説明

フォトセンサーおよびX線撮像装置

【課題】フォトダイオードの下部電極と、データとの間の寄生容量を低減する。
【解決手段】本発明に係るフォトセンサーは、ガラス基板1と、ガラス基板1上に設けられ、ガラス基板1よりも低い誘電率を有する下地絶縁膜19と、下地絶縁膜19上にゲート電極2、ゲート絶縁膜3、半導体層4を積層してなり、半導体層4に接続されたドレイン電極7を有するスイッチング素子とを備える。ドレイン電極7は、下地絶縁膜19表面に直に接する延設部分を有する。そして、ドレイン電極7の延設部分上に設けられたフォトダイオード20をさらに備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトダイオードとスイッチング素子とを備えるフォトセンサーと、X線撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フォトセンサーは、可視光を光電変換するフォトダイオードと、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:以後、TFTと記す)とを、マトリクス状に配置したTFTアレイ基板からなるフラットパネルを備える。このフォトセンサーは、密着イメージセンサーや、X線撮像表示装置などに適用され広く用いられている。特に、TFTアレイ基板上に、X線を可視光に変換するシンチレーターを備えるフラットパネルX線撮像表示装置(以後、FPDと呼ぶ)は、医療産業等への適用が有望な装置である。
【0003】
X線画像診断の分野では、精密画像(静止画)とリアルタイム画像観察(動画)が使い分けられている。静止画の撮影には、主に、X線フィルムが今なお使用されている。一方、動画の撮影には光電子倍増管とCCD(Charge Coupled Device)を組み合わせた撮像管(イメージインテンシファイア)が使用されている。X線フィルムおよび撮像管には、それぞれ利点と欠点がある。X線フィルムは、空間分解能が高いという利点があるが、感度が低く静止画しか撮影できず、また、撮影後に現像処理を必要とするなど即時性に欠ける、といった欠点がある。一方、撮像管は感度が高く動画の撮影が可能であるという利点があるが、空間分解能が低く、また、真空プロセスで形成されるデバイスであるため大型化に限界がある、といった欠点がある。
【0004】
FPDには、CsIなどのシンチレーターによってX線を光に変換後、フォトダイオードにより電荷へ変換する間接変換方式と、Seを代表とするX線検出素子によりX線を直接電荷へ変換する直接変換方式がある。これらのうち間接変換方式の方が量子効率が高く、シグナル/ノイズ比に優れ、少ない被爆量で透視、撮影が可能である。間接変換方式のFPDを構成するTFTアレイ基板に関する構造や製造方法については、例えば、特許文献1に記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−63660号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フォトセンサーの信号を高い感度で読み出しだしたり、読み出し回路の動作速度(フレームレート)を向上させるためには、データ配線およびバイアス配線およびゲート配線などに付加されている寄生容量を小さくする必要がある。このようなデータ配線およびバイアスおよびゲート配線などに付加されている寄生容量としては、各々の配線同士が交差することによって生じる容量成分だけでなく、各配線のフリンジ効果による容量成分も存在する。
【0007】
しかしながら、FPDでは、ゲート線やデータ線やフォトダイオードが平行に配置されている領域が多いため、フォトダイオードの上部電極および下部電極と、各配線との寄生容量は大きいという問題があった。
【0008】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、フォトダイオードの下部電極と、データ線との間の寄生容量を低減可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係るフォトセンサーは、基板と、前記基板上に設けられ、前記基板よりも低い誘電率を有する絶縁膜と、前記絶縁膜上にゲート電極、ゲート絶縁膜、半導体層を積層してなり、前記半導体層に接続された電極を有するスイッチング素子とを備える。前記電極は、前記絶縁膜表面に直に接する延設部分を有する。そして、前記電極の前記延設部分上に設けられたフォトダイオードをさらに備える。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係るフォトセンサーによれば、フォトダイオードの下部電極と、データ線との間の寄生容量を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
<実施の形態1>
図1は、本実施の形態に係るフォトセンサーが備えるTFT(Thin Film Transistor)アレイ基板の平面図である。図2は、図1に示されているA−A’に沿った断面図である。図2に示すように、本実施の形態に係るフォトセンサーは、ガラス基板1と、下地絶縁膜19と、薄膜トランジスタ(以後、TFT)と、フォトダイオード20と、第1〜第4のパッシベーション膜8,13,17,18とを備える。本実施の形態では、図1に示されるように、TFTと、フォトダイオード20は、マトリクス状に配置される。
【0012】
基板であるガラス基板1は、絶縁性を有する。絶縁膜である下地絶縁膜19は、ガラス基板1上に設けられ、ガラス基板1よりも低い誘電率を有する。下地絶縁膜19には、例えば、酸化ケイ素膜、酸化ケイ素にフッ素が含まれたSiOF(FSG)膜を用いる。本実施の形態では、下地絶縁膜19の材質は、酸化ケイ素であるものとする。
【0013】
スイッチング素子であるTFTは、下地絶縁膜19上にゲート電極2、ゲート絶縁膜3、半導体層4を積層してなり、半導体層4に接続された電極であるドレイン電極7を有する。本実施の形態では、TFTは、オーミックコンタクト層5と、ソース電極6とをさらに備える。
【0014】
ゲート電極2は、下地絶縁膜19上に形成される。このゲート電極2の材質には、低抵抗金属、例えば、アルミ(Al)を主成分とする金属を用いる。ここでいうAlを主成分とする金属は、ニッケル(Ni)を含むAl合金、例えば、AlNiNd、AlNiSi、AlNiMg、すなわち、Al−Ni合金が該当する。しかし、Alを主成分とする金属は、Al−Ni合金に限ったものではなく、他のAl合金を用いてもよい。また、ゲート電極2には、Al以外にも、低抵抗金属材料、例えば、銅(Cu)を用いてもよい。
【0015】
ゲート絶縁膜3は、ゲート電極2を覆うように形成される。本実施の形態では、図2に示すように、ゲート絶縁膜3は、ゲート電極2の周囲にのみ形成される。半導体層4は、このゲート絶縁膜3上に、ゲート電極2と対向するように形成される。この半導体層4は、例えば、a−Si:H(水素原子が添加されたアモルファスシリコン)で形成される。この半導体層4上には、オーミックコンタクト層5が形成される。このオーミックコンタクト層5は、例えば、n+導電型のa−Si:Hで形成される。
【0016】
ソース電極6と、ドレイン電極7それぞれは、オーミックコンタクト層5を介して、半導体層4と接続するように形成される。図1に示すように、ドレイン電極7は、下地絶縁膜19表面に直に接する延設部分を有する。
【0017】
第1のパッシベーション膜8は、半導体層4、ソース電極6、ドレイン電極7、下地絶縁膜19の上に形成される。第1のパッシベーション膜8には、ドレイン電極7の延設部分上において開口するコンタクトホールCH1が設けられている。
【0018】
フォトダイオード20は、コンタクトホールCH1の内側に設けられ、ドレイン電極7の延設部分上に設けられる。このため、ドレイン電極7の延設部分は、フォトダイオード20の下部電極に相当する。フォトダイオード20は、本実施の形態では、Pドープしたアモルファスシリコン膜9と、その上層のイントリンシックのアモルファスシリコン膜10と、Bドープしたアモルファスシリコン膜11とを備え、これらの3層積層構造からなる。フォトダイオード20の上には、例えば、IZO、ITZO、ITSOからなる透明電極12が形成されている。
【0019】
上述に示した構成を覆うように形成される第2のパッシベーション膜13は、コンタクトホールCH2、CH3を有する。コンタクトホールCH2の内部にはデータ線14の一部、コンタクトホールCH3の内部にはバイアス線15の一部が埋め込まれる。これらデータ線14、バイアス線15は、第2のパッシベーション膜13の上に形成される。データ線14は、コンタクトホールCH2を介してソース電極6と接続されるように形成される。バイアス線15は、コンタクトホールCH3を介して透明電極12と接続されるように形成される。
【0020】
データ線14とバイアス線15は、例えば、少なくとも最上層、または、最下層にAl−Ni合金膜を設けた導体、または、Al−Ni合金膜の単層により形成される。最上層にAl−Ni合金膜を形成した場合、最上層表面に窒化層をさらに設けてもよい。なお、データ線14は、3層積層構造からなるフォトダイオード20において変換された電荷を読み出すための配線である。バイアス線15は、光が当たらないときにoff状態を作るために、3層積層構造からなるフォトダイオード20に逆バイアスをかけるための配線である。
【0021】
さらに、第2のパッシベーション膜13上には、遮光層16も形成されている。そして、これらを覆うようにして第3のパッシベーション膜17、第4のパッシベーション膜18が形成されている。ここで、第4のパッシベーション膜18は、表面が平坦な膜であり、例えば、有機樹脂などからなる。
【0022】
ここで比較のため、従来のフォトセンサーの断面図を図3に示す。図3において、上述した構成に対応するものについては、同じ符号を付している。従来のフォトセンサーは、フォトダイオード20の下の領域にゲート絶縁膜3が延設されている。それに対し、本実施の形態に係るフォトセンサーは、フォトダイオード20の下の領域にゲート絶縁膜3が延設されていない。その結果、本実施の形態に係るフォトセンサーは、フォトダイオード20の下部電極に相当するドレイン電極7の延設部分と、ガラス基板1との間の領域には、下地絶縁膜19のみ設けられている点で、従来のフォトセンサーと異なる。
【0023】
次に、以上の構成からなる本実施の形態に係るフォトセンサーが備えるTFTアレイ基板の製造方法の一例について説明する。最初に、ガラス基板1上に、ガラス基板1より低誘電率の膜として、酸化ケイ素からなる下地絶縁膜19をプラズマCVD法により形成する。後述するように、この下地絶縁膜19を厚く形成するほど、フォトダイオード20の下部電極とデータ線14との間の寄生容量を低減させる効果は大きくなる。なお、プロセスを簡略化するために、塗布法で形成可能なSi−H結合を含有する酸化ケイ素膜(HSQ)膜などの低誘電率の膜をガラス基板1上に形成してもよい。また、下地絶縁膜19にSiOF(FSG)膜を用いる場合は、上述の酸化ケイ素膜と同様、プラズマCVD法によりSiOF膜を形成すればよい。
【0024】
次に、ゲート電極2を形成するために、第1の導電性薄膜として、Alを主成分とする金属、例えば、Niを含むAl合金、例えば、AlNiNdをスパッタリング法により形成する。成膜条件は、例えば、圧力0.2〜0.5Pa、DCパワー1.0〜2.5kW、パワー密度で言うなれば0.17〜0.43W/cm2、成膜温度は室温〜180℃で成膜する。膜厚は150〜300nm形成する。現像液との反応を抑えるために、AlNiNdの上に窒化したAlNiNdN層を形成してもよい。また、AlNiNdの代わりに、例えば、AlNiSiやAlNiMgを使用してもよい。さらに、データ線14やバイアス線15に同じ材料を用いてもよく、その場合には、生産効率が向上する。また、Al以外にも低抵抗金属材料としてCuもしくはCu合金を用いることができ、この場合もAlと同様にスパッタリング法で成膜することができる。
【0025】
次に、第1のフォトリソグラフィー工程で、ゲート電極2形状のレジスト(図示せず)をパターニング形成し、エッチング工程で、例えば、リン酸、硝酸、酢酸の混酸を用いて第1の導電性薄膜をパターニングしてゲート電極2を形成する。なお、ゲート電極2の断面形状をテーパー形状にすると、後続の膜形成における断線などの不良を低減できる。さらに、エッチングは、リン酸と硝酸と酢酸との混酸を挙げたが、エッチング液の種類はこの限りではない。また、エッチングは、ウェットエッチに限ったものではなく、ドライエッチを用いてもよい。本実施の形態においては、フォトダイオード20の形成の際、ゲート電極2が露出しない構造となっているので、ゲート電極2の材質に、ダメージにそれほど強くないAlやCuを主成分とする金属を用いることができる。そのため、低抵抗な配線を形成できるので、大型のフォトセンサーを形成することが可能となる。
【0026】
次にゲート絶縁膜3の膜厚が200〜400nm、a−Si:H(水素原子が添加されたアモルファスシリコン)からなる半導体層4の膜厚が100〜200nm、n+導電型のa−Si:Hからなるオーミックコンタクト層5の膜厚が20〜50nmとなるように、例えば、プラズマCVD法で順に堆積する。ゲート絶縁膜3としては、窒化ケイ素膜、または、酸化窒化ケイ素膜、または、酸化窒化ケイ素膜と酸化ケイ素膜の2層構造の膜などを用いることが望ましい。
【0027】
フォトセンサーには高い電荷読み出し効率が求められ、それを実現するためには、駆動能力の高いTFTが必要となる。そこで、a−Si:Hからなる半導体層4を2ステップに分割して成膜することによってTFTの高性能化を図ってもよい。その場合の成膜条件として、例えば、1層目はデポレートが50〜200Å/分の低速レートで良質な膜を形成し、その後の残りを300Å/分以上のデポレートで成膜する。上述のゲート絶縁膜3、半導体層4、オーミックコンタクト層5は、例えば、250〜350℃の成膜温度下で成膜する。
【0028】
次に、第2のフォトリソグラフィー工程でチャネル形状のレジスト(図示せず)を形成し、エッチング工程において、チャネルを形成する部分が残るように半導体層4とオーミックコンタクト層5をアイランド状にパターニングする。エッチングは、例えば、SF6とHClの混合ガスを用いたプラズマを用いて行う。なお、チャネルの断面形状をテーパー形状にすると、後続の膜形成における断線などの不良を低減できる。また、ここでは、エッチングガスとして、SF6とHClの混合ガスを挙げたが、ガス種はこの限りではない。
【0029】
次に、第3のフォトリソグラフィー工程で、少なくともフォトダイオード20の下に位置するゲート絶縁膜3を、エッチング工程で除去する。本実施の形態では、ゲート絶縁膜3は、ゲート電極2の周囲にのみ形成されるように除去する。なお、ゲート絶縁膜3の断面形状をテーパ形状にすると後続の膜形成における断線などの不良を低減できる。
【0030】
次に、第2の導電性薄膜を成膜する。第2の導電性薄膜の形成は、例えば、スパッタリング法を用いて、クロム(Cr)などの高融点金属膜を成膜することにより行う。膜厚は、例えば、50〜300nmとなるように形成する。
【0031】
次に、第4のフォトリソグラフィー工程でソース電極6とドレイン電極7のパターニングに対応するレジスト(図示せず)を形成し、エッチング工程、例えば、硝酸セリウムアンモニウムと硝酸の混酸を用いて第2の導電性薄膜をパターニングする。これにより、ソース電極6、および、ドレイン電極7を形成する。その後、形成した電極をマスクにして、例えば、SF6とHClの混合ガスのプラズマを用いてオーミックコンタクト層5をエッチングして、TFTを形成する。
【0032】
なお、ここでは、ソース電極6とドレイン電極7を形成するエッチング液として硝酸セリウムアンモニウムと硝酸の混酸を挙げ、オーミックコンタクト層5のエッチングガスとしてSF6とHClの混合ガスを挙げたがこの限りではない。また、本実施の形態においては、ソース電極6とドレイン電極7の材質を、Crを用いる場合について説明したが、これに限ったものではなく、Siとのオーミックコンタクトが取れる金属であればCr以外の金属であってもよい。また、これら電極形成後、第1のパッシベーション膜8を形成するが、その前に、TFTの特性を向上させるために、水素ガスを用いたプラズマ処理を行い、バックチャネル側、すなわち、半導体層4の表面を荒らしてもよい。
【0033】
次に、例えば、プラズマCVD法を用いて、パッシベーション膜を形成する。そして、第5のフォトリソグラフィー工程で、ドレイン電極7と、Pドープしたアモルファスシリコン膜9との間のコンタクトをとるためのコンタクトホールCH1をレジスト(図示せず)にてパターニング形成する。そして、パッシベーション膜をエッチングしてパターニングすることにより、第1のパッシベーション膜8を形成する。
【0034】
パッシベーション膜のエッチングは、例えば、CF4とO2の混合ガスのプラズマを用いる。第1のパッシベーション膜8としては、例えば、誘電率の低い酸化ケイ素(SiO2)膜を膜厚200〜400nmで形成する。酸化ケイ素膜の成膜条件は、例えば、SiH4流量が10〜50sccm、N2O流量が200〜500sccm、成膜圧力は50Pa、RFパワーが50〜200W、パワー密度で言うなれば0.015〜0.67W/cm2、成膜温度は200〜300℃とした。なお、エッチングガスにCF4とO2の混合ガスを挙げたが、この限りではない。さらには、第1のパッシベーション膜8として、酸化ケイ素を挙げたが、この限りではなく、SiNやSiONであってもよい。この場合は、上記ガスに水素、窒素、アンモニア(NH3)を加えて形成する。
【0035】
次に、プラズマCVD法でフォトダイオード20を形成するため、Pドープしたアモルファスシリコン膜、イントリンシックのアモルファスシリコン膜、Bドープしたアモルファスシリコン膜を一度も真空を破らずに同一性膜質で順番に成膜する。これらを簡単のため、アモルファスシリコン層と呼ぶことにする。この時の膜厚は、例えば、Pドープしたアモルファスシリコン膜が30〜80nm、イントリンシックのアモルファスシリコン膜が0.5〜0.2μm、Bドープしたアモルファスシリコン膜が30〜80nmとなるように形成する。
【0036】
イントリンシックのアモルファスシリコン膜は、例えば、SiH4の流量が100〜200sccm、H2の流量が100〜300sccm、成膜圧力は100〜300Pa、RFパワーが30〜150W、パワー密度で言うなれば0.01〜0.05W/cm2、成膜温度は200〜300℃で成膜する。PあるいはBのドープトシリコン膜はそれぞれ、0.2〜1.0%のPH3あるいはB26を上記成膜条件のガスに混合した成膜ガスで成膜する。
【0037】
Bドープしたアモルファスシリコン膜は、イオンシャワードーピング方法、または、イオン注入方法により、イントリンシックのアモルファスシリコン膜の上層部にBを注入して形成してもよい。なお、イオン注入方法を用いてBドープしたアモルファスシリコン膜を形成する場合、それに先立ってイントリンシックのアモルファスシリコン膜の表面に膜厚5〜40nmのSiO2膜を形成してもよい。これは、Bを注入する際のダメージを軽減させるためである。その場合、イオン注入後にSiO2膜を、例えば、BHF(希フッ酸)により除去してもよい。
【0038】
次に、例えば、IZO、ITZO、ITSOのいずれかのターゲットを用いたスパッタ法により非結晶透明導電膜を成膜する。成膜条件は、例えば、0.3〜0.6Pa、DCパワーは3〜10kW、パワー密度で言うなれば0.65〜2.3W/cm2、Ar流量50〜150sccm、酸素流量1〜2sccm、成膜温度は室温から180℃くらいまでで成膜する。非結晶透明導電膜の成膜後、第6のフォトリソグラフィー工程でレジスト(図示せず)を形成し、例えば、シュウ酸を用いてエッチングを行い、パターニングし、透明電極12を形成する。なお、エッチング液としてシュウ酸を挙げたがこの限りではない。本実施の形態においては、透明電極12として、IZO,ITZO,ITSOのいずれかを含む膜を用いたので、下層のBドープしたアモルファスシリコン膜上に微小な結晶粒をほとんど含まない非結晶状態で成膜を行うことができる。したがって、エッチング残渣を生じないという効果を奏する。さらに、透明電極12は、上記材料を混合した膜を用いてもよいし、それぞれの材料からなる膜を積層させた構造でもよいし、混合させた膜を積層させてもよい。
【0039】
次に、第7のフォトリソグラフィー工程で透明電極12のパターンより一回り大きく、かつ、コンタクトホールCH1の開口エッヂより内側になるようなレジストパターンを形成する。そして、例えば、SF6とHClの混合ガスのプラズマを用いて、上述の三層からなるアモルファスシリコン層をパターニングする。このパターニングにより、図2に示されるPドープしたアモルファスシリコン膜9、イントリンシックのアモルファスシリコン膜10、Bドープしたアモルファスシリコン膜11の3層を形成する。なお、エッチングガスとしてSF6とHClの混合ガスを挙げたがこの限りではない。これにより、3層積層構造からなるフォトダイオード20が形成される。
【0040】
次に、フォトダイオード20を保護するための第2のパッシベーション膜を成膜する。その後、第8のフォトリソグラフィー工程で、ソース電極6とデータ線14とを接続するコンタクトホールCH2と、フォトダイオード20の透明電極12とバイアス線15とを接続するコンタクトホールCH3に対応するレジストパターン(図示せず)を形成する。そして、CF4とArの混合ガスを用いたプラズマを用いて第2のパッシベーション膜をエッチングし、コンタクトホールCH2,CH3を有する第2のパッシベーション膜13を形成する。
【0041】
第2のパッシベーション膜13は、データ線14とバイアス線15にかかる付加容量を小さくするために、例えば、誘電率の低い酸化ケイ素膜を、0.5〜1.5μmの膜厚で成膜する。酸化ケイ素膜の成膜条件は、例えば、SiH4流量が10〜50sccm、N2O流量が200〜500sccm、成膜圧力は50Pa、RFパワーが50〜200W、パワー密度で言うなれば0.015〜0.67W/cm2、成膜温度は200〜300℃とした。なお、第2のパッシベーション膜13の材料として酸化ケイ素を挙げたがこの限りではなく、SiNであってもよい。また、コンタクトホールCH2,CH3の開口の際には、その断面がテーパ形状となるように加工すると上層の被覆性が向上し、断線等を低減できる。
【0042】
次に、データ線14、バイアス線15、および、遮光層16を形成するために、第三の導電性薄膜を成膜する。第三の導電性薄膜としては、抵抗が低く、かつ、耐熱性に優れ、かつ、透明導電膜とのコンタクト特性に優れたNiを含むAl合金、例えば、AlNiNdを用いる。膜厚は、例えば、0.5〜1.5μmで成膜する。データ線14、および、バイアス線15は、AlNiNd単層でもよく、AlNiNdとMoやMo合金、あるいはCrなどの高融点金属との積層でもよい。また、現像液との反応を抑えるためにAlNiNdの上に窒化したAlNiNdNを形成してもよい。これらの膜は、例えば、スパッタリング法により下地としてMo合金を成膜し、その上にAlNiNdを連続成膜する。成膜条件は、例えば、圧力0.2〜0.5Pa、DCパワー1.0〜2.5kW、パワー密度で言うなれば0.17〜0.43W/cm2、成膜温度は室温から180℃ぐらいまでの範囲で行う。
【0043】
次に、第9のフォトリソグラフィー工程でデータ線14、バイアス線15、および、遮光層16それぞれに対応するレジストを形成し、エッチングしてパターニングする。データ線14、バイアス線15がAlNiNdとMoの積層膜の場合は、例えば、リン酸、硝酸、酢酸の混酸を用いてパターニングする。なお、エッチング液としては、リン酸、硝酸、酢酸の混酸を挙げたが、エッチング液の種類はこの限りではない。ここで、データ線14はCH2を介してソース電極6と接続し、バイアス線15はCH3を介して透明電極12と接続している。バイアス線15としては、上述の通り、Niを含むAl合金、もしくは、高融点金属を最下層に用いているので、下層の透明電極12との間のコンタクト抵抗は低く、良好な接続を得ることができる。
【0044】
次に、データ線14、および、バイアス線15を保護するために第3のパッシベーション膜17、第4のパッシベーション膜18を形成する。例えば、第3のパッシベーション膜17にSiNを用い、第4のパッシベーション膜18に平坦化膜を用いる。
【0045】
第10のフォトリソグラフィー工程で、端子との接続を取るためのコンタクトホール(図示せず)のレジストをパターニング形成し、CF4とO2の混合ガスのプラズマを用いてパターニングする。ここでは、エッチングガスとして、CF4とO2の混合ガスを挙げたが、この限りではない。なお、第4のパッシベーション膜18として感光性を持つ平坦化膜を用いることにより、第10のフォトリソグラフィー工程における第4のパッシベーション膜18のパターニングは、露光と現像処理によって行ってもよい。
【0046】
次に端子引き出し電極(図示せず)となる導電膜を成膜する。電極材料は信頼性を確保するために、透明導電膜、例えば、アモルファスITOを成膜する。
【0047】
次に第11のフォトリソグラフィー工程にて端子形状のレジストを形成し、例えば、シュウ酸を用いてエッチングして端子引き出し電極を形成する。その後、アニールによりITOを結晶化する。
【0048】
なお、本実施の形態に係るTFTは、アモルファスシリコンを用いた逆スタガ型のチャネルタイプについて記述したが、ポリシリコンTFTや、クリスタルシリコンを用いたMOSを用いてもよい。
【0049】
次に、本実施の形態に係るフォトセンサーの効果について実験結果により説明する。図4は、フォトダイオード20の下部電極に相当するドレイン電極7の延設部分とデータ線14との間の寄生容量と、ガラス基板1上全面に堆積させた下地絶縁膜19の膜厚との関係を示した図である。
【0050】
図4で使用している下地絶縁膜19は、プラズマCVD法により形成され、比誘電率が約4である酸化ケイ素膜である。縦軸は、下地絶縁膜19を形成していないときの上述の寄生容量を100%として示したものである。この図では、図2に示した本実施の形態に係るフォトセンサー、つまり、フォトダイオード20下のゲート絶縁膜3を除去したフォトセンサーは、黒丸の点で示されている。それとともに、図3に示した従来のフォトセンサー、つまり、フォトダイオード20下のゲート絶縁膜3を除去していないフォトセンサーは、白抜き四角の点で示されている。
【0051】
本実施の形態に係るフォトセンサーは、図4に示すように、従来のフォトセンサーと比較して、フォトダイオード20の下部電極と、データ線14との間の寄生容量を低減させることができる。例えば、下地絶縁膜19である酸化ケイ素膜を10μm形成した場合、従来のフォトセンサーでは、寄生容量を6〜7%ぐらいしか低減できないのに対し、本実施の形態に係るフォトセンサーでは、寄生容量を約10%低減させることができる。このように、本実施の形態に係るフォトセンサーによれば、フォトダイオード20の下部電極と、データ線14との間の寄生容量を低減することができる。
【0052】
このようなフォトセンサーを用いて、X線撮像装置を実現することも可能である。図示しないが、X線を光に変換するシンチレータを、上述のフォトセンサーの上側に設ける。そのようなシンチレータは、例えば、第4のパッシベーション膜18上、もしくは、それよりも上層に、CsIを蒸着する。そして、低ノイズアンプとA/Dコンバーターなどを有するデジタルボード、TFTを駆動するドライバーボード、および電荷を読み出す読み出しボードを接続することにより形成される。
【0053】
これにより、シグナル/ノイズ(S/N)比が大きく、フレームレートも大きいX線撮像装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施の形態1に係るフォトセンサーの正面図である。
【図2】実施の形態1に係るフォトセンサーの断面図である。
【図3】従来のフォトセンサーの断面図である。
【図4】実施の形態1に係るフォトセンサーの効果を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
1 ガラス基板、2 ゲート電極、3 ゲート絶縁膜、4 半導体層、5 オーミックコンタクト層,6 ソース電極、7 ドレイン電極、8 第1のパッシベーション膜、9,10,11 アモルファスシリコン、12 透明電極、13 第2のパッシベーション膜、14 データ線、15 バイアス線、16 遮光層、17 第3のパッシベーション膜、18 第4のパッシベーション膜、19 下地絶縁膜、20 フォトダイオード、CH1〜CH3 コンタクトホール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に設けられ、前記基板よりも低い誘電率を有する絶縁膜と、
前記絶縁膜上にゲート電極、ゲート絶縁膜、半導体層を積層してなり、前記半導体層に接続された電極を有するスイッチング素子とを備え、
前記電極は、前記絶縁膜表面に直に接する延設部分を有し、
前記電極の前記延設部分上に設けられたフォトダイオードをさらに備える、
フォトセンサー。
【請求項2】
前記絶縁膜の材質は、酸化ケイ素を含む、
請求項1に記載のフォトセンサー。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のフォトセンサーと、
前記フォトダイオードの上側に設けられ、X線を光に変換するシンチレーターとを備える、
X線撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−59975(P2009−59975A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−227292(P2007−227292)
【出願日】平成19年9月3日(2007.9.3)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】