説明

プラズマ処理装置

【課題】均一性の高いプラズマを生成することが可能なプラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】プラズマ処理を行う処理容器Cと、処理容器Cに設けられた下部電極12に高周波電力を印加するRFジェネレータ14と、RFジェネレータ14と下部電極12との間に設けられ、同軸ケーブル16を用いてRFジェネレータ14に接続された整合器15と、を備え、同軸ケーブル16のグラウンド側の線16aを下部電極12に対向する上部電極11に接続するバイパス経路30を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理体にプラズマ処理を行うプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマ処理装置は、プラズマを用いて被処理体に微細加工を施す装置である。プラズマ処理装置では、エッチング処理や成膜処理等、様々なプラズマ処理が実行される。
【0003】
プラズマ処理装置には、容量結合型のプラズマ処理装置、誘導結合型のプラズマ処理装置等様々な種類がある。容量結合型のプラズマ処理装置である平行平板型のプラズマ処理装置の一例を図5に示す。平行平板型のプラズマ処理装置90は、処理容器Cを有している。処理容器Cは接地されている。処理容器Cの内部には、上部電極91と下部電極92とが平行に配置されている。上部電極91は、ベローズ93にて昇降可能に処理容器Cの天井面に支持されている。
【0004】
下部電極92は、整合器95を介してRFジェネレータ94に接続されている。RFジェネレータ94は、下部電極92に高周波電力を印加する。下部電極92は、ウエハWを載置する載置台としても機能する。処理容器C内には図示しないガス供給源から所望のガスが供給される。ガスは、高周波電力により処理容器C内部でプラズマ化し、生成されたプラズマによってウエハWに所望の処理が施される。整合器95は、下部電極92とRFジェネレータ94との間に設けられ、インピーダンス整合をとる。RFジェネレータ94と整合器95とは、同軸ケーブル96で接続されている。整合器95と下部電極92とは、給電棒97で接続されている。なお、処理容器C内は、排気装置98にて排気され、所望の真空度にまで減圧されている。
【0005】
かかる構成のプラズマ処理装置では、上部電極91と下部電極92との間のプラズマ生成空間Uにプラズマが生成される。プラズマが生成されているとき、RFジェネレータ94から出力される高周波電流は、図5の矢印で示したように、RFジェネレータ94→同軸ケーブル96→整合器95→下部電極92→プラズマ→上部電極91→導電路R(ベローズ93を含む)→処理容器Cの上部壁面、側部壁面、下部壁面→整合器95→同軸ケーブル96→RFジェネレータ94(グラウンド側)の順に流れる。
【0006】
特に、図5のように、電極間のギャップを可変に制御するために、カソード電極である上部電極91がベローズ93にて昇降可能に支持される場合、高周波電流のリターン経路を構成する導電路Rの一部にベローズ93が含まれる。このため、高周波電流のリターン経路においてベローズ93が抵抗成分として大きく作用する。これに加え、プラズマ処理装置90の大型化に伴いベローズ93が大きくなると、これに応じて抵抗成分も増大することになる。これにより、高周波電流のリターン経路の電気抵抗が増大し、上述したプラズマ→上部電極91→導電路R→処理容器Cの壁面→RFジェネレータ94の経路に高周波電流が流れにくくなり、プラズマ→処理容器Cの側部壁面、下部壁面→RFジェネレータ94の経路にも高周波電流が流れ易くなる。以上の理由から、プラズマがプラズマ生成空間UのウエハW上方に集約されにくくなり、プラズマ生成空間Uにてプラズマ密度が不均一に生成される結果、ウエハWに対して面内均一性の高いプラズマ処理を実行することが困難になる。
【0007】
これに対して、例えば、特許文献1には、上部電極を昇降させるためのベローズが具備されたプラズマ処理装置であって、高周波電流のリターン経路の電気抵抗を小さくするために、上部電極の近傍に導電性の固定側接触部を設けたプラズマ処理装置が提案されている。かかる構成によれば、上部電極はベローズを介して処理容器の天井面に配設されるが、ベローズは蛇腹構造であるため、平板構造である固定側接触部よりインダクタンス成分が大きい。このため、ベローズと固定側接触部とを比べると、高周波電流はインダクタンス成分の小さい部材である固定側接触部の方へ流れやすい。このようにして、特許文献1のプラズマ処理装置では、上部電極の近傍に設けられた固定側接触部によって、高周波電流を上部電極から固定側接触部を介して処理容器へ流し易くすることにより、プラズマを集約し、均一なプラズマを生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−112589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の固定側接触部は、大掛かりな構造を有し、処理容器の蓋体上部に設けられている。したがって、特許文献1のプラズマ処理装置では、固定側接触部自身の製造コストが増大するとともに、蓋体を取り外して処理容器内部をメンテナンス時の作業が困難になり、かつ、固定側接触部自体のメンテナンスも容易ではないという課題を有していた。
【0010】
上記課題に鑑み、本発明は、高周波電流のバイパス経路を設けることにより、均一性の高いプラズマを生成することが可能なプラズマ処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のある態様によれば、プラズマ処理を行う処理容器と、前記処理容器に設けられた電極に高周波電力を印加する高周波電源と、前記高周波電源と前記電極との間に設けられ、同軸ケーブルを用いて前記高周波電源に接続された整合器と、を備え、前記同軸ケーブルのグラウンド側の線を前記電極に対向する対向電極に接続するバイパス経路を設けたことを特徴とするプラズマ処理装置が提供される。
【0012】
前記バイパス経路は、前記整合器と前記高周波電源とを接続する前記同軸ケーブルの、前記整合器より前記高周波電源に近い位置で前記同軸ケーブルのグラウンド側の線と前記対向電極とに接続されてもよい。
【0013】
前記高周波電源及び前記整合器を複数備え、前記バイパス経路は、前記複数の高周波電源と前記複数の整合器とを接続する複数の前記同軸ケーブルの少なくともいずれかのグラウンド側の線と前記対向電極とに接続されてもよい。
【0014】
前記バイパス経路は、前記同軸ケーブルのグラウンド側の線と前記対向電極の中央部分とに接続されてもよい。
【0015】
前記同軸ケーブルのグラウンド側の線を、前記高周波電源より前記整合器に近い位置で物理的に切断してもよい。
【0016】
前記同軸ケーブルのグラウンド側の線にスイッチを設け、該スイッチを用いて前記グラウンド側の線に流れるリターン電流の流れを制御する制御装置を更に備えてもよい。
【0017】
前記対向電極は、ベローズにて昇降可能に前記処理容器の天井面に支持された上部電極であってもよい。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように本発明によれば、高周波電流のバイパス経路を設けることにより、均一性の高いプラズマを生成することが可能なプラズマ処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係るプラズマ処理装置を示す縦断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係るプラズマ処理装置を示す縦断面図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係るプラズマ処理装置を示す縦断面図である。
【図4】本発明の第4実施形態に係るプラズマ処理装置を示す縦断面図である。
【図5】高周波電流の経路を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0021】
(高周波電流の経路)
はじめに、本発明の第1実施形態に係るプラズマ処理装置について説明する前に、一般的な構成のプラズマ処理装置において高周波電流が流れる経路について説明する。エッチング処理装置等の平行平板型プラズマ処理装置では、通常、処理容器内にて上部電極と下部電極とが対向して配置され、それらの電極のアノード側に高周波電力を印加して、ガスをプラズマ化する。アノード側に印加された高周波の電流は、処理容器の壁面を利用して、RFジェネレータ(グラウンド側)に戻る。
【0022】
例えば、図5を用いてプラズマ発生時における高周波電流の経路を具体的に説明する。図5は、一般的な平行平板型のプラズマ処理装置を示す縦断面図であり、図中の矢印は高周波電流の経路を示す。
【0023】
図5のプラズマ処理装置90では、図示しないガス供給源から処理容器C内に所望のガスが供給され、RFジェネレータ94から下部電極92に高周波電力が印加される。これによりガスがプラズマ化され、上部電極91と下部電極92との間のプラズマ生成空間Uにプラズマが生成される。プラズマが生成されているとき、RFジェネレータ94からの高周波電流は、図5の矢印で示したように、RFジェネレータ94→同軸ケーブル96→整合器95→下部電極92→プラズマ→上部電極91→導電路R(ベローズ93を含む)→処理容器Cの上部壁面、側部壁面、下部壁面→整合器95→同軸ケーブル96→RFジェネレータ94(グラウンド側)の順に流れる。
【0024】
特に、図5のように、電極間のギャップを可変に制御するために、上部電極91がベローズ93にて昇降可能に支持される場合、高周波電流のリターン経路においてベローズ93が抵抗成分として大きく作用する。更に、プラズマ処理装置90の大型化に伴いベローズ93が大きくなると、これに応じて抵抗成分も増大する。このため、高周波電流のリターン経路にて導電路Rのインピーダンスが増大し、図5に示した上部電極91→導電路R→処理容器Cの壁面→RFジェネレータ94の経路に高周波電流が流れにくくなり、その一部が、プラズマ→処理容器Cの壁面→RFジェネレータ94に流れる。これにより、プラズマ生成空間UのウエハW上方にプラズマが集約されにくくなり、プラズマ生成空間Uにてプラズマが不均一に生成される。この結果、ウエハWに対して面内均一性の高いプラズマ処理を実行することが困難になる。
【0025】
<第1実施形態>
かかる課題に対して、第1実施形態に係るプラズマ処理装置では、高周波電流のバイパス経路を設け、これにより、均一性の高いプラズマを生成する。以下、図1を参照しながら、第1実施形態に係るプラズマ処理装置について説明する。図1は、第1実施形態に係るプラズマ処理装置を示す縦断面図である。
【0026】
平行平板プラズマ処理装置10は、容量結合型のプラズマ処理装置であり、円筒形状に成形された処理容器Cを有している。処理容器Cは、例えば表面が陽極酸化処理されたアルミニウム等からなり、接地されている。処理容器C内の底部にはセラミックスなどの図示しない絶縁板を介して、ウエハWを載置するための略円柱状の支持台20が設けられている。支持台20の上には、下部電極12を兼ねた載置台が設けられている。
【0027】
下部電極12の上方には、下部電極12と平行な位置に、対向電極としての上部電極11が設けられている。上部電極11は、電極板11aと導電性の電極支持体11bとを有している。上部電極11は、電極間のギャップを可変に制御するために、ベローズ93にて昇降可能に支持されている。上部電極11は、図示しない駆動機構により上下動し、これにより、上部電極11と下部電極12とのギャップをプロセス条件に応じて調整するようになっている。
【0028】
RFジェネレータ14(高周波電力を供給する高周波電源に相当する)は、整合器15を介して下部電極12に接続されている。RFジェネレータ14と整合器15とは、同軸ケーブル16で接続され、整合器15と下部電極12とは、給電棒17で接続されている。整合器15は、インピーダンス整合をとる。
【0029】
上部電極11の電極板11aには図示しないガス導入口が設けられ、ガス導入口から所望のプラズマ処理のためのガス等が供給される。また、RFジェネレータ14から下部電極12に例えば、13.56MHz又は12.88MHzの高周波電力が印加され、これによりガスがプラズマ化される。ウエハWには、生成されたプラズマを用いてエッチング等の微細加工が施される。
【0030】
処理容器Cの底部には、排気管19を介して排気装置18が接続されている。排気装置18はターボ分子ポンプなどの真空ポンプを備えており、処理容器C内を所定の減圧雰囲気まで真空引きする。また、処理容器Cの側壁には図示しないゲートバルブが設けられ、ゲートバルブを開閉により、隣接するロードロック室(図示せず)との間でウエハWを搬入及び搬出する。
【0031】
かかる構成のプラズマ処理装置10では、同軸ケーブル16のグラウンド側の線16aと上部電極11とを接続するバイパス経路30が設けられる。本実施形態では、下部電極12が高周波電力を印加する側の電極となり、上部電極11が高周波電力を印加する側の電極に対向する対向電極となっているが、これに限らず、高周波電力を印加する側の電極は上部電極11でもよい。高周波電力を印加する側の電極が上部電極11の場合には、対向電極側が下部電極12になる。
【0032】
このようにしてバイパス経路30を設けることにより、同軸ケーブル16のグラウンド側の線16aをリターン経路のインピーダンスを下げたい部位に接地する。これにより、導電路Rのインピーダンスが小さくなり、高周波電流は、上部電極11→導電路R→同軸ケーブル16のグラウンド側の線16a→RFジェネレータ14のリターン経路を主に流れる。なお、この経路に高周波電流が流れることをより容易にするために、バイパス経路30は、整合器15よりRFジェネレータ14に近い位置で同軸ケーブル16のグラウンド側の線16aと上部電極11とを接続することが好ましい。
【0033】
本実施形態に係るプラズマ処理装置10では、特に、電極間のギャップを可変に制御するために、上部電極11がベローズ13にて昇降可能に支持されている。この場合、高周波電流のリターン経路においてベローズ13が抵抗成分として大きく作用する。更に、プラズマ処理装置10の大型化に伴いベローズ13が大きくなると、これに応じて抵抗成分も増大することになる。このため、バイアス経路30が存在しないと、高周波電流のリターン経路にて導電路Rのインピーダンスが増大し、図5に示した上部電極11→導電路R→処理容器Cの壁面→RFジェネレータ94のリターン経路に高周波電流が流れにくくなってしまう。
【0034】
しかしながら、本実施形態に係るプラズマ処理装置10では、上述の通り同軸ケーブル16のグラウンド側の線16aと上部電極11とを接続するバイパス経路30が設けられている。このため、リターン経路にて高周波電流は、大きな抵抗成分を有するベローズ13よりバイパス経路30に流れ易くなる。このため、高周波電流は、プラズマ→上部電極11→導電路R→同軸ケーブル16のグラウンド側の線16a→RFジェネレータ14に流れ易くなり、この経路が電流のリターン経路として形成されやすくなる。
【0035】
これにより、高周波電流は、RFジェネレータ14→同軸ケーブル16→整合器15→下部電極12→プラズマ→上部電極11→導電路R→処理容器Cの上部壁面、側部壁面、下部壁面→整合器15→同軸ケーブル16(グラウンド側の線16a)→RFジェネレータ14の順に流れる経路(図5に示した経路A)より、RFジェネレータ14→同軸ケーブル16→整合器15→下部電極12→プラズマ→上部電極11→導電路R→バイパス経路30→同軸ケーブル16のグラウンド側の線16a→RFジェネレータ14の順に流れる経路(図1に示した経路B)を主に流れる。
【0036】
この結果、高周波電流が処理容器Cの壁部を流れにくくなるため、プラズマ生成空間UのウエハW上方にプラズマが集約されやすくなり、プラズマ生成空間Uにてプラズマが均一に生成される。これにより、ウエハWに対して面内均一性の高いプラズマ処理を実行することができる。
【0037】
特に、本実施形態では、同軸ケーブル16のグラウンド側の線16aをリターン経路のインピーダンスを下げたい部位に接地する。具体的には、同軸ケーブル16のグラウンド側の線16aと上部電極11の中央部分とを接続するようにバイパス経路30を設ける。かかる構成によれば、上部電極11の中央部分が接地された部位となり、バイパス経路30を経由する経路Bは、RFジェネレータ14から見てグラウンドに接続されるリターン経路の最短距離となる。このため、バイパス経路30を経由する経路Bは、インピーダンスが低下して高周波電流が流れ易い経路となる。特に、ベローズ13は抵抗成分が大きいため、高周波電流は、ベローズ13よりバイパス経路30に流れ易い。このようにして、第1実施形態に係るプラズマ処理装置10では、バイパス経路30を経由する経路Bに高周波のリターン電流を積極的に流す構造を設けることにより、上部電極11の中央下方にプラズマを集約し易くすることによって、プラズマ生成空間Uに均一なプラズマを生成することができる。
【0038】
また、本実施形態では、プラズマ処理装置10の同軸ケーブルに、高周波電流のバイパス経路を設けるという比較的安易な方法を用いるため、製造コストの増大を抑制するとともに、メンテナンス時の作業を容易にすることができる。
【0039】
<第2実施形態>
次に、図2を参照しながら第2実施形態に係るプラズマ処理装置10について説明する。第2実施形態に係るプラズマ処理装置10では、第1実施形態と同様のバイパス経路30を設け、更に、同軸ケーブル16のグラウンド側の線16aを整合器15の近傍の位置Pで物理的に切断する。その他の点については、第1実施形態に係るプラズマ処理装置と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0040】
一般に、高周波電流は、一旦、同軸ケーブル16に流れ出すとその経路に流れ易くなるという性質をもっている。したがって、たとえ上部電極11と同軸ケーブル16のグラウンド側の線16aとの間にバイパス経路30を設け、リターン経路として図5に示した経路Aより経路Bに高周波電流が流れ易い仕組みを作っても、場合によっては、経路Aに高周波電流が流れてしまうこともある。
【0041】
このような場合にも、第2実施形態に係るプラズマ処理装置10では、同軸ケーブル16のリターン側の配線(グラウンド側の線16a)を物理的に切断してしまう。これにより、経路Aに高周波電流は物理的に流れなくなる。
【0042】
かかる構成によれば、第1実施形態の場合と同様に、バイパス経路30を設けたことにより、経路Bがインピーダンスが低下して高周波電流が流れ易い電流のリターン経路となるだけでなく、グラウンド側の線16aを切断するため、図5に示した経路Aはリターン経路とはなり得ない。これにより、経路Aに高周波電流が流れてしまうことを物理的に不可能にし、バイパス経路30に高周波のリターン電流を確実に流すことにより、よりプラズマを集約することによって、プラズマ生成空間Uにより均一なプラズマを生成することができる。
【0043】
なお、グラウンド側の線16aの切断位置Pは、RFジェネレータ14より整合器15に近い方が、グラウンド側の線16aに高周波電流が流れないためより好ましいが、バイパス経路30とグラウンド側の線16aとの間であればいずれの位置で切断してもよい。
【0044】
<第3実施形態>
次に、図3を参照しながら第3実施形態に係るプラズマ処理装置10について説明する。第3実施形態に係るプラズマ処理装置10は、上下部に高周波を印加するプラズマ処理装置10である。具体的には、上部電極11には整合器45を介してRFジェネレータ44が接続され、RFジェネレータ44から上部電極11に第1の高周波電力が印加されるようになっている。また、下部電極12には、整合器48を介してRFジェネレータ47が接続され、RFジェネレータ47から下部電極12に第2の高周波電力が印加されるようになっている。第1の高周波電力及び第2の高周波電力の一方は、プラズマ励起用の高周波電力、他方は、バイアス用の高周波電力とすることができる。
【0045】
RFジェネレータ44に直列に接続された、整合器45内のインダクタL及び可変コンデンサCは、同軸ケーブル46のグラウンド側の線で形成されたバイパス経路31につながっている。バイパス経路31は、下部電極12に高周波電力を印加するRFジェネレータ47と整合器45とを接続する経路となっている。
【0046】
かかる構成によれば、バイパス経路31がグラウンド側の線で形成されているため、高周波電流は、RFジェネレータ47→整合器48→下部電極12→プラズマ→上部電極11→導電路R→処理容器Cの上部壁面、側部壁面、下部壁面→整合器48→RFジェネレータ47の順に流れる経路より、RFジェネレータ47→整合器48→下部電極12→プラズマ→上部電極11→導電路R→バイパス経路31→RFジェネレータ47の順に流れる経路に流れ易くなる。
【0047】
同様にして、RFジェネレータ47に直列に接続された、整合器48内のインダクタL及び可変コンデンサCは、同軸ケーブル49のグラウンド側の線で形成されたバイパス経路32につながっている。バイパス経路32は、上部電極11に高周波電力を印加するRFジェネレータ44と整合器48とを接続する経路となっている。
【0048】
かかる構成によれば、バイパス経路32がグラウンド側の線で形成されているため、高周波電流は、RFジェネレータ44→整合器45→導電路R→上部電極11→プラズマ→下部電極12→処理容器Cの下部壁面、側部壁面、上部壁面→整合器45→RFジェネレータ44の順に流れる経路より、RFジェネレータ44→整合器45→上部電極11→導電路R→プラズマ→下部電極12→バイパス経路32→RFジェネレータ44の順に流れる経路に流れ易くなる。
【0049】
これらの結果、処理容器Cの壁面を通るリターン経路に高周波電流が流れにくくなる。このため、プラズマ生成空間UのウエハW上方にプラズマが集約されやすくなり、プラズマ生成空間Uにてプラズマが均一に生成され、ウエハWに対して面内均一性の高いプラズマ処理を実行することができる。
【0050】
<第4実施形態>
最後、図4を参照しながら第4実施形態に係るプラズマ処理装置10について説明する。第4実施形態に係るプラズマ処理装置10は、下部2周波のプラズマ処理装置10である。具体的には、下部電極12に整合器56、59を介して2つのRFジェネレータ55,58がそれぞれ接続され、各RFジェネレータ55,58から下部電極12に各高周波電力が印加されるようになっている。一方からの高周波電力は、プラズマ励起用、他方からの高周波電力は、バイアス用とすることができる。
【0051】
本実施形態に係るプラズマ処理装置10では、同軸ケーブル57のグラウンド側の線57aと上部電極11とを接続するバイパス経路33が設けられている。このため、高周波電流が、プラズマ→上部電極11→導電路R→バイパス経路33→同軸ケーブル57のグラウンド側の線57a→RFジェネレータ55に流れ易くなり、この経路が高周波電流のリターン経路として形成されやすくなる。
【0052】
また、本実施形態に係るプラズマ処理装置10では、同軸ケーブル60のグラウンド側の線60aと上部電極11とを接続するバイパス経路34が設けられている。このため、高周波電流が、プラズマ→上部電極11→導電路R→→バイパス経路34→同軸ケーブル60のグラウンド側の線60a→RFジェネレータ58に流れ易くなり、この経路が高周波電流のリターン経路として形成されやすくなる。
【0053】
これらの結果、処理容器Cの壁面を通るリターン経路に高周波電流が流れにくくなる。このため、プラズマ生成空間UのウエハW上方にプラズマが集約されやすくなり、プラズマ生成空間Uにてプラズマが均一に生成され、ウエハWに対して面内均一性の高いプラズマ処理を実行することができる。
【0054】
なお、本実施形態では、RFジェネレータ及び整合器を2つ備えたが、RFジェネレータ及び整合器の数は2つに限られず、3つ以上であってもよい。また、本実施形態では、バイパス経路を2つ備えたが、バイパス経路の数は2つに限られず、1つでもよく、3つ以上であってもよい。
【0055】
さらに、本実施形態に係るプラズマ処理装置10には、同軸ケーブル57,60の整合器56,59側のグラウンドの線にスイッチ61,62が設けられている。各スイッチ61,62は、制御装置100によりオン/オフを制御される。これにより、同軸ケーブル57,60の配線を物理的に切断したり、接続したりすることができる。
【0056】
なお、制御装置100は、図示しないCPU、記憶領域(ROM,RAMなど)、入出力インターフェース、データバス、アドレスバスを有している。CPUは、記憶領域に記憶された所定のプログラムに従い、所望のタイミングに各スイッチ61,62のオン/オフを制御する。
【0057】
これにより、同軸ケーブル57,60のグラウンド側の線をリターン経路に高周波電流が流れてしまうことを物理的に不可能にし、プラズマ生成空間UのウエハW上方にプラズマが集約されやすくなり、プラズマ生成空間Uにより均一なプラズマを生成することができる。
【0058】
以上、各実施形態によれば、プラズマ処理装置10にバイパス経路を設けることにより、プラズマの集約する部位をコントロールすることができる。これにより、生成されるプラズマの均一性を改善できる。これにより、消耗品の消耗状態をコントロールすることも可能である。
【0059】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0060】
なお、本発明によれば、バイパス経路の接地位置と整合器との間の同軸ケーブルに流れる高周波電流では、行きの経路の電流量と帰りの経路の電流量が一致しない。例えば、図1のバイパス経路30の接地位置と整合器との間の同軸ケーブル16に流れる高周波電流では、行きの経路16bの電流量と帰りの経路16aの電流量が一致しない。
【0061】
往復16a、16bの電流量が同じであれば電波が外へ漏れにくいが、行きの経路16bと帰りの経路16aに流れる電流量が異なる場合は、電波が外へ漏れやすい。そこで、本発明のように、行きの経路16bと帰りの経路16aに流れる電流量が異なる場合、同軸ケーブル16のシールドを強化する必要がある。同軸ケーブル16のシールドを強化する方法としては、行きの経路である線16bと帰りの経路である線16aの外周を絶縁材でカバーし、その外側に導体を巻きつける。これにより、同軸ケーブル16のシールド効果をアップさせることができ、行きの経路16bと帰りの経路16aに流れる電流量が異なる場合であっても、電波が外へ漏れにくくすることができる。
【符号の説明】
【0062】
10 プラズマ処理装置
11 上部電極
12 下部電極
13 ベローズ
14,44,47,55,58 RFジェネレータ
15,45,48,56,59 整合器
16,46,49,57,60 同軸ケーブル
16a グラウンド側の線
30,31,32,33,34 バイパス経路
100 制御装置
C 処理容器
U プラズマ生成空間
P 切断位置
R 導電路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理を行う処理容器と、
前記処理容器に設けられた電極に高周波電力を印加する高周波電源と、
前記高周波電源と前記電極との間に設けられ、同軸ケーブルを用いて前記高周波電源に接続された整合器と、を備え、
前記同軸ケーブルのグラウンド側の線を前記電極に対向する対向電極に接続するバイパス経路を設けたことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記バイパス経路は、前記整合器と前記高周波電源とを接続する前記同軸ケーブルの、前記整合器より前記高周波電源に近い位置で前記同軸ケーブルのグラウンド側の線と前記対向電極とに接続されることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記高周波電源及び前記整合器を複数備え、
前記バイパス経路は、前記複数の高周波電源と前記複数の整合器とを接続する複数の前記同軸ケーブルの少なくともいずれかのグラウンド側の線と前記対向電極とに接続されることを特徴とする請求項1又は2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記バイパス経路は、前記同軸ケーブルのグラウンド側の線と前記対向電極の中央部分とに接続されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記同軸ケーブルのグラウンド側の線を、前記高周波電源より前記整合器に近い位置で物理的に切断することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記同軸ケーブルのグラウンド側の線にスイッチを設け、該スイッチを用いて前記グラウンド側の線に流れるリターン電流の流れを制御する制御装置を更に備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記対向電極は、ベローズにて昇降可能に前記処理容器の天井面に支持された上部電極であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−30392(P2013−30392A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166441(P2011−166441)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】