説明

フェニルピラゾール誘導体又はその塩、その製造方法、及び抗酸化薬

【課題】 新規なフェニルピラゾール誘導体又はその塩、この化合物の製造方法、この化合物を含む抗酸化薬、並びに該抗酸化薬を含む、腎疾患、脳血管疾患、循環器疾患、脳梗塞の治療薬、網膜の酸化障害の抑制薬、リポキシゲナーゼ阻害薬、及び20−HETEシンターゼ阻害薬の提供。
【解決手段】 式(1)


で表されるフェニルピラゾール誘導体又はその塩、この化合物の製造方法、この化合物を含む抗酸化薬、該抗酸化薬を含む、腎疾患等の治療薬、網膜の酸化障害の抑制薬、リポキシゲナーゼ阻害薬、及び20−HETEシンターゼ阻害薬。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なフェニルピラゾール誘導体又はその塩、その製造方法、前記誘導体又はその塩を含有する抗酸化薬、及びこの抗酸化薬を含む、腎疾患、脳血管疾患、循環器疾患、脳梗塞の治療薬、網膜の酸化障害抑制薬、リポキシゲナーゼ阻害薬、20−ヒドロキシエイコサテトラエン酸シンターゼ阻害薬に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生体内での過酸化脂質の生成とそれに付随したラジカル反応が、膜障害や細胞障害等を介して、生体に種々の悪影響を及ぼすことが明らかになってきた。それに伴い、抗酸化薬や過酸化脂質生成抑制薬(抗酸化薬等)の研究開発が盛んに行なわれている(非特許文献1等)。
【0003】
従来、抗酸化薬としては、(a)特定のキノン誘導体を含有する炎症、感染等に基づくエンドトキシンショックの治療及び予防に用いる医薬組成物(特許文献1)、(b)細胞増殖抑制作用、血管新生抑制作用を有する自己免疫疾患の治療及び予防に用いるヒドロキサム酸誘導体(特許文献2)、(c)抗酸化剤、ラジカルスカベンジャーとして有用な2,3−ジヒドロベンゾフラン誘導体(特許文献3〜5)、(d)抗高脂血症作用を有し、動脈硬化症の治療及び予防に有用なイミダゾール系化合物(特許文献6)、(e)抗関節炎活性を有するベンゾチアジンカルボキサミド(特許文献7)、(f)カルボニルアミノフェニルイミダゾール誘導体(特許文献8〜10)、(g)動脈硬化、肝疾患、脳血管障害等の種々の疾患の予防・治療剤として有用な過酸化脂質生成抑制作用を有するアミノジヒドロベンゾフラン誘導体(特許文献11)、(h)ベンゾイソキサゾール化合物等を含有する抗高脂血症薬(特許文献12)、(i)抗酸化防御系が不十分なときに生じる酸化ストレスの結果生じる脂質、タンパク質、炭水化物およびDNAの損傷を有意に改善するジヒドロベンゾフラン誘導体(特許文献13)、(j)脳卒中および頭部外傷に伴う脳機能障害の改善、治療及び予防に有効である光学活性アミノジヒドロベンゾフラン誘導体(特許文献14)等が知られている。
【0004】
脳は、エネルギー需要が大きいにもかかわらず、その供給が循環血液に依存していることから、脳は虚血に対して極めて脆弱である。脳血流が種々の原因により途絶え脳虚血に陥ると、ミトコンドリア障害や神経細胞内のカルシウム上昇などが引き金となって活性酸素種が発生し、また、虚血後の血流再開時には酸素ラジカルが爆発的に発生することが知られている。これらの活性酸素種が最終的には脂質、蛋白質、核酸などに対して作用し、それぞれを酸化させ細胞死を引き起こすといわれている。このような病態に対する治療薬として抗酸化薬があり、日本ではエダラボンが脳保護薬として認可され、用いられている。
【0005】
また、アラキドン酸に代表される不飽和脂肪酸へ酸素を添加するリポキシゲナーゼ(LO)としては、酸素添加部位により、5−LO、8−LO、12−LO及び15−LO等が知られている。5−LOは、強力な炎症メディエーターであるロイコトリエンを合成する初発酵素である。ロイコトリエン類は、喘息、リュウマチ性関節炎、炎症性大腸炎、乾癬等種々の炎症性疾患に関与しており、その制御は、これらの疾患の治療に有用である。12−LOや15−LOは、アラキドン酸以外にも、リノール酸やコレステロールエステル、リン脂質、低比重リポタンパク質(LDL)とも反応し、その不飽和脂肪酸に酸素添加をすることが知られている(非特許文献2)。
【0006】
マクロファージは、スカベンジャー受容体を介して、酸化修飾されたLDLを無制限に取りこんで泡沫細胞となる。これが動脈硬化巣形成の最初のステップとなることが、広く知られている。12−LO及び15−LOは、マクロファージに高レベルで発現しており、LDLの酸化修飾の引き金として必須であることも明らかにされている(非特許文献3)。これらの制御は、動脈硬化に起因する各種疾患の治療に有用である(特許文献15)。
【0007】
前駆体脂肪酸であるアラキドン酸は、細胞膜のリン脂質から切り離されると、20−ヒドロキシエイコサテトラエン酸(以下、「20−HETE」と略記することがある。)シンターゼにより20−HETEとなる。20−HETEは、腎臓、脳血管等の主要臓器において微小血管を収縮又は拡張させることや細胞増殖を惹起することが知られており、生体内で重要な生理作用に関わり、腎疾患、脳血管疾患、循環器疾患等の病態に深く関与していることが示唆されている(非特許文献4〜6)。更に、フェニルアゾール誘導体が、20−HETEシンターゼの阻害作用を有することが報告されている(特許文献16〜18)。
【0008】
また、老化に伴って多発する白内障や黄班変性症などの眼疾患の多くは、フリーラジカル・活性酸素が関連する酸化的ストレスがその発症要因の一つとして考えられている(非特許文献7〜9)。
眼組織中で、網膜は水晶体とともに老化の影響を受けやすい組織として知られている(非特許文献10)。網膜は高級不飽和脂肪酸を多く含むこと、網膜血管及び脈絡膜血管の両方から栄養を受けており、酸素消費が多いこと等から種々のフリーラジカルの影響を受けやすく、例えば太陽光など生涯に亘って受ける光は網膜にとっての酸化ストレスの代表的なものである。地上に到達する太陽光の大部分が可視光線と赤外線とで占められ、そのうち数%含まれる紫外線は可視光線や赤外線に比べ生体との相互作用が強く健康に与える影響が大きい。
また、近年においては、環境破壊が原因と考えられるオゾンホールの出現により、地球に到達する紫外線量が増加し、南半球では紫外線が関連する皮膚障害や皮膚がんが急増していることからも、網膜障害が今後ますます増えると考えられている。
【0009】
眼疾患の中で、加齢性黄斑変性症は失明度の高い網膜障害であり、アメリカでは1000万人が軽度の症状を呈しており、45万人以上がこの疾病による視覚障害をもっているとされている(非特許文献11)。
黄斑変性症の発症のメカニズムは不明な点が多いが、この病変の進行には網膜での光吸収による過酸化反応が関与しているとの指摘がある(非特許文献12、13)。また、その発症前期にはドルーゼと言われるリポフスチン様蛍光物質の出現が認められており、リポフスチンは、過酸化脂質の二次的分解産物であるアルデヒドとタンパク質の結合により生成することから、紫外線や可視光線による網膜での脂質過酸化反応が、この網膜障害を誘起する可能性がある。
【0010】
このような抗酸化作用による網膜疾患の予防、治療に有用な薬としては、特定のジヒドロフラン誘導体を含有する網膜疾患治療剤(特許文献19〜22)や、プロピオニル−L−カルニチン又はその塩と、カロテノイドを含有する、網膜の黄斑変性を含む視力及び網膜変化の薬剤(特許文献23)が知られている。しかしながら、既存の抗酸化薬の効力は十分ではないというのが現状である。
【0011】
【特許文献1】特開昭61−44840号公報
【特許文献2】特開平1−104033号公報
【特許文献3】特開平2−121975号公報
【特許文献4】欧州特許出願公開第345593号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第483772号明細書
【特許文献6】国際公開第95/29163号パンフレット
【特許文献7】独国特許出願公開第DE3,407,505号明細書
【特許文献8】特開昭55−69567号公報
【特許文献9】欧州特許出願公開第324377号明細書
【特許文献10】欧州特許出願公開第458037号明細書
【特許文献11】特開平5−140142号公報
【特許文献12】国際公開第00/006550号パンフレット
【特許文献13】国際公開第96/28437号パンフレット
【特許文献14】特開平6−228136号公報
【特許文献15】特開平2−76869号公報
【特許文献16】国際公開第00/0168610号パンフレット
【特許文献17】特開2004−010513号公報
【特許文献18】国際公開第03/022821号パンフレット
【特許文献19】特開平6−287139号公報
【特許文献20】国際公開第04/092153号パンフレット
【特許文献21】国際公開第04/092163号パンフレット
【特許文献22】国際公開第00/092179号パンフレット
【特許文献23】国際公開第00/07581号パンフレット
【非特許文献1】J.Amer.OilChemists,Soc.、第51巻、第200頁、1974年
【非特許文献2】Biochem.Biophys.Acta、第1304巻、第652項、1996年
【非特許文献3】J.Clin.Invest.、第103巻、第15972項、1999年
【非特許文献4】J.Vascular Research、第32巻、第79項、1995年
【非特許文献5】Am.J.Physiol.、第277巻、第607項、1999年
【非特許文献6】Physiol.Rev.、第82巻、第131項、2002年
【非特許文献7】Anderson R.E.,Kretzer F.L.,Rapp L.M.「フリーラジカルと眼の疾患」Adv. Exp. Med. Biol.、第366巻、第73頁、1994年
【非特許文献8】Nishigori H.,Lee J.W.,Yamauchi Y.,Iwatsuru M.「発芽鶏胚のグルコチコイド誘発白内障における過酸化脂質変性とアスコルビン酸の効果」Curr.Eye Res.、第5巻、第37頁、1986年
【非特許文献9】Truscott R.J.W.,Augusteyn R.C.「正常又は白内障のヒト水晶体におけるメルカプト基の作用」Exp.Eye Res.、第25巻、第139項、1977年
【非特許文献10】Hiramitsu T.,Armstrong D.「網膜における脂質過酸化反応に対する抗酸化剤の予防効果」Ophthalmic Research、第23巻、第196頁、1991年
【非特許文献11】ビタミン広報センター(東京)VICニュースレター、第105巻、第4頁、2002年
【非特許文献12】幸村定昭「白内障と活性酸素・フリーラジカル、活性酸素・フリーラジカル」第3巻、第402頁、1992年
【非特許文献13】Solbach U.,Keilhauer C.,Knabben H.,Wolf S.「加齢性黄斑変性症における網膜自己蛍光像」Retina、第17巻、第385頁、1997年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、新規なフェニルピラゾール誘導体又はその塩、この化合物を含有する抗酸化薬、並びにこの抗酸化薬を含有する、腎疾患、脳血管疾患、循環器疾患、又は脳梗塞の治療薬、網膜の酸化障害の抑制薬、リポキシゲナーゼ阻害薬、及び20−ヒドロキシエイコサテトラエン酸シンターゼ阻害薬を提供することを課題とする。
【0013】
本発明者らは、既存の抗酸化薬の効力が十分でない原因は、薬剤が標的部位に到達しないか、標的部位到達前に活性を失活してしまうためであると考えた。そして、臓器移行性、特に血液脳関門又は血液網膜関門をより通過しやすい抗酸化薬の開発を目的として鋭意研究を重ねた。その結果、後述する式(1)で示されるフェニルピラゾール誘導体が、投与経路によらず優れたin vivo抗酸化作用を有することを見出した。
【0014】
さらに、網膜障害抑制について検討を行ったところ、強い抗酸化能を有する後述の式(1)で示されるフェニルピラゾール誘導体が、経口投与により網膜に短時間で移行し、酸化による網膜障害の改善、特に、老化に伴って増加する網膜の加齢性黄斑変性症の進行や症状の軽減に有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
かくして本発明の第1によれば、下記(1)又は(2)のフェニルピラゾール誘導体又はその塩が提供される。
(1)式(1)
【0016】
【化1】

{式中、R1、R2は、式(2)
【0017】
【化2】

【0018】
〔式中、R10及びR11は、それぞれ独立して、水素原子、シアノ基、水酸基、ハロゲン原子、C1−6アルキル基、C1−6アルコキシ基、C2−6アルケニル基、C2−6アルキニル基、C2−6アルケニルオキシ基、C2−6アルキニルオキシ基、アシルオキシ基、又はG1で置換されていてもよい(C3−8シクロアルキル基、若しくはフェニル基)を表し、
G1は、シアノ基、ホルミル基、C1−6アルキルカルボニル基、水酸基、C1−6アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、モノC1−6アルキルアミノ基、ジC1−6アルキルアミノ基、又はC1−6アルコキシカルボニル基を表す。
kは0〜15の整数を表す。kが2以上のとき、R10同士およびR11同士は、それぞれ同一であっても相異なっていてもよい。
Zは、少なくとも置換基としてG2を有する(クロマン−2−イル基、クロマン−4−イル基、2,3−ジヒドロベンゾフラン−2−イル基、2,3−ジヒドロベンゾフラン−3−イル基、チオクロマン−2−イル基、2,3−ジヒドロベンゾチオフェン−2−イル基、又は1,3−ベンゾキサチオラン−2−イル基)を表し、
G2は、式:NHR12〔式中、R12は、水素原子、ホルミル基、C1−6アルキルカルボニル基、又は(シアノ基、水酸基、C1−6アルキル基、C1−6アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、モノC1−6アルキルアミノ基、ジC1−6アルキルアミノ基、若しくはC1−6アルコキシカルボニル基)で置換されていてもよいベンゾイル基を表す。〕で表される基、又は式:OR13〔式中、R13は、水素原子、ホルミル基、C1−6アルキルカルボニル基、又は(シアノ基、水酸基、C1−6アルキル基、C1−6アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、モノC1−6アルキルアミノ基、ジC1−6アルキルアミノ基、若しくはC1−6アルコキシカルボニル基)で置換されていてもよいベンゾイル基を表す。〕で表される基を表す。但し、R1が前記式(2)で表される基であるとき、R2が存在することはなく、R2が前記式(2)で表される基であるとき、R1が存在することはない。
【0019】
R3は、水素原子、G3で置換されていてもよい(C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C2−6アルキニル基、C1−6アルコキシカルボニル基、C1−6アルキルカルバモイル基、モノC1−6アルキルアミノ基、ジC1−6アルキルアミノ基、C1−6アルコキシ基、フェニル基、若しくはヘテロアリール基)、カルボキシル基、水酸基、又はシアノ基を表し、
G3は、シアノ基、ホルミル基、C1−6アルキルカルボニル基、水酸基、C1−6アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、モノC1−6アルキルアミノ基、ジC1−6アルキルアミノ基、又はC1−6アルコキシカルボニル基を表す。
【0020】
R4は、水素原子、又はG4で置換されていてもよい(C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C2−6アルキニル基、フェニル基、若しくはヘテロアリール基)を表し、
G4は、シアノ基、ホルミル基、C1−6アルキルカルボニル基、水酸基、C1−6アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、モノC1−6アルキルアミノ基、ジC1−6アルキルアミノ基、又はC1−6アルコキシカルボニル基を表す。
【0021】
R5、R6、R7、R8及びR9は、それぞれ独立して、水素原子、シアノ基、水酸基、ハロゲン原子、G5で置換されていてもよい(C1−6アルキル基、C1−6アルコキシ基、C2−6アルケニル基、C2−6アルキニル基、C2−6アルケニルオキシ基、C2−6アルキニルオキシ基、アシルオキシ基、モノC1−6アルキルアミノ基、若しくはジC1−6アルキルアミノ基)、又はG6で置換されていてもよい(ピペラジル基、ピペリジル基、C3−8シクロアルキル基、フェニル基、若しくはヘテロアリール基)を表し、
G5は、シアノ基、ホルミル基、C1−6アルキルカルボニル基、水酸基、C1−6アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、モノC1−6アルキルアミノ基、ジC1−6アルキルアミノ基、又はC1−6アルコキシカルボニル基を表し、
G6は、C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C2−6アルキニル基、シアノ基、水酸基、C1−6アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、モノC1−6アルキルアミノ基、ジC1−6アルキルアミノ基、又はC1−6アルコキシカルボニル基を表す。
【0022】
また、R5、R6、R7、R8及びR9のうち、隣接する2つの基が一緒になって、環を形成していてもよく、R4とR5とが一緒になって環を形成していてもよい。}
で表されるフェニルピラゾール誘導体又はその塩。
【0023】
(2)前記Zが、下記の(A)、(B)、(C)、(D)又は(E)
【0024】
【化3】

【0025】
(式中、G2は前記と同じ意味を表し、*はキラルな炭素原子を表し、Yは酸素原子又は硫黄原子を表し、R14〜R34は、それぞれ独立して、水素原子又はC1−6アルキル基を表す。)で表されるいずれかの基であることを特徴とする(1)のフェニルピラゾール誘導体又はその塩。
本発明の第2によれば、下記(3)〜(8)のフェニルピラゾール誘導体の製造方法が提供される。
(3)式(a)
【0026】
【化4】

【0027】
(式中、R3〜R9は前記と同じ意味を表す。)で示される化合物と、式(b)
【0028】
【化5】

【0029】
〔式中、R10、R11及びkは前記と同じ意味を表し、Z1は、少なくとも置換基としてニトロ基又はアシルオキシ基を有する(クロマン−2−イル基、クロマン−4−イル基、2,3−ジヒドロベンゾフラン−2−イル基、2,3−ジヒドロベンゾフラン−3−イル基、チオクロマン−2−イル基、2,3−ジヒドロベンゾチオフェン−2−イル基、若しくは1,3−ベンゾキサチオラン−2−イル基)を表し、
Lは脱離基を表す。〕
で示される化合物とを反応させることを特徴とする、式(1a−1)
【0030】
【化6】

【0031】
又は式(1b−1)
【0032】
【化7】

【0033】
(式中、R3〜R11、k及びZ1は前記と同じ意味を表す。)で示されるフェニルピラゾール誘導体の製造方法。
(4)式(c)
【0034】
【化8】

【0035】
(式中、R3〜R9は前記と同じ意味を表す。)で示される化合物と、式(d)
【0036】
【化9】

【0037】
(式中、R10、R11、k及びZ1は、前記と同じ意味を表す。)で示される化合物とを反応させることを特徴とする、式(1a−1)
【0038】
【化10】

【0039】
又は式(1b−1)
【0040】
【化11】

【0041】
(式中、R3〜R11、k及びZ1は前記と同じ意味を表す。)で示されるフェニルピラゾール誘導体の製造方法。
(5)式(e)
【0042】
【化12】

【0043】
(式中、R3〜R9は前記と同じ意味を表す。)で示される化合物と、式(d)
【0044】
【化13】

(式中、R10、R11、k及びZ1は前記と同じ意味を表す。)で示される化合物とを反応させることを特徴とする、式(1a−1)
【0045】
【化14】

又は式(1b−1)
【0046】
【化15】

【0047】
(式中、R3〜R11、k及びZ1は前記と同じ意味を表す。)で示されるフェニルピラゾール誘導体の製造方法。
【0048】
本発明の第3によれば、下記(6)の抗酸化薬が提供される。
(6)(1)又は(2)のフェニルピラゾール誘導体又はその塩の、1種又は2種以上を含有することを特徴とする抗酸化薬。
【0049】
本発明の第4によれば、下記(7)、(8)の治療薬が提供される。
(7)(6)の抗酸化薬を含むことを特徴とする腎疾患、脳血管疾患又は循環器疾患の治療薬。
(8)(6)の抗酸化薬を含むことを特徴とする脳梗塞の治療薬。
【0050】
本発明の第5によれば、下記(9)、(10)の抑制薬が提供される。
(9)(6)の抗酸化薬を含むことを特徴とする網膜の酸化障害の抑制薬。
(10)前記網膜の酸化障害が、黄斑浮腫、加齢性黄斑変性症あるいは糖尿病性網膜症であることを特徴とする(9)の抑制薬。
【0051】
本発明の第6によれば、下記(11)、(12)の阻害薬が提供される。
(11)(6)の抗酸化薬を含むことを特徴とするリポキシゲナーゼ阻害薬。
(12)(6)の抗酸化薬を含むことを特徴とする20−ヒドロキシエイコサテトラエン酸シンターゼ阻害薬。
【発明の効果】
【0052】
本発明のフェニルピラゾール誘導体又はその塩は、抗酸化活性を有し、動脈硬化症をはじめ心筋梗塞、脳梗塞等の虚血性臓器障害の治療、腎疾患等の酸化的細胞障害による疾病の治療、網膜の光等による酸化障害の抑制等に有効である。
本発明の製造方法によれば、本発明のフェニルピラゾール誘導体を簡便に製造することができる。
本発明の抗酸化薬は、腎疾患、脳血管疾患、循環器疾患、脳梗塞疾患の治療薬等として、また、副作用が少ない網膜の酸化障害抑制薬、リポキシゲナーゼ阻害薬、及び20−HETEシンターゼ阻害薬として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
以下、本発明を、1)式(1)で表されるフェニルピラゾール誘導体又はその塩、2)式(1)で表されるフェニルピラゾール誘導体の製造方法、3)抗酸化薬、及び4)治療薬、抑制薬及び阻害薬に項分けして詳細に説明する。
【0054】
1)式(1)で表されるフェニルピラゾール誘導体又はその塩
本発明の第1は、前記式(1)で表されるフェニルピラゾール誘導体(以下、「フェニルピラゾール誘導体(1)」ともいう。)、又はその塩である。
前記式(1)において、R1、R2は、式(2)で示される基を表す。但し、R1が前記式(2)で表される基であるとき、R2が存在することはなく、R2が前記式(2)で表される基であるとき、R1が存在することはない。
【0055】
式(2)中、R10及びR11は、それぞれ独立して、水素原子、シアノ基、水酸基、ハロゲン原子、C1−6アルキル基、C1−6アルコキシ基、C2−6アルケニル基、C2−6アルキニル基、C2−6アルケニルオキシ基、C2−6アルキニルオキシ基、アシルオキシ基、又はG1で置換されていてもよい(C3−8シクロアルキル基、若しくはフェニル基)を表す。
G1は、シアノ基、ホルミル基、C1−6アルキルカルボニル基、水酸基、C1−6アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、モノC1−6アルキルアミノ基、ジC1−6アルキルアミノ基、C1−6アルコキシカルボニル基を表す。
なお、C1−6アルキルカルボニル基のC1−6は、アルキル基の炭素数を表し、C1−6アルコキシカルボニル基のC1−6は、アルコキシ基の炭素数を表す(以下同様)。
【0056】
R10、R11、G1のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
R10、R11のC1−6アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル等が挙げられる。
R10、R11、G1のC1−6アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、sec−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。
【0057】
R10、R11のC2−6アルケニル基としては、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−メチル−2−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、1−メチル−2−ブテニル基、2−メチル−2−ブテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基等が挙げられる。
【0058】
R10、R11のC2−6アルキニル基としては、エチニル基、1−プロピニル基、プロパルギル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、1−メチル−2−プロピニル基、2−メチル−3−ブチニル基、1−ペンチニル基、2−ペンチニル基、3−ペンチニル基、4−ペンチニル基、1−メチル−2−ブチニル基、2−メチル−3−ペンチニル基、1−ヘキシニル基、1,1−ジメチル−2−ブチニル基等が挙げられる。
【0059】
R10、R11のC2−6アルケニルオキシ基としては、アリルオキシ基、2−プロペニルオキシ基、2−ブテニルオキシ基、2−メチル−3−プロペニルオキシ等が挙げられる。
R10、R11のC2−6アルキニルオキシ基としては、2−プロピニルオキシ基、2−ブチニルオキシ基、1−メチル−2−プロピニルオキシ等が挙げられる。
R10、R11のアシルオキシ基としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等が挙げられる。
R10、R11のC3−8シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、1−メチルシクロプロピル基、2−メチルシクロプロピル基、2,2−ジメチルシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル等が挙げられる。
【0060】
G1のC1−6アルキルカルボニル基としては、アセチル基、プロピオニル基、プロピルカルボニル基、バレリル基、ピバロイル基等が挙げられる。
G1のC1−6アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基等が挙げられる。
【0061】
G1のモノC1−6アルキルアミノ基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、s−ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、t−ブチルアミノ基、n−ペンチルアミノ基、n−ヘキシルアミノ基等が挙げられる。
G1のジC1−6アルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジn−プロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジn−ブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、メチルn−プロピルアミノ基等が挙げられる。
【0062】
これらの中でも、R10及びR11は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基又はフェニル基であるのが好ましい。
【0063】
kは0〜15の整数を表し、0〜6の整数が好ましい。kが2以上のとき、R10同士およびR11同士は、それぞれ同一であっても相異なっていてもよい。
【0064】
Zは、少なくとも置換基としてG2を有する(クロマン−2−イル基、クロマン−4−イル基、2,3−ジヒドロベンゾフラン−2−イル基、2,3−ジヒドロベンゾフラン−3−イル基、チオクロマン−2−イル基、2,3−ジヒドロベンゾチオフェン−2−イル基、又は1,3−ベンゾキサチオラン−2−イル基)を表す。
【0065】
G2は、式:NHR12、又はOR13で表される基を表す。
式:NHR12中、R12は、水素原子、ホルミル基、C1−6アルキルカルボニル基、又は(シアノ基、水酸基、C1−6アルキル基、C1−6アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、モノC1−6アルキルアミノ基、ジC1−6アルキルアミノ基、C1−6アルコキシカルボニル基)で置換されていてもよいベンゾイル基を表す。
式:OR13中、R13は、水素原子、ホルミル基、C1−6アルキルカルボニル基、又は(シアノ基、水酸基、C1−6アルキル基、C1−6アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、モノC1−6アルキルアミノ基、ジC1−6アルキルアミノ基、C1−6アルコキシカルボニル基)で置換されていてもよいベンゾイル基を表す。
【0066】
かかるZとしては、前記の(A)、(B)、(C)、(D)又は(E)で表されるいずれかの基であるのが好ましい。
前記式(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)中、G2は前記と同じ意味を表し、*はキラルな炭素原子を表し、Yは酸素原子又は硫黄原子を表す。
R14〜R34はそれぞれ独立して、水素原子又はC1−6アルキル基を表す。
R14〜R34のC1−6アルキル基としては、前記R10、R11のC1−6アルキル基として列挙したものと同様のものが挙げられる。
【0067】
前記式(1)中、R3は、水素原子、G3で置換されていてもよい(C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C2−6アルキニル基、C1−6アルコキシカルボニル基、C1−6アルキルカルバモイル基、モノC1−6アルキルアミノ基、ジC1−6アルキルアミノ基、C1−6アルコキシ基、フェニル基、又はヘテロアリール基)、カルボキシル基、水酸基、又はシアノ基を表す。
G3は、G1と同様の、シアノ基、ホルミル基、C1−6アルキルカルボニル基、水酸基、C1−6アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、モノC1−6アルキルアミノ基、ジC1−6アルキルアミノ基、C1−6アルコキシカルボニル基を表す。
【0068】
R3のC1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C2−6アルキニル基、C1−6アルコキシ基としては、前記R10、R11のC1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C2−6アルキニル基、C1−6アルコキシ基として列挙したものと同様のものが挙げられる。
R3のC1−6アルコキシカルボニル基、モノC1−6アルキルアミノ基、ジC1−6アルキルアミノ基としては、前記G1のC1−6アルコキシカルボニル基、モノC1−6アルキルアミノ基、ジC1−6アルキルアミノ基として列挙したものと同様のものが挙げられる。
R3のC1−6アルキルカルバモイル基としては、メチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、プロピルカルバモイル基、イソプロピルカルバモイル基、ブチルカルバモイル基、s−ブチルカルバモイル基、イソブチルカルバモイル基、t−ブチルカルバモイル基等が挙げられる。
R3のヘテロアリール基としては、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、フリル基、チエニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、ピラゾリル基等が挙げられる。
【0069】
前記式(1)中、R4は、水素原子、G4で置換されていてもよい(C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C2−6アルキニル基、フェニル基、又はヘテロアリール基)を表し、
G4は、G1と同様の、シアノ基、ホルミル基、C1−6アルキルカルボニル基、水酸基、C1−6アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、モノC1−6アルキルアミノ基、ジC1−6アルキルアミノ基、C1−6アルコキシカルボニル基を表す。
R5、R6、R7、R8、及びR9は、それぞれ独立して、水素原子、シアノ基、水酸基、ハロゲン原子、G5で置換されていてもよい(C1−6アルキル基、C1−6アルコキシ基、C2−6アルケニル基、C2−6アルキニル基、C2−6アルケニルオキシ基、C2−6アルキニルオキシ基、アシルオキシ基、モノC1−6アルキルアミノ基、ジC1−6アルキルアミノ基)、G6で置換されていてもよい(ピペラジル基、ピペリジル基、C3−8シクロアルキル基、フェニル基、又はヘテロアリール基)を表す。
【0070】
G5は、G1と同様の、シアノ基、ホルミル基、C1−6アルキルカルボニル基、水酸基、C1−6アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、モノC1−6アルキルアミノ基、ジC1−6アルキルアミノ基、C1−6アルコキシカルボニル基を表す。
G6は、C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C2−6アルキニル基、シアノ基、水酸基、C1−6アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、モノC1−6アルキルアミノ基、ジC1−6アルキルアミノ基、C1−6アルコキシカルボニル基を表す。
【0071】
また、前記R5、R6、R7、R8及びR9のうち、隣接する2つの基が一緒になって、環を形成していてもよい。そのようなフェニルピラゾール誘導体(1)としては、例えば、式(3)
【0072】
【化16】

【0073】
で表される化合物、式(4)
【0074】
【化17】

【0075】
で表される化合物等が挙げられる。
式(3)、(4)中、R1〜R4は前記と同じ意味を表す。
式(3)中、R35、R36はそれぞれ独立して、水素原子又はG7で置換されていてもよいC1−6アルキル基を表す。G7は、G1と同様の、シアノ基、ホルミル基、C1−6アルキルカルボニル基、水酸基、C1−6アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、モノC1−6アルキルアミノ基、ジC1−6アルキルアミノ基、C1−6アルコキシカルボニル基を表す。
【0076】
式(4)中、Xは、式:−NR−、又は−CR−で表される基を表す。式中、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はG7で置換されていてもよい(C1−6アルキル基、C1−6アルキルカルボニル基、ベンジル基、ベンゾイル基)、又はホルミル基を表し、G7は前記と同じ意味を表す。lは1又は2を表す。
【0077】
さらに、前記R4とR5とが一緒になって、環を形成していてもよい。そのようなフェニルピラゾール誘導体(1)としては、例えば、式(5)
【0078】
【化18】

【0079】
で表される化合物等が挙げられる。
式中、R1、R2、R6〜R9は前記と同じ意味を表す。Eは、式:−CH−、−NR−、−O−、−S−、−C(=O)−、−CHCH−、−CH=CH−、−N(R)CH−、−N=CH−、−CHNR−、−CH=N−(式中、Rは、水素原子、G7で置換されていてもよい(C1−6アルキル基、C1−6アルキルカルボニル基、ベンゾイル基、ベンジル基)、又はホルミル基を表し、G7は前記と同じ意味を表す。
【0080】
なお、フェニルピラゾール誘導体(1)又はその塩には、いくつかの光学活性体及び互変異性体が存在し得る。これらは、すべて本発明の範囲に含まれる。
【0081】
本発明のフェニルピラゾール誘導体(1)又はその塩は、優れた抗酸化作用を有するので、後述するように抗酸化薬等として有用である。
【0082】
2)フェニルピラゾール誘導体(1)の製造方法
本発明のフェニルピラゾール誘導体(1)は、例えば、以下に示す製造方法1〜7により製造することができる。これらの方法によれば、本発明のフェニルピラゾール誘電体(1)又はその製造中間体を、効率よく製造することができる。
製造方法1
【0083】
【化19】

【0084】
製造方法1は、式(a)で表されるピラゾール誘導体と式(b)で表される化合物とを反応させることにより、本発明のフェニルピラゾール誘導体(1)の一種又はその製造中間体である、式(1a−1)若しくは(1b−1)で表される化合物を得るものである。
【0085】
上記式中、R3〜R11及びkは、前記と同じ意味を表す。
Lは脱離基を表す。脱離基としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メチルスルホニルオキシ基等のアルキルスルホニルオキシ基;4−メチルフェニルスルホニルオキシ基等のアリールスルホニルオキシ基;トリフルオロメチルスルホニルオキシ基等のハロアルキルスルホニルオキシ基;等が挙げられる。
【0086】
Z1は、少なくとも置換基としてニトロ基又はアシルオキシ基を有する(クロマン−2−イル基、クロマン−4−イル基、2,3−ジヒドロベンゾフラン−2−イル基、2,3−ジヒドロベンゾフラン−3−イル基、チオクロマン−2−イル基、2,3−ジヒドロベンゾチオフェン−2−イル基、若しくは1,3−ベンゾキサチオラン−2−イル基)を表す。
【0087】
すなわち、式(a)で表されるピラゾール誘導体に、有機溶媒中、塩基の存在下に、式(b)で表される化合物を反応させることで、式(1a−1)又は(1b−1)で表される化合物を得ることができる。
【0088】
この反応において、式(b)で表される化合物の使用量は、用いる化合物の種類にもよるが、化合物(a)1モルに対して、通常0.5〜3倍モルである。
【0089】
この反応に用いる塩基としては、トリエチルアミン、ピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]7−ウンデセエン(DBU)等のアミン類;カリウムt−ブトキシド、ナトリウムメトキシド等の金属アルコキシド;炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の金属炭酸塩;水酸化ナトリウム等の金属水酸化物;水素化ナトリウム、水素化カルシウム等の金属水素化物;等が挙げられる。
塩基の使用量は、式(b)で表される化合物に対して、通常1〜3倍モルである。
【0090】
用いる有機溶媒としては、反応に不活性な溶媒であれば特に制約はない。例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキシン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;アセトニトリル等のニトリル類;ジメチルホルムアミド(DMF)等のホルムアミド類;ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド類;等が挙げられる。これらの溶媒は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0091】
反応温度は、通常、−15℃から用いる溶媒の沸点までの温度範囲、好ましくは−10℃〜+80℃である。
反応時間は、反応規模にもよるが、通常数分から数十時間である。
【0092】
式(a)で表される化合物には、上記式中に示すように、互変異性体が存在する。従って、この製造方法おいては、式(1a−1)及び(1b−1)で表される反応生成物が得られる。
製造方法2
【0093】
【化20】

【0094】
製造方法2は、式(c)で表される化合物と式(d)で表される化合物とを反応させることにより、本発明のフェニルピラゾール誘導体(1)の一種又はその製造中間体である、式(1a−1)又は(1b−1)で表される化合物を得るものである。
上記式中、R3〜R11、k及びZ1は、前記と同じ意味を表す。
【0095】
すなわち、式(c)で表される化合物と式(d)で表される化合物とを、適当な有機溶媒中で反応させることで、式(1a−1)又は(1b−1)で表される化合物を得ることができる。
【0096】
用いる有機溶媒としては、反応に不活性な溶媒であれば特に制約はない。例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール等のアルコール類;酢酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸;等が挙げられる。これらの溶媒は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0097】
反応温度は、通常、0℃から用いる溶媒の沸点までの温度範囲、好ましくは15℃から用いる溶媒の沸点までの温度範囲である。
反応時間は、反応規模にもよるが、通常数分から数十時間である。
用いる式(d)で表される化合物の使用量は、用いる化合物の種類にもよるが、式(c)で表される化合物に対して、通常0.5〜3倍モルである。
【0098】
式(c)で表される化合物には、上記式中に示すように、互変異性体が存在する。従って、この製造方法においては、式(1a−1)及び(1b−1)で表される反応生成物が得られる。
製造方法3
【0099】
【化21】

【0100】
製造方法3は、式(e)で表される化合物と式(d)で表される化合物とを反応させることにより、本発明のフェニルピラゾール誘導体(1)の一種又はその製造中間体である、式(1a−1)又は(1b−1)で表される化合物を得るものである。
上記式中、R3〜R11、k及びZ1は、前記と同じ意味を表す。
【0101】
すなわち、式(e)で表される化合物と式(d)で表される化合物とを、適当な有機溶媒中で反応させることで、式(1a−1)又は(1b−1)で表される化合物を得ることができる。
【0102】
式(d)で表される化合物の使用量は、用いる化合物の種類にもよるが、式(e)で表される化合物に対して、通常0.5〜3倍モルである。
用いる有機溶媒としては、前記製造方法2で例示した有機溶媒と同様のものが挙げられる。
【0103】
反応温度は、通常、0℃から用いる溶媒の沸点までの温度範囲、好ましくは15℃から用いる溶媒の沸点までの温度範囲である。
反応時間は、反応規模にもよるが、通常数分から数十時間である。
この製造方法においては、式(1a−1)及び(1b−1)で表される反応生成物が得られる。
製造方法4
【0104】
【化22】

【0105】
製造方法4は、式(f)又は式(g)で表される化合物を加水分解することにより、本発明のフェニルピラゾール誘導体(1)の一種又はその製造中間体である式(1a−2)又は(1b−2)で表される化合物を得るものである。
【0106】
上記式中、R4〜R11、k及びZ1は前記と同じ意味を表し、Rは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−ブチル基、イソブチル基等のC1−6アルキル基を表す。
【0107】
Z2は、少なくとも置換基として、ニトロ基、アシルオキシ基又は水酸基を有する(クロマン−2−イル基、クロマン−4−イル基、2,3−ジヒドロベンゾフラン−2−イル基、2,3−ジヒドロベンゾフラン−3−イル基、チオクロマン−2−イル基、2,3−ジヒドロベンゾチオフェン−2−イル基、又は1,3−ベンゾキサチオラン−2−イル基)を表す。
【0108】
すなわち、式(f)又は式(g)で表される化合物を、酸又は塩基の存在下、溶媒中で撹拌することにより、ピラゾール環に結合するアルコキシカルボニル基(COOR)を加水分解してカルボキシル基に変換し、式(1a−2)又は(1b−2)で表される化合物を得ることができる。また、この場合において、Z1がアシルオキシ基を有する化合物を用いる場合には、COOR基が加水分解されるのと同時に該アシルオキシ基も加水分解されて水酸基に変換された反応生成物が得られることがある。
【0109】
用いる酸としては、塩酸、硫酸等の無機酸等が挙げられる。
用いる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の金属炭酸塩;等が挙げられる。
用いる溶媒としては、水;水−メタノール、水−エタノール等の含水アルコール;等が挙げられる。
反応温度は、通常0〜100℃であり、反応時間は、反応規模にもよるが、通常数分から数時間である。
製造方法5
【0110】
【化23】

【0111】
製造方法5は、式(h)又は式(i)で表される化合物を脱炭酸っすることにより、本発明のフェニルピラゾール誘導体(1)の一種又はその製造中間体である式(1a−3)又は(1b−3)で表される化合物を得るものである。
式中、R4〜R11、k及びZ2は、前記と同じ意味を表す。
【0112】
すなわち、式(h)又は式(i)で表される化合物を、溶媒中又は無溶媒で、所望により酸の存在下、所定温度で撹拌して、ピラゾール環に結合するカルボキシル基(COOH)を脱炭酸することにより、式(1a−3)又は(1b−3)で表される化合物を得ることができる。
【0113】
用いる溶媒としては、ニトロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジエチルアニリン等の高沸点溶媒が挙げられる。
用いる酸としては、塩酸、硫酸等の無機酸が挙げられる。
反応温度は、通常50〜300℃の範囲であり、反応時間は、反応規模にもよるが、通常数分から数時間である。
製造方法6
【0114】
【化24】

【0115】
製造方法6は、式(j)又は式(k)で表される化合物を還元することにより、本発明のフェニルピラゾール誘導体(1)の一種又はその製造中間体である、式(1a−4)又は(1b−4)で表される化合物を得るものである。
【0116】
式中、R3〜R11及びkは、前記と同じ意味を表す。
Z3は、少なくとも置換基としてニトロ基を有する(クロマン−2−イル基、クロマン−4−イル基、2,3−ジヒドロベンゾフラン−2−イル基、2,3−ジヒドロベンゾフラン−3−イル基、チオクロマン−2−イル基、2,3−ジヒドロベンゾチオフェン−2−イル基、又は1,3−ベンゾキサチオラン−2−イル基)を表す。
Z4は、少なくとも置換基としてアミノ基を有する(クロマン−2−イル基、クロマン−4−イル基、2,3−ジヒドロベンゾフラン−2−イル基、2,3−ジヒドロベンゾフラン−3−イル基、チオクロマン−2−イル基、2,3−ジヒドロベンゾチオフェン−2−イル基、又は1,3−ベンゾキサチオラン−2−イル基)を表す。
【0117】
すなわち、式(j)又は式(k)で表される化合物を、有機溶媒中、水素添加触媒の存在下に水素添加を行うか、あるいは還元剤を用いて還元して、前記Z3のニトロ基をアミノ基に変換することにより、式(1a−4)又は(1b−4)で表される化合物を得ることができる。
【0118】
用いる水素添加触媒としては、パラジウム炭素、水酸化パラジウム、二酸化白金、ラネーニッケル等が挙げられる。
【0119】
水素添加反応を行うときに用いる有機溶媒としては、メタノール、エタノール等のアルコール類;ジエチルエーテル、THF、1,4−ジオキサン等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等の炭化水素類;DMF等のアミド類;ギ酸、酢酸等の有機酸類;酢酸エチル等のエステル類;及びこれらの混合溶媒等を用いることができる。
【0120】
還元剤を用いて還元する方法としては、メタノール、エタノール等のアルコール中、塩酸と塩化第一スズを用いる方法や、アセトン、メチルエチルケトン等の有機溶媒と水との混合溶媒中、酢酸と鉄を用いる方法等が挙げられる。
反応温度は、通常、0℃から用いる溶媒の沸点までの温度範囲であり、反応時間は、反応規模にもよるが、通常数分から数時間である。
製造方法7
【0121】
【化25】

【0122】
製造方法7は、式(l)又は式(m)で表される化合物を加水分解することにより、本発明のフェニルピラゾール誘導体(1)の一種又はその製造中間体である式(1a−5)又は(1b−5)で表される化合物を得るものである。
【0123】
式中、R3〜R11及びkは、前記と同じ意味を表す。
Z5は、少なくとも置換基としてアシルオキシ基を有する(クロマン−2−イル基、クロマン−4−イル基、2,3−ジヒドロベンゾフラン−2−イル基、2,3−ジヒドロベンゾフラン−3−イル基、チオクロマン−2−イル基、2,3−ジヒドロベンゾチオフェン−2−イル基、又は1,3−ベンゾキサチオラン−2−イル基)を表す。
Z6は、少なくとも置換基として水酸基を有する(クロマン−2−イル基、クロマン−4−イル基、2,3−ジヒドロベンゾフラン−2−イル基、2,3−ジヒドロベンゾフラン−3−イル基、チオクロマン−2−イル基、2,3−ジヒドロベンゾチオフェン−2−イル基、又は1,3−ベンゾキサチオラン−2−イル基)を表す。
【0124】
すなわち、式(l)又は式(m)で表される化合物を、溶媒中、酸又は塩基の存在下に撹拌して、前記Z5のアシルオキシ基を加水分解して水酸基に変換することにより、式(1a−5)又は(1b−5)で表される化合物を得ることができる。また、この場合において、Rがアルコキシカルボニル基である化合物を用いる場合には、Z5のアシルオキシ基が加水分解されるのと同時に該アルコキシカルボニル基も加水分解されてカルボキシル基に変換された反応生成物が得られることがある。
【0125】
用いる溶媒としては、水;水−メタノール、水−エタノール等の含水アルコール等が挙げられる。
用いる酸としては、塩酸、硫酸などの無機酸等が挙げられる。
用いる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の金属炭酸塩;等が挙げられる。
反応温度は、通常0〜100℃の範囲であり、反応時間は、反応規模にもよるが、通常数分から数時間である。
【0126】
上述した製造方法1〜7のいずれの方法においても、反応終了後は、有機合成化学における通常の後処理操作、精製操作を行なうことにより、目的物を単離することができる。
また、製造方法1〜7で得られる本発明のフェニルピラゾール誘導体の製造中間体から、有機合成化学における通常の方法により、本発明のフェニルピラゾール誘導体に導くことができる。
【0127】
本発明の塩としては、本発明のフェニルピラゾール誘導体(1)の塩であれば特に制限されない。具体例としては、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸等の無機酸の塩;酢酸、プロピオン酸、乳酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、サリチル酸、ニコチン酸、ヘプタグルコン酸等の有機酸の塩;が挙げられる。
【0128】
これらの塩は、本発明のフェニルピラゾール誘導体(1)から、常法に従い容易に製造することができる。
【0129】
以上のようにして得られる本発明のフェニルピラゾール誘導体又はその塩の構造は、IRスペクトル、NMRスペクトル及びMSスペクトルの測定、元素分析等から確認・同定することができる。
【0130】
3)抗酸化薬
本発明の抗酸化薬は、本発明のフェニルピラゾール誘導体又はその塩(以下、「本発明化合物」ということがある。)を有効成分として含有することを特徴とする。
【0131】
本発明の抗酸化薬は、種々の活性酸素や過酸化脂質を除去し、虚血病変部の組織障害を防ぐことができるため、虚血臓器障害の治療薬として有用である。
【0132】
本発明の抗酸化薬は、酸化作用に基づく各種疾病、例えば、腎疾患、脳血管疾患、循環器疾患、脳梗塞、動脈硬化、老化痴呆性疾患、心臓病、癌、糖尿病、熱傷、眼疾患等の治療薬としても有用である。脳梗塞や心筋梗塞等の虚血性臓器疾患では、虚血部位の血液再灌流時に種々の活性酸素が発生し、脂質過酸化反応による細胞膜破壊等により組織障害が増悪される。例えば、動脈硬化病変の発生、進展は、低比重リポ蛋白(Low density lipoprotein、以下「LDL」と略記する。)の酸化的変性を防ぐことによって阻止することができるので、本発明の抗酸化薬は、動脈硬化の治療薬に適用することができる。
【0133】
本発明の抗酸化薬は、リポキシゲナーゼ阻害作用及び20−HETEシンターゼ阻害作用を有する。リポキシゲナーゼの作用を阻害することにより、アラキドン酸をHPETEに変換されるのを抑制し、また、20−HETEシンターゼを阻害することにより20−HETEが産生されるのを抑制することができる。
また、本発明化合物の中には、ドーパミン放出抑制作用が少なく、パーキンソン様等の副作用を伴う可能性が少ない化合物も含まれる。
【0134】
本発明の抗酸化薬は、有効成分(本発明化合物)、及び慣用の医薬用担体又は賦形剤の他、他の薬剤、アジュバント等を他の成分と反応しない範囲で含有する組成物とすることができる。かかる組成物は、投与様式に応じて、有効成分を1〜99重量%、適当な医薬用担体又は賦形剤を99〜1重量%含有するものとすることができ、好ましくは、有効成分を5〜75重量%、残部を適当な医薬用担体又は賦形剤とすることができる。
【0135】
本発明の抗酸化薬には、投与様式に拘わらず、所望により、少量の補助物質、例えば、湿潤剤、乳化剤、pH緩衝剤、抗酸化剤等、他の成分と反応しない範囲で、例えば、クエン酸、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンオレエート、ブチル化ヒドロキシトルエン等を添加することもできる。
【0136】
本発明の抗酸化薬は、上記疾病の医薬として、任意の様式で、例えば、経口、経鼻、非経口、局所、経皮又は経直腸で投与することができる。
また、その剤形も、固体、半固体、凍結乾燥粉末又は液体の剤形、例えば、錠剤、坐薬、丸薬、軟質及び硬質カプセル、散薬、液剤、注射剤、懸濁剤、エアゾル剤、持続放出製剤等とすることができ、正確な投与量を処方でき、かつ、簡便に投与することができる適当な剤形とすることができる。
【0137】
本発明の抗酸化薬の好ましい投与経路は経口であり、経口用の抗酸化薬に適用される賦形剤としては、任意の通常用いられる賦形剤、例えば、医薬用のマニトール、乳糖、デンプン、ゼラチン化デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロースエーテル誘導体、グルコース、ゼラチン、スクロース、クエン酸塩、没食子酸プロピル等を挙げることができる。
【0138】
また、経口用の抗酸化薬には、希釈剤として、例えば、乳糖、スクロース、リン酸二カルシウム等を、崩壊剤として、例えば、クロスカルメロースナトリウム又はその誘導体等を、結合剤として、例えば、ステアリン酸マグネシウム等を、滑沢剤として、例えば、デンプン、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、セルロースエーテル誘導体等を含有させることができる。
【0139】
本発明の抗酸化薬を注射剤とする場合には、無菌の水性又は非水性の溶液剤、懸濁剤、乳濁剤を包含することが好ましい。水性の溶液剤、懸濁剤の希釈剤としては、例えば注射剤用蒸留水及び生理食塩水を用いることができる。
【0140】
非水溶性の溶液剤、懸濁剤の希釈剤としては、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、エタノールのようなアルコール類、ポリソルベート(商品名)等を用いることができる。
【0141】
このような注射剤は、さらに等張化剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤(例えば、ラクトース)、可溶化ないし溶解補助剤のような添加剤を含んでもよい。これらは、例えばバクテリア保留フィルターを通す濾過、殺菌剤の固体組成物を製造し、使用前に無菌水又は無菌の注射用溶媒に溶解して使用することもできる。
【0142】
また、本発明の抗酸化薬を坐剤とする場合には、担体として体内で徐々に溶解する担体、例えば、ポリオキシエチレングリコール又はポリエチレングリコール(以下PEGと略記する)、具体的には、PEG1000(96%)又はPEG4000(4%)を使用し、かかる担体に式(1)の化合物又はその薬学的に許容される塩0.5〜50重量%を分散したものを挙げることができる。
【0143】
本発明の抗酸化薬を液剤とする場合は、担体として水、食塩水、デキストロース水溶液、グリセロール、エタノール等を使用し、かかる担体に式(1)の化合物又はその薬学的に許容される塩を0.5〜50重量%と共に、任意の医薬アジュバントを溶解、分散させる等の処理を行い、溶液又は懸濁液としたものが好ましい。
【0144】
このような製剤は、通常の方法、例えば、レミントン・ファルマスーテイカル・サイエンス(Remington’s Pharmaceutical Sciences)第18版,マック・パブリシング・カンパニー,イーストン,ペンシルバニア(Mack Publishing Company,Easton,Pennsylvania)1990年刊等に教示される記載に従って製造することができる。
【0145】
本発明の抗酸化薬において、本発明化合物の治療有効量は、個人及び処置される疾病の病状により変動される。通常、治療有効1日用量は、体重1kgあたり、本発明化合物0.14mg〜14.3mg/日とすることができ、好ましくは、体重1kgあたり0.7mg〜10mg/日、より好ましくは、体重1kgあたり1.4mg〜7.2mg/日とすることができる。
【0146】
例えば、体重70kgのヒトに投与する場合、本発明化合物の用量範囲は、1日10mg〜1.0g、好ましくは、1日50mg〜700mg、より好ましくは、1日100mg〜500mgとなるが、これは飽く迄目安であって、処置の病状によってはこの範囲以外の用量とすることができる。
【0147】
4)治療薬、抑制薬及び阻害薬
本発明の腎疾患、脳血管疾患、循環器疾患、脳梗塞の治療薬、網膜の酸化障害抑制薬、リポキシゲナーゼ阻害薬、20−HETEシンターゼ阻害薬は、本発明の抗酸化薬を含むことを特徴とする。これらの治療薬、抑制薬及び阻害薬の投与様式、投与形態、投与量も上記抗酸化薬と同様の様式、形態、投与量とすることができる。
【0148】
また、本発明の治療薬、抑制薬及び阻害薬には、上記抗酸化薬と同様の製剤用成分、担体、アジュバント等を包含させることができ、賦形剤、崩壊剤、結合剤等や、有効成分と反応しない他の酸化障害抑制薬の1種又は2種以上を適宜加えてもよい。また、上記の他に、他の薬効を有する成分を適宜含有させてもよい。
【0149】
(網膜の酸化障害抑制薬)
本発明の網膜の酸化障害の抑制薬は、網膜の酸化障害に起因する疾病;糖尿病、高血圧症、動脈硬化症、貧血症、白血病、全身性エリテマトーデスや強皮症等の結合組織疾患、テイ−ザックス(Tay−Sacks)病、フォークト−シュピールマイヤー(Vogt−Spielmeyer)病等の先天代謝異常等の全身疾患に起因する網膜の血管障害;炎症性及び変性病変、未熟児網膜症、網膜静脈閉塞症、網膜動脈閉塞症、網膜静脈周囲炎等の網膜血管の障害;網膜剥離や外傷に由来する網膜の炎症や変性;加齢性黄斑変性症等の加齡に伴う網膜の変性疾患;先天的な網膜変性疾患;等の網膜局所の疾患の予防および治療に用いることができる。特に光酸化障害により発症する黄斑浮腫、加齢性黄斑変性症、又は糖尿病性網膜症の疾患の治療薬として有用である。
【0150】
また、投与形態としては、上記抗酸化薬における場合と同様の投与形態の他、点眼剤、眼軟膏剤とすることができる。
【0151】
本発明の網膜の酸化障害抑制薬を点眼剤とする場合は、本発明化合物を通常使用される基剤溶媒に加え水溶液又は懸濁液とし、pHを4〜10、好ましくは5〜9に調整することができる。
【0152】
点眼剤は、無菌製品とするため滅菌処理を行なうことが好ましく、かかる滅菌処理は製造工程のいずれの段階においても行うことができる。点眼剤中の本発明化合物の濃度は、0.001〜3%(W/V)、好ましくは0.01〜1%(W/V)であり、投与量も症状の程度、患者の体質等の種々の状態により1日1〜4回、各数滴等とすることができる。上記投与量は飽く迄目安であり、この範囲を超えて投与することもできる。
【0153】
上記点眼剤には、本発明化合物と反応しない範囲の緩衝剤、等張化剤、防腐剤、pH調整剤、増粘剤、キレート剤、可溶化剤等の各種添加剤を適宜、添加してもよい。
【0154】
かかる緩衝剤としては、例えば、クエン酸塩緩衝剤、酒石酸緩衝剤、酢酸塩緩衝剤、アミノ酸等を挙げることができる。等張化剤としては、例えば、ソルビトール、グルコース、マンニトール等の糖類、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール類、塩化ナトリウム等の塩類等を挙げることができる。また、防腐剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸メチル基、パラオキシ安息香酸エチル等のパラオキシ安息香酸エステル類、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、ソルビン酸又はその塩等を挙げることができる。
【0155】
pH調整剤としては、例えば、リン酸、水酸化ナトリウム等を挙げることができる。
増粘剤としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースやその塩等を挙げることができる。
キレート剤としては、例えば、エデト酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、縮合リン酸ナトリウム等を挙げることができ、可溶化剤としては、例えば、エタノール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等を挙げることができる。
【0156】
また、本発明の網膜の酸化障害抑制薬を眼軟膏剤とする場合、本発明化合物を通常使用される眼軟膏基剤、例えば、精製ラノリン、白色ワセリン、マクロゴール、プラスチベース、流動パラフィン等と混合したものとすることができ、無菌製品とするため滅菌処理をしたものが好ましい。
【0157】
眼軟膏剤における本発明化合物の濃度は、0.001〜3%(W/W)、好ましくは0.01〜1%(W/W)であり、投与量も症状の程度、患者の体質等の種々の状態により1日1〜4回等とすることができる。上記投与量は飽く迄目安であり、この範囲を超えて投与することもできる。
【実施例】
【0158】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれらの実施例になんら限定されるものではない。
【0159】
(実施例1)
工程1:5−ニトロ−2,4,6,7−テトラメチル−2,3−ジヒドロベンゾフラン−2−イルメチルトリフルオロメタンスルホネートの製造
【0160】
【化26】

【0161】
トリフルオロメタンスルホン酸無水物6.7gのジクロロメタン50ml溶液に、2−ヒドロキシメチル−2,4,6,7−テトラメチルベンゾフラン5.0g及びトリエチルアミン2.4gのジクロロメタン50m溶液を、0℃、30分間で滴下した。滴下終了後、0℃で1時間撹拌後、室温に昇温し、さらに1.5時間撹拌した。
反応終了後、反応溶液を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥してろ過した。ろ液から溶媒を減圧留去して得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=100:1(容積比))で精製し、目的物を7.3g得た。
【0162】
工程2:1−(5’−ニトロ−2’,4’,6’,7’−テトラメチル−2',3'−ジヒドロベンゾフラン−2’−イルメチル)−3−フェニルピラゾールの製造
【0163】
【化27】

【0164】
(式中、Tfは、トリフルオロメタンスルホニル基を表す。)
3−フェニルピラゾール0.22gのDMF5ml溶液中に、60重量%水素化ナトリウム0.06gを加え、室温で1時間撹拌した。この反応溶液に、5−ニトロ−2,4,6,7−テトラメチル−2,3−ジヒドロベンゾフラン−2−イルメチルトリフルオロメタンスルホネート0.50gを加え、室温で18時間撹拌した。
反応溶液を減圧濃縮し、クロロホルムを加え、有機層を4回水洗し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過した。ろ液から溶媒を減圧濃縮して得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=20:1(容積比))で精製し、目的物を0.49g得た。
【0165】
工程3:1−(5’−アミノ−2’,4’,6’,7’−テトラメチル−2',3'−ジヒドロベンゾフラン−2’−イルメチル)−3−フェニルピラゾールの製造
【0166】
【化28】

【0167】
エタノール10mlに、1−(5’−ニトロ−2’,4’,6’,7’−テトラメチル−2’,3’−ジヒドロベンゾフラン−2’−イルメチル)−3−フェニルピラゾール0.49g、塩化第一スズ・二水和物0.88g、及び濃塩酸4mlを加え、全容を2時間還流した。反応溶液を減圧濃縮し、残留物を水にあけ、水酸化ナトリウム溶液で中和し、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過した。ろ液を減圧濃縮して得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=20:1(容積比))で精製し、目的物を0.30g得た(アモルファス)。
【0168】
(実施例2)
工程1:2−オキソ−3−ベンゾイルプロピオン酸エチルの製造
【0169】
【化29】

【0170】
ベンゼン37mlにナトリウムメトキシド3.61gとシュウ酸ジエチル14.7mlを加え、室温で30分間撹拌した。反応溶液を氷冷し、これにベンゼン55mlに溶解したアセトフェノン3.00gを1時間で滴下し、室温で3時間撹拌した。
反応溶液を氷冷し、冷却した10重量%硫酸水溶液を加えて反応溶液を中和し、ベンゼンで抽出した後、有機層を水洗した。その後、2N炭酸カリウム水溶液で2回逆抽出し、水層を10%硫酸水溶液で中和した後にベンゼンで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過した。ろ液を減圧濃縮して、目的物を5.07g得た。
【0171】
工程2:5−ニトロ−2,4,6,7−テトラメチル−2,3−ジヒドロベンゾフラン−2−イルメチルヒドラジンの製造
【0172】
【化30】

【0173】
ヒドラジン・一水和物7.81gのエタノール5ml溶液に、5−ニトロ−2,4,6,7−テトラメチル−2,3−ジヒドロベンゾフラン−2−イルメチルトリフルオロメタンスルホネート4.00gのエタノール5ml溶液を、室温下、20分間で滴下し、室温で1時間、40℃で1.5時間さらに撹拌した。
反応溶液を減圧濃縮し、得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=9:1(容積比))で精製し、目的物を2.94g得た。
【0174】
工程3:1−(5’−ニトロ−2’,4’,6’,7’−テトラメチル−2’,3’−ジヒドロベンゾフラン−2’−イルメチル)−5−フェニルピラゾール−3−カルボン酸エチルの製造
【0175】
【化31】

【0176】
エタノール10mlに2−オキソ−3−ベンゾイルプロピオン酸エチル1.10g及び5−ニトロ−2,4,6,7−テトラメチル−2,3−ジヒドロベンゾフラン−2−イルメチルヒドラジン1.46gを加え、全容を2時間還流した。反応溶液を減圧濃縮し、水を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過した。ろ液を減圧濃縮して得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=2:1(容積比))で精製し、目的物を1.09g得た。
【0177】
工程4:1−(5’−ニトロ−2’,4’,6’,7’−テトラメチル−2’,3’−ジヒドロベンゾフラン−2’−イルメチル)−5−フェニルピラゾール−3−カルボン酸の製造
【0178】
【化32】

【0179】
メタノール15ml、水9mlの混合溶液に1−(5’−ニトロ−2’,4’,6’,7’−テトラメチル−2’,3’−ジヒドロベンゾフラン−2’−イルメチル)−5−フェニルピラゾール−3−カルボン酸エチル0.50g、水酸化ナトリウム0.38g加え、50℃で2時間撹拌した。
反応溶液に酢酸エチルを加え、水層を分液し、塩酸で中和後、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、得られたろ液を減圧濃縮して目的物を0.33g得た。
【0180】
工程5:1−(5’−ニトロ−2’,4’,6’,7’−テトラメチル−2’,3’−ジヒドロベンゾフラン−2’−イルメチル)−5−フェニルピラゾールの製造
【0181】
【化33】

【0182】
1−(5’−ニトロ−2’,4’,6’,7’−テトラメチル−2’,3’−ジヒドロベンゾフラン−2’−イルメチル)−5−フェニルピラゾール−3−カルボン酸0.33gを200℃で6時間撹拌した。このものを冷却し、水酸化ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過した。ろ液を減圧濃縮して得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:酢酸エチル=9:1(容積比))で精製し、目的物を0.14g得た。
【0183】
工程6:1−(5’−アミノ−2’,4’,6’,7’−テトラメチル−2’,3’−ジヒドロベンゾフラン−2’−イルメチル)−5−フェニルピラゾールの製造
【0184】
【化34】

【0185】
エタノール10mlに、1−(5’−ニトロ−2’,4’,6’,7’−テトラメチル−2’,3’−ジヒドロベンゾフラン−2’−イルメチル)−5−フェニルピラゾール0.14g、塩化第一スズ・二水和物0.25g、及び濃塩酸3mlを加え、全容を2時間還流した。その後、塩化第一スズ・二水和物0.50gと濃塩酸3mlを追加し、さらに1時間還流した。
反応溶液を冷却し、水にあけ水酸化ナトリウム溶液で中和し、クロロホルムで2回抽出した。有機層を集め、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過した。ろ液を減圧濃縮して得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=20:1(容積比))で精製し、目的物を0.13g得た。
融点:84−87℃
【0186】
以上のようにして製造される本発明のフェニルピラゾール誘導体の具体例を、第1表〜第6表に示す。表中の物理恒数の欄にNMRと記載した化合物については、表の後にNMRデータを示す。
表中、Z欄のh1〜h8は下記に示す基を表す。また、表中、NAcのAcは、アセチル基を表す。
【0187】
【化35】

【0188】
【表1】

【0189】
【表2】

【0190】
【表3】

【0191】
【表4】

【0192】
【表5】

【0193】
【表6】

【0194】
【表7】

【0195】
【表8】

【0196】
【表9】

【0197】
【表10】

【0198】
【表11】

【0199】
【表12】

【0200】
【表13】

【0201】
【表14】

【0202】
【表15】

【0203】
【表16】

【0204】
【表17】

【0205】
【表18】

【0206】
【表19】

【0207】
【表20】

【0208】
【表21】

【0209】
【表22】

【0210】
【表23】

【0211】
(実施例3)抗酸化薬の製造
本発明化合物を含有する製剤を以下の方法により調製した。
経口剤(有効成分10mg錠)
本発明化合物 10mg
乳糖 81.4mg
コーンスターチ 20mg
ヒドロキシプロピルセルロース 4mg
カルボキシメチルセルロースカルシウム 4mg
ステアリン酸マグネシウム 0.6mg
―――――――――――――――――――――――――――
合計 120mg
【0212】
上記のような組成となるように、本発明化合物50g、乳糖407g及びコンスターチ100gを、流動造粒コーティング装置(大川原製作所社製)を使用して、均一に混合した。これに、10重量%ヒドロキシプロピルセルロース水溶液200gを噴霧して造粒した。乾燥後、20メッシュの篩を通し、これに、カルボキシメチルセルロースカルシウム20g、ステアリン酸マグネシウム3gを加え、ロータリー打錠機(畑鉄工所社製)で7mm×8.4Rの臼杵を使用して、一錠当たり120mgの錠剤を得た。
【0213】
[In vitro過酸化脂質生成抑制作用]
本発明化合物のin vitro過酸化脂質生成抑制作用試験を、Malvyらの方法(Malvy,C.,et al.,バイオケミカル・アンド・バイオフィジカル・リサーチ・コミニケーションズ(Biochemical and Biophysical Research Communications),1980,第95巻,734〜737頁)に準じて行った。臓器は、ブタ眼球から分離した後、−80℃にて保存している網膜を用いた。使用時に5倍量のリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)を加え、マイクロホモジナイザー(PHYSCOTRON、NITI−ON)にてホモジナイズした。このブタ網膜ホモジネートに0.15M KCl、本発明化合物、500μMシステイン、5μM FeS0を加えて、37℃、30分間インキュベートした。過酸化脂質の分解で生じたマロンジアルデヒドをチオバルビツール酸法にて測定した。測定値から本発明化合物の50%阻害濃度(IC50)を求めた。結果を第8表に示す。本発明化合物は、in vitro過酸化脂質生成抑制作用を有していることが分かった。
【0214】
【表24】

【0215】
[組織移行性]
本発明化合物の組織移行性は、ex vivo過酸化脂質生成抑制作用を測定することにより評価した。本発明化合物をDMSO(終濃度20%)に溶解し、0.1N塩酸生理食塩水あるいは1%ポリエチレン硬化ヒマシ油(NIKOL HCO−60,日光ケミカル社製)に溶解あるいは懸濁させた。この溶液を1群3匹のSD系雄性ラット(日本SLC、6週齢)に経口投与した。投与1時間後に麻酔後脳及び眼球を取り出した。脳及び眼球より分離した網膜は、[in vitro 過酸化脂質生成抑制作用]の項に記した方法により、各組織ホモジネートの過酸化脂質量を測定した。本発明化合物の各組織における阻害率は、対照群(20%DMSO−0.1N塩酸生理食塩水/1%ポリエチレン硬化ヒマシ油群)と、本発明化合物投与群の過酸化脂質生成量から求めた。各投与量における阻害率から50%阻害する投与量(IC50)を求めた。結果を第9表に示す。結果から、本発明化合物は組織移行性が高いことが明らかになった。
【0216】
【表25】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
【化1】

{式中、R1、R2は、式(2)
【化2】

〔式中、R10及びR11は、それぞれ独立して、水素原子、シアノ基、水酸基、ハロゲン原子、C1−6アルキル基、C1−6アルコキシ基、C2−6アルケニル基、C2−6アルキニル基、C2−6アルケニルオキシ基、C2−6アルキニルオキシ基、アシルオキシ基、又はG1で置換されていてもよい(C3−8シクロアルキル基、若しくはフェニル基)を表し、
G1は、シアノ基、ホルミル基、C1−6アルキルカルボニル基、水酸基、C1−6アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、モノC1−6アルキルアミノ基、ジC1−6アルキルアミノ基、又はC1−6アルコキシカルボニル基を表す。
kは0〜15の整数を表す。kが2以上のとき、R10同士及びR11同士は、それぞれ同一であっても相異なっていてもよい。
Zは、少なくとも置換基としてG2を有する(クロマン−2−イル基、クロマン−4−イル基、2,3−ジヒドロベンゾフラン−2−イル基、2,3−ジヒドロベンゾフラン−3−イル基、チオクロマン−2−イル基、2,3−ジヒドロベンゾチオフェン−2−イル基、又は1,3−ベンゾキサチオラン−2−イル基)を表し、
G2は、式:NHR12〔式中、R12は、水素原子、ホルミル基、C1−6アルキルカルボニル基、又は(シアノ基、水酸基、C1−6アルキル基、C1−6アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、モノC1−6アルキルアミノ基、ジC1−6アルキルアミノ基、若しくはC1−6アルコキシカルボニル基)で置換されていてもよいベンゾイル基を表す。〕で表される基、又は式:OR13〔式中、R13は、水素原子、ホルミル基、C1−6アルキルカルボニル基、又は(シアノ基、水酸基、C1−6アルキル基、C1−6アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、モノC1−6アルキルアミノ基、ジC1−6アルキルアミノ基、若しくはC1−6アルコキシカルボニル基)で置換されていてもよいベンゾイル基を表す。〕で表される基を表す。但し、R1が前記式(2)で表される基であるとき、R2が存在することはなく、R2が前記式(2)で表される基であるとき、R1が存在することはない。
R3は、水素原子、G3で置換されていてもよい(C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C2−6アルキニル基、C1−6アルコキシカルボニル基、C1−6アルキルカルバモイル基、モノC1−6アルキルアミノ基、ジC1−6アルキルアミノ基、C1−6アルコキシ基、フェニル基、若しくはヘテロアリール基)、カルボキシル基、水酸基、又はシアノ基を表し、
G3は、シアノ基、ホルミル基、C1−6アルキルカルボニル基、水酸基、C1−6アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、モノC1−6アルキルアミノ基、ジC1−6アルキルアミノ基、又はC1−6アルコキシカルボニル基を表す。
R4は、水素原子、又はG4で置換されていてもよい(C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C2−6アルキニル基、フェニル基、若しくはヘテロアリール基)を表し、
G4は、シアノ基、ホルミル基、C1−6アルキルカルボニル基、水酸基、C1−6アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、モノC1−6アルキルアミノ基、ジC1−6アルキルアミノ基、又はC1−6アルコキシカルボニル基を表す。
R5、R6、R7、R8及びR9は、それぞれ独立して、水素原子、シアノ基、水酸基、ハロゲン原子、G5で置換されていてもよい(C1−6アルキル基、C1−6アルコキシ基、C2−6アルケニル基、C2−6アルキニル基、C2−6アルケニルオキシ基、C2−6アルキニルオキシ基、アシルオキシ基、モノC1−6アルキルアミノ基、若しくはジC1−6アルキルアミノ基)、又はG6で置換されていてもよい(ピペラジル基、ピペリジル基、C3−8シクロアルキル基、フェニル基、若しくはヘテロアリール基)を表し、
G5は、シアノ基、ホルミル基、C1−6アルキルカルボニル基、水酸基、C1−6アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、モノC1−6アルキルアミノ基、ジC1−6アルキルアミノ基、又はC1−6アルコキシカルボニル基を表し、
G6は、C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C2−6アルキニル基、シアノ基、水酸基、C1−6アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、モノC1−6アルキルアミノ基、ジC1−6アルキルアミノ基、又はC1−6アルコキシカルボニル基を表す。
また、R5、R6、R7、R8及びR9のうち、隣接する2つの基が一緒になって、環を形成していてもよく、R4とR5とが一緒になって環を形成していてもよい。}
で表されるフェニルピラゾール誘導体又はその塩。
【請求項2】
前記Zが、下記の(A)、(B)、(C)、(D)又は(E)
【化3】

(式中、G2は前記と同じ意味を表し、*はキラルな炭素原子を表し、Yは酸素原子又は硫黄原子を表し、R14〜R34は、それぞれ独立して、水素原子又はC1−6アルキル基を表す。)で表されるいずれかの基であることを特徴とする請求項1記載のフェニルピラゾール誘導体又はその塩。
【請求項3】
式(a)
【化4】

(式中、R3〜R9は前記と同じ意味を表す。)で示される化合物と、式(b)
【化5】

〔式中、R10、R11及びkは前記と同じ意味を表し、Z1は、少なくとも置換基としてニトロ基又はアシルオキシ基を有する(クロマン−2−イル基、クロマン−4−イル基、2,3−ジヒドロベンゾフラン−2−イル基、2,3−ジヒドロベンゾフラン−3−イル基、チオクロマン−2−イル基、2,3−ジヒドロベンゾチオフェン−2−イル基、若しくは1,3−ベンゾキサチオラン−2−イル基)を表し、
Lは脱離基を表す。〕
で示される化合物とを反応させることを特徴とする、式(1a−1)
【化6】

又は式(1b−1)
【化7】

(式中、R3〜R11、k及びZ1は前記と同じ意味を表す。)で示されるフェニルピラゾール誘導体の製造方法。
【請求項4】
式(c)
【化8】

(式中、R3〜R9は前記と同じ意味を表す。)で示される化合物と、式(d)
【化9】

(式中、R10、R11、k及びZ1は、前記と同じ意味を表す。)で示される化合物とを反応させることを特徴とする、式(1a−1)
【化10】

又は式(1b−1)
【化11】

(式中、R3〜R11、k及びZ1は前記と同じ意味を表す。)で示されるフェニルピラゾール誘導体の製造方法。
【請求項5】
式(e)
【化12】

(式中、R3〜R9は前記と同じ意味を表す。)で示される化合物と、式(d)
【化13】

(式中、R10、R11、k及びZ1は前記と同じ意味を表す。)で示される化合物とを反応させることを特徴とする、式(1a−1)
【化14】

又は式(1b−1)
【化15】

(式中、R3〜R11、k及びZ1は前記と同じ意味を表す。)で示されるフェニルピラゾール誘導体の製造方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のフェニルピラゾール誘導体又はその塩の、1種又は2種以上を含有することを特徴とする抗酸化薬。
【請求項7】
請求項6に記載の抗酸化薬を含むことを特徴とする腎疾患、脳血管疾患又は循環器疾患の治療薬。
【請求項8】
請求項6に記載の抗酸化薬を含むことを特徴とする脳梗塞の治療薬。
【請求項9】
請求項6に記載の抗酸化薬を含むことを特徴とする網膜の酸化障害の抑制薬。
【請求項10】
前記網膜の酸化障害が、黄斑浮腫、加齢性黄斑変性症あるいは糖尿病性網膜症であることを特徴とする請求項9に記載の抑制薬。
【請求項11】
請求項6に記載の抗酸化薬を含むことを特徴とするリポキシゲナーゼ阻害薬。
【請求項12】
請求項6に記載の抗酸化薬を含むことを特徴とする20−ヒドロキシエイコサテトラエン酸シンターゼ阻害薬。



【公開番号】特開2006−342133(P2006−342133A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−171170(P2005−171170)
【出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【出願人】(000004307)日本曹達株式会社 (434)
【Fターム(参考)】