説明

プラスチック積層体の製造方法及びプラスチック積層体

【課題】本発明は、大型プラスチックミラー等の高精度なプラスチック積層体の製造方法及びプラスチック積層体に関する。
【解決手段】プラスチック積層体製造装置1は、プラスチック基材16の加圧方向に対して直角の方向に形成されているつば部22を、転写駒5の加圧方向に対して直角の方向に形成されている受け部8上に載せ、加圧部材6がプラスチック基材16のつば部22のみと接触してプラスチック基材16を押圧する。したがって、加圧時に、プラスチック基材16を傾けることなく、均一な圧力を付加して、高精度なプラスチック積層体を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック積層体の製造方法及びプラスチック積層体に関し、詳細には、大型プラスチックミラー等の高精度なプラスチック積層体の製造方法及びプラスチック積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、レーザプリンタ等の光走査に用いられるfθミラー、プロジェクションテレビ等の光路屈曲用の大型ミラー、フライトシュミレータやアミューズメント用途の画像表示に用いられる大型ミラーには、軽量化、低コスト化、多品種少量生産に対応するため等の理由により、プラスチック製のミラーが多用されてきている。
【0003】
また、大型ミラーは、その形状精度を維持するために剛性が必要であり、一般的な外装部品と比較して、肉厚となっている。
【0004】
このようなプラスチック製のミラーの製造方法としては、従来、製造コストが低く、大量生産に適した射出成形方法が用いられ、成形後に真空蒸着によって金属反射膜が形成されることで、製造されている。
【0005】
そして、射出成形法においては、加熱溶融した樹脂材料を金型内に射出充填した後、冷却固化させるが、この冷却工程において、金型内の樹脂圧力や樹脂温度を均一に保つことで、所望の形状精度を確保することができる。
【0006】
ところが、プロジェクションテレビ等の光路屈曲用のミラー、フライトシュミレータやアミューズメント用途の画像表示に用いられる大型ミラーのように、製造対象のミラーの形状が厚肉で、大型になると、ミラーの中心部と周辺部で冷却速度が異なり、体積収縮量が異なったものとなって、ひけが生じたり、形状精度が悪化するという問題があった。
【0007】
また、ミラーを製造する場合、従来、射出成形したプラスチック成形体に、金属反射膜を形成することで、ミラーを製造している。そして、この金属反射膜の形成は、通常、成形後に、真空蒸着によるバッチ処理で行われているため、プラスチック成形体の加工設備に加えて、さらに、別に、金属反射膜を形成するための蒸着設備が必要になるだけでなく、金属反射膜を形成する対象の形状が大きくなると、1バッチあたりの取り数が少なくなり、蒸着コストが大きくなるとう問題も生じる。
【0008】
そこで、本出願人は、先に、予め略最終形状に加工されたプラスチック母材と、反射膜の形成されたプラスチックフィルムとを金型キャビティ内に挿入した後、金型をプラスチック母材のガラス転移温度以上に加熱し、樹脂内圧を発生させてフィルム表面に金型鏡面を転写させ、金型を徐冷してプラスチック母材が熱変形温度以下になった後に取り出すプラスチックミラーの製造方法及びその製造装置及びプラスチック成形品の製造方法を提案している(特許文献1参照)。
【0009】
【特許文献1】特開平6−182783号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来技術にあっては、プラスチック母材をガラス転移温度以上から熱変形温度までゆっくりさせることで加工時の温度分布や圧力分布が生じることなく高精度な面転写を実現するとともに、プラスチックフィルムに予め金属反射膜を形成しておくことで蒸着コストを低減しているが、熱容量の大きいプラスチック母材自体をガラス転移温度以上に加熱し、その後、熱変形温度以下までゆっくりと冷却するといった工程が必要であるため、加工時間が長くなり、生産性を向上させる上で改良の必要があった。
【0011】
そこで、本発明は、均一な圧力をプラスチック基材全域に付加できるようにして、プラスチック積層体を高精度に製造することのできるプラスチック積層体の製造方法及び当該製造方法で製造するプラスチック積層体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1記載の発明のプラスチック積層体の製造方法は、少なくとも一方が最終形状に加工された転写面の形成されている型部材と当該型部材に対して相対向する状態で配設されている加圧部材との間に、予め略最終形状に加工されたプラスチック基材と予め所望の機能膜の形成されている表層シートを、熱可塑性樹脂からなる中間部材を間に挟んで当該表層シートが前記型部材側に位置する状態で配設して、前記型部材と前記加圧部材を相対移動させて、当該加圧部材で押圧される前記プラスチック基材が前記表層シートを前記型部材の前記転写面に押圧するとともに、少なくとも前記中間部材を当該中間部材の軟化温度以上に加熱して軟化させて、前記プラスチック基材、前記中間部材及び前記表層シートを密着一体化させるとともに、前記転写面形状に補正加工するプラスチック積層体の製造方法であって、前記プラスチック基材の転写有効範囲外の少なくとも1箇所以上に、前記加圧方向に対して直角方向に所定量延在する平面部を設け、前記型部材の前記転写有効範囲外に前記平面部の載置される受け部を設け、前記加圧部材が、前記プラスチック基材の前記平面部のみと接触して当該プラスチック基材の平面部を前記型部材の前記受け部に押圧することにより、上記目的を達成している。
【0013】
この場合、例えば、請求項2に記載するように、前記中間部材は、前記加圧前の厚さが、前記加圧時の前記プラスチック基材と前記型部材の前記転写面との間の空隙の最大幅以上の厚さを有していてもよい。
【0014】
また、例えば、請求項3に記載するように、前記プラスチック積層体の製造方法は、前記加圧前に、前記中間部材を当該中間部材の軟化温度以上に加熱して当該中間部材のみを軟化させた状態としてもよい。
【0015】
さらに、例えば、請求項4に記載するように、前記プラスチック基材の前記平面部と前記型部材の前記受け部は、相嵌合する凸部と凹部がそれぞれ相対応する複数の位置に形成されており、前記加圧時に、前記平面部と前記受け部の前記凸部と前記凹部が相嵌合してもよい。
【0016】
また、例えば、請求項5に記載するように、前記型部材の前記受け部は、所定深さの溝部が形成され、前記プラスチック基材の前記平面部は、前記受け部の前記溝部に侵入する形状に形成されていてもよい。
【0017】
さらに、例えば、請求項6に記載するように、前記溝部に進入する前記平面部は、その厚さが当該溝部の深さよりも厚く形成されていてもよい。
【0018】
また、例えば、請求項7に記載するように、前記溝部は、その側面が当該溝部の開口側ほど幅の広くなる傾斜面に形成されており、前記平面部は、その側面が前記溝部側ほど幅が狭くなる傾斜面に形成されていてもよい。
【0019】
さらに、例えば、請求項8に記載するように、前記加圧部材は、前記プラスチック基材の前記平面部と接触する部分が、前記加圧時に当該プラスチック基材の当該加圧部材側の面と所定距離を保つ量だけ前記型部材方向に突出した突出部として形成されていてもよい。
【0020】
また、例えば、請求項9に記載するように、前記プラスチック積層体の製造方法は、前記密着一体化した前記プラスチック基材、前記中間部材及び前記表層シートを前記型部材の前記転写面から離型する際に、前記プラスチック基材の前記加圧部材側の面を所定の加熱手段で加熱して、当該プラスチック基材の当該加圧部材側の温度を、当該プラスチック基材の前記転写面側の温度と同じ温度に温度調整してもよい。
【0021】
さらに、例えば、請求項10に記載するように、前記加熱手段は、前記プラスチック積層体と非接触な状態で当該プラスチック積層体の前記加圧部材側の面を加熱する非接触加熱手段であってもよい。
【0022】
請求項11記載の発明のプラスチック積層体は、少なくとも一方が最終形状に加工された転写面の形成されている型部材と当該型部材に対して相対向する状態で配設されている加圧部材との間に、予め略最終形状に加工されたプラスチック基材と予め所望の機能膜の形成されている表層シートが、熱可塑性樹脂からなる中間部材を間に挟んで当該表層シートが前記型部材側に位置する状態で配設され、前記型部材と前記加圧部材が相対移動されて、当該加圧部材によって押圧される前記プラスチック基材が前記表層シートを前記型部材の前記転写面に押圧するとともに、少なくとも前記中間部材が当該中間部材の軟化温度以上に加熱されて軟化して、前記プラスチック基材、前記中間部材及び前記表層シートが密着一体化されるとともに、前記転写面形状に補正加工されて製造されるプラスチック積層体であって、請求項1から請求項10のいずれかに記載の製造方法で製造されていることにより、上記目的を達成している。
【発明の効果】
【0023】
本発明のプラスチック積層体の製造方法によれば、加圧部材で押圧されるプラスチック基材を押圧して、当該プラスチック基材が表層シートを型部材の転写面に押圧するとともに、少なくとも中間部材を当該中間部材の軟化温度以上に加熱して軟化させて、プラスチック基材、中間部材及び表層シートを密着一体化させるとともに、転写面形状に補正加工する際に、プラスチック基材の転写有効範囲外の少なくとも1箇所以上に、加圧方向に対して直角方向に所定量延在する平面部を設け、型部材の転写有効範囲外に平面部の載置される受け部を設け、加圧部材を、プラスチック基材の平面部のみと接触させて当該プラスチック基材の平面部を型部材の受け部に押圧するので、均一な圧力をプラスチック基材全域に付加することができ、高精度なプラスチック積層体を製造することができる。
【0024】
本発明のプラスチック積層体は、加圧部材によって押圧されるプラスチック基材が表層シートを型部材の転写面に押圧するとともに、少なくとも中間部材が当該中間部材の軟化温度以上に加熱されて軟化して、プラスチック基材、中間部材及び表層シートが密着一体化されるとともに、転写面形状に補正加工されて製造されるプラスチック積層体を、請求項1から請求項10のいずれかに記載の製造方法で製造しているため、高精度なものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の好適な実施例を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に述べる実施例は、本発明の好適な実施例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【実施例1】
【0026】
図1〜図6は、本発明のプラスチック積層体の製造方法及びプラスチック積層体の第1実施例を示す図であり、図1は、本発明のプラスチック積層体の製造方法及びプラスチック積層体の第1実施例を適用したプラスチック積層体製造装置1の正面概略構成図である。
【0027】
図1において、プラスチック積層体製造装置1は、下側ダイプレート2、上側ダイプレート3及び図示しないタイバーを有したプレス機4を備えており、プレス機4は、下側ダイプレート2に対して鉛直方向に延在する状態でタイバーが設置されていて、上側ダイプレート3が、タイバーに沿って上下方向に移動可能となっていて、下側ダイプレート2との間に所定の圧力を付加することができる構造となっている。なお、プレス機4は、上側ダイプレート3が移動する場合だけでなく、下側ダイプレート2が移動してもよく、また、下側ダイプレート2と上側ダイプレート3の双方が移動するようになっていてもい。
【0028】
そして、下側ダイプレート2には、転写駒(型部材)5が固定されており、上側ダイプレート3には、加圧部材6が固定されている。加圧部材6の転写駒5に対向する側の面は、平面形状に形成されており、転写駒5の加圧部材6に対向する側の面は、所望の最終形状に凹面形状に加工された転写面7が形成されている。
【0029】
転写駒5の外周部、すなわち、転写面7の有効範囲外には、加圧部材6の移動方向(加圧方向)に対して直角方向に所定幅にわたって延在する平面状の受け部8が形成されており、受け部8には、所定間隔で所定個数、本実施例では、等間隔で4個の円柱形状の凸部9が形成されている。凸部9は、受け部8から上側ダイプレート3方向(加圧部材6方向)に所定量突出する状態で形成されている。
【0030】
また、転写駒5には、転写面7の有効範囲外の位置で当該転写面7に開口する連通孔10が形成されており、連通孔10は、転写駒5の外部に設置されている真空吸引装置11に連通している。
【0031】
プラスチック積層体製造装置1は、プレス機4の外部に赤外線ヒータ12、反射板13及び反射ミラー14からなる加熱装置(加熱手段)15が配設されており、加熱装置15は、赤外線ヒータ12が赤外線を出射して、反射板13がこの赤外線を反射ミラー14方向に反射する。反射ミラー14は、赤外線ヒータ12及び反射板13からの赤外線を転写駒5の転写面7方向に反射して照射する。
【0032】
そして、プラスチック積層体製造装置1は、上記転写駒5と加圧部材6との間に、図2に示すプラスチック基材16と表層シート17(図6参照)が、転写面7の形成されている転写駒5側に表層シート17が位置する状態で、配置され、この表層シート17のプラスチック基材16側の面に、熱可塑性樹脂からなる中間部材18が積層される。
【0033】
このプラスチック基材16は、図2に示すように、例えば、軟化温度150℃のポリカーボネイト樹脂を使用して、上記転写駒5と加圧部材6との間に配置されたときに、転写駒5の転写面7側となる基材転写面21の形状が当該基材転写面21側が突出した凸面形状である略最終形状に予め加工されており、その基材転写面21の外周上部に、プラスチック基材16が上記転写駒5と加圧部材6との間に配置されたときに加圧方向となる方向に対して直角方向に所定幅で延在する平面状のつば部(平面部)22が形成されている。つば部22には、つば部22の周方向に所定間隔で、前記転写駒5の凸部9が進入する貫通孔(凹部)23が形成されており、貫通孔23は、プラスチック基材16が転写駒5と加圧部材6との間に配置されたときに、転写駒5の凸部9が進入することで、プラスチック基材16の位置決めを行う。
【0034】
そして、このプラスチック基材16のつば部22及び上記転写駒5の受け部8は、図3に示すように、表層シート17と中間部材18を配置せずにプラスチック基材16を、プラスチック基材16のつば部22を転写駒5の受け部8に設置する状態で、転写駒5に設置して、加圧部材3でプラスチック基材16のつば部22の部分のみを押圧するようにして加圧したときに、プラスチック基材16のつば部22以外の部分が転写駒5と接触しない構成となっている。例えば、本実施例のプラスチック積層体製造装置1のように、転写駒5の転写面7が凹球面である場合、転写面7の曲率半径をR1とし、プラスチック基材16の転写面7側の凸球面の曲率半径をR2としたとき、R1>R2とすることで、プラスチック基材16のつば部22以外の部分が転写駒5と接触しないようにすることができ、スプリング基材16のつば部22のみを加圧部材3で直接かつ確実に加圧することができる。
【0035】
そして、実際の加圧時には、図3のプラスチック基材16と転写面7との間の空隙部24には、表層シート17と中間部材18が存在しており、表層シート17と中間部材18の厚さ、特に、厚い中間部材18の厚さは、加圧時のプラスチック基材16と転写面7との間の形状誤差によって生じる空隙の最大幅以上の厚さを有したものとなっている。そして、表層シート17は、反射膜等の所望の機能膜が予め形成されている。
【0036】
次に、本実施例の作用を説明する。本実施例のプラスチック積層体製造装置1は、加圧時に、加圧部材6がプラスチック基材16のつば部22のみと接触して当該つば部22を介してプラスチック基材16を転写駒5の転写面7方向に押圧し、プラスチック基材16と転写面7との間に載置された中間部材18と表層シート17を、プラスチック基材16の基材転写面21で転写駒5の転写面7方向に均一に押圧する。
【0037】
すなわち、プラスチック積層体の製造方法として、例えば、図4(a)、図5(a)に示すように、転写駒101と加圧部材102との間に、プラスチック基材103と中間部材104の積層されている表層シート105を、転写面101aの形成されている転写駒101側に表層シート105が位置するように配置して、図4(b)、図5(b)に矢印で示すように、中間部材104のみを加熱・軟化させて、加圧部材102を転写駒101方向に移動させて、図4(b)、図5(b)に示すように、加圧一体化する方法で成形すると、加圧時に軟化した中間部材104を変形させることで、プラスチック基材101の形状誤差を補正して転写駒101の転写面101aの形状を忠実に表層シート105の面に転写することができる。また、この場合、軟化させる中間部材104の厚みは転写駒101の転写面101aの形状に対するプラスチック基材103の形状誤差分だけあれば良い。すなわち、非常に薄い中間部材104のみを加熱・冷却すればよいため、加工時間を非常に短くかつ高精度なミラーを作製することができ、また、表層シート105に予め金属反射膜が形成されているため、蒸着コストも低減することができる。
【0038】
ところが、上述のように、プラスチック基材103と加圧部材102とは固体同士で接触して押圧されることとなるため、図4(a)に示すように、プラスチック基材103の裏面部(加圧部材102側の面部)の形状位置と加圧部材102の位置が少しでもずれていると、加圧時に、図4(b)に示すように、プラスチック基材103が傾いた状態で加圧部材102により押圧されることとなり、加圧時にプラスチック基材103に付加される圧力が不均一となり、転写形状精度が悪化することとなる。
【0039】
また、プラスチック基材103の裏面部の形状と加圧部材102の形状が、図5(a)に示すように、少しでも異なると、加圧時に、図4(b)に示すように、プラスチック基材103が、図5(b)に丸印で示す部分が部分的に加圧されることとなり、プラスチック基材103の中間部材104側の面を中間部材104に密着させたときに、図5(b)に黒矢印で示す方向に、プラスチック基材103自体が変形するとともに、プラスチック基材103は軟化していないため、転写面101aから離型するときに、プラスチック基材103が変形状態から弾性回復することで、形状精度が大きく悪化するという問題がある。
【0040】
そこで、本実施例のプラスチック積層体製造装置1は、プラスチック基材16を加圧する加圧部材6とプラスチック基材16との直接の接触部分をプラスチック基材16のつば部22のみとすることで、プラスチック基材16と中間部材18との接触面に隙間が発生することを防止し、加圧時にプラスチック基材16に付加される圧力が均一となるようにして、形状精度を向上させている。
【0041】
以下、製造工程順に、図6に基づいて、製造方法を説明する。なお、以下の説明では、プラスチック基材16として、軟化温度が150℃のポリカーボネート樹脂を用い、表層シート17として、軟化温度が260℃のポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、中間部材18として、軟化温度が100℃のウレタンフィルムを用いた場合を例として、説明する。
【0042】
プラスチック積層体製造装置1は、まず、図6(a)に示すように、中間部材18と表層シート17を、表層シート17が転写面7側に位置する状態にして、転写面7の形成されている転写駒5上に固定配置して、中間部材18及び表層シート17でその開口部が覆われた転写面7内の空気を連通孔10を介して真空吸引装置11によって吸引することで、転写駒5に固定されている表層シート17及び中間部材18を、転写面7に沿うように変形させる。
【0043】
次に、プラスチック積層体製造装置1は、加熱装置15の赤外線ヒータ12を点灯させて、中間部材18に赤外線を照射させ、当該中間部材18のみを当該中間部材18の軟化温度以上の所定温度、例えば、ウレタンフィルムである中間部材18の軟化温度100℃以上の130℃に中間部材18を加熱する。この場合、上述のように、プラスチック基材16として、軟化温度が150℃のポリカーボネート樹脂を用い、表層シート17として、軟化温度が260℃のポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、中間部材18として、軟化温度が100℃のウレタンフィルムを用いて、赤外線ヒータ12で中間部材18を130℃に加熱することで、中間部材18のみを軟化させることができる。
【0044】
次に、プラスチック基材16を、図6(b)に示すように、中間部材18の上部に積層する。このとき、プラスチック基材16のつば部22を転写駒5の受け部8上に重ね合わせるように積層するとともに、プラスチック基材16のつば部22のの貫通孔23を、転写駒5の受け部8の凸部9に嵌合させる。
【0045】
次に、プラスチック積層体製造装置1は、図6(c)に矢印で示すように、上側ダイプレート3を下側ダイプレート2方向に移動させて、上側ダイプレート3に取り付けられている加圧部材6をプラスチック基材16のつば部22に接触させ、加圧する。このとき、中間部材18が軟化されているため、プラスチック基材16で中間部材18を転写駒5方向に加圧することで、中間部材18が、プラスチック基材16の転写面7側(中間部材18側)の形状と転写駒5の転写面7の形状の誤差を補完するように、軟化変形する。
【0046】
次に、プラスチック積層体製造装置1は、加圧部材16でプラスチック基材16を加圧した状態のまま、中間部材18が軟化温度以下になるまで冷却した後、図6(d)に示すように、上側ダイプレート3を上方に移動させ、プラスチック基材16、中間部材18及び表層シート17から構成される一体化されたプラスチック積層体(積層プラスチック成形品)30を、図示しない搬送装置等で離型して取り出す。
【0047】
このように、本実施例のプラスチック積層体製造装置1は、プラスチック基材16の加圧方向に対して直角の方向に形成されているつば部22を、転写駒5の加圧方向に対して直角の方向に形成されている受け部8上に載せ、加圧部材6がプラスチック基材16のつば部22のみと接触してプラスチック基材16を押圧している。
【0048】
したがって、加圧時に、図4に示したように、プラスチック基材16を傾けることなく、均一な圧力を付加することができる。
【0049】
また、本実施例のプラスチック積層体製造装置1は、加圧部材6を、プラスチック基材16のつば部22のみと直接接触させてプレス機4からの圧力で加圧するため、外部からの圧力がプラスチック基材16を変形させることが無く、図5に示したように、弾性回復による形状変化が発生することが無く、成形品であるプラスチック積層体30の形状品質を向上させることができる。
【0050】
さらに、本実施例のプラスチック積層体製造装置1は、加圧時に、中間部材18を加熱して軟化させているので、プラスチック基材16の形状を転写面7の形状に補正することができ、成形品であるプラスチック積層体30の形状精度を向上させることができる。
【0051】
また、本実施例のプラスチック積層体製造装置1は、中間部材18のみを加熱・軟化させているので、表層シート17上に反射膜等の機能膜が予め形成されていても、表層シート17自体が軟化されないため、表層シート17の形状を維持することができ、成形品であるプラスチック積層体30の品質を向上させることができる。
【0052】
さらに、本実施例のプラスチック積層体製造装置1は、中間部材18のみを加熱・軟化させているので、非常に少ない容量を加熱・軟化させるだけでよく、加工時間を短縮することができる。
【0053】
また、本実施例のプラスチック積層体製造装置1は、中間部材18を、加圧時のプラスチック基材16と転写面7との間の形状誤差によって生じる空隙の最大幅以上の厚さを有したものとしているので、中間部材18とプラスチック基材16との間に間隙が生じることを防止することができ、中間部材18の軟化変形によって、プラスチック基材16と転写面7の形状誤差を完全に補完することができる。特に、本実施例のプラスチック積層体製造装置1では、加圧時に、中間部材18を軟化状態としているため、外部からの加圧力が直接付加されなくても、プラスチック基材16の剛性で、プラスチック基材16の形状と転写面7の形状を補完するように、中間部材18を容易に所望形状に変形させることができる。
【0054】
さらに、本実施例のプラスチック積層体製造装置1は、プラスチック基材16のつば部22が、加圧方向と直交する方向の平面に形成されており、加圧時には、平面状のつば部22が加圧部材6と転写駒5の受け部8との間に挟み込まれる状態で加圧されるため、プラスチック基材16が傾くことをより一層確実に防止しつつ加圧することができ、成形品であるプラスチック積層体30の形状品質をより一層向上させることができる。
【0055】
また、本実施例のプラスチック積層体製造装置1は、加圧時に、プラスチック基材16のつば部22に形成されている貫通孔23に、転写駒5の受け部8に形成されている凸部9を進入(嵌合)させてプラスチック基材16と転写駒5との位置決めを行っているので、成形を複数回繰り返し行った際の成形毎の安定性を向上させることができ、成形品であるプラスチック積層体30の形状品質をより一層向上させることができる。
【0056】
なお、上記実施例においては、プラスチック基材16のつば部22に貫通孔23を形成し、転写駒5の受け部8に凸部9を形成しているが、つば部22に凸部を形成し、受け部8に貫通孔を形成しても良い。
【0057】
そして、本実施例のプラスチック積層体製造装置1において、プラスチック基材16が転写駒5から離型されるときのプラスチック基材16の加圧部材6側の温度が、転写面7側の温度と等しくなるように温度制御すると、離型後のプラスチック積層体30の温度が室温まで下がる間に、プラスチック基材16の収縮量が表裏で異なることによってそりが発生することを防止し、プラスチック積層体30の品質を向上させることができる。
【0058】
この場合、本実施例のプラスチック積層体製造装置1では、中間部材18の軟化に用いる加熱装置15の赤外線ヒータ12の出力を低くして動作させ、赤外線をプラスチック基材16の裏面に照射することで、プラスチック基材16の表裏面の温度を等しくすることができる。
【0059】
なお、プラスチック基材16の表裏面の温度を等しくする加熱手段としては、例えば、蒸気を発生させる蒸気温度制御機構、輻射熱や温風加熱等の非接触加熱手段を用いることができるが、プラスチック基材16の裏面部の形状が規定されているわけではないため、加熱ブロックを接触させる等の伝熱を利用する接触方式の加熱手段を用いることはできない。そして、本実施例のプラスチック積層体製造装置1は、中間部材18の軟化に用いる加熱装置15の赤外線ヒータ12をプラスチック基材16の温度調節に兼用することができるため、コストを低減することができる。
【実施例2】
【0060】
図7〜図9は、本発明のプラスチック積層体の製造方法及びプラスチック積層体の第2実施例を示す図であり、図7は、本発明のプラスチック積層体の製造方法及びプラスチック積層体の第2実施例を適用したプラスチック積層体製造装置40の正面概略構成図である。
【0061】
図7において、プラスチック積層体製造装置40は、下側ダイプレート41、上側ダイプレート42及び図示しないタイバーを有したプレス機43を備えており、プレス機43は、下側ダイプレート41に対して鉛直方向に延在する状態でタイバーが設置されていて、上側ダイプレート42が、タイバーに沿って上下方向に移動可能となっていて、下側ダイプレート41との間に所定の圧力を付加することができる構造となっている。なお、プレス機43は、上側ダイプレート42が移動する場合だけでなく、下側ダイプレート41が移動してもよく、また、下側ダイプレート41と上側ダイプレート42の双方が移動するようになっていてもい。
【0062】
そして、下側ダイプレート41には、転写駒44が固定されており、上側ダイプレート42には、加圧部材45が固定されている。加圧部材45の転写駒44に対向する側の面は、平面形状に形成されており、転写駒44の加圧部材45に対向する側の面は、所望の最終形状である凸面形状に加工された転写面46が形成されている。
【0063】
転写駒44の凸面形状の転写面46よりも外側の外周部、すなわち、転写面46の有効範囲外には、加圧部材45の移動方向(加圧方向)に対して直角方向に所定幅にわたって延在する平面上の受け部47が形成されており、受け部47には、所定間隔で所定個数の円柱形状の凸部48が形成されている。凸部48は、受け部47から上側ダイプレート42方向(加圧部材45方向)に所定量突出する状態で形成されている。
【0064】
プラスチック積層体製造装置40は、図示しないが、プレス機43の外部に、第1実施例と同様に、赤外線ヒータ、反射板及び反射ミラーからなる加熱装置が配設されており、加熱装置は、赤外線ヒータが赤外線を出射して、反射板がこの赤外線を反射ミラー方向に反射する。反射ミラーは、赤外線ヒータ及び反射板からの赤外線を転写駒44の転写面46方向に反射して照射する。
【0065】
そして、プラスチック積層体製造装置40は、上記転写駒44と加圧部材45との間に、プラスチック基材49、中間部材50及び表層シート51が、プラスチック基材49と表層シート51との間に中間部材50が位置する状態で、かつ、転写面46の形成されている転写駒44側に表層シート51が位置する状態で、配置され、この表層シート51のプラスチック基材49側の面に、第2のプラスチック積層部材としての中間部材50が積層される。
【0066】
このプラスチック基材49は、例えば、軟化温度150℃のポリカーボネイト樹脂を使用して、上記転写駒44と加圧部材45との間に配置されたときに、転写駒44の転写面46側となる基材転写面49aの形状が当該基材転写面49a側が凹んだ凹面形状である略最終形状に予め加工されており、その基材転写面49aの外周上部に、プラスチック基材49が上記転写駒44と加圧部材45との間に配置されたときに加圧方向となる方向に対して直角方向に所定幅で延在する平面状のつば部(平面部)52が形成されている。つば部52には、つば部52の周方向に所定間隔で、前記転写駒44の凸部48が進入する貫通孔(凹部)53が形成されており、貫通孔53は、プラスチック基材49が転写駒44と加圧部材45との間に配置されたときに、転写駒44の凸部48が進入することで、プラスチック基材49の位置決めを行う。
【0067】
そして、加圧部材45は、中央部が窪んで外周壁部(突出部)45aが転写駒44方向に突出した凹形状に形成されており、加圧時には、転写駒44上に配置されるプラスチック基材49、中間部材50及び表層シート51を窪み内に収納する状態となって、外周壁部45aの先端部のみがプラスチック基材49のつば部52に接触して押圧する。
【0068】
本実施例のプラスチック積層体製造装置40は、上記第1の実施例のプラスチック積層体製造装置1の場合と同様の製造工程を行うことで、プラスチック積層体を製造することができる。
【0069】
そして、本実施例のプラスチック積層体製造装置40では、転写駒44の転写面46が凸面形状となっていて、当該転写面46上に、プラスチック基材49、中間部材50及び表層シート51が積層配置されるが、加圧部材45が、中央部が窪んで外周壁部45aが転写駒44方向に突出した凹形状に形成されているため、加圧時に、転写駒44上に配置されるプラスチック基材49、中間部材50及び表層シート51を窪み内に収納する状態となって、外周壁部45aの先端部のみがプラスチック基材49のつば部52に接触して押圧する。
【0070】
したがって、本実施例のプラスチック積層体製造装置40は、転写面が凹曲面形状をしているプラスチック積層体を高品質に製造することができる。
【0071】
なお、上記説明では、加圧部材45は、中央部が窪んで外周壁部45aが転写駒44方向に突出した凹形状に形成されたものを用いているが、加圧部材としては、このような形状に限るものではなく、例えば、図9に示すような形状の加圧部材60であっても良い。この加圧部材60は、上側ダイプレート42に取り付けられたとき、下側ダイプレート41方向に所定長さにわたって延在する複数本のピン形状部(突出部)61が形成されており、ピン形状部61は、加圧時に、加圧部材45側に突出している転写駒44の転写面46、当該転写駒44上に配置されるプラスチック基材49、中間部材50及び表層シート51と加圧部材50が干渉することを防止しつつ、プラスチック基材49のつば部52を転写駒44の受け部47に押圧する長さの柱状に形成されている。また、加圧部材60のピン形状部61は、少なくとも、その先端がプラスチック基材49のつば部52を適切に押圧するのに適した平面形状に形成されている。
【実施例3】
【0072】
図10及び図11は、本発明のプラスチック積層体の製造方法及びプラスチック積層体の第3実施例を示す図であり、図10は、本発明のプラスチック積層体の製造方法及びプラスチック積層体の第3実施例を適用したプラスチック積層体製造装置70の加圧時の正面概略構成図である。
【0073】
図10において、プラスチック積層体製造装置70は、下側ダイプレート71、上側ダイプレート72及び図示しないタイバーを有したプレス機73を備えており、プレス機73は、下側ダイプレート71に対して鉛直方向に延在する状態でタイバーが設置されていて、上側ダイプレート72が、タイバーに沿って上下方向に移動可能となっていて、下側ダイプレート71との間に所定の圧力を付加することができる構造となっている。なお、プレス機73は、上側ダイプレート72が移動する場合だけでなく、下側ダイプレート71が移動してもよく、また、下側ダイプレート71と上側ダイプレート72の双方が移動するようになっていてもい。
【0074】
そして、下側ダイプレート71には、転写駒74が固定されており、上側ダイプレート72には、加圧部材75が固定されている。
【0075】
転写駒74は、加圧部材75に対向する側の面は、図11(a)に破線で示すように、所望の最終形状に凹面形状に加工された転写面76が形成されており、転写駒74の上側外周部、すなわち、転写面76の有効範囲外には、加圧部材75の移動方向(加圧方向)に対して直角方向に所定幅にわたって延在する略平面状の受け部77が形成されており、受け部77には、所定間隔で所定数、本実施例では、図11(b)に示すように、等間隔で4つの溝部78が形成されている。溝部78は、受け部77から加圧部材75方向に所定量突出した一対の溝形成凸部78aによって形成されており、溝形成凸部78aは、その相対向する面が溝部78の底方向に向かって幅が狭くなるように傾斜した状態で形成されている。すなわち、溝部78は、上部開口側ほど広くなるテーパー形状に形成されている。
【0076】
上記加圧部材75は、転写駒74に対向する側の面が、略平面形状に形成されているとともに、転写駒74の受け部77と対向する所定幅の円形状部分に、所定量帯状に突出した押圧部75aが形成されている。
【0077】
なお、図示しないが、転写駒74には、転写面76の有効範囲外の位置で当該転写面76に開口する連通孔が形成されており、連通孔は、転写駒74の外部に設置されている真空吸引装置に連通している。
【0078】
また、プラスチック積層体製造装置70は、図示しないが、第1実施例と同様に、プレス機73の外部に赤外線ヒータ、反射板及び反射ミラーからなる加熱装置(加熱手段)が配設されており、加熱装置は、赤外線ヒータが赤外線を出射して、反射板がこの赤外線を反射ミラー方向に反射する。反射ミラーは、赤外線ヒータ及び反射板からの赤外線を転写駒74の転写面76方向に反射して照射する。
【0079】
そして、プラスチック積層体製造装置70は、上記転写駒74と加圧部材75との間に、プラスチック基材80及び図示しない中間部材と予め所望の機能膜の形成されている表層シートが、転写面76の形成されている転写駒74側に表層シートが位置する状態で、配置され、この表層シートのプラスチック基材80側の面に、中間部材が積層される。
【0080】
このプラスチック基材80は、図11(b)に示すように、例えば、軟化温度150℃のポリカーボネイト樹脂を使用して、上記転写駒74と加圧部材75との間に配置されたときに、転写駒74の転写面76側となる基材転写面21の形状が当該基材転写面21側が突出した凸面形状である略最終形状に予め加工されており、その基材転写面21の外周上部に、プラスチック基材80が上記転写駒74と加圧部材75との間に配置されたときに加圧方向となる方向に対して直角方向に所定幅で延在する平面状のつば部(平面部)78が、上記転写駒74の受け部77の溝部78に対応する位置に対応する数だけ、当該つば部78に進入する形状に形成されている。すなわち、プラスチック基材80は、転写駒74上に配置されたときに、転写駒74の溝部78内に、プラスチック基材80のつば部81のみが、転写駒74の受け部77上の溝部78に位置することで、プラスチック基材80の位置決めを行う。
【0081】
また、プラスチック基材80のつば部81の厚さは、転写駒74の溝部78の深さよりも厚く形成されており、プラスチック基材80のつば部81を転写駒74の溝部78に進入させたとき、図10及び図11(a)に示すように、プラスチック基材80のつば部81が、転写駒74の溝部78を形成する溝形成凸部78aの上面よりも加圧部材75方向に所定量突出した状態となっている。
【0082】
さらに、プラスチック基材80のつば部81は、前記転写駒74方向に向かってその幅が狭くなる傾斜面(テーパー形状面)に形成されており、このつば部81の傾斜面の傾斜角度は、転写駒74の溝部78の傾斜面の傾斜角度と略同じ角度になっている。
【0083】
そして、本実施例のプラスチック積層体製造装置70は、上記第1の実施例のプラスチック積層体製造装置1の場合と同様の製造工程を行うことで、プラスチック積層体を製造することができる。
【0084】
そして、本実施例のプラスチック積層体製造装置70では、転写駒74の転写面76が凹面形状となっていて、当該転写面76上に、プラスチック基材80、中間部材及び表層シートが積層配置されるが、転写駒74の受け部77には、4つの溝部78が形成されており、プラスチック基材80には、この溝部78に相対向する位置に当該溝部78に進入する4つのつば部81が形成されている。
【0085】
したがって、転写駒74に、プラスチック基材80、中間部材及び表層シートを積層配置する場合、プラスチック基材80のつば部81のみが転写駒74の溝部78に位置して、プラスチック基材80の位置決めを行う。
【0086】
そして、加圧時、加圧部材75の押圧部75aが、転写駒74の溝部78に進入しているプラスチック基材80のつば部81のみを押圧する。
【0087】
このように、本実施例のプラスチック積層体製造装置70は、転写駒74の受け部77に形成されている溝部78に、プラスチック基材80のつば部81を進入させて位置決めして、この転写駒74の溝部78に進入しているプラスチック基材80のつば部81のみを押圧することで、成形を行っている。
【0088】
したがって、加圧時に、プラスチック基材80を傾けることなく、均一に押圧することができ、成形品であるプラスチック積層体の形状品質を向上させることができる。
【0089】
また、プラスチック基材80に、転写駒の溝部78に進入するつば部81を形成するだけで、その他に当該つば部81に凹凸等を形成する必要がなく、プラスチック基材80の生産コストを低減することができる。
【0090】
さらに、本実施例のプラスチック積層体製造装置70は、転写駒74の受け部77に形成されている溝部78に、プラスチック基材80のつば部81を進入させて位置決めしているので、プラスチック基材80と転写駒74との回転方向に対する位置決めを適切に行うことができ、成形品であるプラスチック積層体の形状品質をより一層向上させることができる。
【0091】
また、本実施例のプラスチック積層体製造装置70は、転写駒74の溝部78を形成する溝形成凸部78aを、その相対向する面が溝部78の底方向に向かって幅が狭くなるように傾斜した状態(テーパー形状)で形成されおり、溝部78が、上部開口側ほど広くなっている。
【0092】
したがって、プラスチック基材80のつば部81を転写駒74の溝部78に進入させる際に、エッジが削れて、異物の原因となることを削減することができ、成形品であるプラスチック積層体の形状品質をより一層向上させることができる。
【0093】
さらに、本実施例のプラスチック積層体製造装置70は、プラスチック基材80のつば部81の厚さは、転写駒74の溝部78の深さよりも厚く形成されている。
【0094】
したがって、プラスチック基材80のつば部81を転写駒74の溝部78に進入させたとき、プラスチック基材80のつば部81が、転写駒74の溝部78を形成する溝形成凸部78aの上面よりも加圧部材75方向に所定量突出した状態となり、加圧部材75の押圧部75aがプラスチック基材80のつば部81のみを確実に加圧することができ、成形品であるプラスチック積層体の形状品質をより一層向上させることができる。
【0095】
なお、上記各実施例においては、プラスチック基材16、49、80の外周部に、つば部22、52、81を形成しているが、つば部22、52、81の形成位置は、プラスチック基材16、49、80の外周部に限られるものではない。
【0096】
そして、上記各実施例において、表層シート7、46に機能膜を形成する場合、例えば、Al蒸着膜を形成すると、高精度なプラスチックミラーを製造することができる。
【0097】
すなわち、従来、プラスチックミラーは、上述のように、射出成形等で形状を創成した後に、蒸着等によって反射面を形成しているため、プラスチック成形体の加工設備に加えて、さらに、別に、金属反射膜を形成するための蒸着設備が必要になるだけでなく、金属反射膜を形成する対象の形状が大きくなると、1バッチあたりの取り数が少なくなり、蒸着コストが大きくなる。
【0098】
ところが、上記各実施例のプラスチック積層体製造装置1、40、70では、予め金属反射膜の形成されている反射フィルムを表層シート7、46として使用することで、後蒸着を行う必要がなく、コストを大幅に改善することができる。
【0099】
また、機能膜として反射防止膜を形成した表層シート7、46を用いることで、反射防止膜の形成されたレンズを安価にかつ高精度に製造することができ、また、印刷等の行われた加飾シートを表層シート7、46を用いることで、自動車内装部品等の外観部品をも安価にかつ高精度に製造することができる。
【0100】
以上、本発明者によってなされた発明を好適な実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は上記のものに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0101】
大型ミラー、レンズ、外観部品等のプラスチック積層体を高精度にかつ安価に製造するプラスチック積層体の製造方法及び当該製造方法で製造されるプラスチック積層体に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明のプラスチック積層体の製造方法及びプラスチック積層体の第1実施例を適用したプラスチック積層体製造装置の正面概略構成図。
【図2】プラスチック基材の上面図(a)とA−A矢視断面図(b)。
【図3】図1の転写駒上に表層シートと中間部材を配置せずにプラスチック基材を配置して加圧部材で加圧した場合の正面断面図。
【図4】一般的なプラスチック積層体製造装置のプラスチック基材と加圧部材に位置ずれがある場合の加圧前の正面断面図(a)と加圧時の正面断面図。
【図5】一般的なプラスチック積層体製造装置のプラスチック基材の加圧部材側の形状と加圧部材の形状が異なる場合の加圧前の正面断面図(a)と加圧時の正面断面図。
【図6】図1のプラスチック積層体製造装置によるプラスチック積層体の製造工程を示す図。
【図7】本発明のプラスチック積層体の製造方法及びプラスチック積層体の第2実施例を適用したプラスチック積層体製造装置の加圧時の正面概略構成図。
【図8】図7のプラスチック積層体製造装置の加圧解除後の正面概略構成図。
【図9】図7の加圧部材の他の例の斜視図。
【図10】本発明のプラスチック積層体の製造方法及びプラスチック積層体の第3実施例を適用したプラスチック積層体製造装置の加圧時の正面概略構成図。
【図11】図10の転写駒上にプラスチック基材を載置させた状態の正面図(a)と平面図(b)。
【符号の説明】
【0103】
1 プラスチック積層体製造装置
2 下側ダイプレート
3 上側ダイプレート
4 プレス機
5 転写駒
6 加圧部材
7 転写面
8 受け部
9 凸部
10 連通孔
11 真空吸引装置
12 赤外線ヒータ
13 反射板
14 反射ミラー
15 加熱装置
16 プラスチック基材
17 表層シート
18 中間部材
21 基材転写面
22 つば部
23 貫通孔
30 プラスチック積層体
40 プラスチック積層体製造装置
41 下側ダイプレート
42 上側ダイプレート
43 プレス機
44 転写駒
45 加圧部材
45a 外周壁部
46 転写面
47 受け部
48 凸部
49 プラスチック基材
49a 基材転写面
50 中間部材
51 表層シート
52 つば部
53 貫通孔
70 プラスチック積層体製造装置
71 下側ダイプレート
72 上側ダイプレート
73 プレス機
74 転写駒
75 加圧部材
76 転写面
77 受け部
78 溝部
78a 溝形成凸部
80 プラスチック基材
81 つば部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が最終形状に加工された転写面の形成されている型部材と当該型部材に対して相対向する状態で配設されている加圧部材との間に、予め略最終形状に加工されたプラスチック基材と予め所望の機能膜の形成されている表層シートを、熱可塑性樹脂からなる中間部材を間に挟んで当該表層シートが前記型部材側に位置する状態で配設して、前記型部材と前記加圧部材を相対移動させて、当該加圧部材で押圧される前記プラスチック基材が前記表層シートを前記型部材の前記転写面に押圧するとともに、少なくとも前記中間部材を当該中間部材の軟化温度以上に加熱して軟化させて、前記プラスチック基材、前記中間部材及び前記表層シートを密着一体化させるとともに、前記転写面形状に補正加工するプラスチック積層体の製造方法であって、前記プラスチック基材の転写有効範囲外の少なくとも1箇所以上に、前記加圧方向に対して直角方向に所定量延在する平面部を設け、前記型部材の前記転写有効範囲外に前記平面部の載置される受け部を設け、前記加圧部材が、前記プラスチック基材の前記平面部のみと接触して当該プラスチック基材の平面部を前記型部材の前記受け部に押圧することを特徴とするプラスチック積層体の製造方法。
【請求項2】
前記中間部材は、前記加圧前の厚さが、前記加圧時の前記プラスチック基材と前記型部材の前記転写面との間の空隙の最大幅以上の厚さを有していることを特徴とする請求項1記載のプラスチック積層体の製造方法。
【請求項3】
前記プラスチック積層体の製造方法は、前記加圧前に、前記中間部材を当該中間部材の軟化温度以上に加熱して当該中間部材のみを軟化させた状態とすることを特徴とする請求項1または請求項2記載のプラスチック積層体の製造方法。
【請求項4】
前記プラスチック基材の前記平面部と前記型部材の前記受け部は、相嵌合する凸部と凹部がそれぞれ相対応する複数の位置に形成されており、前記加圧時に、前記平面部と前記受け部の前記凸部と前記凹部が相嵌合することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のプラスチック積層体の製造方法。
【請求項5】
前記型部材の前記受け部は、所定深さの溝部が形成され、前記プラスチック基材の前記平面部は、前記受け部の前記溝部に侵入する形状に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のプラスチック積層体の製造方法。
【請求項6】
前記溝部に進入する前記平面部は、その厚さが当該溝部の深さよりも厚く形成されていることを特徴とする請求項5記載のプラスチック積層体の製造方法。
【請求項7】
前記溝部は、その側面が当該溝部の開口側ほど幅の広くなる傾斜面に形成されており、前記平面部は、その側面が前記溝部側ほど幅が狭くなる傾斜面に形成されていることを特徴とする請求項5または請求項6記載のプラスチック積層体の製造方法。
【請求項8】
前記加圧部材は、前記プラスチック基材の前記平面部と接触する部分が、前記加圧時に当該プラスチック基材の当該加圧部材側の面と所定距離を保つ量だけ前記型部材方向に突出した突出部として形成されていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載のプラスチック積層体の製造方法。
【請求項9】
前記プラスチック積層体の製造方法は、前記密着一体化した前記プラスチック基材、前記中間部材及び前記表層シートを前記型部材の前記転写面から離型する際に、前記プラスチック基材の前記加圧部材側の面を所定の加熱手段で加熱して、当該プラスチック基材の当該加圧部材側の温度を、当該プラスチック基材の前記転写面側の温度と同じ温度に温度調整することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載のプラスチック積層体の製造方法。
【請求項10】
前記加熱手段は、前記プラスチック積層体と非接触な状態で当該プラスチック積層体の前記加圧部材側の面を加熱する非接触加熱手段であることを特徴とする請求項9記載のプラスチック積層体の製造方法。
【請求項11】
少なくとも一方が最終形状に加工された転写面の形成されている型部材と当該型部材に対して相対向する状態で配設されている加圧部材との間に、予め略最終形状に加工されたプラスチック基材と予め所望の機能膜の形成されている表層シートが、熱可塑性樹脂からなる中間部材を間に挟んで当該表層シートが前記型部材側に位置する状態で配設され、前記型部材と前記加圧部材が相対移動されて、当該加圧部材によって押圧される前記プラスチック基材が前記表層シートを前記型部材の前記転写面に押圧するとともに、少なくとも前記中間部材が当該中間部材の軟化温度以上に加熱されて軟化して、前記プラスチック基材、前記中間部材及び前記表層シートが密着一体化されるとともに、前記転写面形状に補正加工されて製造されるプラスチック積層体であって、請求項1から請求項10のいずれかに記載の製造方法で製造されていることを特徴とするプラスチック積層体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−181909(P2006−181909A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−378991(P2004−378991)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】