説明

マイクロミラー装置

【課題】所望の方向に光を正確に反射するマイクロミラー装置を得る。
【解決手段】マイクロミラー装置10が走査するレーザ光のうち、カバーガラス底面において結像レーザ透過領域210の外側に向けて走査されるレーザ光は、カバーガラス底面に設けられた光反射膜により光検出部材に向けて反射される。このとき、第1の可動部120は、第1のY方向光検出部PDy1と第2のY方向光検出部PDy2との間から第5のY方向光検出部PDy5と第6のY方向光検出部PDy6との間までレーザ光を走査するように制御され、第2の可動部130は、第1のX方向光検出部PDx1と第2のX方向光検出部PDx2との間から第5のX方向光検出部PDx5と第6のX方向光検出部PDx6との間までレーザ光を走査するように制御される。これにより、照射対象面に設けられた結像領域内に形成される情報、たとえば文字情報や画像情報をユーザが認識可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を所望の方向に反射するマイクロミラー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、微小電気機械システム(MEMS)を用いて、光を所望の方向に反射するマイクロミラー装置が知られている。マイクロミラー装置は、MEMSが備えるミラーを電気信号により揺動させることにより、光の反射方向を制御する(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−208164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、MEMSは印加電圧や電圧の周波数等に応じて一以上の方向に単純に振動する装置であるため、MEMSから照射された光が照射対象面上においてどの位置にあるかをある程度把握しなければ、所望の方向に光を正確に反射することができない。
【0005】
本発明は、この問題を鑑みてなされたものであり、所望の方向へ光を正確に反射するマイクロミラー装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるマイクロミラー装置は、第1の揺動軸周りに揺動しながら光を反射するミラー部材と、ミラー部材を保護するとともに、ミラー部材による光の反射方向に設けられてミラー部材が反射した光を透過する保護部材と、保護部材に設けられ、ミラー部材から投光された光をミラー部材の周囲に向けて反射する反射部材と、反射部材が反射した光を検出可能となるようミラー部材の周囲に設けられる光検出部と、光検出部が検出した光に応じてミラー部材の振幅を制御するミラー制御部とを備えることを特徴とする。
【0007】
ミラー部材は光を反射する平面状の鏡面を有し、保護部材は板状であって、ミラー部材が揺動していないときに鏡面と平行となり、反射部材は、保護部材の鏡面側に設けられることが好ましい。
【0008】
ミラー部材を格納する凹部を有するケースをさらに備え、保護部材は凹部を外部から封止するようにケースに取り付けられることが好ましい。
【0009】
ミラー部材は、第1の揺動軸周りに所定の角度内で揺動し、反射部材が反射した光はミラー部材の周囲において線分状の軌跡を成し、複数の光検出部が、ミラー部材が反射した光がミラー部材の周囲に成す軌跡が伸びる方向に対して直線状に並べられることが好ましい。
【0010】
複数の光検出部が、ミラー部材の周囲における線分状の軌跡の両端部付近に各々並べられることが好ましい。
【0011】
第1の揺動軸に直交する第2の揺動軸周りに揺動する第2のミラー部材をさらに備え、第1及び第2のミラー部材が反射した光は、ミラー部材の周囲であって、互いに直交する直線上に位置する第1及び第2の軌跡を成し、マイクロミラー装置は、第1の軌跡が伸びる方向に対して互いに平行な直線上に並べられる複数の光検出部と、第2の軌跡が伸びる方向に対して互いに平行な直線上に並べられる複数の第2の光検出部とを備え、ミラー制御部は、光検出部及び第2の光検出部による検出状態に応じて第1及び第2のミラー部材の振幅を制御することが好ましい。
【0012】
ミラー部材の周囲における第1の軌跡及び第2の軌跡の各両端部付近に、複数の光検出部が各々並べられることが好ましい。
【0013】
光検出部はCdSであって、光を受光すると電流値が変化し、ミラー制御部は光検出部による電流の変化に応じてミラー部材を制御することが好ましい。
【0014】
光検出部はスパッタリング加工により設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、所望の方向へ光を正確に反射するマイクロミラー装置を得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】マイクロミラー装置の斜視図である。
【図2】図1のII−II線におけるマイクロミラー装置の断面図である。
【図3】マイクロミラー装置の正面図である。
【図4】MEMSミラーの斜視図である。
【図5】図1のII−II線におけるマイクロミラー装置の断面図である。
【図6】図1のII−II線におけるマイクロミラー装置の断面図である。
【図7】MEMSミラーの制御装置を示したブロック図である。
【図8】MEMSミラーの振動特性を示したグラフである。
【図9】第1の制御処理を示したフローチャートである。
【図10】振幅変化により生じる位相変化を示したグラフである。
【図11】第2の制御処理を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態であるマイクロミラー装置10について図を用いて説明する。
【0018】
まず、マイクロミラー装置10の構成について図1から6を用いて説明する。マイクロミラー装置10は、開口部を備える枡形のケース300と、ケース300の開口部を塞ぐカバーガラス200と、ケース300の内部に格納されたMEMSミラー100とから主に構成される。
【0019】
ケース300の内部には、ケース凹部が形成される。ケース凹部は、長方形である4つの内側面と正方形のケース底面311とにより形成され、ケース300の頂面313に設けられる正方形の開口部を有する。ケース300は、2つの外側面314から直角に突出するフランジ320を備える。これら2つの外側面314は、ケース底面311の対辺を含む面である。フランジ320は、ケース底面311と面一な面を備え、ケース底面311と直角方向に厚さを有する。
【0020】
フランジ320において、ケース300の外側面314と直角を成す面上に、複数のピン電極400が設けられる。ピン電極400は、ケース300の外側面314をケース凹部まで貫通する。複数のピン電極400は、ケース300の内側面から直角に突出する。
【0021】
以下、ケース300の頂面313に平行であってフランジ320の突出方向に直角となる方向をX方向、フランジ320の突出方向をY方向、ケース底面311から頂面313に向く方向をZ正方向とし、カバーガラス200の底面であるカバーガラス底面202の中心を原点Oとする右手系座標を用いて説明する。
【0022】
ケース300の内側面は、第1のケース側面303xn、第2のケース側面303xp、第3のケース側面303yn、及び第4のケース側面303ypから成る。第1のケース側面303xn及び第2のケース側面303xpはX軸と直交し、第3のケース側面303yn及び第4のケース側面303ypはY軸と直交する。そして、第1のケース側面303xnはX軸負方向側に位置し、第2のケース側面303xpはX軸正方向側に位置する。第3のケース側面303ynはY軸負方向側に位置し、第4のケース側面303ypはY軸正方向側に位置する。第3のケース側面303yn及び第4のケース側面303ypから、ケース300内部に向けて複数のピン電極400が突出する。
【0023】
ケース底面311には、MEMSミラー100と光検出部材とが設けられる。MEMSミラー100は、ケース底面311の中央であって、可動部110と駆動電極160とから主に構成される。
【0024】
可動部110は、円盤形状の第1の可動部120と、環状の第2の可動部130と、環状の枠部140とから主に構成される。
【0025】
第1の可動部120は、2つの円形面のうち1つが鏡面121を成す。第2の可動部130は第1の可動部120の外周面122を取り囲む用に設けられ、枠部140は第2の可動部130の外周面131を取り囲むように設けられる。第1の可動部120、第2の可動部130及び枠部140は、いずれも略同じ厚さである。第1、2の可動部120、130及び枠部140の中心は同心である。
【0026】
第1の可動部120の外周面122と第2の可動部130の内周面132とを接続する第1の支持部123、124が設けられる。第1の支持部123、124は、直方体の板状部材であって、第1の可動部120の中心軸を通る平面上に設けられる。この形状及び位置により第1の支持部123、124は捻り方向に弾性を有する。これにより第1の可動部120は、第1の支持部123、124を軸として第2の可動部130に対し揺動可能に支持される。すなわち、第1の可動部120は、X軸回りに揺動可能となる。
【0027】
第2の可動部130の外周面131と枠部140とを接続する第2の支持部133、134が設けられる。第2の支持部133、134は、直方体の板状部材であって、第1の支持部123、124が設けられる平面に対し直角、かつ第1の可動部120の中心軸を通る平面上に設けられる。この形状及び位置により第2の支持部133、134は捻り方向に弾性を有する。これにより第2の可動部130は、第2の支持部133、134を軸として枠部140に対し揺動可能に支持される。すなわち、第2の可動部130は、Y軸回りに揺動可能となる。第1の可動部120の揺動軸と第2の可動部130の揺動軸は直交する。
【0028】
駆動電極160は、第1の可動部120をX軸周りに駆動するためのX方向電極170と、第2の可動部130をY軸周り駆動するためのY方向電極180とから成る。X方向電極170は、円盤を直径で二分して得られる2つの略半円からなる。略半円のうち、図においてX軸のY軸負側に置かれる略半円をX正電極171、X軸のY軸正側に置かれる略半円をX負電極172とする。Y方向電極180は、環形状を直径で二分して得られる2つの略半輪からなり、内周にX方向電極170を納める。略半輪のうち、図においてY軸のX軸負側に置かれる略半輪をY負電極181、Y軸のX軸正側に置かれる略半輪をY正電極182とする。駆動電極160に電位差を与えないアイドル状態においては、X軸およびY軸に直交するZ軸は、第1の可動部120の鏡面121の法線と一致している。
【0029】
X方向電極170とY方向電極180の中心は、Z軸上にて第1、2の可動部120、130及び枠部140の中心と同心に置かれる。X方向電極170の直径は第1の可動部120の直径と略等しく、Y方向電極180の内径及び外径は、第2の可動部130の内径及び外径と等しい。第1、2の可動部120、130及びX、Y方向電極180は、それらの中心軸(すなわちZ軸)から見たとき、第1の可動部120とX方向電極170とが、そして第2の可動部130とY方向電極180とが、各々略一致して重なるように設けられる。
【0030】
また、第1、2の可動部120、130の中心軸から見たとき、X方向電極170は第1の可動部120の揺動軸によりX正電極171とX負電極172とに二分され、Y方向電極180は第2の可動部130の揺動軸によりY負電極181とY正電極182とに二分される。
【0031】
X正電極171及びX負電極172の略半円形の頂部には、X正電極171及びX負電極172に電荷を移送するためのX正配線173及びX負配線174が各々設けられる。Y負電極181とY正電極182の略半円形の頂部には、Y負電極181とY正電極182に電荷を移送するためのY負配線183とY正配線184が各々設けられる。X正配線173、X負配線174、Y正配線184、及びY負配線183は、図示しない電源装置に接続され、第1、2の可動部120、130及び枠部140は電気的に接地される。
【0032】
光検出部材は、第1から第6のX方向光検出部PDx1−PDx6と、第1から第6のY方向光検出部PDy1−PDy6とから成る。
【0033】
第1から第6のX方向光検出部PDx1−PDx6は長方形であって、その長手方向がY軸と平行方向に伸びる。第1から第6のX方向光検出部PDx1−PDx6は、X軸負方向から正方向に向けて互いに平行となるよう順番に並べられる。第1から第3のX方向光検出部PDx1−PDx3は、第1のケース側面303xnに近接して設けられ、第4から第6のX方向光検出部PDx4−PDx6は、第2のケース側面303xpに近接して設けられる。第3のX方向光検出部PDx3と第4のX方向光検出部PDx4との間には、他のX方向検出部との間隔よりも大きな間隔が空けられる。第1から第3のX方向光検出部PDx1−PDx3は、第4から第6のX方向光検出部PDx4−PDx6と、ケース底面311の中心を通りY軸と平行な直線に対して線対称の関係にあるとともに、ケース底面311の中心に対して点対称の関係にある。
【0034】
第1から第6のY方向光検出部PDy1−PDy6もまた長方形であって、その長手方向がX軸と平行方向に伸びる。第1から第6のY方向光検出部PDy1−PDy6は、Y軸負方向から正方向に向けて互いに平行となるように並べられる。第1から第3のY方向光検出部PDy1−PDy3は、第1のケース側面303ynに近接して設けられ、第4から第6のY方向光検出部PDy4−PDy6は、第2のケース側面303ypに近接して設けられる。第3のY方向光検出部PDy3と第4のY方向光検出部PDy4との間には、他のY方向検出部との間隔よりも大きな間隔が空けられる。第1から第3のY方向光検出部PDy1−PDy3は、第4から第6のY方向光検出部PDy4−PDy6と、ケース底面311の中心を通りX軸と平行な直線に対して線対称の関係にあるとともに、ケース底面311の中心に対して点対称の関係にある。
【0035】
第1のX方向光検出部PDx1、第6のX方向光検出部PDx6、第1のY方向光検出部PDy1、及び第6のY方向光検出部PDy6からケース底面311の中心までの距離は等しい。第2のX方向光検出部PDx2、第5のX方向光検出部PDx5、第2のY方向光検出部PDy2、及び第5のY方向光検出部PDy5、そして第3のX方向光検出部PDx3、第4のX方向光検出部PDx4、第3のY方向光検出部PDy3、及び第4のY方向光検出部PDy4に関しても同様である。
【0036】
第3のY方向光検出部PDy3と第4のY方向光検出部PDy4との間、及び第3のY方向光検出部PDy3と第4のY方向光検出部PDy4との間には、MEMSミラー100が設けられる。
【0037】
第1から第6のX方向光検出部PDx1−PDx6及び第1から第6のY方向光検出部PDy1−PDy6は、第3及び第4のケース側面303yn、303ypから突出するピン電極400に、ボンディングワイヤ401を介して接続される(図3参照)。
【0038】
カバーガラス200は、平板状の直方体であって、正方形であるカバーガラス頂面201及びカバーガラス底面202と、4つの側面とから構成される。カバーガラス底面202がケース300の開口部を塞ぐように、カバーガラス200がケース300に取り付けられる。カバーガラス底面202には、光反射膜203が形成される。
【0039】
光反射膜203は、ロの字型であって、カバーガラス底面202においてケースの頂面よりも内側に形成される。カバーガラス底面202上における光反射膜203の内側の領域、結像レーザ透過領域210を成す。
【0040】
マイクロミラー装置10の外部には、図示しないレーザ光源が設けられ、鏡面121に向けてレーザ光を照射する。レーザ光は、カバーガラス200を透過して、鏡面121に到達する。第1及び第2の可動部120、130は、二次元平面である図示しない照射対象面に向けて、各々揺動しながらレーザ光を反射する。レーザ光は、再度カバーガラス200を透過して、照射対象面上に走査される。レーザ光の発光タイミングを調節することにより、照射対象面上の所望の位置に所望の画像を描画することが可能である。照射対象面上において所望の領域内にレーザ光が走査されるように、第1及び第2の可動部120、130の揺動角度、周期、移相が制御される。これらを適切に制御するため、第1及び第2の可動部120、130が反射したレーザ光の位置を光検出部材が検出する。
【0041】
マイクロミラー装置10が走査するレーザ光のうち、カバーガラス底面202において結像レーザ透過領域210の外側に向けて走査されるレーザ光は、光反射膜203により光検出部材に向けて反射される(図5、6参照)。このとき、第1の可動部120は、第1のY方向光検出部PDy1と第2のY方向光検出部PDy2との間から第5のY方向光検出部PDy5と第6のY方向光検出部PDy6との間までレーザ光を走査するように制御され、第2の可動部130は、第1のX方向光検出部PDx1と第2のX方向光検出部PDx2との間から第5のX方向光検出部PDx5と第6のX方向光検出部PDx6との間までレーザ光を走査するように制御される。そして、この範囲にレーザ光を反射したとき、照射対象面に設けられた結像領域内にレーザ光が照射されるように、照射対象面とマイクロミラー装置10との距離に応じて、第1から第6のX方向光検出部PDx1−PDx6及び第1から第6のY方向光検出部PDy1−PDy6の位置があらかじめ定められる。これにより、照射対象面に設けられた結像領域内に形成される情報、たとえば文字情報や画像情報をユーザが認識可能となる。
【0042】
次に、第1の可動部120の動作について図1から6を用いて説明する。
【0043】
まず、第1の可動部120がX軸時計周りに揺動する場合について説明する。
【0044】
図示しない電源装置がX正配線173を介してX正電極171に交流電圧を印加する。交流電圧が0Vから増加していくと、接地されている第1の可動部120とX正電極171との間に電圧差が生じ、この電圧差により第1の可動部120とX正電極171との間に静電力が生じる。この静電力により、第1の可動部120とX正電極171とが引き合い、第1の可動部120がX軸時計周りに回転する。交流電圧が最大となるとき、第1の可動部120が最大の回転角度で回転する。
【0045】
交流電圧が最大電圧から減少していくと同時に静電力が減少し、第1の可動部120は、第1の支持部123、124の弾性力により第2の可動部130及び枠部140と平行な状態に近づいてゆく。交流電圧が0Vになると第1の可動部120とX正電極171との間の電位差が無くなって静電力が消滅し、第1の可動部120は、第2の可動部130及び枠部140と平行な状態となる。
【0046】
これを繰り返すことにより、第1の可動部120がX軸時計周りに揺動する。
【0047】
次に、第1の可動部120がX軸反時計周りに揺動する場合について説明する。
【0048】
この場合、電源装置はX負配線174を介してX負電極172に交流電圧を印加する。交流電圧が0Vから増加していくと、接地されている第1の可動部120とX負電極172との間に電圧差が生じ、この電圧差により第1の可動部120とX負電極172との間に静電力が生じる。この静電力により、第1の可動部120とX負電極172とが引き合い、第1の可動部120がX軸反時計周りに回転する。交流電圧が最大となるとき、第1の可動部120が最大の回転角度で回転する。
【0049】
交流電圧が最大電圧から減少していくと同時に静電力が減少し、第1の可動部120は、第1の支持部123、124の弾性力により第2の可動部130及び枠部140と平行な状態に近づいてゆく。交流電圧が0Vになると第1の可動部120とX負電極172との間の電位差が無くなって静電力が消滅し、第1の可動部120は、第2の可動部130及び枠部140と平行な状態となる。
【0050】
これを繰り返すことにより、第1の可動部120がX軸反時計周りに揺動する。
【0051】
次に、第2の可動部130の動作について説明する。
【0052】
まず、第2の可動部130がY軸反時計周りに揺動する場合について説明する。
【0053】
図示しない電源装置がY負配線183を介してY負電極181に交流電圧を印加する。交流電圧が0Vから増加していくと、接地されている第2の可動部130とY負電極181との間に電圧差が生じ、この電圧差により第2の可動部130とY負電極181との間に静電力が生じる。この静電力により、第2の可動部130とY負電極181とが引き合い、第2の可動部130がY軸反時計周りに回転する。交流電圧が最大となるとき、第2の可動部130が最大の回転角度で回転する。
【0054】
交流電圧が最大電圧から減少していくと同時に静電力が減少し、第2の可動部130は、第2の支持部133、134の弾性力により第1の可動部120及び枠部140と平行な状態に近づいてゆく。交流電圧が0Vになると第2の可動部130とY負電極181との間の電位差が無くなって静電力が消滅し、第2の可動部130は、第1の可動部120及び枠部140と平行な状態となる。
【0055】
これを繰り返すことにより、第2の可動部130がY軸反時計周りに揺動する。
【0056】
次に、第2の可動部130がY軸時計周りに揺動する場合について説明する。
【0057】
この場合、電源装置はY正配線184を介してY正電極182に交流電圧を印加する。交流電圧が0Vから増加していくと、接地されている第2の可動部130とY正電極182との間に電圧差が生じ、この電圧差により第2の可動部130とY正電極182との間に静電力が生じる。この静電力により、第2の可動部130とY正電極182とが引き合い、第2の可動部130がY軸時計周りに回転する。交流電圧が最大となるとき、第2の可動部130が最大の回転角度で回転する。
【0058】
交流電圧が最大電圧から減少していくと同時に静電力が減少し、第2の可動部130は、第2の支持部133、134の弾性力により第1の可動部120及び枠部140と平行な状態に近づいてゆく。交流電圧が0Vになると第2の可動部130とY正電極182との間の電位差が無くなって静電力が消滅し、第2の可動部130は、第1の可動部120及び枠部140と平行な状態となる。
【0059】
これを繰り返すことにより、第2の可動部130がY軸時計周りに揺動する。
【0060】
次に、マイクロミラー装置10の動作を制御する制御装置500について図7を用いて説明する。
【0061】
制御装置500は、マイコン561、発振器562、X方向反転器563、X方向正電圧アンプ564、X方向負電圧アンプ565、カウンタ566、Y方向反転器567、Y方向正電圧アンプ568、Y方向負電圧アンプ569とから主に構成される。
【0062】
マイコン561は、光検出部材に接続され、光を受光した光検出部材から受信したアナログ信号に応じて、発振器562、Y方向正電圧アンプ568、及びY方向負電圧アンプ569を制御する。X方向及びY方向の振幅を制御するため制御信号が発振器562に送信される。
【0063】
光検出部材から受信したアナログ信号の状態をマイコン561が記録する。
【0064】
発振器562は、マイコン561からの制御信号に応じた周波数の交流信号をX方向正電圧アンプ564、X方向反転器563、及びカウンタ566に送信する。発振器562は、VCO(電圧制御発振器)又はDDS(ダイレクト・デジタル・シンセサイザ)が用いられる。
【0065】
X方向反転器563は、受信した交流信号の位相を反転させ、反転した交流信号をX方向負電圧アンプ565に送信する。X方向正電圧アンプ564及びX方向負電圧アンプ565は、可動部110を駆動するに足る電圧まで交流信号を増幅し、MEMSミラー100が備える駆動電極160に交流信号を送信する。
【0066】
X方向正電圧アンプ564及びX方向負電圧アンプ565からの交流信号の周波数に応じた揺動周波数で、可動部110が揺動する。交流信号の振幅が上げられると、可動部110の振幅が大きくなる。交流信号の振幅が下げられると、可動部110の振幅が小さくなる。このようにして、可動部110により反射されたレーザ光がカバーガラス底面202上においてX軸正負方向に走査される。
【0067】
カウンタ566は、発振器562が発信した信号の周波数を3/4に分周する。そして、分周した信号をY方向正電圧アンプ568及びY方向反転器567に送信する。X方向反転器563と同様にして、Y方向反転器567は反転した交流信号をY方向負電圧アンプ569に送信する。Y方向正電圧アンプ568及びY方向負電圧アンプ569は、受信した交流信号の電圧、すなわち振幅をマイコン561からの電圧制御信号に応じて変化させた後、MEMSミラー100が備える駆動電極160に送信する。
【0068】
可動部110は、Y方向正電圧アンプ568及びY方向負電圧アンプ569からの交流信号の周波数に応じた揺動周波数と電圧に応じた振幅とにより揺動する。交流信号の振幅が上げられると、可動部110の振幅が大きくなる。交流信号の振幅が下げられると、可動部110の振幅が小さくなる。このようにして、可動部110により反射されたレーザ光がカバーガラス底面202上においてY軸正負方向に走査される。
【0069】
図8から11を用いて、マイクロミラー装置10を制御する制御手段について説明する。マイクロミラー装置10は、照射対象面上の所定の範囲内にレーザ光を走査するように制御される。以下、レーザ光の走査範囲を、照射対象面上の所定の範囲内に対応する、カバーガラス底面202の所定の範囲内に置き換えて説明する。
【0070】
始めに、カバーガラス底面202上のX軸方向にレーザ光を走査する手段について説明する。
【0071】
図6における最上段の曲線は、カバーガラス底面202上のX軸方向におけるレーザ光照射位置の時間変化を示す。照射対象面上の結像領域を大きく超えてレーザ光が照射される場合、及び結像領域内にしか照射されていない場合、結像領域に形成される情報、たとえば文字情報や画像情報の形状が崩れ、ユーザが情報を認識できなくなる。そのため、結像領域をわずかに外す程度の範囲でレーザ光が走査されるように、第1の制御手段が実行される。すなわち、カバーガラス底面202上における結像レーザ透過領域210をわずかに外す程度の範囲でレーザ光を走査する。
【0072】
結像レーザ透過領域210を外れたレーザ光が光反射膜203により反射されて第4のX方向光検出部PDx4に入射すると、第4のX方向光検出部PDx4は、アナログ信号をマイコン561に送信する。
【0073】
マイコン561は、アナログ信号を受信して、第4のX方向状態変数Vx4をONにする。
【0074】
さらに、レーザ光が第5、第6のX方向光検出部PDx5、PDx6に入射すると、第5、第6のX方向光検出部PDx5、PDx6は、アナログ信号をマイコン561に送信する。マイコン561はアナログ信号を受信して、第5、第6のX方向状態変数Vx5、Vx6を各々ONにする。
【0075】
次に、カバーガラス底面202上のX軸正方向最大位置でレーザ光が折り返してX軸負方向に移動を始めると、光反射膜203により反射されて第6のX方向光検出部PDx6に入射する。レーザ光を受信した第6のX方向光検出部PDx6がアナログ信号をマイコン561に送信すると、マイコン561はアナログ信号を受信して、第6のX方向状態変数Vx6をOFFにする。
【0076】
さらに、レーザ光が第5、第4のX方向光検出部PDx5、PDx4に入射すると、第5、第4のX方向光検出部PDx5、PDx4が、アナログ信号をマイコン561に送信する。マイコン561はアナログ信号を受信して、第5、第4のX方向状態変数Vx5、Vx4を各々OFFにする。
【0077】
レーザ光が結像レーザ透過領域210を外れてから再度結像レーザ透過領域210内に戻るまでに必要な時間は、可動部110のX軸方向周期の半分、すなわち半周期より短い。
【0078】
一方、マイコン561におけるX方向状態変数がOFFの時に、レーザ光がX軸正方向最大位置から結像レーザ透過領域210内へ向けて移動している場合がある。このとき、各X方向光検出部は、レーザ光を最初に感知してから可動部110の半周期以内にレーザ光を感知しない。言い換えると、可動部110の半周期以内に各X方向光検出部はレーザ光を2回感知しない。そこで、マイコン561は、最初に感知したときにONにしたX方向状態変数をOFFに変更し、再度X方向光検出部からのアナログ信号を待つ。
【0079】
これにより、カバーガラス200のX軸方向において、どのような範囲にレーザ光が照射されているかを判断することができる。
【0080】
なお、第1から第3のX方向光検出部PDx1−PDx3に対しても同様の処理を行うことにより、X軸負方向における振幅を制御することができる。このとき、第1のX方向光検出部PDx1が第6のX方向光検出部PDx6に、第2のX方向光検出部PDx2が第5のX方向光検出部PDx5に、第3のX方向光検出部PDx3が第4のX方向光検出部PDx4に対応する機能を有する。
【0081】
Y軸方向に対しても同様の処理を行うことにより、カバーガラス200のY軸方向において、どのような範囲にレーザ光が照射されているかを判断することができる。このとき、図6における第4、第5、第6のX方向光検出部PDx4、PDx5、PDx6を、第4、第5、第6のY方向光検出部PDy4、PDy5、PDy6にそれぞれ読み替える。
【0082】
カバーガラス底面202上におけるX軸方向にレーザ光を走査する第1の制御処理について図7及び8を用いて説明する。第1の制御処理は、マイクロミラー装置10の振幅が狭いと判断されたとき、すなわち第4のX方向光検出部PDx4と第5のX方向光検出部PDx5との間までしかレーザ光が照射されないときに実行される。
【0083】
ステップS701において、駆動電極160に印加されている交流信号の電圧が上げられる。これにより第2の可動部130の振幅が大きくなる。他方、交流信号の電圧上昇により交流信号の位相が変化する。これにより、第2の可動部130の位相も変化する。
【0084】
ステップS702では、ステップS701における処理により変化した交流信号の位相を調節する。この調節は、交流信号を構成する駆動パルスの出力タイミングを調節することにより行われる。これにより、交流信号の電圧が上げられる前の位相に第2の可動部130の位相が戻される。
【0085】
そして、ステップS703では、第2の可動部130の振幅が規定の範囲にあるか否かを判断する。すなわち、第5のX方向光検出部PDxと第6のX方向光検出部PDx6との間にまでレーザ光が照射されているか否かを判断する。第2の可動部130の振幅が規定の範囲にある場合、処理が終了する。第2の可動部130の振幅が規定の範囲にない場合、処理はステップS701に戻り、再度振幅及び位相を調整する。
【0086】
この処理により、結像レーザ透過領域210から、第5のX方向光検出部PDx5と第6のX方向光検出部PDx6との間に相当するカバーガラス底面202上の位置までレーザ光が照射される。
【0087】
また、第1から第3のX方向光検出部PDx1−PDx3、及び第1から第6のY方向光検出部PDy1−PDy6に対しても同様の処理を行うことにより、X軸負方向、Y軸正負方向に対してレーザ光の照射範囲を調節できる。
【0088】
カバーガラス底面202上におけるX軸方向にレーザ光を走査する第2の制御処理について図8及び9を用いて説明する。第2の制御処理は、マイクロミラー装置10の振幅が広いと判断されたとき、すなわち第6のX方向光検出部PDx6をX軸正方向に超えてレーザ光が照射されるときに実行される。
【0089】
ステップS901において、駆動電極160に印加されている交流信号の電圧が下げられる。これにより第2の可動部130の振幅が小さくなる。他方、交流信号の電圧上昇により交流信号の位相が変化する。これにより、第2の可動部130の位相も変化する。
【0090】
ステップS902では、ステップS901における処理により変化した交流信号の位相を調節する。この調節は、交流信号を構成する駆動パルスの出力タイミングを調節することにより行われる。これにより、交流信号の電圧が上げられる前の位相に第2の可動部130の位相が戻される。
【0091】
そして、ステップS903では、第2の可動部130の振幅が規定の範囲にあるか否かを判断する。すなわち、第5のX方向光検出部PDxと第6のX方向光検出部PDx6との間にまでレーザ光が照射されているか否かを判断する。第2の可動部130の振幅が規定の範囲にある場合、処理が終了する。第2の可動部130の振幅が規定の範囲にない場合、処理はステップS901に戻り、再度振幅及び位相を調整する。
【0092】
この処理により、結像レーザ透過領域210から、第5のX方向光検出部PDx5と第6のX方向光検出部PDx6との間に相当するカバーガラス底面202上の位置までレーザ光が照射される。
【0093】
また、第1から第3のX方向光検出部PDx1−PDx3、及び第1から第6のY方向光検出部PDy1−PDy6に対しても同様の処理を行うことにより、X軸負方向、Y軸正負方向に対してレーザ光の照射範囲を調節できる。
【0094】
本実施形態によれば、レーザの照射対象物に光検出部材を設けることなく、正確にレーザの照射範囲を制御することができる。
【符号の説明】
【0095】
10 マイクロミラー装置
100 MEMSミラー
110 可動部
120 第1の可動部
121 鏡面
122 外周面
123 第1の支持部
130 第2の可動部
131 外周面
132 内周面
133 第2の支持部
140 枠部
160 駆動電極
170 X方向電極
171 X正電極
172 X負電極
173 X正配線
174 X負配線
180 Y方向電極
181 Y負電極
182 Y正電極
183 Y負配線
184 Y正配線
200 カバーガラス
201 カバーガラス頂面
202 カバーガラス底面
203 光反射膜
210 結像レーザ透過領域
300 ケース
303xn 第1のケース側面
303xp 第2のケース側面
303yn 第3のケース側面
303yp 第4のケース側面
311 ケース底面
313 頂面
314 外側面
320 フランジ
400 ピン電極
401 ボンディングワイヤ
500 制御装置
561 マイコン
562 発振器
563 X方向反転器
564 X方向正電圧アンプ
565 X方向負電圧アンプ
566 カウンタ
567 Y方向反転器
568 Y方向正電圧アンプ
569 Y方向負電圧アンプ
PDx1 第1のX方向光検出部
PDx2 第2のX方向光検出部
PDx3 第3のX方向光検出部
PDx4 第4のX方向光検出部
PDx5 第5のX方向光検出部
PDx6 第6のX方向光検出部
PDy1 第1のY方向光検出部
PDy2 第2のY方向光検出部
PDy3 第3のY方向光検出部
PDy4 第4のY方向光検出部
PDy5 第5のY方向光検出部
PDy6 第6のY方向光検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の揺動軸周りに揺動しながら光を反射するミラー部材と、
前記ミラー部材を保護するとともに、前記ミラー部材による光の反射方向に設けられて前記ミラー部材が反射した光を透過する保護部材と、
前記保護部材に設けられ、前記ミラー部材からの反射光を前記ミラー部材の周囲に向けて反射する反射部材と、
前記反射部材が反射した光を検出可能となるよう前記ミラー部材の周囲に設けられる光検出部と、
前記光検出部が検出した光に応じて前記ミラー部材の振幅を制御するミラー制御部とを備えるマイクロミラー装置。
【請求項2】
前記ミラー部材は光を反射する平面状の鏡面を有し、
前記保護部材は板状であって、前記ミラー部材が揺動していないときに前記鏡面と平行となり、
前記反射部材は、前記保護部材の前記鏡面側に設けられる請求項2に記載のマイクロミラー装置。
【請求項3】
前記ミラー部材を格納する凹部を有するケースをさらに備え、
前記保護部材は前記凹部を外部から封止するように前記ケースに取り付けられる請求項1に記載のマイクロミラー装置。
【請求項4】
前記ミラー部材は、第1の揺動軸周りに所定の角度内で揺動し、
前記反射部材が反射した光は前記ミラー部材の周囲において線分状の軌跡を成し、
複数の前記光検出部が、前記ミラー部材が反射した光が前記ミラー部材の周囲に成す軌跡が伸びる方向に対して直線状に並べられる請求項2に記載のマイクロミラー装置。
【請求項5】
前記複数の光検出部が、前記ミラー部材の周囲における前記線分状の軌跡の両端部付近に各々並べられる請求項5に記載のマイクロミラー装置。
【請求項6】
前記第1の揺動軸に直交する第2の揺動軸周りに揺動する第2のミラー部材をさらに備え、
前記第1及び第2のミラー部材が反射した光は、前記ミラー部材の周囲であって、互いに直交する直線上に位置する第1及び第2の軌跡を成し、
前記マイクロミラー装置は、前記第1の軌跡が伸びる方向に対して互いに平行な直線上に並べられる複数の光検出部と、前記第2の軌跡が伸びる方向に対して互いに平行な直線上に並べられる複数の第2の光検出部とを備え、
前記ミラー制御部は、前記光検出部及び前記第2の光検出部による検出状態に応じて前記第1及び第2のミラー部材の振幅を制御する請求項2に記載のマイクロミラー装置。
【請求項7】
前記ミラー部材の周囲における前記第1の軌跡及び前記第2の軌跡の各両端部付近に、複数の前記光検出部が各々並べられる請求項6に記載のマイクロミラー装置。
【請求項8】
前記光検出部はCdSであって、光を受光すると電流値が変化し、前記ミラー制御部は前記光検出部による電流の変化に応じて前記ミラー部材を制御する請求項1に記載のマイクロミラー装置。
【請求項9】
前記光検出部はスパッタリング加工により設けられる請求項8に記載のマイクロミラー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−281949(P2010−281949A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133965(P2009−133965)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】