説明

プラズマ処理装置のアンテナ構造

【課題】給電側電極棒と接地側電極棒とを通電可能に接続する接続部材の取り付け容易性を向上する。
【解決手段】交流電源の給電側に接続され、処理室内で軸心を鉛直方向に沿わせて垂下支持される給電側電極棒51と、交流電源の接地側に接続され、給電側電極棒51に対向して処理室内で垂下支持される接地側電極棒52と、給電側電極棒51および接地側電極棒52の先端が進入可能な進入部62が本体61に設けられ、両電極棒51、52の先端をそれぞれ進入部62に進入させた状態で両電極棒51、52の先端近傍に懸架される連結部材60と、進入部62の内部に位置して両電極棒51、52の先端に接触する一対の接触部53a、および、これら一対の接触部53aを接続する接続部53bを有する接続部材53と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空チャンバ内でプラズマを発生させて処理対象の被処理面に薄膜を生成したり、エッチングを行ったりするプラズマ処理装置のアンテナ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1、2に示されるプラズマ処理装置(プラズマCVD装置)が知られている。これらのプラズマ処理装置は、真空状態に減圧可能な処理室を有する真空チャンバを備えており、この真空チャンバの天井部に、高周波電源に電気的に接続された複数のコネクタが配設されている。また、処理室内には、複数本の電極棒を有するアレイアンテナユニットが設けられており、このアレイアンテナユニットの電極棒が、複数のコネクタそれぞれに接続された状態で処理室内において垂下支持されている。
【0003】
そして、真空状態に減圧された処理室内に、処理対象である基板を保持する基板搬送用の台車を搬送するとともに、当該基板をアレイアンテナユニットに対向させた状態で、真空チャンバ内に反応ガスを供給しつつ、電極棒に高周波電力を供給する。これにより、真空雰囲気中にプラズマが発生するとともに、プラズマによって分解された反応ガスの成分が基板の表面に付着し、非結晶シリコン膜または微結晶シリコン膜などの薄膜が基板表面に生成されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−262541号公報
【特許文献2】特開2003−109798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のプラズマ処理装置においては、高周波電源の給電側に接続される給電側電極棒と、接地側に接続される接地側電極棒とが、それぞれの先端において接続部材によって通電可能に接続されている。このとき、接続部材は、その一端を給電側電極棒の先端に取り付けるとともに、他端を接地側電極棒の先端に取り付けなければならず、特に、多数の電極棒を有するプラズマ処理装置においては、接続部材の取り付け作業が煩雑となってしまう。
【0006】
本発明は、給電側電極棒と接地側電極棒とを通電可能に接続する接続部材の取り付け容易性を向上することができるプラズマ処理装置のアンテナ構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のプラズマ処理装置のアンテナ構造は、交流電源からの電力供給により、真空チャンバに設けられた処理室内でプラズマを発生させるプラズマ処理装置のアンテナ構造であって、交流電源の給電側に接続され、処理室内で軸心を鉛直方向に沿わせて垂下支持される給電側電極棒と、交流電源の接地側に接続され、給電側電極棒に対向して処理室内で垂下支持される接地側電極棒と、給電側電極棒の先端が進入可能な第1進入部、および、接地側電極棒の先端が進入可能な第2進入部が本体に設けられ、給電側電極棒の先端を第1進入部に進入させ、接地側電極棒の先端を第2進入部に進入させた状態で、両電極棒の先端近傍に懸架される連結部材と、第1進入部の内部に位置し当該第1進入部に進入した給電側電極棒に通電可能に接触する第1接触部、第2進入部の内部に位置するとともに当該第2進入部に進入した接地側電極棒に通電可能に接触する第2接触部、および、両接触部を接続する接続部を有する接続部材と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明のプラズマ処理装置のアンテナ構造は、第1接触部および第2接触部は、第1進入部に進入した給電側電極棒および第2進入部に進入した接地側電極棒の先端に付勢して接触状態を維持する弾性体であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明のプラズマ処理装置のアンテナ構造は、第1接触部および第2接触部が、第1進入部に進入した給電側電極棒および第2進入部に進入した接地側電極棒の先端に圧縮されるバネ状に構成されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明のプラズマ処理装置のアンテナ構造は、連結部材の本体には、第1進入部に連通する第1連通孔と、第2進入部に連通する第2連通孔と、が設けられ、接続部材の接続部は、第1連通孔および第2連通孔を介して連結部材の本体外方に導かれていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明のプラズマ処理装置のアンテナ構造は、連結部材の本体は導電性の部材によって構成され、第1進入部および第2進入部には、これら両進入部の内面を被覆して接続部材と連結部材とを非接触状態に維持する非導電性の被覆部材が設けられていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明のプラズマ処理装置のアンテナ構造は、給電側電極棒および接地側電極棒はそれぞれ複数本設けられるとともに、両電極棒が直線上に整列配置され、連結部材は、複数本の電極棒それぞれに対応する第1進入部および第2進入部を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、給電側電極棒と接地側電極棒とを通電可能に接続する接続部材の取り付け容易性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】真空チャンバの正面側を示す斜視図である。
【図2】真空チャンバの背面側を示す斜視図である。
【図3】真空チャンバの正面側の断面を模式的に示す図である。
【図4】アレイアンテナユニットの斜視図である。
【図5】アレイアンテナユニットが掛止された状態の真空チャンバの正面側断面図である。
【図6】アレイアンテナユニットが掛止された状態の真空チャンバの右側面図である。
【図7】(a)は、図4のVII(a)−VII(a)線断面図、(b)は、図4のVII(b)−VII(b)線断面図である。
【図8】連結部材の構成を示す図である。
【図9】連結部材に各種の部品が設けられた状態を示す図である。
【図10】被覆部材を示す図である。
【図11】接続部材の斜視図である。
【図12】リング部材を示す図である。
【図13】接続部材の取り付け工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0016】
本実施形態のプラズマ処理装置は、処理対象の被処理面に薄膜を生成するプラズマCVD装置や、処理対象の被処理面をエッチング加工するプラズマエッチング装置として用いることが可能である。
【0017】
まず、図1〜図3を用いて、本実施形態のプラズマCVD装置の真空チャンバの構造について説明する。図1は、真空チャンバの正面側を示す斜視図、図2は、真空チャンバの背面側を示す斜視図である。
【0018】
図1および図2に示すように、真空チャンバ1は、筐体2を備えて構成されている。この筐体2は、図中y方向に対面配置された天井部2aおよび底面部2bと、図中x方向に対面配置された右側面部2cおよび左側面部2dと、図中z方向に対面配置された正面部2eおよび背面部2fと、を備えている。以下では、天井部2a側を真空チャンバ1の上方または上面とし、右側面部2c側を真空チャンバ1の右方または右側面とし、左側面部2d側を真空チャンバ1の左方または左側面として説明する。
【0019】
正面部2eおよび背面部2fには、それぞれフロント開口部3およびリヤ開口部4が形成されており、これらフロント開口部3およびリヤ開口部4を開閉するフロント開閉扉5およびリヤ開閉扉6がそれぞれ設けられている。また、右側面部2cにも右開口部7が形成されており、この右開口部7を開閉する開閉扉8が設けられている。さらに、左側面部2dにも左開口部9が形成されているが、この左開口部9は、不図示の搬送チャンバに接続可能となっている。この左開口部9には、真空チャンバ1と搬送チャンバとを真空状態を維持したまま連通したり、あるいはその連通を遮断したりする不図示のゲートバルブが設けられている。そして、このゲートバルブを閉じるとともに、フロント開閉扉5、リヤ開閉扉6および開閉扉8を閉じることにより、筐体2の内部に、外部から完全に密閉された処理室10が形成されることとなる。
【0020】
また、天井部2aには、3列のコネクタ群11a、11b、11cが設けられている。これらコネクタ群11a、11b、11cは、複数のコネクタが図中x方向に沿って直列配置されたものであり、図中z方向に所定の間隔を維持して設けられている。
【0021】
図3は、真空チャンバ1の正面側の断面を模式的に示す図である。この図に示すように、コネクタ群11aは、高周波電力を供給する高周波電源12の供給側(非接地側)に電気的に接続された第1天井側コネクタ13と、高周波電源12の接地側に電気的に接続された第2天井側コネクタ14とが、所定の間隔を維持して交互に設けられている。これら第1天井側コネクタ13および第2天井側コネクタ14は、その接続部が鉛直方向下方(底面部2b側)に向けられており、後述するアレイアンテナユニットの電極棒が、鉛直方向下方から上方に向かって接続可能なように配置されている。
【0022】
また、第2天井側コネクタ14にはガス供給源15が接続されており、このガス供給源15から供給される材料ガスが、第2天井側コネクタ14に接続されたアレイアンテナユニットの電極棒から処理室10内に噴出可能となっている。なお、ここではコネクタ群11aについて説明したが、コネクタ群11b、11cも上記と同様の構成となっている。さらに、筐体2の天井部2aには真空ポンプ16が接続されており、処理室10を密閉した状態で真空ポンプ16を駆動することにより、真空チャンバ1内が真空状態に減圧可能となっている。
【0023】
なお、図中符号17は、処理対象である基板等が支持された搬送台車を、搬送チャンバから処理室10内に搬入したり、処理室10から搬送チャンバに搬出したりする際にガイドとして機能するガイドレールである。このガイドレール17は、筐体2の底面部2bにおいて、右側面部2cから左側面部2dまで図中x方向に沿って延在している。
【0024】
図4は、アレイアンテナユニット30の斜視図である。この図に示すように、アレイアンテナユニット30は、アンテナ支持部材31を備えており、このアンテナ支持部材31に複数本の誘導結合型電極50が支持されている。この誘導結合型電極50は、第1電極棒51(給電側電極棒)と第2電極棒52(接地側電極棒)とが、その先端において接続部材53によって電気的に接続されたアンテナ素子であり、アンテナ支持部材31の長手方向に沿って複数本支持されている。具体的には、両電極棒51、52は、その軸心に直交する方向に所定の間隔を維持して交互に直列配置された状態で、その上端部がアンテナ支持部材31に支持されている。なお、両電極棒51、52は、導電性の金属部材によって構成されているが、接続部材53に接触する先端部を除く全周囲を、絶縁性の材質でコーティングされている。
【0025】
図5は、アレイアンテナユニット30が掛止された状態の真空チャンバ1の正面側断面図であり、図6は、アレイアンテナユニット30が掛止された状態の真空チャンバ1の右側面図である。これらの図に示すように、アンテナ支持部材31は、ボルト等の不図示の掛止手段によって真空チャンバ1の天井部2aに掛止される。このようにしてアレイアンテナユニット30が処理室10内に掛止された状態では、第1電極棒51が天井部2aに設けられた第1天井側コネクタ13に接続され、第2電極棒52が第2天井側コネクタ14に接続されており、両電極棒51、52は、それらの軸心を鉛直方向に沿わせた状態で、天井部2aに垂下支持されることとなる。以下に、アレイアンテナユニット30の構造について詳細に説明する。
【0026】
図7(a)は、図4のVII(a)−VII(a)線断面図であり、図7(b)は、図4のVII(b)−VII(b)線断面図である。これらの図に示すように、アンテナ支持部材31は、断面U字形の部材によって構成されており、その開口を鉛直方向下方に臨ませている。このアンテナ支持部材31は、図7(b)からも明らかなように、その幅方向中央にアンテナ支持孔32が形成されている。このアンテナ支持孔32は、アンテナ支持部材31の長手方向に沿って形成される長孔形状をなしており、このアンテナ支持孔32に、第1電極棒51および第2電極棒52が交互に垂下支持されている。
【0027】
より詳細に説明すると、第1電極棒51の上端部には、真空チャンバ1の天井部2aに設けられた第1天井側コネクタ13に接続可能な第1アンテナ側コネクタ54が固定されている。また、第2電極棒52の上端部には、真空チャンバ1の天井部2aに設けられた第2天井側コネクタ14に接続可能な第2アンテナ側コネクタ55が固定されている。
【0028】
第1アンテナ側コネクタ54は、円筒状の本体54aを備えており、この本体54aの底面部54bに、第1電極棒51が貫通した状態で固定されている。また、本体54aの開口側には、当該本体54aよりも大径のフランジ部54cが設けられている。このフランジ部54cは、アンテナ支持部材31に形成されたアンテナ支持孔32の幅よりも大径となる寸法関係を維持している。したがって、アンテナ支持孔32の上方から第1アンテナ側コネクタ54を挿入すると、本体54aがアンテナ支持孔32を挿通するとともに、フランジ部54cがアンテナ支持部材31の上面に接触して掛止され、これによって第1電極棒51がアンテナ支持部材31に垂下支持されることとなる。
【0029】
なお、ここでは第1アンテナ側コネクタ54について説明したが、第2アンテナ側コネクタ55の構成も上記第1アンテナ側コネクタ54と同様である。つまり、第2アンテナ側コネクタ55は、本体55aと、底面部55bと、フランジ部55cと、を備えており、底面部55bに第2電極棒52が貫通した状態で固定されている。そして、フランジ部55cがアンテナ支持部材31の上面に接触して掛止されることにより、第2電極棒52がアンテナ支持部材31に垂下支持されることとなる。
【0030】
また、図7(a)に示すように、各第1電極棒51は、その外周にセラミックスまたは樹脂などの誘電体からなる外筒56を備えている。一方、各第2電極棒52は円筒形状をなしており、その軸心に沿って延在するガス供給路52aが内部に形成されている。また、各第2電極棒52は、ガス供給路52aに垂直に連通する噴出孔52bを備えている。この第2電極棒52は、上述したように、アレイアンテナユニット30が真空チャンバ1内に掛止されたときに、第2天井側コネクタ14に接続されて、上記したガス供給源15とガス供給路52aとが連通する関係をなしている。したがって、アレイアンテナユニット30が真空チャンバ1(処理室10)内に掛止された状態で、ガス供給源15から材料ガスが供給されることにより、噴出孔52bから真空チャンバ1の処理室10に向けて材料ガスが噴出することとなる。
【0031】
なお、アンテナ支持部材31の上面には、両アンテナ側コネクタ54、55を被覆する断面U字形のカバー部材33が固定されている。このカバー部材33には、両アンテナ側コネクタ54、55の本体54a、55aに一致する円形の孔33aが複数設けられている。これにより、各アンテナ側コネクタ54、55の本体54a、55aの開口、すなわち、両電極棒51、52の上端は、カバー部材33の孔33aを介して上方に臨むこととなる。
【0032】
図8は、連結部材60の構成を示す図である。この連結部材60は、上記した接続部材53を、両電極棒51、52の先端に接触させた状態で保持するためのものであり、ステンレス鋼等を材質とする断面矩形の棒状部材からなる本体61を備えて構成されている。この連結部材60には、本体61の上面61aに開口する複数の進入部62(第1進入部または第2進入部)が、本体61の長手方向に沿って一直線上に等間隔に設けられている。
【0033】
進入部62は、本体61の上面61aに開口する円形の凹部によって構成され、上面61aに開口する開口部62aと、この開口部62aよりも内径が小さく形成された深部62bと、を備えている。なお、開口部62aと深部62bとの間には段部62cが形成され、また、深部62bを区画する面のうち、本体61の下面61b側に位置する面を底面部62dとしている。そして、本体61の下面61bには、進入部62の底面部62dに連通する連通孔63(第1連通孔、第2連通孔)が設けられており、これによって、進入部62は、本体61の上面61a側から下面61b側へ貫通することとなる。
【0034】
図9は、連結部材60に各種の部品が設けられた状態を示す図である。この図に示すように、連結部材60の進入部62には、被覆部材70、リング部材71および接続部材53が設けられている。以下では、連結部材60に設けられる上記の各部品について詳細に説明する。
【0035】
図10は、連結部材60の進入部62内に設けられる被覆部材70を示す図である。被覆部材70は、非導電性の本体70aによって構成される。この本体70aは、一端が開口され、他端が底部70bによって閉塞された円筒状をなしており、底部70bには挿通孔70cが設けられている。被覆部材70の本体70aは、その直径を、連結部材60の進入部62、より詳細には、進入部62の深部62bの内径よりも僅かに小さくしている。この被覆部材70は、図9に示すように、底部70bが底面部62dに面接触した状態で、進入部62内に嵌合されており、このとき、被覆部材70の挿通孔70cが、連結部材60の連通孔63に連続することとなる。
【0036】
図11は、接続部材53の斜視図である。接続部材53は、導電性の部材(本実施形態においてはアルミニウム)であって、一枚の薄板部材を図示のように屈曲形成して構成される。具体的には、接続部材53は、一枚の薄板部材の両端をそれぞれバネ状に屈曲させて、圧縮により弾性変形する一対の接触部53a(第1接触部と第2接触部)と、これら一対の接触部53aの弾性方向に突出した位置で当該両接触部53aを接続する接続部53bと、を有している。
【0037】
この接続部材53は、図9に示すように、一対の接触部53aがそれぞれ被覆部材70の本体70a内に収容されている。また、接続部53bは、被覆部材70の挿通孔70cおよび連結部材60の連通孔63を介して、連結部材60の外方、すなわち、本体61の下面61bよりも外方に導かれている。このとき、接続部材53の接触部53aは、被覆部材70内に収容されているため、接触部53aと連結部材60の本体61とが非接触状態に維持されている。また、接続部53bは、連結部材60の下面61bから垂直に突出しているため、この接続部53bと連結部材60の本体61とが非接触状態に維持されている。したがって、接続部材53は、連結部材60に対して完全に非接触状態に維持されることとなる。
【0038】
図12は、リング部材71を示す図である。リング部材71は、薄板円形状の本体71aによって構成される非導電性の部材であり、本体71aには、上記した第1電極棒51および第2電極棒52の直径よりも僅かに内径を大きくする通孔71bが形成されている。このリング部材71は、図9に示すように、進入部62の段部62cに載置された状態で、当該進入部62の開口を塞ぐ構成となっており、進入部62内への皮膜等の進入を防止する機能を担っている。
【0039】
図13は、接続部材53の取り付け工程を説明する図である。接続部材53は、上記の連結部材60を、各電極棒51、52の先端に懸架することによって一括して取り付けられる。連結部材60を懸架する際には、まず、各電極棒51、52が鉛直方向に沿って垂下するように、アレイアンテナユニット30を掛止しておく。そして、図13(a)に示すように、接続部材53、被覆部材70およびリング部材71が一体的にユニット化された連結部材60を、各電極棒51、52の先端に位置させる。そして、各進入部62に各電極棒51、52の先端を臨ませた状態で、連結部材60を鉛直上方に移動させる。
【0040】
すると、各電極棒51、52が、リング部材71の通孔71bを貫通して進入部62内に進入する。このとき、各電極棒51、52は、その先端によって接続部材53の接触部53aを圧縮するとともに、各接触部53aが最大に圧縮されたところで、進入部62内への進入が停止される。このように、連結部材60が各電極棒51、52間に懸架された状態で、不図示の保持手段によって連結部材60を保持することにより、全ての接続部材53が両電極棒51、52に接続された状態に維持されることとなる。なお、図13(b)に示す位置に連結部材60を保持する保持手段としては、アンテナ支持部材31と連結部材60とを挟持するとともに、アンテナ支持部材31と連結部材60とが互いに近づく方向にボルトを締結したり、あるいは、連結部材60が脱落しないように、下方から上方に向けて付勢力を付与したりするものが考えられる。
【0041】
以上のように、本実施形態によれば、ユニット化された連結部材60を両電極棒51、52の先端に保持することにより、全ての接続部材53が一括して取り付けられるので、当該接続部材53の取り付け作業を簡素化することができ、作業効率を向上することができる。また、接続部材53は、付勢力によって両電極棒53の先端に圧接するため、両電極棒51、52を確実に接続状態に維持することができる。
【0042】
なお、上記実施形態においては、連結部材60の本体61を導電性の部材で構成することとしたが、本体61は非導電性の部材で構成してもよい。この場合には、連結部材60と接続部材53とを絶縁するための被覆部材70を不要とすることができる。また、上記実施形態においては、両電極棒51、52が進入する進入部62を凹状としたが、両電極棒51、52が貫通する孔状としてもよい。この場合には、例えば、接続部材53の接触部53aを、両電極棒51、52が接触状態で貫通するコイル状に形成したり、あるいは、両電極棒51、52の周面に接触する板バネ状に形成したりすればよい。いずれにしても、進入部62や接続部材53の形状は上記実施形態に限定されるものではなく、適宜設計変更が可能である。したがって、上記実施形態においては、接続部材53を一枚の薄板部材によって成形することとしたが、例えば、接触部53aと接続部53bとを別部材によって構成してもよい。
【0043】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、真空チャンバ内でプラズマを発生させて処理対象の被処理面に薄膜を生成したり、エッチングを行ったりするプラズマ処理装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 真空チャンバ
10 処理室
12 高周波電源
51 第1電極棒
52 第2電極棒
53 接続部材
53a 接触部
53b 接続部
60 連結部材
61 本体
62 進入部
63 連通孔
70 被覆部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源からの電力供給により、真空チャンバに設けられた処理室内でプラズマを発生させるプラズマ処理装置のアンテナ構造であって、
前記交流電源の給電側に接続され、前記処理室内で軸心を鉛直方向に沿わせて垂下支持される給電側電極棒と、
前記交流電源の接地側に接続され、前記給電側電極棒に対向して前記処理室内で垂下支持される接地側電極棒と、
前記給電側電極棒の先端が進入可能な第1進入部、および、前記接地側電極棒の先端が進入可能な第2進入部が本体に設けられ、前記給電側電極棒の先端を前記第1進入部に進入させ、前記接地側電極棒の先端を前記第2進入部に進入させた状態で、前記両電極棒の先端近傍に懸架される連結部材と、
前記第1進入部の内部に位置し当該第1進入部に進入した前記給電側電極棒に通電可能に接触する第1接触部、前記第2進入部の内部に位置するとともに当該第2進入部に進入した前記接地側電極棒に通電可能に接触する第2接触部、および、前記両接触部を接続する接続部を有する接続部材と、を備えたことを特徴とするプラズマ処理装置のアンテナ構造。
【請求項2】
前記第1接触部および第2接触部は、前記第1進入部に進入した前記給電側電極棒および前記第2進入部に進入した前記接地側電極棒の先端に付勢して接触状態を維持する弾性体であることを特徴とする請求項1記載のプラズマ処理装置のアンテナ構造。
【請求項3】
前記第1接触部および第2接触部は、
前記第1進入部に進入した前記給電側電極棒および前記第2進入部に進入した前記接地側電極棒の先端に圧縮されるバネ状に構成されていることを特徴とする請求項2記載のプラズマ処理装置のアンテナ構造。
【請求項4】
前記連結部材の本体には、
前記第1進入部に連通する第1連通孔と、
前記第2進入部に連通する第2連通孔と、が設けられ、
前記接続部材の前記接続部は、前記第1連通孔および前記第2連通孔を介して前記連結部材の本体外方に導かれていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のプラズマ処理装置のアンテナ構造。
【請求項5】
前記連結部材の前記本体は導電性の部材によって構成され、
前記第1進入部および前記第2進入部には、これら両進入部の内面を被覆して前記接続部材と前記連結部材とを非接触状態に維持する非導電性の被覆部材が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のプラズマ処理装置のアンテナ構造。
【請求項6】
前記給電側電極棒および前記接地側電極棒はそれぞれ複数本設けられるとともに、前記両電極棒が直線上に整列配置され、
前記連結部材は、前記複数本の電極棒それぞれに対応する第1進入部および第2進入部を備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のプラズマ処理装置のアンテナ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−20828(P2013−20828A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153586(P2011−153586)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】