説明

ポリマー除去剤

【課題】プラズマ処理後のポリマー残留物を基体、例えば電子装置から除去するために有用な組成物の提供。プラズマ処理後の残留物を除去する方法および組成物を用いた集積回路の製造法の提供。
【解決手段】本発明は、a)フッ化物イオン源;b)水;c)トリハロ酢酸、有機ポリカルボン酸化合物、有機ヒドロキシ−カルボン酸化合物およびアミノ酸から選択される有機酸化合物;ならびに任意にd)有機溶媒を含む組成物であって、4.5以下のpHを有する組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、基体からポリマー物質を除去する分野に関する。特に、本発明は電子装置の製造におけるプラズマ処理後にポリマー物質を除去するための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーを含有する多くの物質が、電子装置、例えば集積回路、ディスクドライブ、記憶媒体装置などの製造において用いられる。このようなポリマー物質は、フォトレジスト、反射防止コーティング、ビアフィリング層、エッチストップ層などにおいて見られる。たとえば、最新技術では、パターンをその後エッチングするかまたは他の方法で基体物質中に形成することができるように、リソグラフィーでパターンを基体上に描画するのにポジ型レジスト材料を用いる。レジスト材料は、フィルムとして堆積され、レジストフィルムをエネルギー放射に暴露することにより所望のパターンが規定される。その後、暴露された領域を好適な現像液により溶解させる。パターンがこのように基体において規定された後、その後の操作または処理工程に悪影響を及ぼしたり、あるいは妨げとなることを回避するために、レジスト材料を基体から完全に除去する必要がある。
【0003】
パターン規定(またはパターン転写)技術およびポリマー除去技術は、多くの場合1以上のプラズマ処理工程、たとえばプラズマエッチング、反応性イオンエッチング、イオンミリング、プラズマ灰化法などを含む。かかるプラズマ処理工程は、集積回路および他の電子装置の製造において慣例的に使用される。このようなプラズマ処理の過程で、ポリマー物質はおおむね除去されるが、しかし、ポリマー残留物をはじめとする残留物が基体上に残る。このような「残留物」には、不完全に除去されたフォトレジスト(および他のポリマー物質)、配線構造の側壁上または凹所(例えばビア)中に残存する側壁ポリマー、ならびに側壁上および/または凹所の底部中に残存する有機金属ポリマーおよび金属酸化物が含まれる。このプラズマ後の残留物は、通常のフォトレジスト除去剤を用いても完全に除去されない。例えば、アセトンまたはN−メチルピロリジノンは、高温および延長したサイクル時間を含む厳しい条件で現在用いられている。このような使用条件は、多くの場合、溶媒の引火点よりも高く、作業員が曝される環境、健康および安全上の問題を引き起こす。加えて、生産性および処理量は、必要とされる延長されたサイクル時間により悪影響を受ける。このような厳しいストリッピング条件でさえも、ウェット−ドライ−ウェットストリッププロセスとして、装置をウェットストリップし、続いて脱スカム(Oプラズマアッシュ)し、その後湿式洗浄をしなければならない場合がある。
【0004】
米国特許第5792274号(タナベら)は、a)フッ化水素酸と金属を含まない塩基との塩;b)水溶性有機溶媒;c)水;および任意にd)腐食防止剤を含有するポリマー除去組成物であって、5〜8のpHを有する組成物を開示している。この特許によると、pHが5〜8の範囲内に維持されることが重要である。この特許において開示されている組成物は、全ての条件下でプラズマ処理後の残留物を除去するのに有効なわけではなく、短い浴寿命、pH不安定性、およびプラズマ処理後の残留物の除去が不十分であることの内の1つ以上を欠点として有している。
【0005】
加えて、プラズマ処理後の残留物を除去する用途のための他の公知ストリッピング組成物は、望ましくない可燃性、毒性、揮発性、臭気、例えば100℃までの高温での使用を必要とすること、および規制された物質を取り扱うためにコストが高いことをはじめとする多くの欠点を有する。進化した次世代半導体装置に関連して特に問題となるのは、公知のストリッピング組成物が、かかる装置における様々な薄膜と不適合性であること、すなわち、かかる公知ストリッピング組成物は、かかる進化した装置中に存在する薄膜、特に銅、および低k誘電体の腐食を引き起こすことである。
【特許文献1】米国特許第5792274号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ポリマー物質を効果的に除去し、より環境に適合し、構造および形状を損なわず、基体、特に金属薄膜の腐食を引き起こさず、基体における誘電層をエッチングしないストリッパーおよびプラズマ処理後の残留物の除去剤が引き続き必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
驚くべきことに、基体、例えば誘電体を有する100%銅基体から容易かつきれいにプラズマ処理後のポリマー残留物を除去することができることが見いだされた。本発明に従って、かかるポリマー物質は、下にある金属層、特に銅を腐食することなく、誘電体、例えば二酸化珪素および低誘電率(「低k」)物質、例えば水素シルセスキオキサン、メチルシルセスキオキサン、ポリアリーレンエーテルなどのエッチングを軽減または回避しつつ、除去され得る。さらに驚くべきことに、水を含有する組成物が、誘電体のエッチングを軽減または回避しつつ、ポリマー物質を除去するのに有効であることも見いだされた。
【0008】
本発明は、a)フッ化物イオン源;b)水;c)トリハロ酢酸、有機ポリカルボン酸化合物、有機ヒドロキシ−カルボン酸化合物およびアミノ酸から選択される有機酸化合物;ならびに任意にd)有機溶媒を含む組成物であって、4.5以下のpHを有する組成物を提供する。
【0009】
本発明により、ポリマー物質、特にプラズマ処理後の残留物を基体から除去する方法であって、プラズマ処理後の残留物を含有する基体を前記の組成物と接触させる工程を含む方法も提供される。
【0010】
本発明により、集積回路の製造法であって:a)ポリマー物質の層を集積回路の製造において用いられる基体上に堆積させる工程;b)ポリマー物質の層をプラズマ処理に付し、プラズマ処理後の残留物が生じる工程;およびc)プラズマ処理後の残留物を前記の組成物と接触させる工程を含む方法がさらに提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本明細書全体にわたって用いられる次の略号は特に他に明記しない限り次の意味を有する:g=グラム;℃=摂氏度;Å=オングストローム;%wt=重量パーセント;nm=ナノメートル;mL=ミリリットル;UV=紫外線;min.=分;PVD=物理的気相堆積法;DI=脱イオン化;AF=アンモニウムフルオリド;ABF=アンモニウムビフルオリド;TMAF=テトラメチルアンモニウムフルオリド;EL=乳酸エチル;DPM=ジプロピレングリコールモノメチルエーテル;PGMEA=プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート;PDO=1,3−プロパンジオール;およびMP−ジオール=2−メチル−1,3−プロパンジオール。
【0012】
「ストリッピング」および「除去」なる用語は、本明細書全体にわたって互換的に用いられる。同様に、「ストリッパー」および「除去剤」なる用語も互換的に用いられる。「アルキル」とは、直鎖、分岐鎖および環状アルキルを意味する。「置換アルキル」なる用語は、その1以上の水素が他の置換基、例えばこれらに限定されないが、ハロゲン、シアノ、ニトロ、(C−C)アルコキシ、メルカプト、および(C−C)アルキルチオで置換されているアルキル基を意味する。
【0013】
全てのパーセンテージは重量基準である。すべての数値範囲は境界値を含み、組み合わせ可能である。
【0014】
本発明において有用な組成物は:a)フッ化物イオン源;b)水;c)トリハロ酢酸、有機ポリカルボン酸化合物、有機ヒドロキシ−カルボン酸化合物およびアミノ酸から選択される有機酸化合物;ならびに任意にd)有機溶媒を含み、当該組成物は4.5以下のpHを有する。様々なフッ化物イオン源を用いることができる。一具体例において、当該フッ素源は、フッ化水素酸と金属を含まない塩基との塩である。フッ化物イオン源の例としては、これらに限定されないが、アンモニウムフルオリド、アンモニウムビフルオリド、テトラメチルアンモニウムフルオリド、トリメチルアンモニウムフルオリド、アンモニウム−テトラメチルアンモニウムビフルオリド、およびモノエタノールアミンハイドロフルオリドが挙げられる。フッ化物イオン源の混合物、例えばアンモニウムフルオリドとアンモニウムビフルオリドの混合物を本発明において用いることができる。一般に、フッ化物イオン源は、組成物の合計重量基準で0.01〜8重量%の量で存在する。フッ化物イオン源は、任意の好適な量、例えば組成物中のフッ化物イオン源の溶解度の限度まで用いることができる。一具体例において、フッ化物イオン源は、0.05重量%以上、さらに典型的には0.1重量%以上の量で存在する。さらなる具体例において、フッ化物イオン源は5重量%以下、例えば0.05〜5重量%以下の量で存在する。フッ化物イオン源は一般に、例えばAldrich(ウィスコンシン州ミルウォーキー)などから商業的に入手可能であり、さらに精製することなくそのまま用いることができる。
【0015】
本発明において有用な有機酸は、トリハロ酢酸、有機ポリカルボン酸化合物、有機ヒドロキシ−カルボン酸化合物およびアミノ酸である。トリハロ酢酸の例としては、これらに限定されないが、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸およびトリブロモ酢酸が挙げられる。「ポリカルボン酸化合物」なる用語は、2以上のカルボン酸基を含有する有機化合物を意味する。「ヒドロキシ−カルボン酸」とは、少なくとも1個のヒドロキシ基および少なくとも1個のカルボン酸基のどちらも含有する有機化合物を意味する。ポリカルボン酸化合物の例としては、これらに限定されないが、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、およびフタル酸が挙げられる。好適なヒドロキシ−カルボン酸化合物としては、これらに制限されないが、グリコール酸、乳酸、クエン酸、および酒石酸が挙げられる。アミノ酸の例としては、これらに限定されないが、イミノ二酢酸、アスパラギン酸、アミノアジピン酸、アラニン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、グリシン、システイン、リシン、およびバリンが挙げられる。有機酸化合物の混合物を本発明の組成物において用いることができる。
【0016】
有機酸化合物は広範囲におよぶ量において存在することができる。一般に、このような化合物は、有機酸化合物が存在しないこのような組成物と比較して組成物の洗浄能力を改良するために十分な量で存在する。典型的には、有機酸化合物は組成物の合計重量基準で0.01〜10重量%の量で存在する。さらに典型的には、有機酸は0.05〜8重量%、さらに典型的には0.1〜8重量%、さらに一層典型的には0.5〜5重量%の量で存在する。有機酸は一般に様々な供給源、例えばAldrichから商業的に入手可能であり、さらに精製することなくそのまま使用できる。
【0017】
脱イオン水、ミリ−Q(Milli−Q)水、蒸留水などの任意の好適な種類の水を本発明において用いることができるが、脱イオン水が典型的に用いられる。任意の量の水を好適に用いることができる。水の実際的な上限は約99.5重量%である。典型的には、水は組成物の合計重量基準で5重量%〜95重量%、さらに典型的には5〜90重量%、さらに一層典型的には10〜85重量%の範囲の量で存在する。本発明の組成物において水の量がより多いことがプラズマ処理後の残留物を除去するのに特に有用である。
【0018】
有機溶媒を本発明の組成物において任意に用いることができる。少なくとも部分的に水溶性である任意の溶媒を用いることができる。一具体例において、有機溶媒は水混和性である。好適な有機溶媒としては、これらに限定されないが、アルコール、エステル、ケトン、エーテル、および極性非プロトン性溶媒が挙げられる。有機溶媒の混合物を本発明において用いることができる。有機溶媒は、組成物の合計重量基準で0〜90重量%の量で用いることができる。典型的には、有機溶媒は0〜50重量%、さらに典型的には0〜35重量%の量で存在する。一具体例において、有機溶媒は10〜35重量%の量で存在する。もう一つ別の具体例において、有機溶媒は30重量%以下である。
【0019】
アルコールの例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、および非環状ポリオール化合物が挙げられる。用語「ポリオール化合物」とは、2以上のヒドロキシル基を有する化合物を意味する。ポリオール化合物の例としては、これらに限定されないが、脂肪族ポリオール化合物、例えば、(C〜C20)アルカンジオール、置換(C〜C20)アルカンジオール、(C〜C20)アルカントリオール、および置換(C〜C20)アルカントリオールが挙げられる。好適な脂肪族ポリオール化合物としては、これらに限定されないが、ジヒドロキシプロパン、例えば、1,3−プロパンジオールおよびプロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、およびグリセロールが挙げられる。特に有用な脂肪族ポリオール化合物は1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、2−メチル−プロパンジオール、ブタンジオールおよびペンタンジオールである。このようなポリオール化合物は一般に(例えばAldrichなどから)商業的に入手可能であり、さらに精製することなく使用できる。本発明の組成物においてポリオール化合物が用いられる場合、典型的に、組成物の合計重量基準で5〜85重量%、さらに典型的には10〜70重量%の量で用いられる。
【0020】
様々なエステルを本発明の組成物において有機溶媒として用いることができる。エステルの例としては、これらに限定されないが、カルボン酸アルキル、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、乳酸エチル、アジピン酸エチル、およびグリコールエステル、例えばプロピレングリコールメチルエーテルアセテートが挙げられる。
【0021】
任意の好適なケトンを本発明において有機溶媒として用いることができる。ケトンの例としては、これらに限定されないが、アセトン、メチルエチルケトン、および2−ヘプタノンが挙げられる。
【0022】
これらに限定されないが、環状エーテル、例えば、テトラヒドロフランおよびテトラヒドロピラン、およびグリコールエーテルをはじめとする様々なエーテルを本発明において溶媒として用いることができる。グリコールエーテルの例としては、これらに限定されないが、グリコールモノ(C〜C)アルキルエーテルおよびグリコールジ(C〜C)アルキルエーテル、例えばこれらに限定されないが、(C〜C20)アルカンジオール(C〜C)アルキルエーテルおよび(C〜C20)アルカンジオールジ(C〜C)アルキルエーテルが挙げられる。好適なグリコールエーテルとしては、これらに限定されないが、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、およびトリプロピレングリコールモノメチルエーテルが挙げられる。このようなグリコールエーテルは一般に商業的に入手可能であり、さらに精製することなく使用することができる。典型的には、グリコールエーテルは本発明の組成物中、組成物の合計重量基準で5〜85重量%、さらに典型的には10〜70重量%の量で存在する。
【0023】
極性非プロトン性溶媒の例としては、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジメチルホルムアミドおよびジメチルアセトアミドが挙げられるが、他の極性非プロトン性溶媒も用いることができる。本発明において有用なさらに他の好適な有機溶媒としては、これらに限定されないが、アミノアルコール、例えば、アミノエチルアミノエタノール、カーボネート、例えばプロピレンカーボネート、ラクタム、例えばN−メチルピロリドン、およびラクトンが挙げられる。
【0024】
一具体例において、本発明の組成物は1以上のポリオール化合物および1以上のグリコールエーテルを含む。典型的には、1以上のポリオール化合物と1以上のグリコールエーテルは、1:5〜5:1の比で存在する。さらに典型的には、1以上のポリオール化合物と1以上のグリコールエーテルの比は1:3〜3:1であり、さらに典型的には1:2〜2:1である。
【0025】
本発明の組成物は、任意に1以上の添加剤を含むことができる。好適な添加剤としては、これらに限定されないが、腐食防止剤および界面活性剤が挙げられる。金属フィルム層の腐食を軽減する任意の腐食防止剤が本発明における使用に好適である。好適な腐食防止剤としては、これらに限定されないが:カテコール;(C〜C)アルキルカテコール、例えばメチルカテコール、エチルカテコールおよびtert−ブチルカテコール;ベンゾトリアゾール;ヒドロキシアニソール;(C〜C10)アルキルベンゾトリアゾール;ヒドロキシ(C〜C10)アルキルベンゾトリアゾール;2−メルカプトベンズイミダゾール;没食子酸;没食子酸エステル、例えば没食子酸メチルおよび没食子酸プロピル;およびテトラ(C〜C)アルキルアンモニウムシリケート、例えばテトラメチルアンモニウムシリケートが挙げられる。このよう腐食防止剤は一般に様々な供給源(例えばAldrichなど)から商業的に入手可能であり、さらに精製することなく使用することができる。
【0026】
このような腐食防止剤が本発明の組成物において用いられる場合、これらは典型的には組成物の合計重量基準で0.01〜10重量%の量で存在する。さらに典型的には、腐食防止剤は0.2〜5重量%、さらに典型的には0.5〜3重量%、さらに一層典型的には1.5〜2.5重量%である。
【0027】
非イオン性、アニオン性およびカチオン性界面活性剤を本発明の組成物において用いることができる。非イオン性界面活性剤が典型的に用いられる。このような界面活性剤は一般に商業的に入手可能である。界面活性剤は典型的には組成物の合計重量基準で0.2〜5重量%、さらに典型的には0.5〜3重量%、さらに一層典型的には1〜2.5重量%の量で存在する。
【0028】
本発明の特に有用な組成物は、0.05〜5重量%のフッ化物イオン源、0.1〜8重量%の有機酸化合物、0〜50重量%の有機溶媒および残余の水を含むものである。
【0029】
本発明の組成物は4.5以下のpHを有する。さらに典型的には、組成物のpHは4以下、さらに一層典型的には3.5以下、なおいっそう典型的には3以下である。一具体例において、本発明の組成物のpHは0〜4.5である。もう一つ別の具体例において、組成物のpHは1〜3.5である。より低いpH値を有する、すなわち酸含量がより高い本発明の組成物は、より高いpH値、すなわちより低い酸含量を有する類似の組成物よりも良好な洗浄を提供する。
【0030】
本発明の組成物は、フッ化物イオン源、有機酸化合物、水、任意の有機溶媒および任意の添加剤を任意の順序で組み合わせることにより調製することができる。一具体例において、水がまず容器に添加され、次いで残りの成分が任意の順序で添加される。
【0031】
本発明の組成物は、プラズマエッチ後のポリマー物質を基体から除去するために好適である。例えば、これらに限定されないが、プラズマエッチング、プラズマ灰化、イオン注入およびイオンミリング処理をはじめとするプラズマ処理条件に付された、任意のポリマー物質、例えば、これらに限定されないがフォトレジスト、ソルダーマスク、反射防止コーティングなどは、本発明に従って基体から有効に除去され得る。当業者らには本発明がプラズマ処理に付されていないポリマー物質の除去にも等しく好適であることが理解される。
【0032】
基体上のポリマー残留物、特にプラズマ処理後のポリマー残留物は、本発明の組成物と残留物を接触させることにより除去できる。残留物を含有する基体は、本発明の組成物と、残留物を基体から除去するために十分な時間接触させられる。残留物を本発明の組成物と任意の好適な手段、例えば、本発明の組成物を含有する浴中、例えば湿式化学ベンチ(wet chemical bench)中に基体を浸漬すること、または本発明の組成物を基体の表面上にスプレーすることにより接触させることができる。本発明の除去剤組成物と接触後、基体を典型的には例えば脱イオン水などですすぎ、次いで例えばスピン乾燥などで乾燥させる。本発明の組成物が基体上にスプレーされる場合、このようなスプレー操作は典型的にはスプレーチャンバー、例えばSemitool,Inc.(モンタナ州カリスペル)から入手可能な溶媒クリーニングスプレー装置において行われる。
【0033】
本発明の除去剤組成物は、室温で使用してもよく、または加熱してもよい。典型的には、本発明のポリマー残留物除去方法は、周囲温度、または任意の温度、例えば室温から80℃の温度、好ましくは20℃〜65℃、さらに好ましくは20℃〜50℃の温度で行うことができる。
【0034】
本発明の組成物のさらなる利点は、実質的に誘電体をエッチングすることなく、1以上の誘電層を含む基体からポリマー物質を除去するために有効に使用することができることである。典型的には、本発明の組成物は、例えば、誘電体、金属線、およびバリア層をはじめとする基体上の他の物質のエッチングを軽減または排除しつつ、望ましくないプラズマ処理後の残留物を除去する。従って、本発明の組成物は、電子装置の製造において用いられる様々な物質、例えば誘電体、特に低誘電率(「低k」)物質、例えばこれらに限定されないが、シロキサン、二酸化珪素、シルセスキオキサン、例えば水素シルセスキオキサン、メチルシルセスキオキサン、フェニルシルセスキオキサンおよびその混合物、ベンゾシクロブテン、ポリアリーレンエーテル、ポリ芳香族炭化水素、およびフッ素化ケイ素ガラス(fluorinated silicon glass)と適合性がある。本発明の組成物のさらなる利点は、金属線の下の熱酸化層をエッチングすることなく基体からプラズマ処理後のポリマー残留物を除去することができることである。
【0035】
本発明の組成物は、他の通常のストリッパーがプラズマ処理後の残留物(特にポリマー残留物)を除去することができない場合に、かかる残留物の除去に特に有用である。さらに、本発明の組成物は金属、特に銅およびアルミニウムを含有する基体に対して実質的に非腐食性である。
【0036】
もう一つ別の具体例において、本発明の組成物は、除去が困難な有機架橋ポリマー性反射防止コーティング(「ARC」)ポリマーの層上にコーティングされたフォトレジストの除去において非常に有効である。このようなARCは、通常のフォトレジストストリッパーにより除去することが非常に困難な架橋ポリマー物質であることは非常によく知られている。
【0037】
ハーフミクロン未満の形状の金属線および高アスペクト比のビア開口部を達成するために、遠赤外線フォトレジストおよび対応するARC層は、例えば高密度プラズマエッチング装置とともに用いられるようなフッ素系プラズマガスで処理される。遠赤外線ポジ型フォトレジストおよびARCポリマーは、このような条件下で高度に架橋し、通常のストリッピング法により除去することが非常に困難なフルオロ−有機金属ポリマー残留物が残る。驚くべきことに、本発明の組成物は、周囲温度かつ比較的短い処理時間でかかるポリマー残留物を効果的に除去することが見いだされた。
【0038】
一具体例において、本発明は集積回路を製造する方法であって:a)ポリマー物質の層を集積回路の製造において用いられる基体上に堆積させる工程;b)ポリマー物質の層をプラズマ処理に付して、プラズマ処理後の残留物が生じる工程;およびc)プラズマ処理後の残留物を前記の組成物と接触させる工程を含む方法を提供する。
【0039】
従って、本発明の組成物は、苛酷または厳しい処理条件が生じる他の用途、例えばこれらに限定されないが、フラットパネルディスプレーTFT/LCD製造、磁気抵抗および巨大磁気抵抗薄膜ヘッド製造、並びに読み取り・書き込みデバイス製造などにおいて有用である。本発明の組成物は、磁気抵抗および巨大磁気抵抗薄膜ヘッド製造において用いられる金属フィルム、例えばこれらに限定されないが、酸化アルミニウム(「Al」)、金(「Au」)、コバルト(「Co」)、銅(「Cu」)、鉄(「Fe」)、イリジウム(「Ir」)、マンガン(「Mn」)、モリブデン(「Mo」)、ニッケル(「Ni」)、白金(「Pt」)、ルテニウム(「Ru」)、およびジルコニウム(「Zr」)、ならびに半導体および電子材料の製造において用いられる他の金属、例えばこれらに限定されないが、銅、アルミニウム、ニッケル−鉄、タングステン、チタン、窒化チタン、タンタル、窒化タンタルに対して実質的に不活性である。
【0040】
次の実施例は、本発明の様々なさらなる態様を明らかにすることを期待するものであり、任意の態様における本発明の範囲を制限することを意図するものではない。
【実施例】
【0041】
実施例1
次の表における成分を表示された量で組み合わせることにより組成物を調製した。略号「BTA」は、ベンゾトリアゾールを意味し、略号「TBC」はtert−ブチルカテコールを意味する。各試料のpHは、DI水中5%溶液として測定された(すなわち、5重量%の各試料組成物を含有するDI水の溶液)。
【0042】
【表1】

【0043】
実施例2
炭素ドープ酸化物誘電体および銅を有し、前記誘電体上にテトラエチルオルトシリケート(「TEOS」)層および前記TEOS層上にTiN層を有するデュアルダマシン構造を含有し、プラズマ灰化後の残留物を含有するシリコンウェハ片(約2.5×2.5cm)を、実施例1の試料を用いて洗浄した。ウェハ片を、室温(約20℃)で実施例1の試料の1つを含むビーカー中に浸した。3分浸漬後、ウェハ片をビーカーから取り出し、DI水で洗浄し、乾燥した。洗浄されたウェハ片の走査電子顕微鏡写真(「SEM」)を調べた。結果を次の表に記載する。除去された残留物のパーセンテージは、洗浄前のウェハ片のSEMと比較したSEMの視覚的検査に基づく。キャップ層エッチはSEM画像から目視により決定された。
【0044】
【表2】

【0045】
これらの結果から、本発明の組成物はプラズマ処理後の残留物の除去において有効であることが明らかである。キャップ層エッチ速度が低いことは、下部の切り取りが少ないことを示す。
【0046】
実施例3
熱により成長した酸化銅フィルム(約380Å)を含有するシリコンウェハ片(約2.5×2.5cm)を、次の表に記載されている試料を用いて洗浄した。室温で、表に記載されている時間、ビーカーの中の各試料中にウェハ片を浸漬した。適当な時間の後、各試料をビーカーから取り出し、DI水ですすぎ、乾燥した。比較試料において用いられる有機溶媒は、PDOおよびDPMの1:1(重量)混合物であった。
【0047】
各ウェハ片の反射率は、408nmで通常の反射率計を用いて決定された。反射率計は、純粋で清浄な酸洗浄された銅(非酸化物)が100%の反射率を有するように較正された。較正された反射率計を用いると、未処理の酸化銅は2%の反射率を有している。
【0048】
【表3】

【0049】
上記データから、本発明の組成物は金属酸化物の除去において有効であることが明らかである。
【0050】
実施例4
シリコンウェハ片(約2.5×2.5cm)を、室温で実施例1からの試料3を含むビーカー中に浸漬した。ウェハ片は、次の表に記載されるような物質の異なる最上層を含有していた。3分の浸漬時間の後、ウェハ片をビーカーから取り出し、DI水ですすぎ、乾燥した。洗浄されたウェハ片を走査電子顕微鏡により評価して、除去剤処方によりエッチングされた最上層の量を測定した。結果を次の表に記録する。
【0051】
【表4】

【0052】
上記データは明らかに本発明の組成物が非常に低いエッチング速度を有することを示している。
【0053】
実施例5
次の表における組成物は、実施例1のものと同様に機能することが期待される。
【0054】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)フッ化物イオン源;b)水;c)トリハロ酢酸、有機ポリカルボン酸化合物、有機ヒドロキシ−カルボン酸化合物およびアミノ酸から選択される有機酸化合物;ならびに任意にd)有機溶媒を含む組成物であって、4.5以下のpHを有する組成物。
【請求項2】
フッ化物イオン源が、アンモニウムフルオリド、アンモニウムビフルオリド、テトラメチルアンモニウムフルオリド、トリメチルアンモニウムフルオリド、アンモニウム−テトラメチルアンモニウムビフルオリド、モノエタノールアミンハイドロフルオリドおよびその混合物から選択される請求項1記載の組成物。
【請求項3】
有機酸化合物が、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フタル酸、グリコール酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、イミノ二酢酸、アスパラギン酸、アミノアジピン酸、アラニン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、グリシン、システイン、リシン、バリン、およびその混合物から選択される請求項1記載の組成物。
【請求項4】
pHが4以下である請求項1記載の組成物。
【請求項5】
1以上の腐食防止剤および界面活性剤をさらに含む請求項1記載の組成物。
【請求項6】
水、有機溶媒が、アルコール、エステル、ケトン、エーテル、極性非プロトン性溶媒、アミノアルコール、カーボネート、ラクタム、およびラクトンから選択される請求項1記載の組成物。
【請求項7】
ポリオール化合物およびグリコールエーテルをさらに含む請求項1記載の組成物。
【請求項8】
請求項1記載の組成物。
【請求項9】
基体から残留物を除去する方法であって、プラズマ処理後の残留物を含有する基体を請求項1記載の組成物と接触させる工程を含む方法。
【請求項10】
集積回路を製造する方法であって:a)ポリマー物質の層を、集積回路の製造において用いられる基体上に堆積させる工程;b)ポリマー物質の層を、プラズマ処理後の残留物を提供するプラズマ処理に付する工程;およびc)プラズマ処理後の残留物を請求項1記載の組成物と接触させる工程を含む方法。

【公開番号】特開2006−253692(P2006−253692A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−62195(P2006−62195)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(596156668)ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ,エル.エル.シー. (31)
【住所又は居所原語表記】455 Forest Street,Marlborough,MA 01752 U.S.A
【Fターム(参考)】