説明

プラズマ処理方法及び装置

【課題】大気圧プラズマ処理において、フッ素原料の回収率又は回収濃度の変動を抑制し、処理の安定性を確保する。
【解決手段】大気圧プラズマ処理部2から排出ライン30に出された排出ガスを、分離部40の分離膜41で回収ライン50への回収ガスと放出ライン60への放出ガスに分離する。回収ガスをプロセスガスの少なくとも一部に充てる。上記分離に際し、フッ素系原料の回収率及び回収濃度のうち何れか一方又は両方が所望になるよう、回収ガス、放出ガス、排出ガスのうち少なくとも2つのガスの上記分離に係る物理量(好ましくは圧力)をプロセスガスの流量に応じて調節する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、大気圧近傍下でCF、SF等のフッ素系原料を含むプロセスガスをプラズマ化して被処理物に接触させ、被処理物を表面処理する方法及び装置に関し、特に処理後の排出ガスからフッ素系原料を回収し再利用する工程ないしは回路を設けたプラズマ処理方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、大気圧プラズマ処理後の排出ガスからヘリウムを回収し、リサイクルしている。
特許文献2では、半導体プロセスからの排出ガス中のCF、SF等のフッ素系物質をポリマー膜で分離し回収している。
【特許文献1】特開2004−14628号公報
【特許文献2】特許第3151151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
大気圧プラズマ処理は、真空プラズマ処理と比較し、真空機器が不要であり、複数の被処理物を連続的に処理することもでき、価格の低廉化及び処理能力の増大を図ることができる。しかし、プロセスガスの量が数倍必要になるため、高価なプロセスガスの場合、ランニングコストがかかる。また、プロセスガスが温暖化ガスである場合、環境保護の面で不利である。高価でかつ温暖化係数の大きいガスとしてCF、SF等のフッ素系物質がある。このようなフッ素系物質を原料とする大気圧プラズマ処理は、真空プラズマ処理に対する利点が阻害されている。
【0004】
特許文献1の大気圧プラズマ処理装置にはヘリウムの回収装置が設けられている。しかし、プロセスガスの流量を変えた場合、回収ガスの濃度及び回収率が大きく変動してしまう。
【0005】
特許文献2では、回収したガスのCF濃度を、凝縮器を含む精製装置で100%に可及的に近づけている。しかし、精製装置は高価である。しかも、精製装置においてもCFのロスが発生するため、トータルの回収率が悪化する。
【0006】
さらに、特許文献2では、回収したガスを精製装置に通さずに半導体製造プロセスに直接導入することも開示されている。しかし、精製しない回収ガスはCFの濃度が変動しやすく、処理の安定性を確保するのが容易でない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、大気圧プラズマ処理方法において、
大気圧近傍下においてフッ素系原料を含むプロセスガスをプラズマ化し(分解、励起、活性化、イオン化を含む)、被処理物に接触させ、被処理物を表面処理する処理工程と、
前記処理工程で生じた排出ガスを、分離膜によって、フッ素系原料が100%未満に濃縮された回収ガスと、フッ素系原料が希釈された放出ガスとに分離する分離工程と、
前記回収ガスを前記プロセスガスの少なくとも一部に充てる再利用工程と、
を実行し、前記分離工程において、前記排出ガス中のフッ素系原料が前記回収ガスとして回収される率(以下「回収率」と称す)及び前記回収ガス中のフッ素系原料の濃度(以下「回収濃度」と称す)のうち何れか一方又は両方が所望になるよう、回収ガス、放出ガス、排出ガスのうち少なくとも2つのガスの前記分離に係る物理量を前記プロセスガスの流量に応じて調節することを特徴とする。
本発明方法に係る大気圧プラズマ処理によれば、排出ガス中のフッ素系原料を回収し、プロセスガスとして再利用できる。したがって、ランニングコストを抑えることができ、かつ環境負荷を低減できる。よって、真空プラズマ処理と比較した利点(価格の低廉化、処理能力の増大等)を十分に生かすことができる。さらには、前記調節動作により、回収率又は回収濃度の変動を抑制でき、処理の安定性を確保できる。回収ガスの精製が不要であり、価格上昇を防止でき、かつ回収率の悪化を回避できる。
【0008】
大気圧近傍とは、1.013×10〜50.663×10Paの範囲を言い、圧力調整の容易化や装置構成の簡便化を考慮すると、1.333×10〜10.664×10Paが好ましく、9.331×10〜10.397×10Paがより好ましい。
「フッ素系原料が100%未満に濃縮された回収ガス」とは、回収ガスがフッ素系原料のみではなく、フッ素系原料以外の不純物を低濃度含有することを意味する。
【0009】
前記分離に係る物理量とは、ガスの属性のうち前記分離膜による分離作用に影響を及ぼす因子となり得るものを言う。
前記分離に係る物理量として、回収ガス、放出ガス、排出ガスのうち少なくとも2つのガスの圧力、流速、流量、温度等が挙げられる。
好ましくは、前記物理量は、ガス圧である。これにより、前記分離作用を確実に制御できる。ガス圧は、各ガスの個々の圧力でもよく、ガスどうし間の差圧でもよい。
【0010】
前記物理量調節の対象となるガスは、回収ガス、放出ガス、排出ガスのうち少なくとも回収ガスを含むことが好ましい。すなわち、前記2つのガスのうち1つが、前記回収ガスであることが好ましい。これにより、回収率又は回収濃度の変動をより確実に抑制でき、処理の安定性をより確実に確保できる。
前記2つのガスが、回収ガスと放出ガスであることが、更に好ましい。これにより、回収率又は回収濃度の変動を一層確実に抑制でき、処理の安定性を一層確実に確保できる。
前記2つのガスが、回収ガスと排出ガスであってもよく、放出ガスと排出ガスであってもよい。
回収ガス、放出ガス、排出ガスの3つのガスの前記物理量を調節することにしてもよい。或いは、回収ガス、放出ガス、排出ガスの何れか1つだけの前記物理量を調節することにしてもよい。
【0011】
前記回収率及び回収濃度の一方又は両方が所望になるための前記プロセスガスの流量と前記物理量との関係を表すデータを取得する関係取得工程を、前記処理工程に先立って実行することが好ましい。前記分離工程において前記関係データに基づいて前記物理量の調節を行なうことが好ましい。
【0012】
前記回収率の所望値を、前記放出ガス中のフッ素系原料が放出許容量以下になるよう設定することが好ましい。
これにより、環境負荷を確実に低減できる。
【0013】
前記回収濃度の所望値を、前記回収ガスの不純物濃度が前記処理工程での不純物許容量以下になるよう設定することが好ましい。
これにより、処理の安定性を確実に確保できる。
【0014】
前記プロセスガス中のフッ素系原料の量が、前記表面処理の反応成分を生成するための化学量論的必要量であって前記プラズマ化時の分解率を考慮した化学量論的必要量以上になるよう、前記回収濃度の所望値を設定し、かつ前記プロセスガスの流量を設定することが好ましい。
これにより、回収濃度が変動しても、或いは実際の分解率が変動しても、処理の安定性を確保できる。
【0015】
前記処理工程で前記プロセスガスに水を添加し、前記フッ素系原料と水のプラズマ化により前記表面処理の反応成分としてフッ化水素が生成され、
前記プロセスガス中のフッ素系原料の量が、フッ化水素生成のための水の添加量を基準とした化学量論的必要量であって前記プラズマ化時の分解率を考慮した化学量論的必要量より過剰になるよう、前記回収濃度の所望値を設定し、かつ前記プロセスガスの流量を設定することが好ましい。
これにより、回収濃度が変動しても、或いは実際の分解率が変動しても、処理の安定性を確実に確保できる。水の添加量を調節することにより、フッ化水素の生成量を調節でき、ひいては処理の度合いを調節できる。プロセスガスの流量を高精度に制御する必要がない。
【0016】
前記再利用工程において、前記回収ガスに前記フッ素系原料を一定量補充することが好ましい。
これにより、表面処理で消費された分のフッ素系原料を補うことができる。或いは、放出ガスに含有されて系外に放出された分のフッ素系原料を補うことができる。ひいては、系を定常的に運転できる。前記プロセスガス中のフッ素系原料の量が前記化学量論的必要量以上になるよう、又は前記化学量論的必要量より過剰になるようにする場合、前記補充量をも考慮することが好ましい。
【0017】
本発明に係るプラズマ処理装置は、
大気圧近傍下においてフッ素系原料を含むプロセスガスをプラズマ化し被処理物に接触させ、被処理物を表面処理する処理部と、
前記処理部からの排出ガスを、分離膜によって、フッ素系原料が100%未満に濃縮された回収ガスと、フッ素系原料が希釈された放出ガスとに分離する分離部と、
前記回収ガスを前記プロセスガスの少なくとも一部に充てる再利用部と、
前記プロセスガスの流量を制御する流量制御手段と、
前記回収ガス、放出ガス、排出ガスのうち少なくとも2つのガスの前記分離に係る物理量を調節する調節手段と、
前記調節手段のための調節制御手段と、
を備え、前記調節制御手段が、前記排出ガス中のフッ素系原料が前記回収ガスとして回収される率(以下「回収率」と称す)及び前記回収ガス中のフッ素系原料の濃度(以下「回収濃度」と称す)のうち何れか一方又は両方が所望になるための前記プロセスガス流量と前記物理量との関係を表すデータを格納したデータ格納部を有し、前記流量制御手段による制御流量(制御目標値でもよく制御した結果の流量でもよい)と前記関係データとに基づいて前記調節手段を制御することを特徴とする。
本発明に係る大気圧プラズマ処理装置によれば、排出ガス中のフッ素系原料を回収し、プロセスガスとして再利用できる。したがって、ランニングコストを抑えることができ、かつ環境負荷を低減できる。よって、真空プラズマ処理装置と比較した利点(価格の低廉化、処理能力の増大等)を十分に生かすことができる。さらには、回収率又は回収濃度の変動を抑制でき、処理の安定性を確保できる。回収ガスの精製が不要であり、価格上昇を防止でき、かつ回収率の悪化を回避できる。
【0018】
前記調節手段が、前記2つのガスの圧力を調節するガス圧調節手段を含むことが好ましい。
これにより、前記分離部での分離作用を確実に制御でき、処理の安定性を確実に確保できる。この場合、前記物理量は、前記2つのガスの圧力になる。前記関係データは、前記プロセスガス流量と前記2つのガスの圧力との関係を表すデータであることが好ましい。
【0019】
前記調節手段が、回収ガスの圧力を調節する回収ガス圧調節手段と、放出ガスの圧力を放出ガス圧調節手段とを含むことが好ましい。
これにより、前記分離部での分離作用を一層確実に制御でき、処理の安定性を一層確実に確保できる。この場合、前記物理量は、回収ガス及び放出ガスの圧力になる。前記関係データは、前記プロセスガス流量と回収ガス及び放出ガスの圧力との関係を表すデータであることが好ましい。前記関係データが、前記プロセスガス流量と回収ガスの圧力との関係を表すデータと、回収ガスの圧力と放出ガスの圧力との関係を表すデータを含んでいてもよい。前記関係データが、前記プロセスガス流量と放出ガスの圧力との関係を表すデータと、回収ガスの圧力と放出ガスの圧力との関係を表すデータを含んでいてもよい。
【0020】
前記関係データが、前記放出ガス中のフッ素系原料が放出許容量以下となる回収率になるよう設定されていることが好ましい。
これにより、環境負荷を確実に低減できる。
【0021】
前記関係データが、前記回収ガスの不純物濃度が前記処理部での不純物許容量以下となる回収濃度になるよう設定されていることが好ましい。
これにより、処理の安定性を確実に確保できる。
【0022】
前記プロセスガス中のフッ素系原料の量が、前記表面処理の反応成分を生成するための化学量論的必要量であって前記プラズマ化時の分解率を考慮した化学量論的必要量以上になるよう、前記流量制御手段による制御流量が設定され、かつ前記関係データが設定されていることが好ましい。
これにより、回収濃度が変動しても、或いは実際の分解率が変動しても、処理の安定性を確保できる。
【0023】
前記プロセスガスに水を添加する添加手段を更に備え、前記フッ素系原料と水のプラズマ化により前記表面処理の反応成分としてフッ化水素が生成され、
前記プロセスガス中のフッ素系原料の量が、フッ化水素生成のための水の添加量を基準とした化学量論的必要量であって前記プラズマ化時の分解率を考慮した化学量論的必要量より過剰になるよう、前記流量制御手段による制御流量が設定され、かつ前記関係データが設定されていることが好ましい。
これにより、回収濃度が変動しても、或いは実際の分解率が変動しても、処理の安定性を確実に確保できる。水の添加量を調節することにより、フッ化水素の生成量を調節でき、ひいては処理の度合いを調節できる。プロセスガスの流量を高精度に制御する必要がない。
【0024】
前記回収ガスにフッ素系原料を一定量補充する補充部が、前記再利用部に接続されていることが好ましい。
これにより、表面処理で消費された分のフッ素系原料を補うことができる。或いは、放出ガスに含有されて系外に放出された分のフッ素系原料を補うことができる。ひいては、プラズマ処理装置を定常的に運転できる。前記プロセスガス中のフッ素系原料の量が前記化学量論的必要量以上になるよう、又は前記化学量論的必要量より過剰になるようにする場合、前記補充量をも考慮することが好ましい。
【0025】
前記分離部が、複数段の分離器を有し、各分離器が分離膜によって第1室と第2室とに仕切られ、前記排出ガスが第1段の第1室に導入され、複数段の第1室が直列に連なり、最終段の第1室から回収ガスが導出され、各段の第2室から放出ガスが導出されることが好ましい。
これによって、回収濃度を高めることができる。
【0026】
前記処理部が、大気圧環境に常時開放された開口を有するチャンバーを含み、前記開口が被処理物の搬入口又は搬出口になっていてもよい。
これにより、複数の被処理物を容易に連続的にチャンバーに搬入して表面処理し、その後、搬出できる。
前記排出ガスが、処理済みのプロセスガスと前記チャンバー内から吸引した雰囲気ガスを含んでいてもよい。雰囲気ガスを含む排出ガスからフッ素系原料を分離回収できる。この場合、排出ガスの流量は、プロセスガスの流量より大きい。排出ガス中の処理済みのプロセスガスが少量であり、雰囲気ガスが多量であってもよい。前記回収ガスが少量であり、前記放出ガスが多量であってもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、ランニングコストを抑えることができ、かつ環境負荷を低減できる。さらには、回収率又は回収濃度の変動を抑制でき、処理の安定性を確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
図1は、第1実施形態を示したものである。被処理物9は、例えばフラットパネルディスプレイ用のガラス基板である。図示は省略するが、被処理物9にアモルファスシリコンの膜が形成されている。この膜を大気圧プラズマ処理装置1によってエッチングする。エッチング対象膜は、アモルファスシリコンに限られず、単結晶シリコンであってもよく、多結晶シリコンであってもよい。
【0029】
大気圧プラズマ処理装置1は、大気圧プラズマ処理部2と、分離部4を備えている。処理部2は、大気圧プラズマヘッド11と、チャンバー12と、コンベア13を有している。プラズマヘッド11は、大気圧下又は大気圧近傍下に配置されている。詳細な図示は省略するが、大気圧プラズマヘッド11は少なくとも一対の電極を有している。これら電極間への電界印加によって略大気圧の放電空間11aが形成される。
【0030】
放電空間11aの上流端にプロセスガスライン20が連なっている。プロセスガスライン20に通されるプロセスガスの主成分はフッ素系原料である。ここでは、フッ素系原料としてCFが用いられている。フッ素系原料としてCFに代えて、C、C、C等の他のPFC(パーフルオロカーボン)を用いてもよく、CHF、CH、CHF等のHFC(ハイドロフルオロカーボン)を用いてもよく、SF、NF、XeF等のPFC及びHFC以外のフッ素含有化合物を用いてもよい。
【0031】
プロセスガスライン20には、流量制御手段21が設けられている。流量制御手段21は、マスフローコントローラで構成されている。マスフローコントローラ21には、プロセスガスの設定流量を入力する流量入力部が付設されている。マスフローコントローラ21は、ライン20のプロセスガス流量が上記設定流量になるよう制御する。
マスフローコントローラ21を流れるプロセスガスは略全体がCFで占められている。従って、マスフローコントローラ21は、CFの流量を検知するマスフローコントローラであってもよい。
【0032】
流量制御手段21よりプラズマヘッド11側のプロセスガスライン20に不活性ガス供給ライン22が接続されている。供給ライン22は、不活性ガスとして例えばアルゴン(Ar)をプロセスガスライン20に合流させる。これにより、CFがArで希釈される。CFを希釈するガスとして、Arに代えてHe等の他の不活性ガスを用いてもよい。
【0033】
希釈ガス供給ライン22より下流のプロセスガスライン20に水添加手段23が接続されている。水添加手段23は、水(HO)をバブリングや加熱により気化させ、プロセスガスライン20に添加する。これにより、プロセスガスが加湿される。
【0034】
加湿後のプロセスガス(CF+Ar+HO)が大気圧放電空間11aに導入されてプラズマ化(分解、励起、活性化、ラジカル化、イオン化を含む。)される。プラズマ化によってフッ素系反応成分としてHF、COF等が生成される。HFの生成反応式は、下式の通りである。
CF + 2HO → 4HF + CO (式1)
以下、プラズマ化後のプロセスガスを適宜「プラズマガス」と称す。
【0035】
大気圧放電空間11aより下流のプロセスガスライン20に酸化性ガス供給ライン24が接続されている。酸化性ガス供給ライン24にはオゾナイザー25が設けられている。オゾナイザー25は、酸素(O)を原料にして酸化性反応成分としてオゾン(O)を生成する。オゾンの生成量は、原料(O)の約8%である。オゾナイザー25からのオゾン含有ガス(O+O)が、プラズマガスに合流される。合流後のプラズマガスが大気圧プラズマヘッド11から下方へ噴き出される。プラズマガスとオゾン含有ガスを混合することなく、別々の吹き出し口から吹き出すことにしてもよい。
【0036】
上記大気圧プラズマヘッド11は、チャンバー12の上部に配置されている。チャンバー12の内部は略大気圧になっている。チャンバー12の両側の壁に開口12a,12bが設けられている。これら開口12a,12bは常時開放されている。開口12aは、被処理物9の搬入口になっている。開口12bは、被処理物9の搬出口になっている。
【0037】
チャンバー12の内部及びチャンバー12の両壁の外側にコンベア13が配置されている。コンベア13は、被処理物9の搬送手段及び支持手段として機能する。複数の被処理物9がコンベア13上に一列に並べられる。これら被処理物9が、順次、コンベア13によって搬入口12aからチャンバー12内に搬入され、大気圧プラズマヘッド11の下方を横切るように移動される。この被処理物9に大気圧プラズマヘッド11からのプラズマガスが吹き付けられ、シリコンのエッチングがなされる。その後、各被処理物9はコンベア13によって搬出口12bから外部へ搬出される。
【0038】
搬入出口12a,12bは、被処理物9が通過するときだけ開口し、被処理物9がチャンバー12内に搬入された後、又はチャンバー12から搬出された後は閉じられるようになっていてもよい。
【0039】
チャンバー12に開口が1つだけ設けられていてもよい。被処理物9が、上記1つの開口を通してチャンバー12内に搬入され、処理後、上記1つの開口を通してチャンバー12から搬出されるようになっていてもよい。
【0040】
チャンバー12から排出ガスライン30が引き出されている。排出ガスライン30の基端部は、チャンバー12の例えば底部に接続されている。
なお、図示は省略するが、プラズマヘッド11のプロセスガス吹出口の近傍に吸引口が設けられ、この吸引口から吸引路が延びている。吸引路は、排出ガスライン30に合流されている。
【0041】
排出ガスライン30には、スクラバー31、ミストトラップ32、オゾンキラー33、圧縮機34が上流側(チャンバー12の側)から順次設けられている。圧縮機34の駆動によりチャンバー12内のガス(上記吸引口近傍のガスを含む)が排出ガスライン30に排出される。排出ガスには、処理済みのプロセスガス(以下「処理済みガス」と称す)が含まれている。処理済みガスには、エッチングによる反応副生成物(SiF等)の他、エッチング反応に寄与しなかった反応成分(HF、O等)や、大気圧放電空間11aでプラズマ化しなかったプロセスガス成分(CF、Ar、HO)が含まれている。さらに、排出ガスには、上記処理済みガスの他、チャンバー12内から吸引した雰囲気ガスすなわち空気が多量に含まれている。したがって、排出ガスには窒素(N)が多量に含まれている。以下、排出ガス中のCF以外の成分を「不純物」を称す。不純物の大半は窒素で占められている。排出ガスの流量は、大気圧プラズマヘッド11に導入されるプロセスガスの流量より十分に大きい。
【0042】
スクラバー31は、水スクラバー又はアルカリスクラバーで構成され、排出ガス中のHF等を除去する。ミストトラップ32は、排出ガス中の水分(HO)を除去する。オゾンキラー33は、排出ガス中のオゾン(O)を活性炭等の吸着剤や還元触媒を用いて除去する。排出ガスライン30は、分離部4へ延びている。
【0043】
分離部4は、複数段(図では3段)の分離器40を有している。各分離器40内に分離膜43が設けられている。分離膜43としては、例えばガラス状ポリマー膜(特許文献2参照)が用いられている。分離膜43の窒素(N)の透過速度は相対的に大きく、CFの透過速度は相対的に小さい。
【0044】
分離膜43によって分離器40の内部が第1室41と第2室42とに仕切られている。第1段の分離器40の第1室41の入口ポートに排出ガスライン30の下流端が連なっている。各段の第1室41の出口ポートが、連結路44を介して次段の第1室41の入口ポートに連なっている。したがって、各段の第1室41が直列に連なっている。排出ガスが複数段の第1室41に順次送られる。各段において排出ガスの一部が分離膜43を透過して第2室42へ流入する。分離膜43の上記透過速度の差により、第1室41ではCFの濃度が高くなり、第2室42では主に窒素からなる不純物の濃度が高くなる。
【0045】
最終段の第1室41の出口ポートから回収ガスライン50が延びている。回収ガスライン50は、分離部4から引き出されている。以下、最終段の第1室41から回収ガスライン50へ出されるガスを「回収ガス」と称す。回収ガスは、CFを高濃度(例えば90%以上)に含み、不純物を低濃度(例えば10%未満)に含んでいる。以下、回収ガスのCF濃度を、適宜「回収濃度」又は「回収CF濃度」と称す。回収ガスの流量は、上記排出ガスライン30を通る排出ガスの流量より十分に小さい。回収ガスライン50には、回収ガス圧力計51と回収ガス圧調節手段52が上流側から順次設けられている。圧力計51によって、回収ガスの分離部40からの導出圧力(回収ガス物理量)が検出される。圧力計51は、回収ガス物理量検出手段を構成する。回収ガス圧調節手段52は、自動圧力制御弁で構成され、回収ガスの分離部40からの導出圧力を自動制御する。
【0046】
回収ガスライン50は混合タンク53に接続されている。混合タンク53に100%濃度のCFを蓄えたタンクからなるCF補充部54が接続されている。混合タンク53で回収ガスライン50からの回収ガスと補充部54からの純CFガスとが混合される。純CFガスの補充量は、処理部2でのエッチング処理で消費されるCFの量や、後記放出ライン60から放出されるCFの量を考慮して設定するとよい。
【0047】
タンク53の混合ガスには、CFに加えて、数%〜10%未満の不純物(主に窒素)が含まれている。この混合ガスが、Arとの混合前かつHOの添加前のプロセスガスとなる。混合タンク53から上記プロセスガスライン20が大気圧プラズマヘッド11へ延びている。
【0048】
ガスライン20,50及び混合タンク53は、CFの再利用部5を構成する。
【0049】
各分離器40の第2室42から放出ガスライン60が延びている。以下、各第2室42から放出ガスライン60へ出されるガスを「放出ガス」と称す。放出ガスの大半は不純物(主に窒素)で占められ、若干のCFが含まれている。放出ガスの不純物濃度は、排出ガスの不純物濃度より大きい。放出ガスのCF濃度は、排出ガスのCF濃度より十分に小さい。
【0050】
各第2室42からの放出ガスライン60は互いに合流し、分離部4から引き出されている。合流後の放出ガスライン60に放出ガス圧力計61と放出ガス圧調節手段62が順次設けられている。圧力計61によって、放出ガスの分離部40からの導出圧力(放出ガス物理量)が検出される。圧力計61は、放出ガス物理量検出手段を構成する。放出ガス圧調節手段62は、自動圧力制御弁で構成され、放出ガスの分離部40からの導出圧を自動制御する。
【0051】
圧力制御弁62より下流の放出ガスライン60は、吸引ポンプ63を介して除害装置64に接続されている。各第2室42からの放出ガスが互いに合流し、ライン60を経て除害装置64へ送られる。合流後の放出ガスの流量は、排出ガスの流量と殆ど同じで、排出ガス流量より少しだけ小さい。放出ガスは、除害装置64で除害処理された後、大気に放出される。
【0052】
更に、大気圧プラズマ処理装置1には、調節手段52,62のための調節制御手段70が設けられている。詳細な図示は省略するが、調節制御手段70は、マイクロコンピュータや、圧力制御弁52,62等の駆動回路を含んでいる。マイクロコンピュータは、入出力インターフェース、CPU、RAM、ROM71等を含む。ROM71には制御に必要なプログラムやデータが格納されている。制御に必要なデータとして、プロセスガスの流量と分離部4での膜分離に係る物理量との関係データがある。ROM71は、関係データ格納部を構成している。
【0053】
膜分離に係る物理量として、ガスの圧力、流量、流速、温度等が挙げられ、好ましくは圧力が挙げられる。対象となるガスは、回収ガス、放出ガス、排出ガスの3つである。これら3つのガスのうち、少なくとも回収ガスを含む2つのガスを対象とするのが好ましい。
【0054】
例えば、図2に例示するように、制御手段70のROM71には、上記関係データとして、プロセスガスの流量に対する回収ガスの設定圧及び放出ガスの設定圧のデータが格納されている。同図の横軸のプロセスガス流量は、アルゴン合流前かつ水添加前のプロセスガスの流量であり、マスフローコントローラ21にて制御される流量である。上述したように、マスフローコントローラ21を流れるプロセスガスは実質CFであるから、図2の横軸はCF流量としてもよい。同図の縦軸の回収ガス設定圧力及び放出ガス設定圧力は、それぞれ大気圧に対する圧力差である。回収ガスの設定圧は正圧になっている。放出ガスの設定圧は負圧になっている。回収ガスの設定圧に対し放出ガスの設定圧が一義的に定められている。
【0055】
これら回収ガスの設定圧及び放出ガスの設定圧は、プロセスガスのある流量範囲ごとに一定の大きさになっている。流量範囲が移行するごとに回収ガスの設定圧及び放出ガスの設定圧がステップ状に変化している。回収ガスの設定圧(正圧)は、プロセスガスの流量範囲が小さいとき大気圧との差が正の側に大きくなり、流量範囲が大きくなるにしたがって大気圧との差が小さくなっている。放出ガスの設定圧(負圧)は、プロセスガスの流量範囲が小さいとき大気圧との差が負の側に大きくなり、流量範囲が大きくなるにしたがって大気圧との差が小さくなっている。
【0056】
調節制御手段70は、マスフローコントローラ21におけるプロセスガス流量、及び圧力計51,61の検出信号、並びにROM71の関係データに基づいて圧力制御弁52,62を操作し、回収ガス圧及び放出ガス圧がそれぞれ設定圧になるようフィードバック制御する。
【0057】
大気圧プラズマ処理装置1によって被処理物9を表面処理する方法を説明する。
[関係取得工程]
被処理物9の表面処理に先立ち、プロセスガス流量と膜分離に係る物理量との関係データ(図2)を取得しておく。
関係取得工程では、排出ガスライン30と放出ガスライン60にそれぞれ濃度検出器を設ける。濃度検出器として、例えばフーリエ変換赤外線分光分析器(FTIR)を用いるとよい。そして、大気圧プラズマ処理装置1を仮運転する。この仮運転での処理部2や分離部4等の動作は後記の処理工程等と同様である。また、被処理物9と同じサンプルを用いて表面処理する。そして、上記濃度検出器を用いて、排出ガス中のCF濃度pと、放出ガス中のCF濃度pを検出する。これら検出濃度p,pから、排出ガス中のCFが回収ガスとして回収される割合すなわちCFの回収率を算出する。放出ガスの流量が排出ガスの流量と殆ど同じであることから、回収率=(p−p)/pと近似できる。
【0058】
また、回収CF濃度を検出する。回収CF濃度は、ガスライン50又は20にFTIR等の濃度検出器を設けることで検出できる。回収率と回収ガスの流量から回収CF濃度を算出してもよい。
【0059】
上記の回収率と回収CF濃度の両方又は片方が所望になるよう、圧力制御弁52を操作して回収ガスの圧力を調節し、更に圧力制御弁62を操作して放出ガスの圧力を調節する。回収ガスの圧力は圧力計51で読み取る。放出ガスの圧力は圧力計61で読み取る。また、マスフローコントローラ21によるプロセスガス流量を読み取る。これにより、プロセスガス流量に対する回収ガスの設定圧力及び放出ガスの設定圧力を求め、流量-物理量関係データを作成する。
【0060】
回収率の所望値は、法令や自主規制等に基づくCFの放出許容量に基づいて定めるとよく、例えば95〜98%の範囲内に収めるとよい。
【0061】
回収CF濃度の所望値は、プロセスガス中の不純物が少なくとも許容量以下になるよう設定するとよく、例えば92〜98%の範囲内に収めるとよい。
さらに、回収CF濃度の所望値は、プロセスガスが下記の式2を満たすように設定するのが好ましく、式3を満たすように設定するのがより好ましい。
(mF×p)≧(mH/2)×(1/ε) (式2)
(mF×p)>>(mH/2)×(1/ε) (式3)
式3の>>は、左辺の値(mF×p)が右辺の値(mH/2)×(1/ε)より十分大きい(過剰である)ことを意味する。ここで、mFは、マスフローコントローラ21におけるプロセスガス全体の流量である。pは、上記プロセスガスのCF濃度である。したがって、式2及び式3の左辺の値(mF×p)は、プロセスガス中のCFのモル流量である。mHは、水添加ライン23によるHOの添加量(モル流量)である。式1に示したように、HF生成に係るCFとHOのモル比はCF:HO=1:2であるから、(mH/2)は、HOの添加量を基準とするHF生成のためのCFの化学量論的必要量である。εは、大気圧放電空間11aでのCFの分解率である。一般にε=0.1程度である。したがって、式2及び式3の右辺の値(mH/2)×(1/ε)は、更に大気圧放電空間11aでの分解率を考慮したCFの化学量論的必要量である。
【0062】
なお、プロセスガスのCF濃度は、プロセスガス供給ラインにCF濃度モニタを設けて検出してもよく、回収ガスのCF濃度及び流量と、CF補充部54からのCFの純ガスの補充量とから算出してもよい。
【0063】
回収率と回収CF濃度とは互いに相反する関係にある。回収率が高くなると回収CF濃度が低くなる。回収CF濃度が高くなると回収率が低くなる。
【0064】
プロセスガス流量が小さいときは、CFの放出許容量を十分に満たし得るから、回収CF濃度の所望値を優先的に高く設定するとよい。このとき、回収率は相対的に低くなる。
【0065】
回収率が一定でプロセスガスの流量が増大した場合、CFの放出流量が増大する。したがって、プロセスガス流量が大きい領域では、回収濃度より回収率を優先し、回収率の所望値を高く設定するのが好ましい。これにより、CFの放出量が増大するのを防止又は抑制できる。その代わり、回収CF濃度は相対的に低くなる。
【0066】
具体例として、図2においては、プロセスガス流量が相対的に小さい範囲(0.8slm以上1.6slm未満)では、回収ガス圧を正の側に相対的に大きな値(+4.4kPa)に設定し、放出ガス圧を負の側に相対的に大きな値(−1.28kPa)に設定している。したがって、回収ガスと放出ガスの設定差圧が相対的に大きくなっている。このとき、回収率は約97.0%であり、回収CF濃度は約96%である。
【0067】
プロセスガス流量が相対的に大きい範囲(1.6slm以上2.4slm未満)では、回収ガス圧を相対的に小さな値(+4.0kPa)に設定している。また、放出ガスの設定圧は、負の側に相対的に小さな値(−0.88kPa)になっている。したがって、回収ガスと放出ガスの設定差圧は、相対的に小さくなっている。このとき、回収率は約97.6%であり、回収CF濃度は約92%である。
【0068】
取得した関係データは、ROM71に格納する。
【0069】
[処理工程]
その後、実際の被処理物9の表面処理を行なう。
コンベア13を駆動し、コンベア13の搬送方向の上流端(図1において左端)に複数の被処理物9を順次載置する。各被処理物9は、搬入口12aを通してチャンバー12内に搬入される。
【0070】
CFと若干の不純物を含むプロセスガスを混合タンク53からプロセスガスライン20に導出する。このプロセスガスの流量をマスフローコントローラ21で制御する。マスフローコントローラ21によるプロセスガス流量の制御目標値は、好ましくは式2を満たすようにし、より好ましくは式3を満たすようにする。
【0071】
プロセスガスに不活性ガス供給ライン22からのArを混合する。Arの混合流量ないしは混合比は、処理に応じて適宜調節する。例えば、マスフローコントローラ21におけるプロセスガス流量が0.8slmのとき、Arの混合流量は15slmとする。マスフローコントローラ21におけるプロセスガス流量が1.6slmのとき、Arの混合流量は30slmとする。
【0072】
さらにプロセスガスに水添加ライン23から一定量のHOを添加する。HOの添加量は、好ましくは式2を満たすようにし、より好ましくは式3を満たすようにする。これにより、プロセスガスが、CFリッチ、HOプアのガスになる。
【0073】
混合添加後のプロセスガスをプラズマヘッド11の大気圧放電空間11aに導入してプラズマ化する。プラズマ化によってHFが生成される。プラズマ化後のプロセスガス(プラズマガス)に酸化性ガス供給ライン24からオゾン含有ガス(O+O)を混合する。オゾン含有ガスの混合流量ないしは混合比は、処理に応じて適宜調節する。例えば、マスフローコントローラ21におけるプロセスガス流量が0.8slmのとき、オゾン含有ガスの混合流量は6slmとする。マスフローコントローラ21におけるプロセスガス流量が1.6slmのとき、オゾン含有ガスの混合流量は12slmとする。オゾン混合後のプラズマガスを大気圧プラズマヘッド11から吹き出す。吹き出されたガスが、大気圧プラズマヘッド11の下方を通過する被処理物9に吹き付けられる。これにより、被処理物9のシリコン膜がエッチングされる。
【0074】
エッチング処理後の被処理物9は搬出口12bから順次搬出される。
大気圧下での処理であるため、複数の被処理物9を連続的にチャンバー12内に搬入し、エッチングし、搬出できる。したがって、被処理物の搬入、搬出ごとにチャンバー内の圧力調節が必要な真空プラズマ処理と比較して、処理量を大幅に向上できる。
【0075】
プロセスガスがCFリッチ、HOプアであるため、上記プラズマ化によるHFの生成量は主にHOの添加量に依存する。CFの量が多少変動してもHFの生成量は殆ど変わらない。したがって、表面処理の反応速度を専らHOの添加量によって調節できる。CF量を細かく制御する必要がない。後記分離工程でのCF回収量が変動しても表面処理に殆ど影響が及ばないようにすることができる。プロセスガス中のCFが過剰であっても、回収し再利用するため、不経済にはならず、環境負荷が大きくなることもない。
【0076】
プラズマヘッド11に供給するプロセスガスの流量は、処理内容に応じて調節するとよい。例えば、高速でエッチングするときは流量を比較的大きくするとよい。シリコン等のエッチング対象膜の下地膜に対する選択比を高くし下地へのダメージを防ぎつつエッチングするときは、流量を比較的小さくするとよい。被処理物9がプラズマヘッド11の直下にあり、エッチングを実行しているときは、流量を相対的に大きくし、被処理物9がプラズマヘッド11の直下になくエッチングを実行していないときは、流量を相対的に小さくすることにしてもよい。
【0077】
[ガス排出工程]
さらに、チャンバー12内のガスを吸引し、排出ガスとして排出ガスライン30に導出する。排出ガスには、SiF、HF、O、O、CF、Ar、HO等の処理済みガス成分の他、チャンバー12内の雰囲気ガス(空気)が多量に含まれている。排出ガス流量は、プロセスガス流量より十分に大きく、例えばマスフローコントローラ21におけるプロセスガス流量が0.8〜1.6slmのとき、排出ガス流量は200slmである。チャンバー12の外部からは排出ガスライン30に吸引された分の空気が搬入出口12a,12bを通ってチャンバー12の内部に流入する。
【0078】
排出ガス中のHFやSiFは、スクラバー31で除去される。排出ガス中のHOは、ミストトラップ32で除去される。排出ガス中のOは、オゾンキラー33で除去される。
【0079】
[分離工程]
その後、圧縮機34で排出ガスを加圧し分離部4へ圧送する。また、吸引ポンプ63で放出ガスライン60ひいては各分離器40の第2室42内を吸引する。排出ガスは、分離部4の各段の分離膜43によって第1室41にとどまるガスと、分離膜43を透過して第2室42に移るガスとに分離される。第1室41にとどまるガスはCFが濃縮されている。このガスを後段の分離器40の第1室41に順次送り、CFを十分に濃縮し、最終段の第1室41から回収ガスとして回収ガスライン50に導出する。
【0080】
分離膜43を透過して第2室42に移るガスは、CFが希釈され、殆どがCF以外の不純物(主に窒素)で占められている。このガスを放出ガスとして各段の第2室42から放出ガスライン60に導出する。放出ガスの流量は排出ガスより若干小さい程度であり、例えば排出ガスが200slmのとき、放出ガス流量は約198slm〜200slm未満である。排出ガスと放出ガスの流量差が回収ガスの流量になる。
【0081】
分離工程の前に排出ガス中のOをオゾンキラー33で除去しているため、分離膜43が傷むのを防止できる。
【0082】
上記分離工程において、プロセスガス流量に応じて、分離に係る物理量を調節する。ここでは、回収ガスと放出ガスの圧力を調節する。
すなわち、圧力計51で回収ガス圧を検出する。圧力計61で放出ガス圧を検出する。これら検出値を調節制御手段70に入力する。さらに、マスフローコントローラ21によるプロセスガスの制御流量を調節制御手段70に入力する。上記制御流量は、マスフローコントローラ21で制御した結果の流量とするが、上記流量入力部で設定した制御目標値でもよい。調節制御手段70は、圧力計51,61の検出圧力がそれぞれプロセスガス流量に応じた所定の値になるよう、内蔵ROM71の関係データを用いて圧力制御弁52,62を制御する。
【0083】
これにより、回収率の変動や回収CF濃度の変動を抑制できる。プロセスガス流量が数倍程度変動しても、回収率を常に約95〜98%の範囲内に収めることができ、かつ回収CF濃度を常に約92〜98%の範囲内に収めることができる。プロセスガス流量が一定の場合、回収CF濃度の変動幅は約0.5%以内にでき、処理に影響が及ばないようにすることができる。これにより、処理の安定性を確保できる。
【0084】
具体的に上記関係取得工程において、例えば図2に示す関係データが得られたとした場合、マスフローコントローラ21におけるプロセスガス流量が0.8slm以上1.6slm未満であれば、回収ガス圧が大気圧に対し+4.4kPaになるよう、圧力制御弁52を制御し、かつ放出ガス圧が大気圧に対し−1.28kPaになるよう、圧力制御弁62を制御する。これにより、回収率を約97.0%にでき所望範囲に収めることができる。また、回収CF濃度を約96%にでき所望範囲に収めることができる。
【0085】
マスフローコントローラ21におけるプロセスガス流量が1.6slm以上2.4slm未満であれば、回収ガス圧が大気圧に対し+4.0kPaになるよう圧力制御弁52を制御し、かつ放出ガス圧が大気圧に対し−1.28kPaになるよう圧力制御弁62を制御する。これにより、回収率を約97.6%にでき所望範囲に収めることができる。また、回収CF濃度を約92%にでき所望範囲に収めることができる。
【0086】
プロセスガスが小流量のときは、回収CF濃度を高くできる。したがって、大気圧プラズマ処理部2に供給される不純物の量を減らすことができ、処理の品質を確実に高めることができる。
【0087】
プロセスガスが大流量のときは、回収率を高くできる。したがって、CFの放出量が許容値を超えるのを防止できる。
【0088】
プロセスガスのある流量範囲ごとに回収ガス及び放出ガスの設定圧が一定になっているため、プロセスガス流量が変動しても同じ流量範囲内にある限り、回収ガス及び放出ガスの設定圧を変更する必要がなく、制御が容易である。
【0089】
[再利用工程]
回収ガスは、混合タンク53に送られる。併せて、CF補充部54からCFの純ガスが混合タンク53に送られる。これら回収ガスとCFの純ガスとが混合タンク53内で混合される。これにより、エッチング処理で消費された分のCFを補うことができる。或いは、後記の放出工程で系外に放出された分のCFを補うことができる。ひいては、プラズマ処理装置1を定常的に運転できる。
【0090】
タンク53での混合によって、回収ガスより高濃度のCFを含むプロセスガスが生成される。このプロセスガスがプロセスガスライン20を経て大気圧プラズマ処理部2へ送られ、エッチング処理に供される。
【0091】
[放出工程]
放出ガスは、除害装置64へ送られ、除害装置64で除害された後、大気に放出される。分離部4でCFを十分に回収し、放出ガス中のCF量を十分に小さくしてあるため、CFの環境放出許容量を満たすことができ、環境負荷を低減できる。
【0092】
以上のように、大気圧プラズマ処理装置1によれば、プロセスガス流量に応じて圧力制御弁52,62を自動制御することで、所望の回収率を得ることができ、所望の回収CF濃度を得ることができる。これにより、大気圧プラズマ処理の真空プラズマ処理と比較した利点(低価格化、処理能力の増大等)を十分に生かすことができる。
回収によってCFのトータルの使用量を低減でき、ランニングコストを確実に抑えることができる。
プロセスガスをCFリッチにすることで、不純物が多少混入していても、更にはCF濃度が多少変動しても処理に影響が出ないようにすることができる。したがって、プロセスガスの流量を高精度に制御する必要がない。回収ガスを精製する必要もない。よって、精製装置が不要であり、設備コストを低廉化できる。また、精製によるCFの回収率低下を招くこともない。
【0093】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において、既述の形態と重複する構成に関しては図面に同一符号を付して説明を省略する。
第1実施形態では、回収ガス圧と放出ガス圧を制御していたが、これに代えて、回収ガス圧と排出ガス圧を制御することにしてもよい。
図3に示すように、第2実施形態では、放出ガスライン60に圧力計61及び圧力制御弁62が設けられていない。これに代えて、排出ガスライン30のオゾンキラー33と圧縮機34の間に排出ガスバッファタンク35が設けられている。排出ガスは、バッファタンク35に一旦溜められた後、圧縮機34で分離部4へ圧送される。
【0094】
圧縮機34より下流の排出ガスライン30から戻し路36が分岐されている。戻し路36は、排出ガスバッファタンク35に接続されている。圧縮機34から圧送された排出ガスの一部が、分離部4へ送られ、残部は戻し路36によってバッファタンク35に戻される。
【0095】
戻し路36の分岐部より下流の排出ガスライン30に圧力計37が設けられている。圧力計37によって排出ガスの分離部4への導入圧力(排出ガス物理量)が検出される。圧力計37は、排出ガス物理量検出手段を構成する。
【0096】
戻し路36には排出ガス圧調節手段38が設けられている。排出ガス圧調節手段38は、自動圧力制御弁で構成され、戻し路36の圧力を自動制御し、ひいては排出ガスの分離部4への導入圧力を自動制御する。
【0097】
調節制御手段70のROM71には、関係データとして、プロセスガスの流量に対する回収ガスの設定圧及び排出ガスの設定圧との関係が格納されている。調節制御手段70は、マスフローコントローラ21におけるプロセスガス流量、及び圧力計51,37の検出信号、並びにROM71の関係データに基づいて圧力制御弁52,38を操作し、回収ガス圧及び排出ガス圧がそれぞれ設定圧になるようフィードバック制御する。
これにより、第1実施形態と同様に、回収率又は回収CF濃度の変動を抑制でき、処理の安定性を確保できる。
【0098】
この発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変をなすことができる。
例えば、分離部4での分離に係る物理量として、圧力に代えて、各ガスの流速、流量、温度を調節することにしてもよい。
物理量調節の対象となるガスは、回収ガスと放出ガス(第1実施形態)又は回収ガスと排出ガス(第2実施形態)に代えて、排出ガス及び放出ガスでもよい。回収ガスと放出ガスと排出ガスの3つのガスの物理量を調節することにしてもよい。回収ガス、放出ガス、排出ガスの何れか1つだけの物理量を調節することにしてもよい。
関係取得工程で、プロセスガス流量に応じて上記物理量が連続的に変化する関係データを作成してデータ格納部71に格納し、この関係データに基づいて上記物理量の調節を行うことにしてもよい。
分離に係る物理量を、プロセスガスの流量に代えて排出ガスの流量に応じて調節してもよい。
所望の回収率又は濃度に応じて、各分離器40間の連結路44の圧力を調節してもよい。
分離部4の分離器40は、実施形態では直列に3つ接続し3段構成にしてあるが、排出ガス若しくは回収ガスの流量、回収率、または回収濃度等に応じて分離器40の段数を適宜増減させてもよく、分離器40を並列に接続してもよく、直列接続と並列接続を組み合わせてもよい。
被処理物9が位置固定され、この被処理物9に対し大気圧プラズマヘッド11が移動するようになっていてもよい。
【0099】
圧力調節手段52と混合タンク53との間の回収ライン50に、回収ガスを一旦溜めるバッファタンクを設けてもよく、バッファタンクから必要量の回収ガスを圧縮機を介して混合タンク53へ送るようにしてもよい。
【0100】
第1、第2実施形態の独自構成を互いに組み合わせてもよい。例えば、第1実施形態においても、第2実施形態と同様に排出ガスライン30にバッファタンク35及び戻し路36を設けてもよい。
【0101】
第2実施形態において、圧力制御弁38を、戻し路36に代えて、圧力計37より下流の排出ガスライン30に設けてもよい。バッファタンク35及び戻し路36を省略してもよい。
【0102】
本発明は、シリコンのエッチングに限られず、酸化シリコンや窒化シリコン等の他の膜種のエッチングに適用してもよく、エッチングに限られず、親水化、撥水化、または洗浄等の他の表面処理に適用してもよい。
【実施例1】
【0103】
CFの流量及びHOの添加量と処理レートとの関係を調べた。CFをArで希釈し、CFとArとの合計流量が1slmになるようにし、かつCFの流量を変化させた。CFとArの混合ガスにHOを添加し、大気圧下でプラズマ化した。HOの添加量は、一定とし、16mg/min=8.89×10−4mol/minとした。CFの大気圧プラズマによる分解率εはε=10%程度であるから、上記HO添加量に対するCFの分解率を考慮した化学量論的必要量は、4.58×10−3mol/min=0.103slmである。
【0104】
別途、オゾナイザーにOを供給し、Oを生成した。Oの供給流量は0.6slmとし、そのうち約8%をオゾン化した。上記CF、Ar、HOを原料とするプラズマガスとオゾナイザーからのオゾン含有ガス(O+O)とをガラス基板上のシリコン膜に噴き付け、シリコン膜のエッチングを行なった。基板をプラズマヘッドに対し速度4m/secで搬送(スキャン)した。
【0105】
そして、シリコン膜の1スキャンあたりのエッチングレートを測定した。測定結果を図4に示す。
CF流量が最小から増大するにしたがってエッチングレートが高くなった。CF流量が約0.1slm以上ではエッチングレートが略一定になった。したがって、エッチングレートが安定化するためのCF流量の必要量が上記計算値と一致した。
【0106】
このように、エッチングレートが安定するためのCFの必要量は計算により求めることができる。CFの流量を上記必要量以上にすることで、すなわち上記式2(より好ましくは式3)が満たされるようにすることで、CF量が多少変動しても安定したエッチングを行なうことができ、かつHOの添加量を調節することによってエッチングレートを制御できることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明の第1実施形態に係る大気圧プラズマ処理装置を示す概略構成図である。
【図2】プロセスガス流量に対するガス物理量の関係データの一例を示すグラフである。
【図3】本発明の第2実施形態に係る大気圧プラズマ処理装置を部分的に示す概略構成図である。
【図4】実施例1の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0108】
1 大気圧プラズマ処理システム
2 大気圧プラズマ処理部
4 分離部
5 再利用部
9 被処理物
11 大気圧プラズマヘッド
11a 大気圧放電空間
12 チャンバー
12a 搬入口(開口)
12b 搬出口(開口)
13 コンベア(被処理物搬送手段、被処理物支持手段)
20 プロセスガスライン
21 マスフローコントローラ(流量制御手段)
22 不活性ガス供給ライン
23 水添加手段
24 酸化性ガス供給ライン
25 オゾナイザー
30 排出ガスライン
31 スクラバー
32 ミストトラップ
33 オゾンキラー
34 圧縮機
35 排出ガスバッファタンク
36 戻し路
37 排出ガス圧力計(排出ガス物理量検出手段)
38 圧力制御弁(排出ガス圧調節手段)
40 分離器
41 第1室
42 第2室
43 分離膜
44 連結路
50 回収ガスライン
51 回収ガス圧力計(回収ガス物理量検出手段)
52 圧力制御弁(回収ガス圧調節手段)
53 混合タンク
54 フッ素系原料補充部
60 放出ガスライン
61 放出ガス圧力計(放出ガス物理量検出手段)
62 圧力制御弁(放出ガス圧調節手段)
63 吸引ポンプ
64 除害装置
70 調節制御手段
71 関係データ格納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気圧近傍下においてフッ素系原料を含むプロセスガスをプラズマ化し被処理物に接触させ、被処理物を表面処理する処理工程と、
前記処理工程で生じた排出ガスを、分離膜によって、フッ素系原料が100%未満に濃縮された回収ガスと、フッ素系原料が希釈された放出ガスとに分離する分離工程と、
前記回収ガスを前記プロセスガスの少なくとも一部に充てる再利用工程と、
を実行し、前記分離工程において、前記排出ガス中のフッ素系原料が前記回収ガスとして回収される率(以下「回収率」と称す)及び前記回収ガス中のフッ素系原料の濃度(以下「回収濃度」と称す)のうち何れか一方又は両方が所望になるよう、回収ガス、放出ガス、排出ガスのうち少なくとも2つのガスの前記分離に係る物理量を前記プロセスガスの流量に応じて調節することを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項2】
前記物理量が、ガス圧であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理方法。
【請求項3】
前記2つのガスのうち1つが、前記回収ガスであることを特徴とする請求項1又は2に記載のプラズマ処理方法。
【請求項4】
前記2つのガスが、回収ガスと放出ガスであることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項5】
前記回収率及び回収濃度の一方又は両方が所望になるための前記プロセスガスの流量と前記物理量との関係を表すデータを取得する関係取得工程を、前記処理工程に先立って実行し、前記分離工程において前記関係データに基づいて前記物理量の調節を行なうことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項6】
前記回収率の所望値を、前記放出ガス中のフッ素系原料が放出許容量以下になるよう設定することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項7】
前記回収濃度の所望値を、前記回収ガスの不純物濃度が前記処理工程での不純物許容量以下になるよう設定することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項8】
前記プロセスガス中のフッ素系原料の量が、前記表面処理の反応成分を生成するための化学量論的必要量であって前記プラズマ化時の分解率を考慮した化学量論的必要量以上になるよう、前記回収濃度の所望値を設定し、かつ前記プロセスガスの流量を設定することを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項9】
前記処理工程で前記プロセスガスに水を添加し、前記フッ素系原料と水のプラズマ化により前記表面処理の反応成分としてフッ化水素が生成され、
前記プロセスガス中のフッ素系原料の量が、フッ化水素生成のための水の添加量を基準とした化学量論的必要量であって前記プラズマ化時の分解率を考慮した化学量論的必要量より過剰になるよう、前記回収濃度の所望値を設定し、かつ前記プロセスガスの流量を設定することを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項10】
前記再利用工程において、前記回収ガスに前記フッ素系原料を一定量補充することを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項11】
大気圧近傍下においてフッ素系原料を含むプロセスガスをプラズマ化し被処理物に接触させ、被処理物を表面処理する処理部と、
前記処理部からの排出ガスを、分離膜によって、フッ素系原料が100%未満に濃縮された回収ガスと、フッ素系原料が希釈された放出ガスとに分離する分離部と、
前記回収ガスを前記プロセスガスの少なくとも一部に充てる再利用部と、
前記プロセスガスの流量を制御する流量制御手段と、
前記回収ガス、放出ガス、排出ガスのうち少なくとも2つのガスの前記分離に係る物理量を調節する調節手段と、
前記調節手段のための調節制御手段と、
を備え、前記調節制御手段が、前記排出ガス中のフッ素系原料が前記回収ガスとして回収される率(以下「回収率」と称す)及び前記回収ガス中のフッ素系原料の濃度(以下「回収濃度」と称す)のうち何れか一方又は両方が所望になるための前記プロセスガス流量と前記物理量との関係を表すデータを格納したデータ格納部を有し、前記流量制御手段による制御流量と前記関係データとに基づいて前記調節手段を制御することを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項12】
前記調節手段が、前記2つのガスの圧力を調節するガス圧調節手段を含むことを特徴とする請求項11に記載のプラズマ処理装置。
【請求項13】
前記調節手段が、回収ガスの圧力を調節する回収ガス圧調節手段と、放出ガスの圧力を放出ガス圧調節手段とを含むことを特徴とする請求項11又は12に記載のプラズマ処理装置。
【請求項14】
前記関係データが、前記放出ガス中のフッ素系原料が放出許容量以下となる回収率になるよう設定されていることを特徴とする請求項11〜13の何れか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項15】
前記関係データが、前記回収ガスの不純物濃度が前記処理部での不純物許容量以下となる回収濃度になるよう設定されていることを特徴とする請求項11〜14の何れか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項16】
前記プロセスガス中のフッ素系原料の量が、前記表面処理の反応成分を生成するための化学量論的必要量であって前記プラズマ化時の分解率を考慮した化学量論的必要量以上になるよう、前記流量制御手段による制御流量が設定され、かつ前記関係データが設定されていることを特徴とする請求項11〜15の何れか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項17】
前記プロセスガスに水を添加する添加手段を更に備え、前記フッ素系原料と水のプラズマ化により前記表面処理の反応成分としてフッ化水素が生成され、
前記プロセスガス中のフッ素系原料の量が、フッ化水素生成のための水の添加量を基準とした化学量論的必要量であって前記プラズマ化時の分解率を考慮した化学量論的必要量より過剰になるよう、前記流量制御手段による制御流量が設定され、かつ前記関係データが設定されていることを特徴とする請求項11〜16の何れか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項18】
前記回収ガスにフッ素系原料を一定量補充する補充部が、前記再利用部に接続されていることを特徴とする請求項11〜17の何れか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項19】
前記分離部が、複数段の分離器を有し、各分離器が分離膜によって第1室と第2室とに仕切られ、前記排出ガスが第1段の第1室に導入され、複数段の第1室が直列に連なり、最終段の第1室から回収ガスが導出され、各段の第2室から放出ガスが導出されることを特徴とする請求項11〜18の何れか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項20】
前記処理部が、大気圧環境に常時開放された開口を有するチャンバーを含み、前記開口が被処理物の搬入口又は搬出口になり、前記排出ガスが、処理済みのプロセスガスと前記チャンバー内から吸引した雰囲気ガスを含むことを特徴とする請求項11〜19の何れか1項に記載のプラズマ処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−63995(P2010−63995A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−232121(P2008−232121)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】