説明

ホイールの製造方法及びホイール

【課題】機械的強度が優れ、しかも、機械的強度が均一なホイールを製造することができるホイールの製造方法及びホイールを提供すること。
【解決手段】本発明は、軽金属合金を溶融し、溶融原料とする準備工程S1と、溶融原料を鋳造し、鋳造ビレットとする鋳造工程S2と、鋳造ビレット1を加圧圧縮し、鍛造ビレット2とする予備鍛造工程S3と、鍛造ビレット2を金型で加圧鍛造し、プレホイール3a,3bとする本鍛造工程S4と、該プレホイールを熱処理する熱処理工程S5と、プレホイール3a,3bに対し機械加工を施す成型工程S6と、を備えるホイールの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイールの製造方法及びホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車用タイヤには、枠体としての金属製のホイールが備わっている。
近年、かかるホイールにおいては、極力、軽量でデザイン性の高いものが望まれている。
【0003】
このようなホイールの製造方法としては、例えば、軽合金素材を用いて熱間型鍛造によりディスク面、外側リム、及び内側リムからなるホイールを一体に成形する軽合金製ホイールの製造方法が知られている(例えば、特許文献1又は2参照)。
また、車軸が装着されるハブ部と、ハブ部の周囲に位置するデザイン面を有するディスク部と、このディスク部の周縁に一体で形成されたリム部を備えたロードホイールにおいて、アルミニウム合金を鍛造して成るアルミニウム合金製鍛造ロードホイールが知られている(例えば、特許文献3参照)。
さらに、マグネシウム合金を歪加工する歪加工工程と、再結晶温度で熱処理して再結晶化する再結晶化工程と、を有するマグネシウム合金の組織制御方法が知られている(例えば、特許文献4参照)。
これらのホイールは、いずれも鋳造されたビレット(以下「鋳造ビレット」という。)から加圧鍛造することによって、得られるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平03−002573号公報
【特許文献2】特公平03−002574号公報
【特許文献3】特開2007−210017号公報
【特許文献4】特開2007−308780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1〜4に記載のホイールの製造方法は、いずれも、鋳造ビレットが鍛造により複雑な形状に成形されるので、全体的にではなく、部分的にしか引き延ばされない結果、金属組織的にみて、機械的強度が弱い部分が生じることになる。すなわち、得られるホイールの機械的強度が不均一となる。
【0006】
具体的には、従来のホイールにおいて、円柱状の鋳造ビレットを、鍛造用のプレス機に設置し、一対の金型で軸方向に押圧すると、鋳造ビレットは、半径方向へ延展することになる。このとき、ハブ部分を成形する原材料は、大きな変位を受けないので、従来のホイールの製造方法では金属組成の結晶粒径は、ハブ部分が特に大きくなる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、機械的強度が優れ、しかも、機械的強度が均一なホイールを製造することができるホイールの製造方法及びホイールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、従来の鋳造ビレットを加圧鍛造するのではなく、一旦、鍛造したビレットを所定の大きさに加圧圧縮することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、(1)軽金属合金を溶融し、溶融原料とする準備工程と、該溶融原料を鋳造し、鋳造ビレットとする鋳造工程と、該鋳造ビレットを加圧圧縮し、鍛造ビレットとする予備鍛造工程と、該鍛造ビレットを金型で加圧鍛造し、プレホイールとする本鍛造工程と、該プレホイールを熱処理する熱処理工程と、該プレホイールに対し機械加工を施す成型工程と、を備えるホイールの製造方法に存する。
【0010】
本発明は、(2)本鍛造工程が、鍛造ビレットに対して、第1加圧鍛造、第2加圧鍛造及び第3加圧鍛造の3段の加圧鍛造を施し、プレホイールとする工程である上記(1)記載のホイールの製造方法に存する。
【0011】
本発明は、(3)本鍛造工程が、鍛造ビレットに対して、1段の加圧鍛造を施し、プレホイールとする工程である上記(1)記載のホイールの製造方法に存する。
【0012】
本発明は、(4)鍛造ビレットが鍛流線を有する上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載のホイールの製造方法に存する。
【0013】
本発明は、(5)加圧圧縮が、密閉鍛造によるものである上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載のホイールの製造方法に存する。
【0014】
本発明は、(6)加圧鍛造が、回転鍛造、密閉鍛造又は自由鍛造によるものである上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載のホイールの製造方法に存する。
【0015】
本発明は、(7)予備鍛造工程において、鋳造ビレットを一方向に加圧圧縮してプレ鍛造ビレットとし、該プレ鍛造ビレットを加圧圧縮した方向とは異なる方向に更に加圧圧縮して鍛造ビレットとする上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載のホイールの製造方法に存する。
【0016】
本発明は、(8)機械加工が、スピニング加工を含み、該スピニング加工が常温で施される上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載のホイールの製造方法に存する。
【0017】
本発明は、(9)軽金属合金が、アルミニウム合金であり、加圧圧縮の鍛錬比が3.5以上である上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載のホイールの製造方法に存する。
【0018】
本発明は、(10)軽金属合金が、マグネシウム合金であり、加圧圧縮の鍛錬比が4.0以上である上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載のホイールの製造方法に存する。
【0019】
本発明は、(11)加圧圧縮が300〜550℃の温度、9.8×10kN〜88.2×10kNの圧力条件下で施される上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載のホイールの製造方法に存する。
【0020】
本発明は、(12)軽金属合金が、カルシウムを4〜8質量%含む上記(10)記載のホイールの製造方法に存する。
【0021】
本発明は、(13)ホイールが車両用である上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載のホイールの製造方法に存する。
【0022】
本発明は、(14)ホイールが飛翔体部品用である上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載のホイールの製造方法に存する。
【0023】
本発明は、(15)上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載のホイールの製造方法により得られるホイールであって、ディスク部と、該ディスク部の周縁に設けられた外リム部及び内リム部と、を備えるホイールに存する。
【0024】
本発明は、(16)ディスク部、外リム部及び内リム部が、一体となっている上記(15)記載のホイールに存する。
【0025】
本発明は、(17)ディスク部、外リム部及び内リム部の少なくとも1つの金属結晶粒子のJIS H0542の切断法に基づく平均粒径が30μm以下である上記(15)記載のホイールに存する。
【0026】
本発明は、(18)ディスク部、外リム部及び内リム部が、いずれも鍛流線を有する上記(15)記載のホイールに存する。
【0027】
なお、本発明の目的に添ったものであれば、上記(1)〜(18)を適宜組み合わせた構成も採用可能である。
【発明の効果】
【0028】
本発明のホイールの製造方法によれば、鋳造ビレットを加圧圧縮し、鍛造ビレットとする予備鍛造工程を備える点に主なる特徴を有するので、その後、本鍛造工程を施すことにより、たとえ複雑な形状に成形され、部分的にしか引き延ばされないとしても、鍛造ビレットの段階で、金属組織の金属結晶粒子が微細化されるので、金属結晶粒子の結晶粒径が微細なホイールが得られる。このため、十分に均一な機械的強度を有するホイールを得ることができる。なお、上記ホイールの製造方法においては、軽金属合金がアルミニウム合金である場合、加圧圧縮の鍛錬比は3.5以上であることが好ましく、軽金属合金がマグネシウム合金である場合、加圧圧縮の鍛錬比は4.0以上であることが好ましい。かかる鍛錬比の値を境にして、急激に軽金属合金の微粒子化が促進される。
【0029】
よって、上記ホイールの製造方法によれば、機械的強度が優れ、しかも、機械的強度が均一なホイールを製造することができる。
また、ホイールの機械的強度が優れるので、機械加工による強度低下に基づく破損事故も防止できる。
【0030】
上記ホイールの製造方法においては、本鍛造工程が、鍛造ビレットに対して、第1加圧鍛造、第2加圧鍛造及び第3加圧鍛造の3段の加圧鍛造を施し、プレホイールとする工程であると、機械的強度がより均一なホイールを製造することができる。
また、本鍛造工程が、鍛造ビレットに対して、1段の加圧鍛造を施し、プレホイールとする工程であると、機械的強度がより均一なホイールを製造することができる。
【0031】
上記ホイールの製造方法においては、鍛造ビレットが金属組織上の鍛流線を有する場合、得られるホイールも鍛流線を有するものとなるので、機械的強度が確実に向上する。すなわち、凹凸形状を有するホイールの製造においては、本鍛造工程の際に、強く加圧鍛造される部分と、加圧鍛造されない部分とが存在する。このため、従来の鋳造ビレットを用いると、加圧鍛造されない部分は、鍛流線を有さないものとなり、機械的強度が不十分となる。一方、上述したように、鍛流線を有する鍛造ビレットを用いると、加圧鍛造されない部分であっても、鍛流線を有することになるので、機械的強度がより一層向上することになる。
【0032】
上記ホイールの製造方法においては、予備鍛造工程における加圧圧縮が、密封された密閉鍛造によるものであると、鍛造ビレットが中腹部の周囲が膨らんだ形状(いわゆる太鼓形状)になるのを確実に抑制できる。なお、加圧圧縮は、300〜550℃の温度、9.8×10kN〜88.2×10kNの圧力条件下で施されることが好ましい。
【0033】
上記ホイールの製造方法においては、加圧鍛造が、回転鍛造、密閉鍛造又は自由鍛造であると、機械的強度がより均一なホイールを製造することができる。
【0034】
上記ホイールの製造方法においては、予備鍛造工程において、鋳造ビレットを一方向に加圧圧縮してプレ鍛造ビレットとし、該プレ鍛造ビレットを加圧圧縮した方向とは異なる方向に更に加圧圧縮して鍛造ビレットとするものであると、鍛造ビレットの金属結晶粒子全体における結晶粒径の小さい組織の占める割合が大きくなる。このため、機械的強度がより優れ、しかも、機械的強度がより均一なホイールを製造することができる。
【0035】
上記ホイールの製造方法においては、機械加工が、スピニング加工を含み、スピニング加工が常温で施されると、スピニングの際に、リム部の金属結晶粒子の再結晶が抑制される。通常、スピニング加工は高温を伴って施されるので、リム部の金属結晶粒子が一度溶融し、再結晶する傾向にある。そうすると、金属結晶粒子の結晶粒径が大きくなり、機械的強度も低下する。
したがって、この場合、リム部の金属結晶粒子の再結晶が抑制され、微細な金属結晶粒子が維持されるので、機械的強度がより優れるホイールを製造することができる。
【0036】
上記ホイールの製造方法においては、軽金属合金が、カルシウムを4〜8質量%含むものであると、得られるホイールの耐熱性が向上する。
【0037】
本発明のホイールは、上述した製造方法によって得られるので、機械的強度が優れ、且つ機械的強度が均一なものとすることができる。特に、ディスク部、外リム部及び内リム部の少なくとも1つの金属結晶粒子のJIS H0542の切断法に基づく平均粒径が30μm以下であることが好ましく、ディスク部、外リム部及び内リム部が、いずれも鍛流線を有することが好ましい。
また、作業性の観点から、ディスク部、外リム部及び内リム部が、一体となっていることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、第1実施形態に係るホイールの製造方法の各工程を示すフローチャートである。
【図2】図2は、第1実施形態に係るホイールの製造方法における鋳造ビレットと鍛造ビレットとを示す断面図である。
【図3】図3は、A2014系の軽合金を用いた鍛錬比と引張強さ、及び、鍛錬比と延びの関係を示すグラフである。
【図4】図4は、第1実施形態に係るホイールの製造方法において、加圧圧縮前における鋳造ビレットを密閉鍛造により鍛造ビレットとしたときの状態を示す説明図である。
【図5】図5は、第1実施形態に係るホイールの製造方法における本鍛造工程を示す概略図である。
【図6】図6の(a)は、第1実施形態に係るホイールの製造方法により得られた第1プレホイールを示す断面図であり、(b)は、それにスピニング加工を施したリム付きプレホイールの断面図であり、(c)は、それに穴開け加工を施したホイールの断面図である。
【図7】図7の(a)は、本実施形態に係るホイールを示す正面図であり、(b)は、(a)のI−I’断面図である。
【図8】図8は、第2実施形態に係るホイールの製造方法における本鍛造工程を示す概略図である。
【図9】図9の(a)は、第2実施形態に係るホイールの製造方法により得られた第2プレホイールを示す断面図であり、(b)は、それにスピニング加工を施したリム付きプレホイールの断面図であり、(c)は、それに穴開け加工を施したホイールの断面図である。
【図10】図10の(a)〜(d)は、第3実施形態に係るホイールの製造方法における予備鍛造工程の過程を示す上面図及び側面図である。
【図11】図11の(a)〜(e)は、鋳造ビレットを一方向に加圧圧縮した後、異なる方向に更に加圧圧縮した場合の効果を説明するための概略図である。
【図12】図12は、実施例1〜7の鍛錬比と金属結晶粒子の数との関係を示すグラフである。
【図13】図13は、実施例8〜14の鍛錬比と金属結晶粒子の数との関係を示すグラフである。
【図14】図14は、実施例16〜23の鍛錬比と金属結晶粒子の数との関係を示すグラフである。
【図15】図15は、実施例1の鍛造ビレットの略中心部分を10倍に拡大した電子顕微鏡写真である。
【図16】図16は、実施例2の鍛造ビレットの略中心部分を10倍に拡大した電子顕微鏡写真である。
【図17】図17は、実施例3の鍛造ビレットの略中心部分を10倍に拡大した電子顕微鏡写真である。
【図18】図18は、実施例4の鍛造ビレットの略中心部分を10倍に拡大した電子顕微鏡写真である。
【図19】図19は、実施例5の鍛造ビレットの略中心部分を10倍に拡大した電子顕微鏡写真である。
【図20】図20は、実施例6の鍛造ビレットの略中心部分を10倍に拡大した電子顕微鏡写真である。
【図21】図21は、実施例7の鍛造ビレットの略中心部分を10倍に拡大した電子顕微鏡写真である。
【図22】図22は、実施例16の鍛造ビレットの略中心部分を20倍に拡大した電子顕微鏡写真である。
【図23】図23は、実施例17の鍛造ビレットの略中心部分を20倍に拡大した電子顕微鏡写真である。
【図24】図24は、実施例18の鍛造ビレットの略中心部分を20倍に拡大した電子顕微鏡写真である。
【図25】図25は、実施例19の鍛造ビレットの略中心部分を20倍に拡大した電子顕微鏡写真である。
【図26】図26は、実施例20の鍛造ビレットの略中心部分を20倍に拡大した電子顕微鏡写真である。
【図27】図27は、実施例21の鍛造ビレットの略中心部分を20倍に拡大した電子顕微鏡写真である。
【図28】図28は、実施例22の鍛造ビレットの略中心部分を20倍に拡大した電子顕微鏡写真である。
【図29】図29は、実施例23の鍛造ビレットの略中心部分を20倍に拡大した電子顕微鏡写真である。
【図30】図30は、比較例1の鋳造ビレットの略中心部分を10倍に拡大した電子顕微鏡写真である。
【図31】図31は、比較例2の鋳造ビレットの略中心部分を20倍に拡大した電子顕微鏡写真である。
【図32】図32は、実施例25の鍛造ビレットの略中心部分を10倍に拡大した電子顕微鏡写真である。
【図33】図33は、実施例26の鍛造ビレットの略中心部分を10倍に拡大した電子顕微鏡写真である。
【図34】図34は、実施例27の鍛造ビレットの略中心部分を10倍に拡大した電子顕微鏡写真である。
【図35】図35は、実施例28の鍛造ビレットの略中心部分を10倍に拡大した電子顕微鏡写真である。
【図36】図36は、実施例29の鍛造ビレットの略中心部分を10倍に拡大した電子顕微鏡写真である。
【図37】図37は、実施例30の鍛造ビレットの略中心部分を10倍に拡大した電子顕微鏡写真である。
【図38】図38は、実施例31のハブ部の略中心部分を10倍に拡大した電子顕微鏡写真である。
【図39】図39は、実施例31のスポーク部の略中心部分を10倍に拡大した電子顕微鏡写真である。
【図40】図40は、実施例31の外リム部の略中心部分を10倍に拡大した電子顕微鏡写真である。
【図41】図41は、実施例31の内リム部の略中心部分を10倍に拡大した電子顕微鏡写真である。
【図42】図42は、実施例32のハブ部の略中心部分を20倍に拡大した電子顕微鏡写真である。
【図43】図43は、実施例32のスポーク部の略中心部分を20倍に拡大した電子顕微鏡写真である。
【図44】図44は、実施例32の外リム部の略中心部分を20倍に拡大した電子顕微鏡写真である。
【図45】図45は、実施例32の内リム部の略中心部分を20倍に拡大した電子顕微鏡写真である。
【図46】図46は、比較例3のハブ部の略中心部分を10倍に拡大した電子顕微鏡写真である。
【図47】図47は、比較例3のスポーク部の略中心部分を10倍に拡大した電子顕微鏡写真である。
【図48】図48は、比較例3の外リム部の略中心部分を10倍に拡大した電子顕微鏡写真である。
【図49】図49は、比較例3の内リム部の略中心部分を10倍に拡大した電子顕微鏡写真である。
【図50】図50は、比較例4のハブ部の略中心部分を10倍に拡大した電子顕微鏡写真である。
【図51】図51は、比較例4のスポーク部の略中心部分を10倍に拡大した電子顕微鏡写真である。
【図52】図52は、比較例4の外リム部の略中心部分を10倍に拡大した電子顕微鏡写真である。
【図53】図53は、比較例4の内リム部の略中心部分を10倍に拡大した電子顕微鏡写真である。
【図54】図54は、実施例33〜38で得られたホイールのスポーク部に対して、20℃、100℃、200℃、300℃に加温した場合における引張り強度を測定した結果のグラフである。
【図55】図55は、実施例33〜38で得られたホイールのスポーク部に対して、20℃、100℃、200℃、300℃に加温した場合における0.2%耐力を測定した結果のグラフである。
【図56】図56の(a)〜(e)は、平均粒径の測定方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0040】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係るホイール製造方法の各工程を示すフローチャートである。
図1に示すように、第1実施形態に係るホイールの製造方法は、軽金属合金を溶融し、溶融原料とする準備工程S1と、溶融原料を鋳造し、鋳造ビレットとする鋳造工程S2と、鋳造ビレットを軸方向に加圧圧縮し、鍛造ビレットとする予備鍛造工程S3と、鍛造ビレットを金型で加圧鍛造し、プレホイールとする本鍛造工程S4と、プレホイールを熱処理する熱処理工程S5と、プレホイールに対し機械加工を施す成型工程S6と、を備える。
【0041】
第1実施形態に係るホイールの製造方法によれば、機械的強度が優れ、且つ機械的強度が均一なホイールを製造することができる。
【0042】
以下、各工程について更に詳細に説明する。
(準備工程)
準備工程S1は、軽金属合金を溶融し、溶融原料とする工程である。
【0043】
上記軽金属合金としては、アルミニウム(Al)又はマグネシウム(Mg)が挙げられる。また、アルミニウムからなるアルミニウム部とマグネシウムからなるマグネシウム部とからなるハイブリット合金であってもよい。
これらの場合、軽量なホイールが得られる。また、かかる軽金属合金の性能を向上させるため、添加金属を添加することも可能である。
【0044】
かかる添加金属としては、主金属がAlである場合、Ca、Cr、Cu、Fe、Mg、Mn、Si及びYからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。また、主金属がMgである場合、Al、Ca、Cr、Cu、Fe、Mn、Si及びYからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。この場合、添加される添加金属の物性に基づいて、ホイール自体の性能を向上させることができる。なお、この場合、後述する鋳造ビレットは、軽合金となる。
【0045】
例えば、添加金属は、カルシウム(Ca)であることが好ましい。特に、カルシウムの添加量が4〜8質量%であると、得られるホイールの耐熱性が向上する。
したがって、上記軽金属合金が、カルシウムを4〜8質量%含むことが好ましいということになる。
カルシウムの含有割合が4%未満であると、含有割合が上記範囲にある場合と比較して、再結晶化が進み難く、微細な結晶が得られない傾向にあり、カルシウムの含有割合が8%を超えると、含有割合が上記範囲にある場合と比較して、均質なカルシウムの添加合金が得られない傾向にある。
【0046】
上記軽金属合金の具体例としては、アルミニウム(1000系)、マグネシウム、Al−Mn系(3000系)、Al−Si系(4000系)、Al−Mg系(5000系)、Al−Mg−Si系(6000系)、Al−Zn−Mg系(7000系)、Al−Cu−Mg系(2000系)、Al−Cu−Si系、Al−Cu−Mg−Si系等が挙げられる。
これらの中でも汎用性の観点から、Al−Mg−Si系が好ましい。
【0047】
上記準備工程S1においては、軽金属合金を、例えば、800℃以上で加熱溶融し、必要に応じて、これに添加金属を添加することにより、液状の溶融原料が得られる。
【0048】
(鋳造工程)
鋳造工程S2は、不活性ガス雰囲気下、上述した溶融原料を鋳造し、円柱状の鋳造ビレットとする工程である。
【0049】
不活性ガスとしては、窒素、アルゴン等が挙げられる。すなわち、酸素を取り除くことにより、溶融原料が酸化するのが防止される。
【0050】
上記鋳造工程S2において、鋳造法は、特に限定されないが、砂型鋳造法、石膏鋳造法、精密鋳造法、金型鋳造法、遠心鋳造法、連続鋳造法等が挙げられる。
これらの中でも、鋳造法は、連続鋳造法を用いることが好ましい。この場合、後述する予備鍛造工程S3において、金属結晶粒子の結晶粒径がより均一な鍛造ビレットが得られるようになる。
【0051】
まず、上記鋳造工程S2においては、上記溶融原料を65〜90mm/minの速度で鋳造金型に流し込む。
流し込む速さが65mm/min未満であると、速さが上記範囲内にある場合と比較して、後述する予備鍛造工程S3において、金属結晶粒子の結晶粒径が不均一となる傾向にあり、流し込む速さが90mm/minを超えると、速さが上記範囲内にある場合と比較して、後述する予備鍛造工程S3において、鋳造ビレット製造時に破損する虞がある。
【0052】
鋳造金型に流し込まれた溶融原料は、例えば、550℃以上で6時間以上加熱されることにより、均質化される。
そして、その後、冷却されることにより、円柱状の鋳造ビレットが得られる。
ここで、上記冷却は、急冷することが好ましい。この場合、結晶粒が細かくなるメリットがある。なお、得られた円柱状の鋳造ビレットは必要に応じて、軸方向に対して垂直方向に切断してもよい。
【0053】
得られる鋳造ビレットのサイズは、長さ/直径の比が2.0〜2.5であることが好ましい。この場合、円柱状の鋳造ビレットを軸方向に押圧した際に、鋳造ビレットが急に曲がるという座屈現象が生じるのを抑制できる。
【0054】
(予備鍛造工程)
予備鍛造工程S3は、鋳造ビレットを軸方向に加圧圧縮し、円柱状の鍛造ビレットとする工程である。すなわち、鋳造ビレットを上下から加圧圧縮し、円柱状の形態を留めつつ、高さを低くする工程である。
【0055】
図2は、第1実施形態に係るホイールの製造方法における鋳造ビレットと鍛造ビレットとを示す断面図である。
上記予備鍛造工程S3においては、図2に示す鋳造ビレット1から鍛造ビレット2が製造される。なお、本発明において、鍛造ビレット2には、鍛造された押出し成形品、引抜き成形品も含まれる。
【0056】
上記予備鍛造工程S3の加圧圧縮における鍛錬比は、軽金属合金がアルミニウム合金である場合、3.5以上であることが好ましく、4.0以上であることがより好ましい。
ここで、鍛錬比とは、図2に示す「鋳造ビレット1の高さH1」÷「鍛造ビレット2の高さH2」で表される値を意味する。
加圧圧縮による鍛錬比が3.5から大きくなるに従って、金属結晶粒子の粒径が極端に微細化される。なお、鍛造ビレット2が中間品であることから、該鍛造ビレット2を用いて鍛造製品を加圧鍛造するとき更に鍛錬比が上昇することが見込まれる。
ちなみに、軽金属合金がアルミニウム合金である場合、鍛錬比が3.4以上であると、後述する鍛流線が十分に確認できる。
【0057】
一方、上記予備鍛造工程S3の加圧圧縮における鍛錬比は、軽金属合金がマグネシウム合金である場合、4.0以上であることが好ましく、4.5以上であることがより好ましく、5.5以上であることが特に好ましい。
加圧圧縮による鍛錬比が4.0から大きくなるに従って、金属結晶粒子の粒径が極端に微細化される。なお、鍛造ビレット2が中間品であることから、該鍛造ビレット2を用いて鍛造製品を加圧鍛造するとき更に鍛錬比が上昇することが見込まれる。
ちなみに、軽金属合金がマグネシウム合金である場合、鍛錬比が4.0以上であると、後述する鍛流線が十分に確認できる。
【0058】
参考までに、図3にアルミニウム鋳鍛造技術便覧(軽金属協会編)から引用したA2014系の軽合金を用いた鍛錬比と引張強さ、及び、鍛錬比と延びの関係のグラフを示す。
図3中、L方向とは、スラブの長手方向、ST方向とは、スラブの厚さ方向である。なお、第1実施形態に係るホイールの製造方法の鍛造ビレット2に当てはめると、L方向が、鍛造ビレット2の長さ(軸)方向に相当し、ST方向が、鍛造ビレット2の直径方向に相当する。
図3に示すように、鍛錬比を大きくするほど鍛錬効果は向上し、均質で機械的性質や健全性に優れた製品が得られる。
【0059】
ここで、加圧圧縮する方法としては、自由鍛造、型鍛造、揺動鍛造、押出し鍛造、回転鍛造、密閉鍛造(閉塞鍛造を含む)等が挙げられる。なお、型鍛造にはプレス鍛造、ハンマー鍛造が含まれる。また、鋳造ビレット1を一定角度回転させ一部を加圧する操作を繰り返す部分鍛造も利用できる。
これらの中でも、加圧圧縮は、密閉鍛造によるものであることが好ましい。
【0060】
図4は、第1実施形態に係るホイールの製造方法において、加圧圧縮前における鋳造ビレットを密閉鍛造により鍛造ビレットとしたときの状態を示す説明図である。
図4に示すように、密閉鍛造においては、鋳造ビレット1が軸方向に加圧圧縮される際、金属組織が横方向に広がるのを抑制できる。すなわち、横方向の拘束力Pも加わることにより、鍛造ビレット2が中腹部で膨らんだ太鼓形状になるのを抑制し、金属結晶粒子の結晶粒径も微細化できる。
【0061】
このときの加工条件は、熱間鍛造、温間鍛造、冷間鍛造、等温鍛造のいずれであってもよい。
これらの中でも、加工条件は、熱間鍛造であることが好ましい。この場合、効率よく鍛造ができるという利点がある。
具体的には、上記加圧圧縮は、300〜550℃の温度条件下、9.8×10kN〜88.2×10kNの圧力で行うことが好ましい。ちなみに、該加圧条件は鍛造機(プレス機)の推力規模で示すと1000〜9000トンに相当する。
【0062】
こうして、鋳造ビレット1が加圧圧縮され、その後、冷却されることにより、円柱状の鍛造ビレット2が得られる。なお、上記冷却は、急冷することが好ましい。
【0063】
鍛造ビレット2は、鍛流線を有することが好ましい。
ここで、鍛流線とは、金属組織において鍛造製品に生じる、結晶粒径が少なくとも12μmより小さい金属結晶粒子の流れの状態を意味する。なお、かかる鍛流線は、加圧圧縮により金属結晶粒子の結晶粒径が9μmより微細になると金属組織の流れがより明確になる。
上記鍛造ビレット2においては、円柱の中心部から放射状に鍛流線が延びていることが好ましい。
【0064】
上記鍛造ビレット2は、鍛流線を有すると、得られるホイールも鍛流線を有するものとなる。これにより、ホイールは、機械的強度が均一なものとなる。すなわち、ホイールは、鍛造ビレット2が圧縮鍛造されない部分であっても、鍛流線を有することになるので、機械的強度が確実に向上する。
【0065】
上記鍛造ビレット2の金属結晶粒子の平均粒径は30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、15μm以下であることがより一層好ましい。
平均粒径が30μmを超えると、平均粒径が上記範囲内にある場合と比較して、機械的強度が不十分となる場合がある。
ここで、本明細書において、「平均粒径」は、JIS H0542の切断法に基づいて測定した値である。具体的には、JIS H0542の切断法による評価方法の規定においては、試験線の縦線、横線及び2本の対角線の線分が少なくとも50個の結晶粒と交差するように倍率を決定するとしているが、本発明においては、顕微鏡1視野を660μm×860μmと設定し、縦線及び横線の線分を494.237μmとし、対角線の線分を741.355μmと設定して、少なくとも50個以上の結晶粒と交差するようにして測定した値である(図56参照)。なお、図56の(a)は、平均粒径測定例として挙げた電子顕微鏡写真であり、(b)は、(a)の試験線と捕捉交点数の関係を示すグラフであり、(c)は、1視野(660μm×860μm)の例を示す図であり、(d)及び(e)は、(a)を用いた平均粒径の測定例である。ここで、1視野の計測方法は、補足交点数による測定である(直線上にある粒界の数を手動で数え、粒界の数により、結晶粒度、平均粒径を算出する。)。
また、測定部位は、鍛造ビレット、ホイールの各部分、いずれも中央付近とする。
【0066】
上記鍛造ビレット2の引張り強度は、250MPa以上であることが好ましい。なお、引張り強度は、JIS Z 2241に準じて測定した値である。
上記鍛造ビレット2の耐力は、150MPa以上であることが好ましい。なお、耐力は、JIS Z 2241に準じて測定した値である。
上記鍛造ビレット2の伸度は、8%以上であることが好ましい。なお、伸度は、JIS Z 2241に準じて測定した値である。
上記鍛造ビレット2のブリネル硬度は、65HB以上であることが好ましい。なお、ブリネル硬度は、JIS Z 2243に準じて測定した値である。
【0067】
第1実施形態に係るホイールの製造方法においては、上述したように、鋳造ビレット1を軸方向に加圧圧縮し、円柱状の鍛造ビレット2とする予備鍛造工程S3を備えるので、その後、後述する本鍛造工程S4を施しても、十分に優れた機械的強度を有するホイールを得ることができる。
【0068】
(本鍛造工程)
本鍛造工程S4は、鍛造ビレット2を金型で加圧鍛造し、ホイールとする工程である。すなわち、本鍛造工程S4は、鍛造ビレット2に凹凸等の具体的な形状を付与する工程である。かかる本鍛造工程S4により、円柱状の鍛造ビレット2がホイールの形状になる。
【0069】
図5は、第1実施形態に係るホイールの製造方法における本鍛造工程を示す概略図である。
図5に示すように、本鍛造工程S4は、第1加圧鍛造11、第2加圧鍛造12、第3加圧鍛造13の3段の加圧鍛造を備える。
第1加圧鍛造11、第2加圧鍛造12、第3加圧鍛造13を経ることにより、鍛造ビレット2からプレホイール(以下便宜的に「第1プレホイール」という。)3aが得られる。そして、後述する成型工程を経ることにより、第1プレホイール3aがホイール3となる。
【0070】
上記第1加圧鍛造11、第2加圧鍛造12及び第3加圧鍛造13の具体的な方法としては、自由鍛造、型鍛造、揺動鍛造、押出し鍛造、回転鍛造、密閉鍛造(閉塞鍛造を含む)が挙げられる。なお、型鍛造にはプレス鍛造、ハンマー鍛造が含まれる。また、鍛造ビレット2を一定角度回転させ一部を加圧する操作を繰り返す部分鍛造も利用できる。
これらの中でも、第1加圧鍛造11、第2加圧鍛造12及び第3加圧鍛造13は、いずれも回転鍛造、密閉鍛造又は自由鍛造であることが好ましく、密閉鍛造であることがより好ましい。この場合、機械的強度がより均一なホイール3を製造することが可能となる。
【0071】
また、密閉鍛造の中でも、第1加圧鍛造11を粗型成型鍛造とし、第2加圧鍛造12を荒地成型鍛造とし、第3加圧鍛造13を仕上成形鍛造とすることが好ましい。この場合、かぶり現象を防止できると共に、鍛流線に乱れを生じさせずに、金属結晶粒子の結晶粒径を更に小さくできるという利点がある。
ここで、粗型成型鍛造は、鍛造ビレット2の全量を後述するハブ部、スポーク部及びリムの前躯体となる予備部材、の各所要量に分配する鍛造である。これにより、スポーク部の輪郭が緩やかな曲面で凸状に成形される。また、材料の流れに抵抗が少なくプレスする面積が最小限となるので、プレス圧を軽減できる。なお、ディスク部は大略円盤状となる。
荒地成型鍛造は、スポーク部をより鮮明に隆起させる鍛造であり、ディスク部の空部となる部分の材料を押圧する鍛造である。これにより、スポークがリブとして隆起され、空部になる部分はウエブとして漸次厚みが薄くなる。
仕上成型鍛造とは、スポーク部の立ち上がり部分を押圧してスポーク部を所定の高さにする鍛造である。なお、荒地成型鍛造で一気にスポーク部を完成状態の高さにするとリブの下側にひけが生じてスポークに欠陥が生じる虞がある。
【0072】
また、このときの加工条件は、熱間鍛造、温間鍛造、冷間鍛造、等温鍛造のいずれであってもよい。
第1加圧鍛造11、第2加圧鍛造12、第3加圧鍛造13は、300℃以上の温度、好ましくは300〜550℃の温度、9.8×10kN〜88.2×10kNの圧力で施すことが好ましい。
【0073】
上述したような鍛造を施すことにより、鍛造ビレット2が加圧鍛造され、その後、冷却されることにより、プレホイール3aが得られる。なお、上記冷却は、急冷することが好ましい。
【0074】
第1実施形態に係るホイールの製造方法においては、鍛造ビレット2が、本鍛造工程S4において、複雑な形状に成形され、部分的に引き延ばされた場合であっても、十分に均一な機械的強度を有するホイール3を得ることができる。
【0075】
(熱処理工程)
熱処理工程S5は、外リム部が形成された第3プレホイール3cを熱処理する工程である。
【0076】
熱処理は、軽金属合金がアルミニウム合金である場合、JIS H0001に基づくT6条件で行われる。具体的には、500〜580℃で3〜5時間溶体化処理がされ、3〜7分間焼入れがされ、150〜200℃で7〜9時間人工時効処理がなされる。
また、軽金属合金がマグネシウム合金である場合、JIS H0001に基づくT5条件で行われる。具体的には、300〜380℃で1〜3時間人工時効処理がなされる。
【0077】
(成型工程)
成型工程S6は、プレホイール3aに機械加工を施す工程である。
【0078】
上記機械加工としては、スピニング加工、穴開け加工、切削加工、ミーリング加工等が挙げられる。
第1プレホイール3aにおいて、スピニング加工は、第1プレホイール3aを旋盤の金型で挟持し、第1プレホイール3aを回転させ、予備部材5に対してローラーを押し当てて予備部材5を延展することにより、第1プレホイール3aの面方向に延設された外リム部(アウターリム)7と、第1プレホイール3aの周縁に垂直方向に立設された内リム部(インナーリム)8と、が形成される。
【0079】
図6の(a)は、第1実施形態に係るホイールの製造方法により得られた第1プレホイールを示す断面図であり、(b)は、それにスピニング加工を施したリム付きプレホイールの断面図であり、(c)は、それに穴開け加工を施したホイールの断面図である。
【0080】
まず、図6の(a)に示すように、上述した本鍛造工程S4により得られる第1プレホイール3aは、周縁に立設された予備部材5を備える。
上記スピニング加工においては、第1プレホイール3aを旋盤の金型で挟持し、第1プレホイール3aを回転させる。この状態で予備部材5に対してローラーを押し当てて予備部材5を延展することにより、図6の(b)に示すように、第1プレホイール3aの面方向に延設された外リム部(アウターリム)7と、第1プレホイール3aの周縁に垂直方向に立設された内リム部(インナーリム)8と、が形成される。このとき、仕上げしろを同時に形成してもよい。なお、仕上げしろとは、寸法を調整するために、後に削り取る部分である。
【0081】
第1実施形態に係るホイールの製造方法において、上記スピニング加工は、常温(約25℃)で施される。
特に、外リム部7及び内リム部8へのスピニングを常温で施すと、スピニングの際に、外リム部7及び内リム部8の金属結晶粒子の再結晶化を抑制できる。なお、金属結晶粒子の再結晶化が起こると、結晶粒径が大きくなり、機械的強度が低下する。
【0082】
次に、穴開け加工においては、外リム部7と内リム部8とが形成されたリム付きプレホイール3a’に対して、マシニングセンターで、穴を開け、スポーク部や模様を形成する。
そして、切削加工により、旋盤で、リム付きプレホイール3a’の周囲を削り、リム部を形成し、ミーリング加工により、ホイールの略全体を削り出して成型を行うことにより、図6の(c)に示すように、空部9が形成されたホイール3が得られる。
【0083】
ホイール3は、軽量化されており、また、凹凸や空部等を形成することにより、デザイン性にも優れる。なお、必要に応じて、化学的表面処理、鍍金、ショット、塗装等を施してもよい。
【0084】
ここで、上記穴開け加工においては、多軸旋盤等を用い、ディスク部6に対して、後述するハブ部が形成される。このとき、ディスク部6を緩やかに湾曲した円盤状とすると、鍛造による押圧力を軽減できる。
また、ディスク部6を緩やかに湾曲した円盤状に加圧鍛造した場合、プレス圧が大幅に削減できるので、22インチ径のディスクでも6000トン級のプレス機で加圧鍛造できる。なお、必要に応じて、塗装等を施してもよい。
【0085】
こうして得られるホイール3は、例えば、車両用、航空機等の飛翔体部品用等に好適に用いられる。特に、車両用に用いると、自動車を軽量化できるので、ガソリン等による環境負荷を低減でき、低コスト化も可能である。
【0086】
次に、本発明に係るホイール3について説明する。
図7の(a)は、本実施形態に係るホイールを示す正面図であり、(b)は、(a)のI−I’断面図である。
図7の(a)に示すように、本実施形態に係るホイール3(マルチピース)は、ディスク部6と、ディスク部6の周縁に設けられる外リム部7及び内リム部8と、を備える。すなわち、上記ホイール3は、ディスク部6と、該ディスク部6の周縁に連結しディスク部6の面方向に延設された外リム部7と、ディスク部6の周縁に連結しディスク部6の面とは垂直方向に立設された内リム部8と、を備える。
また、ディスク部6は、円盤状のハブ部6aと、該ハブ部6aから放射Y字状に伸びるスポーク部10と、を備える。すなわち、上記ホイール3においては、スポーク部10の先端に外リム部7と内リム部8とが連結されている。なお、ハブ部6aは、緩やかに湾曲した曲面となっていることが好ましい。この場合、押圧時の原材料の流れが一様となるので、鍛錬比がより均等化される。
【0087】
ハブ部6aは、表面が緩やかに湾曲した曲面を有する円盤状になっており、ホイール3をボルトで車軸に固定する際のボルトを挿入するためのボルト挿通穴6bが設けられている。
また、隣合うスポーク部10同士の間は、空部9が設けられている。
【0088】
鋳造ビレット2に対するホイール3の鍛錬比(以下便宜的に「全鍛錬比」という。)は、軽金属合金がアルミニウム合金である場合、4.0以上であることが好ましく、軽金属合金がマグネシウム合金である場合、5.5以上であることが好ましい。
ここで、全鍛錬比とは、上述した鋳造ビレット1に対する鍛造ビレット2の鍛錬比に、鍛造ビレット2に対するホイール3の鍛錬比を乗じたものである。すなわち、全鍛錬比は、「鋳造ビレット1の高さH1」÷「ホイール3の高さH3」で表される値である。なお、ホイール3の高さH3は、図7の(b)に示す。なお、ホイールの高さH3は、加圧鍛造された方向のホイールの高さの平均で算出される。
【0089】
上記ホイール3においては、ディスク部6、外リム部7及び内リム部8から選ばれる少なくとも1つの部分の金属結晶粒子の平均粒径が30以下μmであることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、15μm以下であることが更に好ましい。また、ディスク部6、外リム部7及び内リム部8の金属結晶粒子の平均粒径がいずれも30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、15μm以下であることが更に好ましい。
【0090】
ディスク部6、外リム部7及び内リム部8は、いずれも鍛流線を有することが好ましい。この場合、機械的強度がより一層向上する。なお、上述したように、鍛造ビレット2が鍛流線を有するものである場合、ディスク部6、外リム部7及び内リム部8も鍛流線を有するものとなる。
【0091】
本実施形態に係るホイール3は、上述した鍛造ビレット2を加圧鍛造してディスク部6、外リム部7及び内リム部8を製造するので、機械的強度が優れ、且つ機械的強度が均一なものとなる。
また、ディスク部6、外リム部7及び内リム部8は、一体となっている(ワンピース)ので、ホイール3は、機械的強度がより優れ、且つ機械的強度がより均一なものとなる。
【0092】
[第2実施形態]
第2実施形態に係るホイールの製造方法は、本鍛造工程S4で得られるプレホイールの形状及び成型工程S6における成型方法が異なること意外は、第1実施形態に係るホイールの製造方法と同じである。
【0093】
以下、本実施形態に係る本鍛造工程及び成型工程について更に詳細に説明する。なお、熱処理工程については、第1実施形態に係るホイールの製造方法における熱処理工程と同様である。
(本鍛造工程)
本鍛造工程は、鍛造ビレット2を金型で1段の加圧鍛造を行い、プレホイールとする工程である。すなわち、本鍛造工程は、鍛造ビレット2に1段で凹凸等の具体的な形状を付与する工程である。
【0094】
図8の(a)は、第2実施形態に係るホイールの製造方法における本鍛造工程を示す概略図であり、(b)は(a)の工程により得られるプレホイールを示す断面図である。
図8に示すように、本鍛造工程は、第1加圧鍛造11’を備える。すなわち、第1加圧鍛造11’のみを経て、プレホイール(以下便宜的に「第2プレホイール」という。)3bが得られる。そして、後述する成型工程を経ることにより、第2プレホイール3bがホイール3となる。
【0095】
上記第1加圧鍛造11’の具体的な方法としては、自由鍛造、型鍛造、揺動鍛造、押出し鍛造、回転鍛造、密閉鍛造(閉塞鍛造を含む)が挙げられる。なお、型鍛造にはプレス鍛造、ハンマー鍛造が含まれる。また、鍛造ビレット2を一定角度回転させ一部を加圧する操作を繰り返す部分鍛造も利用できる。
これらの中でも、第1加圧鍛造11’は、密閉鍛造であることが好ましい。この場合、機械的強度がより均一なホイール3を製造することが可能となる。
【0096】
また、密閉鍛造の中でも、第1加圧鍛造11’を粗型成型鍛造とする。ここで、粗型成型鍛造は、鍛造ビレット2の全量を後述するハブ部、スポーク部及びリムの前躯体となる予備部材5、の各所要量に分配する鍛造である。
【0097】
このときの加工条件は、熱間鍛造、温間鍛造、冷間鍛造、等温鍛造のいずれであってもよい。
これらの加圧鍛造は、300℃以上の温度、好ましくは300〜550℃の温度、9.8×10kN〜88.2×10kNの圧力で施すことが好ましい。
【0098】
上述したような鍛造を施すことにより、鍛造ビレット2が加圧鍛造され、その後、冷却されることにより、ホイール3が得られる。なお、上記冷却は、ファン等で急冷することが好ましい。
【0099】
(成型工程)
成型工程は、第2プレホイール3bに機械加工を施す工程である。
【0100】
上記機械加工としては、スピニング加工、穴開け加工、切削加工、ミーリング加工等が挙げられる。
第2プレホイール3bにおいて、スピニング加工は、第2プレホイール3bを旋盤の金型で挟持し、第2プレホイール3bを回転させ、予備部材5に対してローラーを押し当てて予備部材5を延展することにより、第2プレホイール3bの面方向に延設された外リム部(アウターリム)7と、第2プレホイール3bの周縁に垂直方向に立設された内リム部(インナーリム)8と、が形成される。このとき、仕上げしろを同時に形成してもよい。
【0101】
図9の(a)は、第2実施形態に係るホイールの製造方法により得られた第2プレホイールを示す断面図であり、(b)は、それにスピニング加工を施したリム付きプレホイールの断面図であり、(c)は、それに穴開け加工を施したホイールの断面図である。
図9の(a)に示すように、上述した本鍛造工程により第2プレホイール3b(ホイール)が得られる。かかる第2プレホイール3bは、周縁に立設された予備部材5を備える。
【0102】
スピニング加工においては、第2プレホイール3bを旋盤の金型で挟持し、第2プレホイール3bを回転させ、予備部材5に対してローラーを押し当てて予備部材5を延展することにより、図9の(b)に示すように、第2プレホイール3bの面方向に延設された外リム部(アウターリム)7と、第2プレホイール3bの周縁に垂直方向に立設された内リム部(インナーリム)8と、が形成される。このとき、仕上げしろを同時に形成してもよい。なお、仕上げしろとは、寸法を調整するために、後に削り取る部分である。
【0103】
第1実施形態に係るホイールの製造方法において、上記スピニング加工は、常温(約25℃)で施される。
このため、スピニングの際に、外リム部7及び内リム部8の金属結晶粒子の再結晶化を抑制できる。
【0104】
次に、外リム部7と内リム部8とが形成されたリム付きプレホイール3b’に対して、穴開け加工により、外リム部7と内リム部8とが形成されたリム付きプレホイール3b’に対して、マシニングセンターで、穴を開け、模様を形成する。
そして、切削加工により、旋盤で、リム付きプレホイール3b’の周囲及びディスク部裏面側を切削し、スポーク部やリム部を形成し、ミーリング加工により、ホイールの略全体を削り出して成型を行うことにより、図9の(c)に示すように、空部9が形成されたホイール3が得られる。なお、ホイール3は、上述した第1実施形態に係るホイールの製造方法により得られたホイール3と同じである。
【0105】
[第3実施形態]
第3実施形態に係るホイールの製造方法は、予備鍛造工程が異なること意外は、第1実施形態に係るホイールの製造方法と同じである。
【0106】
以下、本実施形態に係る本鍛造工程及び成型工程について更に詳細に説明する。
(予備鍛造工程)
予備鍛造工程は、鋳造ビレットを一方向に加圧圧縮してプレ鍛造ビレットとし、プレ鍛造ビレットを加圧圧縮した方向とは異なる方向に更に加圧圧縮して鍛造ビレットとする工程である。
【0107】
図10の(a)〜(d)は、第3実施形態に係るホイールの製造方法における予備鍛造工程の過程を示す上面図及び側面図である。
図10の(a)に示すように、鍛造ビレット2aは、軽金属合金を鋳造して円柱状の鋳造ビレット1とし、この鋳造ビレット1を六角柱の型を用いた密閉鍛造により、軸方向P1に加圧圧縮して図10の(b)に示すプレ鍛造ビレット2bとする。
次いで、図10の(c)に示すように、得られたプレ鍛造ビレット2bを、側面を下にして立てる。そして、再びプレ鍛造ビレット2bを六角柱の型を用いた密閉鍛造により、軸とは異なる方向P2、すなわち垂直方向から加圧圧縮して図10の(d)に示す鍛造ビレット2aとする。なお、このときプレ鍛造ビレット2bは、多角柱状であるので、プレ鍛造ビレット2bの側面を下にして位置決めし易い。すなわち、加圧圧縮した方向とは異なる方向に加圧圧縮しやすい。
【0108】
このように、鍛造ビレット2aが、鋳造ビレット1を一方向に加圧圧縮してプレ鍛造ビレット2bとし、該プレ鍛造ビレット2bを加圧圧縮した方向とは異なる方向に更に加圧圧縮する履歴で得られるものであると、鍛造ビレット2aの金属結晶粒子全体における結晶粒径の小さい組織の占める割合が大きくなる。すなわち、鋳造ビレットに対して加圧圧縮を施して得た鍛造ビレットは、金属組織が流れることにより、結晶粒径が小さくなる。これに加え、上記鍛造ビレット2aにおいては、異なる方向に複数回加圧圧縮するので、金属組織が異なる方向にも動くことになり、結晶粒径がより小さくなる。このため、機械的強度がより優れ、しかも、機械的強度がより均一なホイールを製造することができる。
【0109】
また、一方向に加圧圧縮した場合、中腹部分(いわゆる中央部分)の金属結晶粒子が微細化された領域(以下「微細領域」という。)と、上下両端部は金属結晶粒子の微粒子化がされにくい領域(以下「NG領域」という。)とが生じる。なお、中腹部分の微粒子化された領域には、鍛流線が生じる。
これに対し、上述したように、プレ鍛造ビレットを加圧圧縮した方向とは異なる方向に更に加圧圧縮することにより、NG領域の一部が更に微細化されるので、全体としてNG領域を減らすことができる。
【0110】
図11の(a)〜(e)は、鋳造ビレットを一方向に加圧圧縮した後、異なる方向に更に加圧圧縮した場合の効果を説明するための概略図である。
まず、図11の(a)に示すように、鋳造ビレット1を加圧圧縮すると、中腹部分(いわゆる中央部分)が結晶粒子の微細領域Aとなり、上下両端部がNG領域Bとなる。
そして、これの側面を下にして立てた状態で位置決めすると、再び上方から加圧圧縮すると、図11の(b)に示すように、中腹部分が微細領域Aとなり、図11の(a)の微細領域Aは残る。すなわち、四方向の角の部分がNG領域Bとなる。
更に、これの側面を下にして立てて、再び上方から加圧圧縮すると、図11の(c)に示すように、中腹部分が微細領域Aとなり、図11の(a)及び図11の(b)の微細領域Aは残る。すなわち、八方向の角の部分がNG領域Bとなる。
更に、これの側面を下にして立てて、再び上方から加圧圧縮すると、図11の(d)に示すようになり、また更に、これの側面を下にして立てて、再び上方から加圧圧縮すると、図11の(e)に示すようになる。
すなわち、異なる方向からの加圧圧縮を繰り返すことにより、段階的にNG領域Bを段階的に少なくすることができる。
このように、鋳造ビレットを一方向に加圧圧縮した後、異なる方向に加圧圧縮すると、微細領域Aの占める割合が増加し、これを繰り返すことにより段階的に微細領域Aの占める割合が増えていく。この現象を利用して鍛造ビレットの有効利用領域を増やし、材料の歩留まりを大きく向上させることができる。実際では、少なくとも5回の加圧圧縮で95%が微細領域Aとなり、5%がNG領域となる。
【0111】
上記密閉鍛造の加工条件は、熱間鍛造、温間鍛造、冷間鍛造、等温鍛造のいずれであってもよい。
これらの中でも、加工条件は、熱間鍛造であることが好ましい。
具体的には、上記加圧圧縮は、300〜550℃の温度、9.8×10kN〜88.2×10kNの圧力条件下で行うことが好ましい。
【0112】
鍛造ビレット2aにおいて、鍛流線は、鋳造ビレット1からプレ鍛造ビレット2bとする加圧圧縮、又は、プレ鍛造ビレット2bから鍛造ビレット2aとする加圧圧縮、のいずれかで生じていることが好ましい。なお、一度生じた鍛流線が消えることはない。
【0113】
鍛造ビレット2aにおいては、鋳造ビレット1からプレ鍛造ビレット2bとする加圧圧縮におけるH1/H2(鍛錬比)と、プレ鍛造ビレット2bから鍛造ビレット2aとする加圧圧縮におけるH1/H2(鍛錬比)とがある。
このうち、いずれかのH1/H2(鍛錬比)が、上述した第1実施形態に係る鍛造ビレット2aと同じ範囲であることが好ましい。なお、加圧圧縮により金属結晶粒子が微粒子化された場合、後の加圧圧縮の鍛錬比が小さい場合であっても、金属結晶粒子が大きくなることはない。
【0114】
鍛造ビレット2aは、上述した第1実施形態に係るホイールの製造方法と同様に、本鍛造工程と成型工程とを経ることによりホイールが得られる。
【0115】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0116】
例えば、第1実施形態に係るホイールの製造方法においては、鋳造ビレットを軸方向に加圧圧縮して製造しているが、加圧圧縮は、軸方向に限定されるものではない。例えば、横方向であってもよい。すなわち、H1/H2(鍛錬比)は、H1が鋳造ビレットの加圧される方向(横方向)の長さを示し、H2が鍛造ビレットの加圧された方向(横方向)の長さを示すことになる。
【0117】
第3実施形態に係るホイールの製造方法においては、鋳造ビレットを加圧圧縮して、六角柱状のプレ鍛造ビレットとした後、横方向から加圧圧縮して、六角柱状の鍛造ビレットとしているが、鋳造ビレットを加圧圧縮して、六角柱状にしたものを鍛造ビレットとして用いてもよい。
【0118】
また、鍛造ビレット及びプレ鍛造ビレットは、六角柱状、八角柱状、十二角柱状等の角の多い多角柱状としてもよい。
【0119】
第3実施形態に係るホイールの製造方法において、鋳造ビレットを加圧圧縮してプレ鍛造ビレットとし、該プレ鍛造ビレットを加圧圧縮した方向とは異なる垂直方向に更に加圧圧縮しているが、加圧圧縮の回数は、2回に限定されず、3回以上行ってもよい。
【0120】
本発明に係るホイールの実施形態において、スポーク部10の形状はY字状となっているが、これに限定されるものではない。扇状やX字状であってもよい。
【0121】
上記ホイールの製造方法において、本鍛造工程S4は、第1加圧鍛造11、第2加圧鍛造12及び第3加圧鍛造13の3段を備えているが、加圧鍛造の回数は、2段でもよく、3段より多く備えていてもよい。
【0122】
上記ホイールの製造方法においては、ホイール3の周縁に立設された予備部材5を設け、これを外リム部7、内リム部8に加工している。すなわち、上記ホイールの製造方法においては、ディスク部6と予備部材5とが一体化したものを用いているが、1ピースホイール以外の2ピース、3ピースホイールではリムを別途制作し、ディスク部に周縁部に取着座を設けて該取着部に外リム及び/又は内リムを螺着、摩擦圧接、リベットなどによるかしめ手段で装着してもよい。
予備部材を別途製造する場合、鍛造圧を軽減することができる。また、この場合は、ディスク部のみかディスク部と外リム部を加圧鍛造するから鍛造後の平均高さが小さくなる。このため、鍛錬比を大きくできるという利点もある。
【0123】
具体的には、以下の製造方法が挙げられる。
(a)ディスク部を単体で作り、更に外リム部と内リム部を一体に形成したリム部を単体で作成してこれらのそれぞれに円環状の取着座を設けておき複数のボルトとナットで結合する。
(b)ディスク部を単体で作り、外リム部と内リム部を別々に作り上記と同じ要領で一体化する。
(c)ディスク部を作るとき外リム部を一体に成形し、別途作成された内リム部を複数のボルトとナットで結合する。
(d)ディスク部を作るとき内リム部を一体に成形し、別途作成された外リム部を複数のボルトとナットで結合する。
(e)ディスク部を作るとき外リム部と内リム部を予備部材として一体に成形する。
【0124】
なお、結合方法は、ボルトとナット以外にも、摩擦圧接、螺着、リベット締め又はカシメ部材を備えたハックボルト等が利用できる。
【実施例】
【0125】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0126】
(実施例1)
軽金属合金として重さ19.8kgのアルミニウム合金を準備した。これを溶融して溶融原料とした。
【0127】
アルゴンガス雰囲気下、連続鋳造法により、鋳造機に流し込み、加熱し、その後、冷却して、直径254mm、高さ145mmの円柱状の鋳造ビレット(規格番号:A6082)とした。
【0128】
上記鋳造ビレットに対して、密閉鍛造により加圧圧縮を施した。すなわち、プレス機に鋳造ビレットを載置し、350〜400℃の温度条件下、63700kNの圧力で熱間鍛造を施した。
そして、ファンで冷却することにより、高さ72.5mmの円柱状の鍛造ビレットを得た。なお、鍛造ビレットの鍛錬比は2.0である。
【0129】
(実施例2)
鋳造ビレットを、加圧圧縮し、高さ58.0mmの鍛造ビレットとしたこと以外は実施例1と同様にして、鍛造ビレットを得た。なお、鍛造ビレットの鍛錬比は2.5である。
【0130】
(実施例3)
鋳造ビレットを、加圧圧縮し、高さ48.3mmの鍛造ビレットとしたこと以外は実施例1と同様にして、鍛造ビレットを得た。なお、鍛造ビレットの鍛錬比は3.0である。
【0131】
(実施例4)
鋳造ビレットを、加圧圧縮し、高さ41.4mmの鍛造ビレットとしたこと以外は実施例1と同様にして、鍛造ビレットを得た。なお、鍛造ビレットの鍛錬比は3.5である。
【0132】
(実施例5)
鋳造ビレットを、加圧圧縮し、高さ36.2mmの鍛造ビレットとしたこと以外は実施例1と同様にして、鍛造ビレットを得た。なお、鍛造ビレットの鍛錬比は4.0である。
【0133】
(実施例6)
鋳造ビレットを、加圧圧縮し、高さ32.2mmの鍛造ビレットとしたこと以外は実施例1と同様にして、鍛造ビレットを得た。なお、鍛造ビレットの鍛錬比は4.5である。
【0134】
(実施例7)
鋳造ビレットを、加圧圧縮し、高さ29.0mmの鍛造ビレットとしたこと以外は実施例1と同様にして、鍛造ビレットを得た。なお、鍛造ビレットの鍛錬比は5.0である。
【0135】
(実施例8〜14)
規格番号A6082の鋳造ビレットの代わりに、規格番号A6151の鋳造ビレットを用いたこと以外は、実施例1〜7と同様にして、鍛造ビレットを得た。
【0136】
(実施例15)
軽金属合金として重さ13.2kgの純マグネシウム合金を準備した。これを溶融して溶融原料とした。
【0137】
アルゴンガス雰囲気下、連続鋳造法により、鋳造機に流し込み、加熱し、その後、冷却して、直径254mm、高さ144.7mmの円柱状の鋳造ビレット(規格番号:AZ80)とした。
【0138】
上記鋳造ビレットに対して、密閉鍛造により加圧圧縮を施した。すなわち、プレス機に鋳造ビレットを載置し、330〜380℃の温度条件下、7840kN〜63700kNの圧力で熱間鍛造を施した。
そして、ファンで冷却することにより、高さ72.3mmの円柱状の鍛造ビレットを得た。なお、鍛造ビレットの鍛錬比は2.0である。
【0139】
(実施例16)
鋳造ビレットを、高さ58.0mmの鍛造ビレットとしたこと以外は実施例8と同様にして、鍛造ビレットを得た。なお、鍛造ビレットの鍛錬比は2.5である。
【0140】
(実施例17)
鋳造ビレットを、高さ48.3mmの鍛造ビレットとしたこと以外は実施例8と同様にして、鍛造ビレットを得た。なお、鍛造ビレットの鍛錬比は3.0である。
【0141】
(実施例18)
鋳造ビレットを、高さ41.4mmの鍛造ビレットとしたこと以外は実施例8と同様にして、鍛造ビレットを得た。なお、鍛造ビレットの鍛錬比は3.5である。
【0142】
(実施例19)
鋳造ビレットを、高さ36.2mmの鍛造ビレットとしたこと以外は実施例5と同様にして、鍛造ビレットを得た。なお、鍛造ビレットの鍛錬比は4.0である。
【0143】
(実施例20)
鋳造ビレットを、高さ32.2mmの鍛造ビレットとしたこと以外は実施例5と同様にして、鍛造ビレットを得た。なお、鍛造ビレットの鍛錬比は4.5である。
【0144】
(実施例21)
鋳造ビレットを、高さ28.9mmの鍛造ビレットとしたこと以外は実施例5と同様にして、鍛造ビレットを得た。なお、鍛造ビレットの鍛錬比は5.0である。
【0145】
(実施例22)
鋳造ビレットを、高さ26.3mmの鍛造ビレットとしたこと以外は実施例5と同様にして、鍛造ビレットを得た。なお、鍛造ビレットの鍛錬比は5.5である。
【0146】
(実施例23)
鋳造ビレットを、高さ24.1mmの鍛造ビレットとしたこと以外は実施例5と同様にして、鍛造ビレットを得た。なお、鍛造ビレットの鍛錬比は6.0である。
【0147】
(実施例24)
軽金属合金として重さ19.8kgの純アルミニウムを準備した。これを溶融して溶融原料とした。
【0148】
アルゴンガス雰囲気下、連続鋳造法により、鋳造機に流し込み、加熱し、その後、冷却して、直径176mm、高さ476mmの円柱状の鋳造ビレット(規格番号:A6082)とした。
【0149】
上記鋳造ビレットに対して、密閉鍛造により加圧圧縮を施した。すなわち、プレス機に鋳造ビレットを載置し、熱間鍛造を施し、ファンで冷却することにより、長さ327mm高さ119mmの六角柱状のプレ鍛造ビレットを得た。
次いで、かかるプレ鍛造ビレットを側面が下になるように90度起こして垂直に立て、密閉鍛造により加圧圧縮を施した。
そして、ファンで冷却することにより、高さ117mmの六角柱の鍛造ビレットを得た。なお、鍛造ビレットの金属結晶粒子の平均粒径は13.5μmであり、鍛錬比は4.1である。
【0150】
(比較例1及び2)
アルミニウム合金からなる鋳造ビレット(規格番号:A6082)を比較例1とし、マグネシウム合金からなる鋳造ビレット(規格番号:AZ80)を比較例2とした。
【0151】
[評価1]
実施例1〜14,16〜24及び比較例1,2で得られた鍛造ビレット及び鋳造ビレットをJIS H0542の切断法に準じて観察し、金属結晶粒子の数及び金属結晶粒子の平均粒径を測定した。なお、金属結晶粒子の数は、1.75mm×1.3mm(2.275mm)辺りの数を測定した。得られた結果を表1に示す。
また、実施例1〜7の鍛錬比と金属結晶粒子の数との関係を示すグラフを図12に、実施例8〜14の鍛錬比と金属結晶粒子の数との関係を示すグラフを図13に、及び実施例15〜22の鍛錬比と金属結晶粒子の数との関係を示すグラフを図14にそれぞれ示す。
さらに、実施例1〜22の鍛造ビレットの略中心部分を拡大した顕微鏡写真を図15〜図36に、比較例1及び2の鋳造ビレットの略中心部分を拡大した顕微鏡写真を図37及び図38にそれぞれ示す。なお、表中「−」は、未測定を意味する。
【0152】
〔表1〕

【0153】
表1の結果より、実施例に示す鍛造ビレットは、比較例に示す鋳造ビレットと比較して、金属結晶粒子の数が明らかに多くなった。このことは、実施例に示す鍛造ビレットを用いたホイールが、十分に微細化されていることを示している。
また、軽金属がアルミニウム合金の場合、鍛錬比が3.5から結晶粒径が急激に細かくなり始め、4.5で安定化することがわかった。一方、軽金属がマグネシウム合金の場合、鍛錬比が4.0から結晶粒径が急激に細かくなり始め、5.5で安定化することがわかった。
さらに、実施例23における鍛造ビレットは、実施例5の鍛造ビレットの結晶粒子数、平均粒径、共に同等であったが、微粒子化された領域が大きくなっていた。
【0154】
[評価2]
実施例1〜23で得られた鍛造ビレットに対して、JIS Z 2241に準じて引張り強度を測定した。得られた結果を表2に示す。
【0155】
[評価3]
実施例1〜23で得られた鍛造ビレットに対して、JIS Z 2241に準じて耐力を測定した。得られた結果を表2に示す。
【0156】
[評価4]
実施例1〜23で得られた鍛造ビレットに対して、JIS Z 2241に準じて伸度を測定した。得られた結果を表2に示す。
【0157】
[評価5]
実施例1〜23で得られた鍛造ビレットに対して、JIS Z 2243に準じてブリネル硬度を測定した。得られた結果を表2に示す。
【0158】
〔表2〕

【0159】
表2の結果より、実施例に示す鍛造ビレットは、引張り強度、耐力、伸度、ブリネル硬度のいずれにおいても、優れていることが確認された。
【0160】
(実施例25〜30)
実施例1の方法に準じて、表3に示すように、鍛錬比の異なる鍛造ビレットを作成した。
【0161】
〔表3〕

【0162】
[評価6]
実施例25〜30で得られた鍛造ビレットの略中央部分を拡大した顕微鏡写真を図32〜図37に、それぞれ示す。
【0163】
図32〜図37の電子顕微鏡写真より、鍛錬比が3.4以上であると、金属結晶粒子がつぶれ、鍛流線が生じることが確認された。なお、マグネシウム合金を用いた鍛造ビレットにおいても、同様試験を行ったところ、鍛錬比が4.0以上であると、金属結晶粒子がつぶれ、鍛流線が生じることが確認された。
【0164】
(実施例31)
実施例5で得られた鍛造ビレットに対して、図5に示すように、第1加圧鍛造、第2加圧鍛造、第3加圧鍛造を施した(いずれも密閉鍛造)。なお、第1加圧鍛造の加工条件は、350〜400℃の温度、68600kNの圧力の熱間鍛造とし、第2及び第3加圧鍛造の加工条件は、350〜400℃の温度、80360kNの圧力の熱間鍛造とした。
そして、ファンで冷却することにより、スポーク部を凸状に形成しプレホイールを得た。
【0165】
次に、得られたプレホイールに対し、熱処理を施し、次いで、スピニング加工を施して、外リム部と内リム部とを形成し、外リム部、内リム部及びディスク部裏面を切削加工し空部を形成することにより、図7の(a)及び(b)に示すようなリム幅8.5インチ、リム径が19インチのホイールを得た。
【0166】
(実施例32)
実施例19で得られた鍛造ビレットに対して、図5に示すように、第1加圧鍛造、第2加圧鍛造、第3加圧鍛造を施した(いずれも密閉鍛造)。なお、第1加圧鍛造の加工条件は、340〜390℃の温度、29400kNの圧力の熱間鍛造とし、第2加圧鍛造の加工条件は、44100kN、第3加圧鍛造の加工条件は、39200kNの圧力の熱間鍛造とした。
そして、ファンで冷却することにより、スポーク部を凸状に形成しプレホイールを得た。
【0167】
次に、得られたプレホイールに対し、熱処理を施し、次いで、スピニング加工を施して、外リム部と内リム部とを形成し、外リム部、内リム部及びディスク部裏面を切削加工し空部を形成することにより、図7の(a)及び(b)に示すようなリム幅8.5インチ、リム径が19インチのホイールを得た。
【0168】
(比較例3)
実施例5で得られた鍛造ビレットの代わりに、比較例1の鋳造ビレットを用いたこと以外は、実施例31と同様にして、ホイールを得た。
【0169】
(比較例4)
実施例19で得られた鍛造ビレットの代わりに、比較例2の鋳造ビレットを用いたこと以外は、実施例32と同様にして、ホイールを得た。
【0170】
[評価7]
実施例31,32及び比較例3及び4で得られたホイールの各部分の結晶粒径(μm)を測定した。得られた結果を表4に示す。また、表5に示すように、各部分の略中央を拡大した顕微鏡写真を図38〜図53に、それぞれ示す。
【0171】
〔表4〕

【0172】
〔表5〕

【0173】
実施例31と比較例3、及び、実施例32と比較例4、とを比較すれば明らかなように、本発明によるホイールは、結晶粒径が比較的均一で且つ微小であり、鍛流線も生じていることがわかった。
【0174】
(実施例33)
軽金属合金として重さ13.2kgの純マグネシウム合金を準備した。これを溶融して溶融原料とした。
【0175】
アルゴンガス雰囲気下、連続鋳造法により、鋳造機に流し込み、加熱し、その後、冷却して、直径254mm、高さ144.7mmの円柱状の鋳造ビレット(規格番号:AZ80)とした。
【0176】
上記鋳造ビレットに対して、密閉鍛造により加圧圧縮を施した。すなわち、プレス機に鋳造ビレットを載置し、330〜380℃の温度条件下、7840kN〜63700kNの圧力で熱間鍛造を施した。
そして、ファンで冷却することにより、高さ32.2mmの円柱状の鍛造ビレットを得た。なお、鍛造ビレットの鍛錬比は4.5である。
得られた鍛造ビレットを用いたこと以外は、実施例32と同様にして、ホイールを得た。
【0177】
(実施例34)
純マグネシウム合金の代わりに、軽金属合金としてカルシウム2質量%を含むマグネシウム合金を用いたこと以外は、実施例33と同様にして、ホイールを得た。
【0178】
(実施例35)
純マグネシウム合金の代わりに、軽金属合金としてカルシウム4質量%を含むマグネシウム合金を用いたこと以外は、実施例33と同様にして、ホイールを得た。
【0179】
(実施例36)
純マグネシウム合金の代わりに、軽金属合金としてカルシウム8質量%を含むマグネシウム合金を用いたこと以外は、実施例33と同様にして、ホイールを得た。
【0180】
(実施例37)
純マグネシウム合金の代わりに、軽金属合金としてカルシウム15質量%を含むマグネシウム合金を用いたこと以外は、実施例33と同様にして、ホイールを得た。
【0181】
(実施例38)
純マグネシウム合金の代わりに、軽金属合金としてイットリウムを含むマグネシウム合金(商品名:WE43)を用いたこと以外は、実施例33と同様にして、ホイールを得た。
【0182】
[評価8]
実施例33〜38で得られたホイールのスポーク部に対して、20℃、100℃、200℃、300℃に加温した場合におけるJIS Z 2241に準じた引張り強度を測定した。得られた結果を表6及び図54に示す。
【0183】
〔表6〕

【0184】
[評価9]
実施例33〜38で得られたホイールのスポーク部に対して、20℃、100℃、200℃、300℃に加温した場合におけるJIS Z 2241に準じた0.2%耐力を測定した。得られた結果を表7及び図55に示す。なお、表7中「−」は、延びが少なく測定できなかったものである。
【0185】
〔表7〕

【0186】
[評価10]
実施例33〜38で得られたホイールのスポーク部に対して、20℃、100℃、200℃、300℃に加温した場合におけるJIS Z 2241に準じた伸度を測定した。得られた結果を表8に示す。なお、表8中「−」は、延びが少なく測定できなかったものである。
【0187】
〔表8〕

【0188】
[評価11]
実施例33〜38で得られたホイールのスポーク部に対して、JIS Z 2243に準じてブリネル硬度、及び、シャルピー衝撃値(J/cm)を測定した。得られた結果を表9に示す。
【0189】
〔表9〕

【0190】
表6〜9の結果より、実施例に示すホイールは、イットリウム又はカルシウムを加えると、高温時における引張り強度、耐力、伸度が優れていることがわかった。なお、イットリウムは高価であることから、安価なカルシウムを用いたホイールが、F1等のホイールが高温になる用途に好適であるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0191】
本発明のホイールの製造方法によれば、機械的強度が優れ、且つ機械的強度が均一なホイールを製造することができる。
得られるホイールは、車両用、航空機用車輪等の用途に好適に用いられる。特に、車両用に用いると、自動車を軽量化できるので、ガソリン等による環境負荷を低減でき、低コスト化も可能となる。
得られるホイールは、車両用、航空機用車輪等の用途の用途に好適に用いられる。特に、車両用に用いると、自動車を軽量化できるので、ガソリン等による環境負荷を低減でき、低コスト化も可能となる。
【符号の説明】
【0192】
1・・・鋳造ビレット
2,2a・・・鍛造ビレット
2b・・・プレ鍛造ビレット
3・・・ホイール
3a・・・第1プレホイール(プレホイール)
3b・・・第2プレホイール(プレホイール)
3a’,3b’・・・リム付きプレホイール
5・・・予備部材
6・・・ディスク部
6a・・・ハブ部
6b・・・ボルト挿通穴
7・・・外リム部
8・・・内リム部
9・・・空部
10・・・スポーク部
11,11’・・・第1加圧鍛造
12・・・第2加圧鍛造
13・・・第3加圧鍛造
A・・・微細領域
B・・・NG領域
H1,H2・・・高さ
P1,P2・・・方向
S1・・・準備工程
S2・・・鋳造工程
S3・・・予備鍛造工程
S4・・・本鍛造工程
S5・・・熱処理工程
S6・・・成型工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽金属合金を溶融し、溶融原料とする準備工程と、
該溶融原料を鋳造し、鋳造ビレットとする鋳造工程と、
該鋳造ビレットを加圧圧縮し、鍛造ビレットとする予備鍛造工程と、
該鍛造ビレットを金型で加圧鍛造し、プレホイールとする本鍛造工程と、
該プレホイールを熱処理する熱処理工程と、
該プレホイールに対し機械加工を施す成型工程と、
を備えるホイールの製造方法。
【請求項2】
前記本鍛造工程が、前記鍛造ビレットに対して、第1加圧鍛造、第2加圧鍛造及び第3加圧鍛造の3段の加圧鍛造を施し、プレホイールとする工程である請求項1記載のホイールの製造方法。
【請求項3】
前記本鍛造工程が、前記鍛造ビレットに対して、1段の加圧鍛造を施し、プレホイールとする工程である請求項1記載のホイールの製造方法。
【請求項4】
前記鍛造ビレットが鍛流線を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載のホイールの製造方法。
【請求項5】
前記加圧圧縮が、密閉鍛造によるものである請求項1〜3のいずれか一項に記載のホイールの製造方法。
【請求項6】
前記加圧鍛造が、回転鍛造、密閉鍛造又は自由鍛造によるものである請求項1〜3のいずれか一項に記載のホイールの製造方法。
【請求項7】
前記予備鍛造工程において、鋳造ビレットを一方向に加圧圧縮してプレ鍛造ビレットとし、該プレ鍛造ビレットを加圧圧縮した方向とは異なる方向に更に加圧圧縮して鍛造ビレットとする請求項1〜3のいずれか一項に記載のホイールの製造方法。
【請求項8】
前記機械加工が、スピニング加工を含み、該スピニング加工が常温で施される請求項1〜3のいずれか一項に記載のホイールの製造方法。
【請求項9】
前記軽金属合金が、アルミニウム合金であり、
前記加圧圧縮の鍛錬比が3.5以上である請求項1〜3のいずれか一項に記載のホイールの製造方法。
【請求項10】
前記軽金属合金が、マグネシウム合金であり、
前記加圧圧縮の鍛錬比が4.0以上である請求項1〜3のいずれか一項に記載のホイールの製造方法。
【請求項11】
前記加圧圧縮が300〜550℃の温度、9.8×10kN〜88.2×10kNの圧力条件下で施される請求項1〜3のいずれか一項に記載のホイールの製造方法。
【請求項12】
前記軽金属合金が、カルシウムを4〜8質量%含む請求項10記載のホイールの製造方法。
【請求項13】
前記ホイールが車両用である請求項1〜3のいずれか一項に記載のホイールの製造方法。
【請求項14】
前記ホイールが飛翔体部品用である請求項1〜3のいずれか一項に記載のホイールの製造方法。
【請求項15】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のホイールの製造方法により得られるホイールであって、
ディスク部と、該ディスク部の周縁に設けられた外リム部及び内リム部と、を備えるホイール。
【請求項16】
前記ディスク部、前記外リム部及び前記内リム部が、一体となっている請求項15記載のホイール。
【請求項17】
前記ディスク部、前記外リム部及び前記内リム部の少なくとも1つの金属結晶粒子のJIS H0542の切断法に基づく平均粒径が30μm以下である請求項15記載のホイール。
【請求項18】
前記ディスク部、前記外リム部及び前記内リム部が、いずれも鍛流線を有する請求項15記載のホイール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【公開番号】特開2010−83473(P2010−83473A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158309(P2009−158309)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(000116231)ワシ興産株式会社 (25)
【Fターム(参考)】