説明

フェノール樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物、およびその硬化物

【課題】植物由来の骨格を主骨格とするフェノール樹脂、エポキシ樹脂、およびそれらを含有するエポキシ樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】オイゲノールおよび/またはチモールを30重量%以上含有するフェノール類とフルフラールを反応させることで得られるフェノール樹脂、および該フェノール樹脂を原料とするエポキシ樹脂。本発明のフェノール樹脂の原料であるオイゲノールはチョウジ油等、チモールはシソ科タチジャコウソウ等、フルフラールはトウモロコシをその由来とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地球上の二酸化炭素を積極的に固定化して得られ、地球温暖化防止に期待がもたれる植物由来の骨格を主骨格とするフェノール樹脂、エポキシ樹脂を含む組成物とその成形体に関するものであり、本発明は特に電気電子部品用絶縁材料(高信頼性半導体封止材料など)及び積層板(プリント配線板、ビルドアップ基板など)やCFRPを始めとする各種複合材料、接着剤、塗料等に有用である硬化性樹脂組成物を与えるエポキシ樹脂及び該組成物の硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、植物を原料とする化学品や高分子材料が脚光を浴びている。
20世紀において石油資源は、プラスチックの原料やエネルギーとして採掘され限りなく使用されてきた。しかし、近年、石油を初めとする化石資源の枯渇化等環境問題となっている。そこで、石油や石炭由来のような化石資源ではなく、天然物由来の資源(いわゆる非化石資源)を利用した環境破壊の恐れの少ないプラスチック材料の開発が盛んに進められている。
例えば、植物は太陽の光をエネルギーとして、水分と大気中の炭酸ガスを吸収することによって成長する。植物(もしくはそこから抽出される成分)を原料とする材料の場合、太陽エネルギーを原料の製造エネルギーとして有効に利用していることから、化石エネルギーの使用量が少なくてすむことになる。これにより、化石資源の使用を節約できることになる。
【0003】
エポキシ樹脂組成物は作業性及びその硬化物の優れた電気特性、耐熱性、接着性、耐湿性(耐水性)等により電気・電子部品、構造用材料、接着剤、塗料等の分野で幅広く用いられている。このような分野においても植物由来の化合物を使用したエポキシ樹脂が検討されている。具体的には特許文献2においてはリグニンのエポキシ化物およびその硬化物が報告されている。しかしながら、植物より抽出されたリグニンをそのまま使用していることから、非常に高い分子量の化合物であり、成形性に問題が生じる場合がある。また、官能基も少なく、電気・電子材料の用途に耐えうる高度な信頼性を持たせることが難しい。
【0004】
また、トウモロコシを原料としたフルフラールとフェノール類を反応させて得られる多価フェノール化合物として特許文献3、4に記載の樹脂が知られている。しかしながらこれら特許文献で得られる樹脂は密着性の向上はあるものの、フェノール類として植物由来の化合物の開示はない。
【特許文献1】特開2003−277615号公報
【特許文献2】特開2006−066237号公報
【特許文献3】特開2001−64339号公報
【特許文献3】特開2000−7756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は植物由来の骨格を主骨格とするフェノール樹脂、エポキシ樹脂、およびそれらを含有するエポキシ樹脂組成物の提供であって、特に電気電子部品用絶縁材料(高信頼性半導体封止材料など)及び積層板(プリント配線板、ビルドアップ基板など)やCFRPを始めとする各種複合材料、接着剤、塗料等に有用である、作業性、耐熱性、機械特性を有するフェノール樹脂、エポキシ樹脂、およびそのエポキシ樹脂組成物を提供すること。
【0006】
本発明者らは前記課題を解決するため鋭意研究の結果、本発明を完成した。即ち、本発明は、
(1)オイゲノールおよび/またはチモールを30重量%以上含有するフェノール類(少なくとも1つのフェノール性水酸基を有する化合物)とフルフラールを反応させることにより得られるフェノール樹脂、
(2)オイゲノールおよび/またはチモールとフルフラールを反応させることにより得られる結晶状ビスフェノール化合物、
(3)上記(1)に記載のフェノール樹脂または上記(2)に記載のビスフェノール化合物をエピハロヒドリンと反応させることにより得られるエポキシ樹脂、
(4)(a)エポキシ樹脂及び(b)上記(1)に記載のフェノール樹脂または上記(2)に記載のビスフェノール化合物を含有するエポキシ樹脂組成物、
(5)(a)上記(3)に記載のエポキシ樹脂及び(b)硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物、
(6)(a)上記(3)に記載のエポキシ樹脂及び(b)上記(1)に記載のフェノール樹脂または上記(2)に記載のビスフェノール化合物を含有するエポキシ樹脂組成物、
(7)上記(4)〜(6)のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物
に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のフェノール樹脂、結晶状ビスフェノール化合物、エポキシ樹脂は、高度な硬化物性を有する硬化物を与え、電気電子部品用絶縁材料(高信頼性半導体封止材料など)及び積層板(プリント配線板、ビルドアップ基板など)やCFRPを始めとする各種複合材料、接着剤、塗料等に有用であり、天然物由来の化合物であるため化石エネルギーの使用量の低減に寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のフェノール樹脂は、オイゲノールおよび/またはチモールを30重量%以上、好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70〜100重量%含有するフェノール類(少なくとも1つのフェノール性水酸基を有する化合物)とフルフラールを反応させることで得られる。以下、オイゲノール、チモール、フルフラールについて説明する。
<オイゲノール(eugenol)>
チョウジ油、ウイキョウ油、ケイヒ油の主成分の1つであり、シキミ酸経路で生合成されるフェニルプロパノイド系物質である。オイゲノールは医薬品として口腔内殺菌薬、虫歯の鎮痛などに用いるほか、バニリンの製造原料となる。例えば、チョウジ油からであれば、アルカリ水溶液を適量加え、浸透して他の油を除いてから希硫酸を加えてオイゲノールを析出させ、洗浄、乾燥後減圧蒸留によって精留するという手法が一般に知られている。
<チモール(thymol)>
シソ科タチジャコウソウ(Thymus vulgaris)などの精油に含まれるモノテルペン系成分で、防腐剤、殺菌剤、駆虫剤として用いられ、例えば株式会社ロベルティより販売されている。
<フルフラール(furfural>
トウモロコシの穂軸、燕麦などの籾殻、サトウキビの絞りかす、ふすまなどの農産物の副産物やおがくずなどを原料にして製造される。
【0009】
本発明においてオイゲノール、チモールと併用できるフェノール類について説明する。
フェノール類は、芳香環に少なくとも1個のフェノール性水酸基を有する化合物であれば使用できる。具体的には、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、エチルフェノール、n−プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、t−ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、フェニルフェノール、シクロヘキシルフェノール、キシレノール、メチルプロピルフェノール、メチルブチルフェノール、等のフェノール類が挙げられるがフェノール性水酸基を有する限りこれらに限定されるものではない。また、これらフェノール類は単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0010】
本発明のフェノール樹脂は、フルフラールとオイゲノール及び/またはチモール並びに必要によりフェノール類の混合物に、必要により溶媒の存在下、触媒を加えて加熱することにより得られる。また、オイゲノール及び/またはチモール並びに必要によりフェノール類及び溶媒の混合物と触媒の混合物を加熱しているところにフルフラールを徐々に添加してもよい。反応時間は5〜150時間、反応温度は40〜150℃である。このようにして得られたフェノール樹脂は用途によって、精製せずに用いることもできるが、通常、反応終了後に反応混合物を中和してから、晶析あるいは加熱減圧下において未反応原料及び溶媒類を除去する事で精製して各種用途に使用する。なお、この中和工程は、燐酸二水素ナトリウムを添加してもよいし、水洗などでも可能であるが、両者を併用するとより簡便で効果的である。
【0011】
本発明のフェノール樹脂の合成において使用できる溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、トルエン、キシレンなどが挙げられるがこれらに限定されるものではなく、単独でも2種以上併用してもよい。溶媒を使用する場合、その使用量はフェノール類100重量部に対し、通常5〜500重量部、好ましくは10〜300重量部の範囲である。
【0012】
触媒としては酸性、塩基性いずれの触媒でも使用できるが、塩基性の物が好ましい。酸性触媒を使用した場合、フルフラール同士の反応も起こり、構造の特定できない化合物が多くなる。用いうる酸性触媒の具体例としては塩酸、硫酸、リン酸等の鉱酸類;シュウ酸、トルエンスルホン酸、酢酸等の有機酸類;タングステン酸等のヘテロポリ酸、活性白土、無機酸、塩化第二錫、塩化亜鉛、塩化第二鉄等、その他酸性を示す有機、無機酸塩類、等のノボラック樹脂製造用に通常使用される酸性触媒などが挙げられる。用いうる塩基性触媒の具体例としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウム−tert−ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド、マグネシウムメトキシド、マグネシウムエトキシド等のアルカリ土類金属アルコキシド等が挙げられる。またアミン系の触媒を使用することもでき、トリエチルアミン、エタノールアミン、ピリジン、ピペリジン、モルホリン等が挙げられる。特にアミン系の触媒を使用する場合は溶媒として兼用することもできる。これら触媒は、前述に挙げた物に限定されるものではなく、単独でも2種以上を併用してもよい。触媒の使用量は、オイゲノール、チモール並びに必要により使用するフェノール類の総量に対し、通常0.005〜2.0倍モル、好ましくは0.01〜1.1倍モルの範囲である。なお、触媒を溶媒として使用する場合は、オイゲノール、チモール並びに必要により使用するフェノール類の総量に対し、30〜200重量%程度添加することが好ましい。
【0013】
オイゲノールまたはチモールとフルフラールの反応は、その条件により生成物が、分子量分布を有する樹脂状フェノール樹脂(本発明のフェノール樹脂)やビスフェノール化合物を90%以上含有する結晶状フェノール化合物(本発明の結晶状ビスフェノール化合物、以下、単にビスフェノール化合物という)になる。通常の生成物は、樹脂状で得られるが、例えばアルコール等の極性溶剤中で100℃以下で塩基性触媒を使用し反応行った場合、本発明のビスフェノール化合物が得られる。
【0014】
本発明のフェノール樹脂またはビスフェノール化合物は、そのままで熱可塑性プラスチック(もしくはその原料)として使用したり、下記するようなエポキシ樹脂の原料やその硬化剤として使用したりすることもできる。
【0015】
以下に本発明のエポキシ樹脂の合成方法の一例を記載する。
本発明のエポキシ樹脂は、本発明のフェノール樹脂またはビスフェノール化合物とエピハロヒドリンとを反応させることで得ることができる。
【0016】
本発明のエポキシ樹脂を得る反応において、エピハロヒドリンとしてはエピクロルヒドリン、α-メチルエピクロルヒドリン、γ-メチルエピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン等が使用でき、本発明においては工業的に入手が容易なエピクロルヒドリンが好ましい。エピハロヒドリンの使用量はフェノール樹脂またはビスフェノール化合物の水酸基1モルに対し通常3〜20モル、好ましくは4〜10モルである。
【0017】
上記反応において使用しうるアルカリ金属水酸化物としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられ、固形物を利用してもよく、その水溶液を使用してもよい。水溶液を使用する場合は該アルカリ金属水酸化物の水溶液を連続的に反応系内に添加すると共に減圧下、または常圧下連続的に水及びエピハロヒドリンを留出させ、更に分液して水を除去し、エピハロヒドリンを反応系内に連続的に戻す方法でもよい。アルカリ金属水酸化物の使用量は原料フェノール樹脂またはビスフェノール化合物の水酸基1モルに対して通常0.90〜1.5モルであり、好ましくは0.95〜1.25モル、より好ましくは0.99〜1.15モルである。
【0018】
反応を促進するためにテトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩を触媒として添加することは好ましい。4級アンモニウム塩の使用量としてはフェノール樹脂またはビスフェノール化合物の水酸基1モルに対し通常0.1〜15gであり、好ましくは0.2〜10gである。
【0019】
この際、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t−ブタノールなどのアルコール類、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の非プロトン性極性溶媒などを添加して反応を行うことが反応進行上好ましい。
【0020】
アルコール類を使用する場合、その使用量はエピハロヒドリンの使用量に対し通常2〜50重量%、好ましくは4〜30重量%である。また非プロトン性極性溶媒を用いる場合はエピハロヒドリンの使用量に対し通常5〜100重量%、好ましくは10〜80重量%である。
【0021】
反応温度は通常30〜90℃であり、好ましくは35〜80℃である。反応時間は通常0.5〜10時間であり、好ましくは1〜8時間である。これらのエポキシ化反応の反応物を水洗後、または水洗無しに加熱減圧下でエピハロヒドリンや溶媒等を除去する。また更に加水分解性ハロゲンの少ないエポキシ樹脂とするために、回収したエポキシ樹脂をトルエン、メチルイソブチルケトンなどの溶剤に溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えて反応を行い、閉環を確実なものにすることも出来る。この場合アルカリ金属水酸化物の使用量はエポキシ化に使用した原料フェノール樹脂またはビスフェノール化合物の水酸基1モルに対して通常0.01〜0.3モル、好ましくは0.05〜0.2モルである。反応温度は通常50〜120℃、反応時間は通常0.5〜2時間である。
【0022】
反応終了後、生成した塩を濾過、水洗などにより除去し、更に加熱減圧下溶剤を留去することにより本発明のエポキシ樹脂が得られる。
【0023】
このようにして得られるエポキシ樹脂はその骨格に非化石燃料由来の骨格を有するばかりでなく、従来のたとえばリグニン由来の化合物等に比べ、取り扱い、および硬化性等にも優れ、電気電子材料に有用なエポキシ樹脂となる。また、本発明のエポキシ樹脂は、アクリル酸との反応により光硬化性を有するエポキシアクリレート、およびその誘導体とすることも可能である他、カーボネート化合物、オキサゾリドン樹脂等、多様な骨格への変換も可能であり、種々の用途に適用できる。
【0024】
以下に本発明のエポキシ樹脂組成物について記載する。
本発明のエポキシ樹脂組成物はエポキシ樹脂と硬化剤を含有し、少なくともエポキシ樹脂として本発明のエポキシ樹脂を含有するか、硬化剤として本発明のフェノール樹脂及び/または本発明のビスフェノール化合物を含有する。なお、本発明のエポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂または硬化剤として、他の成分を使用する場合、非石油原料由来のものが好ましい。
また、特に、本発明のエポキシ樹脂、フェノール樹脂またはビスフェノール化合物は作業性が非常に改善されていることから、従来知られているリグニン由来の化合物と併用することで、エポキシ樹脂組成物の改質剤の役割に使用することも可能である。
【0025】
上記(5)及び(6)記載の本発明のエポキシ樹脂組成物において、本発明のエポキシ樹脂は単独でまたは他のエポキシ樹脂と併用して使用することが出来る。併用する場合、本発明のエポキシ樹脂の全エポキシ樹脂中に占める割合は30重量%以上が好ましく、特に40重量%以上が好ましい。ただし、本発明のエポキシ樹脂をエポキシ樹脂組成物の改質剤として使用する場合は、エポキシ樹脂組成物中で1〜30重量%を占める割合で添加する。
【0026】
本発明のエポキシ樹脂と併用し得る他のエポキシ樹脂のとしては、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂などが挙げられる。具体的には、ビスフェノールA、ビスフェノールS、チオジフェノール、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシアセトフェノン、o−ヒドロキシアセトフェノン、ジシクロペンタジエン、フルフラール、4,4’−ビス(クロルメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル、1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メトキシメチル)ベンゼン等との重縮合物及びこれらの変性物、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類、アルコール類から誘導されるグリシジルエーテル化物、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂等の固形または液状エポキシ樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0027】
上記(4)及び(6)記載の本発明のエポキシ樹脂組成物において、本発明のフェノール樹脂またはビスフェノール化合物は、単独でまたは他の硬化剤と併用して使用することが出来る。併用する場合、本発明のフェノール樹脂またはビスフェノール化合物の全硬化剤中に占める割合は30重量%以上が好ましく、特に40重量%以上が好ましい。ただし、本発明のフェノール樹脂またはビスフェノール化合物をエポキシ樹脂組成物の改質剤として使用する場合は、エポキシ樹脂組成物中で1〜30重量%の割合となるよう添加する。
【0028】
本発明のフェノール樹脂と併用し得る他のエポキシ樹脂としては、例えばアミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノール系化合物、カルボン酸系化合物などが挙げられる。用いうる硬化剤の具体例としては、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンより合成されるポリアミド樹脂、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、本発明のフェノール樹脂、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシアセトフェノン、o−ヒドロキシアセトフェノン、ジシクロペンタジエン、フルフラール、4,4’−ビス(クロロメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル、1,4’−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4’−ビス(メトキシメチル)ベンゼン等との重縮合物及びこれらの変性物、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類、イミダゾール、トリフルオロボラン−アミン錯体、グアニジン誘導体、テルペンとフェノール類の縮合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0029】
上記(4)記載の本発明のエポキシ樹脂組成物において、(a)成分であるエポキシ樹脂としては、上記他のエポキシ樹脂等が挙げられる。
上記(5)記載の本発明のエポキシ樹脂組成物において、(b)成分である硬化剤としては、上記他の硬化剤等が挙げられる。
【0030】
上記(4)〜(5)記載の本発明のエポキシ樹脂組成物において硬化剤の使用量は、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して0.5〜1.5当量が好ましく、0.6〜1.2当量が特に好ましい。エポキシ基1当量に対して、0.5当量に満たない場合、あるいは1.5当量を超える場合、いずれも硬化が不完全になり良好な硬化物性が得られない恐れがある。
【0031】
また上記硬化剤を用いる際に硬化促進剤を併用しても差し支えない。用いうる硬化促進剤としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリエチレンジアミン、トリエタノールアミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等の有機ホスフィン類、オクチル酸スズなどの金属化合物、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・エチルトリフェニルボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩などが挙げられる。硬化促進剤を使用する場合の使用量はエポキシ樹脂100重量部に対して0.01〜15重量部が必要に応じ用いられる。
【0032】
更に、本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて無機充填剤やシランカップリング材、離型剤、顔料等の種々の配合剤、各種熱硬化性樹脂を添加することができる。無機充填剤としては、結晶シリカ、溶融シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ジルコニア、フォステライト、ステアタイト、スピネル、チタニア、タルク等の粉体またはこれらを球形化したビーズ等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。これら無機充填剤は、用途によりその使用量は異なるが、例えば半導体の封止剤用途に使用する場合はエポキシ樹脂組成物の硬化物の耐熱性、耐湿性、力学的性質、難燃性などの面からエポキシ樹脂組成物中で20重量%以上占める割合で使用するのが好ましく、より好ましくは30重量%以上であり、40〜95重量%を占める割合で使用するのがより好ましい。
【0033】
更に本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて公知の添加剤を配合することが出来る。用いうる添加剤の具体例としては、ポリブタジエン及びこの変性物、アクリロニトリル共重合体の変性物、ポリフェニレンエーテル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリイミド、フッ素樹脂、マレイミド系化合物、シアネート樹脂(もしくはそのプレポリマー)、シリコーンゲル、シリコーンオイル、並びにシリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、石英粉、アルミニウム粉末、グラファイト、タルク、クレー、酸化鉄、酸化チタン、窒化アルミニウム、アスベスト、マイカ、ガラス粉末、ガラス繊維、ガラス不織布または、カーボン繊維等の無機充填材、シランカップリング剤のような充填材の表面処理剤、離型剤、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の着色剤が挙げられる。
【0034】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記各成分を均一に混合することにより得られる。そして、本発明のエポキシ樹脂組成物は従来知られている方法と同様の方法で容易にその硬化物とすることができる。例えば、エポキシ樹脂と硬化剤、並びに必要により硬化促進剤及び無機充填剤、配合剤、各種熱硬化性樹脂とを必要に応じて押出機、ニーダ、ロール等を用いて均一になるまで充分に混合することより本発明のエポキシ樹脂組成物を得て、そのエポキシ樹脂組成物を溶融注型法あるいはトランスファー成型法やインジェクション成型法、圧縮成型法などによって成型し、更に80〜200℃で2〜10時間に加熱することにより硬化物を得ることができる。
【0035】
また本発明のエポキシ樹脂組成物は場合により溶剤を含んでいてもよい。溶剤を含むエポキシ樹脂組成物(エポキシ樹脂ワニス)はガラス繊維、カ−ボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維、紙などの基材に含浸させ加熱乾燥して得たプリプレグを熱プレス成形することにより、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物とすることができる。このエポキシ樹脂ワニスの溶剤含量は、内割りで通常10〜70重量%、好ましくは15〜70重量%程度である。該溶剤としては例えばγ−ブチロラクトン類、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルイミダゾリジノン等のアミド系溶剤、テトラメチレンスルフォン等のスルフォン類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶剤、好ましくは低級アルキレングリコールモノ又はジ低級アルキルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、好ましくは2つのアルキル基が同一でも異なってもよいジ低級アルキルケトン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤が挙げられる。これらは単独で合っても、また2以上の混合溶媒であってもよい。
【0036】
また、剥離フィルム上に前記ワニスを塗布し加熱下で溶剤を除去、Bステージ化を行うことによりシート状の接着剤を得ることが出来る。このシート状接着剤は多層基板などにおける層間絶縁層として使用することが出来る。
【0037】
本発明で得られる硬化物は各種用途に使用できる。具体的にはエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が使用される一般の用途が挙げられ、例えば、接着剤、塗料、コーティング剤、成形材料(シート、フィルム、FRP等を含む)、絶縁材料(プリント基板、電線被覆等を含む)、封止剤の他、他樹脂等への添加剤等が挙げられる。
【0038】
接着剤としては、土木用、建築用、自動車用、一般事務用、医療用の接着剤の他、電子材料用の接着剤が挙げられる。これらのうち電子材料用の接着剤としては、ビルドアップ基板等の多層基板の層間接着剤、ダイボンディング剤、アンダーフィル等の半導体用接着剤、BGA補強用アンダーフィル、異方性導電性フィルム(ACF)、異方性導電性ペースト(ACP)等の実装用接着剤等が挙げられる。
【0039】
封止剤としては、コンデンサ、トランジスタ、ダイオード、発光ダイオード、IC、LSIなど用のポッティング、ディッピング、トランスファーモールド封止、IC、LSI類のCOB、COF、TABなど用のといったポッティング封止、フリップチップなどの用のアンダーフィル、QFP、BGA、CSPなどのICパッケージ類実装時の封止(補強用アンダーフィルを含む)などを挙げることができる。
【実施例】
【0040】
次に本発明を実施例により更に具体的に説明するが、以下において部は特に断わりのない限り重量部である。尚、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また実施例において、エポキシ当量はJIS K−7236、軟化点はJIS K−7234に準じた方法で測定した。
【0041】
実施例1
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながらチモール300部、メタノール150部、水酸化ナトリウム7部を加え、70〜75℃で加熱しながら、フルフラール96部を30分かけて添加し、そのままの温度を保ち70時間反応を行った。反応後、20重量%燐酸二水素ナトリウム水溶液50部を加え、攪拌した後、メチルエチルケトン500部を加え、水層が中性になるまで水洗を行った。得られた有機層をロータリーエバポレータで約400部を回収するまで濃縮し、メタノール200部を加えた後、65℃で残渣を完溶させ、室温まで冷却することで結晶が析出した。析出した結晶をろ過、乾燥することで本発明のビスフェノール化合物(PA1)が251部得られた。得られたビスフェノール化合物につき、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定をしたところ、ビスフェノール体の占める割合が96面積%の純度を有していた。得られた結晶は薄紫色のブロック状を主とする化合物であり、その融点は168℃であった。
【0042】
実施例2
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置、ディーンスターク管を備えたフラスコに、窒素パージを施しながらチモール300部、トルエン150部、水酸化ナトリウム7部を加え、約115℃で加熱しながらフルフラール96部を30分かけて添加し、そのままの温度を保ち40時間反応を行った。反応後、メチルイソブチエルケトン400部、20重量%の燐酸水素ナトリウム水溶液50部を加え、攪拌後、有機層が中性になるまで水洗を行った。得られた有機層をロータリーエバポレータで濃縮することで本発明のフェノール樹脂(PB1)244部を得た。得られたフェノール樹脂は黒色であり、水酸基当量は215g/eq.、150℃における粘度は0.07mPa・s、軟化点は141℃(軟化点に関しては部分的に結晶化しているため再現性のある値ではない)であった。
【0043】
実施例3
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながらチモール300部、メタノール150部、水酸化ナトリウム7部を加え、70〜75℃で加熱しながらフルフラール96部を30分かけて添加し、そのままの温度で70時間反応を行った。反応終了後メタノール50部を加え、室温まで冷却したところ結晶が析出した。得られた結晶をろ過、乾燥することでビスフェノール化合物(PA2)がうす紫色の粉体結晶として得られた。
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながら得られた粉体結晶の(PA2)133部、エピクロロヒドリン555部、メタノール100部を加え、70℃にまで昇温した。次いでフレーク状の水酸化ナトリウム40部を90分かけて分割添加した後、更に70℃で1時間後反応を行った。反応終了後水洗を行い、油層からロータリーエバポレータを用いて140℃で減圧下、過剰のエピクロルヒドリン等の溶剤を留去した。残留物にメチルイソブチルケトン380部を加え溶解し、70℃にまで昇温した。撹拌下で30重量%の水酸化ナトリウム水溶液10部を加え、1時間反応を行った後、洗浄水が中性になるまで油層を水洗し得られた油層から、ロータリーエバポレータを用いて180℃で減圧下にメチルイソブチルケトン等を留去することで本発明のエポキシ樹脂(EA2)を179部得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は199g/eq.、形状は液状〜半固形であった。またこのエポキシ樹脂は室温で静置することで結晶が析出した。さらに70〜80℃に加温した後、徐冷することで結晶の析出を促進させることができることが確認できた。得られた結晶の融点は76℃であった。
【0044】
実施例4
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながらオイゲノール328部、イソプロピルアルコール65部、メタノール50部、水酸化ナトリウム7部を加え、80℃で撹拌しているところに、フルフラール96部を30分かけて添加し、そのまま80℃で50時間、100℃で時間反応を行った。反応後、室温まで冷却することで結晶が析出した。析出した結晶をろ過、乾燥することで本発明のビスフェノール化合物(PC1)が307部得られた。得られたビスフェノール化合物につき、GPCで測定したところビスフェノール体の占める割合が、93面積%の純度を有していた。得られた結晶は淡褐色の粉末状の化合物であり、その融点は134℃であった。
【0045】
実施例5〜8
実施例3で得られた本発明のエポキシ樹脂(EA2)、実施例2で得られた本発明のフェノール樹脂(PB1)及び実施例4で得られた本発明のフェノール樹脂(PC1)を使用し、以下、表1の組成で硬化物を作成した。硬化方法としては実施例5についてはトランスフェーモールディング(175℃)で成型、さらに得られた成型物を160℃で2時間、更に200℃で8時間かけて硬化させた。また、実施例6〜8についてはアルミカップ中で各成分を溶融状態とし、注形法により成形を行し、160℃で2時間、更に200℃で8時間かけて硬化させた。各実施例により得られた硬化物のガラス転移点をTMA(熱機械測定装置:真空理工(株)製 TM−7000 昇温速度:5℃/min.)で測定した。結果を表1にあわせて示す。
【0046】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイゲノールおよび/またはチモールを30重量%以上含有するフェノール類(少なくとも1つのフェノール性水酸基を有する化合物)とフルフラールを反応させることにより得られるフェノール樹脂。
【請求項2】
オイゲノールおよび/またはチモールとフルフラールを反応させることにより得られる結晶状ビスフェノール化合物。
【請求項3】
請求項1に記載のフェノール樹脂または請求項2に記載のビスフェノール化合物をエピハロヒドリンと反応させることにより得られるエポキシ樹脂。
【請求項4】
(a)エポキシ樹脂及び(b)請求項1に記載のフェノール樹脂または請求項2に記載のビスフェノール化合物を含有するエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
(a)請求項3に記載のエポキシ樹脂及び(b)硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
(a)請求項3に記載のエポキシ樹脂及び(b)請求項1に記載のフェノール樹脂または請求項2に記載のビスフェノール化合物を含有するエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物。

【公開番号】特開2008−195843(P2008−195843A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−33019(P2007−33019)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】