説明

マスクブランクの検査方法およびマスクの製造方法

【課題】量産装置としての完成度が高く、かつ、大気中でのレンズを使用した検査光学系を使用できるDUV光を使用したマスクブランクの検査方法において、わずか数nmの微細な凹凸欠陥(位相欠陥)を高感度に検出できる技術を提供する。
【解決手段】第1画像検出器SE1をレンズL3の結像面16よりも光路長がXL1だけ短い位置に配置することにより、マスクブランクMB上の検査光照射領域12の拡大検査像を負のデフォーカス状態で収集する。これに対し、第2画像検出器SE2をレンズL4の結像面17よりも光路長がXL2だけ長い位置に配置することにより、マスクブランクMB上の検査光照射領域11の拡大検査像を正のデフォーカス状態で収集する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクブランクの検査方法およびマスクの製造方法に関し、特に、波長が13.5nm付近の極端紫外線(EUV:Extreme Ultra Violet)を使用するEUVL(Extreme Ultra Violet Lithography)用のマスクブランクの検査方法およびEUVLに使用するマスクの製造方法に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2001−174415号公報(特許文献1)や特開2002−333313号公報(特許文献2)には、レーザ光を基板に照射し、乱反射する光から異物を検出する方法として、明視野像(顕微鏡像)を使用する検査方法が記載されている。特に、特許文献1や特許文献2では、検出信号に非対称性を与えて凸欠陥であるか凹欠陥であるかを判別する技術が記載されている。
【0003】
特開2003−114200号公報(特許文献3)や米国出願公開2004/0057107号(特許文献4)には、露光に使用するEUV光と同じ波長の検査光を用いて、マスクブランクに存在する欠陥を検出する技術が記載されている。特に、特許文献3には、暗視野像を使用する技術が記載され、特許文献4には、明視野像を使用する技術が記載されている。
【0004】
特開2005−265736号公報(特許文献5)には、一般的な光学マスクのパターン検査を行なうために用いられるDUV光(Deep Ultra Violet)を検査光に使用する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−174415号公報
【特許文献2】特開2002−333313号公報
【特許文献3】特開2003−114200号公報
【特許文献4】米国出願公開2004/0057107号
【特許文献5】特開2005−265736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体デバイス(半導体装置)は、回路パターンが描かれたマスクに露光光を照射し、マスクに形成されている回路パターンを、縮小光学系を介して半導体基板(半導体ウェハ)上に転写するフォトリソグラフィ技術を繰り返し用いることによって形成される。
【0007】
近年、半導体デバイスの微細化が進み、フォトリソグラフィ技術で使用する露光光の波長をより短くして解像度を向上する技術が検討されている。例えば、これまでは波長193nmのフッ化アルゴン(ArF)エキシマレーザ光を用いたArFリソグラフィ技術が開発されているが、それよりもはるかに波長の短い波長13.5nmのEUV光を使用したリソグラフィ技術(EUVL(Extreme Ultra Violet Lithography))の開発が進んでいる。
【0008】
通常のフォトリソグラフィ技術では、回路パターンを形成したマスクに対して露光光を透過させることにより、マスクに形成したパターンを半導体基板上に転写する構成がとられる。すなわち、マスクは露光光に対して透過する透過材料から形成し、この透過材料に遮光パターンを形成することにより、マスクに所望の回路パターンを形成しているのである。ところが、EUV光の波長域では、EUV光に対して透明な物質が存在しないのである。つまり、EUV光を使用したリソグラフィ技術では、EUV光が物質に吸収されて透過しない関係から、露光光を透過させるマスクを構成することができないのである。このため、EUV光を使用したリソグラフィ技術では、マスクに露光光を透過させるのではなく、マスクから露光光を反射する光学系が採用されている。
【0009】
具体的にEUV光を使用したリソグラフィ技術では、モリブデン(Mo)層とシリコン(Si)層からなる多層膜での反射を利用した多層膜反射基板がマスク基板(マスクブランク)として使用される。多層膜による反射は一種の干渉を利用した反射である。そして、EUVL用のマスクは、石英ガラスや低熱膨張ガラス基板の上にモリブデン層とシリコン層などの多層膜が被着された多層膜反射基板(マスクブランク)上に、低反射領域として、吸収体パターンすなわちEUV光の吸収膜と緩衝膜のパターンを形成している。すなわち、EUVL用マスクは、マスクブランク上に吸収体パターンを形成した構造をしている。このように構成されたEUVL用マスクにEUV光を入射すると、吸収体パターンに入射したEUV光は吸収されて反射しない一方、吸収体パターンが形成されていない領域では、多層膜にEUV光が入射することにより多層膜からEUV光が反射する。これにより、EUVL用マスクから反射したEUV光を半導体基板上に露光することで、EUVL用マスクに形成された回路パターンを半導体基板上のレジスト膜に転写することができる。
【0010】
このようにEUVL用マスクは、多層膜を形成したマスクブランク上に吸収体パターンを形成した構造をしていることがわかる。ここで、EUVL用マスクでは、マスクブランク上に形成されたわずか数nmの微細な凹凸欠陥(位相欠陥)も転写パターン不良を引き起こす原因となる。例えば、EUVL用マスクでは、露光光としてEUV光を使用するが、このEUV光の波長は13.5nm程度であるので、わずか数nmの微細な凹凸欠陥でも、この凹凸欠陥でEUV光が反射されると、反射されたEUV光に対して大きな位相変化を与えるのである。つまり、EUV光から見ると、わずか数nmの微細な凹凸欠陥も無視できる程度のものではなく、微細な凹凸欠陥による位相変化や乱反射によって、本来充分な反射光が得られるはずの領域の光強度が低下し、あたかも吸収体パターンが存在して反射光が吸収されている状態と同じ状態になってしまうおそれがある。すなわち、吸収体パターンが形成されていないマスクブランクの反射領域にわずか数nmの微細な凹凸欠陥が存在すると、その微細な凹凸欠陥があたかも吸収体パターンのように機能し、正常な転写パターンが形成できなくなってしまうおそれがあるのである。
【0011】
これに対し、波長193nmのフッ化アルゴン(ArF)エキシマレーザ光を用いたArFリソグラフィ技術においては、上述したようなわずか数nmの微細な凹凸欠陥が存在しても問題はない。つまり、波長(193nm)が微細な凹凸欠陥(数nm)よりも充分大きいことと、反射型マスクではなく透過型マスクを使用することから、通常の光リソグラフィ技術においては、わずか数nmの微細な凹凸欠陥は無視しても問題ないのである。このように、EUVL用マスクと通常の光リソグラフィ用マスクでは、露光光に使用する波長の相違や、反射型マスクか透過型マスクかの相違に起因して、欠陥に対して大きな差があることがわかる。すなわち、EUVL用マスクでは、従来の光リソグラフィ用マスクでは問題とならなかったわずか数nmの微細な凹凸欠陥もパターンの転写不良を引き起こす原因となるのである。したがって、EUVL用マスクでは、吸収体パターンを形成する前のマスクブランクの段階で、マスクブランクにわずか数nmの微細な凹凸欠陥が存在するか否かを検査する必要がある。
【0012】
例えば、マスクブランクに形成されたわずか数nmの微細な凹凸欠陥を検出する検査方法として、特許文献1や特許文献2に記載されているレーザ光を用いる検査方法が考えられる。しかし、レーザ光を用いる検査方法では、数nmの微細な凹凸欠陥が検査光(レーザ光)の波長に比べて2桁以上小さいので、微細な凹凸欠陥を検出することは困難である。
【0013】
一方、特許文献3や特許文献4に記載されている検査方法では、波長の短いEUV光を検査光として使用しているので、いずれも高い感度で位相欠陥を検出できることが知られている。しかし、検査光学系の取り扱いが難しいという問題点がある。つまり、検査光のEUV光源と多層膜反射面を採用した真空チャンバ内の検査光学系はいずれも取り扱いが難しく、さらに、光学ミラーへのダメージも充分に小さいとはいえない問題点が存在する。
【0014】
これに対し、特許文献5に記載された検査方法では、検査光としてDUV光(波長200nm程度)を使用しているので、量産装置としての完成度が高く、大気中でのレンズを使用した検査光学系を使用できるため、マスクブランクの有効な検査方法である。しかし、DUV光の波長(約200nm)は、検出すべき位相欠陥の凹凸に比べて約2桁長いので、上述した特許文献1や特許文献2に記載されているレーザ光を使用する検査方法と同様に、位相欠陥の検出感度が低下する問題点がある。
【0015】
本発明の目的は、量産装置としての完成度が高く、かつ、大気中でのレンズを使用した検査光学系を使用できるDUV光を使用したマスクブランクの検査方法において、わずか数nmの微細な凹凸欠陥(位相欠陥)を高感度に検出できる技術を提供することにある。
【0016】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0018】
代表的な実施の形態におけるマスクブランクの検査方法は、(a)EUV光を反射させる多層膜が形成されたマスクブランクをステージに載置する工程と、(b)前記(a)工程後、検査光を前記マスクブランクに照射する工程とを備える。そして、(c)前記(b)工程後、前記マスクブランクの検査光照射領域を走査しながら、対物レンズを介して前記検査光照射領域の拡大検査像を収集する際、前記対物レンズに対して第1所定量のデフォーカス位置で前記拡大検査像を収集する工程とを備える。さらに、(d)前記(b)工程後、前記マスクブランクの前記検査光照射領域を走査しながら、前記対物レンズを介して前記検査光照射領域の前記拡大検査像を収集する際、前記対物レンズに対して前記第1所定量とは符号の異なる第2所定量のデフォーカス位置で前記拡大検査像を収集する工程とを備える。続いて、(e)前記(c)工程で収集される前記拡大検査像と、前記(d)工程で収集される前記拡大検査像に基づいて、欠陥の有無を判定する工程と、(f)前記(e)工程で得られる判定結果を表示する工程とを備えることを特徴とするものである。
【0019】
また、代表的な実施の形態におけるマスクの製造方法は、(a)EUV光を反射させる多層膜が形成されたマスクブランクに存在する欠陥の有無を検査する工程と、(b)前記(a)工程で前記欠陥が検出された場合、検出された前記欠陥の位置座標に基づいて、吸収体パターンを形成する工程とを備える。このとき、前記(a)工程は、(a1)前記マスクブランクをステージに載置する工程と、(a2)前記(a1)工程後、検査光を前記マスクブランクに照射する工程とを有する。そして、(a3)前記(a2)工程後、前記マスクブランクの検査光照射領域を走査しながら、対物レンズを介して前記検査光照射領域の拡大検査像を収集する際、前記対物レンズに対して第1所定量のデフォーカス位置で前記拡大検査像を収集する工程とを有する。さらに、(a4)前記(a2)工程後、前記マスクブランクの前記検査光照射領域を走査しながら、前記対物レンズを介して前記検査光照射領域の前記拡大検査像を収集する際、前記対物レンズに対して前記第1所定量とは符号の異なる第2所定量のデフォーカス位置で前記拡大検査像を収集する工程とを有する。続いて、(a5)前記(a3)工程で収集される前記拡大検査像と、前記(a4)工程で収集される前記拡大検査像に基づいて、欠陥の有無を判定する工程と、(a6)前記(a5)工程を実施した結果、前記マスクブランクに存在する前記欠陥が検出された場合、前記欠陥の位置座標を記憶する工程とを有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0021】
量産装置としての完成度が高く、かつ、大気中でのレンズを使用した検査光学系を使用できるDUV光を使用したマスクブランクの検査方法において、わずか数nmの微細な凹凸欠陥(位相欠陥)を高感度に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】EUV光を使用した露光光学系を示す構成図である。
【図2】マスクの平面構成を示す図である。
【図3】図2に示すマスクのデバイスパターンエリアでの一断面を示す断面図である。
【図4】マスク基板上に位相欠陥が形成されている状態を示す断面図である。
【図5】位相欠陥が吸収体の間の反射領域に残存する場合を示す断面図である。
【図6】DUV光を検査光とする検査装置において、マスクブランクスに存在する欠陥画像を取り込む検査光学系を示す構成図である。
【図7】マスクブランクに形成された多層膜上に凹形状の位相欠陥が存在する場合において、マスクブランクの表面を対物レンズの光軸方向にずらす量を変化させた際、画像検出器の受光面に形成されるそれぞれの拡大検査像の光強度分布をシミュレーション解析により求めた結果を示すグラフである。
【図8】マスクブランクに形成された多層膜上に凸形状の位相欠陥が存在する場合において、マスクブランクの表面を対物レンズの光軸方向にずらす量を変化させた際、画像検出器の受光面に形成されるそれぞれの拡大検査像の光強度分布をシミュレーション解析により求めた結果を示すグラフである。
【図9】本発明の実施の形態1におけるマスクブランクの検査方法に使用する検査装置の構成を示す図である。
【図10】実施の形態1において、マスクブランク上にわたって2つの検査光照射領域を走査する様子を示す図である。
【図11】2つの検査光照射領域を1つの検査ストライプの検査領域内で移動させる様子を示す図である。
【図12】実施の形態1における検査装置において、1つの検査ストライプでの処理工程を説明するためのタイムチャートである。
【図13】実施の形態1におけるマスクブランクの検査方法の流れを示すフローチャートである。
【図14】実施の形態2における検査装置の構成を示す図である。
【図15】実施の形態3におけるマスクブランクの検査方法に使用する検査装置の構成を示す図である。
【図16】実施の形態3における検査装置において、1つの検査ストライプでの処理工程を説明するためのタイムチャートである。
【図17】実施の形態3におけるマスクブランクの検査方法の流れを示すフローチャートである。
【図18】実施の形態4におけるマスクの製造方法で製造されたマスクの一例を示す平面図である。
【図19】図18のA−A線で切断した断面図である。
【図20】実施の形態4におけるマスクの製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図21】実施の形態4におけるマスクの製造方法で製造されたマスクの一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0024】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0025】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0026】
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0027】
また、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0028】
(実施の形態1)
例えば、波長193nmのフッ化アルゴン(ArF)エキシマレーザ光を用いたArFリソグラフィ技術が開発されているが、さらなるパターンの微細化に対応するため、それよりもはるかに波長の短い波長13.5nm(12nm〜15nm)のEUV光を使用したリソグラフィ技術(EUVL(Extreme Ultra Violet Lithography))の開発が進んでいる。つまり、露光光の波長が短くなるほど、より微細化されたパターンを半導体ウェハに転写することができることから、さらなる微細化されたパターンを転写するため、露光光の波長を短くすることが行なわれているのである。
【0029】
このとき、例えば、波長193nmのフッ化アルゴン(ArF)エキシマレーザ光を用いた通常のフォトリソグラフィ技術では、回路パターンを形成したマスクに対して露光光を透過させることにより、マスクに形成したパターンを半導体基板上に転写する構成がとられる。すなわち、マスクは露光光に対して透過する透過材料から形成し、この透過材料に遮光パターンを形成することにより、マスクに所望の回路パターンを形成しているのである。ところが、EUV光の波長域では、EUV光に対して透明な物質が存在しないのである。つまり、EUV光を使用したリソグラフィ技術では、EUV光が物質に吸収されて透過しない関係から、露光光を透過させるマスクを構成することができないのである。このため、EUV光を使用したリソグラフィ技術では、マスクに露光光を透過させるのではなく、マスクから露光光を反射する光学系が採用されている。
【0030】
図1は、EUV光を使用した露光光学系を示す構成図である。図1に示すように、EUV光を使用した露光光学系は、光源LS、照明光学系LOS1、マスクM、結像光学系LOS2およびステージSTを有している。光源LSは、波長が12nm〜15nmのEUV光(極端紫外線)を照射する光源である。照明光学系LOS1は、光源LSからEUV光を入射し、入射したEUV光を加工してマスクMに照射するように構成されている。通常、照明光学系LOS1はレンズを用いて構成されるが、EUV光に対して透明な材料は存在しないため、EUV光を使用する照明光学系LOS1では、EUV光を反射する反射鏡(例えば、凹面鏡や凸面鏡)から構成されている。すなわち、照明光学系LOS1は、反射鏡を使用してEUV光の形状を加工するようになっている。マスクMには、半導体基板1Sに転写するパターン(例えば、回路パターン)が形成されており、照明光学系LOS1から射出したEUV光がマスクMに形成されているパターンを反映して反射するようになっている。結像光学系LOS2は、マスクMで反射したEUV光を入射して半導体基板1S上にEUV光を結像させるように構成されている。通常、結像光学系LOS2はレンズを用いて構成されるが、EUV光に対して透明な材料は存在しないため、EUV光を使用する結像光学系LOS2では、EUV光を反射する反射鏡(例えば、凹面鏡や凸面鏡)から構成されている。すなわち、結像光学系LOS2は、反射鏡を使用してEUV光を集光しマスクパターンの像を半導体基板1S上に結像させるように構成されている。ステージSTは、半導体基板1Sを載置するためのものであり、結像光学系LOS2によってEUV光が結像される位置に半導体基板1Sを配置するように構成されている。図1に示す露光光学系では、EUV光を使用しており、EUV光を減衰させないために、光源LS、照明光学系LOS1、マスクM、結像光学系LOS2およびステージSTを有する露光光学系は、真空中に配置される。
【0031】
本実施の形態1における露光光学系は上記のように構成されており、以下に、その動作について図1を参照しながら説明する。まず、光源LSよりEUV光を照射する。光源LSから射出されたEUV光は、照明光学系LOS1に入射する。照明光学系LOS1に入射したEUV光は、照明光学系LOS1を構成する反射鏡で反射されることにより加工された後、照明光学系LOS1から射出される。続いて、照明光学系LOS1から射出されたEUV光は、マスクMに入射される。マスクMに入射したEUV光は、マスクMに形成されているパターンを反映して反射される。そして、マスクMで反射したEUV光は、結像光学系LOS2に入射する。結像光学系LOS2に入射したEUV光は、結像光学系LOS2を構成する反射鏡によって加工され、ステージST上に搭載されている半導体基板1S(詳細には、半導体基板1S上に形成されているレジスト膜)にパターンが結像する。つまり、マスクMに形成されている回路パターンが結像光学系LOS2によって、半導体基板1S上に縮小投影される。このようにして、マスクMに形成されている回路パターンを半導体基板1Sのレジスト膜に転写することができる。
【0032】
上述したようにマスクMにはパターンが形成されており、このパターンにEUV光を入射することにより、パターンに対応した反射光を射出することができるようになっている。以下では、マスクMに形成されているパターンの構造について説明する。
【0033】
図2は、マスクMの平面構成を示す図である。図2に示すように、マスクMは矩形形状をしており、矩形形状をしているマスクMの四隅にアライメントマークMAが形成されている。このアライメントマークMAは、マスクMの位置合わせを行なう機能のパターン群を有するものである。そして、マスクMの中央部には、デバイスパターンエリアMDEが形成されている。このデバイスパターンエリアMDEには、半導体装置を構成する回路パターンが形成されている。したがって、マスクMに入反射するEUV光はこのデバイスパターンエリアMDEに照射されることになる。
【0034】
図3は、図2に示すマスクMのデバイスパターンエリアMDEでの一断面を示す断面図である。図3に示すように、マスクMには、マスク基板(マスクブランク)MS上に多層膜MLFが形成されている。マスク基板MSは、例えば、石英ガラスや低熱膨張材から構成されており、多層膜MLFは、例えば、シリコン層とモリブデン層とを多層にわたって積層した構造をしている。多層膜MLFは、マスクMに入射したEUV光を反射するために設けられている膜である。つまり、例えば、シリコン層とモリブデン層からなる多層膜MLFでは、シリコン層の屈折率とモリブデン層の屈折率が異なることで生じる多層膜反射を利用してEUV光を反射している。この多層膜反射は、一種の干渉を利用した反射である。具体的には、多層膜MLFの表面で反射した光と、多層膜MLFの内部で反射した光とが干渉して強め合うことにより、ある一定強度以上のEUV光を反射できるようになっている。
【0035】
多層膜MLF上には、キャッピング層CAPが形成されている。このキャッピング層CAPは、多層膜MLFを保護するために設けられている膜であり、例えば、シリコン層やルテニウム層から形成されている。このキャッピング層CAP上には、バッファ層BUFを介して吸収体ABSがパターン状に形成されている。吸収体ABSはマスクMに入射してきたEUV光を吸収して反射しないようにするものである。この吸収体ABSは、例えば、窒化タンタル(TaN)などのタンタル系材料から形成されている。吸収体ABSは、EUV光を充分に吸収する観点から、その厚さは、例えば、50nm〜100nmとなっている。バッファ層BUFは、吸収体ABSを加工する際に行なわれるエッチングに対するストッパとして機能する膜であり、バッファ層BUFの下層に形成されている多層膜MLFをエッチングダメージから保護する機能を有している。なお、マスク基板MSの裏面には、導体膜CFが形成されているが、この導体膜CFはマスクMをステージに静電チャックするために設けられる膜である。
【0036】
以上のように構成されているマスクMでは、多層膜MLFが露出している領域と、吸収体ABSが形成されている領域とを設けることにより、EUV光に対するパターニングが行なわれている。すなわち、マスクMにEUV光が入射する場合、多層膜MLFが露出している領域では、EUV光が反射して反射光が射出される。これに対し、吸収体ABSが形成されている領域ではEUV光が吸収され反射光が生じない。このため、多層膜MLFが露出する領域と、吸収体ABSが形成されている領域とで、回路パターンを形成することにより、回路パターンを反映した反射光を得ることができるのである。
【0037】
ここで、EUVL用マスクでは、マスクブランク(マスク基板)上に形成されたわずか数nmの微細な凹凸欠陥(位相欠陥)も転写パターン不良を引き起こす原因となる。例えば、図4は、マスク基板MS上に位相欠陥PDが形成されている状態を示す断面図である。図4に示すように、マスク基板MS上に多層膜MLFを被着させる際、マスク基板MS上に微細な窪みが存在したまま多層膜MLFを形成すると、多層膜MLFを形成したマスク基板MSに凹形状の位相欠陥PDが発生してしまうことがわかる。この位相欠陥PDを残したままバッファ層BUFと吸収体ABSを形成してマスクMを製造すると、例えば、図5に示すように、隣接する吸収体ABSの間に位相欠陥PDが残存する場合がある。図5は、位相欠陥PDが吸収体ABSの間の反射領域に残存する場合を示す断面図である。
【0038】
図5に示すように、反射領域に位相欠陥PDが存在する場合、露光光に使用するEUV光の波長は13.5nm程度であるので、わずか数nmの微細な位相欠陥PDでも、この位相欠陥PDでEUV光が反射されると、反射されたEUV光に対して大きな位相変化を与える。つまり、EUV光から見ると、わずか数nmの微細な位相欠陥PDも無視できる程度のものではなく、微細な位相欠陥PDによる位相変化や乱反射によって、本来充分な反射光が得られるはずの領域の光強度が低下し、あたかも吸収体ABSが存在して反射光が吸収されている状態と同じ状態になってしまうおそれがある。すなわち、吸収体ABSが形成されていないマスク基板MS(マスクブランク)の反射領域にわずか数nmの微細な位相欠陥PDが存在すると、その微細な位相欠陥PDがあたかも吸収体ABSのように機能し、正常な転写パターンが形成できなくなってしまうおそれがある。したがって、EUVL用マスクでは、吸収体ABSを形成する前のマスク基板MS(マスクブランク)の段階で、マスク基板MS(マスクブランク)にわずか数nmの微細な位相欠陥PDが存在するか否かを検査する必要がある。
【0039】
まず、マスク基板MSに存在する数nm程度の位相欠陥を検出する方法として、露光光としても使用しているEUV光を検査光として使用することが考えられる。つまり、波長が13.5nm程度のEUV光で、高さが数nm程度の位相欠陥が問題となることから、このEUV光を検査光として使用することにより高感度で位相欠陥を検出することができると考えられる。しかし、EUV光を検査光として使用する場合、以下に示すような問題点が存在する。すなわち、EUV光の波長域では、EUV光に対して透明な物質が存在しない。このため、EUV光を使用した検査では、検査光のEUV光源と多層膜反射面を採用した真空チャンバ内の検査光学系を使用する必要が生じる。ところが、検査光のEUV光源と多層膜反射面を採用した真空チャンバ内の検査光学系はいずれも取り扱いが難しいという課題が存在する。
【0040】
これに対し、検査光としてDUV光(波長180nm〜210nm程度)を使用することが考えられる。このDUV光を使用した検査方法は、量産装置としての完成度が高く、大気中でのレンズを使用した検査光学系を使用できるため、マスク基板の有効な検査方法と考えられる。しかし、DUV光の波長(180nm〜210nm)は、検出すべき位相欠陥の凹凸に比べて約2桁長いので、数nm程度の高さを有する位相欠陥を高感度に検出することが難しい。
【0041】
そこで、本願発明では、量産装置としての完成度が高く、大気中でのレンズを使用した検査光学系を使用できて取り扱いが容易であるというDUV光を使用した検査方法を採用することを前提とし、DUV光を使用した検査方法であっても、数nm程度の高さを有する位相欠陥の検出感度を向上できる工夫を施している。以下に、この工夫を施したマスクブランクス(マスク基板)の検査方法について説明する。
【0042】
まず、DUV光を使用した検査方法であっても、DUV光の波長よりも2桁程度小さい高さの微細な位相欠陥を高感度に検出できる知見について説明する。図6は、DUV光を検査光とする検査装置において、マスクブランクス(マスク基板)に存在する欠陥画像を取り込む検査光学系を示す構成図である。図6に示すように、この検査光学系は、光源ILS、ビームスプリッタBSP、対物レンズOBL、マスクブランクMB、および、画像検出器SEを備えている。光源ILSは、波長が180nm〜210nm程度のDUV光を射出することができるように構成されており、この光源ILSから射出されたDUV光BM1は、ビームスプリッタBSPに入射される。そして、ビームスプリッタBSPに入射されたDUV光BM1は、ビームスプリッタBSPで折り曲げられ、対物レンズOBLを通してマスクブランクMBの所定領域に照射される。このとき、マスクブランクMBには多層膜が形成されており、多層膜が形成されているマスクブランクMBの面にDUV光BM1が照射される。すなわち、図6において、マスクブランクMBの下面に多層膜が形成されている。マスクブランクMBに照射されたDUV光BM1は反射し、反射したDUV光BM2は対物レンズOBLで集められるとともに、ビームスプリッタBSPを透過する。ビームスプリッタBSPを透過したDUV光BM2は、画像検出器SEの受光面に照射される。このとき、画像検出器SEの受光面にマスクブランクMBの表面の拡大検査像が結像されるように画像検出器SEの位置が調整されている。つまり、マスクブランクMBの表面と、画像検出器SEの受光面とは、対物レンズOBLを介して共役の位置関係にあることになる。このようにして、マスクブランクMBの表面の拡大検査像を画像検出器SEで受光することができる。この場合、画像検出器SEで受光された拡大検査像を解析することにより、マスクブランクMB上に形成されている位相欠陥を検出できると考えられる。しかし、実際には、画像検出器SEの受光面にマスクブランクMBの表面の拡大検査像を結像させるだけでは、微細な位相欠陥による光強度変化はわずかであり、この位相欠陥を検出することは困難である。
【0043】
そこで、本発明者は、画像検出器SEの受光面にマスクブランクMBの表面の拡大検査像を結像させるのではなく、マスクブランクMBの表面と画像検出器SEの受光面との位置関係をデフォーカス状態にすることにより、微細な位相欠陥の光強度分布を変化させることができるのではないかという発想に基づいて、画像検出器SEの受光面に形成される拡大検査像の光強度分布をシミュレーション解析した。このシミュレーション解析の結果について説明する。
【0044】
図7は、マスクブランクに形成された多層膜MLF上に凹形状の位相欠陥PD1が存在する場合において、マスクブランクの表面を対物レンズの光軸方向にずらす量を変化させた際、画像検出器の受光面に形成されるそれぞれの拡大検査像の光強度分布をシミュレーション解析により求めた結果を示すグラフである。ここでは、凹形状の位相欠陥PD1の深さを2.2nm、半値全幅を60nmとしている。そして、対物レンズの開口数(NA)を0.75としている。また、照明光(DUV光)の干渉性の度合いを示すコヒーレンスファクタσの値を1.0と仮定している。コヒーレンスファクタσの値を1よりも小さくすると、照明光の干渉性は高くなり、欠陥などの像の強度変化は大きくなる傾向にある。
【0045】
図7の横軸は、マスクブランク上の位置(nm)を示しており、図7の縦軸は、拡大検査像の光強度を示している。
【0046】
ここで、図7においては、マスクブランクの位置がフォーカス位置から対物レンズの光軸方向に沿ってシフトする量、すなわち、デフォーカス量を、−400nm、−200nm、0nm、+200nm、+400nmに設定したときに得られる拡大検査像の光強度分布をそれぞれ、曲線1−1、曲線1−2、曲線1−3、曲線1−4、曲線1−5で示している。このとき、本明細書では、デフォーカス量が+という場合は光路長が長くなる方向へのシフトをいい、デフォーカス量が−という場合は光路長が短くなる方向へのシフトをいうものとする。
【0047】
図7の曲線1−3に示すように、デフォーカス量を0nmとした場合、すなわち、マスクブランクと画像検出器の位置関係がフォーカス状態にある場合、位相欠陥PD1に対応する光強度は、周囲の光強度に比べてわずかに暗くなっていることがわかる。これは、位相欠陥PD1にDUV光が照射された際、位相欠陥PD1の凹形状によってDUV光が乱反射されることにより、位相欠陥PD1に対応する光強度が低くなったものと考えることができる。しかし、この光強度の変化は、周囲の光強度とくらべてわずかに暗くなる程度であり、この光強度変化を検出することにより、位相欠陥PD1を検出することは困難であると考えられる。
【0048】
一方、−200nmや−400nmといった負のデフォーカス量に対しては、曲線1−1や曲線1−2に示すように、位相欠陥PD1に対応した光強度が、周辺部の光強度に比べて大きくなっていることがわかる。そして、この場合の光強度の変化量は、デフォーカス量を0nmとした場合の光強度の変化量よりも大きくなっている。つまり、マスクブランクと画像検出器の位置関係を負のデフォーカス状態とすると、位相欠陥PD1の光強度変化が、マスクブランクと画像検出器の位置関係をフォーカス状態とする場合よりも大きくなるとともに、光強度が減少する方向に変化するのではなく、光強度が増加する方向に変化することがわかる。
【0049】
さらに、+200nmや+400nmといった正のデフォーカス量に対しては、曲線1−4や曲線1−5に示すように、位相欠陥PD1に対応した光強度が、周辺部の光強度に比べて小さくなっていることがわかる。この場合の光強度の変化量は、デフォーカス量を0nmとした場合の光強度の変化量よりも大きくなっている。つまり、マスクブランクと画像検出器の位置関係を正のデフォーカス状態とすると、マスクブランクと画像検出器の位置関係をフォーカス状態とする場合と同じく位相欠陥PD1に対応した光強度は減少するが、その光強度の変化量は、マスクブランクと画像検出器の位置関係をフォーカス状態とする場合よりも大きくなることがわかる。
【0050】
続いて、図8は、マスクブランクに形成された多層膜MLF上に凸形状の位相欠陥PD2が存在する場合において、マスクブランクの表面を対物レンズの光軸方向にずらす量を変化させた際、画像検出器の受光面に形成されるそれぞれの拡大検査像の光強度分布をシミュレーション解析により求めた結果を示すグラフである。ここでは、凸形状の位相欠陥PD2の高さを2.2nm、半値全幅を60nmとしている。そして、対物レンズの開口数(NA)を0.75としている。また、照明光(DUV光)の干渉性の度合いを示すコヒーレンスファクタσの値を1.0と仮定している。コヒーレンスファクタσの値を1よりも小さくすると、照明光の干渉性は高くなり、欠陥などの像の強度変化は大きくなる傾向にある。
【0051】
図8の横軸は、マスクブランク上の位置(nm)を示しており、図8の縦軸は、拡大検査像の光強度を示している。
【0052】
ここで、図8においては、マスクブランクの位置がフォーカス位置から対物レンズの光軸方向に沿ってシフトする量、すなわち、デフォーカス量を、+400nm、+200nm、0nm、−200nm、−400nmに設定したときに得られる拡大検査像の光強度分布をそれぞれ、曲線2−1、曲線2−2、曲線2−3、曲線2−4、曲線2−5で示している。このとき、本明細書では、デフォーカス量が+(正)という場合は光路長が長くなる方向へのシフトをいい、デフォーカス量が−(負)という場合は光路長が短くなる方向へのシフトをいうものとする。
【0053】
図8の曲線2−3に示すように、デフォーカス量を0nmとした場合、すなわち、マスクブランクと画像検出器の位置関係がフォーカス状態にある場合、位相欠陥PD2に対応する光強度は、周囲の光強度に比べてわずかに暗くなっていることがわかる。これは、位相欠陥PD2にDUV光が照射された際、位相欠陥PD2の凸形状によってDUV光が乱反射されることにより、位相欠陥PD2に対応する光強度が低くなったものと考えることができる。しかし、この光強度の変化は、周囲の光強度とくらべてわずかに暗くなる程度であり、この光強度変化を検出することにより、位相欠陥PD2を検出することは困難であると考えられる。
【0054】
一方、+200nmや+400nmといった正のデフォーカス量に対しては、曲線2−1や曲線2−2に示すように、位相欠陥PD2に対応した光強度が、周辺部の光強度に比べて大きくなっていることがわかる。そして、この場合の光強度の変化量は、デフォーカス量を0nmとした場合の光強度の変化量よりも小さいが、光強度が減少する方向に変化するのではなく、光強度が増加する方向に変化することがわかる。
【0055】
さらに、−200nmや−400nmといった負のデフォーカス量に対しては、曲線2−4や曲線2−5に示すように、位相欠陥PD2に対応した光強度が、周辺部の光強度に比べて小さくなっていることがわかる。この場合の光強度の変化量は、デフォーカス量を0nmとした場合の光強度の変化量よりも大きくなっている。つまり、マスクブランクと画像検出器の位置関係を負のデフォーカス状態とすると、マスクブランクと画像検出器の位置関係をフォーカス状態とする場合と同じく位相欠陥PD2に対応した光強度は減少するが、その光強度の変化量は、マスクブランクと画像検出器の位置関係をフォーカス状態とする場合よりも大きくなることがわかる。
【0056】
以上のことから、上述したシミュレーション解析により、以下に示す知見が得られる。
【0057】
(1)画像検出器の受光面にマスクブランクの表面の拡大検査像を結像させるのではなく、マスクブランクの表面と画像検出器の受光面との位置関係をデフォーカス状態にすることにより、微細な位相欠陥に対応した光強度を周辺部に対応した光強度から大きく変化させることができる。
【0058】
(2)正のデフォーカス状態と負のデフォーカス状態では、位相欠陥に対応する光強度変化が逆方向となるので、正のデフォーカス状態での位相欠陥に対応する光強度と、負のデフォーカス状態での位相欠陥に対応する光強度との差をとれば、さらに、大きな光強度差を得ることができる。
【0059】
(3)凹形状の位相欠陥では、マスクブランクの表面と画像検出器の受光面との位置関係を負のデフォーカス状態にすると、凹形状の位相欠陥に対応した光強度が周辺部よりも明るくなるように変化する一方、マスクブランクの表面と画像検出器の受光面との位置関係を正のデフォーカス状態にすると、凹形状の位相欠陥に対応した光強度が周辺部よりも暗くなるように変化する。これに対し、凸形状の位相欠陥では、マスクブランクの表面と画像検出器の受光面との位置関係を正のデフォーカス状態にすると、凸形状の位相欠陥に対応した光強度が周辺部よりも明るくなるように変化する一方、マスクブランクの表面と画像検出器の受光面との位置関係を負のデフォーカス状態にすると、凸形状の位相欠陥に対応した光強度が周辺部よりも暗くなるように変化する。つまり、位相欠陥に対応する光強度の明暗のデフォーカス依存性は、凹形状の位相欠陥と凸形状の位相欠陥で逆になる。
【0060】
次に、上述した知見を具現化した本実施の形態1におけるマスクブランクの検査方法について図面を参照しながら説明する。まず、本実施の形態1におけるマスクブランクの検査方法を実現する検査装置の構成について説明する。図9は、本実施の形態1におけるマスクブランクの検査方法に使用する検査装置の構成を示す図である。図9に示すように、本実施の形態1における検査装置の投光系は、まず、光源ILS、レンズL1、レンズL2、絞り(アパーチャ)AP1、ビームスプリッタBSP、対物レンズOBL、および、欠陥検査の対象となるマスクブランクMBを備えている。
【0061】
光源ILSは、波長が180nm〜210nm程度のDUV光を射出することができるように構成されており、この光源ILSから射出されたDUV光BM1は、レンズL1、絞りAP1、レンズL2を透過し、ビームスプリッタBSPで折り曲げられた後、対物レンズOBLを透過してマスクブランクMB上の所定領域ILAに照射される。これにより、絞りAP1に形成されている2つの開口部をマスクブランクMBの所定領域ILA内の検査光照射領域11、12に像として投影することができる。このとき、マスクブランクMBには多層膜が形成されており、多層膜が形成されているマスクブランクMBの面にDUV光BM1が照射される。すなわち、図9において、マスクブランクMBの下面に多層膜が形成されている。マスクブランクMBに照射されたDUV光BM1は反射し、反射したDUV光BM2は対物レンズOBLで集められるとともに、ビームスプリッタBSPを透過する。ビームスプリッタBSPを透過したDUV光BM2は、投影領域PRAに集光する。つまり、マスクブランクMB上の所定領域ILAは、対物レンズOBLの投影可能領域であり、この所定領域ILA内で反射したDUV光BM2は、対物レンズOBLおよびビームスプリッタBSPを透過して、対物レンズOBLの結像面である投影領域PRAに集光する。したがって、マスクブランクMB上の検査光照射領域11および検査光照射領域12は、投影領域PRA内に拡大検査像13および拡大検査像14として分離して投影される。このとき、例えば、マスクブランクMB上の検査光照射領域11が投影領域PRA内の拡大検査像13に対応し、マスクブランクMB上の検査光照射領域12が投影領域PRA内の拡大検査像14に対応する。
【0062】
さらに、本実施の形態1における検査装置の受光系は、ミラー15、レンズL3、レンズL4、第1画像検出器SE1および第2画像検出器SE2を備えている。そして、上述した投影領域PRA内の拡大検査像14を構成する光束はミラー15によって折り曲げられ、この折り曲げられた光束は、レンズL3を介して第1画像検出器SE1の受光面上に拡大検査像を形成するように、ミラー15、レンズL3および第1画像検出器SE1が配置されている。ただし、図9に示すように、第1画像検出器SE1は、レンズL3の結像面16よりも光路長がXL1だけ短い位置に配置されている。このとき、レンズL3の結像面16は、拡大検査像14と共役の関係にある。したがって、検査光照射領域12と、拡大検査像14と、結像面16とは互いに共役の関係にあることになる。
【0063】
一方、投影領域PRA内の拡大検査像13を構成する光束は、レンズL4を介して第2画像検出器SE2の受光面上に拡大検査像を形成するように、レンズL4および第2画像検出器SE2が配置されている。ただし、図9に示すように、第2画像検出器SE2は、レンズL4の結像面17よりも光路長がXL2だけ長い位置に配置されている。このとき、レンズL4の結像面17は、拡大検査像13と共役の関係にある。したがって、検査光照射領域11と、拡大検査像13と、結像面17とは互いに共役の関係にあることになる。
【0064】
このように第1画像検出器SE1をレンズL3の結像面16よりも光路長がXL1だけ短い位置に配置することにより、マスクブランクMB上の検査光照射領域12の拡大検査像を負のデフォーカス状態で収集することができる。これに対し、第2画像検出器SE2をレンズL4の結像面17よりも光路長がXL2だけ長い位置に配置することにより、マスクブランクMB上の検査光照射領域11の拡大検査像を正のデフォーカス状態で収集することができる。したがって、本実施の形態1における検査装置では、マスクブランクMB上の隣接する検査光照射領域11および検査光照射領域12のそれぞれの拡大検査像を、互いに異符号のデフォーカス状態で収集することができる。なお、第1画像検出器SE1および第2画像検出器SE2は、配置位置を変更できるように構成されている。
【0065】
さらに、第1画像検出器SE1および第2画像検出器SE2は、制御回路CNTと接続されており、制御回路CNTを構成するCPU1およびメモリ2によってデータが収集されるように構成されている。具体的に、第1画像検出器SE1から第1検査画像データが収集され、第2画像検出器SE2から第2検査画像データが収集される。そして、本実施の形態1における検査装置では、収集された第1検査画像データの光強度と第2検査画像データの光強度の差分を取ることにより、光強度差データが算出されるように構成されている。
【0066】
ここで、本実施の形態1における検査装置では、図9に示すように、マスクブランクMB上の検査光照射領域12の拡大検査像を第1画像検出器SE1で収集しているが、第1画像検出器SE1の受光面がレンズL3の結像面よりも対物レンズOBLに近い位置に配置されている。すなわち、マスクブランクMBの表面(検査光照射領域12)と第1画像検出器SE1の位置関係がデフォーカス状態となっている。同様に、本実施の形態1における検査装置では、図9に示すように、マスクブランクMB上の検査光照射領域11の拡大検査像を第2画像検出器SE2で収集しているが、第2画像検出器SE2の受光面がレンズL4の結像面よりも対物レンズOBLから遠い位置に配置されている。すなわち、マスクブランクMBの表面(検査光照射領域11)と第2画像検出器SE2の位置関係がデフォーカス状態となっている。そして、本実施の形態1では、デフォーカス状態で第1画像検出器SE1から第1検査画像データを収集し、かつ、デフォーカス状態で第2画像検出器SE2から第2検査画像データを収集している。したがって、本実施の形態1における検査装置では、画像検出器(第1画像検出器SE1、第2画像検出器SE2)の受光面にマスクブランクMBの表面の拡大検査像を結像させるのではなく、マスクブランクMBの表面と画像検出器(第1画像検出器SE1、第2画像検出器SE2)の受光面との位置関係をデフォーカス状態にすることにより、微細な位相欠陥に対応した光強度を周辺部に対応した光強度から大きく変化させることができるという知見(1)を具現化していることがわかる。
【0067】
さらに、本実施の形態1における検査装置では、マスクブランクMBの表面(検査光照射領域12)と第1画像検出器SE1の位置関係が負のデフォーカス状態となっている一方、マスクブランクMBの表面(検査光照射領域11)と第2画像検出器SE2の位置関係が正のデフォーカス状態となっている。そして、負のデフォーカス状態となっている第1画像検出器SE1からの第1検査画像データ(光強度)と、正のデフォーカス状態となっている第2画像検出器SE2からの第2検査画像データ(光強度)の差分から光強度差データを算出している。このことから、正のデフォーカス状態と負のデフォーカス状態では、位相欠陥に対応する光強度変化が逆方向となるので、正のデフォーカス状態での位相欠陥に対応する光強度と、負のデフォーカス状態での位相欠陥に対応する光強度との差をとれば、さらに、大きな光強度差を得ることができるという知見(2)も本実施の形態1における検査装置では具現化されている。
【0068】
また、本実施の形態1では、上述した光強度差データだけでなく、負のデフォーカス状態となっている第1画像検出器SE1からの第1検査画像データ(光強度)自体も保持し、かつ、正のデフォーカス状態となっている第2画像検出器SE2からの第2検査画像データ(光強度)も保持している。このため、本実施の形態1における検査装置によれば、位相欠陥に対応する光強度の明暗のデフォーカス依存性が凹形状の位相欠陥と凸形状の位相欠陥で逆になるという知見(3)も実現することができる。
【0069】
例えば、凹形状の位相欠陥では、マスクブランクの表面と画像検出器の受光面との位置関係を負のデフォーカス状態にすると、凹形状の位相欠陥に対応した光強度が周辺部よりも明るくなるように変化する一方、マスクブランクの表面と画像検出器の受光面との位置関係を正のデフォーカス状態にすると、凹形状の位相欠陥に対応した光強度が周辺部よりも暗くなるように変化する。したがって、負のデフォーカス状態にある第1画像検出器SE1からの第1検査画像データに特定の位相欠陥に対応した光強度が周辺部よりも明るくなるように変化するデータが存在し、かつ、正のデフォーカス状態にある第2画像検出器SE2からの第2検査画像データに特定の位相欠陥に対応した光強度が周辺部よりも暗くなるように変化するデータが存在する場合、この位相欠陥は凹形状の位相欠陥であると判別することができる。
【0070】
同様に、凸形状の位相欠陥では、マスクブランクの表面と画像検出器の受光面との位置関係を正のデフォーカス状態にすると、凸形状の位相欠陥に対応した光強度が周辺部よりも明るくなるように変化する一方、マスクブランクの表面と画像検出器の受光面との位置関係を負のデフォーカス状態にすると、凸形状の位相欠陥に対応した光強度が周辺部よりも暗くなるように変化する。したがって、負のデフォーカス状態にある第1画像検出器SE1からの第1検査画像データに特定の位相欠陥に対応した光強度が周辺部よりも暗くなるように変化するデータが存在し、かつ、正のデフォーカス状態にある第2画像検出器SE2からの第2検査画像データに特定の位相欠陥に対応した光強度が周辺部よりも明るくなるように変化するデータが存在する場合、この位相欠陥は凸形状の位相欠陥であると判別することができる。
【0071】
以上のことから、本実施の形態1における検査装置の構成は、上述した知見(1)〜(3)を具現化するために必要な構成となっており、本実施の形態1における検査装置によれば、上述した知見(1)〜(3)を実際に具現化できることがわかる。
【0072】
ここで、本実施の形態1では、第1画像検出器SE1および第2画像検出器SE2の配置位置を移動させる構成を取っていることにより、マスクブランクMBの表面(検査光照射領域12)と第1画像検出器SE1の位置関係を負のデフォーカス状態とすることができるとともに、マスクブランクMBの表面(検査光照射領域11)と第2画像検出器SE2の位置関係を正のデフォーカス状態とすることができる。
【0073】
例えば、上述したシミュレーション解析においては、画像検出器ではなくマスクブランクの位置をずらすことによりデフォーカス状態を実現していたが、マスクブランクの位置をずらす方法でデフォーカス状態を形成する場合、1つのマスクブランクに形成されている検査光照射領域11と検査光照射領域12は同じ方向にずれることになる。つまり、画像検出器の位置を結像面に固定し、マスクブランクの位置をずらすことによってデフォーカス状態を形成する方法では、マスクブランクMBの表面(検査光照射領域12)と第1画像検出器SE1の位置関係を負のデフォーカス状態とすると、マスクブランクMBの表面(検査光照射領域11)と第2画像検出器SE2の位置関係も負のデフォーカス状態となってしまう。つまり、画像検出器の位置を結像面に固定し、マスクブランクの位置をずらすことによってデフォーカス状態を形成する方法では、マスクブランクMBの表面(検査光照射領域12)と第1画像検出器SE1の位置関係を負のデフォーカス状態とすることができるとともに、マスクブランクMBの表面(検査光照射領域11)と第2画像検出器SE2の位置関係を正のデフォーカス状態とすることが実現できないのである。
【0074】
これに対し、本実施の形態1のように、マスクブランクMBを固定し、第1画像検出器SE1および第2画像検出器SE2の配置位置をそれぞれ別方向に移動させる構成を取る場合、マスクブランクMBの表面(検査光照射領域12)と第1画像検出器SE1の位置関係を負のデフォーカス状態とすることができるとともに、マスクブランクMBの表面(検査光照射領域11)と第2画像検出器SE2の位置関係を正のデフォーカス状態とすることができる。
【0075】
また、本実施の形態1のように、マスクブランクMBを固定し、第1画像検出器SE1および第2画像検出器SE2の配置位置をそれぞれ別方向に移動させる構成を取る場合は、さらなる利点がある。例えば、シミュレーション解析で説明したように、マスクブランクMBと画像検出器(第1画像検出器SE1、第2画像検出器SE2)の位置関係を、位相欠陥の光強度を大きくするデフォーカス状態にするために、マスクブランクを移動させる場合、数百nmの精度でマスクブランクを移動させる必要があり、これを実現することは困難である。一方、第1画像検出器SE1や第2画像検出器SE2を移動させる場合、例えば、第1画像検出器SE1の移動量をXL1、第2画像検出器SE2の移動量をXL2とし、対物レンズOBLとレンズL3の倍率の積(数百倍)や対物レンズOBLとレンズL4の倍率の積(数百倍)を考慮すると、XL1/(倍率)やXL2/(倍率)がマスクブランクMB上のデフォーカス量になる。したがって、マスクブランクMBのデフォーカス量を数百nmとする場合でも、第1画像検出器SE1の移動量であるXL1や第2画像検出器SE2の移動量であるXL2は数十mmのオーダとなる。このことから、本実施の形態1のように、第1画像検出器SE1や第2画像検出器SE2を動かす構成では、位相欠陥の光強度を大きくするデフォーカス状態を容易に実現できる利点があるのである。
【0076】
本実施の形態1における検査装置は上記のように構成されており、以下に、この検査装置を使用したマスクブランクの検査方法について図面を参照しながら説明する。本実施の形態1におけるマスクブランクの検査方法は、上述した検査装置の動作を説明することにより明らかにされる。
【0077】
まず、マスクブランクMBの全面にわたって検査光照射領域11および検査光照射領域12を走査する方法について説明する。図10は、本実施の形態1において、マスクブランクMB上にわたって検査光照射領域11および検査光照射領域12を走査する様子を示す図である。図10に示すように、マスクブランクMBの検査領域を幅200μm程度の細長い短冊状の検査ストライプSP1に分割する。そして、1つの検査ストライプSP1内を検査光照射領域11および検査光照射領域12が移動するように、マスクブランクMBを搭載したステージが走査制御される。具体的に、図10では、1つの検査ストライプSP1内を検査光照射領域11および検査光照射領域12が左側から右側に向って移動するようにマスクブランクMBを搭載したステージは制御される。これにより、1つの検査ストライプSP1の領域内で検査光照射領域11および検査光照射領域12を走査することができる。そして、1つの検査ストライプSP1内で検査光照射領域11および検査光照射領域12の走査が完了すると、同様にして、順次、次の検査ストライプの領域内で検査光照射領域11および検査光照射領域12を走査させる。このようにして、マスクブランクMBの検査領域全体に検査光照射領域11および検査光照射領域12を走査させることができる。
【0078】
ここで、図9に示すように、1つの検査ストライプSP1の領域内の検査光照射領域11に照射されたDUV光は、対物レンズOBLおよびレンズL4を透過して第2画像検出器SE2の受光面に入射する。つまり、検査光照射領域11に対応する拡大検査像IMA1が第2画像検出器SE2の受光面に正のデフォーカス状態で投影される。同様に、1つの検査ストライプSP1の領域内の検査光照射領域12に照射されたDUV光は、対物レンズOBLおよびレンズL3を透過して第1画像検出器SE1の受光面に入射する。つまり、検査光照射領域12に対応する拡大検査像IMA2が第1画像検出器SE1の受光面に負のデフォーカス状態で投影される。
【0079】
このとき、図10に示すように、拡大検査像IMA1は、複数の画素PIX1における光強度として第2画像検出器SE2に取り込まれる。つまり、第2画像検出器SE2は、複数の画素PIX1を備えており、この複数の画素PIX1単位で拡大検査像IMA1の光強度を取り込むように構成されている。同様に、拡大検査像IMA2は、複数の画素PIX2における光強度として第1画像検出器SE1に取り込まれる。つまり、第1画像検出器SE1は、複数の画素PIX2を備えており、この複数の画素PIX2単位で拡大検査像IMA2の光強度を取り込むように構成されている。この第1画像検出器SE1および第2画像検出器SE2は、例えば、TDI(Time Delay Integration)センサから構成されている。このTDIセンサは、マスクブランクMBを搭載しているステージの走査と同期して電荷を転送するように構成されているセンサである。以上のようにして、マスクブランクMB上の検査光照射領域11は拡大検査像IMA1として第2画像検出器SE2の受光面に正のデフォーカス状態で投影され、投影された拡大検査像IMA1は、第2画像検出器SE2を構成するTDIセンサに取り込まれて、第2検査画像データとして記憶される。同様に、マスクブランクMB上の検査光照射領域12は拡大検査像IMA2として第1画像検出器SE1の受光面に負のデフォーカス状態で投影され、投影された拡大検査像IMA2は、第1画像検出器SE1を構成するTDIセンサに取り込まれて、第1検査画像データとして記憶される。
【0080】
図11は、検査光照射領域11および検査光照射領域12を1つの検査ストライプSP1の検査領域内で移動させる様子を示す図である。図11に示すように、T1で示される状態は、マスクブランクMBを搭載しているステージの走査を開始し、検査ストライプSP1の左端が検査光照射領域12にさしかかる直前の状態を示している。そして、T2で示される状態は、ステージの走査が進み、検査ストライプSP1の左端が検査光照射領域11にさしかかる直前の状態を示している。さらに、T3で示される状態は、ステージの走査が終了する状態であり、検査ストライプSP1の右端を検査光照射領域11が超えた状態を示している。このようにして、マスクブランクMBが搭載されたステージを走査させることにより、1つの検査ストライプSP1の検査領域内にわたって検査光照射領域11および検査光照射領域12を移動させることができる。
【0081】
続いて、1つの検査ストライプでの処理工程を図12に示すタイムチャートを使用して説明する。図12は、本実施の形態1における検査装置において、1つの検査ストライプでの処理工程を説明するためのタイムチャートである。図9、図10および図12において、まず、時刻t1でマスクブランクMBの走査を開始するとともに、第1画像検出器SE1および第2画像検出器SE2をスタンバイ状態にする。そして、時刻t2において、検査光照射領域12が検査ストライプSP1の左端に差し掛かると、ステージの位置と第1画像検出器SE1で捉える拡大検査像IMA2との位置関係を記憶するとともに、制御回路CNTにあるCPU1の制御に基づいて、第1画像検出器SE1の受光面に投影される拡大検査像IMA2を第1検査画像データとして取り込み、取り込んだ第1検査画像データを第1メモリ(メモリ2の一部)に記憶する。
【0082】
次に、時刻t3において、検査光照射領域11が検査ストライプSP1の左端に差し掛かると、ステージの位置と第2画像検出器SE2で捉える拡大検査像IMA1との位置関係を記憶するとともに、制御回路CNTにあるCPU1の制御に基づいて、第2画像検出器SE2の受光面に投影される拡大検査像IMA1を第2検査画像データとして取り込み、取り込んだ第2検査画像データを第2メモリ(メモリ2の一部)に記憶する。
【0083】
そして、検査ストライプSP1の全領域にわたって第1検査画像データの取り込みと第2検査画像データの取り込みを連続して行なった後、時刻t4で第1画像検出器SE1による第1検査画像データの取り込みを終了し、時刻t5で第2画像検出器SE2による第2検査画像データの取り込みを終了する。以上のようにして時刻t2〜時刻t5にかけて1ストライプ(1つの検査ストライプSP1)での第1検査画像データおよび第2検査画像データの取り込みが行なわれる。そして、時刻t6において、マスクブランクMBの走査を終了し、次の検査ストライプへの移行に備える。
【0084】
ここで、時刻t3から時刻t5の間では、第2画像検出器SE2で捉える第2検査画像データを第2メモリに取り込むとともに、第1メモリから先に記憶している第1画像検出器SE1で捉えた第1検査画像データを順次読み出す。そして、マスクブランクMBの同一位置(同一場所)における第1検査画像データと第2検査画像データの光強度の差分を演算することにより、光強度差データ(絶対値)を算出する。
【0085】
第1検査画像データと第2検査画像データとは、互いに異符号のデフォーカス状態で収集されたデータであるので、位相欠陥が存在すると、例えば、図7や図8に示したように、位相欠陥に対応する光強度は、一方が周辺部よりも暗くなり、他方が周辺部よりも明るくなる。したがって、第1検査画像データと第2検査画像データの光強度の差分を演算して光強度差データを算出し、算出した光強度差データの絶対値が、予め設定されている所定のしきい値を超えると、位相欠陥が存在すると判断される。このようにして、1つの検査ストライプSP1に存在する位相欠陥を検出することができる。
【0086】
本実施の形態1におけるマスクブランクの検査方法は上述した通りであり、以下に、本実施の形態1におけるマスクブランクの検査方法を改めてフローチャートを用いて説明する。図13は、本実施の形態1におけるマスクブランクの検査方法の流れを示すフローチャートである。まず、図13に示すように、マスクブランクMBの検査領域内において、最初に検査する検査ストライプSP1を指定する(S101)。その後、マスクブランクMBを搭載したステージの走査を開始する(S102)。
【0087】
次に、DUV光が照射される検査光照射領域12が検査ストライプSP1内に入ると、第1画像検出器SE1で第1検査画像データの取り込みを行なうとともに、取り込んだ第1検査画像データを第1メモリに記憶する(S103)。続いて、マスクブランクMBの継続的な走査により、DUV光が照射される検査光照射領域11が検査ストライプSP1内に入ると、第2画像検出器SE2で第2検査画像データの取り込みを行なうとともに、取り込んだ第2検査画像データを第2メモリに記憶する。さらに、第1メモリから第1画像検出器SE1で収集した第1検査画像データを順次読み出す(S104)。
【0088】
その後、マスクブランクMBの同一領域における第1検査画像データと第2検査画像データとを比較する。この比較は、同一位置に対応する画素ごとに行われる。そして、同一領域における第1検査画像データと第2検査画像データの光強度の差分を演算することにより、光強度差データ(絶対値)を算出する(S105)。
【0089】
続いて、算出した光強度差データの絶対値と予め設定されているしきい値と比較し(S106)、光強度差データがしきい値よりも小さい場合は、位相欠陥が存在しないものと判断してステップS108へ移行する。一方、光強度差データの絶対値がしきい値を超えている画素が存在する場合、位相欠陥が存在すると判断して、欠陥情報(欠陥サイズや欠陥位置や欠陥形状など)の表示や記憶を行なう(S107)。例えば、位相欠陥の存在する座標は、適宜、マスクブランクMBに設けたマークや、吸収体を形成したマスクにおいては、所定の吸収体パターンの位置を基準として定めることができる。なお、複数の連続した画素にわたって、光強度差データの絶対値がしきい値を越える場合は、欠陥サイズや欠陥の輪郭を把握することができる。
【0090】
さらに、本実施の形態1では、第1検査画像データ自体や第2検査画像データ自体も記憶しているので、第1検査画像データと第2検査画像データとの間の光強度の大小関係から、凹形状の位相欠陥であるのか、あるいは、凸形状の位相欠陥であるのかも判断することができる。つまり、位相欠陥に対応する光強度の明暗のデフォーカス依存性は、凹形状の位相欠陥と凸形状の位相欠陥で逆になることから、第1検査画像データ自体と第2検査画像データ自体を解析することにより欠陥形状も把握することができる。
【0091】
そして、1つの検査ストライプSP1(1ストライプ)上での処理がすべて終了したかを判断し(S108)、未終了であれば、S103に戻り、1つの検査ストライプSP1内での検査を継続する。一方、1つの検査ストライプSP1での処理がすべて終了した場合には、全ストライプの欠陥検査が終了したかを判断する(S109)。全ストライプの欠陥検査が終了していない場合には、新たな検査ストライプを指定し(S110)、マスクブランクMBを指定したストライプのスタート位置に配置し、欠陥検査を繰り返す。一方、全ストライプの欠陥検査が終了すると、マスクブランクMBの欠陥検査は終了する。このようにして、本実施の形態1におけるマスクブランクの検査方法を実施することができる。
【0092】
以上のことから、本実施の形態1におけるマスクブランクの検査方法によれば、量産装置としての完成度が高く、かつ、大気中でのレンズを使用した検査光学系を使用できるDUV光を使用したマスクブランクの検査方法においても、わずか数nmの微細な凹凸欠陥(位相欠陥)を高感度に検出できる。つまり、本実施の形態1によれば、DUV光を用いることができるので、量産装置としての完成度が高く、かつ、大気中でのレンズを使用した検査光学系を使用できる。この結果、取り扱いの容易な既存の検査装置を使用して、EUVL用のマスクブランクに存在する位相欠陥を検査することができる。そして、本実施の形態1では、上述した知見(1)〜(3)を具現化しているので、DUV光を使用しても、DUV光の波長よりも2桁程度小さな凹凸を有する位相欠陥でも高感度で検出できるという顕著な効果を得ることができる。
【0093】
なお、本実施の形態1では、図9に示すように、第1画像検出器SE1および第2画像検出器SE2の位置を調整することにより、マスクブランクMBとの間でデフォーカス状態を実現しているので、以下に示す利点も得られる。つまり、本実施の形態1では、デフォーカス状態で位相欠陥の画像データを収集することにより、位相欠陥の検出感度を向上させる点に特徴があるが、位相欠陥のサイズによって、検出感度が向上するデフォーカス量は異なると考えられる。したがって、第1画像検出器SE1および第2画像検出器SE2の位置を調整することによりデフォーカス状態を実現する構成では、ターゲットとする位相欠陥のサイズによって、第1画像検出器SE1や第2画像検出器SE2でのデフォーカス量を容易に調整することができるので、ターゲットとなる位相欠陥を最適な状態で検査できる利点が得られる。
【0094】
さらに、照明光の干渉性の度合いを示すコヒーレンスファクタσの値を1よりも小さくすると、照明光の干渉性は高くなり、位相欠陥などの像の強度変化は大きくなる傾向がある。このため、本実施の形態1でも、絞りなどを工夫して、コヒーレンスファクタσを1よりも小さくする光学系を使用することにより、さらに、位相欠陥の検出感度を向上させることができる。
【0095】
本実施の形態1では、マスクブランクMBの検査方法について説明したが、本実施の形態1の技術的思想は、これに限らず、マスクブランクMB上に部分的に吸収体ABSが形成されたマスクMにおいても、吸収体ABSが除去されて多層膜反射面が露出しているマスクMの領域での欠陥検査に適用することができる。
【0096】
(実施の形態2)
前記実施の形態1では、第1画像検出器SE1および第2画像検出器SE2の配置位置を調整することにより、デフォーカス状態を実現する例について説明したが、本実施の形態2では、第1画像検出器SE1および第2画像検出器SE2の前にレンズを挿入することにより、デフォーカス状態を実現する例について説明する。
【0097】
図14は、本実施の形態2における検査装置の構成を示す図である。図14に示す本実施の形態2における検査装置の構成は、図9に示す前記実施の形態1における検査装置の構成とほぼ同様であるため、異なる点について説明する。
【0098】
図14に示すように、本実施の形態2では、レンズL3と第1画像検出器SE1との間に凹レンズCALが挿入されている。つまり、第1画像検出器SE1は、レンズL3の結像面16に受光面がくるように配置されているが、このレンズL3と第1画像検出器SE1の間に凹レンズCALが挿入されている。このため、レンズL3の結像面16は、凹レンズCALによって、第1画像検出器SE1の受光面よりも対物レンズOBLやレンズL3から遠い位置にずれた状態となる。したがって、第1画像検出器SE1は、受光位置よりも対物レンズOBLやレンズL3から遠い位置に拡大検査像14の結像面16が結像されたデフォーカス状態で拡大検査像を収集することになる。
【0099】
一方、本実施の形態2では、レンズL4と第2画像検出器SE2との間に凸レンズCVLが挿入されている。つまり、第2画像検出器SE2は、レンズL4の結像面17に受光面がくるように配置されているが、このレンズL4と第2画像検出器SE2の間に凸レンズCVLが挿入されている。このため、レンズL4の結像面17は、凸レンズCVLによって、第2画像検出器SE2の受光面よりも対物レンズOBLやレンズL4に近い位置にずれた状態となる。したがって、第2画像検出器SE2は、受光位置よりも対物レンズOBLやレンズL4に近い位置に拡大検査像13の結像面17が結像されたデフォーカス状態で拡大検査像を収集することになる。
【0100】
以上のことから、本実施の形態2におけるマスクブランクの検査方法でも、量産装置としての完成度が高く、かつ、大気中でのレンズを使用した検査光学系を使用できるDUV光を使用したマスクブランクの検査方法においても、わずか数nmの微細な凹凸欠陥(位相欠陥)を高感度に検出できる。つまり、本実施の形態2でも、DUV光を用いることができるので、量産装置としての完成度が高く、かつ、大気中でのレンズを使用した検査光学系を使用できる。この結果、取り扱いの容易な既存の検査装置を使用して、EUVL用のマスクブランクに存在する位相欠陥を検査することができる。そして、本実施の形態2では、上述した知見(1)〜(3)を具現化しているので、DUV光を使用しても、DUV光の波長よりも2桁程度小さな凹凸を有する位相欠陥でも高感度で検出できるという顕著な効果を得ることができる。
【0101】
特に、本実施の形態2では、第1画像検出器SE1の配置位置や第2画像検出器SE2の配置位置を調整しなくても、凹レンズCALや凸レンズCVLを挿入するだけで、容易にデフォーカス状態を実現できる利点が得られる。
【0102】
(実施の形態3)
前記実施の形態1では、2つの検査光照射領域(検査光照射領域11と検査光照射領域12)を使用する検査方法について説明したが、本実施の形態3では、1つの検査光領域だけを使用する検査方法について説明する。
【0103】
図15は、本実施の形態3におけるマスクブランクの検査方法に使用する検査装置の構成を示す図である。図15に示すように、本実施の形態3における検査装置の投光系は、まず、光源ILS、レンズL1、レンズL2、絞り(アパーチャ)AP2、ビームスプリッタBSP、対物レンズOBL、および、欠陥検査の対象となるマスクブランクMBを備えている。
【0104】
光源ILSは、波長が180nm〜210nm程度のDUV光を射出することができるように構成されており、この光源ILSから射出されたDUV光BM1は、レンズL1、絞りAP2、レンズL2を透過し、ビームスプリッタBSPで折り曲げられた後、対物レンズOBLを透過してマスクブランクMB上の所定領域ILAに照射される。ここで、本実施の形態3では、絞りAP2に形成されている1つの開口部をマスクブランクMBの所定領域ILA内の検査光照射領域20に像として投影することができる。このとき、マスクブランクMBには多層膜が形成されており、多層膜が形成されているマスクブランクMBの面にDUV光BM1が照射される。すなわち、図15において、マスクブランクMBの下面に多層膜が形成されている。マスクブランクMBに照射されたDUV光BM1は反射し、反射したDUV光BM2は対物レンズOBLで集められるとともに、ビームスプリッタBSPを透過する。ビームスプリッタBSPを透過したDUV光BM2は、投影領域PRAに集光する。つまり、マスクブランクMB上の所定領域ILAは、対物レンズOBLの投影可能領域であり、この所定領域ILA内で反射したDUV光BM2は、対物レンズOBLおよびビームスプリッタBSPを透過して、対物レンズOBLの結像面である投影領域PRAに集光する。したがって、マスクブランクMB上の検査光照射領域20は、投影領域PRA内に拡大検査像21として投影される。
【0105】
さらに、本実施の形態3における検査装置の受光系は、凸レンズCVL1、ハーフミラーHFM、凸レンズCVL2、凸レンズCVL3、第1画像検出器SE1および第2画像検出器SE2を備えている。そして、上述した投影領域PRA内の拡大検査像21を構成する光束は凸レンズCVL1によって平行光に変換され、平行光に変換された光束は、その一部がハーフミラーHFMによって反射する。ハーフミラーHFMで反射した光束は、凸レンズCVL2によって結像面22に集光される。つまり、拡大検査像21は、凸レンズCVL1、ハーフミラーHFM、および、凸レンズCVL2によって、結像面22に結像する。ここで、図15に示すように、第1画像検出器SE1は、凸レンズCVL2の結像面22よりも光路長がXL1だけ短い位置に配置されている。このとき、凸レンズCVL2の結像面22は、拡大検査像21と共役の関係にある。したがって、検査光照射領域20と、拡大検査像21と、結像面22とは互いに共役の関係にあることになる。
【0106】
一方、上述した投影領域PRA内の拡大検査像21を構成する光束は凸レンズCVL1によって平行光に変換されるが、平行光に変換された光束は、その一部がハーフミラーHFMを透過する。ハーフミラーHFMを透過した光束は、凸レンズCVL3によって結像面23に集光される。つまり、拡大検査像21は、凸レンズCVL1、ハーフミラーHFM、および、凸レンズCVL3によって、結像面23に結像する。ここで、図15に示すように、第2画像検出器SE2は、凸レンズCVL3の結像面23よりも光路長がXL2だけ長い位置に配置されている。このとき、凸レンズCVL3の結像面23は、拡大検査像21と共役の関係にある。したがって、検査光照射領域20と、拡大検査像21と、結像面23とは互いに共役の関係にあることになる。
【0107】
このように第1画像検出器SE1を凸レンズCVL2の結像面22よりも光路長がXL1だけ短い位置に配置することにより、マスクブランクMB上の検査光照射領域20の拡大検査像21を負のデフォーカス状態で収集することができる。これに対し、第2画像検出器SE2を凸レンズCVL3の結像面23よりも光路長がXL2だけ長い位置に配置することにより、マスクブランクMB上の検査光照射領域20の拡大検査像21を正のデフォーカス状態で収集することができる。したがって、本実施の形態3における検査装置では、マスクブランクMB上の検査光照射領域20の拡大検査像を、互いに異符号のデフォーカス状態で収集することができる。なお、第1画像検出器SE1および第2画像検出器SE2は、配置位置を変更できるように構成されている。
【0108】
さらに、第1画像検出器SE1および第2画像検出器SE2は、制御回路CNTと接続されており、制御回路CNTを構成するCPU1およびメモリ2によってデータが収集されるように構成されている。具体的に、第1画像検出器SE1から第1検査画像データが収集され、第2画像検出器SE2から第2検査画像データが収集される。そして、本実施の形態1における検査装置では、収集された第1検査画像データの光強度と第2検査画像データの光強度の差分を取ることにより、光強度差データが算出されるように構成されている。
【0109】
ここで、本実施の形態3の特徴は、1つの検査光照射領域20に対して、負のデフォーカス状態と正のデフォーカス状態の両方で拡大検査像21を収集している点にある。例えば、前記実施の形態1では、2つの検査光照射領域11および検査光照射領域12を設けて、検査光照射領域11に対応する拡大検査像を負のデフォーカス状態で収集し(第1検査画像データ)、検査光照射領域12に対応する拡大検査像を正のデフォーカス状態で収集している(第2検査画像データ)。このため、マスクブランクMBの同一位置における光強度差を算出するためには、同時刻の第1検査画像データと第2検査画像データ(この第1検査画像データと第2検査画像データは異なる位置のデータとなっている)を比較するのではなく、時間差のある第1検査画像データと第2検査画像データを比較する必要があり、データ処理工程が複雑化する。これに対し、本実施の形態3では、1つの検査光照射領域20に対して、負のデフォーカス状態と正のデフォーカス状態の両方で拡大検査像21を収集することができる。つまり、本実施の形態3では、1つの検査光照射領域20に対して、同時に、第1検査画像データと第2検査画像データを収集している。このため、本実施の形態3において、マスクブランクMBの同一位置における光強度差を算出するためには、同時刻の第1検査画像データと第2検査画像データを比較すればよく、データ処理工程を簡略化できる利点が得られるのである。
【0110】
本実施の形態3における検査装置は上記のように構成されており、以下に、この検査装置を使用したマスクブランクの検査方法について図面を参照しながら説明する。本実施の形態3におけるマスクブランクの検査方法は、上述した検査装置の動作を説明することにより明らかにされる。
【0111】
まず、1つの検査ストライプでの処理工程を図16に示すタイムチャートを使用して説明する。図16は、本実施の形態3における検査装置において、1つの検査ストライプでの処理工程を説明するためのタイムチャートである。図15および図16において、時刻t1でマスクブランクMBの走査を開始するとともに、第1画像検出器SE1および第2画像検出器SE2をスタンバイ状態にする。そして、時刻t2において、検査光照射領域20が検査ストライプの左端に差し掛かると、制御回路CNTにあるCPU1の制御に基づいて、第1画像検出器SE1の受光面に投影される拡大検査像を第1検査画像データとして取り込み、取り込んだ第1検査画像データを第1メモリ(メモリ2の一部)に記憶する。同時に、第2画像検出器SE2の受光面に投影される拡大検査像を第2検査画像データとして取り込み、取り込んだ第2検査画像データを第2メモリ(メモリ2の一部)に記憶する。
【0112】
そして、検査ストライプの全領域にわたって第1検査画像データの取り込みと第2検査画像データの取り込みを同時に連続して行なった後、時刻t3で第1画像検出器SE1による第1検査画像データの取り込みと、第2画像検出器SE2による第2検査画像データの取り込みを終了する。以上のようにして時刻t2〜時刻t3にかけて1ストライプ(1つの検査ストライプ)での第1検査画像データおよび第2検査画像データの取り込みが行なわれる。そして、時刻t4において、マスクブランクMBの走査を終了し、次の検査ストライプへの移行に備える。
【0113】
ここで、時刻t2から時刻t3の間では、マスクブランクMBの同一位置(同一場所)における第1検査画像データと第2検査画像データの光強度の差分を演算することにより、光強度差データ(絶対値)を算出する。具体的に、本実施の形態3では、同時刻で取り込んだ第1検査画像データと第2検査画像データの光強度の差分を演算することにより、マスクブランクMBの同一位置における光強度差データ(絶対値)を算出することができる。
【0114】
第1検査画像データと第2検査画像データとは、互いに異符号のデフォーカス状態で収集されたデータであるので、位相欠陥が存在すると、例えば、図7や図8に示したように、位相欠陥に対応する光強度は、一方が周辺部よりも暗くなり、他方が周辺部よりも明るくなる。したがって、第1検査画像データと第2検査画像データの光強度の差分を演算して光強度差データを算出し、算出した光強度差データの絶対値が、予め設定されている所定のしきい値を超えると、位相欠陥が存在すると判断される。このようにして、1つの検査ストライプに存在する位相欠陥を検出することができる。
【0115】
本実施の形態3におけるマスクブランクの検査方法は上述した通りであり、以下に、本実施の形態3におけるマスクブランクの検査方法を改めてフローチャートを用いて説明する。図17は、本実施の形態3におけるマスクブランクの検査方法の流れを示すフローチャートである。まず、図17に示すように、マスクブランクMBの検査領域内において、最初に検査する検査ストライプを指定する(S201)。その後、マスクブランクMBを搭載したステージの走査を開始する(S202)。
【0116】
次に、DUV光が照射される検査光照射領域20が検査ストライプ内に入ると、第1画像検出器SE1で第1検査画像データの取り込みを行なうとともに、取り込んだ第1検査画像データを第1メモリに記憶する。同時に、第2画像検出器SE2で第2検査画像データの取り込みを行なうとともに、取り込んだ第2検査画像データを第2メモリに記憶する(S203)。
【0117】
その後、マスクブランクMBの同時刻における第1検査画像データと第2検査画像データとを比較する。この比較は、同一位置に対応する画素ごとに行われる。そして、同時刻における第1検査画像データと第2検査画像データの光強度の差分を演算することにより、マスクブランクMBの同一位置における光強度差データ(絶対値)を算出することができる(S204)。
【0118】
続いて、算出した光強度差データの絶対値と予め設定されているしきい値と比較し(S205)、光強度差データがしきい値よりも小さい場合は、位相欠陥が存在しないものと判断してステップS207へ移行する。一方、光強度差データの絶対値がしきい値を超えている画素が存在する場合、位相欠陥が存在すると判断して、欠陥情報(欠陥サイズや欠陥位置や欠陥形状など)の表示や記憶を行なう(S206)。例えば、位相欠陥の存在する座標は、適宜、マスクブランクMBに設けたマークや、吸収体を形成したマスクにおいては、所定の吸収体パターンの位置を基準として定めることができる。なお、複数の連続した画素にわたって、光強度差データの絶対値がしきい値を越える場合は、欠陥サイズや欠陥の輪郭を把握することができる。
【0119】
さらに、本実施の形態3では、第1検査画像データ自体や第2検査画像データ自体も記憶しているので、第1検査画像データと第2検査画像データとの間の光強度の大小関係から、凹形状の位相欠陥であるのか、あるいは、凸形状の位相欠陥であるのかも判断することができる。つまり、位相欠陥に対応する光強度の明暗のデフォーカス依存性は、凹形状の位相欠陥と凸形状の位相欠陥で逆になることから、第1検査画像データ自体と第2検査画像データ自体を解析することにより欠陥形状も把握することができる。
【0120】
そして、1つの検査ストライプ(1ストライプ)上での処理がすべて終了したかを判断し(S207)、未終了であれば、S203に戻り、1つの検査ストライプ内での検査を継続する。一方、1つの検査ストライプでの処理がすべて終了した場合には、全ストライプの欠陥検査が終了したかを判断する(S208)。全ストライプの欠陥検査が終了していない場合には、新たな検査ストライプを指定し(S209)、マスクブランクMBを指定したストライプのスタート位置に配置し、欠陥検査を繰り返す。一方、全ストライプの欠陥検査が終了すると、マスクブランクMBの欠陥検査は終了する。このようにして、本実施の形態3におけるマスクブランクの検査方法を実施することができる。
【0121】
以上のことから、本実施の形態3におけるマスクブランクの検査方法によれば、量産装置としての完成度が高く、かつ、大気中でのレンズを使用した検査光学系を使用できるDUV光を使用したマスクブランクの検査方法においても、わずか数nmの微細な凹凸欠陥(位相欠陥)を高感度に検出できる。つまり、本実施の形態3によれば、DUV光を用いることができるので、量産装置としての完成度が高く、かつ、大気中でのレンズを使用した検査光学系を使用できる。この結果、取り扱いの容易な既存の検査装置を使用して、EUVL用のマスクブランクに存在する位相欠陥を検査することができる。そして、本実施の形態3では、上述した知見(1)〜(3)を具現化しているので、DUV光を使用しても、DUV光の波長よりも2桁程度小さな凹凸を有する位相欠陥でも高感度で検出できるという顕著な効果を得ることができる。
【0122】
特に、本実施の形態3では、1つの検査光照射領域20に対して、同時に、第1検査画像データと第2検査画像データを収集している。このため、本実施の形態3において、マスクブランクMBの同一位置における光強度差を算出するためには、同時刻の第1検査画像データと第2検査画像データを比較すればよく、データ処理工程を簡略化できる利点が得られる。
【0123】
(実施の形態4)
本実施の形態4では、前記実施の形態1〜3で説明した検査方法で検査されたマスクブランクを使用してEUVL用マスクを製造するマスクの製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0124】
図18は、本実施の形態4におけるマスクの製造方法で製造されたマスクの一例を示す平面図である。図18において、マスクMの表面には、吸収体ABSが形成されており、この吸収体ABSの一部が除去されてホールパターンHPが形成されている。つまり、このマスクMは、半導体基板(半導体ウェハ)上にホールパターンを形成するためのマスクである。このマスクMの特徴は、マスクMを形成する前にマスクブランクの状態で位相欠陥があるかを検査し、このマスクブランク上に位相欠陥が存在する場合であっても、図18に示すように、位相欠陥PDが吸収体ABSに覆われるようにマスクMを形成する点にある。これにより、本実施の形態4におけるマスクMによれば、位相欠陥PDが吸収体ABSに覆われているため、例えば、ホールパターンHPを半導体基板(半導体ウェハ)上に露光投影する場合であっても、位相欠陥PDが存在することによる転写不良を防止することができる。
【0125】
具体的に、図19は、図18のA−A線で切断した断面図である。図19に示すように、本実施の形態4におけるマスクMは、マスク基板(マスクブランク)MSの裏面(下面)に導体膜CFが形成されており、マスク基板(マスクブランク)MSの主面(上面)に多層膜MLFが形成されている。そして、この多層膜MLF上にキャッピング層CAPが形成されており、このキャッピング層CAP上にバッファ層BUFが形成されている。このバッファ層BUF上に吸収体ABSが形成されている。このとき、マスク基板(マスクブランク)MSの主面(表面)に位相欠陥PDが形成されているが、この位相欠陥PDは吸収体ABSで覆われていることがわかる。したがって、本実施の形態4におけるマスクMでは、たとえ位相欠陥PDが存在しても、位相欠陥PDの影響を排除することができることがわかる。
【0126】
以下に、本実施の形態4におけるマスクの製造方法について図面を参照しながら説明する。図20は、本実施の形態4におけるマスクの製造方法を説明するためのフローチャートである。まず、多層膜を形成したマスクブランクを用意する(S301)。そして、用意したマスクブランクに対して位相欠陥が存在するか否かを検査する(S302)。この検査工程は、例えば、前記実施の形態1〜3で説明した検査方法を使用することができる。その後、マスクブランク全面において欠陥の有無を判断し(S303)上述した検査の結果、マスクブランクに位相欠陥が存在しない場合には、マスクブランク上に吸収体を形成し、この吸収体をパターニングすることによりマスクを製造する(S305)。一方、上述した検査の結果、マスクブランクに位相欠陥が存在する場合は、マスクブランク上に吸収体を形成し、この吸収体に対してパターニングを施す際、位相欠陥が吸収体に覆われるように吸収体をパターニングする(S304)。このようにしてマスクを製造することができる。
【0127】
さらに詳細に説明すると、上述した検査工程で位相欠陥が検出された場合、マスクブランクに存在する位相欠陥の位置情報をメモリに記憶しておく。このとき、位相欠陥の位置情報は、マスクブランク上に予め設けられている段差パターンなどのアライメントマークを基準として利用することにより、正確に把握することができる。
【0128】
そして、マスクブランク上に吸収体を形成し、この吸収体をパターニングすることになる。このとき、吸収体パターンを形成する位置を規定するための吸収体パターン用マスクが使用される。つまり、マスクブランクの全面に吸収体を形成した後、吸収体パターン用マスクを用いたリソグラフィ技術により、マスクブランク上に形成された吸収体のパターニングが行われる。ここで、マスクブランクと吸収体パターン用マスクとの相対位置関係を、記憶している位相欠陥の位置情報に基づいて決定する。すなわち、記憶している位相欠陥の位置情報に基づいて、位相欠陥が吸収体に覆われるようにマスクブランクと吸収体パターン用マスクの相対的な位置関係を決定する。これにより、マスクブランクに存在する位相欠陥を吸収体で覆い隠すように、吸収体パターンの位置決めをすることが可能となる。そして、決定したマスクブランクと吸収体パターン用マスクの相対位置に基づいて、マスクブランク上に吸収体パターンを形成する。この結果、製造されたマスクにおいては、吸収体の下に位相欠陥が隠れているため、マスクパターンの半導体基板(半導体ウェハ)への露光投影にはまったく支障がなくなる。
【0129】
吸収体パターンを形成するためには、マスクブランクの検査を終了した後、吸収体材料をまずマスクブランク上に一様に形成する。そして、通常の電子線リソグラフィなどを用いるマスクパターン描画法を採用する。吸収体材料をマスクブランク上に一様に形成しても、マスクブランクに形成されている段差パターン(凹部)などのアライメントマークは、吸収体材料の表面に現れるので、アライメントマークを電子線で検知することは可能である。したがって、吸収体パターンの形成に際しても、マスクブランクに形成されたアライメントマークを利用することができる。この結果、本実施の形態4のように位相欠陥の影響を受けない吸収体パターンを形成することができる。
【0130】
なお、基準となるアライメントマークの形成方法は、例えば、マスク基板(マスクブランク)上に多層膜を形成した後、多層膜上にFIB(Focused Ion Beam)や短波長レーザを照射することにより形成することができる。また、マスクブランクのエッジ位置を光学的に検出する方法を採用することもできる。
【0131】
また、マスクブランク上の位相欠陥が単独では転写に影響を与えないような小さなものである場合、その位相欠陥の近傍に吸収体が存在しなければ、投影露光されるパターンの寸法変動の主要因とはならない。このため、例えば、図21に示すように、位相欠陥PDが微細な場合(吸収体パターンのラインアンドスペースよりも小さい場合)においては、多層膜の表面に形成する吸収体ABSからなる吸収体パターンを位相欠陥PDから充分に離す(吸収体パターンのラインアンドスペースよりも大きな距離)ように、吸収体パターンの位置決めを行ない、この位置決め結果に基づいて、マスクブランク上に吸収体パターンを形成することができる。このようにして得られたマスクMでは、吸収体パターンの近傍に位相欠陥PDが存在しないので、吸収体パターンの半導体基板(半導体ウェハ)への露光投影に支障をきたすことなく、パターン転写を行なうことができる。
【0132】
上述したマスクの製造方法は、予め準備された吸収体パターン全体の配置位置をマスクブランク上で調整することにより、位相欠陥の影響を実質的に除去する方法である。さらに、例えば、吸収体パターンの全体領域の中で比較的パターン密度の小さい領域では、最終的に完成する半導体装置の性能への影響がない範囲内で、吸収体パターンの形状を一部変更して、転写する吸収体パターンと位相欠陥との間の距離を所定距離(例えば、吸収体パターンのラインアンドスペース間の距離)以上となるように、局所的な吸収体パターンの再設計を行なうように構成してもよい。
【0133】
以上のように、本実施の形態4におけるマスクの製造方法によれば、位相欠陥の位置を特定することができ、半導体装置を形成するための吸収体パターンと、マスクブランクに存在する位相欠陥との位置関係を、位相欠陥によるパターン転写への影響を受けないように調整することができる。この結果、位相欠陥を有するマスクブランクを良品として使用できる頻度が大きくなる。このため、マスクブランクの歩留まりを大きく向上させることができ、製造するマスクのコスト削減を図ることができる。
【0134】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明は、半導体装置を製造する製造業に幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0136】
1 CPU
1S 半導体基板
2 メモリ
11 検査光照射領域
12 検査光照射領域
13 拡大検査像
14 拡大検査像
15 ミラー
16 結像面
17 結像面
20 検査光照射領域
21 拡大検査像
22 結像面
23 結像面
ABS 吸収体
AP1 絞り
AP2 絞り
BM1 DUV光
BM2 DUV光
BSP ビームスプリッタ
BUF バッファ層
CAL 凹レンズ
CAP キャッピング層
CNT 制御回路
CF 導体膜
CVL 凸レンズ
CVL1 凸レンズ
CVL2 凸レンズ
CVL3 凸レンズ
HFM ハーフミラー
HP ホールパターン
ILA 所定領域
ILS 光源
IMA1 拡大検査像
IMA2 拡大検査像
LOS1 照明光学系
LOS2 結像光学系
LS 光源
L1 レンズ
L2 レンズ
L3 レンズ
L4 レンズ
M マスク
MA アライメントマーク
MB マスクブランク
MDE デバイスパターンエリア
MLF 多層膜
MS マスク基板
OBL 対物レンズ
PD 位相欠陥
PD1 位相欠陥
PD2 位相欠陥
PIX1 画素
PIX2 画素
PRA 投影領域
SE 画像検出器
SE1 第1画像検出器
SE2 第2画像検出器
SP1 検査ストライプ
ST ステージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)EUV光を反射させる多層膜が形成されたマスクブランクをステージに載置する工程と、
(b)前記(a)工程後、検査光を前記マスクブランクに照射する工程と、
(c)前記(b)工程後、前記マスクブランクの検査光照射領域を走査しながら、対物レンズを介して前記検査光照射領域の拡大検査像を収集する際、前記対物レンズに対して第1所定量のデフォーカス位置で前記拡大検査像を収集する工程と、
(d)前記(b)工程後、前記マスクブランクの前記検査光照射領域を走査しながら、前記対物レンズを介して前記検査光照射領域の前記拡大検査像を収集する際、前記対物レンズに対して前記第1所定量とは符号の異なる第2所定量のデフォーカス位置で前記拡大検査像を収集する工程と、
(e)前記(c)工程で収集される前記拡大検査像と、前記(d)工程で収集される前記拡大検査像に基づいて、欠陥の有無を判定する工程と、
(f)前記(e)工程で得られる判定結果を表示する工程とを備えることを特徴とするマスクブランクの検査方法。
【請求項2】
請求項1記載のマスクブランクの検査方法であって、さらに、
(g)前記(b)工程後、前記(c)工程および前記(d)工程前に、前記検査光照射領域内の異なる第1照射領域と第2照射領域からそれぞれ反射して前記対物レンズを透過する前記第1照射領域に対応した第1光束と、前記第2照射領域に対応した第2光束とを分岐する工程とを有し、
前記(c)工程は、前記(g)工程で分岐された前記第1光束を用いて、前記第1照射領域の第1拡大検査像を形成する前記対物レンズの第1結像面あるいはその第1共役面よりも光路長の短い位置で前記第1拡大検査像を収集し、
前記(d)工程は、前記(g)工程で分岐された前記第2光束を用いて、前記第2照射領域の第2拡大検査像を形成する前記対物レンズの第2結像面あるいはその第2共役面よりも光路長の長い位置で前記第2拡大検査像を収集することを特徴とするマスクブランクの検査方法。
【請求項3】
請求項2記載のマスクブランクの検査方法であって、
前記(c)工程は、前記第1結像面あるいはその前記第1共役面よりも第1光検出器を検査光軸に沿って前記対物レンズに近づける方向に移動させて前記第1拡大検査像を収集し、
前記(d)工程は、前記第2結像面あるいはその前記第2共役面よりも第2光検出器を検査光軸に沿って前記対物レンズから遠ざける方向に移動させて前記第2拡大検査像を収集することを特徴とするマスクブランクの検査方法。
【請求項4】
請求項2記載のマスクブランクの検査方法であって、
前記(c)工程は、前記対物レンズと第1光検出器の間に凹レンズを挿入することにより、前記第1結像面あるいはその前記第1共役面を前記第1光検出器の受光位置よりも前記対物レンズから遠い位置にずらした状態で前記第1拡大検査像を収集し、
前記(d)工程は、前記対物レンズと第2光検出器の間に凸レンズを挿入することにより、前記第2結像面あるいはその前記第2共役面を前記第2光検出器の受光位置よりも前記対物レンズに近い位置にずらした状態で前記第2拡大検査像を収集することを特徴とするマスクブランクの検査方法。
【請求項5】
請求項1記載のマスクブランクの検査方法であって、
前記(b)工程は、波長が180nm以上210nm以下であるDUV光を前記検査光として使用することを特徴とするマスクブランクの検査方法。
【請求項6】
請求項1記載のマスクブランクの検査方法であって、
前記(e)工程は、
(e1)前記(c)工程で収集される前記拡大検査像のうち前記マスクブランクの所定領域に対応した前記拡大検査像と、前記(d)工程で収集される前記拡大検査像のうち前記マスクブランクの前記所定領域に対応した前記拡大検査像との光強度差を算出する工程と、
(e2)前記(e1)工程後、前記光強度差の絶対値が予め設定したしきい値を超えるときに欠陥が存在すると判定する工程とを有することを特徴とするマスクブランクの検査方法。
【請求項7】
請求項1記載のマスクブランクの検査方法であって、
前記(e)工程は、さらに、表面形状が凸形状をしている前記欠陥と、表面形状が凹形状をしている前記欠陥とを判別することを特徴とするマスクブランクの検査方法。
【請求項8】
(a)EUV光を反射させる多層膜が形成されたマスクブランクに存在する欠陥の有無を検査する工程と、
(b)前記(a)工程で前記欠陥が検出された場合、検出された前記欠陥の位置座標に基づいて、吸収体パターンを形成する工程とを備え、
前記(a)工程は、
(a1)前記マスクブランクをステージに載置する工程と、
(a2)前記(a1)工程後、検査光を前記マスクブランクに照射する工程と、
(a3)前記(a2)工程後、前記マスクブランクの検査光照射領域を走査しながら、対物レンズを介して前記検査光照射領域の拡大検査像を収集する際、前記対物レンズに対して第1所定量のデフォーカス位置で前記拡大検査像を収集する工程と、
(a4)前記(a2)工程後、前記マスクブランクの前記検査光照射領域を走査しながら、前記対物レンズを介して前記検査光照射領域の前記拡大検査像を収集する際、前記対物レンズに対して前記第1所定量とは符号の異なる第2所定量のデフォーカス位置で前記拡大検査像を収集する工程と、
(a5)前記(a3)工程で収集される前記拡大検査像と、前記(a4)工程で収集される前記拡大検査像に基づいて、欠陥の有無を判定する工程と、
(a6)前記(a5)工程を実施した結果、前記マスクブランクに存在する前記欠陥が検出された場合、前記欠陥の位置座標を記憶する工程とを有することを特徴とするマスクの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−58558(P2012−58558A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202728(P2010−202728)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 「次世代半導体材料・プロセス基盤(MIRAI)プロジェクト」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】