説明

プラズマ処理装置用トレイ及びプラズマ処理装置

【課題】被処理基板に対するプラズマ処理の均一化を損なうことがなく、また、プラズマ処理によって消耗したときの交換部分を極力少なくすることができるプラズマ処理装置用トレイ及びそのようなトレイを備えたプラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】 本発明のプラズマ処理装置用トレイ10は、反応容器2内に設けられた基板載置台27の上面に、被処理基板11を収容した状態で載置されるトレイであって、前記基板載置台27の上面に載置されるトレイ本体101と、前記トレイ本体101に設けられた、該トレイ本体101の厚み方向に貫通する開口102と、開口102に着脱可能に装着される環状の基板保持部材と103とを備える。基板保持部材103は、開口102に係合する係合部106と、該基板保持部材103の内周縁の下部に形成された被処理基板11の下面の外周縁を支持する基板支持部105とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応容器内に設けられた基板載置台に、被処理基板を収容した状態で載置されるプラズマ処理装置用トレイ、及びそのようなトレイを備えたプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマ処理装置では、反応容器内に設けられた基板載置台に1ないし複数の被処理基板を載置してプラズマエッチング処理やプラズマ成膜処理等のプラズマ処理が行われる。特に、複数枚の被処理基板に対してプラズマ処理を行う場合には、作業効率の向上のため、複数枚の被処理基板を1枚のトレイに載せて反応容器まで搬送することが行われる。反応容器まで搬送された被処理基板はトレイに載せられた状態で基板載置台上に載置される。
【0003】
プラズマエッチング処理を行うと基板に熱が発生する。また、プラズマ成膜処理では、基板を所定の温度に維持する必要がある。そこで、プラズマ処理装置では、基板載置台に冷却機構や加熱機構を設け、基板載置台上の基板を冷却したり加熱したりするようにしている。トレイに保持された被処理基板と基板載置台の間の熱伝達性を向上するため、従来のプラズマ処理装置では、厚さ方向に貫通する収容孔を有し、この収容孔に基板を収容するようにしたトレイが用いられている(特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-066417号公報
【特許文献2】特開2007-109770号公報
【特許文献3】特開2010-267894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、強度等の点を考慮してトレイには被処理基板と異なる材料が用いられる。ところが、トレイと被処理基板の材料が異なると、トレイと被処理基板の境界付近でプラズマの状態が不安定になり、該被処理基板全体に均一なプラズマ処理を行うことができなくなったり、トレイの収容孔周縁部がプラズマエッチングされて消耗したりするという問題があった。トレイの収容孔周縁部が消耗すると、被処理基板を正しい位置や姿勢で保持することができない。このため、収容孔周縁部が消耗すると、その他の部分が消耗していなくてもトレイ全体を新しいトレイと交換しなければならなかった。
【0006】
本発明は以上のような課題を解決するために成されたものであり、その第1の目的は、被処理基板に対するプラズマ処理の均一化を損なうことがないプラズマ処理装置用トレイ及びそのようなトレイを備えたプラズマ処理装置を提供することである。又、本発明の第2の目的は、プラズマ処理によって消耗したときの交換部分を極力少なくすることができるプラズマ処理装置用トレイ及びそのようなトレイを備えたプラズマ処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、反応容器内に設けられた基板載置台の上面に、被処理基板を収容した状態で載置されるプラズマ処理装置用トレイであって、
前記基板載置台の上面に載置されるトレイ本体と、
前記トレイ本体に設けられた、該トレイ本体の厚み方向に貫通する開口と、
前記開口に着脱可能に装着される環状の基板保持部材と
を備え、
前記基板保持部材が、該基板保持部材の外周縁に設けられた、前記開口に係合する係合部と、該基板保持部材の内周縁の下部に形成された前記被処理基板の下面の外周縁を支持する基板支持部とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明のプラズマ処理装置用トレイでは、トレイ本体と基板保持部材を別体にしたため、トレイ本体と基板保持部材の材料を自由に選択することができる。特に前記基板保持部材は、プラズマ処理の均一化を損なうことのない適宜の材料、例えば前記被処理基板と同じ材料から構成することができる。このようなプラズマ処理装置用トレイを用いることにより、プラズマ処理時における被処理基板の外周縁付近のプラズマ状態を安定させることができ、被処理基板全体に均一なプラズマ処理を行うことができる。
【0009】
さらに、前記プラズマ処理装置用トレイにおいては、前記トレイ本体に設けられた開口の内周面が下方から上方に向かって拡開するテーパ状に形成され、
前記基板保持部材の係合部の外周面が、前記開口の内周面に対応するテーパ状に形成されて該開口の内周面に載置される態様で係合することが好ましい。
【0010】
また、本発明のプラズマ処理装置用トレイでは、前記基板保持部材を前記トレイ本体の開口に装着したときに、該基板保持部材の上端部が該トレイ本体の上面よりも突出するように構成すると良い。このような構成においては、トレイ本体よりも突出する基板保持部材の上端部が、プラズマ処理時に供給される原料ガスの流量や流速を調節する整流板として機能する。
【0011】
上記課題を解決するために成された本発明に係るプラズマ処理装置は、
トレイ本体と、このトレイ本体に設けられた該トレイ本体の厚み方向に貫通する開口と、この開口に着脱可能に装着される環状の基板保持部材とを有するプラズマ処理装置用トレイと、
前記プラズマ処理装置用トレイが載置される基板載置台と、
前記基板載置台に設けられ、前記プラズマ処理装置用トレイを静電吸着する静電チャックと
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のプラズマ処理装置用トレイは、トレイ本体と、該トレイ本体の開口に着脱可能に装着される環状の基板保持部材とから構成されており、被処理基板は前記基板保持部材に保持される。このようにトレイ本体と基板保持部材を別体にしたため、トレイ本体と基板保持部材の材料を自由に選択して、被処理基板に対するプラズマ処理の均一化を損なわないようにすることができる。また、プラズマ処理によって基板保持部材が消耗した場合でも、基板保持部材を交換するだけで済む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施例に係るプラズマ処理装置の全体構成を示す概略図。
【図2】基板載置台の一部と基板載置台の上に載置されたトレイの縦断面図(a)及びトレイの外観斜視図(b)。
【図3】基板載置台及びトレイの部分拡大図。
【図4】トレイ本体の開口部及び基板保持部材の断面斜視図。
【図5】本発明の第2の実施例に係るトレイ本体の開口部及び基板保持部材の断面斜視図。
【図6】本発明の第3の実施例を示すトレイ本体の開口部及び基板保持部材並びに基板載置台の断面斜視図。
【図7】基板載置台及びトレイ並びに被処理基板の部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づき、本発明に係るプラズマ処理装置用トレイ及びプラズマ処理装置の実施例について説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は本発明の実施例1に係るプラズマ処理装置1の断面図、図2〜図4はプラズマ処理装置用トレイ10(以下、単に「トレイ10」という。)の構造を示す図である。本実施例に係るプラズマ処理装置1は、被処理基板11にプラズマエッチングを施すものであり、内部に処理室2aが形成された真空容器2と、該真空容器2の内部に対向配置された上部電極21及び下部電極22とを有している。ここでは、円板状の被処理基板11にプラズマエッチングを施すものとするが、被処理基板11の形状は円板状に限らず矩形板状等でも良い。
【0016】
下部電極22の上面には誘電層23が設けられており、下部電極22及び誘電層23が静電チャック部24として機能する。また、下部電極22の下部には、その内部に冷媒を流通させるための流通路(図示せず)が配設された水冷ジャケット25が設けられている。前記流通路には冷却機構26から冷媒が供給される。下部電極22、誘電層23及び水冷ジャケット25が本発明の基板載置台27を構成する。基板載置台27の上面には、被処理基板11の大きさに対応する複数の環状溝28が形成されている。
尚、図示しないが、プラズマ処理装置1は、上記した以外に、プラズマ発生用のガス供給源、真空排気装置、上部電極21や下部電極22に高周波電圧を印加するための高周波電源等を備えている。
【0017】
トレイ10は、基板載置台27の上に配置されるトレイ本体101と、該トレイ本体101に設けられた、前記被処理基板11の外径寸法よりもやや大きな内径寸法の複数の開口102を有している。これら開口102はトレイ本体101を厚み方向に貫通している。これら開口102には、それぞれ環状の基板保持部材103が着脱可能に装着されている。基板保持部材103は、前記開口102の内周面に沿う環状部104と、該環状部104の内周面の下部に全周にわたって設けられた、該環状部の内方に突出する基板支持部105と、前記環状部104の外周面の上部に全周にわたって設けられた係合部106とを有する。トレイ本体101の開口102に基板保持部材103を装着したとき、該基板保持部材103の下端部がトレイ本体101の下面よりも下方に突出するように基板保持部材103の厚み寸法(上下寸法)は設定されている。
【0018】
前記トレイ本体101と基板保持部材103は適宜の材料から作製することができる。例えば、本実施例のプラズマ処理装置1のように、静電チャック部24によりトレイ10を基板載置台27に吸着させる構造の場合は、前記トレイ本体101はアルミニウム等の金属材料から作製すると良い。トレイ本体101を金属材料から作製すると、静電チャック部24によってトレイ本体101を基板載置台27に強く吸着させることができる。
【0019】
この場合、被処理基板11と基板保持部材103を同じ材料から構成すると良い。このような構成によれば、被処理基板11の外周縁付近に発生するプラズマの状態が安定し、被処理基板11の全体に均一なプラズマ処理を施すことができる。基板保持部材103を被処理基板11と同じ材料から構成すると、基板保持部材103に対してもプラズマエッチング処理がなされてしまい、該基板保持部材103が消耗し易いという問題があるが、本実施例ではトレイ本体101と基板保持部材103が別体であるため、消耗した基板保持部材103だけを交換すれば良く、トレイ全体を交換していた従来に比べて経済的となる。
【0020】
被処理基板11がシリコンのような導電体である場合には、基板保持部材103をアルミナ等の誘電体から構成すると、基板保持部材103がフォーカスリングとしての機能を発揮する。即ち、被処理基板11上にプラズマを収束させることができ、該被処理基板11の外周縁付近におけるプラズマ密度の低下を防ぐことができる。このため、被処理基板11上のプラズマの均一性を向上させることができる。
【0021】
また、被処理基板11が化合物半導体基板の場合には、トレイ本体101を金属材料で作製し、基板保持部材103をアルミナや二酸化ケイ素、窒化アルミニウムなどのセラミック材料で作製すると良い。セラミック材料からなる基板保持部材103はプラズマエッチングされにくいため、プラズマ処理時における基板保持部材103の消耗を抑えることができる。また、金属材料から成るトレイ本体101は、プラズマ処理によって金属ラジカルを生させるが、トレイ本体101と被処理基板11の間に基板保持部材103が介在し、トレイ本体101と被処理基板11が隣接しないため、該金属ラジカルによる被処理基板11の汚染を少なく抑えることができる。
【0022】
上記プラズマ処理装置1の動作は次の通りである。
まず、被処理基板11をトレイ本体101の上方から基板保持部材103の環状部104内に挿入し、該被処理基板11の下面の周縁部を基板支持部105の上に載置させる。これにより被処理基板11が基板保持部材103内の下部に保持される。この後、トレイ10は搬送ホルダ30に保持された状態で基板載置台27まで搬送され、該基板載置台27上の所定位置に載置される。このとき、トレイ10は、基板保持部材103の下端部が環状溝28に進入した状態で基板載置台27の上に載置される。そして、被処理基板11は誘電層23に載置された後に基板支持部105から離接する。また、トレイ本体101は静電チャック部24によって吸着される。続いて、真空容器2内が減圧されると共に、原料ガスが真空容器2内に導入され、上部電極21及び下部電極22に高周波電圧が印加される。これにより、原料ガスがプラズマ化され、被処理基板11の表面にプラズマ処理が施される。
【0023】
また、水冷ジャケット25に冷媒が流通することにより基板載置台27が冷却され、トレイ10に保持された被処理基板11で発生する熱が奪われる。特に、本実施例では基板載置台27にトレイ10を載置したとき、環状溝28に基板保持部材103の下端部が進入するようにしたため、該基板保持部材103の下部に保持された被処理基板11の下面と基板載置台27の上面とが接触する。このため、被処理基板11に生じた熱が基板載置台27に効率よく奪われ、該被処理基板11を効率よく冷却することができる。
【実施例2】
【0024】
図5は本発明の第2の実施例に係るプラズマ処理装置用トレイの開口及び基板保持部材の断面斜視図である。この実施例では、トレイ本体101の開口102を下部から上部に向かって拡開するテーパ状にし、基板保持部材103の環状部104の外周面を前記開口102の内周面に対応する形状を有するテーパ状にして、前記トレイ本体101の開口102の内周面に環状部104の外周面が載置される態様で係合するように構成している。従って、この実施例では、環状部104の外周面が係合部106となる。また、前記環状部104の内周面は上方から下方に向かって内方に傾斜する傾斜面になっており、被処理基板11は環状部104の内周面に保持される。従って、環状部104の内周面が基板支持部105となる。また、基板保持部材103は環状溝28に侵入する下端を有する。
【0025】
また、基板保持部材103の上端がトレイ本体101の上面よりも大きく上方に突出するように構成されている。基板保持部材103のトレイ本体101上面よりも上方に突出する部分は整流板として機能し、トレイ10に収容された被処理基板11上を流れる原料ガスの速度や濃度を調節する作用を有する。図4では、便宜上、トレイ本体101の上面よりもほぼ同じ長さだけ基板保持部材103が突出するように描いたが、該突出する部分の長さ寸法は、真空容器2に設けられた原料ガスの導入口や排出口の位置、トレイ本体101に設けられた開口102の位置等に応じて適宜変更すると良い。
【実施例3】
【0026】
図6及び図7は本発明の第3の実施例を示すものであり、第1の実施例とは次の点が異なっている。即ち、基板載置台27の上面に、基板保持部材103の内部形状に対応する複数の円柱状の凸部110が設けられている。この基板載置台27の内部には、各凸部110及びそれ以外の部分にそれぞれ静電チャックが設けられている。
【0027】
基板載置台27の上にトレイ10を載置したとき、凸部110は基板保持部材103の内部に配置され、該凸部110の上面は基板保持部材103の基板支持部105の上面よりも上に位置する。このため、基板支持部105に支持されていた被処理基板11は凸部110によって上方に押し上げられ、該凸部110の上面に直接載置される。従って、被処理基板11で発生した熱が基板載置台27に効率よく伝導されるため、被処理基板11を効率よく冷却することができる。
また、本実施例では各凸部110にも静電チャックを設けたため、トレイ10はもちろん、被処理基板11自身も凸部110に強く静電吸着することができる。
【0028】
尚、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、上記実施例では、基板保持部材の上端部及び下端部は、トレイ本体の上面及び下面よりも上方及び下方に突出していたが、上端部及び下端部がトレイ本体の上面及び下面とほぼ同じ高さ位置にあっても良い。
また、トレイ本体の開口の内周面の上部或いは下部に段部を設け、この段部に基板保持部材が着脱可能に装着されるようにしても良い。この場合、基板保持部材の厚み寸法(上下寸法)をトレイ本体の厚み寸法よりも小さくし、開口の内周面の上半部或いは下半部に装着されるようにしても良い。
【符号の説明】
【0029】
1…プラズマ処理装置
2…真空容器
2a…処理室
10…プラズマ処理装置用トレイ
101…トレイ本体
102…開口
103…基板保持部材
104…環状部
105…基板支持部
106…係合部
11…被処理基板
21…上部電極
22…下部電極
23…誘電層
24…静電チャック部
25…水冷ジャケット
26…冷却機構
27…基板載置台
28…環状溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器内に設けられた基板載置台の上面に、被処理基板を収容した状態で載置されるプラズマ処理装置用トレイであって、
前記基板載置台の上面に配置されるトレイ本体と、
前記トレイ本体に設けられた、該トレイ本体の厚み方向に貫通する開口と、
前記開口に着脱可能に装着される環状の基板保持部材と
を備え、
前記基板保持部材が、該基板保持部材の外周縁に設けられた前記開口に係合する係合部と、前記基板保持部材の内周縁の下部に形成された前記被処理基板の下面の外周縁を支持する基板支持部とを有することを特徴とするプラズマ処理装置用トレイ。
【請求項2】
前記基板保持部材が、前記被処理基板と同じ材料から構成されていることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置用トレイ。
【請求項3】
前記開口の内周面が、下方から上方に向かって拡開するテーパ状に形成され、
前記基板保持部材の係合部の外周面が、前記開口の内周面に対応するテーパ状に形成されて該開口の内周面に載置される態様で係合することを特徴とする請求項1又は2に記載のプラズマ処理装置用トレイ。
【請求項4】
前記基板保持部材を前記トレイ本体の開口に装着したとき、該基板保持部材の上端部が該トレイ本体の上面よりも突出することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のプラズマ処理装置用トレイ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のプラズマ処理装置用トレイと、
前記プラズマ処理装置用トレイが載置される基板載置台と、
前記基板載置台に設けられ、前記プラズマ処理装置用トレイを静電吸着する静電チャックと
を備えることを特徴とするプラズマ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−4613(P2013−4613A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132296(P2011−132296)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(392022570)サムコ株式会社 (36)
【Fターム(参考)】