説明

プラズマエッチング方法及びプラズマエッチング装置

【課題】アスペクト比エッチングを行う際に,エッチングレートとレジスト選択比の両方を従来以上に向上させることができるプラズマエッチング方法を提供する。
【解決手段】堆積性を有するエッチングガス(例えばフルオロカーボン系ガス)を含む処理ガスにSFガスを添加ガスとして加えて処理室102内に導入してプラズマを形成し,その際に添加ガスの流量を調整することによって,ウエハW上に堆積する堆積物の膜厚を制御するとともに,堆積物の硬さを制御しながら,被エッチング膜のエッチングを進行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,酸化膜などプラズマエッチング,例えば高アスペクト比コンタクト(HARC)プロセスに好適なプラズマエッチング方法及びプラズマエッチング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスにおいては,例えば半導体ウエハ(以下,単に「ウエハ」とも称する)やFPD基板などの基板表面に形成された被エッチング膜上に,フォトリソグラフィー工程によりフォトレジストパターンを形成し,これをマスクとして被エッチング膜のエッチングを行うようになっている。このようなエッチングには,処理室内に配置された基板上に処理ガスのプラズマを形成して,プラズマ中のイオンやラジカルなどの活性種によってエッチングを進行させるプラズマエッチング装置が用いられる。
【0003】
近年では,半導体集積回路の高密度化に伴い,半導体デバイスの微細化も進み,エッチングにおいても微細加工が要求されており,例えば高アスペクト比コンタクト(HARC)のプロセスにおいても,酸化膜などの被エッチング膜に形成されるホールやトレンチのアスペクト比が大きくなりつつある。
【0004】
このようなアスペクト比の大きなホールやトレンチを形成する場合には,従来より処理ガスとして堆積性を有するエッチングガス,例えばC,C,Cなどのフルオロカーボン系ガスが用いられている。このようなエッチングガスによれば,多量の活性種を供給しつつ,エッチングによる副生物,例えば炭素系ポリマーなどの堆積物の堆積を促進しながら被エッチング膜のエッチングを進行させることができる。これにより,エッチングレートを高め,かつレジスト選択比を向上させることが可能となる。
【0005】
ところが,このような堆積物(デポ)の膜厚によっては,エッチングがストップしてしまうため,これを避けるためにその堆積物の膜厚を調整することが必要となる。このような堆積物の膜厚の微調整には,従来より堆積物の除去作用を有するOガスが用いられてきた(例えば特許文献1参照)。具体的には,堆積性のエッチングガスにOガスを加えてプラズマを生成することで,過剰の堆積物を除去してその膜厚を調整しながら,エッチングを促進することができる。
【0006】
【特許文献1】特開2003−264178号公報
【特許文献2】特開2005−72518号公報
【特許文献3】特開2006−32721号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
今後半導体デバイスの微細化の要請は益々加速され,酸化膜に形成されるホールやトレンチのアスペクト比も更に大きくなりつつあり,エッチングレートも更に高いものが要求される。
【0008】
この点,上述した従来のように堆積性のエッチングガスにOガスを加えてプラズマエッチングを行う場合,そのOガスの流量比を増すことでエッチングレートを更に高めることができる。ところが,Oガスの流量比をさらに増加していくと,被エッチング膜のエッチングレートがある値を超えるとほとんど上昇しなくなる傾向がある。これに対して,Oガスの流量比を増加するほどフォトレジストパターン上のエッチングレートは増加する傾向にある。このため,Oガスの流量比を増加させてもエッチングレートがある値を超えると,被エッチング膜のエッチングレートが上昇しなくなるばかりか,レジスト選択比も低下してしまう。このため,Oガスの流量比を増やすだけでは,エッチングレートとレジスト選択比の両方を従来以上に高めるには限界がある。
【0009】
そこで,本発明者らは,堆積性を有するエッチングガスを用いて高アスペクト比エッチングを行う際に,被処理基板上に堆積する堆積物を制御するガスとして,従来から用いられていたOガスに代わるガスとして,従来は別の用途に用いられていたSFガスに着目した。
【0010】
このSFガスは,F(フッ素原子)の比率が非常に高いことから,従来は専らその点が着目され,例えばフォトレジストの荒れを抑えたり,処理室内の堆積物をクリーニングするためなどに用いられてきた(例えば上記特許文献2,3参照)。また,一般にプラズマエッチングにおいてFが多い(フッ素リッチ)ほど,エッチングレートを高くできる反面,レジスト選択比が低下する傾向があることが知られているため,従来からSFガスのようにFの比率が多いガスは,高い選択比が要求されるエッチングプロセスには添加ガスとしては用い難いと考えられていた。
【0011】
ところが,本発明者らは実験を重ねたところ,堆積性を有するエッチングガスにSFガスを添加ガスとして用いると,その流量を調整することによって,Oガスを添加ガスとして用いた場合に比してエッチングレートを大幅に向上でき,それだけではなく,レジスト選択比も併せて向上できることを見出した。
【0012】
そこで,本発明は,このような観点からなされたもので,その目的とするところは,高アスペクト比エッチングを行う際に,エッチングレートとレジスト選択比の両方を従来以上に向上させることができるプラズマエッチング方法等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために,本発明のある観点によれば,処理室内に所定のガスのプラズマを形成することにより,被処理基板上に形成された被エッチング膜に対してレジストパターンをマスクとしてエッチングを行うプラズマエッチング方法であって,堆積性を有するエッチングガス(例えばフルオロカーボン系ガス)を含む処理ガスを前記処理室内に導入するとともに,SFガスを添加ガスとして前記処理室内に導入してプラズマを形成し,その際に添加ガスの流量を調整することによって,前記被処理基板上に堆積する堆積物の膜厚を制御するとともに前記堆積物の硬さを制御しながら,前記被エッチング膜のエッチングを進行させることを特徴とするプラズマエッチング方法が提供される。
【0014】
上記課題を解決するために,本発明の別の観点によれば,処理室内に所定のガスのプラズマを形成することにより,被処理基板上に形成された被エッチング膜に対してレジストパターンをマスクとしてエッチングを行うプラズマエッチング装置であって,前記処理室内に堆積性のエッチングガス(例えばフルオロカーボン系ガス)を含む処理ガスを供給する処理ガス供給系と,前記処理室内にSFガスを添加ガスとして供給する添加ガス供給系と,前記処理室内に前記処理ガス供給系から前記処理ガスを供給すると共に,前記添加ガス供給系から前記添加ガスを供給してプラズマを形成し,その際に添加ガスの流量を調整することによって,前記被処理基板上に堆積する堆積物の膜厚を制御するとともに前記堆積物の硬さを制御しながら,前記被エッチング膜のエッチングを進行させる制御部とを備えたことを特徴とするプラズマエッチング装置が提供される。
【0015】
このような本発明によれば,堆積性を有するエッチングガスを含む処理ガスにSFガスを添加ガスとして加えて,これらのプラズマを形成して被処理基板上の被エッチング膜のエッチングを行う。このように堆積性を有するエッチングガスを用いることによって,エッチング副生物である堆積物が被処理基板上に堆積しながらエッチングが進行する。
【0016】
このとき,添加ガスにSFガスを用いることによって,その流量に応じて,主としてF(フッ素原子)の作用により堆積物の膜厚を効果的に制御することができるので,Oガスの場合よりもエッチングレートを高めることができる。しかも,主としてS(硫黄原子)の作用により堆積物の硬さまでも効果的に制御することができるので,Oガスを用いた場合よりもレジスト選択比をより高くすることができる。これにより,エッチングレートとレジスト選択比の両方を従来以上に高めることができ,高アスペクト比のホールやトレンチを従来以上に効率よく形成することができる。
【0017】
また,上記添加ガスの流量は,その流量を変えてエッチングを行ったときのエッチングレートとレジスト選択比の関係に基づいて,前記エッチングレートと前記レジスト選択比の両方が上昇傾向にある範囲で設定することが好ましい。これによれば,添加ガスの流量の好適な範囲を容易に見つけ出すことができる。このような添加ガスの流量の好適な範囲は,処理ガスの種類などによって異なるが,実用的には処理ガスの流量に対して1/10(10%)以下の範囲で好適な流量を設定することが好ましい。また,この場合,添加ガスの流量を前記レジスト選択比が上昇傾向から下降傾向に変わるときの変化点での流量に設定するようにしてもよい。これにより,エッチングレートとレジスト選択比の両方が最も高くなる最適な流量を設定することができる。
【0018】
また,上記添加ガスとして,前記SFガスにさらにOガスを加えるようにしてもよい。これによれば,Oガスの流量によって堆積物の膜厚の微調整を容易にできる。すなわち,Oガスの方がSFガスよりも堆積物を除去する能力が低いので,Oガスを含めた方が堆積物の膜厚の微調整が容易となる。
【0019】
また,上記エッチングガスとして用いるフルオロカーボン系原料が常温で液体の場合には,その液体原料を気化器により気化させてから前記処理室内に供給するようにしてもよい。フルオロカーボン系ガスとしてはF/C比が小さいほど堆積性が高くなるので,高アスペクト比エッチングに適するものの,F/C比が小さいと常温では液体であるものも多い。このようなフルオロカーボン系原料も気化器を用いて気化させることで,エッチングガスとして用いることができるようになる。しかも,このように堆積物が多くなるフルオロカーボン系ガスほど,SFガスを添加したときの効果が大きくなる。
【0020】
なお,本明細書中1mTorrは(10−3×101325/760)Pa,1sccmは(10−6/60)m/secとする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば,堆積性のエッチングガスを用いて高アスペクト比エッチングのプロセスを行う際に,被処理基板上に堆積する堆積物の膜厚を制御するとともに堆積物の硬さを制御しながら,被エッチング膜のエッチングを進行させることによって,エッチングレートとレジスト選択比の両方を従来以上に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に添付図面を参照しながら,本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお,本明細書及び図面において,実質的に同一の機能構成を有する構成要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0023】
(プラズマエッチング装置の構成例)
まず,本発明の実施形態にかかるプラズマエッチング装置の構成例について説明する。図1は,本実施形態にかかるプラズマエッチング装置100の概略構成を示す断面図である。ここでは,高アスペクト比エッチングのプロセスを実行可能な平行平板型電極構造の容量結合型のプラズマエッチング装置を例に挙げて説明する。
【0024】
図1に示すように,プラズマエッチング装置100は,略円筒形状の処理容器により構成される処理室102を備える。処理室102は,例えばアルミニウム合金により形成され,その内壁面は例えばアルミナ膜などにより被覆されている。処理室102は接地されている。
【0025】
処理室102の底部には,下部電極110が設けられている。下部電極110は,処理室102の底部にセラミックス等からなる絶縁板112を介して配置された円柱状のサセプタ支持台114と,このサセプタ支持台114の上に設けられたサセプタ116を備える。サセプタ116は下部電極の本体を構成し,その上にはウエハWが載置される。この点で,下部電極110はウエハWを載置する載置台としても機能する。
【0026】
サセプタ116の上面には,ウエハWを静電力で吸着保持する静電チャック120が設けられている。静電チャック120は,導電膜からなる電極122を一対の絶縁層または絶縁シートで挟んで構成され,電極122には直流電源124が電気的に接続されている。直流電源124から電極122に直流電圧を印加すると,静電チャック120の上面にクーロン力等の静電力が生じ,これによりウエハWが吸着保持される。
【0027】
サセプタ116の上面には静電チャック120とウエハWの周囲を囲むように,エッチングの均一性を向上させるためのフォーカスリング(補正リング)126が配置されている。フォーカスリング126は,導電性部材(例えばシリコン)で構成される。
【0028】
サセプタ支持台114内には,例えば円周上に冷媒室128が設けられている。冷媒室128には,外部に設けられた図示しないチラーユニットからの冷媒(例えば冷却水)が循環供給されるようになっている。この冷媒の温度によってサセプタ116上のウエハWの処理温度を制御できる。
【0029】
サセプタ支持台114内には,図示しない伝熱ガス供給機構からの伝熱ガス(例えばHeガス)が伝熱ガス供給ライン129を介して静電チャック120の上面とウエハWの裏面との間に供給される。
【0030】
なお,下部電極110は,図1に示す構成に限られるものではなく,例えば絶縁板112と処理室102の底面との間にアルミニウム製のベローズを介在させて,昇降機構(図示せず)を用いて下部電極110が昇降可能に構成してもよい。これによれば下部電極110と上部電極140の間隔を調整することができる。
【0031】
下部電極110の上方には,下部電極110と対向するように平行に上部電極140が設けられている。この上部電極140と下部電極110の間に形成される空間がプラズマ生成空間となる。上部電極140は,絶縁性遮蔽部材142を介して,処理室102の天井部に支持されている。
【0032】
上部電極140は,主として電極板143とこれを着脱自在に支持する電極支持体144とによって構成される。電極支持体144にはエッチングに必要なガス(後述する処理ガス及び添加ガス)を処理室102内に導入するためのガス導入口145が設けられている。
【0033】
ガス導入口145には,堆積性を有するエッチングガスを含む処理ガスを供給する処理ガス供給系として,処理ガス供給源170が処理ガス供給管172を介して接続されている。また,ガス導入口145には,エッチング副生成物である堆積物(デポ)を制御する添加ガスを供給する添加ガス供給系として添加ガス供給源180が添加ガス供給管182を介して接続されている。
【0034】
具体的には,これら処理ガス供給管172と添加ガス供給管182はそれぞれガス供給管146を介してガス導入口145に接続されている。これにより,処理ガス供給管172からの処理ガスと添加ガス供給管182からの添加ガスはガス供給管146で合流してガス導入口145から供給される。
【0035】
処理ガス供給管172,182にはそれぞれ,開閉バルブ174,184,ガスの流量を制御する流量調整器としてのマスフローコントローラ176,186が設けられている。なお,これらの処理ガスと添加ガスの具体例については後述する。
【0036】
電極支持体144には,例えば略円筒状のガス拡散室148が設けられ,ガス供給管146から導入されたガスを均等に拡散させることができる。電極支持体144の底部と電極板143には,ガス拡散室148からのガスを処理室102内に吐出させる多数のガス吐出孔149が形成されている。ガス拡散室148で拡散されたガスを多数のガス吐出孔149から均等にプラズマ生成空間に向けて吐出できるようになっている。この点で,上部電極140は処理室102内にガスを供給するためのシャワーヘッドとしても機能する。
【0037】
なお,図1には処理ガス供給系と添加ガス供給系に大きく分けた場合を挙げているが,これに限定されるものではない。例えば処理ガスとして複数種類のガスを供給する場合には,処理ガス供給系を複数系統で構成してもよい。同様に添加ガスとして複数種類のガスを供給する場合には,添加ガス供給系を複数系統で構成してもよい。なお,処理ガスと添加ガスとの具体例については後述する。
【0038】
また,本実施形態にかかる上部電極140は,処理ガスと添加ガスを予め混合して処理室102内に供給するいわゆるプリミックスタイプで構成した場合を例に挙げているが,上部電極140を各ガスを独立して処理室102内に供給するポストミックスタイプで構成してもよい。
【0039】
本実施形態では,上部電極140の電極支持体144は導電性材料(例えば表面が陽極酸化処理されたアルミニウム)で構成されており,図示しない水冷構造を有する。電極板143は,ジュール熱の少ない低抵抗の導電体または半導体,例えばシリコン含有材料で構成することが好ましい。このような材料としては例えばシリコンやSiCが挙げられる。
【0040】
上部電極140には,整合器152を介して第1高周波電源(上部高周波電源)150が電気的に接続されている。第1高周波電源150は,13.56MHz以上の周波数,例えば60MHzの高周波電力(上部高周波電力)を出力する。第1高周波電源150の高周波電力の大きさは可変できるようになっている。
【0041】
整合器152は,第1高周波電源150の内部(または出力)インピーダンスに負荷インピーダンスを整合させるもので,処理室102内にプラズマが生成されている時に第1高周波電源150の出力インピーダンスと負荷インピーダンスが見かけ上一致するように機能する。
【0042】
下部電極110のサセプタ116には,整合器162を介して第2高周波電源(下部高周波電源)160が電気的に接続されている。この第2高周波電源160からサセプタ116に高周波電力が供給されることにより,ウエハW側にイオンが引き込まれる。第2高周波電源160は,300kHz〜13.56MHzの範囲内の周波数,例えば2MHzの高周波電力(下部高周波電力)を出力する。第2高周波電源160の高周波電力の大きさは可変できるようになっている。
【0043】
整合器162は第2高周波電源160の内部(または出力)インピーダンスに負荷インピーダンスを整合させるためのもので,処理室102内にプラズマが生成されている時に第2高周波電源160の内部インピーダンスと負荷インピーダンスが見かけ上一致するように機能する。
【0044】
上部電極140には,第1高周波電源150からの高周波は通さずに第2高周波電源160からの高周波をグランドへ通すためのローパスフィルタ(LPF)154が電気的に接続されている。このローパスフィルタ(LPF)154は,好適にはLRフィルタまたはLCフィルタで構成されるが,1本の導線だけでも第1高周波電源150からの高周波に対しては十分大きなリアクタンスを与えることができるので,それで済ますこともできる。一方,下部電極110のサセプタ116には,第1高周波電源150からの高周波をグランドに通すためのハイパスフィルタ(HPF)164が電気的に接続されている。
【0045】
処理室102の底部には排気口104が形成されており,排気口104には真空ポンプなどで構成された排気装置190が接続されている。排気装置190により処理室102内を排気することによって処理室102内を所定の真空圧力に減圧することができる。
【0046】
また,処理室102の側壁にはウエハWの搬入出口106が設けられており,この搬入出口106はゲートバルブ108により開閉可能となっている。なお,処理室102の内壁には,処理室102にエッチング副生物(デポ)が付着することを防止するデポシールド(図示しない)を着脱自在に設けるようにしてもよい。
【0047】
プラズマエッチング装置100の各構成部は,制御部(全体制御装置)200に接続されて制御される構成となっている。また,制御部200には,工程管理者などがプラズマエッチング装置100を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや,プラズマエッチング装置100の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなる操作部210が接続されている。
【0048】
さらに,制御部200には,プラズマエッチング装置100で実行される各種処理を制御部200の制御にて実現するためのプログラムやプログラムを実行するために必要なレシピデータなどが記憶された記憶部220が接続されている。
【0049】
記憶部220には,例えばウエハのプラズマエッチング,アッシングなどのプロセス処理を実行するためのプロセスレシピ,処理室内のクリーニングを実行するためのクリーニングレシピなど必要な処理を行うためのレシピなどが記憶されている。これらのレシピは,プラズマエッチング装置100の各部を制御する制御パラメータ,設定パラメータなどの複数のパラメータ値をまとめたものである。例えばプロセスレシピは,例えば処理ガス,添加ガスの流量比,処理室内圧力,上部高周波電力,下部高周波電力,上部電極温度,下部電極温度などのパラメータ値を有する。
【0050】
なお,これらのレシピはハードディスクや半導体メモリーに記憶されていてもよく,またCD−ROM,DVD等の可搬性のコンピュータにより読み取り可能な記憶媒体に収容された状態で記憶部220の所定位置にセットするようになっていてもよい。
【0051】
制御部200は,操作部210からの指示等に基づいて所望のプロセスレシピを記憶部220から読み出して各部を制御することで,プラズマエッチング装置100での所望の処理を実行する。また,操作部210からの操作によりレシピを編集できるようになっている。
【0052】
(プラズマエッチング方法)
次に,このようなプラズマエッチング装置で実施される,本発明の実施形態にかかるプラズマエッチング方法について説明する。本実施形態では,例えばシリコン基材上の被エッチング膜(例えばシリコン酸化膜)上にフォトレジストパターンが形成されたウエハWを用いる。フォトレジストパターンには,ホールやトレンチのパターンが形成されており,このフォトレジストパターンをマスクとして被エッチング膜をエッチングする。被エッチング膜としては,シリコン酸化膜の他,シリコン窒化膜,シリコン炭化膜,ポリシリコン膜,層間低誘電率膜などであってもよい。
【0053】
このようなウエハWに対してプラズマエッチング装置100を用いてプラズマエッチングを行う場合には,先ずゲートバルブ108を開放してウエハWを搬入して下部電極110上に載置し,ウエハWを静電チャック120により吸着保持させて,ゲートバルブ108を閉じる。
【0054】
処理室102内を排気装置190により排気して所定の真空圧力に減圧しながら,処理室102内に処理ガス供給源170からの処理ガスと添加ガス供給源180からの添加ガスをそれぞれ所定の流量で導入する。このとき,ウエハWを効率よく冷却するために,伝熱ガス供給ライン129を介して伝熱ガス(例えばHeガス)をウエハWの裏面に供給し,上部電極140,下部電極110及び処理室102の側壁を所定の温度に調整する。
【0055】
そして,上部電極140に第1高周波電源150から所定の上部高周波電力(60MHz)を印加するとともに,下部電極110には所定の下部高周波電力(2MHz)を供給する。これにより,ウエハW上のプラズマ生成空間に処理ガス及び添加ガスのプラズマが形成され,ウエハW上の被エッチング膜に対してプラズマエッチングが行われる。
【0056】
このときのエッチング条件としては,例えば上部高周波電力が500W〜3500W程度,下部高周波電力が100W〜2500W程度,処理室102内の圧力は15mTorr程度,ウエハWの温度は−20℃〜100℃程度が好ましい。
【0057】
また,本実施形態のように高アスペクト比コンタクト(HARC)を形成する場合には,処理ガスとして堆積性を有するエッチングガスを用いることが好ましい。このようなエッチングガスとして,例えばC,C,Cなどのフルオロカーボン系ガスを用いる。このようなガスでは,CF系ラジカル(CF,CF,CF)などの多量の活性種を供給しつつ,ウエハW上にエッチング副生物として例えばフルオロカーボン系ポリマー(CF系ポリマー)からなる堆積物(デポ)の堆積を促進しながら被エッチング膜のエッチングを進行させることができる。これにより,エッチングレートを高め,かつレジスト選択比を向上させることが可能となる。
【0058】
ところが,このようなウエハW上に堆積する堆積物の膜厚によっては,エッチングがストップしてしまうため,これを避けるためにその堆積物の膜厚を調整することが必要となる。例えばフルオロカーボン系ガスは,C(炭素原子)とF(フッ素原子)を含むCガスである。このようなフルオロカーボン系ガスでは,Cが少なくFが多くなる(Fリッチ)ほどエッチングレートが高くなり,Cが多くFが少なくなる(Cリッチ)ほどウエハWにCF系ポリマーの堆積物が堆積し易くなる。このように,CとFとの比(F/C比)によって堆積物の量が変わるので,このF/C比によってはエッチングが進行し易かったり,エッチングストップし易かったりする傾向がある。
【0059】
ここで,フルオロカーボン系ガスのF/C比がエッチングに与える影響を図2を参照しながら説明する。図2は,F/C比とウエハWに生じる自己バイアス電圧がエッチングに与える影響を示す図である。図2に示すように,F/C比が小さいガスほど,堆積物が多くなりエッチングレートが低くなる。これに対してF/C比が大きいガスほど,堆積物が少なくなりエッチングレートが高くなる。堆積物が多くなり過ぎるとエッチングストップが発生し,エッチングが進まなくなる。図2ではエッチングストップが発生する境界を点線で示す。
【0060】
これによれば,例えばCF(F/C比4)などは,Cに比してFの比率が高いため,CFの単ガスでも高いエッチングレートでエッチングを進行させることができる。ところが,堆積物が極めて少ないため,高アスペクト比エッチングには適していない。これに対して,C(F/C比1.5),C(F/C比1.6)などは,堆積物が多いので,高アスペクト比エッチングには適している。従って,本実施形態ではこのようなF/C比が3以下のフルオロカーボン系ガスをエッチングガスとして用いることが好ましい。
【0061】
このようなフルオロカーボン系ガスはF/C比が小さいので,高いエッチングレートでエッチングを進行させることができない。そこで,このような堆積性を有するエッチングガスにOガスやSFガスを添加ガスとして加えることで,図2の矢印の方向に移行させることができるため,エッチングレートを高めることができる。
【0062】
このような添加ガスの作用は以下の通りである。従来のOガスを添加ガスとして加えた場合には,例えばO+C→COなどの化学反応が進んでCが減少し,相対的にFを多くすることができるのでF/C比が大きくなる方向に移行させることができる。しかも,Oの堆積物除去作用によって堆積物の膜厚を減少させることができるので,エッチングレートを高めることができる。
【0063】
ところが,Oガスを添加し過ぎると,堆積物の膜厚が薄くなり過ぎ,Cの減少量も増える。Cは被エッチング膜である酸化膜のOを減少させるので,Cの減少が大きいとエッチングが進まなくなる。従って,Oガスを増加していっても,被エッチング膜のエッチングレートがある点を超えると,ほとんど上昇しなくなる傾向がある。
【0064】
これに対して,SFガスを添加ガスとして加えた場合には,Fが増えるため,F/C比が大きくなる方向に移行させることができる。しかも,SFガスはFの比率が高いため,FをCに対して大幅に増やすことができ,さらに堆積物除去作用もOよりも大きい。このため,エッチングレートをOガスの場合に比して大幅に高めることができる。しかも,SFガスの場合にはOガスの場合よりもCの減少を抑えられるので,SFガスの流量比を増加していくと,Oガスの場合よりもさらに高いレベルまでエッチングレートの上昇傾向が続いていく。
【0065】
ところで,このSFガスは,F(フッ素原子)の比率が非常に高いことから,従来は専らその点が着目され,例えばフォトレジストの荒れを抑えたり,処理室内の堆積物をクリーニングするためなどに用いられてきた。また,プラズマエッチングにおいてF(フッ素原子)が多い(フッ素リッチ)ほど,エッチングレートを高くできる反面,レジスト選択比が低下する傾向があることが知られているため,従来からSFガスのようにFの比率が多いガスは,高い選択比が要求されるエッチングプロセスには添加ガスとしては用い難いと考えられていた。
【0066】
ところが,本発明者らは実験を重ねたところ,堆積性を有するエッチングガスにSFガスを添加ガスとして用いると,その流量を調整することによって,Oガスを添加ガスとして用いた場合に比してエッチングレートを大幅に向上でき,それだけではなく,レジスト選択比も併せて向上できることを見出した。
【0067】
そこで,本実施形態では,処理ガスとして堆積性のエッチングガス(例えばC,C,CなどのF/C比が3以下のフルオロカーボン系ガス)を用いるとともに,添加ガスとしてSFを用いる。また,処理ガスには,Arガスなどの希ガスを加えるようにしてもよい。処理ガスにArガスを加えることにより,プラズマ中の電子とイオンを増やすことができるので,プラズマ密度を増加させることができる。
【0068】
なお,フルオロカーボン系ガスのうちF/C比が低いものには,例えばCのように常温で液体のものもある。このような場合には,図1に示す処理ガス供給源170を,例えば液体原料供給源と気化器とにより構成し,液体原料供給源から供給されるCなどの液体原料を気化器で気化させてから処理室102に導入するようにすることが好ましい。
【0069】
(添加ガスの効果を検証する実験)
ここで,このような堆積性を有するエッチングガスにSFガスを添加ガスとして加えた場合の効果を検証する実験を行った結果について図面を参照しながら説明する。先ず,処理ガスとしてCガスとArガスを用いるとともに添加ガスとしてSFガスを用いてプラズマエッチングを行った場合の実験結果を図3,図4に示す。
【0070】
また,比較例としてSFガスの代わりにOガスを添加ガスとして用いて同様のプラズマエッチングを行った場合の実験結果を図5,図6に示す。図7は,図3〜図6の結果に基づいて,添加ガスとしてSFガスを用いた場合(白丸)と,Oガスを用いた場合(黒丸)の場合における添加ガスの流量に対するエッチング特性,すなわちシリコン酸化膜のエッチングレートとレジスト選択比(シリコン酸化膜のエッチングレート/フォトレジスト膜のエッチングレート)の関係をグラフにまとめたものである。
【0071】
図3は,ウエハW上に形成されたシリコン酸化膜をエッチングしたときのSFガスの流量比とエッチングレートとの関係をグラフにしたものである。図3の実験では,CガスとArガスの流量をそれぞれ22sccm,300sccmに固定し,SFガスの流量を8sccm,10sccm,11sccm,12sccm,15sccm,20sccm,25sccmに変えてプラズマエッチングを行ってそれぞれのエッチングレートのウエハ面内分布を測定してその平均をとってグラフにプロットした。
【0072】
図4は,ウエハW上に形成されたフォトレジスト膜をエッチングしたときのSFガスの流量比とエッチングレートとの関係をグラフにしたものである。図4の実験ではCガスとArガスの流量をそれぞれ22sccm,300sccmに固定し,SFガスの流量を10sccm,11sccm,12sccm,15sccm,20sccm,25sccmに変えてプラズマエッチングを行ってそれぞれのエッチングレートのウエハ面内分布を測定してその平均をとってグラフにプロットしたものである。
【0073】
図5は,ウエハW上に形成されたシリコン酸化膜をエッチングしたときのOガスの流量比とエッチングレートとの関係をグラフにしたものである。図5の実験では,CガスとArガスの流量をそれぞれ22sccm,300sccmに固定し,Oガスの流量を18sccm,19sccm,20sccm,22sccm,24sccm,26sccm,28sccmに変えてプラズマエッチングを行ってそれぞれのエッチングレートのウエハ面内分布を測定してその平均をとってグラフにプロットした。
【0074】
図6は,ウエハW上に形成されたフォトレジスト膜をエッチングしたときのOガスの流量比とエッチングレートとの関係をグラフにしたものである。図6の実験では,CガスとArガスの流量をそれぞれ22sccm,300sccmに固定し,Oガスの流量を18sccm,19sccm,20sccm,22sccm,24sccm,26sccm,28sccmに変えてプラズマエッチングを行ってそれぞれのエッチングレートのウエハ面内分布を測定してその平均をとってグラフにプロットした。
【0075】
なお,これらの実験におけるその他のエッチング条件は下記の通りである。
[エッチング条件]
処理室内圧力:15mTorr
上部高周波電力:2000W
下部高周波電力:1500W
上部電極温度:60℃
下部電極温度:0℃
側壁温度:50℃
伝熱ガスのセンタ圧力:10Torr
伝熱ガスのエッジ圧力:35Torr
【0076】
図3,図5の実験結果によれば,シリコン酸化膜のエッチングレートは,添加ガスとしてOガスを用いた場合には図5に示すようにその流量が20sccm以上で4000オングストローム/min前後にとどまる。これに対して,添加ガスとしてSFガスを用いた場合には図3に示すようにその流量が11sccm以上で5000〜6000オングストローム/min程度の範囲にあり,Oガスを用いた場合に比して極めて高い水準であることがわかる。
【0077】
また,SFガスを用いた場合には図3に示すように,5000オングストローム/min程度よりも低い範囲では,SFガスの流量を僅かに増やすだけで急激にエッチングレートが高くなるのに対して,5000オングストローム/min程度を超える範囲では,SFガスの流量を増やしてもエッチングレートは徐々に増加しているものの,その変化量はそれほど大きくならない。これに対して,Oガスを用いた場合には図5に示すように20sccm以上では24sccmくらいまではエッチングレートにそれほどの変化はなく,さらに流量を増やしていくと,エッチングレートが減少に転じることがわかる。これによれば,SFガスの場合はその流量を増やすほどエッチングレートを高めることができるのに対して,Oガスの場合は流量を増やし過ぎるとエッチングレートが低くなっていくことがわかる。
【0078】
図4,図6の実験結果によれば,フォトレジスト膜のエッチングレートは,添加ガスとしてOガスを用いた場合には図6に示すように200〜800オングストローム/min程度の範囲で徐々に増加する。これに対して,添加ガスとしてSFガスを用いた場合には図4に示すように200〜1500オングストローム/min程度の範囲で徐々に増加しており,Oガスを用いた場合よりも若干高めに推移しているものの,流量が少ない範囲(Oガスでは24sccm以下の範囲,SFガスでは11sccm以下の範囲)ではエッチングレートがほとんど変わらない。従って,SFガスではシリコン酸化膜のエッチングレートがOガスの場合に比して非常に高いのでその分,レジスト選択比はOガスに比して高くなることがわかる。
【0079】
以上の検証を踏まえて図7にまとめたエッチング特性を見ると,添加ガスとしてSFガスを用いた場合(白丸)には,Oガスを用いた場合(黒丸)に比してエッチングレートとレジスト選択比がともに高くなることがわかる。これをさらに詳しく検証すると,添加ガスとしてSFガスを用いた場合(白丸)も,Oガスを用いた場合(黒丸)もある流量まではエッチングレートとレジスト選択比はともに徐々に高くなる上昇傾向にあり,ある流量を超えると急激にレジスト選択比が下降傾向に変化する。従って,その変化点での流量(図7において点線の丸で囲んだプロット)がエッチングレートとレジスト選択比の両方が最も高くなる最適な流量である。このときの各添加ガスの流量,すなわち添加ガスの最適な流量は,Oガスの場合は20sccmであり,SFガスの流量は11sccmである。すなわち,SFガスの流量はOガスの流量の1/2程度で最適になる。このように,エッチングレートとレジスト選択比との関係に基づいて添加ガスの流量を設定することにより,添加ガスの最適な流量を容易に見つけ出すことができる。
【0080】
また,添加ガスが最適な流量のときのエッチングレートは,Oガスを用いた場合は4000オングストローム/min程度であるのに対して,SFガスを用いた場合は5000オングストローム/minを超える極めて高い水準になる。しかも,そのときのレジスト選択比は,Oガスを用いた場合は13.0であるのに対して,SFガスを用いた場合は17.3であり,レジスト選択比もOガスよりも高くなっていることがわかる。
【0081】
なお,図7において,エッチングレートとレジスト選択比がともに上昇傾向にある範囲で添加ガスの流量を設定するようにしてもよい。例えばOガスの場合には,エッチングレートが略4000オングストローム/min前後ではレジスト選択比が減少傾向になる。このため,SFガスの流量としては略4000オングストローム/min以上となる範囲で流量を設定することによって,エッチングレートとレジスト選択比の両方を従来のOガスの場合よりも高めることができる。このように,エッチングレートとレジスト選択比との関係に基づいて添加ガスの流量を設定することにより,添加ガスの流量の好適な範囲を容易に見つけ出すことができる。
【0082】
このように,添加ガスとしてSFガスを用いた場合には,Oガスを用いた場合よりもエッチングレートが高くなるのは,上述したようにSFガスではOガスの場合よりもF(フッ素原子)がC(炭素原子)に比べて大幅に増えるため,フルオロカーボン系ポリマー(CF系ポリマー)である堆積物の膜厚をより効果的に調整できるからと考えられる。このように,SFガスの流量を調整することによって,堆積物の膜厚を制御することができる。
【0083】
また,SFガスを用いた場合もレジスト選択比が高くなるのは,Oガスを用いた場合と同様にシリコン酸化膜のエッチング面では,シリコン酸化膜に含まれる酸素がスパッタアウトされてCF系ポリマーの堆積物の分解に寄与するのに対し,フォトレジスト膜の表面では,イオン衝撃等によっても堆積物が容易には除去されないからである。
【0084】
さらに,添加ガスとしてSFガスを用いた場合に,Oガスを用いた場合よりもレジスト選択比がさらに高くなるのは,SFガスに含まれるS(硫黄原子)によって,CF系ポリマーの堆積物中にC−S結合が形成されるため,堆積物が硬くなり,シリコン酸化膜のエッチング面よりもフォトレジスト膜の表面のエッチングが遅れるからであると考えられる。このように,SFガスを用いた場合にはその流量を調整することにより,堆積物の硬さも調整することができる。これにより,SFガスを用いた場合にはOガスを用いた場合よりもレジスト選択比をより高くすることができる。
【0085】
以上詳細に説明したように,本実施形態においては,堆積性を有するエッチングガスを含む処理ガスにSFガスを添加ガスとして加え,その流量を調整することによって,ウエハ上に堆積する堆積物の膜厚を制御するとともに堆積物の硬さを制御しながら,被エッチング膜のエッチングを進行させることができる。これにより,エッチングレートとレジスト選択比の両方を従来以上に高めることができ,高アスペクト比のホールやトレンチを従来以上に効率よく形成することができる。
【0086】
なお,上記添加ガスの流量は,処理ガスの種類などによって好適な範囲が異なる。例えば上述した具体例のようにCガス(22sccm)とArガス(300sccm)の処理ガスにSFガスを添加する場合には,SFガスが11sccm以下,すなわち処理ガスの流量に対して略35%以下の範囲の流量でエッチングレートとレジスト選択比がともに良好になる。これに対して,Cガス以外のガスを処理ガスとして用いる場合,例えばCガスよりもF/C比が小さいガス(例えばC)を用いる場合には堆積物もCガスに比べて多くなるので(例えば図2参照),その堆積物を適切に調整するには,より多くの流量のSFガスが必要になる。但し,上述したようにSFガスの流量が多すぎると,レジスト選択比が低下するので,SFガスの流量として実用的には処理ガスの流量に対して1/10(10%)以下の範囲で好適な値を設定することが好ましい。
【0087】
また,添加ガスとしては,SFガスにさらにOガスを加えるようにしてもよい。これにより,Oガスの流量によって堆積物の膜厚の微調整を容易にできる。すなわち,Oガスの方がSFガスよりも堆積物を除去する能力が低いので,Oガスを含めた方が堆積物の膜厚の微調整が容易となる。
【0088】
なお,上記実施の形態では被エッチング膜としてシリコン酸化膜を例に挙げて説明したが,被エッチング膜は,シリコン酸化膜のみならず炭素添加ケイ酸(SiOC)膜,水素添加ケイ酸(SiOH)膜,フッ素添加ケイ酸(SiOF)膜などの無機低誘電率膜としてもよい。なお,上記シリコン酸化膜は,BPSG(ボロンとリンのシリケートグラス)や,PSG(リンのシリケートグラス)や,TEOS(テトラエトキシオルトシラン)や,Th−OX(サーマルオキサイド)や,SOG(スピオングラス)などから構成してもよい。また,堆積性を有するフルオロカーボン系ガスとして,Cガスを用いた場合を例に挙げて説明したが,その他,C,C,C,C12などのフルオロカーボン系ガスを用いてもよい。
【0089】
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された範疇内において,各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0090】
例えば,上記実施形態においては,プラズマエッチング装置として,上部電極と下部電極の両方に高周波電力を印加するタイプを例に挙げて説明したが,これに限定されるものではなく,例えば上部電極のみ又は下部電極のみに高周波電力を印加するタイプや,下部電極に異なる周波数の高周波電力を重畳するタイプであってもよい。さらに,プラズマエッチング装置としては,ECRプラズマエッチング装置,ヘリコン波プラズマエッチング装置,TCP型プラズマエッチング装置,誘導結合型プラズマエッチング装置など様々なタイプの装置に本発明を適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は,酸化膜などのプラズマエッチング,例えば高アスペクト比コンタクト(HARC)プロセスに好適なプラズマエッチング方法及びプラズマエッチング装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の実施形態にかかるプラズマエッチング装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】同実施形態におけるフルオロカーボン系ガスのF/C比がエッチングに与える影響を示す図である。
【図3】添加ガスとしてSFガスを用いてシリコン酸化膜のプラズマエッチングを行った場合のSFガスの流量比とエッチングレートとの関係をグラフにした図である。
【図4】添加ガスとしてSFガスを用いてフォトレジスト膜のプラズマエッチングを行った場合のSFガスの流量比とエッチングレートとの関係をグラフにした図である。
【図5】添加ガスとしてOガスを用いてシリコン酸化膜のプラズマエッチングを行った場合のOガスの流量比とエッチングレートとの関係をグラフにした図である。
【図6】添加ガスとしてOガスを用いてフォトレジスト膜のプラズマエッチングを行った場合のOガスの流量比とエッチングレートとの関係をグラフにした図である。
【図7】添加ガスとしてOガス,SFガスを用いた場合のエッチング特性を比較するための図であって,シリコン酸化膜のエッチングレートとレジスト選択比の関係をグラフにした図である。
【符号の説明】
【0093】
100 プラズマエッチング装置
102 処理室
104 排気口
106 搬入出口
108 ゲートバルブ
110 下部電極
112 絶縁板
114 サセプタ支持台
116 サセプタ
120 静電チャック
122 電極
124 直流電源
126 フォーカスリング
128 冷媒室
129 伝熱ガス供給ライン
140 上部電極
142 絶縁性遮蔽部材
143 電極板
144 電極支持体
145 ガス導入口
146 ガス供給管
148 ガス拡散室
149 ガス吐出孔
150 第1高周波電源
152 整合器
154 ローパスフィルタ(LPF)
160 第2高周波電源
162 整合器
164 ハイパスフィルタ(HPF)
170 処理ガス供給源
172 処理ガス供給管
174,184 開閉バルブ
176,186 マスフローコントローラ
180 添加ガス供給源
182 添加ガス供給管
190 排気装置
200 制御部
210 操作部
220 記憶部
W ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室内に所定のガスのプラズマを形成することにより,被処理基板上に形成された被エッチング膜に対してレジストパターンをマスクとしてエッチングを行うプラズマエッチング方法であって,
堆積性を有するエッチングガスを含む処理ガスを前記処理室内に導入するとともに,SFガスを添加ガスとして前記処理室内に導入してプラズマを形成し,その際に添加ガスの流量を調整することによって,前記被処理基板上に堆積する堆積物の膜厚を制御するとともに前記堆積物の硬さを制御しながら,前記被エッチング膜のエッチングを進行させることを特徴とするプラズマエッチング方法。
【請求項2】
前記エッチングガスは,フルオロカーボン系ガスであることを特徴とする請求項1に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項3】
前記添加ガスの流量は,その流量を変えてエッチングを行ったときのエッチングレートとレジスト選択比の関係に基づいて,前記エッチングレートと前記レジスト選択比の両方が上昇傾向にある範囲で設定することを特徴とする請求項2に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項4】
前記添加ガスの流量は,前記レジスト選択比が上昇傾向から下降傾向に変わるときの変化点での流量に設定することを特徴とする請求項3に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項5】
前記添加ガスの流量は,前記処理ガスの流量に対して1/10以下であることを特徴とする請求項3に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項6】
前記添加ガスとして,前記SFガスにさらにOガスを加えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のプラズマエッチング方法。
【請求項7】
前記エッチングガスとして用いるフルオロカーボン系原料が常温で液体の場合には,その液体原料を気化器により気化させてから前記処理室内に供給することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のプラズマエッチング方法。
【請求項8】
処理室内に所定のガスのプラズマを形成することにより,被処理基板上に形成された被エッチング膜に対してレジストパターンをマスクとしてエッチングを行うプラズマエッチング装置であって,
前記処理室内に堆積性のエッチングガスを含む処理ガスを供給する処理ガス供給系と,
前記処理室内にSFガスを添加ガスとして供給する添加ガス供給系と,
前記処理室内に前記処理ガス供給系から前記処理ガスを供給すると共に,前記添加ガス供給系から前記添加ガスを供給してプラズマを形成し,その際に添加ガスの流量を調整することによって,前記被処理基板上に堆積する堆積物の膜厚を制御するとともに前記堆積物の硬さを制御しながら,前記被エッチング膜のエッチングを進行させる制御部と,
を備えたことを特徴とするプラズマエッチング装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−98220(P2010−98220A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−269458(P2008−269458)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】