ベルト式減速装置およびそれを用いた駆動装置
【課題】小型化を図りつつ、高い静粛性を発揮することができるベルト式減速装置を提供する。
【解決手段】回転駆動力を入力する入力プーリ12と、入力プーリ12より大径に形成され、入力プーリ12に入力された回転駆動力を減速して出力する出力プーリ14と、無端状に形成され、入力プーリ12から出力プーリ14に亘って架けられた一本の無端状ベルト17を備える。そして、入力プーリ12と出力プーリ14は、回転軸方向にずれて配置される。さらに、回転軸方向から見て、入力プーリ12の外形円と出力プーリ14の外形円とは、少なくとも一部において重なるように配置される。
【解決手段】回転駆動力を入力する入力プーリ12と、入力プーリ12より大径に形成され、入力プーリ12に入力された回転駆動力を減速して出力する出力プーリ14と、無端状に形成され、入力プーリ12から出力プーリ14に亘って架けられた一本の無端状ベルト17を備える。そして、入力プーリ12と出力プーリ14は、回転軸方向にずれて配置される。さらに、回転軸方向から見て、入力プーリ12の外形円と出力プーリ14の外形円とは、少なくとも一部において重なるように配置される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト式減速装置およびそれを用いた駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、減速装置として、ベルト式減速装置や歯車式減速装置などが存在する。ベルト式減速装置としては、例えば、特開2005−308009号公報(特許文献1)や特公平6−30188号公報(特許文献2)などに記載されている。また、歯車式減速装置としては、特開平9−85673号公報(特許文献3)に複数の平歯車を用いた減速装置が記載されており、特許第4399116号公報(特許文献4)に遊星歯車機構を用いた減速装置が記載されており、特開2010−14215号公報(特許文献5)にハーモニックドライブ(登録商標、以下同様)機構と称される波動歯車機構を用いた減速装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−308009号公報
【特許文献2】特公平6−30188号公報
【特許文献3】特開平9−85673号公報
【特許文献4】特許第4399116号公報
【特許文献5】特開2010−14215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ベルト式減速装置は、入力プーリと出力プーリを離間して配置するため、径方向の大きさが大きくなってしまう。また、平歯車を用いた減速装置についても、従来のベルト式減速装置に比べると径方向の小型化ができるが、それでもやはり径方向の大きさが大きくなってしまう。遊星歯車機構を用いた減速装置は、入力軸と出力軸とを同心状に配置できるため、径方向の大きさは従来のベルト式減速装置や平歯車を用いた減速装置に比べると径方向の小型化を図ることができる。しかし、遊星歯車機構を用いた減速装置は、歯車の噛み合い音が発生する。仮に、歯車の噛み合い部に潤滑油を供給することができるのであれば、ある程度は歯車の噛み合い音を抑制することはできる。しかし、潤滑油を適用することが困難な装置において、静粛性が要求される装置には、遊星歯車機構を用いた減速装置の適用が困難となる。
【0005】
波動歯車機構を用いた減速装置は、遊星歯車機構に比べて高い静粛性を備え、高減速比を得ることができることが知られている。しかし、入力される回転数が高回転であるほど、効率が下がるという問題がある。そこで、高効率化を図るために、波動歯車機構を用いた減速装置に入力する回転数を下げることが望まれる。
【0006】
そこで、従来は、高減速比を得るために、モータから回転駆動力を入力する第一段目の減速装置として、上述したベルト式歯車装置、平歯車を用いた減速装置、遊星歯車機構を用いた減速装置を適用して、その出力側に設ける第二段目の減速装置として、波動歯車機構を用いた減速装置を適用することが行われていた。しかし、第一段目の減速装置に適用する装置が、上述した問題を有しているため、全体の装置として、小型化を図りつつ、高い静粛性を確保することが困難であった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、小型化を図りつつ、高い静粛性を発揮することができるベルト式減速装置を提供することを目的とする。さらに、このベルト式減速装置を用いた駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(ベルト式減速装置)
本発明のベルト式減速装置は、回転駆動力を入力する入力プーリと、前記入力プーリより大径に形成され、前記入力プーリに入力された前記回転駆動力を減速して出力する出力プーリと、無端状に形成され、前記入力プーリから前記出力プーリに亘って架けられた一本の無端状ベルトと、を備え、前記入力プーリと前記出力プーリは、回転軸方向にずれて配置され、前記回転軸方向から見て、前記入力プーリの外形円と前記出力プーリの外形円とは、少なくとも一部において重なるように配置される。
【0009】
つまり、本発明によれば、入力プーリの外形円と出力プーリの外形円とが回転軸方向から見て少なくとも一部において重なるように配置されることで、入力プーリの回転軸中心と出力プーリの回転軸中心の離間距離を短くすることができる。つまり、入力プーリの回転軸中心を中心とし出力プーリの内接円の径を小さくできる。これにより、ベルト式減速装置の小径化を図ることができる。ベルト式減速装置の小型化により、ベルト式減速装置を収容するためのハウジングの小型化を図ることができ、結果として、ベルト式減速装置全体としての軽量化を図ることができる。また、歯車の噛み合いによる減速機構ではなく、ベルト式であるため、歯車の噛み合い音が発生することもない。従って、歯車式に比べて高い静粛性を発揮することができる。
【0010】
また、前記ベルト式減速装置は、前記入力プーリと前記出力プーリとの間において前記無端状ベルトを架け渡す複数のガイドプーリをさらに備え、第一の前記ガイドプーリには、前記入力プーリのうち前記無端状ベルトの一方の接端点と前記出力プーリのうち前記無端状ベルトの一方の接端点との間に位置する前記無端状ベルトが架けられ、第二の前記ガイドプーリには、前記入力プーリのうち前記無端状ベルトの他方の接端点と前記出力プーリのうち前記無端状ベルトの他方の接端点との間に位置する前記無端状ベルトが架けられ、前記入力プーリと前記出力プーリは、同心上に配置されるようにしてもよい。ここで、接端点とは、無端状ベルトが入力プーリまたは出力プーリに接触する範囲のうち端部に位置する点を意味する。入力プーリと出力プーリとを同心上に配置することができることにより、遊星歯車機構に置き換えることができるようになる。
【0011】
また、ガイドプーリを用いることで、入力プーリとガイドプーリとに架け渡される無端状ベルトをS字形状となるようにすることができる。この結果、入力プーリに架けられる無端状ベルトの範囲を大きくすることができる。例えば、入力プーリに架けられる無端状ベルトの範囲を180°以上にすることができる。これにより、入力プーリの回転駆動力を無端状ベルトに確実に伝達できる。さらに、ガイドプーリを用いることで、出力プーリに架けられる無端状ベルトの範囲を180°以上にすることもできる。これにより、無端状ベルトの回転駆動力を出力プーリに確実に伝達できるようになる。
【0012】
また、前記無端状ベルトの横断面形状は、円形に形成されるようにしてもよい。本発明によれば、入力プーリと出力プーリとが軸方向にずれて配置されている。従って、無端状ベルトが入力プーリと出力プーリとの間で捩れが発生するおそれがある。また、ガイドプーリを適用する場合には、無端状ベルトのうち入力プーリの周溝に接触する部位と出力プーリの周溝に接触する部位とが反転する構成となる。これらの場合においても、無端状ベルトの横断面形状を円形にすることで、入力プーリの周溝および出力プーリの周溝の何れにおいても確実に無端状ベルトが接触した状態を維持できる。つまり、回転駆動力の伝達を確実に行うことができる。
【0013】
また、前記出力プーリは、中空形状に形成され、前記ベルト式減速装置は、軸方向一端側が前記回転駆動力の発生源側に連結し、軸方向他端側が前記入力プーリに連結し、前記軸方向一端と前記軸方向他端との中間部が前記出力プーリの中空領域を貫通して設けられる入力軸部材を備えるようにしてもよい。これにより、ベルト式減速装置に対して回転駆動力を入力する側と、ベルト式減速装置から減速した回転駆動力を出力する側が、何れも出力プーリが配置される側とすることができる。つまり、軸方向において、ベルト式減速装置に対して回転駆動力が入力される側に、戻し出力が可能となる。
【0014】
ここで、軸方向において、入力される側に戻し出力を行う場合には、入力プーリが位置する側から回転駆動力を入力し、入力プーリ側から出力することも考えられる。しかし、このようにするためには、出力プーリの外周面から径方向外側にフランジを延ばして、当該フランジが出力プーリにおける無端状ベルトの架けられている位置よりも径方向外側に位置するようにして、出力プーリのフランジから入力プーリ側に向かって出力する必要がある。つまり、これでは、出力プーリに径方向外側に延びるフランジを設けることにより、出力プーリ自体が大型化することになる。これに対して、本発明のように、入力軸部材が出力プーリの中空領域を貫通して設けることで、出力プーリを大型化することなく、軸方向において、入力される側に戻し出力が可能となる。
【0015】
また、前記無端状ベルトの横断面の外周側が、前記無端状ベルトの横断面の内側よりも柔らかい材質で形成されるようにしてもよい。すなわち、無端状ベルトの横断面の外周側の硬さが、無端状ベルトの横断面の内側(中心軸側)の硬さが高くなるように形成される。無端状ベルトの横断面の内側の硬さが高いことにより、無端状ベルトに十分な張力を与えることができる。さらに、無端状ベルトの横断面の外周側の硬さが低いことにより、無端状ベルトが入力プーリの周溝および出力プーリの周溝に対して確実に接触した状態を維持できる。特に、上述したように、本発明においては、入力プーリと出力プーリとが軸方向にずれて配置されている。このような場合であっても、本発明により、無端状ベルトが入力プーリの周溝および出力プーリの周溝に対して確実に接触した状態を維持できる。
【0016】
また、無端状ベルトの横断面の外周側が無端状ベルトの横断面の内側よりも柔らかい材質で形成する場合には、前記入力プーリおよび前記出力プーリの少なくとも一方において、前記無端状ベルトが架けられる周溝は、周方向に凹凸状に形成されるようにしてもよい。これにより、凹凸状の周溝と無端状ベルトとの接触面積を増加させることができる。従って、凹凸状の周溝を形成するプーリと無端状ベルトとの間における回転駆動力の伝達を確実に行うことができる。
【0017】
また、本発明のベルト式減速装置は、ロボットの関節部に設けられ、前記関節部の基部に対する可動部の回転駆動に用いるようにしてもよい。ロボットの関節部において用いる場合には、遊星歯車機構の減速装置には必要であった潤滑油の供給が容易ではない。特に、産業用ロボットではなく、人間共存型ロボットや食品製造ロボットなどにおいては、潤滑油の利用に制限されることが多い。このようなロボットの関節部に本発明のベルト式減速装置を適用することで、潤滑油を用いないとしても高い静粛性を発揮できるため、効果的である。
【0018】
(ベルト式減速装置を用いた駆動装置)
上述したベルト式減速装置を用いた駆動装置として、次のようにするとよい。すなわち、駆動装置は、上述したベルト式減速装置と、径方向の大きさに対して軸方向幅の小さな扁平形状に形成され、前記入力プーリに対して前記出力プーリとは軸方向の反対側に隣接して配置され、前記入力プーリに前記回転駆動力を伝達する扁平モータと、前記出力プーリに対して前記入力プーリとは軸方向の反対側に隣接して配置され、前記出力プーリから減速された前記回転駆動力を入力すると共に、入力された当該回転駆動力をさらに減速して出力する歯車式減速装置と、を備える。
【0019】
つまり、上述した本発明のベルト式減速装置が、扁平モータと歯車式減速装置とによるサンドイッチ構造をなしている。これにより、駆動装置全体として、径方向の大きさおよび軸方向長さの小型化を図ることができ、高い静粛性を発揮できる。また、歯車式減速装置に波動歯車式減速装置を適用することで、波動歯車式減速装置の入力を、ベルト式減速装置によって減速した回転駆動力とすることができる。つまり、波動歯車式減速装置に対して入力する回転数を下げることができる。ここで、波動歯車式減速装置は、入力される回転数が低いほど高効率であることが知られている。従って、本発明のように、ベルト式減速装置によって減速された回転駆動力を、波動歯車式減速装置に入力することで、波動歯車式減速装置を高効率にて適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】ベルト式減速装置の第一実施形態の軸方向から見た図である。
【図2】図1の右側から見た側面図である。
【図3】図1のA−A断面図(縦断面図)である。
【図4】図1のB−B断面図(縦断面図)である。
【図5】ベルト式減速装置の第二実施形態の軸方向から見た図である。
【図6】図5のC−C断面図(縦断面図)である。
【図7】図5のD−D断面図(縦断面図)である。
【図8】図6のE−E断面図(横断面図)である。
【図9】ベルト式減速装置の第三実施形態の軸方向から見た図である。
【図10】図9のF−F断面図である。
【図11】駆動装置の第一実施形態の基部に対する可動部の回転軸方向から見た図である。
【図12】ロボットの関節部の内部を示し、ロボットの関節部における駆動装置の軸直交方向から見た図である。
【図13】駆動装置の第二実施形態の軸直角方向から見た図である。一点鎖線は、回転軸中心を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のベルト式減速装置およびそれを用いた駆動装置を具体化した実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0022】
<ベルト式減速装置の第一実施形態>
第一実施形態のベルト式減速装置について、図1〜図4を参照して説明する。第一実施形態のベルト式減速装置は、入力プーリ12と出力プーリ14が同心上に配置されており、入力プーリ12の外周面および出力プーリ14の外周面における縦断面(軸直交方向断面)が、円形状に形成されており、二個のガイドプーリ15,16を備える構成である。このベルト式減速装置は、支持体11と、入力プーリ12と、入力軸部材13と、出力プーリ14と、第一ガイドプーリ15と、第二ガイドプーリ16と、一本の無端状ベルト17とを備えて構成される。なお、入力プーリ12および出力プーリ14の支持体11に対する回転軸方向は、図2の正面視における左右方向に相当し、以下の説明において、単に軸方向と称する。また、以下の説明において、図2〜図4の正面視における右側を軸方向一方側と称し、左側を軸方向他方側と称する。
【0023】
支持体11は、支持本体部11aと、二個の偏心軸11b,11cとを備えて構成される。支持本体部11aは、図1,図3〜図4に示すように、中心に円形孔を有する円盤状に形成される。二個の偏心軸11b,11cは、図1および図4に示すように、支持本体部11aの軸方向他方側の端面(図4の正面視左側端面)のうち軸中心に対して偏心した位置から軸方向に突出して一体的に形成される。なお、支持体11の支持本体部11aは、図示しないハウジングに対して固定されている。つまり、支持体11は、ハウジングに対して回転しない構成となる。
【0024】
入力プーリ12は、後述する入力軸部材13を介して、例えばモータなどの回転駆動力の発生源に連結され、当該発生源の回転駆動力を入力する。この入力プーリ12は、図1に示すように円盤状に形成され、図3〜図4に示すように外周面全周に亘って周溝12aが形成されている。入力プーリ12の周溝12aの横断面(軸方向断面)は円弧状に形成され、入力プーリ12の周溝12aの縦断面(軸直交方向断面)は円形状となるように形成されている。
【0025】
入力軸部材13は、円柱状または円筒状の軸であり、入力プーリ12の軸中心に一体的に連結される。ここで、本実施形態においては、この入力軸部材13は、入力プーリ12の軸方向一方側(図4の正面視右側)の端面および軸方向他方側(図4の正面視左側)の端面のそれぞれから軸方向両側に突出するように設けられる。入力軸部材13は、図示しない回転駆動力の発生源、例えばモータの出力軸に連結され、回転駆動力の発生源による回転駆動力を入力プーリ12に伝達する。なお、入力軸部材13は、回転駆動力の発生源の配置に応じて、入力プーリ12の軸方向一方側の端面のみから軸方向一方側に突出するように設けることもでき、また、入力プーリ12の軸方向他方側の端面のみから軸方向他方側に突出するように設けることもできる。
【0026】
さらに、入力軸部材13のうち入力プーリ12の軸方向一方側(図4の正面視右側)の端面から突出される部位は、支持体11の支持本体部11aの円形孔を軸方向に貫通して設けられ、軸受21(図3〜図4に示す)を介して支持体11の支持本体部11aの円形孔に回転可能に支持される。そして、入力プーリ12および入力軸部材13の支持体11に対する回転中心が、支持体11の支持本体部11aの軸中心と同心上となるように設けられる。ここで、支持部材11の端面と入力プーリ12の端面との軸方向間は、両者が接触しない程度の微小隙間を形成するとよい。または、両者の間に軸方向に支持する軸受(スラスト軸受)を介在するように配置してもよい。
【0027】
出力プーリ14は、後述する無端状ベルト17が架けられることにより、入力プーリ12の回転駆動力を減速して、減速された回転駆動力を出力する。出力プーリ14は、円環状(中空形状)に形成され、入力プーリ12の外径よりも大径に形成される。出力プーリ14は、支持体11の支持本体部11aの外周面に、軸受22(図3〜図4に示す)を介して回転可能に支持される。そして、本実施形態においては、入力プーリ12の回転軸中心と出力プーリ14の回転軸中心が、同心上となるように配置される。さらに、出力プーリ14は、入力プーリ12に対して、入力プーリ12の軸方向一方側(図3〜図4の正面視右側)にずれて配置される。
【0028】
この出力プーリ14は、図3〜図4に示すように、外周面全周に亘って周溝14aが形成されている。この出力プーリ14の周溝14aの横断面(軸方向断面)は円弧状に形成され、出力プーリ14の周溝14aの縦断面(軸直交方向断面)は円形状となるように形成されている。ここで、出力プーリ14の周溝14aの横断面の円弧半径は、入力プーリ12の周溝12aの横断面の円弧半径と同一に形成される。
【0029】
さらに、出力プーリ14の外周面のうち軸方向一方側(図3〜図4の正面視右側)には、フランジ14bが形成されている。このフランジ14bの軸方向他方側(図3〜図4の正面視左側)の端面には、周溝14aの横断面の円弧形状に連続しかつ同径の円弧形状となる側面溝が形成されている。従って、出力プーリ14の外周面において、周溝14aの軸方向一方側(図3〜図4の正面視右側)の外径が大きく、周溝14aの軸方向他方側(図3〜図4の正面視左側)の外径が小さく形成されている。さらに、図1に示すように、軸方向から見た場合において、出力プーリ14と入力プーリ12との相対位置は、次のようになる。軸方向から見た場合に、出力プーリ14の外形円と入力プーリ12の外形円とが少なくとも一部が重なるように配置される。本実施形態においては、入力プーリ12の外形円の全てが、出力プーリ14の外形円に重なるように配置される。
【0030】
第一,第二ガイドプーリ15,16は、図1に示すように、中心孔を有する円盤状に形成され、出力プーリ14の外径よりも小径に形成される。図3〜図4に示すように、第一ガイドプーリ15は、支持体11の第一偏心軸11bの外周面に軸受23を介して回転可能に支持され、第二ガイドプーリ16は、支持体11の第二偏心軸11cの外周面に軸受24を介して回転可能に支持される。つまり、図1に示すように、軸方向から見た場合に、第一,第二ガイドプーリ15,16は、その回転軸中心が出力プーリ14の外形円の内部に位置する。さらに、軸方向から見た場合に、第一,第二ガイドプーリ15,16の外形円の一部は、出力プーリ14の外形円よりも径方向外側に突出している。そして、第一,第二ガイドプーリ15,16は、入力プーリ12と軸方向において同位置に配置されている。つまり、第一,第二ガイドプーリ15,16の端面と出力プーリ14の端面との軸方向間は、両者が接触しない程度の微小隙間を形成するとよい。また、両者の間に軸方向に支持する軸受(スラスト軸受)を介在するように配置してもよい。
【0031】
さらに、第一,第二ガイドプーリ15,16は、外周面全周に亘って周溝15a,16aが形成されている。第一,第二ガイドプーリ15,16の周溝15a,16aの横断面(軸方向断面)は円弧状に形成され、第一,第二ガイドプーリ15,16の周溝15a,16aの縦断面(軸直交方向断面)は円形状となるように形成されている。ここで、第一,第二ガイドプーリ15,16の周溝15a,16aの横断面の円弧半径は、入力プーリ12の周溝12aの横断面の円弧半径と同一に形成される。
【0032】
無端状ベルト17は、図1に示すように、入力プーリ12、第一ガイドプーリ15、出力プーリ14、第二ガイドプーリ16、入力プーリ12の順に、それぞれの周溝12a,15a,14a,16a,12aに架けられる。つまり、第一,第二ガイドプーリ15,16は、入力プーリ12と出力プーリ14との間において無端状ベルト17を架け渡す役割を有している。特に、第一ガイドプーリ15には、入力プーリ12のうち無端状ベルト17の一方の接端点12bと出力プーリ14のうち無端状ベルト17の一方の接端点14cとの間に位置する無端状ベルト17が架けられる。第二ガイドプーリ16には、入力プーリ12のうち無端状ベルト17の他方の接端点12cと出力プーリ14のうち無端状ベルト17の他方の接端点14dとの間に位置する無端状ベルト17が架けられる。従って、無端状ベルト17は、入力プーリ12と第一,第二ガイドプーリ15,16との間では、軸方向において同位置にて架け渡される。また、無端状ベルト17は、第一,第二ガイドプーリ15,16と出力プーリ14との間では、軸方向においてずれて架け渡される。
【0033】
この無端状ベルト17は、入力プーリ12と出力プーリ14との間に第一,第二ガイドプーリ15,16を介して架け渡されることで、入力プーリ12と第一,第二ガイドプーリ15,16とに架け渡される無端状ベルト17をS字形状となるようにしている。このことにより、入力プーリ12の周溝12aに架けられる無端状ベルト17の範囲を180°以上にしている。さらに、第一,第二ガイドプーリ15,16を介在することで、出力プーリ14の周溝14aに架けられる無端状ベルト17の範囲を180°以上となるようにしている。
【0034】
また、無端状ベルト17の横断面形状は、図3〜図4に示すように、円形に形成される。より詳細には、無端状ベルト17の横断面の内側(中心軸側)は相対的に引張強度の高い繊維材により形成され、無端状ベルト17の横断面の外周側は上記繊維材よりも引張強度の低いゴム材により形成される。さらに、無端状ベルト17の横断面の外周側を形成するゴム材は、横断面の内側を形成する繊維材よりも硬さの低い材質からなる。つまり、無端状ベルト17の横断面の外周側は、内側に比べて柔らかい材質からなる。
【0035】
本実施形態のベルト式減速装置によれば、入力プーリ12の外形円と出力プーリ14の外形円とが軸方向から見て少なくとも一部において重なるように配置されることで、入力プーリ12の軸中心と出力プーリ14の軸中心の離間距離を短くすることができる。特に、本実施形態においては、入力プーリ12と出力プーリ14とを同心上としている。ここで、入力プーリ12と出力プーリ14を同心上に配置する構成は、第一,第二ガイドプーリ15,16を用いたことによるものである。つまり、入力プーリ12の軸中心を中心とし出力プーリ14の内接円の径を小さくできる。これにより、ベルト式減速装置の小径化を図ることができる。ベルト式減速装置の小型化により、ベルト式減速装置を収容するためのハウジング(図示せず)の小型化を図ることができ、結果として、ベルト式減速装置全体としての軽量化を図ることができる。また、歯車式減速装置のような歯車の噛み合いによる減速機構ではなく、ベルト式であるため、歯車の噛み合い音が発生することもない。従って、高い静粛性を発揮することができる。
【0036】
また、入力プーリ12と第一,第二ガイドプーリ15,16とに架け渡される無端状ベルト17をS字形状とすることにより、入力プーリ12に架けられる無端状ベルト17の範囲を大きくすることができる。特に、入力プーリ12に架けられる無端状ベルト17の範囲を180°以上にすることができる。これにより、入力プーリ12の回転駆動力を無端状ベルト17に確実に伝達できる。さらに、第一,第二ガイドプーリ15,16を用いることで、出力プーリ14に架けられる無端状ベルト17の範囲を180°以上にすることもできる。これにより、無端状ベルト17の回転駆動力を出力プーリ14に確実に伝達できるようになる。
【0037】
また、上述したように、入力プーリ12および第一,第二ガイドプーリ15,16と、出力プーリ14とが軸方向にずれて配置されている。従って、出力プーリ14と第一,第二ガイドプーリ15,16との間で無端状ベルト17に捩れが発生するおそれがある。さらに、無端状ベルト17のうち入力プーリ12の周溝12aに接触する部位と出力プーリ14の周溝14aに接触する部位とが反転する構成となる。しかし、無端状ベルト17の横断面形状を円形にすることで、入力プーリ12の周溝12aおよび出力プーリ14の周溝14aの何れにおいても確実に無端状ベルト17が接触した状態を維持できる。つまり、回転駆動力の伝達を確実に行うことができる。
【0038】
また、出力プーリ14を円環状、すなわち中空形状に形成することで、入力軸部材13を軸方向において入力プーリ12に対して出力プーリ14側から出力することもできる。つまり、ベルト式減速装置に対して回転駆動力を入力する側と、ベルト式減速装置から減速した回転駆動力を出力する側の何れもが、軸方向において出力プーリ14が配置される側とすることができる。つまり、出力プーリ14を大型化することなく、ベルト式減速装置に対して回転駆動力が入力される側に、戻し出力が可能となる。
【0039】
また、無端状ベルト17の横断面の外周側を、無端状ベルト17の横断面の内側よりも柔らかい材質で形成している。すなわち、無端状ベルト17の横断面の外周側の硬さが、無端状ベルト17の横断面の内側(中心軸側)の硬さが高くなるように形成される。無端状ベルト17の横断面の内側の硬さが高いことにより、無端状ベルト17に十分な張力を与えることができる。つまり、入力プーリ12と出力プーリ14との間において回転駆動力の伝達を確実に行うことができる。さらに、無端状ベルト17の横断面の外周側の硬さが低いことにより、無端状ベルト17が入力プーリ12の周溝12aおよび出力プーリ14の周溝14aに対して確実に接触した状態を維持できる。特に、出力プーリと第一,第二ガイドプーリ15,16とが軸方向にずれて配置されている場合であっても、無端状ベルト17が入力プーリ12の周溝12aおよび出力プーリ14の周溝14aに対して確実に接触した状態を維持できる。
【0040】
<ベルト式減速装置の第二実施形態>
第二実施形態のベルト式減速装置について、図5〜図8を参照して説明する。第二実施形態のベルト式減速装置は、入力プーリ32と出力プーリ34が同心上に配置されており、入力プーリ32の外周面および出力プーリ34の外周面における縦断面(軸直交方向断面)が、凹凸波形状に形成されており、四個のガイドプーリ35〜38を備える構成である。なお、第二実施形態のベルト式減速装置において、第一実施形態のベルト式減速装置と同一構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0041】
支持体31は、支持本体部31aと、四個の偏心軸31b,31c,31d,31eとを備えて構成される。支持本体部31aは、図5〜図7に示すように、中心に円形孔を有する円盤状に形成される。支持本体部31aは、図示しないハウジングに対して固定されている。つまり、支持体31は、ハウジングに対して回転しない構成となる。
【0042】
四個の偏心軸31b,31c,31d,31eは、図5および図7に示すように、支持本体部31aの軸方向他方側の端面(図7の正面視左側端面)のうち軸中心に対して偏心した位置から軸方向に突出して一体的に形成される。小径第一,小径第二偏心軸31b,31cは、支持本体部31aの軸中心からの偏心量が同一である。大径第一,大径第二偏心軸31d,31eは、支持本体部31aの軸中心からの偏心量が同一であって、小径第一,小径第二偏心軸31b,31cの偏心量よりも大きな偏心量である。また、小径第一偏心軸31bの軸中心、支持本体部31aの軸中心および小径第二偏心軸31cの軸中心によるなす鋭角は、大径第一偏心軸31dの軸中心、支持本体部31aの軸中心および大径第二偏心軸31eの軸中心によるなす鋭角よりも小さな角度となるように設定されている。さらに、小径第一偏心軸31bの軸中心、支持本体部31aの軸中心および小径第二偏心軸31cの軸中心によるなす角度の二等分線と、大径第一偏心軸31dの軸中心、支持本体部31aの軸中心および大径第二偏心軸31eの軸中心によるなす角度の二等分線が一致するように設定されている。
【0043】
入力プーリ32は、入力軸部材13を介して、例えばモータなどの回転駆動力の発生源に連結され、当該発生源の回転駆動力を入力する。この入力プーリ32は、図6〜図7に示すように、円盤状に形成され、外周面全周に亘って周溝32aが形成されている。図6〜図7に示すように、入力プーリ32の周溝32aの横断面(軸方向断面)は円弧状に形成され、図示しないが(図8の出力プーリ34を参照)、入力プーリ32の周溝32aの縦断面(軸直交方向断面)は周方向に凹凸波形状(出力プーリ34の周溝34aの相似形状)となるように形成されている。
【0044】
出力プーリ34は、外周面全周に亘って周溝34aが形成されている。図6〜図7に示すように、出力プーリ34の周溝34aの横断面(軸方向断面)は円弧状に形成され、図8に示すように、出力プーリ34の周溝34aの縦断面(軸直交方向断面)は周方向に凹凸波形状となるように形成されている。出力プーリ34において、周溝34aの形状の他は、第一実施形態の出力プーリ14と同一構成からなる。
【0045】
小径第一,小径第二,大径第一,大径第二ガイドプーリ35,36,37,38は、図5に示すように、中心孔を有する円盤状に形成され、出力プーリ34の外径よりも小径に形成される。図7に示すように、小径第一,大径第一ガイドプーリ35,37は、支持体31の小径第一,大径第一偏心軸31b,31dの外周面に軸受43,44を介して回転可能に支持され、小径第二,大径第二ガイドプーリ36,38は、支持体31の小径第二,大径第二偏心軸31c,31eの外周面に軸受45,46を介して回転可能に支持される。つまり、図5に示すように、軸方向から見た場合に、小径第一,小径第二,大径第一,大径第二ガイドプーリ35,36,37,38は、その回転軸中心が出力プーリ34の外形円の内部に位置する。さらに、軸方向から見た場合に、大径第一,大径第二ガイドプーリ37,38の外形円の一部は、出力プーリ34の外形円よりも径方向外側に突出している。そして、小径第一,小径第二,大径第一,大径第二ガイドプーリ35,36,37,38は、入力プーリ32と軸方向において同位置に配置されている。さらに、小径第一,小径第二,大径第一,大径第二ガイドプーリ35,36,37,38は、外周面全周に亘って周溝35a,36a,37a,38aが形成されている。周溝35a,36a,37a,38aの横断面(軸方向断面)は円弧状に形成され、周溝35a,36a,37a,38aの縦断面(軸直交方向断面)は周方向に凹凸波形状となるように形成されている。ここで、周方向に凹凸波形状(出力プーリ34の周溝34aの相似形状)となるように形成されている。ここで、周溝35a,36a,37a,38aの横断面の円弧半径は、入力プーリ32の周溝32aの横断面の円弧半径と同一に形成される。
【0046】
無端状ベルト39は、図5に示すように、第一実施形態の無端状ベルト17と同一形状に形成されている。この無端状ベルト39は、入力プーリ32、小径第一ガイドプーリ35、大径第一ガイドプーリ37,出力プーリ34、大径第二ガイドプーリ38、小径第二ガイドプーリ36、入力プーリ32の順に、それぞれの周溝32a,35a,37a,34a,38a,36a,32aに架けられる。つまり、小径第一,大径第一ガイドプーリ35,37には、入力プーリ32のうち無端状ベルト39の一方の接端点32bと出力プーリ34のうち無端状ベルト39の一方の接端点34cとの間に位置する無端状ベルト39が架けられる。小径第二,大径第二ガイドプーリ36,38には、入力プーリ32のうち無端状ベルト39の他方の接端点32cと出力プーリ34のうち無端状ベルト39の他方の接端点34dとの間に位置する無端状ベルト39が架けられる。従って、無端状ベルト39は、入力プーリ32と小径第一,小径第二,大径第一,大径第二ガイドプーリ35,36,37,38との間では、軸方向において同位置にて架け渡される。また、無端状ベルト39は、大径第一,大径第二ガイドプーリ37,38と出力プーリ34との間では、軸方向においてずれて架け渡される。
【0047】
本実施形態のベルト式減速装置によれば、四個のガイドプーリ35〜38を設けることで、小径第一ガイドプーリ35の軸中心、入力プーリ32の軸中心、小径第二ガイドプーリ36の軸中心によるなす鋭角を小さくすることができる。その結果、入力プーリ32の外径を小さくしたとしても、入力プーリ32に架けられる無端状ベルト39の範囲を大きくすることができる。これにより、高減速比を得るとともに、入力プーリ32の回転駆動力を無端状ベルト39に確実に伝達できる。
【0048】
さらに、入力プーリ32の周溝32aおよび出力プーリ34の周溝34aの縦断面(軸直交方向断面)を周方向に凹凸波形状となるように形成した。これにより、凹凸波形状の周溝32a,34aと無端状ベルト39との接触面積を増加させることができる。従って、入力プーリ32および出力プーリ34と無端状ベルト39との間における回転駆動力の伝達を確実に行うことができる。
【0049】
<ベルト式減速装置の第一,第二実施形態の変形態様>
第二実施形態において、各周溝32a,34a,35a,36a,37a,38aの縦断面を凹凸波形状としたが、波形状ではなく、矩形凹凸形状としてもよい。なお、凹凸波形状とすることで、無端状ベルト39に対して角当たりを防止することによる長寿命化を図ることができる。また、第二実施形態において、入力プーリ32の周溝32aと出力プーリ34の周溝34aの縦断面を凹凸波形状としたが、これらの何れか一方のみを凹凸波形状としてもよい。一方のみの場合には、小径の入力プーリ32の周溝32aを凹凸波形状とすると効果的である。また、ガイドプーリ35〜38の周溝35a,36a,37a,38aの縦断面を凹凸波形状としたが、第一実施形態のように円形状としてもよい。また、第一実施形態において、入力プーリ12、出力プーリ14、第一,第二ガイドプーリ15,16の各周溝の縦断面を凹凸状、特に凹凸波形状とすることもできる。
【0050】
<ベルト式減速装置の第三実施形態>
第三実施形態のベルト式減速装置について、図9および図10を参照して説明する。第三実施形態のベルト式減速装置は、入力プーリ52の軸中心と出力プーリ14の軸中心が異なり、入力プーリ52の外周面および出力プーリ14の外周面における縦断面(軸直交方向断面)が、円形状に形成されており、二個のガイドプーリ15,56を備える構成である。
【0051】
第三実施形態の入力プーリ52と第二ガイドプーリ56が、第一実施形態の入力プーリ12と第二ガイドプーリ16の位置を逆にした位置に配置される。さらに、第三実施形態の入力軸部材53と第二偏心軸51cが、第一実施形態の入力軸部材13と第二偏心軸11cの位置を逆にした位置に配置される。その他の構成は、実質的に第一実施形態と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0052】
<駆動装置の第一実施形態>
次に、駆動装置の第一実施形態について、図11および図12を参照して説明する。図11に示すように、ロボットの関節部に上述したベルト式減速装置を適用する。このロボットは、例えば、人間共存型のロボットや食品製造ロボットなどであって、産業用ロボットとは異なり、関節部に対して潤滑油の供給が困難である構成であると共に、高い静粛性が要求される。
【0053】
このロボットの関節部100は、基部110と、基部110に対して回転可能に基部110に支持される可動部120とを備えて構成される。そして、基部110に対して可動部120を回転駆動するための構成として、上述したベルト式減速装置の第一〜第三実施形態の何れか130と、扁平モータ140と、波動歯車式減速装置150とを備え、これらは基部110に支持される。ベルト式減速装置130が、扁平モータ140と波動歯車式減速装置150との軸方向の間に挟まれるように配置される。
【0054】
具体的には、扁平モータ140は、ベルト式減速装置130の入力プーリ12,32,52に対して出力プーリ14,34とは軸方向の反対側(図12の正面視右側)に隣接して配置され、入力プーリ12,32,52に回転駆動力を伝達する。この扁平モータ140は、径方向の大きさに対して軸方向幅の小さな扁平形状に形成されている。
【0055】
波動歯車式減速装置150は、ベルト式減速装置130の出力プーリ14,34に対して入力プーリ12,32,52とは軸方向の反対側(図12の正面視左側)に隣接して配置され、出力プーリ14,34から減速された回転駆動力を入力すると共に、入力された当該回転駆動力をさらに減速して出力する。そして、この波動歯車式減速装置150の出力が、可動部120に伝達される。
【0056】
ベルト式減速装置130が扁平モータ140と波動歯車式減速装置150とによるサンドイッチ構造をなしていることにより、駆動装置全体として、径方向の大きさおよび軸方向長さの小型化を図ることができ、かつ、高い静粛性を発揮できる。また、ベルト式減速装置130の出力側に波動歯車式減速装置150を適用することで、波動歯車式減速装置150の入力を、ベルト式減速装置130によって減速した回転駆動力とすることができる。つまり、波動歯車式減速装置150に対する入力を低回転とすることができる。この波動歯車式減速装置150は、入力される回転数が低いほど高効率であることが知られている。従って、ベルト式減速装置130によって減速された回転駆動力を、波動歯車式減速装置150に入力することで、波動歯車式減速装置150を高効率にて適用することができる。また、ロボットの関節部にベルト式減速装置130を適用することで、潤滑油を用いないとしても高い静粛性を発揮できるため、効果的である。
【0057】
<駆動装置の第二実施形態>
駆動装置の第二実施形態について、図13を参照して説明する。上述したベルト式減速装置の第一〜第三実施形態の何れかを適用して、ベルト式減速装置210に対して、モータ220と波動歯車式減速装置230とを軸方向の同側に配置する構成とする。図13に示すように、モータ220が、ベルト式減速装置210の出力プーリ14,34に対して入力プーリ12,32,52とは軸方向の反対側(図13の正面視左側)に隣接して配置され、入力プーリ12,32,52に回転駆動力を伝達する。つまり、入力軸部材13の一端側(図13の正面視左側)が回転駆動力の発生源であるモータ220に連結し、入力軸部材13の他端側(図13の正面視右側)が入力プーリ12,32,52に連結し、入力軸部材13の中間部が出力プーリ14,34の中空領域を貫通するように配置される。
【0058】
波動歯車式減速装置230は、中空形状に形成されており、ベルト式減速装置210の出力プーリ14,34に対して入力プーリ12,32,52とは軸方向の反対側(図13の正面視左側)に隣接して配置され、出力プーリ14,34から減速された回転駆動力を入力すると共に、入力された当該回転駆動力をさらに減速して出力する。さらに、波動歯車式減速装置230の中空内部に、モータ220が配置される。つまり、モータ220と波動歯車式減速装置230が、軸方向において同位置に配置されている。このように、モータ220と波動歯車式減速装置230を、ベルト式減速装置210に対して軸方向の同側(図13の正面視左側)の同位置に配置することで、駆動装置全体としての軸方向の小型化を図ることができる。
【符号の説明】
【0059】
11,31:支持体、 11a,31a:支持本体部
11b,11c,31b,31c,31d,31e,51c:偏心軸
12,32,52:入力プーリ
12a,14a,15a,16a,32a,34a,35a,36a,37a,38a:周溝、 12b,12c,32b,32c:入力プーリにおける接端点
13,53:入力軸部材、 14,34:出力プーリ、 14b:フランジ
14c,14d,34c,34d:出力プーリにおける接端点
15,35,37:第一ガイドプーリ、 16,36,38,56:第二ガイドプーリ
17,39:無端状ベルト、 21〜24,43〜46:軸受
100:関節部、 110:基部、 120:可動部
130,210:ベルト式減速装置、 140,220:モータ
150,230:波動歯車式減速装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト式減速装置およびそれを用いた駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、減速装置として、ベルト式減速装置や歯車式減速装置などが存在する。ベルト式減速装置としては、例えば、特開2005−308009号公報(特許文献1)や特公平6−30188号公報(特許文献2)などに記載されている。また、歯車式減速装置としては、特開平9−85673号公報(特許文献3)に複数の平歯車を用いた減速装置が記載されており、特許第4399116号公報(特許文献4)に遊星歯車機構を用いた減速装置が記載されており、特開2010−14215号公報(特許文献5)にハーモニックドライブ(登録商標、以下同様)機構と称される波動歯車機構を用いた減速装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−308009号公報
【特許文献2】特公平6−30188号公報
【特許文献3】特開平9−85673号公報
【特許文献4】特許第4399116号公報
【特許文献5】特開2010−14215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ベルト式減速装置は、入力プーリと出力プーリを離間して配置するため、径方向の大きさが大きくなってしまう。また、平歯車を用いた減速装置についても、従来のベルト式減速装置に比べると径方向の小型化ができるが、それでもやはり径方向の大きさが大きくなってしまう。遊星歯車機構を用いた減速装置は、入力軸と出力軸とを同心状に配置できるため、径方向の大きさは従来のベルト式減速装置や平歯車を用いた減速装置に比べると径方向の小型化を図ることができる。しかし、遊星歯車機構を用いた減速装置は、歯車の噛み合い音が発生する。仮に、歯車の噛み合い部に潤滑油を供給することができるのであれば、ある程度は歯車の噛み合い音を抑制することはできる。しかし、潤滑油を適用することが困難な装置において、静粛性が要求される装置には、遊星歯車機構を用いた減速装置の適用が困難となる。
【0005】
波動歯車機構を用いた減速装置は、遊星歯車機構に比べて高い静粛性を備え、高減速比を得ることができることが知られている。しかし、入力される回転数が高回転であるほど、効率が下がるという問題がある。そこで、高効率化を図るために、波動歯車機構を用いた減速装置に入力する回転数を下げることが望まれる。
【0006】
そこで、従来は、高減速比を得るために、モータから回転駆動力を入力する第一段目の減速装置として、上述したベルト式歯車装置、平歯車を用いた減速装置、遊星歯車機構を用いた減速装置を適用して、その出力側に設ける第二段目の減速装置として、波動歯車機構を用いた減速装置を適用することが行われていた。しかし、第一段目の減速装置に適用する装置が、上述した問題を有しているため、全体の装置として、小型化を図りつつ、高い静粛性を確保することが困難であった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、小型化を図りつつ、高い静粛性を発揮することができるベルト式減速装置を提供することを目的とする。さらに、このベルト式減速装置を用いた駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(ベルト式減速装置)
本発明のベルト式減速装置は、回転駆動力を入力する入力プーリと、前記入力プーリより大径に形成され、前記入力プーリに入力された前記回転駆動力を減速して出力する出力プーリと、無端状に形成され、前記入力プーリから前記出力プーリに亘って架けられた一本の無端状ベルトと、を備え、前記入力プーリと前記出力プーリは、回転軸方向にずれて配置され、前記回転軸方向から見て、前記入力プーリの外形円と前記出力プーリの外形円とは、少なくとも一部において重なるように配置される。
【0009】
つまり、本発明によれば、入力プーリの外形円と出力プーリの外形円とが回転軸方向から見て少なくとも一部において重なるように配置されることで、入力プーリの回転軸中心と出力プーリの回転軸中心の離間距離を短くすることができる。つまり、入力プーリの回転軸中心を中心とし出力プーリの内接円の径を小さくできる。これにより、ベルト式減速装置の小径化を図ることができる。ベルト式減速装置の小型化により、ベルト式減速装置を収容するためのハウジングの小型化を図ることができ、結果として、ベルト式減速装置全体としての軽量化を図ることができる。また、歯車の噛み合いによる減速機構ではなく、ベルト式であるため、歯車の噛み合い音が発生することもない。従って、歯車式に比べて高い静粛性を発揮することができる。
【0010】
また、前記ベルト式減速装置は、前記入力プーリと前記出力プーリとの間において前記無端状ベルトを架け渡す複数のガイドプーリをさらに備え、第一の前記ガイドプーリには、前記入力プーリのうち前記無端状ベルトの一方の接端点と前記出力プーリのうち前記無端状ベルトの一方の接端点との間に位置する前記無端状ベルトが架けられ、第二の前記ガイドプーリには、前記入力プーリのうち前記無端状ベルトの他方の接端点と前記出力プーリのうち前記無端状ベルトの他方の接端点との間に位置する前記無端状ベルトが架けられ、前記入力プーリと前記出力プーリは、同心上に配置されるようにしてもよい。ここで、接端点とは、無端状ベルトが入力プーリまたは出力プーリに接触する範囲のうち端部に位置する点を意味する。入力プーリと出力プーリとを同心上に配置することができることにより、遊星歯車機構に置き換えることができるようになる。
【0011】
また、ガイドプーリを用いることで、入力プーリとガイドプーリとに架け渡される無端状ベルトをS字形状となるようにすることができる。この結果、入力プーリに架けられる無端状ベルトの範囲を大きくすることができる。例えば、入力プーリに架けられる無端状ベルトの範囲を180°以上にすることができる。これにより、入力プーリの回転駆動力を無端状ベルトに確実に伝達できる。さらに、ガイドプーリを用いることで、出力プーリに架けられる無端状ベルトの範囲を180°以上にすることもできる。これにより、無端状ベルトの回転駆動力を出力プーリに確実に伝達できるようになる。
【0012】
また、前記無端状ベルトの横断面形状は、円形に形成されるようにしてもよい。本発明によれば、入力プーリと出力プーリとが軸方向にずれて配置されている。従って、無端状ベルトが入力プーリと出力プーリとの間で捩れが発生するおそれがある。また、ガイドプーリを適用する場合には、無端状ベルトのうち入力プーリの周溝に接触する部位と出力プーリの周溝に接触する部位とが反転する構成となる。これらの場合においても、無端状ベルトの横断面形状を円形にすることで、入力プーリの周溝および出力プーリの周溝の何れにおいても確実に無端状ベルトが接触した状態を維持できる。つまり、回転駆動力の伝達を確実に行うことができる。
【0013】
また、前記出力プーリは、中空形状に形成され、前記ベルト式減速装置は、軸方向一端側が前記回転駆動力の発生源側に連結し、軸方向他端側が前記入力プーリに連結し、前記軸方向一端と前記軸方向他端との中間部が前記出力プーリの中空領域を貫通して設けられる入力軸部材を備えるようにしてもよい。これにより、ベルト式減速装置に対して回転駆動力を入力する側と、ベルト式減速装置から減速した回転駆動力を出力する側が、何れも出力プーリが配置される側とすることができる。つまり、軸方向において、ベルト式減速装置に対して回転駆動力が入力される側に、戻し出力が可能となる。
【0014】
ここで、軸方向において、入力される側に戻し出力を行う場合には、入力プーリが位置する側から回転駆動力を入力し、入力プーリ側から出力することも考えられる。しかし、このようにするためには、出力プーリの外周面から径方向外側にフランジを延ばして、当該フランジが出力プーリにおける無端状ベルトの架けられている位置よりも径方向外側に位置するようにして、出力プーリのフランジから入力プーリ側に向かって出力する必要がある。つまり、これでは、出力プーリに径方向外側に延びるフランジを設けることにより、出力プーリ自体が大型化することになる。これに対して、本発明のように、入力軸部材が出力プーリの中空領域を貫通して設けることで、出力プーリを大型化することなく、軸方向において、入力される側に戻し出力が可能となる。
【0015】
また、前記無端状ベルトの横断面の外周側が、前記無端状ベルトの横断面の内側よりも柔らかい材質で形成されるようにしてもよい。すなわち、無端状ベルトの横断面の外周側の硬さが、無端状ベルトの横断面の内側(中心軸側)の硬さが高くなるように形成される。無端状ベルトの横断面の内側の硬さが高いことにより、無端状ベルトに十分な張力を与えることができる。さらに、無端状ベルトの横断面の外周側の硬さが低いことにより、無端状ベルトが入力プーリの周溝および出力プーリの周溝に対して確実に接触した状態を維持できる。特に、上述したように、本発明においては、入力プーリと出力プーリとが軸方向にずれて配置されている。このような場合であっても、本発明により、無端状ベルトが入力プーリの周溝および出力プーリの周溝に対して確実に接触した状態を維持できる。
【0016】
また、無端状ベルトの横断面の外周側が無端状ベルトの横断面の内側よりも柔らかい材質で形成する場合には、前記入力プーリおよび前記出力プーリの少なくとも一方において、前記無端状ベルトが架けられる周溝は、周方向に凹凸状に形成されるようにしてもよい。これにより、凹凸状の周溝と無端状ベルトとの接触面積を増加させることができる。従って、凹凸状の周溝を形成するプーリと無端状ベルトとの間における回転駆動力の伝達を確実に行うことができる。
【0017】
また、本発明のベルト式減速装置は、ロボットの関節部に設けられ、前記関節部の基部に対する可動部の回転駆動に用いるようにしてもよい。ロボットの関節部において用いる場合には、遊星歯車機構の減速装置には必要であった潤滑油の供給が容易ではない。特に、産業用ロボットではなく、人間共存型ロボットや食品製造ロボットなどにおいては、潤滑油の利用に制限されることが多い。このようなロボットの関節部に本発明のベルト式減速装置を適用することで、潤滑油を用いないとしても高い静粛性を発揮できるため、効果的である。
【0018】
(ベルト式減速装置を用いた駆動装置)
上述したベルト式減速装置を用いた駆動装置として、次のようにするとよい。すなわち、駆動装置は、上述したベルト式減速装置と、径方向の大きさに対して軸方向幅の小さな扁平形状に形成され、前記入力プーリに対して前記出力プーリとは軸方向の反対側に隣接して配置され、前記入力プーリに前記回転駆動力を伝達する扁平モータと、前記出力プーリに対して前記入力プーリとは軸方向の反対側に隣接して配置され、前記出力プーリから減速された前記回転駆動力を入力すると共に、入力された当該回転駆動力をさらに減速して出力する歯車式減速装置と、を備える。
【0019】
つまり、上述した本発明のベルト式減速装置が、扁平モータと歯車式減速装置とによるサンドイッチ構造をなしている。これにより、駆動装置全体として、径方向の大きさおよび軸方向長さの小型化を図ることができ、高い静粛性を発揮できる。また、歯車式減速装置に波動歯車式減速装置を適用することで、波動歯車式減速装置の入力を、ベルト式減速装置によって減速した回転駆動力とすることができる。つまり、波動歯車式減速装置に対して入力する回転数を下げることができる。ここで、波動歯車式減速装置は、入力される回転数が低いほど高効率であることが知られている。従って、本発明のように、ベルト式減速装置によって減速された回転駆動力を、波動歯車式減速装置に入力することで、波動歯車式減速装置を高効率にて適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】ベルト式減速装置の第一実施形態の軸方向から見た図である。
【図2】図1の右側から見た側面図である。
【図3】図1のA−A断面図(縦断面図)である。
【図4】図1のB−B断面図(縦断面図)である。
【図5】ベルト式減速装置の第二実施形態の軸方向から見た図である。
【図6】図5のC−C断面図(縦断面図)である。
【図7】図5のD−D断面図(縦断面図)である。
【図8】図6のE−E断面図(横断面図)である。
【図9】ベルト式減速装置の第三実施形態の軸方向から見た図である。
【図10】図9のF−F断面図である。
【図11】駆動装置の第一実施形態の基部に対する可動部の回転軸方向から見た図である。
【図12】ロボットの関節部の内部を示し、ロボットの関節部における駆動装置の軸直交方向から見た図である。
【図13】駆動装置の第二実施形態の軸直角方向から見た図である。一点鎖線は、回転軸中心を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のベルト式減速装置およびそれを用いた駆動装置を具体化した実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0022】
<ベルト式減速装置の第一実施形態>
第一実施形態のベルト式減速装置について、図1〜図4を参照して説明する。第一実施形態のベルト式減速装置は、入力プーリ12と出力プーリ14が同心上に配置されており、入力プーリ12の外周面および出力プーリ14の外周面における縦断面(軸直交方向断面)が、円形状に形成されており、二個のガイドプーリ15,16を備える構成である。このベルト式減速装置は、支持体11と、入力プーリ12と、入力軸部材13と、出力プーリ14と、第一ガイドプーリ15と、第二ガイドプーリ16と、一本の無端状ベルト17とを備えて構成される。なお、入力プーリ12および出力プーリ14の支持体11に対する回転軸方向は、図2の正面視における左右方向に相当し、以下の説明において、単に軸方向と称する。また、以下の説明において、図2〜図4の正面視における右側を軸方向一方側と称し、左側を軸方向他方側と称する。
【0023】
支持体11は、支持本体部11aと、二個の偏心軸11b,11cとを備えて構成される。支持本体部11aは、図1,図3〜図4に示すように、中心に円形孔を有する円盤状に形成される。二個の偏心軸11b,11cは、図1および図4に示すように、支持本体部11aの軸方向他方側の端面(図4の正面視左側端面)のうち軸中心に対して偏心した位置から軸方向に突出して一体的に形成される。なお、支持体11の支持本体部11aは、図示しないハウジングに対して固定されている。つまり、支持体11は、ハウジングに対して回転しない構成となる。
【0024】
入力プーリ12は、後述する入力軸部材13を介して、例えばモータなどの回転駆動力の発生源に連結され、当該発生源の回転駆動力を入力する。この入力プーリ12は、図1に示すように円盤状に形成され、図3〜図4に示すように外周面全周に亘って周溝12aが形成されている。入力プーリ12の周溝12aの横断面(軸方向断面)は円弧状に形成され、入力プーリ12の周溝12aの縦断面(軸直交方向断面)は円形状となるように形成されている。
【0025】
入力軸部材13は、円柱状または円筒状の軸であり、入力プーリ12の軸中心に一体的に連結される。ここで、本実施形態においては、この入力軸部材13は、入力プーリ12の軸方向一方側(図4の正面視右側)の端面および軸方向他方側(図4の正面視左側)の端面のそれぞれから軸方向両側に突出するように設けられる。入力軸部材13は、図示しない回転駆動力の発生源、例えばモータの出力軸に連結され、回転駆動力の発生源による回転駆動力を入力プーリ12に伝達する。なお、入力軸部材13は、回転駆動力の発生源の配置に応じて、入力プーリ12の軸方向一方側の端面のみから軸方向一方側に突出するように設けることもでき、また、入力プーリ12の軸方向他方側の端面のみから軸方向他方側に突出するように設けることもできる。
【0026】
さらに、入力軸部材13のうち入力プーリ12の軸方向一方側(図4の正面視右側)の端面から突出される部位は、支持体11の支持本体部11aの円形孔を軸方向に貫通して設けられ、軸受21(図3〜図4に示す)を介して支持体11の支持本体部11aの円形孔に回転可能に支持される。そして、入力プーリ12および入力軸部材13の支持体11に対する回転中心が、支持体11の支持本体部11aの軸中心と同心上となるように設けられる。ここで、支持部材11の端面と入力プーリ12の端面との軸方向間は、両者が接触しない程度の微小隙間を形成するとよい。または、両者の間に軸方向に支持する軸受(スラスト軸受)を介在するように配置してもよい。
【0027】
出力プーリ14は、後述する無端状ベルト17が架けられることにより、入力プーリ12の回転駆動力を減速して、減速された回転駆動力を出力する。出力プーリ14は、円環状(中空形状)に形成され、入力プーリ12の外径よりも大径に形成される。出力プーリ14は、支持体11の支持本体部11aの外周面に、軸受22(図3〜図4に示す)を介して回転可能に支持される。そして、本実施形態においては、入力プーリ12の回転軸中心と出力プーリ14の回転軸中心が、同心上となるように配置される。さらに、出力プーリ14は、入力プーリ12に対して、入力プーリ12の軸方向一方側(図3〜図4の正面視右側)にずれて配置される。
【0028】
この出力プーリ14は、図3〜図4に示すように、外周面全周に亘って周溝14aが形成されている。この出力プーリ14の周溝14aの横断面(軸方向断面)は円弧状に形成され、出力プーリ14の周溝14aの縦断面(軸直交方向断面)は円形状となるように形成されている。ここで、出力プーリ14の周溝14aの横断面の円弧半径は、入力プーリ12の周溝12aの横断面の円弧半径と同一に形成される。
【0029】
さらに、出力プーリ14の外周面のうち軸方向一方側(図3〜図4の正面視右側)には、フランジ14bが形成されている。このフランジ14bの軸方向他方側(図3〜図4の正面視左側)の端面には、周溝14aの横断面の円弧形状に連続しかつ同径の円弧形状となる側面溝が形成されている。従って、出力プーリ14の外周面において、周溝14aの軸方向一方側(図3〜図4の正面視右側)の外径が大きく、周溝14aの軸方向他方側(図3〜図4の正面視左側)の外径が小さく形成されている。さらに、図1に示すように、軸方向から見た場合において、出力プーリ14と入力プーリ12との相対位置は、次のようになる。軸方向から見た場合に、出力プーリ14の外形円と入力プーリ12の外形円とが少なくとも一部が重なるように配置される。本実施形態においては、入力プーリ12の外形円の全てが、出力プーリ14の外形円に重なるように配置される。
【0030】
第一,第二ガイドプーリ15,16は、図1に示すように、中心孔を有する円盤状に形成され、出力プーリ14の外径よりも小径に形成される。図3〜図4に示すように、第一ガイドプーリ15は、支持体11の第一偏心軸11bの外周面に軸受23を介して回転可能に支持され、第二ガイドプーリ16は、支持体11の第二偏心軸11cの外周面に軸受24を介して回転可能に支持される。つまり、図1に示すように、軸方向から見た場合に、第一,第二ガイドプーリ15,16は、その回転軸中心が出力プーリ14の外形円の内部に位置する。さらに、軸方向から見た場合に、第一,第二ガイドプーリ15,16の外形円の一部は、出力プーリ14の外形円よりも径方向外側に突出している。そして、第一,第二ガイドプーリ15,16は、入力プーリ12と軸方向において同位置に配置されている。つまり、第一,第二ガイドプーリ15,16の端面と出力プーリ14の端面との軸方向間は、両者が接触しない程度の微小隙間を形成するとよい。また、両者の間に軸方向に支持する軸受(スラスト軸受)を介在するように配置してもよい。
【0031】
さらに、第一,第二ガイドプーリ15,16は、外周面全周に亘って周溝15a,16aが形成されている。第一,第二ガイドプーリ15,16の周溝15a,16aの横断面(軸方向断面)は円弧状に形成され、第一,第二ガイドプーリ15,16の周溝15a,16aの縦断面(軸直交方向断面)は円形状となるように形成されている。ここで、第一,第二ガイドプーリ15,16の周溝15a,16aの横断面の円弧半径は、入力プーリ12の周溝12aの横断面の円弧半径と同一に形成される。
【0032】
無端状ベルト17は、図1に示すように、入力プーリ12、第一ガイドプーリ15、出力プーリ14、第二ガイドプーリ16、入力プーリ12の順に、それぞれの周溝12a,15a,14a,16a,12aに架けられる。つまり、第一,第二ガイドプーリ15,16は、入力プーリ12と出力プーリ14との間において無端状ベルト17を架け渡す役割を有している。特に、第一ガイドプーリ15には、入力プーリ12のうち無端状ベルト17の一方の接端点12bと出力プーリ14のうち無端状ベルト17の一方の接端点14cとの間に位置する無端状ベルト17が架けられる。第二ガイドプーリ16には、入力プーリ12のうち無端状ベルト17の他方の接端点12cと出力プーリ14のうち無端状ベルト17の他方の接端点14dとの間に位置する無端状ベルト17が架けられる。従って、無端状ベルト17は、入力プーリ12と第一,第二ガイドプーリ15,16との間では、軸方向において同位置にて架け渡される。また、無端状ベルト17は、第一,第二ガイドプーリ15,16と出力プーリ14との間では、軸方向においてずれて架け渡される。
【0033】
この無端状ベルト17は、入力プーリ12と出力プーリ14との間に第一,第二ガイドプーリ15,16を介して架け渡されることで、入力プーリ12と第一,第二ガイドプーリ15,16とに架け渡される無端状ベルト17をS字形状となるようにしている。このことにより、入力プーリ12の周溝12aに架けられる無端状ベルト17の範囲を180°以上にしている。さらに、第一,第二ガイドプーリ15,16を介在することで、出力プーリ14の周溝14aに架けられる無端状ベルト17の範囲を180°以上となるようにしている。
【0034】
また、無端状ベルト17の横断面形状は、図3〜図4に示すように、円形に形成される。より詳細には、無端状ベルト17の横断面の内側(中心軸側)は相対的に引張強度の高い繊維材により形成され、無端状ベルト17の横断面の外周側は上記繊維材よりも引張強度の低いゴム材により形成される。さらに、無端状ベルト17の横断面の外周側を形成するゴム材は、横断面の内側を形成する繊維材よりも硬さの低い材質からなる。つまり、無端状ベルト17の横断面の外周側は、内側に比べて柔らかい材質からなる。
【0035】
本実施形態のベルト式減速装置によれば、入力プーリ12の外形円と出力プーリ14の外形円とが軸方向から見て少なくとも一部において重なるように配置されることで、入力プーリ12の軸中心と出力プーリ14の軸中心の離間距離を短くすることができる。特に、本実施形態においては、入力プーリ12と出力プーリ14とを同心上としている。ここで、入力プーリ12と出力プーリ14を同心上に配置する構成は、第一,第二ガイドプーリ15,16を用いたことによるものである。つまり、入力プーリ12の軸中心を中心とし出力プーリ14の内接円の径を小さくできる。これにより、ベルト式減速装置の小径化を図ることができる。ベルト式減速装置の小型化により、ベルト式減速装置を収容するためのハウジング(図示せず)の小型化を図ることができ、結果として、ベルト式減速装置全体としての軽量化を図ることができる。また、歯車式減速装置のような歯車の噛み合いによる減速機構ではなく、ベルト式であるため、歯車の噛み合い音が発生することもない。従って、高い静粛性を発揮することができる。
【0036】
また、入力プーリ12と第一,第二ガイドプーリ15,16とに架け渡される無端状ベルト17をS字形状とすることにより、入力プーリ12に架けられる無端状ベルト17の範囲を大きくすることができる。特に、入力プーリ12に架けられる無端状ベルト17の範囲を180°以上にすることができる。これにより、入力プーリ12の回転駆動力を無端状ベルト17に確実に伝達できる。さらに、第一,第二ガイドプーリ15,16を用いることで、出力プーリ14に架けられる無端状ベルト17の範囲を180°以上にすることもできる。これにより、無端状ベルト17の回転駆動力を出力プーリ14に確実に伝達できるようになる。
【0037】
また、上述したように、入力プーリ12および第一,第二ガイドプーリ15,16と、出力プーリ14とが軸方向にずれて配置されている。従って、出力プーリ14と第一,第二ガイドプーリ15,16との間で無端状ベルト17に捩れが発生するおそれがある。さらに、無端状ベルト17のうち入力プーリ12の周溝12aに接触する部位と出力プーリ14の周溝14aに接触する部位とが反転する構成となる。しかし、無端状ベルト17の横断面形状を円形にすることで、入力プーリ12の周溝12aおよび出力プーリ14の周溝14aの何れにおいても確実に無端状ベルト17が接触した状態を維持できる。つまり、回転駆動力の伝達を確実に行うことができる。
【0038】
また、出力プーリ14を円環状、すなわち中空形状に形成することで、入力軸部材13を軸方向において入力プーリ12に対して出力プーリ14側から出力することもできる。つまり、ベルト式減速装置に対して回転駆動力を入力する側と、ベルト式減速装置から減速した回転駆動力を出力する側の何れもが、軸方向において出力プーリ14が配置される側とすることができる。つまり、出力プーリ14を大型化することなく、ベルト式減速装置に対して回転駆動力が入力される側に、戻し出力が可能となる。
【0039】
また、無端状ベルト17の横断面の外周側を、無端状ベルト17の横断面の内側よりも柔らかい材質で形成している。すなわち、無端状ベルト17の横断面の外周側の硬さが、無端状ベルト17の横断面の内側(中心軸側)の硬さが高くなるように形成される。無端状ベルト17の横断面の内側の硬さが高いことにより、無端状ベルト17に十分な張力を与えることができる。つまり、入力プーリ12と出力プーリ14との間において回転駆動力の伝達を確実に行うことができる。さらに、無端状ベルト17の横断面の外周側の硬さが低いことにより、無端状ベルト17が入力プーリ12の周溝12aおよび出力プーリ14の周溝14aに対して確実に接触した状態を維持できる。特に、出力プーリと第一,第二ガイドプーリ15,16とが軸方向にずれて配置されている場合であっても、無端状ベルト17が入力プーリ12の周溝12aおよび出力プーリ14の周溝14aに対して確実に接触した状態を維持できる。
【0040】
<ベルト式減速装置の第二実施形態>
第二実施形態のベルト式減速装置について、図5〜図8を参照して説明する。第二実施形態のベルト式減速装置は、入力プーリ32と出力プーリ34が同心上に配置されており、入力プーリ32の外周面および出力プーリ34の外周面における縦断面(軸直交方向断面)が、凹凸波形状に形成されており、四個のガイドプーリ35〜38を備える構成である。なお、第二実施形態のベルト式減速装置において、第一実施形態のベルト式減速装置と同一構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0041】
支持体31は、支持本体部31aと、四個の偏心軸31b,31c,31d,31eとを備えて構成される。支持本体部31aは、図5〜図7に示すように、中心に円形孔を有する円盤状に形成される。支持本体部31aは、図示しないハウジングに対して固定されている。つまり、支持体31は、ハウジングに対して回転しない構成となる。
【0042】
四個の偏心軸31b,31c,31d,31eは、図5および図7に示すように、支持本体部31aの軸方向他方側の端面(図7の正面視左側端面)のうち軸中心に対して偏心した位置から軸方向に突出して一体的に形成される。小径第一,小径第二偏心軸31b,31cは、支持本体部31aの軸中心からの偏心量が同一である。大径第一,大径第二偏心軸31d,31eは、支持本体部31aの軸中心からの偏心量が同一であって、小径第一,小径第二偏心軸31b,31cの偏心量よりも大きな偏心量である。また、小径第一偏心軸31bの軸中心、支持本体部31aの軸中心および小径第二偏心軸31cの軸中心によるなす鋭角は、大径第一偏心軸31dの軸中心、支持本体部31aの軸中心および大径第二偏心軸31eの軸中心によるなす鋭角よりも小さな角度となるように設定されている。さらに、小径第一偏心軸31bの軸中心、支持本体部31aの軸中心および小径第二偏心軸31cの軸中心によるなす角度の二等分線と、大径第一偏心軸31dの軸中心、支持本体部31aの軸中心および大径第二偏心軸31eの軸中心によるなす角度の二等分線が一致するように設定されている。
【0043】
入力プーリ32は、入力軸部材13を介して、例えばモータなどの回転駆動力の発生源に連結され、当該発生源の回転駆動力を入力する。この入力プーリ32は、図6〜図7に示すように、円盤状に形成され、外周面全周に亘って周溝32aが形成されている。図6〜図7に示すように、入力プーリ32の周溝32aの横断面(軸方向断面)は円弧状に形成され、図示しないが(図8の出力プーリ34を参照)、入力プーリ32の周溝32aの縦断面(軸直交方向断面)は周方向に凹凸波形状(出力プーリ34の周溝34aの相似形状)となるように形成されている。
【0044】
出力プーリ34は、外周面全周に亘って周溝34aが形成されている。図6〜図7に示すように、出力プーリ34の周溝34aの横断面(軸方向断面)は円弧状に形成され、図8に示すように、出力プーリ34の周溝34aの縦断面(軸直交方向断面)は周方向に凹凸波形状となるように形成されている。出力プーリ34において、周溝34aの形状の他は、第一実施形態の出力プーリ14と同一構成からなる。
【0045】
小径第一,小径第二,大径第一,大径第二ガイドプーリ35,36,37,38は、図5に示すように、中心孔を有する円盤状に形成され、出力プーリ34の外径よりも小径に形成される。図7に示すように、小径第一,大径第一ガイドプーリ35,37は、支持体31の小径第一,大径第一偏心軸31b,31dの外周面に軸受43,44を介して回転可能に支持され、小径第二,大径第二ガイドプーリ36,38は、支持体31の小径第二,大径第二偏心軸31c,31eの外周面に軸受45,46を介して回転可能に支持される。つまり、図5に示すように、軸方向から見た場合に、小径第一,小径第二,大径第一,大径第二ガイドプーリ35,36,37,38は、その回転軸中心が出力プーリ34の外形円の内部に位置する。さらに、軸方向から見た場合に、大径第一,大径第二ガイドプーリ37,38の外形円の一部は、出力プーリ34の外形円よりも径方向外側に突出している。そして、小径第一,小径第二,大径第一,大径第二ガイドプーリ35,36,37,38は、入力プーリ32と軸方向において同位置に配置されている。さらに、小径第一,小径第二,大径第一,大径第二ガイドプーリ35,36,37,38は、外周面全周に亘って周溝35a,36a,37a,38aが形成されている。周溝35a,36a,37a,38aの横断面(軸方向断面)は円弧状に形成され、周溝35a,36a,37a,38aの縦断面(軸直交方向断面)は周方向に凹凸波形状となるように形成されている。ここで、周方向に凹凸波形状(出力プーリ34の周溝34aの相似形状)となるように形成されている。ここで、周溝35a,36a,37a,38aの横断面の円弧半径は、入力プーリ32の周溝32aの横断面の円弧半径と同一に形成される。
【0046】
無端状ベルト39は、図5に示すように、第一実施形態の無端状ベルト17と同一形状に形成されている。この無端状ベルト39は、入力プーリ32、小径第一ガイドプーリ35、大径第一ガイドプーリ37,出力プーリ34、大径第二ガイドプーリ38、小径第二ガイドプーリ36、入力プーリ32の順に、それぞれの周溝32a,35a,37a,34a,38a,36a,32aに架けられる。つまり、小径第一,大径第一ガイドプーリ35,37には、入力プーリ32のうち無端状ベルト39の一方の接端点32bと出力プーリ34のうち無端状ベルト39の一方の接端点34cとの間に位置する無端状ベルト39が架けられる。小径第二,大径第二ガイドプーリ36,38には、入力プーリ32のうち無端状ベルト39の他方の接端点32cと出力プーリ34のうち無端状ベルト39の他方の接端点34dとの間に位置する無端状ベルト39が架けられる。従って、無端状ベルト39は、入力プーリ32と小径第一,小径第二,大径第一,大径第二ガイドプーリ35,36,37,38との間では、軸方向において同位置にて架け渡される。また、無端状ベルト39は、大径第一,大径第二ガイドプーリ37,38と出力プーリ34との間では、軸方向においてずれて架け渡される。
【0047】
本実施形態のベルト式減速装置によれば、四個のガイドプーリ35〜38を設けることで、小径第一ガイドプーリ35の軸中心、入力プーリ32の軸中心、小径第二ガイドプーリ36の軸中心によるなす鋭角を小さくすることができる。その結果、入力プーリ32の外径を小さくしたとしても、入力プーリ32に架けられる無端状ベルト39の範囲を大きくすることができる。これにより、高減速比を得るとともに、入力プーリ32の回転駆動力を無端状ベルト39に確実に伝達できる。
【0048】
さらに、入力プーリ32の周溝32aおよび出力プーリ34の周溝34aの縦断面(軸直交方向断面)を周方向に凹凸波形状となるように形成した。これにより、凹凸波形状の周溝32a,34aと無端状ベルト39との接触面積を増加させることができる。従って、入力プーリ32および出力プーリ34と無端状ベルト39との間における回転駆動力の伝達を確実に行うことができる。
【0049】
<ベルト式減速装置の第一,第二実施形態の変形態様>
第二実施形態において、各周溝32a,34a,35a,36a,37a,38aの縦断面を凹凸波形状としたが、波形状ではなく、矩形凹凸形状としてもよい。なお、凹凸波形状とすることで、無端状ベルト39に対して角当たりを防止することによる長寿命化を図ることができる。また、第二実施形態において、入力プーリ32の周溝32aと出力プーリ34の周溝34aの縦断面を凹凸波形状としたが、これらの何れか一方のみを凹凸波形状としてもよい。一方のみの場合には、小径の入力プーリ32の周溝32aを凹凸波形状とすると効果的である。また、ガイドプーリ35〜38の周溝35a,36a,37a,38aの縦断面を凹凸波形状としたが、第一実施形態のように円形状としてもよい。また、第一実施形態において、入力プーリ12、出力プーリ14、第一,第二ガイドプーリ15,16の各周溝の縦断面を凹凸状、特に凹凸波形状とすることもできる。
【0050】
<ベルト式減速装置の第三実施形態>
第三実施形態のベルト式減速装置について、図9および図10を参照して説明する。第三実施形態のベルト式減速装置は、入力プーリ52の軸中心と出力プーリ14の軸中心が異なり、入力プーリ52の外周面および出力プーリ14の外周面における縦断面(軸直交方向断面)が、円形状に形成されており、二個のガイドプーリ15,56を備える構成である。
【0051】
第三実施形態の入力プーリ52と第二ガイドプーリ56が、第一実施形態の入力プーリ12と第二ガイドプーリ16の位置を逆にした位置に配置される。さらに、第三実施形態の入力軸部材53と第二偏心軸51cが、第一実施形態の入力軸部材13と第二偏心軸11cの位置を逆にした位置に配置される。その他の構成は、実質的に第一実施形態と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0052】
<駆動装置の第一実施形態>
次に、駆動装置の第一実施形態について、図11および図12を参照して説明する。図11に示すように、ロボットの関節部に上述したベルト式減速装置を適用する。このロボットは、例えば、人間共存型のロボットや食品製造ロボットなどであって、産業用ロボットとは異なり、関節部に対して潤滑油の供給が困難である構成であると共に、高い静粛性が要求される。
【0053】
このロボットの関節部100は、基部110と、基部110に対して回転可能に基部110に支持される可動部120とを備えて構成される。そして、基部110に対して可動部120を回転駆動するための構成として、上述したベルト式減速装置の第一〜第三実施形態の何れか130と、扁平モータ140と、波動歯車式減速装置150とを備え、これらは基部110に支持される。ベルト式減速装置130が、扁平モータ140と波動歯車式減速装置150との軸方向の間に挟まれるように配置される。
【0054】
具体的には、扁平モータ140は、ベルト式減速装置130の入力プーリ12,32,52に対して出力プーリ14,34とは軸方向の反対側(図12の正面視右側)に隣接して配置され、入力プーリ12,32,52に回転駆動力を伝達する。この扁平モータ140は、径方向の大きさに対して軸方向幅の小さな扁平形状に形成されている。
【0055】
波動歯車式減速装置150は、ベルト式減速装置130の出力プーリ14,34に対して入力プーリ12,32,52とは軸方向の反対側(図12の正面視左側)に隣接して配置され、出力プーリ14,34から減速された回転駆動力を入力すると共に、入力された当該回転駆動力をさらに減速して出力する。そして、この波動歯車式減速装置150の出力が、可動部120に伝達される。
【0056】
ベルト式減速装置130が扁平モータ140と波動歯車式減速装置150とによるサンドイッチ構造をなしていることにより、駆動装置全体として、径方向の大きさおよび軸方向長さの小型化を図ることができ、かつ、高い静粛性を発揮できる。また、ベルト式減速装置130の出力側に波動歯車式減速装置150を適用することで、波動歯車式減速装置150の入力を、ベルト式減速装置130によって減速した回転駆動力とすることができる。つまり、波動歯車式減速装置150に対する入力を低回転とすることができる。この波動歯車式減速装置150は、入力される回転数が低いほど高効率であることが知られている。従って、ベルト式減速装置130によって減速された回転駆動力を、波動歯車式減速装置150に入力することで、波動歯車式減速装置150を高効率にて適用することができる。また、ロボットの関節部にベルト式減速装置130を適用することで、潤滑油を用いないとしても高い静粛性を発揮できるため、効果的である。
【0057】
<駆動装置の第二実施形態>
駆動装置の第二実施形態について、図13を参照して説明する。上述したベルト式減速装置の第一〜第三実施形態の何れかを適用して、ベルト式減速装置210に対して、モータ220と波動歯車式減速装置230とを軸方向の同側に配置する構成とする。図13に示すように、モータ220が、ベルト式減速装置210の出力プーリ14,34に対して入力プーリ12,32,52とは軸方向の反対側(図13の正面視左側)に隣接して配置され、入力プーリ12,32,52に回転駆動力を伝達する。つまり、入力軸部材13の一端側(図13の正面視左側)が回転駆動力の発生源であるモータ220に連結し、入力軸部材13の他端側(図13の正面視右側)が入力プーリ12,32,52に連結し、入力軸部材13の中間部が出力プーリ14,34の中空領域を貫通するように配置される。
【0058】
波動歯車式減速装置230は、中空形状に形成されており、ベルト式減速装置210の出力プーリ14,34に対して入力プーリ12,32,52とは軸方向の反対側(図13の正面視左側)に隣接して配置され、出力プーリ14,34から減速された回転駆動力を入力すると共に、入力された当該回転駆動力をさらに減速して出力する。さらに、波動歯車式減速装置230の中空内部に、モータ220が配置される。つまり、モータ220と波動歯車式減速装置230が、軸方向において同位置に配置されている。このように、モータ220と波動歯車式減速装置230を、ベルト式減速装置210に対して軸方向の同側(図13の正面視左側)の同位置に配置することで、駆動装置全体としての軸方向の小型化を図ることができる。
【符号の説明】
【0059】
11,31:支持体、 11a,31a:支持本体部
11b,11c,31b,31c,31d,31e,51c:偏心軸
12,32,52:入力プーリ
12a,14a,15a,16a,32a,34a,35a,36a,37a,38a:周溝、 12b,12c,32b,32c:入力プーリにおける接端点
13,53:入力軸部材、 14,34:出力プーリ、 14b:フランジ
14c,14d,34c,34d:出力プーリにおける接端点
15,35,37:第一ガイドプーリ、 16,36,38,56:第二ガイドプーリ
17,39:無端状ベルト、 21〜24,43〜46:軸受
100:関節部、 110:基部、 120:可動部
130,210:ベルト式減速装置、 140,220:モータ
150,230:波動歯車式減速装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動力を入力する入力プーリと、
前記入力プーリより大径に形成され、前記入力プーリに入力された前記回転駆動力を減速して出力する出力プーリと、
無端状に形成され、前記入力プーリから前記出力プーリに亘って架けられた一本の無端状ベルトと、
を備え、
前記入力プーリと前記出力プーリは、回転軸方向にずれて配置され、
前記回転軸方向から見て、前記入力プーリの外形円と前記出力プーリの外形円とは、少なくとも一部において重なるように配置されることを特徴とするベルト式減速装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記ベルト式減速装置は、前記入力プーリと前記出力プーリとの間において前記無端状ベルトを架け渡す複数のガイドプーリをさらに備え、
第一の前記ガイドプーリには、前記入力プーリのうち前記無端状ベルトの一方の接端点と前記出力プーリのうち前記無端状ベルトの一方の接端点との間に位置する前記無端状ベルトが架けられ、
第二の前記ガイドプーリには、前記入力プーリのうち前記無端状ベルトの他方の接端点と前記出力プーリのうち前記無端状ベルトの他方の接端点との間に位置する前記無端状ベルトが架けられ、
前記入力プーリと前記出力プーリは、同心上に配置されるベルト式減速装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記無端状ベルトの横断面形状は、円形に形成されるベルト式減速装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項において、
前記出力プーリは、中空形状に形成され、
前記ベルト式減速装置は、軸方向一端側が前記回転駆動力の発生源側に連結し、軸方向他端側が前記入力プーリに連結し、前記軸方向一端と前記軸方向他端との中間部が前記出力プーリの中空領域を貫通して設けられる入力軸部材を備えるベルト式減速装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項において、
前記無端状ベルトの横断面の外周側が、前記無端状ベルトの横断面の内側よりも柔らかい材質で形成されるベルト式減速装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記入力プーリおよび前記出力プーリの少なくとも一方において、前記無端状ベルトが架けられる周溝は、周方向に凹凸状に形成されるベルト式減速装置。
【請求項7】
ロボットの関節部に設けられ、前記関節部の基部に対する可動部の回転駆動に用いる請求項1〜6の何れか一項にベルト式減速装置。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一項に記載のベルト式減速装置と、
径方向の大きさに対して軸方向幅の小さな扁平形状に形成され、前記入力プーリに対して前記出力プーリとは軸方向の反対側に隣接して配置され、前記入力プーリに前記回転駆動力を伝達する扁平モータと、
前記出力プーリに対して前記入力プーリとは軸方向の反対側に隣接して配置され、前記出力プーリから減速された前記回転駆動力を入力すると共に、入力された当該回転駆動力をさらに減速して出力する歯車式減速装置と、
を備えることを特徴とする駆動装置。
【請求項1】
回転駆動力を入力する入力プーリと、
前記入力プーリより大径に形成され、前記入力プーリに入力された前記回転駆動力を減速して出力する出力プーリと、
無端状に形成され、前記入力プーリから前記出力プーリに亘って架けられた一本の無端状ベルトと、
を備え、
前記入力プーリと前記出力プーリは、回転軸方向にずれて配置され、
前記回転軸方向から見て、前記入力プーリの外形円と前記出力プーリの外形円とは、少なくとも一部において重なるように配置されることを特徴とするベルト式減速装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記ベルト式減速装置は、前記入力プーリと前記出力プーリとの間において前記無端状ベルトを架け渡す複数のガイドプーリをさらに備え、
第一の前記ガイドプーリには、前記入力プーリのうち前記無端状ベルトの一方の接端点と前記出力プーリのうち前記無端状ベルトの一方の接端点との間に位置する前記無端状ベルトが架けられ、
第二の前記ガイドプーリには、前記入力プーリのうち前記無端状ベルトの他方の接端点と前記出力プーリのうち前記無端状ベルトの他方の接端点との間に位置する前記無端状ベルトが架けられ、
前記入力プーリと前記出力プーリは、同心上に配置されるベルト式減速装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記無端状ベルトの横断面形状は、円形に形成されるベルト式減速装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項において、
前記出力プーリは、中空形状に形成され、
前記ベルト式減速装置は、軸方向一端側が前記回転駆動力の発生源側に連結し、軸方向他端側が前記入力プーリに連結し、前記軸方向一端と前記軸方向他端との中間部が前記出力プーリの中空領域を貫通して設けられる入力軸部材を備えるベルト式減速装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項において、
前記無端状ベルトの横断面の外周側が、前記無端状ベルトの横断面の内側よりも柔らかい材質で形成されるベルト式減速装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記入力プーリおよび前記出力プーリの少なくとも一方において、前記無端状ベルトが架けられる周溝は、周方向に凹凸状に形成されるベルト式減速装置。
【請求項7】
ロボットの関節部に設けられ、前記関節部の基部に対する可動部の回転駆動に用いる請求項1〜6の何れか一項にベルト式減速装置。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一項に記載のベルト式減速装置と、
径方向の大きさに対して軸方向幅の小さな扁平形状に形成され、前記入力プーリに対して前記出力プーリとは軸方向の反対側に隣接して配置され、前記入力プーリに前記回転駆動力を伝達する扁平モータと、
前記出力プーリに対して前記入力プーリとは軸方向の反対側に隣接して配置され、前記出力プーリから減速された前記回転駆動力を入力すると共に、入力された当該回転駆動力をさらに減速して出力する歯車式減速装置と、
を備えることを特徴とする駆動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−231837(P2011−231837A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101968(P2010−101968)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】
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