説明

ボールジョイントおよびその製造方法

【課題】信頼性が高く軽量なボールジョイントを提供する。
【解決手段】ボールジョイントは、ボールシートを収容する樹脂製のハウジング520と、ハウジング520と一体成形される樹脂製のサポートバー530とを備えている。ハウジング520は、その側面に開口する開口部525aを有するボス部525を備えている。サポートバー530は、その軸線に沿う中央部を構成するバー部531と、バー部531の先端部に鍔状のフランジ部535とを備えている。サポートバー530は、開口部525aがフランジ部535の全周を覆うように密着形成されて、ボス部525と結合する。
【選択図】図12


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車両に搭載されるスタビライザに備えられるボールジョイントおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両の懸架機構部におけるスタビライザとショックアブソーバとの接続部や、スタビライザとサスペンションアームとの接続部などのように、互いに相対変位する2つの部分を回転可能にかつ揺動可能に接続するためにボールジョイントが用いられている。
【0003】
このボールジョイントは、スタッド部およびボール部を有するボールスタッドと、ボールスタッドのボール部が圧入されベアリング機能を有するボールシートと、ボールシートを収容するハウジングと、ハウジングを支持するサポートバーと、ボールシートとボールスタッドのボール部との間で行われる摺動および揺動運動を阻害する異物が侵入するのを防止するダストカバーとを備えている。
【0004】
このボールジョイントの製造方法では、ハウジングとサポートバーとが別成形されており、プレス成形などにより製造されたハウジングに鉄鋼棒(例えばS20C)のサポートバーを抵抗溶接またはCO溶接で接合していた。
【0005】
サポートバーなどを鋼材で形成した場合、ボールジョイントの構成部品である、ボールスタッド、ダストカバー、サポートバー、ボールシートのうち、ボールジョイント1個の重量の中でサポートバーが最も重くなる。例えば、サポートバーの軸方向の長さが325mmのサポートバーの重さは260gであり、サポートバー以外の部品の総重量はおよそ130gであり、他部品の総重量の2倍となる。つまり、ボールジョイント1個の重量390gのうち、2/3がサポートバーの重量となっていた。そのため、ボールジョイントの重量が重くなり、車両の軽量化におけるボールジョイントの貢献が困難であった。
【0006】
ハウジングとサポートバーとが別成形されている場合には、サポートバーがハウジングに抵抗溶接などで接合されているため、サポートバーの軸方向に引張荷重または圧縮荷重を付加した耐久試験を実施すると、所定回数前に溶接部から破損することが判明している。そのため、一体成形されたハウジングおよびサポートバーに対し、接合部分に強度上の不安があり、ボールジョイントの信頼性の確保に不安を残していた。
【0007】
一方、ハウジングとサポートバーとをアルミニウムなどで一体成形するボールジョイントの製造方法が提案されている(例えば、特許文献1)。この製造方法では、まず射出成形によりボールスタッドのボール部に樹脂ライナ(ボールシート)を成形する。次いで、ハウジングおよびサポートバーを成形するための型内にボール部および樹脂ライナを中子としてインサートする。次いで、ダイキャスト成形により樹脂ライナを覆うハウジングおよびハウジングを支持するサポートバーを亜鉛合金またはアルミ合金で一体成形する。次いで、ボール部にスタッド部を接続していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−316771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら上記提案に係る技術では、ダイキャスト成形のときにボールスタッドのボール部およびボールシートを中子にして溶解したアルミ合金を注入するため、樹脂製のボールシートの外表面が劣化する。そのため、ボール部との接触部分のボールシートは良好に保たれるが樹脂肉厚の微妙な不均一は免れないので、ボールスタッドの摺動および揺動運動のときの動作が不安定になる。つまり、引張荷重や圧縮荷重をボールスタッドの軸方向またはボール部の半径方向に付加したとき、ボールシートの撓み量がばらつき、ボールスタッドの摺動および揺動運動のときの動作が不規則になる。その結果、ボールジョイントの性能を十分に発揮することができず、十分な信頼性のあるボールジョイントとはいえなかった。
【0010】
また、ダイキャスト成形のときにボールスタッドのボール部およびボールシートを中子にするため、ボール部にスタッド部が接続されているとハウジングおよびサポートバーをダイキャスト成形することができない。そのため、ハウジングおよびサポートバーをダイキャスト成形した後に、ボール部にスタッド部を抵抗溶接などで接合してボールスタッドを成形していた。したがって、スタッド部とボール部との接合部分に強度上の不安があり、ボールジョイントの信頼性の確保に不安を残していた。
【0011】
そこで本発明は、信頼性が高く軽量なボールジョイントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のボールジョイントは、柱状のスタッド部と、側面が球状でかつ中心を前記スタッド部の軸線上に位置させるボール部とを有するボールスタッドと、前記ボール部と相対回転自在にかつ揺動自在に嵌合する球面状の凹部を有する樹脂製のボールシートと、前記ボールシートを収容する樹脂製のハウジングと、前記ハウジングに結合される樹脂製のサポートバーとを備え、前記ハウジングは、その側面に開口する開口部を有するボス部を備え、前記サポートバーは、その軸線に沿う中央部を構成するバー部と、前記バー部の先端部に鍔状のフランジ部とを備え、前記サポートバーは、前記開口部が前記フランジ部の全周を覆うように密着形成されて、前記ボス部と結合することを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、ハウジングとサポートバーとが一体成形されているため、サポートバーの軸方向に圧縮荷重や引張荷重などがかかった場合、ハウジングとサポートバーとの境目部分が荷重に耐える。また、サポートバーは開口部がフランジ部の全周を覆うように密着形成されてボス部と結合するため、サポートバーの軸方向に圧縮荷重や引張荷重などがかかった場合、ハウジングとサポートバーとの境目部分が荷重に耐える。そのため、サポートバーの軸方向に荷重がかかった場合、ハウジングとサポートバーとの境目部分から破損するのを防止することができる。つまり、サポートバーの軸方向にかかる荷重に対する耐久性が向上し、ボールジョイントの強度を高めることができる。その結果、ボールジョイントの信頼性を向上させることができる。また、ボールジョイントの軽量化を図ることができる。さらに、アルミ合金のような電食に対する配慮も不要となる。
【0014】
本発明の樹脂としては、ポリフェニレンサルファイドまたはポリエーテルエーテルケトンなどが好適である。例えば、ポリフェニレンサルファイドまたはポリエーテルエーテルケトンなどの材料では、ハウジングやサポートバーをインジェクションするときの射出条件を選定すれば、ばりなどの発生を防止することができる。また、ポリフェニレンサルファイドまたはポリエーテルエーテルケトンなどの材料は、ボールシートの熱かしめ部をかしめるときの熱に耐えられる耐熱性や強度を備えている。
【0015】
本発明において、前記サポートバーは、前記サポートバーの軸方向に延設され、前記バー部と一体成形される凸条を円周方向に複数有することを特徴とすることが望ましい。この態様によれば、サポートバーの軸方向に圧縮荷重がかかった場合、サポートバーが座屈するのを防止することができる。つまり、サポートバーの剛性を高めることができる。また、使用する樹脂が減ることによる軽量化およびコストダウンを図ることができる。
【0016】
本発明において、前記サポートバーは、前記バー部の前記フランジ部側に複数の突起部を有し、前記開口部は、前記複数の突起部の全周を覆うように密着形成されることが望ましい。この態様によれば、ハウジングまたはサポートバーにねじり荷重がかかった場合、ハウジングまたはサポートバーが相互に回転するのを防止する。そのため、ハウジングまたはサポートバーにねじり荷重がかかった場合、ハウジングの位相角が変化するのを防止し、ボールジョイントの機能を維持することができる。この態様の突起部としては、ライン突起や凸状の突起を設けることなどが挙げられる。
【0017】
本発明において、前記サポートバーは、ハウジング側であって、前記サポートバーの軸方向に前記ボス部から離れる方向の所定の範囲にストレート部を有することが望ましい。この態様によれば、サポートバーの成形後に、サポートバーの先端部にハウジングを成形するとき、ストレート部を支持することによりサポートバーを支持してハウジングを成形することができる。そのため、ハウジングを成形するときに、サポートバーを支持するのを容易にして、サポートバーの支持姿勢が変化するのを防止し、ハウジングの型から樹脂がはみ出すのを防止することができる。この態様のストレート部としては、サポートバーを支持しやすい形状であればよく、円柱状や角柱状のストレート部を設けることなどが挙げられる。
【0018】
本発明において、前記ハウジングは、底面側の外径に比べて、上端側の外径が大きくなるように形成されることが望ましい。この態様によれば、ハウジングには凹部があるので、強度的に弱い部分となる上端側の強度を上げることができる。そのため、ハウジングにサポートバーの軸方向に向かって引張荷重がかかった場合、ハウジングが荷重に耐え、ハウジングが破損するのを防止することができる。つまり、ハウジングの強度を高めることができる。また、使用する樹脂が減ることによる軽量化およびコストダウンを図ることができる。
【0019】
本発明において、一端が前記スタッド部に接触し、他端が前記ハウジングの上端に接触するダストカバーと、前記ハウジングの上端に、前記ボールスタッドが揺動するとき前記ダストカバーが接地する部分を平坦になるように形成される上端部と、前記サポートバー側に前記上端部と平坦になるように形成される平坦部とを備えることが望ましい。この態様によれば、ボールスタッドが揺動するときにダストカバーが接地する部分全体が平坦となる。そのため、ボールスタッドが揺動するときにダストカバーが角部などの突起部分に接触するのを防止し、ダストカバーが破損するのを防止することができる。
【0020】
本発明のボールジョイントの製造方法は、インジェクションにより鍔状のフランジ部およびストレート部を有するサポートバーを樹脂で成形する射出成形工程を行い、次いで前記ストレート部を支持して、インジェクションにより前記フランジ部を含む前記サポートバーの先端部分をボス部で包むようにハウジングを樹脂で成形する包み成形工程を行うことを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、サポートバーの先端部分にハウジングを成形するとき、ストレート部を支持して、ハウジングを成形するため、サポートバーを支持するのを容易にして、ハウジングを成形するための型とサポートバーとの相対的な位置が変化するのを防止する。そのため、ハウジングを成形するための型から樹脂がはみ出すのを防止することができる。また、サポートバーの成形後に成形するハウジングの成形収縮によって、サポートバーの端部を強固に圧縮固定することができる。そのため、ハウジングとサポートバーとの接触面が離反するがたがなく、ボールジョイントの信頼性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、信頼性が高く軽量なボールジョイントを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】ボールジョイントを示す図である。
【図2】ボールジョイントが揺動した場合示す図である。
【図3】軸支部材の一部を示す斜視図である。
【図4】サポートバーを示す図3におけるX−X断面図である。
【図5】軸支部材の第1の変形例を示す斜視図である。
【図6】軸支部材の第2の変形例を示す斜視図である。
【図7】軸支部材の第3の変形例を示す斜視図である。
【図8】サポートバーの変形例を示す断面図である。
【図9】ボールジョイントの製造方法を示すフローチャートである。
【図10】実施形態にかかるボールジョイントを示す図である。
【図11】実施形態にかかる軸支部材の一部を示す図である。
【図12】実施形態にかかる軸支部材の一部を示す図である。
【図13】実施形態にかかるサポートバーを示す図である。
【図14】軸支部材の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(1)参考形態
参考形態にかかるボールジョイントの構成)
以下、本発明の参考形態について図面を参照して説明する。本発明の参考形態は、本発明の実施形態と共通の構成を有する形態である。図1は、ボールジョイントを示す図である。図2は、ボールジョイントが揺動した場合示す図である。図3は、軸支部材の一部を示す斜視図である。図4は、サポートバーを示す図3におけるX−X断面図である。図5は、軸支部材の第1の変形例を示す斜視図である。図6は、軸支部材の第2の変形例を示す斜視図である。図7は、軸支部材の第3の変形例を示す斜視図である。図8は、サポートバーの変形例を示す断面図である。図8(a)は、サポートバーの第1の変形例を示す断面図である。図8(b)は、サポートバーの第2の変形例を示す断面図である。
【0025】
ボールジョイント10は、図1,図2に示すように、ボールスタッド100と、ハウジング220などを備える軸支部材200と、ダストカバー300などを備えている。このボールジョイント10は、ボールスタッド100と、このボールスタッド100をユニバーサルに軸支する軸支部材200とを主体として構成され、図示省略した板状の取付部材に固定される。ボールジョイント10は、スタビライザの接続部などに用いられる。
【0026】
サポートバー230の両側には、図1,図2に示すように、ハウジング220が設けられている。スタビライザの接続部では、ハウジング220の取り付けられている方向が同じ方向の場合、位相角が0度となる。したがって、図1,図2に示すように両側のハウジング220が共に上側に向けて設けられている場合、位相角が0度となる。一方、一方のハウジング220が上側に向けて設けられ、他方のハウジング220が下側に向けて設けられている場合、位相角が180度となる。
【0027】
ボールスタッド100は、金属製で一体成形されている。ボールスタッド100は、図1,図2に示すように、スタッド部110と、ボール部120と、鍔部130と、ねじ部140と、凸部150と、テーパー部160とを有している。ボールスタッド100は、円柱状のスタッド部110の一端部にボール部120が形成されたものである。ボール部120の中心は、スタッド部110の軸線上に位置している。ボールスタッド100には、スタッド部110の軸方向中間部に鍔状の鍔部130およびダストカバー300がずれるのを防止する凸部150が形成されている。また、ボールスタッド100には、スタッド部110の鍔部130から先端側、すなわちボール部120とは反対側の周面にねじ部140が形成され、ボール部120側にテーパー部160が形成されている。
【0028】
ボールスタッド100は、ねじ部140が形成されたボールスタッド100の先端部が図示省略した取付部材に形成された孔に通され、ねじ部140に図示省略したナットをねじ込んで取付部材に締め付けられることにより、ボールスタッド100の鍔部130とナットで取付部材を挟んで締結される。
【0029】
軸支部材200は、図1,図2に示すように、ボールシート210と、ハウジング220と、サポートバー230とを備えている。
【0030】
ボールシート210は、ポリアセタールやポリブチレンテレフタレートなどの硬質樹脂で形成されている。ボールシート210は、鍔部211と、凹部212と、熱かしめ部213とを有している。ボールシート210は、上端縁に鍔部211を有する有底円筒状である。ボールシート210は、内部に球面状の凹部212が形成され、外側底面にボールシート210をハウジング220に固定するための熱かしめ部213が形成されている。
【0031】
ハウジング220は、ポリフェニレンサルファイドあるいはポリエーテルエーテルケトンなどの樹脂で形成されている。ハウジング220は、上端部221と、孔部222と、凹部223と、平坦部224とを有している。ハウジング220は、上端に上端部221および平坦部224が形成されている。ハウジング220は、内部にボールシート210が収容される凹部223が形成されている。ハウジング220は、底面にボールシート210の熱かしめ部213が挿入される孔部222が形成されている。ハウジング220は、ボールシート210を収容する。具体的には、ボールシート210は、ボールシート210に設ける熱かしめ部213をハウジング220の孔部222に嵌合させた状態で熱かしめ部213が熱でかしめられ、ハウジング220に固定される。
【0032】
ハウジング220の底面側の外径に比べて、ハウジング220の上端側の外径が大きくなるように形成されている。具体的には、ハウジング220は、外周壁の全体がテーパー状に形成されており、ハウジング220の底面側からハウジング220の上端側に向けて外径が徐々に大きくなるように形成されている。
【0033】
なお、この形態に限らず、ハウジング220の上端側の外径が大きくなるように形成される形態として、図5に示すように外壁の一部がテーパー状に形成されている形態としてもよい。あるいは、図6に示すように円筒状のハウジング220の上端側に鍔部を設ける、または図7に示すように円筒状のハウジング220としてもよい。
【0034】
このように、ハウジング220の底面側の外径に比べて、ハウジング220の上端側の外径が大きくなるように形成されているため、強度的に弱い部分となる上端側の強度を上げることができる。そのため、ハウジング220にサポートバー230の軸方向に向かって引張荷重がかかった場合、ハウジング220が荷重に耐え、ハウジング220が破損するのを防止することができる。つまり、ハウジング220の強度を高めることができる。また、使用する樹脂が減ることによる軽量化およびコストダウンを図ることができる。
【0035】
平坦部224は、図1〜図3に示すように、サポートバー230側のハウジング220の上端に設けられている。平坦部224は、ハウジング220の上端部221と平坦になるように設けられている。一方、上端部221は、ボールスタッド100が揺動するときにダストカバー300が接地する部分を平坦になるように形成されている。
【0036】
平坦部224と上端部221とを設けることにより、ボールスタッド100が揺動するときにダストカバー300が接地する部分全体が平坦となる。そのため、ボールスタッド100が揺動するときにダストカバー300が角部などの突起部分に接触するのを防止し、ダストカバー300が破損するのを防止することができる。
【0037】
サポートバー230は、ポリフェニレンサルファイドあるいはポリエーテルエーテルケトンなどの樹脂で形成されている。サポートバー230は、ハウジング220と一体成形されている。サポートバー230は、ハウジング220の外周壁にハウジング220の径方向に延びるように設けられている。サポートバー230は、図1〜図3に示すように、バー部231と、凸条232と、支持部233とを有している。バー部231は、サポートバー230の軸線に沿う中央部を構成する。
【0038】
なお、ハウジング220とサポートバー230とが成形される型を考慮して、位相角が0度または180度の場合に、ハウジング220とサポートバー230とを一体成形する形態が好適である。
【0039】
このようにハウジング220とサポートバー230とを一体成形しているため、サポートバー230の軸方向に圧縮荷重や引張荷重などがかかった場合、ハウジング220とサポートバー230との境目部分が荷重に耐える。そのため、サポートバー230の軸方向に荷重がかかった場合、ハウジング220とサポートバー230との境目部分から破損するのを防止することができる。つまり、サポートバー230の軸方向にかかる荷重に対する耐久性が向上し、ボールジョイント10の強度を高めることができる。その結果、ボールジョイント10の信頼性を向上させることができる。
【0040】
凸条232は、サポートバー230の軸方向に延設されている。凸条232は、バー部231と一体成形されている。凸条232は、円周方向に複数設けられている。具体的には、凸条232は、図4に示すように、6個設けられている。サポートバー230には、サポートバー230の両端のハウジング230の位相角が0度または180度であるため、ハウジング220の凹部223の開口方向を上下としたときに、水平方向に一対の凸条232が対向するように設けられている。
【0041】
なお、凸条232が6個設けられている形態に限らず、図8に示すように4個の凸条232を設ける形態としてもよい。また、図8(a)に示すように、凸条232と凸条232との谷を形成する場合に限らず、図8(b)に示すように、凸条232と凸条232との間に凸部232aを設けてもよい。
【0042】
さらに、8個の凸条を設ける形態としてもよい。この場合には、射出成形での半割り型からサポートバーの取り外しやすさなどを考慮して、8個の凸条のうち半割り型に引っ掛かり、半割り型から容易に取り外せなくなる部分であるオーバーハング部となりそうな凸条を、オーバーハング部となりそうにない凸条より小さく形成してオーバーハング部とならないようにする。このように、凸条の数が偶数の場合に限らず奇数の場合でもよく、凸条が複数設けられていればよい。
【0043】
このように複数の凸条232を延設することにより、サポートバー230の軸方向に圧縮荷重がかかった場合、サポートバー230が座屈するのを防止することができる。つまり、サポートバー230の剛性を高めることができる。また、使用する樹脂が減ることによる軽量化およびコストダウンを図ることができる。
【0044】
支持部233は、図3に示すように、ハウジング220側のバー部231の両側に設けられている。支持部233は、水平方向のハウジング220の外周壁からの接線をバー部231に下ろしたときの内側の形状になるように形成されている。具体的には、水平位置にある一対の凸条232が凸条232の幅を拡張するように形成されている。支持部233は、水平方向からハウジング220またはサポートバー230に荷重がかかった場合、ハウジング220またはサポートバー230を支持する。そのため、その荷重によりハウジング220とサポートバー230との境目部分から破損するのを防止する。
【0045】
なお、支持部233の形状はこの形態に限らず、ハウジング220の外周壁からの接線を円弧状に形成される支持部など、水平方向からハウジング220またはサポートバー230に荷重がかかった場合、ハウジング220またはサポートバー230を支持する形状であればよい。
【0046】
ダストカバー300は、図1,図2に示すように、ゴム製で笠状に形成されている。ダストカバー300は、大径側の端縁がボールシート210の鍔部211とハウジング220の上端部221との間に挟まれて固定され、小径側の端縁がボールスタッド100の鍔部130に掛止され、凸部150にずれを止められて固定されている。そのため、ダストカバー300によりシール性が確保され、ボールシート210の凹部212にゴミが侵入するのを防止する。ダストカバー300は、図2に示すように、ボールスタッド100が揺動するとき、上端部221および平坦部224に接地する。
【0047】
ボールジョイント10の重量は、例えば、ハウジングやサポートバーが鉄鋼製のボールジョイント1個の重量が390gであるのに対して、軸方向の長さが325mmのサポートバー230の場合、サポートバー230の重さが105gとなり、ボールジョイント10全体として235gとなる。そのため、155g程度の軽量化が図られる。
【0048】
参考形態にかかるボールジョイントの製造方法)
次に、参考形態にかかるボールジョイント10の製造方法について図面を参照して説明する。図9は、ボールジョイントの製造方法を示すフローチャートである。
【0049】
まず、インジェクションにより孔部222および凹部223を有するハウジング220とサポートバー230とを樹脂で一体成形する射出成形工程を行う(S101)。次いで、ハウジング220の凹部223にボールシート210を挿入して固定する固定工程を行う(S102)。この固定工程では、ボールスタッド100のボール部120がボールシート210の凹部212に圧入されたボールシート210を、ハウジング220の凹部223に圧入する。そして、ハウジング220の底面に成形された孔部222に挿入されたボールシート210の底面に設けられる熱かしめ部213を熱でかしめるかしめ工程を行う。以上のような工程によりボールジョイント10が完成する。
【0050】
なお、ハウジング220の凹部223にボールシートを固定する固定工程としては、この形態に限らず、ハウジングの凹部に接着層を設けてボールシートをハウジングの凹部に固定する形態としてもよい。
【0051】
この製造方法によれば、圧縮荷重によるサポートバー230の曲がりを考慮すると、最大応力部であるサポートバー230の中央から端部に向かって外径を緩やかに小さくすることが、射出成形工程の型の形状を設定することにより可能となる。そのため、バー部231の応力を均等とすることができ、ボールジョイント10の重量をより軽量にすることができる。
【0052】
この製造方法のボールジョイントでは、ハウジング220とサポートバー230とを一体成形するため、サポートバー230の軸方向に圧縮荷重や引張荷重などがかかった場合、ハウジング220とサポートバー230との境目部分が荷重に耐える。そのため、サポートバー220の軸方向に荷重がかかった場合、ハウジング220とサポートバー230との境目部分から破損するのを防止することができる。つまり、サポートバー230の軸方向にかかる荷重に対する耐久性が向上し、ボールジョイント10の強度を高めることができる。その結果、ボールジョイント10の信頼性を向上させることができる。また、ボールジョイント10の軽量化を図ることができる。
【0053】
(2)実施形態
実施形態にかかる軸支部材の構成)
次に、ボールジョイントの実施形態について図面を参照して説明する。ボールジョイントの実施形態は、上記参考形態の軸支部材のハウジングおよびサポートバーを変更したものである。したがって、主に軸支部材のハウジングおよびサポートバーの構成について説明し、参考形態と同様な構成の説明は省略する。
【0054】
図10は、実施形態にかかるボールジョイントを示す図である。図11は、実施形態にかかる軸支部材の一部を示す図である。図11(a)は、軸支部材の一部を示す斜視図である。図11(b)は、軸支部材の一部を示す側面図である。図12は、実施形態にかかる軸支部材の一部を示す図である。図12(a)は、軸支部材の一部を示す斜視図である。図12(b)は、軸支部材の一部を示す側面図である。図13は、実施形態にかかるサポートバーを示す図である。図13(a)は、サポートバーを示す斜視図である。図13(b)は、サポートバーを示す側面図である。図13(c)は、サポートバーを示す概念図である。
【0055】
ハウジング520は、ポリフェニレンサルファイドあるいはポリエーテルエーテルケトンなどの樹脂で形成されている。ハウジング520は、図11,図12に示すように、上端部521と、凹部523と、平坦部524と、ボス部525とを有している。
【0056】
ボス部525は、ハウジング520のサポートバー530側に設けられている。ボス部525は、開口部525aを有している。開口部525aは、ハウジング220の側面に開口している。ボス部525は、サポートバー530の先端部分が開口部525aに結合されて、ハウジング520とサポートバー530とを結合するための部分である。開口部525aは、サポートバー530の先端部分を覆っており、サポートバー530の先端部分の形状と同じ形状である。
【0057】
ボス部525は、サポートバー530の先端部分を覆うように密着形成されているので外径が大きくなりハウジング520の上端部521を上回る。そのため、ハウジング520は、ボス部525の上端からハウジング520の上端部521へ向かってえぐった形状として、平坦部524を設けている。
【0058】
サポートバー530は、ポリフェニレンサルファイドあるいはポリエーテルエーテルケトンなどの樹脂で形成されている。サポートバー530は、ハウジング520と別成形されている。サポートバー530は、図11,図12に示すように、ハウジング220の外周壁にハウジング220の径方向に延びるように結合されている。サポートバー230は、図12,図13に示すように、バー部531と、凸条532と、ストレート部533と、突起部534と、フランジ部535とを有している。
【0059】
なお、ハウジング220とサポートバー230とが成形される型を考慮して、図10に示すような位相角が0度または180度以外の場合に、ハウジング220とサポートバー230とを別成形する実施形態が好適である。
【0060】
ストレート部533は、サポートバー530の先端付近のボス部525の開口部525aに覆われない位置に設けられている。具体的には、ハウジング520側であって、サポートバー530の軸方向にボス部525から離れる方向の所定の範囲に設けられている。ストレート部533は、凸条532に外接する外接円の外径と同じ外径の円柱状に形成されている。
【0061】
突起部534は、ストレート部533とフランジ部535との間で、ボス部525の開口部525aに覆われる位置に設けられている。具体的には、開口部525aは、突起部534の全周を覆うように密着形成されている。突起部534は、バー部531に設ける凸条532の形状と同じ形状になるように形成されている。
【0062】
このように突起部534を設けることにより、ハウジング520またはサポートバー530にねじり荷重がかかった場合、ハウジング520またはサポートバー530が相互に回転するのを防止する。そのため、ハウジング520またはサポートバー530にねじり荷重がかかった場合、ハウジング520の位相角が変化するのを防止し、ボールジョイント10の機能を維持することができる。
【0063】
フランジ部535は、バー部531の先端部に設けられている。フランジ部535は、鍔状に形成されている。フランジ部535は、フランジ部535の全周が開口部525aに覆われるように設けられている。つまり、開口部525aがフランジ部535の全周を覆うように密着形成されている。フランジ部535は、サポートバー530の軸方向に引張荷重がかかった場合、ハウジング520のボス部525からサポートバー530が抜けるのを防止する。
【0064】
フランジ部535の厚さtは、図13に示すように、サポートバー530の断面積をAbとし、凸条532と凸条532との谷径をDvとすると、以下の数1の式を満足するように構成されている。
【0065】
【数1】

【0066】
また、図13(c)に示すように、凸条532に外接する外接円の面積を除くフランジ部535の面積Afは、以下の数2の式を満足するように構成されている。
【0067】
【数2】

【0068】
上記数1および数2の式を満足するフランジ部535を形成することにより、フランジ部535が容易に破損するのを防止して、サポートバー530の軸方向の引張荷重によりハウジング520のボス部525からサポートバー530が抜けるのを防止する。
【0069】
なお、この実施形態では、フランジ535の外形は、ボールスタッド100の軸方向のハウジング520の大きさより大きくならないようにするため、円形の上下端をカットした形状にしているが、上記数2の式を満足するのであれば円形などでもよい。
【0070】
この実施形態によれば、ハウジング520とサポートバー530とが機械的に噛み合わされているため、ハウジング520とサポートバー530との結合が容易に外れるのを防止することができる。また、ハウジング520とサポートバー530とは同材質であるため、線膨張係数の違いによる熱膨張によりハウジング520とサポートバー530との接触面が離反するがたや割れなどの不具合が発生するのを防止する。そのため、ボールジョイント10の信頼性が向上する。
【0071】
実施形態にかかる軸支部材の製造方法)
次に、実施形態にかかる軸支部材の製造方法について説明する。図14は、軸支部材の製造方法を示すフローチャートである。
【0072】
まず、インジェクションによりストレート部533およびフランジ部535などを有するサポートバー530を樹脂で成形する射出成形工程を行う(S201)。次いで、インジェクションによりサポートバー530の先端部分を樹脂で包むようにハウジング520を成形する包み成形工程を行う(S202)。この包み成形工程では、まず、突起部534およびフランジ部535を含むサポートバー530の先端部分を金型に挿入する。次いで、ストレート部533を支持することによりサポートバー530を支持して、サポートバー530の先端部分をボス部525で包むようにハウジング520を樹脂で成形する。以上のような工程により軸支部材500が完成する。
【0073】
この製造方法によれば、サポートバー530の成形後に、サポートバー530の先端部分にハウジング520を成形するとき、ストレート部533を支持することによりサポートバー530を支持して、ハウジング520を成形することができる。そのため、ハウジング520を成形するときに、サポートバー530を支持するのを容易にして、ハウジング520を成形するための型とサポートバー530との相対的な位置が変化するのを防止する。したがって、ハウジング520を成形するための型から樹脂がはみ出すのを防止することができる。
【0074】
また、サポートバー530の成形後に成形するハウジング520の成形収縮によって、サポートバー530の端部を強固に圧縮固定することができる。そのため、ハウジング520とサポートバー530との接触面が離反するがたがなく、ボールジョイント10の信頼性が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、自動車などの車両に搭載されるスタビライザなどに利用することができる。
【符号の説明】
【0076】
10…ボールジョイント、100…ボールスタッド、110…スタッド部、120…ボール部、210…ボールシート、212…凹部、220,520…ハウジング、221,521…上端部、223,523…凹部、224,524…平坦部、230,530…サポートバー、231,531…バー部、232,532…凸条、300…ダストカバー、525…ボス部、525a…開口部、533…ストレート部、534…突起部、535…フランジ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状のスタッド部と、側面が球状でかつ中心を前記スタッド部の軸線上に位置させるボール部とを有するボールスタッドと、
前記ボール部と相対回転自在にかつ揺動自在に嵌合する球面状の凹部を有する樹脂製のボールシートと、
前記ボールシートを収容する樹脂製のハウジングと、
前記ハウジングに結合される樹脂製のサポートバーとを備え、
前記ハウジングは、その側面に開口する開口部を有するボス部を備え、
前記サポートバーは、その軸線に沿う中央部を構成するバー部と、前記バー部の先端部に鍔状のフランジ部とを備え、
前記サポートバーは、前記開口部が前記フランジ部の全周を覆うように密着形成されて、前記ボス部と結合することを特徴とするボールジョイント。
【請求項2】
前記サポートバーは、前記サポートバーの軸方向に延設され、前記バー部と一体成形される凸条を円周方向に複数有することを特徴とする請求項1に記載のボールジョイント。
【請求項3】
前記サポートバーは、前記バー部の前記フランジ部側に複数の突起部を有し、
前記開口部は、前記複数の突起部の全周を覆うように密着形成されることを特徴とする請求項1に記載のボールジョイント。
【請求項4】
前記サポートバーは、ハウジング側であって、前記サポートバーの軸方向に前記ボス部から離れる方向の所定の範囲にストレート部を有することを特徴とする請求項1に記載のボールジョイント。
【請求項5】
前記ハウジングは、底面側の外径に比べて、上端側の外径が大きくなるように形成されることを特徴とする請求項1に記載のボールジョイント。
【請求項6】
一端が前記スタッド部に接触し、他端が前記ハウジングの上端に接触するダストカバーと、
前記ハウジングの上端に、前記ボールスタッドが揺動するとき前記ダストカバーが接地する部分を平坦になるように形成される上端部と、
前記サポートバー側に前記上端部と平坦になるように形成される平坦部と
を備えることを特徴とする請求項1に記載のボールジョイント。
【請求項7】
インジェクションによりフランジ部およびストレート部を有するサポートバーを樹脂で成形する射出成形工程を行い、次いで前記ストレート部を支持して、インジェクションにより前記フランジ部を含む前記サポートバーの先端部分をボス部で包むようにハウジングを樹脂で成形する包み成形工程を行うことを特徴とするボールジョイントの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−220527(P2011−220527A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130499(P2011−130499)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【分割の表示】特願2008−108675(P2008−108675)の分割
【原出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】