説明

プラズマ処理装置

【課題】真空容器内に強い誘導電磁界を形成することができ、且つ、アンテナ導体のスパッタリングや温度上昇及びパーティクルの発生を防ぐことができるプラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】真空容器11と、真空容器11の壁の内面111Aと外面111Bの間に配置された高周波アンテナ21と、前記高周波アンテナ21と前記真空容器11の内部を仕切る誘電体製の仕切材16と、を備える。これにより、外部アンテナ方式よりも強い誘導電磁界を真空容器11内に形成することができる。また、仕切材16により、真空容器11内で生成されたプラズマにより高周波アンテナ21がスパッタされることや高周波アンテナ21の温度が上昇すること及びパーティクルが発生することを抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板表面処理等に用いることができる誘導結合型のプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板表面に薄膜を形成したり、基板表面に対するエッチング処理を行うために、誘導結合型プラズマ処理装置が用いられている。誘導結合型プラズマ処理装置では、真空容器内に水素等のプラズマ生成ガスを導入したうえで誘導電磁界を生成することによりプラズマ生成ガスを分解し、プラズマを生成する。そして、プラズマ生成ガスとは別に、真空容器内に成膜原料ガスあるいはエッチングガスを導入し、プラズマにより成膜原料ガスの分子を分解して基体上に堆積させ、あるいはエッチングガスの分子を分解してエッチングに用いるイオンやラジカルを生成する。
【0003】
特許文献1には、誘導電磁界を生成するための高周波アンテナを真空容器の天井の上に載置し、前記天井のうち高周波アンテナの直下の部分を、誘導電磁界を通過させるための誘電体製の窓とした外部アンテナ方式のプラズマ処理装置が記載されている。外部アンテナ方式では、近年の被処理基体の大型化に対応してプラズマ処理装置を大型化を図ると、誘電体製の窓は機械的強度を保つために厚くする必要が生じるため、真空容器内に導入される誘導電磁界の強度が小さくなってしまう。そこで、高周波アンテナを真空容器の内部に設けた内部アンテナ方式のものが用いられている(特許文献2、3参照)。
【0004】
また、特許文献3に記載の発明では、U字形や半円形等のように、線状の導体が周回しないで終端する高周波アンテナ(巻き数が1未満のコイルに相当)を用いている。これにより、高周波アンテナのインダクタンスを低くすることができるため、高周波電力の投入時に高周波アンテナの電圧が抑えられ、その結果、被処理基体がプラズマによりダメージを受けることを防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平08-227878号公報([0010], 図5)
【特許文献2】特開平11-317299号公報([0044]-[0046], 図1-2)
【特許文献3】特開2001-035697号公報([0050]-[0051], 図11)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
内部アンテナ方式では、高周波アンテナの導体とプラズマとの間に直流のセルフバイアス電圧が発生し、この直流セルフバイアス電圧によってプラズマ中のイオンが加速されてアンテナ導体に入射する。これにより、高周波アンテナ導体自身がスパッタリングされ、その寿命が短くなるうえ、スパッタされた導体の原子やイオンがプラズマ中に混入し、被処理基体の表面や真空容器の内壁に付着して、薄膜や被エッチング基体に不純物として混入する、という問題が生じる。 また、内部アンテナ方式では高周波アンテナの導体がプラズマ中に配置されることにより、高周波アンテナ導体の温度が上昇するという問題が生じる。高周波アンテナ導体の温度が変化すると、高周波アンテナのインピーダンスが変化し、プラズマに安定した電力を供給することができない。そのため、特許文献2に記載の発明では、高周波アンテナの導体である銅やアルミニウム等よりもスパッタリングされ難いセラミックスや石英等から成る誘電体(絶縁体)のパイプで高周波アンテナを覆い、誘電体パイプ内に冷却水を流すことが行われている。しかし、このような構成では、アンテナ導体及び誘電体パイプの端部に、高周波電力を投入するための電気的な接続部と冷却水の給排水のための接続部の双方を設ける必要があるため、構造が複雑になり、アンテナの脱着や保守点検に支障をきたす。
【0007】
また、高周波アンテナが真空容器内に設けられていることにより、高周波アンテナ(又はその周囲の誘電体パイプ)の表面に成膜時における薄膜材料やエッチング時の副生成物が付着してしまうことがある。このような付着物は、基体の表面に落下してパーティクルが発生する原因となる。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、真空容器内に強い誘導電磁界を形成することができ、且つ、アンテナ導体のスパッタリングや温度上昇及びパーティクルの発生を防ぐことができるプラズマ処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために成された本発明に係るプラズマ処理装置は、
a) 真空容器と、
b) 前記真空容器の壁の内面と外面の間に設けられたアンテナ配置部と、
c) 前記アンテナ配置部に配置された高周波アンテナと、
d) 前記アンテナ配置部と前記真空容器の内部を仕切る誘電体製の仕切材と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るプラズマ処理装置では、真空容器の壁の内面と外面の間に設けられたアンテナ配置部に高周波アンテナを配置したので、外部アンテナ方式の場合よりも強い誘導電磁界を真空容器内に生成することができる。
【0011】
また、高周波アンテナと真空容器内が誘電体製の仕切材により仕切られるため、パーティクルが発生したり、高周波アンテナがスパッタされたりすることを防ぐことができる。また、高周波アンテナの温度が上昇することを抑えることができる。
【0012】
仕切材には真空容器の壁とは別の誘電体製の部材を用いることができる。また、真空容器の壁が誘電体製である場合にはその壁の一部を仕切材として用いることもできる。
【0013】
前記高周波アンテナは真空容器の壁の中に埋め込むこともできるが、前記内面と前記外面の間に設けられた空洞内に配置するのがより容易である。前者の場合は真空容器の壁のうち高周波アンテナを埋め込んだ部分がアンテナ配置部に該当し、後者の場合は空洞がアンテナ配置部に該当する。
【0014】
前記空洞には密閉されたものを用いることができる。これにより、空洞内への異物の侵入を防ぐことができる。また、密閉された空洞内が真空であるか又は不活性ガスで満たされていれば、空洞内において不要な放電が生じることを防ぐことができる。
【0015】
前記空洞内は固体の誘電体で満たされていてもよい。これにより、空洞内において不要な放電が生じることを防ぐことができる。この場合、空洞内を密閉する必要はない。また、空洞を用いる代わりに、前記壁の少なくとも一部が固体の誘電体から成り、前記高周波アンテナが該誘電体内に埋め込まれている、という構成を採ることもできる。
【0016】
前記空洞の前記外面側には蓋が設けられていてもよい。このような蓋を用いれば、保守点検等の際に蓋を開けることで、真空容器の壁の外面側と空洞内の間で高周波アンテナを容易に出し入れすることができる。また、前記蓋に前記高周波アンテナを取り付けることができる。これにより、蓋を着脱するだけで、更に容易に高周波アンテナを出し入れすることができる。
【0017】
本発明に係るプラズマ処理装置は、アンテナ配置部を複数備えることができる。これにより、真空容器内に形成されるプラズマの密度の均一性を高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るプラズマ処理装置によれば、真空容器内に強い誘導電磁界を形成することができ、且つ、アンテナ導体のスパッタリングや温度上昇及びパーティクルの発生を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るプラズマ処理装置の第1の実施例を示す縦断面図(a)及び該プラズマ処理装置で用いられる高周波アンテナユニット20の縦断面図(b)。
【図2】本実施形態のプラズマ処理装置における高周波アンテナ21の形状を示す斜視図(a)、上面図(b)及び側面図(c)。
【図3】高周波アンテナと高周波電源の接続の一例を示す上面図。
【図4】第1実施例の第1の変形例を示す拡大縦断面図。
【図5】第1実施例の第2の変形例を示す拡大縦断面図。
【図6】本発明に係るプラズマ処理装置の第2の実施例を示す拡大縦断面図。
【図7】本発明に係るプラズマ処理装置の第3の実施例を示す拡大縦断面図。
【図8】本発明に係るプラズマ処理装置の第4の実施例を示す拡大縦断面図。
【図9】本発明に係るプラズマ処理装置の第5の実施例を示す拡大縦断面図(a)及び該実施例で用いられる高周波アンテナ41の上面図(b)。
【図10】本発明に係るプラズマ処理装置の第6の実施例を示す拡大縦断面図。
【図11】本発明に係るプラズマ処理装置の第7の実施例を示す拡大縦断面図(a)、並びにファラデー電極51及びファラデー電極51の周辺の構成を示す上面図(b)。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1〜図11を用いて、本発明に係るプラズマ処理装置の実施例を説明する。
【実施例1】
【0021】
図1(a)は、第1実施例のプラズマ処理装置10の縦断面図である。プラズマ処理装置10は、真空容器11と、真空容器の内部空間112に配置された基体保持部12と、真空容器11の側壁に設けられたガス排出口13及びガス導入口14と、真空容器11の上壁111の外面111Aと内面111Bの間に設けられた空洞(アンテナ配置部)113と、空洞113と真空容器の内部空間112を仕切る仕切材(仕切板)16と、外面111A側から空洞113に取り付けられた高周波アンテナユニット20と、を有する。
【0022】
仕切材16は誘電体製であり、その材料として酸化物、窒化物、炭化物、フッ化物等を用いることができる。それらの材料の中で、石英、アルミナ、ジルコニア、イットリア、窒化珪素あるいは炭化珪素を好適に用いることができる。
【0023】
空洞113の内周面の下端には内側に突出した段111Cが形成されており、この段111Cの上に仕切材16の外周縁が載置されるように取り付けられている。また、蓋23の下面には、真空容器11の外側から空洞113に嵌合するように凸部が設けられている。
【0024】
ガス排出口13は真空ポンプに接続されており、真空ポンプにより真空容器の内部空間112の空気や水蒸気等がガス排出口13から排出されることにより、真空容器の内部空間112は高真空状態にされる。ガス導入口14は、真空容器の内部空間112に水素ガス等のプラズマ生成ガスや成膜原料のガスを導入するためのものである。基体保持部12に保持される基体Sは、真空容器11の側壁に設けられた基体搬出入口15から真空容器の内部空間112に搬入され、又は真空容器の内部空間から搬出される。基体搬出入口15は、基体Sの搬出入時以外には気密に閉鎖される。
【0025】
次に、高周波アンテナユニット20について説明する。図1(b)は、高周波アンテナユニット20を含む、空洞113及びその周辺の縦断面図である。高周波アンテナユニット20は、空洞113を真空容器11の外側から塞ぐように設けられた金属(例えばステンレス鋼)製の蓋23と高周波アンテナ21から成る。
【0026】
高周波アンテナ21は空洞113内に配置され、両端がフィードスルー24を介して蓋23に取り付けられている。このように高周波アンテナ21が蓋23に取り付けられているため、蓋23の着脱により、高周波アンテナ21はプラズマ処理装置から容易に着脱することができる。また、高周波アンテナ21は導電製のパイプにより形成されており、パイプ内に冷却水などの冷媒を流すことができる。高周波アンテナ21の一方の端は高周波電源に接続され、他方の端は接地されている。
【0027】
次に、高周波アンテナ21の形状を説明する。高周波アンテナ21は、図2に示すように、U字状のパイプを2本、互いの両端を向かい合わせて仕切材16に平行に配置した第1U字部212A及び第2U字部212Bを有し、第1U字部212Aの一方の端212A1と第2U字部212Bの一方の端212B1を直線状の接続部212Cで接続した構成を有する。そして、第1U字部212Aの他方の端212A2と第2U字部212Bの他方の端212B2は上方に曲げられ、蓋23に取り付けられている。
【0028】
蓋23には、空洞113内を排気して真空にするための空洞排気口25が設けられている。また、高周波アンテナ21とフィードスルー24の間、フィードスルー24と蓋23の間、蓋23と上壁111の間、及び仕切材16と上壁111の間は、真空シールにより密閉されている。これら空洞排気口25及び真空シールにより、空洞113内は高真空状態に保たれる。
【0029】
次に、図3を用いて、高周波アンテナ21と高周波電源を接続する構成の一例を説明する。図3は本実施形態のプラズマ処理装置10の上面図である。本実施形態では、8個の空洞113内に1個ずつ収容された、合計8個の高周波アンテナ21が用いられる。これら8個の高周波アンテナ21は4個ずつの2組に分けられ、組毎に1個の高周波電源が接続されている。各高周波アンテナ21の給電側端部211には、給電点31から4方向に延びる4本の給電棒32が接続され、この給電点31に高周波電源が接続されている。
【0030】
本実施例のプラズマ処理装置10の動作を、基体S上に成膜物質を堆積させる場合を例に説明する。まず、基体Sを基体搬出入口15から真空容器の内部空間112に搬入し、基体保持部12の上に載置する。次に、基体搬出入口15を閉鎖し、真空ポンプを用いて、真空容器の内部空間112の空気や水蒸気等をガス排出口13から排出すると共に、空洞113内の空気や水蒸気等を空洞排気口25から排出することにより、真空容器の内部空間112及び空洞113を真空にする。続いて、ガス導入口14からプラズマ生成用ガス及び成膜原料ガスを導入する。そして、高周波アンテナ21のパイプに冷媒を流しつつ、高周波アンテナ21に高周波電力を投入する。この高周波電力の投入により高周波アンテナ21の周囲に誘導電磁界が生成される。この誘導電磁界は誘電体製の仕切材16を通過して真空容器の内部空間112に導入され、プラズマ生成用ガスを電離する。これによりプラズマが生成される。プラズマ生成用ガスと共に真空容器の内部空間112に導入された成膜原料ガスはプラズマにより分解され、基体S上に堆積する。
【0031】
本実施形態のプラズマ処理装置10では、真空容器の上壁111の外面111Aと内面111Bの間に設けられた空洞113に高周波アンテナ21を配置したため、外部アンテナ方式の場合よりも強い誘導電磁界を真空容器11の内部空間112に生成することができる。また、高周波アンテナ21が配置された空洞113とプラズマが生成される真空容器の内部空間112を仕切材16により分離したため、プラズマが高周波アンテナ21をエッチングして高周波アンテナ21の寿命が短くなることや薄膜あるいは被処理基体に高周波アンテナ21の材料が不純物として混入すること及びパーティクルが発生することを防ぐことができる。更に、高周波アンテナ21が配置される空洞113を高真空状態に保つようにしたため、空洞113において不要な放電が生じることを防ぐことができる。
【0032】
また、本実施例では、高周波アンテナ21の第1U字部212Aにおいて一方の端212A1からU字の底部に向かって流れる電流により形成される磁界と、U字の底部から他方の端212A2に向かって流れる電流により形成される磁界が同位相で振動する上下方向成分を有する。第2U字部212Bにおいても同様の上下方向成分を有する磁界が形成される。これにより、1本の直線状の高周波アンテナを用いた場合よりも、アンテナの下方における磁界の上下方向成分を大きくすることができる。そのため、1本の直線状の高周波アンテナを用いた場合と比較して、高周波電力の強度やプラズマ生成ガスの圧力が同じ場合にはプラズマ密度をより高めることができ、あるいは、同じ密度でプラズマを得る場合には高周波電力の強度やプラズマ生成ガスの圧力をより低くすることができる。
【0033】
次に、第1実施例の変形例1につき、図4を用いて説明する。本変形例では、上壁111の段111Cがなく、仕切材16Aが真空容器の内部空間112側から空洞113を覆うように設けられている。これにより、空洞113を真空容器の内部空間112側に拡大し、高周波アンテナ21の位置を真空容器の内部空間112に近づけることができる。その他の構成は上記実施形態と同様である。
【0034】
次に、第1実施例の変形例2につき、図5を用いて説明する。本変形例では、上壁111の下面から、上壁111を貫通させることなく孔を設けることにより、空洞113Aが形成されている。従って、空洞113Aの上には上壁111の一部がそのまま残っている。その上壁111が残された部分に、フィードスルーを介して高周波アンテナ21が取り付けられていると共に、空洞真空排気口25Cが取り付けられている。仕切材16Aの構成は第1の変形例と同様である。
【実施例2】
【0035】
次に、図6を用いて、第2の実施例のプラズマ処理装置について説明する。本実施例では、第1実施例における空洞排気口25の代わりに、空洞不活性ガス導入口25A及び空洞ガス排気口25Bが高周波アンテナユニット20Aの蓋23に設けられている。空洞不活性ガス導入口25Aからアルゴンや窒素などの不活性ガスを導入し、空洞113内の空気や水蒸気を不活性ガスで置換して空洞ガス排気口25Bから排出することにより、空洞113内を不活性ガスで満たす。これにより、空洞113内を真空排気した場合と同様に、不要な放電が生じることを防ぐことができる。その他の構成は第1実施例と同様である。
【実施例3】
【0036】
次に、図7を用いて、第3の実施例のプラズマ処理装置について説明する。本実施例では、空洞113内が誘電体部材27で満たされている。誘電体部材27の材料には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)その他の樹脂、アルミナ、シリカその他のセラミックス、などを用いることができる。誘電体部材27の底部は仕切材の役割を有する。高周波アンテナ21は上記実施形態と同様にU字形であり、フィードスルーを用いることなく蓋23に直接固定されている。このように高周波アンテナ21が蓋23に固定されることにより、真空容器11に対して蓋23を着脱する際に、高周波アンテナ21及び高周波アンテナ21の周囲にある誘電体部材27も真空容器11に対して着脱される。従って、本実施形態では高周波アンテナ21、蓋23及び誘電体部材27が1組の高周波アンテナユニット20Bを構成しているといえる。
第3の実施例では、空洞113内が誘電体部材27で満たされていることにより、高周波アンテナ21の近傍で不要な放電が生じることを防ぐことができる。
【0037】
誘電体部材27の代わりに、誘電体の粉末を空洞113内に充填することもできる。この場合、粉末が空洞113から漏出しないように空洞113を密閉する。
【実施例4】
【0038】
ここまでは空洞113内に高周波アンテナ21を配置した例を示したが、図8に示すように、空洞を用いることなく、外面111Aと内面111Bの間の位置(アンテナ配置部113B)に高周波アンテナ21を埋め込むこともできる。この場合、高周波アンテナ21と上壁111を電気的に絶縁すると共に、高周波アンテナ21の近傍で不要な放電が生じることを防ぐために、両者の間に誘電体を介挿するか、上壁111自体を誘電体製とする。後者の場合、上壁111の全体を誘電体製としてもよいが、上壁111のうち高周波アンテナ21の近傍のみを誘電体製とする方がコストを抑えることができる。誘電体の材料には上述の誘電体部材27と同様のものを用いることができる。また、上壁111のうち高周波アンテナ21と真空容器の内部空間112の間にある部分を誘電体製とすることにより仕切材16Bを構成することができる。
【実施例5】
【0039】
図9を用いて、ここまでに示した実施例のものとは形状が異なる高周波アンテナを用いる例を示す。本実施例における高周波アンテナ41は、図9(b)に上面図で示したように、1本の導電性パイプが仕切材16に平行な面において渦巻状に成形されたものである。それ以外の構成は第1実施例と同様である。高周波アンテナ41をこのような形状とすることにより、直線状やU字形の高周波アンテナを用いた場合よりも広い範囲に亘って磁界を形成することができる。
【実施例6】
【0040】
ここまでは1つのアンテナ配置部(空洞)に高周波アンテナを1個のみ設けた例を示したが、1つのアンテナ配置部に高周波アンテナを2個以上設けることもできる。図10に上面図で示した例では、第1実施例における高周波アンテナ21が2個(第1高周波アンテナ21A、第2高周波アンテナ21B)、空洞113内に設けられている。第1高周波アンテナ21Aと第2高周波アンテナ21Bは、仕切材16からの第1U字部212A及び第2U字部212Bの距離が同じになり、接続部212Cが互いに平行になるように配置されている。
【実施例7】
【0041】
図11を用いて、本発明に係るプラズマ処理装置の第7の実施例を説明する。本実施例のプラズマ処理装置は、第1実施例のプラズマ処理装置10において、仕切材16の上(高周波アンテナ21との間)にファラデーシールド51を載置したものである。ファラデーシールド51は金属製の上壁111に電気的に接続されており、該上壁111を介して接地されている。ファラデーシールド51により、高周波アンテナ21の導体とプラズマの間のセルフバイアスにより生じる直流電界を遮断し、内部空間112に生成されたプラズマが仕切材16に入射することを抑制することができるため、仕切材16の寿命を延ばすことができる。ファラデーシールド51と高周波アンテナ21の間には、両者の間で放電が生じることを防止するために、誘電体製の絶縁部材52が介挿されている。
【0042】
また、ファラデーシールド51は下面のほぼ全体が仕切材16に熱的に接触していると共に、端部が上壁111に熱的に接触している。そのため、プラズマのエネルギーを受けて加熱された仕切材16の熱は、ファラデーシールド51を通じて上壁111に放出される。これにより、仕切材16の温度上昇が抑制されるため、熱による仕切材16の劣化を抑制することができる。なお、更にこの効果を高めるために、冷媒によりファラデーシールド51を冷却したり、ファラデーシールド51とは別に冷却パイプ等の温度上昇抑制手段を設けてもよい。
【0043】
[その他の実施例]
上記各実施例では高周波アンテナ21の個数を8個としたが、その個数は真空容器の容量などに応じて定めることができる。真空容器の容量が比較的小さい場合には高周波アンテナ21を1個のみ設けてもよい。また、上記実施例では高周波アンテナユニット20を真空容器の上壁に設けたが、側壁など、上壁以外の壁に設けてもよい。
【符号の説明】
【0044】
10…プラズマ処理装置
11…真空容器
111…真空容器の上壁
111A…真空容器の上壁の外面
111B…真空容器の上壁の内面
111C…真空容器の上壁に設けられた段
112…真空容器の内部空間
113、113A…空洞(アンテナ配置部)
113B…アンテナ配置部
12…基体保持部
13…ガス排出口
14…ガス導入口
15…基体搬出入口
16、16A、16B…仕切材(仕切板)
20、20A、20B…高周波アンテナユニット
21、41…高周波アンテナ
211…給電側端部
21A…第1高周波アンテナ
21B…第2高周波アンテナ
212A…第1U字部
212B…第2U字部
212C…接続部
23…蓋
24…フィードスルー
25、25C…空洞真空排気口
25A…空洞不活性ガス導入口
25B…空洞ガス排気口
27…誘電体部材
31…給電点
32…給電棒
51…ファラデーシールド
52…絶縁部材
S…基体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 真空容器と、
b) 前記真空容器の壁の内面と外面の間に設けられたアンテナ配置部と、
c) 前記アンテナ配置部に配置された高周波アンテナと、
d) 前記アンテナ配置部と前記真空容器の内部を仕切る誘電体製の仕切材と、
を備えることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記アンテナ配置部が前記内面と前記外面の間に設けられた空洞であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記空洞が密閉されていることを特徴とする請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記空洞内が真空であることを特徴とする請求項3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記空洞内が不活性ガスで満たされていることを特徴とする請求項3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記空洞内が固体の誘電体で満たされていることを特徴とする請求項2又は3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記空洞の前記外面側に蓋が設けられていることを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記高周波アンテナが前記蓋に取り付けられていることを特徴とする請求項7に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記壁の少なくとも一部が固体の誘電体から成り、前記高周波アンテナが該誘電体内に埋め込まれていることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記高周波アンテナが1つのアンテナ配置部内に複数設けられていることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
前記高周波アンテナと前記仕切材の間に接地電極が設けられていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項12】
前記高周波アンテナと前記接地電極の間に誘電体製の絶縁部材が介挿されていることを特徴とする請求項11に記載のプラズマ処理装置。
【請求項13】
前記接地電極がファラデーシールドであることを特徴とする請求項11又は12に記載のプラズマ処理装置。
【請求項14】
前記接地電極を前記仕切材と接触させることにより、該仕切材の温度上昇を抑制することを特徴とする請求項11〜13に記載のプラズマ処理装置。
【請求項15】
前記仕切材に温度上昇抑制機構が設けられていることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項16】
前記仕切材の材料が酸化物、窒化物、炭化物、又はフッ化物であることを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項17】
前記仕切材の材料が石英、アルミナ、ジルコニア、イットリア、窒化珪素又は炭化珪素であることを特徴とする請求項16に記載のプラズマ処理装置。
【請求項18】
前記アンテナ配置部を複数備えることを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載のプラズマ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−212105(P2010−212105A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57328(P2009−57328)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(505402581)株式会社イー・エム・ディー (16)
【Fターム(参考)】