説明

フレーム溶射熱分解によるガラス粉末から形成された多孔質基材の製造方法

無機多孔質基材、及びベース基板に堆積させたナノ粒子を用いた無機多孔質基材の製造方法である。無機多孔質基材は生物学的応用、例えば、DNA、RNA、蛋白質等の生体分子の固定に有益である。また、無機多孔質基材は細胞増殖の分野でも有益である。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、出願日2007年4月26日、米国仮特許出願第60/926,248号、タイトル「フレーム溶射熱分解によるガラス粉末から形成された多孔質基材の製造方法」、代理人整理番号SP07−073Pの仮出願、及び出願日2007年8月10日、米国特許出願第11/891,519号、タイトル「フレーム溶射熱分解によるガラス粉末から形成された多孔質基材の製造方法」、代理人整理番号SP07−073Pの利益および優先権を主張するものであり、前記引用により前記各出願の内容がすべてそのまま本出願に組み込まれたものとする。
【技術分野】
【0002】
本発明は、無機多孔質基材に関するものであり、特には基板に堆積させたナノ粒子を用いた無機多孔質基材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
ここ数年、エレクトロニクス、材料科学、及びナノスケール技術の分野において飛躍的な進歩が見られ、例えば、エレクトロニクスの分野においてはより小型の装置が出現し、ファイバーの製造技術が進歩し、バイオ技術分野に新たな用途が生まれた。小粒子状物質を扱う分野の技術進歩を促進するためには、より小型、高純度、かつ均一な微粒子の生成及び収集能力が必要である。小粒子状物質の生成及びその後における小粒子状物質の基板への収集あるいは堆積のための適応力に富み効率のよい新たな方法の開発が一層有益なものとなりつつある。
【0004】
粒子サイズがその粒子あるいはその粒子を含んでいる材料の物理的及び化学的特性に影響を与えることが多い。例えば、断面寸法が200ナノメートル(nm)未満になると、粒子の光学的、機械的、生化学的、及び触媒的特性が変化する場合が多い。原子あるいは化合物の粒子サイズが200nm未満になると、このような微粒子が同じ原子あるいは化合物の大きな粒子と全く異なる特性を示すことが多い。例えば、マクロスケールにおいて触媒能のない材料がナノ粒子になると高効率の触媒として機能することがある。
【0005】
前記の粒子特性は多くの技術分野において重要である。例えば、光ファイバーの製造分野においては、不純物を含む先駆体から実質的に純粋なシリカ及びゲルマニウムの特定のサイズ範囲(約5〜300nm)の煤粒子を生成することが、高純度光ファイバーの製造に必要な母材を得るのに重要である。また、医薬品の分野では、予め定めた特定の特性を有する粒子を生成することが、例えば、その医薬品の生体内デリバリー、生体利用効率、及び安定性の最適化、並びに生理学親和性にとって重要である。粒子の光学的、機械的、生化学的、及び触媒的特性は、粒子サイズに密接に関連すると共に粒子を含む化合物のサイズに密接に関連している。
【0006】
多孔質の微細構造は多くの研究分野及び商業分野において重要である。ナノ粒子から形成された三次元構造体によって最適な表面積が得られる。表面積の増大は、カスタム・スポット・マイクロアレイ、高触媒作用、高輝度発光素子等、多くのアプリケーションを可能とする物理特性である。例えば、この参照により内容がすべてそのまま本出願に組み込まれたものとする特許文献1、特許文献2、及び特許文献3等、表面積を増大させる従来の方法においては、サイズが0.5□m〜2□mのボールミル処理されたコーニング1737(商標)ガラス粒子を使用する。このボールミル処理された粒子がコーニング「1737」ガラス基板に焼結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第01/16376A1号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/0003474号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2002/0142339号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
マイクロアレイの製造に使用されるスライドを製造する従来のボールミル処理には次のような欠点がある。即ち、ボールミル処理された「1737」微粒子生成物のロット間のバラツキ、粒子サイズの大きなバラツキ、ボールミル処理された微粒子をテープ成形又はスクリーンプリントにより後蒸着処理する必要がある、粒子サイズが大きく最終的にナノ粒子表面積が得られない、スクリーンプリントの場合、不規則な表面パターン及び「1737」ガラスの処理限界によるマイクロアレイのスポット効果の消失が挙げられる。
【0009】
従って、無機多孔質基材を作製するための従来のボールミル処理に見られるサイズ及び組成のバラツキを抑制したナノサイズ(平均粒子サイズが500nm以下)の粒子を生成する方法が有益である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の多孔質基材の製造方法を以下に述べる。本発明の方法は、特に所望粒子サイズがナノメートル領域(平均粒子サイズが500nm以下)である場合の前記従来のボールミル処理方法及び噴霧粒子生成方法における欠点の1つ以上に対処したものである。
【0011】
本発明の方法は、フレーム溶射熱分解による平均粒子サイズが500nm以下の粒子から形成された多孔質基材の製造方法である。実施の形態により、平均粒子サイズは、例えば、
400nm以下、300nm以下、200nm以下、100nm以下、あるいは80nm以下である。
【0012】
1つの実施の形態において、フレーム溶射熱分解によりナノ粒子をベース基板に堆積させて無機多孔質基材を作製する方法が開示される。前記方法はガラス先駆体及び溶媒を含む溶液を提供するステップ、前記溶液を霧化して噴霧液滴を形成するステップ、炎を用いて前記噴霧粒子からナノ粒子を生成するステップ、及び該ナノ粒子を生成するステップに引き続きあるいは同時に、前記ナノ粒子をベース基板に焼結するステップの各ステップを有して成ることを特徴とするものである。
【0013】
別の実施の形態によれば、被膜付き無機多孔質基材を作製する方法が開示される。前記方法はガラス先駆体及び溶媒を含む溶液を提供するステップ、前記溶液を霧化して噴霧液滴を形成するステップ、酸化物ナノ粒子を生成するのに充分な条件下で炎に前記噴霧液滴を通すステップ、前記ナノ粒子をベース基板に堆積させ無機多孔質基材を形成するステップ、及び前記無機多孔質基材をシラン、ポリマー、並びにその組合せから選択される材料によって被覆するステップの各ステップを有して成ることを特徴とするものである。
【0014】
更に別の実施の形態の方法は、ガラス先駆体及び溶媒を含む溶液を提供するステップ、前記溶液を霧化して噴霧液滴を形成するステップ、ナノ粒子を生成するのに充分な条件下で炎に前記噴霧液滴を通すステップ、前記ナノ粒子をベース基板に堆積させ無機多孔質基材を形成するステップ、前記無機多孔質基材をシラン、ポリマー、及びその組合せから選択される材料によって被覆するステップ、及び前記被膜付き無機多孔質基材に生体分子を堆積させるステップの各ステップを有して成ることを特徴とするものである。
【0015】
本発明の更なる特徴および効果は以下の詳細な説明に記載されおり、その一部は当業者にとって明らかであり、また以下の説明、特許請求の範囲、及び添付図面を含む本明細書に記載の本発明を実施することにより認識できる。
【0016】
前記概要説明および以下の詳細な説明は本発明の例示に過ぎず、本発明の本質および特徴を理解するための要旨あるいは構成の説明を意図したものである。
【0017】
添付図面は本発明の理解を深めるためのものであり、本明細書の一部を構成するものである。本発明の各種実施の形態が図面に示されており、その説明と共に本発明の原理および動作を説明するものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明は以下の詳細な説明あるいは詳細な説明と共に添付図面を参照することにより理解できる。
【図1】基板に堆積された表面積176m/gのナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)写真。
【図2】図1のナノ粒子のX線回折プロット図。
【図3】顕微鏡スライドであるベース基板に堆積されたナノ粒子の写真。
【図4】マイクロウェル・フォーマットであるベース基板に堆積されたナノ粒子の写真。
【図5】空気雰囲気中において800℃にて2時間焼結した後の形態を示す「1737」スライド上の無機多孔質基材断面のSEM写真。
【図6】空気雰囲気中において800℃にて2時間焼結した後の形態を示す「1737」スライド上の無機多孔質基材のSEM写真。
【図7】空気雰囲気中において800℃にて2時間焼結した後の形態を示す「1737」スライド上の無機多孔質基材のSEM写真。
【図8】本発明によりスライド上に作製された2つの多孔質基材のCy3/Cy5によるにS/Nに関するバイオアッセイ・データを示す図。
【図9】従来の摩擦ボールミル処理とスクリーンプリント処理とによりスライド上に作製された調整多孔質基材(左)と本発明によりスライド上に作製された2つの多孔質基材にプリントしたハイブリッド・マイクロアレイとを比較した図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
添付図面に例示した本発明の実施の形態について詳細に説明する。同一あるいは同様の部品については、図面全体を通して可能な限り同一番号または符号が付してある。
【0020】
1つの実施の形態によれば、例えば、室温において、多成分ガラスの成分、例えば、Si、Al、B、Ca、Mg、Sr、K、Ba、Ni、及びCoのようなガラス先駆体を含む溶液が提供される。このガラス先駆体は対応する酸化物に熱分解する有機誘導体であり、アルコールのような可燃性溶媒に溶解される。使用可能な有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、高級アルコール(炭素鎖のすべての異性体を含む)、メトキシアルコール、アルコキシアルコール、炭化水素溶媒(例えば、ミネラルスピリット)、ケトン(例えば、アセトン)、エーテル(例えば、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル)、及びその組合せが挙げられる。
【0021】
前記溶液は霧化により噴霧液滴に変換される。霧化は各種方法、例えば、外部混合エア・アシステッド・ノズルによって可能である。噴霧液滴酸化物はフレーム溶射熱分解によりナノ粒子に変換される。ここで、各々の粒子の組成は霧化される液体の組成によって決まる。
【0022】
加熱することにより酸化物ナノ粒子への変換が促進される。実施の形態によっては、熱と共に可燃性ガス源を使用できる。例えば、酸素源、メタン源、プロパン源、及びその組合せ、又は任意の可燃性ガスを使用できる。熱源は可燃性スプレーを火炎又は火花によって発火させることにより得られる。次いで、酸化物ナノ粒子が基板に堆積され無機多孔質基材が形成される。
【0023】
1つの実施の形態において、ナノ粒子生成のために使用される溶液の液組成を表1に示す。窒素を充満した乾燥箱内で溶液を調製することにより、混合中にガラスナノ粒子先駆体が湿った空気に触れ加水分解を起こすことによる粒子の形成が抑制される。ガラスナノ粒子先駆体成分の混合順序によってその溶液の特性が左右されるため、表1の順(上から下)に混合される。SiO、Al、B、CaO、MgO、SrO、KO、及びBaOのガラス先駆体はそれぞれテトラエチルオルトシリケート、アルミニウムトリ‐sec‐ブトキシド、ボロントリエトキシド、2−メトキシエタノールのカルシウム2−メトキシエトキシド、2−メトキシエタノールのマグネシウム2−メトキシエトキシド、ストロンチウムイソプロポキシド、カリウムtert-ブトキシド、及びメトキシプロパノールのメトキシプロポキシドを含んでいてよい。表1に示す実施の形態の溶液は、更に無水エタノール、18MΩ/cmの水(又はこれより純度の高いあるいは低い水)、及び2M HC1を含んでいる。別の実施の形態において、NiO、Coのガラス先駆体が溶液に添加される。これ等の先駆体はそれぞれニッケル(II)アセチルアセトネート及びコバルト(III)アセチルアセトネートである。前記ガラスナノ粒子先駆体および溶媒を含む溶液は、噴霧器の詰りを抑制するために固形ガラスナノ粒子先駆体が溶解するまで攪拌される。
【0024】
市販の外部エア・アシステッド噴霧器(Schlick Atomizing Technologies、モデル970 S4)をナノ粒子生成装置に組み込んでフレーム溶射バーナーと組み合せて使用した。フレーム溶射バーナーは溶液と燃焼ガスとを含む可燃性スプレーに点火するための種火を発生させるものである。使用バーナー条件は、メタン流量3.6L/分、酸素流量3.4L/分、窒素シールドガス流量10L/分であった。噴霧器のノズル条件は、霧化酸素流量25L/分、ノズル両端の圧力差1Bar、溶液の液体流量7.5mL/分であった。酸化物ナノ粒子を96ウェルフォーマット又は1"×3"(2.54cm×7.62cm)フォーマットの「1737」基板に直接堆積させた。
【0025】
「1737」基板をチャンバーに入れ、前記バーナーによって生成された浮遊煤(酸化物ナノ粒子)がウェットスクラバー粒子汚染除去システムに放出される前に、基板をそれに晒した。堆積終了後、空気雰囲気炉内においてスライドを750℃にて2時間加熱し部分焼結により酸化物ナノ粒子を基板に固定した。
【0026】
別の実施の形態によれば、堆積酸化物ナノ粒子をその組成及び用途に応じ、700℃以上、750℃以上、800℃以上、850℃以上、あるいは900℃以上で基板に焼結できる。
【表1】

【0027】
フレーム溶射熱分解法により、表1に示す1つの実施の形態による溶液から得られた酸化物ナノ粒子組成を正規化したもの(多孔質基材に堆積させた組成と同等のナノ粒子を含む原末をICP質量分析装置で分析した)を表2に示す。
【表2】

【0028】
表3は別の実施の形態におけるフレーム溶射熱分解による溶液および可燃性スプレーの燃焼によって生成される酸化物ナノ粒子の組成3、4、5、および6を実験的に定めたものである。酸化物ナノ粒子の組成には約7〜9重量パーセント(wt%)の吸着燃焼生成物が含まれている。示差熱分析が示すように、前記酸化物ナノ粒子の組成を700℃以上の温度で加熱すると燃焼生成物の発生を抑制できる。従って、組成の重量パーセントを100%に正規化して、成分比をバルク酸化物ナノ粒子組成として表示できる。
【表3】

【0029】
前記方法によりナノ粒子を生成し基板に堆積させた。図1及び図2は例示したナノ粒子から形成された多孔質基材(多孔質基材に堆積させた組成と同等のナノ粒子を含む原末を分析した)が、X線回折プロットの第一のピーク2が示すように、非結晶質かつガラス質であることを示している。第二のピークは3微量成分のホウ酸結晶相であるB(OH)を示している。 この微量成分は無機多孔質基材を焼結する際に除去される。堆積ナノ粒子1の平均直径は約80nm、表面積が約170m/gである。
【0030】
別の実施の形態によれば、堆積中に基板を加熱することにより及び/又は静電堆積法により、粒子収集効率及び粒子充填密度を向上できる。例えば、逆帯電させた2つの電極間にベース基板を配することによりベース基板に電荷を供給できる及び/又はコロナ荷電装置あるいは当技術分野で周知の荷電装置によって荷電することによりナノ粒子に電荷を発生できる。静電法および静電装置の例が、この引用によりその内容がすべてそのまま本出願に組み込まれたものとする、同一出願人の米国特許出願第11/712149号明細書に記載されている。
【0031】
別の実施の形態によれば、堆積処理の間、400℃〜800℃の温度でベース基板を加熱することにより、ナノ粒子の堆積量、充填量、あるいは多孔質基材の緻密性を向上できる。
【0032】
堆積処理の間における加熱又はそれに続く別のステップとして加熱することにより堆積酸化物ナノ粒子をベース基板に熱接着(焼結)できる。用途によっては、無機多孔質基材を引き続き熱処理することにより表面を更に緻密化できる。
【0033】
焼結処理は、適切な条件、例えば、適切な温度、加熱時間、冷却速度等の下で無機多孔質基材を加熱することにより達成できる。これ等の条件は適切な酸化物が焼結されるよう選択される。焼結はオーブン焼成、COレーザー焼結、あるいはマイクロ波焼結によって達成できる。粒子同士を連結する別の方法に、ゾルゲル法のような当技術分野で周知の湿式法がある。
【0034】
ベース基板は図3及び図4に示すようにスライド4又はマイクロウェル6の形態を成すことができる。一般に、スライドは1インチ(2.54cm)×3インチ(7.62cm)である。ナノ粒子をマイクロプレート挿入フォーマットの基板に堆積できる。標準的なマイクロプレート挿入フォーマットは3インチ(7.62cm)×4.5インチ(11.43cm)である。
【0035】
別の実施の形態によれば、ナノ粒子を堆積させる前に、一部をマスクすることによりベース基板に無機多孔質基材のパターンを形成できる。
【0036】
マスクは、例えば、96又は384ウェルフォーマット状に孔を設けた、例えば、ステンレス板である。この孔付きマスクをナノ粒子が非マスク領域のみに堆積するようベース基板と浮遊ナノ粒子との間に配することができる。堆積終了後、マスクを除去し、ナノ粒子5が堆積した領域を有する多孔質基材を焼結及び/又は被覆できる。次に一部又はすべての堆積ナノ粒子がウェルの底面に位置するようこの孔付き板をベース基板に接着することによりマイクロウェル・プレートを形成できる。
【0037】
図5、図6、及び図7は顕微鏡スライド基板8に堆積させ大気炉で800℃にて2時間焼結した酸化物ナノ粒子から形成された多孔質基材7の形態を示している。焼結後のナノ粒子は熱処理(焼結)中におけるナノ粒子の粘性流及び/又は表面拡散によりウェブ状の構造を有している。本実施の形態においては、焼結処理によりナノ粒子が一連の相互連結されたウェブ11を形成し、そのウェブによりウェブとウェブとの間の相互連結された孔10が規定される。相互連結されたウェブによって規定される相互連結された孔は第二表面23から第一表面22に向け多孔質基材の幅を横断している。
【0038】
前記相互連結されたウェブの大きさは0.1〜1マイクロメートルである。ウェブによって規定される相互連結された孔の大きさは25マイクロメートル以下であり、多孔質基材の厚さは8〜10マイクロメートルである。図5は相互連結された孔を有する多孔質基材の断面図である。図6は大きさが20マイクロメートル以下の相互連結された孔9を有する多孔質基材を示す上面図である。実施の形態により、相互連結された孔の大きさは5マイクロメートル以下である。図7は相互連結されたウェブ11及び大きさが1マイクロメートル以下の相互連結された孔10を有する多孔質基材を示す図である。
【0039】
このような相互連結されたウェブ及び相互連結された孔を有する微細構造体は、例えば、生物材料、シラン、細胞等の材料を塗布する際、材料が均一に分布する点で有益である。
【0040】
前記方法によりベース基板表面に堆積されたナノ粒子は、用途に応じて更に処理される。
【0041】
別の実施の形態によれば、焼結後、例えばポリマーやシラン等の多くの材料によって無機多孔質基材を被覆することにより被覆付き多孔質基材を製造することができる。
【0042】
シランはガラス表面の特性を変え生体分子(例えば、DNA、蛋白質、更には細胞)との相互作用に影響を及ぼすことが知られている。シランを用いてDNAを保持する共有結合薬あるいは電荷引力による非共有結合DNA保持薬を作製できる。場合により、シラン分子の多数の特性を利用して、DNAを共有結合的又は非共有結合的に付着させることができる疎水性荷電面も形成できる。疎水性荷電面を形成できるシラン分子の例(これに限定されない)には、アミン官能性シラン(例えば、GAPS(商標)3−アミノプロピルトリメトキシシラン(コーニング社の商標))、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、及びチオ官能性シラン(3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)がある。これらのシランを単独又は組み合せて用い本発明の無機多孔質基材を被覆することができる。
【0043】
シランは液相塗布またはCVD塗布によって被覆できる。液相塗布工程においては、浸漬被覆が行われる、即ち、無機多孔質基材がシランを一定の体積割合で含むイソプロピルアルコール(IPA)のような有機搬送溶媒に浸される。シラン被膜ができるまで時間を置いた後、無機多孔質基材が被膜槽から取り出され洗浄される。CVD工程においては、乾燥したナノ粒子表面が密閉塗布チャンバー内に配され、加熱または真空引きによって生成されたシラン蒸気に晒される。
【0044】
プラスミドDNAをナノ粒子に付着させる非共有結合付着剤の例図8及び図9に示す。図8は本発明の別の実施の形態によって作製された無機多孔質基材から成る二つのマイクロアレイ12及び13と従来の摩擦ボールミル処理とスクリーンプリント処理とによって作製された調整多孔質基材から成るマイクロアレイ14とのCy3/Cy5(それぞれA/B)によるS/Nに関するバイオアッセイ・データの比較図である。図9は本発明により作製された二つの無機多孔質基材16及び17と従来の摩擦ボールミル処理とスクリーンプリント処理とによって作製された調整多孔質基材15とのハイブリッド・マイクロアレイの比較図である。
【0045】
例えば、ピン又はクイルを用いたプリント、あるいは生体分子を含む容器からのプリントなど、マイクロアレイ製造分野の当業者周知の多くの堆積方法によって、前記本発明の無機多孔質基材に生体分子を堆積させることができる。例えば、生体分子をバイオアッセイ溶液に浮遊させることができる。次にそのバイオアッセイ溶液にピンを導入する。前記ピンをバイオアッセイ溶液から取り出すと、一部の生体分子がピンに付着する。次に、そのピンを被覆無機多孔質基材に接触させることにより、一部の生体分子を被覆無機多孔質基材に移転できる。この工程を何回も繰り返すことにより、生体分子のプリントスポットから成るマイクロアレイ・フォーマットが作製される。
【0046】
マイクロアレイには、例えば、被膜付き無機多孔質基材のバックグラウンド・ノイズ(信号対雑音比)によるプリントスポットの判別不能、被膜付き無機多孔質基材の表面の粗さ、塗布の不均一性、あるいはその両方に起因するプリント中における被膜付き無機多孔質基材への生体分子の移転不足等、多くの理由によって“スポット欠落”という欠陥が生じる可能性がある。
【0047】
図8及び図9の予備データは、本発明によって作製された無機多孔質基材が、従来の方法で製造された無機多孔質基材において不可避な“スポット欠落”問題を抑制できることを示している。Cy3/Cy5(図8のA/B)試験において、従来の摩擦ボールミル処理とスクリーンプリント処理とにより作製された多孔質基材と比較して、信号対雑音比が高い(バックグラウンド・ノイズが小さい)。本発明による多孔質基材は、例えば、Gタンパク質共役受容体(GPCR)の結合及び機能分析に利用できる。
【0048】
本発明の精神および範囲を逸脱せずに、各種改良および変更が可能であることは当業者にとって明白である。従って、本発明は添付の特許請求の範囲およびその均等物に属する限りにおいて、かかる改良および変更を包含するものである。
【符号の説明】
【0049】
1 堆積ナノ粒子
2 第一のピーク
3 第二のピーク
4 スライド
5 ナノ粒子
6 マイクロウェル
7 多孔質基材
8 顕微鏡スライド基板
9,10 相互連結された孔
11 相互連結されたウェブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ粒子をベース基板に堆積させて無機多孔質基材を形成する方法であって、
ガラス先駆体と溶媒とを含む溶液を提供するステップ、
前記溶液を霧化して噴霧液滴を形成するステップ、
酸化物ナノ粒子を生成するのに充分な条件下で炎に前記噴霧液滴を通すステップ、及び
前記ベース基板に酸化物ナノ粒子を堆積させて前記無機多孔質基材を形成するステップ、
の各ステップを有して成ることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記堆積の間、前記ベース基板を加熱するステップを更に含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ベース基板に電荷を供給するステップを更に含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
被膜付き無機多孔質基材を作製する方法であって、
ガラス先駆体と溶媒とを含む溶液を提供するステップ、
前記溶液を霧化して噴霧液滴を形成するステップ、
酸化物ナノ粒子を生成するのに充分な条件下で炎に前記噴霧液滴を通すステップ、
前記ベース基板に酸化物ナノ粒子を堆積させて前記無機多孔質基材を形成するステップ、及び
前記無機多孔質基材をシラン、ポリマー、並びにその組合せから選択される材料によって被膜するステップ、
の各ステップを有して成ることを特徴とする方法。
【請求項5】
ガラス先駆体と溶媒とを含む溶液を提供するステップ、
前記溶液を霧化して噴霧液滴を形成するステップ、
酸化物ナノ粒子を生成するのに充分な条件下で炎に前記噴霧液滴を通すステップ、
ベース基板に酸化物ナノ粒子を堆積させて無機多孔質基材を形成するステップ、
前記無機多孔質基材をシラン、ポリマー、並びにその組合せから選択される材料によって被膜するステップ、及び
前記被膜付き無機多孔質基材に生体分子を堆積させるステップ、
の各ステップを有して成ることを特徴とする方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2010−526208(P2010−526208A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506201(P2010−506201)
【出願日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際出願番号】PCT/US2008/004628
【国際公開番号】WO2009/008930
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】