説明

マウント装置

【課題】重量支持部のばね定数を最小にすることができ、機体フレームに対する運転席設置体の傾き方向の振れと上下水平振動を抑制できる簡単なマウント装置を提供する。
【解決手段】機体フレーム12上に運転席設置体21を配置し、機体フレーム12と運転席設置体21との間に振動減衰機構部22を設置する。振動減衰機構部22は、機体フレーム12の一側部および他側部に複数のシリンダ形のマウント本体23を固定し、各マウント本体23内に両ロッド形のピストン24をそれぞれ上下動自在に嵌装し、マウント本体23内に上室25と下室26とを区画形成する。左側のマウント本体23内に形成した上室25と、右側のマウント本体23内に形成した下室26とを、抵抗を伴う流体の移動を可能とする一の配管31により連通する。左側のマウント本体23内に形成した下室26と、右側のマウント本体23内に形成した上室25とを、抵抗を伴う流体の移動を可能とする他の配管32により連通する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベース体に対し被マウント体の振動を減衰させることが可能なマウント装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械の運転室を形成するキャブは、機体からの振動を抑えるために、キャブの床板の4隅に設けられた減衰効果を持つマウントで支持されている。このマウントは、ゴム支持構造の振動吸収用の弾性体とともに、弾性体のばね定数を小さくするためにマウント外周に重量支持用のばね部材を設置している。この場合、振動や変位によって弾性体が変形すると、一定のばね定数が発生する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、以上が上下方向の振動に関するものであるが、機体振動は上下方向だけでなく、キャブが左右方向に振られるローリングおよび前後方向に振られるピッチングが問題となり、その対応策が考えられている。例えば、キャブのローリングやピッチングを、オイルダンパにより上下方向の振動とは独立させて抑えるものがある(例えば、特許文献2参照)。また、ピッチングをオイルダンパにより減衰させるとともに、ローリングをいったんピッチングに変換した上でオイルダンパにより減衰させるものがある(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2004−76786号公報(第1頁、図1)
【特許文献2】特開2000−319937号公報(第1頁、図2)
【特許文献3】国際公開第97/46766号パンフレット(第1頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のマウントは、ベース体に対し被マウント体がゴム支持されている構造上、ばね定数を下げるのに限界がある。また、従来は、ピッチングおよびローリングに対処できるように、マウントとは別の構造物を設置しており、構造が複雑で高価になり、さらに、このピッチング・ローリング対策では、上下振動への対策が取れていない問題がある。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、重量支持部のばね定数を最小にすることができるとともに、ベース体に対する被マウント体の傾き方向の振れおよび上下水平振動を抑えることができる簡単な構造のマウント装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、ベース体と、ベース体上に配置された被マウント体と、ベース体に対し被マウント体の振動を減衰させる振動減衰機構部と、被マウント体の重量を支持する重量支持部とを備え、振動減衰機構部は、ベース体および被マウント体の一方の一側部および他側部に固定された複数のシリンダ形のマウント本体と、各マウント本体内にそれぞれ上下動自在に嵌装されベース体および被マウント体の他方の一側部および他側部に接続された複数の両ロッド形のピストンと、これらのピストンにより一のマウント本体内に区画形成された上室と他のマウント本体内に区画形成された下室とを連通して抵抗を伴う流体の移動を可能とする一の配管と、これらのピストンにより一のマウント本体内に区画形成された下室と他のマウント本体内に区画形成された上室とを連通して抵抗を伴う流体の移動を可能とする他の配管とを具備したマウント装置である。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のマウント装置における被マウント体を、作業機械に搭載されたキャブの運転席床部材としたものである。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載のマウント装置における複数のマウント本体およびピストンが、ベース体および被マウント体の左右部に配置されたものである。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1または2記載のマウント装置における複数のマウント本体およびピストンが、ベース体および被マウント体の前後部に配置されたものである。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか記載のマウント装置における複数のマウント本体およびピストンが、ベース体および被マウント体の前後左右の4隅部に配置され、右前のマウント本体内に区画形成された上室と左後のマウント本体内に区画形成された下室とが配管により連通されるとともに右前のマウント本体内に区画形成された下室と左後のマウント本体内に区画形成された上室とが配管により連通され、左前のマウント本体内に区画形成された上室と右後のマウント本体内に区画形成された下室とが配管により連通されるとともに左前のマウント本体内に区画形成された下室と右後のマウント本体内に区画形成された上室とが配管により連通されたものである。
【0011】
請求項6記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか記載のマウント装置における流体を、粘性流体としたものである。
【0012】
請求項7記載の発明は、請求項1乃至6のいずれか記載のマウント装置において、一の配管と他の配管とを連通するバイパス通路と、このバイパス通路に設定された絞り抵抗とを具備したものである。
【0013】
請求項8記載の発明は、請求項7記載のマウント装置における絞り抵抗を、可変式としたものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明によれば、ベース体に対し被マウント体の振動を減衰させる振動減衰機構部は、ベース体および被マウント体の一方の一側部および他側部に固定された複数のシリンダ形のマウント本体内に、ベース体および被マウント体の他方の一側部および他側部に接続された複数の両ロッド形のピストンをそれぞれ上下動自在に嵌装し、これらのピストンにより一のマウント本体内に区画形成された上室と、他のマウント本体内に区画形成された下室とを一の配管により連通して抵抗を伴う流体の移動を可能とするとともに、これらのピストンにより一のマウント本体内に区画形成された下室と、他のマウント本体内に区画形成された上室とを他の配管により連通して抵抗を伴う流体の移動を可能とすることで、重量支持部を振動減衰機構部から完全に分離して設置することが可能であるから、重量支持部のばね定数を最小にすることができる。また、複数のシリンダ形のマウント本体内に複数の両ロッド形のピストンをそれぞれ上下動自在に嵌装し、これらのマウント本体内の上室と下室とを配管で相互に接続した簡単な構造の振動減衰機構部によりベース体に対する被マウント体の傾き方向の振れを防止できるとともに、重量支持部の設置箇所に係わらず被マウント体を水平に維持する水平レベリング機能と、配管による抵抗を伴う流体の移動により上下水平振動を抑えることができる簡単な構造のマウント装置を提供できる。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、ベース体に対するキャブの傾き方向の振れを防止できる。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、ベース体に対し被マウント体が左右方向に振れるローリングを防止できる。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、ベース体に対し被マウント体が前後方向に振れるピッチングを防止できる。
【0018】
請求項5記載の発明によれば、ベース体に対し被マウント体が左右方向および前後方向に振れるローリングおよびピッチングを防止できる。
【0019】
請求項6記載の発明によれば、粘性流体が配管を通過する抵抗で振動を効果的に減衰させることができる。
【0020】
請求項7記載の発明によれば、共通の配管で連通された2つのマウント本体内の各ピストンに逆方向で同値の力が働いても、絞り抵抗を有するバイパス通路を経て高圧側から低圧側への流体移動が可能であるので、ピッチングおよびローリングをある程度許容しながら、絞り抵抗による減衰効果を得ることができる。
【0021】
請求項8記載の発明によれば、絞り抵抗を可変式とすることで、減衰効果の調整を容易にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を、図1乃至図3に示された一実施の形態、図4に示された他の実施の形態、図5に示された別の実施の形態、図6に示されたさらに別の実施の形態を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
先ず、図1乃至図3に示された一実施の形態を説明する。
【0024】
図3に示されるように、作業機械としての油圧ショベル10は、下部走行体11にベース体としての機体フレーム(スイングフレーム)12が旋回可能に設けられ、この機体フレーム12上に運転室形成用のキャブ13および作業装置14が搭載されている。キャブ13の内部には、作業機械を操作するオペレータが座る運転席15およびその周辺機器が設置されている。
【0025】
図1は、上記キャブ13のマウント装置を示し、機体フレーム12上には、キャブ13の運転席床部材である被マウント体としての運転席設置体21が配置され、機体フレーム12と運転席設置体21との間には、運転席設置体21の振動を減衰させる振動減衰機構部22が設置されている。
【0026】
この振動減衰機構部22は、機体フレーム12の一側部および他側部に複数のシリンダ形のマウント本体23が固定され、これらの各マウント本体23内に複数の両ロッド形のピストン24がそれぞれ上下動自在に嵌装されている。
【0027】
各ピストン24は、マウント本体23内を上室25と下室26とに区画形成し分離するピストン本体部27と、これらのピストン本体部27から上下方向に一体に構成され上室25および下室26を貫通するロッド28とをそれぞれ備え、これらのロッド28の下端部は、マウント本体23の下端部および機体フレーム12の一側部および他側部に穿設された貫通穴29に上下動自在に嵌合されて機体フレーム12の下側に突出され、これらのロッド28の上端は、運転席設置体21の一側部および他側部にそれぞれ接続されている。
【0028】
さらに、ピストン24により図1における左側のマウント本体23内に区画形成された上室25と、右側のマウント本体23内に区画形成された下室26とを、抵抗を伴う流体の移動を可能とする一の配管31により連通する。
【0029】
同様に、ピストン24により図1における左側のマウント本体23内に区画形成された下室26と、右側のマウント本体23内に区画形成された上室25とを、抵抗を伴う流体の移動を可能とする他の配管32により連通する。
【0030】
機体フレーム12と運転席設置体21との間には、キャブ13の重量を含む運転席設置体21の重量を支持するコイルスプリングなどの重量支持部33も設置されているが、この重量支持部33は、後で説明するように、図示された位置に限定されるものではない。
【0031】
図1を、機体フレーム12および運転席設置体21の左右方向断面とする場合は、複数のマウント本体23およびピストン24は、機体フレーム12および運転席設置体21の左右部に配置されていることになる。
【0032】
また、図1を、機体フレーム12および運転席設置体21の前後方向断面とする場合は、複数のマウント本体23およびピストン24は、機体フレーム12および運転席設置体21の前後部に配置されていることになる。
【0033】
図2に示されるように、機体フレーム12および運転席設置体21の左前、右前、左後、右後の4隅部に、振動減衰機構部22を構成する複数のマウント本体23Lf,23Rf,23Lr,23Rrおよびピストン24Lf,24Rf,24Lr,24Rrが配設されている。
【0034】
右前のマウント本体23Rf内に区画形成された上室と、左後のマウント本体23Lr内に区画形成された下室とが、配管31aにより連通されるとともに、右前のマウント本体23Rf内に区画形成された下室と、左後のマウント本体23Lr内に区画形成された上室とが、配管32aにより連通されている。
【0035】
同様に、左前のマウント本体23Lf内に区画形成された上室と、右後のマウント本体23Rr内に区画形成された下室とが、配管31bにより連通されるとともに、左前のマウント本体23Lf内に区画形成された下室と、右後のマウント本体23Rr内に区画形成された上室とが、配管32bにより連通されている。
【0036】
これらのマウント本体23Lf,23Rf,23Lr,23Rr内の上室25、下室26および配管31a,31b,32a,32b内には、振動減衰用の流体が満たされ密封されている。この流体は、配管31a,31b,32a,32b内を移動する際の抵抗で振動を減衰させるので、シリコンオイル、グリース、作動油などの粘性液体を用いることが望ましい。
【0037】
なお、マウント本体23とピストン24との間、およびマウント本体23とロッド28との間には、公知技術の液密シール手段(図示せず)が設けられている。
【0038】
次に、この実施の形態の作用効果を説明する。
【0039】
このように、4隅のマウント本体23Lf,23Rf,23Lr,23Rrの、対角線上における上室25と下室26とを、配管31a,31b,32a,32bにより連結することによって、機体フレーム12に対する運転席設置体21さらにはキャブ13の傾き方向の振れ、すなわち前後傾き方向の振れであるピッチングと、左右傾き方向の振れであるローリングの両方を防止することができる。
【0040】
例えば、キャブ13が前後傾き方向に振れるピッチングの場合は、キャブ13の前方が沈み、後方が浮き上がるピッチングを想定したとき、前方のマウント本体23Lf,23Rfの下室に掛かった圧力が後方のマウント本体23Lr,23Rrの上室に掛かる。このとき、キャブ13の後方は浮き上がろうとしているため、後方のマウント本体23Lr,23Rrのピストン24Lr,24Rrは上昇しようとしているが、前方のマウント本体23Lf,23Rfの下室からの圧力によってこのピストン24Lr,24Rrの上昇を抑える相反する圧力が発生し、ピッチングが発生しない。
【0041】
また、キャブ13が左右傾き方向に振れるローリングの場合は、キャブ13の左方が沈み、右方が浮き上がるローリングを想定したとき、左方のマウント本体23Lf,23Lrの下室に掛かった圧力が右方のマウント本体23Rf,23Rrの上室に掛かる。このとき、キャブ13の右方は浮き上がろうとしているため、右方のマウント本体23Rf,23Rrのピストン24Rf,24Rrは上昇しようとしているが、左方マウント本体23Lf,23Lrの下室からの圧力によってこのピストン24Rf,24Rrの上昇を抑える相反する圧力が発生し、ローリングが発生しない。
【0042】
上下水平振動の場合は、ピストン24の下降により、各マウント本体23Lf,23Rf,23Lr,23Rrの各下室26の流体が、配管31a,31b,32a,32bを経て相互に反対側の各上室25に移動する動作と、ピストン24の上昇により、各上室25の流体が、配管31a,31b,32a,32bを経て相互に反対側の各下室26に移動する動作とが繰り返され、各ピストン24が水平に上下移動されるが、このとき、細い配管31a,31b,32a,32bで長い距離を流体が移動するため、その間の損失で減衰作用が働き、上下水平振動を抑えることができる。
【0043】
上記振動減衰機構部22では水平レベリングは維持されるが、キャブ13の重量を支える機能はないので、振動減衰機構部22とは別にコイルスプリングの重量支持部33を設置して、この重量支持部33でキャブ13の重量を支える必要がある。
【0044】
この重量支持部33は、振動減衰効果を持つ振動減衰機構部22から完全に分離して設置することができるので、重量支持部33のばね定数を、キャブ13の重量を支えるだけの最小ばね定数にすることができる。また、図1に示されるように重量支持部33を運転席設置体21の中央部に設置して、中央部の1点で支えても、水平レベリングは各液室効果によって保たれるので、重量支持部33の設置箇所に制約を受けにくい。
【0045】
また、ローリングおよびピッチングを抑えることが、各液室の配管31a,31b,32a,32b による連通だけで行なえる。このとき、粘性流体が配管31a,31b,32a,32bを通過する抵抗で振動を効果的に減衰させることができる。
【0046】
次に、図1に示された実施の形態とは異なる実施の形態を説明する。
【0047】
コイルスプリングの重量支持部33は、図4に示されるようにマウント本体23の下室26内に設置しても良いし、図5に示されるようにマウント本体23の外部に設置しても良い。なお、他の部分は、図1に示された実施の形態と同様であるから、同一符号を付してその説明を省略する。
【0048】
さらに、コイルスプリングなどの重量支持部33は、マウント本体23の周囲に巻付けるようにして、あるいはマウント本体23の近傍にて、さらには複数のマウント本体23の中間部にて、ベース体としての機体フレーム12と、被マウント体としての運転席設置体21との間に配置しても良い。
【0049】
このとき、重量支持部33の個数は、4点支持でも、3点支持でも、2点支持でも、中央部のみの1点支持でも良い。
【0050】
また、図1に示された実施の形態では、運転席設置体21は、運転席を覆うキャブ13の床部材としたが、この運転席設置体21は、運転席が開放されたキャノピ型の作業機械にあっては運転席床材としても良い。
【0051】
マウント本体23は機体フレーム12に固定し、ピストン24は運転席設置体21に固定したが、これらの位置関係は、逆にしても良い。すなわち、運転席設置体21にマウント本体23を固定し、機体フレーム12にピストン24を連結するようにしても良い。
【0052】
複数のマウント本体23およびピストン24は、既存のマウント構造に加えて、機体フレーム12および運転席設置体21の左右部のみに配置して、ローリング防止手段としても良い。
【0053】
複数のマウント本体23およびピストン24は、既存のマウント構造に加えて、機体フレーム12および運転席設置体21の前後部のみに配置して、ピッチング防止手段としてもよい。
【0054】
流体は、粘性流体が好ましいが、空気、水などの非粘性流体を用いても良い。その場合は、配管31a,31b,32a,32bを細くしたり、配管31a,31b,32a,32b中またはその出入口部などにオリフィスを設置すると良い。
【0055】
次に、図6に基づいて、さらに別の実施の形態を説明する。なお、図1、図4に示された実施の形態と同様の部分には、同一符号を付してその説明を省略する。
【0056】
この図6に示された実施の形態が生まれた背景には、例えばピッチング発生時に前方マウントに掛かる圧縮力と後方マウントに掛かる引張力が同値の場合、2つのマウント間を連通する配管によって、2つのマウント内のピストンに作用する圧力が互いに打ち消し合い、動かなくなる状況が発生し得るおそれがある。つまり、対角線上のマウントに逆方向で同値の力が働いた場合は、マウント内の流体が移動せず、減衰効果が得られないおそれがある。
【0057】
そこで、図4に示された配管に加えて、例えば図6左側のマウント本体23内の上室25と右側のマウント本体23内の下室26とを連通する一の配管31と、図6左側のマウント本体23内の下室26と右側のマウント本体23内の上室25とを連通する他の配管32とを、バイパス通路34で連通し、このバイパス通路34中に絞り抵抗としてのオリフィス35を設ける。
【0058】
絞り抵抗としては、オリフィス35に限定されるものではなく、例えばバイパス通路34を細い配管で形成することで絞り抵抗を付与するようにしても良い。
【0059】
さらに、各マウント本体23の下室26にはキャブなどの重量を支えるコイルスプリングなどの重量支持部33を設置する。
【0060】
そして、例えば共通の配管31で連通された2つのマウント本体23の各ピストン24に逆方向で同値の押圧力が働くと、その配管31内の流体は、オリフィス35を有するバイパス通路34を経て低圧側の配管32へ徐々に移動しながら、各ピストン24に作用した力を吸収し減衰させる。
【0061】
このように構成することで、共通の配管31または32で連通された2つのマウント本体23の各ピストン24に逆方向で同値の力が働いても、オリフィス35などの絞り抵抗を有するバイパス通路34を経て、高圧側から低圧側への流体移動が可能であるので、ピッチングおよびローリングをある程度許容しながら、絞り抵抗による減衰効果を得ることができる。また、マウント本体23の外部に絞り抵抗を設けたので、減衰効果の調整や変更を容易にできる。
【0062】
なお、これらのバイパス通路34は、各マウント本体23の近傍にそれぞれ設けることが望ましいが、2つの配管31,32が交差するほぼ中央部の1箇所に設けても良い。
【0063】
また、キャブ重量を支えるコイルスプリングなどの重量支持部33は、マウント本体23内に設けられているが、内部に限定されるものではなく、マウント本体23の近傍にそれぞれ設けても良い。
【0064】
さらに、バイパス通路34の絞り抵抗は、固定式のオリフイス35でも良いが、バイパス通路34中に電磁比例弁などの可変絞り弁36を設けることで、調整可能な可変式にしても良い。このように絞り抵抗を可変式とすることで、減衰効果の調整を容易にできる。
【0065】
なお、本発明は、作業機械の機体フレーム12に対して運転席設置体21を搭載するマウント装置に限定されるものではなく、一般車両などのマウント装置として利用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係るマウント装置の一実施の形態を示す断面図である。
【図2】同上マウント装置を備えたキャブの底面側からの斜視図である。
【図3】同上マウント装置を備えた作業機械の側面図である。
【図4】同上マウント装置の他の実施の形態を示す断面図である。
【図5】同上マウント装置の別の実施の形態を示す断面図である。
【図6】同上マウント装置のさらに別の実施の形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0067】
12 ベース体としての機体フレーム
21 被マウント体としての運転席設置体
22 振動減衰機構部
23 マウント本体
24 ピストン
25 上室
26 下室
31,32 配管
33 重量支持部
34 バイパス通路
35 絞り抵抗としてのオリフィス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース体と、
ベース体上に配置された被マウント体と、
ベース体に対し被マウント体の振動を減衰させる振動減衰機構部と、
被マウント体の重量を支持する重量支持部とを備え、
振動減衰機構部は、
ベース体および被マウント体の一方の一側部および他側部に固定された複数のシリンダ形のマウント本体と、
各マウント本体内にそれぞれ上下動自在に嵌装されベース体および被マウント体の他方の一側部および他側部に接続された複数の両ロッド形のピストンと、
これらのピストンにより一のマウント本体内に区画形成された上室と他のマウント本体内に区画形成された下室とを連通して抵抗を伴う流体の移動を可能とする一の配管と、
これらのピストンにより一のマウント本体内に区画形成された下室と他のマウント本体内に区画形成された上室とを連通して抵抗を伴う流体の移動を可能とする他の配管と
を具備したことを特徴とするマウント装置。
【請求項2】
被マウント体は、作業機械に搭載されたキャブの運転席床部材である
ことを特徴とする請求項1記載のマウント装置。
【請求項3】
複数のマウント本体およびピストンは、ベース体および被マウント体の左右部に配置された
ことを特徴とする請求項1または2記載のマウント装置。
【請求項4】
複数のマウント本体およびピストンは、ベース体および被マウント体の前後部に配置された
ことを特徴とする請求項1または2記載のマウント装置。
【請求項5】
複数のマウント本体およびピストンは、ベース体および被マウント体の前後左右の4隅部に配置され、
右前のマウント本体内に区画形成された上室と左後のマウント本体内に区画形成された下室とが配管により連通されるとともに右前のマウント本体内に区画形成された下室と左後のマウント本体内に区画形成された上室とが配管により連通され、
左前のマウント本体内に区画形成された上室と右後のマウント本体内に区画形成された下室とが配管により連通されるとともに左前のマウント本体内に区画形成された下室と右後のマウント本体内に区画形成された上室とが配管により連通された
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載のマウント装置。
【請求項6】
流体は、粘性流体である
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか記載のマウント装置。
【請求項7】
一の配管と他の配管とを連通するバイパス通路と、
このバイパス通路に設定された絞り抵抗と
を具備したことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか記載のマウント装置。
【請求項8】
絞り抵抗は、可変式である
ことを特徴とする請求項7記載のマウント装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−322608(P2006−322608A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−379354(P2005−379354)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000190297)新キャタピラー三菱株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】