説明

ポリ乳酸の分解方法

【課題】本発明の主な目的は、ポリ乳酸を効率的に分解することにより、ポリ乳酸に対してメタン発酵等の生物学的処理による分解を受け易くすることができる、ポリ乳酸の分解方法を提供することである。
【解決手段】アミン化合物の塩を含む処理液に、ポリ乳酸を含む有機物を含浸させて処理する工程を含む、ポリ乳酸の分解方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ乳酸を効率的に分解し、ポリ乳酸に対してメタン発酵等の生物学的処理による分解を受け易くすることができる、ポリ乳酸の分解方法に関する。更に、本発明は、当該分解方法を利用した、ポリ乳酸を含む有機物の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ乳酸は生分解性を有し、次世代のプラスチックとして種々の用途開発が進められている。ポリ乳酸から製造した製品であれば、自然環境下やコンポスト内等に存在する微生物による分解が可能であるので、易分解性の有機物と混合されていても、そのまま生物的処理に供することができるという利点がある。
【0003】
しかしながら、ポリ乳酸は好気性雰囲気では分解され易いが、嫌気性雰囲気では分解され難くなることが分かっている(特許文献1参照)。そのため、嫌気性雰囲気が必須であるメタン発酵に、ポリ乳酸をそのまま供すると、その処理には長期間を要するという欠点がある。
【0004】
そこで、ポリ乳酸をメタン発酵に供する前に、ポリ乳酸をメタン発酵後の排水と混合することによって、約50〜60℃の条件下でポリ乳酸を可溶化させる方法が提案されている(特許文献2参照)。しかしながら、この方法では、最終的に生じる乳酸の量が少なく、依然としてポリ乳酸を効率的に可溶化できないため、ポリ乳酸の処理効率を向上できず、ひいては効率的なエネルギー回収が図れないという問題点がある。
【0005】
また、ポリ乳酸を処理した後に乳酸を回収できれば、ポリ乳酸の製造原料を提供することにより資源のリサイクルが可能になり、地球環境保全や省エネルギー化にも寄与することになる。そのため、ポリ乳酸から乳酸を回収する技術を確立することも産業界で強く望まれている。
【0006】
しかしながら、前述するポリ乳酸の可溶化方法では、ポリ乳酸が低分子化されるものの、その一部は、乳酸にまで分解されずに、依然としてポリマー又はオリゴマーとして残存するので、乳酸を高い回収効率で得ることはできないという問題点がある。
【0007】
このような従来技術を背景として、ポリ乳酸を効率的に分解して乳酸を得る技術、及びポリ乳酸の分解処理によって効率的なエネルギー回収を行う技術の開発が切望されている。
【特許文献1】特開2005−206735号公報
【特許文献2】特開2005−232336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ポリ乳酸を効率的に分解することにより、ポリ乳酸を含む有機物に対してメタン発酵等の生物学的処理による分解を受け易くすることができる、ポリ乳酸の分解方法を提供することを目的とする。更に、本発明は、当該ポリ乳酸の分解方法を利用した、ポリ乳酸を含む有機物の処理方法、ポリ乳酸を含む有機物の処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、ポリ乳酸を含む有機物を、下記一般式(I)で表されるアミン化合物の塩の共存下で40℃以上に加熱することによって、効率的にポリ乳酸を分解できることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることによって完成したものである。
【0010】
即ち、本発明は、下記に掲げるポリ乳酸の分解方法及びポリ乳酸を含む有機物の処理システムを提供する。
項1.下記一般式(I)で表されるアミン化合物の有機酸塩及び/又は無機酸塩を含む処理液に、ポリ乳酸を含む有機物を含浸させて処理する工程を含む、ポリ乳酸の分解方法。
【0011】
【化1】

【0012】
[式(I)中、R、R及びR3は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。]
項2.前記一般式(I)で表されるアミン化合物の塩が、緩衝能を有する塩である項1に記載のポリ乳酸の分解方法。
項3.前記一般式(I)で表されるアミン化合物の塩が、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ホウ酸アンモニウム及びクエン酸三アンモニウムからなる群より選択される少なくとも1種である、項1又は2に記載の分解方法。
項4.分子状アンモニアの濃度が500mg/L以上である、項1〜3のいずれかに記載の分解方法。
項5.前記処理が40℃を超える温度で行われる、項1〜4のいずれかに記載の分解方法。
項6.処理時のpHが8〜9である、請求項1〜5のいずれかに記載の分解方法。
項7.ポリ乳酸を含む有機物が、ポリ乳酸と生ごみの混合物である、項1〜6のいずれかに記載の分解方法。
項8.下記工程(a)及び(b)を含む、ポリ乳酸を含む有機物の処理方法:
(a)下記一般式(I)で表されるアミン化合物の塩を含む処理液に、ポリ乳酸を含む有機物を含浸させて、ポリ乳酸を分解する工程、及び
【0013】
【化2】

【0014】
[式(I)中、R、R及びR3は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。]
(b)工程(a)で得られた分解物をメタン発酵する工程。
項9.ポリ乳酸を含む有機物を分子状アンモニアの共存下にて、40℃を超える温度に加熱する工程を含む、項8に記載のポリ乳酸の処理方法。
項10.ポリ乳酸を含む有機物を分解して得られたポリ乳酸をメタン発酵処理するシステムであって、
ポリ乳酸を含む有機物と、下記一般式(I)で表されるアミン化合物の塩とを40℃以上に加熱し、ポリ乳酸を分解するポリ乳酸分解槽と、
【0015】
【化3】

【0016】
[式(I)中、R、R及びR3は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。]
前記分解されたポリ乳酸をメタン発酵するメタン発酵処理槽とを備え、
前記分解槽が、アンモニアストリッピング手段、及びストリッピングされたアンモニアを所定の濃度になるように分解槽内に返送することができる手段を有する、処理システム。
【発明の効果】
【0017】
本発明の分解方法は、ポリ乳酸を含む有機物と一般式(I)で表されるアミン化合物の塩とを40℃を超える温度に加熱することによって、ポリ乳酸の分解効率を顕著に向上させることができる。従って、本発明の分解方法によれば、ポリ乳酸を効率的に原料の乳酸に再生し、ポリ乳酸以外の固形物と分離したのちにポリ乳酸に再合成することができる。またはポリ乳酸を生物学的処理(特にメタン発酵処理)に適した基質に変換でき、ひいては生物学的処理によるポリ乳酸の分解に要するトータルコストや生物学的処理後の最終残渣を低減することが可能になる。
【0018】
また、上記分解方法により得られた分解物をメタン発酵に供することによって、一層効率的に、ポリ乳酸を含む有機物を最終的にメタンガスに変換できるので、バイオガスとして回収されるエネルギー量を飛躍的に増大させることができる。
【0019】
さらに、上記分解方法を利用したポリ乳酸を含む有機物の処理システムは、後のメタン発酵へのアンモニアの悪影響を抑制するため、ポリ乳酸の分解後は分解槽もしくは別槽においてアンモニアストリッピングを行うことが望ましい。pH7以上の条件下において、アンモニアはアンモニアストリッピング法により容易に回収することができ、この条件下で乳酸はまったく揮発しないことから、アンモニアと乳酸水溶液を容易に分離し、アンモニアを再利用することができる。また、回収した乳酸はそのままポリ乳酸合成のための原料とすることができる。さらに、得られた分解物を燃料化したい場合、もしくは得られた乳酸がポリ乳酸合成の純度を満たさない場合は、メタン発酵によりメタンとして回収しエネルギー利用することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0021】
1.ポリ乳酸の分解
(1-1)ポリ乳酸
本発明の分解方法では、ポリ乳酸を含む有機物が処理対象となる。
【0022】
本発明において処理対象となる有機物に含まれるポリ乳酸とは、ポリマーの主要な構成単位として乳酸を有するポリマーである。本発明において、ポリ乳酸の種類については、特に制限されないが、例えば、ポリL-乳酸やポリD-乳酸等の乳酸ホモポリマー;L-乳酸及びD-乳酸の少なくとも1種と、アラニン、グリコール酸、グリコリド、グリシン、ε−カプロラクトン、グルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、糖類、多価アルコールの少なくとも1種との乳酸コポリマー;ポリD,L-乳酸等が例示される。
【0023】
本発明において、処理対象となる有機物には、上記ポリ乳酸1種を単独で含んでいてもよく、また上記ポリ乳酸の中の2種以上を組合せて含んでいてもよい。
【0024】
更に、処理対象となる有機物に含まれるポリ乳酸は、ポリ乳酸以外の成分も含有している樹脂組成物であってもよい。ポリ乳酸及び他の成分を含有する樹脂組成物を使用する場合、該樹脂組成物中のポリ乳酸の配合割合については、特に制限されないが、例えば、該樹脂組成物の総量当たり、ポリ乳酸が5〜99重量%、好ましくは20〜99重量%、更に好ましくは50〜99重量%が挙げられる。また、ポリ乳酸と他の樹脂組成物を効率よく混合するための添加剤、若しくはポリ乳酸そのもの及び他の樹脂組成物との混合品の物性を改良するための添加剤が含まれていてもよい。その割合についても特に制限されないが、例えば、該樹脂組成物の総量当たり、添加剤が10%以下程度であることが望ましい。
【0025】
本発明において処理対象となるポリ乳酸の形態については、特に制限されず、例えば、粉末、フィルム、不織布、シート、板体、発泡体、射出成型体等の各種形状のポリ乳酸を対象にすることができる。なお、本発明の方法を実施するに際して、フィルム、不織布、シート、板体、発泡体、射出成型体等形態のポリ乳酸については、粉末状又は小片形状にするために、粉砕や裁断等の前処理に供しておいても良い。
【0026】
本発明において、処理対象となる有機物は、ポリ乳酸のみからなるものであってもよく、またポリ乳酸と他の有機物との混合物であってもよい。後者の場合、処理対象となる有機物の具体例として、例えば、厨芥、生ゴミ、生ゴミの乾燥物、食品工場廃棄物、下水汚泥、畜産廃棄物(家畜のし尿と、わら、おがくず等との混合物)等の有機物と、ポリ乳酸との混合物が挙げられる。特に、本発明における分解処理対象として、生ごみとポリ乳酸を含む有機物は好適である。本発明によれば、生ごみを、ポリ乳酸から製造されたゴミ袋に収容して回収して、生ごみとゴミ袋を分離することなく、そのまま分解方法に供することができるという利点がある。
【0027】
また、本発明において、ポリ乳酸と他の有機物との混合物を処理対象とする場合には、ポリ乳酸の分解と共に、上記有機物も同時に分解されるため、これらの処理に要するトータルコストを低減させることもできる。
【0028】
(1-2)一般式(I)で表されるアミン化合物の塩
本発明のポリ乳酸の分解方法は、上記下記一般式(I)で表されるアミン化合物の有機酸塩及び/又は無機酸塩を含む処理液に、ポリ乳酸を含む有機物を含浸させて処理することを特徴とするものである。以下、本明細書において一般式(I)で表されるアミン化合物を単に『アミン化合物』と略記することがある。また、当該アミン化合物の有機酸塩及び/又は無機酸塩を単に『アミン化合物の塩』と略記することがある。
【0029】
【化4】

【0030】
[式(I)中、R、R及びR3は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。]
一般式(I)において、R、R及びR3は、同一又は異なって、水素原子、又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。炭素数1〜5のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基が例示される。これらの中でも、ポリ乳酸から乳酸への分解効率を一層高めるという観点から、好ましくは、R、R及びR3は、同一又は異なって、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、又はイソプロピル基であり;更に好ましくは、R、R及びR3は、同一又は異なって、水素原子、メチル基、又はエチル基であり;より好ましくは、R及びRが水素原子であり、且つRが水素原子、メチル基、又はエチル基であり;特に好ましくは、R及びRが水素原子であり、且つRが水素原子、メチル基、又はエチル基であり;更に特に好ましくは、R、R及びR3が水素原子である。
【0031】
上記一般式(I)のアミン化合物の有機酸塩及び/又は無機酸塩において、一般式式(I)のアミン化合物は下記一般式(II)で表されるカチオンとなって、有機酸又は無機酸と塩を形成している。式(II)中、R、R及びR3は上記式(I)において定義される通りである。
【0032】
【化5】

【0033】
上記アミン化合物の塩としては、例えば炭酸、リン酸、亜リン酸、ホウ酸、硝酸、硫酸、シュウ酸等の無機酸との塩;ギ酸、乳酸、クエン酸等の有機酸との塩が挙げられ、これらの水素塩や金属塩を用いることもできる。具体的には炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ホウ酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、亜リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、硫酸水素アンモニウム、シュウ酸アンモニウム、硫酸アンモニウム鉄(II)、硫酸アンモニウム鉄(III)、ペルオキソ二硫酸アンモニウム等の無機酸塩;ギ酸アンモニウム、クエン酸水素二アンモニウム、クエン酸三アンモニウム、乳酸アンモニウム等の有機酸塩が挙げられる。これらの塩を1種単独、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
本発明において用いられるアミン化合物の塩は、pH緩衝能を有していることが望ましく(本明細書においては単に、『緩衝能を有する』と記載することがある)、緩衝能を有するアミン化合物の塩としては、炭酸、リン酸、ホウ酸との塩が好ましく、具体的には炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ホウ酸アンモニウムである。
【0035】
また、アミン化合物の有機酸塩及び/又は無機酸塩を含む処理液として、アミン化合物の塩が水等に溶解して塩が脱離し、アンモニア水溶液の状態の処理液を用いることもできる。ただし、アミン化合物の塩が緩衝能を有していない場合や、アンモニア水を用いる場合には、後述する、本発明の方法を実施する際、溶液のpHを好適なpH環境に調整しておくことが望ましい。
【0036】
本発明の分解方法において、アミン化合物の塩の処理中の濃度は、ポリ乳酸を分解し得る限り特に限定されないが、処理に供されるポリ乳酸を含む有機物の総量に対して0.1重量%以上、通常0.1〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%、より好ましくは1〜5重量%である。
【0037】
本発明において使用されるアミン化合物の塩は、処理液中でアンモニア分子として存在し、これがポリ乳酸の分解に寄与していると考えられる。従って、本発明においては、アミン化合物の塩を用いて、処理液中に分子状のアンモニアがポリ乳酸の分解に十分な量存在するように温度、pH、アミン化合物の濃度を調整するのが好ましい。
【0038】
処理液中の分子状アンモニアの濃度は、前記アミン化合物の塩の濃度に基づいて決定することができ、特に限定されないが、例えば1000mg/L以上、好ましくは1000〜100000mg/L、より好ましくは1000〜10000mg/Lである。
【0039】
分子状アンモニアの濃度は、下記式A及びBによって示されるように、pH環境及び温度条件の影響を受ける。
【0040】
【数1】

【0041】
式(A)
【0042】
【数2】

【0043】
式(B)
式中Kaはアンモニウムイオンの解離平衡定数を示し、Tは温度(℃)を示す。
【0044】
従って、本発明の分解方法においては、式(A)及び(B)に基づいて、下記のpH値及び温度の数値範囲のなかでpH環境や温度条件を適宜調整し、分子状アンモニア濃度を前記範囲内に設定することができる。
【0045】
本発明における分解方法におけるpH環境は、ポリ乳酸の分解が妨げられない程度あれば特に限定されないが、pH7〜11程度、好ましくはpH7.5〜9.5程度、より好ましくはpH8〜9程度が例示される。このようなpH環境に調整するために、水酸化ナトリウム等の従来pH調整に使用されているアルカリを用いることができる。
【0046】
また、メタン発酵汚泥には、アミン化合物の塩が含有され、分子状アンモニアを通常、100〜3000mg/Lの濃度で含有することが知られている。従って、本発明の方法において、アミン化合物の塩を含む処理液としてメタン発酵汚泥を用いることができる。ここで、メタン発酵汚泥とは、有機物をメタン発酵することにより得られる汚泥成分のことである。また、メタン発酵とは、有機物とメタン発酵菌の共存下で嫌気性雰囲気にて行われる発酵であり、最終的な代謝産物としてメタンの生成が認められる。メタン発酵汚泥の調製において、使用されるメタン発酵菌の種類、基質となる有機物の種類等については特に制限されない。本発明の分解方法により得られた分解物を更にメタン発酵に供して連続的に処理する場合には、システムの効率化という観点から、当該メタン発酵によって生じる汚泥をポリ乳酸の分解に使用することが望ましい。
【0047】
本発明に使用されるメタン発酵汚泥は、有機物をメタン発酵処理に供して得られる発酵物そのものであってもよく、該発酵物から分離された固形分であってもよい。更に、本発明では、メタン発酵汚泥として、該発酵物をスクリュープレスフィルター等によって比較的大きな固形分を除去したものであってもよい。好ましくは、有機物をメタン発酵処理に供して得られる発酵物そのものである。
【0048】
本発明の分解方法において、メタン発酵汚泥を用いる場合、上記ポリ乳酸を含む有機物に対して添加されるメタン発酵汚泥の割合については、使用するメタン発酵汚泥の種類、ポリ乳酸の種類、その他の条件等に応じ、前記分子状アンモニアの添加量に基づいて適宜設定すればよい。具体的には、ポリ乳酸(ポリ乳酸以外の成分を含有する樹脂組成物の場合は、それに含まれるポリ乳酸重量に換算)1重量部に対して、メタン発酵汚泥(固形分換算)を0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜1重量部となる割合が例示される。
【0049】
(1-3)反応条件
本発明の分解方法においては、アンモニアが消費されないため、ポリ乳酸を連続的に投入処理することができ反応槽内のポリ乳酸量は制限されないが、例えば、前記アミン化合物の塩を含有する処理液1m3あたり0.1〜1000kg、好ましくは10〜100kgのポリ乳酸を含む有機物を含浸させて処理する。
【0050】
本発明において、含浸とは、ポリ乳酸を含む有機物を処理液と接触させればよく、当該有機物を処理液に浸漬、攪拌等させることが含まれる。また、ポリ乳酸を含む有機物の表面に処理液を吹きかける等して接触させてもよい。また、処理とは、ポリ乳酸を含む有機物と処理液が共存させることを指し、必要に応じて加熱することを含む。
【0051】
本発明における分解処理の時間は、使用するメタン発酵汚泥の種類や量、処理対象のポリ乳酸の種類や量によって異なり一律に規定することはできないが、通常1〜192時間、好ましくは10〜96時間、更に好ましくは24〜48時間が例示される。
【0052】
本発明の分解方法において、温度条件は分子状アンモニアの濃度が前記濃度範囲内に調整できるのであれば特に制限されず、前記式(A)及び(B)を勘案して適宜設定され得るが、例えば40℃以上、好ましくは40〜100℃程度、好ましくは50〜100℃、より好ましくは65.5〜100℃程度、更に好ましくは68〜90℃程度、特に好ましくは75〜85℃程度である。本発明の分解方法においてメタン発酵汚泥を用いる場合は、65.5℃以上であることが望ましい。
【0053】
上記温度範囲であれば、効率的にポリ乳酸の分解を行い得るが、メタン発酵汚泥を用いる場合等、反応液のアンモニア濃度が十分に高くない場合は分解時の温度が70℃を下回る場合には、分子状アンモニア濃度が低くなりポリ乳酸が十分に分解できなくなる。本発明の分解方法において、65.5℃以上の所定温度に保つには、重油、都市ガス、電力等を利用することもできる。また、本発明の分解方法により分解した有機性廃棄物を更にメタン発酵に供する場合には、当該汚泥処理における温度の維持には、重油等を利用するよりも、メタン発酵で発生するメタンガスを利用して熱と電力を得るコジェネレーション手段(ガスエンジン、燃料電池等)を利用し、熱を当該汚泥処理における加温に、また電力を超音波処理に用いることが望ましい。
【0054】
本発明の分解方法は、前記ポリ乳酸と前記アミン化合物の塩(又は、分子状アンモニア若しくはメタン発酵汚泥)とを共存させ、前記温度条件下で静置又は撹拌しながら行われる。
【0055】
本発明の分解方法は、加熱により分子状アンモニアが揮発しやすく、分子状アンモニアを所定の濃度に保つことが困難であることから、アンモニアが系外に放出されないように、密閉雰囲気で行うことが望ましい。
【0056】
本発明の分解方法においてメタン発酵汚泥を用いる場合は、嫌気性雰囲気で処理を行う。嫌気性雰囲気の作製方法としては、特に制限されないが、例えば、分解処理を行う槽内を窒素ガス等の不活性ガスで置換する方法が挙げられる。
【0057】
本発明における分解処理は、回分形式で実施してもよく、またポリ乳酸及びメタン発酵汚泥の供給と、メタン発酵汚泥により分解されたポリ乳酸分解物の抜き取りを連続的又は断続的に行うことにより実施してもよい。上記供給と抜き取りを連続的に又は断続的に行う場合、その供給速度及び抜き取り速度は、平均滞留時間が上記処理時間となるように適宜設定すればよい。
【0058】
本発明の分解方法は、上記処理条件を調節・保持できる槽(以下、汚泥処理槽という)内で行うことができる。ポリ乳酸及びメタン発酵汚泥を汚泥処理槽に供給する方法としては、具体的には以下の態様が例示される:(i)ポリ乳酸を汚泥処理槽に供給し、また別にメタン発酵汚泥を汚泥処理槽に供給して、汚泥処理槽内でポリ乳酸とメタン発酵汚泥とを混合する方法、並びに(ii)ポリ乳酸を、混合手段を備えた混合槽に供給し、またメタン発酵汚泥を該混合槽に供給し、該混合槽内で両者を予め混合し、得られたポリ乳酸・メタン発酵汚泥混合物を汚泥処理槽に供給する方法。
【0059】
斯くして、ポリ乳酸を効率的に分解することができる。従来、アンモニア水を用いてポリ乳酸を分解した場合には、乳酸のアミド化合物が生成していたが、アミン化合物の塩を用いてポリ乳酸の分解を行った場合、分解物にはアミド化合物やオリゴマー等が含まれず、ほぼ100%の乳酸が得られる。従って、このようにして得られたポリ乳酸の分解物(乳酸)は、ポリ乳酸の原料として好適に再利用することができる。一方、メタン発酵汚泥を用いた場合、得られるポリ乳酸分解物には夾雑物が含有されるため、メタン発酵の基質として用いることが望ましい。本発明の分解方法によって分解されたポリ乳酸(以下、単に「分解物」と表記することもある)は、ポリ乳酸が低分子化されており、これによって、メタン発酵菌等の微生物が基質として使用し易くなっている。従って、本発明の分解方法により得られる分解物を、更に、メタン発酵処理や活性汚泥処理等の生物学的処理に供することによって、生物学的処理におけるポリ乳酸の分解率を向上させることができる。
【0060】
2.メタン発酵処理
以下、本発明の分解方法により得られた分解物が、乳酸オリゴマー等の夾雑物を含む場合、当該分解物をさらに生物学的に処理する方法として、メタン発酵処理する方法を具体例として挙げて、ポリ乳酸を含む有機物を処理する方法を説明する。
【0061】
上記の分解方法により得られた分解物は、そのままメタン発酵に供してもよく、また該分解物を固液分離をした後に、その液体分を後述のメタン発酵に供してもよい。
【0062】
上記の分解方法により得られた分解物に対して固液分離を行う場合、その固液分離方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。例えば、分解物中の固形分が沈降しやすい場合は、沈殿分離により固液分離を行うことができる。他の方法としては、膜分離、遠心分離等が挙げられる。また、固液分離は、上記の分解方法により得られた分解物の全てについて行ってもよく、一部について行い、残部は直接後述のメタン発酵に供してもよい。この場合には、固液分離手段のメンテナンスの際にシステム全体を止める必要がない。
【0063】
上記の分解方法により得られた分解物を固液分離する場合、得られた固形分含有画分(汚泥)は、一部又は全部を、再度、前述する分解方法に従って処理してもよく、一部を廃棄してもよい。
【0064】
上記の分解方法により得られた分解物をそのまま又は固形分を分離して嫌気性雰囲気下でメタン発酵する。当該メタン発酵処理において、本発明の分解方法により得られた分解物がメタンと二酸化炭素に分解される。当該メタン発酵処理におけるメタン発酵は、従来公知のメタン発酵菌及びメタン発酵槽を用いて行うことができる。
【0065】
当該メタン発酵処理のメタン発酵時の温度条件は、用いるメタン発酵菌の種類に応じて広い温度範囲から適宜設定することができ、特に限定されるものではないが、一般には20〜60℃程度、例えば、35℃程度のいわゆる中温でも、55℃程度のいわゆる高温でもよい。上記の分解方法により得られた分解物に含まれる窒素含量が少なく、該分解方法による処理においてアンモニア除去を行わない場合は、メタン発酵がアンモニア阻害を受けにくい35℃程度の中温の方が好ましい。一方、上記の分解方法による処理においてアンモニア除去を行う場合であれば、メタン発酵速度が高まるという点から、55℃程度の高温の方が好ましい。
【0066】
上記の分解方法により得られた分解物が80℃以上の高温を保持している場合には、当該分解物をメタン発酵に著しく悪影響を及ぼすことがない程度(例えば、60℃以下)に冷却した後に、メタン発酵処理を実施することが望ましい。
【0067】
当該メタン発酵処理におけるメタン発酵処理時間としては、分解物の種類や量、使用するメタン発酵菌の種類、発酵温度、発酵形態等によって異なり、一律に規定することはできないが、通常14〜30日、好ましくは10〜20日、更に好ましくは10〜14日を挙げることができる。
【0068】
メタン発酵において発生する汚泥(余剰汚泥)は、ポリ乳酸や有機性廃棄物を直接メタン発酵する従来の方法では廃棄されていたが、本発明では、定期的に上記の分解方法における汚泥処理に返送して使用することが可能であり、これによって再度分解、分解の処理に供して、最終的なポリ乳酸の分解率を向上させることができる。
【0069】
当該メタン発酵処理において、メタン発酵の形式は特に制限されない。回分式、固定床式、UASB(Upflow Anaerobic Sludge Bed、上向流嫌気性汚泥床)式等のメタン発酵において利用されている公知のいずれの形式であってもよい。また、上記の分解方法により得られた分解物の供給と、メタン発酵槽内のメタン発酵処理物の抜き取りとを、連続的に又は断続的に行うことにより実施してもよい。上記分解物の供給と上記メタン発酵処理物の抜き取りを連続的又は断続的に行う場合、その分解物の供給速度及びメタン発酵処理物の抜き取り速度は、該分解物のメタン発酵槽内平均滞留時間が上記発酵処理時間となるように適宜設定すればよい。
【0070】
当該メタン発酵処理で得られたメタン発酵処理物は、そのまま、或いは固液分離をした後の液体分を、活性汚泥処理などの水処理に供してもよい。固液分離の方法は、特に限定されるものではなく、例えば沈殿分離、膜分離、遠心分離などの公知の方法を採用することができる。固液分離は、全てのメタン発酵処理物について行ってもよく、その一部について行ってもよい。
【0071】
また、メタン発酵処理物を固液分離した固形分含有画分(汚泥)は、一部又は全部を、メタン発酵槽に返送し、メタン発酵処理に供することもできる。この操作により、固形分が更に徹底的に分解されるので、廃棄固形分量が更に低減でき、メタンガス発生量も増大するというメリットが得られると共に、メタン細菌が系内に返送されるので、メタン発酵の安定度が向上するというメリットも得られる。但し、返送比を大とすると、メタン発酵槽内の固形分濃度が上昇するため、メタン発酵槽内の攪拌やポンプ輸送の面では不利となる面もあるので、これらを総合的に判断した上で、返送量を決めるとよい。
【0072】
当該メタン発酵処理において、メタン発酵槽には、メタン発酵の進行に従って固形分が蓄積するので、通常、該固形分は汚泥として適宜引き抜かれる。引き抜かれた汚泥は、種々の方法で処理される。例えば、そのまま、液肥として農地還元する、脱水後コンポスト化して農地還元をする、脱水して廃棄する、脱水後焼却する、脱水及び乾燥後に廃棄する、脱水及び乾燥後に焼却する等の処理が行われる。この際、ポリ乳酸の残存が認められないことが、使用者の抵抗感をなくす意味で重要である。また、乾燥には低温廃熱を有効利用することができ、メタンガスをガスエンジンやマイクロガスタービン、ボイラー等で利用する場合、その廃熱を利用して乾燥することが可能である。
【0073】
なお、脱水ろ液はその水質と排水基準によりそのまま放流できる場合もあり、そうでない場合は再度水処理に供すればよい。メタン発酵処理は嫌気性雰囲気で行われるので、水処理が活性汚泥処理などの好気性雰囲気で行われる処理である場合、メタン発酵で分解されなかったポリ乳酸やその分解物等であっても、活性汚泥処理などの水処理で分解できる場合がある。この場合、廃棄すべき汚泥の量が減少するので好ましい。
【0074】
3.ポリ乳酸の分解処理システム
本発明は、上記ポリ乳酸の分解方法を利用したポリ乳酸の分解処理システムをも提供する。すなわち、本発明は、ポリ乳酸を含む有機物と、アミン化合物の塩を40℃以上に加熱し、ポリ乳酸を分解するポリ乳酸分解槽と、
前記分解されたポリ乳酸をメタン発酵するメタン発酵処理槽を備え、
前記分解槽が、アンモニアストリッピング手段、及びストリッピングされたアンモニアを所定の濃度になるように分解槽内に返送することができる手段を有している、処理システムを提供する。
【0075】
本発明のポリ乳酸の分解処理システムは、ポリ乳酸分解槽及びメタン発酵処理槽を備える。ここで、ポリ乳酸分解槽は、ポリ乳酸を含む有機物とアミン化合物の塩(又は分子状アンモニア)を40℃を超える温度に加熱することが可能な加熱手段、アンモニアストリッピング手段、及びストリッピングされたアンモニアを分解槽内に返送することができる手段を有することを特徴とする。さらに、本発明の分解システムは、前記分解槽にて分解されたポリ乳酸をメタン発酵に供することが可能なメタン発酵処理槽を備えることを特徴とする。
【0076】
ここで、アンモニアストリッピング手段及びアンモニア供給手段は、分解処理槽中のアンモニアの濃度を前記所定の濃度となるように調整するため、アンモニアの供給/除去に用いられる。アンモニアストリッピング手段によって除去されたアンモニアを回収し、次回の分解処理の際に分子アンモニア濃度が十分でない場合に供給することができる。
【0077】
また、メタン発酵処理槽については、ポリ乳酸の分解物の供給と、メタン発酵槽内のメタン発酵処理物の抜き取りとを、連続的に又は断続的に行うことができる物であれば特に限定されず、従来公知の手段を採用することができる。
【実施例】
【0078】
以下、試験例等を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、ポリ乳酸は各試験例を通して同じものを使用した。
【0079】
[試験例1]
ポリ乳酸(ポリL-乳酸:ネイチャーワークス社製)が過剰に入った水(ポリ乳酸濃度1g/20ml)に、炭酸アンモニウム(キシダ化学製)分子状アンモニア濃度は500〜50000mg/Lとなるように添加した。
【0080】
水溶液中の分子状アンモニア濃度が高いほど、乳酸の生成速度が速かった。例えば炭酸アンモニウム濃度25重量%、温度95℃、pH8.8のとき、分子状アンモニア濃度は50423mg/Lとなり、このときの乳酸生成速度は854.7μg/秒-Lとなった(図1を参照)。
【0081】
なお、乳酸の生成速度は、下記式に従って算出した。
【0082】
【数3】

【0083】
さらに、本試験において、生成された乳酸に乳酸アミドが含まれていないことをNMRによって確認した。乳酸および乳酸アミド量の分析は、日本電子製 400MHz T-NMR(ECX-400)を用い、溶媒:THF-d8、測定核:1H、測定温度:室温(約25℃)、ケミカルシフト基準:室温(約25℃)の条件で行った。結果を図2に示す。図2に示されるように、溶解物は全量乳酸モノマーとして回収され、乳酸アミドは存在しなかった(図2を参照)。
【0084】
結果より、本発明のポリ乳酸の分解方法は下記比較例1と比べ、乳酸生成速度が格段に速いうえ、アンモニアが消費されず、回収される乳酸がアミド化されていないという利点を有することが示された。
【0085】
[試験例2]
ポリ乳酸が過剰に入った水(ポリ乳酸濃度1g/20ml)に、炭酸アンモニウム(キシダ化学製)を500〜50000mg/Lとなるように添加した。反応温度を40℃又は45℃とした場合の乳酸の生成速度を図3に示す。なお、乳酸の生成速度は、上記式に従って算出した。
【0086】
図3に示されるように、40℃では乳酸の生成は見られなかった。一方、反応温度が45℃の場合は、分子状アンモニア濃度が7000mg/Lを超えると乳酸の生成が見られた。
【0087】
[試験例3]
ポリ乳酸が0.02g入った水2mlに、アンモニア性窒素濃度が10000mg/Lになるように下表にあげるアンモニウム塩を添加した。反応温度を70℃とした場合の乳酸の生成速度を併せて下表に示す。なお、乳酸の生成速度は、上記式に従って算出した。
【0088】
【表1】

【0089】
結果より、炭酸アンモニウムだけでなく、ホウ酸アンモニウム等、pH緩衝能のあるアンモニウム塩を加えた場合、本法効果を得ることができることが示された。
【0090】
本結果では、溶解後のpHが7以下の化合物では分解速度が低くなっているが、水酸化ナトリウム等適当なアルカリを加えてpHを7以上としてやれば、他の塩と同等の効果をえることができることが予想される。
【0091】
また、アンモニア誘導体(例えば、メチルアンモニウム、エチルアンモニウム等)についても、上記アンモニウム塩を用いた場合と同様の効果が得られると予想される。
【0092】
[比較例1]アンモニア水によるポリ乳酸のアルカリ分解処理
<比較例:アルカリ加水分解>
ポリ乳酸10gを水10mlに添加し、25容量%アンモニア水溶液でpHを初期設定値として8.5、9.5、又は10.5に調整して70℃で分解処理を開始した。ポリ乳酸の分解と共に乳酸が生成され、反応液のpHが低下するため、pHが常に初期設定値に保たれるように25容量%アンモニア水溶液を適宜添加した。また、分解処理中は、経時的に生成した乳酸濃度を測定した。
【0093】
各条件で反応液中の乳酸の濃度が0、1、5、及び10g/lに到達した際に、添加したアンモニアの累積量を表2に示す。
【0094】
各条件で反応液中の乳酸の濃度が0g/lから5g/lになる間では、乳酸濃度の増加に対する添加したアンモニアの累積量の増加の比率がほぼ一定であった。つまり、乳酸の濃度が0g/lから5g/lの間では、乳酸濃度と添加したアンモニアの累積量には比例関係が認められている。これは生成した乳酸によるpHの低下抑制にアンモニアが使用されたためであると考えられる。
【0095】
一方、各条件で反応液中の乳酸の濃度が5g/lから10g/lになる間では、乳酸濃度の増加に対する添加したアンモニアの累積量の増加の比率が明らかに向上している。これは、乳酸の濃度が5g/lから10g/lになる間では、生成した乳酸がアミド化され、そのアミド化物の基質としても、アンモニアが利用されたことを示している。
【0096】
【表2】

【0097】
また、上記各条件での乳酸の生成速度は、それぞれ、1.2μg/秒-L(pHの初期設定値8.5)、15μg/秒-L(pHの初期設定値9.5)、109μg/秒-L(pHの初期設定値10.5)であり、上記試験例1の場合に比して格段に低かった。なお、乳酸の生成速度は、上記式に従って算出した。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】試験例1における乳酸生成速度を示すグラフである。
【図2】試験例1において得られた乳酸のアミド化の有無を示す。
【図3】試験例2における乳酸生成速度を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されるアミン化合物の有機酸塩及び/又は無機酸塩を含む処理液に、ポリ乳酸を含む有機物を含浸させて処理する工程を含む、ポリ乳酸の分解方法。
【化1】

[式(I)中、R、R及びR3は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。]
【請求項2】
前記一般式(I)で表されるアミン化合物の塩が、緩衝能を有する塩である請求項1に記載のポリ乳酸の分解方法。
【請求項3】
前記一般式(I)で表されるアミン化合物の塩が、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ホウ酸アンモニウム及びクエン酸三アンモニウムからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の分解方法。
【請求項4】
分子状アンモニアの濃度が500mg/L以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の分解方法。
【請求項5】
前記処理が40℃を超える温度で行われる、請求項1〜4のいずれかに記載の分解方法。
【請求項6】
処理時のpHが8〜9である、請求項1〜5のいずれかに記載の分解方法。
【請求項7】
ポリ乳酸を含む有機物が、ポリ乳酸と生ごみの混合物である、請求項1〜6のいずれかに記載の分解方法。
【請求項8】
下記工程(a)及び(b)を含む、ポリ乳酸を含む有機物の処理方法:
(a)下記一般式(I)で表されるアミン化合物の塩を含む処理液に、ポリ乳酸を含む有機物を含浸させて、ポリ乳酸を分解する工程、及び
【化2】

[式(I)中、R、R及びR3は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。]
(b)工程(a)で得られた分解物をメタン発酵する工程。
【請求項9】
ポリ乳酸を含む有機物を分子状アンモニアの共存下にて、40℃を超える温度に加熱する工程を含む、請求項8に記載のポリ乳酸の処理方法。
【請求項10】
ポリ乳酸を含む有機物を分解して得られたポリ乳酸をメタン発酵処理するシステムであって、
ポリ乳酸を含む有機物と、下記一般式(I)で表されるアミン化合物の塩とを40℃以上に加熱し、ポリ乳酸を分解するポリ乳酸分解槽と、
【化3】

[式(I)中、R、R及びR3は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。]
前記分解されたポリ乳酸をメタン発酵するメタン発酵処理槽とを備え、
前記分解槽が、アンモニアストリッピング手段、及びストリッピングされたアンモニアを所定の濃度になるように分解槽内に返送することができる手段を有する、処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−144102(P2010−144102A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−324655(P2008−324655)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】