説明

ブレーキ制御装置

【課題】 運転者に違和感を与えることなくブレーキペダル操作量に応じた制動力を得ることが可能なブレーキ制御装置を提供すること。
【解決手段】 本発明では、ブースタの倍力が無効とされる第1のストローク領域を備えた液圧制御装置に、第1のストローク領域ではドライバ要求制動力を実現するようにホイルシリンダ圧の液圧サーボを行い、第2のストローク領域では、ストローク量に対応して設定された目標ホイルシリンダ圧と目標マスタシリンダ圧との関係を維持するようにポンプや制御弁を制御することとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ液圧を制御可能なブレーキ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の技術では、運転者のブレーキペダル操作量が基準値以下のときには、ブレーキブースタを作動させず、油圧サーボ装置によりホイルシリンダ圧力を制御してストロークに応じた制動力を発生させ、ブレーキペダル操作量が基準値よりも大きいときは、油圧サーボ装置の作動を停止し、ブレーキブースタによりストロークに応じた制動力を発生する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−94150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、ブレーキペダル操作量が基準値を超えた直後にブレーキブースタが作動するため、基準値前後においてブレーキペダルの反力が急変し、運転者に違和感を与えるおそれがあった。
本発明の目的は、運転者に違和感を与えることなくブレーキペダル操作量に応じた制動力を得ることが可能なブレーキ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明では、ブースタの倍力が無効とされる第1のストローク領域を備えた液圧制御装置に、第1のストローク領域ではドライバ要求制動力を実現するようにホイルシリンダ圧の液圧サーボを行い、第2のストローク領域では、ストローク量に対応して設定された目標ホイルシリンダ圧と目標マスタシリンダ圧との関係を維持するようにポンプや制御弁を制御することとした。
【発明の効果】
【0006】
よって、ストローク量が基準ストローク量に到達した後、ホイルシリンダ圧とマスタシリンダ圧とがストロークに応じて制御されるため、第1のストローク領域から第2のストローク領域に切り換わる際に、ブレーキペダルの反力が急変することがなく、安定したブレーキペダル操作を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例1のブレーキ制御装置を搭載した車両の全体構成を表すシステム図である。
【図2】実施例1の摩擦制動力制御システムの油圧回路図である。
【図3】実施例1のブレーキペダル反力特性制御処理を表すフローチャートである。
【図4】実施例1のドライバ要求ホイルシリンダ圧とストローク量との関係を表すマップである。
【図5】実施例1のストローク量に対するホイルシリンダ圧の関係を表す特性図である。
【図6】実施例1のブレーキペダル反力特性制御処理を表すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施例1]
〔車両のシステム構成〕
図1は、実施例1のブレーキ制御装置を搭載した車両の全体構成を表すシステム図である。この車両は後輪を駆動する動力源としてエンジンENGとモータMとを併用する後輪駆動方式の所謂ハイブリッド車両である。尚、後輪駆動に限定せず、前輪駆動のハイブリッド車やモータ等を備えていない通常の車両であってもよい。
この車両のブレーキ装置は、ハイブリッド制御ECU10と、ブレーキ制御ECU(コントロールユニット)20と、エンジン制御ECU30と、エンジンENGとモータMの2種類の動力源を有するハイブリッドシステム40と、各輪のホイルシリンダ圧を制御する摩擦制動力制御システム50と、各車輪における車輪速を検出する車輪速センサ53a、53b、53c、53dとを含んで構成されている。
【0009】
〔ハイブリッドシステムの構成〕
ハイブリッドシステム40は、エンジンENGと、モータMと、ジェネレータGと、動力分割機構Pと、減速機Dと、インバータIと、バッテリBを備えている。エンジンENGは車両の主たる動力源である。モータMは、エンジンENGの補助動力源であって、ドライバによるブレーキペダルBPの操作時において、回生制動力を発生する発電機としても機能する交流同期モータである。ジェネレータGも、モータMと同様に交流同期型であり、エンジンENGの駆動力により駆動されてバッテリB充電用、若しくはモータM駆動用の交流電力(交流電流)を発電するように構成されている。
動力分割機構Pは、所謂遊星歯車機構から構成されていて、エンジンENG、モータM、ジェネレータG、及び減速機Dに接続されている。動力分割機構Pは、動力の伝達経路(及び方向)を切り替える機能を有している。即ち、動力分割機構Pは、エンジンENGの駆動力、およびモータMの駆動力を減速機Dに伝達可能とされている。これにより、減速機D及び後輪側の動力伝達系(図示しない)を介してこれらの駆動力が駆動輪に伝達され、これにより駆動輪が駆動される。
また、動力分割機構Pは、エンジンENGの駆動力をジェネレータに伝達することができるようになっていて、これによりジェネレータGが駆動されるようになっている。更に動力分割機構Pは、ブレーキペダルBP操作時において減速機D(即ち、駆動輪である後2輪)からの動力をモータMに伝達可能に構成されている。これにより、モータMは回生制動力を発生する発電機として駆動可能とされている。
【0010】
インバータIは、モータM、ジェネレータG及びバッテリBに接続されている。インバータIは、バッテリBから供給される直流電流(高電圧直流電流)をモータM駆動用の交流電力(交流電流)に変換して、同変換した交流電力をモータMに供給し、これにより、モータMが駆動される。また、インバータIは、ジェネレータGにより発電された交流電力をモータMに供給可能に構成され、これによってもモータが駆動され得る。
また、インバータIは、ジェネレータGにより発電された交流電力を直流電力に変換して同変換した直流電力をバッテリBに供給可能に構成されている。これによりバッテリBの充電状態が低下している場合にバッテリBが充電され得る。更に、インバータIは、ブレーキペダルBP操作時において、モータMが発電機として駆動される(回生制動力を発生している)ことで発電された交流電力を直流電力に変換し、同変換した直流電力をバッテリBに供給する。これにより、車両の運動エネルギを電気エネルギに変換してバッテリBに回収(充電)可能に構成されている。この場合、バッテリBに充電される電力は、モータMによる発電抵抗(即ち回生制動力)が大きいほど大きくなる。
【0011】
図2は、摩擦制動力制御システム50の油圧回路図である。摩擦制動力制御システム50は、ブレーキペダルBPの操作に応じてマスタシリンダ圧を発生することができるブレーキ操作装置51と、ブレーキ操作装置51が供給するブレーキ液とリザーバ16P、16Sに流し込むブレーキ液とを制御することで各ホイルシリンダW/Cの圧力を制御する液圧制御装置52とで構成される。液圧制御装置52はブレーキ制御ECU20によって制御される。
【0012】
ブレーキ操作装置51は、例えば倍力比(ブレーキ操作装置51の機構により増圧されたマスタシリンダ圧/運転者のペダル踏力により発生する圧)を可変制御可能に構成されたブースタ60と、ブレーキペダルBPの操作量に応じてマスタシリンダ圧を発生するマスタシリンダM/Cと、を備えており、ブレーキペダルBPの操作に応じてマスタシリンダ圧を増圧する。
ブレーキ操作装置51には、ブレーキペダルBPのストローク開始から予め設定された基準ストローク量S1までの間、倍力作用を行わない第1のストローク領域と、基準ストローク量S1を超えると倍力作用を行う第2のストローク領域とが設定されている。第1のストローク領域を、ブレーキ操作装置51による倍力作用が働かない領域として無効ストローク領域と言う。第2のストローク領域を、ブレーキ操作装置51による倍力作用が働く領域として有効ストローク領域と言う。更に、上記無効ストローク領域は、ブレーキペダルBPがストロークしてもマスタシリンダ圧及びホイルシリンダ圧も発生しない完全無効ストローク領域(ストローク量S0までの領域)と、マスタシリンダ圧が発生しないが、液圧制御装置52によりホイルシリンダ圧を制御的に発生させる制御圧領域(S0からS1までの領域)とを有する。
無効ストローク領域を設定した理由は、ハイブリッド車等において初期制動時には回生制動力を作用させ、液圧による制動を行わないことを定常的に実施することによる。
【0013】
ここで、ブースタ60内には、リターンスプリングが設けられており、第1のストローク領域では主にリターンスプリング反力が運転者の踏力であるブレーキペダル反力を実現し、第2のストローク領域ではリターンスプリング反力と発生したマスタシリンダ圧に応じて生じる反力からブースタ60によって付与された力を減算した値がブレーキペダル反力を実現する。尚、実施例1では、倍力比を可変可能な負圧ブースタを例に示す。
【0014】
この摩擦制動力制御システム50は、P系統S系統との2系統からなるX配管と呼ばれる配管構造となっている。P系統には、FL輪のホイルシリンダW/C(FL)、RR輪のホイルシリンダW/C(RR)が接続され、S系統には、FR輪のホイルシリンダW/C(FR)、RL輪のホイルシリンダW/C(RL)が接続されている。
ここでリザーバ16P、16SのようにP系統、S系統にそれぞれ設けるものを16*と表記し、ホイルシリンダW/C(FL)、W/C(FR)、W/C(RL)、W/C(RR)のように各輪に設けるものをW/C**と表記する。
液圧制御装置52は、ブレーキペダルBPに設置するストロークセンサBSのストローク量STでドライバのブレーキ操作量を検出する。ブレーキ制御ECU20内には、検出されたストローク量に基づいてドライバ要求制動力を演算する要求制動力演算部20aが設けられ、演算されたドライバ要求制動力を実現するように液圧制御装置52はホイルシリンダW/C**にそれぞれ同じ圧力を与える。また、車輪に備えられたホイルシリンダの圧力を算出(推定)するホイルシリンダ圧算出部20bと、ドライバ要求制動力をホイルシリンダ圧として実現するために液圧制御装置52を制御する液圧サーボ制御部20cと、検出されたストローク量に対するマスタシリンダ圧とホイルシリンダ圧との所定関係を維持するように液圧サーボ制御するSP特性制御部20dとを有する。また、液圧制御装置52のP系統(或いはS系統でもよい)の液圧入力部にマスタシリンダ圧センサPMCを有している。液圧制御装置52はP系統、S系統それぞれにポンプP*が設けられ、このポンプP*は1つのモータMTによって駆動される。
【0015】
マスタシリンダM/CとポンプP*の吸入側とは、管路11*によって接続されている。この各管路11*上には、常閉型の電磁弁であるゲートインバルブ2*が設けられている。また管路11*上であって、ゲートインバルブ2*とポンプP*との間にはチェックバルブ6*が設けられている。この各チェックバルブ6*は、ゲートインバルブ2*からポンプP*へ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。
各ポンプP*の吐出側と各ホイルシリンダW/Cとは、管路12*によって接続されている。この管路12*上には、各ホイルシリンダW/C**に対応する常開型の電磁弁であるソレノイドインバルブ4**が設けられている。また各管路12*上であって、ソレノイドインバルブ4**とポンプP*との間にはチェックバルブ7*が設けられている。このチェックバルブ7*は、ポンプP*からソレノイドインバルブ4**へ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。
更に管路12*には、ソレノイドインバルブ4**を迂回する管路17**が設けられ、この管路17**には、チェックバルブ10**が設けられている。このチェックバルブ10**は、ホイルシリンダW/CからポンプP*へ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。
【0016】
図2において、マスタシリンダM/Cと管路12*とは管路13*によって接続され、管路12*と管路13*とはポンプP*とソレノイドインバルブ4**との間において合流する。この管路13*上には、常開型の電磁弁であるゲートアウトバルブ3*が設けられている。また各管路13*には、ゲートアウトバルブ3*を迂回する管路18*が設けられ、この管路18*には、チェックバルブ9*が設けられている。このチェックバルブ9*は、マスタシリンダM/C側からホイルシリンダW/Cへ向かう方向のブレーキ液の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。
ポンプP*の吸入側にはリザーバ16*が設けられ、このリザーバ16*とポンプP*とは管路15*によって接続されている。リザーバ16*とポンプP*との間にはチェックバルブ8*が設けられて、このチェックバルブ8*は、リザーバ16*からポンプP*へ向かう方向のブレーキ液の流れを許容し、反対方向の流れを許容する。
ホイルシリンダW/C**と管路15*とは管路14*によって接続され、管路14*と管路15*とはチェックバルブ8*とリザーバ16*との間において合流する。この管路14*にそれぞれ、常閉型の電磁弁であるソレノイドアウトバルブ5**が設けられている。
【0017】
ここで、図2に示す油圧回路図の構成において、ホイルシリンダ圧を増圧する際には、ゲートアウトバルブ3*を閉じ、ゲートインバルブ2*を開き、ポンプP*を駆動する。また、ソレノイドインバルブ4*を開き、ソレノイドアウトバルブ5*を閉じる方向に制御することで、ホイルシリンダ圧を増圧する。また、ゲートアウトバルブ3*は、ゲートアウトバルブ3*のマスタシリンダ側の圧力と、ホイルシリンダ側の圧力との差圧を釣り合い制御によって制御可能に構成され、これにより、マスタシリンダ圧とホイルシリンダ圧との関係を制御する(制動圧制御)。
【0018】
図3は実施例1のブレーキペダル反力特性制御処理を表すフローチャートである。
ステップ10では、ストロークセンサBSにより検出されたブレーキペダルBPのストローク量Sと、マスタシリンダ圧センサPMCにより検出されたマスタシリンダ圧Pmcと、ハイブリッドシステム40から要求された要求ホイルシリンダ圧Pvrtgを読み込む。
ステップ20では、ストローク量Sに基づいて要求制動力演算部20aにより演算されたドライバ要求制動力に基づいて、ドライバ要求ホイルシリンダ圧Pdrqを演算する。図4は実施例1のドライバ要求ホイルシリンダ圧とストローク量との関係を表すマップである。このマップに基づいてPdrqを演算する。
【0019】
ステップ30では、ストローク量Sに基づいて最大回生制動時目標ホイルシリンダ圧Prmaxtgを演算する。図5は実施例1のストローク量に対するホイルシリンダ圧の関係を表す特性図である。回生制動力が発生しているときは、ホイルシリンダ圧を発生させなくても制動力が発生しているため、その分をドライバ要求ホイルシリンダ圧Pdrqから減算した値を最大回生制動時目標ホイルシリンダ圧Prmaxtgとして設定する。また、ストローク量Sに応じて目標マスタシリンダ圧Pmctgが設定されており、ストローク量がS1からS2の間にあるときは、ドライバ要求ホイルシリンダ圧Pdrqよりも低い圧力が設定され、ストローク量がS1より小さい領域ではゼロに設定されている。
ステップ40では、マスタシリンダ圧Pmcとドライバ要求ホイルシリンダ圧Pdrqのうち、高いほうの値を目標ホイルシリンダ圧上限値Pmaxtgとして演算する。
ステップ50では、マスタシリンダ圧Pmcと最大回生制動時目標ホイルシリンダ圧Prmaxtgの高いほうの値を目標ホイルシリンダ圧下限値Pmintgとして演算する。
【0020】
ステップ60では、ストローク量Sが基準ストローク量S1以下か否かを判断し、S1以下のときはステップ70に進み、それ以外のときはステップ130へ進む。
ステップ70では、ハイブリッドシステム40から要求された要求ホイルシリンダ圧Pvrtgが目標ホイルシリンダ圧下限値Pmintgよりも大きいか否かを判断し、大きいときはステップ80へ進み、Pmintg以下のときはステップ120に進む。
ステップ80では、ハイブリッドシステム40から要求された要求ホイルシリンダ圧Pvrtgが目標ホイルシリンダ圧上限値Pmaxtgよりも小さいか否かを判断し、小さいときはステップ90に進み、Pmaxtg以上のときはステップ110に進む。
【0021】
ステップ90では、ハイブリッドシステム40から要求された要求ホイルシリンダ圧pvrtgを指令ホイルシリンダ圧に設定し、ステップ100にて制動圧制御を実行する。
ステップ110では、Pmaxtgを指令ホイルシリンダ圧に設定し、ステップ100にて制動圧制御を実行する。
ステップ120では、Pmintgを指令ホイルシリンダ圧に設定し、ステップ100にて制動圧制御を実行する。
ステップ130では、ドライバ要求ホイルシリンダ圧Pdrqがマスタシリンダ圧Pmcより大きいか否かを判断し、大きいときはステップ140に進み、Pmc以下のときはステップ160に進んで、制動圧制御を終了する。
ステップ140では、Pdrqを指令ホイルシリンダ圧に設定し、図5の一点鎖線で示すPmctgを指令マスタシリンダ圧に設定し、ステップ150にて制動圧制御を実行する。
【0022】
図6は実施例1のブレーキペダル反力特性制御処理を表すタイムチャートである。初期条件として車両はある車速で走行中であり、運転者はブレーキペダル操作を行っていない状態とする。この状態から運転者がブレーキペダルを踏み始めると、ブレーキペダルBPのストローク量が増加する。ストローク量SがS0に到達するまでは何ら制御は行われず、マスタシリンダ圧もホイルシリンダ圧も発生しない。
【0023】
時刻t1において、ストローク量SがS0に到達すると、ドライバ要求制動力の演算が開始される。このとき、回生制動力が、ドライバの要求制動力を満たしているため、ハイブリッドシステム40から要求された要求ホイルシリンダ圧Pvrtgは0であり、ホイルシリンダ圧が増圧されることはなく、回生制動力のみが作用する。
時刻t2において、回生制動力が上限値を迎えると、回生制動力のみではドライバ要求制動力Pdrqを満たすことができなくなるため、ドライバ要求制動力となるように要求ホイルシリンダ圧Pvrtgが設定されて、ホイルシリンダを増圧する。具体的には、ゲートアウトバルブ3*を作動させ、ポンプP*を作動させてホイルシリンダW/Cを増圧する。すなわち、ステップ60→ステップ70→ステップ80→ステップ90→ステップ100へと進む処理である。
【0024】
時刻t3において、ハイブリッドシステム40から要求された要求ホイルシリンダ圧Pvrtgが目標ホイルシリンダ圧下限値Pmintg以下になると、Pmintgが設定されて、ホイルシリンダを増圧する。すなわち、ステップ60→ステップ70→ステップ120→ステップ100へと進む処理である。
【0025】
時刻t4において、ストローク量Sが基準ストローク量S1に到達すると、マスタシリンダ側における無効ストローク状態が終了し、倍力作用によってマスタシリンダ圧Pmcが増圧を開始する。このとき、ホイルシリンダ圧はドライバ要求制動力を満たす圧力まで増圧しているため、マスタシリンダ圧Pmcを適正に制御しないと、ブレーキペダル反力が不安定となり、運転者に違和感を与える。そこで、ゲートアウトバルブ3*の制御によってゲートアウトバルブ3*のマスタシリンダ側とホイルシリンダ側との差圧を徐々に解消することで、ブレーキペダル反力の安定化を図るものである。すなわち、ステップ60→ステップ130→ステップ140→ステップ150へと進む処理である。尚、ホイルシリンダ圧の増加勾配よりもマスタシリンダ圧の増加勾配が大きいのは、ゲートアウトバルブ3*のマスタシリンダ側のほうが、ホイルシリンダ側よりも液圧剛性が高いからである。尚、このとき、ブレーキペダル反力がストローク量Sの増大に応じて増大するようにマスタシリンダ圧を制御するため、踏力もストローク量に応じて増大する。
【0026】
時刻t5において、マスタシリンダ圧Pmcがホイルシリンダ圧であるドライバ要求ホイルシリンダ圧Pdrqに到達すると、ゲートアウトバルブ3*を開いても圧力差が解消しているため、ブレーキペダルBPの反力に影響を与えることがない。よって、制動圧制御を終了する。すなわち、ステップ60→ステップ130→ステップ160に進む処理である。その後は、ブレーキペダル操作に応じてマスタシリンダ圧及びホイルシリンダ圧が同じ圧力で変化する関係を維持しつつ車両停止となる。
時刻t6において、運転者がブレーキペダルBPを離し始め、ストローク量SがS2に到達すると、目標マスタシリンダ圧Pmctgとしてドライバ要求ホイルシリンダ圧Pdrqよりも低い値が設定され、ストローク量Sの減少に応じてマスタシリンダ圧が低下していく。すなわち、ステップ60→ステップ130→ステップ140→ステップ150へと進む処理である。
時刻t7において、ストローク量SがS1に到達すると、マスタシリンダ圧はゼロとなり、それ以降はストローク量に応じてホイルシリンダ圧が低下していく処理が実行される。すなわち、ステップ60→ステップ70→ステップ80→ステップ90→ステップ100へと進む処理である。
【0027】
以上説明したように、実施例1にあっては下記に列挙する作用効果を得ることができる。
(1)ドライバのブレーキ操作力を倍力するブースタ60を備え、ブレーキペダルBPのストローク量Sが予め設定された基準ストローク量S1までの第1のストローク領域の間はブースタ60の倍力によるマスタシリンダ圧を発生させないブレーキ操作装置51を備えたブレーキシステムに用いられる液圧制御装置52と、マスタシリンダ圧を検出するマスタシリンダ圧センサPMC(マスタシリンダ圧検出手段)と、ブレーキペダルBPのストローク量Sを検出するストロークセンサBS(ストローク検出手段)と、ストロークセンサBSの値に基づいてドライバ要求制動力を演算する要求制動力演算部20a(要求制動力演算手段)と、車輪に備えられたホイルシリンダW/Cのホイルシリンダ圧を算出するホイルシリンダ圧算出部20bと、を備え、液圧制御装置52は、第1のストローク領域の間はドライバ要求制動力をホイルシリンダ圧により実現するためにポンプP*及びゲートアウトバルブ3*(制御弁)を制御する液圧サーボ制御部20c(液圧サーボ手段)と、基準ストローク量S1より大きな第2のストローク領域において、ストローク量Sに対応して設定された目標ホイルシリンダ圧Pdrqと目標マスタシリンダ圧Pmctgとの関係を維持するようにポンプP*及びゲートアウトバルブ3*を制御するSP特性制御部20d(第2の液圧サーボ手段)と、を備えた。
よって、ストローク量Sが基準ストローク量S1に到達した後、ホイルシリンダ圧とマスタシリンダ圧とがストロークに応じて制御されるため、無効ストローク領域から有効ストローク領域に切り換わる際に、ブレーキペダルBPの反力が急変することがなく、安定したブレーキペダル操作を実現することができる。
【0028】
(2)SP特性制御部20dは、ホイルシリンダ圧とマスタシリンダ圧とが一致したときは、ポンプP*及びゲートアウトバルブ3*の制御を停止する。
よって、マスタシリンダで発生した液圧をホイルシリンダに直接作用させることができ、不要な制御を終了して安定したブレーキペダル操作を実現することができる。
【符号の説明】
【0029】
2 ゲートインバルブ
3 ゲートアウトバルブ
4 ソレノイドインバルブ
5 ソレノイドアウトバルブ
16 リザーバ
20a 要求制動力演算部
20b ホイルシリンダ圧算出部
20c 液圧サーボ制御部
20d 特性制御部
40 ハイブリッドシステム
50 摩擦制動力制御システム
51 ブレーキ操作装置
52 液圧制御装置
60 ブースタ
BP ブレーキペダル
BS ストロークセンサ
M/C マスタシリンダ
P ポンプ
W/C ホイルシリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバのブレーキ操作力を倍力するブースタを備え、ブレーキペダルのストローク量が予め設定された基準ストローク量までの第1のストローク領域の間は前記ブースタの倍力によるマスタシリンダ圧を発生させないブレーキ操作装置を備えたブレーキシステムに用いられる液圧制御装置と、
前記マスタシリンダ圧を検出するマスタシリンダ圧検出手段と、
前記ブレーキペダルのストローク量を検出するストローク検出手段と、
前記ストローク検出手段の値に基づいてドライバ要求制動力を演算する要求制動力演算手段と、
車輪に備えられたホイルシリンダのホイルシリンダ圧を算出するホイルシリンダ圧算出部と、
を備え、
前記液圧制御装置は、前記第1のストロークの間は前記ドライバ要求制動力を前記ホイルシリンダ圧により実現するためにポンプ及び制御弁を制御する液圧サーボ手段と、
前記基準ストローク量より大きな第2のストローク領域において、前記ストローク量に対応して設定された目標ホイルシリンダ圧と目標マスタシリンダ圧との関係を維持するように前記ポンプ及び前記制御弁を制御する第2の液圧サーボ手段と、
を備えたことを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のブレーキ制御装置において、
前記第2の液圧サーボ手段は、前記ホイルシリンダ圧と前記マスタシリンダ圧とが一致したときは、前記ポンプ及び前記制御弁の制御を停止することを特徴とするブレーキ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−162161(P2012−162161A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23456(P2011−23456)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】