説明

ペースト塗布装置およびペースト塗布方法

【課題】塗布パターンが異なる複数種類の塗布対象部を有する単位基板が複数作り込まれた基板を対象とする場合において、適正な塗布品質を確保することができるペースト塗布装置およびペースト塗布方法を提供することを目的とする。
【解決手段】塗布パターンが異なる複数種類の塗布対象部を有する単位基板が複数作り込まれた基板を対象とする塗布動作処理において、一の種類の塗布対象部についてペーストを試し塗布した後に検査手段によって塗布状態の良否を検査し、この検査結果に基づいて必要ならばペースト塗布機構の塗布条件パラメータを修正した後、複数の単位基板における当該一の塗布対象に順次ペーストを塗布する単一種類塗布工程を、全ての種類の塗布対象部について反復して実行する。これにより、塗布条件の経時変動によるペーストの吐出状態の変動を抑制して、適正な塗布品質を確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に半導体装置などの電子部品を接着するためのペーストを塗布するペースト塗布装置およびペースト塗布方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置製造のダイボンディング工程では、樹脂製のパッケージ基板などの基板に半導体チップを接着するためのペーストが塗布される。このペーストの塗布は、ディスペンサから吐出されるペーストを塗布ノズルを介して基板の塗布対象に対して吐出させることにより行われる(特許文献1参照)。電子部品の接着においては、ペーストを接着範囲内に極力均一に塗布する必要があるため、この塗布方法として、塗布ノズルを基板上で水平移動させながらペーストを吐出することにより塗布を行う描画塗布が多用される。
【0003】
この描画塗布においては、ペーストの粘度が経時変化することなどに起因する塗布状態の変動を防止するため、塗布されたペーストをカメラによって撮像して、塗布形状や塗布量が正常であるか否かを判定するための塗布状態検査が行われる(特許文献2参照)。この結果、塗布状態が不良と判定された場合には、ペーストを吐出させるためにシリンジに供給する空圧の圧力値などの塗布条件パラメータを補正する。これにより、塗布ノズルから吐出されるペーストの塗布形状や塗布量が常に良好に保たれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−218136号公報
【特許文献2】特開2003−4661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年電子機器の小型化が進展するのに伴い、半導体装置などの電子部品を基板に実装する実装密度が高密度化し、1つの基板に複数のパッケージ基板が形成された多面取り基板を対象として、複数の半導体装置をそれぞれのパッケージ基板にペーストによって接着して実装する、いわゆるマルチタイプのボンディング形態が用いられる場合がある。この場合には、半導体装置の形状・サイズによって、対応する塗布対象部における塗布パターンが異なるため、上述の塗布状態検査を各塗布対象部について実行する必要がある。従来は、複数の塗布対象部のそれぞれについて塗布状態検査を実行して、適正な塗布条件パラメータの補正値を求めた後、1つのパッケージ基板において複数種類の塗布対象部の全てに順次ペーストを塗布する単位塗布作業を、各パッケージ基板毎に反復実行するようにしていた。
【0006】
しかしながら、上記従来方法によって複数種類の塗布対象部を有するパッケージ基板に連続的にペーストを塗布する場合には、塗布動作実行順序に起因して以下のような不具合を生じていた。すなわち上述のペースト塗布作業においては、複数のパッケージ基板のそれぞれに対して複数回の塗布作業を反復して実行する必要があることから、1つの多面取り基板を対象とする単位塗布作業が完了するまでには、長い作業時間を有する。このため、単位塗布作業を各パッケージ基板毎に順次実行する過程におけるペーストの粘度変化など、塗布条件の経時変動によって塗布ノズルから吐出されるペーストの吐出状態が不安定となり、塗布品質の不良を生じる場合があった。このように、従来のペースト塗布装置およびペースト塗布方法には、塗布パターンが異なる複数種類の塗布対象部を有する単位基板が複数作り込まれた基板を対象とする場合に、適正な塗布品質を確保することが困難であるという課題があった。
【0007】
そこで本発明は、塗布パターンが異なる複数種類の塗布対象部を有する単位基板が複数作り込まれた基板を対象とする場合において、適正な塗布品質を確保することができるペースト塗布装置およびペースト塗布方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のペースト塗布装置は、塗布パターンが異なる複数種類の塗布対象部を有する単位基板が複数作り込まれた基板にペーストを塗布する機能を有するペースト塗布装置であって、塗布条件パラメータに基づき前記ペーストを塗布ノズルから吐出して前記塗布対象に塗布するペースト塗布機構と、前記塗布ノズルを前記基板に対して相対移動させるノズル移動機構と、前記ペースト塗布機構によって試し塗布されたペーストを撮像することにより、試し塗布されたペーストの塗布状態の良否を検査する検査手段と、前記検査手段による検査結果に基づいて前記ペースト塗布機構およびノズル移動機構を制御することにより、複数の前記単位基板の塗布対象に前記ペーストを塗布するペースト塗布動作を実行させる制御部とを備え、前記制御部は、一の種類の前記塗布対象部についてペーストを試し塗布した後に前記検査手段によって塗布状態の良否を検査し、この検査結果に基づいて前記塗布条件パラメータを修正した後、全ての前記単位基板の当該一の種類の塗布対象部に順次ペーストを塗布する単一種類塗布工程を、全ての種類の塗布対象部について反復して実行させる。
【0009】
本発明のペースト塗布方法は、ペーストを塗布ノズルから吐出して塗布対象に塗布するペースト塗布機構と、前記塗布ノズルを基板に対して相対移動させるノズル移動機構と、前記ペースト塗布機構によって試し塗布されたペーストを撮像することにより、試し塗布されたペーストの塗布状態の良否を検査する検査手段と、前記検査手段による検査結果に基づいて前記ペースト塗布機構およびノズル移動機構を制御することにより、複数の前記単位基板の複数の前記塗布対象部に前記ペーストを塗布するペースト塗布動作を実行させる制御部とを備えたペースト塗布装置によって、塗布パターンが異なる複数の塗布対象部を有する単位基板が複数作り込まれた前記基板にペーストを塗布するペースト塗布方法であって、一の種類の塗布対象部についてペーストを試し塗布した後に前記検査手段によって塗布状態の良否を検査し、この検査結果に基づいて前記ペースト塗布機構の塗布条件パラメータを修正した後、前記複数の単位基板における当該一の塗布対象に順次ペーストを塗布する単一種類塗布工程を、全ての種類の塗布対象部について反復して実行する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、塗布パターンが異なる複数種類の塗布対象部を有する単位基板が複数作り込まれた基板を対象とする場合において、一の種類の塗布対象部についてペーストを試し塗布した後に検査手段によって塗布状態の良否を検査し、この検査結果に基づいてペースト塗布機構の塗布条件パラメータを修正した後、複数の単位基板における当該一の塗布対象に順次ペーストを塗布する単一種類塗布工程を、全ての種類の塗布対象部について反復して実行することにより、塗布条件の経時変動によるペーストの吐出状態の変動を抑制して、適正な塗布品質を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態のダイボンディング装置の斜視図
【図2】本発明の一実施の形態のダイボンディング装置における作業対象となる基板の構成説明図
【図3】本発明の一実施の形態のダイボンディング装置における塗布ヘッドの構成説明図
【図4】本発明の一実施の形態のダイボンディング装置における試し塗布および塗布状態検査処理の動作説明図
【図5】本発明の一実施の形態のダイボンディング装置におけるノズル高さ検出部の機能説明図
【図6】本発明の一実施の形態のダイボンディング装置の制御系の構成を示すブロック図
【図7】本発明の一実施の形態のダイボンディング装置によるペースト塗布動作に用いられる塗布データおよび基板データの構成を示す図
【図8】本発明の一実施の形態のダイボンディング装置におけるペーストの塗布動作処理を示すフロー図
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。まず、図1,図2,図3を参照して、ダイボンディング装置1の構成および機能を説明する。図1において、ダイボンディング装置1は、基板位置決め機構2に位置決め保持された基板3に電子部品接合用のボンディングペースト(以下、単に「ペースト」と略記する。)を塗布する機能を有するペースト塗布機構部1Aと、ペーストが塗布された基板3に、部品供給部4から取り出した半導体装置などの電子部品をボンディングするボンディング機構部1Bより構成される。
【0013】
図2(a)に示すように、ダイボンディング装置1の作業対象となる基板3は、単位基板3aが規則配列で複数作り込まれた多面取り基板であり、これらの単位基板3aに対してペースト塗布および電子部品のボンディングが行われる。図2(b)に示すように、単位基板3aには複数の塗布対象部(ここでは種類が異なる3つの第1塗布対象部31、第2塗布対象部32、第3塗布対象部33)が設けられている。第1塗布対象部31、第2塗布対象部32、第3塗布対象部33には、それぞれ塗布形状および塗布量が異なる第1塗布パターン31a、第2塗布パターン32a、第3塗布パターン33aが設定されている。第1塗布パターン31a、第2塗布パターン32a、第3塗布パターン33aは、それぞれ大型、中型および小型の電子部品の接合に適した塗布形状・塗布量の塗布パターンであり、第1塗布パターン31aはスターマーク形状、第2塗布パターン32aはX字形状、第3塗布パターン33aはドット形状となっている。
【0014】
基板位置決め機構2は基板搬送装置(図示省略)によって搬入された基板3を保持する基板保持テーブル2bを移動テーブル2aの上面に結合した構成となっており、移動テーブル2aを駆動することにより、基板3は水平方向に移動して位置決めされる。基板位置決め機構2の上方には、第1シリンジ12A、第2シリンジ12Bが装着された塗布ヘッド10が塗布ヘッド駆動機構11によってX,Y,Z方向に移動自在に配設されている。
【0015】
図3に示すように、塗布ヘッド10には、それぞれシリンジホルダ20を備えた第1シリンジ装着部21A、第2シリンジ装着部21Bが設けられており、第1シリンジ装着部21A、第2シリンジ装着部21Bにはペースト18を貯留した第1シリンジ12A、第2シリンジ12Bが交換自在に装着される。ここで、第1シリンジ装着部21A、第2シリンジ装着部21Bは、装着されるシリンジを特定できるよう、番号(#1,#2)によって区分されている。また、塗布ヘッド10には第1シリンジ装着部21Aおよび第2シリンジ装着部21Bの高さを選択的に変更する機構を内蔵しており、ペーストを塗布する際にペーストを塗布するシリンジの塗布ノズル19の下端部の高さをそれ以外のシリンジの塗布ノズルの下端部の高さよりも低い位置に位置させる。
【0016】
第1シリンジ12A、第2シリンジ12Bは、エア配管(図示省略)を介してそれぞれ第1空圧ユニット13A、第2空圧ユニット13Bに接続されている。第1空圧ユニット13A、第2空圧ユニット13Bは、制御部30(図6参照)から指令される圧力パラメータ(塗布条件パラメータ)に基づいて、第1シリンジ12A、第2シリンジ12Bに空圧を供給する。これにより第1シリンジ12A、第2シリンジ12Bは、下端部に接続された塗布ノズル19から、指令された圧力パラメータに応じた吐出量のペースト18を吐出する。なお第1シリンジ12A、第2シリンジ12Bとしては、シリンジ自体の型式・ノズルサイズおよび貯留されるペーストの組成が同一のものを2つ用いる形態であっても、またはこれらの一方または双方ともが異なる2つのシリンジを組み合わせて用いる形態であってもよく、同一基板内における塗布対象部の塗布特性に応じてこれらの組み合わせが選定される。
【0017】
第1シリンジ12A、第2シリンジ12B、第1空圧ユニット13A、第2空圧ユニット13Bは、圧力パラメータに基づきペースト18を塗布ノズル19から吐出して、基板3に設定された塗布対象部に塗布するペースト塗布機構を構成する。ここで、第1シリンジ装着部21Aに装着された第1シリンジ12Aおよび第1空圧ユニット13Aはディスペンスユニット#1を構成し、第2シリンジ装着部21Bに装着された第2シリンジ12Bおよび第2空圧ユニット13Bはディスペンスユニット#2を構成する(図6参照)。そして塗布ヘッド10を移動させる塗布ヘッド駆動機構11は、塗布ノズル19を基板3に対して相対移動させるノズル移動機構となっている。
【0018】
塗布ヘッド駆動機構11によって塗布ヘッド10を所定の塗布パターンに応じた軌跡で移動させながら、第1シリンジ12Aまたは第2シリンジ12Bのいずれかの塗布ノズル19からペースト18を吐出させることにより、基板位置決め機構2に保持された基板3の単位基板3aにおいて、第1塗布対象部31、第2塗布対象部32、第3塗布対象部33には、それぞれ第1塗布パターン31a、第2塗布パターン32a、第3塗布パターン33aに従ってペースト18が描画塗布される。
【0019】
すなわち、ペースト塗布機構部1A(ペースト塗布装置)は、第1シリンジ12A、第2シリンジ12Bに貯留されたペースト18を空圧によって塗布ノズル19から吐出することにより、このペースト18を基板3に設定された塗布対象部に塗布する機能を有しており、塗布パターンが異なる複数種類(ここでは3種類)の塗布対象部(第1塗布対象部31、第2塗布対象部32、第3塗布対象部33)を有する単位基板3aが複数作り込まれた基板3を対象として、ペースト18を塗布する例を示している。
【0020】
塗布ヘッド10には、塗布ヘッド駆動機構11によって塗布ヘッド10と一体的に移動する基板認識用のカメラ14が装着されている。カメラ14を基板位置決め機構2上に移動させて基板3を撮像することにより、基板3における単位基板3aの位置が認識される。またカメラ14を以下に説明する試し打ちステージ8の上方に移動させることにより、試し打ちされたペースト18の塗布状態を検査することができる。
【0021】
基板位置決め機構2には、捨て打ち捕集部7、試し打ちステージ8、ノズル高さ検出部9が付設されている。捨て打ち捕集部7は、第1シリンジ12A、第2シリンジ12Bによって実際のペースト塗布以外の目的によって吐出されるペースト18、例えば塗布ノズル19内の目詰まり状態を解消するために強制的に吐出されるペースト18などを捕集する。
【0022】
試し打ちステージ8は、前述のペースト塗布機構によって塗布ノズル19から吐出されたペースト18の、塗布状態の良否を検査するために使用される。すなわち基板3へのペースト18の塗布に先立って、塗布ヘッド10を試し打ちステージ8の上方に移動させ、図4(a)に示すように、塗布ノズル19を試し打ちステージ8に対して下降させて、所定の塗布条件でペースト18を塗布面8aに塗布する。
【0023】
次いで図4(b)に示すように、カメラ14を試し打ちステージ8の上方に位置させ、ペースト18を撮像することにより、図4(c)に示すように、塗布された状態のペースト18の平面画像が取得される。この画像を認識処理することにより、塗布されたペースト18の輪郭形状および平面投影面積Aが求められる。そしてこれらを予め記憶された判定基準データと比較することにより、ペースト18の塗布状態の良否が判定されるとともに、判定基準データとの偏差を検出してこの偏差を減少させるように圧力パラメータを補正するためのフィードバックデータが取得される。
【0024】
ノズル高さ検出部9は、塗布ヘッド10に第1シリンジ12A、第2シリンジ12Bが装着された状態における、塗布ノズル19の下端部の高さ位置を検出する機能を有している。図5に示すように、ノズル高さ検出部9は凹字形状のブラケット9aに、投光部23a、受光部23bより成る光学センサを取り付けた構成となっており、投光部23aから受光部23bに至る光軸aの高さ位置hは、予め基板保持テーブル2bの高さ基準と関連づけられている。したがって、光軸aの高さ位置に塗布ノズル19の下端部が一致したタイミングにおける塗布ヘッド駆動機構11のZ軸駆動高さを求めることにより、基板保持テーブル2bに保持された基板3の上面の塗布対象面と塗布ノズル19の高さ位置との相対位置を検出することができる。
【0025】
ペースト塗布を正常に行うためには、ノズル高さ、すなわち塗布ノズル19の吐出口と塗布対象面との隙間を適正に設定する必要があるが、塗布動作の途中でペースト切れが発生してシリンジ交換を行った場合には、塗布ノズル19の装着高さが変化するため、この隙間は一定とはならず変動する。このため、シリンジ交換を実行する度に、塗布ヘッド10をノズル高さ検出部9に対してアクセスさせて、装着状態における塗布ノズル19の下端部の高さを検出する。すなわち図5に示すように、塗布ノズル19をノズル高さ検出部9に対して下降させる過程において、塗布ノズル19の下端部が光軸aに一致するタイミングを検出処理部24によって検出する。これにより、ノズル高さを調整するための基準高さ位置を求めることができる。
【0026】
次にボンディング機構部1Bの構成を説明する。基板位置決め機構2のY方向の側方には部品供給部4が配設されている。部品供給部4は、それぞれ個片に分割された複数の第1部品6A,第2部品6B,第3部品6Cを貼着保持した複数の保持テーブル5を、インデックス機構4aによって垂直軸廻りにインデックス回転させる構成となっている。第1部品6A,第2部品6B,第3部品6Cは、それぞれ単位基板3aの第1塗布対象部31、第2塗布対象部32、第3塗布対象部33に実装される電子部品に対応している。
【0027】
部品供給部4の上方には、下部に吸着ノズル15aを備えたボンディングヘッド15 が、ボンディングヘッド駆動機構16 によってX,Y,Z方向に移動自在に配設されている。複数の保持テーブル5のいずれかをボンディングヘッド15 による部品ピックアップ位置に移動させた状態で、ボンディングヘッド駆動機構16 によってボンディングヘッド15 に部品取り出し動作を行わせることにより、第1部品6A,第2部品6B,第3部品6Cは、部品供給部4から吸着ノズル15aによって吸着保持されて取り出される。次いで塗布ヘッド10を基板位置決め機構2上に移動させて、ボンディングヘッド15 にボンディング動作を行わせることにより、第1部品6A,第2部品6B,第3部品6Cは、ペースト塗布後の単位基板3aに順次ボンディングされる。
【0028】
次に図6を参照して、制御系の構成を説明する。制御部30は、第1シリンジ12A、第1空圧ユニット13Aより成るディスペンスユニット#1、第2シリンジ12B、第2空圧ユニット13Bより成るディスペンスユニット#2、塗布ヘッド駆動機構11、基板位置決め機構2、ボンディング機構部1Bを制御する。また制御部30には、カメラ14による撮像結果、ノズル高さ検出部9による検出結果、タッチパネル入力機能を備えた表示・入力部25からの操作指令が伝達される。
【0029】
制御部30は、内部制御機能としての塗布動作実行部30a、試し塗布実行部30b、塗布状態検査部30c、データ設定部30d、ボンディング動作実行部30eを備えている。塗布動作実行部30a(塗布制御部)は、基板位置決め機構2、塗布ヘッド駆動機構11および第1シリンジ12A、第1空圧ユニット13Aより成るディスペンスユニット#1、第2シリンジ12B、第2空圧ユニット13Bより成るディスペンスユニット#2を制御することにより、基板位置決め機構2に保持された基板3の各単位基板3aの第1塗布対象部31、第2塗布対象部32、第3塗布対象部33に、所定の塗布パターンにしたがってペースト18を塗布する塗布動作を実行させる。この塗布動作においては、記憶部40に記憶された塗布データ41、基板データ42を参照するとともに、ノズル高さ検出部9による塗布ノズル19の高さ検出結果に基づいて塗布ヘッド10の下降高さを制御することにより、塗布ノズル19の高さ位置を適正なノズル高さ位置に調整する。
【0030】
試し塗布実行部30bは、試し打ちステージ8に塗布ヘッド10を移動させて行われるペースト18の試し塗布動作を、基板位置決め機構2、塗布ヘッド駆動機構11、ディスペンスユニット#1、#2に実行させるための処理を行う。塗布状態検査部30cは、試し打ちステージ8に試し塗布されたペースト18の塗布状態の良否を検査するための処理を実行する。すなわち試し塗布されたペースト18をカメラ14によって撮像し、この撮像データを認識処理した結果を判定基準データと比較することにより、塗布状態の良否を判定する。カメラ14および塗布状態検査部30cは、ペースト塗布機構によって基板3に塗布されたペースト18または試し打ちステージ8に試し塗布されたペースト18を撮像することにより、塗布されたペースト18の塗布状態の良否を検査する検査手段を構成する。
【0031】
塗布動作実行部30aによる塗布動作の制御においては、検査手段による検査結果に基づいて前述のペースト塗布機構およびノズル移動機構を制御することにより、複数の単位基板3aの塗布対象部にペースト18を塗布するペースト塗布動作が実行される。さらに、塗布動作実行部30aは、ペースト塗布機構を制御するとともに、上述の検査手段による検査結果に基づいて圧力パラメータを調整するフィードバック処理を行う。
【0032】
データ設定部30dは、表示・入力部25によって入力され記憶部40に記憶された各種のデータの設定処理を行う。ボンディング動作実行部30eは、部品供給部4、ボンディングヘッド15 、ボンディングヘッド駆動機構16 より成るボンディング機構部1Bを制御して、ペースト塗布後の複数の単位基板3aに対して第1部品6A,第2部品6B,第3部品6Cをボンディングするための作業動作を実行させる。
【0033】
次に記憶部40に記憶されるデータの内容について、図7を参照して説明する。塗布データ41は、単位基板3aにおいて塗布パターンが異なる複数種類の塗布対象部にペースト18をそれぞれの描画パターンで描画塗布するためのデータであり、塗布対象部の種類毎(換言すればボンディングされる電子部品の種類毎)に設定される。すなわち、図7(a)に示すように、塗布データ41は、データ番号41aに、描画データ41b、標準圧力パラメータ41c、オフセット圧力パラメータ41d、ディスペンスユニット区分41eを対応させたデータ構成となっている。データ番号41aは、単位基板3aにおける塗布対象部の種類毎に付与され、図7(a)に示す例では、データ番号1,2,3が、それぞれ図2(b)に示す第1塗布対象部31、第2塗布対象部32、第3塗布対象部33に対応している。
【0034】
描画データ41bは、塗布対象部に描画塗布されるペースト18の形状をコード(W001,W002,・・・)によって示すものである。図7(a)において別枠*で示すように、描画データ41bは、コード41b1にその描画データによって実現される塗布形状41b2を対応させたものとなっている。すなわちここに示す例では、W001,W002には、それぞれサイズの異なるドット形状の塗布パターンが対応しており、W003,W004にはそれサイズの異なるX字形状の塗布パターンが、さらにW005には塗布量の多い塗布パターンであるスターマーク型の塗布パターンが対応している。
【0035】
標準圧力パラメータ41cおよびオフセット圧力パラメータ41dは、ペーストを吐出させるためにシリンジ内に供給される空圧の圧力を規定する圧力パラメータである。したがって記憶部40は、圧力パラメータを記憶する圧力パラメータ記憶部となっている。ここで標準圧力パラメータ41c(P0i)は、塗布対象部の塗布パターンに適した標準的な空圧値に対応して設定される固定パラメータである。ここでは、交換によって新たに装着されるシリンジに対して適正な塗布結果を与える空圧値を試行などによって求め、この空圧値を標準的な空圧値として採用する。なおP0iにおける添字(i)は、データ番号iに対応したパラメータであることを示す。
【0036】
オフセット圧力パラメータ41d(P1i)は、このようにして設定された標準的な空圧値の補正値、すなわち後述するフィードバック処理によって標準的な空圧値に対して自動的に逐次設定される補正値に対応しており、塗布動作実行の各タイミングに応じて変動する変動パラメータである。なおP1iにおける添字(i)は、データ番号iに対応したパラメータであることを示しており、以下の記述においてPに添えて表記される(i)も同様である。
【0037】
ディスペンスユニット区分41eは、ペースト塗布動作に際して用いられるディスペンスユニットを特定するデータであり、各データ番号41aに対応して、すなわちボンディング対象となる電子部品の部品種に適用される塗布パターンに対応して予め設定される。塗布動作実行に際しては、対象となるデータ番号に対応したディスペンスユニット区分41eを読み出すことにより、塗布ヘッド10において#1,#2のマークよって特定されるシリンジ装着部(図3参照)のいずれに装着されたシリンジを用いるかが特定される。すなわち、本実施の形態においては、ペースト塗布機構にシリンジを装着する複数(ここでは2つ)のシリンジ装着部21A,21Bを備え、圧力パラメータ記憶部である記憶部40には、標準圧力パラメータ41cおよびオフセット圧力パラメータ41dに加えて、当該塗布パターンの塗布に使用するシリンジが装着されるシリンジ装着部を特定するディスペンスユニット区分41e(装着部特定データ)が、複数の塗布パターン毎に設定されている。
【0038】
次に、図8のフローを参照して、ダイボンディング装置1によって基板3に電子部品接合用のペーストを塗布する塗布動作処理について説明する。この塗布動作処理は、図2に示すように、塗布パターンが異なる複数種類の塗布対象部を有する単位基板3aが複数作り込まれた基板3を対象として、塗布パターン毎に順次ペーストを塗布するものである。
【0039】
まず各塗布パターンに対応して設定されるカウンタ値Kを、初期値の0にセットする(ST1)。次いで、カウンタ値Kを歩進させてK+1に置き換え(ST2)、記憶部40に記憶された塗布データ41からデータ番号Kの塗布データを読み取る(ST3)。まず動作開始時にはデータ番号1の塗布データ、すなわち図7(a)に示す描画データ(W005)、標準圧力パラメータ(P01)、オフセット圧力パラメータ(P11)およびディスペンスユニット区分(#1)の各データが読み出される。次いで塗布ヘッド10を試し打ちステージ8にアクセスさせ、上述の塗布データに基づいて試し打ちステージ8にペースト18を試し塗布する(ST4)。次いで、試し塗布されたペースト18をカメラ14によって撮像し、塗布状態検査部30cによって塗布状態検査を実行する(ST5)。
【0040】
この検査においては、塗布状態がOKであるか否かが判定され(ST6)、OKであれば塗布動作を実行する(ST7)。すなわち、塗布ヘッド10を基板3上に移動させ、対象となるデータ番号1に対応する第1塗布対象部31(図2参照)を対象として、対応するディスペンサユニット#1によって標準圧力パラメータ(P01)、オフセット圧力パラメータ(P11)に基づき、ペースト18を吐出して、描画データ(W005)の塗布パターンで描画塗布を行う。この描画塗布は、基板3に作り込まれた全ての単位基板3aを対象として順次実行される。また(ST6)において塗布状態がNGであると判定されたならば、塗布動作実行部30aによってオフセット圧力パラメータ41dを補正した後、(ST4)以降の処理が、(ST6)にて塗布状態OKと判定されるまで反復実行される。
【0041】
そしてこの後、さらに塗布動作を実行すべき他の塗布パターンの設定があるか否かを塗布データ41を参照して確認する(ST9)。ここで他の塗布パターンの設定ありの場合には、(ST2)以降の処理を、(ST9)にて他の塗布パターン無しが確認されるまで反復実行する。これにより、同様の処理がデータ番号2,3について反復実行される。そして(ST9)にて他の塗布パターン無しを確認することにより、塗布動作処理を終了する。
【0042】
すなわち上述の塗布動作処理においては、制御部30は、一の種類の塗布対象部(第1塗布対象部31、第2塗布対象部32、第3塗布対象部33のいずれか一つ)についてペースト18を試し塗布した後に、前述の検査手段によって塗布状態の良否を検査し、この検査結果に基づいて圧力パラメータ(塗布条件パラメータ)を修正した後、全ての単位基板3aの当該一の種類の塗布対象部に順次ペースト18を塗布する単一種類塗布工程を、全ての種類の塗布対象部について反復して実行させる形態となっている。
【0043】
これにより、塗布形状が異なる複数種類の塗布対象部を有する単位基板3aが複数作り込まれた基板3を対象とする場合において、圧力パラメータを修正した後に当該圧力パラメータに基づく塗布動作が完了するまでに経過する時間を極力短くすることができる。したがって、塗布条件の経時変動によるペーストの吐出状態の変動を抑制して、適正な塗布品質を確保することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のペースト塗布装置およびペースト塗布方法は、塗布パターンが異なる複数種類の塗布対象部を有する単位基板が複数作り込まれた基板を対象とする場合において、適正な塗布品質を確保することができるという効果を有し、パッケージ基板に半導体装置をボンディングする分野において有用である。
【符号の説明】
【0045】
1 ダイボンディング装置
1A ペースト塗布機構部
1B ボンディング機構部
2 基板位置決め機構
3 基板
3a 単位基板
4 部品供給部
6A 第1部品
6B 第2部品
6C 第3部品
8 試し打ちステージ
9 ノズル高さ検出部
10 塗布ヘッド
12A 第1シリンジ
12B 第2シリンジ
13A 第1空圧ユニット
13B 第2空圧ユニット
14 カメラ
15 ボンディングヘッド
18 ペースト
19 塗布ノズル
21A 第1シリンジ装着部
21B 第2シリンジ装着部
31 第1塗布対象部
31a 第1塗布パターン
32 第2塗布対象部
32a 第2塗布パターン
33 第3塗布対象部
33a 第3塗布パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布パターンが異なる複数種類の塗布対象部を有する単位基板が複数作り込まれた基板にペーストを塗布する機能を有するペースト塗布装置であって、
塗布条件パラメータに基づき前記ペーストを塗布ノズルから吐出して前記塗布対象に塗布するペースト塗布機構と、
前記塗布ノズルを前記基板に対して相対移動させるノズル移動機構と、
前記ペースト塗布機構によって試し塗布されたペーストを撮像することにより、試し塗布されたペーストの塗布状態の良否を検査する検査手段と、
前記検査手段による検査結果に基づいて前記ペースト塗布機構およびノズル移動機構を制御することにより、複数の前記単位基板の塗布対象に前記ペーストを塗布するペースト塗布動作を実行させる制御部とを備え、
前記制御部は、一の種類の前記塗布対象部についてペーストを試し塗布した後に前記検査手段によって塗布状態の良否を検査し、この検査結果に基づいて前記塗布条件パラメータを修正した後、全ての前記単位基板の当該一の種類の塗布対象部に順次ペーストを塗布する単一種類塗布工程を、全ての種類の塗布対象部について反復して実行させることを特徴とするペースト塗布装置。
【請求項2】
ペーストを塗布ノズルから吐出して塗布対象に塗布するペースト塗布機構と、前記塗布ノズルを基板に対して相対移動させるノズル移動機構と、前記ペースト塗布機構によって試し塗布されたペーストを撮像することにより、試し塗布されたペーストの塗布状態の良否を検査する検査手段と、前記検査手段による検査結果に基づいて前記ペースト塗布機構およびノズル移動機構を制御することにより、複数の前記単位基板の複数の前記塗布対象部に前記ペーストを塗布するペースト塗布動作を実行させる制御部とを備えたペースト塗布装置によって、塗布パターンが異なる複数の塗布対象部を有する単位基板が複数作り込まれた前記基板にペーストを塗布するペースト塗布方法であって、
一の種類の塗布対象部についてペーストを試し塗布した後に前記検査手段によって塗布状態の良否を検査し、この検査結果に基づいて前記ペースト塗布機構の塗布条件パラメータを修正した後、前記複数の単位基板における当該一の塗布対象に順次ペーストを塗布する単一種類塗布工程を、全ての種類の塗布対象部について反復して実行することを特徴とするペースト塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−200821(P2011−200821A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71957(P2010−71957)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】