説明

ベンゾオキサゾール前駆体、樹脂組成物およびそれを用いたコーティングワニス、樹脂膜並びに半導体装置

【課題】 ワニスとした場合に保存性が良く、樹脂膜とした場合に誘電率が低減され、半導体装置の樹脂膜として適用する際の種々のプロセス適合性を両立するベンゾキサゾール前駆体及びそれを含む樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 o−アミノフェノール基とカルボン酸基とを有する化合物(C)より構成されるベンゾオキサゾール前駆体。前記ベンゾオキサゾール前駆体は、少なくとも3つのo−アミノフェノール基を有する化合物(A)を含んで構成されるものである。前記ベンゾオキサゾール前駆体は、少なくとも2つのカルボン酸基を有する化合物(B)を含んで構成されるものである。前記ベンゾオキサゾール前駆体を含む樹脂組成物。前記ベンゾオキサゾール前駆体又は前記樹脂組成物を有機溶媒に溶解させたコーティングワニス。前記ベンゾオキサゾール前駆体、前記樹脂組成物、又は前記コーティングワニスより構成される樹脂膜。前記樹脂膜を有する半導体装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンゾオキサゾール前駆体、樹脂組成物およびそれを用いたコーティングワニス、樹脂膜並びに半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体の層間絶縁膜として各種CVD膜や、塗布系材料が適用されているが、より一層の低誘電率化をはかるために、主にこれらの材料を多孔質化するという検討が行われている。多孔質化する方法としては、熱分解性成分(ポロジェン)を混合あるいは結合により導入し、絶縁膜形成の際の加熱焼成工程においてポロジェンを分解させ、空孔形成させる等がある。しかしながら、このような方法による多孔質化においては、膜中に存在する空孔は数ナノメーターから数10ナノメーターのサイズであり、また、これら空孔は独立ではなく連結して存在していることから、必然的に材料の強度が低下し、半導体プロセスにおいても空孔に起因した様々な問題が指摘されている。具体例としては、CMPやパッケージプロセスにおいて剥離や破壊が起こるといったこと、またダマシンプロセスにおいて、絶縁膜をエッチングした後のメタライゼーションの際に金属が絶縁膜の空孔に侵入しデバイスの信頼性が低下するといったこと、またアッシングやウエット洗浄のプロセスにおいて、ガスや洗浄液が空孔に侵入し、不具合の要因になるといったこと等である。これらの不具合を解決する方法として、ポアシール等のプロセスを導入するといった検討も行われているが、工程が増えコスト増大につながることが懸念されている。
一方、枝分かれした構造を取ることで、ポリマー鎖がお互い近づけなくなるために、バルクポリマーの中でポリマー鎖の占める体積分率が低下することにより、低誘電率化されることが提唱されている(例えば、特許文献1参照。)が、合成時にゲル化が起こり易いこと、合成時の溶解性、ワニス時の保存性などが悪く、非常に扱いにくいものであった。
【特許文献1】特開2001−332543号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、このような背景に鑑み、ワニスとした場合に保存性及び溶解性が良く、樹脂膜とした場合に多孔質にすることなく誘電率が低減されるベンゾキサゾール前駆体及びそれを含む樹脂組成物を提供することにある。
本発明は、保存性が良好で、樹脂膜とした場合に誘電率が低減されるコーティングワニスを提供することにある。
本発明は、低誘電率の樹脂膜を提供でき、これを用いることにより、信頼性に優れた半導体装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は下記第(1)項〜第(13)項により達成されることが見出された。
(1) o−アミノフェノール基とカルボン酸基とを合わせて3つ以上有する化合物(C)を含んで構成されるベンゾオキサゾール前駆体。
(2) 前記ベンゾオキサゾール前駆体は、分岐構造を有するものである第(1)項に記載のベンゾオキサゾール前駆体
(3) 前記ベンゾオキサゾール前駆体は、一般式(1)で表される構造を有するものである、第(1)項又は第(2)項に記載のベンゾオキサゾール前駆体。
【0005】
【化1】

(式(1)中のXは、ダイヤモンドイド構造より構成される基、芳香族基又はダイヤモンドイド構造より構成される基と芳香族基とを含む基を示し、Aは、X上の基であり、式(2)で表される基を示し、Bは、X上の基であり、式(3)で表される基を示す。m及びnは、それぞれ、Xに結合しているA及びBの基の数を表し、1以上、4以下の整数で、m+nは3以上である。)
【0006】
(4) 前記ベンゾオキサゾール前駆体は、少なくとも2つのo−アミノフェノール基を有する化合物(A)を含んで構成されるものである第(1)項乃至第(3)項のいずれか1項に記載のベンゾオキサゾール前駆体。
(5) 前記ベンゾオキサゾール前駆体は、少なくとも3つのo−アミノフェノール基を有する化合物(A)を含んで構成されるものである第(1)項乃至第(4)項のいずれか1項に記載のベンゾオキサゾール前駆体。
(6) 前記ベンゾオキサゾール前駆体は、少なくとも2つのカルボン酸基を有する化合物(B)を含んで構成されるものである第(1)項乃至第(5)項のいずれか1項に記載のベンゾオキサゾール前駆体。
(7) 前記ベンゾオキサゾール前駆体は、架橋基を有するものである第(1)項乃至第(6)項のいずれか1項に記載のベンゾオキサゾール前駆体。
(8) 第(1)項乃至第(7)項のいずれか1項に記載のベンゾオキサゾール前駆体を含む樹脂組成物。
(9) 第(1)項乃至第(7)項のいずれか1項に記載のベンゾオキサゾール前駆体又は第(8)項に記載の樹脂組成物を有機溶媒に溶解させたコーティングワニス。
(10) 第(1)項乃至第(7)項のいずれか1項に記載のベンゾオキサゾール前駆体、第(8)項に記載の樹脂組成物、又は第(9)項に記載のコーティングワニスより構成される樹脂膜。
(11) 第(10)項に記載の樹脂膜を有する半導体装置。
(12) 前記樹脂膜は、層間絶縁膜及び/又は保護膜として有するものである第(11)項に記載の半導体装置。
(13) 前記樹脂膜は、半導体基板の所定の位置に、第(9)項に記載のコーティングワニスを塗布して塗膜を形成し、前記塗膜を、加熱及び/又は活性放射線の照射することにより硬化して得られたものである第(11)項又は第(12)項に記載の半導体装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ワニスとした場合に溶解性及び保存性が良く、樹脂膜とした場合に多孔質にすることなく誘電率が低減され、半導体装置の樹脂膜として適用する際の種々のプロセス適合性を両立するベンゾオキサゾール前駆体及びそれを含む樹脂組成物を提供することができる。
本発明によれば、保存性が良好で、樹脂膜とした場合に誘電率が低減され、半導体装置の樹脂膜として適用する際の種々のプロセス適合性を両立するコーティングワニスを提供できる。
本発明によれば、低誘電率で密着性が良好な樹脂膜を提供でき、これを用いた半導体装置は、接続信頼性に優れ、信号損失及び配線遅延が低いものが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明のベンゾオキサゾール前駆体、樹脂組成物、コーティングワニス、樹脂膜及び半導体装置について説明する。
本発明のベンゾオキサゾール前駆体は、o−アミノフェノール基(第1の官能基)とカルボン酸基(第2の官能基)とを合わせて3つ以上有する化合物(C)を含んで構成されるベンゾオキサゾール前駆体であり、さらには、前記化合物(C)より分岐構造が形成されたものが挙げられる。これにより、ワニスとした場合に、溶解性及び保存性が良く、樹脂膜とした場合に、多孔質にすることなく誘電率が低減され、半導体装置の樹脂膜として適用する際の種々のプロセス適合性を両立することができる。
本発明のベンゾオキサゾール前駆体は、少なくとも2つのo−アミノフェノール基を有する化合物(A)を含んで構成されていてもよく、また、本発明のベンゾオキサゾール前駆体は、少なくとも2つのカルボン酸基を有する化合物(B)を含んで構成されていてもよい。これにより、上記特性を、より良好なものとすることができる。
【0009】
本発明において、前記o−アミノフェノール基とカルボン酸基とを合わせて3つ以上有する化合物(C)は、ベンゾオキサゾール前駆体において、分岐構造を形成する上で、前記o−アミノフェノール基及びカルボン酸基を、前記o−アミノフェノール基とカルボン酸基とを合わせて3つ以上有する化合物(C)を構成するダイヤモンドイド構造より構成される基と芳香族基とを含む基、芳香族基又はダイヤモンドイド構造より構成される基と芳香族基とを含む基の上に有するものが好ましい。これにより分岐構造を形成して得られたベンゾキサゾール前駆体は、立体構造を形成することができ、より誘電率を低減することができる。
【0010】
前記ダイヤモンドイド構造より構成される基としては、少なくとも1つ以上のダイヤモンドイド構造より構成される基であり、前記ダイヤモンドイド構造としては、アダマンタン構造を最小単位として有する多環式構造であり、具体的には、アダマンチル基、ジアマンチル基、トリアマンチル基、テトラマンチル基、ペンタマンチル基、ヘキサマンチル基、ヘプタマンチル基、オクタマンチル基、ノナマンチル基、デカマンチル基及びウンデカマンチル基などが挙げられ、更には、前記多環式骨格構造を有する基を複数個有する基が挙げられ、例えば、ビアダマンチル基、トリアダマンチル基、テトラアダマンチル基、ペンタアダマンチル基、ヘキサアダマンチル基、ヘプタアダマンチル基、オクタアダマンチル基、ノナアダマンチル基、デカアダマンチル基、ウンデカアダマンチル基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらにより、低比誘電率を有する樹脂を得ることができる。
【0011】
前記ダイヤモンドイド構造中の水素原子は、脂肪族基、芳香族基及びフッ素原子で置換されていても良い。前記水素原子と置換してもよい脂肪族基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基などのアルキル基;、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基及びブトキシ基などのアルコキシ基;、ビニル基、プロペニル基及びブテニル基などのアルケニル基;、エチニル基、プロピニル基及びブチニル基などのアルキニル基;、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ジアマンチル基及びビアダマンチル基などの脂環式脂肪族基;、などが挙げられ、前記水素原子と置換してもよい芳香族基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基及びナフトキシ基;、などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、前記水素原子と置換してもよい脂肪族基及び芳香族基中の水素原子はフッ素原子で置換されていても良い。これらにより、溶解性、耐熱性を有する樹脂を得ることができる。
【0012】
前記芳香族基としては、フェニル基及びフェニルエーテル基などを挙げることができる。これらの芳香族基上には、前記ダイヤモンドイド構造より構成される基が置換されていても良い。
前記ダイヤモンドイド構造より構成される基と芳香族基とを含む基としては、前記ダイヤモンドイド構造より構成される基と前記芳香族基とが結合された基が挙げられる。
これらにおいて、前記ダイヤモンドイド構造を含むことが、低比誘電率を有する樹脂を得る上で好ましい。
【0013】
本発明に用いるo−アミノフェノール基(第1の官能基)とカルボン酸基(第2の官能基)とを合わせて3つ以上有する化合物(C)の具体例としては、まず、o−アミノフェノール基が1つでカルボン酸基が2つの化合物の例として、5−[3−ヒドロキシ−4−アミノ−6−(3,5−ジメチル−1−アダマンチル)−フェノキシ]−イソフタル酸及び3,5−ビス[3−ヒドロキシ−4−アミノ−6−(3,5−ジメチル−1−アダマンチル)−フェノキシ]−安息香酸などの芳香族カルボン酸型、5−(3−アミノ−4−ヒドロキシ−フェニル)−アダマンチル−1,3−ジカルボン酸、5−[4−(3−ヒドロキシ−4−アミノ−フェノキシ)−フェニル]−アダマンチル−1,3−ジカルボン酸、3’−(3−アミノ−4−ヒドロキシ−フェニル)−1,1’−ビアダマンチル−3,5−ジカルボン酸及び3’−[4−(3−ヒドロキシ−4−アミノ−フェノキシ)−フェニル]−1,1’−ビアダマンチル−3,5−ジカルボン酸などのアダマンタンカルボン酸型のものなどが挙げられ、また、o−アミノフェノール基が2つでカルボン酸基を1つ有する化合物の例として、3,5−ビス[3−ヒドロキシ−4−アミノ−6−(1−アダマンチル)−フェノキシ]−安息香酸、3,5−ビス[3−ヒドロキシ−4−アミノ−6−(3,5−ジメチル−1−アダマンチル)−フェノキシ]−安息香酸及び3,5−ビス[3−ヒドロキシ−4−アミノ−6−(5,5’,7,7’−テトラメチル−3−(1,1’−ビアダマンチル)−フェノキシ)−安息香酸など安息香酸型のものなどが挙げられ、前記o−アミノフェノール基とカルボン酸基とが、それぞれ、1つ以上、合わせて3つ以上有する化合物であれば、これらに限定されるものではないが、すべての基を余り無く反応させる上で、前記o−アミノフェノール基とカルボン酸基とが、それぞれ、1つ以上3つ以下、合わせて3つ以上4つ以下であることが、より好ましい。これらの化合物は、1つ又は2つ以上を用いることができる。
上記において、アダマンタン構造やフェニル或いはフェニルエーテル構造には、アルキル基やフルオロアルキル基が結合していても良い。
【0014】
本発明に用いる少なくとも2つのo−アミノフェノール基を有する化合物(A)の例としては、まず、ビスアミノフェノール化合物の例として、ジアミノ−ジヒドロキシベンゼン、ジアミノ−ジヒドロキシ−ビフェニル、ジアミノ−ジヒドロキシ−ジフェニルエーテル及び9,9−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどの一般的な芳香族ビスアミノフェノール化合物、2,2’−ビス[4−(3−ヒドロキシ−4−アミノフェノキシ)]−5,5’−ビス(1−アダマンチル)−ビフェニル、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジアミノ−5,5’−ビス(1−アダマンチル)−ビフェニル、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジアミノ−5,5’−ビス(3,5−ジメチル−1−アダマンチル)−ビフェニル、3−ビス[4−(3−ヒドロキシ−4−アミノフェノキシ)]−4,6−ビス(1−アダマンチル)−ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−ヒドロキシ−4−アミノフェノキシ)]−4,6−ビス(3,5−ジメチル−1−アダマンチル)−ベンゼン及び1,3−ビス[4−(3−ヒドロキシ−4−アミノフェノキシ)]−4,6−ビス(5,5’,7,7’−テトラメチル−3,3’−1−ビアダマンチル)−ベンゼンなどのアダマンタン構造を有するビスアミノフェノール化合物が挙げられ、また、少なくとも3つのo−アミノフェノール基を有する化合物(A)の例としては、トリス−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)アミン、トリス−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、テトラキス−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)メタン及びトリス−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)シラン及びテトラキス−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)シランなど、3つ以上のo−アミノフェノール基が元素群に直接結合した化合物、トリス−[4−(3−ヒドロキシ−4−アミノフェノキシ)−フェニル]アミン、トリス−[4−(3−ヒドロキシ−4−アミノフェノキシ)−フェニル]メタン、テトラキス−[4−(3−ヒドロキシ−4−アミノフェノキシ)−フェニル]メタン、トリス−[4−(3−ヒドロキシ−4−アミノフェノキシ)−フェニル]シラン及びテトラキス−[4−(3−ヒドロキシ−4−アミノフェノキシ)−フェニル]シランなど、3つ以上のo−アミノフェノール基がフェニルエーテル基を介して元素群に結合した化合物、1,3,5−トリス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン及び3,3’,5,5’−テトラキス−(3−アミノ−4−ヒドロキシ−フェニル)−1,1’−ビアダマンタンなど、3つ以上のo−アミノフェノール基がアダマンタン構造に直接結合した化合物、1,3,5−トリス[4−(3−ヒドロキシ−4−アミノ−フェノキシ)−フェニル]−アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス[4−(3−ヒドロキシ−4−アミノフェノキシ−)フェニル]アダマンタン及び3,3’,5,5’−テトラキス−[4−(3−ヒドロキシ−4−アミノフェノキシ)−フェニル]−1,1’−ビアダマンタンなど、3つ以上のo−アミノフェノール基がフェニルエーテル構造を介してアダマンタン構造に結合した化合物などが挙げられ、前記o−アミノフェノール基を2つ以上有するものであれば、これらに限定されるものではないが、2つ以上、4つ以下のo−アミノフェノール基を有するものであることが、より好ましい。これらの化合物は、1つ又は2つ以上を用いることができる。また、ベンゾオキサゾール前駆体において、さらに、分岐構造を得る上では、少なくとも3つのo−アミノフェノール基を有するものが、より好ましい。
上記アダマンタン構造やフェニル或いはフェニルエーテル構造には、アルキル基やフルオロアルキル基が結合していても良い。
上記元素群としては、窒素、炭素及びケイ素などの元素や、芳香族基及び脂肪族基などの前記元素より構成される基が挙げられる。
【0015】
本発明に用いる少なくとも2つのカルボン酸基を有する化合物(B)の例を示す。まず、2つのカルボン酸を有する化合物として、アダマンチル−1,3−ジカルボン酸、1,1’−ビアダマンチル−3,3’−ジカルボン酸及び3,3’,5,5’−テトラメチル−(1,1’−ビアダマンチル)−3,3’−ジカルボン酸などのカルボン酸が直接アダマンタン構造に結合したカルボン酸や、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、ビフェニル−ジカルボン酸及びビフェニルエーテル−ジカルボン酸などの芳香族カルボン酸、アジピン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂肪族カルボン酸などが挙げられ、少なくとも3つのカルボン酸を有する化合物として、アダマンチル−1,3,5−トリカルボン酸、1,1’−ビアダマンチル−3,3’,5−トリカルボン酸、アダマンチル−1,3,5,7−テトラカルボン酸及び1,1’−ビアダマンチル−3,3’,5,5’−テトラカルボン酸などが挙げられ、前記カルボン酸基を2つ以上有するものであれば、これらに限定されるものではないが、2つ以上、4つ以下のカルボン酸基を有するものであることが、より好ましい。これらの化合物は、1つ又は2つ以上を用いることができる。また、ベンゾオキサゾール前駆体において、さらに、分岐構造を得る上では、少なくとも3つのカルボン酸基を有するものが、より好ましい。
上記アダマンタン構造には、アルキル基やフルオロアルキル基が結合していても良い。
【0016】
また、上記カルボン酸基としては、カルボキシル基、カルボン酸エステル基及びカルボン酸クロリド基などのカルボン酸誘導基が挙げられる。
前記カルボン酸誘導基を有する化合物を用いる場合、上記例示のo−アミノフェノール基とカルボン酸基とを合わせて3つ以上有する化合物(C)と、少なくとも2つのカルボン酸基を有する化合物(B)カルボン酸とにおいて、カルボキシル基を、前記カルボン酸エステル基に変換したエステル化合物、及び、カルボキシル基を、前記カルボン酸クロリド基に変換したクロリド化合物などのカルボン酸誘導体として、用いることができる。また、前記エステル化合物としては、例えば、前記カルボン酸におけるカルボキシル基を、フェニルエステル基、2−ピリジルエステル基、スクシンイミドエステル基及びN−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾールエステル基などカルボン酸活性エステル基に変換した活性エステル化合物を用いることができる。
【0017】
本発明において、架橋基とは、三重結合及び二重結合などを有する基を意味し、エチニル基、芳香族置換エチニル基、ブタジイニル基、芳香族置換ブタジイニル基、プロパルギル基、芳香族置換プロパルギル基、ビニル基、アリル基などを示す。上記o−アミノフェノール基(第1の官能基)とカルボン酸基(第2の官能基)とを有する化合物(C)、少なくとも3つのo−アミノフェノール基を有する化合物(A)及び少なくとも2つのカルボン酸基を有する化合物(B)は、これらの架橋基を結合させたものを用いることができる。これにより、ベンゾキサゾール前駆体の耐熱性、半導体装置を作製する際のプロセス適合性を、より向上させることができる。これら架橋基は、該架橋基により架橋させる際に、必要な架橋温度、架橋密度を考慮して、適宜選択することができる。
前記架橋基を有する化合物の例としては、少なくとも2つのカルボン酸基を有する化合物(B)の場合、エチニルイソフタル酸、フェニルエチニルイソフタル酸、4−フェニルエチニル−フェノキシ−イソフタル酸、ブタジイニル−イソフタル酸、フェニル−ブタジイニル−イソフタル酸、プロパルギルイソフタル酸、フェニルプロパルギルイソフタル酸、ビニルイソフタル酸、アリルイソフタル酸及び4−(1−アダマンチル)−フェニルエチニルイソフタル酸、などが挙げられるが、これらに限定されない。
また、上記o−アミノフェノール基(第1の官能基)とカルボン酸基(第2の官能基)を合わせて3つ以上有する化合物(C)及び少なくとも2つのo−アミノフェノール基を有する化合物(A)においても、同様に、架橋基を有するものを用いても良い。
【0018】
本発明のベンゾオキサゾール前駆体の合成方法としては、上記o−アミノフェノール基(第1の官能基)とカルボン酸基(第2の官能基)とを合わせて3つ以上有する化合物(C)、また、任意に、少なくとも2つのo−アミノフェノール基を有する化合物(A)及び少なくとも2つのカルボン酸基を有する化合物(B)における、o−アミノフェノール基と、カルボン酸基及び該カルボン酸基から誘導される基との反応を用いることができる。
【0019】
上記合成方法における反応方法の例としては、前記o−アミノフェノール基と、前記カルボン酸基とを、亜燐酸トリフェニルなどの重縮合剤を用いた直接重縮合法が好ましいが、前記o−アミノフェノール基(第1の官能基)とカルボン酸基(第2の官能基)とを合わせて3つ以上有する化合物(C)の保存安定性に応じて、前記カルボン酸基から誘導される基としてカルボン酸活性エステル基(例えば、フェニルエステル、2−ピリジルエステル、スクシンイミドエステル及びN−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾールエステルなど。)との重縮合反応、あるいは、前記o−アミノフェノール基と前記カルボン酸基から誘導される基としてカルボン酸クロリドとの重縮合反応などを用いることができ、得られるベンゾオキサゾール前駆体は、重量平均分子量が、1,000〜1000,000のものが好ましい。より好ましくは、3,000〜150,000のものである。前記重量平均分子量の範囲外でも用いることができるが、分子量が低いと耐熱性が低下する恐れがあり、高いとワニス安定性が低下する恐れがある。
【0020】
上記合成においては、例えば、o−アミノフェノール基とカルボン酸基とを合わせて3つ以上有する化合物(C)同士の反応、o−アミノフェノール基とカルボン酸基とを合わせて3つ以上有する化合物(C)と、少なくとも2つのo−アミノフェノール基を有する化合物(A)との反応、o−アミノフェノール基とカルボン酸基とを有する化合物(C)と、少なくとも2つのカルボン酸基を有する化合物(B)との反応、また、これらを組み合わせることにより、本発明のベンゾオキサゾール前駆体が得られる。
【0021】
このようにして得られるベンゾオキサゾール前駆体としては、ベンゾオキサゾール構造と分岐構造を有するものが挙げられ、具体例として一般式(1)で表される構造を含むものが挙げられる。
【0022】
【化1】

【0023】
式(1)中のXは、ダイヤモンドイド構造より構成される基、芳香族基又はダイヤモンドイド構造より構成される基と芳香族基とを含む基を示し、Aは、X上の基であり、式(2)で表される基を示し、Bは、X上の基であり、式(3)で表される基を示す。m及びnは、それぞれ、Xに結合しているA及びBの基の数を表し、1以上、4以下の整数で、m+nは3以上である。
前記ダイヤモンドイド構造より構成される基、前記芳香族基又は前記ダイヤモンドイド構造より構成される基と芳香族基とを含む基としては、分岐構造を形成する上で、前記o−アミノフェノール基とカルボン酸基とを合わせて3つ以上有する化合物(C)におけるそれらと同様のものが挙げられる。
【0024】
これらの具体例としては、下記構造式(4)〜(8)で表される構造を含むものなどが挙げられる。
【0025】
【化2】

式(4)〜式(8)におけるXは、式(1)中のXと同様である。
【0026】
上記の合成方法において、ベンゾオキサゾール前駆体の末端は、1つのo−アミノフェノール基又は1つのカルボン酸基を有する化合物(D)で封止することができる。これらの封止剤は、上記ダイヤモンドイド構造や架橋基を有していてもよい。
上記1つのo−アミノフェノール基を有する化合物としては、例えば、2−アミノ−フェノール、2−アミノ−4−(1−アダマンチル)フェノール及び2−アミノ−4−(3,5−ジメチル−1−アダマンチル)フェノールなどが挙げられ、また、架橋基を有すアミノフェノールとしては、フェニルエチニル−2−アミノ−フェノール及び(4−フェニル−ブタジイニル)−2−アミノ−フェノールなどが挙げられる。
上記1つのカルボン酸基を有する化合物としては、例えば、酢酸、安息香酸、アダマンチル−安息香酸、アダマンチル−1−カルボン酸、3,5−ジメチル−アダマンチル−1−カルボン酸、ビアダマンチル−1−カルボン酸及び5,5’,7,7’−テトラメチル−3,3’−ビアダマンチル−1カルボン酸などが挙げられ、また、架橋基を有するカルボン酸としては、エチニル安息香酸、フェニルエチニル安息香酸及び(1−アダマンチル)フェニルエチニル−安息香酸、(4−フェニル−ブタジイニル)安息香酸などが挙げられる。
これらの末端基は、必要なレベルの耐熱性、誘電率及び溶解性を考慮して選択できる。
【0027】
本発明の樹脂組成物は、上記ベンゾキサゾール前駆体を含むものであり、さらには、必要に応じて、界面活性剤、シラン系に代表されるカップリング剤、加熱により酸素ラジカルや硫黄ラジカルを発生するラジカル開始剤、ジスルフィド類などの触媒類などの添加剤を用いることができる。
また、前記樹脂組成物に、感光剤としてのナフトキノンジアジド化合物等を添加することにより、感光性樹脂組成物として用いることもできる。ベンゾオキサゾール前駆体に、感光剤としてのナフトキノンジアジド化合物と一緒に用いることで、ポジ型の感光性樹脂組成物として使用することができる。また、ベンゾオキサゾール前駆体に、メタクリロイル基のような光架橋性基を含む基を有する場合は、光開始剤を用いることで、ネガ型感光性樹脂組成物として用いることが可能である。
本発明の樹脂組成物は、上記成分を適宜配合し、これを混合することにより得ることができる。
【0028】
本発明のベンゾオキサゾール前駆体及び樹脂組成物は、有機溶媒に可溶であり、均一な樹脂溶液を与えコーティングワニスとすることができる。有機溶媒としては例えば、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチル−1,3−ブチレングリコールアセテート、1,3−ブチレングリコール−3−モノメチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メチル−3−メトキシプロピオネート、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、アニソール及びメシチレン等を用いることができ、これら以外であっても、溶解若しくは分散させることが可能な有機溶媒であれば、使用することができる。これらの有機溶媒は1種を用いてもよく、2種以上を混合して用いてよい。
【0029】
次に、樹脂膜について説明する。
本発明の樹脂膜は、半導体用途において、配線層あるいはビア層の層間絶縁膜として好適であり、層間絶縁膜以外にも、半導体の多層配線構造を構成する材料として、例えば、多層配線の最上部表面を外部から保護する保護膜、層間絶縁膜のエッチングを停止させるエッチングストッパ膜、配線層を構成するCu拡散防止のためのキャップ膜及びバリア膜、層間絶縁膜と下地の密着性を高める密着付与膜等に好適であるが、これらに限定されない。
【0030】
本発明の樹脂膜は、前述したようなベンゾキサゾール前駆体、樹脂組成物又はコーティングワニスを用いて得られ、各種基材に対する密着性及び電気特性、機械特性に優れている。層間絶縁膜における厚さは、特に限定されないが、適用目的に合わせ任意に調整することが可能であるが、一般的には0.001〜20μmの範囲で形成される。
また、本発明の樹脂膜の用途としては、上記用途以外にも、例えば、フレキシブル銅張板のカバーコート、ソルダーレジスト膜、液晶配向膜及び接着剤層等が挙げられる。
【0031】
本発明の樹脂膜の製造方法としては、例えば、前記ベンゾキサゾール前駆体又は樹脂組成物を、シクロヘキサノン等の有機溶媒に溶解することでワニスを作製し、このワニスを適当な支持体、例えば、ポリエステルフィルムなどの有機基材、銅箔などの金属板、シリコンウエハやセラミック基板などの半導体基板等に塗布して塗膜を形成する。
塗布方法としては、スピンナーを用いた回転塗布、スプレーコーターを用いた噴霧塗布、浸漬、印刷、ロールコーティング等による方法が挙げられる。
【0032】
その後、塗膜を乾燥し、加熱処理をして、溶媒除去することにより、樹脂膜とすることができる。ベンゾオキサゾール前駆体は、前記溶媒除去に続いて、加熱することにより、縮合反応させて硬化し、更にベンゾオキサゾール前駆体が架橋基を有する場合、架橋反応させ、ベンゾオキサゾール樹脂として、ベンゾオキサゾール樹脂又はそれを含む樹脂組成物で構成される樹脂膜とすることができる。
【0033】
また、前記ベンゾオキサゾール前駆体から樹脂に変換したものが有機溶媒に溶解するものであれば、予め、ベンゾオキサゾール前駆体をベンゾオキサゾール樹脂に変換して、有機溶媒に溶解しワニスを作製し、同様の方法により、樹脂膜を得ることができる。その際、塗膜の加熱処理において、ベンゾオキサゾール樹脂前駆体を樹脂に変換する工程を必要としないので、加熱処理時間の短縮をすることができる。
上記工程における縮合反応及び架橋反応において、加熱による方法以外にも活性放射線を照射することができ、両者を併用すると、より好ましい。前記活性放射線としては、マイクロ波、可視光、UV光及びX線などの活性エネルギー光線ならびに電子線などが挙げられる。
また、本発明の樹脂膜は、上記方法により基板に直接塗布して形成しても良いし、支持体に形成した樹脂膜を、該支持体より剥離することにより、ドライフィルムとして使用することもできる。
【0034】
次に、半導体装置について好適な実施の形態に基づいて説明する。
図1は、本発明の半導体装置の一例を模式的に示す断面図である。
半導体装置100は、素子が形成された半導体基板1と、半導体基板1の上側(図1上側)に設けられた窒化珪素膜2と、窒化珪素膜2の上に設けられた層間絶縁膜3及びバリア層6で覆われた銅配線層4を有している。
層間絶縁膜3には、配線すべきパターンに対応した凹部が形成されており、その凹部内には銅配線層4が設けられている。
また、層間絶縁膜3と、銅配線層4との間には、改質処理層5が設けられている。
また、層間絶縁膜3の上側(窒化珪素膜2と反対側面)には、ハードマスク層7が形成されている。
層間絶縁膜3の形成方法としては、上記半導体基板1の窒化珪素膜2の上に、ワニスを直接塗布して形成することができるが、予め樹脂膜のドライフィルムを用意し、これは半導体基板1の窒化珪素膜2の上に積層するように形成することもできる。より具体的には、上記半導体基板1の窒化珪素膜2の上に、上記で得たベンゾオキサゾール前駆体又は樹脂組成物を含むコーティングワニスを直接塗布して塗膜を形成し、加熱及び/又は活性放射線を照射して硬化して形成することができる。ドライフィルムを用いる場合は、予め、上記で得たベンゾオキサゾール前駆体又は樹脂組成物を含むコーティングワニスを用いて、基材上に樹脂層を形成して乾燥して、ドライフィルムを形成し、これを、上記半導体基板1の窒化珪素膜2の上に、積層して、加熱及び/又は活性放射線を照射して硬化して形成することができる。
上記説明においては、窒化珪素膜2の上に形成する例を説明したが、樹脂膜を形成する位置はこれに限定されない。
【0035】
また、本実施の形態では、層間絶縁膜3を用いた半導体装置100について説明したが、本発明はこれに限定されない
本発明の半導体装置は、上述したような層間絶縁膜を用いているので寸法精度に優れ、絶縁性を十分に発揮できるので、それにより接続信頼性が優れている。
また、上述したような層間絶縁膜は、配線層との密着性に優れるので、半導体装置の接続信頼性をさらに向上できる。
また、上述したような層間絶縁膜は、誘電特性に優れているので、半導体装置の信号損失を低下することができる。
また、上述したような層間絶縁膜は、誘電特性に優れているので、配線遅延を低下することができる。
【0036】
(実施例)
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0037】
(1)5−[4−(3−ヒドロキシ−4−アミノ−フェノキシ)フェニル]−アダマンチル−1,3−ジカルボン酸の合成
アダマンチル−1,3−ジカルボン酸ジメチルの臭素化により得た1−ブロモ−アダマンチル−5−ジカルボン酸ジメチルとフェノールとのFeClによるフリーデル・クラフツ反応を行い、1−(4−ヒドロキシ−フェニル)−アダマンチル−1,3−ジカルボン酸ジメチルを得た(参考:Yaw-Terng Chern and Hann-Chyan Shiue, Macromolecules 1997, 30, 4646-4651)。
この化合物と、2−ベンジルオキシ−4−フルオロニトロベンゼンとのエーテル化反応、カルボン酸メチルの加水分解によるカルボン酸への変換、Pd−C触媒と水素によるヒドロキシル基の脱保護及びニトロ基の還元反応により、5−[4−(3−ヒドロキシ−4−アミノ−フェノキシ)フェニル]−アダマンチル−1,3−ジカルボン酸を合成した(参考:Yoshio Imai, Yasumasa Maeda, Hisashi Takeuchi, Ki-Hong Park, Masa-aki Kakimoto, Toshikazu Kurosaki, Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry, Vol. 40, 2656-2662 (2002))。
【0038】
(2) 2−アミノ−4−(3,5−ジメチル−1−アダマンチル)−フェノールの合成
1−ブロモ−3,5−ジメチル−アダマンタンとフェノールとのFeClによるフリーデル・クラフツ反応(参考:Yaw-Terng Chern and Hann-Chyan Shiue, Macromolecules 1997, 30, 4646-4651)、引き続き、硝酸によるニトロ化反応、Pd−C触媒と水素による還元反応により、2−アミノ−4−(3,5−ジメチル−1−アダマンチル)−フェノールを得た。
【0039】
(3) ベンゾオキサゾール前駆体の合成及び樹脂膜の作製
窒素ガスフロー下で、上記(1)で得た5−[4−(3−ヒドロキシ−4−アミノ−フェノキシ)フェニル]−アダマンチル−1,3−ジカルボン酸42.3g(0.1mol)を、乾燥したN−メチル−2−ピロリドン200gに溶解し、ピリジン17.4g(0.22mol)を添加した後、−15℃に冷却し、亜燐酸トリフェニル46.5g(0.15mol)を、少しずつ添加した。滴下終了後、−15℃で、1時間撹拌後、室温まで戻し、室温で2時間撹拌した。その後、上記(2)で得た2−アミノ−4−(3,5−ジメチル−1−アダマンチル)フェノール4.07g(0.015mol)を添加し、室温で2時間攪拌した。反応液を蒸留水4リットルに小さな液滴で滴下し、沈殿物を集めて乾燥することにより、ベンゾオキサゾール樹脂前駆体を得た。
得られたベンゾオキサゾール樹脂前駆体の数平均分子量(Mn)を、東ソー株式会社製ゲルパーミュエーションクロマトグラフ(GPC)を用いてポリスチレン換算で求めたところ、46,000であった。
【0040】
(3)樹脂膜の製造
上記ベンゾオキサゾール樹脂前駆体を、N−メチル−2−ピロリドンに溶解し、テフロン(登録商標)フィルターで濾過して、コーティング用のワニスを得た。このワニスを、シリコンウエハ上にスピンコーターを用いて塗布した。その後、窒素雰囲気のオーブン中で、90℃/1分間、250℃/1時間、350℃/1時間の順で加熱し、樹脂膜を得た。
【実施例2】
【0041】
(1)3,5−ビス[3−ヒドロキシ−4−アミノ−6−(3,5−ジメチル−1−アダマンチル)−フェノキシ]−安息香酸の合成
3−フルオロフェノールと1−ブロモ−3,5−ジメチル−アダマンタンとの反応(参考:Yaw-Terng Chern and Hann-Chyan Shiue, Macromolecules 1997, 30, 4646-4651)、続いて、ニトロ化反応、ベンジルブロマイドとのエーテル化反応により、2−ベンジルオキシ−4−フルオロ−5−(3,5−ジメチル−1−アダマンチル)−ニトロベンゼンを得た(参考:Yoshio Imai, Yasumasa Maeda, Hisashi Takeuchi, Ki-Hong Park, Masa-aki Kakimoto, Toshikazu Kurosaki, Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry, Vol. 40, 2656-2662 (2002))。
得られた化合物と、3,5−ジヒドロキシ−安息香酸メチルとのエーテル化反応、カルボン酸メチルの加水分解によるカルボン酸への変換、Pd−C触媒と水素によるヒドロキシル基の脱保護及びニトロ基の還元反応により、3,5−ビス[3−ヒドロキシ−4−アミノ−6−(3,5−ジメチル−1−アダマンチル)−フェノキシ]−安息香酸を合成した(参考:Yoshio Imai, Yasumasa Maeda, Hisashi Takeuchi, Ki-Hong Park, Masa-aki Kakimoto, Toshikazu Kurosaki, Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry, Vol. 40, 2656-2662 (2002))。
【0042】
(2)ベンゾオキサゾール前駆体の合成及び樹脂膜の作製
窒素ガスフロー下で、上記(1)で得た3,5−ビス(3−ヒドロキシ−4−アミノ−6−(3,5−ジメチル−1−アダマンチル)−フェノキシ)−安息香酸69.3g(0.1mol)を、乾燥したN−メチル−2−ピロリドン200gに溶解し、ピリジン17.4g(0.22mol)を添加した後、−15℃に冷却し、亜燐酸トリフェニル46.5g(0.15mol)を、少しずつ添加した。滴下終了後、−15℃で、1時間撹拌後、室温まで戻し、室温で2時間撹拌した。その後、3,5−ジメチル−アダマンチル−1−カルボン酸3.12g(0.015mol)を添加し、室温で2時間攪拌した。反応液を蒸留水4リットルに小さな液滴で滴下し、沈殿物を集めて乾燥することにより、ベンゾオキサゾール樹脂前駆体を得た。
得られたベンゾオキサゾール樹脂前駆体の数平均分子量(Mn)を、東ソー株式会社製GPCを用いてポリスチレン換算で求めたところ、44,000であった。
樹脂膜は実施例1と同様に作製して評価した。
【実施例3】
【0043】
(1) 1,1’−ビアダマンチル−3,3’,5,5’−テトラカルボン酸の合成
1−ブロモ−アダマンタンより、ジエチルエーテル中、マグネシウムを用いたカップリング反応、それに続く、臭素化反応により、3,3’,5,5’−テトラブロモ−1,1’−ビアダマンタンを合成した(参考:IIPe051, Polymer Preprints, Japan Vol. 50, No.2 (2001) p277)。
次に、このテトラブロモ化物を、Koch−Haafのカルボキシル化(濃硫酸中ギ酸との反応)により、1,1’−ビアダマンチル−3,3’,5,5’−テトラカルボン酸を得た(参考:Ludek Vodicka, Josef Janku and Jiri Burkhard, Collection Czechoslovak Chem. Commun. Vol. 48 (1983), p1162-1172)。
【0044】
(2)ベンゾオキサゾール前駆体の合成及び樹脂膜の作製
窒素ガスフロー下で、実施例1の(1)で得た5−[4−(3−ヒドロキシ−4−アミノ−フェノキシ)−フェニル]−アダマンチル−1,3−ジカルボン酸42.3g(0.1mol)、上記(1)で得た1,1’−ビアダマンチル−3,3’,5,5’−テトラカルボン酸0.223g(0.0005mol)を、乾燥したN−メチル−2−ピロリドン200gに溶解し、ピリジン17.4g(0.22mol)を添加した後、−15℃に冷却し、亜燐酸トリフェニル46.5g(0.15mol)を、少しずつ添加した。滴下終了後、−15℃で、1時間撹拌後、室温まで戻し、室温で2時間撹拌した。その後、2−アミノ−フェノール1.63g(0.015mol)を添加し、室温で2時間攪拌した。反応液を、蒸留水4リットルに小さな液滴で滴下し、沈殿物を集めて乾燥することにより、ベンゾオキサゾール樹脂前駆体を得た。
得られたベンゾオキサゾール樹脂前駆体の数平均分子量(Mn)を、東ソー株式会社製GPCを用いてポリスチレン換算で求めたところ、71,000であった。
樹脂膜は実施例1と同様に作製して評価した。
【実施例4】
【0045】
(1) 4,6−ビス(3,5−ジメチル−1−アダマンチル)−1,3−ビス(3−ヒドロキシ−4−アミノ−フェノキシ)−ベンゼンの合成
レゾルシノールと1−ブロモ−3,5−ジメチル−アダマンタンとの反応により4,6−ビス(3,5−ジメチル−アダマンチル)−レゾルシノールを合成し、2−ベンジルオキシ−4−フルオロニトロベンゼンとのエーテル化反応、Pd−C触媒と水素によるヒドロキシル基の脱保護及びニトロ基の還元反応により、4,6−ビス(3,5−ジメチル−1−アダマンチル)−1,3−ビス(3−ヒドロキシ−4−アミノ−フェノキシ)−ベンゼンを合成した(参考:Yoshio Imai, Yasumasa Maeda, Hisashi Takeuchi, Ki-Hong Park, Masa-aki Kakimoto, Toshikazu Kurosaki, Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry, Vol. 40, 2656-2662 (2002))。
【0046】
(2)ベンゾオキサゾール前駆体の合成及び樹脂膜の作製
窒素ガスフロー下で、実施例1の(1)で得た5−[4−(3−ヒドロキシ−4−アミノ−フェノキシ)−フェニル]−アダマンチル−1,3−ジカルボン酸42.3g(0.1mol)、上記(1)で得た4,6−ビス(3,5−ジメチル−1−アダマンチル)−1,3−ビス(3−ヒドロキシ−4−アミノ−フェノキシ)−ベンゼン0.649g(0.001mol)を、乾燥したN−メチル−2−ピロリドン200gに溶解し、ピリジン17.4g(0.22mol)を添加した後、−15℃に冷却し、亜燐酸トリフェニル68.2g(0.22mol)を、少しずつ添加した。滴下終了後、−15℃で、1時間撹拌後、室温まで戻し、室温で2時間撹拌した。その後、2−アミノ−フェノール1.63g(0.010mol)を添加し、室温で2時間攪拌した。反応液を、蒸留水4リットルに小さな液滴で滴下し、沈殿物を集めて乾燥することにより、ベンゾオキサゾール樹脂前駆体を得た。
得られたベンゾオキサゾール樹脂前駆体の数平均分子量(Mn)を、東ソー株式会社製GPCを用いてポリスチレン換算で求めたところ、52,000であった。
樹脂膜は実施例1と同様に作製して評価した。
【実施例5】
【0047】
(1)5−フェニルエチニル−イソフタル酸の合成
5−アミノ−イソフタル酸を原料として、特開2002−201158号公報に従って合成した。
【0048】
(2) ベンゾオキサゾール前駆体の合成及び樹脂膜の作製
窒素ガスフロー下で、実施例1の(1)で得た5−[4−(3−ヒドロキシ−4−アミノ−フェノキシ)−フェニル]−アダマンチル−1,3−ジカルボン酸13.55g(0.03mol)、実施例4(1)で得た4,6−ビス(3,5−ジメチル−1−アダマンチル)−1,3−ビス(3−ヒドロキシ−4−アミノ−フェノキシ)−ベンゼン12.98g(0.02mol)を、乾燥したN−メチル−2−ピロリドン200gに溶解し、ピリジン17.4g(0.22mol)を添加した後、−15℃に冷却し、亜燐酸トリフェニル24.8g(0.08mol)を、少しずつ添加した。滴下終了後、−15℃で、1時間撹拌後、室温まで戻し、室温で2時間撹拌した。その後、上記(1)で得た5−フェニルエチニル−イソフタル酸13.3g(0.05mol)を添加し、室温で2時間攪拌した。反応液を、蒸留水4リットルに小さな液滴で滴下し、沈殿物を集めて乾燥することにより、ベンゾオキサゾール樹脂前駆体を得た。
得られたベンゾオキサゾール樹脂前駆体の数平均分子量(Mn)を、東ソー株式会社製GPCを用いてポリスチレン換算で求めたところ、76,000であった。
樹脂膜は実施例1と同様に作製して評価した。
【実施例6】
【0049】
(1) 4,6−ビス(3,5−ジメチル−1−アダマンチル)−1,3−ビス(4−カルボキシ−フェノキシ)−ベンゼン
レゾルシノールと1−ブロモ−3,5−ジメチル−アダマンタンとの反応により、4,6−ビス(3,5−ジメチル−アダマンチル)−レゾルシノールを合成し、続いて、4−フルオロベンゾニトリルとのエーテル化反応、次にニトリルのカルボン酸への加水分解により、4,6−ビス(3,5−ジメチル−1−アダマンチル)−1,3−ビス(4−カルボキシ−フェノキシ)−ベンゼンを合成した(参考:Guey-Sheng Liou, Sheng-Huei Hsiao, Macromol. Chem. Phys. 201, 42-48(2000))。
【0050】
(2)ベンゾオキサゾール前駆体の合成及び樹脂膜の作製
窒素ガスフロー下で、実施例2の(1)で得た3,5−ビス[3−ヒドロキシ−4−アミノ−6−(3,5−ジメチル−1−アダマンチル)−フェノキシ]−安息香酸69.3g(0.1mol)、上記(1)で得た4,6−ビス(3,5−ジメチル−1−アダマンチル)−1,3−ビス(4−カルボキシ−フェノキシ)−ベンゼン26.99g(0.04mol)を、乾燥したN−メチル−2−ピロリドン200gに溶解し、ピリジン17.4g(0.22mol)を添加した後、−15℃に冷却し、亜燐酸トリフェニル68.2g(0.22mol)を、少しずつ添加した。滴下終了後、−15℃で、1時間撹拌後、室温まで戻し、室温で2時間撹拌した。その後、安息香酸2.44g(0.02mol)を添加し、室温で2時間攪拌した。反応液を、蒸留水4リットルに小さな液滴で滴下し、沈殿物を集めて乾燥することにより、ベンゾオキサゾール樹脂前駆体を得た。
得られたベンゾオキサゾール樹脂前駆体の数平均分子量(Mn)を、東ソー株式会社製GPCを用いてポリスチレン換算で求めたところ、68,000であった。
樹脂膜は実施例1と同様に作製して評価した。
【実施例7】
【0051】
(1)3,3’,5,5’−テトラキス[4−(3−ヒドロキシ−4−アミノ−フェノキシ)−フェニル]−1,1’−ビアダマンタンの合成
1−ブロモ−アダマンタンより、ジエチルエーテル中、マグネシウムを用いたカップリング反応、それに続く、臭素化反応により、3,3’−5,5’−テトラブロモ−1,1’−ビアダマンタンを合成した(参考:IIPe051, Polymer Preprints, Japan Vol. 50, No.2 (2001) p277)。次に、このテトラブロモ体とフェノールとのFeClによるフリーデル・クラフツ反応(参考:Yaw-Terng Chern and Hann-Chyan Shiue, Macromolecules 1997, 30, 4646-4651)によりテトラフェノール化した。
次に、このテトラフェノール化物と、2−ベンジロキシ−4−フルオロニトロベンゼンとのエーテル化反応、Pd−C触媒と水素によるヒドロキシル基の脱保護及びニトロ基の還元反応により、3,3’,5,5’−テトラキス[4−(3−ヒドロキシ−4−アミノ−フェノキシ)−フェニル]−1,1’−ビアダマンタンを合成した(参考:Yoshio Imai, Yasumasa Maeda, Hisashi Takeuchi, Ki-Hong Park, Masa-aki Kakimoto, Toshikazu Kurosaki, Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry, Vol. 40, 2656-2662 (2002))。
【0052】
(2) ベンゾオキサゾール前駆体の合成及び樹脂膜の作製
窒素ガスフロー下で、実施例2の(1)で得た3,5−ビス(3−ヒドロキシ−4−アミノ−6−(3,5−ジメチル−1−アダマンチル)−フェノキシ)−安息香酸20.8g(0.03mol)、上記(1)で得た3,3’,5,5’−テトラキス[4−(3−ヒドロキシ−4−アミノ−フェノキシ)−フェニル]−1,1’−ビアダマンタン18.7g(0.0175mol)を、乾燥したN−メチル−2−ピロリドン200gに溶解し、ピリジン17.4g(0.22mol)を添加した後、−15℃に冷却し、亜燐酸トリフェニル46.5g(0.15mol)を、少しずつ添加した。滴下終了後、−15℃で、1時間撹拌後、室温まで戻し、室温で2時間撹拌した。その後、実施例5(1)で得た5−フェニルエチニル−イソフタル酸13.3g(0.05mol)を添加し、室温で2時間攪拌した。反応液を、蒸留水4リットルに小さな液滴で滴下し、沈殿物を集めて乾燥することにより、ベンゾオキサゾール樹脂前駆体を得た。
得られたベンゾオキサゾール樹脂前駆体の数平均分子量(Mn)を、東ソー株式会社製GPCを用いてポリスチレン換算で求めたところ、73,000であった。
樹脂膜は実施例1と同様に作製して評価した。
【0053】
(比較例1)
(1)ベンゾオキサゾール前駆体の合成及び樹脂膜の作製
窒素ガスフロー下で、実施例4(1)で得た4,6−ビス(3,5−ジメチル−1−アダマンチル)−1,3−ビス(3−ヒドロキシ−4−アミノ−フェノキシ)−ベンゼン64.9g(0.1mol)、実施例6(2)で得た1,3−ビス(4−カルボキシ−フェノキシ)−4,6−ビス(3,5−ジメチル−1−アダマンチル)−ベンゼン67.5g(0.1mol)を、乾燥したN−メチル−2−ピロリドン200gに溶解し、ピリジン17.4g(0.22mol)を添加した後、−15℃に冷却し、亜燐酸トリフェニル46.5g(0.15mol)を、少しずつ添加した。滴下終了後、−15℃で、1時間撹拌後、室温まで戻し、室温で2時間撹拌した。反応液を蒸留水4リットルに小さな液滴で滴下し、沈殿物を集めて乾燥することにより、ベンゾオキサゾール樹脂前駆体を得た。
得られたベンゾオキサゾール樹脂前駆体の数平均分子量(Mn)を、東ソー株式会社製GPCを用いてポリスチレン換算で求めたところ、23,000であった。
樹脂膜は実施例1と同様に作製して評価した。
【0054】
(比較例2)
(1)3,5−ビス(3−ヒドロキシ−4−アミノ−フェノキシ)−安息香酸の合成
2−ベンジルオキシ−4−フルオロニトロベンゼンと3,5−ジヒドロキシ−安息香酸メチルとのエーテル化反応、カルボン酸メチルの加水分解によるカルボン酸への変換、Pd−C触媒と水素によるヒドロキシル基の脱保護及びニトロ基の還元反応により、3,5−ビス(3−ヒドロキシ−4−アミノ−フェノキシ)−安息香酸を合成した(参考:Yoshio Imai, Yasumasa Maeda, Hisashi Takeuchi, Ki-Hong Park, Masa-aki Kakimoto, Toshikazu Kurosaki, Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry, Vol. 40, 2656-2662 (2002))。
(2)ベンゾオキサゾール前駆体の合成及び樹脂膜の作製
窒素ガスフロー下で、上記(1)で得た3,5−ビス(3−ヒドロキシ−4−アミノ−フェノキシ)−安息香酸36.8g(0.1mol)を、乾燥したN−メチル−2−ピロリドン200gに溶解し、ピリジン17.4g(0.22mol)を添加した後、−15℃に冷却し、亜燐酸トリフェニル46.5g(0.15mol)を、少しずつ添加した。滴下終了後、−15℃で、1時間撹拌後、室温まで戻し、室温で2時間撹拌した。その後、安息香酸18.3g(0.015mol)を添加し、室温で2時間攪拌した。反応液を蒸留水4リットルに小さな液滴で滴下し、沈殿物を集めて乾燥することにより、ベンゾオキサゾール樹脂前駆体を得た。
得られたベンゾオキサゾール樹脂前駆体の数平均分子量(Mn)を、東ソー株式会社製GPCを用いてポリスチレン換算で求めたところ、57,000であった。
樹脂膜は実施例1と同様に作製して評価した。
【0055】
(比較例3)
窒素ガスフロー下で、比較例2の(1)で得た3,5−ビス(3−ヒドロキシ−4−アミノ−フェノキシ)−安息香酸36.8g(0.1mol)、トリメシン酸6.3g(0.03mol)を、乾燥したN−メチル−2−ピロリドン200gに溶解し、ピリジン17.4g(0.22mol)を添加した後、−15℃に冷却し、亜燐酸トリフェニル46.5g(0.15mol)を、少しずつ添加した。滴下終了後、−15℃で、1時間撹拌後、室温まで戻し、室温で2時間撹拌した。その後、安息香酸18.3g(0.015mol)を添加し、室温で2時間攪拌した。反応液を、蒸留水4リットルに小さな液滴で滴下し、沈殿物を集めて乾燥することにより、ベンゾオキサゾール樹脂前駆体を得た。
得られたベンゾオキサゾール樹脂前駆体の数平均分子量(Mn)を、東ソー株式会社製GPCを用いてポリスチレン換算で求めたところ、87,000であった。
樹脂膜は実施例1と同様に作製して評価した。
【0056】
(比較例4)
(1)1,3−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼンの合成
300mLナスフラスコに、1,3−ジヒドロキシベンゼン9.9g、2−ベンジルオキシ−4−フルオロニトロベンゼン44.4g、炭酸カリウム37.3g、N,N−ジメチルホルムアミド150mL及び撹拌子を投入し、窒素気流下、135℃で12時間加熱撹拌を行った。反応液を濾過した後、イオン交換水1Lに投入した。析出固体を濾過により回収し、更にイオン交換水1L中で1時間撹拌した後、減圧下で乾燥させることで、1,3−ビス(4−ニトロ−3−ベンジルオキシフェノキシ)ベンゼン42.3gを得た。
次に、300mLナスフラスコに、上記で得られた1,3−ビス(4−ニトロ−3−ベンジルオキシフェノキシ)ベンゼン42.0g、10%パラジウム−活性炭2.00g、N,N−ジメチルホルムアミド200mL及び撹拌子を投入し、水素雰囲気下、25℃で24時間撹拌を行った。反応液を濾過した後、イオン交換水1Lに投入した。析出固体を濾過により回収し、更にイオン交換水1L中で1時間撹拌した後、減圧下で乾燥させることで、1,3−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン30.5gを得た。
(2)アダマンタン−1,3,5,7−テトラカルボン酸テトラクロリドの合成
アダマンタンの臭素化からテトラブロモ化物を得て、次に、このテトラブロモ化物をKoch−Haafのカルボキシル化(濃硫酸中ギ酸との反応)により、アダマンタン−1,3,5,7−テトラカルボン酸を得た(Ludek Vodicka, Josef Janku and Jiri Burkhard, Collection Czechoslovak Chem. Commun. Vol. 48 (1983), p1162-1172)。次に、塩化チオニルを用いた酸クロリド化により、目的物であるアダマンタン−1,3,5,7−テトラカルボン酸テトラクロリドを得た(参考:Kenneth A Burdett, Synthesis, June 1991, p441-442)。
(3)ベンゾオキサゾール前駆体の合成及び樹脂膜の作製
窒素ガスフロー下で、上記(1)で得た1,3−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン32.43g(0.1mol)を、乾燥したN−メチル−2−ピロリドン200gに溶解し、ピリジン17.4g(0.22mol)を添加した後、−15℃に冷却し上記(2)で得たアダマンチル−1,3,5,7−テトラカルボン酸テトラクロリド18.5g(0.048mol)を、少しずつ添加した。滴下終了後、−15℃で、1時間撹拌後、室温まで戻し、室温で2時間撹拌した。その後、安息香酸クロリド2.11g(0.015mol)を添加し、更に室温で2時間攪拌した。反応液を、蒸留水4リットルに小さな液滴で滴下し、沈殿物を集めて乾燥することにより、ベンゾオキサゾール樹脂前駆体を得た。
得られたベンゾオキサゾール樹脂前駆体の数平均分子量(Mn)を、東ソー株式会社製GPCを用いてポリスチレン換算で求めたところ、32,000であった。
樹脂膜は実施例1と同様に作製して評価した。
【0057】
フィルム特性
実施例1〜7及び比較例1〜4で得られた樹脂膜について以下の評価を行った。評価項目を方法と共に示す。得られた結果を表1に示す。
1. ワニス保存性溶解性
ポリベンゾオキサゾール樹脂前駆体1gと、シクロヘキサノン3gを、ふた付きのガラス製サンプル容器に精秤し、撹拌子で1時間撹拌後、室温で1週間後の外観を調べた。外観において、析出物などの変化がなければ、○とした。
【0058】
2. 耐熱性
耐熱性は、ガラス転移温度及び熱分解温度で評価した。ガラス転移温度は、得られた樹脂膜を動的粘弾性測定装置(セイコーインスツルメンツ(株)製DMS6100)で窒素ガス300mL/min.フロー下、昇温速度3℃/min.、周波数1Hzの条件により測定し、tanδのピークトップ温度をガラス転移温度とした。
また、熱分解温度は、得られた樹脂膜をTG/DTA測定装置(セイコーインスツルメンツ(株)製TG/DTA220)を用いて、窒素ガス200mL/min.フロー下、昇温速度10℃/min.の条件により測定し、重量の減少が5%に到達した温度を熱分解温度とした。
【0059】
3. 比誘電率
JIS−K6911に準拠し、周波数100kHzで、ヒューレットパッカード社製HP−4284A Precision LCRメーターを用いて半導体用接着フィルムの容量測定を行い下記計算式により比誘電率を算出した。
比誘電率=(容量測定値×フィルムの厚み)/(真空の誘電率×測定面積)
【0060】
【表1】

【0061】
表1から明らかなように実施例1〜7はワニス保存性が優れかつ誘電率が低く、耐熱性にも優れていた。
また、比較例1及び4は、ガラス転移温度が低く、誘電率が高めであり、比較例2及び3は、ワニス保存性が悪く、誘電率もかなり高めであり、特性が劣っていた。
【0062】
次に、層間絶縁膜及び半導体装置について説明する。
(実施例8及び9)
半導体基板の上に窒化珪素層を形成し、該窒化珪素層上に、実施例1と実施例3の樹脂膜の製造で得られたコーティング用ワニスを塗布して、250℃で1時間及び400℃で1時間加熱処理して、厚さ0.3μmの層間絶縁膜を形成した。
次に、前記層間絶縁膜に所定のパターンを形成するように金属配線を形成して、半導体装置を得た。
【0063】
次に、得られた半導体装置について配線遅延速度を評価した。
実施例1の樹脂膜を用いて得られた実施例8の半導体装置と、実施例3の樹脂膜を用いて得られた実施例9の半導体装置と、この半導体装置と同様な構成でSiO絶縁膜を有する半導体装置との配線遅延の程度を比較した。評価の基準には、リングオシュレータの発信周波数から換算して求めた信号遅延時間を採用した。両者を比較した結果、本発明で得られた半導体装置では、配線遅延が少なく、実施例8では約14%の速度が向上し、また、実施例9では約20%の速度の向上があることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】図1は、本発明の半導体装置の一例を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0065】
1 半導体基板
2 窒化珪素膜
3 層間絶縁膜
4 銅配線層
5 改質処理層
6 バリア層
7 ハードマスク層
100 半導体装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
o−アミノフェノール基とカルボン酸基とを合わせて3つ以上有する化合物(C)を含んで構成されるベンゾオキサゾール前駆体。
【請求項2】
前記ベンゾオキサゾール前駆体は、分岐構造を有するものである請求項1に記載のベンゾオキサゾール前駆体
【請求項3】
前記ベンゾオキサゾール前駆体は、一般式(1)で表される構造を有するものである、請求項1又は2に記載のベンゾオキサゾール前駆体。
【化1】

(式(1)中のXは、ダイヤモンドイド構造より構成される基、芳香族基又はダイヤモンドイド構造より構成される基と芳香族基とを含む基を示し、Aは、X上の基であり、式(2)で表される基を示し、Bは、X上の基であり、式(3)で表される基を示す。m及びnは、それぞれ、Xに結合しているA及びBの基の数を表し、1以上、4以下の整数で、m+nは3以上である。)
【請求項4】
前記ベンゾオキサゾール前駆体は、少なくとも2つのo−アミノフェノール基を有する化合物(A)を含んで構成されるものである請求項1乃至3のいずれか1項に記載のベンゾオキサゾール前駆体。
【請求項5】
前記ベンゾオキサゾール前駆体は、少なくとも3つのo−アミノフェノール基を有する化合物(A)を含んで構成されるものである請求項1乃至4のいずれか1項に記載のベンゾオキサゾール前駆体。
【請求項6】
前記ベンゾオキサゾール前駆体は、少なくとも2つのカルボン酸基を有する化合物(B)を含んで構成されるものである請求項1乃至5のいずれか1項に記載のベンゾオキサゾール前駆体。
【請求項7】
前記ベンゾオキサゾール前駆体は、架橋基を有するものである請求項1乃至6のいずれか1項に記載のベンゾオキサゾール前駆体。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のベンゾオキサゾール前駆体を含む樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のベンゾオキサゾール前駆体又は請求項8に記載の樹脂組成物を有機溶媒に溶解させたコーティングワニス。
【請求項10】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のベンゾオキサゾール前駆体、請求項8に記載の樹脂組成物、又は請求項9に記載のコーティングワニスより構成される樹脂膜。
【請求項11】
請求項10記載の樹脂膜を有する半導体装置。
【請求項12】
前記樹脂膜は、層間絶縁膜及び/又は保護膜として有するものである請求項11に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記樹脂膜は、半導体基板の所定の位置に、請求項9に記載のコーティングワニスを塗布して塗膜を形成し、前記塗膜を、加熱及び/又は活性放射線の照射することにより硬化して得られたものである請求項11又は12に記載の半導体装置。

【図1】
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【公開番号】特開2007−16220(P2007−16220A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−158352(P2006−158352)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】