説明

ペースト塗布装置およびペースト塗布方法

【課題】ハンダ粉などのフィラーを含有したペーストなどを、基板などの被塗布物に安定して微少量塗布するペースト塗布装置を提供する。
【解決手段】ペースト塗布装置100は、(a)尖端に吐出口122が形成され、吐出口122を下側にして被塗布物102の上方に配置され、内部にペースト101が入れられた状態で上下に移動可能であり、吐出口122から滴下しないで膨出するペースト101の液滴が被塗布物102に接触する位置まで下降するノズル121と、(b)ノズル121がその位置で停止している間にノズル121の内部でペースト101の中を先端が上下に移動可能であり、ペースト101の中を下降すれば、吐出口122から滴下しないようにペースト101の液滴を膨出させ、ペースト101の中を上昇すれば、被塗布物102に接触したペースト101の液滴を吐出口122の付近のペースト101から分断させるピン125とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピンの先端に付着したペーストを被塗布物に塗布するペースト塗布装置およびペースト塗布方法に関し、特に、ペーストを被塗布物に安定して微少量塗布するペースト塗布装置およびペースト塗布方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化・薄型化・高密度化が要求されている。この要求を満たす電子機器を製造するにあたって、フリップチップ実装で微小な電子部品を配線基板上に実装する方法が使用されている。ただし、電子部品の微小化に伴い、バンプが微小化・狭ピッチ化になっている。このため、狭ピッチで微小なバンプに微少量のハンダペーストを安定して塗布することが要求されている。これに対して、タングステン製のピンの先端に付着した液体を被塗布物に転写させる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
具体的には、図5(A)〜図5(D)に示すように、ペースト塗布装置10は、タングステン製のピン25の先端部26に付着させたペースト11を被塗布物12に塗布する装置である。図5(A)に示すように、ノズル21の先端に形成された開口部22が、被塗布物12の表面から所定の高さに配置する。図5(B)に示すように、ノズル21の内部に入れられたペースト11の中をピン25が下降する。図5(C)に示すように、ピン25の先端部26に微少量のペースト11を付着させた状態で、開口部22からピン25の先端部26が抜け出す。図5(D)に示すように、ピン25の先端部26に付着したペースト11が被塗布物12に接触するまで下降する。ピン25の先端部26に付着させたペースト11を被塗布物12に塗布する。
【特許文献1】特開2006−320795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のペースト塗布装置10において、ペースト11としてハンダ粉を含有したペーストを使用した場合は、塗布不良が生じたり、塗布量が不安定になったりする。ここでは、一例として、ハンダ粉と樹脂とを50wt%の配合比で含有したペースト11がノズル21の内部に入れられているとする。
【0005】
例えば、図6に示すように、ノズル21の開口部22とピン25の先端部26との間隔が、ペースト11に含まれるハンダ粉13の直径よりも小さいとする。この場合においては、ピン25の先端部26がノズル21の開口部22を通過するときに、ピン25の先端部26とノズル21の開口部22との間隙にハンダ粉が咬み込む。これによって、ピン25の下降動作が阻害される。さらに、ピン25が曲がったり、ノズル21が破損したりする。結果、装置の動作不具合や装置の破損が生じ、ペースト11が被塗布物12に塗布できなくなり、塗布不良が生じる。
【0006】
また、図7(A)〜図7(C)に示すように、ノズル21の開口部22とピン25の先端部26との間隔が、ペースト11に含まれるハンダ粉13の直径よりも大きいとする。この場合においては、塗布が完了した後、ピン25が上昇するときに、ピン25の側壁に付着しているペースト11がノズル21の開口部22で掻き取られ、ノズル21の開口部22にペースト滴14が形成される。次の塗布点に塗布するためにピン25が下降すれば、ノズル21の開口部22に形成されたペースト滴13がピン25の先端部26に追加される。これによって、先の塗布点に対する塗布量よりも多くのペースト11がピン25の先端部26に付着し、塗布量が増大する。このように、塗布点ごとに、塗布量が変動するので、塗布量が不安定になる。
【0007】
すなわち、ピン25の先端部26とノズル21の開口部22との間隔が、ハンダ粉13の直径よりも小さい場合は、塗布不良が生じる。また、ピン25の先端部26とノズル21の開口部22との間隔が、ハンダ粉13の直径よりも大きい場合は、塗布量が不安定になる。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、ハンダ粉などのフィラーを含有したペーストなどを、基板などの被塗布物に安定して微少量塗布するペースト塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係わるペースト塗布装置は、下記に示す特徴を備える。
(CL1)ペースト塗布装置は、(a)尖端に吐出口が形成され、前記吐出口を下側にして被塗布物の上方に配置され、内部にペーストが入れられた状態で上下に移動可能であり、前記吐出口から滴下しないで膨出するペーストの液滴が前記被塗布物に接触する位置まで下降するノズルと、(b)前記ノズルが前記位置で停止している間に前記ノズルの内部でペーストの中を先端が上下に移動可能であり、前記ペーストの中を下降すれば、前記吐出口から滴下しないようにペーストの液滴を膨出させ、前記ペーストの中を上昇すれば、前記被塗布物に接触したペーストの液滴を前記吐出口付近のペーストから分断させるピンとを備える。
【0010】
なお、本発明は、ペースト塗布装置として実現されるだけではなく、下記に示すペースト塗布方法として実現されるとしてもよい。
(CL6)ペースト塗布方法は、(a)尖端に吐出口が形成され、前記吐出口を下側にして被塗布物の上方に配置され、内部にペーストが入れられた状態で上下に移動可能であるノズルが、前記吐出口から滴下しないで膨出するペーストの液滴が前記被塗布物に接触する位置まで下降する第1の工程と、(b)前記ノズルが前記位置で停止している間に前記ノズルの内部でペーストの中を先端が上下に移動可能であるピンが、前記ペーストの中を下降し、前記吐出口から滴下しないようにペーストの液滴を膨出させて前記被塗布物に接触させる第2の工程と、(c)前記第2の工程で前記吐出口から出ないで下降させたピンが、前記ペーストの中を上昇し、前記被塗布物に接触したペーストの液滴を前記吐出口付近のペーストから分断させる第3の工程とを含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ピンの先端部が、ノズルの吐出口から出ないで、ノズルの内部に入れられたペーストの中を垂直方向に移動する。このため、ノズルの吐出口からピンの先端部が出ることによって生じる問題が起きない。
【0012】
例えば、ペーストにハンダ粉が含まれているとする。この場合において、ペーストに含まれるハンダ粉がノズルの吐出口とピンの先端部との隙間に嵌まり込まないので、ピンの下降動作が阻害されることがなく、ピンが曲がったり、ノズルが破損したりすることがない。すなわち、装置の動作不具合や装置の破損が生じ難く、塗布不良が生じ難い。
【0013】
また、ピンの先端部がノズルの吐出口から出ないので、先端部の側壁に付着したペーストが吐出口で掻き取られることがない。このため、ノズルの吐出口にペースト滴が形成されないので、ピンの先端部に付着するペーストの量が一定になり、先の塗布点に対する塗布量よりも増大し難い。
【0014】
これらのことから、ペースト塗布装置は、ハンダ粉などのフィラーが含まれているペーストを、基板などの被塗布物に安定して微少量塗布することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(実施の形態)
以下、本発明に係わる実施の形態について説明する。
<概要>
図1(A)〜図1(D)に示すように、ペースト塗布装置100は、ペースト101を微少量吐出する装置である。図1(A)に示すように、ノズル121の尖端に吐出口122が形成されている。吐出口122を下側にして被塗布物102の上方にノズル121が配置されている。ノズル121の内部にペースト101が入れられている。ペースト101にハンダ粉103が含まれている。ノズル121の内部に入れられているペースト101の中に、上下方向に配置されたピン125の先端126が入れられている。
【0016】
まず、図1(B)に示すように、被塗布物102の表面から高さH以内に吐出口122が配置されるまで、ノズル121を下降させる。ここで、高さHは、吐出口122から滴下しないで膨出するペースト101の液滴が被塗布物102に接触する高さである。被塗布物102の表面から高さH以内に吐出口122が停止している間に、図1(C)に示すように、ピン125を下降させてペースト101の液滴105を吐出口122から被塗布物102に接触するまで膨出させる。図1(D)に示すように、ピン125を上昇させて被塗布物102に接触したペースト101の液滴105を吐出口122の付近のペースト101から分断させる。
【0017】
<ペースト塗布装置100>
ここでは、一例として、図2に示すように、ペースト塗布装置100は、基台111、昇降台115、ノズル121、ピン125などを備える。
【0018】
<基台111>
基台111は、水平方向に広がる台である。図中において、左側の上面に、被塗布物が設置されるステージ112が水平方向に移動可能な状態で取り付けられている。右側の上面から垂直方向に支柱113が伸びている。支柱113の上部の左側に、垂直方向に滑動可能な部分を有する昇降台スライド114が形成されている。
【0019】
<昇降台115>
昇降台115は、垂直方向に伸びる垂直部分115aと、水平方向に伸びる水平部分115bとを有する。図中において、水平部分115bがステージ112の上方に配置されている。水平部分115bが下側になる配置で垂直部分115aが昇降台スライド114に垂直方向に移動可能な状態で取り付けられている。水平部分115bに、ノズル121が保持されている。垂直部分115aの上部の左側に、垂直方向に滑動可能な部分を有するスライダ固定体116が固定されている。スライダ固定体116の左側に、ピン125が取り付けられるスライダ可動体117が垂直方向に移動可能な状態で取り付けられている。
【0020】
なお、図には示していないが、ステージ112、昇降台115、およびスライダ可動体117の各々は、パルスモータやエアシリンダなどの駆動源を備えた駆動機構(不図示)によって昇降する。例えば、駆動源にパルスモータが使用されている場合は、送りネジのリードに合わせたパルス数に応じて、パルスモータに供給する電流を制御する。また、駆動源にエアシリンダが使用されている場合は、位置検出センサーとストッパーなどを組み合わせて、エアシリンダに供給する空気の圧力を制御する。
【0021】
<ノズル121>
ノズル121は、横断面形状が円形であって、一端が先細りした管状であって、ガラス製または樹脂製の容器である。一端にペースト101の液滴が吐出される吐出口122が形成されている。他端にピン125が出入り可能な開口123が形成されている。内部にペースト101が入れられ、吐出口122を下側にして、ステージ122の上方に配置されている。昇降台115の水平部分115bに設置されている。
【0022】
<ピン125>
ピン125は、横断面形状が円形であって、タングステン製の針である。一端がノズル121の内部に入れられ、他端がスライダ可動体117に取り付けられている。中心軸がノズル121の中心軸上に配置されている。先端部126が、ノズル121の内部に入れられたペースト101に入れられ、塗布中、ペースト101の中を垂直方向に移動する。先端部126の形状が、ペースト101の中でピン125を下降させるときにペースト101から受ける抵抗よりもピン125を上昇させるときにペースト101から受ける抵抗の方が大きくなる形状である。ここでは、一例として、図3(A)に示すように、ピン125の先端部126の形状として、先に向かって次第に細くなるテーパ状の部分127を連ねた形状とする。
【0023】
なお、ピン125の先端部126の形状として、先に向かって次第に細くなるテーパ状の部分127を単独で構成した形状であるとしてもよい。また、図3(B)に示すように、部分的に先に向かって深く抉られた切欠き128からなる形状であるとしてもよい。
【0024】
<ペースト塗布方法>
次に、ペースト塗布装置100の動作について説明する。
ここでは、一例として、ペースト101は、配合比50wt%で平均粒径20μmのハンダ粉を樹脂に含有してできたものであり、粘度20Pa・sであるとする。このとき、ノズル121は、内径1.9mmのノズル121の先端をテーパ状に熱成形して、尖端を平らにカットして口径0.3mmの吐出口122を形成した容器であることが好適である。ピン125は、直径0.3mmであることが好適であり、図3(A)に示すように、先に向かって次第に細くなるテーパ状の部分127を連ねた形状の先端部126を有する針である。ピン125の上昇時の移動速度は、ピン125の下降時の移動速度と同一とする。
【0025】
(1)予め、ノズル121の内部にペースト101が入れられている。ペースト101が入れられたノズル121が被塗布物102の上方に配置されている。ピンの先端部126がペースト101に入れられている。被塗布物102を水平方向に移動させてノズル121の下方に塗布点を移動させている。このとき、図1(A)に示すように、吐出口122の付近のペースト101が、表面張力の作用で、ノズル121の吐出口122より僅かに内側に凹んでいる。吐出口122より滴下して漏れ出すことなく安定してノズル121の内側に保たれている。
【0026】
(2)まず、昇降台スライド114に沿って昇降台115を下降させる。このとき、図1(B)に示すように、ノズル121の吐出口122が被塗布物102の表面から、距離H、上方に離れた位置に到達するまで、昇降台115を下降させる。これに伴って、ノズル121とピン125とが連動して下降する。ここでは、一例として、距離Hを0.15mmとする。これは、吐出口122の口径の0.5倍に相当する。
【0027】
(3)次に、スライダ固定体116に沿ってスライダ可動体117を下降させる。このとき、図1(C)に示すように、ピン125の先端部126がノズル121の吐出口122から、距離h、上方に離れた位置に到達するまで、スライダ可動体117を、例えば、移動速度2mm/秒で下降させる。これに伴い、ピン125の先端部126がペースト101から抵抗を受けながら下降する。ノズル121の尖端の形状(テーパ状)によって、ピン125の下方におけるペースト101の液圧が高められる。下降するピン125によって高められた液圧によって、ピン125が吐出口122から下に出なくても、吐出口122からペースト101の液滴が膨出する。吐出口122から膨出したペースト101の液滴が被塗布物102に接触する。ここでは、一例として、距離hを1mmとする。
【0028】
(4)次に、スライダ固定体116に沿ってスライダ可動体117を上昇させる。このとき、図1(D)に示すように、ピン125の先端部126が、ピン125が下降する前に先端部126が配置されていた位置に到達するまで、スライダ可動体117を、例えば、移動速度2mm/秒で上昇させる。これに伴い、吐出口122の付近のペースト101が強制的にノズル121の内部に引き込まれる。被塗布物102に接触したペースト101の液滴が吐出口122の付近のペースト101から分断される。一旦、ノズル121の内部に引き込まれたペースト101は、自重と表面張力がバランスして、ピン125の下降前の状態になる。
【0029】
そして、ペースト101の液滴が塗布されると、ノズル121の下方に次の塗布点を移動させる。
なお、吐出口122の口径とピン125の直径とは、バンプの寸法に最適な寸法とする。例えば、具体例として、上記の各条件の下で、被塗布物102に塗布されたペースト101の液滴の直径が約0.3mmであり、高さが約0.1mmである場合には、ペースト101の液滴内にハンダ粉が観察された。
【0030】
なお、距離Hは、吐出口122の口径の0.5倍以上から1.5倍以下までが好適である。距離Hがこの範囲よりも短いと、液滴がぬれ広がり、距離Hがこの範囲よりも長いと、塗布量を多くしないと、液滴が塗布されない。
【0031】
なお、ペースト101の液滴の形状は、ペースト101の性状、ノズル121の形状、吐出口122の口径、ピン125の形状・サイズ・移動速度など、多くのパラメータが関連して決定される。さらに、液圧によって変化する。例えば、液圧が高い場合は、半球状の液滴よりも膨らんだ液滴になる。また、液圧が低い場合は、半球状の液滴よりも萎んだ液滴になる。ただし、半球状の液滴よりも膨らんだ液滴は、自重で滴下する可能性が高い。また、半球状の液滴よりも萎んだ液滴は、表面張力で形状が不安定になる場合がある。
【0032】
なお、ペースト101の液滴を吐出口122の付近のペースト101から分断するにあたって、ノズル121の吐出口122より気泡が進入しない範囲でピン125の上昇時の移動速度を速めるとしてもよい。この場合においても、吐出口122の付近のペースト101がピン125の上昇に伴い強制的にノズル121の内部に引き込まれ、被塗布物102に接触したペースト101の液滴が吐出口122で、より素早く分断される。
【0033】
なお、ピン125の上昇時の移動速度を下降時の移動速度よりも速くするとしてもよい。例えば、上記の例において、ピン125の下降時の移動速度を2mm/秒とし、上昇時の移動速度を4mm/秒としてもよい。この場合においては、液滴の切れがよく、精度のよい塗布ができた。
【0034】
なお、上昇時の移動速度が下降時の移動速度の2倍以上としてもよいが、速すぎると、ペースト101の液滴に泡が発生し易くなる。
<まとめ>
以上、本実施の形態によれば、ピン125の先端部126が、ノズル121の吐出口122から出ないで、ノズル121の内部に入れられたペースト101の中を垂直方向に移動する。このため、ノズル121の吐出口122からピン125の先端部126が出ることによって生じる問題が起きない。
【0035】
例えば、ペースト101にハンダ粉103が含まれているとする。この場合において、ペースト101に含まれるハンダ粉103がノズル121の吐出口122とピン125の先端部126との隙間に嵌まり込まないので、ピン125の下降動作が阻害されることがなく、ピン125が曲がったり、ノズル121が破損したりすることがない。すなわち、装置の動作不具合や装置の破損が生じ難く、塗布不良が生じ難い。
【0036】
また、ピン125の先端部126がノズル121の吐出口122から出ないので、先端部126の側壁に付着したペースト101が吐出口122で掻き取られることがない。このため、ノズル121の吐出口122にペースト滴が形成されないので、ピン125の先端部126に付着するペースト101の量が一定になり、先の塗布点に対する塗布量よりも塗布量が増大し難い。
【0037】
これらのことから、ペースト塗布装置100は、ハンダ粉103などのフィラーが含まれているペースト101を、基板などの被塗布物102に安定して微少量塗布することができる。
【0038】
(その他)
なお、点状に塗布する代わりに、線状に塗布するとしてもよい。具体的には、ペースト101の液滴が塗布されると、塗布されたペースト101の液滴に、次に塗布されるペーストの液滴が重なるように、ステージ112を水平方向に移動させる。次に塗布される位置にペーストの液滴が塗布される。これを繰り返し行うことで、ペーストの液滴が線状に塗布された部分ができる。このとき、図4(A)に示すように、先に塗布したペースト101の液滴との重なりを少なくした場合は、塗布点141と塗布点142との間に括れ143が生じる。括れ部分144のハンダ粉103の分布が少なくなり、線状に塗布された部分145のハンダ粉103が不均一である。これに対して、図4(B)に示すように、先に塗布したペーストの液滴との重なりを塗布直径の半分以上にした場合は、括れがなくなり、線状に塗布された部分146のハンダ粉103がほぼ均一に分布している。これによって、微細幅の直線あるいは曲線状にペーストを塗布することができる。
【0039】
なお、本発明に係わる実施の形態では、ペースト101に含有されるフィラーとしてハンダ粉を使用した。しかし、本発明は、フィラーの材質・粒径・形状、配合比、ペースト粘度などによって限定されるものではない。また、フィラーを含まない液体に対しても有用である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、ピンの先端に付着したペーストを被塗布物に塗布するペースト塗布装置などとして、特に、ペーストを被塗布物に安定して微少量塗布するペースト塗布装置などとして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】(A)〜(D)は、実施の形態におけるペースト塗布装置の動作を示す断面図である。
【図2】実施の形態におけるペースト塗布装置を示す側面図である。
【図3】(A),(B)は、実施の形態におけるピンの先端部の拡大図である。
【図4】(A),(B)は、実施の形態の変形例におけるペーストの塗布状態を示す図である。
【図5】(A)〜(D)は、従来の技術におけるペースト塗布装置の動作を示す断面図である。
【図6】従来の技術におけるペースト塗布装置において、ピンの先端部とノズルの開口部との隙間にハンダ粉が咬み込む問題を示す断面図である。
【図7】(A)〜(C)は、従来の技術におけるペースト塗布装置において、ノズルの開口部に形成されたペースト滴がピンの先端部に追加される問題を示す断面図である。
【符号の説明】
【0042】
10 ペースト塗布装置
11 ペースト
12 被塗布物
13 ハンダ粉
14 ペースト滴
21 ノズル
22 開口部
25 ピン
26 先端部
100 ペースト塗布装置
101 ペースト
102 被塗布物
103 ハンダ粉
105 液滴
111 基台
112 ステージ
113 支柱
114 昇降台スライド
115 昇降台
115a 垂直部分
115b 水平部分
116 スライダ固定体
117 スライダ可動体
121 ノズル
122 吐出口
123 開口
125 ピン
126 先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
尖端に吐出口が形成され、前記吐出口を下側にして被塗布物の上方に配置され、内部にペーストが入れられた状態で上下に移動可能であり、前記吐出口から滴下しないで膨出するペーストの液滴が前記被塗布物に接触する位置まで下降するノズルと、
前記ノズルが前記位置で停止している間に前記ノズルの内部でペーストの中を先端が上下に移動可能であり、前記ペーストの中を下降すれば、前記吐出口から滴下しないようにペーストの液滴を膨出させ、前記ペーストの中を上昇すれば、前記被塗布物に接触したペーストの液滴を前記吐出口付近のペーストから分断させるピンと
を備えることを特徴とするペースト塗布装置。
【請求項2】
前記位置が、前記被塗布物の表面から前記吐出口までの高さが前記吐出口の口径の0.5倍以上から1.5倍以下までの範囲内になる位置である
ことを特徴とする請求項1に記載のペースト塗布装置。
【請求項3】
前記ピンの上昇時における移動速度が、前記ピンの下降時における移動速度以上である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のペースト塗布装置。
【請求項4】
前記ピンの上昇時における移動速度が、前記ピンの下降時における移動速度の2倍以上である
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のペースト塗布装置。
【請求項5】
前記ピンの先端の形状が、前記ピンを下降させるときにペーストから受ける抵抗よりも前記ピンを上昇させるときにペーストから受ける抵抗の方が大きくなる形状である
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のペースト塗布装置。
【請求項6】
尖端に吐出口が形成され、前記吐出口を下側にして被塗布物の上方に配置され、内部にペーストが入れられた状態で上下に移動可能であるノズルが、前記吐出口から滴下しないで膨出するペーストの液滴が前記被塗布物に接触する位置まで下降する第1の工程と、
前記ノズルが前記位置で停止している間に前記ノズルの内部でペーストの中を先端が上下に移動可能であるピンが、前記ペーストの中を下降し、前記吐出口から滴下しないようにペーストの液滴を膨出させて前記被塗布物に接触させる第2の工程と、
前記第2の工程で前記吐出口から出ないで下降させたピンが、前記ペーストの中を上昇し、前記被塗布物に接触したペーストの液滴を前記吐出口付近のペーストから分断させる第3の工程とを含む
ことを特徴とするペースト塗布方法。
【請求項7】
前記位置を、前記被塗布物の表面から前記吐出口までの高さが前記吐出口の口径の0.5倍以上から1.5倍以下までの範囲内になる位置とする
ことを特徴とする請求項6に記載のペースト塗布方法。
【請求項8】
前記ピンを上昇させるときの移動速度を、前記ピンを下降させるときの移動速度以上とする
ことを特徴とする請求項6又は7に記載のペースト塗布方法。
【請求項9】
塗布点を変えながら、前記第2の工程と前記第3の工程とを繰り返すことによって、ペーストの液滴を複数の点状に塗布する
ことを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載のペースト塗布方法。
【請求項10】
塗布点を変えながら、ペーストの液滴を重ねるようにして前記第2の工程と前記第3の工程とを繰り返すことによって、線状に塗布する
ことを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載のペースト塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−87320(P2010−87320A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255868(P2008−255868)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】