説明

ボール螺子熱変位補正装置

【課題】指令値に対する移動量の誤差を抑えることができるボール螺子熱変位補正装置を提供する。
【解決手段】軸長方向に沿って延びると共に中心軸心P1の回りで回転可能なボール螺子2と、ボール螺子2を回転可能に支持する支持部をもつ固定部と、ボール螺子2に接続され前記ボール螺子2を中心軸心の回りで回転させる駆動部5と、ボール螺子2に係合されボール螺子2の回転に伴い軸長方向に沿って移動する可動部6と、可動部6に保持され可動部6と共に軸長方向に沿って移動する可動側衝突子7と、固定部4において可動部6の前進端側に設けられ、可動部6と共に軸長方向に沿って移動する可動側衝突子7と衝突可能な固定側衝突子8と、可動側衝突子7および固定側衝突子8の衝突に基づく衝突変位量を求め、衝突変位量に基づいて可動部を移動させる補正移動量を設定する制御部9とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボール螺子の軸長方向の熱変位に対して補正するボール螺子熱変位補正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械等においては、ボール螺子を有する装置が提供されている(特許文献1,2)。ボール螺子は、これの中心軸心の回りで螺旋状に形成された溝をもつ軸状体と、軸状体の溝に転動可能に保持された複数個の球状の転動体と、軸状体の回転により軸状体の軸長方向に沿って移動する可動部とを備えている。軸状体は中心軸心の回りで駆動モータにより回転される。可動部には処理工具が取り付けられている。軸状体がこれの中心軸心の回りで一方向に回転すると、可動部が前進し、処理工具が前進する。軸状体がこれの中心軸心の回りで逆方向に回転すると、可動部が後退し、処理工具が後退する。処理工具を有する可動部の前進量および後退量は、制御部が駆動モータの駆動回路に指令値を出力することにより実行される。
【特許文献1】特開2007−21721号公報
【特許文献2】特開平10−217068号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、ボール螺子がこれの中心軸心の回りで回転駆動するとき、転動体と軸状体の溝の壁面との間の摩擦熱等の影響で、ボール螺子が発熱して昇温することがある。この場合、ボール螺子が熱膨張によりこれの軸長方向に伸張する。ボール螺子はこれの軸長方向に沿っているため、熱膨張量は、可動部の高い位置決め精度を実現させるためには、無視できない大きさとなる。このため制御部の指令値に基づいて工具が移動するとき、指令値に対して工具を有する可動部の移動量の誤差が発生するおそれがある。
【0004】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、指令値に対する移動量の誤差を効果的に抑えることができるボール螺子熱変位補正装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るボール螺子熱変位補正装置は、軸長方向に沿って延びると共に中心軸心の回りで回転可能なボール螺子と、前記中心軸心の回りで前記ボール螺子を回転可能に支持する支持部をもつ固定部と、前記ボール螺子に接続され前記ボール螺子を前記中心軸心の回りで回転させる駆動部と、前記ボール螺子に係合され前記ボール螺子の回転に伴い前記軸長方向に沿って移動する可動部と、前記可動部に保持され前記可動部と共に前記軸長方向に沿って移動する可動側衝突子と、前記固定部において前記可動部の前進端側に設けられ、前記可動部と共に前記軸長方向に沿って移動する前記可動側衝突子と衝突可能な固定側衝突子と、衝突に基づく前記可動側衝突子または前記固定側衝突子の衝突変位量を求め、衝突変位量に基づいて前記可動部を移動させる補正移動量を設定する制御部とを具備することを特徴とする。
【0006】
駆動部によりボール螺子が一方向に回転駆動されると、ボール螺子の軸長方向に沿って可動部が前進する。駆動部によりボール螺子が他方向に回転駆動されると、ボール螺子の軸長方向に沿って可動部が後退する。可動側衝突子は可動部と共に移動する。このため可動部が前進すると、可動部に設けられている可動側衝突子は、固定部の固定側衝突子に衝突する。制御部は、衝突に基づく可動側衝突子または固定側衝突子の衝突変位量を求め、衝突変位量に基づいて可動部を移動させる補正移動量を設定する。
【0007】
固定側衝突子は、可動部と共に前進した可動側衝突子と衝突するものである。このように固定側衝突子は、固定部において可動部が前進する前進方向の前進端側に設けられている。このため待機している可動側衝突子と前進端側の固定側衝突子との間の軸長方向における距離Lをできるだけ大きくできる。
【0008】
本発明に係る装置は次の好適態様を採用できる。
【0009】
・可動部は、ワークに対して何らかの処理を行う処理工具を有することが好ましい。処理としては、機械加工処理、研磨処理、塗布処理、けがき処理等が挙げられる。従って、処理工具としては、ドリル、バイト等の切削処理工具、研磨処理工具、ワークに対してけがきするけがき処理工具、ワークに着色する着色処理工具等が挙げられる。ワークは、金属でもセラミックスでもその他の材料でも良い。
【0010】
・好ましくは、固定側衝突子および可動側衝突子のうちの一方は、固定側衝突子と可動側衝突子との衝突により軸長方向と平行な方向において退避方向に退避可能な退避子と、退避子の退避量を検知する退避量検知子と、軸長方向と平行な方向において退避子を退避方向に対して反対方向に付勢する付勢部材とを有する。退避量検知子は、退避子の退避量を検知するものであり、光式センサ、静電容量式センサ、磁気式センサ、差動コイル式センサ等が例示される。付勢部材は、軸長方向において退避子を退避方向に対して反対方向に付勢するものであり、コイルバネ、ねじりコイルバネ、トーションバネ、皿バネが挙げられる。固定側衝突子および可動側衝突子のうちの他方は、一方に衝突する突出部を有することが好ましい。
【0011】
・好ましくは、固定側衝突子は、固定部において可動部の前進端側に設けられており、可動部と共に軸長方向に沿って移動する可動側衝突子と衝突可能とされている。
【0012】
・好ましくは、固定部は、第1固定部と、第1固定部に保持され且つ固定側衝突子を有する第2固定部とを備えている。第1固定部と第2固定部との接触面積が大きい場合には、第1固定部の熱膨張は、第2固定部の長さに影響を与え、第2固定部に設けられている固定側衝突子の位置に影響を与えるおそれがある。そこで、第2固定部は、第1固定部に対面して接触する接触面と、第1固定部に対面するものの第1固定部に非接触な非接触面とを有することが好ましい。ここで、第2固定部の非接触面の表面積は、第2固定部の接触面の表面積よりも大きいことが好ましい。この場合、第1固定部と第2固定部との相互接触度が低減される。故に、第1固定部の熱膨張が第2固定部の長さに影響を与えることが抑制され、ひいては、第2固定部に設けられている固定側衝突子の位置に影響を与えることが抑制される。
【0013】
・好ましくは、可動部は、固定部に対して軸長方向に沿って可動する第1可動部と、第1可動部に保持され且つ可動側衝突子を有する第2可動部とを備えている。第1可動部と第2可動部との接触面積が大きい場合には、第1可動部の熱膨張は、第2可動部の長さに影響を与え、第2可動部に設けられている可動側衝突子の位置に影響を与えるおそれがある。そこで、第2可動部は、第1可動部に対面して接触する接触面と、第1可動部に対面するものの第1可動部に対面して非接触な非接触面とを有することが好ましい。この場合、第2可動部の非接触面の表面積は、第2可動部の接触面の表面積よりも大きいことが好ましい。この場合、第1可動部の熱膨張が第2可動部の長さに影響を与えることが抑制され、ひいては、第2可動部に設けられている可動側衝突子の位置に影響を与えることが抑制される。
【0014】
・好ましくは、第2固定部および第2可動部のうちの少なくとも一方は、炭素鋼よりも熱膨張が小さな低熱膨張材料(例えばセラミックス等)で形成されている。
【0015】
・好ましくは、第1固定部および第1可動部のうちの少なくとも一方は、炭素鋼よりも熱膨張が小さな低熱膨張材料(例えばセラミックス等)で形成されている。但し第1固定部および第1可動部は炭素鋼で形成されていても良い。
【0016】
・好ましくは、軸長方向と平行な方向で、固定部について、第1固定部のうち後退側の端面と第2固定部のうち後退側の端面との距離をLA1とし、可動部について、第1可動部のうち後退側の端面と第2可動部のうち後退側の端面との距離をLA2として示すとき、LA1/LA2=0.85〜1.15の範囲内に設定されている。この場合、固定部および可動部が熱膨張するとき、LA1の熱膨張量およびLA2の熱膨張量を相応できる。この場合、可動部の位置決めにあたり、熱膨張の影響が低減され、可動部の位置決め精度が高くなる。LA1/LA2の比は、0.90〜1.10の範囲内、0.95〜1.05の範囲内に設定されていても良い。
【0017】
・好ましくは、制御部は、ボール螺子の回転に伴い可動部を可動側衝突子と共に軸長方向に沿って移動させることにより、可動側衝突子と固定側衝突子とを衝突させ、衝突に基づく可動側衝突子または固定側衝突子の衝突変位量を求め、基準となる衝突変位量と今回の衝突変位量との差に基づいて可動部を移動させる補正移動量を設定し、補正移動量に基づいて可動部を移動させて可動部の位置決めを行うこととしても良い。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、指令値に対する移動量の誤差を抑えることができるボール螺子熱変位補正装置を提供することができる。
【0019】
可動側衝突子と固定側衝突子とが衝突するにあたり、衝突変位量δを計測するとき、計測誤差Δδが発生するおそれがある。この場合、衝突変位量の真値δrealと計測誤差Δδとの和が計測されることになる(衝突変位量δ=δreal±Δδ)。計測誤差Δδの影響をできるだけ小さくすることが好ましい。ここで、Lの値が小さいときには、計測誤差Δδの影響が相対的に大きくなる。これに対して、Lの値が大きいときには、計測誤差Δδの影響が相対的に小さくなる。そこで本発明によれば、固定側衝突子は、固定部において可動部が前進する前進方向の前進端側に設けられている。このため可動側衝突子と固定側衝突子との間の軸長方向における距離Lをできるだけ大きくすることができる。この結果、計測誤差Δδが発生したとしても、その影響をできるだけ低減できる利点が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態1について図1〜図7を参照しつつ説明する。本実施形態に係るボール螺子熱変位補正装置(以下、装置という)は、加工対象物であるワーク15に対して機械加工を室内で行う機械加工装置に適用されている。ワーク15は、金属を母材とする機械加工可能な材料で形成されている。金属は鋳鉄、鋳鋼、アルミニウム合金、マグネシウム合金等が挙げられる。ワーク15は基体1または固定部4に保持されている。矢印Y方向は上下方向を示す。
【0021】
装置は、設置面に設置されている基体1と、基体1に設けられ水平方向に沿って延設されている中心軸心P1の回りで回転可能なボール螺子2と、基体1に保持され中心軸心P1の回りでボール螺子2を回転可能に支持する支持部としての第1軸受31および第2軸受32と、基体1に固定された固定部4と、基体1のボール螺子固定部12に保持された駆動部としての駆動モータ5と、可動部6と、可動部6に保持された可動側衝突子7と、固定部4に設けられた固定側衝突子8と、駆動モータ5を制御する制御部9とを有する。
【0022】
図1に示すように、ボール螺子2は水平方向に沿って配設されており、軸長方向としての矢印K方向(水平方向)に沿って延びている。ボール螺子2は、これの中心軸心P1の回りで螺旋状に形成された溝20をもつ軸状体21と、軸状体21の溝20に転動可能に保持された複数個の球状の転動体22とを備えている。ボール螺子2にはボール螺子ナット25を介してホルダ26が設けられている。ホルダ26は、ボール螺子ナット25に固定された第1ホルダ部261と、矢印K方向に沿って延設された第2ホルダ部262とを有する。ボール螺子2の回転に伴い、可動部6は矢印K方向において矢印K1方向に前進したり、矢印K2方向に後退したりする。
【0023】
固定部4は、基体1に固定されている第1固定部41と、第1固定部41よりもサイズが小さな片持ち構造の第2固定部42とを備えている。第1固定部41は端面41a,41b,41cをもつ。第1固定部41の端面41bにはガイドレール43(案内部)が矢印K方向に沿って延設されている。第2固定部42は端面42a,42b,42c,42dをもつ。
【0024】
駆動モータ5は、ボール螺子2の基端部に連結部28を介して連結されており、ボール螺子2をこれの中心軸心P1の回りで回転させるサーボモータである。制御部9は信号線52cを介して駆動モータ5の駆動回路に指令値Scを指令し、これに基づいて駆動モータ5が回転し、ボール螺子2が回転し、ホルダ26と共に可動部6が矢印K方向に移動する。駆動モータ5の回転軸には回転数センサ51(例えばロータリエンコーダ)が設けられている。回転数センサ51が検知した信号Srは、信号線52aを介して制御部9に入力される。これにより駆動モータ5はフィードバック制御される。
【0025】
図1に示すように、可動部6は、ホルダ26の第2ホルダ部262の先端部262cに保持された第1可動部61と、第1可動部61よりもサイズが小さな第2可動部62とを備えている。第1可動部61は、ワーク15を加工処理する処理工具68(処理部)を工具ホルダ66を介して有する。処理工具68は工具ホルダ66に対して矢印Y方向において昇降可能とされている。図2に示すように、第2可動部62は、第1可動部61の側面61sにボルト69(保持具)により着脱可能に片持ち構造で保持されている。前記した第2固定部42は、第1固定部41の側面41sにボルト44(保持具)により着脱可能に保持されている。
【0026】
本実施形態によれば、図1に示すように、第1可動部61は、ガイドレール43に沿って案内されるスライダー64を有する。ここで、駆動モータ5が一方向に回転してボール螺子2が中心軸心P1の回りで一方向に回転すると、ホルダ26を介して可動部6が矢印K方向において矢印K1方向に前進する。また、駆動モータ5が逆方向に回転してボール螺子2が逆方向に回転すると、ホルダ26を介して可動部6が矢印K方向において矢印K2方向に後退する。
【0027】
可動部6の第2可動部62は可動側衝突子7を有する。可動側衝突子7は、可動部6の前進方向(矢印K1方向)に向けて突出する耐摩耗性をもつ突出部70をもつ。固定部4の第2固定部42には固定側衝突子8が保持されている。可動部6が矢印K1方向に前進して前進端側(移動方向の下流側)に移動すると、第2可動部62に設けられている固定側衝突子8は、第2固定部42の可動側衝突子7に対面するように設けられており、可動部6の前進に伴い、可動側衝突子7と衝突可能とされている。
【0028】
図3は固定側衝突子8を示す。固定側衝突子8は、可動側衝突子7と固定側衝突子8との衝突により軸長方向(矢印K方向)と平行な方向において退避方向(矢印K3方向)に退避可能な退避子80と、退避方向(矢印K3方向)への退避子80の退避量を検知する退避量検知子82と、退避子80を退避方向(矢印K3方向)に対して反対方向(矢印K4方向)に付勢する付勢部材84と、退避子80および付勢部材84を保持する基部86とを有する。退避量検知子82が退避子80の退避量を検知するにあたり、光式、静電容量式、磁気式、差動コイル式等のいずれかが採用される。
【0029】
上記したように可動側衝突子7が矢印K1方向に移動して固定側衝突子8に衝突すると、固定側衝突子8の退避子80が退避方向(矢印K3方向)に退避し、退避量検知子82が退避方向(矢印K3方向)への退避子80の退避量を検知する。退避量検知子82が検知した信号Smは、信号線52fによりセンサコントローラ95で検知され、更に信号線52hを介して制御部9に入力される。制御部9は、入力処理回路とCPUとメモリ(RAM,ROM)と出力処理回路とを有する。
【0030】
次に、装置の使用形態について説明する。まず、制御部9は、可動部6を矢印K2方向に後退させて待機位置に待機させる。この状態において、制御部9は、駆動モータ5を回転駆動させることにより、ボール螺子2をこれの中心軸心P1の回りで回転させ、回転に伴い、可動部6を可動側衝突子7と共に矢印K1方向に沿って前進させる。可動部6が前進して前進端側に至ると、可動部6に保持されている可動側衝突子7の突出部70が固定部4の固定側衝突子8に衝突する。衝突直前には、可動部7の移動速度が移動途中時期よりも低下するため、衝突による衝撃は緩和されている。
【0031】
衝突に基づいて、固定側衝突子8の退避子80が付勢部材84に抗して矢印K3方向(退避方向)に退避する。矢印K3方向は、ボール螺子2の中心軸心P1と平行な方向である。固定側衝突子8の退避量検知子82は、退避子80の退避量を検知する。退避量検知子82が検知した退避子80の退避量は、すなわち、衝突変位量は、信号Smとして信号線52fを介して制御部9に入力される。制御部9は、衝突変位量に基づいて、可動部6を移動させる補正移動量を設定する。制御部9は、補正移動量に基づいて可動部6を移動させて可動部6の位置決めを行う。
【0032】
図4は、可動側衝突子7が固定側衝突子8に衝突したとき、退避子80の退避量で表される衝突変位量を示す。図4における●印は、基準となる計測において、可動側衝突子7が固定側衝突子8に衝突したときにおける基準衝突変位量δcの大きさを示す。基準となる計測は、ボール螺子2が摩擦熱等により発熱しておらず、昇温していないときにおける計測である。基準となる計測における基準衝突変位量δcは、多数のワーク15を加工する直前において、可動側衝突子7を固定側衝突子8に衝突させたときにおける退避子80の退避量とすることができる。
【0033】
図4における○印は、今回の計測において衝突したときにおける衝突変位量の大きさδiを示す。δは、今回衝突したときにおける衝突変位量δiと基準衝突変位量δcとの差を示す(δ=δi−δc)。ボール螺子2の駆動時間が長くなると、ボール螺子2の摩擦等に起因する発熱が増加し、ボール螺子2の軸長方向の熱膨張が増加し、結果として、今回の計測における衝突変位量δiは増加するため、両者の差δは増加する。
【0034】
更に図5に示すように、可動部6の移動原点をXOとし、移動原点XOから固定側衝突子8に衝突するまでの距離をL(既知)とする。今回の計測において、移動原点XOを起点として、可動部6を矢印K1方向に前進させる任意の指令移動量をXとする。本実施形態によれば、制御部9は、衝突変位量の差δを求めた後、補正量ε=(δ/L)*Xの演算式に基づいて、指令移動量Xに対応する補正量εを求める。ここで、*は乗算を意味する。XおよびLの単位は同じである。
【0035】
更に、制御部9は、補正移動量Xε←X+εの演算式に基づいて、可動部6の補正移動量Xεを求める。ここで、補正移動量Xεは、任意の指令移動量Xについてボール螺子2の熱膨張等に起因する補正量を考慮した補正移動量を意味する。従って、移動原点XOから可動側衝突子7が固定側衝突子8に衝突するまでの距離をLとするとき、制御部9は、移動原点XOから補正移動量Xεぶん可動部6を矢印K1方向に前進させる指令を出力する。
【0036】
例えば、可動部6を矢印K1方向に前進させる任意の指令移動量をX1(L>X1)とするとき、制御部9は、補正量ε1≒(δ/L)*X1の演算式に基づいて、補正量ε1を求める。更に制御部9は、補正移動量Xε1←X1+ε1の演算式に基づいて、可動部6の補正移動量Xε1を求める。
【0037】
また、可動部6を矢印K1方向に前進させる任意の指令移動量をX2(L>X2>X1)とするとき、制御部9は、補正量ε2≒(δ/L)*X2の演算式に基づいて、補正量ε2を求める。更に制御部9は、補正移動量Xε2←X2+ε2の演算式に基づいて、可動部6の補正移動量Xε2を求める。
【0038】
以上説明したように本実施形態によれば、ボール螺子2の発熱に起因する熱膨張の影響を抑制えつつ、可動部6を目標位置に移動させることができる。この結果、可動部6の位置決め精度を高めることができる。ひいては可動部6に保持されている処理工具68の位置決め精度を高めることができ、処理工具68による加工精度を高めることができる。
【0039】
ところで、上記した衝突変位量δを計測するとき、固定側衝突子8がセンサ機能を有する以上、計測誤差Δδが発生するおそれがある。この場合、衝突変位量の真値δrealと計測誤差Δδとの和が計測されることになる(衝突変位量δ=δreal±Δδ)。可動部6の位置決め精度を高めるためには、計測誤差Δδの影響をできるだけ小さくすることが好ましい。ここで、Lの値が小さいときには、計測誤差Δδの影響が大きくなる。これに対して、Lの値が大きいときには、計測誤差Δδの影響が小さくなる。
【0040】
そこで本実施形態によれば、固定側衝突子8は、固定部4において可動部6が前進する前進方向(矢印K1方向)の前進端側に設けられている。このため待機している可動側衝突子7と前進端側の固定側衝突子8との間の軸長方向における距離Lをできるだけ大きくすることができる。この結果、計測誤差Δδが仮に発生したとしても、その影響をできるだけ低減できる利点が得られる。殊に、図1に示すように、固定側衝突子8は、前進方向(矢印K1方向)において、処理工具68(常用位置の処理工具68)よりも先方(移動方向上流)に位置するように第2固定部42のうち前進方向の端面42c側に設けられている。更に可動側衝突子7は、処理工具68よりも後退方向(矢印K2方向)の先方に位置するように第2可動部62に設けられている。この結果、計測誤差Δδが仮に発生したとしても、その影響をできるだけ低減でき、可動部6の位置決め精度を高める利点が得られる。
【0041】
(フローチャート)
図6は、制御部9のCPUが実行する制御形態を示すフローチャートの一例を示す。フローチャートはこれに限定されるものではない。制御部9は、可動部6および可動側衝突子7を待機位置から矢印K1方向に前進させる計測補正工程を実施した後、可動部6を再び待機位置に戻し、その後、可動部6を処理工具68と共に矢印K1方向に前進させて加工を行う加工工程とを順に実施する。
【0042】
まず、計測補正工程を行うべき、制御部9は、レジスタ、メモリの所定のエリア等を初期設定した後(ステップS102)、駆動モータ5を駆動させてボール螺子2を回転させ、可動部6を後退させ、可動部6および可動側衝突子7を待機位置に待機させる(ステップS104)。次に、制御部9は、駆動モータ5を駆動させてボール螺子2を回転させ、可動部6および可動側衝突子7を矢印K1方向に前進させる(ステップS106)。これにより可動側衝突子7が固定側衝突子8の退避子80に衝突し、退避子80が矢印K3方向(退避方向)に退避する。次に制御部9は、退避子80の退避量、すなわち、衝突により退避子80が変位した衝突変位量δiを求め、メモリに記憶させる(ステップS108,ステップS110)。
【0043】
次に制御部9は、可動部6の指令移動量をXとするとき、ε=(δ/L)*Xの演算式に基づいて、補正量εを演算で求める(ステップS116)。更に、制御部9は、前記した演算式Xε←X+εの演算式に基づいて、可動部6の補正移動量Xεを求める(ステップS118)。次に、制御部9は補正量εおよび補正移動量Xεをメモリに記憶させる(ステップS120)。これにより計測補正工程を終了する。
【0044】
次に、制御部9は、可動部6を待機位置に戻し(ステップS122)、加工工程に移行する。すなわち制御部9は、可動部6の指令移動量をXとするとき、可動部6の補正移動量Xε(ボール螺子2の熱膨張を考慮した補正移動量)を設定する(ステップS124)。
【0045】
制御部9は、補正移動量Xεに基づいてボール螺子2を回転させ、可動部6および処理工具68を矢印K1方向に前進させる(ステップS126)。制御部9は、可動部6が目標位置に到達したか否か判定する(ステップS128)。このとき、制御部9は、回転数センサ51が検知するボール螺子2の回転数に基づいて判定する。可動部6が目標位置に到達していれば(ステップS128のYES)、制御部9は、ワーク15に対して可動部6の処理工具68で加工する指令を出力する(ステップS130)。具体的には、処理工具68(例えば切削ドリル)を下降させる指令を出力する。
【0046】
加工が終了したら(ステップS132のYES)、次の加工作業があるか判定する(ステップS134)、次の加工作業がなければ、メインルーチンにリターンする(ステップS144)。次の加工作業があれば(ステップS134のYES)、制御部9は、データをリセットするか否か判定する(ステップS136)。データをリセットする必要があれば(ステップS136のYES)、データをリセットし(ステップS138)、補正量εおよび補正移動量Xεをメモリのエリアから消去し、ステップS104に戻る。このようにデータをリセットして消去すれば、制御部9は、ワーク15の加工毎に補正量εおよび補正移動量Xεを演算で求めるため、ワーク15を加工する毎に、可動部6の位置決め精度を確保でき、ひいてはワーク15に対する加工精度を確保することができる。
【0047】
これに対してデータをリセットする必要がなければ、ステップS120に戻る。この場合には、メモリに格納されている前回の補正量εおよび補正移動量Xεが使用される。このため、計測および補正に必要される時間が短縮され、ワーク15の加工に対する生産性が向上する。ここで、複数のワーク15に対して補正を1回実行することにすれば、補正回数が低減され、生産性が向上する。従って、ステップS136は、データ(前回の補正移動量Xε等)をリセットするか否かを判定する判定要素として機能することができる。
【0048】
以上説明したように本実施形態によれば、ボール螺子2における熱変動の影響で、第1可動部61が矢印K方向において熱膨張するときであっても、可動部6の移動量を補正して補正移動量を設定するため、可動部6の位置決め精度を高めることができ、ひいては処理工具68の位置決め精度を高めることができる。
【0049】
ところで第1可動部61と第2可動部62との接触面積が大きい場合には、矢印K方向における第1可動部61の熱膨張は、第2可動部62の長さに影響を与え、ひいては第2可動部62に設けられている可動側衝突子7の位置に微小量ではあるが影響を与えるおそれがある。この場合、可動部6の位置決め精度が低下するおそれがある。
【0050】
そこで本実施形態によれば、図7(A)に示すように、第2可動部62は、第1可動部61に対して片持ち支持構造とされており、第1可動部61に対面して接触する接触面62cと、第1可動部61に対面するものの隙間62rにより第1可動部61に非接触な非接触面62nとを有する。特に、第2可動部62において、第1可動部61に対面するものの第1可動部61に非接触な非接触面62nの表面積は、第2可動部62の接触面62cの表面積よりも大きく設定されている。従って、第1可動部61と第2可動部62との相互接触度が低下する。この結果、矢印K方向においてサイズが大きな第1可動部61の熱膨張が発生するときであっても、それが第2可動部62の長さの変動、可動側衝突子7の位置に影響を与えることが抑制される。ひいては、可動部6を移動させて位置決めさせる位置決め精度を高めることができる。従ってワーク15の加工精度が確保される。
【0051】
更に本実施形態によれば、ボール螺子2における熱変動の影響で、第1固定部41が矢印K方向に熱膨張するときがある。この場合、可動部6の位置決め精度に影響を与えるおそれがある。すなわち、第1固定部41と第2固定部42との接触面積が大きい場合には、矢印K方向におけるサイズが大きな第1固定部41の熱膨張は、第2固定部42の長さに影響を与え、第2固定部42に設けられている固定側衝突子8の位置に影響を与えるおそれがある。そこで本実施形態によれば、図7(B)に示すように、第2固定部42は、第1固定部41に対面して接触する接触面42cと、第1固定部41に対面するものの隙間42rにより第1固定部41に非接触な非接触面42nとを有する。これにより第1固定部41の熱膨張が第2固定部42の長さに影響を与えることが抑制される。ひいては、可動部6を位置決めする位置決め精度に影響を与えることが抑制されている。従ってワーク15の加工精度が確保される。
【0052】
更に、第2固定部42の非接触面42nの表面積は、第2固定部42の接触面42cの表面積よりも大きく設定されている。従って、第1固定部41と第2固定部42との相互接触度が抑えられている。この結果、矢印K方向における第1固定部41の熱膨張が第2固定部42の長さに影響を与えることが抑制されている。ひいては、固定側衝突子8の位置に影響を与えることが抑制される。従って可動部6の位置決め精度が確保され、ワーク15の加工精度が確保される。
【0053】
加えて本実施形態によれば、第2固定部42および第2可動部62は、炭素鋼よりも熱膨張係数が小さな低熱膨張材料で形成されている。従って可動部6の位置決め精度が確保され、ワーク15の加工精度が確保される。熱膨張係数は、室温〜100℃において10×10−6/℃以下、8×10−6/℃以下、6×10−6/℃以下、殊に5×10−6/℃以下、4×10−6/℃以下、2×10−6/℃以下が好ましい。低熱膨張材料としては低熱膨張金属、セラミックスが例示される。セラミックスとしてはアルミナ、シリカ、マグネシア、窒化硅素、ジルコニア、炭化硅素、快削性セラミックス等が例示される。快削性セラミックスはマイカ系、窒化ホウ素系、チタン酸アルミ系が例示される。
【0054】
更に本実施形態によれば、第1固定部41および第1可動部61は、炭素鋼よりも熱膨張係数が小さな低熱膨張材料で形成されていることが好ましい。但しこれに限定されるものではない。このように第1固定部41および第1可動部61が低熱膨張材料で形成されている場合には、矢印K方向における第1固定部41の熱膨張が第2固定部42の長さに影響を与えることが抑制される。更に、矢印K方向における第1可動部61の熱膨張が第2可動部62の長さに影響を与えることが抑制され、ひいては可動部6を位置決めする位置決め精度が一層良好に確保される。
【0055】
更に、本実施形態によれば、図7(B)に示すように、矢印K方向において、固定部4について、第1固定部41のうち後退側の端面41aと第2固定部42のうち後退側の端面42aとの距離をLA1として示す。更に図7(A)に示すように、矢印K方向において、可動部6について、第1可動部61のうち後退側の端面61aと第2可動部62のうち後退側の端面62aとの距離をLA2として示す。ここで、端面61aの位置と端面41aの位置とは、矢印K方向において、同じ位置とされている。更に、LA1/LA2=0.85〜1.15の範囲内に設定されている。更に、0.9〜1.1の範囲内、あるいは、0.95〜1.05の範囲内に設定されていることが好ましい。殊に、LA1/LA2=1.0に設定されていることが好ましい。
【0056】
このような本実施形態によれば、矢印K方向における固定部4の熱膨張による変位、矢印K方向における可動部6の熱膨張による変位が発生したとしても、固定部4における変位量と可動部6における変位量とを互いに接近させたり、同一とすることができる。従って、固定部4の熱膨張に起因する固定側衝突子8の変位量と、可動部6の熱膨張に起因する可動側衝突子7の変位量とが高い精度で対応することになる。故に、可動部6を矢印K1方向に移動させて可動部6を位置決めさせるにあたり、位置決めの精度を高めるのに一層貢献できる。
【0057】
(実施形態2)
図8は本発明の実施形態2を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。以下、異なる部分を中心として説明する。本実施形態によれば、固定側衝突子と可動側衝突子は実施形態1と逆に配置されている。第2固定部42に設けられている固定側衝突子8は、センサ機能を有さず、耐摩耗性を有する突出部89を有する。これに対して、可動部6に設けられている可動側衝突子7は、可動側衝突子7と固定側衝突子8との衝突により矢印K方向(軸長方向)において退避方向(矢印K5方向)に退避可能な退避子72と、退避子72の退避量を検知する退避量検知子73と、退避子72を退避方向(矢印K5方向)に対して反対方向(矢印K1方向)に付勢する付勢部材74とを有する。付勢部材74はバネで形成されている。
【0058】
(実施形態3)
図9は本発明の実施形態3を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。以下、異なる部分を中心として説明する。図9(A)に示すように、第2可動部62は、第1可動部61に対面して接触する接触面62cと、第1可動部61に対面するものの隙間62rにより第1可動部61に非接触な非接触面62nとを有する。隙間62rは矢印K方向において複数個並設されている。特に、第2可動部62において、第1可動部61に対面するものの第1可動部61に非接触な非接触面62nの表面積は、第2可動部62の接触面62cの表面積よりも大きく設定されている。従って、第1可動部61と第2可動部62との相互接触度が抑えられている。
【0059】
図9(B)に示すように、第2固定部42は、第1固定部41に対面して接触する接触面42cと、第1固定部41に対面するものの隙間42rにより第1固定部41に非接触な非接触面42nとを有する。隙間42rは矢印K方向において複数個並設されている。これにより第1固定部41の熱膨張が第2固定部42の長さに影響を与えることが抑制される。ひいては、可動部6を位置決めする位置決め精度に影響を与えることが抑制されている。従ってワーク15の加工精度が確保される。更に、第2固定部42の非接触面42nの表面積は、第2固定部42の接触面42cの表面積よりも大きく設定されている。従って、第1固定部41と第2固定部42との相互接触度が抑えられている。
【0060】
(その他)本発明は上記した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。
[付記項1]軸長方向に沿って延びると共に中心軸心の回りで回転可能なボール螺子と、前記中心軸心の回りで前記ボール螺子を回転可能に支持する支持部をもつ固定部と、前記ボール螺子に接続され前記ボール螺子を前記中心軸心の回りで回転させる駆動部と、前記ボール螺子に係合され前記ボール螺子の回転に伴い前記軸長方向に沿って移動する可動部と、前記可動部に保持されワークに対して処理を行う処理工具を保持する工具ホルダと、前記可動部に保持され前記可動部と共に前記軸長方向に沿って移動する可動側衝突子と、前記固定部において前記可動部の前進端側に設けられ、前記可動部と共に前記軸長方向に沿って移動する可動側衝突子と衝突可能な固定側衝突子と、前記可動側衝突子および前記固定側衝突子の衝突に基づく衝突変位量を求め、衝突変位量に基づいて前記可動部を移動させる補正移動量を設定する制御部とを具備することを特徴とする機械加工装置。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は例えばNC工作機械、高精度組立機等に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】実施形態1に係り、装置を模式的に示す側面図である。
【図2】実施形態1に係り、固定側衝突子を有する第2固定部と可動側衝突子を有する第2可動部付近を模式的に示す斜視図である。
【図3】実施形態1に係り、固定側衝突子の内部構造を模式的に示す断面図である。
【図4】実施形態1に係り、衝突変位量の差を示すグラフである。
【図5】実施形態1に係り、補正量を示すグラフである。
【図6】実施形態1に係り、制御装置が実行するフローチャートである。
【図7】(A)は実施形態1に係り、第2可動部付近を模式的に示す平面図であり、(B)は実施形態1に係り、第2固定部付近を模式的に示す平面図である。
【図8】(A)は実施形態2に係り、第2可動部付近を模式的に示す平面図であり、(B)は実施形態2に係り、第2固定部付近を模式的に示す平面図である。
【図9】(A)は実施形態3に係り、第2可動部付近を模式的に示す平面図であり、(B)は実施形態3に係り、第2固定部付近を模式的に示す平面図である。
【符号の説明】
【0063】
1は基体、2はボール螺子、21は軸状体、31,32は軸受(支持部)、4は固定部、41は第1固定部、42は第2固定部、42cは第2固定部の接触面、42nは第2固定部の非接触面、5は駆動モータ(駆動部)、6は可動部、61は第1可動部、62は第2可動部、62cは第2可動部の接触面、62nは第2可動部の非接触面、68は処理工具、7は可動側衝突子、70は突出部、8は固定側衝突子、80は退避子、82は退避量検知子、84は付勢部材、86は基部、9は制御部を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸長方向に沿って延びると共に中心軸心の回りで回転可能なボール螺子と、
前記中心軸心の回りで前記ボール螺子を回転可能に支持する支持部をもつ固定部と、
前記ボール螺子に接続され前記ボール螺子を前記中心軸心の回りで回転させる駆動部と、
前記ボール螺子に係合され前記ボール螺子の回転に伴い前記軸長方向に沿って移動する可動部と、
前記可動部に保持され前記可動部と共に前記軸長方向に沿って移動する可動側衝突子と、
前記固定部において前記可動部の前進端側に設けられ、前記可動部と共に前記軸長方向に沿って移動する前記可動側衝突子と衝突可能な固定側衝突子と、
衝突に基づく前記可動側衝突子または前記固定側衝突子の衝突変位量を求め、前記衝突変位量に基づいて前記可動部を移動させる補正移動量を設定する制御部とを具備することを特徴とするボール螺子熱変位補正装置。
【請求項2】
請求項1において、前記固定側衝突子および前記可動側衝突子のうちの一方は、前記固定側衝突子と前記可動側衝突子との衝突により前記軸長方向と平行な方向において退避方向に退避可能な退避子と、前記退避子の退避量を検知する退避量検知子と、前記軸長方向と平行な方向において前記退避子を前記退避方向に対して反対方向に付勢する付勢部材とを有することを特徴とするボール螺子熱変位補正装置。
【請求項3】
請求項1または2において、前記固定部は、第1固定部と、前記第1固定部に保持され且つ前記固定側衝突子を有する第2固定部とを備えており、
前記第2固定部は、前記第1固定部に対面して接触する接触面と、前記第1固定部に対面するものの前記第1固定部に非接触な非接触面とを有することを特徴とするボール螺子熱変位補正装置。
【請求項4】
請求項1〜3のうちの一項において、前記可動部は、前記固定部に対して前記軸長方向に沿って可動する第1可動部と、前記第1可動部に保持され且つ可動側衝突子を有する第2可動部とを備えており、
前記第2可動部は、前記第1可動部に対面して接触する接触面と、前記第1可動部に対面するものの前記第1可動部に非接触な非接触面とを有することを特徴とするボール螺子熱変位補正装置。
【請求項5】
請求項4において、前記第2固定部および前記第2可動部のうちの少なくとも一方は、炭素鋼よりも熱膨張が小さな低熱膨張材料で形成されていることを特徴とするボール螺子熱変位補正装置。
【請求項6】
請求項4または5において、前記第1固定部および前記第1可動部のうちの少なくとも一方は、炭素鋼よりも熱膨張が小さな低熱膨張材料で形成されていることを特徴とするボール螺子熱変位補正装置。
【請求項7】
請求項4〜6のうちの一項において、前記軸長方向と平行な方向で、前記固定部について、前記第1固定部のうち後退側の端面と前記第2固定部のうち後退側の端面との距離をLA1とし、前記可動部について、前記第1可動部のうち後退側の端面と前記第2可動部のうち後退側の端面との距離をLA2として示すとき、LA1/LA2=0.85〜1.15の範囲内に設定されていることを特徴とするボール螺子熱変位補正装置。
【請求項8】
請求項1〜7のうちの一項において、前記制御部は、前記ボール螺子の回転に伴い前記可動部を前記可動側衝突子と共に前記軸長方向に沿って移動させることにより、前記可動側衝突子と前記固定側衝突子とを衝突させ、衝突に基づく前記可動側衝突子または前記固定側衝突子の衝突変位量を求め、基準となる衝突変位量と今回の衝突変位量との差に基づいて、前記可動部を移動させる補正移動量を設定し、前記補正移動量に基づいて前記可動部を移動させて前記可動部の位置決めを行うことを特徴とするボール螺子熱変位補正装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−5745(P2010−5745A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−168582(P2008−168582)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(000100805)アイシン高丘株式会社 (202)
【Fターム(参考)】