともに、ダイシングシートを備えることにより、ダイボンドフィルムとしての機能とダイシングシートとしての機能とを併せ持ち、半導体装置組み立てプロセスの効率化により一層寄与する。
【0027】
本発明はまた、上記本発明の感光性接着剤組成物からなる接着剤層を被着体上に形成し、該接着剤層を、フォトマスクを介して露光し、露光後の上記接着剤層をアルカリ現像液により現像処理する、接着剤パターンの形成方法を提供する。かかる接着剤パターンの形成方法によれば、パターンの高精細化を実現可能である。
【0028】
本発明はまた、半導体ウェハと、該半導体ウェハの一方の面上に設けられた上記本発明の感光性接着剤組成物からなる接着剤層と、を備える、接着剤層付半導体ウェハを提供する。かかる接着剤層付半導体ウェハは、上記本発明の接着剤組成物からなる接着剤層を備えることにより、優れた低温貼付け性を得ることができ、半導体装置組み立てプロセスの効率化に寄与する。
【0029】
本発明はまた、上記本発明の感光性接着剤組成物を用いて半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とが接着された構造を有する、半導体装置を提供する。本発明はまた、上記本発明のフィルム状接着剤から形成された接着剤パターンを用いて半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とが接着された構造を有する、半導体装置を提供する。
【0030】
本発明は更に、上記本発明の感光性接着剤組成物を用いて半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とを接着する工程を有する、半導体装置の製造方法を提供する。本発明はまた、上記本発明のフィルム状接着剤から接着剤パターンを形成する工程、及び、該接着剤パターンを用いて半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とを接着する工程を有する、半導体装置の製造方法を提供する。
【0031】
これら半導体装置及びその製造方法によれば、上記本発明の感光性接着剤組成物を用いているため、優れた高温接着性及び優れた信頼性を有する半導体装置を得ることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、アルカリ現像液によるパターン形成性に優れ、露光後の十分な再接着性を有し、フィルム状に形成した場合には低温貼付け性にも優れた感光性接着剤組成物を提供することができる。また、本発明によれば、アルカリ現像液によるパターン形成性に優れ、露光後の十分な再接着性を有するとともに、低温貼付け性にも優れたフィルム状接着剤及び接着剤パターンの形成方法を提供することができる。更に、本発明によれば、半導体装置組み立てプロセスの効率化に寄与できる接着シート、接着剤層付半導体ウェハ、半導体装置及び半導体装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係るフィルム状接着剤の一実施形態を示す模式断面図である。
【図2】本発明に係る接着シートの一実施形態を示す模式断面図である。
【図3】本発明に係る接着シートの他の一実施形態を示す模式断面図である。
【図4】本発明に係る接着シートの他の一実施形態を示す模式断面図である。
【図5】本発明に係る接着剤層付半導体ウェハの一実施形態を示す上面図である。
【図6】図5のIV−IV線に沿った端面図である。
【図7】本発明に係る接着剤パターンの一実施形態を示す上面図である。
【図8】図7のV−V線に沿った端面図である。
【図9】本発明に係る接着剤パターンの一実施形態を示す上面図である。
【図10】図9のVI−VI線に沿った端面図である。
【図11】本発明の半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。
【図12】本発明の半導体装置の他の一実施形態を示す模式断面図である。
【図13】ピール強度測定装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、場合により図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0035】
本発明の感光性接着剤組成物は、(A)アルカリ可溶性ポリマーと、(B)熱硬化性樹脂と、(C)一種又は複数の放射線重合性化合物と、(D)光開始剤と、を含有するものであり、組成物中の全放射線重合性化合物の混合物の5%重量減少温度が200℃以上であるものである。
【0036】
ここで、5%重量減少温度とは、サンプルを示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー製、商品名「TG/DTA6300」)を用いて、昇温速度10℃/min、窒素フロー(400ml/min)下で測定したときの5%重量減少温度を意味する。
【0037】
まず、上記(C)放射線重合性化合物について説明する。上記(C)放射線重合性化合物は、感光性組成物中の全放射線重合性化合物の混合物の5%重量減少温度が200℃以上となるように選択された一種又は複数の化合物であり、紫外線や電子ビームなどの放射線の照射により重合及び/又は硬化する化合物であれば、特に制限はない。また、(C)放射線重合性化合物は、5%重量減少温度が200℃以上である放射線重合性化合物を一種以上含む。5%重量減少温度が200℃以上の放射線重合性化合物の具体例としては、例えば、下記一般式(IV)で表されるビスフェノールA−EO変性ジアクリレート、ビスフェノールF−EO変性ジアクリレートの他、下記一般式(V)で表されるイソシアヌル酸変性ジ及びトリアクリレート、イソシアヌル酸変性トリアクリレート、ε−カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート又はペンタエリスリトールペンタアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエステルアクリレート、アクリルアクリレート、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレート及び尿素アクリレートが挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
【化4】
[式(IV)中、R3及びR4は各々独立に水素原子又はメチル基を示し、q及びrは各々独立に1以上の整数を示す。]
【0039】
【化5】
[式(V)中、Rはメタクリレート基又はアクリレート基を含む炭素原子数が0〜30の有機基を示す。]
【0040】
上記のウレタンアクリレート及びウレタンメタクリレートは、例えば、ジオール類、下記一般式(VI)で表されるイソシアネート化合物、及び下記一般式(VII)で表される化合物の反応により生成する。
【0041】
【化6】
[式(VI)中、sは0又は1を示し、R5は炭素原子数が1〜30の2価又は3価の有機基を示す。]
【0042】
【化7】
[式(VII)中、R6は水素原子又はメチル基を示し、R7はエチレン基又はプロピレン基を示す。]
【0043】
上記の尿素メタクリレートは、例えば、下記一般式(VIII)で表されるジアミンと、下記一般式(IX)で表される化合物との反応により生成する。
【0044】
【化8】
[式(VIII)中、R8は炭素原子数が2〜30の2価の有機基を示す。]
【0045】
【化9】
[式(IX)中、tは0又は1を示す。]
【0046】
以上のような化合物の他、官能基を含むビニル共重合体に、少なくとも1個のエチレン性不飽和基と、オキシラン環、イソシアネート基、水酸基、カルボキシル基等の官能基とを有する化合物を付加反応させて得られる、側鎖にエチレン性不飽和基を有する放射線重合性共重合体等などを使用することができる。
【0047】
これらの放射線重合性化合物は、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。中でも、上記一般式(IV)で示される放射線重合化合物は、硬化後の耐溶剤性を付与できる点で好ましい。
【0048】
また、上記一般式(V)で表されるイソシアヌル酸変性アクリレート、イソシアヌル酸変性メタクリレート、ウレタンアクリレート及びウレタンメタクリレートは、硬化後の高接着性を付与できる点で好ましい。これらは、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。特に、上記一般式(IV)で示される放射線重合化合物と、ウレタン基及び/又はイソシアヌレート基を有する、アクリレート化合物及び/又はメタクリレート化合物と、を併用することが、上述したそれぞれの化合物の効果を有効に得ることができるため好ましい。
【0049】
また、(C)放射線重合性化合物としては、上記一般式(V)で表される化合物の中でも特に、下記一般式(I)で表されるイソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジ又はトリアクリレートを使用することが、硬化後の接着性をより向上できることから好ましい。
【0050】
【化10】
[式(I)中、R1は水素原子又は−COCH=CH2を示す。]
【0051】
なお、(C)放射線重合性化合物は、5%重量減少温度が200℃以上の放射線重合化合物以外の他の放射線重合性化合物を含有していてもよい。他の放射線重合性化合物は、5%重量減少温度が200℃未満の放射線重合化合物であり、例えば、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレートなどの単官能アクリレート、ウレタンメタクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエステルアクリレート等が挙げられる。
【0052】
本発明の感光性接着剤組成物において、5%重量減少温度が200℃以上の放射線重合化合物と、5%重量減少温度が200℃未満の放射線重合化合物との含有量の割合は特に制限されないが、本発明の効果をより十分に得る観点から、全ての放射線重合化合物に占める、5%重量減少温度が200℃以上の放射線重合化合物の割合が、40質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
【0053】
(C)放射線重合性化合物は、熱圧着、熱硬化及び被着体に接着後の熱履歴によるアウトガス低減の点で、組成物中の全放射線重合性化合物の混合物の5%重量減少温度が200℃以上であることが必要であり、250℃以上であることがより好ましく、300℃以上であることがさらに好ましい。このような(C)放射線重合性化合物としては、特に制限はないが、上述したものの中でも、より高い5%重量減少温度を得る観点から、加熱によって重合する多官能アクリレートなどを使用することが好ましく、3官能以上のアクリレート化合物を使用することが特に好ましい。
【0054】
本発明の感光性接着剤組成物において、(C)放射線重合化合物の含有量は、(A)アルカリ可溶性ポリマー100質量部に対して5〜200質量部であることが好ましく、10〜100質量部であることがより好ましい。(C)放射線重合性化合物の含有量が200質量部を超えると、重合により、熱溶融時の流動性が低下し、熱圧着時の接着性が低下する傾向がある。また、5質量部未満であると、露光による光硬化後の耐溶剤性が低くなり、パターンを形成するのが困難となる傾向があり、いずれも好ましくない。
【0055】
本発明の感光性接着剤組成物を構成する(A)アルカリ可溶性ポリマーは、アルカリ可溶性基を有するポリマーであれば特に制限されない。(A)アルカリ可溶性ポリマーとしては、アルカリ可溶性基としてカルボキシル基及び/又は水酸基を有する熱可塑性樹脂が好ましく、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタンイミド樹脂、ポリウレタンアミドイミド樹脂、シロキサンポリイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂又はそれらの共重合体、それらの前駆体(ポリアミド酸)の他、ポリベンゾオキサゾール樹脂、フェノキシ樹脂、フェノールノボラック樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエ−テルスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエ−テルケトン樹脂、重量平均分子量が1万〜100万の(メタ)アクリル共重合体等からなる群から選ばれる少なくとも一つ以上の樹脂であることが好ましい。これらの中でも、後述するポリイミド樹脂が好ましく用いられる。
【0056】
本発明の感光性接着剤組成物は、フィルム状接着剤、他の部材と組み合わせて接着シートとして用いられ、半導体ウェハなどに適用されるが、フィルム状接着剤のウェハ裏面への貼り付け温度は、半導体ウェハの反りを抑えるという観点から、20〜200℃であることが好ましく、20〜150℃であることがより好ましく、25〜100℃であることが特に好ましい。
【0057】
上記温度での貼り付けを可能にするためには、フィルム状接着剤のTgを150℃以下にすることが好ましい。そのため、感光性接着剤組成物に用いる(A)熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、150℃以下であることが好ましく、−20〜100℃であることがより好ましく、−20〜80℃であることが特に好ましい。(A)熱可塑性樹脂のTgが150℃を超えると、ウェハ裏面への貼り付け温度が200℃を超える可能性が高くなり、ウェハ裏面への貼合せ後の反りが発生し易くなる傾向にあり、Tgが−20℃未満であると、Bステージ状態でのフィルム表面のタック性が強くなり過ぎて、取り扱い性が悪くなる傾向にある。また、後述するポリイミド樹脂の組成を決定する際には、そのTgが150℃以下となるように設計することが好ましい。
【0058】
また、(A)アルカリ可溶性ポリマーの重量平均分子量は、10,000〜300,000の範囲内で制御されていることが好ましく、10,000〜100,000であることがより好ましく、10,000〜80,000であることがさらに好ましい。重量平均分子量が上記範囲内にあると、感光性接着剤組成物をシート状又はフィルム状としたときの強度、可とう性、及びタック性が良好なものとなる。また、熱時流動性が良好となるため、基板表面の配線段差への良好な埋込性を確保することが可能となる。なお、上記重量平均分子量が10,000未満であると、フィルム形成性が悪くなる傾向があり、300,000を超えると、熱時の流動性が悪くなる傾向があり、また(A)アルカリ可溶性ポリマーのアルカリ現像液に対する溶解性が低下する傾向があるので、いずれも好ましくない。
【0059】
上記(A)アルカリ可溶性ポリマーのTg及び重量平均分子量を上記の範囲内とすることにより、ウェハ裏面への貼り付け温度を低く抑えることができるとともに、半導体素子を半導体素子搭載用支持部材に接着固定する際の加熱温度(ダイボンディング温度)も低くすることができ、半導体素子の反りの増大を抑制することができる。また、ダイボンディング時の流動性や現像性を有効に付与することができる。
【0060】
なお、上記のTgとは、(A)アルカリ可溶性ポリマーをフィルム化したときの主分散ピーク温度であり、レオメトリックス社製の粘弾性アナライザー(商品名「RSA−2」)を用いて、昇温速度5℃/min、周波数1Hz、測定温度−150〜300℃の条件で測定し、Tg付近のtanδピーク温度を測定し、これを主分散温度とした。また、上記の重量平均分子量とは、島津製作所社製の高速液体クロマトグラフィー(商品名「C−R4A」)を用いて、ポリスチレン換算で測定したときの重量平均分子量である。
【0061】
(A)アルカリ可溶性ポリマーの有するアルカリ可溶性基としては、上述のようにカルボキシル基や水酸基等が挙げられるが、中でも良好な現像性が得られる点で、カルボキシル基が望ましい。(A)アルカリ可溶性ポリマーは、これらのアルカリ可溶性基を末端又は側鎖に有するポリマーであることが好ましい。なお、上記の水酸基としてはフェノール性水酸基が好ましい。
【0062】
上記(A)アルカリ可溶性ポリマーとしては、上述したようにポリイミド樹脂が好ましく用いられる。ポリイミド樹脂は、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを公知の方法で縮合反応させて得ることができる。
【0063】
すなわち、有機溶媒中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを等モルで、又は、必要に応じてテトラカルボン酸二無水物の合計1.0molに対して、ジアミンの合計を好ましくは0.5〜2.0mol、より好ましくは0.8〜1.0molの範囲で組成比を調整(各成分の添加順序は任意)し、反応温度80℃以下、好ましくは0〜60℃で付加反応させる。
【0064】
反応が進行するにつれ反応液の粘度が徐々に上昇し、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸が生成する。なお、接着剤組成物の諸特性の低下を抑えるため、上記のテトラカルボン酸二無水物は無水酢酸で再結晶精製処理したものであることが好ましい。
【0065】
なお、上記縮合反応におけるテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの組成比については、テトラカルボン酸二無水物の合計1.0molに対して、ジアミンの合計が2.0molを超えると、得られるポリイミド樹脂中に、アミン末端のポリイミドオリゴマーの量が多くなる傾向があり、一方、ジアミンの合計が0.5mol未満であると、酸末端のポリイミドオリゴマーの量が多くなる傾向があり、いずれの場合においても、ポリイミド樹脂の重量平均分子量が低くなり、接着剤組成物の耐熱性を含む種々の特性が低下する傾向がある。
【0066】
また、得られるポリイミド樹脂の重量平均分子量が10000〜300000となるように、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの仕込みの組成比を適宜決定することが好ましい。
【0067】
ポリイミド樹脂は、上記反応物(ポリアミド酸)を脱水閉環させて得ることができる。脱水閉環は、加熱処理する熱閉環法、脱水剤を使用する化学閉環法等で行うことができる。
【0068】
ポリイミド樹脂の原料として用いられるテトラカルボン酸二無水物としては特に制限はなく、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’、3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、チオフェン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メチルフェニルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェニルジメチルシリル)ベンゼン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシクロヘキサン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリテート無水物)、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビス(エキソ−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ−[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル]プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2、−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル]ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、1,4−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、1,3−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、下記一般式(X)で表されるテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0069】
【化11】
[式中、aは2〜20の整数を示す。]
【0070】
上記一般式(X)で表されるテトラカルボン酸二無水物は、例えば、無水トリメリット酸モノクロライド及び対応するジオールから合成することができ、具体的には1,2−(エチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,3−(トリメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,4−(テトラメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,5−(ペンタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,6−(ヘキサメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,7−(ヘプタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,8−(オクタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,9−(ノナメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,10−(デカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,12−(ドデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,16−(ヘキサデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,18−(オクタデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)等が挙げられる。
【0071】
また、テトラカルボン酸二無水物としては、溶剤への良好な溶解性及び耐湿信頼性を付与する観点から、下記式(XI)又は(XII)で表されるテトラカルボン酸二無水物が好ましい。
【0072】
【化12】
【0073】
【化13】
【0074】
以上のようなテトラカルボン酸二無水物は、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0075】
上記ポリイミド樹脂の原料として用いられるジアミンとしては、下記一般式(XIII)、(XIV)、(XV)又は(XVI)で表される芳香族ジアミンを含むことが好ましい。これら下記式(XIII)〜(XVI)で表される芳香族ジアミンは、全ジアミンの1〜50モル%とすることが好ましい。これによってアルカリ現像液に可溶なポリイミドを調製することができる。この芳香族ジアミンが1モル%未満であると、アルカリ現像液に対する溶解性が低下する傾向があり、50モル%を超えると、現像中に接着剤層が被着体からはく離してしまう可能性が高くなる。
【0076】
【化14】
【0077】
【化15】
【0078】
【化16】
【0079】
【化17】
【0080】
上記ポリイミド樹脂の原料として用いられるその他のジアミンとしては特に制限はなく、例えば、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテメタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジイソプロピルフェニル)メタン、3,3’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、4,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルケトン、3,4’−ジアミノジフェニルケトン、4,4’−ジアミノジフェニルケトン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2’−(3,4’−ジアミノジフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−(3,4’−ジアミノジフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、3,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノエノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノエノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノエノキシ)フェニル]スルフォン、ビス[4−(4−アミノエノキシ)フェニル]スルフォン、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,5−ジアミノ安息香酸等の芳香族ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、下記一般式(XVII)で表される脂肪族エーテルジアミン、下記一般式(XIX)で表される脂肪族ジアミン、下記一般式(XX)で表されるシロキサンジアミン等が挙げられる。
【0081】
【化18】
[式中、Q1、Q2及びQ3は、各々独立に炭素数1〜10のアルキレン基を示し、bは2〜80の整数を示す。]
【0082】
【化19】
[式中、cは5〜20の整数を示す。]
【0083】
【化20】
[式中、Q4及びQ9は各々独立に、炭素数1〜5のアルキレン基又は置換基を有してもよいフェニレン基を示し、Q5、Q6、Q7及びQ8は各々独立に、炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基又はフェノキシ基を示し、dは1〜5の整数を示す。]
【0084】
上記一般式(XVII)で表される脂肪族エーテルジアミンとして具体的には、下記式;
【化21】
で表される脂肪族ジアミンの他、下記式(XVIII)で表される脂肪族エーテルジアミンが挙げられる。
【0085】
【化22】
[式中、eは0〜80の整数を示す。]
【0086】
上記一般式(XIX)で表される脂肪族ジアミンとして具体的には、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,2−ジアミノシクロヘキサン等が挙げられる。
【0087】
上記一般式(XX)で表されるシロキサンジアミンとして具体的には、式(XX)中のdが1のものとして、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェノキシ−1,3−ビス(4−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノブチル)ジシロキサン、1,3−ジメチル−1,3−ジメトキシ−1,3−ビス(4−アミノブチル)ジシロキサン等が挙げられ、dが2のものとして、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(4−アミノフェニル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(2−アミノエチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサエチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサプロピル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン等が挙げられる。
【0088】
上述したジアミンは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0089】
また、上記ポリイミド樹脂は、1種を単独で又は必要に応じて2種以上を混合(ブレンド)して用いることができる。
【0090】
また、上述したように、ポリイミド樹脂の組成を決定する際には、そのTgが150℃以下となるように設計することが好ましく、その観点で、ポリイミド樹脂の原料であるジアミンとして、上記一般式(XVIII)で表される脂肪族エーテルジアミンを用いることが好ましい。上記一般式(XVIII)で表される脂肪族エーテルジアミンとして具体的には、サンテクノケミカル(株)製ジェファーミンD−230,D−400,D−2000,D−4000,ED−600,ED−900,ED−2000,EDR−148、BASF社製ポリエーテルアミンD−230,D−400,D−2000等のポリオキシアルキレンジアミン等の脂肪族ジアミンが挙げられる。これらのジアミンは、全ジアミンの0〜80モル%であることが好ましく、5〜60モル%であることがより好ましい。この量が5モル%未満であると、低温接着性、熱時流動性の付与が困難になる傾向にあり、一方、60モル%を超えると、ポリイミド樹脂のTgが低くなり過ぎて、フィルムの自己支持性が損なわれる傾向にある。
【0091】
上記ポリイミド樹脂は、テトラカルボン酸二無水物と、カルボキシル基及びアミノ基を有するジアミンとの反応により、得ることができる。これにより、ポリイミド樹脂にはジアミンに由来するカルボキシル基が導入される。ジアミンの種類及びその仕込み比、反応条件等を適宜調整することにより、Tgが150℃以下、Mwが5000〜150000であるポリイミド樹脂を得ることができる。
【0092】
本発明の感光性接着剤組成物において、上述したような(A)アルカリ可溶性ポリマーの含有量は、感光性接着剤組成物の固形分全量を基準として、10〜90質量%であることが好ましく、20〜80質量%であることがより好ましい。この含有量が10質量%未満であると、製膜性、パターン形成性、接着性が低下する傾向があり、90質量%を超えると、耐湿性、パターン形成性、接着性が低下する傾向がある。
【0093】
本発明で用いられる(B)熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、ビスマレイミド樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、レゾルシノールホルムアルデヒド樹脂、キシレン樹脂、フラン樹脂、ポリウレタン樹脂、ケトン樹脂、トリアリルシアヌレート樹脂、ポリイソシアネート樹脂、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌラートを含有する樹脂、トリアリルトリメリタートを含有する樹脂、シクロペンタジエンから合成された熱硬化性樹脂、芳香族ジシアナミドの三量化による熱硬化性樹脂の他、アルカリ可溶性樹脂が有するカルボキシル基及び/または水酸基と熱反応する化合物として、アミノ基、イソシアナート基、オキサゾリン基、カルボジイミド基、エポキシ基を有する化合物等が挙げられる。
【0094】
中でも、高温において優れた接着力を持たせることができる点で、エポキシ樹脂、シアネート樹脂及びビスマレイミド樹脂が好ましく、取り扱い性及びポリイミド樹脂との相溶性からエポキシ樹脂が特に好ましい。また、ポットライフ、接着性、アウトガスの点から、数平均分子量が1000以上の化合物であることがより好ましく、このような化合物としては、オキサゾリン基含有ポリマー、カルボジイミドポリマー等が挙げられ、中でもオキソゾリン基含有ポリマーが耐加水分解性付与の点で好ましい。これら熱硬化性樹脂は1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0095】
上記エポキシ樹脂としては、分子内に少なくとも2個以上のエポキシ基を含むものが好ましく、硬化性や硬化物特性の点から、フェノールのグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂が極めて好ましい。このような樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型又はAD型、S型、F型のグリシジルエーテル、水添加ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、エチレンオキシド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、プロピレンオキシド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、クレゾールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ビスフェノールAノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ナフタレン樹脂のグリシジルエーテル、3官能型又は4官能型のグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂のグリシジルエーテル、ダイマー酸のグリシジルエステル、3官能型又は4官能型のグリシジルアミン、ナフタレン樹脂のグリシジルアミン等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0096】
また、これらのエポキシ樹脂には、不純物イオンであるアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ハロゲンイオン、特に塩素イオンや加水分解性塩素等を300ppm以下に低減した高純度品を用いることが、エレクトロマイグレーション防止や金属導体回路の腐食防止のために好ましい。
【0097】
上記熱硬化性樹脂を使用する場合、その含有量は、(A)アルカリ可溶性ポリマー100質量部に対して0.1〜200質量部であることが好ましく、2〜50質量部であることがより好ましい。(B)熱硬化性樹脂の含有量が200質量部を超えると、アルカリ水溶液への溶解性が低下し、パターン形成性が低下する傾向がある。一方、0.1質量部未満であると、高温接着性が低下する傾向があり、いずれも好ましくない。
【0098】
上記エポキシ樹脂を使用する場合は、必要に応じて硬化剤を使用することもできる。上記硬化剤としては、例えば、フェノール系化合物、脂肪族アミン、脂環族アミン、芳香族ポリアミン、ポリアミド、脂肪族酸無水物、脂環族酸無水物、芳香族酸無水物、ジシアンジアミド、有機酸ジヒドラジド、三フッ化ホウ素アミン錯体、イミダゾール類、第3級アミン等が挙げられる。これらの中でもフェノール系化合物が好ましく、分子中に少なくとも2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物がより好ましい。このような化合物としては、例えば、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、t−ブチルフェノールノボラック、ジシクロペンタジェンクレゾールノボラック、ジシクロペンタジェンフェノールノボラック、キシリレン変性フェノールノボラック、ナフトール系化合物、トリスフェノール系化合物、テトラキスフェノールノボラック、ビスフェノールAノボラック、ポリ−p−ビニルフェノール、フェノールアラルキル樹脂等が挙げられる。これらの中でも、数平均分子量が400〜1,500の範囲内のものが好ましい。これにより、半導体装置組立加熱時に、半導体素子又は装置等の汚染の原因となる加熱時のアウトガスを抑制できる。
【0099】
また、必要に応じて硬化促進剤を使用することもできる。硬化促進剤としては、エポキシ樹脂を硬化させるものであれば特に制限はなく、例えば、イミダゾール類、ジシアンジアミド誘導体、ジカルボン酸ジヒドラジド、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール−テトラフェニルボレート、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7−テトラフェニルボレート等が挙げられる。これらの硬化促進剤の量は、エポキシ樹脂100質量部に対して0〜50質量部であることが好ましい。
【0100】
本発明の感光性接着剤組成物は、更に(D)光開始剤を含有する。この(D)光開始剤としては、放射線照射によって遊離ラジカルを生成する光ラジカル開始剤、放射線照射によって塩基を発生する光塩基発生剤、放射線照射によって酸を発生する光酸発生剤などが挙げられる。(D)光開始剤としては、感度を良くするために、300〜500nmにおいて吸収帯を有するものが好ましい。また、アウトガス低減及び高温接着性向上の点で、5%重量減少温度が150℃以上である(D)光開始剤を用いることが好ましい。
【0101】
(D)光開始剤の具体例としては、ベンゾフェノン、N,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパノン−1、2,4−ジエチルチオキサントン、2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン等の芳香族ケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,4−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール二量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6,−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイド、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0102】
また、上記の光塩基発生剤とは、放射線照射時に塩基を発生する化合物であれば特に制限は受けない。発生する塩基としては、反応性、硬化速度の点から強塩基性化合物が好ましい。一般的には、塩基性の指標として酸解離定数の対数であるpKa値が使用され、水溶液中でのpKa値が7以上の塩基が好ましく、9以上の塩基がより好ましい。
【0103】
このような塩基性を示す化合物の例としては、イミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン等のピペラジン誘導体、ピペリジン、1,2−ジメチルピペリジン等のピペリジン誘導体、プロリン誘導体、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等のトリアルキルアミン誘導体、4−メチルアミノピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の4位にアミノ基又はアルキルアミノ基が置換したピリジン誘導体、ピロリジン、n−メチルピロリジン等のピロリジン誘導体、トリエチレンジアミン、1,8−ジアザビスシクロ(5,4,0)ウンデセン−1(DBU)等の脂環式アミン誘導体、ベンジルメチルアミン、ベンジルジメチルアミン、ベンジルジエチルアミン等のベンジルアミン誘導体等が挙げられる。
【0104】
上記塩基性化合物を放射線照射によって発生する光塩基発生剤としては、例えば、Journal of Photopolymer Science and Technology 12巻、313〜314項(1999年)、Chemistry of Materials 11巻、170〜176項(1999年)等に記載されている4級アンモニウム塩誘導体を用いることができる。これらは、活性光線の照射により高塩基性のトリアルキルアミンを生成するため、エポキシ樹脂の硬化には最適である。
【0105】
また、光塩基発生剤としては、Journal of American ChemicalSociety 118巻 12925頁(1996年)やPolymer Journal 28巻 795頁(1996年)等に記載されているカルバミン酸誘導体を用いることができる。
【0106】
また、活性光線の照射により1級のアミノ基を発生するオキシム誘導体、光ラジカル発生剤として市販されている2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(Ciba Speciality Chemicals社製のイルガキュア907)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(Ciba Speciality Chemicals社製のイルガキュア369)、ヘキサアリールビスイミダゾール誘導体(ハロゲン、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基等の置換基がフェニル基に置換されていてもよい)、ベンゾイソオキサゾロン誘導体等を用いることができる。
【0107】
上記活性光線による塩基発生剤の他に、光フリース転位、光クライゼン転位(光Cleisen転位)やクルチウス転位(Curtius転位)、スチーブンス転位(Stevens転位)によって塩基性化合物を発生させ、エポキシ樹脂の硬化を行うことができる。
【0108】
上記塩基発生剤は、分子量500以下の低分子化合物として用いる他、高分子の主鎖及び/又は側鎖に塩基を発生する基を導入した化合物を用いてもよい。この場合の分子量としては、接着性、流動性の観点から重量平均分子量1,000〜100,000が好ましく、5,000〜30,000がより好ましい。
【0109】
これらの化合物は、室温(25℃)で放射線を照射しない状態ではエポキシ樹脂と反応性を示さないため、室温での貯蔵安定性は非常に優れているという特徴がある。
【0110】
本発明の感光性接着剤組成物において、(D)光開始剤の量は、特に制限はないが、(A)アルカリ可溶性ポリマー100質量部に対して通常0.01〜30質量部であることが好ましい。
【0111】
また、本発明の感光性接着剤組成物には、適宜フィラーを含有させることもできる。上記フィラーとしては、例えば、銀粉、金粉、銅粉、ニッケル粉等の金属フィラー、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、結晶性シリカ、非晶性シリカ、窒化ホウ素、チタニア、ガラス、酸化鉄、セラミック等の無機フィラー、カーボン、ゴム系フィラー等の有機フィラー等が挙げられ、種類・形状等にかかわらず特に制限なく使用することができる。
【0112】
上記フィラーは、所望する機能に応じて使い分けることができる。例えば、金属フィラーは、接着剤組成物に導電性、熱伝導性、チキソ性等を付与する目的で添加され、非金属無機フィラーは、接着剤層に熱伝導性、低熱膨張性、低吸湿性等を付与する目的で添加され、有機フィラーは接着剤層に靭性等を付与する目的で添加される。
【0113】
これら金属フィラー、無機フィラー又は有機フィラーは、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。中でも、半導体装置用接着材料に求められる、導電性、熱伝導性、低吸湿特性、絶縁性等を付与できる点で、金属フィラー、無機フィラー、又は絶縁性のフィラーが好ましく、無機フィラー又は絶縁性フィラーの中では、樹脂ワニスに対する分散性が良好でかつ、熱時の高い接着力を付与できる点でシリカフィラーがより好ましい。
【0114】
上記フィラーは、平均粒子径が10μm以下、且つ、最大粒子径が30μm以下であることが好ましく、平均粒子径が5μm以下、且つ、最大粒子径が20μm以下であることがより好ましい。平均粒子径が10μmを超え、且つ、最大粒子径が30μmを超えると、破壊靭性向上の効果が十分に得られない傾向がある。また、平均粒子径及び最大粒子径の下限は特に制限はないが、通常、どちらも0.001μmである。
【0115】
本発明の感光性接着剤組成物において、上記フィラーの含有量は、付与する特性又は機能に応じて決められるが、樹脂成分とフィラーの合計に対して0〜50質量%が好ましく、1〜40質量%がより好ましく、3〜30質量%がさらに好ましい。フィラーを増量させることにより、高弾性率化が図れ、ダイシング性(ダイサー刃による切断性)、ワイヤボンディング性(超音波効率)、熱時の接着強度を有効に向上させることができる。
【0116】
フィラーを必要以上に増量させると、熱圧着性が損なわれる傾向にあるため、フィラーの含有量は上記の範囲内に収めることが好ましい。求められる特性のバランスをとるべく、最適フィラー含有量を決定する。フィラーを用いた場合の混合・混練は、通常の攪拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル等の分散機を適宜、組み合わせて行うことができる。
【0117】
本発明の感光性接着剤組成物には、異種材料間の界面結合を良くするために、各種カップリング剤を添加することもできる。カップリング剤としては、例えば、シラン系、チタン系、アルミニウム系等が挙げられ、中でも効果が高い点で、シラン系カップリング剤が好ましい。上記カップリング剤の使用量は、その効果や耐熱性及びコストの面から、使用する(A)アルカリ可溶性ポリマー(熱可塑性樹脂)100質量部に対して、0.01〜20質量部とすることが好ましい。
【0118】
本発明の感光性接着剤組成物には、イオン性不純物を吸着して、吸湿時の絶縁信頼性を良くするために、さらにイオン捕捉剤を添加することもできる。このようなイオン捕捉剤としては、特に制限はなく、例えば、トリアジンチオール化合物、ビスフェノール系還元剤等の銅がイオン化して溶け出すのを防止するため銅害防止剤として知られる化合物、ジルコニウム系、アンチモンビスマス系マグネシウムアルミニウム化合物等の無機イオン吸着剤などが挙げられる。上記イオン捕捉剤の使用量は、添加による効果や耐熱性、コスト等の点から、(A)アルカリ可溶性ポリマー(熱可塑性樹脂)100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましい。
【0119】
図1は、本発明に係るフィルム状接着剤の一実施形態を示す模式断面図である。図1に示すフィルム状接着剤(接着フィルム)1は、上記感光性接着剤組成物をフィルム状に成形したものである。図2は、本発明に係る接着シートの一実施形態を示す模式断面図である。図2に示す接着シート100は、基材3と、その一方の面上に設けられた接着フィルム1からなる接着剤層とから構成される。図3は、本発明に係る接着シートの他の一実施形態を示す模式断面図である。図3に示す接着シート110は、基材3と、その一方の面上に設けられた接着フィルム1からなる接着剤層とカバーフィルム2とから構成される。
【0120】
フィルム状接着剤1は、(A)アルカリ可溶性ポリマー、(B)熱硬化性樹脂、組成物中の全放射線重合性化合物の混合物の5%重量減少温度が200℃以上となるように選択された(C)一種又は複数の放射線重合性化合物、及び、(D)光開始剤、更に、必要に応じて添加される他の成分を有機溶媒中で混合し、混合液を混練してワニスを調製し、基材3上にこのワニスの層を形成させ、加熱によりワニス層を乾燥した後に基材3を除去する方法で得ることができる。このとき、基材3を除去せずに、接着シート100、110の状態で保存及び使用することもできる。
【0121】
上記の混合及び混練は、通常の攪拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル等の分散機を適宜組み合わせて行うことができる。(C)熱硬化性樹脂を用いる場合には、乾燥中に熱硬化性樹脂が十分には反応しない温度で、かつ、溶媒が充分に揮散する条件で乾燥する。具体的には、通常60〜180℃で、0.1〜90分間加熱することによりワニス層を乾燥する。
【0122】
乾燥前の上記ワニス層の好ましい厚みは1〜150μmである。この厚みが1μm未満であると、接着固定機能が損なわれる傾向にあり、150μmを超えると、後述する残存揮発分が多くなる傾向にあり、いずれも好ましくない。
【0123】
得られたワニス層の好ましい残存揮発分は10質量%以下である。この残存揮発分が10質量%を超えると、組立加熱時の溶媒揮発による発泡が原因で、接着剤層内部にボイドが残存し易くなり、耐湿信頼性が損なわれる傾向にあり、また、加熱時に発生する揮発成分による周辺材料又は部材を汚染する可能性も高くなる傾向があり、好ましくない。
【0124】
なお、上記の残存揮発成分の測定条件は次の通りである。すなわち、50mm×50mmサイズに切断したフィルム状接着剤について、初期の質量をM1とし、このフィルム状接着剤を160℃のオーブン中で3時間加熱した後の質量をM2とし、次式により得られた値を残存揮発分とする。
【0125】
【数1】
【0126】
また、上記の熱硬化性樹脂が十分には反応しない温度とは、具体的には、DSC(例えば、パーキンエルマー社製、商品名「DSC−7型」)を用いて、サンプル量:10mg、昇温速度:5℃/min、測定雰囲気:空気、の条件で測定したときの反応熱のピーク温度以下の温度である。
【0127】
ワニスの調製に用いる有機溶媒、すなわちワニス溶剤は、材料を均一に溶解又は分散できるものであれば、特に制限はない。例えば、ジメチルホルムアミド、トルエン、ベンゼン、キシレン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、ジオキサン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、及びN−メチル−ピロリジノンが挙げられる。
【0128】
上記ワニスを用いて形成されるフィルム状接着剤1の5%重量減少温度は、180℃以上であることが好ましく、220℃以上であることがより好ましく、260℃以上であることが特に好ましい。この5%重量減少温度が180℃以上であることにより、硬化後の熱履歴によるアウトガスが低減され、半導体素子の汚染、被着体のはく離を抑制することができる。
【0129】
基材3は、上記の乾燥条件に耐えるものであれば特に限定されるものではない。例えば、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリエーテルナフタレートフィルム、メチルペンテンフィルムを基材3として用いることができる。基材3としてのフィルムは2種以上組み合わせた多層フィルムであってもよく、表面がシリコーン系、シリカ系等の離型剤などで処理されたものであってもよい。
【0130】
また、本発明のフィルム状接着剤1とダイシングシートとを積層し、接着シートとすることもできる。上記ダイシングシートは、基材上に粘着剤層を設けたシートであり、上記の粘着剤層は、感圧型又は放射線硬化型のどちらでもよい。
【0131】
また、上記の基材はエキスパンド可能な基材が好ましい。このような接着シートとすることにより、ダイボンドフィルムとしての機能とダイシングシートとしての機能を併せ持つダイシング・ダイボンド一体型接着シートが得られる。
【0132】
上記のダイシング・ダイボンド一体型接着シートとして具体的には、図4に示すように、基材フィルム7、粘着剤層6及び本発明のフィルム状接着剤1がこの順に形成されてなる接着シート120が挙げられる。
【0133】
図5は、本発明に係る接着剤層付半導体ウェハの一実施形態を示す上面図であり、図6は図5のIV−IV線に沿った端面図である。図5、6に示す接着剤層付半導体ウェハ20は、半導体ウェハ8と、その一方の面上に設けられた上記感光性接着剤組成物からなるフィルム状接着剤(接着剤層)1と、を備える。
【0134】
接着剤層付半導体ウェハ20は、半導体ウェハ8上に、フィルム状接着剤1を加熱しながらラミネートすることにより得られる。接着フィルム1は、上記感光性接着剤組成物からなるフィルムであるため、例えば、室温(25℃)〜150℃程度の低温で半導体ウェハ8に貼付けることが可能である。
【0135】
図7及び図9は、本発明に係る接着剤パターンの一実施形態を示す上面図であり、図8は図7のV−V線に沿った端面図であり、図10は図9のVI―VI線に沿った端面図である。図7、8、9及び10に示す接着剤パターン1a及び1bは、被着体としての半導体ウェハ8上において、略正方形の辺に沿ったパターン又は正方形のパターンを有するように形成されている。
【0136】
接着剤パターン1a及び1bは、感光性接着剤組成物からなる接着剤層1を被着体としての半導体ウェハ8上に形成して接着剤層付半導体ウェハ20を得、接着剤層1をフォトマスクを介して露光し、露光後の接着剤層1をアルカリ現像液により現像処理することにより形成される。また、これにより、接着剤パターン1a,1bが形成された接着剤層付半導体ウェハ20a,20bが得られる。
【0137】
本発明のフィルム状接着剤の用途として、フィルム状接着剤を備える半導体装置について図面を用いて具体的に説明する。なお、近年は様々な構造の半導体装置が提案されており、本発明のフィルム状接着剤の用途は、以下に説明する構造の半導体装置に限定されるものではない。
【0138】
図11は、本発明の半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。図11に示す半導体装置200において、半導体素子12は本発明のフィルム状接着剤1を介して半導体素子搭載用支持部材13に接着され、半導体素子12の接続端子(図示せず)はワイヤ14を介して外部接続端子(図示せず)と電気的に接続され、封止材15によって封止されている。
【0139】
また、図12は、本発明の半導体装置の他の一実施形態を示す模式断面図である。図12に示す半導体装置210において、一段目の半導体素子12aは本発明のフィルム状接着剤1を介して、端子16が形成された半導体素子搭載用支持部材13に接着され、一段目の半導体素子12aの上に更に本発明のフィルム状接着剤1を介して二段目の半導体素子12bが接着されている。一段目の半導体素子12a及び二段目の半導体素子12bの接続端子(図示せず)は、ワイヤ14を介して外部接続端子と電気的に接続され、封止材によって封止されている。このように、本発明のフィルム状接着剤は、半導体素子を複数重ねる構造の半導体装置にも好適に使用できる。
【0140】
図11及び図12に示す半導体装置(半導体パッケージ)は、例えば、図9に示す半導体ウェハ20bを破線Dに沿ってダイシングし、ダイシング後のフィルム状接着剤付き半導体素子を半導体素子搭載用支持部材13に加熱圧着して両者を接着させ、その後、ワイヤボンディング工程、必要に応じて封止材による封止工程等の工程を経ることにより得ることができる。上記加熱圧着における加熱温度は、通常、20〜250℃であり、荷重は、通常、0.01〜20kgfであり、加熱時間は、通常、0.1〜300秒間である。
【実施例】
【0141】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0142】
(ポリイミドPI−1の合成)
攪拌機、温度計、冷却管及び窒素置換装置を備えたフラスコ内に、3,5−ジアミノ安息香酸(分子量152.2、以下「DABA」という)1.89g、脂肪族エーテルジアミン(BASF社製、商品名「D−400」、分子量452.4)15.21g、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサン(信越化学(株)製、商品名「LP−7100」、分子量248.5)0.39g及びN−メチル−2−ピロリジノン(以下「NMP」という)116gを仕込んだ。
【0143】
次いで、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(分子量326.3、以下「ODPA」という)16.88gを、上記フラスコを氷浴中で冷却しながら、該フラスコ内に少量ずつ添加した。添加終了後、さらに室温で5時間攪拌した。
【0144】
次に、該フラスコに水分受容器付の還流冷却器を取り付け、キシレン70gを加え、窒素ガスを吹き込みながら180℃に昇温させてその温度を5時間保持し、水と共にキシレンを共沸除去した。こうして得られた溶液を室温まで冷却した後、蒸留水中に投じて再沈殿させた。
【0145】
その後、得られた沈殿物を真空乾燥機で乾燥し、ポリイミド樹脂(以下「ポリイミドPI−1」という)を得た。得られたポリイミド樹脂のGPCを測定したところ、ポリスチレン換算で、Mw=33000であった。また、得られたポリイミド樹脂のTgは55℃であった。
【0146】
(ポリイミドPI−2の合成)
攪拌機、温度計及び窒素置換装置を備えたフラスコ内に、5,5’−メチレン−ビス(アントラニリックアシッド)(分子量286.3、以下「MBAA」という)2.16g、脂肪族エーテルジアミン(「D−400」)15.13g、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサン(「LP−7100」)1.63g及びNMP115gを仕込んだ。
【0147】
次いで、ODPA16.51gを、上記フラスコを氷浴中で冷却しながら、該フラスコ内に少量ずつ添加した。添加終了後、さらに室温で5時間攪拌した。
【0148】
次に、該フラスコに水分受容器付の還流冷却器を取り付け、キシレン81gを加え、窒素ガスを吹き込みながら180℃に昇温させてその温度を5時間保持し、水と共にキシレンを共沸除去した。
【0149】
こうして得られた溶液を室温まで冷却した後、蒸留水中に投じて再沈殿させ、ポリイミド樹脂(以下「ポリイミドPI−2」という)を得た。得られたポリイミド樹脂のGPCを測定したところ、ポリスチレン換算で、Mw=30000であった。また、得られたポリイミド樹脂のTgは31℃であった。
【0150】
(ポリイミドPI−3の合成)
攪拌機、温度計及び窒素置換装置を備えたフラスコ内に、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(分子量410.5、以下「BAPP」という)20.5g及びNMP101gを仕込んだ。
【0151】
次いで、1,2−(エチレン)ビス(トリメリテート無水物)(分子量410.3、以下「EBTA」という)20.5gを、上記フラスコを氷浴中で冷却しながら、該フラスコ内に少量ずつ添加した。添加終了後、さらに室温で5時間攪拌した。
【0152】
次に、該フラスコに水分受容器付の還流冷却器を取り付け、キシレン67gを加え、窒素ガスを吹き込みながら180℃に昇温させてその温度を5時間保持し、水と共にキシレンを共沸除去した。
【0153】
こうして得られた溶液を室温まで冷却した後、蒸留水中に投じて再沈殿させ、ポリイミド樹脂(以下「ポリイミドPI−3」という)を得た。得られたポリイミド樹脂のGPCを測定したところ、ポリスチレン換算で、Mw=98000であった。また、得られたポリイミド樹脂のTgは180℃であった。
【0154】
(実施例1、参考例2〜3及び比較例1〜3)
上記のポリイミドPI−1〜3をそれぞれ用い、下記表1に示す組成比(単位:質量部)にて各成分を配合し、感光性接着剤組成物(接着剤層形成用ワニス)を調製した。
【0155】
【表1】
【0156】
なお、表1中の各成分の記号は下記のものを意味する。
BPE−100:新中村化学工業(株)製、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(5%重量減少温度:330℃)、
M−313:東亜合成(株)製、イソシアヌル酸EO変性ジ及びトリアクリレート(5%重量減少温度:>400℃)、
EB−220:ダイセル・サイテック、6官能ウレタンアクリレート(5%重量減少温度:300℃)、
M−140:東亜合成(株)製、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド(5%重量減少温度:150℃)、
EB−3708:ダイセル・サイテック社製、2官能エポキシアクリレート(5%重量減少温度:310℃)、
EB−4858:ダイセル・サイテック社製、2官能ウレタンアクリレート(5%重量減少温度:160℃)。
【0157】
YDF−8170:東都化成(株)製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、
BEO−60E:新日本理化(株)製、ビスフェノールAビス(トリエチレングリコールグリシジルエーテル)エーテル、
TrisP−PA:本州化学工業(株)製、トリスフェノール化合物(α,α,α’−トリス(4−ヒドロキシフェノル)−1−エチル−4−イソプロピルベンゼン)。
【0158】
R972:日本アエロジル(株)製、疎水性フュームドシリカ(平均粒径:約16nm)、
I−651:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、
NMP:関東化学(株)製、N−メチル−2−ピロリジノン。
【0159】
得られたワニスを、乾燥後の膜厚が50μmとなるように、それぞれ基材(剥離剤処理PETフィルム)上に塗布し、オーブン中にて80℃で30分間、続いて、120℃で30分間、それぞれ加熱し、基材上に接着剤層が形成されてなる接着シートを得た。
【0160】
<低温貼付け性の評価>
支持台上に載せたシリコンウェハ(6インチ径、厚さ400μm)の裏面(支持台と反対側の面)に、実施例1、参考例2〜3及び比較例1〜3で得られた接着シートを、接着剤層をシリコンウェハ側にしてロール(温度100℃、線圧4kgf/cm、送り速度0.5m/分)で加圧することにより積層した。次いで、基材(PETフィルム)を剥がし、接着剤層上に、厚み80μm、幅10mm、長さ40mmのポリイミドフィルム(宇部興産社製、商品名「ユーピレックス」)を上記と同様の条件でロールにより加圧して積層した。
【0161】
このようにして準備したサンプルについて、レオメータ(東洋製機製作所社製、商品名「ストログラフE−S」)を用いて、室温で90°ピール試験を行って、接着剤層−ユーピレックス間のピール強度を測定した。その測定結果に基づいて、ピール強度が2N/cm以上のサンプルをA、2N/cm未満のサンプルをBとして評価した。その結果を表2に示す。
【0162】
<パターン形成性の評価>
接着シートを、シリコンウェハ(6インチ径、厚さ400μm)上に、実施例1、参考例2〜3及び比較例2〜3の接着シートは温度100℃で、比較例1の接着シートは温度300℃で、接着剤層をシリコンウェハ側にしてロールで加圧(線圧4kgf/cm、送り速度0.5m/分)することにより積層した。次いで、基材(PETフィルム)上にネガ型パターン用マスク(日立化成工業(株)製、商品名「No.G−2」)を載せ、高精度平行露光機(オーク製作所製、商品名「EXM−1172−B−∞」)で500mJ/cm2で露光し、80℃のホットプレート上で約30秒間放置した。
【0163】
その後、基材(PETフィルム)を取り除き、コンベア現像機(ヤコー社製)を用いて、テトラメチルアンモニウムハイドライド(TMAH)2.38質量%溶液を現像液とし、温度28℃、スプレー圧0.18MPaの条件でスプレー現像した後、温度23℃の純水にてスプレー圧0.02MPaの条件で水洗した。現像後、ライン幅/スペース幅=200μm/400μmのパターンが形成されているかを目視にて確認し、パターン形成されていた場合をA、パターン形成されていなかった場合をBとして評価した。その結果を表2に示す。
【0164】
<260℃ピール強度の測定(高温時の接着性の評価)>
シリコンウェハ(6インチ径、厚さ400μm)を、5mm×5mmの大きさで深さ180μmまでハーフカットした。その後、接着シートを、ハーフカット処理したシリコンウェハ上に、実施例1、参考例2〜3及び比較例2〜3の接着シートは温度100℃で、比較例1の接着シートは温度300℃で、接着剤層をシリコンウェハ側にしてロールで加圧(線圧4kgf/cm、送り速度0.5m/分)することにより積層した。そして、得られたサンプルを高精度平行露光機(オーク製作所製、商品名「EXM−1172−B−∞」)で500mJ/cm2で露光し、80℃のホットプレート上で約30秒間放置した。
【0165】
その後、基材(PETフィルム)を除去し、サンプルを5mm×5mmに個片化した。個片化した接着剤層付きシリコンウェハを、ガラス基板(10mm×10mm×0.55mm)上に、接着剤層をガラス基板側にして載せ、2kgfで加圧しながら、120℃で10秒間圧着した。こうして得られた試験片を、オーブン中で120℃、3時間の条件で加熱硬化した。その後、試験片を260℃の熱盤上で10秒間加熱し、図13に示すピール強度測定装置を用いて、測定速度:0.5mm/秒の条件で260℃でのシリコンウェハの引き剥がし強度を測定し、このときの値を260℃ピール強度とした。その結果を表2に示す。
【0166】
なお、図13に示すピール強度測定装置300においては、プッシュプルゲージ31に取り付けられたロッドの先端に、取っ手32が支点33の周りで角度可変に設けられている。そして、260℃ピール強度の測定は、突起部を有するシリコンウェハ34とガラス基板35とが接着剤層1を介して接着された試験片を260℃の熱盤36上に載置し、シリコンウェハ34の突起部に取っ手32を引っ掛けた状態で、取っ手32を0.5mm/秒で移動させたときの剥離応力をプッシュプルゲージ31で測定することにより行った。
【0167】
<放射線重合性化合物の5%重量減少温度の測定>
放射線重合性化合物を所定の重量比で混合し、示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、商品名「TG/DTA6300」)を用いて、窒素フロー(400ml/分)下で5%重量減少温度を測定した。その結果を表2に示す。
【0168】
<接着剤層の5%重量減少温度の測定>
接着シートを、シリコンウェハ(6インチ径、厚さ400μm)上に、実施例1、参考例2〜3及び比較例2〜3の接着シートは温度100℃で、比較例1の接着シートは温度300℃で、接着剤層をシリコンウェハ側にしてロールで加圧(線圧4kgf/cm、送り速度0.5m/分)することにより積層した。
【0169】
そして、得られたサンプルを高精度平行露光機(オーク製作所製、商品名「EXM−1172−B−∞」)で500mJ/cm2で露光し、80℃のホットプレート上で約30秒間放置した。その後、基材(PETフィルム)を除去し、オーブン中で120℃、3時間の条件で加熱硬化した後、シリコンウェハ上の接着剤層を削り取り、示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、商品名「TG/DTA6300」)を用いて、窒素フロー(400ml/分)下で5%重量減少温度を測定した。その結果を表2に示す。
【0170】
【表2】
【0171】
表2に示した結果から明らかなように、実施例1及び参考例2〜3の接着シートは、比較例1〜3のものに比較して、低温貼付け性及びパターン形成性に優れ、260℃ピール強度が十分に高く、また、接着剤層の5%重量減少温度も高いことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0172】
以上説明したように、本発明によれば、アルカリ現像液によるパターン形成性に優れ、露光後の十分な再接着性を有し、フィルム状に形成した場合には低温貼付け性にも優れた感光性接着剤組成物を提供することができる。また、本発明によれば、アルカリ現像液によるパターン形成性に優れ、露光後の十分な再接着性を有するとともに、低温貼付け性にも優れたフィルム状接着剤及び接着剤パターンの形成方法を提供することができる。更に、本発明によれば、半導体装置組み立てプロセスの効率化に寄与できる接着シート、接着剤層付半導体ウェハ、半導体装置及び半導体装置の製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0173】
1…フィルム状接着剤(接着剤層)、1a,1b…接着剤パターン、2…カバーフィルム、3…基材フィルム(基材)、6…粘着剤層、7…基材フィルム、8…半導体ウェハ、12,12a,12b…半導体素子、13…半導体素子搭載用支持部材、14…ワイヤ、15…封止材、16…端子、20,20a,20b…接着剤層付半導体ウェハ、100,110,120…接着シート、200,210…半導体装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アルカリ可溶性ポリマーと、
(B)熱硬化性樹脂と、
(C)一種又は複数の放射線重合性化合物と、
(D)光開始剤と、
を含有する感光性接着剤組成物をフィルム状に成形してなる、フィルム状接着剤であって、
前記(C)放射線重合性化合物が、下記一般式(I)で表されるイソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジ又はトリアクリレートを含有するものであり、
フィルム状接着剤の5%重量減少温度が260℃以上である、
フィルム状接着剤。
【化1】
[式(I)中、R1は水素原子又は−COCH=CH2を示す。]
【請求項2】
前記(B)熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂を含有するものである、請求項1に記載のフィルム状接着剤。
【請求項3】
前記(A)アルカリ可溶性ポリマーのガラス転移温度が、150℃以下である、請求項1又は2に記載のフィルム状接着剤。
【請求項4】
前記(A)アルカリ可溶性ポリマーが、カルボキシル基及び/又は水酸基を有する樹脂である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のフィルム状接着剤。
【請求項5】
前記(A)アルカリ可溶性ポリマーが、ポリイミド樹脂である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のフィルム状接着剤。
【請求項6】
基材と、該基材の一方の面上に設けられた請求項1〜5のいずれか一項に記載のフィルム状接着剤からなる接着剤層と、を備える、接着シート。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のフィルム状接着剤と、ダイシングシートとを積層した構造を有する、接着シート。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のフィルム状接着剤から形成された接着剤パターンを用いて半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とが接着された構造を有する、半導体装置。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のフィルム状接着剤から接着剤パターンを形成する工程、及び、該接着剤パターンを用いて半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とを接着する工程を有する、半導体装置の製造方法。
【請求項1】
(A)アルカリ可溶性ポリマーと、
(B)熱硬化性樹脂と、
(C)一種又は複数の放射線重合性化合物と、
(D)光開始剤と、
を含有する感光性接着剤組成物をフィルム状に成形してなる、フィルム状接着剤であって、
前記(C)放射線重合性化合物が、下記一般式(I)で表されるイソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジ又はトリアクリレートを含有するものであり、
フィルム状接着剤の5%重量減少温度が260℃以上である、
フィルム状接着剤。
【化1】
[式(I)中、R1は水素原子又は−COCH=CH2を示す。]
【請求項2】
前記(B)熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂を含有するものである、請求項1に記載のフィルム状接着剤。
【請求項3】
前記(A)アルカリ可溶性ポリマーのガラス転移温度が、150℃以下である、請求項1又は2に記載のフィルム状接着剤。
【請求項4】
前記(A)アルカリ可溶性ポリマーが、カルボキシル基及び/又は水酸基を有する樹脂である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のフィルム状接着剤。
【請求項5】
前記(A)アルカリ可溶性ポリマーが、ポリイミド樹脂である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のフィルム状接着剤。
【請求項6】
基材と、該基材の一方の面上に設けられた請求項1〜5のいずれか一項に記載のフィルム状接着剤からなる接着剤層と、を備える、接着シート。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のフィルム状接着剤と、ダイシングシートとを積層した構造を有する、接着シート。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のフィルム状接着剤から形成された接着剤パターンを用いて半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とが接着された構造を有する、半導体装置。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のフィルム状接着剤から接着剤パターンを形成する工程、及び、該接着剤パターンを用いて半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とを接着する工程を有する、半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−162725(P2012−162725A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−76610(P2012−76610)
【出願日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【分割の表示】特願2009−517752(P2009−517752)の分割
【原出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【分割の表示】特願2009−517752(P2009−517752)の分割
【原出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】
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