説明

ブレーキ制御装置およびブレーキ制御方法

【課題】液圧ブレーキ装置において特定の運転モードが選択されているとき、減圧弁からの液漏れを正確に検出する。
【解決手段】ブレーキ制御装置は、動力の供給により作動液を蓄圧する動力液圧源を高圧源としてマスタシリンダの作動液圧に合わせて作動液を調圧するレギュレータと、レギュレータから複数のホイールシリンダに作動液を供給するための作動液供給経路と、作動液供給経路とリザーバとを連通する経路に配設される減圧弁と、減圧弁を閉弁してレギュレータから複数のホイールシリンダに液圧を供給している間に、作動液供給経路に連通する部位の作動液圧の検出値に基づいて減圧弁からの液漏れを検出する制御部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設けられ車輪に付与される制動力を制御するブレーキ制御装置およびブレーキ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、加圧源と液圧制御部とにより各ホイールシリンダに付与する液圧を調整して制動力を制御可能な電子制御式のブレーキ装置が知られている。例えば、特許文献1には、液圧ブースタとマスタシリンダと動力液圧源と複数のブレーキシリンダとを含む液圧ブレーキ装置が記載されている。この液圧ブレーキ装置によれば、簡単な回路で、複数のブレーキシリンダと液圧ブースタ、マスタシリンダおよび動力液圧源とを選択的に連通可能とし、制御性を向上させることができる。システムが正常な場合には、動力液圧源からブレーキシリンダに作動液が供給される。異常が検出された場合には、正常時とは異なる他の制御モードに切り替えられる。例えばマスタシリンダからホイールシリンダに作動液を供給する系統と液圧ブースタから残りのホイールシリンダに作動液を供給する系統とに分離するモードに移行する。
【特許文献1】特開2006−123889号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1のような液圧ブレーキ装置では、車両の車輪毎に増圧制御弁と減圧制御弁を設ける代わりに、全ての車輪のホイールシリンダを一組の増圧制御弁と減圧制御弁で制御している。このように制御弁の設置数を減らすことによって、コストが低減する。また、液圧ブレーキ装置における特定の運転モードでは、上記の増圧制御弁と減圧制御弁とを閉弁し、レギュレータから全てのホイールシリンダに対してブレーキフルードを供給して制動力を発生させている。このような運転モードは、ABSの作動時や車両の停車時などにリニア制御弁を使用しないで制御をするために設定される。一般に制御弁は可動部を有しており耐用作動回数が定められているので、このモードを選択して制御弁の作動回数を抑えることには利点がある。
【0004】
しかしながら、上述の運転モードを選択しているときに減圧制御弁が故障して液漏れが生じると、全てのホイールシリンダからブレーキフルードが連続的に流出してしまい、所望の制動力を発生できなくなるおそれがある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、液圧ブレーキ装置において特定の運転モードが選択されているとき、減圧弁からの液漏れを正確に検出する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、ブレーキ制御装置である。この装置は、動力の供給により作動液を蓄圧する動力液圧源を高圧源としてマスタシリンダの作動液圧に合わせて作動液を調圧するレギュレータと、前記レギュレータから複数のホイールシリンダに作動液を供給するための作動液供給経路と、前記作動液供給経路とリザーバとを連通する経路に配設される減圧弁と、前記減圧弁を閉弁して前記レギュレータから前記複数のホイールシリンダに液圧を供給している間に、前記作動液供給経路に連通する部位の作動液圧の検出値に基づいて前記減圧弁からの液漏れを検出する制御部と、を備える。
【0007】
レギュレータモードやハイドロブースタモードでは上記の作動液供給経路からホイールシリンダに液圧が供給されるので、減圧弁から液漏れすると全てのホイールシリンダから作動液が流出するおそれがある。この態様によれば、減圧弁からの液漏れを検出してその後の対策につなげることが可能となる。
【0008】
本発明の別の態様もまた、ブレーキ制御装置である。この装置は、作動液圧に応じて複数の車輪のそれぞれに制動力を付与する複数のホイールシリンダと、動力の供給により作動液を蓄圧する動力液圧源を高圧源としてマスタシリンダの作動液圧に合わせて作動液を調圧するレギュレータと、前記複数のホイールシリンダから排出される作動液を回収するリザーバと、前記レギュレータと前記複数のホイールシリンダとを接続し作動液を供給するための作動液供給経路と、前記作動液供給経路に配設されるレギュレータカット弁と、前記作動液供給経路と前記リザーバとを連通する経路に配設される減圧弁と、前記レギュレータカット弁よりレギュレータ側で前記作動液供給経路の作動液圧を検出するレギュレータ圧センサと、前記レギュレータカット弁よりホイールシリンダ側で前記作動液供給経路の作動液圧を検出するホイールシリンダ圧センサと、前記レギュレータから前記複数のホイールシリンダに作動液を供給している間に、前記レギュレータ圧センサの検出値と前記ホイールシリンダ圧センサの検出値とを比較した結果に基づいて前記減圧弁からの液漏れを検出する制御部と、を備える。
【0009】
レギュレータモードの実行中はレギュレータカット弁が開弁されるため、正常であればレギュレータカット弁の上流側のレギュレータ圧センサで検出される作動液圧と、下流側のホイールシリンダ圧センサで検出される作動液圧とは等しくなる。本実施形態では、これら両センサで検出される作動液圧の比較の結果に基づいて、作動液供給経路に連通する減圧弁からの液漏れを検出して、その後の対策につなげることができる。
【0010】
ブレーキ操作入力に基づいて推定される作動液圧と前記レギュレータ圧センサで検出される作動液圧とが一致しないとき、前記制御部は、前記レギュレータ圧センサの検出値と前記ホイールシリンダ圧センサの検出値とを比較し、これら検出値が一致する場合、前記減圧弁から液漏れが生じていると判定してもよい。
【0011】
ブレーキ操作入力に基づく作動液圧と、レギュレータ圧センサで検出される作動液圧が一致しない場合は、その原因としては減圧弁からの液漏れの他にレギュレータ圧センサの異常が考えられる。この態様によれば、レギュレータ圧センサとホイールシリンダ圧センサの検出値を比較する過程を加えることで、減圧弁の液漏れとレギュレータ圧センサの故障とを切り分けて判定することが可能になる。
【0012】
ブレーキ操作入力に基づいてブレーキペダルが一定位置で保持されていると判定されるとき、前記制御部は、前記レギュレータカット弁を一時的に閉弁した後に開弁するように制御し、前記レギュレータ圧センサの検出値と前記ホイールシリンダ圧センサの検出値とを取得し、これら検出値が閉弁の前後で同一でない場合、前記減圧弁から液漏れが生じていると判定してもよい。
【0013】
レギュレータモードの実行中はレギュレータ以外からの作動液の流入はないので、ブレーキペダルが一定位置にある場合はレギュレータカット弁の開閉にかかわらずブレーキ圧は一定になるはずである。この態様によれば、レギュレータカット弁の開閉の前後でセンサ検出値が同一でない場合に、減圧弁から液漏れが生じていると判定する。これによって、ブレーキ操作入力に基づいて作動液圧を推定する必要がなくなる。
【0014】
前記減圧弁は、全てのホイールシリンダの作動液圧をブレーキ操作入力に応じて一斉に減圧制御するための共通減圧弁と、各車輪のホイールシリンダと前記リザーバとの連通を制御する個別減圧弁とを含んでもよい。この場合、前記制御部は、液漏れがあると判定した場合、前記共通減圧弁または前記個別減圧弁のいずれから液漏れが生じているかを特定してもよい。
【0015】
前記作動液供給経路から各車輪のホイールシリンダに連通する個別流路にそれぞれ配設され各ホイールシリンダへの作動液の供給を制御する保持弁をさらに備えてもよい。前記制御部は、液漏れがあると判定した場合、前記保持弁を一つずつ閉弁して液漏れが停止したか否かを確認し、液漏れを停止させた保持弁のある個別流路と連通する個別減圧弁から液漏れが生じていると判定してもよい。前記制御部は、いずれの保持弁を閉弁しても液漏れが停止しない場合、前記共通減圧弁から液漏れが生じていると判定してもよい。
【0016】
これによると、作動液供給経路から作動液を供給しているときの液漏れを検出できるのみならず、保持弁を順に開閉することで共通減圧弁と個別減圧弁のいずれで液漏れが生じているかを特定することができる。したがって、障害時の原因究明とその後の補修を迅速に実行することが可能になる。
【0017】
本発明のさらに別の態様は、ブレーキ制御方法である。この方法は、動力の供給により作動液を蓄圧する動力液圧源を高圧源としてマスタシリンダの作動液圧に合わせて作動液を調圧するレギュレータと、前記レギュレータから複数のホイールシリンダに作動液を供給するための作動液供給経路と、前記作動液供給経路とリザーバとを連通する経路に配設される減圧弁と、を備えるブレーキ制御装置を制御する方法であって、前記減圧弁を閉弁して前記レギュレータから前記複数のホイールシリンダに液圧を供給している間に、前記作動液供給経路に連通する部位の作動液圧の検出値に基づいて前記減圧弁からの液漏れを検出する。
【0018】
本発明のさらに別の態様もまた、ブレーキ制御方法である。この方法は、作動液圧に応じて複数の車輪のそれぞれに制動力を付与する複数のホイールシリンダと、動力の供給により作動液を蓄圧する動力液圧源を高圧源としてマスタシリンダの作動液圧に合わせて作動液を調圧するレギュレータと、前記複数のホイールシリンダから排出される作動液を回収するリザーバと、前記レギュレータと前記複数のホイールシリンダとを接続し作動液を供給するための作動液供給経路と、前記作動液供給経路に配設されるレギュレータカット弁と、前記作動液供給経路と前記リザーバとを連通する経路に配設される減圧弁と、を備えるブレーキ制御装置を制御する方法であって、前記レギュレータから前記複数のホイールシリンダに作動液を供給し、前記レギュレータカット弁よりレギュレータ側で前記作動液供給経路の作動液圧を検出し、前記レギュレータカット弁よりホイールシリンダ側で前記作動液供給経路の作動液圧を検出し、前記レギュレータ側の作動液圧と前記ホイールシリンダ側の作動液圧とを比較し、比較の結果に基づいて前記減圧弁からの液漏れを検出する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、液圧ブレーキ装置において特定の運転モードが選択されているとき、減圧弁からの液漏れを正確に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0021】
実施の形態1.
図1は、本発明の一実施形態に係るブレーキ制御装置20を示す系統図である。同図に示されるブレーキ制御装置20は、車両用の電子制御式ブレーキシステム(ECB)を構成しており、車両に設けられた4つの車輪に付与される制動力を制御する。本実施形態に係るブレーキ制御装置20は、例えば、走行駆動源として電動モータと内燃機関とを備えるハイブリッド車両に搭載される。このようなハイブリッド車両においては、車両の運動エネルギを電気エネルギに回生することによって車両を制動する回生制動と、ブレーキ制御装置20による液圧制動とのそれぞれを車両の制動に用いることができる。本実施形態における車両は、これらの回生制動と液圧制動とを併用して所望の制動力を発生させるブレーキ回生協調制御を実行することができる。
【0022】
ブレーキ制御装置20は、図1に示されるように、各車輪に対応して設けられたディスクブレーキユニット21FR、21FL、21RRおよび21RLと、マスタシリンダユニット27と、動力液圧源30と、液圧アクチュエータ40とを含む。
【0023】
ディスクブレーキユニット21FR、21FL、21RRおよび21RLは、車両の右前輪、左前輪、右後輪、および左後輪のそれぞれに制動力を付与する。本実施形態におけるマニュアル液圧源としてのマスタシリンダユニット27は、ブレーキ操作部材としてのブレーキペダル24の運転者による操作量に応じて加圧されたブレーキフルードをディスクブレーキユニット21FR〜21RLに対して送出する。動力液圧源30は、動力の供給により加圧された作動流体としてのブレーキフルードを、運転者によるブレーキペダル24の操作から独立してディスクブレーキユニット21FR〜21RLに対して送出することが可能である。液圧アクチュエータ40は、動力液圧源30またはマスタシリンダユニット27から供給されたブレーキフルードの液圧を適宜調整してディスクブレーキユニット21FR〜21RLに送出する。これにより、液圧制動による各車輪に対する制動力が調整される。
【0024】
ディスクブレーキユニット21FR〜21RL、マスタシリンダユニット27、動力液圧源30、および液圧アクチュエータ40のそれぞれについて以下でさらに詳しく説明する。各ディスクブレーキユニット21FR〜21RLは、それぞれブレーキディスク22とブレーキキャリパに内蔵されたホイールシリンダ23FR〜23RLを含む。そして、各ホイールシリンダ23FR〜23RLは、それぞれ異なる流体通路を介して液圧アクチュエータ40に接続されている。なお以下では適宜、ホイールシリンダ23FR〜23RLを総称して「ホイールシリンダ23」という。
【0025】
ディスクブレーキユニット21FR〜21RLにおいては、ホイールシリンダ23に液圧アクチュエータ40からブレーキフルードが供給されると、車輪と共に回転するブレーキディスク22に摩擦部材としてのブレーキパッドが押し付けられる。これにより、各車輪に制動力が付与される。なお、本実施形態においてはディスクブレーキユニット21FR〜21RLを用いているが、例えばドラムブレーキ等のホイールシリンダ23を含む他の制動力付与機構を用いてもよい。
【0026】
マスタシリンダユニット27は、本実施形態では液圧ブースタ付きマスタシリンダであり、液圧ブースタ31、マスタシリンダ32、レギュレータ33、およびリザーバ34を含む。液圧ブースタ31は、ブレーキペダル24に連結されており、ブレーキペダル24に加えられたペダル踏力を増幅してマスタシリンダ32に伝達する。動力液圧源30からレギュレータ33を介して液圧ブースタ31にブレーキフルードが供給されることにより、ペダル踏力は増幅される。そして、マスタシリンダ32は、ペダル踏力に対して所定の倍力比を有するマスタシリンダ圧を発生する。
【0027】
マスタシリンダ32とレギュレータ33との上部には、ブレーキフルードを貯留するリザーバ34が配置されている。マスタシリンダ32は、ブレーキペダル24の踏み込みが解除されているときにリザーバ34と連通する。一方、レギュレータ33は、リザーバ34と動力液圧源30のアキュムレータ35との双方と連通しており、リザーバ34を低圧源とすると共に、アキュムレータ35を高圧源とし、マスタシリンダ圧とほぼ等しい液圧を発生する。レギュレータ33における液圧を以下では適宜、「レギュレータ圧」という。なお、マスタシリンダ圧とレギュレータ圧とは厳密に同一圧にされる必要はなく、例えばレギュレータ圧のほうが若干高圧となるようにマスタシリンダユニット27を設計することも可能である。
【0028】
動力液圧源30は、アキュムレータ35およびポンプ36を含む。アキュムレータ35は、ポンプ36により昇圧されたブレーキフルードの圧力エネルギを窒素等の封入ガスの圧力エネルギ、例えば14〜22MPa程度に変換して蓄えるものである。ポンプ36は、駆動源としてモータ36aを有し、その吸込口がリザーバ34に接続される一方、その吐出口がアキュムレータ35に接続される。また、アキュムレータ35は、マスタシリンダユニット27に設けられたリリーフバルブ35aにも接続されている。アキュムレータ35におけるブレーキフルードの圧力が異常に高まって例えば25MPa程度になると、リリーフバルブ35aが開弁し、高圧のブレーキフルードはリザーバ34へと戻される。
【0029】
上述のように、ブレーキ制御装置20は、ホイールシリンダ23に対するブレーキフルードの供給源として、マスタシリンダ32、レギュレータ33およびアキュムレータ35を有している。そして、マスタシリンダ32にはマスタ配管37が、レギュレータ33にはレギュレータ配管38が、アキュムレータ35にはアキュムレータ配管39が接続されている。これらのマスタ配管37、レギュレータ配管38およびアキュムレータ配管39は、それぞれ液圧アクチュエータ40に接続される。
【0030】
液圧アクチュエータ40は、複数の流路が形成されるアクチュエータブロックと、複数の電磁制御弁を含む。アクチュエータブロックに形成された流路には、個別流路41、42、43および44と、主流路45とが含まれる。個別流路41〜44は、それぞれ主流路45から分岐されて、対応するディスクブレーキユニット21FR、21FL、21RR、21RLのホイールシリンダ23FR、23FL、23RR、23RLに接続されている。これにより、各ホイールシリンダ23は主流路45と連通可能となる。
【0031】
また、個別流路41、42、43および44の中途には、ABS保持弁51、52、53および54が設けられている。各ABS保持弁51〜54は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングをそれぞれ有しており、いずれもソレノイドが非通電状態にある場合に開とされる常開型電磁制御弁である。開状態とされた各ABS保持弁51〜54は、ブレーキフルードを双方向に流通させることができる。つまり、主流路45からホイールシリンダ23へとブレーキフルードを流すことができるとともに、逆にホイールシリンダ23から主流路45へもブレーキフルードを流すことができる。ソレノイドに通電されて各ABS保持弁51〜54が閉弁されると、個別流路41〜44におけるブレーキフルードの流通は遮断される。
【0032】
さらに、ホイールシリンダ23は、個別流路41〜44にそれぞれ接続された減圧用流路46、47、48および49を介してリザーバ流路55に接続されている。減圧用流路46、47、48および49の中途には、ABS減圧弁56、57、58および59が設けられている。各ABS減圧弁56〜59は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングをそれぞれ有しており、いずれもソレノイドが非通電状態にある場合に閉とされる常閉型電磁制御弁である。各ABS減圧弁56〜59が閉状態であるときには、減圧用流路46〜49におけるブレーキフルードの流通は遮断される。ソレノイドに通電されて各ABS減圧弁56〜59が開弁されると、減圧用流路46〜49におけるブレーキフルードの流通が許容され、ブレーキフルードがホイールシリンダ23から減圧用流路46〜49およびリザーバ流路55を介してリザーバ34へと還流する。なお、リザーバ流路55は、リザーバ配管77を介してマスタシリンダユニット27のリザーバ34に接続されている。
【0033】
主流路45は、中途に分離弁60を有する。この分離弁60により、主流路45は、個別流路41および42と接続される第1流路45aと、個別流路43および44と接続される第2流路45bとに区分けされている。第1流路45aは、個別流路41および42を介して前輪用のホイールシリンダ23FRおよび23FLに接続され、第2流路45bは、個別流路43および44を介して後輪用のホイールシリンダ23RRおよび23RLに接続される。
【0034】
分離弁60は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、ソレノイドが非通電状態にある場合に閉とされる常閉型電磁制御弁である。分離弁60が閉状態であるときには、主流路45におけるブレーキフルードの流通は遮断される。ソレノイドに通電されて分離弁60が開弁されると、第1流路45aと第2流路45bとの間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。
【0035】
また、液圧アクチュエータ40においては、主流路45に連通するマスタ流路61およびレギュレータ流路62が形成されている。より詳細には、マスタ流路61は、主流路45の第1流路45aに接続されており、レギュレータ流路62は、主流路45の第2流路45bに接続されている。また、マスタ流路61は、マスタシリンダ32と連通するマスタ配管37に接続される。レギュレータ流路62は、レギュレータ33と連通するレギュレータ配管38に接続される。
【0036】
マスタ流路61は、中途にマスタカット弁64を有する。マスタカット弁64は、マスタシリンダ32から各ホイールシリンダ23へのブレーキフルードの供給経路上に設けられている。マスタカット弁64は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、規定の制御電流の供給を受けてソレノイドが発生させる電磁力により閉弁状態が保証され、ソレノイドが非通電状態にある場合に開とされる常開型電磁制御弁である。開状態とされたマスタカット弁64は、マスタシリンダ32と主流路45の第1流路45aとの間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。ソレノイドに規定の制御電流が通電されてマスタカット弁64が閉弁されると、マスタ流路61におけるブレーキフルードの流通は遮断される。
【0037】
また、マスタ流路61には、マスタカット弁64よりも上流側において、シミュレータカット弁68を介してストロークシミュレータ69が接続されている。すなわち、シミュレータカット弁68は、マスタシリンダ32とストロークシミュレータ69とを接続する流路に設けられている。シミュレータカット弁68は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、規定の制御電流の供給を受けてソレノイドが発生させる電磁力により開弁状態が保証され、ソレノイドが非通電状態にある場合に閉とされる常閉型電磁制御弁である。シミュレータカット弁68が閉状態であるときには、マスタ流路61とストロークシミュレータ69との間のブレーキフルードの流通は遮断される。ソレノイドに通電されてシミュレータカット弁68が開弁されると、マスタシリンダ32とストロークシミュレータ69との間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。
【0038】
ストロークシミュレータ69は、複数のピストンやスプリングを含むものであり、シミュレータカット弁68の開放時に運転者によるブレーキペダル24の踏力に応じた反力を創出する。ストロークシミュレータ69としては、運転者によるブレーキ操作のフィーリングを向上させるために、多段のバネ特性を有するものが採用されると好ましい。
【0039】
レギュレータ流路62は、中途にレギュレータカット弁65を有する。レギュレータカット弁65は、レギュレータ33から各ホイールシリンダ23へのブレーキフルードの供給経路上に設けられている。レギュレータカット弁65も、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、規定の制御電流の供給を受けてソレノイドが発生させる電磁力により閉弁状態が保証され、ソレノイドが非通電状態にある場合に開とされる常開型電磁制御弁である。開状態とされたレギュレータカット弁65は、レギュレータ33と主流路45の第2流路45bとの間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。ソレノイドに通電されてレギュレータカット弁65が閉弁されると、レギュレータ流路62におけるブレーキフルードの流通は遮断される。
【0040】
液圧アクチュエータ40には、マスタ流路61およびレギュレータ流路62に加えて、アキュムレータ流路63も形成されている。アキュムレータ流路63の一端は、主流路45の第2流路45bに接続され、他端は、アキュムレータ35と連通するアキュムレータ配管39に接続される。
【0041】
アキュムレータ流路63は、中途に増圧リニア制御弁66を有する。また、アキュムレータ流路63および主流路45の第2流路45bは、減圧リニア制御弁67を介してリザーバ流路55に接続されている。増圧リニア制御弁66と減圧リニア制御弁67とは、それぞれリニアソレノイドおよびスプリングを有しており、いずれもソレノイドが非通電状態にある場合に閉とされる常閉型電磁制御弁である。増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67は、それぞれのソレノイドに供給される電流に比例して弁の開度が調整される。
【0042】
増圧リニア制御弁66は、各車輪に対応して複数設けられた各ホイールシリンダ23に対して共通の増圧用制御弁として設けられている。また、減圧リニア制御弁67も同様に、各ホイールシリンダ23に対して共通の減圧用制御弁として設けられている。つまり、本実施形態においては、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67は、動力液圧源30から送出される作動流体を各ホイールシリンダ23へ給排制御する1対の共通の制御弁として設けられている。このように増圧リニア制御弁66等を各ホイールシリンダ23に対して共通化すれば、ホイールシリンダ23ごとにリニア制御弁を設けるのと比べて、コストの観点からは好ましい。
【0043】
なお、ここで、増圧リニア制御弁66の出入口間の差圧は、アキュムレータ35におけるブレーキフルードの圧力と主流路45におけるブレーキフルードの圧力との差圧に対応し、減圧リニア制御弁67の出入口間の差圧は、主流路45におけるブレーキフルードの圧力とリザーバ34におけるブレーキフルードの圧力との差圧に対応する。また、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67のリニアソレノイドへの供給電力に応じた電磁駆動力をF1とし、スプリングの付勢力をF2とし、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67の出入口間の差圧に応じた差圧作用力をF3とすると、F1+F3=F2という関係が成立する。したがって、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67のリニアソレノイドへの供給電力を連続的に制御することにより、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67の出入口間の差圧を制御することができる。
【0044】
ブレーキ制御装置20において、動力液圧源30および液圧アクチュエータ40は、本実施形態における制御部としてのブレーキECU70により制御される。ブレーキECU70は、CPUを含むマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に各種プログラムを記憶するROM、データを一時的に記憶するRAM、入出力ポートおよび通信ポート等を備える。そして、ブレーキECU70は、上位のハイブリッドECU(図示せず)などと通信可能であり、ハイブリッドECUからの制御信号や、各種センサからの信号に基づいて動力液圧源30のポンプ36や、液圧アクチュエータ40を構成する電磁制御弁51〜54、56〜59、60、64〜68を制御する。
【0045】
また、ブレーキECU70には、レギュレータ圧センサ71、アキュムレータ圧センサ72、および制御圧センサ73が接続される。レギュレータ圧センサ71は、レギュレータカット弁65の上流側でレギュレータ流路62内のブレーキフルードの圧力、すなわちレギュレータ圧を検知し、検知した値を示す信号をブレーキECU70に与える。アキュムレータ圧センサ72は、増圧リニア制御弁66の上流側でアキュムレータ流路63内のブレーキフルードの圧力、すなわちアキュムレータ圧を検知し、検知した値を示す信号をブレーキECU70に与える。制御圧センサ73は、主流路45の第1流路45a内のブレーキフルードの圧力を検知し、検知した値を示す信号をブレーキECU70に与える。各圧力センサ71〜73の検出値は、所定時間おきにブレーキECU70に順次与えられ、ブレーキECU70の所定の記憶領域に所定量ずつ格納保持される。
【0046】
分離弁60が開状態とされて主流路45の第1流路45aと第2流路45bとが互いに連通している場合、制御圧センサ73の出力値は、増圧リニア制御弁66の低圧側の液圧を示すと共に減圧リニア制御弁67の高圧側の液圧を示すので、この出力値を増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67の制御に利用することができる。また、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67が閉鎖されていると共に、マスタカット弁64が開状態とされている場合、制御圧センサ73の出力値は、マスタシリンダ圧を示す。さらに、分離弁60が開放されて主流路45の第1流路45aと第2流路45bとが互いに連通しており、各ABS保持弁51〜54が開放される一方、各ABS減圧弁56〜59が閉鎖されている場合、制御圧センサの73の出力値は、各ホイールシリンダ23に作用する作動流体圧、すなわちホイールシリンダ圧を示す。
【0047】
さらに、ブレーキECU70に接続されるセンサには、ブレーキペダル24に設けられたストロークセンサ25、26も含まれる。本実施形態では、バックアップのためにストロークセンサが二つ設けられている。ストロークセンサ25、26は、ブレーキペダル24の操作量としてのペダルストロークを検知し、検知した値を示す信号をブレーキECU70に与える。ストロークセンサ25、26の出力値も、所定時間おきにブレーキECU70に順次与えられ、ブレーキECU70の所定の記憶領域に所定量ずつ格納保持される。
【0048】
上述のように構成されたブレーキ制御装置20は、ブレーキ回生協調制御を実行することができる。ブレーキ制御装置20は制動要求を受けて制動を開始する。制動要求は、例えば運転者がブレーキペダル24を操作した場合など、車両に制動力を付与すべきときに生起される。制動要求を受けてブレーキECU70は要求制動力を演算し、要求制動力から回生による制動力を減じることによりブレーキ制御装置20により発生させるべき制動力である要求液圧制動力を算出する。ここで、回生による制動力は、ハイブリッドECUからブレーキ制御装置20に供給される。そして、ブレーキECU70は、算出した要求液圧制動力に基づいて各ホイールシリンダ23FR〜23RLの目標液圧を算出する。ブレーキECU70は、ホイールシリンダ圧が目標液圧となるように、フィードバック制御則により増圧リニア制御弁66や減圧リニア制御弁67に供給する制御電流の値を決定する。
【0049】
その結果、ブレーキ制御装置20においては、ブレーキフルードが動力液圧源30から増圧リニア制御弁66を介して各ホイールシリンダ23に供給され、車輪に制動力が付与される。また、各ホイールシリンダ23からブレーキフルードが減圧リニア制御弁67を介して必要に応じて排出され、車輪に付与される制動力が調整される。本実施形態においては、動力液圧源30、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67等を含んでホイールシリンダ圧制御系統が構成されている。ホイールシリンダ圧制御系統によりいわゆるブレーキバイワイヤ方式の制動力制御が行われる。ホイールシリンダ圧制御系統は、マスタシリンダユニット27からホイールシリンダ23へのブレーキフルードの供給経路に並列に設けられている。
【0050】
このとき、ブレーキECU70は、レギュレータカット弁65を閉状態とし、レギュレータ33から送出されるブレーキフルードがホイールシリンダ23へ供給されないようにする。さらにブレーキECU70は、マスタカット弁64を閉状態とするとともにシミュレータカット弁68を開状態とする。これは、運転者によるブレーキペダル24の操作に伴ってマスタシリンダ32から送出されるブレーキフルードがホイールシリンダ23ではなくストロークシミュレータ69へと供給されるようにするためである。ブレーキ回生協調制御中は、レギュレータカット弁65およびマスタカット弁64の上下流間には、回生制動力の大きさに対応する差圧が作用する。
【0051】
なお、本実施形態に係るブレーキ制御装置20は、回生制動力を利用せずに液圧制動力だけで要求制動力をまかなう場合にも、当然ホイールシリンダ圧制御系統により制動力を制御することができる。ブレーキ回生協調制御を実行しているか否かにかかわらず、ホイールシリンダ圧制御系統により制動力を制御する制御モードを以下では適宜「リニア制御モード」と称する。あるいは、ブレーキバイワイヤによる制御と呼ぶ場合もある。
【0052】
リニア制御モードにおいて要求制動力を液圧制動力のみにより発生させる場合には、ブレーキECU70はレギュレータ圧あるいはマスタシリンダ圧をホイールシリンダ圧の目標圧として制御する。よって、この場合は必ずしもホイールシリンダ圧制御系統によってホイールシリンダ23にブレーキフルードを供給しなくてもよい。運転者によるブレーキペダルの操作に応じて加圧されたマスタシリンダ圧あるいはレギュレータ圧をホイールシリンダにそのまま導入すれば自然に要求制動力を発生させることができるからである。
【0053】
このため、ブレーキ制御装置20は、例えば停車中のように回生制動力を使用しないときに、レギュレータ33から各ホイールシリンダ23にブレーキフルードを供給するようにしてもよい。レギュレータ33から各ホイールシリンダ23にブレーキフルードを供給する制御モードを以下ではレギュレータモード(REGモード)と称する。つまりブレーキECU70は、停車中においてリニア制御モードからレギュレータモードに切り替えて制動力を発生させるようにしてもよい。車両の停止とともに制御モードを切り替えるようにすれば比較的簡易な制御で制御モードの切り替えを実行することができるという点で好ましい。あるいは、より実際的には、ブレーキECU70は制動により車速が充分に低下したために回生制動を中止するときにリニア制御モードからレギュレータモードに制御モードを切り替えてもよい。
【0054】
レギュレータモードにおいては、ブレーキECU70は、レギュレータカット弁65および分離弁60を開弁し、マスタカット弁64を閉弁する。増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67は、制御が停止され閉弁される。シミュレータカット弁68は開弁される。その結果、レギュレータ33から各ホイールシリンダ23にブレーキフルードが供給されることとなり、レギュレータ圧によって各車輪に制動力が付与される。レギュレータ33には動力液圧源30が高圧側として接続されているので、動力液圧源30における蓄圧を活用して制動力を発生させることができるという点で好ましい。
【0055】
このようにレギュレータモードにおいては、ブレーキECU70は、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67への制御電流の供給を停止して閉弁し、両リニア制御弁を休止させている。このため、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67の動作頻度を低減させることが可能となり、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67を長期間にわたって使用することができるようになる。すなわち、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67の耐久性を向上することができる。
【0056】
リニア制御モードでの制御中に、例えばいずれの箇所からの作動液の漏れ等の異常の発生によりホイールシリンダ圧が目標液圧から乖離してしまう場合がある。ブレーキECU70は、例えば制御圧センサ73の測定値に基づいてホイールシリンダ圧の応答異常の有無を周期的に判定している。ブレーキECU70は、例えばホイールシリンダ圧測定値の目標液圧からの乖離量が基準を超える場合にホイールシリンダ圧の制御応答に異常があると判定する。ホイールシリンダ圧の制御応答に異常があると判定された場合には、ブレーキECU70は、リニア制御モードを中止してマニュアルブレーキモードに制御モードを切り替える。また同様にレギュレータモードにおいてもブレーキECU70は異常が検出された場合にマニュアルブレーキモードに制御モードを切り替える。マニュアルブレーキモードにおいては、運転者のブレーキペダル24への入力が液圧に変換され機械的にホイールシリンダ23に伝達されて車輪に制動力が付与される。マニュアルブレーキモードは、フェイルセーフの観点からリニア制御モードのバックアップ用の制御モードとしての役割を有する。
【0057】
ブレーキECU70は、液圧源および液圧源からホイールシリンダ23への供給経路を異ならせることによりマニュアルブレーキモードとして複数のモードのうちの一つを選択することができる。本実施形態では、一例としてハイドロブースタモードへの移行を説明する。ハイドロブースタモードにおいては、ブレーキECU70は、全ての電磁制御弁への制御電流の供給を停止する。よって、常開型のマスタカット弁64およびレギュレータカット弁65は開弁され、常閉型の分離弁60およびシミュレータカット弁68は閉弁される。増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67は、制御が停止され閉弁される。
【0058】
その結果、ブレーキフルードの供給経路はマスタシリンダ側とレギュレータ側との2系統に分離される。マスタシリンダ圧が前輪用のホイールシリンダ23FRおよび23FLへと伝達され、レギュレータ圧が後輪用のホイールシリンダ23RRおよび23RLへと伝達される。マスタシリンダ32からの作動流体の送出先は、ストロークシミュレータ69から前輪用のホイールシリンダ23FRおよび23FLに切り替えられる。また、液圧ブースタ31は機械的にペダル踏力を増幅する機構であるため、ハイドロブースタモードに移行して各電磁制御弁への制御電流が停止されても継続して機能する。ハイドロブースタモードによれば、制御系の異常により各電磁制御弁への通電がない場合であっても液圧ブースタを利用して制動力を発生させることができるという点でフェイルセーフ性に優れている。
【0059】
なお便宜上、以下では適宜、ハイドロブースタモードでのマスタシリンダ側の系統をマスタ系統と称し、レギュレータ側の系統をレギュレータ系統と称する。本実施形態ではハイドロブースタモードにおいてマスタ系統により前輪側に、またレギュレータ系統により後輪側に作動液が供給されるので、マスタ系統およびレギュレータ系統をそれぞれフロント系統およびリヤ系統と以下では称する場合もある。なお、ハイドロブースタモードにおいてマスタ系統が前輪側に、またレギュレータ系統が後輪側に作動液を供給することは必須ではない。マスタ系統が例えば右前輪および左後輪へ作動液を供給し、レギュレータ系統が例えば左前輪および右後輪へ作動液を供給するというように、左右輪がそれぞれ別々の系統に接続されるいわゆるX配管型のブレーキ制御装置であってもよい。
【0060】
ところで、上述したように、レギュレータモードでの制御時には、増圧リニア制御弁66と減圧リニア制御弁67とを閉弁し、レギュレータ33からレギュレータカット弁65を経由し四輪のホイールシリンダに対してブレーキフルードを供給して制動力を発生させている。この場合、減圧リニア制御弁67が故障して液漏れが生じると、四輪のホイールシリンダ全てからブレーキフルードが連続的に流出してしまい、所望の制動力を発生できなくなるおそれがある。
【0061】
そこで、本実施形態では、レギュレータモードが選択されているときに、減圧リニア制御弁からの液漏れとそれ以外の部品の故障とを切り分け可能な液漏れ検出技術を提供する。
【0062】
図2は、実施の形態1に係る液漏れ検出プロセスのフローチャートである。図2に示す処理は、レギュレータモードでの制御時にブレーキECU70により一定周期で実行される。
【0063】
まず、ブレーキECU70は、第1ストロークセンサ25で検出されるストロークSTK1と、レギュレータ圧センサ71の検出値Pregとを取得し、ストロークSTK1から推定されるブレーキ圧とPregとを比較する(S12)。レギュレータモードの実施時には、運転者によるブレーキペダルの操作に応じて加圧されたレギュレータ圧がホイールシリンダに供給されるので、ストロークSTK1から推定されるブレーキ圧とレギュレータ圧センサの検出値Pregとは一致するはずである。そこで、ブレーキECU70はこれらが一致するか否かを判定する(S14)。一致する場合(S14のY)、主流路45に連通する部分からのブレーキフルード漏れはなく、正常であると判定できるので(S20)、このフローチャートを終了する。
【0064】
STK1から推定されるブレーキ圧とPregとが一致しない場合(S14のN)、ブレーキECU70は、ストロークセンサの故障がないか否かをまず判定する。ブレーキECU70は、第1ストロークセンサ25で検出されるストロークSTK1と、第2ストロークセンサで検出されるストロークSTK2とを取得し、それらが一致するか否かを判定する(S16)。両検出値が一致しない場合(S16のN)、ブレーキECU70は第1ストロークセンサ25または第2ストロークセンサ26のいずれが故障していると判定し(S18)、このフローチャートを終了する。
【0065】
S16で、両検出値が一致する場合(S16のY)、ブレーキECU70は、レギュレータ圧センサ71の検出値Pregと、制御圧センサ73の検出値Pfrとが一致するか否かを判定する(S22)。レギュレータモードにおいては、レギュレータカット弁65および分離弁60は開弁しておりレギュレータ流路62と主流路45とが連通しているので、各種電磁制御弁が正常であろうと漏れが生じていようと、レギュレータ圧センサ71の検出値Pregと制御圧センサ73の検出値Pfrは一致するはずである。したがって、両検出値が一致しない場合(S22のN)、ブレーキECU70はレギュレータ圧センサ71か制御圧センサ73のいずれが故障していると判定し(S26)、このフローチャートを終了する。S22の判定は、各種電磁制御弁の故障を判定するための前提条件として、油圧センサが正常であることを確認するためのステップである。
【0066】
レギュレータ圧センサ71と制御圧センサ73の検出値が一致する場合(S22のY)、ブレーキECU70は、主流路45に連通する制御弁のうち、レギュレータモード実施時に閉弁している制御弁から液漏れが生じていると判定する(S24)。具体的には、ブレーキECU70は、減圧リニア制御弁67またはABS減圧弁56〜59のいずれで液漏れが生じていると判定する。以下、これらのうちいずれの制御弁が液漏れしているかの切り分けを実行する。
【0067】
ここで、ブレーキECU70は、増圧リニア制御弁66およびマスタカット弁64からの液漏れについては考慮しなくてよい。なぜなら、増圧リニア制御弁66が液漏れしている場合、主流路45と動力液圧源30とが連通する。このとき、ホイールシリンダ23にはより高圧のブレーキフルードが供給されることになり、各車輪にかかる制動力が増加する状態となるからである。同様に、マスタカット弁64が液漏れしている場合も、主流路45とマスタシリンダ32とが連通するため、各車輪にかかる制動力が増加する状態となる。
【0068】
これに対し、減圧リニア制御弁67またはABS減圧弁56〜59から液漏れする場合は、ホイールシリンダ23からブレーキフルードがリザーバ流路55を介してリザーバ34に環流してしまい、制動力が減少する状態になる。したがって、これら制御弁からの液漏れが生じているときには、できるだけ早期に故障を検出する必要がある。
【0069】
図2に戻り、ブレーキECU70は、まずABS減圧弁56〜59の液漏れをチェックする。そのため、ブレーキECU70は、各車輪のホイールシリンダ23FR、23FL、23RR、23RLに連通する経路にあるABS保持弁51、52、53、54を一つずつ順に閉弁する(S28)。そして、ABS保持弁のいずれを閉弁したときに、レギュレータ圧センサ71または制御圧センサ73で検出されるブレーキ圧の低下が停止したか否かを確認する(S30)。一例として、ストロークセンサ25のストロークSTK1から推定されるブレーキ圧と、レギュレータ圧センサ71の検出値Pregとが一致するようになるかを経過観察することで、ブレーキ圧低下の停止を確認することが可能である。
【0070】
ブレーキ圧の低下が停止した場合(S30のY)、ブレーキECU70は、そのときに閉弁したABS保持弁と同じ流路に配設されているABS減圧弁から液漏れがあると判定する(S34)。いずれのABS保持弁を閉弁してもブレーキ圧の低下が続く場合は(S30のN)、減圧リニア制御弁67から液漏れがあると判定する(S32)。
【0071】
以上説明したように、実施の形態1によれば、レギュレータ圧センサの検出値と制御圧センサの検出値との比較結果に基づいて、レギュレータモード実施時に制御弁からの液漏れがあるか否かを判定することができる。また、液漏れがあると判定された場合に、四輪のABS保持弁を順に開閉することで、減圧リニア制御弁とABS減圧弁のいずれで液漏れが生じているかを判定することができる。したがって、減圧制御弁からの液漏れという制動力の低下につながりうる故障を速やかに発見し、運転者への警告や車両の停止などのその後の対応につなげることができる。
【0072】
本実施形態では、レギュレータモード実施時の液漏れを検出できるのみならず、いずれの制御弁が原因であるかを切り分けることができるため、障害時の原因究明とその後の補修を迅速に実行することが可能になる。
【0073】
さらに、レギュレータ圧センサまたは制御圧センサの異常も同一フローのなかで検出することができる。
【0074】
実施の形態2.
実施の形態1では、ストロークセンサで検出されるブレーキペダルのストロークからブレーキ圧を推定し、レギュレータ圧センサの検出値との比較に基づいて、減圧リニア制御弁またはABS減圧弁からの液漏れを検出することを述べた。実施の形態2では、ブレーキ圧の推定をすることなく、減圧リニア制御弁またはABS減圧弁からの液漏れを検出する技術について述べる。
【0075】
図3は、実施の形態2に係る液漏れ検出を説明するためのグラフである。図3において、横軸は経過時間を表し、縦軸はペダルストロークまたはブレーキ圧を表す。線101がペダルストロークを、線102〜104がレギュレータ圧センサ71または制御圧センサ73で検出されるブレーキ圧であるとする。
【0076】
レギュレータモードを実施している間、運転者が時刻tでブレーキペダルを踏み始め、時刻t以降はペダル位置を保持する場合を想定する(線101を参照)。この状況において、ペダル位置が保持されレギュレータ圧が一定である以上、レギュレータ圧センサ71の検出値Pregと制御圧センサ73の検出値Pfrは等しく、かつ一定である。ここで、時刻tにおいて一旦レギュレータカット弁65を閉弁し、時刻tで再び開弁したとする。レギュレータモードにおいてはマスタカット弁64、増圧リニア制御弁66、減圧リニア制御弁67およびABS減圧弁56〜59は全て閉弁されているので、レギュレータカット弁65を閉じると主流路45およびこれに連通する流路は閉じた環境にある。したがって、各種制御弁が正常であれば、ペダル保持中にレギュレータカット弁を開閉してもレギュレータ圧センサ71の検出値Pregと制御圧センサ73の検出値Pfrは変化せず、図3中の線102のようになる。
【0077】
これに対し、減圧リニア制御弁67またはABS減圧弁56〜59からから液漏れが生じている場合は、以下のようになる。時刻tでレギュレータカット弁65を閉弁すると、液漏れ部分と連通している制御圧センサ73の検出値Pfrが線103で示すように低下する一方、液漏れ部分と隔離されているレギュレータ圧センサ71の検出値Pregは一定になる。したがって、レギュレータカット弁65の両側で液圧差が生じる。時刻tにおいてレギュレータカット弁65を開弁すると、液漏れ部分と連通するようになったレギュレータ圧センサ71の検出値Pregは線104で示すように低下する一方で、制御圧センサ73の検出値Pfrは、レギュレータカット弁65の液圧差のために流入したブレーキフルードによって増加し、最終的に両センサで検出されるブレーキ圧は等しくなる。
【0078】
このように、レギュレータモードの実施時にブレーキペダルを保持した状態でレギュレータカット弁65を開閉することで、減圧リニア制御弁またはABS減圧弁からの液漏れの有無を判定することができる。
【0079】
図4は、実施の形態2に係る液漏れ検出プロセスのフローチャートである。図2に示す処理は、レギュレータモードでの制御時にブレーキECU70により一定周期で実行される。
まず、ブレーキECU70は、運転者によってブレーキペダル24が一定位置に保持されているか否かを判定する(S42)。これはストロークセンサの検出値から判定することができ、ある程度の変動は許容する。ペダルが保持されていなければ(S42のN)、このフローチャートを終了する。ペダルが保持されていれば(S42のY)、ブレーキECU70は、ポンプ36を駆動するモータ36aを回転させないように制御する(S44)。この処理は、レギュレータ圧が変化しないようにするためである。続いて、ブレーキECU70は、レギュレータカット弁65を一旦閉弁し、予め定めた時間の経過後に開弁する(S46)。そして、レギュレータカット弁65の開閉の前後で、レギュレータ圧センサ71の検出値Pregと制御圧センサ73の検出値Pfrとが一定であったか否かを判定する(S48)。
【0080】
両検出値が一定であれば(S48のY)、ブレーキECU70は、制御弁からの漏れはなく正常であると判定し(S52)、このフローチャートを終了する。両検出値が一定でなければ(S48のN)、ブレーキECU70は、減圧リニア制御弁67またはABS減圧弁56〜59のいずれで液漏れが生じていると判定する(S50)。
【0081】
続いて、ブレーキECU70は、まずABS減圧弁56〜59の液漏れをチェックする。そのため、ブレーキECU70は、各車輪のホイールシリンダ23FR、23FL、23RR、23RLに連通する経路にあるABS保持弁51、52、53、54を一つずつ順に閉弁する(S54)。そして、ABS保持弁のいずれを閉弁したときに、レギュレータ圧センサ71または制御圧センサ73で検出されるブレーキ圧の低下が停止したか否かを確認する(S56)。
【0082】
ブレーキ圧の低下が停止した場合(S56のY)、そのときに閉弁したABS保持弁と同じ流路に配設されているABS減圧弁から液漏れがあると判定する(S60)。ABS保持弁を閉弁してもブレーキ圧の低下が続く場合は(S56のN)、減圧リニア制御弁67から液漏れがあると判定する(S58)。
【0083】
実施の形態3.
実施の形態1および2では、レギュレータモード実施時の減圧リニア制御弁からの液漏れの有無を判定することを述べた。実施の形態3では、ハイドロブースタモードの実施時に減圧リニア制御弁からの液漏れを検出する技術について述べる。
【0084】
上述したように、ハイドロブースタモードにおいては、常開型のマスタカット弁64とレギュレータカット弁65が開弁され、常閉型の分離弁60とシミュレータカット弁68が閉弁される。また、増圧リニア制御弁66と減圧リニア制御弁67も閉弁される。
【0085】
その結果、ブレーキフルードの供給経路はマスタシリンダ側とレギュレータ側との2系統に分離される。マスタシリンダ圧が前輪用のホイールシリンダ23FRおよび23FLへと伝達され、レギュレータ圧が後輪用のホイールシリンダ23RRおよび23RLへと伝達される。このようにして、ハイドロブースタモードでは、制御系の異常により各電磁制御弁への通電がない場合であっても、液圧ブースタを利用して制動力を発生させる。したがって、ハイドロブースタモードにおいては、減圧リニア制御弁67が故障して液漏れが生じると、後輪のホイールシリンダからブレーキフルードが連続的に流出してしまい、所望の制動力を発生できなくなるおそれがある。
【0086】
そこで、実施の形態3では、ハイドロブースタモードが選択されているときに、減圧リニア制御弁からの液漏れとそれ以外の部品の故障とを切り分け可能な液漏れ検出技術を提供する。
【0087】
図5は、実施の形態3に係る液漏れ検出プロセスのフローチャートである。図5に示す処理は、ハイドロブースタモードでの制御時にブレーキECU70により一定周期で実行される。
【0088】
まず、ブレーキECU70は、第1ストロークセンサ25で検出されるストロークSTK1と、レギュレータ圧センサ71の検出値Pregとを取得し、ストロークSTK1から推定されるブレーキ圧とPregとを比較する(S72)。ハイドロブースタモードの実施時には、運転者によるブレーキペダルの操作に応じて加圧されたレギュレータ圧が後輪のホイールシリンダに供給されるので、ストロークSTK1から推定されるブレーキ圧とレギュレータ圧センサの検出値Pregとは一致するはずである。そこで、ブレーキECU70はこれらが一致するか否かを判定する(S74)。一致する場合(S74のY)、第2流路45bに連通する部分からのブレーキフルード漏れはなく、正常であると判定できるので(S80)、このフローチャートを終了する。
【0089】
STK1から推定されるブレーキ圧とPregとが一致しない場合(S74のN)、ブレーキECU70は、ストロークセンサの故障がないか否かをまず判定する。ブレーキECU70は、第1ストロークセンサ25で検出されるストロークSTK1と、第2ストロークセンサで検出されるストロークSTK2とを取得し、それらが一致するか否かを判定する(S76)。両検出値が一致しない場合(S76のN)、ブレーキECU70は第1ストロークセンサ25または第2ストロークセンサ26のいずれが故障していると判定し(S78)、このフローチャートを終了する。
【0090】
S76で、両検出値が一致する場合(S76のY)、ブレーキECU70は、レギュレータ圧センサ71の検出値Pregと、制御圧センサ73の検出値PfrとがPreg=k・Pfrの関係にあるか否かを判定する(S82)。ハイドロブースタモードにおいては、分離弁60が閉弁しておりレギュレータ流路62とマスタ流路61とは連通していないので、レギュレータ圧センサ71の検出値Pregと制御圧センサ73の検出値Pfrは、マスタシリンダ32とレギュレータ33のサーボ比に相当する関係になるはずである。「k」は、このサーボ比に対応する係数である。上記関係を満たさない場合(S82のN)、ブレーキECU70はレギュレータ圧センサ71か制御圧センサ73のいずれかが故障していると判定し(S86)、このフローチャートを終了する。S82の判定は、各種電磁制御弁の故障を判定するための前提条件として、油圧センサが正常であることを確認するためのステップである。
【0091】
レギュレータ圧センサ71と制御圧センサ73の検出値が上記関係を満たす場合(S82のY)、ブレーキECU70は、第2流路45bに連通する制御弁のうち、ハイドロブースタモード実施時に閉弁している制御弁から液漏れが生じていると判定する(S84)。具体的には、ブレーキECU70は、減圧リニア制御弁67または後輪のABS減圧弁58、59のいずれで液漏れが生じていると判定する。以下、これらのうちいずれの制御弁が液漏れしているかの切り分けを実行する。
【0092】
ブレーキECU70は、まずABS減圧弁58、59の液漏れをチェックする。そのため、ブレーキECU70は、各車輪のホイールシリンダ23RR、23RLに連通する経路にあるABS保持弁53、54を一つずつ閉弁する(S88)。そして、ABS保持弁のいずれを閉弁したときに、レギュレータ圧センサ71で検出されるブレーキ圧の低下が停止したか否かを確認する(S90)。一例として、ストロークセンサ25のストロークSTK1から推定されるブレーキ圧と、レギュレータ圧センサ71の検出値Pregとが一致するようになるかを経過観察することで、ブレーキ圧低下の停止を確認することが可能である。
【0093】
ブレーキ圧の低下が停止した場合(S90のY)、ブレーキECU70は、そのときに閉弁したABS保持弁と同じ流路に配設されているABS減圧弁から液漏れがあると判定する(S94)。いずれのABS保持弁を閉弁してもブレーキ圧の低下が続く場合は(S90のN)、減圧リニア制御弁67から液漏れがあると判定する(S92)。
【0094】
以上のように、実施の形態3によれば、レギュレータ圧センサの検出値と制御圧センサの検出値との比較結果に基づいて、ハイドロブースタモード実施時に制御弁からの液漏れがあるか否かを判定することができる。また、液漏れがあると判定された場合に、第2流路45b側のABS保持弁を順に開閉することで、減圧リニア制御弁とABS減圧弁のいずれで液漏れが生じているかを判定することができる。
【0095】
イグニッションオンの直後であれば、S82の処理の代わりに、ブレーキECU70は分離弁60を開弁して、所定時間の経過後にレギュレータ圧センサ71の検出値Pregと制御圧センサ73の検出値Pfrとが一致するか否かを判定してもよい。一致しなければ、ブレーキECU70はレギュレータ圧センサ71か制御圧センサ73のいずれかが故障していると判定する。一致すれば、ブレーキECU70は、第2流路45bに連通する制御弁のうち、ハイドロブースタモード実施時に閉弁している制御弁から液漏れが生じていると判定する。上記制御がイグニッションオン直後に限られるのは、液漏れが生じている状態で分離弁60を開弁してしまうと四輪のブレーキ圧が全て低下することになるので、停車中に実施すべきだからである。
【0096】
以上説明したように、本発明に係るブレーキ制御装置では、コスト低減の観点から全輪共通の減圧リニア制御弁を設けられている。このような構成を採用すると、減圧リニア制御弁の故障時に全てのホイールシリンダからブレーキフルードが流出して制動力が低下するおそれがあるが、本発明によれば、減圧リニア制御弁からの液漏れを確実に検出してその後の対策につなげることが可能となる。
【0097】
以上、本発明をいくつかの実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態はあくまで例示であり、実施の形態どうしの任意の組合せ、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスの任意の組合せなどの変形例もまた、本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0098】
本発明は、上述の各実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能である。各図に示す構成は、一例を説明するためのもので、同様な機能を達成できる構成であれば、適宜変更可能である。
【0099】
実施の形態では、ブレーキペダルの操作量としてペダルストロークを検知するストロークセンサを用いることを述べたが、別のブレーキ操作量検出手段を用いてもよい。例えば、ブレーキペダルの操作量として操作力を検出するペダル踏力センサを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の一実施形態に係るブレーキ制御装置を示す系統図である。
【図2】実施の形態1に係る液漏れ検出プロセスのフローチャートである。
【図3】実施の形態2に係る液漏れ検出を説明するためのグラフである。
【図4】実施の形態2に係る液漏れ検出プロセスのフローチャートである。
【図5】実施の形態3に係る液漏れ検出プロセスのフローチャートである。
【符号の説明】
【0101】
20 ブレーキ制御装置、 23 ホイールシリンダ、 27 マスタシリンダユニット、 31 液圧ブースタ、 32 マスタシリンダ、 33 レギュレータ、 34 リザーバ、 51〜54 ABS保持弁、 56〜59 ABS減圧弁、 60 分離弁、 64 マスタカット弁、 65 レギュレータカット弁、 66 増圧リニア制御弁、 67 減圧リニア制御弁、 70 ブレーキECU、 71 レギュレータ圧センサ、 72 アキュムレータ圧センサ、 73 制御圧センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力の供給により作動液を蓄圧する動力液圧源を高圧源としてマスタシリンダの作動液圧に合わせて作動液を調圧するレギュレータと、
前記レギュレータから複数のホイールシリンダに作動液を供給するための作動液供給経路と、
前記作動液供給経路とリザーバとを連通する経路に配設される減圧弁と、
前記減圧弁を閉弁して前記レギュレータから前記複数のホイールシリンダに液圧を供給している間に、前記作動液供給経路に連通する部位の作動液圧の検出値に基づいて前記減圧弁からの液漏れを検出する制御部と、
を備えることを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項2】
作動液圧に応じて複数の車輪のそれぞれに制動力を付与する複数のホイールシリンダと、
動力の供給により作動液を蓄圧する動力液圧源を高圧源としてマスタシリンダの作動液圧に合わせて作動液を調圧するレギュレータと、
前記複数のホイールシリンダから排出される作動液を回収するリザーバと、
前記レギュレータと前記複数のホイールシリンダとを接続し作動液を供給するための作動液供給経路と、
前記作動液供給経路に配設されるレギュレータカット弁と、
前記作動液供給経路と前記リザーバとを連通する経路に配設される減圧弁と、
前記レギュレータカット弁よりレギュレータ側で前記作動液供給経路の作動液圧を検出するレギュレータ圧センサと、
前記レギュレータカット弁よりホイールシリンダ側で前記作動液供給経路の作動液圧を検出するホイールシリンダ圧センサと、
前記レギュレータから前記複数のホイールシリンダに作動液を供給している間に、前記レギュレータ圧センサの検出値と前記ホイールシリンダ圧センサの検出値とを比較した結果に基づいて前記減圧弁からの液漏れを検出する制御部と、
を備えることを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項3】
ブレーキ操作入力に基づいて推定される作動液圧と前記レギュレータ圧センサで検出される作動液圧とが一致しないとき、前記制御部は、前記レギュレータ圧センサの検出値と前記ホイールシリンダ圧センサの検出値とを比較し、これら検出値が一致する場合、前記減圧弁から液漏れが生じていると判定することを特徴とする請求項2に記載のブレーキ制御装置。
【請求項4】
ブレーキ操作入力に基づいてブレーキペダルが一定位置で保持されていると判定されるとき、前記制御部は、前記レギュレータカット弁を一時的に閉弁した後に開弁するように制御し、前記レギュレータ圧センサの検出値と前記ホイールシリンダ圧センサの検出値とを取得し、これら検出値が閉弁の前後で同一でない場合、前記減圧弁から液漏れが生じていると判定することを特徴とする請求項2に記載のブレーキ制御装置。
【請求項5】
前記減圧弁は、全てのホイールシリンダの作動液圧をブレーキ操作入力に応じて一斉に減圧制御するための共通減圧弁と、各車輪のホイールシリンダと前記リザーバとの連通を制御する個別減圧弁とを含み、
前記制御部は、液漏れがあると判定した場合、前記共通減圧弁または前記個別減圧弁のいずれから液漏れが生じているかを特定することを特徴とする請求項3または4に記載のブレーキ制御装置。
【請求項6】
前記作動液供給経路から各車輪のホイールシリンダに連通する個別流路にそれぞれ配設され各ホイールシリンダへの作動液の供給を制御する保持弁をさらに備え、
前記制御部は、液漏れがあると判定した場合、前記保持弁を一つずつ閉弁して液漏れが停止したか否かを確認し、液漏れを停止させた保持弁のある個別流路と連通する個別減圧弁から液漏れが生じていると判定することを特徴とする請求項5に記載のブレーキ制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、いずれの保持弁を閉弁しても液漏れが停止しない場合、前記共通減圧弁から液漏れが生じていると判定することを特徴とする請求項6に記載のブレーキ制御装置。
【請求項8】
動力の供給により作動液を蓄圧する動力液圧源を高圧源としてマスタシリンダの作動液圧に合わせて作動液を調圧するレギュレータと、
前記レギュレータから複数のホイールシリンダに作動液を供給するための作動液供給経路と、
前記作動液供給経路とリザーバとを連通する経路に配設される減圧弁と、を備えるブレーキ制御装置を制御する方法であって、
前記減圧弁を閉弁して前記レギュレータから前記複数のホイールシリンダに液圧を供給している間に、前記作動液供給経路に連通する部位の作動液圧の検出値に基づいて前記減圧弁からの液漏れを検出することを特徴とするブレーキ制御方法。
【請求項9】
作動液圧に応じて複数の車輪のそれぞれに制動力を付与する複数のホイールシリンダと、
動力の供給により作動液を蓄圧する動力液圧源を高圧源としてマスタシリンダの作動液圧に合わせて作動液を調圧するレギュレータと、
前記複数のホイールシリンダから排出される作動液を回収するリザーバと、
前記レギュレータと前記複数のホイールシリンダとを接続し作動液を供給するための作動液供給経路と、
前記作動液供給経路に配設されるレギュレータカット弁と、
前記作動液供給経路と前記リザーバとを連通する経路に配設される減圧弁と、
を備えるブレーキ制御装置を制御する方法であって、
前記レギュレータから前記複数のホイールシリンダに作動液を供給し、
前記レギュレータカット弁よりレギュレータ側で前記作動液供給経路の作動液圧を検出し、
前記レギュレータカット弁よりホイールシリンダ側で前記作動液供給経路の作動液圧を検出し、
前記レギュレータ側の作動液圧と前記ホイールシリンダ側の作動液圧とを比較し、
比較の結果に基づいて前記減圧弁からの液漏れを検出することを特徴とするブレーキ制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−222169(P2008−222169A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−67324(P2007−67324)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】