説明

ベルト及びローラ

【課題】電子写真方式の画像形成に使用したときには、トナー供給やトナー搬送を安定して行えるローラを提供するとともに、転写時に剥離放電を起こさずに安定した転写性能を発現するベルトを提供する。
【解決手段】以下に記載の構成によるベルト、及び、ローラ。疎水性の有機基を有する導電剤を含有する樹脂層を有すること。樹脂層の抵抗率が、104Ωcm乃至1010Ωcmであること。基材層又は弾性層、中間層、及び、表面層を有し、導電剤が基材層又は弾性層と中間層の少なくとも一方に含有されていること。導電剤が、カーボンブラックであること。疎水性の有機基は、イオウ原子を介して、前記導電剤と結合しているものであること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電剤を含有するベルト、及び、ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタに代表される電子写真方式の画像形成装置は、像担持体上の静電潜像に現像ローラより供給されるトナーにより現像を行い、形成されたトナー画像を中間転写ベルトなどの部材を介して紙などの記録媒体上に転写する工程を経て画像形成を行う。
【0003】
これらの装置に用いられる現像ローラには、像担持体への安定したトナー供給が求められている。また、中間転写ベルトには、像担持体からベルトへの、及び、ベルトから紙への良好なトナー転写性と、転写後の残存トナーをきれいに除去するクリーニング性能が求められている。そして、カーボンブラックなどの導電性材料をこれらの部材内に含有させて抵抗を制御することにより、これらの性能を満足させようとする技術がある。具体的には、中間層などの各構成層中にカーボンブラックなどの導電剤を配合させた電子写真方式の画像形成装置用のローラに関する技術がある(例えば、特許文献1参照)。また、表面層に電子伝導性を付与する導電剤を含有させることによりベルト表面の抵抗を制御した中間転写ベルトの技術もある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
このように、カーボンブラックなどの導電剤を含有させて抵抗性を制御したローラやベルトの技術があるが、導電剤を含有させても十分な抵抗制御が行えなかった。その理由は、これらの部材を製造する工程で、導電剤を樹脂に含有させると導電剤が樹脂中でなかなか均一に分散しないという問題によるものであった。すなわち、導電剤を樹脂中に均一分散させるためには、この工程に要する時間を長くしなくてはならないが、部材の生産性向上の視点から導電剤を樹脂中で迅速に分散させる技術が求められていた。
【0005】
また、十分な抵抗制御性能の得られない部材を用いて画像形成を行うと、画像欠陥などの不良が発生するようになった。例えば、中間転写ベルトでは、トナー像を記録紙に転写し記録紙を中間転写ベルトから剥離する際に剥離放電による白抜けと呼ばれる画像欠陥が発生し易くなった。また、現像ローラでは像担持体への所定量のトナー供給やトナー搬送が難しくなり、濃度むらなどの画像不良やトナー飛散によるカブリが発生した。
【特許文献1】特開平11−267583号公報(段落0020等参照)
【特許文献2】特開2001−242725号公報(段落0017等参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ベルトやローラの生産工程において、これらの部材の抵抗を制御するために添加される導電剤を樹脂中で迅速かつ均一に分散させることが可能な技術を提供することを目的とする。すなわち、本発明は、製造工程における生産効率を向上させるとともに、安定した抵抗性御性能を発現させることが可能なローラやベルトを提供することを目的とする。
【0007】
具体的には、電子写真方式の画像形成に使用したときには、トナー供給やトナー搬送を安定して行えるローラを提供するとともに、転写時に剥離放電を起こさずに安定した転写性能を発現するベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下に記載の構成により達成される。
【0009】
(請求項1)
疎水性の有機基を有する導電剤を含有する樹脂層を有することを特徴とするベルト。
【0010】
(請求項2)
前記樹脂層の抵抗率が、104Ωcm乃至1010Ωcmであることを特徴とする請求項1に記載のベルト。
【0011】
(請求項3)
前記樹脂層は、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、シリコン樹脂、フッ素樹脂のうち、少なくとも1つを含有するものであることを特徴とする請求項1または2に記載のベルト。
【0012】
(請求項4)
前記ベルトは、電子写真方式の画像形成に用いられる転写ベルトであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のベルト。
【0013】
(請求項5)
前記転写ベルトは、基材層、中間層、及び、表面層を有し、
前記導電剤が基材層と中間層の少なくとも一方に含有されていることを特徴とする請求項4に記載のベルト。
【0014】
(請求項6)
前記表面層の表面抵抗率が、1.0×1011Ω/□乃至1.0×1013Ω/□であることを特徴とする請求項5に記載のベルト。
【0015】
(請求項7)
前記導電剤が、カーボンブラックであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のベルト。
【0016】
(請求項8)
前記疎水性の有機基は、イオウ原子を介して、前記導電剤と結合しているものであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のベルト。
【0017】
(請求項9)
疎水性の有機基を有する導電剤を含有する樹脂層を有することを特徴とするローラ。
【0018】
(請求項10)
前記樹脂層の抵抗率が、104Ωcm乃至1010Ωcmであることを特徴とする請求項9に記載のローラ。
【0019】
(請求項11)
前記樹脂層は、ポリウレタン系エラストマー、シリコーンゴム、オキシアルキレン系組成物を含有する樹脂の少なくとも1つを含有するものであることを特徴とする請求項9または10に記載のローラ。
【0020】
(請求項12)
前記ベルトは、電子写真方式の画像形成に用いられる現像ローラであって、
該現像ローラは、
弾性層、中間層、及び、表面層を有するものであって、
弾性層及び中間層の少なくとも1つの層に前記疎水性の有機基を有する導電剤を含有する樹脂層を有することを特徴とする請求項9乃至11のいずれか1項に記載のローラ。
【0021】
(請求項13)
前記導電剤が、カーボンブラックであることを特徴とする請求項9乃至12のいずれか1項に記載のローラ。
【0022】
(請求項14)
前記疎水性の有機基は、イオウ原子を介して、前記導電剤と結合しているものであることを特徴とする請求項9乃至13のいずれか1項に記載のローラ。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、疎水性の有機基を有する導電剤を樹脂層に含有させることにより、ベルトあるいはローラの生産工程でこれまで律速になりがちだった導電剤の樹脂相内への分散を迅速に行えるようにした。その結果、これらの導電剤を含有させた樹脂層内では導電剤が均一に分散しているので、ベルトやローラの電気的な特性を大幅に改良することが可能になった。すなわち、本発明によれば、導電剤が樹脂層内に均一に分散しているので、ベルトやローラ表面における電気抵抗にばらつきが発生することがなくなった。
【0024】
具体的には、例えば、電子写真方式の画像形成装置で使用される現像ローラに本発明に係る技術を適用すると、現像ローラの帯電性に変動をきたしにくいので、現像装置内で安定したトナー搬送及び像担持体へのトナー供給を長期にわたり行えるようになった。その結果、像担持体には所定量のトナーが安定して供給されるようになり、現像ムラなどの画質低下や帯電性の変動によって生じていたトナー飛散の問題を解消させることができた。
【0025】
また、中間転写ベルトに本発明に係る技術を適用すると、中間転写ベルト表面上で電荷のばらつきが発生しにくくなり、トナー画像を中間転写ベルトから記録媒体上に転写するときに問題になっていた剥離放電の影響が弱められるようになった。その結果、剥離放電に起因する集中放電により発生していた白抜けなどの画像欠陥の発生を大幅に抑制することができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明では、ベルトやローラに抵抗制御性を付与させるために使用される導電剤の構造に着目した。すなわち、本発明は、構造中に疎水性の有機基を有する導電剤が樹脂中で分散し易い性質を有するものであることを見出し、このような構造を有する導電剤をベルトやローラの製造に適用させたものである。その結果、ローラやベルトの製造工程において生産効率を大幅に向上させ、また、製造されたローラやベルトを用いて電子写真の画像形成を行ったところ、安定した抵抗制御性能が発現されることを見出したのである。
【0027】
このように、疎水性を有する有機基を有する導電剤を樹脂中に含有させることにより、本発明の課題が解消された理由は以下のように推測される。すなわち、導電剤中に存在する疎水性の有機基の影響で導電剤に適度な親油性が付与される結果、導電剤が樹脂中で分散し易くなったものと推測される。また、これらの有機基と樹脂分子との間に適度な静電間引力が作用することにより、分散状態の導電剤は樹脂中でも安定化されるものと推測される。
【0028】
また、本発明では、導電剤が構造中に疎水性の有機基を有することにより、ローラやベルトが湿度に対して影響を受けにくくなり抵抗の環境依存性が小さくなったものと推測される。その結果、環境に対する現像特性や転写特性の変化を少なくなりこれらの特性を安定して維持させることができるようになったものと推測される。
【0029】
さらに、本発明では、疎水性の有機基の中でも、特に、スルフィド基を介して導電剤と結合を有する有機基を有するものを用いた場合、本発明の効果がより明確に発現されることが見出された。これは、スルフィド基の存在によりゴム中における導電剤の分散性が向上したためと推測され、表面安定性や抵抗安定性の向上や抵抗値の制御に顕著な効果を奏することが見出された。
【0030】
次に、本発明に使用可能な導電剤について説明する。
【0031】
本発明でいう疎水性の有機基は、次のようなものをいう。すなわち、
(1)少なくとも1つのスルフィドを介して、あるいは、ポリスルフィド橋を介して導電剤と結合する構造を有する有機基
(2)少なくとも1つの置換C−C−単結合もしくは二重結合を有し、該結合を介して導電剤と結合し、かつ、C−C−単結合もしくは二重結合の少なくとも1つの炭素原子が少なくとも1つの活性化置換基を有する有機基
(3)2級アミン及び3級アミンのいずれかのアミン基を介して導電剤と結合する構造を有する有機基
また、上記の有機基のほかに、例えば、炭素数が6以上のアルキル基やフェニル基などのように十分な疎水性を発現するものも挙げられる。また、本発明でいう疎水性とは、その表面が非極性の液体で濡れる傾向を有することを意味するもので、数値で具体的に説明すると、構造中にHLB値が7よりも小さな値となる部位を有する有機基のことを疎水性の有機基と呼んでいる。
【0032】
以下、上記(1)乃至(3)に示す疎水性有機基を有する導電剤について説明する。
【0033】
先ず、少なくとも1つのスルフィドを介して、あるいは、ポリスルフィド橋を介して導電剤と結合する構造を有する有機基を有する導電剤は、下記構造を有するものである。
【0034】
導電剤−Sx−R
〔式中、Rは、アルキル、Yで官能化されたアルキル、ポリマー、環状有機基、アリール、Yで官能化されたアリールArYn(ここで、n=1〜5である)であり、Yは−OH、−SH、−SO3H、−SO3M、−B(OH)2、−O(CH2−CH2−O)n−H、−COOH、−COOM、−NH2、−NR22、−N((CH2−CH2−O)nH)2、−CON((CH2−CH2−O)nH)2、トリアルコキシシリル、ペルフルオロアルキル、R2、−NH3+、−NR23+、−SO2−NR22、−NO2、−Cl、−CO−NR22、−SS−、−SCNであり、R2は脂肪族基、例えばアルカン、アルケン、アルコール、エーテル、アルデヒド、ケトン、カルボン酸又は炭化水素、環状有機基、例えば脂環式炭化水素、置換又は非置換の、分枝又は非分枝の脂肪族又は環状部分を有する有機化合物、発色団基又は染料であり、x=1〜8、有利に1である〕。
【0035】
環状有機基は、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロ環式基、例えばピロリジニル−、ピロリニル−、ピペリジニル又はモルホリニル、アリール基、例えばフェニル、ナフチル又はアントラセニル、並びにヘテロアリール基、例えば、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、チエニル、チアゾリル、フリール又はインドリルであってよい。
【0036】
上記有機基を有する導電剤は、一般式:R−Sy−R(ここで、y=2〜10である)の有機化合物と導電剤とを反応させて得られる。なお、この反応では、はじめに施与された基は、反応を引き続いて行うことにより更に変性させることも可能である。
【0037】
なお、導電剤と反応させる一般式;R−Sy−Rで表される化合物は、yが2乃至10であり、Rは同一または異なるものでもよい。
【0038】
また、一般式;R−Sy−Rで表される化合物には、ラジカル分解可能な結合を有する化合物を使用することができる。この場合、この発見された反応原理は親水性の導入も親油性基の導入も許すので、これらの基Rは、潜在的な使用分野のために特別あつらえることができる。これらの基は、イオン性、ポリマー性又は他の反応のために反応性であってもよい。
【0039】
一般式;R−Sy−Rで表される化合物は、混入によりまたはスプレーにより導電剤上に施与することができる。一般式;R−Sy−Rを有する化合物は、粉末、融液あるいは溶液として施与することができる。特に、導電剤としてカーボンブラックを用いる場合はこの化合物を施与するのが有利である。
【0040】
また、導電剤への上記化合物の添加は、ある程度の温度を有する環境下で行うことが好ましく、例えば、導電剤にカーボンブラックを用いる場合は、0〜300℃、好ましくは150〜250℃の温度を有する環境下での熱処理により行われる。
【0041】
このように、導電剤を変性させるための上記反応は、溶剤なしあるいは溶剤中で行え、易揮発性有機溶剤中で行うことが好ましい。
【0042】
次に、少なくとも1つの置換C−C−単結合もしくは二重結合を有し、該結合を介して導電剤と結合し、かつ、C−C−単結合もしくは二重結合の少なくとも1つの炭素原子が少なくとも1つの活性化置換基を有する有機基を有する導電剤について説明する。
【0043】
本発明では、C−C−単結合もしくは二重結合の少なくとも1つの炭素原子が少なくとも1つの活性化置換基を有するものである。ここで、活性化置換基はアクセプタ置換基が好ましい。アクセプタ置換基とは、−COOR、−CO−R、−CN、−SO2R、−SO2ORの構造を有するものであり、RはH原子、アルキル基、アリール基、もしくは、官能化されたアルキル基もしくはアリール基である。例えば、ω−カルボキシアルキル、HSO3−、CxHy−、H2N−CxHy−、H2N−SO2−CxHy−が挙げられる。
【0044】
上記有機基を有する導電剤は、導電剤と有機基内のC−C−二重結合もしくは三重結合を有する置換基とが反応して生成される。すなわち、活性化されたC−C−二重結合もしくは三重結合を有する有機化合物と導電剤とを反応させて得られるものである。
【0045】
ここで、C−C−二重結合もしくは三重結合を有する有機化合物のこれらの多重結合を活性化させるために、アクセプタ置換基を有する化合物を使用して活性化置換基を形成させる。なお、アクセプタ置換基の反応原理によれば親水基も親油基も導入できるので、置換基を調整することが好ましい。また、置換基はイオン性でも、ポリマー状でも、あるいはその他の反応に対する反応性を有するものでもよい。
【0046】
アクセプタ置換基を有する有機化合物について説明する。アクセプタ置換基を有する有機化合物としては、下記一般式(I)の構造を有するものが挙げられる。
【0047】
【化1】

【0048】
〔式中、R1、R2、R3およびR4は同じか、または異なっていてもよく、かつ、R1は−COOR、−CO−R、−CN、−SO2R、−SO2ORであり、R2、R3、R4はR1、H原子、アルキル基、アリール基、−COOM(MはHイオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン)、Clおよびその他の非アクセプタ置換基であり、かつ、RはH原子、アルキル基、アリール基、または、官能化したアルキル基もしくはアリール基である。例えば、ω−カルボキシアルキル、HSO3−CxHy−、H2N−CxHy−、H2N−SO2−CxHy−および類似の基である〕
また、アクセプタ置換基を有する他の有機化合物として、下記一般式(II)の構造を有するものが挙げられる。
【0049】
【化2】

【0050】
すなわち、一般式(II)の構造を有する有機化合物としては、XがO原子、または、N−R5である無水マレイン酸やマレイン酸イミドが挙げられる。
【0051】
なお、有機基R5はアルキル基、Yにより官能化されたアルキル基、ポリマー、環式有機基、アリール基、Ar−Yn(n=1〜5)の形のYにより官能化されたアリール基である。Yは、−OH、−SH、−SO3H、−SO3M、−B(OH)2、−O(CH2−CH2−O)n−H、−COOH、−COOM、−NH2、−NR2、−N((CH2−CH2−O)nH)2、CON((CH2−CH2−O)nH)2、トリアルコキシシリル、ペルフルオロアルキル、R5、−NH3+、−NR3+、−SO2−NR2、−NO2、−Cl、−CO−NR2、−SS−、−SCNである。
【0052】
窒素原子と接している有機基R5は、脂肪族基、環式有機基、または、脂肪族部分を1つと環式部分を1つずつ有する有機化合物であってもよく、また、有機基R5は、構造中に置換もしくは非置換、分枝鎖状もしくは非分枝鎖状の部位を有するものでもよい。
【0053】
有機基R5が脂肪族基である場合、具体的には、アルカン、アルケン、アルコール、エーテル、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭化水素などの基が挙げられる。
【0054】
また、環式有機基の具体例としては、例えば、シクロアルキル基やシクロアルケニル基などの脂環式炭化水素、ピロリジニル基、ピロリニル基、ピペリジニル基、モルホリル基などのヘテロ環式化合物、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基などのアリール基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジニル基、チエニル基、チアゾリル基、フリル基、インドリル基などのヘテロアリール基が挙げられる。
【0055】
また、有機基R5は、別の官能基により置換されているものや、発色団あるいは染料であってもよい。
【0056】
さらに、有機基R5は、p−ベンゾキノン、エチルビニルエーテルなどの不飽和化合物や、アジドジカルボン酸エステルのようなヘテロ原子を多重結合中に有する化合物であってもよい。
【0057】
一般式(II)の構造を有する有機化合物で、XがO原子の化合物の製造方法は、例えば、置換された無水コハク酸タイプの生成物を塩基性もしくは酸性の条件下で開環させ、アルコールもしくはアルコラートを用いた半エステル形成により生成される。また、アミンを用いてアミド形性を経て生成する場合は、例えば、第1アミンを用いた場合は加熱によるイミド化を継続させて行うことで官能化が行われて生成される。さらに、アンモニアを使用する場合は、生成したイミドを後から窒素部位を置換することで生成される。
【0058】
上記有機基を導電剤に付与する方法は、アクセプタ置換基を有する有機化合物を混合もしくは噴霧により導電剤上に添加する方法が挙げられる。また、アクセプタ置換基を有する有機化合物を粉末、溶融物あるいは溶液にして導電剤に添加する方法もある。特に、導電剤の製造中にアクセプタ置換基を有する有機化合物を添加することが好ましく、ある程度の温度を有する環境下で導電剤を変性させる。例えば、導電剤にカーボンブラックを用いる場合は、カーボンブラックの変性を効率よく行うためには、溶剤を使用しないか、あるいは、易揮発性有機溶剤などの溶剤を用いるとよい。上記の有機基を付与してカーボンブラックを変性させるための反応は、23℃〜250℃、好ましくは80℃〜140℃の温度で行われる。
【0059】
このように、導電剤を変性させるための上記反応は、溶剤なしあるいは溶剤中で行え、易揮発性有機溶剤中で行うことが好ましい。
【0060】
次に、2級アミン及び3級アミンのいずれかのアミン基を介して有機基と結合している構造を有する導電剤は、導電剤=N−R、または、導電剤−NH−Rのいずれかの構造を有するものである。ここで、Rは構造中にケイ素を含有するものである。
【0061】
Rの実施形態の1つとして、−(CH2)n−SiR123が挙げられる。ここで、R1、R2、R3は、炭素数が1〜8のアルキル基、炭素数が1〜8のアルコキシ基、H原子またはハロゲニドを表し、nは1〜10の数である。また、R1、R2、R3の構造は同一であっても、また、異なるものであってもよい。この中でも、Rが−(CH23−Si(OC253の構造を有するものが好ましい。
【0062】
また、R−N3の構造を有する有機化合物と反応させて疎水性の有機基を有する導電剤を作成する方法がある。ここで、Rは構造中にケイ素を含有するものである。
【0063】
R−N3で表される化合物は、ラジカル形成下に窒素を離脱させる化合物を使用することができる。
【0064】
R−N3の構造を有する具体的な有機化合物として、例えば、アジドシランが好ましく用いられる。この化合物は、下記一般式(III)で表されるものである。
【0065】
123Si−(CH2)n−N3 (III)
〔式中、R1、R2、R3は、炭素数18のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、H原子またはハロゲニドを表し、nは1〜10の数である。また、R1、R2、R3の構造は同一であっても、また、異なるものであってもよい。〕
また、R−N3の構造を有する具体的な有機化合物として、例えば、下記一般式(IV)で表される3−アジドプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
【0066】
(H52O)3Si−(CH23−N3 (IV)
R−N3の構造を有する化合物は、導電剤上に混入させたり、また、スプレーにより、または溶剤の引き続く留去を伴う導電剤懸濁液中で、添加させることができる。R−N3の構造を有する化合物は、粉末または溶液として添加することができる。
【0067】
上記有機基を導電剤に付与する方法は、R−N3の構造を有する有機化合物を混合もしくは噴霧により導電剤上に添加する方法が挙げられる。また、R−N3の構造を有する有機化合物を粉末、溶融物あるいは溶液にして導電剤に添加する方法もある。特に、導電剤の製造中にR−N3の構造を有する有機化合物を添加することが好ましく、ある程度の温度を有する環境下で導電剤を変性させる。例えば、導電剤にカーボンブラックを用いる場合は、カーボンブラックの変性を効率よく行うためには、溶剤を使用しないか、あるいは、易揮発性有機溶剤などの溶剤を用いるとよい。上記の有機基を付与してカーボンブラックを変性させるための反応は、0℃〜400℃、好ましくは200℃〜300℃の温度で行われる。
【0068】
このように、導電剤を変性させるための上記反応は、溶剤なしあるいは溶剤中で行え、易揮発性有機溶剤中で行うことが好ましい。
【0069】
また、本発明では、上述したような構造中に疎水性の有機基を有する導電剤が用いられるが、このような構造の有機基を有する導電剤により、ローラやベルトが湿度に対して影響を受けにくくなり抵抗の環境依存性が小さくなったものと推測される。その結果、環境に対する現像特性や転写特性の変化を少なくなりこれらの特性を安定して維持させることができるようになったものと推測される。
【0070】
さらに、本発明では、疎水性の有機基の中でも、特に、スルフィド基を介して導電剤と結合するものが特に好ましいことを確認した。スルフィド基を介して導電剤と結合するものが特に好ましい理由は、おそらく、スルフィド基の存在によりゴム中において導電剤が分散し易くなったためと推測され、表面安定性や抵抗安定性の向上や抵抗値の制御に顕著な効果を奏することが見出されている。
【0071】
次に、本発明に使用可能な導電剤について説明する。本発明に使用可能な導電剤は、前述の疎水性有機基を結合させることが可能なものであれば特に限定されるものではない。具体的には、カーボンブラック、グラファイト、アルミニウム、ニッケル、銅合金等の金属または合金、酸化スズ、酸化亜鉛、チタン酸カリウム、酸化錫−酸化インジウムまたは酸化錫−酸化アンチモン複合酸化物等の金属酸化物等が挙げられる。
【0072】
この中でもカーボンブラックが好ましく、例えば、ファーネスブラック、ガスブラック、チャンネルブラック、フレームブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、プラズマブラック、DE19521565号から公知のインバーションブラック(Inversionsruss)、WO98/45361号もしくはDE19613796号に開示されているSi含有カーボンブラック、WO98/42778号に開示の金属含有カーボンブラック、アーク放電ブラック(Lichbogenruss)、及び、化学的な製造方法で副生成物として得られるカーボンブラックが使用できる。これらのカーボンブラックに上述の疎水性有機基を結合させる反応を行って得られる。
【0073】
また、ゴム混合物中の補強充填剤として使用されるカーボンブラックやカラーブラック、あるいは、対紫外線安定化に使用されるカーボンブラックや、ビチューメンなどのゴム以外の用途に補強充填剤として使用されるカーボンブラック、さらには、プラスチックにおける充填剤用のカーボンブラックや、冶金における還元剤として使用されるカーボンブラックが挙げられる。このように、公知のカーボンブラックが使用可能である。
【0074】
また、導電剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、4〜20質量部が好ましく、5〜15質量部がより好ましい。そして、導電剤を上記範囲に含有させた層を有する現像ローラでは、像担持体上への安定したトナー供給が実現される結果、濃度ムラやトナー飛散によるカブリのないトナー画像が得られる。また、中間転写ベルトでは、転写時に剥離放電を起こすことなく安定した転写性能が発現され、白抜けなどの画像欠陥のないトナー画像が得られる。
【0075】
次に、上述した疎水性の有機基を有する導電剤を分散させた樹脂層を設けたベルトやローラについて説明する。本発明では、上述の疎水性の有機基を有する導電剤をローラやベルトの製造に適用することにより、これら部材の生産効率を大幅に向上させた。また、製造されたローラやベルトを用いて電子写真の画像形成を行ったところ、安定した抵抗制御性能が発現されることを見出している。
【0076】
すなわち、本発明に係るローラ及びベルトは、疎水性の有機基を有する導電剤を含有させることにより、当該導電剤を含有する樹脂層の抵抗率が104〜1010Ωcm、好ましくは105〜108Ωcmとなる。樹脂層の抵抗率が上記範囲となることにより、例えば、現像ローラでは、現像ローラ表面からのリーク電流の発生が抑制されるとともにトナーフィルミングの発生も抑制されて現像ローラに起因する画質低下の問題が解消される。
【0077】
また、中間転写ベルトでも、中間転写ベルト表面における電荷のリーク発生が抑制されて放電の発生が抑制されるので、白抜けなどの画像欠陥の発生が抑制されるようになる。
【0078】
この抵抗率の測定方法は、現像ローラあるいは中間転写ベルトを金属プレートに水平に当てて、現像ローラのシャフトの両端部あるいは中間転写ベルト上の任意の個所に各々500gの荷重を金属プレート方向に加え、シャフトあるいは中間転写ベルトと金属プレート間に直流電圧100ボルトを印加して測定される値である。
【0079】
また、現像ローラや中間転写ベルトの抵抗性能については、以下の方法で測定することも可能である。
【0080】
例えば、本発明では、中間転写ベルト表面の表面抵抗率が1×1011〜1×1013Ω/□であることが好ましい。表面抵抗率を上記範囲内にすることで、前述した導電性微粒子の作用によるポストニップ部(二次転写部で記録媒体と中間転写ベルトとが剥離する個所)での局所的な剥離放電の抑制を補助しているものと推測される。また、プレニップ部(二次転写部の記録媒体と中間転写体とが接触開始する個所)でも電界強度の均一化を補助しているものと推測され、従来技術でプレニップ部でのギャップ放電による影響として懸念されていた画質の粒状性に対する影響も改善されている。
【0081】
中間転写ベルト表面における表面抵抗率は、円形電極(例えば、三菱油化(株)製ハイレスターIPの「HRプローブ」)を用い、JIS K6991に基づいて測定することができる。本発明に係る中間転写ベルトの表面抵抗率の測定方法は、例えば、特開2001−242725号公報の段落0047や図7の記載を参照することができる。
【0082】
また、本発明では、現像ローラ表面における体積抵抗率が、1×105〜1×109Ω・cmであることが好ましい。体積抵抗率を上記範囲内にすることで、現像ローラより像担持体にトナーを転写したときにトナーの電荷を適度に保持する様に作用する静電的な力が適度に発現されて、トナー同士の静電的反発力などの影響が抑制されるものと推測される。その結果、像担持体上に転写するときにトナーが飛散せずに、静電的反発力などによるノイズの影響を受けることなく安定した画像形成が期待される。この様に、本発明に係る現像ローラでは、上述した画質低下の発生防止に加えてトナー飛散の発生を懸念する必要がない。現像ローラの体積抵抗率の測定は、前述の表面抵抗率と同様に円形電極(例えば、三菱油化(株)製ハイレスターIPのHRプローブ)を用い、JIS K6991に基づいて測定することが可能である。例えば、特開2001−242725号公報の段落0048や図8の記載を参照することができる。
【0083】
ここでは、疎水性の有機基を有する導電剤を用いたベルトの代表的な実施形態である中間転写ベルトについて説明する。なお、本発明に係るベルトは電子写真方式の画像形成に用いられる中間転写ベルトに限定されるものではない。
【0084】
中間転写ベルトは、基材上に表面層をはじめとする各種の層を設けた多層構造を有するものである。このように、中間転写ベルトを多層構造とすることにより、単一の材料構成では得られない可撓性と剛性をバランスよく発現することが可能になる。すなわち、中間転写ベルトには、トナー画像の画質を乱さないように転写させるためにテンションロールより大きな張力が加えられ、また、クリーニングブレードとの圧接による負荷も無視できるものではない。このような負荷に対して安定した耐久性が求められている。なお、本発明では前述の基材のことを基材層ともいう。
【0085】
本発明に係る中間転写ベルトは、前述の疎水性基を有する導電剤を含有するものであり、導電剤を上記各層のいずれに添加してもよいが、転写時に起こる剥離放電に基づく集中放電の発生を防ぐ上でも、表面層や中間層に添加することが特に好ましい。また、全ての層に添加するものでもよい。このように、中間転写ベルト内に疎水性基を有する導電剤を含有させることにより、転写時での剥離放電に基づく集中放電の発生を防ぎ、良好な画像形成を行うことを可能にしている。すなわち、中間転写ベルトに疎水性を有する導電剤を含有させることで、中間転写ベルト内に導電剤が均一に分散した領域が形成され、中間転写ベルトの抵抗率の調整や抵抗バラツキの抑制が行えるようになった。また、転写電圧による電界集中の発生を抑制することができるようになった。
【0086】
なお、中間転写ベルト2に疎水性の有機基を有する導電剤が含有されていることは、透過型電子顕微鏡(TEM;Transmission Electron Microscope)あるいは走査型電子顕微鏡(SEM;Scanning Electron Microscope)測定により確認することが可能である。
【0087】
本発明に係るベルトの一例である中間転写ベルト2の構造を図1に示す。図1(a)は、表面層21と基材層23とからなる2層構造の中間転写ベルト2で、図1(b)は、基材層23上に中間層24を有し、中間層24上に表面層21を有する3層構造の中間転写ベルト2である。また、図1(c)は、基材層23の外側に2つの中間層24、25を有し、中間層25の外側に表面層21を有する4層構造の中間転写ベルト2である。
【0088】
中間転写ベルト2を構成する表面層21は、低表面エネルギーの結着樹脂が含有され、中間転写ベルト2上の表面エネルギーを低くすることによりベルトからのトナー画像の離れを促進させている。その結果、2次転写時に中間転写ベルトから記録媒体へのトナー画像の転写性が促進されて、記録媒体上には高画質のトナー画像が得られる。低表面エネルギーを有する材料としては、例えば、フッ素系材料、シリコン系材料、あるいはこれらを主成分とする材料、フッ素樹脂粉末、シリコン樹脂、シリコーンオイル成分を分散してなる材料等が挙げられる。
【0089】
この中でも、シリコーン樹脂を用いて形成した表面層21が好ましい。表面層21の形成に使用されるシリコーン樹脂は、特に限定されるものではないが、通常、作業効率から液状のシリコーン樹脂が好ましく、n−ヘキサン等の有機溶剤を含有したものや有機溶媒を使用しない反応型のものが挙げられる。また、特にハードタイプの一液または二液の硬化型のシリコーン樹脂が好ましい。なかでも、加熱硬化型シリコーン樹脂(メチル系)や室温硬化型シリコーン樹脂が好適である。
【0090】
以下に、本発明に係る中間転写ベルト2の表面層21に使用可能な硬化型シリコーン樹脂の硬化反応例を示す。
【0091】
【化3】

【0092】
次に、中間転写ベルト2を構成する基材層23について説明する。基材層23は、テンションロールへの張架で生ずる張力により発生する伸びやクリーニングブレードとの接触など、中間転写ベルト2に加わる負荷によるベルトの変形を回避し、転写部への影響を低減させる剛性を有するものである。基材層23は、ヤング率が200MPa(200kg/mm2)以上となる材料を用いて形成することが好ましく、300MPa(300kg/mm2)以上の材料がより好ましい。
【0093】
ベルト材料(ベルト状の基材に用いられる材料)のヤング率とベルト駆動時の外乱(負荷変動)によるベルトの変位量との関係は、下記式(2)で表すことができる。
【0094】
式(2) ΔL=P・L・α/(t・w・E)
ここで、ΔL:ベルトの変位量(μm)
P:負荷 (N)
L:2本のテンションロール間のベルトの長さ(mm)
α:係数
t:ベルト厚み(mm)
w:ベルト幅(mm)
E:ベルト材料のヤング率(N/mm2)を表す。
【0095】
ベルト駆動時の外乱(負荷変動)によるベルトの伸び・縮み(変位量)は、ベルト材料のヤング率と厚みに逆比例する。すなわち、高ヤング率のベルト材料を用いると、ベルト駆動時の外乱(負荷変動)によるベルトの変位量が少なくなり、駆動時の応力に対するベルト変形が小さくなり、良好な画質が安定して得られる。この様な性能を発現する材料として、例えば、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、ポリイミド、PEEK(ポリエーテル・エーテルケトン)等の樹脂材料が挙げられる。これらの樹脂材料ではヤング率が200MPa(200kg/mm2)を超えるものであり、厚み100〜150μmで、ベルト基材としての機械特性を満足する。
【0096】
また、基材層23に使用される材料は、例えば、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフロロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)等の樹脂材料及びこれらを主原料としてなる樹脂材料が挙げられる。更に、前述の脂材料と弾性材料とをブレンドした材料を使用することも可能である。前記弾性材料としては、例えば、ポリウレタン、塩素化ポリイソプレン、NBR、クロロプレンゴム、EPDM、水素添加ポリブタジエン、ブチルゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0097】
この中でも、ポリイミド樹脂を含有することが好ましい。ポリイミド樹脂は、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミック酸の加熱により形成される。また、ポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物や、その誘導体とジアミンのほぼ等モル混合物を有機極性溶媒に溶解させ、溶液状態で反応させることにより得られる。
【0098】
ポリアミック酸の調液に使用される芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸、ナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸、2,3,5,6−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−アゾベンゼンテトラカルボン酸、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン、β,β−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、β,β−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。
【0099】
また、芳香族ジアミン成分としては、m−フェニルジアミン、p−フェニルジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノクロロベンゼン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、2,4’−ジアミノナフタレビフェニル、ベンジジン、3,3−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、3,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(オキシ−p,p’−ジアニリン;ODA)、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノフェニルスルホン、4,4’−ジアミノアゾベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、β,β−ビス(4−アミンフェニル)プロパン等が挙げられる。
【0100】
さらに、ポリアミック酸の調液に使用される有機極性溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルトリアミド等が挙げられる。これらの有機極性溶媒には、必要に応じて、クレゾ−ル、フェノ−ル、キシレノール等のフェノール類、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類を混合することができる。これらの有機極性溶媒を1種単独、あるいは2種類以上の混合物として使用することも可能である。
【0101】
このようなポリアミック酸の中でも、特に、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを反応して得られるポリアミック酸が好ましい。具体的には、ポリイミド樹脂材料として、DuPont(株)のカプトンHA等のポリピロメリット酸イミド系のイミド樹脂材料、宇部興産(株)のユーピレックスS等のポリビフェニルテトラカルボン酸イミド系樹脂材料、宇部興産(株)のユーピレックスR、三井東圧化学工業(株)のLARC−TPI(熱可塑性ポリイミド樹脂)等のポリベンゾフェノンテトラカルボン酸イミド酸系樹脂材料等が挙げられ、いずれも、ヤング率が300MPa(300kg/mm2)以上であり、厚み70〜150μmで、ベルト基材としての機械特性を満足させることができる。
【0102】
また、中間転写ベルトの基材に、例えば、宇部興産(株)のユーピレックスS等のポリビフェニルテトラカルボン酸イミド系樹脂材料に前述の疎水性の有機基を有するカーボンブラックを分散した材料を用いると、該材料のヤング率は、200MPa(200kg/mm2)以上であり、ベルトの厚み70〜100μmで、ベルト基材としての機械特性を満足させることができる。
【0103】
なお、本発明では、基材層にポリイミド系樹脂を使用する場合、基材層におけるポリイミド系樹脂の含有率が51%以上であることが好ましい。
【0104】
中間転写ベルトは、図1(b)や(c)に示すように、基材層23と表面層21との間に中間層を設けることも可能である。中間層24に使用可能な材料としては、塩化ビニル/酢酸ビニル/マレイン酸の共重合体樹脂や、ポリアミド樹脂などが挙げられる。具体的なポリアミド樹脂の例としては、N−メトキシメチル化ナイロン(以下「ナイロン8」と略す)、ナイロン12、共重合ナイロン等が挙げられる。本発明では、基材層23と表面層21との密着強度を向上させ、しかも、これらの層が相溶しないようにするために、中間層24を設けることは好ましい。
【0105】
ポリアミド樹脂の溶剤としては、メタノール、エタノール等の単独溶剤またはそれら単独溶剤に水、トルエン等を混合させた混合溶剤、1−プロパノール、2−プロパノール等が用いられる。なかでも、ナイロン8とメタノール/水混合溶剤(メタノール/水=3/1)との組合わせが好適である。
【0106】
また、図1(c)のベルトのように2つの中間層を設けることも可能で、前述のポリアミド樹脂の中間層24に隣接させて第2の中間層25を設け、多層化により中間転写ベルトの強度がより増大する。第2の中間層25に使用可能な樹脂材料としては、前述したポリイミド樹脂やポリアミド樹脂の他に、フッ化ビニリデン−四フッ化エチレン共重合体、エチレン−四フッ化エチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体等のフッ素樹脂が挙げられる。
【0107】
本発明に係る中間転写ベルトの製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、各層の形成材料およびその溶剤をそれぞれ適宜に配合し、ボールミル等で混練、攪拌して各コーティング液を調製する。このようにして調製したコーティング液の濃度は、層の厚みに応じて適宜に設定される。ついで、各コーティング液をそれぞれ槽に収容し、その一方でアルミニウム、ステンレス等の金属製の軸体を準備して、この軸体を基材層用のコーティング液が収容されている槽中に垂直に立てた状態で入れて浸漬させる。この時、浸漬を数回繰り返して所定の厚さの塗膜を形成させた後、コーティング液中から軸体を引き上げる。ついで、各層のコーティング液を用いて同様の操作を繰り返し、多層構造を形成する。次に、乾燥し溶剤を除去した後、加熱処理(例えば60〜150℃×60分間)を行い、軸体を抜き取って図1に示す無端状の中間転写ベルトを作製する。
【0108】
この浸漬法による製法以外にも、押出成形法、スプレーコーティング法、インフレーション法、ブロー成形法等の方法により、中間転写ベルトを作製することが可能である。
【0109】
また、特に、基材層にポリイミド樹脂を使用する場合は、例えば、全芳香族骨格を有するテトラカルボン酸二無水物とジアミン成分とを重合反応して得たポリアミド酸溶液を適宜な方式で展開し、その展開層を乾燥製膜してフィルム状に成形し、その成形物を加熱処理してポリアミド酸をイミドに転化する方法により基材層が得られる。そして、基材層上に他層を構成するコーティング液を順次浸漬、あるいは、スプレーコーティングして中間転写ベルトを作製する。
【0110】
シームレスの中間転写ベルトを形成する場合、例えば、ポリアミド酸溶液を円筒状金型の外周面に浸漬する方式や、内周面に塗布する方式や更に遠心する方式、或いは注形型に充填する方式などの適宜な方式でリング状に展開し、その展開層を乾燥製膜してベル卜形に成形し、その成形物を加熱処理してポリアミド酸をイミドに転化して型より回収する方法などの従来に準じた適宜な方法により行うことができる(特開昭61−95361号公報、特開昭64−22514号公報、特開平3−180309号公報等)。シームレスベルトの形成に際しては、型の離型処理や脱泡処理などの適宜な処理を施すことができる。
【0111】
次に、本発明に係る中間転写ベルトが使用可能な画像形成装置について説明する。本発明に係る中間転写ベルトの使用が可能な画像形成装置は、例えば、複写機やレーザプリンタ等が挙げられるが、特に、5000枚以上の連続プリントが可能な画像形成装置が好ましい。この様な装置では、短時間に大量のプリント作成を行う分、蓄積電荷の影響により中間転写ベルトと記録紙との間に白抜けなどの画質低下を招く電界が発生し易くなるが、本発明に係る中間転写ベルトにより画質低下が抑制されて安定した2次転写が行える。
【0112】
本発明に係る中間転写ベルトの使用が可能な画像形成装置は、画像情報に応じた静電潜像を形成する像担持体、像担持体に形成された静電潜像を現像する現像装置、像担持体上のトナー像を中間転写ベルト上に転写する1次転写手段、中間転写ベルト上のトナー像を紙やOHPシートなどの記録媒体上に転写する2次転写手段等を有する。そして、中間転写体として本発明に係る中間転写ベルトを有することにより、2次転写時に剥離放電を発生させずに安定したトナー画像形成を行える。
【0113】
本発明に係る中間転写ベルトが使用可能な画像形成装置は、特に限定されず、単色のトナーで画像形成を行うモノクロ画像形成装置や、像担持体上のトナー像を中間転写ベルトに順次転写するカラー画像形成装置、各色毎の複数像担持体を中間転写体上に直列配置させたタンデム型カラー画像形成装置等が挙げられる。
【0114】
本発明に係る中間転写ベルトを用いたカラー画像形成装置の一例を図2に示す。画像形成装置Aは、像担持体としての感光体ドラム19、中間転写体としての中間転写ベルト2、転写電極であるバイアスローラ33(第二転写手段)、転写媒体である記録紙を供給する用紙トレイ4、Bk(ブラック)トナーによる現像器31Bk、Y(イエロー)トナーによる現像器31Y、M(マゼンタ)トナーによる現像器31M、C(シアン)トナーによる現像器31C、中間転写体クリーナー50、剥離爪57、ベルトローラ51、53、54、バックアップローラ52、第一転写手段に該当する導電性ローラ55、電極ローラ56、クリーニングブレード31、記録紙S、ピックアップローラ42、並びにフィードローラ43を有する。
【0115】
図2では、感光体ドラム1は矢印方向に回転し、図示しない帯電装置によりドラム表面が一様に帯電される。帯電された感光体ドラム1にレーザー書込み装置等の画像書き込み手段により第一色(例えば、Bk)の静電潜像が形成される。この静電潜像はブラック現像器5により現像されて黒色のトナー画像Tを形成する。トナー画像Tは、感光体ドラム1の回転により導電性ローラ55(第一転写手段)を配置した一次転写部に到る。ここで、トナー画像Tは、導電性ローラ55による逆極性の電界の作用で静電的に本発明に係る中間転写ベルト2に吸着されながら、中間転写ベルト2の矢印方向の回転で一次転写される。
【0116】
以下、同様にして第2色のトナー画像、第3色のトナー画像、第4色のトナー画像が順次形成されて中間転写ベルト2上に重ね合わされて多色のトナー画像が形成される。中間転写ベルト2に転写された多色のトナー画像は、中間転写ベルト2の回転でバイアスローラ3(第二転写手段)が設置された二次転写部に到る。二次転写部は、トナー画像を担持した中間転写ベルト2表面側に設置したバイアスローラ3と、中間転写ベルト2の裏側からバイアスローラ3に対向するように配置したバックアップローラ52、及び、バックアップローラ52に圧接して回転する電極ローラ56から構成される。
【0117】
記録紙Sは、用紙トレイ61に収容した記録紙束よりピックアップローラ62で一枚ずつ取り出され、フィードローラ64で二次転写部の中間転写ベルト2とバイアスローラ33との間に所定のタイミングで給送される。給送された記録紙S上には、バイアスローラ33とバックアップローラ52による圧接搬送と中間転写ベルト2の回転により、中間転写ベルト2に担持されたトナー画像が転写される。
【0118】
トナー画像が転写された記録紙Sは、最終トナー画像の一次転写終了まで退避位置にある剥離爪57の作動により中間転写ベルト2より剥離され、図示しない定着装置に搬送されて加圧/加熱処理を経てトナー画像が固定されて定着画像となる。なお、多色のトナー画像の記録紙S上への転写が終了した中間転写ベルト2は、二次転写部の下流に設けられた中間転写体クリーナ50により、残留トナーが除去されて次の転写に備える。また、バイアスローラ3には、ポリウレタン等の樹脂製のクリーニングブレード58が常時当接するように取り付けられ、転写時に付着したトナー粒子や紙紛が除去される。
【0119】
単色画像の転写の場合、一次転写されたトナー像Tを直ちに二次転写して定着装置に搬送されるのに対し、図2のような複数色のトナー画像より形成される多色画像を転写する場合、各色のトナー画像が一次転写部で正確に一致するように中間転写ベルト2と感光体ドラム19との回転を同期させて各色のトナー画像がずれないように転写させる。そして、二次転写部では、バイアスローラ33と中間転写ベルト2を介して対向配置したバックアップローラ52に圧接した電極ローラ56に、トナー画像の極性と同極性の電圧(転写電圧)を印加して、トナー画像を記録紙41に静電反発の作用で転写させる。
【0120】
次に、疎水性の有機基を有する導電剤を用いたローラの代表的な実施形態である現像ローラについて説明する。なお、本発明に係るローラは現像ローラなどの電子写真方式の画像形成に用いられるローラに限定されるものではない。
【0121】
本発明に係るローラの一例である現像ローラを図3に基づいて説明する。この現像ローラ1は、軸体11と、この軸体11の外周面に沿って形成された弾性層12と、この弾性層12の外周に形成された中間層13と、この中間層13の外周に形成された表面層14とを有している。このように、現像ローラ1は軸体11上に複数の樹脂層を同心円状に積層させた構造を有している。
【0122】
軸体11は、特に限定されるものではなく、例えば、直径1mm〜25mm程度の金属製の中空体や中実体が用いられる。材質は、ステンレス鋼やアルミニウム合金等が挙げられる。軸体11の外周面には、弾性層との接着性を高めるため、必要に応じて、接着剤、プライマー等を塗布することが可能である。また、これらの接着剤やプライマー等に導電処理をしたものを用いることも可能である。
【0123】
軸体11の外周面に形成される弾性層12は、例えば、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、シリコーンゴム、ポリウレタン系エラストマー等によって形成され、前述した疎水性の有機基を含有した導電剤をこれらの樹脂中に含有させている。このなかでも、低硬度でへたりが少ないという点から、シリコーンゴムが好ましい。
【0124】
また、弾性層12に用いられる樹脂として、特開平11−212354号公報等に開示されるオキシアルキレン系組成物単位からなる樹脂も加工性、及び、高湿度環境下での安定性の視点から好ましいものである。これは、
(A)分子中に少なくとも1個のアルケニル基を含み、主鎖を構成する繰り返し単位が主にオキシアルキレン単位または飽和炭化水素系単位からなる重合体と、
(B)分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を含む硬化剤と、
(C)ヒドロシリル化触媒と、
(D)前述の疎水性の有機基を有する導電剤と、
を主成分とする硬化性組成物の反応物より生成されるものである。
【0125】
この硬化性組成物における(A)成分の重合体は、(B)成分とのヒドロシリル化反応により硬化する成分であり、分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有することにより、ヒドロシリル化反応で高分子化して硬化する。(A)成分に含まれるアルケニル基の数は、(B)成分とヒドロシリル化反応するという点から少なくとも1個必要であるが、ゴム弾性の視点から、直鎖状分子の場合は分子の両末端に2個のアルケニル基が存在し、分岐のある分子の場合には、分子末端に2個以上のアルケニル基が存在することが望ましい。(A)成分の主鎖を構成する主な繰り返し単位はオキシアルキレン単位または飽和炭化水素系単位である。
【0126】
上記弾性層12の外周面に形成される中間層13には、例えば、EPDM、SBR、ニトリルゴム、アクリル−ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル、N−メトキシメチル化ナイロン等が用いられる。また、中間層12中に、前述の疎水性の導電剤を含有させることも可能である。
【0127】
また、中間層13には、例えば、特開2002−357949号公報に開示されるような表面粗さ形成用の粒子を分散させることも可能である。表面粗さ形成用の粒子は、特に限定されるものではなく、例えば、シリカ,ウレタン樹脂,ポリアミド樹脂,フッ素樹脂,アクリル樹脂,尿素樹脂等が挙げられ、これらを単独または2種以上併用することができる。なかでも、トナーを高帯電化させることのできるシリカが好適に用いられる。
【0128】
中間層13を形成するとき、上記の中間層形成用材料を有機溶剤に溶解等してコーティング液を作製し、弾性層12上に塗布する。上記有機溶剤としては、メチルエチルケトン(MEK)、メタノール、トルエン、イソプロピルアルコール、メチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。特に、メチルエチルケトンを用いることが、上記層形成用材料に対する溶解性の点で好ましい。このようなコーティング液は、粘度を0.02〜0.10Pa・sにすることが、塗工性等の点で好ましい。
【0129】
中間層13の外周に形成される表面層14には、例えば、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、ブチラール樹脂(PVB)等があげられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なかでも、耐摩耗性の点で、ウレタン樹脂が好適に用いられる。また、表面層14中に、前述の疎水性の有機基を有する導電剤を含有させることも可能である。
【0130】
また、表面層14を形成する樹脂としては、前述の特開平11−212354号公報に開示されているポリシロキサン骨格を含有するポリオールとイソシアネート、及び、必要に応じて鎖伸長剤とを反応させて形成されるポリウレタン系樹脂も好ましく使用される。
【0131】
このポリウレタン系樹脂には、
(1)ポリオールと鎖伸長剤の一方または双方がポリシロキサン骨格を有するポリウレタン系樹脂
(2)鎖伸長剤にポリアミンなどを用いてウレア結合を導入したポリウレタン系樹脂
(3)ポリシロキサン骨格を含むポリオールとポリアミンなどを含む鎖伸長剤とを反応させて得るポリウレタン系樹脂
が該当する。
【0132】
前記ポリオールとしては、ポリエチレンジアジペート、ポリエチレンブチレンアジペート、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリ−ε−カプロラクトンジオール、ポリカーボネートポリオール、ポリプロピレングリコールなどのポリウレタン用ポリオールが挙げられる。これらの中でも、高温度・高湿度環境下でのトナー帯電量の低下を防ぐという視点から、ポリカーボネートポリオールが特に好ましい。このポリカーボネートポリオールとして、たとえばポリヘキサメチレンカーボネートジオールのような脂肪族または脂環式ポリカーボネートポリオールがより好ましい。
【0133】
前記イソシアネートとしては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、シクロヘキサンジイソシアネート、水添MDI、イソホロンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネートなどが挙げられる。さらに、これらイソシアネートとポリオールやポリアミンとを、分子末端にイソシアネート基を有するように反応させて得られるウレタンプレポリマーを用いることもできる。
【0134】
鎖伸長剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン(IPDA)、ヒドラジンなどが挙げられる。
【0135】
表面層に前記ポリシロキサン骨格が含まれる場合は、ポリシロキサン骨格によって表面層の凝集エネルギーが下がることにより、表面層は、良好なトナー離型性をもち、トナーを良好にマイナス帯電し、かつ耐摩耗性を高めるというポリウレタン系樹脂の特性をも併せもつので、トナーフィルミングを防止し、トナーを良好に帯電し、かつ、ローラの耐久性を高めることも可能になる。
【0136】
ポリウレタン系樹脂中のポリシロキサン骨格の含有率は、5質量%〜70質量%、好ましくは5質量%〜45質量%、より好ましくは20質量%〜40質量%であることが、トナー離型性やトナーフィルミング防止の視点から好ましい。なお、ポリシロキサン骨格は、シリコーン変性ポリカーボネートポリオールのように1分子中にポリシロキサン骨格を含む他の骨格をも含むものであってもよい。
【0137】
また、上記表面層14を形成する場合も、上記中間層13を形成するときと同様に、表面層を形成させる樹脂材料を有機溶剤に溶解等してコーティング液を作製し、これを塗布して形成する。上記有機溶剤としては、MEK等の従来公知のものが用いられる。このようなコーティング液は、粘度を0.02〜0.10Pa・sにすることが、塗工性、ロール表面における粗さのばらつきに与える影響等の点で好ましい。
【0138】
表面層14の表面粗さ(Rz)は、2〜20μmの範囲内になっていることが好ましい。より好ましくは、3〜12μmの範囲である。すなわち、本発明ではローラ中に前述した疎水性の有機基を有する導電剤と表面粗さ(Rz)を上記範囲内にすることにより、表面層表面に適度な平滑性が付与されると同時にトナーへの帯電付与が効率よく行われて、像担持体に安定したトナー供給を行って、所定の画像濃度と画質にムラのないトナー画像形成を実現させている。なお、上記表面粗さ(Rz)は、JIS B 0601の表面粗さの定義と表示により示されるなかの十点平均粗さに準拠して測定される。
【0139】
本発明に係る現像ロール1は、例えば、次のように作製することができる。すなわち、まず、弾性層12形成用材料の各成分をニーダー等の混練機で混練し、弾性層12形成用材料を作製する。ついで、円筒状金型の中空部に、金属製の軸体11をセットし、円筒状金型と軸体11との空隙部に、上記弾性層12形成用材料を注型した後、金型を蓋し、加熱して、弾性層12形成用材料を架橋させる。その後、円筒状金型から脱型することにより、軸体11の外周面に弾性層12を形成する。このように、軸体の外周面に弾性層が形成される。
【0140】
一方、中間層13の層形成用材料を有機溶剤に溶解させて、コーティング液を作製する。なお、中間層13に疎水性の有機基を有する導電剤や表面粗さ形成用の粒子を添加する場合は、コーティング液中にこれらを添加、混合して、中間層13形成用コーティング液を作製する。この場合、導電剤や表面粗さ形成用の粒子は硬質なので、溶剤に溶解せずに分散状態となる。
【0141】
さらに、表面層14の形成用材料を有機溶剤とともに混合して、表面層14形成用コーティング液を作製する。
【0142】
そして、上記弾性層12の外周面に、中間層13形成用コーティング液を塗工する。この塗工法は、特に制限するものではなく、ディッピング法、スプレー法、ロールコート法等の従来の方法が適用できる。そして、塗工後、乾燥および加熱処理(加硫処理、条件:120〜200℃×20〜90分)を行うことにより、中間層13形成用コーティング液中の溶剤を除去して中間層13を形成する。
【0143】
さらに、中間層13の外周面に、表面層14形成用コーティング液を塗工する。この塗工法は、中間層13形成用コーティング液と同様に、従来の方法が適用できる。そして、塗工後、乾燥および加熱処理(加硫処理、条件:120〜200℃×20〜90分)を行うことにより、上記表面層14形成用コーティング液中の溶剤を除去して表面層14を形成する。このようにして、図3に示す三層構造の現像ローラを作製する。
【0144】
この現像ローラは、弾性層12の厚みは1〜10mmの範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは2〜6mmである。また、中間層13の厚みは3〜30μmの範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは5〜20μmである。さらに、表面層14の厚みは3〜30μmの範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは5〜20μmである。なお、中間層13の厚みは、導電剤や表面粗さ形成用の粒子を添加した場合は、これらの粒子によって凹凸状に形成された中間層13の凹部の厚みを指す。そして、上記中間層13を含む各層の厚みは、現像ロールから、表面層14、中間層13および弾性層12を含む断面試料を採取し、電子顕微鏡写真に基づいて測定して得られる。
【0145】
なお、ここでは、現像ローラの例として、図3に示す三層構造のものをあげたが、軸体11の外周に形成される層は必ずしも三層である必要はなく、ロールの用途等に応じ、弾性層12と中間層13との間に適宜の数の層を形成して三層以上としてもよい。また、特開平11−212354号公報などに開示される弾性層と表面層からなる二層構造のものでもよい。
【0146】
次に、本発明に係る現像ローラが適用可能な現像装置の例を示す。電子写真方式の画像形成装置において、現像ローラは感光体などの静電潜像担持体へトナーを搬送する機能を有するものである。図4は、非磁性1成分トナーを用いた非磁性現像方式で用いられる現像ローラ1とその周辺構造を模式的に示した模式図である。現像ローラ1は、前述したようにSUS製やアルミニウム合金製などの導電性の軸体11の周りに弾性層12を同心円状に積層し、この弾性層12の上に中間層13と表面層14を被覆して構成される。トナー容器15に貯蔵されたトナーTは、供給ローラ16により現像ローラ1の表面に担持され、トナー容器15に取付けられた規制ブレードなどの規制部材17によって押圧されて接触帯電・摩擦帯電してトナー薄層18を形成する。そして、このトナー薄層18が像担持体19の表面の静電潜像に付着することによって、トナー画像を形成する。
【0147】
現像ローラ1や供給ローラ16、規制ブレード17には、これら表面電位を調整すべく、直流電圧や交流電圧が印加されている場合が多い。なお、図示した現像ローラ1はその表面を感光体と接触しているが、その表面を感光体と非接触にしているものもある。
【0148】
次に、図4に示した現像ローラを用いた画像形成装置についてさらに説明する。図5は、本発明に係る現像ローラを使用することが可能な非磁性一成分系現像剤を用いたフルカラー画像形成装置の模式図である。
【0149】
図5のフルカラー画像形成装置Bは、回転駆動される感光体ドラム19の周囲に、この感光体ドラム19の表面を所定の電位に均一に帯電させる帯電ブラシ26や、この感光体ドラム19上に残留したトナーを掻き落すクリーナ27が設けられている。
【0150】
また、帯電ブラシ26によって帯電された感光体ドラム19をレーザビームによって走査露光するレーザ走査光学系20が設けられており、このレーザ走査光学系20はレーザダイオード,ポリゴンミラー,fθ光学素子を内蔵した周知のものであり、その制御部にはシアン,マゼンタ,イエロー,ブラック毎の印字データがホストコンピュータから転送されるようになっている。そして、このレーザ走査光学系20は、上記の各色毎の印字データに基づいて、順次レーザビームとして出力し、感光体ドラム19上を走査露光し、これにより感光体ドラム19上に各色毎の静電潜像を順次形成するようになっている。
【0151】
また、このように静電潜像が形成された感光体ドラム19に各色のトナーを供給してフルカラーの現像を行なうフルカラー現像装置30は、支軸33の周囲にシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各非磁性1成分トナーを収容させた4つの色別の現像装置31C、31M、31Y、31Bkが設けられており、支軸33を中心として回転し、各現像装置31C、31M、31Y、31Bkが感光体ドラム19と対向する位置に導かれるようになっている。
【0152】
また、このフルカラー現像装置30における各現像器31C、31M、31Y、31Bkにおいては、回転してトナーを搬送する本発明に係る現像ローラ1の外周面にトナー規制部材が圧接され、このトナー規制部材により、現像ローラ1によって搬送されるトナーの量を規制すると共に、搬送されるトナーを帯電させるようになっている。なお、このフルカラー現像装置30においては、現像ローラ1によって搬送されるトナーの規制と帯電とを適切に行なうために、トナー規制部材を2つ設けるようにしてもよい。
【0153】
そして、上記のようにレーザ走査光学系20によって感光体ドラム19上に各色の静電潜像が形成される毎に、上記のように支軸33を中心にして、このフルカラー現像装置30を回転させ、対応する色彩のトナーが収容された現像器31C、31M、31Y、31Bkを感光体ドラム19と対向する位置に順々に導き、各現像器31C、31M、31Y、31Bkにおける現像ローラ1を感光体ドラム19に接触させて、上記のように各色の静電潜像が順々に形成された感光体ドラム19上に、帯電された各色のトナーを順々に供給して現像を行なうようになっている。
【0154】
また、このフルカラー現像装置30より感光体ドラム19の回転方向下流側の位置には、中間転写体として、回転駆動される無端状の中間転写ベルト2が設けられており、この中間転写ベルト2は感光体ドラム19と同期して回転駆動されるようになっている。そして、この中間転写ベルト2は回転可能な1次転写ローラにより押圧されて感光体ドラム19に接触するようになっており、またこの中間転写ベルト2を支持する支持ローラの部分には、2次転写ローラが回転可能に設けられ、この2次転写ローラによって記録紙等の記録材Sが中間転写ベルト2に押圧されるようになっている。
【0155】
更に、前記のフルカラー現像装置30とこの中間転写ベルト2との間のスペースには、中間転写ベルト上に残留したトナーを掻き取るクリーナ50が中間転写ベルト2に対して接離可能に設けられている。
【0156】
また、普通紙等の記録材Sを中間転写ベルト2に導く給紙手段60は、記録材Sを収容させる給紙トレイ61と、この給紙トレイ61に収容された記録材Sを1枚ずつ給紙する給紙ローラ62と、上記の中間転写ベルト上に形成された画像と同期して給紙された記録材Sを中間転写ベルト2と上記の2次転写ローラとの間に送るタイミングローラ63とで構成されており、このようにして中間転写ベルト2と2次転写ローラとの間に送られた記録材Sを2次転写ローラによって中間転写ベルト2に押圧させて、中間転写ベルト2からトナー像を記録材Sが押圧転写させるようになっている。
【0157】
一方、上記のようにトナー像が押圧転写された記録材Sは、エアーサクションベルト等で構成された搬送手段66により定着装置70に導かれるようになっており、この定着装置70において転写されたトナー像が記録材S上に定着され、その後、この記録材Sが垂直搬送路80を通して装置本体1の上面に排出されるようになっている。
【実施例】
【0158】
以下、
1.導電剤の作製
下記に示す疎水性の有機基を有する導電剤1〜9を作製した。
(1)導電剤1の作製
下記構造を有するスルフィド化合物2gを微細に分配した後、微細に分配した当該スルフィド化合物を100mlの水に分散させ、この分散液をカーボンブラック粒子(ピグメントブラックFW1(Degussa Huel社製))10gに添加してマッフル炉にセットし、100℃に加熱して水分除去を行った。
【0159】
【化4】

【0160】
続いて、上記スルフィド化合物と上記カーボンブラックとの固体反応を行うため、マッフル炉内を230℃に設定し5時間加熱処理を行って、スルフィドを介して有機基と結合したカーボンブラックである導電剤1を作製した。
(2)導電剤2の作製
無水マレイン酸2gをアセトン150mlに溶解させ、これにカーボンブラック粒子(ピグメントブラックFW1(Degussa Huel社製))10gを添加し、室温で30分間撹拌した。引き続き、溶剤を真空下で留去した後、カーボンブラックをマッフル炉中で180℃、5時間加熱処理を行って、C−C結合を有する有機基と結合したカーボンブラックである導電剤2を作製した。
(3)導電剤3の作製
アセチレンジカルボン酸のモノカリウム塩2gを水150mlに溶解させ、これにカーボンブラック粒子(Printex 35(Degussa Huel社製))10gを添加した。この液を還流下で1時間煮沸し、引き続き吸引ろ過した。その後、変性したカーボンブラックを水200mlで洗浄して、100℃で8時間乾燥させて、C−C二重結合を有する有機基と結合したカーボンブラックである導電剤3を作製した。
(4)導電剤4の作製
500mlのフラスコ中で、(H52O)3Si−(CH23−N3の構造を有するシラン Si250 2mlをアセトン150mlと混合し、カーボンブラック粒子(SPECIAL BLACK4(Degussa社製))10gを添加した。回転蒸発器を用いて溶剤を真空中で留去し、残分を引き続き磨砕した。この混合物を、マッフル炉中、250℃で2時間かけて加熱処理した後、室温下に戻した。
【0161】
室温に戻した後、カーボンブラックをアセトン150mlとともに1時間撹拌し、カーボンブラックを吸引ろ過して、乾燥箱中、100℃で8時間乾燥させて、アミンを介して有機基と結合したカーボンブラックである導電剤4を作製した。
(5)導電剤5の作製
導電剤1の作製工程で、カーボンブラック粒子に代えて体積メディアン粒径が150nmのアルミニウム粒子10gにした他は同様の手順により、スルフィドを介して疎水性の有機基と結合したアルミニウム粒子である導電剤5を作製した。
(6)導電剤6の作製
導電剤3の作製工程で、カーボンブラック粒子に代えて体積メディアン粒径が180nmの酸化スズ粒子10gにした他は同様の手順により、C−C二重結合を有する有機基と結合した酸化スズ粒子である導電剤6を作製した。
(7)導電剤7の作製
導電剤4の作製工程で、カーボンブラック粒子に代えて体積メディアン粒径が180nmの酸化亜鉛粒子にした他は同様の手順により、アミンを介して疎水性の有機基と結合した酸化亜鉛粒子である導電剤7を作製した。
(8)導電剤8の作製
導電剤2の作製工程で、カーボンブラック粒子に代えて体積メディアン粒径が150nmのアルミニウム粒子10gにした他は同様の手順により、C−C結合を有する有機基と結合したアルミニウム粒子である導電剤8を作製した。
(9)導電剤9の作製
導電剤3の作製工程で、カーボンブラック粒子に代えて体積メディアン粒径が150nmの酸化アルミニウム粒子10gにした他は同様の手順により、C−C二重結合を有する有機基と結合した酸化アルミニウム粒子である導電剤9を作製した。
2.実験その1;中間転写ベルトの評価実験
(1)基材層の作製
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)とp−フェニレンジアミン(PDA)とからなるポリアミド酸のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液(宇部興産製ユーワニスS(固形分18質量%))に、前述の導電剤1〜9をポリイミド系樹脂固形分100質量部に対して、23質量部になるよう添加して、衝突型分散機(シーナス製GeanusPY)を用い、圧力200MPaで、最小面積が1.4mm2で2分割後衝突させ、再度2分割する経路を5回通過させて、混合して、基材層用の導電剤入りのポリアミド酸溶液1〜9を得た。
【0162】
基材層用の導電剤入りのポリアミド酸溶液を円筒状金型内面に、ディスペンサーを介して0.5mmに塗布し、1500rpmで15分間回転させて均一な厚みを有する展開層とした後、250rpmで回転させながら、金型の外側より60℃の熱風を30分間あてた後、150℃で60分間加熱した。その後、360℃まで2℃/分の昇温速度で昇温し、さらに360℃で30分加熱して溶媒の除去、脱水閉環水の除去、及びイミド転化反応の完結を行った。その後室温に戻し、金型から剥離し、目的とする無端ベルト状の基材層を得た。この基材層の総厚みは0.1mmであった。
【0163】
また、疎水性の有機基を結合させる処理を行わなかったカーボンブラック粒子、アルミニウム粒子、酸化亜鉛粒子、酸化スズ粒子をポリイミド系樹脂固形分100質量部に対して、23質量部になるよう添加した基材層用の導電剤入りのポリアミド酸溶液10〜14を作製し、同様の手順で無端ベルト状の基材層を作製した。
(2)中間層の形成
塩化ビニル80%、酢酸ビニル15%、マレイン酸5%の組成比よりなる共重合体樹脂100質量部をシクロヘキサノン400質量部に溶解させた。この溶液に前述の導電剤1〜9、及び、疎水性の有機基を結合させていないカーボンブラック粒子、アルミニウム粒子、酸化亜鉛粒子、酸化スズ粒子を前述の共重合体樹脂100質量部に対して10質量部になるよう添加した。添加後、衝突型分散機(シーナス製GeanusPY)で、圧力200MPa、最小面積が1.4mm2で2分割後衝突させ、再度2分割する経路を5回通過させて、混合して、中間層用の導電剤入りの共重合体樹脂溶液1〜14を得た。
【0164】
各溶液を対応する前述の各基材層上に厚さ10μmとなるようにスプレー塗布を行って中間層を形成した。
(3)表面層の形成
シリコーン樹脂(信越化学社製;商品名X−40−2269) 100質量部
テトラメトキシシラン(東京化成社製) 3質量部
n−ヘキサン 400質量部
導電剤 23質量部
を配合し、ボールミルで混練、撹拌して10cpsの各コーティング液を作製し、作製した各コーティング液を前述の中間層を形成した試料ベルト上に厚さ0.1mmとなるようにスプレー塗布を行った。その後、オーブンで120℃で1時間乾燥させた。このようにして、中間転写ベルト1〜14を作製した。
【0165】
得られた中間転写ベルトの物性を表1に示す。
(4)評価実験
作製した中間転写ベルト1〜14を図2に示す画像形成工程を有する画像形成装置に搭載して、それぞれ連続1万枚のプリントを行って、プリント実施枚数に対する2次転写性の変動を評価した。連続プリント実施中の1000枚、3000枚、5000枚の時に下記評価用のサンプルを5枚ずつ作成した。2次転写性の評価は、白抜けの発生有無とライン画像の中抜け発生を目視で行ったものである。なお、画像形成には個数メディアン粒径が6.0μmのトナーよりなる非磁性一成分現像剤を使用した。なお、中間転写ベルト1〜9を用いたものを実施例1〜実施例9、中間転写ベルト10〜14を用いたものを比較例1〜比較例5とした。
【0166】
〈白抜け〉
白抜けの評価は、長径が0.4mm以上の白抜けがA4紙当たり何個あるかで判定した。なお、白抜け長径はビデオプリンター付き顕微鏡で測定した。評価の判定基準は、下記に示す通りである。
【0167】
○:0.4mm以上の白抜け頻度:全ての複写画像が3個/A4以下
△:0.4mm以上の白抜け頻度:4個/A4以上、19個/A4以下が1枚以上発生
×:0.4mm以上の白抜け頻度:20個/A4以上が1枚以上発生。
【0168】
〈ライン画像の中抜け〉
特開2000−122440号公報に開示の方法で評価した。すなわち、各処理枚数毎に像濃度30%の低密度背景部に像密度100%の高密度ライン画像を中間転写ベルト上に形成し、これを2次転写して得られたトナー画像の濃度を、背景部〜高密度部〜背景部方向にスキャンして、その濃度プロファイルをプロットした。そして、背景部の濃度低下領域、すなわち抜け部の距離(幅)を計測して2次転写後の画質を評価したものである。なお、画像濃度は、35ミクロン幅のスポット形状の光の反射率で計測して求めた。
【0169】
○:抜け部の幅が0.15mm未満で優れた画質が得られた
△:抜け部の幅が0.15mm以上0.3mm未満でほぼ良好な画質が得られた
×:抜け部の幅が0.3mm以上で画質上問題あり。
【0170】
得られた結果を表1に示す。
【0171】
【表1】

【0172】
表1の結果から明らかなように、疎水性の有機基を有する導電剤を含有させた本発明に該当する中間転写ベルトでは、連続で5000枚以上のプリント作成を行っても白抜けやライン抜けといった画像欠陥の発生が見られなかった。一方、比較例である疎水性の有機基を結合させなかった導電剤を含有させた中間転写ベルトを用いた場合は、1000枚あたりから画像欠陥の発生が見られ、本発明に係る中間転写ベルトとは明らかに異なる結果となった。
3.実験その2;現像ローラの評価
(1)弾性層の作製
直径10mmのSUS(ステンレス鋼)製のシャフトの周りに厚さ7.5mmの導電性弾性層を設けた。この導電性弾性層の外周に表面層を被覆して構成されるものである。以下に、導電性弾性層と表面層の具体的な構成について説明する。なお、これら実施例は、何ら本発明を限定するものではない。
(弾性層1)
特開平11−212354号公報に開示されている末端アリル化ポリオキシプロピレン系重合体100質量部、ポリシロキサン系硬化剤(SiH価0.36モル/100g)6.6質量部、塩化白金酸の10%イソプロピルアルコール溶液0.06質量部に、前述の導電剤1〜9、及び、疎水性の有機基を結合させる処理を行わなかったカーボンブラック粒子、アルミニウム粒子、酸化亜鉛粒子、酸化スズ粒子を7重量部、を混合し、減圧(1.33kPa以下、120分間)脱泡した。得られた組成物を前記シャフトの周りに被覆し、金型内120℃の環境下で30分間静置して硬化させ、厚さ7.5mmのゴム弾性体1〜9及び14〜18を作製した。JIS K 6301 A法に準拠して測定した弾性層1のみのJIS A 硬度は15°であった。
(弾性層2)
特開2002−357949号公報に開示のシリコーンゴムコンパウンド110質量部内に前述の導電剤1〜4と疎水性の有機基を結合させる処理を行わなかったカーボンブラック粒子をそれぞれ7質量部添加してシリコーンコンパウンドを調製した。これらのシリコーンコンパウンド10〜13及び19、20を注型した後、金型に蓋をし、これを加熱(180℃×5分)して、シリコーンゴムコンパウンドを加硫し、その後脱型して、厚さ7.5mmのシリコーンゴム弾性体10〜13及び19、20を作製した。
(2)中間層形成用溶液の調製
つぎに、ポリウレタン系エラストマー(UN278、坂井化学社製)100質量部と、前述の導電剤1〜9と、疎水性の有機基を結合させる処理を行わなかったカーボンブラック粒子、アルミニウム粒子、酸化亜鉛粒子、酸化スズ粒子をそれぞれ20質量部、架橋剤10質量部と、MEK400質量部とを混合して得られるポリマー溶液に、平均粒径20μmのウレタン樹脂からなる粒子(バーノックCFB100、大日本インキ化学工業社製)20部を分散して混合、攪拌して、中間層形成用溶液1〜14を調製した。
(3)表面層形成用溶液の調製
ポリヘキサメチレンカーボネートジオール(数平均分子量2,000)150質量部、ポリジメチルシロキサンポリオール(数平均分子量2,000)50質量部、及びシクロヘキサンジイソシアネート32質量部を、三口フラスコに仕込み、攪拌しながら100℃、4時間の反応を行い、分子末端にNCO基を有するプレポリマーを作製した。このプレポリマーを50℃に冷却後、DMF(ジメチルホルムアミド)580gを仕込み、IPDA(イソホロンジアミン)16gを少しずつ滴下して、鎖伸長反応を40℃、3時間の条件下で行った。その後、得られた固形分をDMF:MEK=1:1の溶液で約6%に希釈して、表面層形成用溶液を調製した。
(4)現像ローラの作製
上記ゴム弾性体1〜9及び14〜18の外周面に上記中間層形成用溶液1〜14を、シリコーンゴム弾性体10〜13及び19、20の外周面に上記中間層形成用溶液1〜4と上記中間層形成用溶液10、11をロールコート法により塗工した後、乾燥および加熱処理を行ない、弾性層の外周面に厚さ10μmの中間層を形成した。
【0173】
さらに、上記中間層の外周面に、上記表面層形成用溶液をロールコート法により塗工した後、乾燥および加熱処理を行ない、中間層の外周面に厚さ15μmの表面層を形成した。得られた現像ローラを現像ローラ1〜20とする。
(5)評価実験
作製した現像ローラ1〜20を図5に示す画像形成装置に搭載して、それぞれ連続1万枚のプリントを行い、プリント実施後の画質を評価した。ここで、現像ローラ1〜13を用いたものを実施例11〜実施例23、現像ローラ14〜20を用いたものを比較例11〜比較例17とした。
【0174】
下記に記載の方法により、現像ローラのトナー搬送性能やトナー供給性能に起因する画質変動の評価と、トナー飛散の発生状況を評価した。評価は、1万枚の連続プリントを行って評価を行った。画像形成時の条件は以下のとおりである。なお、画像形成条件は以下のとおりである。
【0175】
・感光体 :積層型有機感光体
・DCバイアス :−500V
・Dsd(感光体と現像スリーブ間距離):600μm
・規制ブレード :ステンレス製を使用
・現像剤層厚 :700μm
・現像スリーブ径 :40mm
・温度 :20℃、60%RH環境
〈画像のかぶり〉
画像のかぶりは、未使用の用紙の反射濃度を0としたときの、文字/ラインパターン白地部の相対反射濃度を測定し、以下のように評価した。すなわち、
○;相対反射濃度が0.004以下である場合
△;相対反射濃度が0.004を超え、0.006以下である場合
×;相対反射濃度が0.006を超える場合。
【0176】
〈文字散り〉
文字散りは、4ポイントの「鐘」という文字を拡大して観察したときの文字輪郭のシャープさ及び文字の滲み度合いの状態を評価した。すなわち、
○;「鐘」の文字の空間部がすっきりと抜けていて文字の輪郭が明瞭であり、また、文字周辺部のトナー散りも極めて少ない場合
△;「鐘」の文字の空間部がやや潰れている(トナー散りでやや埋まっている)が、文字周辺部のトナー散りが少ない場合
×;「鐘」の文字の空間部が潰れており(トナー散りで埋まっている)、しかも、文字周辺部のトナー散りが多く、文字の輪郭が滲んでいる場合。
【0177】
〈画像濃度ムラ〉
画像濃度ムラは、シアン単色のソリッドパターンまたは青単色のソリッドパターンのページ内における任意の9カ所における色差(L*a*b*空間での距離)で評価した。すなわち、
○;シアン単色のソリッドパターンについての9カ所の色差が3以下であり、かつ、青単色のソリッドパターンについての9カ所の色差が7以下である場合
△;シアン単色のソリッドパターンについての9カ所の色差が3を超え、5以下であり、かつ、青単色のソリッドパターンについての9カ所の色差が7以下である場合、または、シアン単色のソリッドパターンについての9カ所の色差が3以下であり、かつ、青単色のソリッドパターンについての9カ所の色差が7を超え、9以下である場合
×;シアン単色のソリッドパターンについての9カ所の色差が3を超え、かつ、青単色のソリッドパターンについての9カ所の色差が9を超える場合。
【0178】
〈機内汚れ〉
機内汚れは、画像出力終了後に現像装置を取り外し、現像装置装着部近傍の汚れの状態を目視観察して評価した。すなわち、
○;機内汚れが認められない場合、または、現像装置装着部のみに極軽微な汚れがみられる場合
△;現像装置装着部近傍(例えば、両端部等)に僅かな汚れが認められる場合
×;現像装置装着部の汚れが周辺部(例えば、帯電器等)にまで拡大している場合
結果を表2に示す。
【0179】
【表2】

【0180】
表2の結果から明らかなように、疎水性の有機基を有する導電剤を含有させた本発明に該当する現像ローラでは、連続で1万枚のプリント作成を行った後に、現像ローラのトナー搬送性やトナー供給性能の低下に起因するトナー飛散や画像欠陥の発生が見られなかった。一方、比較例である疎水性の有機基を結合させなかった導電剤を含有させた現像ローラを用いた場合は、トナー飛散や画像欠陥が顕著に表れ、本発明に係る現像ローラとは明らかに異なる結果となった。
【図面の簡単な説明】
【0181】
【図1】中間転写ベルトの構造を示す模式図である。
【図2】中間転写ベルトを用いた画像形成装置の一例を示す模式図である。
【図3】現像ローラの構造例を示す模式図である。
【図4】現像ローラを有する現像装置の一例を示す模式図である。
【図5】現像ローラを使用する画像形成装置の模式図である。
【符号の説明】
【0182】
1 現像ローラ
11 軸体
12 弾性層
13 中間層
14 表面層
2 中間転写ベルト
21 表面層
22 中間層
23 基材層
A、B 画像形成装置
S 記録材、記録紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性の有機基を有する導電剤を含有する樹脂層を有することを特徴とするベルト。
【請求項2】
前記樹脂層の抵抗率が、104Ωcm乃至1010Ωcmであることを特徴とする請求項1に記載のベルト。
【請求項3】
前記樹脂層は、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、シリコン樹脂、フッ素樹脂のうち、少なくとも1つを含有するものであることを特徴とする請求項1または2に記載のベルト。
【請求項4】
前記ベルトは、電子写真方式の画像形成に用いられる転写ベルトであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のベルト。
【請求項5】
前記転写ベルトは、基材層、中間層、及び、表面層を有し、
前記導電剤が基材層と中間層の少なくとも一方に含有されていることを特徴とする請求項4に記載のベルト。
【請求項6】
前記表面層の表面抵抗率が、1.0×1011Ω/□乃至1.0×1013Ω/□であることを特徴とする請求項5に記載のベルト。
【請求項7】
前記導電剤が、カーボンブラックであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のベルト。
【請求項8】
前記疎水性の有機基は、イオウ原子を介して、前記導電剤と結合しているものであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のベルト。
【請求項9】
疎水性の有機基を有する導電剤を含有する樹脂層を有することを特徴とするローラ。
【請求項10】
前記樹脂層の抵抗率が、104Ωcm乃至1010Ωcmであることを特徴とする請求項9に記載のローラ。
【請求項11】
前記樹脂層は、ポリウレタン系エラストマー、シリコーンゴム、オキシアルキレン系組成物を含有する樹脂の少なくとも1つを含有するものであることを特徴とする請求項9または10に記載のローラ。
【請求項12】
前記ベルトは、電子写真方式の画像形成に用いられる現像ローラであって、
該現像ローラは、
弾性層、中間層、及び、表面層を有するものであって、
弾性層及び中間層の少なくとも1つの層に前記疎水性の有機基を有する導電剤を含有する樹脂層を有することを特徴とする請求項9乃至11のいずれか1項に記載のローラ。
【請求項13】
前記導電剤が、カーボンブラックであることを特徴とする請求項9乃至12のいずれか1項に記載のローラ。
【請求項14】
前記疎水性の有機基は、イオウ原子を介して、前記導電剤と結合しているものであることを特徴とする請求項9乃至13のいずれか1項に記載のローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−285129(P2006−285129A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−108488(P2005−108488)
【出願日】平成17年4月5日(2005.4.5)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】