説明

マイクロホンユニット

【課題】音圧を電気信号に変換する電気音響変換部を、基板に設けられる開口部を覆うように配置するマイクロホンユニットであって、電気音響変換部を精度良く実装できるマイクロホンユニットを提供する。
【解決手段】マイクロホンユニット1は、音圧により振動する振動板112を有して音圧を電気信号に変換する電気音響変換部11と、電気音響変換部11を実装する基板14と、を備える。基板14には、振動板112と対向するように設けられる基板開口部142と、基板開口部142の周りに設けられ、電気音響変換部11と当接して電気音響変換部11の位置決めを行う位置決め壁143aと、が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音圧(例えば音声により生じる)を電気信号に変換して出力するマイクロホンユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、携帯電話やトランシーバ等の音声通信機器、又は音声認証システム等の入力された音声を解析する技術を利用した情報処理システム、或いは録音機器、といった音声入力装置にマイクロホンユニットが適用されている。このようなマイクロホンユニットについて、従来、様々な構成のマイクロホンユニットが開発されている。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図6は、従来のマイクロホンユニットの構成例を示す概略断面図である。従来のマイクロホンユニットの中には、図6に示すマイクロホンユニット100のように、音道として使用される開口部101aを有する基板101と、開口部101aを覆うように基板101に実装されるMEMS(Micro Electro Mechanical System)チップ102と、基板101に実装されて、ワイヤ105を介してMEMSチップ102と電気的に接続されるIC(Integrated Circuit)103と、基板101に実装されるMEMSチップ102及びIC103を覆うシールドカバー104と、を備えるものがある。
【0004】
このような構成のマイクロホンユニット100は、開口部101aを経て伝達される音響信号をMEMSチップ102によって電気信号に変換し、変換された電気信号をIC103で増幅処理して図示しない電極パッドを介して外部に出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−92183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、基板101に設けられる開口部101aを覆うようにMEMSチップ102を配置する構成の従来のマイクロホンユニット100には、次のような問題点が存在する。
【0007】
従来のマイクロホンユニット100においては、例えばMEMSチップ102の外周部分に接着剤を塗布し、その後、MEMSチップ102が所定の位置に配置されるように位置を調整しながらMEMSチップ102を実装する。この実装時においては、通常、例えばCCD(Charge Coupled Device)カメラ等でMEMSチップ102を観察しながら、MEMSチップ102の位置調整を行う。
【0008】
しかし、電子機器の小型化の傾向等からマイクロホンユニットのサイズが小型化する傾向にあり、CCDカメラ等で観察しながら位置調整する場合でも、MEMSチップ102の位置を正確に調整するのは困難な作業となってきている。このため、マイクロホンユニット100の組み立て時において、MEMSチップ102の位置が狙いの位置からずれてしまうという事態が発生しやすくなっている。
【0009】
従来のマイクロホンユニット100のような構成では、MEMSチップ102の位置が狙いの位置からずれると、本来重なるべきでないMEMSチップ102の一部が開口部101aと重なったり、接着剤が開口部101aに入り込んだりする場合がある。このような事態が生じると、開口部101aの一部或いは全部が塞がれることになるために、マイクロホンユニットの特性について所望の特性が得られないという問題が発生する。
【0010】
そこで、本発明の目的は、音圧を電気信号に変換する電気音響変換部を、基板に設けられる開口部を覆うように配置するマイクロホンユニットであって、電気音響変換部を精度良く実装できるマイクロホンユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明は、音圧により振動する振動板を有して音圧を電気信号に変換する電気音響変換部と、前記電気音響変換部を実装する基板と、を備えるマイクロホンユニットであって、前記基板には、前記振動板と対向するように設けられる基板開口部と、前記基板開口部の周りに設けられ、前記電気音響変換部と当接して前記電気音響変換部の位置決めを行う位置決め壁と、が設けられていることを特徴としている。
【0012】
本構成によれば、基板開口部の回りに位置決め壁が設けられているために、電気音響変換部を基板の狙いの位置に精度良く実装することが可能である。このため、振動板と対向するように配置される基板開口部が、例えば電気音響変換部を実装する際に使用する接合剤等によって塞がれることがなく、所望の特性を有するマイクロホンユニットを安定して製造できる。
【0013】
上記構成のマイクロホンユニットにおいて、外部から前記基板開口部を経て前記振動板の第1の面へと至る第1の音道と、外部から前記振動板の前記第1の面の裏面である第2の面へと至る第2の音道と、を備え、前記振動板は、前記第1の面と前記第2の面との音圧差によって振動することとしても良い。
【0014】
このような構成とすることにより、いわゆる差動マイクロホンユニットを得られ、高性能のマイクロホンユニットを得ることが可能となる。すなわち、本構成によれば、高性能のマイクロホンユニットを、その特性が安定した状態で製造可能である。
【0015】
上記構成のマイクロホンユニットの更に具体的な構成として、前記電気音響変換部を覆うように前記基板上に配置される蓋部を備え、前記蓋部の同一面には第1の開口部と第2の開口部とが形成され、前記第1の音道は、外部から、前記第1の開口部、前記基板開口部とは別に前記基板に設けられる他の基板開口部、前記基板開口部をこの順に経て前記第1の面へと至る音道であり、前記第2の音道は、外部から、前記第2の開口部、前記蓋部と前記基板との間に形成される内部空間をこの順に経て前記第2の面へと至る音道であることとしても良い。
【0016】
本構成のように、同一面に形成される2つの開口部によって振動板の両面に音波を伝達する構成の差動マイクロホンユニットとすることにより、それを備える音声入力装置の音道を簡易なものとすることが可能となり、望ましい形態と言える。
【0017】
上記構成のマイクロホンユニットにおいて、前記位置決め壁は、前記基板上に設けられる凸部に備えられることとしても良いし、前記基板に設けられる凹部に備えられることとしても良い。
【0018】
上記構成のマイクロホンユニットにおいて、前記電気音響変換部がMEMS(Micro Electro Mechanical System)チップであることとしてもよい。これにより、高性能且つ小型のマイクロホンユニットを、その特性が安定した状態で製造可能である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、音圧を電気信号に変換する電気音響変換部を基板に設けられる開口部を覆うように配置するマイクロホンユニットであって、電気音響変換部を精度良く実装できるマイクロホンユニットを提供できる。このため、所望の特性を有するマイクロホンユニットを安定して製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態のマイクロホンユニットの構成を示す概略斜視図
【図2】図1(a)におけるA−A位置の概略断面図
【図3】マイクロホンユニットに備えられる位置決め壁を有する凸部の構成について、変形例を示す図
【図4】マイクロホンユニットが備える位置決め壁の別の実施形態を説明するための図
【図5】本発明が適用されるマイクロホンユニットの別実施形態の一例を示す図
【図6】従来のマイクロホンユニットの構成例を示す概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を適用したマイクロホンユニットの実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
図1は、本実施形態のマイクロホンユニットの構成を示す図で、図1(a)は本実施形態のマイクロホンユニットの概略斜視図、図1(b)は本実施形態のマイクロホンユニットの分解斜視図である。図2は、図1(a)におけるA−A位置の概略断面図である。
【0023】
図1及び図2に示すように、本実施形態のマイクロホンユニット1は、MEMS(Micro Electro Mechanical System)チップ11と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)12と、第1の基板13と、第2の基板14と、蓋部15と、を備えている。
【0024】
MEMSチップ11は、音圧を電気信号に変換する電気音響変換部の実施形態で、コンデンサ型のマイクロホンとなっている。このMEMSチップ11は、シリコンチップによって形成され、図2に示すように、絶縁性のベース基板111と、振動板112と、絶縁層113と、固定電極114と、を備えている。また、図1に示すように、MEMSチップ11は外形が略直方体状に形成され、振動板112の振動部分は略円形状となっている。
【0025】
MEMSチップ11を構成するベース基板111には、平面視略円形状の開口111aが形成されている。ベース基板111の上に形成される振動板112は、音波を受けて振動(上下方向に振動)する薄膜で、導電性を有し、電極の一端を形成している。固定電極114は、絶縁層113を挟んで振動板112と対向するように配置されている。これにより、振動板112と固定電極114とは容量を形成する。なお、固定電極114には音波が通過できるように複数の音孔が形成されており、振動板112の上部側から来る音波が振動板112の上面に到達するようになっている。
【0026】
MEMSチップ11は、振動板112の上面(本発明の「第2の面」に相当)と下面(本発明の「第1の面」に相当)とのそれぞれに音圧が加わるように構成されている。このため、振動板11は、上面に加わる音圧と下面に加わる音圧との差に応じて振動する。そして、この振動によって振動板112と固定電極114との間隔が変化し、振動板112と固定電極114との間の静電容量が変化する。この静電容量の変化を電気信号として取り出すことによって、音圧が電気信号に変換される。
【0027】
なお、電気音響変換部としてのMEMSチップの構成は、本実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、本実施形態では振動板112の方が固定電極114よりも下となっているが、これとは逆の関係(振動板が上で、固定電極が下となる関係)となるように構成等としても構わない。
【0028】
ASIC12は、MEMSチップ11の静電容量の変化に基づいて取り出される電気信号を増幅処理する集積回路である。ASIC12は、MEMSチップ11における静電容量の変化を精密に取得できるようにチャージポンプ回路とオペアンプとを含む構成としても良い。ASIC12で増幅処理された電気信号は、マイクロホンユニット1が実装される実装基板に設けられる配線を通じてマイクロホンユニット1の外部へと出力される。
【0029】
なお、MEMSチップ11とASIC12とは、その詳細は後述する第2の基板14にフリップチップ実装されている。
【0030】
第1の基板13には、平面視略矩形状の溝部131が設けられている。この溝部131は、その形成方法は特に限定されるものではないが、例えば機械加工等によって形成される。また、図示していないが、第1の基板13には、外部からマイクロホンユニット1が備えるASIC12に電源電力を供給するための電極パッド、ASIC12で増幅処理された電気信号を外部に出力するための電極パッド、GND(グランド)接続のための電極パッド等が形成されており、これらの電極パッドと電気的に接続される各種配線も形成されている。
【0031】
第2の基板14は第1の基板13上に積層・接合される。第2の基板14には、溝部131と連通するように設けられる平面視略楕円形状の第1の基板開口部141が形成されている。また、第2の基板14には、溝部131と連通するとともに、振動板112と対向するように設けられる平面視略円形状の第2の基板開口部142も形成されている。これらの基板開口部141、142は、その形成方法は特に限定されるものではないが、例えば機械加工等によって形成される。なお、第1の基板開口部141は本発明の「他の基板開口部」の実施形態であり、第2の基板開口部142は本発明の「基板開口部」の実施形態である。
【0032】
また、第2の基板14には、第2の基板開口部142を取り囲むように、枠状の凸部143が形成されている。この枠状の凸部143は、その形成方法は特に限定されるものではないが、例えば第2の基板14とは別に枠体を形成して、これを第2の基板12に貼り合わせることによって形成される。
【0033】
この枠状の凸部143は、第2の基板14上に実装されるMEMSチップ11の位置を位置決めして固定できるように設けられている。詳細には、枠状の凸部143は、枠内部の形状がMEMSチップ11の形状とほぼ同一の形状(平面視略矩形状)となっている。そして、平面視における枠内部のサイズがMEMSチップ11のサイズよりやや大き目であるが、ほぼ同一のサイズとなっている。
【0034】
このため、枠状の凸部143の枠内部にMEMSチップ11を嵌め込むことによって、MEMSチップ11の4つの側面が枠状の凸部143の内面143aと当接し、MEMSチップ11は位置決め固定される。すなわち、枠状の凸部143の内面143aは、MEMSチップ11の位置を位置決めする位置決め壁として機能する。
【0035】
なお、枠状の凸部143の高さ(第2の基板14の基板面と垂直な方向の長さ)は、フリップチップ実装されるMEMSチップ11の各側面が枠状の凸部143の内面(位置決め壁)143aと当接するように形成されれば良く、特に限定されるものではない。枠状の凸部143の高さは、例えばMEMSチップ11の厚みの半分程度等とされる。
【0036】
第2の基板14には、図示しないが、MEMSチップ11やASIC12をフリップチップ実装する場合に、MEMSチップ11やASIC12に形成されるバンプ電極と接合される接合パッドが形成されている。また、MEMSチップ11とASIC12とを電気的に接続する配線や外部から電源電極を供給するために必要な配線、ASIC12で増幅処理された電気信号を外部に出力するための配線、GND配線等も第2の基板14には形成されている。なお、MEMSチップ11とASIC12とを電気的に接続する配線は第2の基板14の内部に形成されており、第2の基板14は多層配線基板となっている。
【0037】
なお、第2の基板14にASIC12専用の位置決め壁も設けてもよいが、本実施形態ではこのような位置決め壁は設けていない。これは、ASIC12は、MEMSチップ11のように基板開口部上に配置される訳ではないために多少のずれが許容されるし、第2の基板14の構成を複雑としないためである。
【0038】
蓋部15は、図1に示すように外形が略直方体形状に形成され、第2の基板14を覆うように配置される。蓋部15の上面には、第1の開口部151と第2の開口部152とが形成されている。本実施形態では、第1の開口部151及び第2の開口部152は平面視略楕円形状としているが、その形状は本実施形態の構成に限定されず種々の変更が可能である。
【0039】
第1の開口部151は、蓋部15の上面から下面へと貫通する貫通孔となっている。また、第2の開口部152は、蓋部15の内部に形成される略直方体状の空間と繋がっている。この略直方体状の空間により、蓋部15が第2の基板14に被せられた状態で、蓋部15と第2の基板14との間に内部空間153(図2参照)が形成される。なお、MEMSチップ11とASIC12とは、この内部空間153内に存在している。
【0040】
このように形成されるマイクロホンユニット1は、図2に示すように、外部から振動板112の下面(第1の面)へと至る第1の音道2と、外部から振動板112の上面(第2の面)へと至る第2の音道3と、を有することになる。第1の音道2は、外部から振動板112と対向するように設けられる第2の基板開口部142を経て振動板112の下面へと至る音道とも言える。より詳細には、第1の音道2には、第1の開口部151と、第1の基板開口部141と、溝部131と、第2の基板開口部142と、が含まれる。また、第2の音道3には、第2の開口部152と、内部空間153と、が含まれる。
【0041】
次に、以上のように構成されるマイクロホンユニットの作用効果について説明する。作用効果の説明に先立って、音波の性質について述べておく。音波の音圧(音波の振幅)は、音源からの距離に反比例する。そして、音圧は、音源に近い位置では急激に減衰し、音源から離れる程、なだらかに減衰する。
【0042】
例えば、マイクロホンユニット1を接話型の音声入力装置に適用する場合、ユーザの音声はマイクロホンユニット1の近傍で発生する。そのため、ユーザの音声は、第1の開口部151と第2の開口部152との間で大きく減衰し、振動板112の下面に入射する音圧と、振動板112の上面に入射する音圧との間には、大きな差が現れる。
【0043】
一方、背景雑音等の雑音成分は、ユーザの音声に比べて音源がマイクロホンユニット1から遠い位置に存在する。そのため、雑音の音圧は、第1の開口部151と第2の開口部152との間でほとんど減衰せず、振動板112の下面に入射する音圧と、振動板112の上面に入射する音圧との間には、ほとんど差が現れない。
【0044】
マイクロホンユニット1の振動板112は、その上面及び下面に同時に入射する音波の音圧差によって振動する。上述のように、振動板112の下面と上面に入射する雑音の音圧の差は非常に小さいために、振動板112で打ち消される。これに対して、振動板112の下面と上面とに入射するユーザ音声の音圧の差は大きいために、ユーザ音声は振動板112で打ち消されずに振動板112を振動させる。
【0045】
このことから、本実施形態のマイクロホンユニット1によると、振動板112はユーザの音声のみによって振動しているとみなすことができる。そのため、マイクロホンユニット1のASIC12から出力される電気信号は、雑音(背景雑音等)が除去された、ユーザ音声のみを示す信号とみなすことができる。すなわち、本実施形態のマイクロホンユニット1によると、簡易な構成で、雑音が除去されたユーザ音声のみを示す電気信号を取得することが可能である。
【0046】
そして、本実施形態のマイクロホンユニット1においては、位置決め壁143aを有する枠状の凸部143を設けているために、振動板112を有するMEMSチップ11を狙いの位置に簡単な作業で精度良く実装できるようになっている。したがって、本実施形態の構成によれば、高性能のマイクロホンユニットをその特性が安定した状態で製造することが可能である。
【0047】
以上に示した実施形態は一例であり、本発明のマイクロホンユニットは以上に示した実施形態の構成に限定されるものではない。すなわち、本発明の目的を逸脱しない範囲で、以上に示した実施形態の構成について種々の変更を行っても構わない。
【0048】
例えば、以上に示した実施形態では、第2の基板14の第2の基板開口部142の周りに枠状の凸部143を形成して、MEMSチップ11の位置を位置決めする位置決め壁143aを得る構成とした。しかし、位置決め壁を得るための凸部の構成は本実施形態の構成に限定されるものではない。すなわち、例えば、図3に示すような変形が可能である。なお、図3は第2の基板14を上から見た平面図である。
【0049】
図3(a)においては、平面視略L字状に形成される4つの凸部143を、MEMSチップ11の四隅に対応する位置に設ける構成を示している。このような構成によって、MEMSチップ11の4つの側面と当接する位置決め壁143aを得ることができる。そして、この構成の場合は、枠状の凸部を設ける本実施形態の場合と同様に、MEMSチップ11を嵌め込み保持することができるので、マイクロホンユニットの組み立て作業が行い易い。
【0050】
図3(b)においては、平面視略C字状に形成される凸部143を形成する構成を示している。このような構成によって、MEMSチップ11の3つの側面と当接する位置決め壁143aを得ることができる。この場合においては、MEMSチップ11を第2の基板14に固定する(実装する)にあたって、MEMSチップ11が動かないように、図3(b)に矢印で示す方向に力を加えながら固定するのが好ましい。
【0051】
図3(c)においては、平面視略L字状に形成される凸部143を形成する構成を示している。このような構成によって、MEMSチップ11の2つの側面と当接する位置決め壁143aを得ることができる。この場合においては、MEMSチップ11を第2の基板14に固定する(実装する)にあたって、MEMSチップ11が動かないように、図3(c)に矢印で示す方向に力を加えながら固定するのが好ましい。
【0052】
また、断面図で示される図4のように、MEMSチップ11の位置を位置決めする位置決め壁は凸部でなく凹部144によって得ても構わない。すなわち、第2の基板14に、MEMSチップ11の形状に合わせた凹部(溝)144(本構成では、平面視略矩形状の溝)を形成して、この凹部144にMEMSチップ11を嵌め込むことによって、MEMSチップ11の側面(本構成では4つの側面)が凹部144の内面144aと当接する構成としてもよい。この場合も、凹部144の内面144aがMEMSチップ11を位置決めする位置決め壁として機能する。
【0053】
なお、このような凹部の形成方法は特に限定されるものではないが、例えば、基板と一体的に形成しても良いし、機械加工やエッチング等によって形成しても構わない。
【0054】
また、以上に示した実施形態では、蓋部15の同一面(上面)に2つの開口部151、152を設けて、同一面から入射する音波を別々の音道を介して振動板の両面に導く構成の差動マイクロホンユニットに、本発明が適用される場合を示した。しかし、本発明は、電気音響変換部が実装される基板に、電気音響変換部が有する振動板と対向するように基板開口部が形成されるマイクロホンユニットに対して広く適用されるものである。すなわち、差動マイクロホンユニットに限定されず、例えば図6に示したような従来のマイクロホンユニット100にも本発明は適用可能である。
【0055】
また、以上に示した実施形態ではMEMSチップ11やASIC12がフリップチップ実装される構成としたが、本発明は、MEMSチップやASICがワイヤボンディング技術を用いて実装されるマイクロホンユニットにも当然適用できる。ワイヤボンディング技術を用いてMEMSチップを実装する構成とする場合には、製造コストや設備コストを抑えることができるという利点がある。
【0056】
図5に、本発明が適用されるマイクロホンユニットの別実施形態の一例を示しておく。図5に示すマイクロホンユニットは差動マイクロホンユニットで、図5はその断面図である。マイクロホンユニット5は、MEMSチップ51と、ASIC52と、MEMSチップ51及びASIC52が実装される基板53と、蓋部54と、を備える。
【0057】
MEMSチップ51及びASIC52はワイヤボンディング技術(図中の図番55はワイヤを示す)によって実装されている。基板53には、MEMSチップ51に備えられる振動板511と対向するように基板開口部531が形成されている。また、基板53には、MEMSチップ11と当接する位置決め壁532aを有する枠状の凸部532も形成されている。蓋部54は、MEMSチップ11及びASIC12を覆うように配置され、その上面には開口部541が形成されている。
【0058】
マイクロホンユニット5には、外部から基板開口部531を経て振動板511の下面(第1の面)に至る音道(第1の音道)と、外部から蓋部54の開口部541、及び、基板53と蓋部54によって形成される内部空間542を経て振動板511の上面(第2の面)へと至る音道(第2の音道)と、が形成されている。
【0059】
このマイクロホンユニット5においては、基板53の基板開口部531の周りに、位置決め壁532aを有する枠状の凸部532が形成されているために、MEMSチップ51は狙いの位置に精度良く取り付けられる。
【0060】
なお、マイクロホンユニット5のようにワイヤボンディング技術によってMEMSチップ51を実装する構成の場合には、MEMSチップ51の側面全体が位置決め壁532aによって覆われないように構成するのが好ましい。ワイヤボンディング作業を行い易くするためである。
【0061】
また、以上に示した実施形態では、MEMSチップ11とASIC12とは別チップで構成したが、ASICに搭載される集積回路はMEMSチップを形成するシリコン基板上にモノリシックで形成するものであっても構わない。
【0062】
また、以上に示した実施形態では、音圧を電気信号に変換する音響電気変換部が、半導体製造技術を利用して形成されるMEMSチップ11である構成としたが、この構成に限定される趣旨ではない。例えば、電気音響変換部はエレクトレック膜を使用したコンデンサ型のマイクロホン等であっても構わない。
【0063】
また、以上の実施形態では、マイクロホンユニットが備える電気音響変換部の構成として、いわゆるコンデンサ型マイクロホンを採用した。しかし、本発明はコンデンサ型マイクロホン以外の構成を採用したマイクロホンユニットにも適用できる。例えば、動電型(ダイナミック型)、電磁型(マグネティック型)、圧電型等のマイクロホン等が採用されたマイクロホンユニットにも本発明は適用できる。
【0064】
その他、マイクロホンユニットの形状は本実施形態の形状に限定される趣旨ではなく、種々の形状に変更可能であるのは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明のマイクロホンユニットは、例えば携帯電話、トランシーバ等の音声通信機器や、入力された音声を解析する技術を採用した音声処理システム(音声認証システム、音声認識システム、コマンド生成システム、電子辞書、翻訳機、音声入力方式のリモートコントローラ等)、或いは録音機器やアンプシステム(拡声器)、マイクシステムなどに好適である。
【符号の説明】
【0066】
1、5 マイクロホンユニット
2 第1の音道
3 第2の音道
11、51 MEMSチップ(電気音響変換部)
14 第2の基板(電気音響変換部を実装する基板)
15、54 蓋部
53 基板(電気音響変換部を実装する基板)
112、511 振動板
141 第1の基板開口部(他の基板開口部)
142 第2の基板開口部(基板開口部)
143、532 凸部
143a、144a、532a 位置決め壁
144 凹部
531 基板開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音圧により振動する振動板を有して音圧を電気信号に変換する電気音響変換部と、
前記電気音響変換部を実装する基板と、を備えるマイクロホンユニットであって、
前記基板には、
前記振動板と対向するように設けられる基板開口部と、
前記基板開口部の周りに設けられ、前記電気音響変換部と当接して前記電気音響変換部の位置決めを行う位置決め壁と、が設けられていることを特徴とするマイクロホンユニット。
【請求項2】
外部から前記基板開口部を経て前記振動板の第1の面へと至る第1の音道と、外部から前記振動板の前記第1の面の裏面である第2の面へと至る第2の音道と、を備え、
前記振動板は、前記第1の面と前記第2の面との音圧差によって振動することを特徴とする請求項1に記載のマイクロホンユニット。
【請求項3】
前記電気音響変換部を覆うように前記基板上に配置される蓋部を備え、
前記蓋部の同一面には第1の開口部と第2の開口部とが形成され、
前記第1の音道は、外部から、前記第1の開口部、前記基板開口部とは別に前記基板に設けられる他の基板開口部、前記基板開口部をこの順に経て前記第1の面へと至る音道であり、
前記第2の音道は、外部から、前記第2の開口部、前記蓋部と前記基板との間に形成される内部空間をこの順に経て前記第2の面へと至る音道であることを特徴とする請求項2に記載のマイクロホンユニット。
【請求項4】
前記位置決め壁は、前記基板上に設けられる凸部に備えられることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のマイクロホンユニット。
【請求項5】
前記位置決め壁は、前記基板に設けられる凹部に備えられることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のマイクロホンユニット。
【請求項6】
前記電気音響変換部がMEMS(Micro Electro Mechanical System)チップであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のマイクロホンユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−187076(P2010−187076A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−28387(P2009−28387)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】